JP6796246B2 - 産乳家畜用乳頭パック形成用キット - Google Patents

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Description

本発明は、産乳家畜用乳頭パック形成用キットに関する。
以下、乳牛、山羊、羊等飲用乳或は加工乳を生産する家畜を「産乳家畜」と総称する場合がある。また、産乳家畜の乳頭(乳首)の全体を被覆して、乳房炎等の感染を防止する保護膜を「産乳家畜用乳頭パック」と呼称する場合がある。
代表的な産乳家畜は乳牛であるので、以下、乳牛に関して説明する。乳牛の重大な疾病の一つに乳房炎がある。乳房炎は、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入し、定着・増殖することによって起こる感染病であるが、その発生機序が複雑であるので、いまだに根絶できず、酪農界に重大な経済的損失を与え続けている疾病である。乳房炎には種々のタイプや症状があるが、乳房の発赤、疼痛、膨張、発熱或いは乳汁中への乳魂の出現等、いわゆる臨床症状をともなった乳房炎の発見は容易であり、抗生剤治療の普及につれて世界的にも減少傾向にある。しかし、これらの臨床症状を示さないが乳汁を検査すると体細胞数の増加等の異常が発見される、いわゆる潜在性乳房炎については、産乳量や乳質の低下等多大な経済的損失を及ぼしているにも係わらず、その防除は遅々として進んでいない。
このような乳房炎を防除するために、現在世界的に推奨されているのは「5ポ イント」と呼ばれる下記のような重点対策である。
(1)ミルカーの点検整備を含めた搾乳施設等の衛生対策、
(2)乳頭の消毒、
(3)臨床型乳房炎の治療、
(4)乾乳期治療(dry cow therapy, DCT)
(5)問題牛の淘汰(以上、非特許文献1、2、3)
上記に挙げた対策の中でも(1)ミルカーの点検整備を含めた搾乳施設等の衛生対策、即ち、畜舎の衛生管理は最も基本的な対策である。畜舎の衛生管理の中でも、糞便・尿の速やかな除去が重要である。乳牛は、1日に大量の飼料を食べ、大量の水を飲む。さらに、食べた量以上の糞及び尿を排泄する。平均で1日約25kgの乳を生産する乳牛の場合、約45kgの糞、約15kgの尿を排泄する。糞の主要成分は、吸収されなかったタンパク質、糖類(ヘミセルロース、セルロース、リグニン等)である。乳牛の一日の排便回数は15〜20回で、その間隔は通常30〜90分と言われている。排便、排尿の都度、除去処理をすることは不可能に近く、いきおい畜舎の床は糞尿、泥等で汚染された状態である。また、糞尿等は、粘度も高く、一旦乳頭等に付着すると、除去するのが難しいのが現状である。理想的には、乳房、特に乳頭に糞尿が付着しないような手段、もしくは付着しても、速やかに、自然に剥落するような手段を講じることである。乳房炎予防には、畜舎を清潔に保守・管理することが重要である。然しながら、畜舎を清潔に保守・管理するにはおのずから限界があり、従来、下記に例示する手段が提案されている。
その一つは、乳頭の消毒である。乳牛の乳頭消毒は、乳房炎防除の最も重要な予防対策の一つであり、英国のDoddらが1952年に乳頭消毒剤を開発、実施し、日本では昭和40年頃より乳質改善事業の一環として使用が実施されるようになり、今日では40%の普及率となっている。
現在一般に実施されている乳頭消毒は、搾乳後に乳頭をディッピング剤(殺菌消毒水溶液)に浸漬する方法(所謂ポストディッピング法)であり、乳頭皮膚表面に付着する乳房炎起因菌を殺菌消毒し、さらに保湿剤によりひび割れ等の乳頭皮膚の状態を改善し、乳頭表面の細菌の増殖を抑制することにより、乳房炎を予防することにあり、これまで、様々なポストディッピング剤が提案(例えば特許文献1、特許文献2)されており、市場では多数の製品が市販されている。しかしながら、米国の国立酪農研究所(the National Institute for Research in Dairying)により実施された試験において、ポストディッピング実施乳牛群の12カ月間での新たな感染は50%減少したものの、それは既に感染していた乳房の全体からみると僅か14%の減少でしかなかった。このことから、既存菌による亜臨床型感染が持続したことが伺えたと報告している。即ち、このポストディッピングは、伝播性の乳房炎起因菌による新たな感染の率は減少させるものの、いわゆる環境性乳房炎の起因菌に対する防除効果に関しては、思ったほど効果が期待できないということである。
つまり、搾乳後の消毒(ポストディッピング)のみでは、その効果持続期間(例えば、適用後、乳頭が牛床などに接触した際に、薬液が乳頭から除かれて効果が失われるまでに、1〜2時間)が比較的短いため、次の搾乳までに殺菌効果が消失してしまうため、環境性の起因菌に対しては、その効果に限界があった。
一方、乳房炎起因菌から乳牛の乳頭を守る手段として、乳牛の乳頭全体を、適当なポリマーで完全に被覆して、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入するのを防止する技術が提案されている
例えば、特許文献3は、「乳牛の乾乳期において、乳房炎に感染しやすい 乾乳期の初めの約2日〜9日程度の間、及び分娩前約2日〜9日程度の間、乳頭を乳頭シール剤に浸漬して乳頭に乳頭口を閉塞する薄膜を形成した状態に保持しておくことにより、乳房炎起因菌の感染を物理的に阻止することを特徴とする乳牛の乳房炎予防方法。」を開示している(請求項1)。更に、特許文献3は、乳頭口を浸漬させる乳頭シール剤として、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、メチレンクロライド等のフロン代替体、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を溶媒として、ウレタンゴム、ラテックスゴム、ブタジエン樹脂、ポリビニルアルコール、液状ブチルゴム、液状ゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、酢酸ビニルゴム等から選択されたゴム素材を5〜15%の濃度で溶解したものを記載している。しかしながら、特許文献3のゴム系素材は溶媒が揮発しパックを形成するまでに時間を要するため、パック装着後、パック形成前に牛が横臥休息した場合、液が散逸しパックが形成されないという問題を有していた。また、ゴム系素材が乾燥する際に、アセトニトリルやトルエンなどの有害な有機溶媒が揮発するため、人体又は乳牛の健康を害する恐れがあった。
特許文献4は、「少なくとも、水、カルシウム塩およびアルギン酸塩を含み、かつ、ゲル化前の粘度が5000〜150万mPa・secである乳頭パック。」を開示しており、更に、該乳頭パック中にヨウ素などの抗菌剤を配合しておくことで、長期間乳頭を乳房炎起因菌などから保護できるとして提案されている。
しかし、特許文献4に記載されている乳頭パックでは、アルギン酸塩や硫酸カルシウム塩からなる粉末成分を使用直前に、水などの溶剤と混錬して得られるペーストを乳頭に塗布して使用すると説明されている。硫酸カルシウムは水に不溶、つまり疎水性成分であり、水などの親水性溶剤中に均一に分散させることは非常に難しく、所望の分散性を得るためには、術者に多大な労力及び熟練を要求するだけでなく、混錬の際には粉末成分が周囲に飛散してしまうという問題を有していた。また、特許文献4には、粉末であるアルギン酸塩や硫酸カルシウム塩からなる成分をグリセリンやプロピレングリコールなどの親水性溶剤に予め分散させておくことで、上記問題が軽減されるとしているが、この場合であっても表面が疎水性である硫酸カルシウムを親水性溶剤中に分散させておくのが困難なため、経時的に沈降分離を起こしてしまう。その結果、場合によっては、使用する際(水と混錬する際)に、かえって分散性を損ねてしまい、混錬に時間がかかったり、気泡が混入したりして、得られる乳頭パックの均一性や硬化性が低下し、乳頭への密着性が悪化したり、乳頭から剥離し易くなったりしていた。
特許文献5は、水性分散媒中に、ポリマーラテックスと水溶性ポリマー増粘 剤を含む組成物に産乳動物の乳頭を浸漬して産乳動物の乳房炎を予防処理する方法を開示している。ラテックスは、高分子化合物の分散液であり、該分散液を産乳家畜の乳頭に浸漬させると、時間経過と共に徐々に膜が形成され、その結果、乳頭が保護される。このようなラテックスを含有する組成物を用いる乳頭の保護方法は、操作方法の簡便さから有用な技術と考えられる。即ち、特許文献5に記載された技術も、乳房炎起因菌から乳牛の乳頭を守る手段として、乳牛の乳頭全体を、適当なポリマーラテックスで完全に被覆して、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入するのを防止する技術である。
上述した特許文献3〜5に記載された発明は、いずれも、ゴム系又はポリマーラテックスで乳牛の乳頭全面に、いわゆる「産乳家畜用乳頭パック」を形成し、乳頭全体を完全に被覆して、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入するのを防止する技術であり、それなりの効果はある。然しながら、畜舎内に残留している糞便・尿、泥等高粘着物の付着による汚染の被害からは免れることはできない。
従って、理想的な「産乳家畜用乳頭パック」に要求される機能は、第一義的には、(イ)簡便な操作により、乳頭の形状に完全に密着・追随し、長期間乳頭から剥離しないこと、特に乳頭口を完全に閉塞しておくことである。それと併せて、(ロ)乳頭パック自体に、糞便・尿・泥等高粘着物が付着しない機能を持たせること、或いは、糞便・尿・泥等が一旦付着したとしても、速やかに自然に剥落するような防汚性、いわゆる高撥水・撥油性を持たせることである。
特開平8−175989号公報 特開平11−155404号公報 特開2000−41529号公報 特開2006−50911号公報 米国特許4113854
畜産大事典編集委員会代表者長沢弘著、1996年2月20日、畜産大事典、株式会社養賢堂 酪農大事典生理・飼育技術・環境管理、2011年3月31日、社団法人農山漁村文化協会 株式会社講談社サイエンティフィック編、新編畜産ハンドブック、2006年9月10日、株式会社講談社
前述した従来技術を総合的に検討した結果、発明が解決しようとする課題は、産乳家畜の乳頭の全面に被覆され、密着性、弾性、耐摩耗性、耐久性、耐老化性、耐油性、耐候性、乳房の形状追随性等に優れていることはもとより、畜舎の床面又は放牧場に残留している糞便、尿、泥、土等高粘着物に対する防汚性に優れた産乳家畜用乳頭パック形成用材料、産乳家畜の乳房炎を予防する方法、及び時、場所を選ばず、簡便な方法で産乳家畜の乳頭の全面を完全に被覆し、乳房炎起因菌から産乳家畜の乳頭を保護する乳頭パックを形成することができる産乳家畜用乳頭パック形成用キットを提供することである。
本発明で使用する用語「糞便、尿、泥、土等高粘着物に対する防汚性」とは、乳頭パック自体が、糞便、尿、泥、土等高粘着物を付着させないか、或は付着させ難く、たとえ、糞便、尿、泥、土等高粘着物が付着したとしても、経時的に自然に剥落させる物性と定義する。本発明で使用する用語「防汚性」は「糞便、尿、泥、土等高粘着物に対する非粘着性」あるいは「糞便、尿、泥、土等高粘着物に対する撥水・撥油性」等と同義である。
発明が解決しようとする更なる課題及び利点は以下逐次明らかにされる。
前述したように、産乳家畜の乳頭パックに、糞便、尿、泥、土等高粘着物を付着させない機能、または、たとえそれらが付着しても容易に剥落する機能を付与することは、とりもなおさず、産乳家畜の乳頭パックに高度の撥水・撥油性を付与することである。
ところで、従来から、各種の撥水・撥油剤が使用されている。即ち、鉱油系として流動パラフィン等;脂肪酸系としてステアリン酸、オレイン酸等;天然油脂系として動物油、天然ワックス等;脂肪酸エステル系としてエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビト−ル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等;アルコール系としてポリオキシアルキレングリコール、グリコール類、ポチオキシエチレン高級アルコールエーテル等;アミド系としてポリオキシエチレンアルキレン、アミド等;リン酸エステル系としてポリオキシアルキレンリン酸ソ−ダ等;金属石鹸系としてステアリン酸カルシウム、オレイン酸ソーダ等が使用されている。
そこで、先ず、本発明者は、コストを考慮して、上述した撥水・撥油剤の中から任意に選択し、それを天然ゴムラテックスに練り込んで乳頭パック相当の厚さのフィルムに成形し、サンプルとした。他方、天然ゴムラテックスで乳頭パック相当の厚さのフィルムに成形し、その表面に同じ撥水・撥油剤をコーティングしたサンプルを製造した。それぞれのサンプルに、糞便、尿、泥、土等高粘着物を付着させて、防汚効果を試験したが、満足すべき効果を得ることはできなかった。次いで、撥水・撥油剤を、シリコーン系及び/又はフッソ系撥水・撥油剤に代えて同じ試験をしたところ、満足すべき効果を得ることができた。
ところで、現在、接触角が90°以上で、固形分が14〜17%の撥水性を有するシリコーン・アクリル系、フッ素・アクリル系、或はシリコーン・塩ビ系ラテックスが市販されている。これらのラテックスで所定の厚さのフィルムを製造して、同じ試験を行ったが、造膜までに時間が掛かり、且つ、フィルムも強度不足で乳頭パックとして実用に供し得ないことが判明した。
これらの実証試験から、下記の事実が検証された。
イ。鉱油系、脂肪酸系、天然油脂系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、ン酸エステル系、金属石鹸系等従来から汎用されている撥水・撥油剤単独では所期の効果を奏功しえない。
ロ。シリコーン系及び/又はフッソ系撥水・撥油剤は、効果的である。
ハ。現在市販されているシリコーン系或はフッ素系ラテックス単品では、撥水・撥油効果はあるが、乳頭パックとしての強度が不足、或は造膜までの時間が掛かるという欠点がある。
従って、前記の課題は、下記のいずれか1項に記載した発明により解決される。
第1の発明は、産乳家畜の乳頭を被覆・保護する乳頭パックを形成するための産乳家畜用乳頭パック形成用材料であって、少なくとも、
(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスと、
(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス、または、(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物から選択された成分を含むことを特徴とする産乳家畜の乳頭パック形成用材料である。
第2の発明は.前記第1項に記載した発明において、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックスは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ化シリコーンゴム、シリコーンゴム系熱可塑性エラストマー又はフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを分散質とする。
第3の発明は.前記第1項に記載した発明において、(C)ケイ素及び/叉はフッ素系撥水・撥油性化合物は、シランカップリング剤またはパーフルオロアルキル基含有化合物である。
第4の発明は.前記第1〜3項のいずれか1項に記載した発明において、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス、または(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物の濃度は、乳頭パック形成用材料の質量当たり0.1〜10%である。
第5の発明は.前記第1〜4項のいずれか1項に記載した発明において、前記(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物は、さらに、鉱油系、脂肪酸系、天然油脂系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系又はそれらの混合物から成る群から選択された一種の撥水・撥油性化合物を含む。
第6の発明は.前記第1〜5項のいずれか1項に記載した発明において、乳頭パック形成用材料は、さらに、高分子ラテックスを凝集するための(D)凝集剤を含む。
第7の発明は.前記第6項に記載した発明において、(D)凝集剤は、低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
第8の発明は、前記第1〜7項のいずれか1項に記載した産乳家畜用乳頭パック形成用材料を用いて、乳頭の全面に、前記高分子ラテックスの分散質である高分子の微粒子を凝集させ、所定の厚さに造膜させることを含む、乳頭パックを形成させることを特徴とする乳房炎を予防する方法。
第9の発明は、産乳家畜の乳頭を被覆・保護する乳頭パックを形成するための産乳家畜用乳頭パック形成用キットであって、
(i)所定の容器に収容された(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス;
(ii)前記所定の容器と同じか又は異なる容器に収容された(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス、及び
(iii)前記(i)及び(ii)の容器とは異なる容器に収容された(D)凝集剤との組み合わせからなる、産乳家畜用乳頭パック形成用キット。
第10の発明は.前記第9項に記載した発明において、(D)凝集剤は、低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
第11の発明は、産乳家畜の乳頭を被覆・保護する乳頭パックを形成するための産乳家畜用乳頭パック形成用キットであって、
(i)所定の容器に収容された(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス;
(ii)前記所定の容器と同じか又は異なる容器に収容された(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物;及び
(iii)前記(i)の容器とは異なる容器に収容された(D)凝集剤との組み合わせからなる、産乳家畜用乳頭パック形成用キット。
第12の発明は.前記第11項に記載した発明において、(D)凝集剤は、低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
本発明による産乳家畜用乳頭パック形成用材料は、構成する主要材料から分類すると、(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスと(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックスを含む成分;又は(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスと(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物を含む成分、の二組の系から構成されている。即ち、いずれの系においても、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含むことを必須とし、そのことにより下記に例示する効果を奏功する。
1.いずれの系においても、高分子ラテックスが乳頭パックを形成するための主成分なので、適当な凝集剤と混合することによる急凝集で造膜して、簡便に、各成分が均一に分散した、優れた乳頭パックを形成することができる。
2.(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスは、強度が高く弾性の高い乳頭パックを形成するので、搾乳期の産乳家畜の乳頭の収縮及び膨張の動きにも追随でき、かつ産乳家畜が横臥休息してもパックが剥離することなく維持することができる。
3.形成される乳頭パック自体が撥水・撥油機能、即ち、高度の防汚性を有しているので、下記に例示する効果を奏功する。
(イ)畜舎内に残留している糞便、尿、泥、土等高粘着物を付着させない。たとえ、糞便、尿、泥、土等高粘着物が付着しても、経時的に自然に剥落させる。従って、乳頭口付近を長期間にわたり清潔な状態に保つことが出来る。
(ロ)産乳家畜が横臥休息した際に乳頭同士が接触した場合にも、装着したパック同士が癒着することなく、パック同士の癒着によるパックの剥離を防ぐことができる。
(ハ)形成される乳頭パック自体が撥水・撥油機能、即ち、高度の防汚性を有しているので、乳頭が皮膚上の油脂や乳汁に覆われている場合においても塗布性が良く、パックを乳頭に密着させることができる。そのため、長期間乳頭から剥がれることがない。
本発明の産乳家畜の乳頭を被覆・保護する乳頭パックを形成するための産乳家畜乳頭用パック形成用キットは、
1.(i)所定の容器に収容された(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス;
(ii)前記所定の容器と同じか又は異なる容器に収容された(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス、及び
(iii)前記(i)及び(ii)の容器とは異なる容器に収容された(D)凝集剤との組み合わせからなるか、又は
(i)所定の容器に収容された(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス;
(ii)前記所定の容器と同じか又は異なる容器に収容された(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物;及び
(iii)前記(i)の容器とは異なる容器に収容された(D)凝集剤との組み合わせからなる。
従って、下記に例示する効果を奏功する。
(イ)ラテックスの輸送・貯蔵・保管には神経を使うところであるが、高分子ラテックスを含む基剤と凝集剤をそれぞれ、個別の容器に収容するので、長期間の貯蔵安定性が担保される。
(ロ)それぞれの容器の容量を適宜変えることにより、酪農業者の規模に応じたマーチャンダイジングができる。
(ハ)高分子ラテックスを含む基剤を収容した容器、及び凝集剤を収容した容器自体が、それぞれ、独立した商品としての機能をもつので、酪農業者の要望に応じて、必要なとき、必要な量を、必要な場所へ提供でき、用途の拡大につながる。
本発明の乳頭パック形成用材料に所定の凝集剤を混合すると、簡便な手法により、瞬時に産乳家畜の通常の乳頭及び油脂被膜乳頭に密着したパックが得られ、該パックは長期間乳頭から剥がれることがない。パックは、高分子ラテックス或いは凝集剤の一方を産乳家畜の乳頭に付着させ、次いで他方を付着させることで、高分子ラテックスを構成する分散質粒子の急凝集により生成するため、非常に簡便な手法で得ることができる。パックは、産乳家畜の乳頭を、乳頭パック材料に浸漬させてから、加熱等強制乾燥せずに、自然乾燥により10分以下で造膜する。
これにより、乳頭口付近が完全に密封されるうえ、搾乳牛の乳頭が収縮、膨張を繰り返してもパックがその形状変化に追随でき、乳頭に密着した状態を保つことが出来るため、乳房炎原生菌などの乳頭口への侵入を確実に防止する事が可能となる。
また、本発明の乳頭パック形成用材料は、使用直前の混練操作が不要であり、混練不足による乳頭パックの不均一化や、気泡混入などの問題も解消される。
以下、本発明の産乳家畜用乳頭パック形成用材料を構成する成分について詳細に説明する。
[(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス]
本発明の高分子ラテックスは、高分子からなる粒子を水または有機溶媒に分散させたものである。「ラテックス」は本来、天然ゴムの樹から採取される乳白色の水系エマルジョンにつけられた名称で、通常はラテックスと言えば天然ゴムラテックスを指す(狭義のラテックス)。然しながら、合成ゴムや合成樹脂などのゴム系高分子を分散質とし、種々の有機溶媒又は無機物の水溶液を分散媒としたコロイドゾルもラテックスと呼称されている(広義のラテックス)。乳化重合法を用いて製造した合成ゴムの水分散液を合成ゴムラテックスと呼称して、天然ゴムラテックスと区別することもあり、またゴム以外の樹脂のエマルジョンを樹脂高分子ラテックスと呼称し、ゴムラテックスと区別することもある。然しながら、近年、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス及び樹脂ラテックスの全てを包有する用語として「高分子ラテックス」という用語が使用されている。従って、本発明でも、以下「高分子ラテックス」を広義の意味で使用する(室井宗一:高分子ラテックスの化学、高分子刊行会(1976)参照)。本発明では、ゴム系高分子を分散させる溶媒は、高い安全性及びコストを抑える観点から水が好ましい。
(A)成分に用いるラテックスの種類はフッ素原子及びケイ素原子を含まないものである限り特に制限されないが、パックの強度を高めるため、天然ゴムやイソプレンゴム及びそれらの誘導体の水分散液が好ましい。なお、「誘導体」とは、下記に示すように、ゴム系高分子を互いに共重合させたものやゴム系高分子の表面をカルボキシル基などの反応性機能性官能基に変性させたもの等を指す。天然ゴムあるいはイソプレンゴム及びそれらの誘導体の中でも、予め一部を架橋させたものは更に強度が高くより好ましい。水分散液においては、若干量の有機溶媒は許容され、10質量%以下、好ましくは5質量%以下の有機溶媒は存在しても構わない。上記に挙げた天然ゴムやイソプレンゴム及びそれらの誘導体は伸びが大きくかつ高い強度を有するため家畜乳頭の膨張、収縮に十分に耐えることができる。上記のラテックスは2種以上の混合物であっても良く、互いに共重合していても良い。共重合の形態は、ランダム共重合、交互共重合、周期的共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでも良い。ラテックス粒子中の高分子の構造は、直鎖状、分岐状、デンドリマー状、網目状、環状などいずれでも良い。また、ラテックス粒子の表面をカルボキシル基などの反応性機能性官能基に変性させたものも用いることが出来る。ラテックス粒子を安定化させるために、アンモニア等の各種安定剤やグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸エステル等の界面活性剤が添加されているものも用いることが出来る。また、必要に応じて、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、劣化防止剤(酸化防止剤、オゾン防止剤等)、加工助剤(可塑剤、軟化剤、粘着付与材等)、分散剤、クリーミング剤、泡立て剤、感熱剤(亜鉛アンモニウム錯塩、ポリビニルメチルエーテル等)などを添加したものを用いることも出来る。ラテックス中の固形分濃度は20質量%以上90%質量以下であることが好ましく、30質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。固形分濃度が20質量%を下回る場合、パック形成に時間を要し、またパックの強度が弱くなる傾向にある。一方、固形分濃度が90質量%を上回る場合、材料の粘度が高くなりパックの乳頭への塗布性が低下する傾向にある。
[(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成されるラテックス]
(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成されるラテックスは、撥水・撥油性を有しているため、水及び水溶性の物質と混和せず、水及び水溶性の物質を弾く性質を有する。そのため、上記の成分を含んだパック材から形成されたパックは水及び水溶性の物質を弾く。それ故、乳頭パックは泥や糞尿などが付着しない効果を有する。また、皮膚上の油脂や乳汁により脂ぎった乳頭に対する乳頭パック材の塗布性を向上させる効果を有する。
(B)成分に用いるラテックスは、分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含むものである限り、種類は制限されないが、たとえば、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系ゴム、パーフルオロフッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系フッ素ゴム、ジメチル系シリコ−ンゴム、メチルビニル系シリコーンゴム、メチルフェニルビニル系シリコーンゴム、メチルフロロアルキル系シリコーンゴム、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系ゴム)、パーフルオロフッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系フッ素ゴム、ジメチル系シリコ−ンゴム、メチルビニル系シリコーンゴム、メチルフェニルビニル系シリコーンゴム、4-フッカエチレンープロピレンゴム、4-フッカエチレンーパーフルオロメチルビニルメチルビニルエーテルゴム、熱可塑性シリコーンゴム、熱可塑性フッ素ゴム等の水分散液が例示される。但し、(A)成分である分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成されるラテックス成分との混和性などの観点から、有機ポリシロキサン等のシリコーンゴム、パーフルオロプロペン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素ゴムまたはその誘導体の水分散液が好ましい。
[(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物]
ケイ素系撥水・撥油性化合物は、ケイ素原子を分子中に含むものである限り種類は制限されないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤を用いることが好ましい。
また、フッ素系撥水・撥油性化合物は、用途に応じて低分子量から高分子量まで多種多様な対応が市販されている。低分子量の撥水・撥油性化合物は、パーフルオロアルキル基を含有するアルコールの誘導体であり、(イ)ウレタン化合物(イソシアナートとの反応生成物:イソシアナートとしては、ジフェニルメタンンー4,4'−ジイソシアナート、トリレンジイソシアナート等)、(ロ)エステル型(リン酸、ピロメリット酸との反応生成物)等が代表的なものとして例示される。高分子量タイプの撥水・撥油性化合物としては、パーフルオロアルキル基を含有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、或はパーフルオロアルキル基含有アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルと他のビニ?基含有のモノマーとの共重合体等が例示される。製品形態としては、水分散型と溶液型があるが、安全性等の問題から水分散型が好ましい。
乳頭パック材料中の(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成されるラテックス、または(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物から選択される成分の含有量は、特に制限されないが、乳頭パックに十分な撥水・撥油性を与えつつも乳頭パックの膜強度を十分に保つため、(B)フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成される高分子ラテックスを配合する場合は、該(B)高分子ラテックスの濃度が乳頭パック材料全体に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物から選択される成分を配合する場合も同様に、該(C)成分の濃度が乳頭パック材料全体に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
尚、前述した鉱油系、脂肪酸系、天然油脂系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系或いは金属石鹸系撥水・撥油性化合物は、ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物に比べて撥水・撥油効果に難点がある。従って、(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物と併用することによって、それらの撥水・撥油効果を改良することができる。観点を変えるならば、(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物は、撥水・撥油効果は優れているが、コストが高いという欠点がある。従って、(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物と前述した鉱油系、脂肪酸系、天然油脂系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系或いは金属石鹸系撥水・撥油性化合物と併用することによって、コストを低減化することができるので、好ましい。
[(D)凝集剤]‐総論
本発明における(D)凝集剤は、低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
高分子ラテックスを構成するポリマー微粒子の表面には、たとえば、乳化剤分子の親水基[(-SO3H,-SO3M, -OSO3H, -OSO3M, -COOH, -NR3X, -COOH, -NH2, -CN, -OH, -NHCONH2, -(OCH2CH2)n-, -CH2OCH3, -OCH3, COOCH3, -CS等[Rはアルキル基、Mはアルカリ金属または-NH4, Xはハロゲン)]が結合して、負電荷を帯びている。凝集剤は、高分子ラテックスを構成するポリマー微粒子表面の電荷を中和し、粒子を凝集させる役割を有する。
[(D)凝集剤]‐各論
1.[低分子無機系凝集剤(金属塩)]
本発明の(D)凝集剤の一つは、低分子無機系凝集剤である。低分子無機系凝集剤は、多種多様な金属塩が例示される。凝集剤の中でも、金属塩は、特に、このような負電荷を帯びるラテックス粒子の凝集を効果的に生じさせる。本発明において凝集剤として作用する金属塩は、広義には、酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオンがイオン結合した化合物と定義し、酸と塩基の中和反応、酸と塩基性酸化物との反応、酸と金属単体との反応、塩基と酸性酸化物との反応、塩基と非金属の単体との反応、酸性酸化物と塩基性酸化物との反応、非金属単体と金属との反応によって生成され、ラテックスの分散媒中で電離して金属イオンを生じうる化合物である。本発明において凝集剤として作用する金属塩は、上記作用を有するものである限り特に制限されることなく、既に公知のもの全てが使用でき、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化アルミニウム、塩化チタン、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ジルコニウム、水酸化スズ、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛、フッ化チタン酸カリウム、含鉄硫酸アルミニウム、アンモニウムミョウバン、カリウムミョウバン、塩化鉄―硫酸鉄混合物などが例示される。これらは2種以上の混合物であっても良い。
金属塩による塩析作用による高分子ラテックスからのポリマー粒子の凝集のし易さは、一般に、分散質である粒子の電荷と反対の電荷をもつイオンの原子価数が大きいほど粒子電荷は顕著に中和されるので、高分子ラテックスは凝集しやすい。たとえば、一価の陽イオンの場合の高分子ラテックスの凝集力順位はLi>Na>K>Rb>Csで、同じく、二価の陽イオンの場合の凝集力順位はMg>Ca>Sr>Baである。当然、生体である産乳家畜及び作業者等への毒性、水との反応性等を考慮すると、Mg2+イオンを解離するマグネシウム塩又はCa2+イオンを解離するカルシウム塩が好ましい。
2.[高分子無機系凝集剤]
高分子無機系凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム([Al2(OH)nCl6-n]m)、
ポリ硫酸アルミニウム([Al2(OH)n(SO4)3-n/2]m)、
ポリ塩化鉄(III)([Fe2(OH)nCl6-n]m)、ポリ硫酸鉄(III)([Fe2(OH)n(SO4)3-n/2]m)等が例示される。
3.[高分子有機系凝集剤]
本発明で凝集剤として使用される高分子有機系凝集剤としては、[ノニオン系]として、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素―ホルマリン樹脂等が例示され、[アニオン系]として、ポリアクリル酸ナトリウム(アクリルアミドーアクリル酸ナトリウム共重合物)、ポリアクリルアミド部分加水分解物、スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリアミノアルキル(メタ)アクリレート、ハロゲン化ポリビニルピリジウム、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム脂等が例示され、[カチオン系]として、ポリアミノメチルアクリルアミド、ポリビニルイミダゾリン、キトサン、エポキシアミン系等が例示される。これらは、数万〜数百万の分子量を有し、分子量が大きいほど電荷が大きくなる。
4.[酸]
高分子ラテックスを構成するポリマー微粒子を凝集させる凝集剤としての酸は、その種類は特段に限定されないが、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、プロピオン酸、酪酸、硫酸等が例示される。これらの酸は、金属との塩でもよい。これらの酸が解離するイオンが高分子ラテックスを凝集する能力の順位、いわゆる凝集力順位は、クエン酸イオン>酒石酸イオン>硫酸イオン>酢酸イオン>Cl-Br->NO3- ->ClO3 ->I->SCN-等である。本発明において高分子ラテックスを凝集させる凝集剤としての酸又はその塩を選択するに当たっては、この凝集力順位を参考に、産乳家畜及び作業者等生体等への安全性、使い勝手の良さ等を勘案してなされるべきである。なお、これらの酸又はその塩は、それぞれ単独でも、2種以上の混合物でも良く、また、一種又は2種以上の上述した凝集剤と併用しても良い。
[保存形態]
(D)凝集剤を用いる場合、少なくとも、(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス成分、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス成分または(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物から選択された成分、及び(D)凝集剤を含む混合物に、乳頭を浸漬させて乳頭パックを形成することができるが、操作時間に余裕を持たせるために、(i)少なくとも(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス成分、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス成分、または(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物から選択される成分を含む基剤と、(ii)(D)凝集剤を、それぞれ分離して保存する形態が好ましい。
[水及び/または水溶性溶媒]
本発明では、高分子ラテックスを構成する分散質としてのポリマー微粒子を凝集させる凝集剤として、(D)低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択された凝集剤を使用するものである。市販の高分子ラテックスを基剤として使用する場合、分散媒として配合されている水の量では、(D)凝集剤が完全に溶解しない場合がある。特に、凝集剤として、金属塩、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、或は固体の酸を使用する場合、この傾向がある。その場合、凝集剤側に、更に水及び/又は水溶性溶媒を添加することが好ましい。水溶性溶媒の種類は、(D)凝集剤を完全に溶解させ、人体又は産乳家畜に著しく有害なものでない限りは特に制限されることなく、既に公知のもの全てが使用できる。その中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール等が好ましい。水及び/又は水溶性溶媒の配合量は、特に制限されないが、(D)凝集剤100質量部に対して、水及び/又は水溶性溶媒の添加量は150質量部以上4000質量部以下が好ましく、200質量部以上3000質量部以下がより好ましい。水及び/又は水溶性溶媒の添加量が(D)凝集剤100質量部に対して、4000質量部を超える場合、ラテックスの凝集が瞬時に起こらない可能性がある。一方で、水及び/又は水溶性溶媒の配合量が(B)凝集剤100質量部に対して、150質量部に満たない場合には、(D)凝集剤が十分に水及び/又は水溶性溶媒に溶解しない場合がある。以上、(D)凝集剤を完全に溶解させるという機能から、水及び/又は水溶性溶媒の配合を説明した。然しながら、極性溶媒の添加が、高分子ラテックスを構成する分散質としてのポリマー微粒子を凝集させる凝集剤として機能することがある。この機能に目を向けると、ポリマー微粒子の荷電がアニオン性の場合、ラテックスの質量に対して、水溶性溶媒を約0.5〜40%の範囲で添加すると、ラテックスからポリマー微粒子が凝集し、(B)凝集剤との相乗効果が期待できる。
[添加剤-総論]
本発明の産乳家畜用乳頭パック形成用材料には、以上に説明した主成分としての各成分以外にも、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、殺菌消毒剤、充填剤、増粘剤、着色剤、香料、防腐剤等の他に、可塑剤、安定剤、架橋剤(加硫剤及び加硫促進剤)、ゴム用石油系軟化剤等プラスチック或はゴムの加工で常用されている各種添加剤(材)を適宜選択して配合することができる。以下、主要な添加剤に関して各論を述べる。
[添加剤-各論]
[殺菌消毒剤]
パック材料に殺菌消毒効果を持たせ、乳頭口付近の細菌数増加を抑えるために、殺菌消毒剤を用いても良い。殺菌消毒剤は、乳房炎などの病気を引き起こす各種の細菌、真菌、ウイルス等の広範囲の有害な微生物を死滅させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ヨウ素化合物、銀、銅、亜鉛、チタン、鉄などの金属及び金属塩、茶葉粉末、ヒノキ粉末、キトサン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カプリル酸モノグリセリドなどの脂肪酸エステルとトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、レゾルシン、トリクロロカルバニド、ハロカルバン、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素等を例示することができる。殺菌消毒剤は、基剤及び凝集剤の両方またはいずれかに添加しても良い。
これらの中でも、ヒトあるいは産乳家畜に対する皮膚刺激性や、殺菌消毒効果の持続性、及びコスト面における観点から、ヨウ素化合物及び銀が好適である。ヨウ素化合物としては、例えばヨウ素、ポピドンヨウ素、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨードホルムなどが挙げられる。
殺菌消毒剤の配合量は特に制限されないが、通常基剤または凝集剤中に0.1〜10質量%の範囲で含まれているのが好ましい。
[充填剤]
パックの物性、主として補強効果、増粘効果等を調整するために充填剤を用いても良い。充填剤は、基剤及び凝集液の両方またはいずれかに添加しても良い。充填剤としては、シリカ、アルミナ等の金属または半金属の酸化物、フッ化チタンカリウム、ケイフッ化カリウム等の無機フッ素化合物、シリコーン樹脂の粒子等を用いることが好ましい。充填剤の配合量は特に制限されないが、通常基剤または凝集剤中に0.5〜30質量%の範囲で含まれているのが好ましい。
[増粘剤]
また、基剤及び/または凝集剤(液)の粘度を調整し、乳頭への基剤及び/または凝集剤(液)の歩留まりを改善するために、増粘剤を用いても良い。増粘剤は、下記に示す無機増粘剤、合成の石油をベースとする増粘剤のいずれかあるいは組み合わせて用いても良い。
無機増粘剤は、概して、コロイドケイ酸マグネシウムアルミニウム、コロイド粘土のような化合物であり、これらはヒューム処理するか、あるいは沈澱させて、大きい表面−サイズ比を有する粒子にされたものである。
高分子ラテックへの増粘剤としては、通常、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、或はエチレンイミンのような水溶性ポリマーが例示される。
[着色剤]
パックを着色し、パックの視認性を高めるために、着色剤を用いても良い。着色剤の種類は特に制限されないが、白色顔料として、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が好ましい例として挙げることができる。また、乳頭の色と補色関係にある着色剤を使用すると、パックに亀裂が発生した場合視認し易くなる。このような着色剤としては、黒色顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック等が、黄色染顔料として、酸化鉄イエローが、赤色染顔料として弁柄、アリザリンレッド等が例示される。着色剤を使用した場合、着色剤の添加量(%)によっては、分子の配向した方向により収縮差(収縮比=流れ方向収縮率/直角方向収縮率)が発生し、成形品のねじれや歪みの原因になることがあるので、その点に留意して着色剤の添加量(%)を決定しなければならない。この観点から、酸化チタン(白色顔料)、カドミニウムイエロー(黄色)、カーボンブラック(黒色顔料)等は、収縮比=流れ方向収縮率/直角方向収縮率が、無添加の場合と殆ど変化しないので、好ましい。収縮比の観点から、着色剤の添加量は約0.5質量%以下が好ましい。
[産乳家畜用乳頭パック形成用キット]
本発明の産乳家畜用乳頭パック形成用材料を使用して、畜舎、牧場等を問わず、必要な場所で、必要な時に、簡便且つ迅速に、産乳家畜の乳頭へ乳頭パックを形成するには、乳頭パック形成用材料と、乳頭パック形成用材料の主要必須成分である高分子ラテックスを凝集して造膜する凝集剤を、それぞれ、分離して、絶えず一緒に保管しておくことが必要である。そのための産乳家畜用乳頭パック形成用キットは下記の態様によって製造することがきる。
1.(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスを容器(1)に入れて保管し、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックスを前記容器(1)又は別の容器(2)に入れて保管し、他方、(D)凝集剤を前記容器(1)及び(2)とは別の容器(3)に保管する。即ち、キットは、2個の容器(1+3)又は3個の容器(1+2+3)から構成される。
2.(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスを容器(1)に入れて保管し、(C)ケイ素系及び/またはフッ素系撥水・撥油性化合物を前記容器(1)又は別の容器(2)に入れて保管し、他方、(D)凝集剤を前記容器(1)及び(2)とは別の容器(3)に入れて保管する。即ち、キットは、2個の容器(1+3)又は3個の容器(1+2+3)から構成される。
3.(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックスを容器(1)に入れて保管し、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックスを容器(2)に入れて保管し、(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物を容器(3)に入れて保管し、(D)凝集剤を容器(4)、即ち、それぞれ、別の容器に保管する。即ち、キットは、4個の容器(1+2+3+4)から構成される。
このようなキットにすることにより、下記に例示する効果を奏功する。
(イ)ラテックスの輸送・貯蔵・保管には神経を使うところであるが、高分子ラテックスを含む基剤と凝集剤をそれぞれ、個別の容器に収容するので、長期間の貯蔵安定性が担保される。
(ロ)それぞれの容器の容量を適宜変えることにより、酪農業者の規模に応じたマーチャンダイジングができる。
(ハ)高分子ラテックスを含む基剤を収容した容器、及び凝集剤を収容した容器自体が、それぞれ、独立した商品としての機能をもつので、酪農業者の要望に応じて、必要なとき、必要な量を、必要な場所へ提供でき、用途の拡大につながる。
(ニ)ユーザー、たとえば、酪農業者等の規模、飼育頭数、スタッフの能力、高分子ラテックスの保守管理能力等諸条件に応じて、キットを選択することができる。
本発明の産乳家畜用乳頭パック形成用キットは、先ず、所定の容器に、水及び/または水溶性溶媒を加え、次いで、(D)凝集剤を添加して溶解し、均一な凝集剤溶液とすることが好ましい。均一な凝集剤溶液液を使用することで、パックの組成の均一性が良くなり、密着性を更に向上させることができる。水及び/または水溶性溶媒の配合量は、特に制限されないが、(D)凝集剤100質量部に対して、水及び/または水溶性溶媒の配合量は150質量部以上4000質量部以下が好ましく、200質量部以上3000質量部以下がより好ましい。水及び/または水溶性溶媒の配合量が、(D)凝集剤100質量部に対して、4000質量部を超える場合、高分子ラテックスの凝集が瞬時に起こらないことがある。一方、水及び/または水溶性溶媒の配合量が、(D)凝集剤100質量部に対して、150質量部に満たない場合には、(D)低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤が十分に水及び/または水溶性溶媒に溶解しない場合がある。
[調製方法及び使用方法]
1.[(A)基剤及び(D)凝集剤の調製方法―1]
主として(A)高分子ラテックスを含む基剤や、(D)凝集剤等を水及び/または水溶性溶媒に溶解させた場合の凝集剤液の調製方法は、特に制限されるものではないが、公知の攪拌混合機を用いて調製することが出来る。ここで、攪拌混合機としては、例えばボールミルのような回転容器型混合混錬機、リボンミキサー、コニーダー、インターナルミキサー、スクリューニーダー、ヘンシェルミキサー、万能ミキサー、レーディゲミキサー、バタフライミキサー、などの水平軸または垂直軸を有する固定容器型の混合混錬機を利用することが出来る。なお、凝集液剤の調製に関して(D)凝集剤等が水及び/または水溶性溶媒に対して相対的に溶解性の高い場合は、溶解対象となる成分や、この成分が溶解した溶液に強いせん断力が加わらない攪拌装置を利用することもできる。このような攪拌装置としては、各種攪拌翼を備えた可搬型攪拌機、同堅型攪拌機、同側面攪拌機、管路攪拌機等を用いることが出来る。更に、上記の基剤や凝集液(剤)の調製に関しては、上述した各種の混合攪拌機を2種類以上組み合わせて利用することもできる。
2.[パックの形成方法]
本発明による産乳家畜用乳頭パックは、(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成された高分子ラテックス、(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成された高分子ラテックス、または(C)ケイ素系及び/又はフッ素系撥水・撥油性化合物から選択された成分を含むパック材料に乳頭を付着させることにより形成される。本発明の産乳家畜用乳頭パック材料を乳頭に付着させる場合には、乳房炎を効果的に予防する観点から、乳頭の乳管部分を含む乳頭全体の10%以上の領域、好ましくは20%以上付着させるとよい。乳頭に乳頭パック材料を付着させた後は、溶液の蒸発や凝集剤の働きにより、高分子ラテックスの分散質である高分子の微粒子が凝集し、乳頭表面に膜が形成される(造膜される)。乳頭パック材料により乳頭表面に形成される膜の厚みについては、特に制限されないが、通常10μm〜2000μm程度、好ましくは50μm〜200μmである。このように形成された膜により、乳房炎を効果的に予防することが可能となる。基材と凝集剤を別々に保管している場合は、一方を乳頭に付着させた後、他方を乳頭に付着させたてパックを形成することになるが、基材を乳頭に付着させた後、直ちに凝集剤を乳頭に付着させるのが好ましい。
乳頭を基剤及び凝集剤で被覆する方法(付着方法)としては、浸漬法、はけ塗り法、噴霧法などが挙げられるが、特に制限されない。好ましくは浸漬法である。
浸漬法を用いる場合の基剤及び凝集剤の粘度は、各溶液中に乳頭が容易に浸漬するように適宜選択すれば良い。
浸漬法を用いる場合の基剤及び凝集剤の粘度は、23℃でコーンプレート型粘度計により測定した値で、1〜300dPa・sの範囲にあるのが好ましい。
なお、噴霧法を用いる場合の基剤及び凝集剤の粘度は、噴霧のし易さから1〜100dPa・sの範囲にあるのが好ましい。
浸漬法を用いる場合、例えば産乳家畜の乳頭を収容可能な筒状又はカップ状の容器に乳頭パック材料(基剤と凝集剤に分けて保存する場合は、基剤と凝集剤各々)を入れる。続いて、容器を乳頭の付け根方向に移動させ(引き上げ)、容器中の溶液に乳頭を浸漬した後、容器を乳頭先端方向に移動させる(引き下げる)操作を行う(基剤と凝集剤に分けて保存する場合は、基剤と凝集剤各々について操作を行う)。浸漬は、乳頭長を100%として、長さ基準で、乳頭の10%以上、好ましくは20%以上が乳頭パック材料(基剤と凝集剤に分けて保存する場合は、基剤と凝集剤各々)に浸されるように行えば良い。乳頭の浸漬時間は、基剤、凝集剤それぞれについて乳頭に十分に付着させるため2秒以上が好ましい。
容器は清潔なものである限り、その材質は制限されず、金属、セラミック、プラスチック、紙などいずれでも使用できる。また、容器は基剤及び凝集液の無駄を少なくするために、基剤または凝集剤を乳頭に付着させるために必要な最低限の内容積を有していればよい。円筒状又はカップ状容器の場合、内径が約4cm〜約8cmで、高さが約2cm〜約10cmのものを使用することが出来る。容器の内側に、適量の基剤又は凝集剤を入れることができるようにした目印を備えていると便利である。
基剤及び凝集剤を乳頭に均一に付着させるために、浸漬後に容器を乳頭先端方向に移動させる速度(引き下げる速度)は10〜100mm/秒とするのが好ましく、20〜50mm/秒とするのがより好ましい。
パック材料(基剤と凝集剤に分けて保存する場合は、基剤と凝集剤各々)を乳頭に均一に付着させるために、浸漬後に容器を乳頭先端方向に移動させる速度(引き下げる速度)は10〜100mm/秒とするのが好ましく、20〜50mm/秒とするのがより好ましい。
基剤と凝集剤に分けて保存する場合は、基剤または凝集剤が乳頭に十分付着した状態で、他方を乳頭に付着させてパックを形成させるために、2つの材料を、間隔を置かずに乳頭に付着させるのが好ましい。
基剤と凝集剤に分けて保存する場合は、基剤と凝集剤の乳頭への付着量の比(基剤/凝集剤 [質量部/質量部])は特に制限されるものではないが、通常は0.5〜2の範囲内であることが好ましい。
3.[家畜用乳頭パック]
本発明の乳用家畜用パックは、上記(2)のようにして、乳用家畜の乳頭に形成されることを特徴とする。乳用家畜用パックは、乳用家畜の乳頭の保護に用いることができる。具体的には、伝染性乳房炎からの保護、環境性乳房炎からの保護、汚れその他の外的環境因子からの保護のために用いることができる。本発明において、産乳家畜とは、特に搾乳用家畜であり、例えば乳牛、山羊、その他搾乳が行われる家畜である。
以下、実施例1〜実施例35、及び実施例の効果などを検証するための比較例1〜比較例7を挙げて、本発明による家畜の乳頭保護方法を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1〜実施例35、及び比較例1〜比較例7において乳頭パック生成に用いた原料の略号及び「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価方法は以下の通りである。
なお、以下の説明において、実施例1〜実施例29は、いずれも参考例と読み替えるものとする。
[原料−1]
[(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成されるラテックス](表中では「ラテックス成分」と表記する)。
分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物から構成されるラテックス成分例の一般名(英語表記略語)及び各性状は下記の通りである。なお、分散媒は水である。
△天然ゴムラテックス(NR):株式会社レヂテックス製 ULACOL、固形分濃度62%、粘度50mPa・s、最低造膜温度10℃
△イソプレンゴムラテックス(IR):日本ゼオン株式会社製 Nipol ME、固形分濃度50%、粘度50mPa・s、最低造膜温度10℃
△ブチルゴムラテックス(BUR)、JSR株式会社製、JSR BUTYL065、固形分濃度50%、粘度32mPa・s、最低造膜温度10℃
△ブタジエンゴムラテックス(BR)、JSR株式会社製、JSR BR01、固形分濃度50%、粘度45mPa・s、最低造膜温度10℃
△スチレンブタジエンラテックス(SB)、JSR株式会社製、JSR SL552、固形分濃度50%、スチレンとブタジエンの重合比1:4、粘度55mPa・s、最低造膜温度5℃
△ウレタンゴムラテックス(UR)、第一工業製薬株式会社製 スーパーフレックス460、固形分濃度40%、粘度50mPa・s、最低造膜温度5℃
△ニトリルゴムラテックス(NIR)、JSR株式会社製、JSR N222SH、固形分濃度50%、粘度85mPa・s、最低造膜温度5℃
△ニトリルブタジエンラテックス(NBR)、日本ゼオン株式会社製、Nipol 1561、固形分濃度40%、粘度25mPa・s、最低造膜温度5℃
△クロロプレンゴムラテックス(CR)、株式会社レヂテックス製 CR−6500、固形分濃度50%、粘度100mPa・s、最低造膜温度10℃
△アクリルゴムラテックス(ACR):日信化学工業株式会社製 2580、固形分濃度45%、粘度50mPa・s、最低造膜温度10℃
△酢酸ビニルゴムラテックス(VA):日信化学工業株式会社製 A23J1−F2、固形分濃度45%、粘度2000mPa・s、最低造膜温度15℃
△エチレン酢酸ビニルゴムラテックス(EVA):日信化学工業株式会社製 4018、固形分濃度61%、エチレンと酢酸ビニルの重合比1:1、粘度300mPa・s、最低造膜温度10℃
[原料―2]
[(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成されるラテックス](表中では、「ケイ素・フッ素化合物」と表記する)。
一般名(英語表記略語)及び各性状を以下に示す。なお、分散媒は水である。
△シリコーンゴムラテックス(SIR):信越化学工業株式会社製 KM−860A、固形分濃度60%、粘度350mPa・s、最低造膜温度−15℃
△フッ素ゴムラテックス(FR):ダイキン工業株式会社製 E−3705S21R、固形分濃度50%、粘度300mPa・s、最低造膜温度10℃
[原料―3]
[(C)ケイ素/フッ素系撥水・撥油性化合物] (表中では、「ケイ素・フッ素化合物」と表記する)
△メチルトリエトキシシラン(MTES):和光純薬工業株式会社製
△パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(PFES):和光純薬工業株式会社製
[原料―4]
[(D)凝集剤]の一般名と略号
△多価金属化合物(表中では「MX」と表記する):塩化カルシウム:CC 和光純薬工業株式会社製
△有機酸:乳酸:LA 和光純薬工業株式会社製
[その他の成分]
[溶媒]
△水:WA
△エタノール:ET 和光純薬工業株式会社製
△アルギン酸カリウム(Alg-K)[20℃、1%水溶液;粘度=300mPa・sec] 株式会社キミカ製
△アルギン酸ナトリウム(Alg-Na)[20℃、1%水溶液;粘度=300mPa・sec] 株式会社キミカ製
△硫酸カルシウム:硫酸カルシウム2水和物 和光純薬工業株式会社製
△乳頭パック材料調製用高分子化合物の有機溶媒溶液:表4
a:溶質ポリウレタンゴム12質量部を、88質量部の溶媒テトラヒドロフランに溶解したもの。
b:溶質酢酸ビニル12質量部を、88質量部の溶媒キシレンに溶解したもの 。
c:溶質ブチルゴム9質量部を、91質量部の溶媒トルエンに溶解したもの。
d:溶質ブタジエンゴム9質量部を、91質量部の溶媒トルエンに溶解したも の。
[評価方法]
1.[密着性の評価方法]
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした中空型の中に、歯科用シリコーン印象材[((株)トクヤマデンタル製 「ソフリライナータフ スーパーソフト」(商品名)但し「ソフリライナータフ」は(株)トクヤマの登録商標である)]を入れ、印象材が硬化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
実施例1〜実施例19おいては、基材をカップ(内径6cmφ、長さ4cmの筒状容器)の中に満たした。次に、上記疑似乳頭の上端を持ち、カップに満たされた基材に疑似乳頭先端の長さ20%分を差し込み、直ちに引き抜くことで疑似乳頭先端に基材を付着させた。その後しばらく(10分程度)自然乾燥させた後で、疑似乳頭周辺にパックを形成した。
実施例20〜実施例25においては、基材及び凝集剤をカップ(内径6cmφ、長さ4cmの筒状容器)の中に満たした。次に、上記疑似乳頭の上端を持ち、カップに満たされた基材に疑似乳頭先端の長さ20%分を差し込み、直ちに引き抜くことで疑似乳頭先端に基材を付着させた。続いて、カップに満たされた凝集液に疑似乳頭先端の長さ50%分を差し込み、直ちに引き抜くことでパックを形成した。
比較例1においては、基材をカップ(内径6cmφ、長さ4cmの筒状容器)の中に満たした。次に、上記疑似乳頭の上端を持ち、カップに満たされた基材に疑似乳頭先端の長さ20%分を差し込み、直ちに引き抜くことで疑似乳頭先端に基材を付着させた。その後しばらく(10分程度)自然乾燥させる事で、疑似乳頭周辺にパックを形成した。
比較例2〜比較例5においては、各乳頭パック材料調製用高分子化合物の有機溶媒溶液a〜dを40gそれぞれカップ(内径6cmφ、長さ4cmの筒状容器)の中に満たした。次に、上記疑似乳頭の上端を持ち、カップに満たされた溶液に疑似乳頭先端の長さ20%分を差し込み、直ちに引き抜いて疑似乳頭先端に溶液を塗布しそのまま放置し乾燥させ疑似乳頭周辺にパックを形成した。
比較例6及び比較例7においては、粉成分と液成分の重量比が1:15となるように混練用カップの中に秤量し、混練用ヘラを用いて均一なペーストとなるまで混練し、得られたペーストをカップの中に満たした。次に、疑似乳頭の上端を持ち、カップに満たされたペーストに接触させた状態から、ゆっくり力を加えていき、乳頭すべてが隠れるまで差し込み、直ちに引き抜き、10分程度放置してペーストを硬化させた。
上述した方法にて形成させたパック(疑似乳頭先端に生成させたパック)を、疑似乳頭の乳頭側を下方にぶら下げた状態で23℃、相対湿度50%の条件下に放置し、経時的に乳頭パックの状態を目視観察し、下記評価基準により評価した。
○:乳頭パックが疑似乳頭に完全に密着しており、乳頭パックと疑似乳頭との間に隙間が認められない。
△:乳頭パックの周辺部には隙間が認められるが、疑似乳頭口付近は密着している(乳頭パックが下方に移動している)。
×:乳頭パックが疑似乳頭から脱落した状態。
2.[耐久性の評価方法]
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした型の中に、歯科用シリコーン印象材 [(株)トクヤマデンタル製 「ソフリライナータフ スーパーソフト」(商品名)但し「ソフリライナータフ」は(株)トクヤマの登録商標である)]を入れ、印象材が硬化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
パックを温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で1時間、1日間、2日間、3日間、4日間それぞれ放置した。その各々のパックに対して下記に示す耐久試験を実施した。実際のパック使用現場、即ち放牧場を想定し、耐久試験において、パックを衝突させる面は土とした。
疑似乳頭の中心軸方向から荷重が加わるように、疲労試験機(インストロン社製、E3000)にセットし、1〜5kgf/cm2の荷重を加えた。なお、3kgf/cm2を荷重の中央値とし、振幅を2kgf/cm2とした。また、周波数を1Hz、サイクル数を100とした。
耐久試験を実施した後、パックの状態を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて「耐久性」を評価した。なお、3日後までに×の評価となった場合には、それ以降の試験は実施しなかった。表には、―(評価なし)と記している。
耐久性 評価基準:
○:パックの破損や浮き上がりは認められない。
△:パックが一部破損しているものの、乳頭口付近は被覆されている。
×:全体が破損、あるいは剥離している。
3.[耐摩耗性の評価方法]
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした型の中に、歯科用シリコーン印象材[(株)トクヤマデンタル製 「ソフリライナータフ スーパーソフト」(商品名)但し「ソフリライナータフ」は(株)トクヤマの登録商標である)]を入れ、印象材が硬化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
「密着性」の評価の場合と同様に、疑似乳頭周辺にパックを形成させた。続いて、パックを温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で1時間、1日間、2日間、3日間、4日間それぞれ放置した。その各々のパックに対して下記に示す摩耗試験を実施した。
疑似乳頭を、乳頭口を上にして治具で動かないように固定してから秤に乗せ、ブラシ(毛の長さ25mm、毛の材質:ナイロン製)により乳頭口付近を水平方向に50往復こすった。その際、振幅は約5cm、荷重は約1kgfとした。摩耗試験を実施した後、パックの状態を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて「耐摩耗性」を評価した。なお、3日後までに×の評価となった場合には、それ以降の試験は実施しなかった。表には、―(評価なし)と記している。
耐摩耗性 評価基準
○:乳頭口付近の露出は認められない。
△:乳頭口の一部が露出している。
×:乳頭口が完全に露出している。
4.[パック汚れ度合いの評価方法]
(2)で耐久試験した後のパックの汚れ度合いを下記評価基準に基づいて目視にて評価した。
パック汚れ度合い 評価基準
○:汚れは殆どない。
△:若干の汚れが見られる。
×:大いに汚れ、土に接触していた部分が茶色くなっている。
5.[細菌数の評価方法]
上記(2)「耐久性」の評価でパック装着4日後に耐久試験した後のパックを内部に汚れが付かないように慎重に剥がした。パックを装着していた乳頭口に当たる部分約1cm2を綿棒([Pro・media ST-25]、エルメックス社製;菌検査キットの登録商標名)によりふき取り、10mLの生理食塩水に綿棒を浸漬させた。その内の1mLを培地(好気性金用培地、6400AC、3M社製)に滴下し、37℃で48時間培養した。1個の細菌が1個のコロニーを形成すると仮定し、コロニー数から細菌数を算出した(コロニー数×10=細菌数)。求めた細菌数を以下の基準に従い評価した。一般的には、1000個/cm2未満であれば清潔に保たれていると判断できる。
なお、外部の細菌数(土の中にいる細菌数)はばらつきがあるものの概ね10000個/cm2以上である。
○:1000個/cm2未満:細菌数が少なく、パック内部が清潔に保たれている。
△:1000個/cm2以上10000個/cm2未満:細菌数はやや多めだが、外部の細菌数よりは少ない。
×:10000個/cm2以上:細菌数が多くなっており、パックによる細菌数低減効果が確認できない。
6.[パック外し易さの評価方法]
上記の(1)と同様にしてパックを形成し、疑似乳頭の乳頭側を下方にぶら下げた状態で23℃、相対湿度50%の条件下で1日放置した。疑似乳頭全体を綿製の布(20cm四方)で強くふき取った時に、そのパックをきれいに外すことが出来るか評価した。
○:1回できれいにパックを剥がすことが出来る。
△:1回ではパックを剥がせないが、2〜3回拭き取れば剥がすことが出来る。
×:2〜3回ふき取ってもパックを剥がすことが出来ない。
[実施例1]
基材を40g容器に量りとった。基材を用いて、パックを形成し、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[実施例2〜実施例19]
基材の組成を表1〜表2に示すものにした以外は、実施例1と同様にしてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[実施例20]
基材を40g容器に量りとった。凝集剤40gを容器に量り取った。基材及び凝集剤を用いて、パックを形成させ「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[実施例21]
基材及び凝集剤の組成を表2に示すものにした以外は、実施例20と同様にしてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[実施例22]
基材を40g容器に量りとった。水500gに乳酸100gを添加し、30分間撹拌羽根にて撹拌し、均一な凝集剤を得た。そのうち、40gの凝集剤を容器に量り取った。基材及び凝集剤を用いて、パックを形成させ「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[実施例23〜実施例25]
基材及び凝集剤の組成を表2に示すものにした以外は、実施例22と同様にしてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[比較例1]
表3に示したように、天然ゴムラテックスを40g容器に量りとり基材とした。これは、実施例1の組成からシリコーンゴムラテックス(SIR)を除いた組成、即ち、天然ゴムラテックス(NR)のみを使用した例である。この基材を用いてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[比較例2〜比較例5]
表4に示したように、乳頭パック材料調製用高分子化合物の有機溶媒溶液をそのまま基材として用いた。基材を用いてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[比較例6]
表5に示したようにアルギン酸ナトリウム20.0g、硫酸カルシウム20.0gをそれぞれ小型ミキサー(イワタニ社製 フードミキサー)に投入し5分間撹拌し、均一な粉成分を得た。また液成分として蒸留水600gを用意した。粉成分及び液成分を用いてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
[比較例7]
粉成分の組成を表5に示すものにした以外は、比較例6と同様にしてパックを形成させ、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価を行った。
実施例1〜実施例25および比較例1〜7の家畜用乳頭パック材料の組成を表1〜表5に示した。また、実施例1〜25及び比較例1〜7における、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パック汚れ度合い」、「細菌数」、及び「パック外し易さ」の評価結果を表6〜表8に示す。
Figure 0006796246
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[考察]
実施例1〜実施例25は、本発明の要件全てを満足するように調整した産乳家畜用乳頭パック形成用材料である。表6及び表7に示したように、いずれの場合においても、密着性、耐久性、耐摩耗性が高い被膜が得られた。耐久試験によるパックの汚れは殆どなく、清潔な状態を保つことが出来た。細菌数は十分に少なく、パックは外し易かった。また、凝集剤を使用した実施例20〜25では、凝集剤を使用しなかった実施例1〜19に比べて、15分後の耐久性、耐摩耗性が高かった。この対照試験により、実施例20〜25では凝集剤を使用したことにより、パックが瞬時に形成したことを実証している。
比較例1は、本発明の必須の構成要素である(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物から構成されるラテックス、または(C)ケイ素及び/またはフッ素系撥水・撥油性化合物から選択される成分を使用しなかった例である。表8から明らかなように、「耐久性」及び「耐摩耗性」は、それほど問題はなかった。然しながら、「密着性」は実施例の結果に比べ劣り、試験開始3日後には、疑似乳頭パックは乳頭口付近には密着しているものの、パックの周辺部に隙間が視認された。「パックの汚れ度合い」に関しては、(C)撥水剤を使用していないため、耐久試験によりパックが大きく汚れる結果となった。この対照試験により、(C)ケイ素系及び/またはフッ素系撥水・撥油性化合物の使用が、パックの防汚効果に大きく寄与していることが実証された。「細菌数」は1000個/cm2以下であった。また、「パックの外し易さ」に関しては、所定の布で1回の拭き取りで容易に外すことができた。
比較例2〜比較例5は、特許文献3に倣い、乳頭パック材料調製用高分子化合物の有機溶媒溶液をそのまま基材として用いた例である。表8から明らかなように、「密着性」は実施例の結果に比べ劣り、比較例2〜比較例5の全てにおいて、試験開始3日後には、疑似乳頭パックは乳頭口付近には密着しているものの、パックの周辺部に隙間が視認された。「耐久性」に関しては、試験開始1時間〜1日後には、パックが一部破損しているものの、乳頭口付近は被覆されている状態が視認され、さらに2日後には、パック全体が破損或いは剥離している状態が視認された。「耐摩耗性」に関しては、試験開始15分〜1時間後には、パック破損し、乳頭口が完全に露出している状態が視認された。「パックの汚れ度合い」に関しては、(C)撥水剤を使用していないため、耐久試験によりパックが大きく汚れる結果となった。この対照試験により、(C)ケイ素系及び/またはフッ素系撥水・撥油性化合物の使用が、パックの防汚効果に大きく寄与していることが実証された。「細菌数」は10000個/cm2超であった。また、「パックの外し易さ」に関しては、所定の布で2〜3回拭き取らなければ外せなかった。
比較例6及び比較例7は、特許文献4に倣い、アルギン酸塩を用いた組成物を塗布した場合である。混錬時に気泡が多く混入し、また混錬物の粘度が均一でない為、1日未満でひび割れるなどし、パックの密着性、耐久性、耐摩耗性が著しく低いことが分かった。撥水剤をパック材中に添加していないため、耐久試験によりパックが大きく汚れる結果となった。またパックは布ですくだけでは外せなかった。即ち、「密着性」、「耐久性」、「耐摩耗性」、「パックの汚れ度合い」、「細菌数」及び「パックの外し易さ」の全ての試験の結果、産乳家畜用乳頭パック形成用材料としては、満足すべきものでないことが実証された。

Claims (2)

  1. 産乳家畜の乳頭を被覆・保護する乳頭パックを形成するための産乳家畜用乳頭パック形成用キットであって、
    (i)所定の容器に収容された(A)分子内にフッ素原子及びケイ素原子を含まない高分子化合物を分散質とし、水を分散媒とした高分子ラテックス;
    (ii)前記所定の容器と同じか又は異なる容器に収容された(B)分子内にフッ素原子及び/又はケイ素原子を含む高分子化合物を分散質とし、水を分散媒とした高分子ラテックス;及び
    (iii)前記(i)及び(ii)が収容された容器とは異なる容器に収容された(D)凝集剤の組み合わせからなる産乳家畜用乳頭パック形成用キット。
  2. 前記凝集剤(D)は、低分子無機系凝集剤、高分子無機系凝集剤、高分子有機系凝集剤、酸、及びそれらの混合物から成る群から選択された請求項に記載した産乳家畜用乳頭パック形成用キット。
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