JP6433826B2 - 家畜用乳頭パック材料、及び乳用家畜の乳房炎予防方法 - Google Patents

家畜用乳頭パック材料、及び乳用家畜の乳房炎予防方法 Download PDF

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Description

本発明は、家畜用乳頭パック材料に関する。さらに、乳用家畜の乳房炎予防方法に関する。
乳牛の重大な疾病の一つに乳房炎がある。乳房炎は、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入し、定着・増殖することによって起こる感染病であるが、その発生機序が複雑であるので、いまだに根絶できず、酪農界に重大な経済的損失を与え続けている疾病である。乳房炎には種々のタイプや症状があるが、乳房の発赤、疼痛、膨張、発熱或いは乳汁中への乳魂の出現等、いわゆる臨床症状をともなった乳房炎の発見は容易であり、抗生剤治療の普及につれて世界的にも減少傾向にある。しかし、これらの臨床症状を示さないが乳汁を検査すると体細胞数の増加等の異常が発見される、いわゆる潜在性乳房炎については、産乳量や乳質の低下等多大な経済的損失を及ぼしているにも係わらず、その防除は遅々として進んでいない。
このような乳房炎を防除するために、現在世界的に推奨されているのは「5ポイント」と呼ばれる下記のような重点対策である。
(1)ミルカーの点検整備を含めた搾乳施設等の衛生対策、
(2)乳頭の消毒、
(3)臨床型乳房炎の治療、
(4)乾乳期治療(dry cow therapy,DCT)
(5)問題牛の淘汰(以上、非特許文献1,2,3)
上記に挙げられた対策の中でも、乳牛の乳頭消毒は、乳房炎防除の最も重要な予防対策の一つであり、英国のDoddらが1952年に乳頭消毒剤を開発、実施し、日本では昭和40年頃より乳質改善事業の一環として使用が実施されるようになり、今日では40%の普及率となっている。
現在一般に実施されている乳頭消毒は、搾乳後に乳頭をディッピング剤(殺菌消毒剤水溶液)に浸漬する方法(所謂ポストディッピング)であり、乳頭皮膚表面に付着する乳房炎起因菌を殺菌消毒し、さらに保湿剤によりひび割れ等の乳頭皮膚の状態を改善し、乳頭表面の細菌の増殖を抑制することにより、乳房炎を予防することにあり、これまで、様々なポストディッピング剤が提案(たとえば特許文献1、特許文献2)されており、市場では多数の製品が市販されている。
しかしながら、米国のthe National Institute for Research in Dairyingにより実施された試験において、ポストディッピング実施乳牛群の12カ月間での新たな感染は50%減少したものの、それは既に感染していた乳房の全体からみると僅か14%の減少でしかなかった。このことから、既存菌による亜臨床型感染が持続したことが伺えたと報告している。即ち、このポストディッピングは、伝播性の乳房炎起因菌による新たな感染の率は減少させるものの、いわゆる環境性乳房炎の起因菌に対する防除効果に関しては、思ったほど効果が期待できないということである。
つまり、搾乳後の消毒(ポストディッピング)のみでは、その効果持続期間(例えば適用後、乳頭が牛床などに接触した際に、薬液が乳頭から除かれて効果が失われるまでに、1〜2時間)が比較的短いため、次の搾乳までに殺菌効果が消失してしまうため、環境性の起因菌に対しては、その効果に限界があった。
一方、乳房炎起因菌から乳牛の乳頭を守る手段として、乳牛の乳頭全体をマスキングすることにより、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入するのを防止する技術が提案されている。
例えば、特許文献3は、「乳牛の乾乳期において、乳房炎に感染しやすい乾乳期の初めの約2日〜9日程度の間、及び分娩前約2日〜9日程度の間、乳頭を乳頭シール剤に浸漬して乳頭に乳頭口を閉塞する薄膜を形成した状態に保持しておくことにより、乳房炎起因菌の感染を物理的に阻止することを特徴とする乳牛の乳房炎予防方法。」を開示している(請求項1)。更に、特許文献3は、乳頭口を浸漬させる乳頭シール剤として、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、メチレンクロライド等のフロン代替体、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を溶媒として、ウレタンゴム、ラテックスゴム、ブタジエン樹脂、液状ブチルゴム、液状ゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、酢酸ビニルゴム等から選択されたゴム素材を5〜15%の濃度で溶解したものを記載している。
しかしながら、特許文献3のゴム系素材は乳頭との密着性が不十分であるので、乳頭から剥がれ易く、乳房炎起因菌の感染を阻止する必要がある上記約2日〜約9日の期間、必ずしも乳頭口の閉塞を持続することができないという問題がある。
また、特許文献4は、「少なくとも、水、カルシウム塩およびアルギン酸塩を含み、かつ、ゲル化前の粘度が5000〜150万mPa・secである乳頭パック。」を開示しており、更に、該乳頭パック中にヨウ素などの抗菌剤を配合しておくことで、長期間乳頭を乳房炎起因菌などから保護できるとして提案されている。
しかし、特許文献4に記載されている乳頭パックでは、アルギン酸塩や硫酸カルシウム塩からなる粉末成分を使用直前に、水などの溶剤と混錬して得られるペーストを乳頭に塗布して使用すると説明されている。硫酸カルシウムは水に不溶、つまり疎水性成分であり、水などの親水性溶剤中に均一に分散させることは非常に難しく、所望の分散性を得るためには、術者に多大な労力及び熟練を要求するだけでなく、混錬の際には粉末成分が周囲に飛散してしまうという問題を有していた。
また、特許文献4には、粉末であるアルギン酸塩や硫酸カルシウム塩からなる成分をグリセリンやプロピレングリコールなどの親水性溶剤に予め分散させておくことで、上記問題が軽減されるとしてあるが、この場合であっても表面が疎水的である硫酸カルシウムを親水性溶剤中に分散させておくのが困難なため、経時的に沈降分離を起こしてしまう。その結果、場合によっては、使用する際(水と混錬する際)に、かえって分散性を損ねてしまい、混錬に時間がかかったり、得られる乳頭パックの均一性やゲル化性が低下し、乳頭への密着性が悪化したり、乳頭から剥離し易くなったりしていた。
また、混練したペーストを乳頭に付着させるタイミングを見極めないと、ペーストの粘度が低く、乳頭から脱落したり、逆にペーストの粘度が高く、乳頭への塗布性が悪かったりする問題点やペーストが瞬時にゲル化すると乳頭に塗布する作業時間を取れないため瞬時にゲル化するペーストを使用できない制約上、ペーストのゲル化に時間を要し、瞬時にはパックが形成しないという問題点を抱えていた。
以上のように、乳頭パックには、(イ)殺菌消毒剤の効果が長期間持続すること、(ロ)乳頭に密着し、長期間乳頭から剥離しないこと、特に乳頭口を閉塞しておくこと、(ハ)簡便な操作により乳頭へのパックが可能であること等が望まれている。
特開平8−175989号公報 特開平11−155404号公報 特開2000−41529号公報 特開2006−50911号公報
畜産大事典編集委員会代表者長沢弘著、1996年2月20日、畜産大事典、株式会社養賢堂 酪農大事典生理・飼育技術・環境管理、2011年3月31日、社団法人農山漁村文化協会 株式会社講談社サイエンティフィック編、新編畜産ハンドブック、2006年9月10日、株式会社講談社
以上の背景にあって本発明は、家畜の、主として非搾乳期の乳牛の乳頭を乳房炎から予防するために使用される乳頭パックにおいて、長期間乳頭に密着し剥離しないゲル状パックを容易な操作により、瞬時に形成させることが可能である材料を提供することを目的とする。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、水、多価金属イオンとの共存下においてゲル化(硬化)しうる化合物を主成分とする第1溶液と、水、多価金属化合物を主成分とする第2溶液から形成されるゲル状乳頭パックが、パック装着操作が簡便である上、乳頭への密着性が良く、また乾燥に強く長期間剥離しない事を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、家畜の乳頭に密着させるゲル状のパックを形成するための材料であって、
少なくとも、(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液と、
少なくとも、(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液と
からなる形態であることを特徴とする家畜用乳頭パック材料である。
本発明のパックは、高いパック強度を実現するため、前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のパックは、パックを施すことによる殺菌消毒効果を高めるため、前記第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に(D)殺菌消毒剤を含むのが好ましい。
また、別の発明は、上記のいずれか一項に記載の家畜乳頭パック材料を用い、乳頭に密着させるゲルを生成させることを特徴とする家畜の乳頭を保護する方法であり、乳房炎予防方法である。
本発明のパック装着の一実施態様は、
(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法である。
前記の乳房炎予防方法においては、前記第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に(D)殺菌消毒剤を含有させることが好ましい。
本発明のパック装着の一実施態様は、
乳用家畜の乳頭を(D)殺菌消毒剤に接触させた後、
(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法である。
そして、前記の乳用家畜の乳房炎予防方法においては、
前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の乳頭パック材料は、溶液状であるため乳頭パックを装着する際に、粉成分が舞うなどの問題を生じず、誰でも簡単に、瞬時に各成分の均一性(分散性)に優れる乳頭パックを調製できる。また、パックは乳頭に密着し、長期間乳頭から剥がれることがない。更に、殺菌剤を含有することで長期間殺菌効果を持続させることが可能であり、非搾乳期の乳牛を乳房炎などの感染症から効率的に予防することができ、極めて有望である。
本図は、被膜形成性の評価部位を図示したものである。
本発明の乳頭パック材料を用いると、家畜の乳頭に密着したゲル状パックが得られ、該ゲル状パックは長期間乳頭から剥がれることない。ゲル状パックは、第1溶液、第2溶液の一方を家畜の乳頭に浸漬し、次いで他方を浸漬することで、多価金属イオンと多価金属イオンとの共存下においてゲル化し得る化合物とのイオン結合に伴うゲル化反応により生成するため、非常に簡便な手法で得ることができる。先述した特許文献4のように、乳頭に塗布するタイミングを見極める必要がなく、瞬時にゲル状パックを乳頭周りに生成させることができる。
これにより、乳頭口付近が完全に密封される為、乳房炎原生菌などの乳頭口への侵入を確実に防止する事が可能となる。また、第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に殺菌消毒剤を含有させることで、パックをすることにより長期間殺菌消毒効果を持続させることが可能となる。
また、本発明の家畜用乳頭パック材は、使用直前の混練操作が不要であり、且つ、粉末形態ではない為、粉末成分などが周囲に飛散する心配も無く、混練不足による乳頭パックの不均一化や、気泡混入などの問題も解消される。
以下、本発明の家畜用乳頭パック材料の各構成成分について詳細に説明する。
本発明の家畜用乳頭パック材料は、第1溶液、第2溶液とで構成されており、第1溶液の主成分は、(A−1)水、(B)多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物である。第2溶液の主成分は、(A−2)水、(C)多価金属化合物である。第1溶液は、ゲル状パックを形成させるための基本となる基材溶液であり、第2溶液は第1溶液中の(B)多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物を硬化させるために使用する硬化用溶液である。なお、第1溶液、第2溶液共ペースト状ではなく、均一な溶液である。これにより、第1溶液、第2溶液共に乳頭への塗布性が良く、また第1溶液、第2溶液を用いることで瞬時に均一なパックを乳頭周辺に形成させることが出来る。
(A)水
水は、第1溶液、及び第2溶液に含まれる成分であり、第1溶液に含まれる水を(A−1)水と表記し、第2溶液に含まれる水を(A−2)水と表記する。水は、(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物、(C)多価金属化合物を溶解して均一に分散させる溶媒の役割を果たし、また同時に化合物と多価金属化合物との反応を促進する役割がある。
第1溶液中における(A−1)水の配合量は、(B)化合物100質量部に対して、1000質量部〜10000質量部が好ましく、2000質量部〜6000質量部がより好ましい。
水の配合量が(B)化合物100質量部に対して、10000質量部を超えて配合された場合、生成するゲルの強度が弱くなる傾向にある。また、水の配合量が(B)化合物100質量部に対して、1000質量部に満たない場合には、第1溶液の粘度が高くなり、パック内への気泡混入の可能性が高くなる傾向にある。
第2溶液中における(A−2)水の配合量は、多価金属化合物100質量部に対して、200質量部〜5000質量部が好ましく、200質量部〜3000質量部がより好ましい。
水の配合量が多価金属化合物100質量部に対して、5000質量部を超えて配合された場合、生成するゲルの強度が弱くなる傾向にある。また、水の配合量が多価金属化合物100質量部に対して、200質量部に満たない場合には、多価金属化合物が十分に水に溶解しなくなる可能性を有する。
(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物
(C)多価金属化合物から放出される多価金属イオンとの反応により家畜の乳頭にゲル状パックを生成させるために化合物を配合する。ここで、「多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物」とは、多価金属イオンと反応する酸素、窒素、硫黄などを含む官能基、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などを(高)分子中に含む化合物である。(B)化合物は、第1溶液中に0.5〜10質量%含まれているのが好ましい。(B)化合物は、多価金属化合物と反応し、ゲル化するものであれば特に制限されないが、強度が高いパックを調製するため、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選ばれる化合物が好ましい。これらは、単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いても良い。
ポリアクリル酸とは、アクリル酸またはアクリル酸の誘導体を重合することにより合成されるものである。親水性のカルボキシル基を有するポリマーである。ポリアクリル酸の誘導体としてはカルボキシル基を反応させたものを挙げることができ、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリル酸アルキルエステル、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸ベンジル、ポリアクリル酸テトラヒドロフルフリル、ポリアクリル酸イソボルニル、ポリジアクリル酸ジエチレングリコール、ポリジアクリル酸トリエチレングリコール、ポリジアクリル酸1,4−ブタンジオール、ポリビスアクリルアミド、ポリトリメチロールプロパンジアクリル酸、ポリトリメチロールプロパントリアクリル酸、ポリテトラメチロールメタントリアクリル酸、ポリテトラメチロールメタンテトラアクリル酸、ポリジペンタエリトリットペンタアクリル酸、ポリジペンタエリトリットヘキサアクリル酸、ポリトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリル酸、ポリビスフェノーリルジグリシジルエーテルジアクリル酸、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリル酸カリウム塩などが挙げられる。これらは2種類以上の混合物であっても良い。
ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸またはメタクリル酸の誘導体を重合することにより合成されるものである。ポリアクリル酸と同様に親水性のカルボキシル基を有するポリマーである。ポリメタクリル酸の誘導体としてはカルボキシル基を反応させたものを挙げることができ、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ポリメタクリル酸イソボルニル、ポリジメタクリル酸ジエチレングリコール、ポリジメタクリル酸トリエチレングリコール、ポリジメタクリル酸1,4−ブタンジオール、ポリビスメタクリルアミド、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリメタクリル酸カリウム塩などが挙げられる。これらは2種類以上の混合物であっても良い。
ポリビニルアルコールとは、酢酸ビニルを重合することにより合成されるポリ酢酸ビニルを加水分解することで得られるものである。親水性のヒドロキシル基を有するポリマーである。誘導体としては、ヒドロキシル基を反応させたものを挙げることが出来、例えば、アルキル基含有ポリビニルアルコール、アミノ基含有ポリビニルアルコール、カルボキシル基含有ポリビニルアルコール、アルデヒド基含有ポリビニルアルコール、アリル基含有ポリビニルアルコール、アリール基含有ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらは2種類以上の混合物であっても良い。
ポリウレタンとは、ウレタン結合(−NH−COO−)を有するポリマーであり、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物との縮合反応により形成される。誘導体としてウレタン結合を反応させたものを挙げることができ、例えば、アルキルポリウレタン、アリールポリウレタンなどが挙げられる。これらは2種類以上の混合物であっても良い。なお、水への分散性を良くするためにポリウレタン樹脂表面を親水化処理することが好ましい。
(C)多価金属化合物
多価金属化合物は、水中において解離して2価以上の多価金属イオンを発生させるものである。上記の(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物と反応し、(B)化合物をゲル化させ、ゲル状パックを形成させる。これは、生成した多価金属イオンにより、(B)化合物中の高分子の分子鎖内又は分子鎖間に化学結合を有する三次元ネットワーク構造が形成するためである。瞬時にパックをゲル化させるために、水に溶解した時に解離し易く、多くの多価金属イオンを放出する多価金属化合物を用いることが好ましい。本発明に使用することができる多価金属化合物は、上記作用を有するものであれば、特に限定されること無く、既に公知のものすべてが使用できる。そのような多価金属化合物として、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化ジルコニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、硫酸スズ、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化スズ、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ジルコニウム、水酸化スズ、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛などの2価以上の金属塩が挙げられる。この中でも、水への溶解度が比較的高く、多くの多価金属イオンを放出することにより、結果的に強度の高いゲル状パックを形成させることのできる塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛を用いるのが好ましい。また、これらの多価金属化合物は2種以上の混合物であっても良い。
(その他の成分)
本発明では、上記成分を主成分として用いるが、その他、以下説明する成分を任意に配合しても良い。
(D)殺菌消毒剤
(D)殺菌消毒剤は、本発明の家畜用乳頭パック材料の必須成分ではなく、任意に使用することのできる成分である。
殺菌消毒剤は、乳房炎などの病気を引き起こす各種の細菌、真菌、ウイルス等の広範囲の有害な微生物を死滅させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ヨウ素酸ナトリウム、ポピドンヨード等のヨウ素化合物、酸化銀、銀などの金属塩、茶葉粉末、ヒノキ粉末、キトサン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カプリル酸モノグリセリドなどの脂肪酸エステルと乳酸、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、レゾルシン、トリクロロカルバニド、ハロカルバン、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素等を例示することができる。
殺菌消毒剤の配合量は特に制限されないが、通常少なくとも第1溶液または第2溶液のいずれか一方に0.1〜5質量%の範囲で含まれているのが好ましい。
[添加剤]
本発明の第1溶液及び第2溶液には、以上に説明した各成分以外にも、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、充填材、保湿材、増粘剤、親水性溶剤、疎水性溶剤、無機フッ素化合物、アミノ酸化合物、不飽和カルボン酸重合体、香料、着色料、防腐剤、pH調整剤等が挙げられる。
第1溶液及び第2溶液の物性を調整するために充填材を用いても良い。充填材は、第1溶液及び第2溶液の両方またはいずれかに添加しても良い。充填材としては、珪藻土、タルク等の粘度鉱物を用いることが好ましく、シリカ、アルミナ等の金属または半金属の酸化物も用いることができる。充填材の配合量は特に制限されるものではないが、通常少なくとも第1溶液または第2溶液のいずれか一方に1〜20質量%の範囲で含まれているのが好ましく、2〜10質量%の範囲で含まれているのがより好ましい。
また、パックの乾燥を抑え、パックの収縮や変形をより小さくし、より長期間パックの強度を保つために保湿材を添加しても良い。保湿材は、パックの乾燥を抑えることができ、パックのゲル化を阻害するものでない限り、種類は制限されないが、例えば、ワセリン、尿素、非還元糖類を好ましい例として挙げることが出来る。これらは単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いても良い。保湿材は、第1溶液及び第2溶液の両方またはいずれかに添加しても良いが、より高い保湿効果をもたらす観点から、第1溶液に入れるのがより好ましい。非還元糖としては、還元性を示さない公知の糖類であれば特に制限無く利用できる。ここで、「還元性」とは、アルカリ性水溶液中で、銀や銅等の重金属イオンに対して還元作用を示す性質を意味する。還元性を有する糖類は、重金属イオンに対する還元作用を利用したトレンス試薬、ベネジクト試薬又はフェーリング試薬によって検出される。これに対して、非還元糖は、これら試薬で検出できない糖類を意味する。
上述した特性を示す非還元糖としては、トレハロースやスクロース等の二糖類、ラフィノース、メレジトース、スタキオース、シクロデキストリン類等のオリゴ糖類等、公知の非還元糖が利用できる。しかし、非還元糖の分子量が大き過ぎる場合には、多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物と非還元糖とが水素結合を形成して凝集してしまう可能性がある。したがって、非還元糖としては、グリコシド結合によって結合した2個〜10個の単糖分子から構成される糖が好ましく、二糖類がより好ましい。更に、乳頭との密着性及び保湿性の点から、二糖類の中でもトレハロースが特に好ましい。
非還元糖の配合量は、第1溶液又は第2溶液中に2〜40質量%の範囲で含まれているのが好ましく、8〜24質量%の範囲で含まれているのがより好ましい。この配合量を2質量%以上とすることにより、パック形成後にゲル状パックをより長時間放置しても、十分な保湿性が得られ、かつ成形精度の低下を抑制することができる。一方、この配合量を40質量%以下とすることにより、パック形成に際して、非還元糖が多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物のゲル化反応を阻害するのを抑制することができる。
また、第1溶液及び第2溶液の粘度を調整し、乳頭への溶液の歩留まりを改善するために、増粘剤を用いるのが好ましい。増粘剤は、第1溶液及び第2溶液の両方あるいはいずれに添加しても良いが、乳頭への殺菌消毒剤の付着量を高めるため、第1溶液に添加するのが好ましい。増粘剤は、下記に示す無機増粘剤、合成の石油をベースとする増粘剤のいずれかあるいは組み合わせて用いても良い。
無機増粘剤は、概して、コロイドケイ酸マグネシウムアルミニウム、コロイド粘土のような化合物であり、これらはヒューム処理するか、あるいは沈澱させて、大きい表面−サイズ比を有する粒子にされたものである。
合成の石油をベースとする水溶性ポリマーは、適当なモノマーの直接的重合により製造される。このモノマーの代表例は、ビニルピロリドン、ビニルメチルエーテル、エチレンオキシド、及びエチレンイミンなどである。
また、(C)多価金属化合物及び(D)殺菌消毒剤の分散性を向上させることで、多価金属イオンと多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物とのゲル化反応を促進させ、殺菌消毒作用を高めるために有機溶剤を用いても良い。有機溶剤は、第1溶液及び第2溶液の両方、あるいはいずれかに添加しても良い。有機溶媒の種類は著しくヒト又は家畜に有害なものでない限り特に制限されないが、液分離の観点から親水性溶剤が好ましい。これらを例示すれば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ブテンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、アリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンエーテル等のアルコール類またはエーテル類、あるいはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。中でも、生体に対する為害作用の少ないものが望ましく、例としてはエタノール、プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類が好適である。
有機溶剤の配合量は特に制限されないが、一般的に、第1溶液及び第2溶液中に、1〜30質量%の範囲で含まれているのが好ましく、2〜20質量%の範囲で含まれているのがより好ましい。
また、ゲル状パックの強度調節の観点から、フッ化チタンカリウム、ケイフッ化カリウム等の無機フッ素化合物、アミノ酸/ホルムアルデヒド縮合体等のアミノ酸化合物などを配合しても良い。また、ゲル状パックを構成する各成分を混合・練和した際、粘度の変化速度の制御を容易とするために、不飽和カルボン酸重合体を配合することもできる。
[調製方法及び使用方法]
(1)第1溶液及び第2溶液の調製方法
第1溶液及び第2溶液の調製方法は、特に制限されるものではないが、公知の攪拌混合機を用いて調製することが出来る。ここで、攪拌混合機としては、例えばボールミルのような回転容器型混合混錬機、リボンミキサー、コニーダー、インターナルミキサー、スクリューニーダー、ヘンシェルミキサー、万能ミキサー、レーディゲミキサー、バタフライミキサー、などの水平軸または垂直軸を有する固定容器型の混合混練機を利用することが出来る。なお、第2溶液調製に関して(C)多価金属化合物が水に対して相対的に溶解性の高い場合は、溶解対象となる成分や、この成分が溶解した溶液に強いせん断力が加わらない攪拌装置を利用することもできる。このような攪拌装置としては、各種攪拌翼を備えた可搬型攪拌機、同堅型攪拌機、同側面攪拌機、管路攪拌機等を用いることが出来る。更に、第1溶液や第2溶液の調製に関しては、上述した各種の混合攪拌機を2種類以上組み合わせて利用することもできる。
(2)ゲル状パック生成方法
本発明のゲル状パックは、少なくとも、(A−1)水、(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物を主成分とする第1溶液及び少なくとも、(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液を調製しておき、片一方を乳頭に付着させ、次いで他方を付着させることにより生成する。このように、逐次浸漬型の家畜乳頭パック材として本発明のパック材料は有用である。第1溶液を乳頭に付着させた後、第2溶液を乳頭に付着させるのが好ましい。
被覆方法としては、浸漬法、はけ塗り法、噴霧法などが挙げられるが、特に制限されない。好ましくは浸漬法である。
浸漬法を用いる場合の第1溶液及び第2溶液の粘度は、各溶液中に乳頭が容易に浸漬するように適宜選択すれば良い。
浸漬法を用いる場合の第1溶液の粘度は、23℃でコーンプレート型粘度計により測定した値で、1〜1500dPa・sの範囲にあるのが好ましく、第2溶液の粘度は1500dPa・s以下であるのが好ましい。
なお、噴霧法を用いる場合の第1溶液の粘度は、噴霧のし易さから1〜400dPa・sの範囲にあるのが好ましく、第2溶液の粘度は400dPa・s以下であるのが好ましい。
浸漬法を用いる場合、例えば家畜の乳頭を収容可能な筒状又はカップ状の容器に第1溶液及び第2溶液をそれぞれ入れる。続いて、容器を乳頭の付け根方向に移動させ(引き上げ)、容器中の溶液に乳頭を浸漬した後、容器を乳頭先端方向に移動させる(引き下げる)操作をそれぞれの溶液について行う。浸漬は、乳頭長を100%として、長さ基準で、乳頭の5%以上、好ましくは10%以上が溶液に浸されるように行えばよい。浸漬時間は、第1溶液、第2溶液それぞれについて乳頭に十分に付着させるため2秒以上が好ましい。
容器は清潔なものである限り、その材質は制限されず、金属、セラミック、プラスチック、紙などいずれでも使用できる。また、容器は第1溶液及び第2溶液の無駄を少なくするために、溶液を乳頭に付着させるために必要な最低限の内容積を有していればよい。円筒状又はカップ状容器の場合、内径が約4cm〜約6cmで、高さが約2cm〜約10cmのものを使用することが出来る。容器の内側に、適量の溶液を入れることができるようにした目印を備えていると便利である。
第1溶液及び第2溶液を乳頭に均一に付着させるために、浸漬後に容器を乳頭先端方向に移動させる速度(引き下げる速度)は10〜100mm/秒とするのが好ましく、20〜50mm/秒とするのがより好ましい。
第1溶液又は第2溶液が乳頭に十分付着した状態で、他方の液を乳頭に付着させてゲル化させるために、2つの溶液を、間隔を置かずに乳頭に付着させるのが好ましい。
第1溶液と第2溶液の乳頭への付着量の比(第1溶液/第2溶液[質量部/質量部])は特に制限されるものではないが、通常は0.2〜5の範囲内であることが好ましい。
(3)家畜用乳頭パック
本発明の家畜用乳頭パック材料は、上記(2)のようにして、乳用家畜の乳頭にゲル状パックを形成することができる。これにより、乳用家畜の乳頭を保護することができる。具体的には、伝染性乳房炎からの保護、環境性乳房炎からの保護、汚れその他の外的環境因子からの保護のために用いることができる。本発明において、乳用家畜とは、特に搾乳用家畜であり、例えば乳牛、山羊、その他搾乳が行われる家畜である。
以下、実施例1〜実施例24、及び実施例の効果などを検証するための比較例1〜比較例12を挙げて、本発明による第1溶液と第2溶液の2液の家畜用乳頭パック材料を用いた乳頭保護について具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1〜実施例24、及び比較例1〜比較例12において乳頭パック生成に用いた原料の略号及び「被膜形成性」及び「耐久性」の評価方法は以下の通りである。
<原料>
(B)多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物
PAA:ポリアクリル酸 重合度3000
PMAA:ポリアクリル酸メチル 重合度3000
PMA:ポリメタクリル酸 重合度3000
PMMA:ポリメタクリル酸メチル 重合度3000
PVA1:ポリビニルアルコール 重合度500
PVA2:ポリビニルアルコール 重合度1000
PUR:ポリウレタン 重合度1000
<その他成分>
充填材
レオロシールQS−102:粒径0.012μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理物、実施例表中ではレオロシールと記載)
<評価方法>
(1)「被膜形成性」の評価方法
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした型の中に、歯科用親水性シリコーン印象材(GC社製「フュージョンII」)を入れ、印象材がゲル化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
実施例1〜実施例24及び比較例10〜比較例12において、上記の疑似乳頭をまず第1溶液に浸漬させ、続いて第2溶液に浸漬させ、疑似乳頭周辺にゲル状パックを形成させた。
比較例1〜比較例9においては、粉成分と液成分を混練し、混練から30秒経過した時点で上記の疑似乳頭を混練体に浸漬させ、混練体を疑似乳頭に付着させることにより、疑似乳頭周辺にゲル状パックを形成させた。
続いて、パックを温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で1時間放置した後、乳頭に形成されたゲル被膜を乳頭から、壊さないよう慎重に取り外し、疑似乳頭の底部、側面下部、側面中部、側面上部(図1参照)に形成していたゲル被膜の厚み(mm)を、各部位5カ所(各部位円周上、等間隔となるように選んだ5点)についてマイクロメーターを用いて測定した。各部位につき、5カ所の厚みの平均を算出し、各部位の厚み(mm)とした。
(2)「耐久性」の評価方法
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした型の中に、歯科用親水性シリコーン印象材(GC社製「フュージョンII」)を入れ、印象材がゲル化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
実施例1〜実施例24及び比較例10〜比較例12において、上記の疑似乳頭をまず第1溶液に浸漬させ、続いて第2溶液に浸漬させ、疑似乳頭周辺にゲル状パックを形成させた。
比較例1〜比較例9においては、粉成分と液成分を混練し、混練から30秒経過した時点で上記の疑似乳頭を混練体に浸漬させ、混練体を疑似乳頭に付着させることにより、疑似乳頭周辺にゲル状パックを形成させた。
続いて、パックを温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で1日〜4日それぞれ放置した。その各々のパックに対して下記に示す耐久試験を実施した。
疑似乳頭の中心軸方向から荷重が加わるように、疲労試験機(インストロン社製、E3000)にセットし、1〜5kgf/cm2の荷重を加えた。なお、3kgf/cm2を荷重の中央値とし、振幅を2kgf/cm2とした。また、周波数を1Hz、サイクル数を100とした。
耐久試験を実施した後、パックの状態を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて「耐久性」を評価した。
疑似乳頭耐久性評価基準
○:パックの破損や浮き上がりは認められない。
△:パックが一部破損しているものの、乳頭口付近は被覆されている。
×:全体が破損、あるいは剥離している。
実施例1
(A−1)蒸留水400g、(B)ポリアクリル酸10.0gをそれぞれ量りとり、これらを小型混練機(アイコー産業社製アイコーミキサー)に投入し気泡が混入しないように1時間混練し第1溶液を調製した。また、(A−2)蒸留水100g、(C)塩化カルシウム10.0gを量りとり、蒸留水に塩化カルシウムを少しずつ投入し30分間撹拌して完全に塩化カルシウムを溶解させ第2溶液を調製した。
得られた第1溶液及び第2溶液を用いて疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。
実施例2〜実施例24
第1溶液及び第2溶液の組成を表1及び表2に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、第1溶液及び第2溶液を調製した。得られた第1溶液及び第2溶液を用いて疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。なお、実施例7及び実施例8はホウ酸四ナトリウムの水に対する溶解度が低いため第2溶液は飽和水溶液としている。
比較例1
ポリアクリル酸100g、塩化カルシウム100gをそれぞれ小型ミキサー(イワタニ社製 フードミキサー)に投入し5分間撹拌し、均一な粉成分を得た。一方、蒸留水400gを量りとり、液成分とした。粉成分5gと液成分100gをそれぞれ量りとり、粉成分と液成分を混練し、混練してから30秒後に混練体を疑似乳頭に塗布した。疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。
比較例2〜比較例9
粉成分の組成を表3に示す内容に変更した以外は、比較例1と同様にして、粉成分を調製した。粉成分5gと液成分100gをそれぞれ量りとり、粉成分と液成分を混練し、混練してから30秒後に混練体を疑似乳頭に塗布した。疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。
比較例10
ポリアクリル酸を100g量りとった。また、塩化カルシウム100gを量りとった。疑似乳頭にまずポリアクリル酸を付着させた後、続いて塩化カルシウムを付着させた。
比較例11
蒸留水を400g量りとり、第1溶液とした。また、蒸留水を100g、塩化カルシウムを10.0g量りとり、蒸留水に塩化カルシウムを少しずつ投入し30分間撹拌して完全に塩化カルシウムを溶解させ第2溶液を調製した。疑似乳頭をまず第1溶液に浸漬した後、続いて第2溶液に浸漬させた。
比較例12
第1溶液及び第2溶液の組成を表4に示す内容に変更した以外は、比較例14と同様にして、第1溶液及び第2溶液を調製した。疑似乳頭をまず第1溶液に浸漬した後、続いて第2溶液に浸漬させた。
実施例1〜実施例24及び比較例1〜12の家畜用乳頭パック材料の組成を表1〜表4に示した。表中の数字は、配合する質量部を示している。また、実施例1〜24および比較例1〜12における「被膜形成性」及び「耐久性」の評価結果を表5及び表6に示す。
Figure 0006433826
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実施例1〜実施例24は、本発明の要件全てを満足するように調製したものであるが、いずれの場合においても、均一な被膜が得られ、耐久性が高いとの結果が得られた。疑似乳頭にパックした後、少なくとも4日以上、乳頭口を保護できることが分かった。
また、実施例14〜実施例17は、第1溶液又は/及び第2溶液に各種添加成分(充填材)を配合した例であるが、乳頭パックの耐久性が更に向上することが分かった。
これに対して、比較例1〜比較例9は本発明方法を実施しないで実施例とパックが同様の組成になるように予め粉成分と液成分を調製し、使用直前に混練して使用した場合であるが、混錬物の組成が均一でない為、疑似乳頭に均一な厚みのパック層を形成することができず、耐久試験の際に剥がれたり、ひび割れるなど、パックの耐久性が著しく低下していることがわかった。
比較例10〜比較例12では、パックが形成しなかったため各種評価が出来なかった。

Claims (8)

  1. 家畜の乳頭に密着させるゲル状のパックを形成するための材料であって、
    少なくとも、(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液と、
    少なくとも、(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液と
    からなる形態であることを特徴とする家畜用乳頭パック材料。
  2. 前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の家畜用乳頭パック材料。
  3. 前記第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に(D)殺菌消毒剤を含有させた請求項1又は2に記載の家畜乳頭パック材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の家畜乳頭パック材料を用い、乳頭に密着させるゲルを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。
  5. (A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
    (A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
    の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。
  6. 前記第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に(D)殺菌消毒剤を含有させた請求項5に記載の乳用家畜の乳房炎予防方法。
  7. 乳用家畜の乳頭を(D)殺菌消毒剤に接触させた後、
    (A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
    (A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
    の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載の乳用家畜の乳房炎予防方法において、
    前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。
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