JP6433826B2 - 家畜用乳頭パック材料、及び乳用家畜の乳房炎予防方法 - Google Patents
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(1)ミルカーの点検整備を含めた搾乳施設等の衛生対策、
(2)乳頭の消毒、
(3)臨床型乳房炎の治療、
(4)乾乳期治療(dry cow therapy,DCT)
(5)問題牛の淘汰(以上、非特許文献1,2,3)
上記に挙げられた対策の中でも、乳牛の乳頭消毒は、乳房炎防除の最も重要な予防対策の一つであり、英国のDoddらが1952年に乳頭消毒剤を開発、実施し、日本では昭和40年頃より乳質改善事業の一環として使用が実施されるようになり、今日では40%の普及率となっている。
少なくとも、(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液と、
少なくとも、(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液と
からなる形態であることを特徴とする家畜用乳頭パック材料である。
(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法である。
乳用家畜の乳頭を(D)殺菌消毒剤に接触させた後、
(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法である。
そして、前記の乳用家畜の乳房炎予防方法においては、
前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(A)水
水は、第1溶液、及び第2溶液に含まれる成分であり、第1溶液に含まれる水を(A−1)水と表記し、第2溶液に含まれる水を(A−2)水と表記する。水は、(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物、(C)多価金属化合物を溶解して均一に分散させる溶媒の役割を果たし、また同時に化合物と多価金属化合物との反応を促進する役割がある。
(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物
(C)多価金属化合物から放出される多価金属イオンとの反応により家畜の乳頭にゲル状パックを生成させるために化合物を配合する。ここで、「多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物」とは、多価金属イオンと反応する酸素、窒素、硫黄などを含む官能基、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などを(高)分子中に含む化合物である。(B)化合物は、第1溶液中に0.5〜10質量%含まれているのが好ましい。(B)化合物は、多価金属化合物と反応し、ゲル化するものであれば特に制限されないが、強度が高いパックを調製するため、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選ばれる化合物が好ましい。これらは、単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いても良い。
多価金属化合物は、水中において解離して2価以上の多価金属イオンを発生させるものである。上記の(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物と反応し、(B)化合物をゲル化させ、ゲル状パックを形成させる。これは、生成した多価金属イオンにより、(B)化合物中の高分子の分子鎖内又は分子鎖間に化学結合を有する三次元ネットワーク構造が形成するためである。瞬時にパックをゲル化させるために、水に溶解した時に解離し易く、多くの多価金属イオンを放出する多価金属化合物を用いることが好ましい。本発明に使用することができる多価金属化合物は、上記作用を有するものであれば、特に限定されること無く、既に公知のものすべてが使用できる。そのような多価金属化合物として、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化ジルコニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、硫酸スズ、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化スズ、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ジルコニウム、水酸化スズ、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛などの2価以上の金属塩が挙げられる。この中でも、水への溶解度が比較的高く、多くの多価金属イオンを放出することにより、結果的に強度の高いゲル状パックを形成させることのできる塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛を用いるのが好ましい。また、これらの多価金属化合物は2種以上の混合物であっても良い。
本発明では、上記成分を主成分として用いるが、その他、以下説明する成分を任意に配合しても良い。
(D)殺菌消毒剤
(D)殺菌消毒剤は、本発明の家畜用乳頭パック材料の必須成分ではなく、任意に使用することのできる成分である。
[添加剤]
本発明の第1溶液及び第2溶液には、以上に説明した各成分以外にも、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、充填材、保湿材、増粘剤、親水性溶剤、疎水性溶剤、無機フッ素化合物、アミノ酸化合物、不飽和カルボン酸重合体、香料、着色料、防腐剤、pH調整剤等が挙げられる。
[調製方法及び使用方法]
(1)第1溶液及び第2溶液の調製方法
第1溶液及び第2溶液の調製方法は、特に制限されるものではないが、公知の攪拌混合機を用いて調製することが出来る。ここで、攪拌混合機としては、例えばボールミルのような回転容器型混合混錬機、リボンミキサー、コニーダー、インターナルミキサー、スクリューニーダー、ヘンシェルミキサー、万能ミキサー、レーディゲミキサー、バタフライミキサー、などの水平軸または垂直軸を有する固定容器型の混合混練機を利用することが出来る。なお、第2溶液調製に関して(C)多価金属化合物が水に対して相対的に溶解性の高い場合は、溶解対象となる成分や、この成分が溶解した溶液に強いせん断力が加わらない攪拌装置を利用することもできる。このような攪拌装置としては、各種攪拌翼を備えた可搬型攪拌機、同堅型攪拌機、同側面攪拌機、管路攪拌機等を用いることが出来る。更に、第1溶液や第2溶液の調製に関しては、上述した各種の混合攪拌機を2種類以上組み合わせて利用することもできる。
(2)ゲル状パック生成方法
本発明のゲル状パックは、少なくとも、(A−1)水、(B)多価金属イオンとの共存化においてゲル化しうる化合物を主成分とする第1溶液及び少なくとも、(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液を調製しておき、片一方を乳頭に付着させ、次いで他方を付着させることにより生成する。このように、逐次浸漬型の家畜乳頭パック材として本発明のパック材料は有用である。第1溶液を乳頭に付着させた後、第2溶液を乳頭に付着させるのが好ましい。
(3)家畜用乳頭パック
本発明の家畜用乳頭パック材料は、上記(2)のようにして、乳用家畜の乳頭にゲル状パックを形成することができる。これにより、乳用家畜の乳頭を保護することができる。具体的には、伝染性乳房炎からの保護、環境性乳房炎からの保護、汚れその他の外的環境因子からの保護のために用いることができる。本発明において、乳用家畜とは、特に搾乳用家畜であり、例えば乳牛、山羊、その他搾乳が行われる家畜である。
<原料>
(B)多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる化合物
PAA:ポリアクリル酸 重合度3000
PMAA:ポリアクリル酸メチル 重合度3000
PMA:ポリメタクリル酸 重合度3000
PMMA:ポリメタクリル酸メチル 重合度3000
PVA1:ポリビニルアルコール 重合度500
PVA2:ポリビニルアルコール 重合度1000
PUR:ポリウレタン 重合度1000
<その他成分>
充填材
レオロシールQS−102:粒径0.012μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理物、実施例表中ではレオロシールと記載)
<評価方法>
(1)「被膜形成性」の評価方法
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした型の中に、歯科用親水性シリコーン印象材(GC社製「フュージョンII」)を入れ、印象材がゲル化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
(2)「耐久性」の評価方法
乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした型の中に、歯科用親水性シリコーン印象材(GC社製「フュージョンII」)を入れ、印象材がゲル化後、型から取り出し、疑似乳頭を作製した。
○:パックの破損や浮き上がりは認められない。
△:パックが一部破損しているものの、乳頭口付近は被覆されている。
×:全体が破損、あるいは剥離している。
(A−1)蒸留水400g、(B)ポリアクリル酸10.0gをそれぞれ量りとり、これらを小型混練機(アイコー産業社製アイコーミキサー)に投入し気泡が混入しないように1時間混練し第1溶液を調製した。また、(A−2)蒸留水100g、(C)塩化カルシウム10.0gを量りとり、蒸留水に塩化カルシウムを少しずつ投入し30分間撹拌して完全に塩化カルシウムを溶解させ第2溶液を調製した。
第1溶液及び第2溶液の組成を表1及び表2に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、第1溶液及び第2溶液を調製した。得られた第1溶液及び第2溶液を用いて疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。なお、実施例7及び実施例8はホウ酸四ナトリウムの水に対する溶解度が低いため第2溶液は飽和水溶液としている。
ポリアクリル酸100g、塩化カルシウム100gをそれぞれ小型ミキサー(イワタニ社製 フードミキサー)に投入し5分間撹拌し、均一な粉成分を得た。一方、蒸留水400gを量りとり、液成分とした。粉成分5gと液成分100gをそれぞれ量りとり、粉成分と液成分を混練し、混練してから30秒後に混練体を疑似乳頭に塗布した。疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。
粉成分の組成を表3に示す内容に変更した以外は、比較例1と同様にして、粉成分を調製した。粉成分5gと液成分100gをそれぞれ量りとり、粉成分と液成分を混練し、混練してから30秒後に混練体を疑似乳頭に塗布した。疑似乳頭周辺にパックを形成させ、「被膜形成性」及び「耐久性」の評価を行った。
ポリアクリル酸を100g量りとった。また、塩化カルシウム100gを量りとった。疑似乳頭にまずポリアクリル酸を付着させた後、続いて塩化カルシウムを付着させた。
蒸留水を400g量りとり、第1溶液とした。また、蒸留水を100g、塩化カルシウムを10.0g量りとり、蒸留水に塩化カルシウムを少しずつ投入し30分間撹拌して完全に塩化カルシウムを溶解させ第2溶液を調製した。疑似乳頭をまず第1溶液に浸漬した後、続いて第2溶液に浸漬させた。
第1溶液及び第2溶液の組成を表4に示す内容に変更した以外は、比較例14と同様にして、第1溶液及び第2溶液を調製した。疑似乳頭をまず第1溶液に浸漬した後、続いて第2溶液に浸漬させた。
Claims (8)
- 家畜の乳頭に密着させるゲル状のパックを形成するための材料であって、
少なくとも、(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液と、
少なくとも、(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液と
からなる形態であることを特徴とする家畜用乳頭パック材料。 - 前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の家畜用乳頭パック材料。
- 前記第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に(D)殺菌消毒剤を含有させた請求項1又は2に記載の家畜乳頭パック材料。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の家畜乳頭パック材料を用い、乳頭に密着させるゲルを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。
- (A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。 - 前記第1溶液または第2溶液の少なくとも一方に(D)殺菌消毒剤を含有させた請求項5に記載の乳用家畜の乳房炎予防方法。
- 乳用家畜の乳頭を(D)殺菌消毒剤に接触させた後、
(A−1)水、(B)下記(C)多価金属化合物が水中において解離して発生させる2価以上の多価金属イオンとの共存下においてゲル化しうる、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリウレタン及びその誘導体から選らばれる少なくとも1種の化合物を主成分とする第1溶液、及び
(A−2)水、(C)多価金属化合物を主成分とする第2溶液
の一方を乳用家畜の乳頭に浸漬させ、次いで他方を浸漬させることにより乳頭に密着させるゲル状パックを生成させることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。 - 請求項5〜7のいずれか一項に記載の乳用家畜の乳房炎予防方法において、
前記(C)多価金属化合物が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする乳用家畜の乳房炎予防方法。
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