JP2015097506A - 細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を得る方法 - Google Patents

細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を得る方法 Download PDF

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【課題】本発明は、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を得る方法を提供することを目的とする。
【解決手段】骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去する方法であって、2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液を重層し、さらにその上層に骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を重層して遠心分離する工程を含むことを特徴とする方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を得る方法に関するものである。
間葉系幹細胞は、骨などの硬組織に分化し得る幹細胞であり、硬組織の再生医療では不可欠な要素であるが、未だ、その幹細胞の単離には成功していない。一方で、同じく成人性幹細胞である造血幹細胞の単離法は、既に確立されている。その造血幹細胞の単離方法とは、細胞表面マーカーの発現パターンの違いを利用して、セルソーターで単離するというものである。同様の戦略で単離を行うためには、間葉系幹細胞の細胞表面マーカーの発現パターンを知る必要性があった。発明者らは、間葉系幹細胞を含む未熟な細胞集団から骨芽細胞へ分化する過程で、細胞表面マーカーの発現に変化が生じると考えた。しかしながら、大きな問題点があった。骨芽細胞に分化すると、骨芽細胞は石灰化物を産生し、その石灰化物がノイズとなりフローサイトメーターを用いての正確な細胞表面マーカー解析の妨げになることだった。
また、間葉系幹細胞から骨芽細胞へ分化するまでに骨芽細胞前駆体が存在すると考えられているが、上記理由により実証することはできていない。
本発明は、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を得る方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去する方法であって、2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液を重層し、さらにその上層に骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を重層して遠心分離する工程を含むことを特徴とする方法。
[2]石灰化物が除去された骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の生細胞が、2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液の液−液界面に濃縮されることを特徴とする前記[1]に記載の方法。
[3]前記生細胞が、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な細胞であることを特徴とする前記[2]に記載の方法。
[4]前記密度勾配媒体がポリビニルピロリドンの被膜を有するコロイド状シリカ製密度勾配媒体であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]上層に濃度5%〜40%(v/v)、下層に濃度50%〜95%(v/v)の密度勾配媒体液を用いることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]上層に濃度8%〜20%(v/v)、下層に濃度60%〜80%(v/v)の密度勾配媒体液を用いることを特徴とする前記[5]に記載の方法。
[7]上層に濃度10%(v/v)、下層に濃度70%(v/v)の密度勾配媒体液を用いることを特徴とする前記[6]に記載の方法。
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法により得られ、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞。
[9]前記[8]に記載の細胞を用いて、該細胞の細胞表面マーカーを分析することを特徴とする骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の細胞表面マーカー分析方法。
[10]骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去するためのキットであって、高濃度の密度勾配媒体液が入っている第一容器及び低濃度の密度勾配媒体液が入っている第二容器を備えるキット。
本発明により細胞表面マーカーを分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を得る方法を提供することができる。
本発明の実施の一形態を示す概念図である。 10%−70%界面に存在する細胞のフローサイトメトリーの分析結果を示す図である。 0%−100%界面に存在する細胞のフローサイトメトリーの分析結果を示す図である。 5%−100%界面に存在する細胞のフローサイトメトリーの分析結果を示す図である。 マウス骨芽細胞のフローサイトメトリーの分析結果を示す図である。
本発明は、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去する方法(以下、本発明の石灰化物除去方法という)を提供する。本発明の石灰化物除去方法は、2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液を重層し、さらにその上層に骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を重層して遠心分離する工程を含んでいればよく、本発明の目的を損なわない限り、さらに他の工程を含んでいてもよい。
骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞は、間葉系幹細胞由来の細胞であって、骨芽細胞に至るまでの分化過程にある石灰化物形成能を有する細胞であればよい。骨芽細胞に分化し得る細胞は、例えば、間葉系幹細胞、骨芽前駆細胞等が挙げられる。
骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の取得方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えばJournal of Cellular Biochemistry 2009年 108巻 368−377頁に記載の方法が知られている。骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の供給源となる生物としては、ニワトリ等の鳥類、ヒト、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、ウサギ、ブタ等の哺乳類が挙げられる。
例えば、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の供給源がマウスの場合、間葉系幹細胞は大腿骨又は脛骨から骨髄細胞を採取し、適切な条件で培養した後、抗Lineage/CD45磁気ビーズによるネガティブセレクション等の方法で精製することによって取得することができ、骨芽細胞又は分化過程にある細胞は間葉系幹細胞を骨芽細胞分化誘導培地にて一定期間(例えば1週間)培養すること等によって取得することができる。
密度勾配媒体は特に限定されるものではなく、例えば、ショ糖、グリセロール、コロイド状シリカ製密度勾配媒体(シリカゾル)等が挙げられる。中でも、コロイド状シリカ製密度勾配媒体が好ましい。「コロイド状シリカ製密度勾配媒体」とは、表面処理されたコロイド状シリカを分散させて調製した密度勾配媒体をいう。コロイド状シリカ製密度勾配媒体として、具体的には、例えば、パーコール(商品名、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)を挙げることができる。パーコールはポリビニルピロリドンの被膜を持つコロイド状シリカ製品で、密度1.13g/mLの溶液として販売されており、密度勾配遠心用媒体として、広く使用されている。ただし、コロイド状シリカ製密度勾配媒体はパーコールに限定されるものではなく、同等の性質を有するものであれば、好適に用いることができる。
2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液のうち、高濃度の密度勾配媒体液の濃度は50%〜95%(v/v)であることが好ましく、60%〜80%(v/v)であることがさらに好ましく、70%(v/v)であることが特に好ましい。低濃度の密度勾配媒体液の濃度は5%〜40%(v/v)であることが好ましく、8%〜20%(v/v)であることがさらに好ましく、10%(v/v)であることが特に好ましい。
目的の濃度の密度勾配媒体液は密度勾配媒体を、Hanks溶液、αMEM等の生理的塩類溶液又は培地で希釈することにより調製することができる。
遠心分離する工程では、2種類の密度勾配媒体液を遠心管に重層し、さらにその上層に骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を重層して遠心する。重層する順番は下層から順に高濃度の密度勾配媒体液、低濃度の密度勾配媒体液、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞である。骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞は、培地、生理的塩類溶液に懸濁された状態で重層することが好ましい。細胞懸濁液の細胞濃度は、特に限定されないが、例えば、1.0×10〜1.0×10個/mlが好ましく、5.0×10〜1.0×10個/mlがより好ましく、1.0×10〜5.0×10個/mlが特に好ましい。また、遠心管は遠心分離機に対応した形態のものであればよく、市販の遠心管を用いることができる。
遠心分離する工程では、遠心加速度は180〜4390Gが好ましく、400〜2810Gがより好ましく、700〜1580Gが特に好ましい。時間は1〜30分間が好ましく、5〜25分間がより好ましく、8〜20分間がさらに好ましく、10〜15分間が特に好ましい。温度は、2〜30℃が好ましく、2〜20℃がより好ましく、2〜10℃が特に好ましい。
遠心分離によって、高濃度の密度勾配媒体液より下層に石灰化物が沈降し、低濃度の密度勾配媒体液に死細胞が浮遊し、2種類の密度勾配媒体液の液−液界面に石灰化物が除去された骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の生細胞が濃縮される。
2種類の密度勾配媒体液の液−液界面に位置している層を回収し、さらに遠心分離することにより、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な生細胞を得ることができる。
この細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な生細胞は、本発明に含まれ、以下、本発明の細胞という。本発明の細胞は石灰化物が除去されているので、石灰化物によるノイズを受けることなく、本発明の細胞の細胞表面マーカーをフローサイトメトリー等の免疫学的手法で分析することができる。本発明の細胞は、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能である点で、自然界に存在する骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞と異なる。
本発明の細胞を用いて、該細胞の細胞表面マーカーを分析する骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の細胞表面マーカーを分析することができる。この骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の細胞表面マーカーを分析する方法は本発明に含まれ、以下、本発明の細胞表面マーカー分析方法という。
本発明の細胞の細胞表面マーカーを分析することにより、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の細胞表面マーカーを分析することができる。本発明の細胞表面マーカー分析方法はフローサイトメトリーに限定されず、例えば、免疫組織化学染色等を用いることができる。フローサイトメトリーでは公知の手法、すなわちフローサイトメーターを用いることにより液体中に懸濁する細胞等の個々の物理的・化学的・生物学的性状を分析し得る。
本発明は、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去するためのキッ
媒体液が入っている第一容器及び低濃度の密度勾配媒体液が入っている第二容器を備えていればよく、本発明の目的を損なわない限り、さらに他の物を備えていてもよい。
高濃度の密度勾配媒体液が入っている第一容器は、本発明の石灰化物除去方法の遠心分離に直接使用可能である遠心管であることが好ましく、市販の遠心管を用いることができる。第二容器は特に限定されない。
本発明のキットを本発明の石灰化物除去方法に使用することで、骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去することができる。本発明のキットを本発明の石灰化物除去方法に使用して本発明の細胞が得られる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔1:細胞の準備〕
生後4〜6週齢のC57BL/6Jマウスの大腿骨及び脛骨から骨髄細胞を採取し、10mlのαMEM(10%FCS及びペニシリン・ストレプトマイシン含有)の入った10cmディッシュ上に播種した。その後、2〜3日ごとに培養液を交換し、14日目にトリプシン・EDTA液にて付着細胞を剥がし、間葉系幹細胞を回収した。
その後、間葉系幹細胞を抗Lineage/CD45磁気ビーズによるネガティブセレクションによって精製した。精製した細胞集団を10%FBS含有α−MEMに50μg/mlアスコルビン酸、10mMグリセルフォスフェイト及び10−8Mデキサメタゾン(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を添加した骨芽細胞分化誘導培地にて5×10個/5mlの濃度で1週間培養し、トリプシン−EDTA(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)にて付着細胞を回収し、細胞懸濁液を得た。
〔2:遠心分離〕
(実施例1)
15ml遠心チューブに、Hanks溶液で希釈した70%percoll(商品名、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)液2mlをあらかじめ入れた(下層)。別の容器にHanks溶液で希釈した10%percoll液を入れた。骨芽細胞を分離するときに10%percoll液2ml(上層)、細胞懸濁液1mlを順に上記遠心チューブに注ぎ込んだ。AX−310(株式会社トミー精工社製)を用いて遠心チューブを4℃、1580Gで10分間遠心分離した(図1を参照)。
(比較例1)
下層に100%percoll液、上層に0%percoll液(100%Hanks溶液)を用いた以外は実施例1と同様の手順で行った。
(比較例2)
下層に100%percoll液、上層に5%percoll液を用いた以外は実施例1と同様の手順で行った。
〔3:フローサイトメトリー〕
両percoll液の界面に位置している層を15ml遠心チューブに回収し、4℃、5分間、400Gにて遠心分離した。遠心分離後、100〜200μlのFACSバッファー(2%FBS含有PBSに最終濃度1mMになるようにEDTAを添加したもの)にて懸濁し、1.5mlエッペンドルフチューブに注ぎ込んだ。エッペンドルフチューブ内の細胞懸濁液をguava easy Cyte6−2L(Millipore社製)にてフローサイトメトリー分析を行い、両溶液の界面に位置している層において骨芽細胞の生細胞が単離されているかどうかを確認した。
〔4:結果〕
実施例1(10%percoll液−70%percoll液)において石灰化物及び死細胞が除去された骨芽細胞の生細胞が単離されたことを確認した(図2)。また、石灰化物が70%percoll液の下層に沈降し、死細胞が10%percoll液に浮遊していることを確認した。
一方、比較例1(0%percoll液−100%percoll液)及び比較例2(5%percoll液−100%percoll液)では細胞は回収されたがフローサイトメトリーにての細胞表面マーカーの分析を行うための細胞数が十分ではないこと、及び石灰化物及び死細胞が混入することが確認された(図3、4)。なお、遠心分離を行わない場合には多量の石灰化物がノイズとなり正確な細胞表面マーカー解析の妨げになることが確認された(図5)。

Claims (10)

  1. 骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去する方法であって、2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液を重層し、さらにその上層に骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞を重層して遠心分離する工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 石灰化物が除去された骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の生細胞が、2種類の濃度の異なる密度勾配媒体液の液−液界面に濃縮されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記生細胞が、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な細胞であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記密度勾配媒体がポリビニルピロリドンの被膜を有するコロイド状シリカ製密度勾配媒体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 上層に濃度5%〜40%(v/v)、下層に濃度50%〜95%(v/v)の密度勾配媒体液を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 上層に濃度8%〜20%(v/v)、下層に濃度60%〜80%(v/v)の密度勾配媒体液を用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 上層に濃度10%(v/v)、下層に濃度70%(v/v)の密度勾配媒体液を用いることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の方法により得られ、細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで分析可能な骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞。
  9. 請求項8に記載の細胞を用いて、該細胞の細胞表面マーカーを分析することを特徴とする骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞の細胞表面マーカー分析方法。
  10. 骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞から石灰化物を除去するためのキットであって、高濃度の密度勾配媒体液が入っている第一容器及び低濃度の密度勾配媒体液が入っている第二容器を備えるキット。
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