JP2015096856A - バイオマーカーを用いて強直性脊椎炎を診断するための方法及び組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】強直性脊椎炎(AS)の治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合部などのTNFα阻害剤の効力を決定する方法を提供する。【解決手段】ヒトTNFα抗体を用いた治療後にAS患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベルを、病態に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較すること;及び患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルがコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価すること、を含み、治療後の患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ASの治療のためのヒトTNFα抗体の効力が示される。【選択図】なし
Description
関連出願
本願は、その内容を参照により本明細書に組み込む2005年11月1日に出願された米国仮出願第60/732,444号の優先権を主張するものである。
本願は、その内容を参照により本明細書に組み込む2005年11月1日に出願された米国仮出願第60/732,444号の優先権を主張するものである。
本願は、その各々を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に関係する。本願は、2001年3月7日に出願された米国特許出願第09/801,185号、2002年11月22日に出願された米国特許出願第10/302,356号、2002年6月5日に出願された米国特許出願第10/163657号、2002年4月26日に出願された米国特許出願第10/133715号、2002年8月16日に出願された米国特許出願第10/222140号、2003年10月24日に出願された米国特許出願第10/693233号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622932号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623039号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623076号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623065号、2003年に7月18日出願された米国特許出願第10/622928号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623075号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623035号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622683号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622205号、2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/622210号、及び2003年7月18日に出願された米国特許出願第10/623318号にも関係する。本願は、米国特許出願第11/104117号にも関係する。これらの特許及び特許出願の各々の内容全体を参照により本明細書に組み込む。
高レベルのTNFは、病的炎症において重要な役割を果たす。(TNFα)とも称されるTNFは、敗血症、感染症、自己免疫疾患、移植拒絶及び移植片対宿主疾患を含めて、多様なヒト疾患及び障害の病態生理に関係している(例えば、Moeller et al.(1990) Cytokine 2:162、Moeller他の米国特許第5,231,024号、Moeller,A.他の欧州特許公報第260 610号B1、Vasilli (1992) Annu. Rev. Immunol. 10:411、Tracey and Cerami(1994) Annu. Rev. Med. 45:491参照)。
高レベルのTNFと関連があり(Lange et al. (2000) Eur J Med Res. 5(12):507)、進行性脊椎硬直、及び可動性の制限を生じる一般的な炎症性リウマチ性疾患である強直性脊椎炎(AS)。ASは、脊椎及び仙腸関節の慢性炎症の一形態であり、脊椎及び脊椎周囲のとう痛及び硬直を引き起こし得る。次第に、慢性脊椎炎症(脊椎炎)は、強直症と称するプロセスである、椎骨の完全な接合(融合)をもたらし得る。強直症は、脊椎の可動性の喪失をもたらし得る。
ASは、症候の検査、理学的検査、及びX線分析を含めて、幾つかの方法を組み合わせて診断されることが多い。AS患者の症候としては、脊椎及び仙椎域のとう痛及び朝のこわばりが挙げられ、他の関節、腱及び器官の付随的炎症を伴う場合もあれば、伴わない場合もある。しかし、背下部の硬直及びとう痛は多数の他の症状でも見られるので、ASの初期症候は極めて誤解しやすく、その結果、ASの診断が考慮されるまでに時間がかかる場合がある。また、患者の理学的検査によって、関節の炎症徴候、及び可動域の減少が明らかになる場合があり、特に脊椎において明白であることが多い。背下部及び/又は頚部の柔軟性が低下し得る。診断の更なる手掛かりは、脊椎のX線異常、又は血液検査遺伝マーカーHLA−B27遺伝子の存在によって示され得る。
構造的損傷は、ASに付随し、関節の軟骨及び骨における分解及び吸収によって生じ、関節破壊をもたらす。治療上、AS患者の症候と、ASに付随する関節破壊によって引き起こされる構造的損傷との両方に対処することが重要である。
ASの伝統的治療としては、脊椎及び他の関節のとう痛及び硬直を軽減させるために患者に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与することが挙げられる。一般に使用されるNSAIDとしては、インドメタシン(Indocin)、トルメチン(Tolectin)、スリンダク(Clinoril)、ナプロキセン(Naprosyn)、ジクロフェナク(Voltaren)などが挙げられる。より最近では、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブなどの抗TNF生物学的薬剤は、ASに付随する症候の軽減に有効であることが判明した。
Moeller et al.(1990) Cytokine 2:162
Vasilli (1992) Annu. Rev. Immunol. 10:411
Tracey and Cerami(1994) Annu. Rev. Med. 45:491
Lange et al. (2000) Eur J Med Res. 5(12):507
発明の要旨
抗TNF生物学的薬剤を用いたAS治療の改善にもかかわらず、開業医が患者の症候を診断し、適切な治療計画を推奨するのを支援するために診断検査及び予後検査が必要である。また、患者の病態の改善をより良く評価し、それによって患者により良い医療を提供し、治療コストを削減することができるように、診断検査及び予後検査が必要である。
抗TNF生物学的薬剤を用いたAS治療の改善にもかかわらず、開業医が患者の症候を診断し、適切な治療計画を推奨するのを支援するために診断検査及び予後検査が必要である。また、患者の病態の改善をより良く評価し、それによって患者により良い医療を提供し、治療コストを削減することができるように、診断検査及び予後検査が必要である。
本発明は、特にASに付随した構造的損傷に関して、患者のAS病態全体の改善を判定するのに使用することができるバイオマーカーを提供する。本発明は、ASに関係する軟骨分解及び/又は滑膜炎を軽減するTNF阻害剤の効力を決定する方法を記述する。本発明は、軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルに基づいて、TNF阻害剤、例えばアダリムマブを用いた治療の候補であるAS患者を特定する方法も含む。
本発明は、強直性脊椎炎(AS)の治療に対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法を記述する。前記方法は、ヒトTNFα抗体を用いた治療後にAS患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベルを、病態に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することと、患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルがコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、ヒトTNFα抗体を用いた治療後に患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ASの治療に対するヒトTNFα抗体の効力が示される。
本発明は、患者におけるコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを測定することと、コラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを、強直性脊椎炎(AS)に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することとを含み、バイオマーカーレベルの低下によって、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、患者におけるASに付随した構造的損傷の進行速度を低下させるのに有効であることが示される、患者におけるASに付随した構造的損傷の進行の遅延に対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力をモニターする方法も提供する。
本発明は、患者におけるASの治療に対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を予測する方法を含む。前記方法は、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部を用いた治療後に患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベルを、ASに関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することと、患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルがコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が患者におけるASの治療に有効であることが予測される。
本発明は、強直性脊椎炎(AS)患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの治療前レベルを、前記患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの治療後レベルと比較することを含み、治療後バイオマーカーレベルの方が低いことによってヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力が示される、ASに対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法も記述する。
一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーはII型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である。別の実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーは尿中II型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である。
一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーはマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である。別の実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーは血清メタロプロテアーゼ3(MMP3)である。
一実施形態においては、ASに付随した構造的損傷を改善するためのヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力が決定される。
一実施形態においては、本発明の方法は、患者のC反応性タンパク質(CRP)レベルを病態に関連した既知標準CRPレベルと比較することと、
患者のCRPレベルが既知標準CRPレベルよりも高いかどうかを評価することとを更に含み、既知標準よりも低いC反応性タンパク質レベルによって治療の効力が示される。
患者のCRPレベルが既知標準CRPレベルよりも高いかどうかを評価することとを更に含み、既知標準よりも低いC反応性タンパク質レベルによって治療の効力が示される。
一実施形態においては、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部は、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する。
一実施形態においては、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部は、以下の特性を有し、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
別の実施形態においては、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部は、配列番号3のアミノ酸配列、又は位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4のアミノ酸配列、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
本発明の更に別の実施形態においては、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む。
更に別の実施形態においては、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部はアダリムマブである。
本発明の更に別の実施形態においては、バイオマーカーレベルは、ELISAによって測定される。
本発明は、コラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーを特異的に認識する検出可能な薬剤と、使用説明書とを含み、患者から試料を単離するための試薬を場合によっては含む、上記方法のいずれかを実施するためのキットも含む。
一実施形態においては、検出可能な薬剤は、尿中CTX−II又は血清MMP3を認識する。
本発明は、患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法も提供する。前記方法は、TNFα阻害剤を用いた治療後に患者から得られたCTX−IIの所定レベルを、病態に関連したCTX−IIの既知標準レベルと比較することと、患者の治療後のCTX−IIレベルがCTX−IIの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、患者から得られたCTX−IIレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される。
本発明は、患者における強直性脊椎炎(AS)に関連した構造的損傷の軽減に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法も更に提供する。前記方法は、TNFα阻害剤を用いた治療後にAS患者から得られたCTX−IIの所定レベルを、病態に関連したCTX−IIの既知標準レベルと比較することと、患者の治療後のCTX−IIレベルがCTX−IIの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、TNFα阻害剤を用いた治療後に患者から得られたCTX−IIレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASに付随した構造的損傷を軽減するのに有効であることが示される。
本発明は、患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法も提供する。前記方法は、患者から得られたCTX−IIの所定の治療後レベルを、患者から得られたCTX−IIの所定の治療前レベルと比較することと、治療後のCTX−IIレベルが治療前のCTX−IIレベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、患者から得られた治療後のCTX−IIレベルが治療前のCTX−IIレベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される。
一実施形態においては、治療後のCTX−IIレベルは、治療前のCTX−IIレベルよりも少なくとも約5−10%低下する。別の実施形態においては、治療後のCTX−IIレベルは、治療前のCTX−IIレベルよりも少なくとも約9%低下する。別の実施形態においては、治療後のCTX−IIレベルは、ベースライン又は既知標準レベルに対して、少なくとも約5−100%、約5−80%、約5−60%、約5−45%、約5−40%、約5−35%、約5−30%、約5−25%、約5−20%、約5−15%、約5−10%、約6−9%、約7−8%又は約9%である。
一実施形態においては、治療後のMMP−3レベルは、AS患者のベースライン又は既知標準レベルに対して、少なくとも約5−50%、約5−45%、約5−40%、約5−35%、約5−30%、約5−25%、約5−20%、約5−15%、約5−13%、約6−12%、約7−11%又は約8%である。更なる実施形態においては、TNF阻害剤の効力は、MMP−3レベルがAS患者のベースライン又は既知標準レベルよりも少なくとも約12%減少したときに証明される。
一実施形態においては、CTX−IIは尿中CTX−IIである。一実施形態においては、MMP−3は血清MMP−3である。
一実施形態においては、CTX−IIレベル又はMMP−3レベルは、ELISAによって測定される。
本発明は、AS患者がアダリムマブを用いた治療の候補であるかどうかを判定する方法も記述する。前記方法は、前記患者のコラーゲン分解バイオマーカーレベルを、非罹患対象から得られた既知標準コラーゲン分解バイオマーカーレベルと比較することと、患者のコラーゲン分解バイオマーカーレベルが既知標準コラーゲン分解バイオマーカーレベルよりも高いかどうかを評価することとを含み、バイオマーカーレベルの方が高いことによって、前記患者がアダリムマブを用いた治療の候補であることが示される。
一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーはII型コラーゲンCテロペプチドである。一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーレベルは、患者の尿中II型コラーゲンCテロペプチド濃度を測定することによって求められる。
一実施形態においては、本発明は、患者の滑膜炎バイオマーカーレベルを、非罹患対象から得られた既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルと比較することと、患者の滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルよりも高いかどうかを評価することとを更に含み、患者の滑膜炎バイオマーカーレベルの方が高いことによって、患者がアダリムマブを用いた治療の候補であることが示される。
一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーはマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である。
本発明は、AS患者がアダリムマブを用いた治療の候補であるかどうかを判定する方法を含む。前記方法は、前記患者の滑膜炎バイオマーカーレベルを、非罹患対象から得られた既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルと比較することと、患者の滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルよりも高いかどうかを評価することとを含み、バイオマーカーレベルの方が高いことによって、前記患者がアダリムマブを用いた治療の候補であることが示される。
一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーはマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である。
一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーレベルは、患者の血清中MMP3濃度を測定することによって求められる。
一実施形態においては、本発明は、患者のコラーゲン分解バイオマーカーレベルを、非罹患対象から得られた既知標準コラーゲン分解バイオマーカーレベルと比較することと、患者のコラーゲン分解バイオマーカーレベルが既知標準コラーゲン分解バイオマーカーレベルよりも高いかどうかを評価することとを更に含み、患者のコラーゲン分解バイオマーカーレベルの方が高いことによって、患者がアダリムマブを用いた治療の候補であることが示される。
一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーはII型コラーゲンCテロペプチドである。
本発明は、対象におけるコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを測定することを含む、強直性脊椎炎(AS)に対する治療処置の効力をモニターする方法を含む。バイオマーカーレベルの低下又は変化によって、ASにおける構造的損傷の進行速度の低下又は変化が示される。
一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーは尿中II型コラーゲンCテロペプチドである。
一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーは血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である。
一実施形態においては、治療処置は、アダリムマブの投与である。
本発明は、AS患者における構造的損傷を判定する方法も含む。前記方法は、患者のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのベースラインレベルを測定して、前記患者のベースラインバイオマーカーレベルを得ることと、ある時間後に前記患者におけるコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを測定して、前記患者のベースライン後(post−baseline)バイオマーカーレベルを得ることと、前記患者のベースラインバイオマーカーレベルをベースライン後バイオマーカーレベルと比較することと、患者のベースライン後バイオマーカーレベルが、患者のベースラインバイオマーカーレベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、ベースライン後バイオマーカーレベルの方が低いことによって、構造的損傷の軽減が示される。
本発明は、アダリムマブをAS患者に投与することを含む、前記患者のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーを調節する方法を更に含む。
一実施形態においては、TNFα阻害剤は、TNFα抗体若しくはその抗原結合部、TNF融合タンパク質又は組換えTNF結合タンパク質からなる群から選択される。
一実施形態においては、TNF融合タンパク質はエタネルセプトである。
一実施形態においては、TNFα抗体又はその抗原結合部は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び多価抗体からなる群から選択される。
一実施形態においては、抗TNFα抗体又はその抗原結合部は、インフリキシマブ、ゴリムマブ及びアダリムマブからなる群から選択される。
一実施形態においては、ヒト抗体又はその抗原結合部は、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する。
一実施形態においては、ヒト抗体又はその抗原結合部は、以下の特性を有し、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
一実施形態においては、ヒト抗体又はその抗原結合部は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む。
一実施形態においては、本発明は、患者から得られた滑膜炎バイオマーカーの所定の治療後レベルを、ASに関連した滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することと、治療後の滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルよりも低いかどうかを評価することとを更に含み、治療後の滑膜炎バイオマーカーが既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される。
一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーはMMP−3である。
本発明は、上記方法を実施するためのキットも記述する。前記キットは、CTX−IIを特異的に認識する検出可能な薬剤と、使用説明書とを含み、患者から試料を単離するための試薬を場合によっては含む。一実施形態においては、キットは、MMP−3を特異的に認識する検出可能な薬剤を更に含む。
発明の詳細な説明
I. 定義
本発明をより容易に理解できるように、幾つかの用語をまず定義する。
I. 定義
本発明をより容易に理解できるように、幾つかの用語をまず定義する。
本明細書では「バイオマーカー」という用語は、ほ乳動物の組織又は細胞に由来する試料中又は試料上でのその発現を当分野の標準方法(及び本明細書に開示する標準方法)によって検出することができる分子であって、分子が得られた対象の状態を予測する、又は表す分子、すなわち、遺伝子(又は前記遺伝子をコードする核酸)、タンパク質、炭水化物構造又は糖脂質を一般に指す。バイオマーカーがタンパク質である場合には、発現の調節又は変化は、種々の翻訳後修飾による調節を包含する。バイオマーカーを使用して、症状の改善及び悪化を含めて、疾患活動性をバイオマーカーレベルに基づいて識別することができる。したがって、一実施形態においては、本発明に有用であるバイオマーカーは、その発現が、症状、例えば脊椎関節症を有する患者において、正常な対照、すなわち非罹患対象と比較して(上方又は下方に)調節される任意の分子である。一実施形態においては、本発明のバイオマーカーの1、2、3及びそれを超える選択されたセットを、抗TNF療法に対する患者の反応を確認するための迅速な診断又は予後のエンドポイントとして使用することができる。
「コラーゲン分解バイオマーカー」という用語は、コラーゲンの破壊に伴う分子、すなわち、遺伝子(又は前記遺伝子をコードする核酸)、タンパク質、炭水化物構造又は糖脂質を指す。コラーゲン分解バイオマーカーを用いて、試料又は組織が得られた対象における疾患活動性、すなわちコラーゲン破壊を識別する。一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーは、コラーゲンの断片、例えばII型コラーゲンの断片である。一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーはII型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である。
「滑膜炎バイオマーカー」という用語は、滑膜炎、すなわち滑膜の炎症に伴う分子、すなわち、遺伝子(又は前記遺伝子をコードする核酸)、タンパク質、炭水化物構造又は糖脂質を指す。滑膜炎バイオマーカーを使用して、患者の滑膜又は滑膜コラーゲンの代謝回転、増殖、分解、炎症、破壊、解体、病理学的再構築又は分解の増大を示すことができる。一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーは、細胞外マトリックス(ECM)分解に伴うエンドペプチダーゼ、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼである。一実施形態においては、本発明で使用される滑膜炎バイオマーカーはMMP−3である。
「既知標準レベル」又は「対照レベル」という用語は、患者の試料に由来するバイオマーカーレベルを比較するために用いられるバイオマーカーの一般に容認された、又は所定のレベルを指す。一実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルは、AS患者に基づき、したがって、病態を表す。別の実施形態においては、バイオマーカーの既知標準レベルは、ASに罹患していない対象の非罹患状態、すなわち非疾患状態を示す。
あるバイオマーカーの既知標準レベルと比較したときに、既知標準レベルからのずれは、病態の改善又は悪化を一般に示す。或いは、あるバイオマーカーの既知標準レベルと比較したときに、既知標準レベルと同等であることは、疾患活動性の確証、非病態の確証を一般に示し、患者のバイオマーカーレベルが疾患の治療処置後に得られた場合には、患者の病態を改善する療法の失敗を一般に示す。
本明細書では「発現」という用語は、本発明のバイオマーカーの発現の検出に関連して使用するときには、バイオマーカータンパク質をコードする遺伝子の転写を検出すること、バイオマーカータンパク質の翻訳を検出すること、及び/又はより大きいタンパク質の代謝、例えば、CTX−II断片を生成するII型コラーゲンの分解によって生じるバイオマーカータンパク質を検出することを表し得る。バイオマーカーの発現を検出することは、バイオマーカーが発現されたか否かを能動的に求める行為を指す。発現を定量することは、所与のバイオマーカーのレベル、例えばng/mlを測定する行為を指す。発現の検出及び/又は定量は、バイオマーカー発現が既知標準レベルよりも増加したか、減少したか、又は実質的に不変であるかどうかを判定することを含み得る。したがって、発現を定量及び/又は検出する段階は、バイオマーカーの発現が実際に増加又は減少する必要はなく、バイオマーカーが発現しないことを検出すること、又はバイオマーカーの発現が変化しない、若しくは異ならないことを検出すること(すなわち、対照と比較して、バイオマーカーの有意な発現も、バイオマーカーの発現の有意な変化もないことを検出すること)も含み得る。
本明細書では「レベル」又は「量」という用語は、バイオマーカーの測定可能な量を指す。量は、(a)単位体積当たりの分子、モル若しくは重量又は細胞として測定される絶対量、又は(b)例えば濃度測定分析によって測定される相対量であり得る。好ましい実施形態においては、バイオマーカーのRNA及び/又はタンパク質のレベルを測定する。
本明細書では「対象」又は「患者」という用語は、ヒト又は非ヒト動物を指す。
本明細書では「試料」という用語は、対象から得られた類似の細胞又は組織の収集物を指す。組織又は細胞の試料源は、新鮮な凍結及び/又は保存された器官若しくは組織試料若しくは生検若しくは吸引液からの固形組織;血液若しくは任意の血液成分;又は血液、血清、血しょう、尿、唾液、汗、滑液などの体液であり得る。一実施形態においては、滑膜炎バイオマーカーは血清試料から得られる。一実施形態においては、軟骨分解バイオマーカーは尿試料から得られる。
本明細書では(hTNFα又は単にhTNFと略記する)「ヒトTNFα」という用語は、17kDの分泌形態及び26kDの膜結合形態として存在するヒトサイトカインを指すものとする。このヒトサイトカインの生物活性形態は、非共有結合した17kD分子の3量体で構成される。hTNFαの構造は、例えば、Pennica, D., et al.(1984) Nature 312:724−729、Davis, J.M., et al.(1987) Biochemistry 26:1322−1326及びJones, E.Y., et al.(1989) Nature 338:225−228に更に詳細に記載されている。ヒトTNFαという用語は、組換えヒトTNFα(rhTNFα)を含むものとする。組換えヒトTNFαは、標準組換え発現方法によって調製することができ、又は市販品(R&D Systems、カタログ番号210−TA、Minneapolis、MN)を購入することができる。TNFαはTNFとも表される。
「TNFα阻害剤」という用語は、TNFα活性を妨害する薬剤を含む。この用語は、本明細書並びに米国特許第6,090,382号、同6,258,562号、同6,509,015号、米国特許出願第09/801185号及び同10/302356号に記載された抗TNFαヒト抗体及び抗体部分の各々も含む。一実施形態においては、本発明で使用されるTNFα阻害剤は、インフリキシマブ(参照により本明細書に組み込む米国特許第5,656,272号に記載のRemicade(登録商標)、Johnson and Johnson)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファIgG4抗体)、CDP 870(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファ抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO 148(ゴリムマブ;Medarex and Centocor、国際公開第02/12502号参照)及びアダリムマブ(米国特許第6,090,382号にD2E7として記載されているHumira(登録商標)Abbott Laboratories、ヒト抗TNF mAb)を含めて、抗TNFα抗体又はその断片である。本発明に使用することができる追加のTNF抗体は、その各々を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,593,458号、同6,498,237号、同6,451,983号及び同6,448,380号に記載されている。別の実施形態においては、TNFα阻害剤は、TNF融合タンパク質、例えばエタネルセプト(参照により本明細書に組み込む国際公開第91/03553号及び同09/406476号に記載されているEnbrel(登録商標)、Amgen)である。別の実施形態においては、TNFα阻害剤は、組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)である。
本明細書では「抗体」という用語は、4本のポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互に連結された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とからなる免疫グロブリン分子を指すものとする。各重鎖は、(HCVR又はVHと略記する)重鎖可変領域と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3個のドメインCH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、(LCVR又はVLと略記する)軽鎖可変領域と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1個のドメインCLからなる。VH及びVL領域は、枠組み領域(FR)と称するより保存的である領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で整列する3個のCDRと4個のFRで構成される。本発明の抗体は、その各々を参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に更に詳細に記載されている。
本明細書では、抗体の「抗原結合部」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、hTNFα)に特異的に結合する能力を保持する1個以上の抗体断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって発揮され得ることが示された。抗体の「抗原結合部」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、すなわちVL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2個のFab断片を含む二価の断片、(iii)VHとCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一の腕のVLとVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989) Nature 341:544−546)、及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。また、Fv断片の2個のドメインVLとVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLとVHは、VL領域とVH領域が1対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426及びHuston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883を参照されたい。)として生成させることができる合成リンカーを用いて組換え方法によって連結することができる。かかる単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部」という用語に包含されるものとする。二重特異性抗体などの単鎖抗体の他の形態も包含される。二重特異性抗体は、VHドメインとVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短かすぎて同じ鎖上の2個のドメインの対形成が不可能であるリンカーを用いることによって、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2個の抗原結合部位を生成させた、二価の二重特異的な抗体である(例えば、Holliger et al.(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−6448;Poljak et al.(1994) Structure 2:1121−1123参照)。本発明の抗体部分は、その各々を参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に更に詳細に記載されている。
結合断片は、組換えDNA技術によって、又は完全な免疫グロブリンの酵素切断若しくは化学切断によって生成される。結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Fv、単鎖、単鎖抗体などが挙げられる。「二重特異的」又は「二官能性」免疫グロブリン又は抗体以外は、免疫グロブリン又は抗体は、その結合部位の各々が同一であると理解される。「二重特異的」又は「二官能性抗体」は、2組の異なる重鎖/軽鎖対と2個の異なる結合部位とを有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異的抗体は、ハイブリドーマの融合、又はFab’断片の連結を含めて、種々の方法によって作製することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315−321(1990);Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547−1553(1992)を参照されたい。
本明細書では「保存的アミノ酸置換」は、1個のアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含めて、当分野で定義されている。
「キメラ抗体」とは、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列の各々の一部が、特定の種に由来する抗体、又は特定のクラスに属する抗体の対応する配列と相同であり、重鎖及び軽鎖の残りのセグメントが、別の種由来の対応する配列と相同である抗体を指す。一実施形態においては、本発明は、軽鎖と重鎖の両方の可変領域が、ほ乳動物の一種に由来する抗体の可変領域を模倣し、定常部分が、別の種に由来する抗体中の配列と相同である、キメラ抗体又は抗原結合断片を特徴にする。本発明の好ましい実施形態においては、キメラ抗体は、マウス抗体由来のCDRをヒト抗体の枠組み領域にグラフトさせることによって作製される。
「ヒト化抗体」とは、(受容体免疫グロブリン又は抗体と称する)ヒト抗体鎖に実質的に由来する可変領域枠組み残基を含む少なくとも1本の鎖と、非ヒト抗体(例えば、マウス)に実質的に由来する少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)とを含む抗体を指す。CDRのグラフトに加えて、ヒト化抗体は、親和性及び/又は免疫原性を改善するために更なる変更が典型的にはなされる。
「多価抗体」という用語は、1個を超える抗原認識部位を含む抗体を指す。例えば、「二価の」抗体は2個の抗原認識部位を有するのに対して、「四価の」抗体は4個の抗原認識部位を有する。「単一特異的」、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」などの用語は、(抗原認識部位の数に対立するものとして)多価抗体中に存在する異なる抗原認識部位特異性の数を指す。例えば、「単一特異的」抗体の抗原認識部位はすべて同じエピトープに結合する。「二重特異性」又は「双特異性」抗体は、第1のエピトープに結合する少なくとも1個の抗原認識部位と、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合する少なくとも1個の抗原認識部位とを有する。「多価の単一特異的」抗体は、全部が同じエピトープに結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価の二重特異性」抗体は、複数の抗原認識部位を有し、その一部は第1のエピトープに結合し、その一部は、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合する。
本明細書では「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒト抗体は、例えばCDR中、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為若しくは部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって、導入される変異)を含み得る。しかし、本明細書では「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別のほ乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒト枠組み配列上にグラフトされた抗体を含まないものとする。
本明細書では「組換えヒト抗体」という用語は、(以下に更に記述する)宿主細胞に移入された組換え発現ベクターを用いて発現される抗体、(以下に更に記述する)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したトランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992) Nucl. Acids Res. 20:6287参照)、他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体など、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離されたすべてのヒト抗体を含むものとする。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。しかし、ある実施形態においては、かかる組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(又はヒトIg配列を導入したトランスジェニック動物を使用するときには、インビボでの体細胞変異誘発)を受け、したがって組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関係するものの、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリーに天然には存在し得ない配列である。
かかるキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び双特異性抗体は、当分野で公知の組換えDNA技術、例えば、国際出願第PCT/US86/02269号;欧州特許出願第184,187号;同171,496号;同173,494号;国際公開第86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Better et al.(1988) Science 240:1041−1043;Liu et al.(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439−3443;Liu et al.(1987) J. Immunol. 139:3521−3526;Sun et al.(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214−218;Nishimura et al.(1987) Cancer Res. 47:999−1005;Wood et al.(1985) Nature 314:446−449;Shaw et al.(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553−1559);Morrison(1985) Science 229:1202−1207;Oi et al.(1986) BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jones et al.(1986) Nature 321:552−525;Verhoeyan et al.(1988) Science 239: 1534;及びBeidler et al.(1988) J. Immunol. 141:4053−4060、Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,530,101号、同5,585,089号、同5,693,761号、同5,693,762号、Selick他、国際公開第90/07861号並びにWinter、米国特許5,225,539号に記載の方法を用いて作製することができる。
本明細書では「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、hTNFα以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかし、hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、(以下で更に詳細に考察する)他の種由来のTNFα分子などの他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
本明細書では「中和抗体」(又は「hTNFα活性を中和した抗体」)は、hTNFαと結合することによってhTNFαの生物活性が抑制される抗体を指すものとする。このhTNFαの生物活性の抑制は、(インビトロ又はインビボで)hTNFαによって誘導される細胞傷害性、hTNFαによって誘導される細胞活性化、hTNFα受容体へのhTNFαの結合など、hTNFα生物活性の1つ以上の指標を測定することによって評価することができる。hTNFα生物活性のこれらの指標は、当分野で公知の幾つかの標準インビトロ又はインビボアッセイの1つ以上によって評価することができる(米国特許第6,090,382号参照)。抗体のhTNFα活性中和能力は、L929細胞のhTNFα誘導性細胞傷害性を阻害することによって評価されることが好ましい。hTNFα活性の追加のパラメータ、又は代わりのパラメータとして、HUVEC上でのELAM−1のhTNFα誘導性発現を阻害する抗体の能力を、hTNFαによって誘導される細胞活性化の尺度として評価することができる。
本明細書では「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden and Piscataway, NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、実時間での生体分子特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。更に詳細な説明は、米国特許第6,258,562号の実施例1、並びにJonsson et al.(1993) Ann. Biol. Clin. 51:19;Jonsson et al.(1991) Biotechniques 11:620−627;Johnsson et al.(1995) J. Mol. Recognit. 8:125及びJohnnson et al.(1991) Anal. Biochem. 198:268を参照されたい。
本明細書では「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離のoff速度定数を指すものとする。
本明細書では「Kd」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を指すものとする。
本明細書では「IC50」という用語は、目的とする生物学的エンドポイントを阻害するのに、例えば細胞傷害活性を中和するのに必要な阻害剤濃度を指すものとする。
本明細書では「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含むものとする。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
hTNFαに結合する抗体又は抗体部分(例えば、VH、VL、CDR3)をコードする核酸に関して本明細書で使用する「単離核酸分子」という用語は、抗体又は抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、hTNFα以外の抗原に結合する抗体又は抗体部分をコードする他のヌクレオチド配列を含まない核酸分子を指すものとする。この他の配列は、ヒトゲノムDNA中の核酸に天然に隣接し得る。したがって、例えば、抗hTNFα抗体のVH領域をコードする本発明の単離核酸は、hTNFα以外の抗原に結合する他のVH領域をコードする他の配列を含まない。
本明細書では「ベクター」という用語は、それが結合した別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すものとする。ベクターの1タイプは「プラスミド」である。プラスミドは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状二重鎖DNAループである。ベクターの別のタイプはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある種のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞中で自己複製し得る(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソームほ乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソームほ乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入すると宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、それが作用可能に連結された遺伝子の発現を誘導し得る。かかるベクターを本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と称する。一般に、組換えDNA技術に有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることが多い。本明細書においては、プラスミドが最も一般に使用するベクター形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を区別なく使用することができる。しかし、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)など、等価な機能を果たす発現ベクターの他の形態も含むものとする。
本明細書では「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターを導入した細胞を指すものとする。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなくかかる細胞の子孫も指すものであることを理解すべきである。変異又は環境の影響のためにある種の改変が後継世代に起こり得るので、かかる子孫は、親細胞と実際には同一でないこともあるが、それでも本明細書では「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
本明細書では「投与量」という用語は、対象に投与するTNFα阻害剤の量を指す。
「複数回可変投与量」という用語は、治療処置のために対象に投与するTNFα阻害剤の異なる投与量を含む。「複数回可変投与計画」又は「複数回可変投与治療」とは、治療過程を通して様々な時点においてTNFα阻害剤の異なる量を投与することに基づく治療スケジュールを指す。複数回可変投与計画は、国際出願PCT/US05/12007号に記載されている。
本明細書では「投薬」という用語は、治療目的(例えば、リウマチ様関節炎の治療)を達成するための物質(例えば、抗TNFα抗体)の投与を指す。
本明細書では「隔週投薬計画」、「隔週投薬」及び「隔週投与」という用語は、治療目的を達成するために対象に物質(例えば、抗TNFα抗体)を投与する時間経過を指す。隔週投薬計画は、毎週の投薬計画を含むものではない。好ましくは、物質を9から19日ごと、より好ましくは11から17日ごと、更により好ましくは13から15日ごと、最も好ましくは14日ごとに投与する。
「第2の薬剤と組み合わせた第1の薬剤」という句におけるように「組合せ」という用語は、例えば薬剤として許容される同じ担体に溶解又は混合することができる、第1の薬剤と第2の薬剤の同時投与、第1の薬剤の投与とそれに続く第2の薬剤の投与、又は第2の薬剤の投与とそれに続く第1の薬剤の投与を含む。したがって、本発明は、組合せ治療処置方法及び組合せ薬剤組成物を含む。
「同時治療処置」という句におけるように「同時」という用語は、ある薬剤を第2の薬剤の存在下で投与することを含む。同時治療処置方法は、第1、第2、第3又は更なる薬剤を同時投与する方法を含む。同時治療処置方法は、第1又は更なる薬剤を第2又は更なる薬剤の存在下で投与する方法も含み、例えば、第2又は更なる薬剤をあらかじめ投与することができる。同時治療処置方法は、異なる行為者によって段階的に実施することができる。第1の薬剤(及び更なる薬剤)が第2の薬剤(及び更なる薬剤)の存在下での投与後である限り、例えば、ある行為者が第1の薬剤を対象に投与することができ、第2の行為者が第2の薬剤を対象に投与することができ、投与段階は、同時に、ほぼ同時に、又は離れた時間に実施することができる。行為者及び対象は、同じ実体(例えば、ヒト)とすることができる。
本明細書では「併用療法」という用語は、2種類以上の治療物質、例えば、抗TNFα抗体と別の薬物との投与を指す。他方の薬物を抗TNFα抗体の投与と同時に、投与前に、又は投与後に投与することができる。
本明細書では「キット」という用語は、TNFα関連障害の治療のために本発明のTNFα抗体と一緒に投与する成分を含むパッケージ製品を指す。キットは、好ましくは、キットの成分を保持する箱又はコンテナを含む。箱又はコンテナには、ラベル又は米国食品医薬品局によって承認された手順書が添付されている。箱又はコンテナは、好ましくはプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレン容器に入れられた本発明の成分を保持する。容器は、蓋付きの管又はビンとすることができる。キットは、本発明のTNFα抗体を投与するための説明書も含むことができる。一実施形態においては、本発明のキットは、PCT/IB03/04502及び米国出願第10/222140号に記載のヒト抗体D2E7を含む製剤を含む。
本発明の種々の態様をより詳細に記述する。
II. 軟骨分解及び脊椎炎バイオマーカー
TNF阻害剤療法を受けるAS患者において、改善、特に初期の構造上の改善を判定することができる有意義な強直性脊椎炎(AS)評価ツールを確立することが求められている。現在、赤血球沈降速度(ESR)及びC反応性タンパク質(CRP)レベルは、AS活動性を評価する最も広範に用いられている方法である。しかし、これらのマーカー単独ではAS疾患活動性の評価に不十分である(Ruof and Stucki(1999) J Rheumatol 26:966)。本発明は、患者におけるASに付随した構造的損傷を防止する抗TNF療法の能力を評価するのに有用であることが確認されたバイオマーカーを提供する。また、本発明は、ASに付随した関節の構造破壊の改善に対する患者の反応を判定する方法を提供する。本明細書に記載の方法は、放射線写真撮影などのより伝統的手段では容易に識別できない、患者における構造的損傷の進行の変化を明らかにする。本発明の方法は、長時間を要し得る臨床結果を待たずに、患者における抗TNF治療の効力を決定する手段を医師に提供するので、有利である。
TNF阻害剤療法を受けるAS患者において、改善、特に初期の構造上の改善を判定することができる有意義な強直性脊椎炎(AS)評価ツールを確立することが求められている。現在、赤血球沈降速度(ESR)及びC反応性タンパク質(CRP)レベルは、AS活動性を評価する最も広範に用いられている方法である。しかし、これらのマーカー単独ではAS疾患活動性の評価に不十分である(Ruof and Stucki(1999) J Rheumatol 26:966)。本発明は、患者におけるASに付随した構造的損傷を防止する抗TNF療法の能力を評価するのに有用であることが確認されたバイオマーカーを提供する。また、本発明は、ASに付随した関節の構造破壊の改善に対する患者の反応を判定する方法を提供する。本明細書に記載の方法は、放射線写真撮影などのより伝統的手段では容易に識別できない、患者における構造的損傷の進行の変化を明らかにする。本発明の方法は、長時間を要し得る臨床結果を待たずに、患者における抗TNF治療の効力を決定する手段を医師に提供するので、有利である。
一般に、本発明は、AS患者、又はASの疑いのある患者から得られたバイオマーカーレベルを、疾患活動性に関連した既知標準レベルと比較して、患者のバイオマーカーレベルが対照に対して増加したか、減少したか、又は同じであるかどうかを判定することを含む。特に構造的損傷の改善に関して、患者におけるASを治療するTNF阻害剤の効力を決定する際に、バイオマーカーレベルは、あらかじめ決定することができ、或いは、患者から試料を採取し、次いで試料から測定されたバイオマーカーレベルを本発明の比較評価に用いることを含み得る。
本発明は、選択された抗TNF療法が治療に適切であるかどうか、又は異なる抗TNF療法を含めて、異なる療法を考慮すべきかどうかを決定するのに使用することができる、軟骨分解及び滑膜炎を含めた構造破壊に関連したある種のバイオマーカーを特定する。かかる予測手段は、適切な療法を決定するのにより速い反応がなされるので、対象の健康全般を利する。本明細書に記載の方法は、無効な療法をより迅速に排除することによって、治療過程全体の費用も削減する。
本発明は、軟骨破壊及び滑膜炎のバイオマーカーを測定することを含む、脊椎関節症、例えば、強直性脊椎炎の治療用TNF阻害剤の効力を決定する方法を提供する。効力は、対象における軟骨分解及び/又は滑膜炎に関係した疾患活動性を反映することが知られているバイオマーカーを減少させるTNF阻害剤の能力によって決定される。
一実施形態においては、本発明は、TNFα阻害剤を用いた治療後に強直性脊椎炎(AS)患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベル(治療後バイオマーカーレベル)を、病態に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較する、ASの治療に対するTNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法を含む。2つのレベルを比較すると、患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いかどうかが求められる。TNFα阻害剤を用いた治療後に患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ASの治療に対するTNFα阻害剤の効力が示される。
別の実施形態においては、本発明は、強直性脊椎炎(AS)患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの治療前レベルを、前記患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの治療後レベルと比較することを含み、治療後バイオマーカーレベルの方が低いことによって、患者におけるASの治療に対するTNF阻害剤の効力が示される、ASに対するTNF阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法を提供する。
軟骨分解及び/又は滑膜炎に関連したバイオマーカーのレベルを低下させることによって、TNF阻害剤は、ASに付随した構造的損傷の軽減又は防止に使用することができる。一態様においては、本発明は、患者におけるコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを測定することと、コラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを、強直性脊椎炎(AS)に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することとを含む、患者におけるASに付随した構造的損傷の進行を遅延させるTNF阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力をモニターする方法を提供する。この場合には、患者から得られたバイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、TNF阻害剤が、患者におけるASに付随した構造的損傷の進行速度を低下させるのに有効であることが示される。
別の態様においては、本発明は、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部を用いた治療後に患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベルを、AS患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することを含む、患者におけるASを治療するTNF阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を予測する方法を提供する。2つのバイオマーカーレベルに基づいて、患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルがコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルよりも低いかどうかに関して評価がなされる。この場合には、患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が患者におけるASの治療に有効であることが予測される。
TNF阻害剤が、軟骨破壊及び/又は滑膜炎に関連したバイオマーカーの低下に有効であると判定され、構造破壊、すなわち関節破壊の減少が示された上記状況においては、TNF阻害剤治療の継続を考慮することができる。一実施形態においては、同じ投与計画を患者に行うことを考慮することができる。或いは、患者におけるASの治療に有効であることが判明したTNF阻害剤の投与量を削減することを考慮することができる。
本発明は、ASに対するTNF阻害剤治療の効力を決定するために、軟骨分解バイオマーカーを単独で、又は滑膜炎バイオマーカーと組み合わせて使用する方法、並びに滑膜炎バイオマーカーを単独で、又は軟骨分解バイオマーカーと組み合わせて使用する方法を提供する。
また、TNF阻害剤を用いた療法をまだ受けていない患者から得られた試料について、コラーゲン分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーを分析することができる。コラーゲン分解バイオマーカー及び滑膜炎バイオマーカーを分析して、患者が抗TNFα抗体、例えばアダリムマブを用いた治療に反応する可能性があるかどうかを判定することができる。患者試料のコラーゲン分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルが、ASを示すレベルと特徴づけられた既知標準レベルと類似していることによって、患者がASに罹患しており、したがって、TNF阻害剤を用いた治療の候補であることを示すことができる。したがって、かかる患者は、疾患の進行と伴に生じ得る構造的損傷を防止するために、抗TNFα抗体、例えばアダリムマブを用いた治療を選択することができる。
一実施形態においては、対照レベルは、軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーの患者自身のベースラインレベルに基づく。ベースラインレベルは、TNF阻害剤を用いた治療の前に測定される。かかる場合においては、治療後に測定される軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルを患者のベースラインレベルと比較する。その後、軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが、治療後の患者において低下したかどうかに基づいて、TNF阻害剤が効果的であるかどうかを判定する。別の実施形態においては、対照として用いられるベースラインレベルは、TNF阻害剤を用いた治療中の所与の時点における軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーの患者自身のレベルに基づく。治療中の所与の時点におけるベースラインレベルを、その後、患者が治療を継続している間の所与の時点におけるバイオマーカーレベルと比較する。
一実施形態においては、既知標準レベルは、病態に関連した、すなわちAS患者に関連した軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーの許容レベルに基づく。軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルの既知標準レベルは、単一のAS患者に基づき得、或いは、AS患者群から得られる平均に基づき得る。例えば、一実施形態においては、AS患者の血清MMP−3の既知標準レベルは、約10−200、約15−180、約20−140、約30−120、約40−100、約50−80、約25−57又は約60−70ng/mlである。別の実施形態においては、AS患者の尿中CTX−IIの既知標準レベルは、約300−1000、約300−800、約300−600、約315−395、約320−390、約325−385、約330−380、約325−385、約324−388、約335−375、約340−370、約345−365又は約350−360ng/mlである。
或いは、別の実施形態においては、既知標準レベルは、健康な非罹患対象から得られた軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルに基づき得る。軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルの既知標準レベルは、単一の健康な非罹患対象に基づき得、或いは、健康な非罹患対象群から得られる平均に基づき得る。尿中CTX−IIの正常値、すなわち健康な非AS患者から得られた値の例は、Haima (2005) Osteo Medical Group Clinical and Technical Monograph及びMouritzen et al.(2003) Annals of the Rheumatic Diseases 62:332に記載されている。例えば、一実施形態においては、健康な非罹患対象における血清MMP−3の既知標準レベルは、約13から15ng/mlである(Chen et al.(2006) Rheumatology 45:414参照)。
上記バイオマーカーレベルの中間の範囲、例えば、尿中CTX−IIの約323から約329mg/mlも本発明の一部とする。また、上記値のいずれかの組合せを上限及び/又は下限として用いた値の範囲も含むものとする。また、上記上限は、AS患者におけるMMP−3及びCTX−IIの高いレベルに関して限定的なものではない。
軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルは、対照よりも高い/増加した、又は低い/減少した場合には、対照、すなわち患者自身の治療前レベル又は既知標準レベルから変化したと考えられる。一実施形態においては、AS患者に由来する軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルは、軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが、レベルを評価するのに用いたアッセイの標準誤差を超える量だけ対照レベルよりも高い/増加した場合には、対照レベルよりも高い/増加したと考えられる。一実施形態においては、AS患者に由来する軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルは、軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが、レベルを評価するのに用いたアッセイの標準誤差を超える量だけ対照レベルよりも低い/減少した場合には、対照レベルよりも低い/減少したと考えられる。別の実施形態においては、疾患患者に由来する軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルのレベルは、対照レベルと患者試料に由来する軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルとの差が、対照及び試料測定の標準誤差の少なくとも約2、3、4若しくは5倍、又は少なくとも約1/2、1/3、1/4若しくは1/5倍である場合には、対照レベルよりも高い/増加した、又は低い/減少したと考えることができる。
一実施形態においては、TNF阻害剤の効力は、AS患者のCTX−IIレベルが、ベースライン又は既知標準レベルよりも少なくとも約5−100%、約5−80%、約5−60%、約5−45%、約5−40%、約5−35%、約5−30%、約5−25%、約5−20%、約5−15%、約5−10%、約6−9%、約7−8%又は約9%減少したときに証明される。一実施形態においては、TNF阻害剤の効力は、MMP−3レベルが、AS患者のベースライン又は既知標準レベルよりも少なくとも約5−50%、約5−45%、約5−40%、約5−35%、約5−30%、約5−25%、約5−20%、約5−15%、約5−13%、約6−12%、約7−11%又は約8%減少したときに証明される。更なる実施形態においては、TNF阻害剤の効力は、MMP−3レベルがAS患者のベースライン又は既知標準レベルよりも少なくとも約12%減少したときに証明される。
上記バイオマーカーレベルの中間の範囲、例えば約8%から約10%も本発明の一部とする。また、上記値のいずれかの組合せを上限及び/又は下限として用いた値の範囲も含むものとする。また、上記百分率の上限は、AS患者におけるMMP−3及びCTX−IIの低い百分率レベルに関して限定的なものではない。すなわち、より高い百分率の減少も本発明によって企図される。
軟骨分解バイオマーカー
関節軟骨は、プロテオグリカンのアグリカンと複合化した、II型コラーゲンを主体とした原線維ネットワークで主として構成される(Poole AR, 2003. Rheum Dis Clin North Am 29:803−818及びEyre(1991) Semin Arthritis Rheum. 21(3 Suppl 2):2−11参照)。関節疾患においては、II型コラーゲンは、コラゲナーゼによって次第に切断される。II型コラーゲンは、分解過程の生成物が、コラーゲン分子内の特定のエピトープの局在化に従って3群に分類されるように分解する(総説として、参照により本明細書に組み込むBirmingham et al.(2006) Biomarker Insights 2:61を参照されたい。)。ネオエピトープ及びテロペプチドエピトープを含めて、異なるタイプのエピトープを、コラーゲンに関連した分解現象の指標として使用することができる。
関節軟骨は、プロテオグリカンのアグリカンと複合化した、II型コラーゲンを主体とした原線維ネットワークで主として構成される(Poole AR, 2003. Rheum Dis Clin North Am 29:803−818及びEyre(1991) Semin Arthritis Rheum. 21(3 Suppl 2):2−11参照)。関節疾患においては、II型コラーゲンは、コラゲナーゼによって次第に切断される。II型コラーゲンは、分解過程の生成物が、コラーゲン分子内の特定のエピトープの局在化に従って3群に分類されるように分解する(総説として、参照により本明細書に組み込むBirmingham et al.(2006) Biomarker Insights 2:61を参照されたい。)。ネオエピトープ及びテロペプチドエピトープを含めて、異なるタイプのエピトープを、コラーゲンに関連した分解現象の指標として使用することができる。
成熟II型コラーゲンは、短いテロペプチドを両端に有する三重らせん構造からなる。テロペプチドは、他のコラーゲン鎖と共有結合架橋して、個々のコラーゲン分子を結びつけて堅い原線維ネットワークにするのに役立つ。成熟コラーゲンの断片は、軟骨細胞外基質が分解したときに生じる。かかる断片は、血清と尿の両方に見られ、軟骨の異化のマーカーとして測定することができる。テロペプチドとしては、col2CTx、CTX−IIなどが挙げられる(その各々を参照により本明細書に組み込む国際公開第91/08478号;Christgau et al.(2001) Bone 29:209;Matyas et al.(2004) Arthritis Rheum 50:543及びEyre (1989) ”Peptide fragments containing HP and LP cross−links、米国特許第5702909号)。
タンパク質分解は、体液へのII型コラーゲンエピトープの損失を引き起こす。したがって、体液中のII型コラーゲンエピトープを検査することによって、コラーゲン分解量を測定することができる(その各々を本明細書に組み込むBirmingham et al.(2006) Biomarker Insights 2:61及びChristgau et al.(2001) Bone 29:209参照。)。成熟架橋II型コラーゲン線維の大規模な分解は、関節破壊における、恐らくは不可逆的でさえある、重大な段階であると考えられるので、コラーゲン分解過程をモニターし、遅延又は逆転させる能力は、臨床の観点から重要である(Billinghurst et al.(1997))。
本明細書に記載の本発明は、軟骨分解バイオマーカーを用いて、構造的損傷、すなわち関節損傷を含む疾患要素を有するASの治療に対するTNF阻害剤の効力を決定する。一実施形態においては、ほとんど軟骨のみに局在するCTX−IIは、軟骨崩壊のバイオマーカーとして本発明の方法及び組成物に使用される。
CTX−II
好ましい実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーはII型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である。CTX−IIは、C末端II型コラーゲンに由来するコラーゲン断片である。CTX−IIは、切断されたII型コラーゲンの長さ1/4の断片のC末端にあるネオエピトープCol2CTxと同一である(総説として、参照により本明細書に組み込むBirmingham et al.(2006)を参照されたい。)。
好ましい実施形態においては、コラーゲン分解バイオマーカーはII型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である。CTX−IIは、C末端II型コラーゲンに由来するコラーゲン断片である。CTX−IIは、切断されたII型コラーゲンの長さ1/4の断片のC末端にあるネオエピトープCol2CTxと同一である(総説として、参照により本明細書に組み込むBirmingham et al.(2006)を参照されたい。)。
CTX−IIは、軟骨分解のバイオマーカーとして公知である。CTX−IIは、まず、膝の骨関節炎患者において軟骨分解と関連づけられた(Garnero et al.(2001) Annals Rheum Dis 60:619)。それに続いて、重度の骨関節炎患者の尿中のCTX−IIの増加が測定された(Jung et al.(2004) Pathobiol 71:70)。CTX−IIは、関節破壊の程度と相関することも判明した(Christgau et al.(2001) Bone 29:209;Garnero and Delmas (2003) Curr Op Rheumat 25:641)。
一態様においては、本発明は、TNFα阻害剤を用いた治療後に患者から得られたCTX−IIの所定レベルを、ASに関連したCTX−IIの既知標準レベルと比較することを含む、患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法を提供する。次いで、2つのCTX−IIレベル間の関係に関する評価を実施して、患者の治療後のCTX−IIレベルがCTX−IIの既知標準レベルよりも低いかどうかを判定する。CTX−IIレベルが、AS病態を表す既知標準よりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される。かかる場合においては、既知標準レベルは、AS疾患活動性を有する対象、すなわち未治療の罹患患者から得られたCTX−IIレベルである。
別の態様においては、本発明は、TNFα阻害剤を用いた治療後に強直性脊椎炎(AS)患者から得られたCTX−IIの所定レベルを、ASに関連したCTX−IIの既知標準レベルと比較することを含む、患者におけるASに付随した構造的損傷の軽減に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法を提供する。次いで、2つのCTX−IIレベルに関する評価を実施して、患者の治療後のCTX−IIレベルがCTX−IIの既知標準レベルよりも低いかどうかを判定する。患者のCTX−IIレベルが既知標準レベルよりも低いCTX−IIである場合、かかる結果は、TNFα阻害剤が、患者におけるASに付随した構造的損傷を軽減するのに有効であることを示している。
一実施形態においては、本発明は、患者から得られたCTX−IIの所定の治療後レベルを、患者から得られたCTX−IIの所定の治療前レベルと比較することを含む、患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法を記述する。次いで、2つのCTX−IIレベルに関する評価を実施して、治療後のCTX−IIレベルが治療前のCTX−IIレベルよりも低いかどうかを判定する。患者から得られた治療後のCTX−IIレベルが治療前のCTX−IIレベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される。
滑膜炎バイオマーカー
滑膜炎(炎症)は、骨関節炎などの炎症性疾患の初期に生じることが現在知られており、疾患の放射線学的進行と関連づけられる。無症状の炎症を含めて、炎症が関節損傷を悪化させ得る過程は、軟骨細胞機能の変化、血管新生の増大、及び/又は骨代謝回転の加速を含む可能性がある(Bonnet and Walsh DA.(2005) Rheumatology 44:7−16)。本明細書に記載の本発明は、滑膜バイオマーカーを用いて、ASの治療に対するTNF阻害剤の効力を決定する。一実施形態においては、関節の炎症から生ずる可能性がある血清MMP−3(Kruithof et al.(2005) Arthritis Rheum 52:3898)を滑膜炎バイオマーカーとして用いて、ASの治療に対するTNF阻害剤の効力を決定する。
滑膜炎(炎症)は、骨関節炎などの炎症性疾患の初期に生じることが現在知られており、疾患の放射線学的進行と関連づけられる。無症状の炎症を含めて、炎症が関節損傷を悪化させ得る過程は、軟骨細胞機能の変化、血管新生の増大、及び/又は骨代謝回転の加速を含む可能性がある(Bonnet and Walsh DA.(2005) Rheumatology 44:7−16)。本明細書に記載の本発明は、滑膜バイオマーカーを用いて、ASの治療に対するTNF阻害剤の効力を決定する。一実施形態においては、関節の炎症から生ずる可能性がある血清MMP−3(Kruithof et al.(2005) Arthritis Rheum 52:3898)を滑膜炎バイオマーカーとして用いて、ASの治療に対するTNF阻害剤の効力を決定する。
MMP−3
軟骨基質分子の分解は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼ、すなわちマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を必要とする。Zn2+依存性エンドペプチダーゼの1ファミリーであるMMPは、コラーゲン、プロテオグリカンなどの細胞外基質(ECM)構成要素を切断する。
軟骨基質分子の分解は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼ、すなわちマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を必要とする。Zn2+依存性エンドペプチダーゼの1ファミリーであるMMPは、コラーゲン、プロテオグリカンなどの細胞外基質(ECM)構成要素を切断する。
MMPは、細胞外基質の成分を消化することによって異なる生理的プロセスを媒介する。MMP3は、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンIII、IV、IX及びX並びに軟骨プロテオグリカンを分解する酵素である。現在、少なくとも20種類のヒトMMPが存在し、それらは構造及び特異的基質に応じて、コラゲナーゼ(MMP−1、−8、−13)、ストロメライシン(stromelisin)、ゼラチナーゼ(MMP−2、−9)及び原形質膜結合メタロプロテイナーゼに分類される(例えば、Nabeshima K et al. 2002 Pathol Int 52:255−64参照)。
好ましい実施形態においては、本発明で使用される滑膜炎バイオマーカーはMMP−3である。MMP−3血清レベルは、RAなどの関節の滑膜炎、リウマチ性多発筋痛、乾せん性関節炎及び急性結晶性関節炎を特徴とする炎症性リウマチ性疾患において増加することが判明した。MMP−3血清レベルは、滑膜炎を反映すると認められている(Ribbens et al.(2002) Annals of the Rheumatic Diseases 61:161参照)。また、以前の研究によれば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、特にMMP−3(ストロメライシン1)は、AS患者におけるBath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index(BASDAI)値と相関があった(Yang, C. et al.(2004) Arthritis Rheum 51:691−9参照)。
MMP−3のアミノ酸配列は公知であり、例えばGenBankアクセッション番号AAI07491に見出すことができる。MMP−3のヌクレオチド酸配列も公知であり、例えばGenBankアクセッション番号NM002422に見出すことができる。
本発明は、本発明の方法を実施するための軟骨分解バイオマーカー、例えばCTX−II、及び滑膜炎バイオマーカー、例えばMMP−3の単独での、又は互いに組み合わせての使用を更に含む。また、どちらのバイオマーカーもC反応性タンパク質と併用して、AS治療に対するTNF阻害剤の効力を更に決定することができる。
C反応性タンパク質(CRP)レベルを、AS病態の指標として、また、所与の抗TNF療法の効力の指標として、軟骨分解バイオマーカー、例えばCTX−II、及び滑膜炎バイオマーカー、例えばMMP−3と併用することができる。CRPは、結合して安定な円盤状5量体構造を形成する、染色体1上の単一の遺伝子によってコードされる5個の同一のサブユニットを有するので、いわゆる、タンパク質のペントラキシンファミリーに属する。CRPは、専ら肝臓で生成され、激しい炎症性刺激から6時間以内に多量に分泌される。高レベルのCRPは、進行中の炎症の感受性指標(sensitive index)となり、したがって、慎重な臨床評価に対する貴重な補助となる。
バイオマーカーレベルを測定するアッセイ
試料中の軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルは、当分野で公知の幾つかの方法によって分析することができる。試料を患者から得た後、本発明の方法に使用する軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーの検出及び定量に適切である当分野で公知の任意の方法を(核酸又は好ましくはタンパク質レベルで)使用することができる。かかる方法は当分野で周知であり、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、免疫組織化学、ELISA、例えば増幅ELISA、定量的血液アッセイ、例えば血清ELISA、例えばCTX−IIの場合にはタンパク質の発現又は分解のレベルを検査するための定量的尿(urime)アッセイ、免疫沈降、免疫蛍光、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、質量分析(spectrometrometric analyses)、例えば、MALDI−TOF及びSELDI−TOF、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写方法、並びに核酸増幅方法が挙げられるが、これらだけに限定されない。かかるアッセイの例を以下により詳細に記述する。
試料中の軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルは、当分野で公知の幾つかの方法によって分析することができる。試料を患者から得た後、本発明の方法に使用する軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーの検出及び定量に適切である当分野で公知の任意の方法を(核酸又は好ましくはタンパク質レベルで)使用することができる。かかる方法は当分野で周知であり、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、免疫組織化学、ELISA、例えば増幅ELISA、定量的血液アッセイ、例えば血清ELISA、例えばCTX−IIの場合にはタンパク質の発現又は分解のレベルを検査するための定量的尿(urime)アッセイ、免疫沈降、免疫蛍光、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、質量分析(spectrometrometric analyses)、例えば、MALDI−TOF及びSELDI−TOF、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写方法、並びに核酸増幅方法が挙げられるが、これらだけに限定されない。かかるアッセイの例を以下により詳細に記述する。
タンパク質アッセイ
本発明の方法を、タンパク質アッセイを利用して実施して、所与のバイオマーカーのレベルを測定することができる。タンパク質アッセイの例としては、免疫組織化学分析及び/又はウエスタン分析、定量的血液アッセイ、例えば血清ELISA、及び定量的尿アッセイ、例えば尿ELISAが挙げられる。一実施形態においては、免疫測定法を実施して、所与のバイオマーカーを定量評価する。
本発明の方法を、タンパク質アッセイを利用して実施して、所与のバイオマーカーのレベルを測定することができる。タンパク質アッセイの例としては、免疫組織化学分析及び/又はウエスタン分析、定量的血液アッセイ、例えば血清ELISA、及び定量的尿アッセイ、例えば尿ELISAが挙げられる。一実施形態においては、免疫測定法を実施して、所与のバイオマーカーを定量評価する。
患者試料由来のタンパク質は、当業者に周知の技術によって単離することができる。用いられるタンパク質単離方法は、例えば、Harlow and Lane(Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載の方法などである。
軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーの量は、対応する発現ポリペプチドを検出又は定量することによって測定することができる。ポリペプチドは、当業者に周知である幾つかの手段のいずれかによって検出し、定量することができる。これらの手段としては、電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィーなどの分析的生化学的方法、又は流体若しくはゲル沈降反応、(一元又は二重)免疫拡散法、免疫電気泳動法、放射性免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウエスタンブロット法などの種々の免疫学的方法などが挙げられる。
一実施形態においては、軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーレベルを免疫測定法によって測定することができる。本明細書に記載のバイオマーカーに対する抗体を使用して、ヒト生物試料、例えば体液を、特定のバイオマーカー抗原、すなわち、コラーゲン分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルについてスクリーニングすることができる。例示として、血清、尿などのヒト体液を患者から採取し、例えば当分野で公知の、標準RIA又はELISAにおいて抗バイオマーカー抗体を用いて、試料体液中の放出された抗原、又は細胞上の膜結合性として、特定のエピトープについて分析する。かかる方法に用いる抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。一実施形態においては、それによって、患者から抜き取られた血清のインビトロ免疫血清学的評価によって、対応するバイオマーカーの血清レベルに基づいて、軟骨変性の進行又は減少、並びに滑膜炎の増加又は減少を非侵襲的に判定することができる。一実施形態においては、ヒトの尿中のCTX−IIレベルを測定する軟骨分解の定量評価の免疫測定法を実施する。一実施形態においては、ヒト血清中のMMP−3レベルを測定する滑膜炎の定量評価の免疫測定法を実施する。
免疫測定法においては、軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーポリペプチドを検出する薬剤は、軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーのタンパク質に結合することができる抗体であり得る。抗体はポリクローナル、又はより好ましくはモノクローナルであり得る。完全な抗体又はその断片(例えば、Fab又はF(ab’)2)を使用することができる。
一実施形態においては、尿CTX−IIを含めて、CTX−IIに対する抗体を免疫測定法、例えばELISAに用いて、AS患者から得られた試料中のCTX−IIレベルを測定する。一実施形態においては、患者から得られた尿又は血清試料中のCTX−IIレベルを測定することができる。一実施形態においては、ヒト尿CTX−IIを検出し、定量するために、本発明の方法及び組成物に使用することができる抗体は、モノクローナル抗体mAbF46(Christgau et al.(2001) Bone 29:209参照)及びF4601(Oestergaard et al.(2006) Osteoarthritis Cartilage. 14(7):670参照)である。
一実施形態においては、血清MMP−3を含めて、MMP−3に対する抗体を免疫測定法、例えばELISAに用いて、AS患者から得られた試料中のMMP−3レベルを測定する。一実施形態においては、患者から得られた血清試料中のMMP−3を測定することができる。一実施形態においては、ヒト血清MMP−3を検出し、定量するための抗体は、モノクローナル抗体mAblB4(Murray GI et al. Gut 43:791−7(1998))である。
競合結合測定法によって、コラーゲン分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーに対応するタンパク質のレベルを測定することができる。競合結合測定法の一例は、酵素結合免疫吸着サンドイッチアッセイ(ELISA)である。ELISAによって、試料中のコラーゲン分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーの存在を検出することができる。ELISAは、特定のタンパク質、特に抗原又は抗体の検出用マーカーとして抗体又は抗原に結合した酵素を用いる感度の高い免疫測定法である。ELISAは、無色の基質を着色生成物、又は検出することができる生成物に一般に転化する、結合した酵素によって、結合した抗原又は抗体が検出されるアッセイである。ELISAの最も一般的なタイプの1つは「サンドイッチELISA」である。一実施形態においては、軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルをELISAアッセイによって測定する。
また、当業者は、公知のタンパク質/抗体検出方法を本発明のマーカー(すなわち、CTX−II及び/又はMMP−3)量の測定用に容易に改作することができる。
関節破壊のバイオマーカーとしてCTX−IIを分析する方法は、当分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込むOestergaard et al.(2006) Osteoarthritis Cartilage. 14(7):670及びMouritzen et al.(2003) Annals of the Rheumatic Diseases 62:332に記載されている。例えば、Urine Cartilaps(登録商標)及びSerum Cartilaps(登録商標)(Nordic Bioscience Diagnostics)を含めて、CTX−IIレベルを測定するアッセイが市販されている。Urine Cartilaps(登録商標)アッセイは、臨床試験において、リウマチ様関節炎及び骨関節炎における軟骨分解の定量評価に使用されてきた。例えば、Urine CartiLaps(登録商標)ELISAは、モノクローナル抗体と、尿中のII型コラーゲン断片、すなわちCTX−IIとの、又はストレプトアビジンで被覆されたマイクロタイタープレートの表面に結合したビオチン化合成ペプチドとの、競合的結合に基づく。最初に、ビオチン化合成ペプチドは、マイクロタイタープレートのストレプトアビジン被覆ウェルの表面に結合する。洗浄後、標準、対照及び尿試料をウェルにピペットで注入し、続いてモノクローナル抗体溶液を添加する。ウェルを洗浄し、ペルオキシダーゼ複合化抗マウス免疫グロブリン(ウサギ)溶液をウェルに添加する。第2の洗浄段階後、色素生産性基質を全ウェルに添加し、呈色反応を硫酸で停止し、吸光度を測定する。ELISAによるCTX−IIアッセイ法に関する追加の例は、参照により本明細書に組み込むChristgau(2001 Bone 29:209に記載されている。
一実施形態においては、ヒト血清中の滑膜炎バイオマーカーMMP−3のレベルを測定する免疫測定法を実施する。滑膜炎バイオマーカーとしてMMP−3を分析する方法は当分野で公知であり、例えば、Tamarat et al.(2003) PNAS 100:8555に記載されている。また、MMP−3タンパク質レベルの試験に利用可能な市販キットとしては、Human Matrix Metalloproteinase−3 Biotrak ELISAシステム(Amersham)(Yang et al.(2004) Arthritis and Rheumatism 51:691も参照されたい。)が挙げられる。MMP−3タンパク質アッセイ法を記述した追加の例は、Chen et al.(2006) Rheumatology 45:414に記載されている。
一実施形態においては、抗体又は抗体断片をウエスタンブロット、免疫蛍光技術などの方法に使用して、発現タンパク質を検出することができる。かかる使用においては、抗体又はタンパク質を固体支持体に固定することが一般に好ましい。適切な固相支持体又は担体としては、抗原又は抗体と結合し得る任意の支持体などが挙げられる。周知の支持体又は担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロース及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、磁鉄鉱などが挙げられる。
当業者は、抗体又は抗原と結合する多数の他の適切な担体を承知しており、かかる支持体を本発明で使用するために改作することができる。例えば、細胞から単離したタンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって泳動させ、ニトロセルロースなどの固相支持体に固定することができる。次いで、支持体を適切な緩衝剤で洗浄し、続いて検出可能な標識抗体を用いて処理することができる。次いで、固相支持体を緩衝剤で再度洗浄して、非結合抗体を除去することができる。次いで、固体支持体上の結合標識の量を従来手段によって検出することができる。電気泳動技術によってタンパク質を検出する手段は、当業者に周知である(一般に、R. Scopes (1982) Protein Purification, Springer−Verlag, N.Y.;Deutscher,(1990) Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc., N.Y.参照)。
コラーゲン分解及び/又は滑膜炎マーカーを検出し、定量する抗体を用いた他の標準方法としては、放射性免疫測定法(「RIA」)、受容体アッセイ、酵素免疫測定法(「EIA」)、細胞化学的バイオアッセイ、リガンドアッセイ、免疫放射線測定法、蛍光免疫測定法及び酵素結合免疫吸着検定法(「ELISA」)が挙げられるが、これらだけに限定されない。更なる方法としては、検出の容易さ、及びその定量的性質のために、幾つかの種類があるサンドイッチ又は二抗体法などが挙げられる。これら全部が本発明によって包含されるものとする。これらの方法は周知であり、抗体と抗原の相互作用、及び抗体による抗原の検出を最適化するために妥当な実験量を必要とすることを当業者は理解されたい。これらの免疫測定技術及び他の免疫測定技術は、その各々を参照によりその全体を本明細書に組み込むPrinciples And Practice Of Immunoassay, 2nd Edition, Price and Newman, eds., MacMillan (1997)及びAntibodies, A Laboratory Manual, Harlow and Lane, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Ch.9(1988)に記載されている。
バイオマーカーレベルを測定する当分野で公知の免疫測定法、及び本明細書に記載の免疫測定法に使用される抗体は、検出可能な標識で標識することができる。プローブ又は抗体に関して「標識」という用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体とカップリング(すなわち、物理的に連結)することによるプローブ又は抗体の直接標識、及び直接標識された別の試薬との反応(reactivity)によるプローブ又は抗体の間接標識を包含するものとする。間接標識の例としては、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、及び蛍光標識ストレプトアビジンを用いて検出することができるようなビオチンによるDNAプローブの末端標識が挙げられる。
一実施形態においては、抗体は標識されており、例えば、放射性標識抗体、発色団標識抗体、蛍光団標識抗体又は酵素標識抗体である。別の実施形態においては、軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカータンパク質と特異的に結合する、抗体誘導体(例えば、基質との複合化抗体、又はタンパク質−リガンド対{例えば、ビオチン−ストレプトアビジン}のタンパク質若しくはリガンドとの複合化抗体)又は抗体断片(例えば、単鎖抗体、単離抗体超可変ドメインなど)。
本発明の一実施形態においては、プロテオミクス法、例えば質量分析法を、軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーの検出及び定量に使用する。例えば、血清などの生物試料をタンパク質結合チップに塗布することを含む、マトリックス支援(matrix−associated)レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)又は表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI−TOF MS)(Wright, G.L., Jr., et al.(2002) Expert Rev Mol Diagn 2:549;Li, J., et al.(2002) Clin Chem 48:1296;Laronga, C., et al.(2003) Dis Markers 19:229;Petricoin, E.F., et al.(2002) 359:572;Adam, B.L., et al.(2002) Cancer Res 62:3609;Tolson, J., et al.(2004) Lab Invest 84:845;Xiao, Z., et al.(2001) Cancer Res 61:6029)によって、軟骨分解又は滑膜炎バイオマーカーを検出し、定量することができる。質量分析方法は、例えば、その各々の内容全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第5,622,824号、同5,605,798号及び同5,547,835号に記載されている。
RNA
一実施形態においては、前記バイオマーカーをコードするmRNAのレベルを、当業者に公知の方法、例えばノーザン分析によって測定する。バイオマーカーの遺伝子発現をRNAレベルで検出することができる。RNAは、RNA抽出技術によって、例えば、酸フェノール/グアニジンイソチオシアナート抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy RNA調製キット(Qiagen)又はPAXgene(PreAnalytix、Switzerland)によって、細胞から抽出することができる。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用した典型的なアッセイ形式としては、核ランオンアッセイ、RT−PCR、RNase保護アッセイ(Melton et al., Nuc. Acids Res. 12:7035)、ノーザンブロット法、In situハイブリダイゼーションなどが挙げられる。遺伝子発現は、以下に示すマイクロアレイ分析によって検出することもできる。
一実施形態においては、前記バイオマーカーをコードするmRNAのレベルを、当業者に公知の方法、例えばノーザン分析によって測定する。バイオマーカーの遺伝子発現をRNAレベルで検出することができる。RNAは、RNA抽出技術によって、例えば、酸フェノール/グアニジンイソチオシアナート抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy RNA調製キット(Qiagen)又はPAXgene(PreAnalytix、Switzerland)によって、細胞から抽出することができる。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用した典型的なアッセイ形式としては、核ランオンアッセイ、RT−PCR、RNase保護アッセイ(Melton et al., Nuc. Acids Res. 12:7035)、ノーザンブロット法、In situハイブリダイゼーションなどが挙げられる。遺伝子発現は、以下に示すマイクロアレイ分析によって検出することもできる。
ノーザンブロット法の場合、RNA試料は、まず、アガロースゲル中で変性条件下で電気泳動させてサイズによって分離される。次いで、RNAを膜に移し、架橋し、標識プローブとハイブリッド形成させる。ランダムプライムド(random−primed)DNAプローブ、ニック翻訳(nick−translated)DNAプローブ、又はPCRによって生成されたDNAプローブ、インビトロ転写RNAプローブ、及びオリゴヌクレオチドを含めて、非同位体放射性標識プローブ又は高比活性放射性標識プローブを使用することができる。さらに、部分的にしか相同でない配列(例えば、異なる種由来のcDNA、又はエキソンを含み得るゲノムDNA断片)をプローブとして使用することができる。
(リボヌクレアーゼ保護アッセイとS1ヌクレアーゼアッセイの両方を含めて)ヌクレアーゼ保護アッセイは、特定のmRNAを検出及び定量する極めて高感度な方法である。NPAの基本は、(放射性標識又は非同位体)アンチセンスプローブとRNA試料の溶液ハイブリダイゼーションである。ハイブリダイゼーション後、ハイブリッド形成しない一本鎖プローブ及びRNAをヌクレアーゼによって分解する。残りの保護された断片をアクリルアミドゲルによって分離させる。NPAによって、幾つかのRNA種を同時に検出することができる。
In situハイブリダイゼーション(ISH)は、細胞又は組織中の特定のmRNAを局在化させる強力で用途の広いツールである。プローブのハイブリダイゼーションは、細胞又は組織内で起こる。細胞の構造は手順を通して維持されるので、ISHは、組織試料内のmRNAの場所に関する情報を提供する。
手順は、試料を中性緩衝ホルマリンで固定し、組織をパラフィンに埋め込むことによって開始される。次いで、試料を薄切片にスライスし、顕微鏡スライドに載せる。(或いは、組織を凍結切片にし、パラホルムアルデヒドで後固定(post−fix)することができる。)。切片を脱ろうし、再水和する一連の洗浄後、プロテイナーゼK消化によってプローブ到達性(accessibility)を増大させ、次いで、標識プローブを試料切片とハイブリッド形成させる。放射性標識プローブを、スライド上で乾燥させた液体フィルムによって可視化する。一方、非同位体標識プローブは、比色定量試薬又は蛍光試薬によって都合良く検出される。この後者の検出方法は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)の基本である。
使用することができる検出方法としては、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、他の適切な標識などが挙げられる。
典型的には、RT−PCRによってRNA標的を増幅する。このプロセスでは、逆転写酵素を用いて、RNAを相補DNA(cDNA)に転化し、次いで、相補DNAを増幅して検出を容易にすることができる。相対定量(relative quantitative)RT−PCRは、目的遺伝子と同時に内部標準を増幅させる必要がある。内部標準を用いて試料を正規化する。正規化すると、特定のmRNAの相対存在量の直接比較を試料全体にわたって実施することができる。一般に使用される内部標準としては、例えば、GAPDH、HPRT、アクチン及びサイクロフィリンが挙げられる。
多数のDNA増幅方法が公知であり、その大部分は、(ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、又は自立(self−sustained)配列複製などの)酵素連鎖反応に依拠し、又はクローン化されたベクターの全部若しくは一部の複製から依拠する。
多数の標的・シグナル増幅(TAS)方法が、文献、例えば、Landegren, U. et al., Science 242:229−237(1988)及びLewis, R., Genetic Engineering News 10:1, 54−55(1990)中のこれらの方法の総説に記載されている。PCRは、当分野で一般的な核酸増幅法であり、とりわけ米国特許第4,683,195号及び同4,683,202号に記載されている。PCRによって、診断状況(diagnostic context)における任意の公知核酸を増幅することができる(Mok et al., 1994, Gynaecologic Oncology 52:247−252)。自立配列複製(3SR)は、TASの変法であり、酵素カクテル及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーによって媒介される、一連の逆転写酵素(RT)活性、ポリメラーゼ活性及びヌクレアーゼ活性による核酸テンプレートの等温増幅を含む(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)。連結増幅反応又は連結増幅システムは、DNAリガーゼと、標的鎖1本当たり2本の4本のオリゴヌクレオチドとを使用する。この技術は、Wu, D.Y. and Wallace, R.B., 1989, Genomics 4:560に記載されている。Qベータレプリカーゼ技術では、Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197に記載のように、一本鎖RNAを複製するバクテリオファージQベータ用RNAレプリカーゼを用いて、標的DNAを増幅する。定量PCR(Q−PCR)は、試料内の転写物の相対量を測定可能な技術である。
III. TNF阻害剤
本発明は、強直性脊椎炎(AS)の治療に対するTNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法を記述する。本発明は、患者における強直性脊椎炎(AS)に関連した構造的損傷の進行を遅延させるために、TNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力をモニターする方法も提供する。本発明は、患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を予測する方法も更に含む。特許請求の方法に関連した組成物及びキットも本発明の一部として企図される。
本発明は、強直性脊椎炎(AS)の治療に対するTNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法を記述する。本発明は、患者における強直性脊椎炎(AS)に関連した構造的損傷の進行を遅延させるために、TNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力をモニターする方法も提供する。本発明は、患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を予測する方法も更に含む。特許請求の方法に関連した組成物及びキットも本発明の一部として企図される。
一実施形態においては、これらの方法は、高親和性及び低off速度でヒトTNFαに結合し、高い中和能を有する単離ヒト抗体又はその抗原結合部の効力を決定することを含む。本発明で用いるヒト抗体は、組換え中和ヒト抗hTNFα抗体であることが好ましい。本発明の最も好ましい組換え中和抗体は、本明細書ではD2E7と称し、HUMIRA(登録商標)及びアダリムマブとも称する(D2E7 VL領域のアミノ酸配列を配列番号1で示し、D2E7 VH領域のアミノ酸配列を配列番号2で示す。)。D2E7(アダリムマブ/HUMIRA(登録商標))の諸特性は、各々を参照により本明細書に組み込むSalfeld他、米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号に記載されている。本発明の方法は、リウマチ様関節炎治療の臨床試験を受けたキメラ及びヒト化ネズミ抗hTNFα抗体を用いて実施することができる(例えば、Elliott, MJ., et al.(1994) Lancet 344:1125−1127;Elliot, M.J., et al.(1994) Lancet 344:1105−1110;Rankin, E.C., et al.(1995) Br. J. Rheumatol. 34:334−342参照)。
一実施形態においては、本発明の方法は、ASの治療に対する、D2E7抗体及び抗体部分、D2E7関連抗体及び抗体部分、並びに低解離速度及び高中和能でのhTNFαへの高親和性結合などD2E7と等価な諸特性を有する他のヒト抗体及び抗体部分の効力を決定することを含む。
一実施形態においては、本発明は、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する、単離ヒト抗体又はその抗原結合部を用いた治療を提供する。より好ましくは、単離ヒト抗体又はその抗原結合部は、5×10−4s−1以下のKoffで、更により好ましくは1×10−4s−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。より好ましくは、単離ヒト抗体又はその抗原結合部は、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−8M以下のIC50で、更により好ましくは1×10−9M以下のIC50で、更により好ましくは1×10−10M以下のIC50で中和する。好ましい実施形態においては、抗体は、単離ヒト組換え抗体又はその抗原結合部である。
抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインが、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性に重要な役割を果たすことは当分野で周知である。したがって、別の態様においては、本発明は、AS治療に対する患者の反応を予測する方法に関する。ここで、治療は、hTNFαとの結合に対して低解離速度を有し、D2E7の軽鎖及び重鎖CDR3ドメインと構造的に同一である、又は関係する軽鎖及び重鎖CDR3ドメインを有するヒト抗体を投与することを含む。D2E7 VL CDR3の位置9は、Koffに実質的な影響を及ぼさずにAla又はThrが占めることができる。したがって、D2E7 VL CDR3のコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列:Q−R−Y−N−R−A−P−Y−(T/A)(配列番号3)を含む。また、D2E7 VH CDR3の位置12は、Koffに実質的な影響を及ぼさずにTyr又はAsnが占めることができる。したがって、D2E7 VH CDR3のコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列:V−S−Y−L−S−T−A−S−S−L−D−(Y/N)(配列番号4)を含む。さらに、米国特許第6,090,382号の実施例2に示されるように、D2E7重鎖及び軽鎖のCDR3ドメインは、Koffに実質的な影響を及ぼさずに(VL CDR3内の位置1、4、5、7若しくは8、又はVH CDR3内の位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11において)単一のアラニン残基での置換に適している。さらに、当業者は、D2E7 VL及びVH CDR3ドメインがアラニンによる置換に適していることから、抗体の低off速度定数を依然として保持しつつ、CDR3ドメイン内の他のアミノ酸の置換、特に保存的アミノ酸による置換も可能であることを理解する。1から5個以下の保存的アミノ酸置換がD2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内でなされることが好ましい。1から3個以下の保存的アミノ酸置換がD2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内でなされることがより好ましい。また、保存的アミノ酸置換は、hTNFαとの結合に極めて重要なアミノ酸位置においてなされてはならない。D2E7 VL CDR3の位置2及び5並びにD2E7 VH CDR3の位置1及び7は、hTNFαとの相互作用に極めて重要であると考えられ、したがって、保存的アミノ酸置換は、これらの位置において行われないことが好ましい(ただし、D2E7 VL CDR3の位置5におけるアラニン置換は、上述したように許容される。)(米国特許第6,090,382号参照)。
したがって、別の実施形態においては、本発明は、単離ヒト抗体又はその抗原結合部の投与を含むAS治療の効力を決定する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部は、好ましくは、以下の諸特性を有し、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する。
より好ましくは、抗体又はその抗原結合部は、5×10−4s−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。更により好ましくは、抗体又はその抗原結合部は、1×10−4s−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。
更に別の実施形態においては、本発明は、単離ヒト抗体又はその抗原結合部の投与を含むAS治療の効力を決定する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部は、配列番号3のアミノ酸配列、又は位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号4のアミノ酸配列、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)とを好ましくは含む。好ましくは、LCVRは、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわち、D2E7 VL CDR2)を更に含み、HCVRは、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわち、D2E7 VH CDR2)を更に含む。更により好ましくは、LCVRは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわち、D2E7 VL CDR1)を更に含み、HCVRは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわち、D2E7 VH CDR1)を更に含む。VLの枠組み領域は、好ましくはVΚIヒト生殖系列ファミリー、より好ましくはA20ヒト生殖系列Vk遺伝子、最も好ましくは米国特許第6,090,382号の図1A及び1Bに示されたD2E7 VL枠組み配列に由来する。VHの枠組み領域は、好ましくはVH3ヒト生殖系列ファミリー、より好ましくはDP−31ヒト生殖系列VH遺伝子、最も好ましくは米国特許第6,090,382号の図2A及び2Bに示されたD2E7 VH枠組み配列に由来する。
したがって、別の実施形態においては、本発明は、単離ヒト抗体又はその抗原結合部の投与を含むAS治療の効力を決定する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部は、配列番号1のアミノ酸配列(すなわち、D2E7 VL)を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列(すなわち、D2E7 VH)を含む重鎖可変領域(HCVR)とを好ましくは含む。ある実施形態においては、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、IgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域であることが好ましい。また、抗体は、カッパ軽鎖定常領域又はラムダ軽鎖定常領域の軽鎖定常領域を含み得る。抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含むことが好ましい。或いは、抗体部分は、例えば、Fab断片又は単鎖Fv断片であり得る。
更に別の実施形態においては、本発明は、D2E7関連VL及びVH CDR3ドメインを含む単離ヒト抗体又はその抗原結合部の投与を含むAS治療の効力を決定する方法を提供する。例えば、配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)、又は配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を有する、抗体又はその抗原結合部。
別の実施形態においては、本発明の方法は、インフリキシマブ(参照により本明細書に組み込む米国特許第5,656,272号に記載のRemicade(登録商標)、Johnson and Johnson)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファIgG4抗体)、CDP 870(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファ抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO 148(ゴリムマブ;Medarex and Centocor、国際公開第02/12502号参照)及びアダリムマブ(米国特許第6,090,382号にD2E7として記載されているHumira(登録商標)Abbott Laboratories、ヒト抗TNF mAb)を含めた、抗TNFα抗体又はその断片を含めて、ただしこれらだけに限定されないTNFα阻害剤を投与することを含むAS治療の効力を決定することを含む。他の例としては、(国際公開第91/03553号及び同09/406476号に記載の)エタネルセプト、可溶性I型TNF受容体、PEG化可溶性I型TNF受容体(PEGs TNF−R1)又はp55TNFR1gG(Lenercept)が挙げられる。別の実施形態においては、TNFα阻害剤は、組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)である。
本発明の方法及び組成物で使用されるTNFα抗体は、AS治療を改善するために改変することができる。一部の実施形態においては、TNFα抗体又はその抗原結合断片を化学的に改変して所望の効果を付与する。例えば、本発明の抗体及び抗体断片のPEG化は、例えば以下の参考文献、すなわち、(その各々を参照によりその全体を本明細書に組み込む)Focus on Factors 3:4−10(1992)、EP 0 154 316及びEP 0 401 384に記載された、当分野で公知のPEG化反応のいずれかによって実施することができる。PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって実施することが好ましい。本発明の抗体及び抗体断片のPEG化に好ましい水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書では「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1−C10)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコールなど他のタンパク質を誘導体化するために使用するPEGの形態のすべてを包含するものとする。
本発明のPEG化抗体及び抗体断片を調製する方法は、(a)抗体又は抗体断片を、抗体又は抗体断片が1個以上のPEG基に結合する条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコールと反応させる段階と、(b)反応生成物を得る段階とを一般に含む。既知のパラメータ及び所望の結果に基づいて最適な反応条件又はアシル化反応を選択することは当業者には明らかである。
PEG化抗体及び抗体断片は、本明細書に記載のTNFα抗体及び抗体断片を投与することによってASを治療するのに一般に使用することができる。一般に、PEG化抗体及び抗体断片は、非PEG化抗体及び抗体断片よりも半減期が長い。PEG化抗体及び抗体断片は、単独で、一緒に、又は他の薬剤組成物と組み合わせて使用することができる。
本発明の更に別の実施形態においては、TNFα抗体又はその断片を変化させることができ、定常領域によって媒介される少なくとも1つの生物学的エフェクター機能が未改変抗体よりも低下するように抗体の定常領域を改変する。Fc受容体との結合が低下するように本発明の抗体を改変するために、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを、Fc受容体(FcR)相互作用に必要な特定の領域において変異させることができる(例えば、Canfield, S.M. and S.L. Morrison(1991) J. Exp. Med. 173:1483−1491及びLund, J. et al.(1991) J. of Immunol. 147:2657−2662参照)。抗体のFcR結合能力の低下は、オプソニン作用、食作用、抗原依存性細胞傷害活性などFcR相互作用に依拠する他のエフェクター機能も低下させ得る。
本発明の方法に用いる抗体又は抗体部分は、誘導体化することができ、又は別の機能分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)と連結することができる。したがって、本発明の抗体及び抗体部分は、免疫接着分子を含めて、本明細書に記載したヒト抗hTNFα抗体の誘導体化され、さもなければ改変された形態を含むものとする。例えば、本発明の抗体又は抗体部分を、別の抗体(例えば、二重特異的抗体又は二重特異性抗体)、検出可能薬剤、細胞毒性薬、薬剤、及び/又は抗体若しくは抗体部分と(ストレプトアビジンコア領域、ポリヒスチジンタグなどの)別の分子との結合を媒介し得るタンパク質若しくはペプチドなどの1種類以上の他の分子実体と(化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合などによって)機能的に連結させることができる。
誘導体化抗体の1タイプは、(例えば二重特異的抗体を作製するために、同じタイプ又は異なるタイプの)2個以上の抗体を架橋することによって作製される。適切な架橋剤としては、適切なスペーサーによって分離された2個の極めて反応性の高い基を有するヘテロ二官能性架橋剤(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ホモ二官能性架橋剤(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)などが挙げられる。かかるリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、ILから入手可能である。
本発明の抗体又は抗体部分を誘導体化することができる有用な検出可能薬剤としては蛍光性化合物などが挙げられる。例示的な蛍光性検出可能薬剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、塩化5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニル、フィコエリトリンなどが挙げられる。抗体は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素を用いて誘導体化することもできる。抗体が検出可能な酵素で誘導体化されたときには、抗体は、検出可能な反応生成物を生成するために酵素が使用する追加の試薬を添加することによって検出される。例えば、検出可能薬剤の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在するときには、過酸化水素及びジアミノベンジジンを添加することによって、検出可能な着色反応生成物がもたらされる。抗体は、ビオチンを用いて誘導体化し、アビジン又はストレプトアビジン結合を間接的に測定することによって検出することもできる。
本発明の方法又は組成物に用いられる抗体又は抗体部分は、宿主細胞中での免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することができる。抗体を組換え発現させるために、軽鎖及び重鎖が宿主細胞中で発現され、好ましくは、宿主細胞を培養する培地中に分泌され、この培地から抗体を回収することができるように、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を含む1個以上の組換え発現ベクターを宿主細胞に移入する。Sambrook, Fritsch and Maniatis(eds), Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y.,(1989)、Ausubel, F.M. et al.(eds.) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates,(1989)及びBoss他、米国特許第4,816,397号に記載の方法などの標準組換えDNA方法を使用して、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組み入れ、ベクターを宿主細胞に導入する。
D2E7又はD2E7関連抗体を発現させるために、軽鎖及び重鎖可変領域をコードするDNA断片をまず入手する。これらのDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いた生殖系列軽鎖及び重鎖の各可変配列の増幅及び改変によって得ることができる。ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は当分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照されたい。Kabat, E.A., et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91−3242;Tomlinson, I.M., et al.(1992) ”The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol. 227:776−798及びCox, J.P.L. et al.(1994) ”A Directory of Human Germ−line V78 Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol. 24:827−836も参照されたい。その各々の内容を参照により本明細書に明確に組み込む。)。D2E7又はD2E7関連抗体の重鎖可変領域をコードするDNA断片を得るために、ヒト生殖系列VH遺伝子のVH3ファミリーのメンバーを標準PCRによって増幅する。最も好ましくは、DP−31 VH生殖系列配列を増幅する。D2E7又はD2E7関連抗体の軽鎖可変領域をコードするDNA断片を得るために、ヒト生殖系列VL遺伝子のVKIファミリーのメンバーを標準PCRによって増幅する。最も好ましくは、A20 VL生殖系列配列を増幅する。DP−31生殖系列VH配列及びA20生殖系列VL配列の増幅に使用するのに適切なPCRプライマーは、標準方法を用いて、上記参考文献に開示されたヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。
生殖系列VH及びVL断片を得た後に、これらの配列を変異させて、本明細書に開示するD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードすることができる。生殖系列VH及びVL DNA配列によってコードされるアミノ酸配列を、D2E7又はD2E7関連VH及びVL アミノ酸配列とまず比較して、D2E7又はD2E7関連配列中の生殖系列とは異なるアミノ酸残基を特定する。次いで、変化させるべきヌクレオチドを決定する遺伝コードを用いて、変異生殖系列配列がD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードするように、生殖系列DNA配列の適切なヌクレオチドを変異させる。(PCR産物が変異を含むように、変異ヌクレオチドがPCRプライマー中に組み入れられた)PCR媒介変異誘発、部位特異的変異誘発などの標準方法によって、生殖系列配列の変異誘発を実施する。
(上述したように生殖系列VH及びVL遺伝子の増幅及び変異誘発によって)D2E7又はD2E7関連VH及びVLセグメントをコードするDNA断片を得た後、これらのDNA断片を標準組換えDNA技術によって更に操作して、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、又はscFv遺伝子に転化させることができる。これらの操作においては、VL又はVHをコードするDNA断片を、抗体定常領域、柔軟なリンカーなど、別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作用可能に連結する。本明細書では「作用可能に連結する」という用語は、2個のDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように2個のDNA断片を連結することを意味するものとする。
VH領域をコードする単離DNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作用可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に転化することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えば、Kabat, E.A., et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91−3242参照)、これらの領域を含むDNA断片を標準PCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1又はIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作用可能に連結することができる。
VL領域をコードする単離DNAは、VLをコードするDNAを軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作用可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に転化することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えば、Kabat, E.A., et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91−3242参照)、これらの領域を含むDNA断片を標準PCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域であり得るが、最も好ましくはカッパ定常領域である。
scFv遺伝子を作製するためには、VH及びVL配列が、VL領域とVH領域が柔軟なリンカーで連結された連続単鎖タンパク質として発現され得るように、VH及びVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする別の断片に作用可能に連結する(例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426;Huston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883;McCafferty et al., Nature(1990) 348:552−554参照)。
本発明に用いられる抗体又は抗体部分を発現させるために、上述したように得られた、部分又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作用可能に連結されるように発現ベクターに挿入する。本明細書では「作用可能に連結する」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する所期の機能を果たすように、抗体遺伝子をベクターに連結することを意味するものとする。発現ベクター及び発現制御配列は、使用する発現宿主細胞に適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子は別個のベクターに挿入することができ、又はより典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子を発現ベクターに標準方法(例えば、抗体遺伝子断片上とベクター上の各相補的制限酵素切断部位の連結、又は制限酵素切断部位がない場合には平滑末端連結)によって挿入する。D2E7又はD2E7関連軽鎖又は重鎖配列を挿入する前に、発現ベクターは抗体定常領域配列を既に含み得る。例えば、D2E7又はD2E7関連VH及びVL配列を完全長抗体遺伝子に転化する一手法は、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに作用可能に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに作用可能に連結されるように、それぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターにこれらの配列を挿入することである。これに加えて、又はこれとは別に、組換え発現ベクターは、宿主細胞由来の抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローン化することができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を有する。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御する他の発現調節要素(例えば、ポリアデニレーションシグナル)を含むものとする。かかる制御配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA(1990)に記載されている。制御配列の選択を含めて、発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの要因によって左右され得ることを当業者は理解されたい。ほ乳動物宿主細胞発現の好ましい制御配列としては、(CMVプロモーター/エンハンサーなどの)サイトメガロウイルス(CMV)、(SV40プロモーター/エンハンサーなどの)シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなど、ほ乳動物細胞中で高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルス要素などが挙げられる。ウイルスの調節エレメント及びその配列の詳細については、例えば、Stinski、米国特許第5,168,062号、Bell他、米国特許第4,510,245号及びSchaffner他、米国特許第4,968,615号を参照されたい。
抗体鎖遺伝子及び制御配列に加えて、本発明に用いられる組換え発現ベクターは、宿主細胞中でベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)、選択可能なマーカー遺伝子などの追加の配列を含み得る。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞の選択を容易にする(例えば、すべてAxel他による米国特許第4,399,216号、同4,634,665号及び同5,179,017号参照)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞にG418、ハイグロマイシン、メトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択可能なマーカー遺伝子としては、(メトトレキセート選択/増幅を用いたdhfr−宿主細胞用)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、(G418選択用)neo遺伝子などが挙げられる。
軽鎖及び重鎖の発現の場合、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準技術によって宿主細胞に移入する。「移入」という用語の様々な形態は、外因性DNAを原核生物又は真核生物宿主細胞に導入するのに一般に使用される多種多様な技術、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン移入などを包含するものとする。原核生物宿主細胞でも真核生物宿主細胞でも本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、真核細胞、最も好ましくはほ乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。というのは、かかる真核細胞、特にほ乳動物細胞は、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が原核細胞よりも高いからである。抗体遺伝子の原核生物発現は、活性な抗体を高収率で産生するには効果的でないことが報告された(Boss, M.A. and Wood, C.R.(1985) Immunology Today 6:12−13)。
本発明の組換え抗体を発現するのに好ましいほ乳動物宿主細胞としては、(例えば、R.J. Kaufman and P.A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601−621に記載のDHFR選択可能マーカーと一緒に使用される、Urlaub and Chasin,(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216−4220に記載のdhfr− CHO細胞を含めた)チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞などが挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターをほ乳動物宿主細胞に導入するときには、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現に十分な期間、より好ましくは宿主細胞が成長する培地中に抗体を分泌するのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準タンパク質精製法によって培地から回収することができる。
宿主細胞は、Fab断片、scFv分子など、完全抗体の一部を産生するのにも使用することができる。上記手順を変更した手順も本発明の範囲内であることを理解されたい。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖(ただし、両方ではない。)をコードするDNAを宿主細胞に移入することが望ましい場合もある。組換えDNA技術を使用して、hTNFαとの結合に不要である、軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去することができる。かかる切断型DNA分子から発現される分子も本発明の抗体に包含される。また、一方の重鎖と一方の軽鎖が本発明の抗体であり、他方の重鎖と軽鎖がhTNFα以外の抗原に特異的である二官能性抗体は、本発明の抗体を標準化学架橋法によって第2の抗体に架橋することによって作製することができる。
本発明の抗体又はその抗原結合部の組換え発現の好ましい系においては、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウムによる移入によってdhfr−CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子は、高レベルの遺伝子転写をもたらすCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに各々作用可能に連結される。組換え発現ベクターは、ベクターが移入されたCHO細胞をメトトレキセート選択/増幅によって選択することができるDHFR遺伝子も含む。選択した形質転換宿主細胞を、抗体重鎖及び軽鎖を発現させるために培養し、完全抗体を培地から回収する。標準分子生物学技術を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、抗体を培地から回収する。
本明細書に開示するD2E7若しくはその抗原結合部又はD2E7関連抗体に加えて、本発明の組換えヒト抗体は、ヒトリンパ球由来のmRNAから調製されたヒトVL及びVH cDNAを用いて調製された、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリ、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリのスクリーニングによって単離することができる。かかるライブラリの調製及びスクリーニング方法は当分野で公知である。ファージディスプレイライブラリを作製する市販キット(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01及びStratagene SurfZAP(登録商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)に加えて、抗体ディスプレイライブラリの作製及びスクリーニング用に特に適している方法及び試薬の例は、例えば、Ladner他、米国特許第5,223,409号;Kang他、国際公開第92/18619号;Dower他、国際公開第91/17271号;Winter他、国際公開第92/20791号;Markland他、国際公開第92/15679号;Breitling他、国際公開第93/01288号;McCafferty他、国際公開第92/01047号;Garrard他、国際公開第92/09690号;Fuchs et al.(1991) Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992) Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989) Science 246:1275−1281;McCafferty et al., Nature(1990) 348:552−554;Griffiths et al.(1993) EMBO J 12:725−734;Hawkins et al.(1992) J Mol Biol 226:889−896;Clackson et al.(1991) Nature 352:624−628;Gram et al.(1992) PNAS 89:3576−3580;Garrard et al.(1991) Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991) Nuc Acid Res 19:4133−4137及びBarbas et al.(1991) PNAS 88:7978−7982に見出すことができる。
好ましい実施形態においては、hTNFαに対して高親和性及び低off速度定数を有するヒト抗体を単離するために、hTNFαに対して高親和性及び低off速度定数を有するネズミ抗hTNFα抗体(例えば、MAK 195、寄託番号ECACC 87 050801のハイブリドーマ)をまず用いて、Hoogenboom他、国際公開第93/06213号に記載のエピトープ刷り込み方法によって、hTNFαに対して類似の結合活性を有するヒト重鎖及び軽鎖配列を選択する。この方法に使用する抗体ライブラリは、McCafferty他、国際公開第92/01047号、McCafferty et al., Nature (1990) 348:552−554及びGriffiths et al.,(1993) EMBO J 12:725−734に記載のとおりに調製され、スクリーニングされたscFvライブラリであることが好ましい。scFv抗体ライブラリは、組換えヒトTNFαを抗原として用いてスクリーニングすることが好ましい。
最初のヒトVL及びVHセグメントを選択した後、最初に選択したVLセグメントとVHセグメントの異なる対をhTNFα結合についてスクリーニングする「ミックス アンド マッチ(mix and match)」実験を実施して、好ましいVL/VH対の組合せを選択する。また、hTNFα結合に対する親和性の更なる改善及び/又はより低いoff速度定数のために、好ましいVL/VH対のVL及びVHセグメントを、自然免疫応答中の抗体の親和性成熟の原因であるインビボ体細胞変異プロセスに類似のプロセスにおいて、好ましくはVH及び/又はVLのCDR3領域内で、無作為に変異させることができる。このインビトロでの親和性成熟は、それぞれVH CDR3又はVL CDR3に好意的な(complimentary)PCRプライマーを用いてVH及びVL領域を増幅することによって実施することができる。これらのプライマーは、得られるPCR産物が、無作為な変異をVH及び/又はVL CDR3領域に導入するVH及びVLセグメントをコードするように、特定の位置に4個のヌクレオチド塩基の無作為混合物が「加えられて(spiked)」いる。これらの無作為変異VH及びVLセグメントを、hTNFαとの結合について再スクリーニングし、hTNFα結合に対して高親和性及び低off速度を示す配列を選択することができる。
本発明の抗hTNFα抗体を組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリからスクリーニングし、単離した後、選択した抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収することができ、標準組換えDNA技術によって他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。必要に応じて、核酸を更に操作して(例えば、追加の定常領域などの追加の免疫グロブリンドメインをコードする核酸に連結された)本発明の他の抗体形態を作製することができる。コンビナトリアルライブラリのスクリーニングによって単離した組換えヒト抗体を発現させるために、上で詳述したように、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローン化し、ほ乳動物宿主細胞に導入する。
hTNFαに対して高親和性及び低off速度定数を有するヒト抗体を単離する方法は、その各々を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,090,382号、同6,258,562号及び同6,509,015号にも記載されている。
IV. 脊椎関節症
TNFαは、脊椎関節症などの炎症性疾患を含めて、多種多様な障害の病態生理に関係する(例えば、Moeller et al.(1990) Cytokine 2:162、米国特許第5,231,024号、欧州特許公報第260 610号参照)。
TNFαは、脊椎関節症などの炎症性疾患を含めて、多種多様な障害の病態生理に関係する(例えば、Moeller et al.(1990) Cytokine 2:162、米国特許第5,231,024号、欧州特許公報第260 610号参照)。
本明細書では「脊椎関節症」という用語を、脊椎の接合部で発症する幾つかの疾患のいずれか1つを表すために使用する。かかる疾患は、共通の臨床的、放射線医学的及び組織学的特徴を有する。幾つかの脊椎関節症は遺伝子特性を共有する。すなわち、それらは、HLA−B27対立遺伝子と関連がある。一実施形態においては、脊椎関節症という用語を、強直性脊椎炎を除いて、脊椎の接合部で発症する幾つかの疾患のいずれか1つを表すために使用する。かかる疾患は、共通の臨床的、放射線医学的及び組織学的特徴を有する。脊椎関節症の例としては、強直性脊椎炎、乾せん性関節炎/脊椎炎、腸疾患に基づく関節炎、反応性関節炎又はライター症候群及び未分化脊椎関節症が挙げられる。脊椎関節症の研究に用いられる動物モデルの例としては、ank/ankトランスジェニックマウス、HLA−B27トランスジェニックラットが挙げられる(Taurog et al.(1998) The Spondylarthritides. Oxford:Oxford University Press参照)。
本発明の方法は、脊椎関節症患者、又は脊椎関節症を発症するリスクのある対象の治療に使用することもできる。脊椎関節症を発症するリスクのある対象の例としては、関節炎に罹患したヒトが挙げられる。脊椎関節症は、リウマチ様関節炎を含めて他の関節炎形態と関連し得る。本発明の一実施形態においては、脊椎関節症患者又は脊椎関節症を発症するリスクのある患者の軟骨分解及び/又は滑膜炎バイオマーカーのバイオマーカーレベルを測定し、それによって患者が脊椎関節症を発症するリスクがあるどうかを評価する。TNFα抗体を用いて治療することができ、したがって、本明細書に記載の方法によって検査することができる脊椎関節症の例を以下に記述する。
1.強直性脊椎炎(AS)
腫よう壊死因子は、強直性脊椎炎(AS)の病態生理に関係する(Verjans et al.(1991) Arthritis Rheum. 34:486;Verjans et al.(1994) Clin Exp Immunol. 97:45;Kaijtzel et al.(1999) Hum Immunol. 60:140参照)。ASは、1個以上の椎骨の炎症を含む炎症性障害である。ASは、脊椎骨間の関節、仙腸関節、及び脊椎と骨盤の間の関節を含めて、中軸骨格及び/又は末梢の関節で発症する慢性炎症性疾患である。ASによって、最終的に、患部椎骨は融着し、又は一緒に成長する。ASを含めて脊椎関節症は、乾せん性関節炎(PsA)、及び/又は潰よう性大腸炎及びクローン病を含めた炎症性腸疾患(IBD)と関連し得る。
腫よう壊死因子は、強直性脊椎炎(AS)の病態生理に関係する(Verjans et al.(1991) Arthritis Rheum. 34:486;Verjans et al.(1994) Clin Exp Immunol. 97:45;Kaijtzel et al.(1999) Hum Immunol. 60:140参照)。ASは、1個以上の椎骨の炎症を含む炎症性障害である。ASは、脊椎骨間の関節、仙腸関節、及び脊椎と骨盤の間の関節を含めて、中軸骨格及び/又は末梢の関節で発症する慢性炎症性疾患である。ASによって、最終的に、患部椎骨は融着し、又は一緒に成長する。ASを含めて脊椎関節症は、乾せん性関節炎(PsA)、及び/又は潰よう性大腸炎及びクローン病を含めた炎症性腸疾患(IBD)と関連し得る。
ASの初期症状は、CTスキャン及びMRIスキャンを含めて、放射線透過試験によって判定することができる。ASの初期症状は、仙腸骨炎(scroiliitis)、及び肋軟骨下(subchrondral)骨の皮質縁部の不鮮明化によって明らかな仙腸(sacroliac)関節の変化、それに続くびらん及び硬化症を含むことが多い。疲労もASの一般的症候として注目される(Duffy et al.(2002) ACR 66th Annual Scientific Meeting Abstract)。したがって、本発明の方法は、TNF阻害剤の投与を含む治療の効力を決定する方法を提供することによってAS治療を改善するのに使用することができる。
一実施形態においては、本発明の方法によって、ASを含めて、IBDと関連した脊椎関節症の治療に対するTNF阻害剤の投与の効力を決定する。
ASは、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド抗炎症性薬物療法(NSAID)を用いて治療されることが多い。したがって、本発明の方法によって、強直性脊椎炎に一般に不随する炎症及びとう痛の軽減に一般に使用される薬剤と組み合わせて投与されるTNFα抗体を含む治療の効力を決定することができる。
2. 乾せん性関節炎
腫よう壊死因子は、乾せん性関節炎(PsA)の病態生理に関係する(Partsch et al.(1998) Ann Rheum Dis. 57:691;Ritchlin et al.(1998) J Rheumatol. 25:1544)。本明細書では、乾せん性関節炎、又は皮膚に関連した乾せんは、体表面に赤斑を生じる一般的な慢性皮膚症状である乾せんと関連がある慢性炎症性関節炎を指す。乾せん患者の約20人に1人は皮膚症状と一緒に関節炎を発症し、症例の約75%において関節炎の前に乾せんが起こる。PsAは軽度から重度の関節炎まで様々であり、指及び脊椎で通常は発症する。脊椎で発症したとき、その症候は、上述した強直性脊椎炎の症候に類似している。したがって、PsAの治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
腫よう壊死因子は、乾せん性関節炎(PsA)の病態生理に関係する(Partsch et al.(1998) Ann Rheum Dis. 57:691;Ritchlin et al.(1998) J Rheumatol. 25:1544)。本明細書では、乾せん性関節炎、又は皮膚に関連した乾せんは、体表面に赤斑を生じる一般的な慢性皮膚症状である乾せんと関連がある慢性炎症性関節炎を指す。乾せん患者の約20人に1人は皮膚症状と一緒に関節炎を発症し、症例の約75%において関節炎の前に乾せんが起こる。PsAは軽度から重度の関節炎まで様々であり、指及び脊椎で通常は発症する。脊椎で発症したとき、その症候は、上述した強直性脊椎炎の症候に類似している。したがって、PsAの治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
PsAは破壊性関節炎を伴うことがある。破壊性関節炎は、関節を損なう肉眼的びらん性変形をもたらす過剰な骨びらんを特徴とする障害を指す。一実施形態においては、破壊性関節炎の治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
3. 反応性関節炎/ライター症候群
腫よう壊死因子は、ライター症候群とも称される反応性関節炎の病態生理に関係する(Braun et al.(1999) Arthritis Rheum. 42(10):2039)。反応性関節炎(ReA)は、腸管感染症又は泌尿生殖器感染症に続くことが多い、体内の他の場所での感染症を併発する関節炎を指す。ReAは、関節の炎症(関節炎)、尿道炎、結膜炎並びに皮膚及び粘膜の病変を含めて、ある種の臨床症状を特徴とすることが多い。また、ReAは、クラミジア(chlamydia)、カンピロバクター(campylobacter)、サルモネラ(salmonella)又はエルシニア(yersinia)を含めて、性感染症又は赤痢感染に続いて起こり得る。一実施形態においては、ReAの治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
腫よう壊死因子は、ライター症候群とも称される反応性関節炎の病態生理に関係する(Braun et al.(1999) Arthritis Rheum. 42(10):2039)。反応性関節炎(ReA)は、腸管感染症又は泌尿生殖器感染症に続くことが多い、体内の他の場所での感染症を併発する関節炎を指す。ReAは、関節の炎症(関節炎)、尿道炎、結膜炎並びに皮膚及び粘膜の病変を含めて、ある種の臨床症状を特徴とすることが多い。また、ReAは、クラミジア(chlamydia)、カンピロバクター(campylobacter)、サルモネラ(salmonella)又はエルシニア(yersinia)を含めて、性感染症又は赤痢感染に続いて起こり得る。一実施形態においては、ReAの治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
4. 未分化脊椎関節症
一実施形態においては、本発明の方法によって得られる抗体を用いて、未分化脊椎関節症患者を治療する(Zeidler et al.(1992) Rheum Dis Clin North Am. 18:187参照)。未分化脊椎関節症の記述に用いられる他の用語としては、血清陰性オリゴ関節炎、未分化オリゴ関節炎などが挙げられる。本明細書では未分化脊椎関節症は、対象が脊椎関節症に関連した症候の一部のみしか示さない障害を指す。この症状は、IBD、乾せん、又はAS若しくはライター症候群の古典的症状を示さない若年成人において通常は認められる。未分化脊椎関節症は、ASの初期徴候である場合もある。一実施形態においては、未分化脊椎関節症の治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
V. 薬剤組成物及び薬剤投与
A. 組成物及び投与
本発明の方法に用いる抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤は、対象への投与に適切な薬剤組成物に混合することができる。典型的には、薬剤組成物は、本発明の抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤と薬剤として許容される担体とを含む。本明細書では「薬剤として許容される担体」は、生理学的に適合する、任意及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含む。薬剤として許容される担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどの1つ以上、及びこれらの組合せが挙げられる。組成物中に等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい場合が多い。薬剤として許容される担体は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の品質保持期間又は有効性を向上させる、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝剤などの補助物質の少量を更に含むことができる。
一実施形態においては、本発明の方法によって得られる抗体を用いて、未分化脊椎関節症患者を治療する(Zeidler et al.(1992) Rheum Dis Clin North Am. 18:187参照)。未分化脊椎関節症の記述に用いられる他の用語としては、血清陰性オリゴ関節炎、未分化オリゴ関節炎などが挙げられる。本明細書では未分化脊椎関節症は、対象が脊椎関節症に関連した症候の一部のみしか示さない障害を指す。この症状は、IBD、乾せん、又はAS若しくはライター症候群の古典的症状を示さない若年成人において通常は認められる。未分化脊椎関節症は、ASの初期徴候である場合もある。一実施形態においては、未分化脊椎関節症の治療に対するTNFα抗体又はその抗原結合断片の効力を、本発明の方法及び組成物によって決定することができる。
V. 薬剤組成物及び薬剤投与
A. 組成物及び投与
本発明の方法に用いる抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤は、対象への投与に適切な薬剤組成物に混合することができる。典型的には、薬剤組成物は、本発明の抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤と薬剤として許容される担体とを含む。本明細書では「薬剤として許容される担体」は、生理学的に適合する、任意及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含む。薬剤として許容される担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどの1つ以上、及びこれらの組合せが挙げられる。組成物中に等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい場合が多い。薬剤として許容される担体は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の品質保持期間又は有効性を向上させる、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝剤などの補助物質の少量を更に含むことができる。
本発明の方法に用いる組成物は多様な剤形を取り得る。剤形としては、例えば、溶液剤(例えば、注射液及び注入液)、分散液剤又は懸濁液剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、坐剤などの液体、半固体及び固体剤形が挙げられる。好ましい剤形は、意図する投与方法及び治療用途に応じて決まる。典型的な好ましい組成物は、他の抗体又は他のTNFα阻害剤と一緒にヒトの受動免疫に使用される組成物と類似した組成物など、注射液又は注入液の剤形である。好ましい投与方法は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態においては、抗体又は他のTNFα阻害剤を静脈内注入又は注射によって投与する。別の好ましい実施形態においては、抗体又は他のTNFα阻害剤を筋肉内又は皮下注射によって投与する。
治療用組成物は、一般に、製造及び貯蔵条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソーム、又は高薬物濃度に適切な他の秩序構造(ordered structure)として処方することができる。無菌注射液は、必要量の活性化合物(すなわち、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤)を上記成分の1種類又は組合せを含む適切な溶媒に混合し、必要に応じて、続いてろ過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散物は、基本分散媒と上記成分から選択される他の必要成分とを含む無菌ビヒクル中に活性化合物を混合することによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、活性成分と所望の追加成分との粉末を、あらかじめ無菌ろ過したその溶液から生成する。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングによって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、また、界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射用組成物の長時間吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に入れることによってもたらすことができる。
補充の活性化合物を組成物に混合することもできる。ある実施形態においては、本発明の方法に用いる抗体又は抗体部分を、AS阻害剤又は拮抗物質を含めて、1種類以上の追加の治療薬と一括処方及び/又は同時投与する。例えば、本発明の抗hTNFα抗体又は抗体部分は、TNFα関連障害に関連した他の標的に結合する1種類以上の追加の抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体、又は細胞表面分子に結合する抗体)、1種類以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、国際公開第94/06476号参照)、及び/又は(国際公開第93/19751号に記載のシクロヘキサン−イリデン誘導体などの)hTNFαの産生若しくは活性を阻害する1種類以上の化学薬品、又はその任意の組合せと一括処方及び/又は同時投与することができる。また、本発明の1種類以上の抗体を上記治療薬の2種類以上と併用することができる。かかる併用療法は、投与治療薬のより少ない投与量を有利に利用することができ、したがって種々の単独療法に付随して起こり得る副作用、合併症、又は患者の低反応レベルを回避することができる。
一実施形態においては、本発明は、TNFα阻害剤の有効量と、薬剤として許容される担体とを含む、薬剤組成物を含む。ここで、TNFα阻害剤の有効量は、AS治療に有効であり得る。一実施形態においては、本発明の方法に用いる抗体又は抗体部分を、参照により本明細書に組み込むPCT/IB03/04502及び米国特許出願第10/222140号に記載の薬剤に混合する。この製剤は、抗体D2E7の濃度50mg/mlを含み、あらかじめ充填された1本のシリンジは皮下注射用抗体40mgを含む。別の実施形態においては、本発明の製剤はD2E7を含む。
本発明の抗体、抗体部分及び他のTNFα阻害剤は、当分野で公知である種々の方法によって投与することができるが、多くの治療用途では、好ましい経路/投与方法は皮下注射である。別の実施形態においては、投与は静脈内注射又は注入による。当業者には明らかなように、経路及び/又は投与方法は所望の結果に応じて変わる。ある実施形態においては、活性化合物は、移植片、経皮貼付及びマイクロカプセル送達系を含めて、制御放出製剤などの急速放出に対して該化合物を保護する担体と一緒に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製する多数の方法が特許化され、又は当業者に一般に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Robinson, ed., Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
本発明に用いるTNFα抗体は、被覆粒子を形成するために重合体担体に封入されたタンパク質結晶の組合せを含むタンパク質結晶製剤の形で投与することもできる。タンパク質結晶製剤の被覆粒子は、球状形態を有することができ、直径500マイクロメートル以下のミクロスフェアとすることができ、又は他の形態を有することができ、微粒子とすることができる。タンパク質結晶濃度を高くすることによって、本発明の抗体を皮下に送達することができる。一実施形態においては、タンパク質結晶製剤又は組成物の1種類以上をTNFα関連障害患者に投与するタンパク質送達系によって、本発明のTNFα抗体を送達する。抗体全体の結晶、又は抗体断片の結晶の組成物、及びその結晶の安定な製剤を調製する方法は、参照により本明細書に組み込む国際公開第02/072636号にも記載されている。一実施形態においては、参照により本明細書に組み込むPCT/IB03/04502及び米国特許出願第10/222140号に記載の結晶化抗体断片を含む製剤を、本発明の治療方法によるリウマチ様関節炎の治療に使用する。
ある実施形態においては、本発明の抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤を、例えば、不活性希釈剤、又は同化できる食用担体と一緒に、経口投与することができる。本化合物(及び必要に応じて他の成分)は、硬又は軟ゼラチンカプセルに封入することもでき、圧縮して錠剤とすることもでき、又は対象の食事に直接混合することもできる。経口治療投与の場合、本化合物は、賦形剤と一緒に混合することができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、ウェーハ剤などの剤形で使用することができる。本発明の化合物を非経口投与以外で投与するために、その不活性化を防止する材料で該化合物を被覆することが必要な場合もあり、又はその不活性化を防止する材料と該化合物を同時投与することが必要な場合もある。
本発明の薬剤組成物は、本発明の抗体又は抗体部分の「治療有効量」又は「予防有効量」を含むことができる。「治療有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の治療成果を得るのに有効な量を指す。抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別及び体重、並びに抗体、抗体部分、他のTNFα阻害剤が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて変わり得る。治療有効量は、抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤の任意の毒性効果又は有害効果よりも治療上有益な効果がまさる量でもある。「予防有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の予防成果を得るのに有効な量を指す。典型的には、予防投与量は疾患前又は初期に対象に使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
投与計画は、所望の最適応答(例えば、治療応答又は予防応答)が得られるように調節することができる。例えば、単一ボーラスを投与することができ、幾つかの分割用量をある期間にわたって投与することができ、又は投与量を治療状況の緊急性に比例して増減することができる。投与を容易にし、投与量を均一にするために非経口組成物を単位用量形態で処方することが特に有利である。本明細書では単位用量形態とは、治療すべきほ乳動物対象に対する単位投与量として適切な物理的に分離した単位を指す。各単位は、必要な薬剤担体と伴に、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位用量形態の仕様は、(a)活性化合物特有の特性、及び達成すべき特定の治療又は予防効果と、(b)個体における感受性の処置のためにかかる活性化合物を配合する技術に固有の制約とに従い、かつ直接左右される。
一実施形態においては、本発明は、TNFα関連障害の治療を要する対象にヒト抗体などのTNFα阻害剤の単回投与量を投与することを含む、TNFα関連障害を治療する単回投与方法を提供する。一実施形態においては、TNFα阻害剤は抗TNFα抗体D2E7である。TNFα阻害剤の単回投与量は、任意の治療有効量又は予防有効量であり得る。一実施形態においては、対象にD2E7約20mg、40mg又は80mgを単回投与する。単回投与量は、例えば皮下投与を含めて、任意の経路によって投与することができる。隔週投与計画は、TNFα活性が有害である障害の治療に使用することができ、米国特許出願第10/163657号に更に記載されている。治療又は予防の複数回可変投与法も、TNFα活性が有害である障害の治療に使用することができ、PCT出願PCT/US05/12007に更に記載されている。
投与量は、軽減すべき症状のタイプ及び重症度とともに変わり得ることに留意されたい。さらに、任意特定の対象に対して、具体的投与計画は、個々の必要性、及び組成物の投与者又は投与管理者の専門的判断に従って、経時的に調節すべきであり、本明細書に記載する投与量範囲は単なる例示にすぎず、特許請求の範囲に記載の組成物の範囲又は実施を限定するものではないことを理解されたい。
本発明は、AS治療のために本発明の抗TNF抗体を投与するためのパッケージされた薬剤組成物又はキットにも関する。本発明の一実施形態においては、キットは、AS治療投与のために、抗体などのTNFα阻害剤、追加の治療薬を含む第2の薬剤組成物、及び説明書を含む。説明書は、TNFα阻害剤及び/又は追加の治療薬の異なる投与量を治療のために対象に投与すべき方法(例えば、皮下)及び時期(例えば、第0週及び第2週)を記載することができる。
本発明の別の態様は、抗TNFα抗体及び薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物と、TNFα関連障害の治療に有用である薬物及び薬剤として許容される担体を各々が含む1種類以上の薬剤組成物とを含むキットに関する。或いは、キットは、抗TNFα抗体と、TNFα関連障害の治療に有用である1種類以上の薬物と、薬剤として許容される担体とを含む単一の薬剤組成物を含む。キットは、TNFα関連障害治療用薬剤組成物を投与するための説明書を含む。一実施形態においては、AS治療に対するTNF阻害剤の効力を決定する方法に関する説明書を含む。キットは、本発明の方法を実施するために、以下、すなわち、CTX−II及び/又はMMP−3を特異的に認識する検出可能な薬剤、使用説明書、及び患者から試料を単離するための試薬のいずれかを含み得る。
或いは、パッケージ又はキットは、TNFα阻害剤を含むことができ、本明細書に記載した用途、又は障害の治療に対して、パッケージ内で、又は添付の情報によって、使用を推奨することができる。パッケージされた薬剤又はキットは、(本明細書に記載した)第2の薬剤を(本明細書に記載した)第1の薬剤と一緒に使用するための説明書と同梱された、又は該説明書によって同時推奨された、第2の薬剤を更に含むことができる。
B. 追加の治療薬
本発明は、単独の、又は追加の治療薬と組み合わせた、AS治療に対するTNF阻害剤の効力を決定することに関する。本明細書に記載の方法及び薬剤組成物に用いる薬剤の組合せは、治療対象の症状又は疾患に対して治療上の相加効果又は相乗効果を有し得る。本明細書に記載の方法又は薬剤組成物に用いる薬剤の組合せは、薬剤の少なくとも1種類を単独で、又は特定の薬剤組成物の他の薬剤なしで投与したときにそれに付随する有害作用を低減することもできる。例えば、ある薬剤の副作用毒性を組成物の別の薬剤によって減弱することができ、したがって投与量を多くし、患者の服薬遵守を改善し、治療成果を向上させることができる。組成物の相加効果又は相乗効果、利益及び利点は、治療薬のクラス、すなわち構造クラス若しくは機能クラスに、又は個々の化合物自体に当てはまる。
本発明は、単独の、又は追加の治療薬と組み合わせた、AS治療に対するTNF阻害剤の効力を決定することに関する。本明細書に記載の方法及び薬剤組成物に用いる薬剤の組合せは、治療対象の症状又は疾患に対して治療上の相加効果又は相乗効果を有し得る。本明細書に記載の方法又は薬剤組成物に用いる薬剤の組合せは、薬剤の少なくとも1種類を単独で、又は特定の薬剤組成物の他の薬剤なしで投与したときにそれに付随する有害作用を低減することもできる。例えば、ある薬剤の副作用毒性を組成物の別の薬剤によって減弱することができ、したがって投与量を多くし、患者の服薬遵守を改善し、治療成果を向上させることができる。組成物の相加効果又は相乗効果、利益及び利点は、治療薬のクラス、すなわち構造クラス若しくは機能クラスに、又は個々の化合物自体に当てはまる。
補充の活性化合物を組成物に混合することもできる。ある実施形態においては、本発明の抗体又は抗体部分を、TNFα関連障害の治療に有用である1種類以上の追加の治療薬と一括処方及び/又は同時投与する。例えば、本発明の抗hTNFα抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤は、他の標的に結合する1種類以上の追加の抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体、又は細胞表面分子に結合する抗体)、1種類以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、国際公開第94/06476号を参照)、及び/又は(国際公開第93/19751号に記載のシクロヘキサン−イリデン誘導体などの)hTNFαの産生若しくは活性を阻害する1種類以上の化学薬品と一括処方及び/又は同時投与することができる。また、本発明の1種類以上の抗体又は他のTNFα阻害剤を上記治療薬の2種類以上と併用することができる。かかる併用療法は、投与治療薬のより低い投与量を有利に利用することができ、したがって種々の単独療法に付随して起こり得る毒性又は合併症を回避することができる。
治療方法において抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤と組み合わせることができる治療薬であって、本発明の方法によって抗体、抗体部分又は他のTNFα阻害剤と一緒に評価することができる治療薬の非限定的例としては、以下、すなわち、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2/インフリキシマブ(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG/エタネルセプト(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism (1994) Vol.37, S295;J. Invest. Med.(1996) Vol.44, 235A参照);55kdTNF−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);IDEC−CE9.1/SB 210396(非枯渇霊長類化抗CD4抗体;IDEC/SmithKline;例えば、Arthritis & Rheumatism (1995) Vol.38, S185参照);DAB 486−IL−2及び/又はDAB 389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen;例えば、Arthritis & Rheumatism (1993) Vol.36, 1223参照);抗Tac(ヒト化抗IL−2Rα;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10、抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−4;IL−10及び/又はIL−4作動物質(例えば、アゴニスト抗体);IL−1RA(IL−1受容体拮抗物質;Synergen/Amgen);アナキンラ(Kineret(登録商標)/Amgen);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S284;Amer. J. Physiol.− Heart and Circulatory Physiology (1995) Vol.268, pp.37−42参照);R973401(IV型ホスホジエステラーゼ阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S282参照);MK−966(COX−2阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S81参照);イロプロスト(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S82参照);メトトレキセート;サリドマイド(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S282参照)及びサリドマイド関連薬物(例えば、Celgen);レフルノミド(抗炎症及びサイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S131;Inflammation Research (1996) Vol.45., pp.103−107参照);トラネキサム酸(プラスミノゲン活性化阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S284参照);T−614(サイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S282参照);プロスタグランジンE1(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S282参照);テニダップ(非ステロイド性抗炎症剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S280参照);ナプロキセン(非ステロイド性抗炎症剤;例えば、Neuro Report (1996) Vol.7, pp.1209−1213参照);メロキシカム(非ステロイド性抗炎症剤);イブプロフェン(非ステロイド性抗炎症剤);ピロキシカム(非ステロイド性抗炎症剤);ジクロフェナク(非ステロイド性抗炎症剤);インドメタシン(非ステロイド性抗炎症剤);スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S281参照);アザチオプリン(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S281参照);ICE阻害剤(酵素インターロイキン1β変換酵素阻害剤);zap−70及び/又はlck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70又はlck阻害剤);VEGF阻害剤及び/又はVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞増殖因子又は血管内皮細胞増殖因子受容体阻害剤;血管形成阻害剤);コルチコステロイド抗炎症薬(例えば、SB203580);TNF転換酵素阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン11(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S296参照);インターロイキン13(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S308参照);インターロイキン17阻害剤(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol.39, No.9(supplement), S120参照);金;ペニシラミン;クロロキン;ヒドロキシクロロキン;クロランブシル;シクロスポリン;シクロホスファミド;全身リンパ組織照射;抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5毒素;経口投与ペプチド及びコラーゲン;ロベンザリット二ナトリウム;サイトカイン調節剤(CRA)HP228及びHP466(Houghten Pharmaceuticals, Inc.);ICAM−1アンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals, Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences, Inc.);プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカンポリサルファート;ミノサイクリン;抗IL2R抗体;海産及び植物脂質(魚及び植物種子脂肪酸;例えば、DeLuca et al.(1995) Rheum. Dis. Clin. North Am. 21:759−777参照);オーラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナム酸;フルフェナム酸;静脈内免疫グロブリン;ジロートン;アザリビン;ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(ラパマイシン);アミプリロース(セラフェクチン(therafectin));クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);メトトレキセート;抗ウイルス薬並びに免疫調節剤が挙げられる。上記薬剤のいずれも、本発明の複数回可変投与治療方法又は単回投与治療方法によってTNFα関連障害を治療するために、本発明のTNFα抗体と組み合わせて投与することができる。
一実施形態においては、本発明は、TNFα活性が有害であるTNFα関連障害の治療に対して、以下の薬剤の1種類と組み合わせたTNF阻害剤の効力を決定するための製品又は処理方法を含む:抗IL12抗体(ABT 874)、抗IL18抗体(ABT 325)、LCKの小分子阻害剤、COTの小分子阻害剤、抗IL1抗体、MK2の小分子阻害剤、抗CD19抗体、CXCR3の小分子阻害剤、CCR5の小分子阻害剤、CCR11の小分子阻害剤 抗E/Lセレクチン抗体、P2X7の小分子阻害剤、IRAK−4の小分子阻害剤、グルココルチコイド受容体の小分子作動物質、抗C5a受容体抗体、C5a受容体の小分子阻害剤、抗CD32抗体、及び治療タンパク質としてのCD32。
更に別の実施形態においては、本発明は、抗生物質又は抗感染薬と組み合わせたTNF阻害剤の効力を決定するための製品又は処理方法を含む。抗感染薬としては、ウイルス、真菌、寄生虫又は細菌感染症を治療する、当分野で公知の薬剤などが挙げられる。本明細書では「抗生物質」という用語は、微生物の増殖を阻害する、又は微生物を死滅させる化学物質を指す。この用語は、微生物によって産生される抗生物質、及び当分野で公知の合成抗生物質(例えば、アナログ)を包含する。抗生物質としては、クラリスロマイシン(Biaxin(登録商標))、シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))及びメトロニダゾール(Flagyl(登録商標))が挙げられるが、これらだけに限定されない。
別の実施形態においては、本発明は、クローン病又はクローン関連障害の治療用薬物と組み合わせたTNF阻害剤の効力を決定するための製品又は処理方法を含む。クローン病の治療に使用することができる治療薬の例としては、メサラミン、プレドニゾン、アザチオプリン、メルカプトプリン、インフリキシマブ、ブデソニド、スルファサラジン、メチルプレドニゾロン sod succ、ジフェノキシラート/atrop sulf、塩酸ロペラミド、メトトレキセート、オメプラゾール、葉酸塩、シプロフロキサシン/デキストロース−水、ヒドロコドン酒石酸水素塩/apap、塩酸テトラサイクリン、フルオシノニド、メトロニダゾール、チメロサール/ホウ酸、硫酸ヒヨスチアミン、コレスチラミン/スクロース、塩酸シプロフロキサシン、塩酸メペリジン、塩酸ミダゾラム、オキシコドンhcl/アセトアミノフェン、塩酸プロメタジン、リン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、セレコキシブ、ポリカルボフィル、ナプシル酸プロポキシフェン、ヒドロコルチゾン、マルチビタミン剤、バルサラジド二ナトリウム、リン酸コデイン/apap、コレセベラムhcl、シアノコバラミン、葉酸、レボフロキサシン、ナタリズマブ、メチルプレドニゾロン、インターフェロンガンマ及びサルグラモスチム(GM−CSF)が挙げられる。一実施形態においては、メトトレキセートをクローン病治療のために投与量2.5mgから30mg/週で投与する。
TNFα抗体は、乾せん治療のために、局所コルチコステロイド、ビタミンD類似体、及び局所若しくは経口レチノイド、又はこれらの組合せと組み合わせて投与することができる。また、TNFα抗体は、以下の乾せん治療薬剤の1種類と組み合わせて投与することができる:KDR(ABT−123)の小分子阻害剤、Tie−2の小分子阻害剤、カルシポトリエン、プロピオン酸クロベタゾール、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸ハロベタゾール、タザロテン、メトトレキセート、フルオシノニド、増強ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノロン、アセトニド、アシトレチン、タールシャンプー、吉草酸ベタメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ケトコナゾール、プラモキシン/フルオシノロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フルランドレノリド、尿素、ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール/emoll、プロピオン酸フルチカゾン、アジスロマイシン、ヒドロコルチゾン、保湿製剤、葉酸、デソニド、コールタール、酢酸ジフロラゾン、エタネルセプト、葉酸塩、乳酸、メトキサレン、hc/次没食子酸ビスマス/znox/resor、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、日焼け止め、サリチル酸、ハルシノニド、アントラリン、ピバル酸クロコルトロン、石炭抽出物、コールタール/サリチル酸、コールタール/サリチル酸/硫黄、デスオキシメタゾン、ジアゼパム、皮膚軟化薬、ピメクロリムス皮膚軟化薬、フルオシノニド/皮膚軟化薬、鉱物油/ヒマシ油/na lact、鉱物油/落花生油、石油/ミリスチン酸イソプロピル、ソラレン、サリチル酸、石鹸/トリブロムサラン、チメロサール/ホウ酸、セレコキシブ、インフリキシマブ、アレファセプト、エファリツマブ、タクロリムス、ピメクロリムス、PUVA、UVB及び他の光線療法並びにスルファサラジン。
一実施形態においては、本発明のTNFα抗体を上記腸疾患治療薬の1種類と組み合わせて、ASの複数回可変投与治療方法によって投与する。別の実施形態においては、上記追加の薬剤を本発明の単回投与治療方法においてTNFα抗体と併用する。更に別の実施形態においては、TNFα抗体を隔週投与計画に従って投与する。
上記治療薬のいずれか1種類を、単独で、又は組み合わせて、複数回可変投与治療計画によってTNFα抗体と組み合わせて、TNFαが有害であるTNFα関連障害の患者に投与することができる。一実施形態においては、上記治療薬のいずれか1種類を、単独で、又は組み合わせて、リウマチ様関節炎などの別のTNFα関連障害を治療するために、TNFα抗体に加えて、腸疾患患者に投与することができる。追加の治療薬は、上記併用療法に使用することができるが、有益な効果が望まれる、本明細書に記載の他の適応症にも使用できることを理解すべきである。
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、実施例を限定的なものと決して解釈してはならない。
実施例
実施例
アダリムマブは、活性な強直性脊椎炎(AS)における軟骨分解及び滑膜炎のバイオマーカーを抑制する。
以下の試験の目的は、中度から重度のASの治療におけるアダリムマブの対照試験において、軟骨及び骨破壊のバイオマーカー候補、例えば、骨吸収マーカー、コラーゲン分解マーカー及び滑膜炎マーカーを分析することであった。試験は、AS試験集団において、骨吸収マーカー、コラーゲン分解マーカー及び滑膜炎マーカーと、ASの公知のマーカーであるCRPとの相関に対するTNF阻害剤、すなわちアダリムマブの効果を分析することにも努めた。
方法
少なくとも1種類のNSAID又はDMARDに対して十分に反応しない、活動的なASの患者は、この試験に適格であった。試験設計を図1に示す。患者を無作為化して、最初の24週二重拘束(double−bind)期間中、続いて80週の非盲検期間中、プラセボ又はアダリムマブ40mgを隔週(eow)で皮下(sc)投与した。3種類のバイオマーカーを、ベースライン、及びアダリムマブ又はプラセボによる治療後第12週及び第24週に分析した。具体的には、骨吸収マーカーの血清I型コラーゲンNテロペプチド(NTX)、コラーゲン分解バイオマーカーの尿中II型コラーゲンCテロペプチド(尿中CTX−II)、及び滑膜炎バイオマーカーの血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMPS)を分析した。したがって、主要効力パラメータとしては、ASsessment in AS(ASAS) Working Group判定基準、Bath AS Disease Activity Index(BASDAI)及びCRPが挙げられる。ELISAによって、尿中II型コラーゲンCテロペプチド(尿中CTX−II)、血清I型コラーゲンNテロペプチド(NTX)及び血清MMP3の各濃度を各患者についてベースライン、第12週及び第24週に測定した。各投与群におけるベースラインとの濃度差、並びにこれらのバイオマーカーの変化の相関、及び他のAS結果を求めた。
少なくとも1種類のNSAID又はDMARDに対して十分に反応しない、活動的なASの患者は、この試験に適格であった。試験設計を図1に示す。患者を無作為化して、最初の24週二重拘束(double−bind)期間中、続いて80週の非盲検期間中、プラセボ又はアダリムマブ40mgを隔週(eow)で皮下(sc)投与した。3種類のバイオマーカーを、ベースライン、及びアダリムマブ又はプラセボによる治療後第12週及び第24週に分析した。具体的には、骨吸収マーカーの血清I型コラーゲンNテロペプチド(NTX)、コラーゲン分解バイオマーカーの尿中II型コラーゲンCテロペプチド(尿中CTX−II)、及び滑膜炎バイオマーカーの血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMPS)を分析した。したがって、主要効力パラメータとしては、ASsessment in AS(ASAS) Working Group判定基準、Bath AS Disease Activity Index(BASDAI)及びCRPが挙げられる。ELISAによって、尿中II型コラーゲンCテロペプチド(尿中CTX−II)、血清I型コラーゲンNテロペプチド(NTX)及び血清MMP3の各濃度を各患者についてベースライン、第12週及び第24週に測定した。各投与群におけるベースラインとの濃度差、並びにこれらのバイオマーカーの変化の相関、及び他のAS結果を求めた。
患者選択基準は以下を含んだ:患者≧18歳;以下の3つの判定基準、すなわち、(1)BASDAIスコア≧4、(2)全背痛(Total Back Pain)のVisual Analog Scale(VAS)スコア≧4、及び(3)朝のこわばり≧1時間のうち少なくとも2つを満たすことによって規定される、活動的なAS;並びに少なくとも1種類のNSAIDに対する不十分な反応。
患者除外基準は以下を含んだ:以前に抗TNF治療を受けた;全脊椎強直症(total spinal ankylosis)(竹様脊柱)の放射線学的証拠;ベースラインの4週間以内の(メトトレキセート、スルファサラジン又はヒドロキシクロロキン以外の)DMARDの使用;ベースラインの4週間以内のコルチコステロイドの関節内注射;及びベースラインの6週間以内の他の生物製剤又は治験療法(investigational therapy)の使用。
結果
合計82名の患者(44名のプラセボ患者と38名のアダリムマブ患者)が参加した。合計82名の患者のうち80名(98%)の患者は、24週の期間を満了した。24週の期間を満了しなかった2名の患者はプラセボ群であった。ベースライン特性は、投与群間で類似していた。ベースラインの人口統計を下記表1に示す。
合計82名の患者(44名のプラセボ患者と38名のアダリムマブ患者)が参加した。合計82名の患者のうち80名(98%)の患者は、24週の期間を満了した。24週の期間を満了しなかった2名の患者はプラセボ群であった。ベースライン特性は、投与群間で類似していた。ベースラインの人口統計を下記表1に示す。
試験した全患者間で、CRPレベルは、ベースラインにおいて尿中CTX−II、MMP3及びNTXの各レベルと有意に相関した。CRPと尿中CTX−IIレベルの相関は、CRPとMMP3及びNTXレベルとの相関よりも高かった。ベースラインにおけるバイオマーカーとCRPの相関を下記表2に示す。
(下記表3に示す)尿中CTX−II及びMMP3濃度の有意な減少が、第12週及び第24週におけるアダリムマブ患者においてプラセボ患者に対して生じたが(p<0.001)、NTXでは有意差がなかった。
図2に示すように、アダリムマブ患者は、第12週及び第24週における尿中CTX−IIレベルがプラセボに対して有意に減少した。図3に示すように、アダリムマブ患者は、第12週及び第24週において、MMP3レベルもプラセボ患者に対して統計的に有意に減少した。CRPレベルは、第12週及び第24週において、アダリムマブ患者においてプラセボ患者よりも有意に減少した(図4参照)。
ベースラインから第12週までのCRP、尿中CTX−II及びMMP−3レベルの変化は、アダリムマブ群において統計的に有意に相関した。有意な相関は、ベースラインCRPと、1)尿中CTX−II(r=0.71)、2)MMP3(r=0.45)、及び3)NTX(r=0.37)(p≦0.001)との間で、また、尿中CTX−IIとNTXの間で(r=0.49;p<0.0001)認められた。尿中CTX−II及びMMP3の第12週の変化は、CRPの変化と有意に相関した(それぞれ、r=0.40及び0.43)(p≦0.005)。また、尿中CTX−IIの第12週の変化は、MMP3の変化と有意に相関した(r=0.41、p<0.0001)。アダリムマブ群においては、相関分析によって、CRPレベルの改善が、尿中CTX−IIとMMP−3の両方のレベルの低下と関連づけられることが確認された。第12週におけるベースラインからのCRPとバイオマーカー変化との相関を下記表2に示す。
結論として、中度から重度のAS患者においては、アダリムマブは、滑膜炎及び軟骨基質分解を反映したバイオマーカーを有意に抑制した。アダリムマブは、滑膜炎(MMP3)及び軟骨基質分解(尿中CTX−II)を反映したバイオマーカーを抑制し、アダリムマブが、ASに付随した構造的損傷を減速させることが示唆された。また、尿中CTX−II及びMMP3の変化は、CRPの変化と有意に相関した。
均等形態
当業者は、本明細書に記載した本発明の具体的実施形態の多数の均等形態をせいぜい定常的な実験法によって認識し、又は確認することができる。かかる均等形態は以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。本願を通して引用するすべての参考文献、特許及び特許出願公報の内容を参照により本明細書に組み込む。
当業者は、本明細書に記載した本発明の具体的実施形態の多数の均等形態をせいぜい定常的な実験法によって認識し、又は確認することができる。かかる均等形態は以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。本願を通して引用するすべての参考文献、特許及び特許出願公報の内容を参照により本明細書に組み込む。
Claims (58)
- ヒトTNFα抗体を用いた治療後に強直性脊椎炎(AS)患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベルを、病態に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することと、
患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルがコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することと
を含み、ヒトTNFα抗体を用いた治療後に患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ASの治療のためのヒトTNFα抗体の効力が示される、
ASの治療のためのヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法。 - コラーゲン分解バイオマーカーがII型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である、請求項1に記載の方法。
- コラーゲン分解バイオマーカーが尿中II型コラーゲンCテロペプチド(CTX−II)である、請求項2に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーがマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項1に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーが血清メタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項4に記載の方法。
- ASに付随した構造的損傷を改善するためのヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力が決定される、請求項1に記載の方法。
- 患者のC反応性タンパク質(CRP)レベルを病態に関連した既知標準CRPレベルと比較することと、および
患者のCRPレベルが既知標準CRPレベルよりも高いかどうかを評価することと
を更に含み、既知標準よりも低いC反応性タンパク質レベルによって治療の効力が示される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 - ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、以下の特性を有する、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 - ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、配列番号3のアミノ酸配列、又は位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4のアミノ酸配列、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部がアダリムマブである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- 強直性脊椎炎(AS)患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの治療前レベルを、前記患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの治療後レベルと比較することを含み、治療後バイオマーカーレベルの方が低いことによってヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力が示される、ASに対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を決定する方法。
- コラーゲン分解バイオマーカーがII型コラーゲンCテロペプチドである、請求項13に記載の方法。
- コラーゲン分解バイオマーカーが尿中II型コラーゲンCテロペプチドである、請求項14に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーがマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項13に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーが血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項16に記載の方法。
- 患者におけるコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを測定することと、コラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーのレベルを、強直性脊椎炎(AS)に関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することとを含み、バイオマーカーレベルの低下によって、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、患者におけるASに付随した構造的損傷の進行速度を低下させるのに有効であることが示される、患者におけるASに付随した構造的損傷の進行の遅延に対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力をモニターする方法。
- コラーゲン分解バイオマーカーがII型コラーゲンCテロペプチドである、請求項18に記載の方法。
- コラーゲン分解バイオマーカーが尿中II型コラーゲンCテロペプチドである、請求項19に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーがマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項18に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーが血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項21に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、以下の特性を有する、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する、
請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。 - ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、配列番号3のアミノ酸配列、又は位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4のアミノ酸配列、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
- TNFα抗体又はその抗原結合部がアダリムマブである、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部を用いた治療後に患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの所定レベルを、ASに関連したコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することと、
患者の治療後のコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルがコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することと
を含み、患者から得られたコラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が患者におけるASの治療に有効であることが予測される、
患者におけるASの治療に対するヒトTNFα抗体又はその抗原結合部の効力を予測する方法。 - コラーゲン分解バイオマーカーがII型コラーゲンCテロペプチドである、請求項28に記載の方法。
- コラーゲン分解バイオマーカーが尿中II型コラーゲンCテロペプチドである、請求項29に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーがマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項28に記載の方法。
- 滑膜炎バイオマーカーが血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)である、請求項31に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、以下の特性を有する、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する、
請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。 - ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、配列番号3のアミノ酸配列、又は位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4のアミノ酸配列、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
- ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
- TNFα抗体又はその抗原結合部がアダリムマブである、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
- バイオマーカーレベルがELISAによって測定される、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
- a)コラーゲン分解バイオマーカー及び/又は滑膜炎バイオマーカーを特異的に認識する検出可能な薬剤と、
b)使用説明書と、
c)場合によっては、患者から試料を単離するための試薬と
を含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。 - 検出可能な薬剤が尿中CTX−II又は血清MMP3を認識する、請求項39に記載のキット。
- TNFα阻害剤を用いた治療後に患者から得られたCTX−IIの所定レベルを、病態に関連したCTX−IIの既知標準レベルと比較することと、
患者の治療後のCTX−IIレベルがCTX−IIの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、患者から得られたCTX−IIレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される、
患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法。 - TNFα阻害剤を用いた治療後に強直性脊椎炎(AS)患者から得られたCTX−IIの所定レベルを、病態に関連したCTX−IIの既知標準レベルと比較することと、
患者の治療後のCTX−IIレベルがCTX−IIの既知標準レベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、TNFα阻害剤を用いた治療後に患者から得られたCTX−IIレベルが既知標準レベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASに付随した構造的損傷を軽減するのに有効であることが示される、
患者におけるASに付随した構造的損傷の軽減に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法。 - 患者から得られたCTX−IIの所定の治療後レベルを、患者から得られたCTX−IIの所定の治療前レベルと比較することと、
治療後のCTX−IIレベルが治療前のCTX−IIレベルよりも低いかどうかを評価することとを含み、患者から得られた治療後のCTX−IIレベルが治療前のCTX−IIレベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される、
患者におけるASの治療に対するTNFα阻害剤の効力を決定する方法。 - 治療後のCTX−IIレベルが、治療前のCTX−IIレベルよりも少なくとも約9%減少する、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
- CTX−IIが尿中CTX−IIである、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
- CTX−IIレベルがELISAによって測定される、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
- TNFα阻害剤が、TNFα抗体若しくはその抗原結合部、TNF融合タンパク質又は組換えTNF結合タンパク質からなる群から選択される、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
- TNF融合タンパク質がエタネルセプトである、請求項47に記載の方法。
- TNFα抗体又はその抗原結合部が、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び多価抗体からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
- 抗TNFα抗体又はその抗原結合部が、インフリキシマブ、ゴリムマブ及びアダリムマブからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
- ヒト抗体又はその抗原結合部が、表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−8M以下のKd及び1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞傷害性を1×10−7M以下のIC50で中和する、請求項49に記載の方法。
- ヒト抗体又はその抗原結合部が以下の特性を有する、すなわち、
a)表面プラズモン共鳴によって測定して1×10−3s−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、位置1、4、5、7若しくは8における単一のアラニン置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメイン、又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号3から改変された軽鎖CDR3ドメインを有し、
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン、位置2、3、4、5、6、8、9、10若しくは11における単一のアラニン置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメイン、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12における1から5個の保存的アミノ酸置換によって配列番号4から改変された重鎖CDR3ドメインを有する、
請求項49に記載の方法。 - ヒト抗体又はその抗原結合部が、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む、請求項49に記載の方法。
- 患者から得られた滑膜炎バイオマーカーの所定の治療後レベルを、ASに関連した滑膜炎バイオマーカーの既知標準レベルと比較することと、
治療後の滑膜炎バイオマーカーレベルが既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルよりも低いかどうかを評価することとを更に含み、治療後の滑膜炎バイオマーカーが既知標準滑膜炎バイオマーカーレベルよりも低いことによって、TNFα阻害剤が患者におけるASの治療に有効であることが示される、
請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。 - 滑膜炎バイオマーカーがMMP−3である、請求項54に記載の方法。
- バイオマーカーレベルがELISAによって測定される、請求項41から54のいずれか一項に記載の方法。
- a)CTX−IIを特異的に認識する検出可能な薬剤と、
b)使用説明書と、
c)場合によっては、患者から試料を単離するための試薬と
を含む、請求項41から54のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキット。 - MMP−3を特異的に認識する検出可能な薬剤を更に含む、請求項57に記載のキット。
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