以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、図1及び図2に示すように、液保持性の吸収体4並びに該吸収体4の肌対向面側に配置された表面シート2及び該吸収体4の非肌対向面側に配置された裏面シート3を具備する吸収性本体5を備え、着用者の前後方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。
尚、本明細書において、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性本体5)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、縦方向Xは、吸収性物品(吸収性本体)の長辺に沿う方向(長手方向)に一致し、横方向Yは、吸収性物品(吸収性本体)の幅方向(長手方向に直交する方向)に一致する。
吸収性本体5は、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部Mと、着用時に排泄部対向部Mよりも着用者の腹側(前側)に配される前方部Fと、着用時に排泄部対向部Mよりも着用者の背側(後側)に配される後方部Rとを縦方向Xに有している。ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置(当該吸収性物品の正しい着用位置)が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
尚、本発明の吸収性物品において、排泄部対向部は、本実施形態のナプキン1のようにウイング部を有する場合には、吸収性物品の縦方向(吸収性物品の長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域(ウイング部の縦方向一方側の付け根と他方側の付け根とに挟まれた領域)である。ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(吸収性物品の幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折曲線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域と同じか又は該領域よりも狭い領域である。
表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から外方に延出している。即ち、表面シート2及び裏面シート3は、図1に示すように、吸収体4の縦方向Xの前端及び後端それぞれから縦方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、互いに接合されてエンドシール部8を形成している。また、表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁それぞれから横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート10と共にサイドフラップ部6を形成している。表面シート2と裏面シート3とサイドシート10とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていても良い。
サイドフラップ部6は、図1に示すように、排泄部対向部Mにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部7,7が延設されている。即ち、ナプキン1は、吸収性本体5に加えて更に、吸収性本体5における排泄部対向部Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部7,7を有している。
ウイング部7は、ショーツ等の着衣のクロッチ部(股間部)の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるものである。ウイング部7は、図1に示すように、平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有している。尚、ナプキン1においては、吸収性本体5とウイング部7との境界線は、ウイング部7の縦方向Xの両付け根を結ぶ直線(図示せず)である。ウイング部7の非肌対向面には、該ウイング部7(ナプキン1)をショーツ等の着衣(図示せず)に固定するウイング部ズレ止め部70が形成されており、このウイング部ズレ止め部70によって、使用時に、着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されたウイング部7を、該クロッチ部に固定できるようになされている。ウイング部ズレ止め部70は、後述する吸収性本体5のズレ止め部Aと同様に構成されている。
吸収性本体5の肌対向面(表面シート2の肌対向面)には、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥してなる溝9が形成されている。溝9は、図1に示す如き平面視において、縦方向Xに長い閉じた環状をなしている。溝9は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。溝9においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。また、吸収性本体5の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、図1に示す如き平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート10,10が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。サイドシート10は、撥水性の不織布からなる。
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。吸収体4としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、親水化処理された合繊繊維等の繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性樹脂を保持させたもの等を用いることができる。吸収体4は、前記繊維集合体等からなる液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアを被覆する液透過性のコアラップシートとを含んで構成されていても良く、このコアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布、開孔フィルム等を用いることができる。サイドシート10としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。
裏面シート3としては、液難透過性であり、透湿性でも非透湿性でもよい。裏面シート3としては、例えば、非透湿性の樹脂フィルム、透湿性の樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。透湿性の樹脂フィルムの具体例として、樹脂フィルムを厚み方向に貫通する微細な貫通孔を多数有する、多孔性の樹脂フィルムが挙げられる。一般に、透湿性の裏面シートは、非透湿性の裏面シートに比して強度に乏しく、吸収性物品における透湿性の裏面シートがズレ止め部を介してショーツ等の着衣に強固に接着している場合に、該吸収性物品を該ショーツから引き剥がすと、該裏面シートが破れる可能性が比較的高い。しかしながら、本実施形態のナプキン1においては、後述する面強度強化要素30の採用により、斯かる不都合の発生が効果的に防止されている。
吸収性本体5の非肌対向面(裏面シート3の非肌対向面)には、吸収性本体5(ナプキン1)を着衣に固定するズレ止め部が設けられている。本実施形態のナプキン1の主たる特徴の1つとして、図3に示すように、このズレ止め部が、接着特性(垂直方向の接着力及びすべり摩擦力)の異なる2種類のズレ止め部A及びBを含んで構成され、且つこれら2種類のズレ止め部A及びBが吸収性本体5の非肌対向面の特定位置に分散して配されている点が挙げられる。ナプキン1の主たる特徴部分であるズレ止め部の構成は、特に、一般的には非生理時に使用される下着である前記ノーマルショーツの股間部(クロッチ部)に該ズレ止め部を介してナプキン1を固定して使用する場合に有効に作用する。
本発明の吸収性物品との併用が特に有効なノーマルショーツについて説明すると、ノーマルショーツは、排泄ポイント(膣口)を中心とする人体中央線(いわゆる正中線)に対応する中心軸線、換言すれば、股間部の幅方向(横方向)中央を通って前後(縦方向)に延びる中心軸線が伸縮性を有しており、そのため、装着するときに該中心軸線上における、排泄ポイントから背側(臀裂)に亘る部分に対応する部分が、好ましくは35%以上、更に好ましくは50%以上引き伸ばし可能な伸長性を有している。即ち、ノーマルショーツは、装着時のショーツ引き上げに伴って股間部を含む前記中心軸線が35%以上引き伸ばされながら、緩やかに正中線にフィットする。このような伸縮特性を有するノーマルショーツは、人体中央線及び腰骨を含む腰周り部のみで着用者の身体とフィットし、ヒップ部、そけい部等の他の部分では、身体を開放する構造となっている。ノーマルショーツにおいては、前記中心軸線及び腰周り部に対応する部分は、着用者の動作時の変位が極めて小さい不動域であるのに対し、ヒップ部及びそけい部(足繰り)に対応する部分は、着用者の動作時に大きく変位する大可動域となっており、このような不動域と大可動域との併存により、足繰りは押さえつけずに全面均一な装着圧で着用者の身体に当たることができ、着用者に対して比較的低ストレスでフィットし得る。ノーマルショーツの典型例としては、いわゆるT−バックショーツがあり、市販品としては、(株)グンゼ製の「フラッティ(Flatty)」、(株)ワコール製の「ヒップデコルテ(Hip Decolte)」等が挙げられる。
本発明者らは、このような、股間部を通る中心軸線の伸縮性に富むノーマルショーツの該股間部に生理用ナプキンを固定した装着システムについて種々検討した結果、i)該装着システムの装着過程(ショーツの足繰りに両足を通し、胴回り部を持ってショーツを真っ直ぐに引き上げる過程)、ii)使用過程(装着中の動作過程)及びiii)取り外し過程それぞれにおいて、次のような特徴があることを知見した。
i)装着過程:前述のように、ショーツが中央軸線上を前後方向に35%以上引き伸ばされる(第1の特徴)。このショーツの引き伸ばしは、後側(排泄部〜ヒップ部)で最も顕著で、前側でやや少ない。また、前後方向に直交する幅方向に関しては、中央軸線から遠ざかるほどショーツの引き延ばしが大きく、例えばヒップ部周辺ではショーツは幅方向に30〜50%前後引き伸ばされるのに対し、股間部では幅方向には殆ど引き伸ばされない(第2の特徴)。また、この装着過程は着用者によらず安定しており、ショーツが引き伸ばされる方向は一定である(第3の特徴)。特にショーツの最大引き伸ばし方向である中央軸線は、ナプキンの長手方向と一致する。要するに、装着過程では、ショーツが大きく引き伸ばされるが、その引き伸ばし方向は略一定であり、斯かる特性は着用者によらずに再現性が高い。また、この装着過程においては、ショーツは着用者の身体に密着しておらず、ショーツ、ナプキン共に装着に伴う身体からの装着圧が殆どかかっていない(装着圧0か、極めて小さい)ことにも特徴がある。
ii)使用過程:正中線に対応する中央軸線では、ショーツに変形がほとんどなく、伸縮もしない。ヒップ部下部(ナプキンの後方部左右に相当)及びそけい部前側(ナプキンの前方部左右に相当)では、縦横15%前後の伸縮が起こる。従って、比較的変位の小さい、ショーツ中央(ナプキンの排泄部対向部近傍に相当)で、ナプキンがショーツにしっかり固定することが好ましい。伸縮は、特にヒップ下部(ナプキンの後方部)の左右に不均等であり、主として、中央軸線に直交する横方向の伸縮が生じる。従って、ノーマルショーツに固定して使用されるナプキンには、後方部を左右に振るようなズレカが加わることになり、このズレ力に抗して中央軸線に対して相対運動しないようなズレ防止力が求められる。また、この使用過程においては、下着は着用者の身体に密着しており、設計値の装着圧がかかっていることが期待される。良好に設計されたショーツにおいては、伸縮によって下着と身体の当り方が適度に調整され、ナプキン装着部全体が、数十g/cm2程度の均一な装着圧で当たる装着状態となる。
iii)取り外し過程:ショーツの引き下ろしにより該ショーツの生地が収縮し、その際、該ショーツは一定方向に大収縮(50%以上の収縮のこと)する。このショーツの大収縮の際に、該ショーツに固定されているナプキンも収縮してしまうと、液にじみが生じたり、該ナプキンの肌対向面にシワが生じたりするため、使用者の手やショーツを汚しやすく好ましくない。また、この取り外し過程においても、引き下ろしに伴って下着が着用者の身体から浮くため、身体からの装着圧が殆どかかっていない(装着圧0か、極めて小さい)。
前記i)〜iii)の過程の特徴を考慮すると、ノーマルショーツの股間部に固定して用いられる生理用ナプキンには、下記機構A〜Cが必要と考えられる。
・機構A:前記i)及びiii)の過程で、ショーツの中央軸線で生じる大変形(大収縮)を損なわず、該ショーツに連動して変形しないように、「装着圧0」であることを利用して、該ショーツの生地の伸縮を滑って逃がし得る機構。
・機構B:前記i)及びiii)の過程で、排泄ポイント(膣口)近傍がショーツに対してずれないようしっかり固定保持する機構。
・機構C:前記ii)の過程で、装着圧を利用して、ナプキンの後方部を左右に振るようなズレカに抗して、該ナプキンをずらさない機構。
本発明者らは、前記機構A〜Cの必要性に鑑み、ノーマルショーツに固定して使用するのに適した生理用ナプキンについて更に検討した結果、図3に示すように、吸収性本体5を横方向Yに3分割して、横方向中央部5Mとその横方向Yの左右両外方に位置する横方向両側部5S,5Sとに区分した場合に、排泄部対向部Mの横方向両側部5S,5Sに、相対的に強力な接着力(垂直接着力)及びすべり止め力(ズレ防止力)の両方を有する、ズレ止め部Aを配置すると共に、後方部Rの横方向中央部5Mに、装着過程では比較的低圧で滑り、ナプキン1の着用時の装着圧では滑り止めになり得る、ズレ止め部Bを配置することが有効との知見を得た。ナプキン1の主たる特徴部分であるズレ止め部の構成は、斯かる知見に基づき採用されたものである。
ズレ止め部Aは、「横方向単位長さ当たりの接着力」が、JIS K6854−3:1999にて規定されるT型剥離法による測定値で40cN/cm以上であり、且つ下記方法により測定される「単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力」が100cN/cm2以上である。ここでいう、「横方向単位長さ」とは、横方向の長さ1cmのことである。
一方、ズレ止め部Bは、「横方向単位長さ当たりの接着力」が、JIS K6854−3:1999にて規定されるT型剥離法による測定値で10cN/cm以下であり、且つ下記方法により測定される「単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力」が100cN/cm2以上で且つズレ止め部Aのそれよりも小さい。前述したように、ズレ止め部Bには適度な滑り性が求められるため、強力なすべり止め力(ズレ防止力)が求められるズレ止め部Aに比して、単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力は小さくてよい。
ズレ止め部のT型剥離法による「横方向単位長さ当たりの接着力」の測定方法について補足すると、ここでいう「接着力」は、ズレ止め部の所定の被着体に対する接着力であり、試験対象のズレ止め部が、ベースシートの表面に多数の係合突起が設けられてなるフック材(以下、単に、フック材ともいう)である場合は、被着体として機械的面ファスナーのメス部材を用い、それ以外の場合は被着体として染色堅牢度試験布(綿金巾1号)を用いる。測定環境は、室温25±1℃、湿度50%±5%RHとする。被着体は試験片と同寸法・同形状とする。試験片は、生理用ナプキン等の吸収性物品におけるズレ止め部を含む領域から、該吸収性物品の横方向の長さ1cm、縦方向の長さ10cmの平面視矩形形状の試験片を切り出して調製する。被着体の上に測定対象のズレ止め部を含む試験片を、該ズレ止め部側(吸収性物品の非肌対向面)が該被着体と重なるように載置し、500gのローラーを該試験片上にて一往復させて、該試験片とその下方の該被着体とをズレ止め部を介して圧着する。こうして圧着された試験片と被着体との積層体を、引張試験機(オリエンテック(株)製テンシロン引張試験機RTM100)のチャック間(チャック間距離50mm)に装着し、該積層体がJIS K6854−3:1999で定めるT型となるようにこれを支えながら、引張速度100mm/分で該積層体をその長手方向に引っ張って該試験片と該被着体とに剥離し、その際の引張荷重(最大荷重)を記録する。測定は3回行い、それらの平均値を、試験片の引張方向と直交する方向(幅方向)の長さ(1cm)で除したものを、当該ズレ止め部のT型剥離法による横方向単位長さ当たりの接着力とする。
尚、吸収性物品の構成等によっては、該吸収性物品から切り出される前記「横方向の長さ1cm、縦方向の長さ10cmの平面視矩形形状の試験片」の中にズレ止め部を含められない場合があり得る。その場合、斯かる試験片の縦方向の長さは、ズレ止め部をサンプリング可能な長さでよく、また、該試験片の横方向の長さは、ズレ止め部の最大幅(ズレ止め部の横方向の長さの最大部分)を含むものとし、且つ該試験片についての「ズレ止め部の横方向単位長さ当たりの接着力」の測定では、このズレ止め部の最大幅を用いて測定値を換算する(例えば、最大幅7mmだった場合、測定値×(10/7)が換算値となる)。
<ズレ止め部の単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力の測定方法>
試験片として、1cm四方の測定対象のズレ止め部と、吸収性物品において該ズレ止め部よりも縦方向前側に位置し且つ該ズレ止め部に隣接する1cm四方の非ズレ止め部とを含む、長手方向長さ2cm、幅方向長さ1cmの矩形形状部分を有するものを用意する。また、試験片が接着する被着体として、試験対象のズレ止め部がフック材である場合は、機械的面ファスナーのメス部材、それ以外の場合は染色堅牢度試験布(綿金巾1号)を用い、何れの場合も平面視矩形形状とし、且つ該被着体の長手方向長さを試験片の長手方向長さよりも10cm長くし、該被着体の幅方向長さを試験片の幅方向長さよりも5cm長くする。平坦な水平面上に前記被着体を固定し、該被着体上の中央部に、測定対象のズレ止め部を含む試験片を、該試験片の長手方向を該被着体の長手方向に一致させ且つ該ズレ止め部側(吸収性物品の非肌対向面)が該被着体と重なるように、載置する。更に、500gのローラーを前記試験片上にて長手方向に一往復させて、該試験片とその下方の前記被着体とをズレ止め部を介して圧着する。加圧した前記試験片上に、該試験片に3g/cm2の圧力がかかるように加圧板を載置し、その状態で前記試験片を、その長手方向が引張方向となり且つ前記非ズレ止め部側が該引張方向の前側となるように、引張試験機を用いて水平方向に引張速度10cm/分で引っ張り、前記試験片が前記被着体から剥がれたときの引張荷重(最大荷重)を記録する。測定は3回行い、それらの平均値を、試験片におけるズレ止め部の面積(1cm2)で除したものを、当該ズレ止め部の単位面積当たりのすべり摩擦力とする。
尚、前記<ズレ止め部の単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力の測定方法>において、吸収性物品の構成等によっては、前記構成の試験片を用意できない場合があり得る。その場合、斯かる試験片の縦方向の長さは、ズレ止め部をサンプリング可能な長さでよく、また、該試験片の横方向の長さは、ズレ止め部の最大幅(ズレ止め部の横方向の長さの最大部分)を含むものとし、且つ該試験片についての「ズレ止め部の単位面積当たりのすべり摩擦力」の測定では、該ズレ止め部の面積を用いて測定値を換算する(例えば、ズレ止め部の面積0.7cm2だった場合、測定値×(10/7)が換算値となる)。
前記<ズレ止め部の単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力の測定方法>は、図4に示す如き構成の治具90を用いて実施することができる。治具90は、被着体Pが載置される平坦な水平面を形成する台91と、該台91の上面に設けられた滑車92と、加圧板93とを含んで構成されている。滑車92には、試験片Sと図示しない引張試験機とを結ぶ紐94が掛けられており、紐94は、試験片Sと滑車92との間においては水平方向に延び、滑車92と該引張試験機との間においては垂直方向に延びている。紐94の一端は、試験片Sの長手方向前端部(前記非ズレ止め部側の長手方向前端部)を把持するクリップ95に固定されている。引張試験機としては、オリエンテック(株)製テンシロン引張試験機RTM100を用いることができる。
尚、後述する、「ズレ止め部の単位面積当たりの『横方向』すべり摩擦力」は、試験片をその幅方向(吸収性物品の横方向)が引張方向となるようにし、且つ図4に示す治具90のクリップ95の幅を調整する点以外は、前記<ズレ止め部の単位面積当たりの縦方向すべり摩擦力の測定方法>と同様の方法によって測定できる。尚、試験片の横方向の左側及び右側のうちのどちらを引張方向の前側にするかは任意に設定することができ、また、横方向の左側を引張方向の前側した場合と、横方向の右側を引張方向の前側とした場合とで、横方向すべり摩擦力の実測値が異なる場合は、該実測値が大きい方を採用する。
前記の「ズレ止め部の単位面積当たりのすべり摩擦力」(縦方向すべり摩擦力及び横方向すべり摩擦力の両方を含む。以下、特に断らない限り同じ。)の測定方法について補足すると、測定環境は、室温25±1℃、湿度50%±5%RHとする。被着体を水平面(台91の上面)上に載置する際には、シワのないように粘着テープで四辺を固定する。試験片は、生理用ナプキン等の吸収性物品におけるズレ止め部を含む領域から所定形状(矩形形状)の試験片を切り出して調製するところ、前記のような小サイズの試験片を切り出すことが困難な場合は、本来の試験片よりも大きめに切り出し、その切り出した試験片における、測定に不要なズレ止め部を、タルク(例えば、関東化学製のタルク)で被覆してもよい。加圧板としては、厚さ2mmのアクリル板を試験片に合わせてカットしたものを用い、更に鉛板等を用いて、試験片に前記所定の圧力がかかるように調整する。試験片を引っ張る際には、加圧板が傾いて治具に接しないよう、加圧板を手で軽く押さえて支えておくことが好ましい。引張荷重(最大荷重)が10Nを超える場合は、測定を中止し、当該ズレ止め部のすべり摩擦力を「10N以上」とする。
尚、前記の「T型剥離法による横方向単位長さ当たりの接着力」及び「単位面積当たりのすべり摩擦力」それぞれの測定方法において、試験対象のズレ止め部がフック材である場合に被着体として用いる、機械的面ファスナーのメス部材としては、クラレマジックテープ(登録商標)、「エコマジック」メス(B2790Y−00、100mm幅、白)を用いる。
また、ズレ止め部Aは、「吸収性物品単位での接着力」が、JIS K6854−3:1999にて規定されるT型剥離法による測定値で100cN以上であり、且つ下記方法により測定されるズレ止め部Aの「吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力」が200cN以上である。ズレ止め部AのT型剥離法による吸収性物品単位での接着力は、好ましくは140cN以上、更に好ましくは180cN以上である。そして、好ましくは450cN以下、更に好ましくは380cN以下、より具体的には、好ましくは140cN以上450cN以下、更に好ましくは180cN以上380cN以下である。ズレ止め部Aの吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力は、好ましくは160cN以上、更に好ましくは200cN以上である。尚、ズレ止め部Aの吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力は、その値が大きい分には特に不都合は無く、該すべり摩擦力の上限値は特に制限されないが、通常、好ましくは1000cN以下、更に好ましくは700cN以下であり、より具体的には、好ましくは160cN以上1000cN以下、更に好ましくは200cN以上700cN以下である。
一方、ズレ止め部Bは、「吸収性物品単位での接着力」が、JIS K6854−3:1999にて規定されるT型剥離法による測定値で25cN以下であり、且つ下記方法により測定される「吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力」が100cN以上で且つズレ止め部Aのそれよりも小さい。前述したように、ズレ止め部Bには、前述した装着システムにおけるi)装着過程及びiii)取り外し過程において、適度な滑り性が求められるため、強力な接着力とすべり止め力(ズレ防止力)が求められるズレ止め部Aに比して、吸収性物品単位でのすべり摩擦力は小さくてよい。ズレ止め部BのT型剥離法による吸収性物品単位での接着力は、好ましくは0cN以上18cN以下、更に好ましくは2cN以上15cN以下である。ズレ止め部Bの吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力は、好ましくは130cN以上、更に好ましくは200cN以上、そして、好ましくは700cN以下、更に好ましくは600cN以下、より具体的には、好ましくは130cN以上700cN以下、更に好ましくは200cN以上600cN以下である。
ズレ止め部のT型剥離法による「吸収性物品単位での接着力」の測定方法について補足すると、ここでいう「接着力」は、ズレ止め部の所定の被着体に対する接着力であり、試験対象のズレ止め部がフック材である場合は、被着体として機械的面ファスナーのメス部材を用い、それ以外の場合は被着体として染色堅牢度試験布(綿金巾1号)を用いる。測定環境は、室温25±1℃、湿度50%±5%RHとする。試験片は、吸収性物品から測定対象のズレ止め部のみを含む領域全体を切り出して調製するか、又は吸収性物品全体を試験片とする。吸収性物品全体を試験片とする場合、測定に不要なズレ止め部(例えばズレ止め部Aを測定する場合は、ズレ止め部B)を、タルク(例えば、関東化学製のタルク)で被覆する。被着体は試験片と同寸法・同形状とする。被着体の上に測定対象のズレ止め部を含む試験片(測定対象の吸収性物品)を、該ズレ止め部側(吸収性物品の非肌対向面)が該被着体と重なるように載置し、2kgのローラーを該試験片上にて一往復させて、該試験片とその下方の該被着体とをズレ止め部を介して圧着する。こうして圧着された試験片と被着体との積層体を、引張試験機(オリエンテック(株)製テンシロン引張試験機RTM100)のチャック間50mm)に装着し、該積層体がJIS K6854−3:1999で定めるT型となるようにこれを支えながら、引張速度100mm/分で該積層体をその長手方向(吸収性物品の縦方向)に引っ張って該試験片と該被着体とに剥離し、その際の引張荷重(最大荷重)を記録する。測定は3回行い、それらの平均値を、当該ズレ止め部のT型剥離法による吸収性物品単位での接着力とする。
<ズレ止め部の吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力の測定方法>
試験片として、吸収性物品から測定対象のズレ止め部のみを含む領域全体を切り出したものを用意するか、又は吸収性物品全体を試験片とする。後者の場合、測定に不要なズレ止め部(例えばズレ止め部Aを測定する場合は、ズレ止め部B)を、タルク(例えば、関東化学製のタルク)で被覆する。また、試験片が接着する被着体として、試験対象のズレ止め部がフック材である場合は、機械的面ファスナーのメス部材、それ以外の場合は染色堅牢度試験布(綿金巾1号)を用い、何れの場合も平面視矩形形状とし、且つ該被着体の長手方向長さを試験片の長手方向長さよりも50mm長くし、該被着体の幅方向長さを試験片の幅方向長さよりも50mm長くする。平坦な水平面上に前記被着体を固定し、該被着体上の中央部に、測定対象のズレ止め部を含む試験片を、該試験片の長手方向(吸収性物品の縦方向)を該被着体の長手方向に一致させ且つ該ズレ止め部側(吸収性物品の非肌対向面)が該被着体と重なるように、載置する。更に、2kgのローラーを前記試験片上にて長手方向に一往復させて、該試験片とその下方の前記被着体とをズレ止め部を介して圧着する。加圧した前記試験片上に、該試験片に3g/cm2の圧力がかかるように加圧板を載置し、その状態で前記試験片を、その長手方向(吸収性物品の縦方向)が引張方向となり且つ該試験片の縦方向前側が該引張方向の前側となるように、引張試験機を用いて水平方向に引張速度100mm/分で引っ張り、前記試験片が前記被着体から剥がれたときの引張荷重(最大荷重)を記録する。測定は3回行い、それらの平均値を、当該ズレ止め部の吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力とする。
前記<ズレ止め部の吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力の測定方法>は、図4に示す如き構成の治具90を用いて実施することができる。引張試験機としては、オリエンテック(株)製テンシロン引張試験機RTM100を用いることができる。
尚、「ズレ止め部の吸収性物品単位での『横方向』すべり摩擦力」は、試験片をその幅方向(吸収性物品の横方向)が引張方向となるようにし、且つ図4に示す治具90のクリップ95の幅を調整する点以外は、前記<ズレ止め部の吸収性物品単位での縦方向すべり摩擦力の測定方法>と同様の方法によって測定できる。尚、試験片の横方向の左側及び右側のうちのどちらを引張方向の前側にするかは任意に設定することができ、また、横方向の左側を引張方向の前側した場合と、横方向の右側を引張方向の前側とした場合とで、横方向すべり摩擦力の実測値が異なる場合は、該実測値が大きい方を採用する。ズレ止め部の吸収性物品単位での横方向すべり摩擦力は、摩擦力絶対値が大きく、且つ試験片の切り出し形状の影響を受けやすい(切欠き部のエッジを起点に大きく変形したり破れたりする結果、測定値が変動しやすい)。計測値に変動が大きい場合、吸収性物品の肌対向面側(表面シート側)に(矩形になるように)ガムテープを貼りつけて、該吸収性物品が変形しないように整形して、ガムテープごとクリップ95で挟んで計測を行う。
前記の「ズレ止め部の吸収性物品単位でのすべり摩擦力」(縦方向すべり摩擦力及び横方向すべり摩擦力の両方を含む。以下、特に断らない限り同じ。)の測定方法について補足すると、測定環境は、室温25±1℃、湿度50%±5%RHとする。被着体を水平面(台91の上面)上に載置する際には、シワのないように粘着テープで四辺を固定する。加圧板としては、厚さ2mmのアクリル板を試験片に合わせてカットしたものを用い、更に鉛板等を用いて、試験片に前記所定の圧力がかかるように調整する。引張荷重(最大荷重)が10Nを超える場合は、測定を中止し、当該ズレ止め部のすべり摩擦力を「10N以上」とする。尚、横方向すべり摩擦力の測定時は、該すべり摩擦力が大きいことに鑑み、最大荷重が100Nを超える場合又は被着体の水平台からの剥がれ・破れ等を生じる場合は測定を直ちに中止し、「100N以上」、又は被着体が剥がれ等を生じた時の荷重値Xを用いて「X以上」と記載する。また、テンシロンロードセルが500Nの場合、最大荷重を500Nとして同様の計測を行う。
尚、前記の「T型剥離法による吸収性物品単位での接着力」及び「吸収性物品単位でのすべり摩擦力」それぞれの測定方法において、試験対象のズレ止め部がフック材である場合に被着体として用いる、機械的面ファスナーのメス部材としては、クラレマジックテープ(登録商標)、「エコマジック」メス(B2790Y−00、100mm幅、白)を用いる。
ズレ止め部Aについて更に説明すると、本実施形態においてズレ止め部Aは、図3に示すように、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sそれぞれに、縦方向Xに所定間隔P1を置いて複数(3個)設けられており、横方向両側部5S,5Sには、それぞれ、複数のズレ止め部Aからなる縦方向列が1列形成されている。その複数のズレ止め部Aからなる縦方向列は、排泄部対向部Mの縦方向Xの全長に亘り、更に排泄部対向部Mの前後に位置する前方部F及び後方部Rにも延びている。複数のズレ止め部Aは、それぞれ、平面視において矩形形状をなし、その長手方向が縦方向Xに一致している。
ズレ止め部Aとしては、ズレ止め粘着剤又はフック材が好ましい。ズレ止め粘着剤であるズレ止め部Aは、ナプキン1をショーツ等の着衣に粘着固定させ、フック材(ベースシートの表面に多数の係合突起が設けられてなるフック材)であるズレ止め部Aは、該フック材を構成する多数の係合突起が着衣に係合することで、ナプキン1を着衣に係合固定させる。ズレ止め部Aを形成するズレ止め粘着剤としては、この種の吸収性物品においてズレ止め粘着剤として通常用いられているものを特に制限なく用いることができ、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)系、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)系、スチレン-ブチレン-スチレン(SBS)系、スチレン−エチレン-プロピレン-スチレン系(SEPS)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)等の各種ホットメルト粘着剤を用いることができる。
但し、ズレ止め部Aを形成するズレ止め粘着剤は、前述の如く、ズレ止め部Bとの併用前提に低面積でズレ止め効果を発現する必要があるため、通常設計に比して単位面積当り接着力・及び単位面積当りすべり摩擦力の高い粘着特性を備える必要があり、粘着力(タッキネス)と剪断抵抗(凝集力)の両方が高い組成である必要がある。斯かる観点から、ズレ止め部Aを形成するズレ止め粘着剤(ベースポリマー)としては特に好ましいものは、SIS、SEBS、SEPSである。また、同様の観点から、ズレ止め部Aを形成するズレ止め粘着剤は、凝集力低下の要因となる可塑剤(パラフィンオイル)添加量が25重量%以下であり、粘着付与樹脂(テルペン及びその誘導体樹脂類、低分子量スチレン樹脂、ロジンエステル樹脂類)添加量が40〜65重量%であり、前記ベースポリマー配合比率が25〜40重量%であることが好ましい。
また、高い単位面積当たり接着力を達成し、且つショーツ等の下着から吸収性物品を剥離したときの裏面シートの破れ(いわゆる「糊残り」)や過度な粘着力増大を防止する観点から、ズレ止め部Aを形成するズレ止め粘着剤の塗布量は、好ましくは35〜100g/m2、更に好ましくは40〜70g/m2である。更に、後述する面強度強化要素を併用する場合、裏面シートの破れに対応するズレ止め粘着剤の塗布量の上限値制限が緩和されるため、その場合のズレ止め粘着剤の塗工量は、好ましくは35〜120g/m2、更に好ましくは55〜100g/m2である。
また、ズレ止め部Aを形成するフック材としては、例えば、面ファスナーのフックテープを幅広く用いることが可能であり、マジックテープ(登録商標)のオス部材、ベルクロ(登録商標)のフック材、スコッチメイト(登録商標)ファスナーのフック材等を用いることができる。前述したように、ズレ止め部Aには、相対的に(ズレ止め部Bとの比較において)強力な接着力(垂直接着力)及びすべり止め力(ズレ防止力)の両方が要求されることから、ズレ止め部Aとしては、比較的小型のズレ止め部Aであってもナプキン1を着衣に強固に固定し得る、フック材が特に好ましい。
ズレ止め部Aがズレ止め粘着剤である場合、そのT型剥離法による横方向単位長さ当たりの接着力は、着用時におけるショーツ等の着衣への固定性と、使用後にナプキン1を着衣から引き剥がす際の裏面シート3の破れ防止性とのバランスの観点から、好ましくは50cN/cm以上、更に好ましくは55cN/cm以上、そして、好ましくは130cN/cm以下、更に好ましくは100cN/cm以下、より具体的には、好ましくは50cN/cm以上130cN/cm以下、更に好ましくは55cN/cm以上100cN/cm以下である。
また、ズレ止め部Aがズレ止め粘着剤である場合、その縦方向すべり摩擦力は、好ましくは150cN/cm2以上、更に好ましくは170cN/cm2以上である。ズレ止め部Aのすべり摩擦力は大きいほど好ましい。
同様の観点から、ズレ止め部Aがフック材である場合、そのT型剥離法による横方向単位長さ当たりの接着力は、好ましくは60cN/cm以上、更に好ましくは70cN/cm以上、そして、好ましくは330cN/cm以下、更に好ましくは300cN/cm以下、より具体的には、好ましくは60cN/cm以上330cN/cm以下、更に好ましくは70cN/cm以上300cN/cm以下である。
また、ズレ止め部Aがフック材である場合、その縦方向すべり摩擦力は、好ましくは160cN/cm2以上、更に好ましくは200cN/cm2以上である。
ズレ止め部Aがフック材である場合、その縦方向Xに沿った長さ(長手方向長さ)L1(図3参照)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上、そして、好ましくは30mm以下、更に好ましくは25mm以下、より具体的には、好ましくは10mm以上30mm以下、更に好ましくは15mm以上25mm以下である。
また、ズレ止め部Aがフック材である場合、その横方向Yに沿った長さ(幅方向長さ)W1(図3参照)は、好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上、そして、好ましくは15mm以下、更に好ましくは12mm以下、より具体的には、好ましくは5mm以上15mm以下、更に好ましくは7mm以上12mm以下である。
また、縦方向Xに隣接する2個のズレ止め部A,Aの間隔P1(図3参照)は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下、より具体的には、好ましくは3mm以上20mm以下、更に好ましくは5mm以上15mm以下である。
更に、ズレ止め部Aの単位面積当たりの横方向すべり摩擦力は、ズレ止め部Aがズレ止め粘着剤である場合は、好ましくは100cN/cm2以上、更に好ましくは180cN/cm2以上、特に好ましくは200cN/cm2以上であり、大きいほど好ましい。一方、ズレ止め部Aがフック材である場合の単位面積当たりの横方向すべり摩擦力は、好ましくは100cN/cm2以上、更に好ましくは190cN/cm2以上、特に好ましくは210cN/cm2以上である。
尚、ズレ止め部Aの単位面積当たりすべり摩擦力は、前述の如く縦方向と横方向とで互いに近似しているが、ズレ止め部Aの1個当たりの形状が(縦方向長さ>横方向長さ)の関係にあり、また図3に示すように、ズレ止め部Aが横方向Yに2個並列している場合に、それら2個のズレ止め部A,Aの横方向Yの間隔が長い(2個のズレ止め部A,Aが横方向Yの両側部に位置しているため、該両側部に挟まれた横方向Yの中央部の横方向長さが長い)ことに起因して、ズレ止め部Aの長さ方向(縦方向)の連続した固定効果が幅方向(横方向)より強く現れるため、縦方向すべり摩擦力と横方向すべり摩擦力とでは、横方向すべり摩擦力が優位となり、後述するように、横方向すべり摩擦力が縦方向すべり摩擦力の1.3〜1.5倍以上となる。
また、ズレ止め部Aがフック材である場合、フック材自身が基材テープで補強され剛性が高いことに鑑みて、吸収性物品の縦方向に沿う側部全体の剛性(物品長手方向可撓性)を損なわないようにする観点から、単一のズレ止め部Aを設けるのではなく、図3に示すように、複数のズレ止め部Aを縦方向に所定間隔を置いて配置することが好ましい。また、ズレ止め部Aがフック材である場合、そのフック材の硬い基材テープのエッジが裏面シートを傷つけることを防止する観点から、ズレ止め部Aの平面視形状は、楕円状、円状、面取りした多角形状等の、角のない形状が好ましい。更に、使用時のズレ防止性と、ショーツ等の下着から吸収性物品を引き剥がすときの引き剥がし容易性との両立の観点から、平面視において角のない形状であるズレ止め部Aは、吸収性物品の縦方向前側に向かって幅(横方向の長さ)が狭まる、平面視先細形状(角の丸い三角形状)であることも好ましい。ズレ止め部Aの平面視形状が前記の何れの場合であっても、前述した、ズレ止め部Aがフック材である場合の幅方向長さは、幅方向に計測可能な最大幅を用いる。
尚、ズレ止め部Aは、図3に示す如く、吸収性物品の側方で且つ概ね下着のクロッチ部側縁に対向する位置に配置されるため、ズレ止め部Aとしてフック材を用いた場合に、下着の縁かがり部分やレース部等に強く係合する位置関係となり、その接着性・ズレ防止性を発揮しやすい。
本実施形態においては、図2及び図3に示すように、裏面シート3の非肌対向面に、面強度強化要素30が配されており、該面強度強化要素30の非肌対向面(外面)にズレ止め部Aが設けられている。面強度強化要素30は、ナプキン1の非肌対向面の強度向上を主たる目的として採用されたシート状部材であり、図3に示す如き平面視において、縦方向Xの前側に向けて凸のU字状部分を有し、そのU字状部分は、吸収性本体5の前方部F側の縦方向Xの端部(前端部)をU字の底部30Aとし、且つ該前端部から吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sを縦方向Xに延びる一対の直線状部30B,30Bを有している。面強度強化要素30の一対の直線状部30B,30Bは、それぞれ、前方部Fから排泄部対向部Mを通って後方部Rの排泄部対向部M寄りの部分に亘っており、ズレ止め部Aは、該直線状部30B,30Bに設けられている。また本実施形態においては、吸収性本体5のみならず、ウイング部7にも面強度強化要素30が配されており、ウイング部7における裏面シート3の非肌対向面の全域が面強度強化要素30で被覆されている。一方、排泄部対向部M及び後方部Rそれぞれの横方向Yの中央部には、透湿性及び柔軟性の確保の観点から、面強度強化要素30は配されていない。
面強度強化要素30は、特にズレ止め部Aが、強力な接着力(垂直接着力)を有するフック材である場合に有効であり、該フック材を介してショーツ等の着衣に強固に固定されているナプキン1を該ショーツから引き剥がす際の、裏面シート3の破損防止に有効である。また、吸収性本体5の縦方向Xの前端部(底部30A近傍)は、ナプキン1の使用後にこれをショーツ等の着衣から引き剥がす際に持ち手となる部位であり、(指で摘まんで引っ張っても破れない程度の強度が要求される部位であるから、)いわば引き剥がしの力を伝える部位に当ることから、底部30Aからフック材が配される一対の直線状部30B、30Bまで連続して面強度強化要素30が配されていることは、裏面シート3の破損防止に有効である。
面強度強化要素30は、不織布と、該不織布を裏面シート3の非肌対向面に固定する接着剤とを含んで構成されており、該不織布の非肌対向面(外面)に、ズレ止め部Aが設けられている。面強度強化要素30を構成する不織布としては、薄さ、柔らかさと長手方向の引っ張り強度を全て満足する観点から、スパンボンドを少なくとも含む不織布、例えばスパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン複合不織布(SM)、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド複合不織布(SMS)、スパンボンド-メルトブローン-メルトブローン-スパンボンド複合不織布(SMMS)等を用いることができる。面強度強化要素30を構成する不織布の構成繊維の繊維太さの平均は、該構成繊維のちぎれ等の不都合を防止する観点から、好ましくは11μm以上、更に好ましくは13μm以上20μm以下である。
面強度強化要素30を構成する接着剤としては、ホットメルト接着剤を用いることができ、また、接着剤の塗布パターンは、接着剤塗布予定部分(裏面シート3におけるシート状部材と重なる部分)の全域に塗布するいわゆるベタ塗りでもよく、該接着剤塗布予定部分に部分的に塗布するパターンでもよい。後者の部分的な塗布パターンとしては、スパイラル状、ドット状、ストライプ状、(スロットスプレーによる)飛散パターン等が挙げられる。
面強度強化要素30を構成する不織布の坪量は、好ましくは10g/m2以上、更に好ましくは13g/m2以上、そして、好ましくは30g/m2以下、更に好ましくは
20g/m2以下、より具体的には、好ましくは10g/m2以上30g/m2以下、更に好ましくは13g/m2以上20g/m2以下である。
面強度強化要素30を構成する接着剤の塗布量は、好ましくは3g/m2以上、更に好ましくは6g/m2以上、そして、好ましくは25g/m2以下、更に好ましくは 20g/m2以下、より具体的には、好ましくは3g/m2以上25g/m2以下、更に好ましくは6g/m2以上20g/m2以下である。
ズレ止め部Bについて更に説明すると、ズレ止め部Bの主たる作用は次の通りである。即ち、ノーマルショーツ等の下着の股間部にナプキン1を固定した装着システムにおいて、下着の足繰りに両足を通した状態でこれを引っ張り上げるときに、ナプキン1(吸収性本体5)は、ズレ止め部Bの作用により、該ナプキン1を横方向Yに二分する中心線(図示せず)に沿って縦方向Xに滑るため、該下着の伸長を妨げない。また、下着が着用者の身体に沿ってフィットし、ナプキン1に一定の装着圧がかかったときには、ズレ止め部Bが滑り止め効果を発揮し、着用者の身体の動きによってナプキン1の着用位置がずれる、あるいはナプキン1が横方向Y(幅方向)に収縮する(いわゆる「ヨレる」)等の不都合が効果的に防止される。ここで、ズレ防止性(摩擦力)は、材にかかる面圧と相関することが重要である。前述の如く、装着過程i)では面圧はほぼ0であり、摩擦力はほとんど発生しない。従って前記前段に記載した如く、ナプキン1は縦方向Xに容易に滑ることが可能である。一方、前述したii)使用過程においては、ナプキン1の全面にほぼ均一に一定の装着圧がかかるため、はじめて所定の滑り止め効果を発現する。更に、前述したiii)取り外し過程においては、再び面圧ほぼ0となるため、ショーツの収縮を妨げない。この本質的な効果に加え、ズレ止め部Bの形状、配置等は、ズレ止め部Bの斯かる作用が最大限発揮されるように設定される。
ズレ止め部Bは、図3に示すように、少なくとも吸収性本体5の後方部R及び排泄部対向部Mの後方部R寄りの部分それぞれにおける横方向中央部5Mに設けられている。本実施形態においては、図3に示す如き平面視において、ズレ止め部Bの縦方向Xの後側は前側に比して、横方向Yの長さが長くて幅広であるため、ズレ止め部Bは、後方部Rにおいて、横方向中央部5Mのみならず、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sにも設けられている。ズレ止め部Bの横方向Yの長さ(幅)は、縦方向Xの前側から後側に向かうに従って漸次増加している。このように、ズレ止め部Bの平面視形状を、縦方向Xの前側よりも後側の方が横方向長さが長い形状に設定することで、前記i)の装着過程においてズレ止め部Bは、ナプキン1にかかる縦方向Xの引っ張り力に対しては一層滑りやすく、また、特にナプキン1の縦方向後端部(後方部R)を横方向Yに振るような、横方向Yのズレカに対しては、一層高い滑り防止性を発現することが可能となり、前述した、ズレ止め部Bの主たる作用がより効果的に奏される。
図3に示すように、後方部Rにおける吸収性本体5の非肌対向面(裏面シート3の非肌対向面)には、ズレ止め部Bの横方向Yの外方にズレ止め部Aが設けられていない、ズレ止め部B単独存在領域B1が存している。前述したように、ズレ止め部Bの主たる作用の1つは、ナプキン1を縦方向Xに滑らせることであるところ、吸収性本体5の横方向Yの中央部に設けられているズレ止め部Bに対し、その横方向Yの外方(横方向両側部5S,5S)に、強力なすべり止め力(ズレ防止力)を有するズレ止め部Aを設けてしまうと、ズレ止め部Bにてナプキン1を縦方向Xに滑らせることが困難になってしまう。そこで、吸収性本体5の非肌対向面には、ズレ止め部B単独存在領域B1の設置が必須となるのである。ズレ止め部B単独存在領域B1(該領域B1を構成するズレ止め部B)は、吸収性本体5の非肌対向面に配されている全ズレ止め部A,Bのうちで縦方向Xにおいて最後方に位置し、吸収性本体5の縦方向Xの後端を形成するエンドシール部8に隣接している。
また、本実施形態においては、図3に示すように、ズレ止め部Bの横方向Yの外方にズレ止め部Aが設けられている、ズレ止め部A及びB横方向併存領域ABが、ズレ止め部B単独存在領域B1よりも縦方向Xの前方に存している。ズレ止め部A及びB横方向併存領域ABとズレ止め部B単独存在領域B1とは縦方向Xに隣接している。ズレ止め部A及びB横方向併存領域ABの縦方向Xの長さは、ズレ止め部B単独存在領域B1のそれに比して短い。
ズレ止め部Bの「吸収性物品単位でのすべり摩擦力」に関し、ナプキン1の横方向Yの該すべり摩擦力は、ナプキン1の縦方向Xの該すべり摩擦力に比して大きいことが、好ましい。(ナプキン1の縦方向Xについてのズレ止め部Bの吸収性物品単位でのすべり摩擦力)<(ナプキン1の横方向Yについてのズレ止め部Bの吸収性物品単位でのすべり摩擦力)であると、前述した、ナプキン1の縦方向後端部を横方向Yに振るような、横方向Yのズレ力に対して、ズレ止め部Bが一層高い滑り防止性を発現し、且つ前記i)の装着過程で縦方向に(特に下着センター部分を)滑らせる効果を両立させやすい。両すべり摩擦力の比〔=(ナプキン1の横方向Yについてのズレ止め部Bの吸収性物品単位でのすべり摩擦力)/(ナプキン1の縦方向Xについてのズレ止め部Bの吸収性物品単位でのすべり摩擦力)〕は、好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.5以上である。
また、ズレ止め部Bに関連して、吸収性本体5のズレ止め部B配置領域は、縦方向Xに少なくとも伸長性を有していることが好ましく、伸縮性を有していることが更に好ましい。より具体的には、吸収性本体5のズレ止め部B配置領域は、その横方向Y(幅方向)中心位置(幅10mm部位で測定した)での縦方向Xの25cN荷重下での伸長率が、好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。吸収性本体5のズレ止め部B配置領域が伸長性(伸縮性)を有していると、ノーマルショーツの高いフィット性を損なうことなく、ヒップの湾曲形状に沿って曲線的にフィットしやすいという効果が奏される。吸収性本体5のズレ止め部B配置領域に斯かる伸長性(伸縮性)を付与するには、例えば、以下の構成a〜eを適宜組合せればよい。構成a:後述するように裏面シート3自体に伸長性(伸縮性)を有する素材(エラストマー素材)を用いる。構成b:吸収体4に、該吸収体4を厚み方向に貫通し且つ平面視において横方向Yに長い形状のスリット状の貫通口を設ける。構成c:吸収体4として伸長性吸収体、例えば、小型の矩形吸収体ユニットの集合体(ブロック吸収体)を用いる。構成d:吸収体4として伸縮性吸収体、例えば、親水性弾性フォーム材、捲縮繊維集合体、エラストマー不織布積層体を用いる。構成e:表面シート2として伸縮性表面シート、例えば、潜在捲縮繊維収縮構造(バネ構造)を有する表面シート、波状加工(刃溝加工)が施されたエラストマー不織布複合体を用いる。
吸収性本体5のズレ止め部B配置領域の前記伸長率は次のようにして測定される。ナプキン1を横方向Yに二分する物品長軸を幅方向中心とし、幅1cm、縦方向X(長手方向)はズレ止め部Bの配置領域(ズレ止め部B単独存在領域B1)を含むように、測定対象の吸収性本体5を切り出して試験片とする。試験片を、引張試験機(オリエンテック(株)製テンシロン引張試験機RTM100)のチャック間に装着し(チャック間距離5cm)、引張方向を該試験片の縦方向Xに一致させて、引っ張り速度10cm/分で25cN荷重になるまで引っ張り、次式により算出する。次式中、Q2は、1N荷重時のチャック間距離、Q1は、初期チャック間距離(=5cm)である。吸収性本体のズレ止め部B配置領域の縦方向における1N荷重下での伸長率(%)=〔(Q2−Q1)/Q1〕×100 尚、チャック間距離は、サンプリング可能な試験片の長さに応じて適宜増減してよい。また、試験片長さ方向は、製品後端から切り出すが、測定にはエンドシール部が入らないようにする(チャックの掴みしろに用いる)。
ズレ止め部Bとしては、接着剤又はエラストマー素材が好ましい。ズレ止め部Bを形成する接着剤としては、高温溶融塗布時には材料に食い込んで固定効果を発現するが、常温固化後は表面に粘着性がほとんどなくなる高温溶融性樹脂、例えば、ナプキン1において構成部材どうしの接合に通常用いられる接着剤(組立用ホットメルト、コンストラクション用ホットメルト等と呼称される接着剤)を特に制限なく用いることができるが、接着力要件からは低タック接着剤が特に好ましく、例えば、α−オレフィン系、SIS系、SBS系、SEBS系等の各種ホットメルト接着剤のうち、低粘着付与剤配合品(粘着付与樹脂30重量%以下)が好ましく用いられる他、溶剤塗布硬化型樹脂膜、例えば防滑ニス等を用いることができる。また、ズレ止め部Bを形成するエラストマー素材としては、例えば、ウレタン系エラストマー、メタロセン触媒によるオレフィン系エラストマー、ゴム薄膜等を用いることができる。
本実施形態のようにズレ止め部Bとして接着剤を用いる場合は、裏面シート3の非肌対向面に接着剤を塗布してズレ止め部Bを形成する。本実施形態においては、図3に示すように、ズレ止め部Bを形成する接着剤は、その塗布予定部分の全域にいわゆるベタ塗りされている。すべり摩擦力の縦横異方性を容易に実現する好ましい方法としては、該接着剤はワイドガンによる広幅スパイラルスプレー塗布によるらせん状塗布されることが好ましく、後端に向かって裾広がりパターンで塗布されることが更に好ましい。一方、ズレ止め部Bとしてエラストマー素材を用いる場合、裏面シート3の非肌対向面に、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の固定手段を介して、エラストマー素材を固定してもよく、あるいは裏面シート3(ナプキン1の非肌対向面を形成するシート)自体がエラストマー素材から形成されていてもよい。そのようなエラストマー素材の一例として、極性基を多く含み、且つ熱可塑性を有し、分子間隙が広く結晶性が低くなるような樹脂、例えば日本合成樹脂(株)製ペレット「フレックマー」のようなウレタン系樹脂が挙げられる。斯かるウレタン系樹脂(エラストマー素材)を溶融押し出ししてフィルム化したエラストマーフィルムを裏面シートとして用いると、所定のすべり摩擦力実現に寄与する他、裏面シートが伸縮性となり、且つ透湿性も有するため好ましい。
ズレ止め部Bが接着剤である場合もエラストマー素材である場合も、そのT型剥離法による単位長さ当たりの接着力は、前記i)の装着過程のショーツの伸びを阻害しない観点から、好ましくは10N/cm以下、更に好ましくは5N/cm以下であり、ゼロでも構わない。
また、ズレ止め部Bが接着剤である場合もエラストマー素材である場合も、その縦方向すべり摩擦力は、100cN/cm2以上、好ましくは120cN/cm2以上、更に好ましくは130cN/cm2以上である。また、前記i)の装着過程のショーツの伸びを阻害しない目安として、好ましくは450cN/cm2以下、更に好ましくは400cN/cm2以下、従って好ましくは120cN/cm2以上、450cN/cm2以下であり、より好ましく130cN/cm2以上、400cN/cm2以下である。
また、ズレ止め部Bは、前述の如く低装着圧過程で滑る必要がある観点から、ズレ止め部Aの単位面積当たりのすべり摩擦力より小さいことが好ましい。
更に、また、ズレ止め部Bが接着剤である場合もエラストマー素材である場合も、その単位面積当たりの横方向すべり摩擦力は、100cN/cm2以上、好ましくは130cN/cm2以上、更に好ましくは140cN/cm2以上である。ズレ止め部Bの単位面積当たりの横方向すべり摩擦力は、本来的には大きいほど好ましい。
尚、ズレ止め部Bの単位面積当たりすべり摩擦力は、前述の如く縦方向と横方向とで互いに近似しているが、後述するように、ズレ止め部Bの縦横比が「縦方向Xの長さL2>横方向Yの長さW2」の関係にあるため、縦方向すべり摩擦力と横方向すべり摩擦力とでは、横方向すべり摩擦力が優位となり、後述するように、横方向すべり摩擦力が縦方向すべり摩擦力の1.3〜1.5倍以上となる。
また、ズレ止め部B(接着剤であるズレ止め部B)の縦方向Xの長さL2(図3参照)は、吸収性本体5の縦方向Xの全長に対して、好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、そして、好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、より具体的には、好ましくは30%以上85%以下、更に好ましくは35%以上80%以下である。
ズレ止め部B(接着剤であるズレ止め部B)の横方向Yの長さW2(図3参照)は、吸収性本体5の横方向Yの全長に対して、好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上である。
また、ズレ止め部Bの縦方向Xの最大長さと横方向Yの最大長さとの比(縦方向Xの最大長さ/横方向Yの最大長さ)は、好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上で、縦方向最大長さの方が長いことが好ましい。
図5〜図7には、本発明の吸収性物品の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前述した実施形態(生理用ナプキン1)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前述したナプキン1についての説明が適宜適用される。
図5に示すナプキン1Aにおいては、ズレ止め部Aがズレ止め粘着剤であるところ、該ズレ止め粘着剤を介してショーツに固定されているナプキン1Aを該ショーツから引き剥がす際に裏面シート3が破れるおそれが少ないため、裏面シート3の非肌対向面はその全域に亘って面強度強化要素30で被覆されていない。また、ナプキン1Aにおいては、ズレ止め部Bを形成する接着剤は、その塗布予定部分の全域に塗布するいわゆるベタ塗りではなく、塗布予定部分に部分的に塗布するパターンで塗布されており、具体的にはスパイラル状に塗布されている。接着剤がスパイラル状に塗布されてなるズレ止め部Bは、縦方向Xの前側から後側に向かうに従ってその横方向Yの長さ(幅)が漸次増加している。ナプキン1Aによってもナプキン1と同様の効果が奏される。特にナプキン1Aは、その非肌対向面に面強度強化要素30が配されていないため、通気性及び柔軟性に優れる。
図6に示すナプキン1Bにおいては、裏面シート3の非肌対向面に、横方向Yに延びる平面視直線状の凹部と凸部とが縦方向Xに交互に配置されてなる、凹凸部31が形成されており、この凹凸部31がズレ止め部Bとして機能する。凹凸部31は、裏面シート3のみに対して凹凸加工を施して形成されており、ナプキン1Bの他の部材には形成されていない。凹凸部31を形成するための凹凸加工としては、歯溝加工が挙げられる。歯溝加工は、互いに噛み合う歯溝を有する一対の歯溝ロールを用い、一対の該歯溝ロール間に裏面シート3を導入することで実施することができる。凹凸部31を有する裏面シート3としては、前述したズレ止め部Bによる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、前記エラストマー素材からなるものが好ましく用いられる。ナプキン1Bにおいては、横方向Y(幅方向)に連続する凸部が幅方向すべりを強く抑制し、一方凸部は縦方向Xには連続していないため縦方向Xのすべり抑制は相対的に緩やかであり、そのためナプキン1Bによっても、(滑り防止の縦横異方性の観点でも)ナプキン1と同様の効果が奏される。
図7に示すナプキン1Cにおいては、ズレ止め部Bを兼ねる裏面シート3の非肌対向面に、横方向Yに長い形状のエンボス部(凹陥部)32が複数形成されているところ、このエンボス部32は、ナプキン1Cの使用時においてナプキン1Cが固定されるショーツ等の着衣に接しないため、接着性もすべり摩擦も生じないが、その代わりに、裏面シートのすべり摩擦力及びその縦横異方性を調節する機能を有する。エンボス部32は、裏面シート3及び吸収体4が表面シート2側に向かって一体的に凹陥してなる。エンボス部32は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。エンボス部32においては、裏面シート3及び吸収体4が熱融着等により一体化している。エンボス部32を有する裏面シート3としては、前記エラストマー素材からなるものが好ましく用いられる。ナプキン1Cによってもナプキン1と同様の効果が奏される。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、ズレ止め部Aは、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sそれぞれにおいて縦方向Xに所定間隔を置いて複数設けられていたが、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sそれぞれにおいて縦方向Xに延びる連続線状であってもよく、この連続線状のズレ止め部Aは、平面視において直線でも曲線でもよい。また、前記実施形態はウイング部を有する生理用ナプキンであったが、本発明の吸収性物品は、ウイング部を有していなくてもよく、また本発明の吸収性物品には、生理用ナプキンの他、パンティライナ(おりものシート)、失禁パッド等が含まれる。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
本発明には、以下の吸収性物品が含まれる。即ち、液保持性の吸収体並びに該吸収体の非肌対向面側に配置された裏面シートを具備し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部よりも着用者の腹側に配される前方部と、該排泄部対向部よりも着用者の背側に配される後方部とを有する吸収性本体を備え、着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、前記吸収性本体の非肌対向面に、該吸収性本体を着衣に固定するズレ止め部が設けられ、該ズレ止め部は、接着特性の異なる2種類のズレ止め部A及びBを含んで構成されており、前記吸収性本体を横方向に3分割して、横方向中央部とその横方向外方に位置する横方向両側部とに区分した場合に、前記ズレ止め部Aは、前記排泄部対向部において該横方向両側部に設けられ、前記ズレ止め部Bは、前記後方部において該横方向中央部に設けられており、前記後方部における前記吸収性本体の非肌対向面に、前記ズレ止め部Bの横方向外方に前記ズレ止め部Aが設けられていない、ズレ止め部B単独存在領域が存しており、前記ズレ止め部Aは、粘着剤(ズレ止め粘着剤)、又はベースシートの表面に多数の係合突起が設けられてなるフック材を含んで構成されており、前記ズレ止め材Bは、接着剤又はエラストマー素材を含んで構成されている吸収性物品。前述したように、常温で粘着性を発現しない粘着剤又はフック材を含んで構成されるズレ止め部Aは、縦方向及び横方向へのズレに対して抵抗力が強く、また、ショーツ等の着衣への接着性が高い。一方、ズレ止め部Bに適用する接着剤又はエラストマー素材は、滑り摩擦係数が大きいが接着性は弱い。このため、本発明の効果を奏することができる。尚、斯かる吸収性物品においては、ズレ止め部A及びズレ止め部Bに関しては、前述した実施形態(ナプキン1,1A,1B,1C)におけるズレ止め部の配置等の構成を適宜採用可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図1〜図3に示すナプキン1と同様の基本構成を有する生理用ナプキンを作製した。
表面シートとして、縦方向及び横方向の両方向に伸縮性を有する表面シートを用いた。この表面シートは、芯部がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘部がポリエチレン(PE)からなる芯鞘複合繊維20g/m2からなる不織布(肌対向面側)と、潜在捲縮繊維ウェブ20g/m2(非肌対向面側)とを、ドット状のエンボスで一体的に接合して積層シートを得、該積層シートを熱風処理により縦横75%に収縮させて得られたもので、その製造方法の詳細は、例えば特開2004−466号公報、特開2003−52749号公報等に記載されている。
また、裏面シートとして、無機フィラーとしての炭酸カルシウム50質量%含有PEフィルムを1.5倍延伸後、機械方向に刃溝加工延伸してひだ状凹凸を付与した、伸長性フィルムを用いた。
また吸収体として、坪量250g/m2の伸縮性を有する吸収性シートを用いた。この吸収性シートは、潜在捲縮繊維と、芯部がPET、鞘部がPEからなる芯鞘複合繊維とを、質量比1:1の比率で混合堆積したウェブをエアスルー熱収縮させて坪量100g/m2の伸縮性不織布シートを得、該シート2枚の間に粒子状の吸水性ポリマーを坪量50g/m2で介在させ、該シート2枚をドット状のエンボス加工により一体化して得られたものである。
また、サイドシートとして、縦方向に伸縮性を有する疎水性不織布を用いた。この疎水性不織布は、弾性繊維層としてSEPSメルトブローン層を用い、また、非弾性繊維層として芯部がPET、鞘部がPEからなる芯鞘複合繊維からなるものを用い、両繊維層をエアスルー法によって一体的に結合して2層構造の複合不織布を得、該複合不織布に対し機械方向に刃溝加工延伸を施すことにより得られたもので、両繊維層の坪量は共に20g/m2であった。この疎水性不織布(サイドシート)の製造方法の詳細は、例えば特開2006−287815号公報に記載されている。
実施例1の要部を、図3及び図5を参照して説明すると、面強度強化要素30を構成する不織布として、坪量18g/m2のポリプロピレン(PP)製のスパンボンド不織布を用い、該不織布の機械方向(繊維配向方向)をナプキンの縦方向(長手方向)と一致させて、図3に示すように、吸収性本体5の非肌対向面のみならずウイング部7の非肌対向面も被覆する形態で、これらの非肌対向面を形成する裏面シートと接合した。斯かる接合(面強度強化要素30を構成する接着剤)にはホットメルト接着剤を用い、該接着剤を、坪量7g/m2で全面スパイラルスプレー塗布した。
また、ズレ止め部A及びウイング部ズレ止め部70として、フック材(クラレ製、エコマジック(オス)A8693Y−71)を用い、ズレ止め部A用に該フック材を横方向長さ(幅)10mm×縦方向長さ20mmにカットしたもの、及びウイング部ズレ止め部70用に該フック材を幅6mm×縦方向長さ12mmにカットしたものをそれぞれ用意し、それらをラウンド形状に面取りして、実施例1のナプキンにおける図3に示すのと同位置(吸収性本体5の横方向両側部5S,5S)にホットメルト接着剤で固定して、ズレ止め部A及びウイング部ズレ止め部70を形成した。
また、ズレ止め部Bとして、常温粘着性のないα−オレフィン系ホットメルト接着剤を用い、2枚の剥離紙間に該接着剤を、広幅スパイラルスプレーを用いて図5に示すズレ止め部Bのスパイラル状パターンと同じパターンで15g/m2塗布した後、該接着剤によって一体化した2枚の剥離紙を、縦方向前端の横方向Yの長さW2が40mm、縦方向後端の横方向Yの長さW2が70mm、縦方向Xの長さL2が110mmの平面視台形形状にカットし、そのカットした剥離離間の接着剤を、実施例1のナプキンにおける図5に示すのと同位置(後方部Rにおける吸収性本体5の横方向中央部5M)に熱転着して、ズレ止め部Bを形成した。
〔実施例2〕
下記<1>〜<4>以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。
<1>裏面シートとして、ウレタン系樹脂である日本合成樹脂(株)製ペレット「フレックマー」を溶融押し出ししてフィルム化した坪量15g/m2のエラストマーフィルムを用いた。
<2>面強度強化要素30を構成する不織布として、坪量18g/m2のポリプロピレン(PP)製のスパンボンド不織布を用い、該不織布の機械方向(繊維配向方向)をナプキンの縦方向(長手方向)と一致させて、図8に示すナプキン1Dのように、吸収性本体5の非肌対向面のみならずウイング部7の非肌対向面も被覆する形態で、これらの非肌対向面を形成する裏面シートと接合した。斯かる接合(面強度強化要素30を構成する接着剤)にはホットメルト接着剤を用い、該接着剤を、坪量7g/m2で全面スパイラルスプレー塗布した。
<3>ズレ止め部A及びウイング部ズレ止め部70として、可塑剤と粘着付与剤とを合計で70質量%含むSEBS系ホットメルト粘着剤を用い、該粘着剤を、ズレ止め部A用に塗布量90g/m2、ウイング部ズレ止め部70用に塗布量35g/m2で剥離紙に塗布して粘着剤の薄膜塗布部を得、該塗布部を実施例2のナプキンにおける図3に示すのと同位置(吸収性本体5の横方向両側部5S,5S)に転着させて、ズレ止め部A及びウイング部ズレ止め部70を形成した。
<4>裏面シート(エラストマーフィルム)の露出部を、そのままズレ止め部Bとして用いた。
〔実施例3〕
下記<5>及び<6>以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。
<5>面強度強化要素30を設けない。
<6>ズレ止め部A及びウイング部ズレ止め部70として、可塑剤と粘着付与剤とを合計で70質量%含むSEBS系ホットメルト粘着剤を用い、該粘着剤を、塗布量50g/m2で剥離紙に塗布して粘着剤の薄膜塗布部を得、該塗布部を実施例3のナプキンにおける図3に示すのと同位置(吸収性本体5の横方向両側部5S,5S)に転着させて、ズレ止め部A及びウイング部ズレ止め部70を形成した。
〔比較例1〕
下記<7>及び<8>以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。
<7>面強度強化要素30を設けない。
<8>ズレ止め部A及びBに代えて、他のズレ止め部として、可塑剤と粘着付与剤とを合計で70質量%含むSEBS系ホットメルト粘着剤を用い、塗布量50g/m2で剥離紙に塗布して粘着剤の薄膜塗布部を得、該塗布部を幅55mm×縦方向長さ165mmにカットし、そのカットした該塗布部を、比較例1のナプキンにおける吸収性本体の横方向中央部に転着させて、他のズレ止め部を形成した。
〔評価〕
実施例及び比較例の生理用ナプキンについて、下記方法によりズレ止め部の物性を評価した。その結果を下記表1に示す。
また、実施例及び比較例の生理用ナプキンについて、ノーマルショーツ及び生理用ショーツそれぞれと併用した場合における着用感、フィット性及びヨレ防止性をそれぞれ下記方法により評価した。その結果を下記表2に示す。
<ズレ止め部の物性評価>
前記i)の装着過程(中央軸線引き伸ばし、装着圧0環境)及び前記前記iii)の取り外し過程をそれぞれ想定し、前記<ズレ止め部の単位面積当たりのすべり摩擦力の測定方法>において、試験片を水平方向に引っ張る際に該試験片を加圧しない(加圧力0g/cm2)とした以外は該測定方法と同様にして、「ズレ止め部のゼロ加圧下での単位面積当たりのすべり摩擦力」を測定した。前記i)の装着過程においては、ズレ止め部Aはしっかりとショーツに固定されるのが理想であり、ズレ止め部Bは固定されずに滑って逃げるのが理想である。
また、前記ii)の使用過程(装着圧印加)を想定し、前述した方法に従って、「ズレ止め部の横方向単位長さ当たりの接着力」を測定すると共に、前記<ズレ止め部の単位面積当たりのすべり摩擦力の測定方法>に従って、「ズレ止め部の単位面積当たりのすべり摩擦力」を測定した。前記ii)の使用過程においては、ズレ止め部A及びB共に、滑らずにしっかりとショーツに固定されてヨレを防止するのが理想である。
<着用感、フィット性及びヨレ防止性評価>
ノーマルショーツとして、グンゼ製「フラッティ」を用い、生理用ショーツとして、花王製「ロリエアクティブガード『おでかけモード』を用い、それぞれモニターの最適サイズを用いた。これら2種類のショーツと評価対象の生理用ナプキン2枚とを5名の女性モニターに渡し、常法に従って各ショーツの股間部にナプキンを固定したものを1時間以上装着してもらい、下記評価基準に従って評価してもらった。モニター5名の評価結果の平均点を、当該ナプキンの評価結果として採用した。尚、使用中極端なヨレやめくれ等で使用が不可能になった場合、直ちに使用を中断してもらった。
・着用感の評価基準:着用中のナプキンの感触の良さ、着用感の良さ、違和感のなさ等を総合的に判断し、「装着感がよい」を1、「ややよい」を2、「どちらともいえない」を3、「やや悪い」を4、「悪い」を5とした。数字が小さいほど着用感が良好であることを示す。
・フィット感の評価基準:着用中のナプキンのフィット感のよさ、浮く感じのなさ、動く感じのなさ等を総合的に判断し、「フィット感がよい」を1、「ややよい」を2、「どちらともいえない」を3、「やや悪い」を4、「悪い」を5とした。数字が小さいほどフィット感が良好であることを示す。
・ヨレ防止性の評価基準:着用後、ショーツを引き下ろした時のナプキンの形状を観察し、位置ズレ、ナプキン幅縮小、シワ等の形状外観等を総合的に判断し、「ヨレない」を1、「ややヨレない」を2、「どちらともいえない」を3、「ややヨレた」を4、「ヨレた」を5とした。数字が小さいほどヨレ防止性が良好であることを示す。
表2から明らかなように、各実施例は比較例1に比して、ノーマルショーツとの併用における着用感、フィット感及びヨレ防止性に優れていた。各実施例では、生理用ナプキンのズレ止め部として、一般的に使用される粘着力とすべり摩擦力とを備えるズレ止め部Aを使用しているにも関わらず、ズレ止め部Aの配置を幅方向両側に限定し、且つ、粘着力は低いが滑り摩擦力が十分であるズレ止め部Bを特定位置に配置することによって、このように優れた効果を発揮している。このことから、本発明のように、2種類のズレ止め部A及びBを用い、それらの配置位置及び物性をそれぞれ前述した特定範囲に設定することは、フィット性に優れ、快適な着用感及び漏れに対する安心感を着用者に与え得る生理用ナプキンを得る上で有効であることがわかる。また、本発明によれば、ノーマルショーツを用いた場合のみならず、生理用ショーツを用いた場合にも、優れた効果が奏されることが明らかである。
また、ズレ止め部Aとして粘着剤やフック材を用い、ズレ止め部Bとしてエラストマー材料を用いることで、エラストマー材料の有する高い滑り摩擦力と低い粘着力によって、同様の効果を奏することができる。
1,1A,1B,1C,1D生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
30 面強度強化要素
30A 面強度強化要素の底部
30B 面強度強化要素の直線状部
4 吸収体
5 吸収性本体
5M 吸収性本体の横方向中央部
5S 吸収性本体の横方向側部
7 ウイング部
70 ウイング部ズレ止め部
A ズレ止め部A
B ズレ止め部B
B1 ズレ止め部B単独存在領域
AB ズレ止め部A及びB横方向併存領域
F 前方部
M 排泄部対向部
R 後方部
X 縦方向
Y 横方向