JP2015093282A - 高強度鋼板のスポット溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】引張強さが750MPa以上の高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合でも、静的強度、疲労強度、遅れ破壊特性に優れた溶接継手が得られる高強度鋼板のスポット溶接方法を提供する。
【解決手段】2枚以上の薄鋼板からなる高強度鋼板の内、少なくとも1枚の引張強さが750〜1850MPaであり、各々の板厚が0.8〜3.6mm、炭素当量Ceqが0.22〜0.55質量%である高強度鋼板1同士を抵抗スポット溶接する際、次式{1.96×t≦EF1≦3.43×t}で表される加圧力EF1で溶接通電を行った後、次式{1.2×EF1≦PEF1≦2.4×EF1}で表される加圧力PEF1に設定し、次式{0.60×WC≦PC1≦0.95×WC}で表される後通電電流PC1および次式{30≦Pt1≦200}で表される後通電時間Pt1で後通電を行い、次いで、次式{0≦Ht≦200}で表される電極保持時間Htで電極保持を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、高強度鋼板のスポット溶接方法に関するものであり、特に、自動車用部品の製造や車体の組立などの工程で使用され、優れた静的強度、疲労強度および耐遅れ破壊特性を備える溶接継手を得ることが可能な、高強度鋼板のスポット溶接方法に関するものである。
近年、低燃費化やCO排出量削減を目的とした車体の軽量化および衝突安全性向上のために、自動車分野では、車体や部品などに高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。
一方、自動車用部品の製造や車体の組立などでは、抵抗スポット溶接(以下、スポット溶接と略称することがある)が主に用いられているが、高強度鋼板、特に引張強さが750MPa以上の高強度鋼板をスポット溶接した場合には、以下のような問題が生じる。
スポット溶接部(溶接継手)の品質指標としては、引張強さと疲労強度が挙げられる。また、溶接継手の引張強さには、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断強さ(TSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。一方、溶接継手の疲労強度には、せん断方向に引張荷重を負荷して測定する引張せん断疲労強度と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張疲労強度がある。
一般に、溶接継手の静的強度は、スポット溶接した溶接金属部(ナゲット部)と熱影響部の硬さの値が高く、十分な強度があり、さらに靭性も高い場合には十分高い値が得られるが、溶接金属部(ナゲット部)と熱影響部の硬さの値が高過ぎて靭性が低い場合には低い値を示し、特に、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)では顕著となる。
また、従来から知られているように、溶接継手の疲労強度は、鋼板の引張強さが増加しても増加しない。これは、ナゲット端部のノッチ形状が原因であると考えられている。
さらに、高強度鋼板、特に引張強さが750MPa以上の高強度鋼板をスポット溶接した場合には、母材が変形し難いため、通電終了後の収縮によって溶接部で高い引張残留応力が発生し、溶接後しばらく経ってから遅れ破壊(割れ)が生じることもある。このような遅れ破壊が発生すると、接合部において十分な静的強度や疲労強度が得られず、また、その部分(割れ)に水分が浸入すると、腐食が発生して接合部の強度がさらに低下するという問題が生じる。
スポット溶接部の引張強さ、特に、高強度化に伴って低下する十字引張強さの向上方法としては、例えば、特許文献1および非特許文献1に記載されたような技術が提案されている。これらの文献に記載の方法によれば、スポット溶接の通電が終了して一定時間が経過した後にテンパー通電を行い、スポット溶接部(ナゲット部および熱影響部)を焼戻しして溶接部の硬さを低下させ、十字引張強さを向上させている。しかしながら、これらの方法では、何れも溶接に長時間を要するために生産性が低下するという問題がある。また、焼戻しによる溶接部の軟化により、ナゲット内での剥離破断が起こり易いという問題もある。
また、継手強度が低下する問題を解決する方法が、特許文献2、3に記載されている。これらの文献に記載の方法では、スポット溶接後に高周波で溶接部を加熱して焼戻し処理を行っている。しかしながら、これらの方法では、溶接後に別工程が必要となって煩雑になり、工程増加になるとともに、高周波を利用するために特殊な装置が必要となるという問題がある。また、焼戻しによる溶接部の軟化により、ナゲット内での剥離破断が起こり易いという問題もある。
さらに、特許文献4および非特許文献2には、自動車生産工程内の塗装焼付け処理における加熱および温度保持により、L字溶接継手の引張強さ(剥離強度)が向上することが記載されている。しかしながら、これらの文献においては、鋼種や鋼板成分(特に炭素当量)と継手の剥離方向の強度(L字引張強さ、十字引張強さ)との関係については、明確にされていない。また、各種鋼種を用いた場合の溶接部の詳細な破断形態、および破断形態と剥離方向の強度(L字引張強さ、十字引張強さ)との関係についても示されていない。
これら技術の他に、例えば、炭素当量の低い鋼板を使用してスポット溶接を行うことも考えられる。しかしながら、このような方法では、鋼板成分の制約によって鋼板自体の製造が困難になったり、あるいは、必要な機械的特性が得られなかったりするなどの問題が生じる。
また、例えば、特許文献5に記載されているような1470MPa級のホットスタンピング鋼板を用いた場合には、焼入れ処理が必要となるため、炭素当量を下げることが困難である。
一方、接合強度の向上のため、高強度鋼板をスポット溶接する際に、スポット溶接の打点数を増やすという技術も知られている。しかしながら、このような方法では、溶接作業効率が低下して生産性が低下し、また、溶接施工コストの増加や設計自由度が制限されるなどの問題もある。
また、特許文献6には、所定の高強度鋼板を用いてスポット溶接を行い、溶接通電後に所定の条件でテンパー通電を行うことで、溶接部の硬さを低下させる方法が記載されている。特許文献6の記載によれば、所定の高強度鋼板としては、炭素当量が所定範囲に規定され、引張試験で求められる真歪み3〜7%の範囲の応力−歪線図の傾きが5000MPa以上に規定されたものが用いられる。しかしながら、この方法を用いた場合でも、溶接部の軟化によってナゲット内での剥離破断が起こり易いという問題がある。
また、特許文献7には、本通電(溶接通電)によるナゲット形成の後に、本通電電流値以上の電流値で後熱通電するという方法が記載されている。また、特許文献8には、本通電によるナゲット形成の後に、本通電時よりも加圧力を増加させて後熱通電するという方法が記載されている。しかしながら、これら各文献に記載の方法でも、溶接部の軟化によってナゲット内での剥離破断が起こりやすくなり、安定して高い継手強度が得られないという問題がある。
ここで、一般に、ナゲット内での欠陥や割れの発生を防止する方法としては、溶接後に、高強度鋼板に対する溶接電極の加圧力を増加させる方法が知られている。しかしながら、このような方法では、非常に高い加圧力を必要とすることから、剛性が高く耐久性に優れた溶接ガンが必要となり、実用には向かないという問題がある。また、溶接通電の直後に、引き続き、後加熱通電を行うことにより、溶接後の冷却速度を低下させる方法も知られている。この方法を採用した場合には、冷却速度の低下に伴って溶接部の収縮速度が低下するため、欠陥や割れが発生しにくくなる。しかしながら、これらの方法は、高温割れに対しては有効であっても、低温割れ(遅れ破壊)に対しては必ずしも有効とは言えなかった。また、これらの方法を用いても、自動車の補強部品などで用いられる、引張強さが750MPa以上で、炭素量や炭素当量が高い高強度鋼板をスポット溶接する場合には、必ずしも有効ではない。
また、スポット溶接部の疲労強度を向上させる方法としては、継手疲労強度特性が優れた鋼板を用いてスポット溶接する方法が知られている(例えば、特許文献9〜14を参照) 。しかしながら、これら各文献に記載の方法は、軟鋼板のスポット溶接継手に関するものであり、高強度鋼板のスポット溶接部の疲労強度を向上させる方法ではない。
また、高強度鋼板のスポット溶接において、溶接継手の疲労強度を向上させる手段としては、スポット溶接通電が完了した後、一定時間、非通電状態で冷却し、その後、テンパー通電を行うことでスポット溶接部(ナゲット部)と熱影響部を焼鈍して硬さを低下させ、残留応力を変化させる方法が知られている(例えば、非特許文献7を参照)。
しかしながら、この方法は、テンパー通電の適正な条件範囲の幅が非常に狭く、また、操業条件の変化により再現性が乏しいという実用上の問題がある。特に、めっき鋼板を連続的に打点してスポット溶接する場合には、打点数の増加とともに、電極先端がめっきとの合金化反応によって劣化し、電極先端径が増大して電流密度が低下するため、最適なテンパー通電条件から外れることから、安定的に継手の疲労強度を向上させることが困難となる。
また、高強度鋼板のスポット溶接において、溶接継手の疲労強度を向上させる別の手段としては、電極による加圧下で高強度鋼板同士をスポット溶接するとともに、スポット溶接後の後通電によってスポット溶接部を発熱させて焼戻し、かつ、スポット溶接部の周囲の引張残留応力を、電極による加圧力の増加で減少させ、スポット溶接継手の疲労強度を増加させる方法が知られている(例えば、特許文献7を参照)。
しかしながら、特許文献7に記載の方法も、上述した非特許文献7の方法と同様、テンパー通電の適正な条件範囲の幅が非常に狭く、また、操業条件の変化により再現性が乏しいという実用上の問題がある。また、巻戻し後の加圧力が非常に高いため、電極寿命が非常に短くなり、さらに、溶接部の凹みが大きくなるという問題も生じる。
また、高強度鋼板スポット溶接部の疲労強度を向上させる方法としては、上記以外にも、スポット溶接後に溶接部を非通電・非加圧で放置した後、さらに非通電で加圧して、スポット溶接部の疲労強度を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献8を参照)。
しかしながら、この方法では、最適加圧条件が明確に示されておらず、引張強さの異なる各種高強度鋼板に対して、どのような加圧力で処理をすべきかが不明である。
また、高強度鋼板スポット溶接部の疲労強度を向上させる方法として、スポット溶接後に、スポット溶接部を加圧することでスポット溶接部の疲労強度を上げる方法が知られている(例えば、非特許文献8を参照)。
しかしながら、この方法は、軟鋼板スポット溶接継手の疲労強度の向上方法に関するものであり、高強度鋼板スポット溶接継手の疲労強度の向上方法に関するものではない。また、スポット溶接部の加圧に関して、先端形状がどのようなツールを用い、強度が異なる各種高強度鋼板に対して、どのような加圧力で加圧するのかという検討は十分にされていない。
この他、抵抗スポット溶接部の疲労強度を向上させる方法として、抵抗スポット溶接部に超音波衝撃処理を施す方法が知られている(例えば、特許文献17を参照)。しかしながら、この方法は、溶接終了後に後処理行程が必要となり、その分、作業工程が増えて経済的負荷も増加するので、作業性や経済性の点で好ましい方法ではない。
また、従来、溶接継手の疲労強度を向上させるために、スポット溶接の打点数(ナゲット数)を増やす方法も知られている。この方法は、スポット溶接打点数を増やすことで、継手における1個当たりのナゲット周辺部の応力集中を軽減することを狙うものである。
しかしながら、この方法は、溶接作業効率の低下や溶接施工コストの上昇、および、設計自由度の制約などの問題を抱えている。また、継手に応力が負荷された場合、各溶接点(ナゲット)に、必ずしも均等に応力がかかるわけではないため、応力分散効果が十分発揮されず、いずれかの溶接点に応力が集中する。その結果、溶接打点数を、例えば、1点から2点、3点と増やしたとしても、継手の疲労強度は、必ずしも2倍、3倍にはならない。
上記のように、溶接部の剥離方向の引張強さや疲労強度を改善する方法については、多くの方法が提案されているが、遅れ破壊特性を改善する方法についても、従来から各種提案がなされている(例えば、特許文献18〜20を参照)。
しかしながら、特許文献18、19に記載の技術は、鋼板特性の最適化に関わるものである。
また、特許文献20に記載の技術は、プロジェクション溶接方法に関するものである。ここで、プロジェクション溶接とスポット溶接は、同じ抵抗溶接であるが、そもそも、突起部で溶接するか、平坦部で溶接するかで溶接現象が異なっており、各溶接パラメーターの最適値も全く異なっている。したがって、特許文献20では、スポット溶接方法に関しては何ら提案されていないと考えられる。
特開2002−103048号公報 特開2009−125801号公報 特開2009−127119号公報 特開2009−291797号公報 特開2002−102980号公報 特開2009−138223号公報 特開2010−115706号公報 特開2010−149187号公報 特開昭63−317625号公報 特開平2−163323号公報 特開平5−263184号公報 特開平9−268346号公報 特開平10−8187号公報 特開平11−279689号公報 特開2001−170776号公報 特開2001−321953号公報 特開2004−122152号公報 特開2007−231373号公報 特開2007−308742号公報 特開2012−157900号公報
「高張力鋼における点溶接継手疲労強度の改善−鉄と鋼−」,日本鉄鋼協会,1982年,第68巻,第9号 P318〜325 「自動車鋼板のスポット溶接継手強度に及ぼす塗装焼付けの熱履歴の影響−溶接学会全国大会講演概要−」,社団法人溶接学会,第83巻,2008年,第9号,P4−5 「新日鉄技報」,新日本製鐵株式会社,2006年,No.385,P36 「新日鉄技報」,新日本製鐵株式会社,2003年,No.378,P30 「川崎製鐵技法」,川崎製鐵株式会社,2000年,No.32,P65 「川崎製鐵技法」,川崎製鐵株式会社,2002年,No.34,P59 「鉄と鋼」第68巻(1982年)第9号、第1444〜1451頁 R.Spitsen,D.Kim,M.Ramulu,B.Flinnand E.T.Easterbrook,"THE EFFECTS OF POST−WELD COLD WORKING PROCESSESON THE FATIGUE STRENGTH OF LOW CARBON STEEL RESISTANCE SPOT WELDS", Proceedings of IMECE:2004 ASME International Mechanical Engineering Congress & Exposition.
上述したように、高強度鋼板、特に引張強さが750MPa以上で板厚が1.6mm以上の鋼板をスポット溶接した場合には、溶接継手の静的強度、特に剥離方向の引張強さが低下するという問題があった。また、高強度鋼板を用いた溶接継手では、母材強度が増加しても疲労強度が増加しないという問題があった。さらに、このような高強度鋼板をスポット溶接した場合には、溶接部周辺で高い引張残留応力が発生し、遅れ破壊が起こり易くなるという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、特に、引張強さが750MPa以上の高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合においても、静的強度、疲労強度、遅れ破壊特性に優れた溶接継手を得ることが可能な高強度鋼板のスポット溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者等が上記問題を解決するために鋭意研究したところ、溶接工程における実用の溶接条件の範囲内において、加圧力や通電パターンを変化させることで溶接条件を適正化することにより、スポット溶接部の靭性を改善するとともに、このスポット溶接部で発生する引張残留応力を低減できることを知見した。これにより、引張強さの高い高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合であっても、溶接継手の静的強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性を改善することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 2枚以上の薄鋼板同士の接合面にナゲットを形成させる高強度鋼板のスポット溶接方法であって、前記2枚以上の薄鋼板からなる高強度鋼板の内、少なくとも1枚の引張強さが750〜1850MPaであり、かつ、各々の板厚が0.8〜3.6mmであるとともに、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.22〜0.55質量%の範囲である前記高強度鋼板同士を重ね合わせ、下記(2)式で表される加圧力EF1で溶接通電を実施した後、下記(3)式で表される加圧力PEF1に設定するとともに、下記(4)式で表される後通電電流PC1および下記(5)式で表される後通電時間Pt1で後通電を行い、次いで、下記(6)式で表される電極保持時間Htで電極保持を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
Ceq=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2[P]+4[S] ・・(1)
1.96×t ≦ EF1 ≦ 3.43×t ・・・(2)
1.2×EF1 ≦ PEF1 ≦ 1.5×EF1 ・・・(3)
0.60×WC ≦ PC1 ≦ 0.95×WC ・・・(4)
30 ≦ Pt1 ≦ 200 ・・・(5)
0 ≦ Ht ≦ 200 ・・・(6)
{但し、上記(1)〜(6)式中において、Ceq:炭素当量(質量%)、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]:C、Si、Mn、P、Sの各々の含有量(質量%)、t:板厚(mm)、EF1:溶接通電時の電極の加圧力(kN)、PEF1:後通電時の電極加圧力(kN)、WC:溶接電流(kA)、PC1:後通電電流(kA)、Pt1:後通電時間(ms)、Ht:後通電後の電極保持時間(ms)を示す。}
[2] 上記[1]に記載の高強度鋼板のスポット溶接方法であって、前記溶接通電と前記後通電との間に、さらに、下記(7)式で表される冷却時間Ctを設けることを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
16 ≦ Ct ≦ 300 ・・・(7)
{但し、上記(7)式中において、Ct:溶接通電後の冷却時間(ms)を示す。}
[3] 引張強さが750〜1850MPa、板厚が0.8〜3.6mmであるとともに、請求項1に記載の(1)式で表される炭素当量Ceqが0.22〜0.55質量%の範囲である高強度鋼板同士を重ね合わせて抵抗スポット溶接を行う、高強度鋼板のスポット溶接方法であって、請求項1に記載の(2)式で表される加圧力EF1で溶接通電を実施した後、上記[1]に記載の(3)式で表される加圧力PEF1に設定し、下記(8)式で表される後通電電流PC2および下記(9)式で表される後通電時間Pt2で第1の後通電を行った後、さらに、下記(10)式で表される後通電電流PC3および下記(11)式で表される後通電時間Pt3で第2の後通電を行うことで2段後通電を実施し、次いで、上記[1]に記載の(6)式で表される電極保持時間Htで電極保持を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
0.80×WC ≦ PC2 ≦ 0.95×WC ・・・(8)
30 ≦ Pt2 ≦ 100 ・・・(9)
0.60×WC ≦ PC3 ≦ 0.75×WC ・・・(10)
30 ≦ Pt3 ≦ 100 ・・・(11)
{但し、上記(8)〜(11)式中において、WC:溶接電流(kA)、PC2:第1の後通電電流(kA)、Pt2:第1の後通電時間(ms)、PC3:第2の後通電電流(kA)、Pt3:第2の後通電時間(ms)を示す。}
[4] 上記[3]に記載の高強度鋼板のスポット溶接方法であって、前記溶接通電と前記第1の後通電との間に、さらに、上記[2]に記載の(7)式で表される冷却時間Ctを設けることを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
[5] 上記[1]〜[4]の何れか1項に記載の高強度鋼板のスポット溶接方法であって、前記電極保持の後、さらに、下記(12)で表される熱処理温度ATおよび下記(13)式で表される熱処理時間Atで溶接後の熱処理を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
120 ≦ AT ≦ 220 ・・・(12)
100 ≦ At ≦ 6000 ・・・(13)
{但し、上記(12)、(13)式中において、AT:溶接後の熱処理温度(℃)、At:溶接後の熱処理時間(s)を示す。}
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法によれば、溶接工程における実用の溶接条件の範囲内において、加圧力や通電パターンを変化させることで溶接条件を適正化することにより、スポット溶接部の靭性を改善するとともに、このスポット溶接部で発生する引張残留応力を低減させることができる。これにより、引張強さの高い高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合であっても、溶接継手の静的強度や疲労強度、耐遅れ破壊特性を改善することが可能となる。したがって、例えば、自動車用部品の製造や車体の組立てなどで用いる高強度鋼板のスポット溶接に本発明を適用することにより、良好な溶接作業性を確保しつつ溶接部の静的強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性などを向上させることができる。したがって、自動車分野などにおいて高強度鋼板を適用することによる安全性向上や軽量化による低燃料費、CO2排出量削減のメリットなどを十分に享受でき、その社会的な貢献は多大である。
本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法の第1の実施形態を模式的に説明する図であり、2枚の高強度鋼板を重ね合わせて抵抗スポット溶接を行い、溶接金属部を形成した状態を示す断面図である。 本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法の第1の実施形態を説明する図であり、通電パターンおよび加圧パターンを示すグラフである。 本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法の第2の実施形態を説明する図であり、通電パターンおよび加圧パターンを示すグラフである。 本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法の第3の実施形態を説明する図であり、通電パターンおよび加圧パターンを示すグラフである。 本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法の実施例について説明する図であり、十字引張強さの測定方法を示す概略図である。 本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法の実施例について説明する図であり、疲れ強さの測定方法を示す概略図である。
以下、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第1〜第3の実施形態について、主に図1〜図4を適宜参照しながら説明する。
上述したように、本発明者等は、特に、引張強さが750MPa以上と高強度を有する鋼板を抵抗スポット溶接した場合の、溶接継手の静的強度や疲労強度、耐遅れ破壊特性を向上させる方法について鋭意検討を重ねたところ、加圧力や通電パターンを適宜変化させて組み合わせることで溶接条件を適正化することにより、スポット溶接部の靭性を改善でき、かつ、スポット溶接部で発生する引張残留応力を低減できることを発見した。上記各知見により、引張強さの高い高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合であっても、溶接継手の静的強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性を改善することが可能となることに基づき、以下に説明する第1〜第4の実施形態に示すような、本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法を提供するものである。
以下、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の各実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
以下、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第1の実施形態について、主に図1および図2を適宜参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、図1に例示するように、2枚以上の薄鋼板同士の接合面にナゲットを形成させる高強度鋼板のスポット溶接方法であり、2枚以上の薄鋼板からなる高強度鋼板の内、少なくとも1枚の引張強さが750〜1850MPaであり、かつ、各々の板厚が0.8〜3.6mmであるとともに、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.22〜0.55質量%の範囲である高強度鋼板1(1A、1B)同士を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う方法である。具体的には、まず、重ね合わせられた高強度鋼板1A、1Bを電極2A、2Bで狭持し、下記(2)式で表される加圧力EF1で溶接通電を実施する。そして、本実施形態では、図2のグラフに示す通電パターン(加圧パターン)のように、上記条件で溶接通電を行った後、下記(3)式で表される加圧力PEF1に設定するとともに、下記(4)式で表される後通電電流PC1および下記(5)式で表される後通電時間Pt1で後通電を行い、次いで、下記(6)式で表される電極保持時間Htで電極保持を行う方法を採用している。
Ceq=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2[P]+4[S] ・・(1)
1.96×t ≦ EF1 ≦ 3.43×t ・・・(2)
1.2×EF1 ≦ PEF1 ≦ 1.5×EF1 ・・・(3)
0.60×WC ≦ PC1 ≦ 0.95×WC ・・・(4)
30 ≦ Pt1 ≦ 200 ・・・(5)
0 ≦ Ht ≦ 200 ・・・(6)
但し、上記(1)〜(6)式中において、Ceq:炭素当量(質量%)、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]:C、Si、Mn、P、Sの各々の含有量(質量%)、t:板厚(mm)、EF1:溶接通電時の電極の加圧力(kN)、PEF1:後通電時の電極加圧力(kN)、WC:溶接電流(kA)、PC1:後通電電流(kA)、Pt1:後通電時間(ms)、Ht:後通電後の電極保持時間(ms)を示す。
『抵抗スポット溶接方法』
図1は、本発明において高強度鋼板1(図1中の符号1A、1Bで表される2枚の高強度鋼板を参照)を溶接するのに用いられる、一般的な抵抗スポット溶接方法を説明するための模式図である。本発明で用いられる抵抗スポット溶接方法とは、まず、被溶接材である2枚の高強度鋼板1A、1Bを重ね合わせる。そして、これら高強度鋼板1A、1Bの重ね合わせ部分に対して両側から、すなわち、図1に示す例では上下方向から挟み込むように、銅合金からなる電極2A、2Bを押し付けつつ通電することにより、高強度鋼板1Aと高強度鋼板1Bとの間に溶融金属部を形成させる。この溶融金属部は、溶接通電が終了した後、水冷された電極2A、2Bによる抜熱や鋼板自体への熱伝導によって急速に冷却されて凝固し、高強度鋼板1A、1B間に、図示例のような断面楕円形状のナゲット(溶接金属部)3が形成される。このようなナゲット3が形成されることにより、高強度鋼板1Aと高強度鋼板1Bとが溶接される。
本発明に係る溶接方法は、上述のような抵抗スポット溶接方法による溶接において、引張強さ、板厚、炭素当量等の鋼板特性を規定したうえで、さらに、電極の加圧力、通電電流、通電時間、保持時間などを、以下に説明するような適正範囲に規定しながら、その変化のパターンを適正化することにより、溶接継手の静的強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性を改善できる方法である。
『鋼板特性』
以下に、本実施形態における高強度鋼板1の鋼板特性の限定理由について詳述する。
本実施形態において用いられる高強度鋼板1(1A、1B)は、引張強さが750〜1850MPa、板厚が0.8〜3.0mmであるとともに、上記した(1)式で表される炭素当量Ceqが質量%で0.22〜0.55%の範囲とされている。
「引張強さ」750〜1850MPa
本実施形態においては、被溶接材である母材の強度、すなわち、高強度鋼板1(1A、1B)の引張強さに関し、2枚以上の高強度鋼板1の内の少なくとも1枚が750〜1850MPaの範囲とされる。
鋼板の強度は、スポット溶接後の溶接継手の静的強度(特に剥離方向の引張強さ)や疲労強度、遅れ破壊特性などの他、溶接部における割れの発生のし易さなどに対しても大きな影響を及ぼす。本実施形態においては、まず、鋼板として、2枚以上の薄鋼板からなる高強度鋼板の内、少なくとも1枚の引張強さが750〜1850MPaの範囲とされた高強度鋼板1を用い、適正化された溶接条件で鋼板同士をスポット溶接することにより、溶接継手の静的強度や疲労強度、遅れ破壊特性が向上し、さらに、高温割れや低温割れが発生するのを防ぐことができる。
鋼板の引張強さが750MPa未満の場合には、引張試験時における溶接部への応力負荷が低く、また、溶接部で発生する引張残留応力の値も低いため、そもそも、静的強度や遅れ破壊の問題が生じないことから、本発明の適用対象外である。
また、高強度鋼板の引張強さが1850MPaを超えると、母材強度が高すぎることから、本発明の方法を用いた場合であっても、溶接部における応力負荷が高く、また、引張残留応力の低減が困難であり、溶接継手の静的強度、疲労強度、遅れ破壊特性の改善効果が得られないことから、本発明の適用範囲外である。
ここで、本発明に係るスポット溶接方法は、2枚以上の高強度鋼板1の全てが750〜1850MPaの範囲の引張強さを有する場合のみならず、少なくとも何れか1枚のみが上記範囲の引張強さを有する場合を含むものである。例えば、750〜1850MPaの引張強さを有する簿鋼板と、引張強さが750MPa未満の簿鋼板とを溶接する場合であっても、上述した溶接継手の静的強度や疲労強度、遅れ破壊特性が向上する効果に加え、高温割れや低温割れの発生を防止する効果が得られるものである。
「板厚」0.8〜3.6mm
本実施形態においては、高強度鋼板1の板厚を0.8〜3.6mmの範囲に規定する。高強度鋼板1の板厚が上記範囲であれば、本発明の適用による静的強度や疲労強度、遅れ破壊特性を向上させる十分な効果が得られる。
高強度鋼板の板厚が0.8mm未満の場合には、引張試験時における溶接部への応力負荷が低く、また、溶接部で発生する引張残留応力の値が低いため、そもそも、静的強度や遅れ破壊などの問題が生じないことから、本発明の適用対象外である。
また、高強度鋼板の板厚が3.6mmを超えると、板厚が厚すぎることから、本発明の方法を用いた場合であっても、溶接部における応力負荷が高く、また、引張残留応力の低減が困難であり、溶接継手の静的強度(特に剥離方向の引張強さ)、疲労強度、遅れ破壊特性の改善効果が得られないことから、本発明の適用範囲外である。
「鋼種」
(鋼組織)
本実施形態のスポット溶接において用いられる高強度鋼板1の鋼種については、特に限定されず、例えば、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織など)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、焼入れ型(マルテンサイト組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)など、何れの型の鋼板であっても良い。何れの鋼種からなる高強度鋼板を用いた場合であっても、鋼板の特性を失うことなく、本発明を適用することによる効果が確実に得られる。
(成分組成)
高強度鋼板1の成分組成としても、特に限定されるものではなく、この分野で一般的に用いられている炭素鋼や合金鋼などを採用することが可能である。但し、本実施形態の高強度鋼板1としては、以下に詳述するように、上記(1)式で表される炭素当量Ceqと各元素との関係を満足する組成のものを採用することが必須となる。
(炭素当量:Ceq)0.22〜0.55質量%
本実施形態においては、下記(1)式で規定される、高強度鋼板1の炭素当量Ceqを、0.22〜0.55質量%の範囲に規定する。
Ceq = [C]+[Si]/30+[Mn]/20+2[P]+4[S] ・・(1)
但し、上記(1)式において、Ceq:炭素当量(質量%)、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]:C、Si、Mn、P、Sの各々の含有量(質量%)を示す。
高強度鋼板の炭素当量Ceqが0.22質量%未満の場合には、溶接部の靭性低下や溶接部の過剰な硬さの増加が起こらないため、そもそも、静的強度や遅れ破壊特性の低下が生じないので、本発明の適用対象外である。
また、高強度鋼板の炭素当量Ceqが0.55質量%を超えると、炭素当量が高すぎることから、本発明の方法を用いた場合であっても、溶接部での靭性向上や引張残留応力の低減が困難であるため、溶接部の静的強度や疲労強度、遅れ破壊特性の改善効果が得られないことから、本発明の適用対象外である。
ところで、下記(14)式は、接合部の硬さに関わる炭素当量Ceqhを表し、また、下記(15)式は、接合部の靭性に関わる炭素当量Ceqtを表しており、この(15)式は、上記(1)式と共通となっている。
Ceqh = [C]+[Si]/40+[Cr]/20 ・・・(14)
Ceqt = [C]+[Si]/30+[Mn]/20+2[P]+4[S] ・・・(15)
但し、上記(14)、(15)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[P]および[S]は、それぞれ高強度鋼板中のC、Si、Mn、P、Sの各含有量(質量%)を示す。
一般的に、鋼板の引張強さが増加すると、上記(14)、(15)式で表される炭素当量(CeqhまたはCeqt)の数値が増加し、その結果、接合部の硬さが増加して靱性が低下する。このように、接合部の硬さが増加して靱性が低下すると、接合部の剥離方向の強度が低下し、また、割れが発生し易くなる。特に、上記(15)式で表される炭素当量Ceqtの数値が大き過ぎる場合、具体的には炭素当量Ceqtが0.22以上になると、上述のような接合部の強度低下や割れの発生が起こるようになる。
「めっき」
本実施形態において用いられる高強度鋼板1は、表面処理を施さずに、冷間圧延・熱間圧延後の状態で使用することができるが、必要に応じてめっき処理を施しても良い。また、この際のめっき層の種類についても、例えば、Zn系、Zn−Fe系、Zn−Ni系、Zn−Al系、Zn−Mg系、Pb−Sn系、Sn−Zn系、Al-Si系など、何れのめっき層であっても良い。また、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜(例えば、潤滑皮膜など)が施されていても良い。
めっきは、片面だけでも、あるいは両面に施してもよい。これらのめっき層の目付量についても、特に限定されないが、片面の目付量で100(g/m)以下とすることが好ましい。めっきの目付量が片面あたりで100g/mを越えると、めっき層がスポット溶接の際の障害となる場合がある。
高強度鋼板1の表面に上述のようなめっき処理を施すことにより、鋼板の耐食性を確保することが可能となる。
また、本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、同種同厚の鋼板の組合せに限定されるものではなく、上記各規定を満たしている鋼板であれば、同種異厚、異種同厚、異種異厚の組合せを採用しても良い。
『溶接条件』
以下に、本実施形態で規定する抵抗スポット溶接条件について、その限定理由を詳述する。
「溶接通電時の加圧力:EF1」
本実施形態においては、溶接通電時における電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bに対する加圧力EF1(kN)を、下記(2)式で表される範囲、すなわち、板厚t(mm)に1.96〜3.43を乗じた数値の範囲とする。
1.96×t ≦ EF1 ≦ 3.43×t ・・・(2)
但し、上記(2)式中において、t:板厚(mm)、EF1:溶接通電時の電極の加圧力(kN)を示す。
なお、上記において、2枚以上の各鋼板が同厚でない場合には、全ての板厚を足し合わせ、2枚板組みと見なして2で割った値(相加平均)をtとする。
溶接通電時の加圧力EF1は、接合部の残留応力に影響を与え、また、接合部の強度、特に剥離方向の強度や、接合部における割れの発生にも大きな影響を及ぼす。本実施形態においては、被溶接物である高強度鋼板1の板厚t(mm)に基づき、溶接通電時の加圧力EF1を上記範囲に設定することにより、鋼板間で十分な接触径が得られるため、十分な径のナゲットを生成させて接合部の強度を確保することができる。さらに、割れなどの溶接欠陥が生じるのを抑制することもできる。
溶接通電時の加圧力EF1が上記範囲の下限未満だと、十分なナゲット径が得られず、接合部で十分な強度が得られなくなるおそれがある。また、割れなどの溶接欠陥が生じることもある。一方、溶接通電時の加圧力EF1が上記範囲の上限を超えると、接合部に凹みが生じて強度が低下するおそれがあるとともに、過度な加圧によって接合部に割れが生じることがある。
「溶接電流:WC」
本実施形態におけるスポット溶接電流WC(kA)については、鋼板同士を溶接するスポット溶接法において従来から採用されている電流値と同程度とすることが可能である。
「溶接通電パターン」
本実施形態においては、高強度鋼板1A、1Bを重ね合わせて溶接通電を行い、抵抗スポット溶接する際の基本通電パターンとしては、従来からこの分野において採用されている通電パターンを何ら制限なく採用することができる。すなわち、本実施形態の溶接通電においては、大電流・短時間通電や、小電流・長時間通電など、様々な通電パターンも想定されるが、溶接通電時の加圧力EF1(kN)を上記範囲としたうえで、その溶接電流WC(kA)および通電時間については、適宜最適条件に調整することが好ましい。
本実施形態では、溶接通電を行った後、後述する後通電および電極保持の条件を最適な範囲に限定することで、溶接部の引張強さ、静的強度、疲労強度ならびに耐遅れ破壊特性などが向上した溶接継手が得られる。
「後通電時の電極加圧力:PEF1」
本実施形態においては、抵抗スポット溶接通電を行った後、下記(3)式で表される範囲、すなわち、上述した溶接通電時の加圧力EF1(kN)に1.2〜1.5を乗じた加圧力PEF1(kN)で、後通電を行う。
1.2×EF1 ≦ PEF1 ≦ 1.5×EF1 ・・・(3)
但し、上記(3)式中において、EF1:溶接通電時の電極の加圧力(kN)、PEF1:後通電時の電極加圧力(kN)を示す。
一般に、引張強さが750MPa以上で厚手の高強度鋼板をスポット溶接した場合、母材が変形し難いため、通電終了後の収縮によって溶接部で高い引張残留応力が発生するため、溶接後しばらく経ってから遅れ破壊が生じることがある。本実施形態では、上記加圧力EF1で溶接通電時を行った後、この加圧力EF1よりも高い加圧力PEF1で後加熱を行うことで、溶接部における引張残留応力を低減させる条件を採用しているので、遅れ破壊特性を向上させることが可能となる。さらに、本実施形態では、上記条件とすることで遅れ破壊が生じるのを抑制することにより、疲労強度も向上するという効果が得られる。
後通電時の加圧力PEF1が上記下限未満だと、溶接部において引張残留応力を低減させる効果が得られ難いため、上記効果が得られ難くなる。一方、加圧力PEF1が上記上限を超えると、溶接部の窪みが大きくなって外観を損ね、また、溶接部の引張強さが低下するという問題が生じる。
「後通電電流:PC1」
本実施形態においては、上記加圧力PEF1で後通電を行う際の後通電電流PC1(kA)を、下記(4)式で表される範囲、すなわち、上記溶接電流WCに0.60〜0.95を乗じた数値の範囲に規定する。
0.60×WC ≦ PC1 ≦ 0.95×WC ・・・(4)
但し、上記(4)式中において、WC:溶接電流(kA)、PC1:後通電電流(kA)を示す。
後通電を行う際の後通電電流PC1(kA)は、ナゲットおよび熱影響部の組織や偏析状態に大きな影響を及ぼす。後通電電流PC1が上記範囲であれば、溶接部における破断形態の改善と、それに伴って剥離方向の引張強さが向上する十分な効果が得られる。
後通電電流PC1が上記範囲の下限未満だと、破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果が得られない。また、後通電電流PC1が上記範囲の上限を超えると、実質的に冷却が行われないことから上記効果が得られない。すなわち、破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果を顕著に発現させるためには、後通電電流PC1を「0.70×WC」(kA)以上「0.85×WC」(kA)以下とすることが好ましい。
「後通電時間:Pt1」30〜200(ms)
本実施形態においては、後通電を行う際の後通電時間(ms)を、下記(5)式で表される範囲、すなわち、30〜200(ms)の範囲に規定する。
30 ≦ Pt1 ≦ 200 ・・・(5)
但し、上記(5)式中において、Pt1:後通電時間(ms)を示す。
後通電時間Pt1は、上述の後通電電流PC1と同様、ナゲットおよび熱影響部の組織や偏析状態に大きな影響を及ぼす。後通電時間Pt1が30(ms)未満だと、破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果が得られない。また、後通電時間Pt1が200(ms)を超えると、上記効果が小さくなり、また、生産性が低下してしまう。したがって、破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果を顕著に発現させるためには、後通電時間Pt1を30(ms)以上200(ms)以下の範囲とすることが好ましい。
「保持時間:Ht」0〜200(ms)
本実施形態においては、上記各条件による溶接通電および後通電の後、さらに、電極2A、2Bによって、重ね合わされた高強度鋼板1A、1Bを加圧する電極保持時間Ht(ms)を設ける。具体的には、保持時間Htは、下記(6)式で表される範囲、すなわち、0〜200(ms)の範囲に規定する。
0 ≦ Ht ≦ 200 ・・・(6)
但し、上記(6)式中において、Ht:後通電後の電極保持時間(ms)を示す。
保持時間Htは、ナゲットおよび熱影響部の組織や、ナゲット内の欠陥・割れの発生に大きな影響を及ぼす。本実施形態では、上記範囲の電極保持時間Htで高強度鋼板1A、1Bを加圧することで、破断形態を改善して溶接欠陥が生じるのを抑制できるとともに、溶接部の剥離方向における引張強さを向上させることが可能となる。保持時間Htが200msを超えると、破断形態の改善と、それに伴う引張強さ向上の効果が小さくなり、また、工程時間が長くなるために生産性が低下する。これは、電極2A、2Bの高強度鋼板1A、1Bからの離間に伴う、空冷の開始までに要する時間が長くなるからである。したがって、後通電が完了した後の保持時間Htは200ms以下とする。
一方、保持時間Htは、空冷を早期に開始して上記の効果を安定して得るために短い方が望ましく、特に、0ms以上100ms以下であることが好ましい。本発明の通電パターンでは、後加熱通電中においてもナゲットの温度が低下するため、保持時間Htを短くした場合でも、収縮欠陥や割れが生じ難い。したがって、例えば、溶接装置の調節などにより、電極2A、2Bを高強度鋼板1A、1Bから即時に離間させることが可能であれば、保持時間を0msとしても良い。
なお、上述した保持時間Htは実際の保持時間を示しているが、溶接装置にもよるものの、現存の溶接装置では溶接電極の動作に遅れが生じることから、実際の保持時間は、装置側で設定した保持時間よりも長くなるのが一般的である。したがって、溶接装置において保持時間Htを設定する際には、このことを考慮しておく必要がある。
『溶接後の熱処理』
本実施形態では、上記条件の電極保持の後、さらに、下記(12)で表される熱処理温度ATおよび下記(13)式で表される熱処理時間Atで溶接後の熱処理を行っても良い。
120 ≦ AT ≦ 220 ・・・(12)
100 ≦ At ≦ 6000 ・・・(13)
但し、上記(12)、(13)式中において、AT:溶接後の熱処理温度(℃)、At:溶接後の熱処理時間(s)を示す。
一般に、鋼板の加圧保持が解放された後のナゲットのミクロ組織は、主として炭化物を含まないマルテンサイトからなるため、ナゲット内の硬さの値は高いものの靭性は低い。そこで、本実施形態で説明する例においては、適切な溶接後熱処理を行うことにより炭化物を析出させて、ナゲット内の靭性を改善することがより好ましい。
「溶接後の熱処理温度:AT」120〜220(℃)
本実施形態において溶接後の熱処理を実施する場合には、その熱処理温度ATを、上記(12)式で表されるように120〜220(℃)の範囲とする。溶接後の熱処理温度ATは、マルテンサイトの分解によるナゲットおよび熱影響部の靭性改善に大きく寄与する。溶接後の熱処理温度ATが120℃未満であると、マルテンサイトの分解が不十分となり、破断形態の改善、および、それに伴う継手強度の向上ならびに継手強度のばらつき低減の効果が得られ難い。一方、熱処理温度ATが220℃を超えると、上記効果が得られ難く、また、ナゲットの硬さが過剰に低下し、ナゲット内において剥離破断が起こりやすくなる。したがって、溶接後の熱処理温度ATは、120〜220(℃)の範囲とすることが好ましく、また、上記効果が顕著に発現する観点からは、熱処理温度ATは140〜200(℃)の範囲とすることがより好ましい。
一般的に、高強度鋼板の母材に400℃以上の高温で熱処理を施した場合、母材組織に影響がおよび、母材特性が低下するなどの問題が生じることがある。このため、本実施形態において溶接後の熱処理を行う場合には、熱処理温度ATを120〜220(℃)の範囲とすることにより、高強度鋼板の母材組織に熱処理による悪影響を及ぼすことが無く、また、機械的特性を劣化させること無く、上述したような、破断形態の改善、および、それに伴う継手強度の向上の効果が得られる。
「溶接後の熱処理時間:At」100〜6000(s)
本実施形態において溶接後の熱処理を実施する場合、熱処理温度ATを上記範囲とするとともに、その際の熱処理時間Atを100〜6000(s:秒)の範囲とする。溶接後の熱処理時間Atが100秒未満であると、マルテンサイトの分解が不十分となり、破断形態の改善、および、それに伴う継手強度の向上、ならびに、継手強度のばらつき低減の効果が得られ難い。一方、熱処理時間Atが6000秒を超えると、上記した効果が得られ難く、また、工程時間が長くなって生産性が低下する。したがって、溶接後の熱処理時間Atを100〜6000秒の範囲とすることにより、ナゲットの硬さをほとんど低下させることなく靱性を確保することが可能となる。また、溶接後の熱処理時間Atは、3600秒以下(1時間以下)とすることがより好ましく、600〜2400秒の範囲とすることが最も好ましい。
本実施形態においては、溶接後に、さらに、上記条件の熱処理を行うことにより、ナゲットおよび熱影響部の靭性を改善でき、破断形態の改善、および、それに伴う継手強度の向上、ならびに、継手強度のばらつき低減の効果が顕著に得られる。
「熱処理の手段」
本実施形態における溶接後の熱処理を行う手段としては、特に限定されず、例えば、炉中加熱、バーナー加熱、高周波加熱などを用いることができる。また、溶接後に塗装焼付け(ベークハード)処理などを行っても良い。
「溶接後の熱処理における他の条件」
通常、炭素当量Ceq、特に、炭素量が高い高強度鋼板をスポット溶接すると、熱処理前の状態では、ナゲットおよび熱影響部のビッカース硬さHvが400以上となる場合が多い。このため、本実施形態においては、溶接後の熱処理を行った後の、ナゲットおよび熱影響部におけるビッカース硬さの低下量ΔHvが50以下に収まるように、溶接後熱処理の条件を制御することがより好ましい。
なお、炭素当量Ceqが高い高強度鋼板では、スポット溶接後のナゲットおよび熱影響部のビッカース硬さHvが500以上となる場合もある。このような場合には、ビッカース硬さの低下量ΔHvが50〜150程度となるように、溶接後の熱処理条件を制御することが好ましい。上述のような熱処理条件の制御により、破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果がより顕著に得られる。
また、本実施形態において溶接後の熱処理を行う場合には、熱処理によって、ナゲットおよび熱影響部の組織が、フレッシュマルテンサイトを含むものからフレッシュマルテンサイトを含まないものへと変化するように、熱処理条件を適宜制御することが好ましい。すなわち、熱処理前のナゲットおよび熱影響部の組織にはフレッシュマルテンサイトが含まれており、さらに、テンパードマルテンサイトおよび/または下部ベイナイトが含まれている。本実施形態では、このようなナゲットおよび熱影響部の組織が、フレッシュマルテンサイトを含まずに、テンパードマルテンサイトおよび/または下部ベイナイトからなるように、熱処理条件を制御することがより好ましい。ナゲットおよび熱影響部の組織を上記組織とすることにより、上述した破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果がより顕著に得られる。
ここで、ナゲットおよび熱影響部の組織にテンパードマルテンサイトが生成した場合には、デンドライト組織のアーム間隔(デンドライト間距離)が短くなり、また、少量の炭化物を析出するという作用がある。本実施形態で説明する溶接後の熱処理では、上記条件で熱処理を行うことから、炭素含有量の高い高強度鋼板をスポット溶接した場合であっても、溶接時の強度ばらつきが生じるのが抑制されるという効果が得られる。
なお、高強度鋼板の引張強さが700MPa未満であっても、形成されるナゲットのミクロ組織は、主として、炭化物を含まないマルテンサイトとなるため、溶接後の熱処理によって炭化物を析出させ、ナゲットの靭性を向上させることが可能となる。
また、本熱処理によって、ナゲットと熱影響部の硬さが低下するだけでなく、溶接部に浸入した水素が熱処理中に拡散して外部に逃げてゆくので、残留応力と水素量の低下により、遅れ破壊の防止に対しても有利になる。
以上説明したような本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法では、溶接工程における実用の溶接条件の範囲内において、加圧力や通電パターンを変化させることで溶接条件を適正化している。即ち、図2のグラフに示すように、まず、所定の加圧力EF1および溶接電流WCで溶接通電を行った後、この加圧力EF1の1.2〜1.5倍と高めの加圧力PEF1、かつ、溶接電流WCの0.60〜0.95倍と低めの後通電電流PC1とし、さらに、後通電時間Pt1を30〜200(ms)の範囲として後通電を行う。このような適正条件で後通電を行うことにより、スポット溶接部で発生する引張残留応力を低減させ、遅れ破壊特性を向上させることが可能となる。さらに、本実施形態では、上記条件の後通電の後に、0〜200(ms)の範囲の電極保持時間Htで保持することにより、破断形態を改善して溶接欠陥が生じるのを抑制できるとともに、溶接部の靱性を高めることで、溶接部の引張強さ、すなわち、剥離方向の引張強さを向上させることが可能となる。本実施形態の方法によれば、上述したようなスポット溶接条件を採用することで、引張強さの高い高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合であっても、静的強度や疲労強度、耐遅れ破壊特性を改善することが可能となる。
[第2の実施形態]
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第2の実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、第1の実施形態と同様、図1に示すように、引張強さ、板厚、炭素当量Ceqが上記範囲とされた高強度鋼板1(1A、1B)同士を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う方法である。そして、本実施形態では、図3に示す通電パターン(加圧パターン)のように、第1の実施形態で各々条件が規定される溶接通電と後通電との間に、さらに、下記(7)式で表される冷却時間Ctを設けた方法を採用している。
16 ≦ Ct ≦ 300 ・・・(7)
但し、上記(7)式中において、Ct:溶接通電後の冷却時間(ms)を示す。
本実施形態では、溶接通電と後通電との間に、さらに、上記範囲の冷却時間Ctを設けている点で、上記第1の実施形態とは異なる。また、本実施形態では、溶接通電と後通電との間に冷却時間Ctを設けた点を除き、第1の実施形態と同様の手順及び条件で、重ね合わされた高強度鋼板1A、1Bを電極2A、2Bで挟み込んで加圧して溶接通電を行い、同様に、後通電及び電極保持を行う。
「溶接通電後の冷却時間:Ct」16〜300(ms)
本実施形態では、溶接通電後の冷却時間Ctを、16〜300(ms)の範囲に規定する。
溶接通電の直後に、通電を停止することで行われる冷却の時間は、ナゲットのデンドライト組織(デンドライト間距離など)や偏析状態に大きな影響を及ぼす。溶接通電後の冷却時間Ctが上記範囲であれば、破断形態が改善され、剥離方向の引張強さが向上する効果がより顕著に得られる。
冷却時間Ctが16(ms)未満であると、破断形態の改善と、それに伴う引張強さを顕著に向上させる効果が得られ難い。一方、冷却時間Ctが300(ms)を超えると、温度が低下しすぎて上記効果が小さくなり、また、工程時間が長すぎて生産性が低下してしまう。したがって、本実施形態においては、冷却時間Ctを16〜300(ms)の範囲に規定する。なお、生産性の低下をできるだけ避けるために、冷却時間Ctは、16〜300(ms)の範囲内で、極力短い時間とすることが望ましい。
「その他の溶接条件」
本実施形態では、上記規定以外の条件については、上述した第1の実施形態と同様とすることができる。例えば、溶接通電時の溶接電流WCの他、後通電時の加圧力や後通電電流、後通電時間、さらに、電極保持などについては、上記第1の実施形態と同様の条件に設定することができる。
また、冷却時間Ctの間、電極2A、2Bは、溶接通電時の加圧力EF1で高強度鋼板1A、1Bを加圧し続け、その後に行われる後通電から、加圧力PEF1で加圧するパターンとすることができる。
さらに、溶接後の熱処理についても、上記第1の実施形態と同様の手順及び条件で行うことができる。
[第3の実施形態]
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法の第3の実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態では、上記第1、2の実施形態と共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、第1、2の実施形態と同様、図1に示すように、引張強さ、板厚、炭素当量Ceqが上記範囲とされた高強度鋼板1(1A、1B)同士を重ね合わせ、抵抗スポット溶接を行う方法である。そして、本実施形態では、図4のグラフに示す通電パターン(加圧パターン)のように、上記第1の実施形態で説明した加圧力EF1で溶接通電を実施した後、加圧力PEF1に設定する(上記(2)、(3)式・図4参照)。そして、下記(8)式で表される後通電電流PC2および下記(9)式で表される後通電時間Pt2で第1の後通電を行った後、さらに、下記(10)式で表される後通電電流PC3および下記(11)式で表される後通電時間Pt3で第2の後通電を行うことで2段後通電を実施する。そして、本実施形態では、上記第1の実施形態で説明した電極保持時間Ht(上記(6)式)で電極保持を行う。
0.80×WC ≦ PC2 ≦ 0.95×WC ・・・(8)
30 ≦ Pt2 ≦ 100 ・・・(9)
0.60×WC ≦ PC3 ≦ 0.75×WC ・・・(10)
30 ≦ Pt3 ≦ 100 ・・・(11)
但し、上記(8)〜(11)式中において、WC:溶接電流(kA)、PC2:第1の後通電電流(kA)、Pt2:第1の後通電時間(ms)、PC3:第2の後通電電流(kA)、Pt3:第2の後通電時間(ms)を示す。
本実施形態の高強度鋼板のスポット溶接方法は、溶接通電の後に行う後通電に関し、上述のような第1の後通電と、次いで、この第1の後通電よりも低い後通電電流PC3とされた第2の後通電とからなる2段後通電を実施する点で、上記第1、2の実施形態で説明した方法とは異なる。
『第1の後通電』
「後通電電流:PC2」
本実施形態では、溶接通電の後、最初に後通電処理として行う第1の後通電に関し、その後通電電流を上記(8)式で表される範囲、すなわち、溶接通電時の溶接電流WC(kA)の0.80〜0.95倍に規定する。
後通電電流は、ナゲットおよび熱影響部の組織や偏析状態に大きな影響を及ぼす。第1の後通電における後通電電流PC2が上記範囲であれば、剥離方向の引張強さが向上する効果がより顕著に得られる。
第1の後通電における後通電電流PC2が上記範囲の下限未満だと、破断形態の改善と、それに伴う引張強さ向上の効果が得られ難い。一方、後通電電流PC2が上記範囲の上限を超えると、実質的に冷却が行われない状態となり、上記効果が得られなくなる。
「後通電時間:Pt2」30〜100(ms)
本実施形態では、第1の後通電における後通電時間Pt2を、上記(9)式で表されるように、30〜100(ms)の範囲に規定する。
後通電時間は、上述の後通電電流と同様、ナゲットおよび熱影響部の組織や偏析状態に大きな影響を及ぼす。第1の後通電における後通電時間Pt2が上記範囲であれば、剥離方向の引張強さが向上する効果がより顕著に得られる。
第1の後通電における後通電時間Pt2が30ms未満だと、破断形態の改善とそれに伴う引張強さ向上の効果が得られ難い。一方、後通電時間Pt2が100msを超えると、上記効果が小さくなり、また、工程時間が長くなって生産性が低下してしまう。
『第2の後通電』
「後通電電流:PC3」
本実施形態では、上記条件の第1の後通電に引き続いて行われる第2の後通電に関し、その後通電電流PC3を、上記(10)で表される範囲、すなわち、溶接通電時の溶接電流WC(kA)の0.60〜0.75倍に規定し、上記第1の後通電における後通電電流PC2よりも低めとする。
上記第1の後通電の場合と同様、第2の後通電における後通電電流PC3も、ナゲットおよび熱影響部の組織や偏析状態に大きな影響を及ぼす。後通電電流PC3が上記範囲であれば、剥離方向の引張強さが向上する効果がより顕著に得られる。
後通電電流PC3が上記範囲の下限未満だと、破断形態の改善と、それに伴う引張強さ向上の効果が得られ難い。一方、後通電電流PC3が上記範囲の上限を超えると、実質的に冷却が行われない状態となり、上記効果が得られなくなる。
「後通電時間:Pt3」30〜100(ms)
本実施形態では、第2の後通電における後通電時間Pt3を、上記(11)式で表されるように、30〜100(ms)の範囲、すなわち、上記第1の後通電における後通電時間Pt2と同じ時間に規定する。
第2の後通電における後通電時間Pt3も、上述の後通電電流PC3と同様、ナゲットおよび熱影響部の組織や偏析状態に大きな影響を及ぼす。後通電時間Pt3が上記範囲であれば、剥離方向の引張強さが向上する効果がより顕著に得られる。
後通電時間Pt3が30ms未満だと、破断形態の改善と、それに伴う引張強さ向上の効果が得られ難い。一方、後通電時間Pt3が200msを超えると、上記効果が小さくなり、また、工程時間が長くなって生産性が低下してしまう。
本実施形態では、上述のように、溶接通電後の後通電に関し、第1の後通電と、この第1の後通電よりも低い後通電電流PC3とされた第2の後通電とからなる2段後通電を実施する方法を採用している。これにより、破断形態の改善と、それに伴う引張強さ向上の効果が顕著に得られる。
なお、本実施形態の2段後通電においては、電極2A、2Bによる加圧力に関しては、上記(3)式で表される加圧力PEF1で一定とする。
『その他の溶接条件』
本実施形態では、上記規定以外の条件については、上述した第1、2の実施形態と同様とすることができる。例えば、溶接通電時の溶接電流WCの他、後通電の後の電極保持などについては、上記第1の実施形態と同様の条件に設定することができる。また、溶接通電と後通電との間に冷却時間Ctを設ける場合にも、上記第2の実施形態と同様の条件とすることができる。
さらに、溶接後の熱処理についても、上記第1の実施形態と同様の手順及び条件で行うことができる。
以上説明したような、本発明に係る高強度鋼板のスポット溶接方法によれば、溶接工程における実用の溶接条件の範囲内において、加圧力や通電パターンを変化させることで溶接条件を適正化することにより、スポット溶接部の靭性を改善するとともに、このスポット溶接部で発生する引張残留応力を低減させることができる。これにより、引張強さの高い高強度鋼板1(1A、1B)を抵抗スポット溶接した場合であっても、静的強度や疲労強度、耐遅れ破壊特性を改善することが可能となる。したがって、例えば、自動車用部品の製造や車体の組立てなどで用いる高強度鋼板のスポット溶接に本発明を適用することにより、良好な溶接作業性を確保しつつ溶接部の静的強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性などを向上させることができる。したがって、自動車分野などにおいて高強度鋼板を適用することによる安全性向上や軽量化による低燃料費、CO排出量削減のメリットなどを十分に享受でき、その社会的な貢献は多大である。
以下、本発明に高強度鋼板のスポット溶接方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[実施例1]
『試験片の作成』
下記表1に示すような、板厚:1.0〜4.0mm、引張強さ:793〜1960MPaの2相組織型鋼板(780D、980D、1180D)、加工誘起変態型鋼板(980T)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP、1960HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)を用意した。なお、各鋼板の頭に示された記号は、Cが冷延鋼板、Hが熱延鋼板、Gが合金化亜鉛めっき鋼板を示し、また、それぞれの数字は引張強さのレベルを示す。
次に、上記各鋼板から50×50mmの試験片を切り出した。また、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、50×150mmの十字引張試験片を切り出した。さらに、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、40×150mmの引張せん断疲労試験片を切り出した。
次いで、上記試験片を、下記表1に示すように、同鋼種または異鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表1に示す溶接条件(本発明の請求項1に記載の溶接条件、および、その範囲外の溶接条件)で抵抗スポット溶接方法を行うことにより、3種類の溶接試験片(溶接継手)、すなわち、窪み・割れ観察用試験片、十字引張用試験片、疲労試験片を作製した。なお、それぞれの溶接試験片のナゲット径は、5√t(ただし、tは1枚の鋼板の板厚(mm))に設定した。
『評価項目』
上記手順で得られた溶接試験片について、以下に説明するような各評価試験を実施し、結果を下記表1に示した。
「接合部の断面マクロ組織観察」
上記手順で得られた窪み・割れ観察用溶接試験片について、外観観察を実施し、溶接部の窪み状態と割れの有無を観察した。また、溶接部をマイクロカッターで切断して研磨し、ピクリン酸でエッチングした後、光学顕微鏡を用いて断面のマクロ組織観察を行い、溶接部(ナゲット部および熱影響部)における割れ(高温割れ)の有無を観察した。
「十字引張試験」
上記手順で得られた溶接試験片について、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、図5に示すように、剥離方向(図中の符号6)に負荷を付与して十字引張試験を実施した。なお、十字引張試験は、同じ試験片に関して3体で実施し、その平均値を十字引張強さ(CTS)とした。
「疲労試験」
上記手順で得られた各試験片について、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、図6に示すように、せん断方向(図中の符号7)に負荷して引張せん断疲労試験を実施した。なお、疲労試験では、繰返し数10回で破断が起こらない荷重を疲労強度とした。
「耐低温割れ性」
上記手順で得られた、別の窪み・割れ観察用溶接試験片について、耐低温割れ性を調査するため、溶接継手試験片を0.2Nの硫酸中に24時間浸漬し、取り出した後に水洗して断面組織を観察し、割れが発生しているかどうかを調べた。
『評価結果』
表1は、本実施例において用いた鋼板、スポット溶接条件ならびに各種評価結果の一覧を示すものである。ここで、表1には、溶接部の窪み、溶接直後の割れ有無、十字引張強さ向上率、疲労強度向上率、低温割れ(遅れ破壊)有無、総合評価結果を示している。なお、十字引張強さと疲労強度の向上率は、本発明の請求項1で規定する後通電を実施しない場合との比較から算出した値である。
Figure 2015093282
表1の各種評価結果に示すように、本発明の請求項1で規定する鋼板特性を備える高強度鋼板を、同様に規定する溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.A−1〜A−20の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接部の窪みが少なく、溶接直後の割れも認められず、後通電を行わない場合(A−21〜A−31)に比べて、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の向上が認められ、低温割れが認められず耐遅れ破壊特性に優れていることが確認できた。
一方、表1に示すように、本発明の請求項1で規定する後通電を行なわなかったり、あるいは、本発明の範囲外の鋼板を使用したり、後通電を本発明の請求項1で規定する条件としなかった、条件No.A−21〜A−41の比較例においては、溶接部の窪みが大きかったり、溶接直後に割れが生じたり、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の向上が認められなかったり、あるいは、低温割れが認められて耐遅れ破壊特性が劣ることが明らかとなった。
[実施例2]
下記表2に示すような、板厚:1.0〜3.2mm、引張強さ:793〜1785MPaの2相組織型鋼板(780D、980D、1180D)、加工誘起変態型鋼板(980T)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)を用意した。なお、各鋼板の頭に示された記号は、Cが冷延鋼板、Hが熱延鋼板、Gが合金化亜鉛めっき鋼板を示し、また、それぞれの数字は引張強さのレベルを示す。
次に、上記各鋼板から50×50mmの試験片を切り出した。また、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、50×150mmの十字引張試験片を切り出した。さらに、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、40×150mmの引張せん断疲労試験片を切り出した。
次いで、上記試験片を、下記表2に示すように、同鋼種または異鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表2に示す溶接条件(本発明の請求項2に記載の溶接条件、および、その範囲外の溶接条件)で抵抗スポット溶接方法を行うことにより、3種類の溶接試験片(溶接継手)、すなわち、窪み・割れ観察用試験片、十字引張用試験片、疲労試験片を作製した。なお、それぞれの溶接試験片のナゲット径は、5√t(ただし、tは1枚の鋼板の板厚(mm))に設定した。
そして、上記手順で得られた十字引張試験片について、実施例1と同様の方法で、接合部の断面マクロ組織観察、十字引張試験、疲労試験、耐低温割れ性の各評価を行った。
下記表2に、実施例2における各試験片の作製条件並びに観察結果の一覧を示す。
Figure 2015093282
表2中において、十字引張強さと疲労強度の向上率は、本発明の請求項1、2で規定する後通電を実施しない場合との比較から算出した値である。
表2の各種評価結果に示すように、本発明の請求項2で規定する鋼板特性を備える高強度鋼板を、同様に規定する溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.B−1〜B−20の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接部の窪みが少なく、溶接直後の割れも認められず、冷却時間を設けない場合(実施例1)に比べて、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の顕著な向上が認められ、低温割れが認められず耐遅れ破壊特性に優れていることが確認できた。
一方、表2に示すように、本発明の請求項2で規定する冷却時間を設けなかった、条件No.B−21〜A−31の実験例においては、上記のような作用が顕著になる効果が見られず、工程時間が長くなるのみの結果となった。
[実施例3]
下記表3に示すような、板厚:1.0〜4.0mm、引張強さ:793〜1960MPaの2相組織型鋼板(780D、980D、1180D)、加工誘起変態型鋼板(980T)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP、1960HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)を用意した。なお、各鋼板の頭に示された記号は、Cが冷延鋼板、Hが熱延鋼板、Gが合金化亜鉛めっき鋼板を示し、また、それぞれの数字は引張強さのレベルを示す。
次に、上記各鋼板から50×50mmの試験片を切り出した。また、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、50×150mmの十字引張試験片を切り出した。さらに、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、40×150mmの引張せん断疲労試験片を切り出した。
次いで、上記試験片を、下記表3に示すように、同鋼種または異鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表3に示す溶接条件(本発明の請求項3に記載の溶接条件、および、その範囲外の溶接条件)で抵抗スポット溶接方法を行うことにより、3種類の溶接試験片(溶接継手)、すなわち、窪み・割れ観察用試験片、十字引張用試験片、疲労試験片を作製した。なお、それぞれの溶接試験片のナゲット径は、5√t(ただし、tは1枚の鋼板の板厚(mm))に設定した。
そして、上記手順で得られた十字引張試験片について、実施例1などと同様の方法で、接合部の断面マクロ組織観察、十字引張試験、疲労試験、耐低温割れ性の各評価を行った。
下記表3に、実施例3における各試験片の作製条件並びに観察結果の一覧を示す。
Figure 2015093282
表3中において、十字引張強さと疲労強度の向上率は、本発明の請求項3などで規定する後通電を実施しない場合との比較から算出した値である。
表3の各種評価結果に示すように、本発明の請求項3で規定する鋼板特性を備える高強度鋼板を、同様に規定する溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.C−1〜C−24の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接部の窪みが少なく、溶接直後の割れも認められず、後通電を2段通電としない場合(実施例1、2)に比べて、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の顕著な向上が認められ、低温割れが認められず耐遅れ破壊特性に優れていることが確認できた。
一方、表3に示すように、2段通電による後通電を、本発明の請求項3で規定する条件としなかった、条件No.C−25〜C−36の比較例においては、後通電を行わない場合(実施例1の条件No.A−21〜A−31)に較べれば、後通電を実施することによる本発明の効果が得られているものの、条件No.C−1〜C−24のような顕著な効果は得られなかった。
[実施例4]
下記表4に示すような、板厚:1.0〜3.2mm、引張強さ:793〜1785MPaの2相組織型鋼板(780D、980D、1180D)、加工誘起変態型鋼板(980T)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)を用意した。なお、各鋼板の頭に示された記号は、Cが冷延鋼板、Hが熱延鋼板、Gが合金化亜鉛めっき鋼板を示し、また、それぞれの数字は引張強さのレベルを示す。
次に、上記各鋼板から50×50mmの試験片を切り出した。また、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、50×150mmの十字引張試験片を切り出した。さらに、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、40×150mmの引張せん断疲労試験片を切り出した。
次いで、上記試験片を、下記表4に示すように、同鋼種または異鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表4に示す溶接条件(本発明の請求項4に記載の溶接条件、および、その範囲外の溶接条件)で抵抗スポット溶接方法を行うことにより、3種類の溶接試験片(溶接継手)、すなわち、窪み・割れ観察用試験片、十字引張用試験片、疲労試験片を作製した。なお、それぞれの溶接試験片のナゲット径は、5√t(ただし、tは1枚の鋼板の板厚(mm))に設定した。
そして、上記手順で得られた十字引張試験片について、実施例1などと同様の方法で、接合部の断面マクロ組織観察、十字引張試験、疲労試験、耐低温割れ性の各評価を行った。
下記表4に、実施例4における各試験片の作製条件並びに観察結果の一覧を示す。
Figure 2015093282
表4中において、十字引張強さと疲労強度の向上率は、本発明の請求項3などで規定する後通電を実施しない場合との比較から算出した値である。
表4の各種評価結果に示すように、本発明の請求項4で規定する鋼板特性を備える高強度鋼板を、同様に規定する溶接条件で抵抗スポット溶接を行った、条件No.D−1〜D−24の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接部の窪みが少なく、溶接直後の割れも認められず、冷却時間を設けない場合(実施例3)に比べて、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の顕著な向上が認められ、低温割れが認められず耐遅れ破壊特性に優れていることが確認できた。
一方、表4に示すように、冷却時間を本発明の請求項4で規定する範囲外の条件として、2段通電による後通電を実施した、条件No.D−25〜D−35の実験例においては、後通電を行わない場合(実施例1の条件No.A−21〜A−31)に較べれば、後通電を実施することによる本発明の効果が得られているものの、条件No.D−1〜D−24のような顕著な効果は得られなかった。
[実施例5]
下記表5、6に示すような、板厚:1.0〜3.2mm、引張強さ:793〜1785MPaの2相組織型鋼板(780D、980D、1180D)、加工誘起変態型鋼板(980T)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)を用意した。なお、各鋼板の頭に示された記号は、Cが冷延鋼板、Hが熱延鋼板、Gが合金化亜鉛めっき鋼板を示し、また、それぞれの数字は引張強さのレベルを示す。
次に、上記各鋼板から50×50mmの試験片を切り出した。また、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、50×150mmの十字引張試験片を切り出した。さらに、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、40×150mmの引張せん断疲労試験片を切り出した。
次いで、上記試験片を、下記表5、6に示すように、同鋼種または異鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表5、6に示す溶接条件(本発明の請求項5に記載の溶接条件(1段通電)、および、その範囲外の溶接条件)で抵抗スポット溶接方法を行うことにより、3種類の溶接試験片(溶接継手)、すなわち、窪み・割れ観察用試験片、十字引張用試験片、疲労試験片を作製した。なお、それぞれの溶接試験片のナゲット径は、5√t(ただし、tは1枚の鋼板の板厚(mm))に設定した。
そして、上記手順で得られた十字引張試験片について、実施例1などと同様の方法で、接合部の断面マクロ組織観察、十字引張試験、疲労試験、耐低温割れ性の各評価を行った。
下記表5、6に、実施例5における各試験片の作製条件並びに観察結果の一覧を示す。
Figure 2015093282
Figure 2015093282
表5、6中において、十字引張強さと疲労強度の向上率は、本発明の請求項1、2で規定する後通電を実施しない場合との比較から算出した値である。
表5の各種評価結果に示すように、本発明の請求項5で規定する鋼板特性を備える高強度鋼板を、同様に規定する溶接条件(1段通電)で抵抗スポット溶接を行った、条件No.E−1〜B−40の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接部の窪みが少なく、溶接直後の割れも認められず、溶接後の熱処理を行わない場合(実施例1)に比べて、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の顕著な向上が認められ、低温割れが認められず耐遅れ破壊特性に優れていることが確認できた。
一方、表6に示すように、溶接後の熱処理を、本発明の請求項5の規定範囲外とした条件No.E−41〜E−62の実験例においては、後通電を行わない場合(実施例1の条件No.A−21〜A−31)に較べれば、後通電を実施することによる本発明の効果が得られているものの、条件No.E−1〜D−40のような顕著な効果は得られなかった。
[実施例6]
下記表7、8に示すような、板厚:1.0〜3.2mm、引張強さ:793〜1785MPaの2相組織型鋼板(780D、980D、1180D)、加工誘起変態型鋼板(980T)、焼入れ型鋼板(1470HP、1760HP:特開2000−234153号の実施例に記載の発明例を参照)を用意した。なお、各鋼板の頭に示された記号は、Cが冷延鋼板、Hが熱延鋼板、Gが合金化亜鉛めっき鋼板を示し、また、それぞれの数字は引張強さのレベルを示す。
次に、上記各鋼板から50×50mmの試験片を切り出した。また、スポット溶接継手の十字引張試験方法(JIS Z3137)に基づき、50×150mmの十字引張試験片を切り出した。さらに、スポット溶接継手の疲れ強さ試験方法(JIS Z3138)に基づき、40×150mmの引張せん断疲労試験片を切り出した。
次いで、上記試験片を、下記表7、8に示すように、同鋼種または異鋼種の組合せで重ね合わせ、下記表7、8に示す溶接条件(本発明の請求項5に記載の溶接条件(2段通電)、および、その範囲外の溶接条件)で抵抗スポット溶接方法を行うことにより、3種類の溶接試験片(溶接継手)、すなわち、窪み・割れ観察用試験片、十字引張用試験片、疲労試験片を作製した。なお、それぞれの溶接試験片のナゲット径は、5√t(ただし、tは1枚の鋼板の板厚(mm))に設定した。
そして、上記手順で得られた十字引張試験片について、実施例1などと同様の方法で、接合部の断面マクロ組織観察、十字引張試験、疲労試験、耐低温割れ性の各評価を行った。
下記表7、8に、実施例6における各試験片の作製条件並びに観察結果の一覧を示す。
Figure 2015093282
Figure 2015093282
表7、8中において、十字引張強さと疲労強度の向上率は、本発明の請求項1、2で規定する後通電を実施しない場合との比較から算出した値である。
表7の各種評価結果に示すように、本発明の請求項6で規定する鋼板特性を備える高強度鋼板を、同様に規定する溶接条件(2段通電)で抵抗スポット溶接を行った、条件No.F−1〜B−48の本発明例においては、何れの鋼種を用いた場合でも、溶接部の窪みが少なく、溶接直後の割れも認められず、溶接後の熱処理を行わない場合(実施例1)に比べて、十字引張強さ(CTS)と疲労強度の顕著な向上が認められ、低温割れが認められず耐遅れ破壊特性に優れていることが確認できた。
一方、表8に示すように、溶接後の熱処理を、本発明の請求項5の規定範囲外とした条件No.F−49〜E−70の実験例においては、後通電を行わない場合(実施例1の条件No.A−21〜A−31)に較べれば、後通電を実施することによる本発明の効果が得られているものの、条件No.F−1〜F−48のような顕著な効果は得られなかった。
なお、上記実施例1〜6においては、鋼板の板厚を適宜変更して実験を行った場合も、また、めっき種や目付量などを変更して実験を行った場合も、結果は上記同様であり、静的強度、疲労強度および遅れ破壊特性を向上させる本発明の効果が得られることが確認できた。
以上説明した実施例の結果より、本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法を用いることにより、良好な溶接作業性を確保しつつ、静的強度、疲労強度および遅れ破壊特性に優れ、また、溶接金属部に欠陥が発生することが無く、信頼性の高い溶接継手が得られることが明らかとなった。
本発明によれば、自動車用部品の製造や車体の組立などで用いる高強度鋼板をスポット溶接する際、良好な溶接作業性を確保しつつ、静的強度、疲労強度、耐遅れ破壊特性を向上させることができる。したがって、自動車分野などで高強度鋼板適用による安全性向上や軽量化による低燃料費、CO排出量削減のメリットなどを十分に享受でき、社会的な貢献は多大である。
1(1A、1B)…高強度鋼板、
2(2A、2B)…電極、
3…ナゲット

Claims (5)

  1. 2枚以上の薄鋼板同士の接合面にナゲットを形成させる高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
    前記2枚以上の薄鋼板からなる高強度鋼板の内、少なくとも1枚の引張強さが750〜1850MPaであり、かつ、各々の板厚が0.8〜3.6mmであるとともに、下記(1)式で表される炭素当量Ceqが0.22〜0.55質量%の範囲である前記高強度鋼板同士を重ね合わせ、
    下記(2)式で表される加圧力EF1で溶接通電を実施した後、下記(3)式で表される加圧力PEF1に設定するとともに、下記(4)式で表される後通電電流PC1および下記(5)式で表される後通電時間Pt1で後通電を行い、
    次いで、下記(6)式で表される電極保持時間Htで電極保持を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
    Ceq=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2[P]+4[S] ・・(1)
    1.96×t ≦ EF1 ≦ 3.43×t ・・・(2)
    1.2×EF1 ≦ PEF1 ≦ 1.5×EF1 ・・・(3)
    0.60×WC ≦ PC1 ≦ 0.95×WC ・・・(4)
    30 ≦ Pt1 ≦ 200 ・・・(5)
    0 ≦ Ht ≦ 200 ・・・(6)
    {但し、上記(1)〜(6)式中において、Ceq:炭素当量(質量%)、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]:C、Si、Mn、P、Sの各々の含有量(質量%)、t:板厚(mm)、EF1:溶接通電時の電極の加圧力(kN)、PEF1:後通電時の電極加圧力(kN)、WC:溶接電流(kA)、PC1:後通電電流(kA)、Pt1:後通電時間(ms)、Ht:後通電後の電極保持時間(ms)を示す。}
  2. 請求項1に記載の高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
    前記溶接通電と前記後通電との間に、さらに、下記(7)式で表される冷却時間Ctを設けることを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
    16 ≦ Ct ≦ 300 ・・・(7)
    {但し、上記(7)式中において、Ct:溶接通電後の冷却時間(ms)を示す。}
  3. 引張強さが750〜1850MPa、板厚が0.8〜3.6mmであるとともに、請求項1に記載の(1)式で表される炭素当量Ceqが0.22〜0.55質量%の範囲である高強度鋼板同士を重ね合わせて抵抗スポット溶接を行う、高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
    請求項1に記載の(2)式で表される加圧力EF1で溶接通電を実施した後、請求項1に記載の(3)式で表される加圧力PEF1に設定し、
    下記(8)式で表される後通電電流PC2および下記(9)式で表される後通電時間Pt2で第1の後通電を行った後、さらに、下記(10)式で表される後通電電流PC3および下記(11)式で表される後通電時間Pt3で第2の後通電を行うことで2段後通電を実施し、
    次いで、請求項1に記載の(6)式で表される電極保持時間Htで電極保持を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
    0.80×WC ≦ PC2 ≦ 0.95×WC ・・・(8)
    30 ≦ Pt2 ≦ 100 ・・・(9)
    0.60×WC ≦ PC3 ≦ 0.75×WC ・・・(10)
    30 ≦ Pt3 ≦ 100 ・・・(11)
    {但し、上記(8)〜(11)式中において、WC:溶接電流(kA)、PC2:第1の後通電電流(kA)、Pt2:第1の後通電時間(ms)、PC3:第2の後通電電流(kA)、Pt3:第2の後通電時間(ms)を示す。}
  4. 請求項3に記載の高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
    前記溶接通電と前記第1の後通電との間に、さらに、請求項2に記載の(7)式で表される冷却時間Ctを設けることを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
  5. 請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の高強度鋼板のスポット溶接方法であって、
    前記電極保持の後、さらに、下記(12)で表される熱処理温度ATおよび下記(13)式で表される熱処理時間Atで溶接後の熱処理を行うことを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
    120 ≦ AT ≦ 220 ・・・(12)
    100 ≦ At ≦ 6000 ・・・(13)
    {但し、上記(12)、(13)式中において、AT:溶接後の熱処理温度(℃)、At:溶接後の熱処理時間(s)を示す。}
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