以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下で説明する各実施形態に係るエンコーダは、回転型(ロータリタイプ)や直線型(リニアタイプ)等、様々なタイプのエンコーダに適用可能である。但し、以下では、エンコーダの理解が容易になるように、回転型のエンコーダを例に挙げて説明する。他のタイプのエンコーダに適用する場合には、被測定対象を回転型のディスクから直線型のリニアスケールに変更する等、適切な変更を加えることにより可能であるので、詳しい説明は省略する。
<第1実施形態>
まず、第1実施形態にいついて説明する。
<1−1.サーボシステム>
まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係るサーボシステムの構成の概略について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るサーボシステムSは、サーボモータSMと、制御装置CTとを有する。サーボモータSMは、モータMと、エンコーダ100とを有する。
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。このモータMは、回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることで、回転力を出力する。
なお、モータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMということにする。つまり、サーボモータSMは、エンコーダ付きモータの一例に相当する。なお、説明の便宜上、以下では、エンコーダ付きモータが位置や速度等の目標値に追従するように制御されるサーボモータである場合について説明するが、エンコーダ付きモータは、必ずしもサーボモータに限定されるものではない。エンコーダ付きモータは、例えばエンコーダの出力を表示のみに用いる場合等、エンコーダが付設されていればサーボシステム以外に用いられるモータをも含むものである。
また、モータMは、例えば後述の位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。但し、説明の便宜上、以下では、モータMが電動式モータである場合について説明する。また、説明の便宜上、以下では、モータMが3相交流電源から供給される3相(U相,V相,W相)の交流を入力とする3相交流モータである場合について説明するが、モータMは、3相交流モータである場合に限定されるものではない。例えば、モータMは、単相の直流を入力とする単相直流モータや、多相の直流を入力とする多相直流モータ、単相の交流を入力とする単相交流モータ、3相でない多相の交流を入力とする多相交流モータ等であってもよい。また、説明の便宜上、以下では、モータMの磁極数が2である場合について説明するが、モータMの磁極数は、2に限定されるものではなく、例えば4、6、8等であってもよい。
エンコーダ100は、シャフトSHの回転力出力側(「負荷側」ともいう。)と反対側(「反負荷側」ともいう。)に連結されている。なお、エンコーダ100の連結位置は、シャフトSHの回転力出力側と反対側に限定されるものではなく、シャフトSHの回転力出力側であってもよい。このエンコーダ100は、シャフトSHの位置を検出することで、モータMの位置(「回転角度」ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
なお、エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(「回転速度」や「角速度」等ともいう。)及び加速度(「回転加速度」や「角加速度」等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば位置を時間で1又は2階微分したり、後述の受光アレイPIの受光素子からの電気信号を所定時間カウントする等の処理により、検出可能である。但し、説明の便宜上、以下では、エンコーダ100が検出する物理量が位置である場合について説明する。
制御装置CTは、エンコーダ100から出力される位置データを取得し、該位置データに基づいてモータMの回転を制御する。従って、モータMとして電動式モータが使用される本実施形態では、制御装置CTは、位置データに基づいてモータMに印加する電流又は電圧等を制御することで、モータMの回転を制御する。更に、制御装置CTは、上位制御装置(図示省略)から上位制御信号を取得し、該上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がシャフトSHから出力されるように、モータMを制御することも可能である。なお、モータMが、油圧式、エア式、蒸気式等の他の動力源を使用する場合には、制御装置CTは、それらの動力源の供給を制御することで、モータMの回転を制御可能である。
<1−2.エンコーダ>
次に、図2〜図4を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明する。
図2〜図4に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、円板状のディスク110と、光学モジュール120と、制御部130とを有する。
ここで、エンコーダ100の構造の説明の便宜上、上下等の方向を次のように定め、適宜使用する。すなわち、ディスク110が光学モジュール120と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」と定め、Z軸負の方向を「下」と定める。但し、上下等の方向は、エンコーダ100の設置態様により変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
(1−2−1.ディスク)
ディスク110は、ディスク中心Oが軸心AXと略一致するように、シャフトSHに連結され、モータMの回転と共に回転する。なお、本実施形態では、モータMの回転を測定する被測定対象の例として、ディスク110を例に挙げて説明するが、例えばシャフトSHの端面等の他の部材を被測定対象として使用することも可能である。また、図2に示す例では、ディスク110は、シャフトSHに直接連結されているが、ハブ等の連結部材を介してシャフトSHに連結されてもよい。
このディスク110は、その上面に、5本のスリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWを有する。そして、ディスク110は、上記のようにモータMの回転と共に回転するが、光学モジュール120は、後述のようにスリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWの一部と対向しつつ固定されている。従って、スリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWと、光学モジュール120とは、モータMの回転に伴い、互いに測定方向(図3等に示す矢印Cの方向。以下では「測定方向C」ともいう。)に相対移動する。
ここで、「測定方向」とは、光学モジュール120でスリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように被測定対象がディスク110である回転型のエンコーダ100では、測定方向はディスク110の中心軸を中心とした円周方向に一致するが、例えば、被測定対象がリニアスケールであり、可動子が固定子に対して移動する直線型のエンコーダでは、測定方向はリニアスケールに沿った方向となる。なお、「中心軸」とは、ディスク110の回転軸心であり、ディスク110とシャフトSHが同軸に連結される場合には、中心軸はシャフトSHの軸心AXと一致する。
スリットトラックSTIは、ディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成されている。このスリットトラックSTIは、測定方向Cでインクリメンタルパターンを有するように、トラックの全周にわたって測定方向Cに沿って並べられた複数の反射スリットSIを有する。「インクリメンタルパターン」とは、複数の反射スリットが所定のピッチ(配置間隔)で規則的に繰り返されるパターンである。このスリットトラックSTIのインクリメンタルパターンは、後述の受光アレイPIの少なくとも1つの受光素子からの電気信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの相対位置を表す。
スリットトラックSTOは、スリットトラックSTIよりも外周側に、ディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成されている。このスリットトラックSTOは、モータMの原点位置に対応するように、トラック上の所定の回転角度範囲に形成された1つの反射スリットSOを有する。
スリットトラックSTU,STV,STWは、スリットトラックSTIよりも内周側の互いに異なる半径方向位置に、ディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成されている。この例では、スリットトラックSTU,STV,STWは、外周側から内周側に向けて、スリットトラックSTU、スリットトラックSTV、スリットトラックSTWの順に同心円状に形成されている。
スリットトラックSTUは、モータMのU相の磁極位置に対応するように、トラック上の略180°の回転角度範囲に形成された1つの反射スリットSUを有する。
スリットトラックSTVは、モータMのV相の磁極位置に対応するように、反射スリットSUの回転角度から測定方向Cに略120°ズレつつ、トラック上の略180°の回転角度範囲に形成された1つの反射スリットSVを有する。
スリットトラックSTWは、モータMのW相の磁極位置に対応するように、反射スリットSVの回転角度から測定方向Cに略120°ズレつつ、トラック上の略180°の回転角度範囲に形成された1つの反射スリットSWを有する。
各反射スリットSI,SO,SU,SV,SWは、後述の光源121から出射された光を反射する。
ここで、ディスク110は、例えば金属等の光を反射する材質により形成される。そして、ディスク110の上面の光を反射させない部分に反射率の低い材質(例えば酸化クロム等)を塗布等により配置することで、該材質が配置されない部分に反射スリットが形成される。なお、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面として反射率を低下させることで、反射スリットが形成されてもよい。
なお、ディスク110の材質や製造方法等は、特に限定されるものではない。例えば、ディスク110をガラスや透明樹脂等の光を透過する材質で形成することも可能である。この場合、ディスク110の上面に光を反射する材質(例えばアルミニウム等)を蒸着等により配置することで、反射スリットが形成可能である。
(1−2−2.光学モジュール)
光学モジュール120は、ディスク110と平行な一枚の基板BAとして形成されている。これにより、エンコーダ100を薄型化したり、光学モジュール120の製造を容易にすることが可能である。基板BAは、ディスク110のスリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWの一部と対向するように固定されている。従って、光学モジュール120は、ディスク110の回転に伴い、ディスク110のスリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWに対して測定方向Cに相対移動する。なお、光学モジュール120は、必ずしも一枚の基板BAとして形成される必要はなく、各構成が複数の基板として形成されてもよい。この場合、それらの基板が集約して配置されていればよい。また、光学モジュール120は、基板状でなくてもよい。
この光学モジュール120は、基板BAのディスク110と対向する下面上に、光源121と、受光アレイPIと、4つの受光素子PO,PU,PV,PWとを有する。
(1−2−2−1.光源)
光源121は、この例ではスリットトラックSTIの一部と対向する位置に配置されている。この光源121は、光学モジュール120と対向する位置を通過するディスク110のスリットトラックSTI,STO,STU,STV,STWの一部(以下では「照射領域」ともいう。)に光を出射する。
光源121としては、照射領域に光を出射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えばLED(Light Emitting Diode)が使用可能である。本実施形態では、光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することで、光源121は、光軸からのズレによる光量変化や光路長の差による減衰等の影響は多少あるにせよ、照射領域に拡散光を出射し、照射領域に均等に光を出射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないため、光学素子による誤差等が生じにくく、照射領域への出射光の直進性を高める事が可能である。
(1−2−2−2.受光アレイ及び受光素子)
受光アレイPI及び受光素子PO,PU,PV,PWは、光源121の周囲に配置されている。
受光アレイPIは、測定方向Cに対応する方向に沿って所定のピッチでアレイ状に並べられた複数の受光素子(図示省略)を有する。この受光アレイPIの各受光素子は、光源121から出射されスリットトラックSTIの反射スリットSIで反射された光を受光し、電気信号に変換して出力する。
本実施形態では、受光アレイPIは、スリットトラックSTIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(光学モジュール120上に投影された像における1ピッチ)中に、合計4個の受光素子のセットが並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに対応する方向に沿って更に複数並べられる。そして、スリットトラックSTIのインクリメンタルパターンは、1ピッチ毎に反射スリットSIが繰り返し形成されるので、受光アレイPIの各受光素子は、ディスク110が回転する場合、1ピッチで1周期(電気角で360°という。)の周期的な電気信号を生成する。そして、受光アレイPIは、1ピッチに相当する1セット中に4つの受光素子が配置されるので、1セット内の相隣接する受光素子同士は、相互に90°の位相差を有する周期的な電気信号を生成することになる。
スリットトラックSTIのインクリメンタルパターンは、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの相対位置を表すので、1セット中の各位相の電気信号と、それと対応した他のセット中の各位相の電気信号とは、同様に変化する値となる。従って、同一位相の電気信号は、複数のセットにわたって加算される。従って、受光アレイPIの複数の受光素子からは、位相が90°ずつズレる4つの電気信号が生成されることになる。これら各電気信号は、「A相信号」、「B相信号(A相信号に対する位相差が90°の信号)」、「Aバー相信号(A相信号に対する位相差が180°の信号)」、「Bバー相信号(B相信号に対する位相差が180°の信号)」とも呼ばれる。また、これら各電気信号は、区別せずに「インクリメンタル信号」とも呼ばれる。受光アレイPIの各受光素子から出力されたインクリメンタル信号は、後述の制御部130の相対位置検出部1312により取得され、モータMの相対位置の検出に用いられる。つまり、スリットトラックSTIの各反射スリットSIで反射された光は、モータの相対位置に対応した信号の一例に相当する。また、受光アレイPIの各受光素子は、インクリメンタル検出用センサの一例に相当する。
なお、本実施形態では、受光アレイPIの1セットに受光素子が4つ含まれる場合を一例として説明した。しかしながら、例えば受光アレイPIの1セットに2つの受光素子が含まれる等、1セット中の受光素子数は特に限定されるものではない。
受光素子POは、光源121から出射され反射スリットSOで反射された光を受光し、電気信号に変換して出力する。すなわち、受光素子POは、ディスク110が回転する場合、1回転で1パルスの電気信号を生成する。この電気信号は、「原点信号」や「Z相信号」とも呼ばれる。受光素子POから出力された原点信号は、後述の制御部130の原点検出部1313により取得され、モータMの原点位置の検出に用いられる。つまり、反射スリットSOで反射された光は、モータの原点位置に対応した信号の一例に相当する。また、受光素子POは、原点検出用センサの一例に相当する。
受光素子PUは、光源121から出射され反射スリットSUで反射された光を受光し、電気信号に変換して出力する。受光素子PVは、光源121から出射され反射スリットSVで反射された光を受光し、電気信号に変換して出力する。受光素子PWは、光源121から出射され反射スリットSWで反射された光を受光し、電気信号に変換して出力する。すなわち、受光素子PU,PV,PWは、ディスク110が回転する場合、相互に120°の位相差を有し、かつ1回転で1周期の周期的な電気信号を生成する。以下では、受光素子PUが生成する電気信号を「U相信号」、受光素子PVが生成する電気信号を「V相信号(U相信号に対する位相差が120°の信号)」、受光素子PWが生成する電気信号を「W相信号(V相信号に対する位相差が120°の信号)」ともいう。受光素子PU,PV,PWから出力されたU相信号、V相信号、W相信号は、後述の制御部130の磁極検出部1311により取得され、モータMの3相(U相、V相、W相)の磁極位置の検出に用いられる。つまり、反射スリットSU,SV,SWで反射された光は、モータの磁極位置に対応した信号の一例に相当する。また、受光素子PU,PV,PWは、磁極検出用センサの一例に相当する。
受光アレイPIの受光素子、及び、受光素子PO,PU,PV,PWとしては、光源121から出射され対応する反射スリットで反射された光を受光して電気信号に変換可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えばフォトダイオードが使用可能である。
(1−2−3.制御部)
次に、図5を参照しつつ、本実施形態に係る制御部130の構成について説明する。
図5に示すように、制御部130は、位置検出部131と、異常検出部132と、揮発性メモリ制御部133と、揮発性メモリ134と、原因解析部135と、時刻情報生成部136と、不揮発性メモリ制御部137と、不揮発性メモリ138と、通信制御部139とを有する。
位置検出部131は、モータMの位置を検出するように構成されている。すなわち、位置検出部131は、磁極検出部1311と、相対位置検出部1312と、原点検出部1313とを備える。
磁極検出部1311は、上記受光素子PU,PV,PWが出力するU相信号、V相信号、及びW相信号に基づいて、モータMの3相(U相、V相、W相)磁極位置を検出するように構成されている。すなわち、磁極検出部1311は、モータMの磁極位置を測定するタイミングにおいて、受光素子PU,PV,PWからU相信号、V相信号、及びW相信号を取得する。そして、磁極検出部1311は、取得したU相信号、V相信号、及びW相信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの磁極位置を検出する。なお、磁極検出部1311によるモータMの磁極位置の検出方法は、特に限定されるものではないが、その検出方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、磁極検出部1311は、取得したU相信号、V相信号、及びW相信号を増幅し、デジタル変換する。そして、磁極検出部1311は、デジタル変換後の3つの信号(以下では「U相デジタル信号」、「V相デジタル信号」、「W相デジタル信号」ともいう。)を用いて、モータMの磁極位置を検出する。このモータMの磁極位置の検出方法は、特に限定されるものではない。その検出方法としては、例えば、トラッキング回路を用いてU相デジタル信号、V相デジタル信号、及びW相デジタル信号を電気角φに変換する方法が挙げられる。また、予め作成されたテーブルにおいてU相デジタル信号、V相デジタル信号、及びW相デジタル信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法も挙げられる。
なお、上記で説明した磁極検出部1311によるモータMの磁極位置の検出方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
そして、位置検出部131は、磁極検出部1311により検出されたモータMの磁極位置を表す位置データ(以下では「第1位置データ」ともいう。)を生成し、該第1位置データを、通信制御部139へ出力する。通信制御部139へ入力された第1位置データは、該通信制御部139によって上記制御装置CTへ出力される。
また、位置検出部131は、上記第1位置データと、上記U相信号に対応するデータ、上記V相信号に対応するデータ、及び、上記W相信号に対応するデータを含むデータ(以下では「磁極位置関連データ」ともいう。)とを、異常検出部132へ出力する。
相対位置検出部1312は、上記受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号に基づいて、モータMの相対位置を検出するように構成されている。すなわち、相対位置検出部1312は、モータMの相対位置を測定するタイミングにおいて、受光アレイPIの複数の受光素子から位相が90°ずつズレる4つのインクリメンタル信号を取得する。そして、相対位置検出部1312は、取得した4つのインクリメンタル信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの相対位置を検出する。なお、相対位置検出部1312によるモータMの相対位置の検出方法は、特に限定されるものではないが、その検出方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、相対位置検出部1312は、取得した4つのインクリメンタル信号のうち、180°位相差のあるインクレメンタル信号同士の差分を増幅する。このように180°位相差のあるインクレメンタル信号同士の差分を増幅することで、1ピッチ内の反射スリットSIの製造誤差や測定誤差等を相殺可能である。なお、差動増幅後の2つの信号(以下では「第1インクリメンタル信号」及び「第2インクリメンタル信号」ともいう。)は、相互に90°の位相差を有する。そして、相対位置検出部1312は、差動増幅後の第1インクリメンタル信号及び第2インクリメンタル信号をデジタル変換し、そのデジタル変換後の2つの信号(以下では「第1デジタル信号」及び「第2デジタル信号」ともいう。)を用いて、1ピッチ内のモータMの相対位置を検出する。この1ピッチ内のモータMの相対位置の検出方法は、特に限定されるものではない。その検出方法としては、例えば、第1デジタル信号及び第2デジタル信号の除算結果をarctan演算することで電気角φを算出する方法が挙げられる。また、トラッキング回路を用いて第1デジタル信号及び第2デジタル信号を電気角φに変換する方法も挙げられる。さらに、予め作成されたテーブルにおいて第1デジタル信号及び第2デジタル信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法も挙げられる。
なお、上記で説明した相対位置検出部1312によるモータMの相対位置の検出方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
原点検出部1313は、上記受光素子POが出力する原点信号に基づいて、モータMの原点位置を検出するように構成されている。すなわち、原点検出部1313は、モータMの原点位置を測定するタイミングにおいて、受光素子POから原点信号を取得する。そして、原点検出部1313は、取得した原点信号に基づいて、この信号が表すモータMの原点位置を検出する。
そして、位置検出部131は、相対位置検出部1312により検出されたモータMの相対位置と、原点検出部1313により検出されたモータMの原点位置とに基づいて、モータMの絶対位置を検出する。その後、位置検出部131は、検出したモータMの絶対位置を表す位置データ(以下では「第2位置データ」ともいう。)を生成し、該第2位置データを、通信制御部139へ出力する。通信制御部139へ入力された第2位置データは、該通信制御部139によって上記制御装置CTへ出力される。
また、位置検出部131は、上記第2位置データと、上記インクリメンタル信号に対応するデータ、及び、上記原点信号に対応するデータを含むデータ(以下では「第1絶対位置関連データ」ともいう。)とを、異常検出部132へ出力する。
異常検出部132は、状態情報に基づいて、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方に関する異常を検出するように構成されている。すなわち、異常検出部132は、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方に関する異常を監視するタイミングにおいて、状態情報を取得する。なお、異常検出部132が監視する異常としては、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方に関する異常であれば特に限定されるものではない。例えば、異常検出部132が監視する異常としては、モータMの磁極位置関連の異常や、モータMの絶対位置関連の異常、エンコーダ100の温度関連の異常、モータMの温度関連の異常等が挙げられる。但し、説明の便宜上、以下では、異常検出部132が監視する異常がモータMの磁極位置関連の異常及びモータMの絶対位置関連の異常である場合について説明する。
また、「状態情報」とは、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方の状態を表す情報であり、サーボモータSMの稼働時には刻々と変化する性質を持つ情報である。状態情報としては、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方の状態を表す情報であれば特に限定されるものではない。異常検出部132が監視する異常がモータMの磁極位置関連の異常及びモータMの絶対位置関連の異常である本実施形態では、異常検出部132は、以下のような状態情報を取得する。
すなわち、異常検出部132は、モータMの磁極位置関連の異常を監視するタイミングにおいて、状態情報として、位置検出部131から、上記第1位置データと、上記磁極位置関連データとを取得する。この場合、異常検出部132は、取得した第1位置データや磁極位置関連データに基づいて、所定の検出条件を満たすか否かを判断することで、モータMの磁極位置関連の異常を検出する。なお、異常検出部132によるモータMの磁極位置関連の異常の検出方法は、特に限定されるものではないが、その検出方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、図6A及び図6Bに、U相信号に対応するデジタル信号(U相デジタル信号)、V相信号に対応するデジタル信号(V相デジタル信号)、及びW相信号に対応するデジタル信号(W相デジタル信号)の波形の一例を示す。図6Aは正常時の波形、図6Bは異常時の波形である。なお、この例では、U相デジタル信号、V相デジタル信号、及びW相デジタル信号は、対応する受光素子で光が受光された場合に「H」レベルとなり、対応する受光素子で光が受光されなかった場合に「L」となるものとする。また、この例では、ディスク110が60°回転する毎の、各相に対応するデジタル信号のレベルを監視するものとする。正常時は、図6Aに示すように、U相デジタル信号のレベル、V相デジタル信号のレベル、及びW相デジタル信号のレベルが、同一の時点において全て一致する(全て「H」になる、又は、全て「L」になる)ことはない。一方、異常時は、図6Bに示すように、U相デジタル信号のレベル、V相デジタル信号のレベル、及びW相デジタル信号のレベルが、同一の時点において全て一致することがある(この例では、ディスク110の240°回転時点に全て「H」になっている)。
そこで、異常検出部132は、取得した磁極位置関連データに基づいて、U相デジタル信号のレベル、V相デジタル信号のレベル、及びW相デジタル信号のレベルを、所定の複数の時点において(例えばディスク110の60°回転毎に)照合する。そして、異常検出部132は、U相デジタル信号のレベル、V相デジタル信号のレベル、及びW相デジタル信号のレベルが、同一の時点において全て一致するか否かを判断する。そして、U相デジタル信号のレベル、V相デジタル信号のレベル、及びW相デジタル信号のレベルが、同一の時点において全て一致した場合に、異常検出部132は、モータMの磁極位置関連の異常を検出する。
なお、上記で説明した異常検出部132によるモータMの磁極位置関連の異常の検出方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
また、異常検出部132は、モータMの絶対位置関連の異常を監視するタイミングにおいて、状態情報として、位置検出部131から、上記第2位置データと、上記第1絶対位置関連データとを取得する。この場合、異常検出部132は、取得した第2位置データや第1絶対位置関連データに基づいて、所定の検出条件を満たすか否かを判断することで、モータMの絶対位置関連の異常を検出する。なお、異常検出部132によるモータMの絶対位置関連の異常の検出方法は、特に限定されるものではないが、その検出方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、正常時は、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、スリットトラックSTIの反射スリットSIの個数と等しいときに、次の原点信号のパルスが検出される。一方、異常時は、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、スリットトラックSTIの反射スリットSIの個数よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出されたり、該個数よりも多くなることがある。例えば、反射スリットSIの個数を512とした場合、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、正常時では、512のときに、次の原点信号のパルスが検出されるが、異常時では、512よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出されたり、513よりも多くなることがある。
そこで、異常検出部132は、取得した第1絶対位置関連データに基づいて、インクリメンタル信号のパルスと、原点信号のパルスとを検出する。そして、異常検出部132は、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、反射スリットSIの個数よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出されたか、又は、該個数よりも多くなったか否かを判断する。そして、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、反射スリットSIの個数よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出された、又は、該個数よりも多くなった場合に、異常検出部132は、モータMの絶対位置関連の異常を検出する。
なお、上記で説明した異常検出部132によるモータMの絶対位置関連の異常の検出方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
そして、異常検出部132は、モータMの磁極位置関連の異常及びモータMの絶対位置関連の異常のそれぞれの監視に使用した状態情報を、揮発性メモリ制御部133へ順次出力する。
揮発性メモリ制御部133は、状態情報を、揮発性メモリ134に記録するように構成されている。すなわち、揮発性メモリ制御部133は、異常検出部132から状態情報が入力された場合に、該状態情報を、揮発性メモリ134に記録する。この際、揮発性メモリ制御部133は、状態情報を、揮発性メモリ134の予め定められた記録領域1341に記録する。すなわち、揮発性メモリ制御部133は、記録領域1341が一杯になるまで複数の時点、つまりn個の時点の状態情報を記録し、記憶領域1341が一杯になると最新の時点の状態情報を最古の時点の状態情報に上書きする。なお、揮発性メモリ制御部133は、状態情報を、揮発性メモリ134に記録さえすれば、必ずしも、揮発性メモリ134の記録領域1341に記録する必要はない。但し、説明の便宜上、以下では、揮発性メモリ制御部133が状態情報を揮発性メモリ134の記録領域1341に記録する場合について説明する。
例えば、記録領域1341に、時点t=t0−(n+1)の状態情報から時点t=t0−1までのn個の時点t=t0−(n+1)〜t0−1の状態情報が記録されていた場合を考える。この場合に、記録領域1341に、最新の時点t=t0の状態情報を記録する際には、揮発性メモリ制御部133は、最新の時点t=t0の状態情報を、最古の時点t=t0−(n+1)の状態情報に上書きする。これにより、記録領域1341は、時点t=t0−nの状態情報から時点t=t0までのn個の時点t=t0−n〜t0の状態情報を記録した状態となる(図5参照)。
なお、揮発性メモリ134に記録された状態情報は、エンコーダ100の電源が切断されることで消去される。
そして、異常検出部132は、モータMの磁極位置関連の異常及びモータMの絶対位置関連の異常のそれぞれを検出した場合に、その旨を表す信号(以下では「アラーム信号」ともいう。)を、通信制御部139及び原因解析部135へ出力する。この際、異常検出部132は、アラーム信号を、通信制御部139及び原因解析部135に加えて、不揮発性メモリ制御部137及び時刻情報生成部136の少なくとも一方へ出力する。なお、異常検出部132は、アラーム信号を、通信制御部139及び原因解析部135へ出力さえすれば、必ずしも、不揮発性メモリ制御部137及び時刻情報生成部136の少なくとも一方へ出力しなくてもよい。そして、時刻情報生成部136へアラーム信号が出力されない場合には、該時刻情報生成部136は省略可能である。但し、説明の便宜上、以下では、異常検出部132がアラーム信号を通信制御部139及び原因解析部135に加えて、不揮発性メモリ制御部137及び時刻情報生成部136へ出力する場合について説明する。通信制御部139へ入力されたアラーム信号は、該通信制御部139によって上記制御装置CTへ出力される。なお、異常検出部132から各部へ出力されるアラーム信号のうち、少なくとも不揮発性メモリ制御部137及び原因解析部135へ出力されるアラーム信号には、異常検出部132が検出した異常の種類を表す情報(以下では「異常種類情報」ともいう。)が含まれている。
時刻情報生成部136は、異常検出部132により異常が検出された時点t=taの時刻情報を生成するように構成されている。すなわち、時刻情報生成部136は、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合に、異常が検出された時点t=taの時刻情報を生成し、該時刻情報を、不揮発性メモリ制御部137へ出力する。
原因解析部135は、異常検出部132により異常が検出された場合に、状態情報に基づいて異常の発生原因を解析するように構成されている。すなわち、原因解析部135は、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134の記録領域1341に記録された状態情報に基づいて、該アラーム信号が表す異常の発生原因を解析する。具体的には、原因解析部135は、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134の記録領域1341に記録された状態情報を取得し、該状態情報を、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納して、格納された状態情報に基づいて、該アラーム信号が表す異常の発生原因を解析する。この際、原因解析部135は、異常が検出された時点t=ta以前の状態情報のみに基づいて、該異常の発生原因を解析してもよいが、異常が検出された時点t=taの前後の状態情報に基づいて、該異常の発生原因を解析してもよい。説明の便宜上、以下では、原因解析部135が、異常が検出された時点t=taの前後の状態情報に基づいて該異常の発生原因を解析する場合について説明する。この原因解析部135は、第1解析部1351と、第2解析部1352とを備える。
第1解析部1351は、状態情報として、受光素子PU,PV,PWが出力するU相信号、V相信号、及びW相信号に基づいて、受光素子PU,PV,PWのいずれが異常かを特定するように構成されている。すなわち、第1解析部1351は、モータMの磁極位置関連の異常を表すアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134に記録された、状態情報としての上記磁極位置関連データに基づいて、受光素子PU,PV,PWのいずれが異常かを特定する。この第1解析部1351による特定方法は、特に限定されるものではないが、その特定方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、図6Bに示すように、受光素子PU,PV,PWのうち、正常である受光素子に対応するデジタル信号(この例ではV相デジタル信号及びW相デジタル信号)のレベルは、機械角で180°毎に変化する。一方、受光素子PU,PV,PWのうち、異常である受光素子に対応するデジタル信号(この例ではU相デジタル信号)のレベルは、機械角で180°毎に変化しないことがある。
そこで、第1解析部1351は、揮発性メモリ134に記録された磁極位置関連データに基づいて、U相デジタル信号のレベルの変化、V相デジタル信号のレベルの変化、及びW相デジタル信号のレベルの変化を、それぞれ検出する。そして、第1解析部1351は、対応するデジタル信号のレベルが機械角で180°毎に変化しないことがある受光素子を検出した場合に、該受光素子が異常であると特定する。
なお、上記で説明した第1解析部1351による特定方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
第2解析部1352は、状態情報として、受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号と、受光素子POが出力する原点信号とに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び受光素子POのどちらが異常かを特定するように構成されている。すなわち、第2解析部1352は、モータMの絶対位置関連の異常を表すアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134に記録された、状態情報としての上記第1絶対位置関連データに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び受光素子POのどちらが異常かを特定する。この第2解析部1352による特定方法は、特に限定されるものではないが、その特定方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、受光アレイPIの受光素子が異常であるときは、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、スリットトラックSTIの反射スリットSIの個数よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出されることがある。一方、受光素子POが異常であるときは、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が、スリットトラックSTIの反射スリットSIの個数よりも多くなることがある。
そこで、第2解析部1352は、揮発性メモリ134に記録された第1絶対位置関連データに基づいて、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が反射スリットSIの個数よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出されたのか、及び、該パルス検出回数が該個数よりも多くなったのか、のどちらであるかを判断する。そして、第2解析部1352は、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が反射スリットSIの個数よりも少ないときに、次の原点信号のパルスが検出されたと判断した場合には、受光アレイPIの受光素子が異常であると特定する。一方、第2解析部1352は、原点信号のパルス検出時点からのインクリメンタル信号のパルス検出回数が反射スリットSIの個数よりも多くなったと判断した場合には、受光素子POが異常であると特定する。
なお、上記で説明した第2解析部1352による特定方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
そして、原因解析部135は、第1解析部1351により解析を行った場合には、その解析結果を、不揮発性メモリ制御部137へ出力し、第2解析部1352により解析を行った場合には、その解析結果を、不揮発性メモリ制御部137へ出力する。
不揮発性メモリ制御部137は、原因解析部135による解析結果を、不揮発性メモリ138に記録するように構成されている。具体的には、不揮発性メモリ制御部137は、解析結果に加えて、異常が検出された時点t=taよりも後の状態情報、異常が検出された時点t=taの時刻情報、及び上記異常種類情報の少なくとも1つを、不揮発性メモリ138に記録するように構成されている。なお、不揮発性メモリ制御部137は、解析結果を不揮発性メモリ138に記録さえすれば、必ずしも、異常が検出された時点t=taよりも後の状態情報、異常が検出された時点t=taの時刻情報、及び異常種類情報の少なくとも1つを不揮発性メモリ138に記録しなくてもよい。但し、説明の便宜上、以下では、不揮発性メモリ制御部137が、解析結果に加えて、異常が検出された時点t=taよりも後の状態情報、異常が検出された時点t=taの時刻情報、及び異常種類情報を、不揮発性メモリ138に記録する場合について説明する。
すなわち、不揮発性メモリ制御部137は、原因解析部135から解析結果が入力された場合には、該解析結果を、不揮発性メモリ138に記録する。また、不揮発性メモリ制御部137は、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合には、該アラーム信号に含まれる異常種類情報を、不揮発性メモリ138に記録する。また、不揮発性メモリ制御部137は、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合には、揮発性メモリ134の記録領域1341から、異常が検出された時点t=taよりも後の状態情報を順次取得し、該状態情報を、不揮発性メモリ138に順次記録する。この際、不揮発性メモリ制御部137は、異常が検出された時点t=taの直後の時点t=ta+1から所定の時期(例えばエンコーダ100の電源切断時や所定の期間等)t=ta+mまでのm個の時点t=ta+1〜ta+mの状態情報を記録する。さらに、不揮発性メモリ制御部137は、時刻情報生成部136から異常が検出された時点t=taの時刻情報が入力された場合には、該時刻情報を、不揮発性メモリ138に記録する。
なお、不揮発性メモリ制御部137に記録された、解析結果、異常が検出された時点t=taよりも後の状態情報、異常が検出された時点t=taの時刻情報、及び異常種類情報は、エンコーダ100の電源が切断されても保持される。
次に、図7及び図8を参照しつつ、揮発性メモリ134の記録領域1341に記録される状態情報、原因解析部135が異常の原因解析に使用する状態情報、及び、不揮発性メモリ138に記録される情報について概念的に説明する。なお、図7に示す例は、原因解析部135が、異常が検出された時点t=ta以前の状態情報のみに基づいて該異常の発生原因を解析する例である。一方、図8に示す例は、原因解析部135が、異常が検出された時点t=taの前後の状態情報に基づいて該異常の発生原因を解析する場合の例である。
まず、図7に示す例において、異常が検出される前の時点t=ta−1では、揮発性メモリ134の記録領域1341には、ある時点t=(ta−1)−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。また、この時点では、不揮発性メモリ138には、まだ、異常種類情報、解析結果、時刻情報、及び状態情報のいずれも記録されない。
その後、次の時点t=taにおいて異常が検出された場合、揮発性メモリ134の記録領域1341には、ある時点t=ta−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。そして、原因解析部135は、この時点において揮発性メモリ134の記録領域1341に記録されている、時点t=ta−n〜taの状態情報を取得し、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納する。そして、原因解析部135は、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納された、時点t=ta−n〜taの状態情報に基づいて、異常の発生原因を解析する。なお、ここ時点で、異常の発生原因が解析できたものとする。従って、この時点では、不揮発性メモリ138には、異常種類情報と、解析結果と、異常が発生した時点t=taの時刻情報とが記録される。
そして、次の時点t=ta+1では、揮発性メモリ134には、ある時点t=(ta+1)−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。また、この時点では、不揮発性メモリ138には、既に記録されている、異常種類情報と、解析結果と、異常が発生した時点t=taの時刻情報とに加えて、異常が発生した時点t=taよりも後の時点t=ta+1の状態情報が記録される。
その後、次の時点t=ta+2では、揮発性メモリ134には、ある時点t=(ta+2)−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。また、この時点では、不揮発性メモリ138には、異常種類情報と、解析結果と、異常が発生した時点t=taの時刻情報と、異常が発生した時点t=taよりも後の時点t=(ta+1),(ta+2)の状態情報が記録されている。
そして、ある時点t=t0では、揮発性メモリ134には、ある時点t=t0−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。また、この時点t=t0では、不揮発性メモリ138には、異常種類情報と、解析結果と、異常が発生した時点t=taの時刻情報と、異常が発生した時点t=taよりも後の時点t=(ta+1)〜(ta+m)の状態情報が記録されている。そして、この時点で、エンコーダ100の電源が切断されたものとする。この場合、揮発性メモリ134に記録されていた、時点t=t0−n〜t0の状態情報は、消去される。
そして、エンコーダ100の電源が切断されている時点t=toffでは、揮発性メモリ134には、状態情報が保持されていない。これに対し、不揮発性メモリ138には、異常種類情報と、解析結果と、異常が発生した時点t=taの時刻情報と、異常が発生した時点t=taよりも後の時点t=(ta+1)〜(ta+m)の状態情報が記録されている。
なお、上記の例では、時点t=ta−n〜taの状態情報に基づいて異常の発生原因が解析できた場合を説明したが、時点t=ta−n〜taの状態情報に基づいて異常の発生原因が解析できない場合もある。この場合、図7に示す例では、原因解析部135は、異常が検出された時点t=taの後の状態情報に基づいて該異常の発生原因を解析することをしないので、その後も該異常の発生原因が解析されることもなく、不揮発性メモリ138に解析結果が記録されることもない。
一方、図8に示す例において、異常が検出される前の時点t=ta−1では、揮発性メモリ134の記録領域1341には、上記図7と同様、ある時点t=(ta−1)−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。また、この時点では、不揮発性メモリ138には、上記図7と同様、まだ、異常種類情報、解析結果、時刻情報、及び状態情報のいずれも記録されない。
その後、次の時点t=taにおいて異常が検出された場合、揮発性メモリ134の記録領域1341には、ある時点t=ta−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。そして、原因解析部135は、この時点において揮発性メモリ134の記録領域1341に記録されている、時点t=ta−n〜taの状態情報を取得し、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納する。そして、原因解析部135は、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納された、時点t=ta−n〜taの状態情報に基づいて、異常の発生原因を解析する。なお、ここ時点では、異常の発生原因が解析できなかったものとする。従って、この時点では、不揮発性メモリ138には、異常種類情報と、異常が発生した時点t=taの時刻情報とが記録される。
そして、次の時点t=ta+1では、揮発性メモリ134には、ある時点t=(ta+1)−nの状態情報からこの時点までの状態情報が記録されている。そして、原因解析部135は、この時点において揮発性メモリ134の記録領域1341に記録された、時点t=ta+1の状態情報を取得し、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納する。そして、原因解析部135は、揮発性メモリ134の別の記録領域に格納された、時点t=ta−n〜ta+1の状態情報に基づいて、異常の発生原因を解析する。なお、ここ時点で、異常の発生原因が解析できたものとする。従って、この時点では、不揮発性メモリ138には、既に記録されている、異常種類情報と、異常が発生した時点t=taの時刻情報とに加えて、解析結果と、異常が発生した時点t=taよりも後の時点t=ta+1の状態情報が記録される。なお、その後は、上記図7と同様である。
<1−3.エンコーダの信号処理方法>
次に、図9を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の信号処理方法ついて説明する。
図9に示すように、ステップS10では、位置検出部131の磁極検出部1311が、モータMの磁極位置を測定するタイミングにおいて、受光素子PU,PV,PWから取得したU相信号、V相信号、及びW相信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの磁極位置を検出する。また、位置検出部131の相対位置検出部1312が、モータMの相対位置を測定するタイミングにおいて、受光アレイPIの複数の受光素子から取得した4つのインクリメンタル信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの相対位置を検出する。さらに、位置検出部131の原点検出部1313が、モータMの原点位置を測定するタイミングにおいて、受光素子POから取得した原点信号に基づいて、この信号が表すモータMの原点位置を検出する。
ステップS20では、異常検出部132が、モータMの磁極位置関連の異常を監視するタイミングにおいて、位置検出部131から取得した第1位置データや磁極位置関連データに基づいて、モータMの磁極位置関連の異常を検出する。また、異常検出部132が、モータMの絶対位置関連の異常を監視するタイミングにおいて、位置検出部131から取得した第2位置データや第1絶対位置関連データに基づいて、モータMの絶対位置関連の異常を検出する。そして、異常検出部132が、モータMの磁極位置関連の異常及びモータMの絶対位置関連の異常のそれぞれの監視に使用した状態情報を、揮発性メモリ制御部133へ順次出力する。
ステップS30では、揮発性メモリ制御部133が、異常検出部132から状態情報が入力された場合に、該状態情報を、揮発性メモリ134の記録領域1341に記録する。すなわち、揮発性メモリ制御部133は、記録領域1341が一杯になるまでn個の時点の状態情報を記録し、記憶領域1341が一杯になると最新の時点の状態情報を最古の時点の状態情報に上書きする。
ステップS40では、不揮発性メモリ制御部137が、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合に、該アラーム信号に含まれる異常種類情報を、不揮発性メモリ138に記録する。
ステップS50では、時刻情報生成部136が、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合に、異常が検出された時点t=taの時刻情報を生成する。
ステップS60では、不揮発性メモリ制御部137が、時刻情報生成部136から異常が検出された時点t=taの時刻情報が入力された場合に、該時刻情報を、不揮発性メモリ138に記録する。
ステップS70では、原因解析部135が、モータMの磁極位置関連の異常を表すアラーム信号が入力された場合に、第1解析部1351において、揮発性メモリ134に記録された磁極位置関連データに基づいて、受光素子PU,PV,PWのいずれが異常かを特定する。また、原因解析部135が、モータMの絶対位置関連の異常を表すアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134に記録された第1絶対位置関連データに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び受光素子POのどちらが異常かを特定する。
ステップS80では、不揮発性メモリ制御部137が、異常検出部132からアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134の記録領域1341から、異常が検出された時点t=taよりも後の状態情報を順次取得し、該状態情報を、不揮発性メモリ138に順次記録する。
ステップS90では、不揮発性メモリ制御部137が、原因解析部135から解析結果が入力された場合に、該解析結果を、不揮発性メモリ138に記録する。これにより、このフローに示す処理が終了される。なお、このフローに示す各手順は、繰り返し実行される。
<1−4.本実施形態による効果の例>
以上説明した本実施形態に係るエンコーダ100は、異常検出部132、原因解析部135、及び不揮発性メモリ制御部137を有する。異常検出部132は、状態情報に基づいてエンコーダ100及びモータMに関する異常を検出する。この異常検出部132により異常が検出された場合、原因解析部135が状態情報に基づいて異常の発生原因を解析する。この原因解析部135による解析結果は、不揮発性メモリ制御部137によって不揮発性メモリ138に記録される。これにより、不揮発性メモリ138に記録された解析結果を参照することで、その後の状態情報の解析や再現実験等をすることなく、異常の発生原因を容易に特定できる。また、解析結果は不揮発性メモリ138に記録されるので、エンコーダ100の電源が切断されても解析結果は保持され、解析結果が消去されるのを防止できる。
また、仮にエンコーダ100が原因解析部135を備えておらず、異常が検出された場合に(その後の解析に用いるための)状態情報を保存しておく構成とした場合、精度のよい解析を行うためにはエンコーダ100やモータMに関する多くの状態情報を保存しておく必要があり、大容量のメモリが必要となる。特に、異常が繰り返し検出されるような場合には、保存される状態情報のデータ量は膨大となり、必要なメモリ容量が大幅に増大する。一方、本実施形態では、原因解析部135による解析結果を記録するので、解析に使用した状態情報を保存しておく必要がなく、破棄することが可能である。その結果、メモリ容量を大幅に少なくすることが可能であり、演算速度の高速化やコストの低減等を図ることができる。
また、本実施形態では特に、次のような効果を得ることができる。すなわち、異常の検出は、所定の検出条件を満たすか否かだけで判断されるので、その異常の発生原因が特定されれば、異常の検出前の状態情報は不要となる。一方で、正確な不具合同定には、上記検出条件が成立した後、どの程度不具合が継続されるか又は再発されるか等の情報が必要となり、それらの情報を解析するのは容易ではない。そこで、本実施形態では、解析結果に加えて、異常が検出された時点よりも後の状態情報も、不揮発性メモリ制御部137によって不揮発性メモリ138に記録される。このように、解析結果だけでなく、異常の検出後の状態情報を不揮発性メモリ138に保存しておくことで、その後の不具合同定に用いることが可能となり、不具合同定の精度を高めることができる。
また、本実施形態では特に、異常検出部132により異常が検出された場合に、原因解析部135が、異常が検出された時点t=taの前後の状態情報に基づいて異常の発生原因を解析する。このように、異常が検出された時点t=taの前後の状態情報に基づいて解析を行うので、異常が検出された時点t=taの前後を通じた定常的な異常等を検出することが可能となる。また、異常の発生と同時(又は直後)に異常が検出された場合と、異常が所定の期間継続した後に異常が検出された場合との両方について、異常の発生原因を特定することが可能となる。従って、解析精度を高めることができる。
また、本実施形態では特に、エンコーダ100が、揮発性メモリ制御部133を有する。状態情報は、この揮発性メモリ制御部133によって揮発性メモリ134に記録される。そして、原因解析部135は、揮発性メモリ134に記録された状態情報に基づいて異常の発生原因を解析する。このように、状態情報を揮発性メモリ134に記録しておくことで、原因解析部135による解析が終了し不要となった状態情報については、エンコーダ100の電源を切断することによって破棄することができる。従って、メモリ容量を少なくすることができる。
また、本実施形態では特に、状態情報が揮発性メモリ134に記録される際には、予め定められた記録領域1341が一杯になるまで複数時点の状態情報が記録され、記録領域1341が一杯になると最新の時点の状態情報が最古の時点の状態情報に上書きされる。これにより、異常検出部132により異常が検出される間、刻一刻と変化する状態情報の最新の情報を常に記録しておくことができる。
また、本実施形態では特に、異常検出部132により異常が検出された場合に、時刻情報生成部136が、該異常が検出された時点t=taの時刻情報を生成し、不揮発性メモリ制御部137が、解析結果に加えて、該時刻情報を不揮発性メモリ138に記録する。これにより、異常の発生時点を容易に把握することができる。また、時刻情報は不揮発性メモリ138に記録されるので、エンコーダ100の電源が切断されても情報が消去されるのを防止できる。
また、本実施形態では特に、原因解析部135の第1解析部1351が、状態情報として、受光素子PU,PV,PWが出力するU相信号、V相信号、及びW相信号に基づいて、受光素子PU,PV,PWのいずれが異常かを特定する。これにより、異常が検出された場合に、複数の受光素子PU,PV,PWのいずれが異常かを容易に特定することができる。
また、本実施形態では特に、原因解析部135の第2解析部1352が、状態情報として、受光素子POが出力する原点信号と、受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号とに基づいて、受光素子POと受光アレイPIの受光素子とのどちらが異常かを特定する。これにより、異常が検出された場合に、受光素子POと受光アレイPIの受光素子とのどちらが異常かを容易に特定することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下では第1実施形態と異なる部分を主に説明し、第1実施形態と同様の部分には同符号を付して適宜説明を省略する。
<2−1.エンコーダ>
次に、図10〜図12を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダ100の構成について説明する。
図10〜図12に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、ディスク110と、光学モジュール120’と、磁気検出用センサ140と、制御部130’とを有する。
(2−1−1.ディスク)
ディスク110の上面には、2本のスリットトラックSTI,STAが設けられている。なお、スリットトラックST1は、上記第1実施形態と同様である。
スリットトラックSTAは、スリットトラックSTIよりも外周側に、ディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成されている。このスリットトラックSTAは、測定方向Cでアブソリュートパターンを有するように、トラックの全周に配置された複数の反射スリットを有する。「アブソリュートパターン」とは、後述の受光アレイPAが対向する角度内における反射スリットの位置や割合等が、ディスク110の1回転内で一義に定まるようなパターンである。つまり、例えば、図12に示すアブソリュートパターンの例の場合、モータMがある角度位置となっている場合に、対向した後述の受光アレイPAの複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンの組み合わせが、その角度位置の絶対位置を一義に表すことになる。
なお、このパターンの一例によれば、モータMの絶対位置を、後述の受光アレイPAの受光素子数のビットにより、一次元的に表すようなパターンを生成できる。しかし、アブソリュートパターンは、この例に限定されるものではない。例えば、受光素子数のビットにより多次元的に表すパターンであってもよい。また、所定のビットパターン以外にも、受光素子で受光する光量や位相などの物理量が絶対位置を一義的に表すように変化するパターンや、アブソリュートパターンの符号系列が変調を施されたパターン等であってもよく、その他、様々なパターンであってもよい。
(2−1−2.光学モジュール)
光学モジュール120’は、ディスク110と平行な一枚の基板BA’として形成されている。この光学モジュール120′は、基板BA′のディスク110と対向する下面上に、光源121と、2つの受光アレイPI,PAとを有する。なお、光源121及び受光アレイPIは、上記第1実施形態と同様である。
受光アレイPAは、測定方向Cに対応する方向に沿ってアレイ状に並べられた複数(本実施形態では例えば9)の受光素子(図示省略)を有する。この受光アレイPAの各受光素子は、光源121から出射されスリットトラックSTAの反射スリットで反射された光を受光し、電気信号に変換して出力する。この受光アレイPAの複数の受光素子では、上述のとおり、1つ1つの受光又は非受光がビットとして扱われ、9ビットの絶対位置を表す。従って、複数の受光素子それぞれが生成する電気信号は、位置データ生成部130’において相互に独立して取り扱われて、シリアルなビットパターンに暗号化(コード化)されていた絶対位置が、これらの電気信号の組み合わせから復号される。これら電気信号は、「アブソリュート信号」とも呼ばれる。受光アレイPAの各受光素子から出力されたアブソリュート信号は、後述の制御部130’の絶対位置検出部1314により取得され、モータMの絶対位置の検出に用いられる。つまり、スリットトラックSTAの各反射スリットSIで反射された光は、モータの絶対位置に対応した信号の一例に相当する。また、受光アレイPAの各受光素子は、アブソリュート検出用センサの一例に相当する。
(2−1−3.磁石及び磁気検出用センサ)
また、ディスク110の上面には、磁気(磁界)を発生する磁石Mgが設けられている。磁石Mgは、ディスク110と同一軸心となるように、ディスク110の上面に固定され、ディスク110と共に回転する。そして、磁石Mgは、円環状に形成され、360°の回転角度範囲全域にわたって設けられている。
磁気検出用センサ140は、磁石Mgの一部と対向するように配置され、該磁石Mgが発生する磁気を検出し、信号(以下では「多回転信号」ともいう。)を出力する。磁気検出用センサ140から出力された多回転信号は、後述の制御部130′の多回転検出部1315により取得され、モータMの多回転量の検出に用いられる。
磁気検出用センサ140としては、磁石Mgが発生する磁気を検出可能なセンサであれば特に限定されるものではないが、例えばホール素子等が使用可能である。
(2−1−4.制御部)
次に、図13を参照しつつ、本実施形態に係る制御部130′の構成について説明する。
図13に示すように、制御部130’は、位置検出部131’と、異常検出部132’と、揮発性メモリ制御部133と、揮発性メモリ134と、原因解析部135′と、時刻情報生成部136と、不揮発性メモリ制御部137と、不揮発性メモリ138と、通信制御部139とを有する。なお、揮発性メモリ制御部133と、揮発性メモリ134と、時刻情報生成部136と、不揮発性メモリ制御部137と、不揮発性メモリ138とは、上記第1実施形態とほぼ同様である。
位置検出部131’は、絶対位置検出部1314と、相対位置検出部1312と、多回転検出部1315とを備える。なお、相対位置検出部1312は、上記第1実施形態と同様である。
絶対位置検出部1314は、上記受光アレイPAの複数の受光素子が出力するアブソリュート信号に基づいて、モータMの絶対位置を検出するように構成されている。すなわち、絶対位置検出部1314は、モータMの絶対位置を測定するタイミングにおいて、受光アレイPAの複数の受光素子からアブソリュート信号を取得する。そして、絶対位置検出部1314は、取得したアブソリュート信号のそれぞれを2値化し、モータMの絶対位置を表すビットデータに変換する。そして、絶対位置検出部1314は、予め定められたビットデータとモータMの絶対位置との対応関係に基づいて、モータMの絶対位置を検出する。
そして、位置検出部131’は、絶対位置検出部1314により検出されたモータMの絶対位置に、相対位置検出部1312により検出された1ピッチ内のモータMの相対位置を重畳する。これにより、位置検出部131’は、アブソリュート信号に基づく絶対位置よりも高分解能なモータMの絶対位置を検出する。その後、位置検出部131’は、検出したモータMの絶対位置を表す位置データ(以下では「第3位置データ」ともいう。)を生成し、該第3位置データを、通信制御部139へ出力する。通信制御部139へ入力された第3位置データは、該通信制御部139によって上記制御装置CTへ出力される。
また、位置検出部131’は、上記第3位置データと、上記インクリメンタル信号に対応するデータ、及び、上記アブソリュート信号に対応するデータを含むデータ(以下では「第2絶対位置関連データ」ともいう。)とを、異常検出部132’へ出力する。
多回転検出部1315は、上記磁気検出用センサ140が出力する多回転信号に基づいて、モータMの多回転量を検出するように構成されている。すなわち、多回転検出部1315は、モータMの多回転量を測定するタイミングにおいて、磁気検出用センサ140から多回転信号を取得する。そして、多回転検出部1315は、取得した多回転信号に基づいて、モータMの多回転量を検出する。
そして、位置検出部131’は、多回転検出部1315により検出されたモータMの多回転量を表す位置データ(以下では「第4位置データ」ともいう。)を生成し、該第4位置データを、通信制御部139へ出力する。通信制御部139へ入力された第4位置データは、該通信制御部139によって上記制御装置CTへ出力される。
また、位置検出部131’は、上記第4位置データと、上記多回転信号に対応するデータ(以下では「多回転量データ」ともいう。)とを、異常検出部132’へ出力する。
異常検出部132’は、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方に関する異常を監視するタイミングにおいて、状態情報を取得する。なお、異常検出部132’が監視する異常としては、エンコーダ100及びモータMの少なくとも一方に関する異常であれば特に限定されるものではない。但し、説明の便宜上、以下では、異常検出部132’が監視する異常がモータMの絶対位置関連の異常及びモータMの多回転量関連の異常である場合について説明する。そして、異常検出部132’が監視する異常がモータMの絶対位置関連の異常及びモータMの多回転量関連の異常である本実施形態では、異常検出部132’は、以下のような状態情報を取得する。
すなわち、異常検出部132’は、モータMの絶対位置関連の異常を監視するタイミングにおいて、状態情報として、位置検出部131’から、上記第3位置データと、上記第2絶対位置関連データとを取得する。この場合、異常検出部132’は、取得した第3位置データや第2絶対位置関連データに基づいて、所定の検出条件を満たすか否かを判断することで、モータMの絶対位置関連の異常を検出する。なお、異常検出部132’によるモータMの絶対位置関連の異常の検出方法は、特に限定されるものではないが、その検出方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、正常時は、インクリメンタル信号に対応する位置(番地)と、アブソリュート信号に対応する位置(番地)とが一致する。一方、異常時は、インクリメンタル信号に対応する位置と、アブソリュート信号に対応する位置とが一致しないことがある。
そこで、異常検出部132’は、取得した第2絶対位置関連データに基づいて、インクリメンタル信号に対応する位置と、アブソリュート信号に対応する位置とを検出する。そして、異常検出部132’は、インクリメンタル信号に対応する位置と、アブソリュート信号に対応する位置とが一致するか否かを判断する。そして、インクリメンタル信号に対応する位置と、アブソリュート信号に対応する位置とが一致しなかった場合に、異常検出部132’は、モータMの絶対位置関連の異常を検出する。
なお、上記で説明した異常検出部132’によるモータMの絶対位置関連の異常の検出方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
また、異常検出部132’は、モータMの多回転量関連の異常を監視するタイミングにおいて、状態情報として、位置検出部131’から、上記第4位置データと、上記多回転量データと、上記インクレメンタル信号に対応するデータを取得する。この場合、異常検出部132’は、取得した第4位置データや多回転量データ、インクレメンタル信号に対応するデータに基づいて、所定の検出条件を満たすか否かを判断することで、モータMの多回転量関連の異常を検出する。なお、異常検出部132’によるモータMの多回転量関連の異常の検出方法は、特に限定されるものではないが、その検出方法の一例について説明すれば、例えば次のような方法が挙げられる。
すなわち、正常時は、インクリメンタル信号に対応する多回転量と、多回転信号に対応する多回転量とが一致する。一方、異常時は、インクリメンタル信号に対応する多回転量と、多回転信号に対応する多回転量とが一致しないことがある。
そこで、異常検出部132’は、取得した上記インクレメンタル信号に対応するデータと多回転データに基づいて、インクリメンタル信号に対応する多回転量と、多回転信号に対応する多回転量とを検出する。そして、異常検出部132’は、インクリメンタル信号に対応する多回転量と、多回転信号に対応する多回転量とが一致するか否かを判断する。そして、インクリメンタル信号に対応する多回転量と、多回転信号に対応する多回転量と一致しなかった場合に、異常検出部132’は、モータMの多回転関連の異常を検出する。
なお、上記で説明した異常検出部132’によるモータMの多回転関連の異常の検出方法は、あくまで一例であって、これ以外の方法が用いられてもよい。
そして、異常検出部132’は、モータMの絶対位置関連の異常及びモータMの多回転関連の異常のそれぞれの監視に使用した状態情報を、揮発性メモリ制御部133へ順次出力する。また、異常検出部132’は、モータMの絶対位置関連の異常及びモータMの多回転関連の異常のそれぞれを検出した場合に、アラーム信号を、通信制御部139、原因解析部135′、不揮発性メモリ制御部137、及び時刻情報生成部136へ出力する。
原因解析部135’は、第3解析部1353と、第4解析部1354とを備える。
第3解析部1353は、状態情報として、受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号と、受光アレイPAの複数の受光素子が出力するアブソリュート信号とに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び受光アレイPAの受光素子のどちらが異常かを特定するように構成されている。すなわち、第3解析部1353は、モータMの絶対位置関連の異常を表すアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134に記録された、状態情報としての上記第2絶対位置関連データに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び受光アレイPAの受光素子のどちらが異常かを特定する。この第3解析部1353による特定方法は、特に限定されるものではない。
第4解析部1354は、状態情報として、受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号と、磁気検出用センサ140が出力する多回転信号とに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び磁気検出用センサ140のどちらが異常かを特定するように構成されている。すなわち、第4解析部1354は、モータMの多回転関連の異常を表すアラーム信号が入力された場合に、揮発性メモリ134に記録された、状態情報としての上記多回転データ及びインクリメンタル信号に対応するデータに基づいて、受光アレイPIの受光素子及び磁気検出用センサ140のどちらが異常かを特定する。この第4解析部1354による特定方法は、特に限定されるものではない。
そして、原因解析部135’は、第3解析部1353により解析を行った場合には、その解析結果を、不揮発性メモリ制御部137へ出力し、第4解析部1354により解析を行った場合には、その解析結果を、不揮発性メモリ制御部137へ出力する。
<2−2.本実施形態による効果の例>
以上説明した本実施形態に係るエンコーダ100によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では特に、原因解析部135’の第3解析部1353が、状態情報として、受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号と、受光アレイPAの複数の受光素子が出力するアブソリュート信号とに基づいて、受光アレイPIの受光素子と受光アレイPAの受光素子とのどちらが異常かを特定する。また、原因解析部135’の第4解析部1354が、状態情報として、受光アレイPIの複数の受光素子が出力するインクリメンタル信号と、磁気検出用センサ140が出力する多回転信号とに基づいて、受光アレイPIの受光素子と磁気検出用センサ140とのどちらが異常かを特定する。これにより、異常が検出された場合に、受光アレイPIの受光素子、受光アレイPAの受光素子、及び磁気検出用センサ140のいずれが異常かを容易に特定することができる。
<3.変形例等>
以上、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した各実施形態に限定されるものではない。開示の実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
例えば、上記各実施形態では、不揮発性メモリ制御部137は、原因解析部135,135’による解析結果等を、エンコーダ100の不揮発性メモリ138に記録するように構成されていたが、本開示の実施形態は、この例に限定されるものではない。例えば、不揮発性メモリ制御部137は、原因解析部135,135’による解析結果等を、エンコーダ100の外部の不揮発性メモリ(例えば、いわゆるネットワーククラウドで連結された不揮発性メモリ等)に記録するように構成されてもよい。
また、上記各実施形態では、光学モジュール120の基板BA側に光源121及び受光素子が共に配置された、いわゆる「反射型エンコーダ」であるエンコーダ100を用いた場合を例にとって説明したが、本開示の実施形態は、この例に限定されるものではない。例えば、ディスクを挟み光源121と受光素子とが対向して配置された、いわゆる「透過型エンコーダ」であるエンコーダを用いてもよい。この場合、ディスクに光源121から出射された光を透過する複数の透過スリットを有するスリットトラックを形成すればよい。これにより、受光素子は、光源121から出射されスリットトラックの透過スリットを透過した光を受光することが可能である。
なお、以上の説明における「平行」とは、厳密な意味での平行ではない。すなわち、「平行」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に平行」という意味である。
また、以上の説明における「均等」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「均等」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に均等」という意味である。
また、図5及び図13中に示す矢印は、信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図9に示すフローチャートは、実施の形態を図示する手順に限定するものではなく、趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記各実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
その他、一々例示はしないが、上記各実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。