以下、本発明による粘接着層及び粘接着シートの実施の形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<コンクリート異常検知シート>
図1は、本発明によるコンクリート異常検知シートを示す模式断面図である。本発明によるコンクリート異常検知シート1は、離型シート11と、離型シート11の一方の面に設けられた接着層10と、接着層10の離型シート11側とは反対側の面に設けられたコンクリート異常検知部材12とを備えている。
コンクリート異常検知部材12とは、コンクリートに貼り付けられて、コンクリートの表面の状態変化を検知し得る部材である。例えば、コンクリート表面のクラックの発生やその成長を検知したり、コンクリート表面の水分濃度や塩分等のイオン濃度の変化を検知し得るものである。このようなコンクリート異常検知部材は、従来公知のものを使用することができ、例えば導電性線材、光ファイバー、繊維含浸プラスチックフィルム等が挙げられる。また、コンクリート異常検知部材は市販のものを使用してもよく、例えば、ひび割れ検知センサーKZCA−A(東京測器研究所社製)等が挙げられる。
コンクリート異常検知シートを構成する接着層10は、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により硬化反応が促進される硬化性樹脂組成物を含む。後記するように、コンクリート異常検知シートは、コンクリートの表面に貼り合わせた後に離型シートを剥離することにより、コンクリート異常検知部材12を、接着層10を介してコンクリート表面に固定することができる。その際、接着剤として、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により硬化反応が促進される硬化性樹脂組成物を用いると、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱を行う前(即ち、コンクリート異常検知シートの使用前)は、硬化性樹脂組成物の硬化反応は進行しないため保存安定性が優れる。一方、コンクリート異常検知シートの使用時に電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱を行うことにより、速やかに硬化反応が進行して硬化性樹脂組成物が硬化するため、迅速にコンクリート異常検知部材12をコンクリート表面に固定することができる。また、従来のように、接着剤をコンクリート表面に塗布してからンクリート異常検知部材を貼り合わせる必要がないため、現場での施工作業の時間を大幅に短縮することができる。
上記したような電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により硬化反応が促進される硬化性樹脂組成物としては、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する硬化性化合物と、硬化剤として、分子中にメルカプト基を有する化合物と、硬化触媒として、下記一般式(I)で表される電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により塩基性物質を発生する塩基発生化合物と、を含んでなる硬化性樹脂組成物が挙げられる。
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、または、置換基を含んでもよく不飽和結合を含んでもよい、直鎖状または分岐鎖を有する炭化水素基を表すが、R
1およびR
2の少なくとも1つは該炭化水素基であり、R
1およびR
2は結合して環状構造を形成していてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素または1価の置換基を表し、
R
5〜R
8は、それぞれ独立して、水素または1価の置換基を表すが、R
5〜R
8の2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、
R
9は加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基を表す。)
分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する硬化性化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のアルコール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が、分子量の異なるグレードのものを広く入手可能で、粘接着性や反応性等を任意に設定できるという点においてより好ましい。また、トリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂は、該エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物からなる塗工液を塗布後、乾燥(100℃,10分間)した際に均一膜を形成し、室温になった際に離型PETからの剥離を容易にするという点において好ましい。
上記硬化性化合物は、短時間での硬化を実現するために、反応性が高く、かつ、エポキシ当量が低いことが好ましい。例えば、エポキシ当量が100〜800g/eq.範囲内であることが好ましい。ここで、エポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
上記硬化性化合物の市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「EPICLON EXA−835LV」、「EPICLON 850S」、「EPICLON N740」、「EPICLON EXA−830CRP」、「EPICLON EXA−830LVP」、「EPICLON HP−820」、三菱化学株式会社製の「jER 828」、「jER 806」、「jER 1001」、「jER 801N」、「jER 807」、「jER 152」、「jER 604」、「jER 630」、「jER 871」、「jER YX8000」、「jER YX8034」、「jER YX4000」、日本触媒株式会社製の「アクリセット BPA−328」、日産化学株式会社製の「TEPIC SP」、株式会社ADEKA製のEP4100シリーズ、EP4000シリーズ、EPUシリーズ、ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイドシリーズ、エポリードシリーズ、EHPEシリーズ、東都化成株式会社製のYDシリーズ、YDFシリーズ、YDCNシリーズ、YDBシリーズ、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールシリーズ、共栄社化学株式会社製のエポライトシリーズ等が挙げられる。
上記硬化性化合物の質量平均分子量は、例えば、100〜5000の範囲内のものが好適であるが、形成される粘接着剤層の接着力、耐久性等を向上させるためには、上記範囲内において高分子量のものを用いることがより好ましい。硬化性化合物は固体状、液状のいずれのものでも使用することができる。
また、硬化性化合物として、上記以外の他に末端にエポキシ基を有する比較的高分子量の樹脂でエポキシ樹脂と反応可能なフェノキシ樹脂等を配合することができる。フェノキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM骨格(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP骨格(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ骨格(4,4’−シクロヘキシィジエンビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂等、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等を挙げることができる。前記フェノキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量が5000〜100000であることが好ましい。さらに好ましくは10000〜70000である。質量平均分子量が前記下限値以上であれば、製膜性を向上させる効果を十分に得ることができる。一方、前記上限値以下であれば、溶解性を維持することができて好適である。なお、本明細書において、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算の値を意味する。
上記した硬化性化合物の含有量は、目的とする用途により適宜設定する必要があるが、硬化性樹脂組成物全体を100質量部としたときに15〜95質量部であることが好ましい。含有量を15質量部以上とすることで、高温での弾性率を向上させることができ、95質量部以下とすることで、線膨張係数を高めて熱応力の緩和効果が得られる。
上記した硬化性化合物を硬化させるための硬化剤として、メルカプト基を有する化合物を使用することが好ましい。分子内にメルカプト基を2個以上有するものであれば、従来公知のものを使用できるが、分子内にメルカプト基を3個以上有するものがより好適である。メルカプト基の数が1個であると、硬化性化合物との反応点が低下し、接着性や耐久性が劣る場合がある。
メルカプト基を有する化合物のうち、ジチオールとして、例えば、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン等が知られている。
また、トリチオールとして、例えば、トリチオグリセリン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)メシチレン、トリス(メルカプトメチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、2,4,5−トリス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオランが知られている。
また、テトラチオールとして、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、テトラメルカプトブタン、ペンタエリトリチオールが知られている。
上記した硬化剤の含有量は、目的とする用途により適宜設定する必要があるが、上記硬化性化合物の1エポキシ当量に対して、その活性水素当量が0.7〜1.2当量となるように配合されることが好ましい。メルカプト基を有する化合物の含有量が0.7当量以上で比較的低温でも硬化性が良好で硬化後の接着強度にも優れるという効果が顕著に発揮される。一方、メルカプト基を有する化合物の含有量が1.2当量を超えると初期粘着性及び接着性の低下やコスト高という不都合を生ずるおそれがある点で好ましくない。
硬化性樹脂組成物には、上記した硬化性化合物および硬化剤に併用して、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により、脂肪族アミンを塩基性物質として発生する塩基発生化合物が含まれることが好ましい。なお、本明細書において、電磁波とは、波長を特定した場合を除き、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、および、電磁波と粒子線を総称する放射線または電離放射線を含むものとする。電磁波としては、特に限定されるものではなく、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。具体的には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線等が挙げられる。これらの中でも、特に取り扱いが簡便であり、比較的高いエネルギーを得ることが可能な紫外線がより好適である。
照射光としては、200〜450nmの波長域の光が好ましく、300〜450nmの波長域の光がより好ましい。光源は、特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、炭素アーク灯、水銀蒸気アーク、蛍光ランプ、アルゴングローランプ、ハロゲンランプ、白熱ランプ、低圧水銀灯、フラッシュUVランプ、ディープUVランプ、キセノンランプ、タングステンフィラメントランプ、太陽光等が挙げられる。これらの光源を用い、積算光量が0.5〜6J/cm2、好ましくは1〜6J/cm2の範囲となるように光を照射することにより、上記接着剤を硬化させることができる。積算光量が0.5J/cm2未満であると、硬化が不十分となるおそれがあり、6J/cm2未満を超えると、作業時間が長くなるおそれがあるため、好ましくない。
硬化触媒として用いられる塩基発生化合物は、上記一般式(I)で表されるものであり、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により、脂肪族アミンを発生する。芳香族アミンを発生する塩基発生化合物に比べて溶解性が高く、塩基発生化合物の濃度を相対的に高くできるため、低温であっても熱硬化性を高めることができる。
上記一般式(I)で表される塩基発生化合物は、電磁波の照射により、又は電磁波の照射と加熱とを組み合わせることにより、少ない照射量で、効率的に塩基を発生することが可能である。なお、電磁波の照射により塩基性物質を発生する塩基発生化合物とは、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波が加えられると、塩基を発生する化合物をいうものとする。
上記一般式(I)で表される塩基発生化合物は、上記特定構造を有するため、電磁波が照射されることにより、一般式(I)中の(−CR
4=CR
3−C(=O)−)部分がトランス体からシス体へと異性化し、更に加熱によって環化し、塩基性物質であるアミン、NHR
1R
2を生成する。そして、下記に示すように、このアミンが、メルカプト基を有する化合物の硬化触媒として作用する。
すなわち、電磁波を照射した後、加熱しなければ、塩基を発生しないため、後述する分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有する硬化性化合物と共存させても硬化反応が進行しない。したがって、硬化性化合物の保存安定性が低下することがないので、例えば、光酸発生剤を使用する場合のように、硬化遅延剤により硬化の進行を調整する必要がない。硬化遅延剤には、親水性のある材料を使用するため、硬化物に親水性のある材料が残り、透湿バリア性が低下する原因となるが、電磁波を照射した後、加熱しなければ、塩基を発生しない塩基発生化合物を使用した場合には、そのようなおそれが生じない。また、ラジカルによる硬化やカチオンによる硬化では、電磁波の照射後すぐに硬化が進行するため、可使時間が短く作業性に劣るが、本発明において使用される硬化性樹脂組成物であれば、電磁波照射後の加熱により塩基を発生する塩基発生化合物を含有するので、電磁波照射後の加熱を調整することで、可使時間の調整が可能となり作業性が良好となる。また、電磁波の照射前は硬化しないので保存安定性に優れるとともに、電磁波の照射後は100℃以下の低温で速やかに硬化が進行するため、上記したように、コンクリート異常検知部材をコンクリート表面に迅速に固定することができる。
また、塩基発生化合物から塩基性物質を発生させる際の加熱温度は、塩基発生化合物が置かれた環境の温度(例えば、室温)による加熱であっても良く、その場合、徐々に塩基が発生する。また、電磁波の照射時に副生される熱によっても塩基が発生するため、電磁波の照射時に副生される熱により実質的に加熱も同時に行われても良い。使用条件や所望の物性により異なるが、反応速度を高くし、効率よく塩基を発生させる点から、塩基を発生させるための加熱温度としては、30℃以上であることが好ましく、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上である。効率的に塩基を発生させるために、塩基発生化合物を用いる際には、露光後又は露光と同時に加熱を行うことにより塩基を発生する。露光と加熱を交互に行ってもよい。最も効率が良い方法は、露光と同時に加熱する方法である。
本発明においては、塩基発生化合物が、光潜在性硬化触媒として用いられる。光潜在性硬化触媒として塩基発生化合物を利用する際に求められる性能としては、(ア)樹脂に添加し、利用する際に析出しないこと(溶解性)、(イ)効率よく塩基を放出すること(塩基発生の感度)、(ウ)メルカプト基を有する化合物と反応しやすい構造の塩基性物質を放出すること(触媒活性)が挙げられる。桂皮酸アミド型の塩基発生化合物において、この3つの性能は、発生するアミンの構造と、芳香環に導入する置換基によって制御できる。
上記一般式(I)において、R1及びR2は、それぞれ独立した水素又は1価の置換基を有してもよく、かつ、不飽和結合を含んでもよい炭化水素基である。中でも、R1及びR2の両方が1価の置換基であると、異性化の感度が向上し、発生する塩基が2級アミンとなるため、1級アミンに比べて塩基性が強くなり、加熱温度が低温(例えば、120℃)であっても触媒活性が高くなる。この点で、R1及びR2の両方が1価の置換基であることが好ましい。
特に、R1又はR2の少なくとも一方がハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基であると、アミド結合周辺の立体的な大きさが小さくなることで、光異性化反応が進行しやすくなるため、異性化の感度が高くなる。また、発生する塩基性物質の立体的な嵩が小さくなることで、発生したアミンがメルカプト基を有する化合物と反応しやすくなり、結果として触媒活性が向上する。この点で、R1又はR2の少なくとも一方がハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基であることがさらに好ましい。R1又はR2の少なくとも一方がハロゲン原子で置換されてもよいメチル基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられるが、中でも原子半径がより小さいフッ素原子や塩素原子であることが触媒活性の向上の点から好ましく、置換されるハロゲン原子の数は、触媒活性の向上の点から少ないほうが好ましく、2個以下であることが好ましく、更に1個以下であることが好ましい。中でも特に、ハロゲン原子で置換されてもよいメチル基がメチル基であることが、触媒活性の向上の点から好ましい。
さらに、R1及びR2が結合して窒素原子を含む環状構造を形成すると、炭素−炭素二重結合周囲の共役鎖が拡張しやすくなり異性化の感度が高くなる。また、発生したアミンがメルカプト基を有する化合物と反応しやすくなるため、触媒活性が向上する。この点で、R1及びR2が結合して窒素原子を含む環状構造を形成することが好ましい。また、R1及びR2が結合し形成された窒素原子を含む環状構造が、5から7員環であることが、異性化の感度が高くなる点でより好ましい。
炭化水素基としては不飽和結合を含んでいてもよく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。これらの炭化水素基は、当該炭化水素基中に置換基を含んでいてもよく、また、直鎖状であっても分岐鎖を含む直鎖であっても、それらが結合し環状構造を形成しても良い。ここで、分岐鎖とは、枝分かれした炭化水素基を有する構造をいい、当該構造に含まれる枝分かれしたそれぞれの炭化水素基をも指す。置換基を含む炭化水素基が結合し、複素環を形成していてもよい。置換基を含んで良い炭化水素基は、当該炭化水素基に含まれる2つ以上の分岐鎖が結合して環状構造を形成していても良く、置換基を含む2つ以上の分岐鎖が結合し、ヘテロ原子を含む複素環を形成していても良い。環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、縮合環、及び複素環、並びに当該脂環式炭化水素、縮合環、及び複素環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。なお、本段落での環状構造は、例えば、R1がシクロヘキシル基である等、R1又はR2の中の環状構造を示すものであり、上述した、R1とR2とが結合してできる窒素原子を含む環状構造とは異なる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。これらの炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20であるアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数1〜20であるアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基等の炭素数1〜20であるアルキニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、フルオレニル基等の炭素数6〜20のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアラルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜23であるシクロアルキル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜23であるシクロアルケニル基等が挙げられる。
本発明において、置換基とは、水素原子と置き換えることが可能な水素以外の原子又は原子団をいう。置換基としては、水素原子と置き換えることが可能な水素以外の原子あるいは原子団であれば特に限定されるものではなく、例えば、−XR10で表される原子団等が挙げられる。ここで、Xは、直接結合又は2価の連結基であり、−XR12は、当該Xと、水素原子または水素原子と置き換えることが可能な水素以外の原子あるいは原子団であるR12とを連結させた原子団であれば特に限定されるものではない。(但し、Xが直接結合且つR12が水素原子で、−XR10が水素原子となる場合を除く)。
上記Xは、直接結合、又は2価の連結基であれば、特に限定されるものではなく、例えば、酸素原子、硫黄原子からなる結合や、炭素原子、ケイ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び/又はリン原子を含む原子団及び炭素原子を含む原子団等が挙げられる。Xとしては、オキシ基、チオ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、オキシチオカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基、カルボニルチオ基、オキシカルボニルチオ基、イミノ基、オキシイミノ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、ホスホナト基、スルフィニル基、スルホニル基が挙げられる。
R10は、水素又は水素と置き換えることが可能な水素以外の原子又は原子団であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ハロゲン原子(−F,−Cl,−Br,−I)、ヒドロシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、置換基を含んでもよいホスホノ基、置換基を含んでも良い不飽和結合を含んでもよい炭化水素基、置換基を含んでも良い不飽和結合を含んでもよいシリル基、置換基を含んでも良いアミノ基が挙げられる。上記R10として好ましい原子又は原子団としてはで上記ハロゲン原子、ヒドロシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、置換基を有してもよく、かつ、不飽和結合を含んでもよい炭化水素基、置換基を有してもよく、かつ、不飽和結合を含んでもよいシリル基、置換基を含んでも良いアミノ基が挙げられる。
上記置換基を含んでも良く不飽和結合を含んでもよい炭化水素基としては分岐鎖を含んでも良く2つ以上の分岐鎖が結合して環状構造形成していても良く、置換基を含む2つ以上の分岐鎖が結合し複素環を形成していても良い。複素環としては、芳香族性を有していても有していていなくても良く、環状エーテル、ラクトン、ラクタム、芳香族複素環等が挙げられる。置換基を含んでも良く不飽和結合を含んでもよい炭化水素基の例としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基が挙げられる。これらの炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20であるアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数1〜20であるアルケニル基、エチニル基、2−プロピニル基等の炭素数1〜20であるアルキニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、フルオレニル基等の炭素数6〜20のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアラルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜23であるシクロアルキル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜23であるシクロアルケニル基、エチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、σ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、σ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、フラン環、チオフェン環、2H−ピラン環、4H−チオピラン環、ベンゾフラン環、1−ベンゾチオフェン環、2H−クロメン環、1H−2−ベンゾピラン環、キサンテン環、チアントレン環等の複素環から水素を1つ除去した複素環基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基等の炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等の炭素数7〜26であるアリールオキシアルキル基等が挙げられる。また、含んで良い置換基としては、置換基−XR10と同様であって良い。
上記置換基を含んでも良い不飽和結合を含んでもよいシリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、トリメトキシシリル基、ジメトキシメチル基、メトキシジメチル基等のアルコキシシリル基等が挙げられる。また、含んで良い置換基としては、置換基−XR10と同様であって良い。
また、R10における、置換基を含んで良くヘテロ原子の結合を含んで良いアミノ基(−NH(−R11)、−N(−R12)(−R13))の例としては、R11、R12、R13が、窒素原子との結合末端にヘテロ原子の結合を含んで良く、置換基を含んで良い炭化水素基が挙げられる。窒素原子との結合末端にヘテロ原子の結合を含んで良く、置換基を含んで良い炭化水素基としては、窒素原子と結合し得る限り、置換基−XR10と同様であって良い。
置換基を含んで良くヘテロ原子の結合を含んで良いアミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリールオキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリールオキシカルボニルアミノ基が挙げられる。
置換基:−XR10は、直接結合又は2価の連結基であるXと、水素又は水素と置き換えることが可能な水素以外の原子あるいは原子団であるR10とを連結させた原子団であれば、特に限定されるものではない。−XR10の例としては、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、ヒドロシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、上記に示した置換基を含んでもよく不飽和結合を含んでもよい炭化水素基(以下、「上述の炭化水素基」という場合がある)、上記に示した置換基を含んでもよく不飽和結合を含んでもよいシリル基、上記に示した置換基を含んでもよいアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、エチルへキシロキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基(−OR14:R14は上述の炭化水素基)、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基(−OAr:Arは置換基を有してもよいアリール基、)、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(−OCOR15:R15は上述の炭化水素基)、カルバモイルオキシ基(−OCONR16R17:R16、R17は同一であっても異なっていても良い上述の炭化水素基であり、結合していてもよい)、シアノオキシ基(シアナト基)(−OCN)、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜20のチオアルコキシ基(−SR18:R18は上述の炭化水素基)、ベンジルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基(−SAr:Arは置換基を有してもよいアリール基、)、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等のアシルチオ基(−SCOR19:R19は上述の炭化水素基)、シアノチオ基(チオシアナト基)(−SCN)、ホルミル基(−COH)、アシル基(−COR20:R20は上述の炭化水素基)、アルコキシカルボニル基(−COOR21:R21は上述の炭化水素基)、ベンジルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(−COOAr:Arは置換基を有してもよいアリール基)、カルバモイル基(−CONR22R23:R22、R23は同一であっても異なっても良い上述の炭化水素基であり、結合していてもよい)、チオアシル基(−CSR24:R24は上述の炭化水素基)、アルコキシチオカルボニル基(−CSOR25:R25は上述の炭化水素基)が挙げられる。
特に好ましい−XR10として、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、上記置換基を含んで良い炭化水素基、上記置換基を含んで良いシリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シアノオキシ基(シアナト基)、チオアルコキシ基、アリールチオ基、アセチルチオ基、アシルチオ基、シアノチオ基(チオシアナト基)、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオアシル基、アルコキシチオカルボニル基が挙げられ、さらに好ましいものとしてヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、アリールチオ基が挙げられる。これらの置換基を含むアミンを利用することで、溶解性の向上につながる。
また、NHR1R2は、塩基(本発明においては、「塩基性物質」を単に、塩基という。)である。ところで、R1及びR2に、アミノ基が含まれると、塩基発生化合物自体が塩基となり、エポキシ基と反応し、経時安定性が損なわれるおそれがある。この点で、R1及びR2は、それぞれ、アミノ基を含まない有機基であることが好ましい。一方で、全てのアミノ基が経時安定性を損なうものではなく、全てのアミノ基が一般式(I)のR1及び/又はR2の1つ以上の末端に、上記一般式(I)のR1及び/又はR2を除いた残基が更に結合している状態であれば、R1又はR2にアミノ基が含まれていても、経時安定性を損なうことはない。
生成するアミンは、NHR1R2であり、R1及びR2はそれぞれ独立に水素又は置換基を含んでもよく不飽和結合を含んでもよい炭化水素であるため、生成するアミンは、1級又は2級アミンである。また、アミンには、それぞれ脂肪族アミン及び芳香族アミンがあるが、溶解性が高く、高濃度の塩基発生化合物を得やすい点で脂肪族アミンが好ましい。
脂肪族1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソアミルアミン、tert−ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘプタンアミン、オクチルアミン、2−オクタンアミン、2,4,4−トリメチルペンタン−2−アミン、シクロオクチルアミン等が挙げられる。
脂肪族2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−2−プロパノールアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン;エチルメチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−tert−ブチルメチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−メチルアダマンタン−1−アミン、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、N−メチル−3−エトキシプロピルアミン、N−メチル−3−プロポキシプロピルアミン、N−メチル−3−ブトキシプロピルアミン、N−メチル−3−イソプロポキシプロピルアミン、N−メチル−3−へプチルオキシプロピルアミン、N−メチル−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、N−メチルテトラヒドロフルフリルアミン等のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を有するアミン;アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、メチルアジリジン、ジメチルアジリジン、メチルアゼチジン、ジメチルアゼチジン、トリメチルアゼチジン、メチルピロリジン、ジメチルピロリジン、トリメチルピロリジン、テトラメチルピロリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、トリメチルピペリジン、テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジン、4−ヒドロキシピペリジン、2−ピペリジンメタノール、3−ピペリジンメタノール、4−ピペリジンメタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンカルボン酸エチル、4−アセトアミドピペリジン、モルホリン等の脂環式アミンも挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を有するアミン、脂環式アミンが異性化の感度が良く、触媒活性が大きいため好ましい。
更に、生成するNHR1R2は、アミド結合を形成可能なNH基を1つだけ有するモノアミン等の塩基だけでなく、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基であってもよい。
生成するNHR1R2がNH基を2つ以上有する塩基の場合、上記一般式(I)のR1及び/又はR2の1つ以上の末端に、アミド結合を形成可能なNH基を有する塩基を、電磁波の照射、又は、電磁波の照射と加熱とにより発生するような電磁波潜在性部位が更に結合している構造が挙げられる。上記電磁波潜在性部位としては、上記一般式(I)のR1及び/又はR2の1つ以上の末端に、上記一般式(I)のR1及び/又はR2を除いた残基が更に結合している構造が挙げられる。
1級のアミノ基を2つ以上有するアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミン等を挙げられる。
2級のアミノ基を2つ以上有するアミンとしては、例えば、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,5−ペンタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、N,N’−1,8−オクタンジアミン等の脂肪族アルキレンジアミン;ビス(2−メチルアミノエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メチルアミノエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メチルアミノエトキシ)エチル]エーテル等の一般式CH3NHCH2CH2O(CH2CH2NH)nCH3で示されるオキシ基を含む脂肪族アルキレンジアミン等が挙げられる。
上記した一般式(I)において、R3,R4としては、R1,R2と同様の水素又は置換基を利用できる。R3及びR4としては、高感度を達成しやすい点から、いずれも水素であることが好ましい。
一方、一般式(I)中のR3及びR4のうち少なくとも1つが水素ではなく、上記特定の置換基である場合、R3及びR4の両方共が水素の場合と比べて、有機溶剤に対する溶解性が更に向上したり、高分子前駆体との親和性が向上する。例えば、R3及びR4のうち少なくとも1つが、アルキル基やアリール基等の置換基を有してもよく、かつ、不飽和結合を含んでもよい炭化水素基である場合、有機溶剤に対する溶解性が向上する。また、例えばR3及びR4のうち少なくとも1つがフッ素等のハロゲンである場合、フッ素等のハロゲンを含有するエポキシ基を2つ以上有する硬化性化合物及びポリチオール系硬化剤との親和性が向上する。このように、R3及び/又はR4を所望の有機溶剤やエポキシ基を2つ以上有する硬化性化合物及びポリチオール系硬化剤に合わせて適宜置換基を導入することにより、所望の有機溶剤に対する溶解性が向上したり、所望のエポキシ基を2つ以上有する硬化性化合物及びチオール系硬化剤との親和性が向上する。
上記した一般式(I)において、R5〜R8は、それぞれ独立した水素又は1価の置換基であり、同一であっても異なっていてもよく、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。R5〜R8における置換基としては上述した−XR10と同様のものを用いることができる。
R5〜R8としては、溶解性の向上及び高感度化を達成するために、1つ以上1価の置換基を有すること、又はR5〜R8の2つ以上が結合して環状構造を形成することが好ましい。一般式(I)の構造において、カルボニル結合のα位およびβ位に位置するα炭素−β炭素間の二重結合がトランス体からシス体への異性化反応を効率よく進める要因としてはいくつかあり、例えば上記炭素−炭素二重結合周囲の立体障害の大きさ、上記炭素−炭素二重結合周囲に広がる共役鎖の電子状態等が挙げられる。置換基R5〜R8に、置換基を少なくとも1つ導入する又はR5〜R8の2つ以上が結合して環状構造を形成することにより、上記炭素−炭素二重結合周囲の共役鎖が拡張し、塩基発生の感度を向上することができる。また、R5〜R8に、置換基を少なくとも1つ導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。芳香族環の共役鎖を伸ばすような置換基を導入することにより、吸収波長を長波長にシフトすることができる。また、溶解性や組み合わせるエポキシ基を2個以上有する化合物とメルカプト基を有する化合物との相溶性が向上するようにすることもできる。これにより、組み合わせるエポキシ基を2個以上有する化合物とメルカプト基を2個以上有する化合物の吸収波長も考慮しながら、硬化性樹脂組成物の感度を向上させることが可能である。
所望の波長に吸収波長をシフトさせるために、どのような置換基を導入したらよいかという指針としては、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表が参考として挙げられる。これらを参考とすることで、化合物の極大吸収波長がどの程度長波長化するかの目安を知ることができる。
芳香環に導入する置換基は、導入する構造や位置によって効果が異なる。例えば、R6に置換基を導入すると、効率よく感度を向上させることが可能であり、かつ、後述する硬化性樹脂組成物を厚膜として用いる場合に適している点で好ましい。R7に置換基を導入すると、高感度で且つ溶剤溶解性が良好な化合物となる傾向があるため、塩基発生化合物が良好な溶剤溶解性を要求される場合に適している点で好ましい。
なお、R5〜R8の2つ以上が結合して環状構造を形成して環状構造になっていてもよい。環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、縮合環、及び複素環、並びに当該脂環式炭化水素、縮合環、及び複素環からなる群より選択される2種以上が組み合されてなる構造であってもよい。例えば、R5〜R8は、それらの2つ以上が結合して、R5〜R8が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していてもよい。R5〜R8の2つ以上が結合して、R5〜R8が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合は、炭素−炭素二重結合周囲の共役鎖が拡張し、感度が向上する点から好ましい。
桂皮酸アミド型の塩基発生化合物において、桂皮酸アミド骨格を有し、かつ、特徴的な置換基を有する化合物として、特開2011−89119号公報、特開2011−68888号公報に開示されたものが挙げられる。これら2つの公報に記載されている構造、溶解性が高くなりやすい点で、R5〜R8として好ましい。
R5〜R8における置換基として、直接結合又は2、3、4、5価の連結基であるYと、水素又は水素と置き換えることが可能な水素以外の原子あるいは原子団であるR23とを連結させた原子団であれば、特に限定されるものではない。R5〜R8における置換基の例としては、ヒドロシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、上記に示した不飽和結合を含んでもよい炭化水素基、上記に示した不飽和結合を含んでもよいシリル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピロキシ基、t−ブトキシオキシ、エチルへキシロキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基(−OR24:R24は上述の炭化水素基)、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基(−OAr:Arはアリール基、)、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(−OCOR25:R25は上述の炭化水素基)、シアノオキシ基(シアナト基)(−OCN)、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜20のチオアルコキシ基(−SR26:R26は上述の炭化水素基)、ベンジルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基(−SAr:Arはアリール基、)、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等のアシルチオ基(−SCOR27:R27は上述の炭化水素基)、シアノチオ基(チオシアナト基)(−SCN)、ヒドロキシアミノ基(−NHOR28:R28は水素又は上述の炭化水素基)、アシルアミノ基(−NHCOR29:R29は水素又は上述の炭化水素基)、ホルミル基(−COH)、アシル基(−COR30:R30は上述の炭化水素基)、アルコキシカルボニル基(−COOR31:R31は上述の炭化水素基)、ベンジルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(−COOAr:Arはアリール基)、カルバモイル基(−CONR32R33:R32、R33はそれぞれ独立に上述の炭化水素基であり、結合していてもよい)、チオアシル基(−CSR34:R34は上述の炭化水素基)、アルコキシチオカルボニル基(−CSOR35:R35は上述の炭化水素基)が挙げられる。
R5〜R8における置換基の特に好ましいものとして、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、上記置換基を含んで良い炭素数4以上の炭化水素基、上記置換基を含んで良いシリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シアノオキシ基(シアナト基)、チオアルコキシ基、アリールチオ基、アセチルチオ基、アシルチオ基、シアノチオ基(チオシアナト基)、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオアシル基、アルコキシチオカルボニル基が挙げられる。
R5〜R8の少なくとも一つは、炭素数4以上であり置換基を含んでもよく、不飽和結合を含んでもよい、直鎖又は分岐鎖を有する直鎖の炭化水素基であるか、酸素原子及び硫黄原子を含む結合を介して置換基がベンゼン環に結合することがより好ましい。具体的な態様として、上記置換基を含んで良い炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、アリールチオ基が挙げられる。なお、上記の「酸素原子及び硫黄原子を含む結合」は、Xとしてオキシ基、チオ基を利用した場合を指す。これらを利用することで、溶解性の向上、塩基発生の感度の向上につながる。
上記した一般式(I)において、R9は、水素原子、又は、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基であり、具体的には、WO2010/113813国際公開公報パンフレットに記載されている。ここで、「脱保護可能な」とは、−OR9から−OHに変化する可能性があることをいう。R9が水素原子である場合、塩基発生化合物がフェノール性水酸基を含むため、保存安定性を損なう可能性がある。
一方、R9が上記保護基である場合、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護されて、水酸基を生成する。加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基でフェノール性水酸基を保護することにより、R9が上記保護基である塩素発生剤は、非常に高い保存安定性を有するという利点を有するが、脱保護反応後の残渣が脱ガスの原因になる可能性がある、脱保護という余分なプロセスが必要となる場合がある、保護基を導入する分高コストとなるといった欠点もある。そのため、R9に保護基を導入するか否かは、利用する用途によって適宜選択する必要がある。R9は、本発明で用いられる塩基発生化合物において一般式(I)中に存在するアミド基が分解しない条件下で、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能なフェノール性水酸基の保護基であれば、特に限定されず用いることができる。例えば、アミド結合は、三臭化ホウ素や三塩化アルミニウム等の強ルイス酸や硫酸、塩酸、硝酸等の強酸等が存在する強酸性下における加熱や、水酸化ナトリウム等の強塩基が存在する強塩基性下における加熱により分解する。従って、このような強酸性又は強塩基性条件下での加熱でしか脱保護されない保護基は、本発明の塩基発生化合物に用いられる保護基としては不適切である。R9は、溶解性や相溶性の向上あるいは合成時の反応性の変化等を目的として、当該塩基発生化合物と組み合わせて用いられる化合物の種類や、塩基発生化合物の適用方法や合成方法により適宜選択されるものである。
上記した一般式(I)で表される塩基発生化合物は、トランス体およびシス体の化学構造を取り得るが、本発明においては、トランス体のみを用いてもよいし、トランス体とシス体の混合物を用いてもよい。
塩基発生化合物の含有量は、後述する硬化性化合物100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。塩基発生化合物の含有量が1質量部未満であると、発生する塩基が当量よりも少なくなり、硬化が十分に進行しない場合があるため、好ましくない。20質量部を超えると、電磁波の照射により塩基が過剰に発生し一部の塩基が硬化性化合物の官能基と反応しなかったり、更に十分な接着強度が得られなかったりする場合があるため好ましくない。
本発明において使用される塩基発生化合物の一例としては、下記一般式(II)で表される塩基発生化合物が好ましい。
式中のR
40〜R
49は、それぞれ独立した水素又は置換基である。
上記一般式(II)で表される塩基発生化合物の合成方法を、下記式(III)の塩基発生化合物を例に挙げて説明する。なお、上記一般式(II)で表される塩基発生化合物の合成方法はこれに限定されるものではなく、複数の従来公知の方法にて合成することができる。
一般式(III)で表される塩基発生化合物は、例えば、以下の方法にて合成することができる。まず、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド及び2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルベンズアルデヒドをメタノールに溶解し、これに炭酸カリウムのメタノール溶液をゆっくりと滴下し、撹拌する。薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」という。)により反応の終了を確認した後、ろ過を行い、炭酸カリウムを除き、減圧濃縮する。濃縮後、水酸化ナトリウム水溶液を加え、撹拌する。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し、反応液を酸性にする。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムで洗浄することにより、2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸を得る。次いで、窒素雰囲気下、上記にて得られた2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸を脱水テトラヒドロフランに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加える。その後、ピペリジンを加え、終夜で撹拌する。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解する。クロロホルムで抽出し、炭酸水素水溶液、塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行った後、濃縮することにより、上記一般式(III)で表される塩基発生化合物を得ることができる。なお、合成された上記一般式(III)で表される塩基発生化合物は、塩基としてピペリジンを発生する。
上記のようにして所望の塩基を発生する塩基発生化合物を容易に合成することができる。例えば、塩基として4−ヒドロキシピペリジンを発生させたい場合には、R44がヒドロキシル基であり、R45が水素原子である塩基発生化合物を合成すればよく、その際には、上記合成方法においてピペリジンの代わりに4−ヒドロキシピペリジンを加えればよい。
本発明に使用される硬化性樹脂組成物は、上記した成分に加えて、感光性を向上させるために光増感剤を併用してもよい。光増感剤としては、例えば、アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。
また、熱伝導性、難燃性を向上させることができるという効果から、無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、タルク等の金属酸化物、アルミニウム、金、銀、ニッケル、鉄等の金属微粒子、あるいはカーボンブラック、ガラス等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機フィラーの含有量は、目的とする用途により適宜設定する必要があるが、樹脂組成物全体を100質量部に対して、0〜1000質量部であることが好ましい。
接着層は、コンクリートおよびコンクリート異常検知部材との界面接着性を向上させるため、シランカップリング剤を硬化性樹脂組成物に添加してもよい。例えば、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等のエポキシ基を反応しうる官能基を有するシランカップリング剤を併用することが好ましい。上記エポキシ基と反応し得る官能基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類や、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ結合含有シラン類や、β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−カルボキシメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤は、樹脂組成物全体を100質量部に対して、0.1〜12質量部添加することが好ましく、0.5〜10重量部添加することがより好ましい。
また、耐熱性、密着性、樹脂強度等がより優れた成形体を得るために、硬化性樹脂組成物には充填剤が添加されていてもよい。例えば、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリウム、ジルコニア、クレー、水酸化アルミニウム等、アクリルゴムやシリコンゴム等の有機充填剤、シリカ、クレー、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等の無機中空体や、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズ等の有機球状体や、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーン等の有機中空体や、ガラス、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、セルロース、アセテート等からなる単繊維等が挙げられる。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて必要に応じて、接着性付与剤、粘度を調整するための粘度調整剤、チキソトロープ性(揺変性)を付与するためのチキソトロープ剤(揺変性付与剤)、引張り特性等を改善されるための物性調整剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料等の着色剤、ホウ酸エステルやリン酸エステル、無機酸、有機酸等の保存性向上剤、ポリイミド樹脂、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を適量配合してもよい。
また、接着層(硬化性樹脂組成物)が硬化する前に、接着層に凝集力を付与して粘着性を持たせることにより、コンクリート異常検知シートをコンクリート表面に仮固定することができるため、作業性がより向上する。接着層に凝集力を付与し得る樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム系、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ケトン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記したような熱可塑性樹脂を硬化性樹脂組成物に含有させることにより、コンクリート異常検知シートの施工作業をより迅速に行うことができる。
上記の熱可塑性樹脂は、分子中にエポキシ基を少なくとも2個のエポキシ基を有する硬化性化合物と反応する官能基を有する高分子であることが好ましく、さらにエポキシ基と反応する官能基は、特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基の他、エポキシ基そのものも挙げられる。なかでもエポキシ基を有する高分子が、可撓性に優れた硬化物を得られる観点から好ましい。
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又はその種々の誘導体の重合体、共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、ジメチル(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸アミド、イミドアクリレートTO−1492(東亞合成工業製)等のイミド基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、上記共重合体は、上記(メタ)アクリル酸及び/又はその種々の誘導体と、アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、アリル誘導体等との共重合体も含まれる。これらの中でも、接着性の観点からエポキシ基を有するものが好ましい。該エポキシ基の導入は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル化合物を用いることにより行うことができる。なお、エポキシ基を有する重合体と、有しない重合体との混合物であってもよい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との反応生成物からなるポリエステル樹脂が挙げられる。上記多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸等の3価以上の芳香族多価カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の5員環もしくは6員環を含む脂環式多価カルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族多価カルボン酸等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテル構造を有する多価アルコール;ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール、ロジンオール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の熱可塑性樹脂の中でも、ガラス転移温度(Tg)は、−40℃〜30℃であることが好ましい。Tgが−40℃未満であると、接着強度が不足するおそれがある。また、Tgが30℃を超えると、初期粘着力が不足するおそれがある。
熱可塑性樹脂の含有量は、目的とする用途により適宜設定する必要があるが、樹脂組成物全体を100質量部としたときに5質量部以上75質量部以下であることが好ましい。2質量部以上とすることで、応力緩和性に優れ、耐サーマルサイクル性に効果を示す。また、75質量部を超えると、硬化した際の接着強度や耐久性が不十分なものとなる。なお、「樹脂組成物全体」は、上記「硬化性化合物」および「熱可塑性樹脂」のほか、上記した他の樹脂も含んだ樹脂組成物の全体であることを示す。
本発明によるコンクリート異常検知シートに使用される離型シート11としては、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のものを好適に使用できる。また、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルムなどの離型紙用基材の片面または両面に離型層(図示せず)を形成したものを用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂などがある。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
離形層は、離形層成分を分散および/または溶解した塗液を、離型紙用基材フィルムの片面に塗布し、加熱乾燥および/または硬化させて形成する。塗液の塗布方法としては、公知で任意の塗布法が適用でき、例えば、ロールコート、グラビアコート、スプレーコートなどである。また、離形層は、必要に応じて、基材フィルムの少なくとも片面の、全面または一部に形成してもよい。
離型シートの厚さは特に限定されないが、例えば、5μm以上、200μm以下の厚さのものを好適に使用することができる。
このような離型シートとしては、市販のものを使用してもよく、例えば、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−01)等が挙げられる。
<コンクリート異常検知シートの施工方法>
上記したコンクリート異常検知シート1に電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱を行い、次いでコンクリート異常検知シート1から離型シート11を剥離して接着層10を露出させ、露出した接着層10をコンクリート3の表面に貼り合わせることにより、図2に示すように、コンクリート異常検知部材12を、接着層10を介してコンクリート3に固定することができる。本発明においては、接着層が、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱により硬化反応が促進される硬化性樹脂組成物を含むため、電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱を行う前は、コンクリート異常検知シートの接着層が使用前に硬化してしまったりすることがなく保存安定性に優れている。一方、コンクリート異常検知シートの使用時に電磁波の照射または電磁波の照射後の加熱を行うことにより、速やかに硬化反応が進行して硬化性樹脂組成物が硬化するため、迅速にコンクリート異常検知部材をコンクリートの表面に固定することができる。そのため、従来のような接着剤の調製(計量)、混合、塗布等の現場での前準備工程を省略することができ、作業時間を大幅に短縮できるとともに、コンクリート面が垂直や天井面であるような場合であっても、作業者に負担をかけることなくコンクリート異常検知部材の貼り合わせ作業を行うことができる。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
実施例1
<合成例1:塩基発生化合物A>
100mLフラスコにメタノール15mLを入れ、そこに炭酸カリウム2.00gを加えた。次いで、50mLフラスコにメタノール10mLを入れ、そこにエトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)2.67g(6.2mmol)及び2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルベンズアルデヒド1.7g(6.2mmol)を添加し、溶解させた後、よく撹拌した上記炭酸カリウムのメタノール溶液をゆっくりと滴下した。そして、3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認した。次いで、ろ過により炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加えて、1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除き、濃塩酸を滴下して反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムで洗浄することにより2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸を1.7g得た。続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中で、2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルケイ皮酸1.0g(3.19mmol)を脱水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.73g(3.83mmol,1.2eq)を加えた。30分後に、アミンとしてピペリジン(東京化成社製)129mg(1.52mmol、0.95eq)を加えた後、終夜で撹拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することにより、下記式(III)に示す塩基発生化合物Aを1.0g得た。
<合成例2:塩基発生化合物B>
上記2−ヒドロキシ−4−(5−エチルヘキシルオキシ)−5−エチルベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−5−(5−エチルヘキシルオキシ)ベンズアルデヒド1.5g(6.2mmol)を添加したほかは、合成例1と同じ工程を経ることで、下記式(IV)に示す塩基発生化合物Bを0.8g得た。
なお、製造された塩基発生化合物は、1H NMR測定により、化学構造を確認した。1H NMR測定は、核磁気共鳴装置JEOL JNM−LA400WB(日本電子社製)を用いて行った。
コンクリート異常検知シートの作製
硬化性化合物であるエポキシ樹脂(商品名「jER 828」,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:184〜194g/eq.,質量平均分子量:370,三菱化学社製)100質量部と、メルカプト基を有する硬化剤であるPEMP(ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、商品名「QX40」,粘度:400〜550mPa・s/25℃,メルカプタン当量:125〜137g/eq,三菱化学社製)70質量部と、塩基発生剤A(発生塩基:ピペリジン)5質量部とを、撹拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合撹拌した後、脱泡させて実施例1に使用する硬化性樹脂組成物を得た。
続いて、離型シート(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、上記硬化性樹脂組成物を塗工後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて塗工して接着層を形成した。
接着層の表面に、コンクリート異常検知部材としてひび割れセンサー(KZCA−A、東京測器研究所社製)を貼り合わせることのより、コンクリート異常検知シートを作製した。
コンクリート異常検知シートの施工
上記のようにして得られたコンクリート異常検知シートに、紫外線照射装置(製品名「DRE−10/12QN」,Hバルブ使用,フュージョンUVシステムズジャパン社製)を用いて、波長300〜370nmの領域で光強度が2000mJとなるように紫外線を照射した。続いて、コンクリート異常検知シートから離型シートを剥離して接着層を露出させ、コンクリート異常検知シートの接着層の面を、プライマー処理済みのコンクリート板に貼り合わせた。コンクリート異常検知シートに紫外線を照射してからコンクリート板に貼り合わせるまでに要した時間は2分程度であった。
コンクリート異常検知シートをコンクリート板に貼り合わせた後、23℃、50%RHの環境下で3日間養生し接着層を硬化させた。ひび割れセンサーの一端をテンシロン(オリエンテック製RTA−1T)に固定して、90°、300mm/minで引張り、接着強度を測定したところ、ひび割れセンサーがコンクリート板から剥離する前に、ひび割れセンサーが破断した。
実施例2
実施例1において、コンクリート異常検知部材として、ひび割れセンサー(KZCA−A、東京測器研究所社製)をコンクリートクラックセンサー(KKクラックセンサー、倉敷紡績社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてコンクリート異常検知シートを作製した。次いで、得られたコンクリート異常検知シートを、実施例1と同様にしてコンクリート板に貼り合わせた。この施工作業時のコンクリート異常検知シートに紫外線を照射してからコンクリート板に貼り合わせるまでに要した時間は2分程度であった。また、実施例1と同様にしてコンクリート板からコンクリートクラックセンサーを剥離する際の接着強度の測定をおこなったところ、コンクリートクラックセンサーがコンクリート板から剥離する前に、ひび割れセンサーが破断した。
比較例1
2液性のエポキシ系接着剤(クイック5、コニシ社製)を準備し、主剤と硬化剤とを精密天秤にて軽量し、所定の割合となるよう主剤と硬化剤と混合し、1〜2分間十分に撹拌した。次いで、混合した2液性エポキシ系接着剤を、刷毛を用いてプライマー処理済みのコンクリート板に塗布し、接着剤を介してひび割れセンサー(KZCA−A、東京測器研究所社製)をコンクリート板に貼り合わせた。2液性エポキシ系接着剤の準備から、ひび割れセンサーをコンクリート板に貼り合わるまでに要した時間は15分程度であった。
また、ひび割れセンサーをコンクリート板に貼り合わせた後、実施例1と同様にして接着強度を測定したところ、ひび割れセンサーがコンクリート板から剥離する前に、ひび割れセンサーが破断した。
比較例2
比較例1において、コンクリート異常検知部材として、ひび割れセンサー(KZCA−A、東京測器研究所社製)をコンクリートクラックセンサー(KKクラックセンサー、倉敷紡績社製)に変更した以外は、比較例1と同様にしてコンクリート異常検知シートを作製した。この施工作業時のコンクリート異常検知シートに紫外線を照射してからコンクリート板に貼り合わせるまでに要した時間は15分程度であった。また、実施例1と同様にしてコンクリート板からコンクリートクラックセンサーを剥離する際の接着強度の測定をおこなったところ、コンクリートクラックセンサーがコンクリート板から剥離する前に、ひび割れセンサーが破断した。