JP2015084720A - 加熱調理用油脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】 入手が容易で安価な物質を用いて、加熱調理用油脂における問題点を改善し、長期間の使用にも耐え得る加熱調理用油脂を提供すること。
【解決手段】 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含み、かつ、リン分を0.5〜100ppm含有させることで、脂肪酸組成や物理性状を変化させることなく、加熱劣化耐性を有する加熱調理用油脂を得ることができる。また、本発明品を使用した加熱調理食品の製造時に、加熱による劣化を防止することできる。
【選択図】なし

Description

本発明は、加熱調理用油脂に関し、より詳しくは、加熱時の劣化に対する耐性を有する加熱調理用油脂に関する。
油脂は優れた熱媒体としての特性があり、食品調理における「焼く」「炒める」「揚げる」といった加熱調理用途に広く利用されている。油脂は加熱することにより、熱酸化、熱分解、熱重合、加水分解などの反応が進み、着色、酸価上昇、粘度上昇、酸敗臭の発現等油脂の劣化が起こり、調理環境や加熱調理用油脂の品質が悪化する等の問題を引き起こす。ここで言う酸敗臭とは、油脂を加熱調理に用いた場合、劣化に応じ生じるオフフレーバーであり、油臭さ等の風味低下、過剰な場合は油酔いを引き起こす事もある。酸敗臭を構成する物質としては、加熱調理により、酸化、加水分解、重合、分解など様々な化学反応が起こり、油脂に含まれるオレイン酸やリノール酸から生じるn- ヘキサナール、2- ヘキセナール、2,4- デカジエナールなどの飽和・不飽和酸化物や低分子化合物などが挙げられる。
特にパーム系油脂は、加熱による着色の速度が、大豆油や菜種油などに比べると早いため、パーム系油脂をフライ油として用いたり、あるいはスプレー油としてオーブン焼成などの加熱調理に用いたりすると、加熱による色調変化が急速に生じやすい。そのため、パーム系油脂をフライ油として使用すると、風味に問題がなくとも、比較的頻繁にフライ油を交換する必要があり、また、スプレー後、焼成された調理品が着色するといった問題もあり、加熱調理用途でのパーム系油脂の使用は、敬遠される傾向がある。
揚げ物を調理する際の加熱着色を抑制する先行技術として、加熱時の油脂の劣化を促進する物質として知られているリン脂質、Fe分などをできる限り除去するために精製度合を上げる手法が取られている。しかし、油脂の精製度合いはすでにかなり高く、さらに精製度合いを上げると、逆に油脂の酸化安定性が低下するという問題がある。
油脂の加熱安定性を向上させるために、乳化剤などを配合する技術、エステル交換技術、油糧 種子を 交配、 突然変異、 遺伝子 組み換え技術などにより任意の 脂肪酸組成にすることが提案されている。しかしこのような技術により調製された油脂は高コストになるという問題がある。
加熱時の色調悪化を抑制する手段として、特許文献1〜3には、油脂中にリン脂質由来成分を一定量残存・添加する方法が開示されている。特許文献1では、精製された食用油脂に、圧搾および/または抽出油、あるいは脱ガム油をリン分が0.1〜10.0ppmとなるように添加することを含む、180℃での加熱耐性に優れた揚げ物用油脂組成物の製造方法が示されている。
特許文献2では、リン脂質を0.5〜70ppmの量で含有する原料油脂を脱臭する工程を含み、かつ前記脱臭する工程を経た後に得られる食用油脂に、脱臭する工程を経ていないリン脂質を添加せず、前記原料油脂中に含有されるリン脂質の少なくとも一部が添加されたものであり、前記脱臭する工程を経た後の食用油脂中に、リン脂質が0.5〜70ppmの量で含有されてなる食用油脂を得ることを特徴とする食用油脂の製造方法が示されている。
また、特許文献3では、ヨウ素価が10以上81未満のパーム系油脂を10重量%以上含有する油脂組成物に、リン分をパーム系油脂に対して0.07ppm〜0.7ppm添加することを含む、油脂組成物の製造方法が示されている。
パーム系油脂に限った場合、加熱による色調の悪化を抑制する方法は、これまでにもいくつか検討されており、例えば、特許文献4には、パーム油を比表面積250〜350m2/g、三二酸化鉄含有量0〜3重量%、および酸化ケイ素含有量70〜90重量%の酸性白土で処理する方法が提案されている。また、特許文献5には、パーム原油を精製する工程において、脱色処理前に脂肪酸およびβカロチンを低減する方法が提案されているが、この方法はパーム原油を精製する方法に過ぎず、また、特許文献6には、ステアリン酸カルシウム、オクタン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムおよびベヘン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のカルシウム塩による、油脂の劣化抑制方法が提案されているが、この方法では油脂中に脂肪酸カルシウムを多量に添加しなければ効果が得られず、油脂が白濁してしまうといった問題があり、さらに、上記いずれの方法でも、パーム系油脂の加熱による色調の悪化を十分に抑制することが出来なかった。また、特許文献7においては、ヨウ素価55以上の食用パームオレインに、アスコルビン酸カルシウムを2〜30ppm含有する加熱調理用油脂が、更に特許文献8においては、吸着剤でトコトリエノール含量を低減することを特徴とする製法が提案されている。
特許第4095111号 特開2010−227039号 特許第4931095号 特開平4−183794号 特開2006−316254号 特開2008−19432号 特開2010−104308号 再表2009/075278号公報
前記のとおり、特許文献1〜3では、油脂中にリン脂質由来成分を一定量残存・添加する方法が開示されているが、より加熱着色抑制効果を追い求めると、リン脂質由来成分であるレシチンを増量しても着色抑制効果を高めることはできないので、かかる効果を高めるためにはレシチンの添加のみでは不十分であることがわかった。
本出願人は、特許文献7や特許文献8で着色を抑制する技術を完成しているが、消費者の要望に応えるためには、更に着色を抑制する必要があった。またかかる発明においては加熱時の臭いの発生を抑制する効果は十分ではなかった。
このように、これまでいくつかの検討が行われてきたが、いずれの方法においても、加熱調理時の油脂の着色を抑制するに十分な効果を得られるものではなく、また、消費者のコストダウン要望の高まりから、平易な方法で油脂の加熱時の着色を抑制する技術の開発が望まれてきた。
本発明の目的は、入手が容易で安価な物質を用いて、加熱調理用油脂における問題点である加熱時の劣化を抑制することにより、長期間の使用にも耐え得る加熱調理用油脂を提供することにある。
本発明者らは、これらの諸問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含み、かつ、リン分を油脂に添加する事で、強く加熱による劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
(1) 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含み、かつ、リン分を油脂中に0.5〜100ppm含有することを特徴とする加熱調理用油脂、
(2) 薬品賦活処理された活性炭が燐酸賦活処理されたものである、(1)の加熱調理用油脂、
(3) リン酸塩由来のリン分を11〜100ppm含有する、(1)の加熱調理用油脂、
(4) 薬品賦活処理された活性炭を用いて吸着処理を行う工程A、およびリン酸塩の水溶液を油脂中に分散させる工程Bを含む(3)の加熱調理用油脂の製造方法、
(5) 工程Aで得られた食用パームオレインを10%以上含む油脂に対して、工程Bを行う(4)の加熱調理用油脂の製造方法、
(6) フライ油用である、(1)の加熱調理用油脂、
(7) (1)〜(3)のいずれかの加熱調理用油脂を含有する食品、
(8) 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含む油脂中に、リン分を0.5〜100ppm含有することを特徴とする、加熱調理用油脂の着色および酸敗臭を抑制する方法、
(9) 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含む油脂中に、リン分を0.5〜100ppm含有することを特徴とする、加熱調理用油脂の着色を抑制する方法、
(10) 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含む油脂中に、リン分を0.5〜100ppm含有することを特徴とする、加熱調理用油脂の酸敗臭を抑制する方法、である。
本発明により、油脂の組成や物理性状を変化させることなく、安価に、加熱劣化が抑制された加熱調理用油脂を得る事が出来る。
本発明の加熱調理用油脂は、薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを用い、更に油脂中にリン酸塩を含有することを特徴とする。
本発明で使用することができる、薬品賦活処理された活性炭としては、おがくず、木質チップ、竹、ヤシ殻、石炭等を原料に、燐酸、塩化亜鉛、硫酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の薬品による賦活処理がなされた活性炭を用いることができる。その中でも、燐酸賦活処理した活性炭は、少ない吸着剤量で、より効率的に加熱着色を抑制できるため好ましい。
本発明で使用する薬品賦活処理された活性炭は、吸着処理がなされる食用パームオレインに対し、0.1%以上の添加で加熱着色を抑制できるが、好ましくは1%以上、より好ましくは3〜4%以上である。ただし、4%以上の添加は加熱着色抑制効果が向上しないため、非効率であり、費用対効果の点から好ましくない。
本発明におけるヨウ素価55以上の食用パームオレインの製造方法において、薬品賦活された活性炭を吸着剤として用いる際に、ヨウ素価55以上の食用パームオレインに吸着剤を添加し、一定時間、50〜150℃の加温真空下で、撹拌接触させる方法が例示できるが、脱色工程において、白土とともに吸着剤を添加し、トコトリエノール含量を低減させることもできる。また、吸着剤を充填したカラム処理でも同等な効果を得ることができる。
本発明の加熱調理用油脂は、リン分を油脂中に0.5 〜100ppm含有する。リン分を含む原材料としては、リン酸塩やリン脂質が例示でき、リン脂質としては市販されているレシチンが使用できる。より好ましい加熱劣化抑制効果が得られる点で、好ましくは、リン酸塩を使用することができる。優れた加熱着色抑制効果が得られるため、油脂中の好ましいリン分の含有量は、11〜100ppm、より好ましくは、12〜100ppm、さらに好ましくは、12〜90ppmである。100ppmより多いと加熱調理用油脂を保存する際に、リン酸塩が沈降してしまうため、好ましくない。本明細書において、リン酸塩を添加して得られるリン分は、添加されるリン酸塩に含まれるリンの含量を表す。
本発明に使用することができるリン酸塩としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ウルトラリン酸ナトリウム、および、これらの水和物などが例として挙げられる。またこれらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのリン酸塩の内、水溶液とした場合のpHが中性に近いものが好ましく、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が例示される。更に、2種類以上のpHの異なるリン酸塩の組合せや、1種類以上のリン酸塩にリン酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリを混合する事で、pHを調製したリン酸塩混合物も使用する事ができ、その際に調製されるpHは5〜7が好ましい。
本発明の加熱調理用油脂中のリン酸塩の含有量は、優れた加熱着色抑制効果が得られるため、好ましくは11〜300ppm、より好ましくは35〜200ppm、さらに好ましくは、50〜100ppmである。リン酸塩の含有量に応じ強く加熱着色を抑制できるが、300ppmを超えると加熱調理用油脂を保存する際に、リン酸塩が沈降してしまうため、好ましくない。
本発明の加熱調理用油脂として使用できる油脂は、特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、胡麻油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、落下生油、米糠油、小麦胚芽油、玄米胚芽油、ハトムギ油、ガーリックオイル、椿油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油、ホホバ油、マカダミアンナッツ油、アボガド油、ひまし油、亜麻仁油、紫蘇油、ユーカリ油、豚脂、牛脂、馬油、魚油、卵油、乳脂肪などの食用油脂およびこれらを分別、水素添加またはエステル交換等を施した加工油脂を1種または2種以上組み合わせて、使用することができる。本発明の効果を十分に発揮するためには、安定性に優れ加熱調理時の臭いの発生が少ないパーム系油脂が配合された油脂を用いる事が好ましい。また、パーム系油脂の中では、常温で液状であるものの加熱着色が比較的生じやすいヨウ素価55以上のパームオレインが配合された油脂に用いる事がより効果的である。
本発明の加熱調理用油脂は、既知の酸化防止剤を併用する事が出来る。併用する酸化防止剤としては、天然及び合成された酸化防止剤が使用でき、例えば、各種トコフェロール類が挙げられ、α、β、γ、δ等が濃縮されたトコフェロール製剤やミックストコフェロール、あるいはトコフェロールと同等の機能を有するトコトリエノール類も使用できる。その他、L−アスコルビン酸ステアレート、L−アスコルビン酸パルミテート、エリソルビン酸ナトリウム、ごま抽出物、カテキン類、茶抽出物等、油脂の酸化防止剤として使用可能な酸化防止剤は、上記例に限定すること無く使用することができる。その添加量は、通常0.0002〜2重量%であり、好ましくは0.002〜0.05重量%である。
本発明の加熱調理用油脂は、本発明の有効成分を加熱調理用油脂中に多く含有させるために、乳化剤を用いる事ができる。乳化剤は、W/O型乳化作用を有する乳化剤であれば特に制限はなく、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等を使用することができる。好ましい乳化剤として、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが使用できる。例えば、市販されている理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100、ポエム PR-300、阪本薬品工業株式会社製 SYグリスターCRS-75、SYグリスターCR-ED、太陽化学株式会社製 サンソフト818H等が例示できる。
本発明の加熱調理用油脂は、必要に応じて、香料、色素、シリコーン等を添加することができる。
本発明の加熱調理用油脂は、本来精製された油脂中に含まれていないリン分を含有することを特徴とする。これは、リン酸塩やリン脂質を油脂中に添加し、分散させる事で製造することができるが、リン酸塩由来のリン分を含有することが好ましく、好ましい方法として、リン酸塩の水溶液を、油脂中に分散させる方法が例示できる。かかる方法で分散させる事で、より高濃度なリン酸塩を含有する油脂を安定し製造することができる。リン酸塩の水溶液を添加した油脂組成物は、必要に応じ、加温・減圧下で脱水処理する事も出来る。この際、温度50〜180℃、真空度0.5〜100Torrの条件下で脱水処理することが好ましい。
さらに本発明を用い、リン酸塩、基質(例えば、パームオレインなどの油脂)、乳化剤を混合することで、油中水型乳化組成物である加熱劣化抑制剤を得ることができ、この加熱劣化抑制剤を油脂に少量添加することで、油脂に加熱色調および/または酸敗臭発生の抑制効果を付与できる。例えば、70℃に加温したパームオレイン65重量部に対し、分散媒(乳化剤)としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)5重量部加えた後、20重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を30重量部加え良く攪拌し、ヘキサメタリン酸ナトリウム6重量%含有する加熱劣化抑制剤を得ることができる。使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては特に制限はなく理研ビタミン(株)製ポエムPR−100、ポエムPR−300等市販されている乳化剤を使用することができる。
本発明の加熱調理用油脂は加熱劣化耐性を有するが、好ましい効果は、加熱着色および/または酸敗臭等の臭いの発生を抑制することであり、より好ましい効果は加熱着色を顕著に抑制できることである。
本発明の加熱調理用油脂は、フライ油用、炒め物用、焼き物用、オーブン焼成調理時の際のスプレー油用などの加熱調理用途に幅広く利用することができる。加熱着色や、酸敗臭が発生しやすい点から、好ましい用途は、フライ油用途である。
以下、実施例を示し、本発明の効果をより明確にする。なお、例中のppmおよび%は重量基準を意味する。
(実施例1)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行った後、品温を70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂Aを得た。
(実施例2)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に油脂に対して3%のリン酸賦活木質活性炭を添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、品温を70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂Bを得た。
(実施例3)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行った後、品温を70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.036重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量36ppmの加熱調理用油脂Cを得た。
(実施例4)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行った後、品温を70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.24重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量240ppmの加熱調理用油脂Dを得た。
(実施例5)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行った後、品温を70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.30重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量300ppmの加熱調理用油脂Eを得た。
(実施例6)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行った該油脂100重量部に対して、レシチン(辻製油株式会社製、SLP-ペースト)を0.01重量部添加し、加熱調理用油脂Fを得た。
(比較例1)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行い加熱調理用油脂Gを得た。
(比較例2)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行い加熱調理用油脂Hを得た。
(比較例3)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して5%添加し、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行い油脂組成物Iを得た。
(比較例4)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して10%添加し、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行い加熱調理用油脂Jを得た。
(比較例5)
RBDパームオレイン(ヨウ素価:67)を用い、脱色時に活性白土を油脂に対して3%、吸着剤としてリン酸賦活木質活性炭を油脂に対して3%添加し、80℃〜130℃減圧下で、攪拌接触処理後濾別し、通常の脱臭処理を行った後、品温を70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.0015重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量1.5ppmの加熱調理用油脂Kを得た。
(比較例6)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、レシチン(辻製油株式会社製、SLP-ペースト)を0.01重量部添加し、加熱調理用油脂Lを得た。
(加熱試験による色、においの評価)
実施例1〜6および比較例1〜6の油脂を内径24mmの試験管3本に各20g計量し、アルミブロック試験管加熱装置にて、190℃で24時間加熱した後の油の色調を測定した。色調は、ロビボンド比色計により、1インチセルを用いて測定し、10R+Y値で示した。加熱後の酸敗臭等の劣化臭の測定を、190℃、24時間加熱した油脂の臭いをパネラー5名が官能的に評価することにより行った。評点は、最良が5点、最低が1点とする5段階評価とした。結果を表1に示す。
Figure 2015084720
(表1の考察)
表1より、リン酸賦活活性炭未処理や、リン酸賦活活性炭処理のみに比較し、リン酸賦活活性炭処理とリン酸塩やレシチンの添加を組み合わせる事で、効果的に食用パームオレインの加熱着色が抑制され、加熱劣化臭が抑制されている事が明らかである。
(実施例7)
実施例1で調製した加熱調理用油脂A 50重量部と食用大豆油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、ヨウ素価:131) 50重量部を混合し100重量部とした。品温70℃とした該油脂100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂Mを得た。
(比較例7)
比較例1で調製した加熱調理用油脂G 50重量部と食用大豆油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、ヨウ素価:131) 50重量部を混合し加熱調理用油脂Nを得た。
(加熱試験による色、においの評価)
実施例7および比較例7の油脂を内径24mmの試験管3本に各20g計量し、アルミブロック試験管加熱装置にて、190℃で24時間加熱した後の油の色調を測定した。色調は、ロビボンド比色計により、1インチセルを用いて測定し、10R+Y値で示した。加熱後の酸敗臭等の劣化臭の測定を、190℃、24時間加熱した油脂の臭いをパネラー5名が官能的に評価することにより行った。評点は、最良が5点、最低が1点とする5段階評価とした。結果を表2に示す。
Figure 2015084720
(表2の考察)
表2より、リン酸賦活活性炭処理とリン酸塩の添加を組み合わせる事による加熱着色抑制および加熱劣化臭抑制効果が、パーム油のみならず、パーム油と他の油脂の調合油であっても効果的であることが明らかである。
(実施例8)
実施例7の加熱調理用油脂Mを用いフライ試験を行った。フライ条件は、フライ鍋に、フライ用油脂を2Kg計量。油温を180±5℃に保ち。市販の冷凍コロッケを10分に1回1個4分揚げた。24時間連続してこの操作を繰り返し24時間後のフライ油の色調と風味を評価した。色調は、ロビボンド比色計により、1インチセルを用いて測定し、10R+Y値で示した。加熱後の酸敗臭等の劣化臭の測定は、パネラー5名が官能的に評価することにより行った。評点は、最良が5点、最低が1点とする5段階評価とした。
(比較例8)
比較例7の加熱調理用油脂Nを用い、実施例8と同様にフライ試験を行った。
実施例8および比較例8の結果を表3に示す。
Figure 2015084720
(表3の考察)
表3の結果より、リン酸賦活活性炭処理とリン酸塩の添加を組み合わせる事による加熱着色抑制および加熱劣化臭抑制効果が、実際の調理作業時にも効果的であることが明らかである。
本発明により、入手が容易で安価な物質を用いて、加熱調理用油脂における問題点である加熱時の劣化を抑制することにより、長期間の使用にも耐え得る加熱調理用油脂を提供することができる。

Claims (10)

  1. 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含み、かつ、リン分を油脂中に0.5〜100ppm含有することを特徴とする加熱調理用油脂。
  2. 薬品賦活処理された活性炭が燐酸賦活処理されたものである、請求項1に記載の加熱調理用油脂。
  3. リン酸塩由来のリン分を11〜100ppm含有する、請求項1に記載の加熱調理用油脂。
  4. 薬品賦活処理された活性炭を用いて吸着処理を行う工程A、及びリン酸塩の水溶液を油脂中に分散させる工程Bを含む請求項3に記載の加熱調理用油脂の製造方法。
  5. 工程Aで得られた食用パームオレインを10%以上含む油脂に対して、工程Bを行う請求項4に記載の加熱調理用油脂の製造方法。
  6. フライ油用である、請求項1に記載の加熱調理用油脂。
  7. 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の加熱調理用油脂を含有する食品。
  8. 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含む油脂中に、リン分を0.5〜100ppm含有することを特徴とする、加熱調理用油脂の着色及び酸敗臭を抑制する方法。
  9. 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含む油脂中に、リン分を0.5〜100ppm含有することを特徴とする、加熱調理用油脂の着色を抑制する方法。
  10. 薬品賦活処理された活性炭を用い吸着処理がなされたヨウ素価55以上の食用パームオレインを10%以上含む油脂中に、リン分を0.5〜100ppm含有することを特徴とする、加熱調理用油脂の酸敗臭を抑制する方法。
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