JP2015084103A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】厚みが200μm以下のガラスフィルムを基材とした光学フィルムであって、反りの抑制された光学フィルムを提供する。【解決手段】光学フィルム1は、透光性のガラスフィルム11と、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13とを備えている。ガラスフィルム11の厚みは、200μm以下である。第1の無機光学的機能膜12は、ガラスフィルム11の一方の表面11aの上に形成されている。第2の無機光学的機能膜13は、ガラスフィルム11の他方の表面11bの上に形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルム及びその製造方法に関する。特に、本発明は、厚みが200μm以下のガラスフィルムを基材とした光学フィルム及びその製造方法に関する。
従来、例えば光学素子の基材などとして、ガラス基材が多用されている。近年、光学素子などに対する小型化、薄型化の要求が高まる中、光学素子などに用いるガラス基材に対する薄型化の要望も高まってきている。それに伴って、ガラス基材のさらなる薄型化の研究が盛んに行われている。
例えば下記の特許文献1には、厚さが0.3mm未満のガラスフィルムが開示されている。特許文献1によると、厚さが0.3mm未満のガラスフィルムは耐擦傷性向上のために使用されている。
特開2007−331996号公報
上述のように、光学素子に関しても薄型化の要望が高まっているため、上記特許文献1に記載のような薄いガラスフィルムを光学素子の基材として用いることにより、光学素子の薄型化を図ることも考えられる。また、厚いガラス板とは異なり、薄いガラスフィルムは可撓性を有することが知られている。
しかしながら、ガラスフィルムの表面の上に反射防止膜などの無機光学的機能膜を形成した場合、無機光学的機能膜の膜応力により、ガラスフィルムが大きく反ってしまう。このため、従来、耐擦傷性、可撓性及び平坦性を有する光学素子を得ることができなかった。
そこで、本発明は、厚みが200μm以下のガラスフィルムを基材とした光学フィルムであって、反りの抑制された光学フィルムを提供することにある。
本発明の光学フィルムは、透光性のガラスフィルムと、第1及び第2の無機光学的機能膜とを備えている。ガラスフィルムの厚みは、200μm以下である。第1の無機光学的機能膜は、ガラスフィルムの一方の表面の上に形成されている。第2の無機光学的機能膜は、ガラスフィルムの他方の表面の上に形成されている。
厚みが200μm以下であるガラスフィルムは、可撓性を有する。このため、例えば、ガラスフィルムの一方の表面の上にのみ、無機光学的機能膜を形成すると、光学フィルムに大きな反りが発生してしまい、高い平坦性を有する光学フィルムを得ることができない。それに対して、本発明では、無機光学的機能膜が第1及び第2の無機光学的機能膜に分けられており、またガラスフィルムの一方の表面の上に第1の無機光学的機能膜が形成されており、ガラスフィルムの他方の表面の上に第2の無機光学的機能膜が形成されている。このため、第1及び第2の無機光学的機能膜の両方が圧縮応力または引張応力を付与するものである場合は、第1の無機光学的機能膜の応力と第2の無機光学的機能膜との応力とが打ち消しあう。その結果、光学フィルムに発生する反りを抑制することができる。
また、無機光学的機能膜を、膜数の多い多層膜(例えば40層以上)としたり、厚くして、光学フィルムに所望の光学特性を付与する場合がある。その場合において、ガラスフィルムの一方の表面の上にのみ、このような無機光学的機能膜を形成すると、光学フィルムに不当な反りが発生し、ガラスフィルムが破損するおそれがある。しかし、本発明では、ガラスフィルムの第1の無機光学的機能膜と第2の無機光学的機能膜との両方で光学フィルムの光学的機能が実現されている。このため、各無機光学的機能膜の厚みが薄く、または層数が少なくても、光学フィルム全体として、所望の光学特性を得ることができる。さらに、各無機光学的機能膜の応力が低下し、光学フィルムに発生する反りをより効果的に抑制することができる。特に、本発明の光学フィルムは、前記第1の無機光学的機能膜の膜数と、前記第2の無機光学的機能膜の膜数との合計が40層以上であることが好ましい。このようにすれば、所望の光学特性を得やすくなる。
なお、本発明において、「透光性」とは、光学フィルムに入射する光の少なくとも一部を透過させる性質を意味する。すなわち、透光性のガラスフィルムは、光学フィルムに入射する光の少なくとも一部を透過させる部材である。ここで、光学フィルムの使用波長域は、可視光域に限定されない。光学フィルムの使用波長域は、例えば、紫外波長域、近紫外波長域、近赤外波長域または赤外波長域であってもよい。また、本発明において、「透過させる」とは、少なくとも一部の光を透過させることを意味し、全ての光を透過させること(すなわち、光透過率が100%であること)のみを意味するものではない。
本発明において「無機光学的機能膜」とは、光学フィルムに何らかの光学的機能を付与する無機膜である。光学的機能としては、例えば、光反射抑制、光の選択的透過、光の選択的反射などが例示される。「無機膜」とは、無機材料を主成分とする膜である。
本発明において、第1及び第2の無機光学的機能膜のそれぞれの厚みは、ガラスフィルムの厚みの0.001倍〜0.8倍の範囲内にあることが好ましい。このようにすれば、所望の光学特性を確保しつつ、光学フィルムの反りを抑制しやすくなる。
本発明において、第1及び第2の無機光学的機能膜の少なくとも一方は、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された積層膜からなるものであってもよい。この構成によれば、光反射抑制機能や、波長分離機能などの光学的機能を光学フィルムに付与することができる。
なお、本発明において、低屈折率膜と高屈折率膜とは、相対的に定義される膜である。すなわち、低屈折率膜とは、高屈折率膜よりも低い屈折率を有する膜であり、逆に、高屈折率膜とは、低屈折率膜よりも高い屈折率を有する膜である。
低屈折率膜は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、フッ化アルカリ土類金属により形成することができる。
一方、高屈折率膜は、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化鉛、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化ジルコン、硫化亜鉛により形成することができる。
なお、複数の低屈折率膜を設ける場合、複数の低屈折率膜の全てが実質的に同じ屈折率を有している必要は必ずしもない。例えば、複数の低屈折率膜の中には、相互に屈折率が異なる低屈折率膜が存在してもよい。同様に、複数の高屈折率膜を設ける場合、複数の高屈折率膜の全てが実質的に同じ屈折率を有している必要は必ずしもない。例えば、複数の高屈折率膜の中には、相互に屈折率が異なる低屈折率膜が存在してもよい。
また、光学フィルムに発生する反りをさらに効果的に抑制する観点からは、第1の無機光学的機能膜における膜厚(t2)と、第2の無機光学的機能膜における膜厚(t3)との差(Δt)は、第1の無機光学的機能膜における膜数(t2)と第2の無機光学的機能膜における膜数(t3)とのうちの少ない方の1.5倍以下であることが好ましく、1.25倍以下であることがより好ましく、Δtがゼロ、すなわち、t2=t3であることがさらに好ましい。さらには、第1の無機光学的機能膜と第2の無機光学的機能膜とが同一の膜構成を有することが好ましい。このようにすれば、第1の無機光学的機能膜の膜応力と第2の無機光学的機能膜の膜応力との差をより小さくすることができるからである。
本発明の光学フィルムの製造方法は、上記本発明の光学フィルムを製造する方法に関する。本発明の光学フィルムの製造方法では、第1の保持部材の上に載置したガラスフィルムを、ガラスフィルムの一部を覆う第2の保持部材でガラスフィルムを第1の保持部材側に相対的に押圧することにより、第1及び第2の保持部材でガラスフィルムを平面状に保持した状態で、ガラスフィルムの第2の保持部材側の表面に第1の無機光学的機能膜を形成する。このようにすることにより、反りの抑制された光学フィルムを製造することができる。
第1の保持部材は、例えば平板状に形成されていてもよい。その場合は、ガラスフィルムの一方側の表面が第1の保持部材により覆われることとなるため、第1の無機光学的機能膜を形成した後に、第1及び第2の保持部材からガラスフィルムを取り出し、ガラスフィルムの第1の無機光学的機能膜側を第1の保持部材に向けてガラスフィルムを第1の保持部材の上に配置し、第2の保持部材でガラスフィルムを第1の保持部材側に相対的に押圧することにより、第1及び第2の保持部材でガラスフィルムを平面状に保持した状態で、ガラスフィルムの第2の保持部材側の表面に第2の無機光学的機能膜を形成することが好ましい。
一方、第1の保持部材がガラスフィルムの一部を覆い、ガラスフィルムの一部が第1の保持部材から露出している場合は、第1の無機光学的機能膜を形成した後に、第1及び第2の保持部材でガラスフィルムを平面状に保持した状態を維持しつつ、ガラスフィルムの第1の保持部材側の表面に第2の無機光学的機能膜を形成することが好ましい。この場合は、第1及び第2の保持部材でガラスフィルムを保持した状態のまま、第1及び第2の無機光学的機能膜を形成することができる。従って、光学フィルムの製造効率が向上する。
本発明において、第1の保持部材は、額縁状に形成されており、第1の保持部材を、ガラスフィルムの周縁部を覆うように配置し、第2の保持部材は、額縁状に形成されており、第2の保持部材を、ガラスフィルムの周縁部を覆うように配置することが好ましい。この場合、反りがさらに効果的に抑制された光学フィルムを製造することができる。
また、第2の保持部材を、ガラスシートが設けられている領域を複数に分断するように配置することが好ましい。この場合は、ガラスシート上に形成される無機光学的機能膜の膜応力を区画された領域毎に分断することができる。従って、反りがより抑制された光学フィルムを製造することができる。
本発明によれば、厚みが200μm以下のガラスフィルムを基材とした光学フィルムであって、反りの抑制された光学フィルムを提供することができる。
本発明の光学フィルムの一実施形態に係る略図的断面図である。 図3の線II−IIにおける略図的断面図である。 光学フィルムの製造方法の第1の例を説明するための略図的平面図である。なお、図3においては、説明の便宜上、第2の保持部材が設けられている領域にハッチングを附している。 光学フィルムの製造方法の第1の例を説明するための略図的断面図である。 光学フィルムの製造方法の第1の例の第1の変形例における第2の保持部材の形状を説明するための略図的平面図である。なお、図5においては、説明の便宜上、第2の保持部材が設けられている領域にハッチングを附している。 光学フィルムの製造方法の第1の例の第2の変形例における第2の保持部材の形状を説明するための略図的平面図である。なお、図6においては、説明の便宜上、第2の保持部材が設けられている領域にハッチングを附している。 光学フィルムの製造方法の第1の例の第3の変形例における第2の保持部材の形状を説明するための略図的平面図である。なお、図7においては、説明の便宜上、第2の保持部材が設けられている領域にハッチングを附している。 光学フィルムの製造方法の第1の例の第4の変形例における第2の保持部材の形状を説明するための略図的平面図である。なお、図8においては、説明の便宜上、第2の保持部材が設けられている領域にハッチングを附している。 光学フィルムの製造方法の第1の例の第5の変形例における第2の保持部材の形状を説明するための略図的平面図である。なお、図9においては、説明の便宜上、第2の保持部材が設けられている領域にハッチングを附している。 光学フィルムの製造方法の第2の例を説明するための略図的分解斜視図である。 第1の無機光学的機能膜12を表1に示す膜構成とし、第2の無機光学的機能膜13を表2に示す膜構成とした場合の光学フィルムの光透過率を表すグラフである。 第1の無機光学的機能膜12を表3に示す膜構成とし、第2の無機光学的機能膜13を表4に示す膜構成とした場合の光学フィルムの光透過率を表すグラフである。 第1の無機光学的機能膜12を表5に示す膜構成とし、第2の無機光学的機能膜13を表6に示す膜構成とした場合の光学フィルムの光透過率を表すグラフである。
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す光学フィルム1を例に挙げて説明する。但し、光学フィルム1は、単なる例示である。本発明に係る光学フィルムは、光学フィルム1に何ら限定されない。
図1に示すように、光学フィルム1は、基材として、透光性を有するガラスフィルム11を備えている。本実施形態において、ガラスフィルム11は、200μm以下の厚みt1を有している。このため、ガラスフィルム11は、可撓性を有する。
ガラスフィルム11の厚みt1が薄いほど、光学フィルムの可撓性が向上し、また光学フィルム1の厚みが小さくなる。このため、ガラスフィルム11の厚みt1は、さらに薄いことが好ましい。ガラスフィルム11の厚みt1は、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、100μm未満であることがさらに好ましく、50μm以下であることがよりさらに好ましく、50μm未満であることが特に好ましい。但し、ガラスフィルム11の厚みt1が小さすぎると、ガラスフィルム11の取り扱いが極めて困難になるため、ガラスフィルム11の厚みt1は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
ガラスフィルム11の形状寸法は、上記厚みt1の範囲である限りにおいて特に限定されない。ガラスフィルム11の平面形状は、例えば、正方形、矩形、円形、楕円形、長円形、多角形であってもよい。ガラスフィルム11の大きさは、例えばガラスフィルム11が円形である場合は、直径で5mm〜100mm程度とすることができる。また、ガラスフィルム11が矩形である場合は、ガラスフィルム11の長辺の長さは、5mm〜100mm程度とすることができる。
ガラスフィルム11は、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム11の表面精度を高めることができるため、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13の膜精度を高めやすくなる。また、オーバーフローダウンドロー法であれば、200μm以下のガラスフィルム11を成形しやすく、更には研磨工程を省略できるため、ガラスフィルム11の生産コストを低廉化することができる。
ガラスフィルム11は、珪酸塩系ガラス、硼酸塩系ガラス、硼珪酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラスなどのガラスにより形成することができる。中でも、ガラスフィルム11は、無アルカリガラスにより形成されていることが好ましい。その場合、ガラスフィルム11の強度や剛性を高めつつ、ガラスフィルム11の耐候性も高めることができる。
ガラスフィルム11は、ガラス組成として、質量百分率で、SiO 50〜70%、Al 10〜25%、B 1〜15%、MgO 0〜10%(好ましくは2%未満)、CaO 0〜15%(好ましくは5〜15%)、SrO 0〜15%、BaO
0〜15%(好ましくは0.1〜2%)、NaO 0〜5%(好ましくは0.1%未満)含有することが好ましい。上記構成によれば、歪点が高く、且つオーバーフローダウンドロー法に適した液相粘度を有するガラス組成を選択することが容易になる。また耐薬品性、比ヤング率、化学耐久性、溶融性等に優れたガラス組成とすることも可能になる。なお、歪点が高いと、ガラスフィルム11中の応力を低下できるため、光学フィルム1の反りを低減しやすくなる。
ガラスフィルム11において、成膜前のガラスフィルム11中の歪み値は3.0nm以下、特に2.5nm以下が好ましい。このようにすれば、光学フィルム1の反りを低減しやすくなる。なお、成形時の冷却速度を遅くすれば、ガラスフィルム11中の歪み値を低下しやすくなる。ここで、「歪み値」とは、歪計を用いて光ヘテロダイン法により測定した値を意味する。
ガラスフィルム11の両面の平均表面粗さRaは0.2nm以下が好ましい。このようにすれば、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13の膜精度を高めやすくなる。なお、オーバーフローダウンドロー法でガラスフィルム11を成形すれば、ガラスフィルム11の両面の平均表面粗さRaを0.2nm以下に規制しやすくなる。ここで、「平均表面粗さRa」は、SEMI D7−94「FPDガラス基板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法により測定した値を意味する。
ガラスフィルム11において、液相粘度は104.0dPa・s以上であることが好ましく、104.5dPa.s以上であることがより好ましく、105.0dPa・s以上であることがさらに好ましく、105.5dPa・s以上であることがなお好ましく、106.0dPa・s以上であることが特に好ましい。なお、液相粘度は結晶が析出する時の粘度であり、液相粘度が高いほど、成形時に失透が発生しにくくなることから、成形しやすくなる。
ガラスフィルム11の熱膨張係数は25〜100×10−7/℃であることが好ましく、30〜90×10−7/℃であることがより好ましく、30〜80×10−7/℃であることがさらに好ましく、30〜40×10−7/℃であることがなお好ましく、32〜40×10−7/℃であることが特に好ましい。熱膨張係数が大きすぎると、成膜プロセス等で受ける熱衝撃によってガラスフィルム11が破損しやすくなる。一方、熱膨張係数が小さすぎると、ガラスフィルム11の熱膨張係数が、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13の熱膨張係数に整合し難くなるため、光学フィルム1の反りが大きくなる。ここで、「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均値を指す。
ガラスフィルム11のヤング率は10GPa以上であることが好ましく、30GPa以上であることがさらに好ましく、50GPa以上であることがなお好ましく、60GPa以上であることがさらにまた好ましく、70GPa以上であることがさらに好ましく、73GPa以上であることが特に好ましい。ヤング率が高い程、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13によって発生する光学フィルム1の反り量を低減しやすくなる。一方、ヤング率が高過ぎると、ガラスフィルム11を湾曲させた際に発生する応力が大きくなり、ガラスフィルム11が破損しやすくなる。よって、ヤング率は90GPa以下であることが好ましく、85GPa以下であることがより好ましく、80GPa以下であることがさらに好ましく、78GPa以下であることが特に好ましい。ここで、「ヤング率」は、曲げ共振法により測定した値を指す。
ガラスフィルム11は、第1及び第2の主面11a、11bを備えている。本実施形態では、第1及び第2の主面11a、11bの両方の上に、無機光学的機能膜が形成されている。具体的には、第1の主面11aの上には、第1の無機光学的機能膜12が形成されており、第2の主面11bの上には、第2の無機光学的機能膜13が形成されている。この第1及び第2の無機光学的機能膜12,13は、光学フィルム1に対して、反射抑制機能、光の選択的透過機能、光の選択的反射機能などの所望の光学的機能を付与するための膜である。
本実施形態では、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13は、所定の波長域の光を透過させ、その波長域以外の光を透過させない波長分離膜である。第1及び第2の無機光学的機能膜12,13のそれぞれは、相対的に屈折率が低い複数の低屈折率膜15と、相対的に屈折率が高い複数の高屈折率膜16とが交互に積層されてなる積層膜により構成されている。
低屈折率膜15及び高屈折率膜16の材質、厚みなどは、所望する光学特性に応じて適宜選択することができる。
より具体的には、例えば、第1の無機光学的機能膜12を下記の表1に示す膜構成とし、第2の無機光学的機能膜13を下記の表2に示す膜構成としてもよい。この場合、図11に示すように、光学フィルム1を、420〜630nmの波長域の光を選択的に透過する波長選択膜とすることができる。
Figure 2015084103
Figure 2015084103
例えば、第1の無機光学的機能膜12を下記の表3に示す膜構成とし、第2の無機光学的機能膜13を下記の表4に示す膜構成としてもよい。この場合、図12に示すように、光学フィルム1を、420〜630nmの波長域の光を選択的に透過する波長選択膜とすることができる。
Figure 2015084103
Figure 2015084103
例えば、第1の無機光学的機能膜12を下記の表5に示す膜構成とし、第2の無機光学的機能膜13を下記の表6に示す膜構成としてもよい。この場合、図13に示すように、光学フィルム1を、420〜630nmの波長域の光を選択的に透過する波長選択膜とすることができる。
Figure 2015084103
Figure 2015084103
ところで、厚みが200μm以下であるガラスフィルムは、可撓性を有する。このため、例えば、ガラスフィルムの一方の表面の上にのみ、無機光学的機能膜を形成すると、光学フィルムに大きな反りが発生しやすくなる。それに対して、本実施形態では、無機光学的機能膜が、2つの第1及び第2の無機光学的機能膜12,13に分けられており、ガラスフィルム11の両面11a、11bのそれぞれの上に、第1または第2の無機光学的機能膜12,13が形成されている。このため、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13の両方が圧縮応力または引張応力を付与するものである場合は、第1の無機光学的機能膜12の応力と第2の無機光学的機能膜13との応力とが打ち消しあう。その結果、光学フィルム1に発生する反りを抑制することができる。
また、一つの無機光学的機能膜を設ける場合よりも第1及び第2の無機光学的機能膜12,13のそれぞれの厚みを薄くしたり、層数を少なくしたりすることができる。従って、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13のそれぞれの応力を小さくすることができる。その結果、光学フィルム1に発生する反りをより効果的に抑制することができる。
次に、本実施形態の光学フィルム1の製造方法の第1の例について説明する。
まず、ガラスフィルム11を用意する。次に、図2に示すように、ガラスフィルム11を、平板状の第1の保持部材21の上に載置する。具体的には、ここでは、ガラスフィルム11の第2の主面11bが第1の保持部材21と対面するようにガラスフィルム11を載置する。なお、第1の保持部材21の材質や厚みなどは、第1の保持部材21の剛性がガラスフィルム11を保持し得る程度となる範囲であれば特に限定されない。第1の保持部材21は、例えば、セラミックスや金属からなるものであってもよい。
次に、第1の保持部材21の上に載置されたガラスフィルム11の上に、第2の保持部材22を配置し、この第2の保持部材22を第1の保持部材21側に相対的に押圧することにより、第1及び第2の保持部材21,22により、平板状にガラスフィルム11を保持する。この状態で、ガラスフィルム11の第1の主面11aに、第2の保持部材22の上から成膜することにより、第1の無機光学的機能膜12を形成する。
ここで、図3に示すように、第2の保持部材22は、ガラスフィルム11の一部を覆っており、ガラスフィルム11の第1の主面11aの一部を露出させる形状を有する。具体的には、第2の保持部材22は、中央から放射状に延びる複数の支持部22aを有する。より具体的には、本実施形態では、第2の保持部材22は、4本の支持部22aにより十字状に形成されている。このため、この第1の例においては、第2の保持部材22は、ガラスフィルム11が設けられている領域を複数に分断するように配置されている。そして、成膜される第1の無機光学的機能膜12も第2の保持部材22により複数に分断されることとなる。従って、第1の無機光学的機能膜12も膜応力も、区画された領域毎に複数に分断することができる。その結果、第1の無機光学的機能膜12の膜応力に起因するガラスフィルム11の反り量をより効果的に抑制することができる。
なお、第2の保持部材22の材質や厚みなどは、第2の保持部材22の剛性がガラスフィルム11を保持し得る程度となる範囲であれば特に限定されない。第2の保持部材22は、例えば、セラミックスや金属からなるものであってもよい。
次に、ガラスフィルム11を第1及び第2の保持部材21,22から取り出し、図4に示すように、第1の無機光学的機能膜12が形成された第1の主面11a側を第1の保持部材21側として、第1の保持部材21の上に載置する。そして、第2の保持部材22を第1の保持部材21の上に載置されたガラスフィルム11の上に、第2の保持部材22を配置し、この第2の保持部材22を第1の保持部材21側に相対的に押圧することにより、第1及び第2の保持部材21,22により、平板状にガラスフィルム11を保持する。この状態で、ガラスフィルム11の第2の主面11bに、第2の保持部材22の上から成膜することにより、第2の無機光学的機能膜13を形成する。最後に、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13が形成された領域から光学フィルム1を切り出すことにより、光学フィルム1を完成させる。
なお、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13のそれぞれの形成方法は特に限定されない。第1及び第2の無機光学的機能膜12,13のそれぞれは、真空蒸着法、スパッタリング法などにより形成することができる。
このように、第1及び第2の保持部材21,22によりガラスフィルム11を平面状に保持した状態で成膜を行うことができる。
なお、第2の保持部材22の形状は、上記第1の例における形状に何ら限定されない。例えば、図5に示すように、第2の保持部材22は、対角線状に形成されていてもよい。図6に示すように、第2の保持部材22は、V字状に形成されていてもよい。図7に示すように、第2の保持部材22は、額縁状に形成されていてもよい。図8及び図9に示すように、第2の保持部材22は、中心から放射状に延びる支持部22aと、額縁部22bとを有するものであってもよい。
同様に、第1の保持部材21の形状も第2の保持部材22と同様に、何ら限定されない。第1の保持部材21は、例えば、図5〜図9に示す第2の保持部材22と同様の形状を有していてもよい。
例えば、図10に示すように、それぞれ額縁状に形成された第1及び第2の保持部材21,22でガラスフィルム11を挟持することによりガラスフィルム11を保持した状態で第1及び第2の無機光学的機能膜12,13を形成してもよい。この場合、第1及び第2の保持部材21,22による保持状態を解除することなく、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13を形成することができる。具体的には、例えば、第2の保持部材22の上から、第1の無機光学的機能膜12を形成した後に、保持状態を維持しつつ反転させて、第1の保持部材21の上から、第2の無機光学的機能膜13を形成するようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、第1及び第2の無機光学的機能膜12,13のそれぞれが多層膜により形成されている場合について説明した。但し、本発明において、第1及び第2の無機光学的機能膜のそれぞれは、多層膜に限定されない。第1及び第2の無機光学的機能膜のそれぞれは、単一の膜からなるものであってもよい。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(実施例1)
上記第1の例の方法に基づいて、下記の条件で光学フィルムを作製した。作製した光学フィルムの最大反り量を測定したところ、0.5mm以下であった。なお、第1の無機光学的機能膜12を成膜した段階のガラスフィルムの最大反り量は、7mmであった。
ガラスフィルムの寸法:100mm×100mm×50μm
ガラスフィルムの種類:無アルカリガラス(日本電気硝子株式会社製OA−10G)
第1の保持部材の形状:図2に示す平板状
第2の保持部材の形状:図3に示す十字状
第2の保持部材の材質:ガラス
第2の保持部材の幅W:100mm
第2の保持部材の厚み:1mm
第1の無機光学的機能膜12の膜構成:表1
第2の無機光学的機能膜13の膜構成:表2
第1及び第2の無機光学的機能膜12,13の形成方法:真空蒸着法
(実施例2)
図5に示す対角線状の第2の保持部材を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、最大反り量を測定した。その結果、実施例2において作製した光学フィルムの最大反り量は、0.5mm以下であった。なお、第1の無機光学的機能膜12を成膜した段階のガラスフィルムの最大反り量は、7mmであった。
(実施例3)
図6に示すV字状の第2の保持部材を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、最大反り量を測定した。その結果、実施例3において作製した光学フィルムの最大反り量は、0.5mm以下であった。なお、第1の無機光学的機能膜12を成膜した段階のガラスフィルムの最大反り量は、7mmであった。
(実施例4)
第2の保持部材を用いず、平板状の第1の保持部材の上にガラスフィルムを載置して成膜を行ったこと以外は、上記実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、最大反り量を測定した。その結果、実施例4において作製した光学フィルムの最大反り量は、0.5mm以下であった。なお、第1の無機光学的機能膜12を成膜した段階の最大反り量は、12mmであった。
(実施例5)
図10に示すように、それぞれ額縁状に形成された第1及び第2の保持部材を用いてガラスフィルムを保持した状態で、連続して第1及び第2の無機光学的機能膜12,13を形成したこと以外は、上記実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、最大反り量を測定した。その結果、実施例5において作製した光学フィルムの最大反り量は、0.5mm以下であった。
(比較例)
第2の保持部材を用いず、平板状の第1の保持部材の上にガラスフィルムを載置して第1の無機光学的機能膜を形成し、且つ第2の無機光学的機能膜を形成しなかった以外は、上記実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、最大反り量を測定した。その結果、比較例において作製した光学フィルムの最大反り量は、12mmであった。
Figure 2015084103
上記表7に示すように、実施例1〜5に係る光学フィルムは、比較例に係る光学フィルムより最大反り量が小さかった。この結果から、反りの抑制された光学フィルムを作製できたことが分かる。また、第1の保持部材のみを用いた実施例4よりも、第1及び第2の保持部材を用いた実施例1〜3,5の方が第1の無機光学的機能膜12を成膜した段階のガラスフィルムの最大反り量が小さかった。この結果から、第1及び第2の保持部材により光学フィルムを両側から保持した状態で成膜を行うことにより、ガラスフィルムの取り扱いが容易になると考えられる。
また、第1及び第2の保持部材の両方が、ガラスフィルムの額縁部を保持する額縁部を有する実施例5では、他の実施例よりも光学フィルムの反り量が顕著に小さかった。この結果から、第1及び第2の保持部材の両方が額縁部を有することが好ましいことが分かる。
1…光学フィルム
11…ガラスフィルム
11a…ガラスフィルムの第1の主面
11b…ガラスフィルムの第2の主面
12…第1の無機光学的機能膜
13…第2の無機光学的機能膜
15…低屈折率膜
16…高屈折率膜
21…第1の保持部材
22…第2の保持部材
22a…支持部
22b…額縁部

Claims (4)

  1. 厚みが200μm以下の透光性のガラスフィルムと、前記ガラスフィルムの一方の表面の上に形成されている第1の無機光学的機能膜、前記ガラスフィルムの他方の表面の上に形成されている第2の無機光学的機能膜とを備える、光学フィルムの製造方法であって、
    ガラスフィルムの一部を覆う第1の保持部材の上に載置した前記ガラスフィルムを、前記ガラスフィルムの一部を覆う第2の保持部材で前記ガラスフィルムを前記第1の保持部材側に相対的に押圧することにより、前記第1及び第2の保持部材で前記ガラスフィルムを平面状に保持した状態で、前記ガラスフィルムの前記第2の保持部材側の表面に前記第1の無機光学的機能膜を形成し、
    次に前記第1及び第2の保持部材で前記ガラスフィルムを平面状に保持した状態を維持しつつ、前記ガラスフィルムの前記第1の保持部材側の表面に前記第2の無機光学的機能膜を形成する、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記第1の保持部材は、額縁状に形成されており、前記第1の保持部材を、前記ガラスフィルムの周縁部を覆うように配置する、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記第2の保持部材は、額縁状に形成されており、前記第2の保持部材を、前記ガラスフィルムの周縁部を覆うように配置する、請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記第2の保持部材を、前記ガラスシートが設けられている領域を複数に分断するように配置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
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