JP2015079588A - 非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子及びその製造方法、並びに、非水電解質電池セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子及びその製造方法、並びに、非水電解質電池セパレータ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非水電解質電池セパレータに使用した際に、電解液反応を抑制し、長期にわたり安定な性能を発揮できる非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と、この有機シリコーン微粒子を用いた非水電解質電池セパレータを提供する。【解決手段】下記一般式(1)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(2)で示されるシロキサン単位から構成され、水酸基価が0.5〜3.0KOHmg/gである非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。多孔性樹脂基材層の少なくとも片面に、この有機シリコーン微粒子を含有する多孔性層を有する非水電解質電池セパレータ。R1SiO3/2…(1)R2(HO)SiO2/2…(2)(R1,R2:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基、O3/2,O2/2:ケイ素原子に直結した酸素原子)【選択図】図2

Description

本発明は、非水電解質電池セパレータにおいて電解液反応を抑制し、長期にわたり安定な性能を発揮できる非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子及びその製造方法と、係る非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を用いた非水電解質電池セパレータ及びその製造方法に関する。
従来、非水電解質電池セパレータに用いられるポリオレフィン微多孔膜として、酸化チタンや酸化アルミニウム等の無機粉体を配合したポリオレフィン系樹脂より構成されるものや、ポリオレフィン微多孔膜上にケイ素、アルミニウム、チタンの酸化物や窒化物といった無機微粒子を含有する表面層が形成されたもの等が知られており、これらは内部短絡の防止機能や高温保存特性などの耐熱性に優れるとされている(例えば特許文献1〜3参照)。
ところが、これら従来のポリオレフィン微多孔膜に用いられる無機粉体や無機微粒子には、微多孔膜の成形工程で行なう延伸に追従できるような弾性が殆どなく、しかもこれらの無機微粒子はポリオレフィンとの相溶性が悪いため、無機微粒子が表面層から脱離しやすく、得られる微多孔膜にピンホールやボイド等の種々の不具合を生じ、得られる微多孔膜の機械的強度が弱くなる問題がある。
この問題を解決するために、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含有して成るポリプロピレン系多孔質フィルムや非水系二次電池用セパレータ(特許文献4、5参照)、表面層を形成するフィルム中に球状の有機シリコーン微粒子を含有して成るポリオレフィン微多孔膜(特許文献6参照)が提案されており、得られる微多孔膜は、機械的強度が高いとされている。また、リチウムイオン電池用セパレータでは、使用上の安全性確保から、130℃から150℃でポリマーが融解して貫通孔が閉塞され、電流がシャットダウンし、電極間を絶縁状態にする機能と、シャットダウンした後の温度上昇によっても微多孔膜自体のフィルム形状を維持して電極間の絶縁状態を保持する機能とが必要とされるが、シャットダウン後も微多孔膜の形状を維持している耐熱性を付与できるとされている。
特開平10−050287号公報 WO2006/038532号 特開2008−123996号公報 特開昭63−221140号公報 特開2010−176936号公報 特開2011−006585号公報 特開2012−020437号公報
Chem.Mater.1999,11,3693−3701
ところが、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子のような球状有機シリコーン微粒子を含有する微多孔膜は、例えば特許文献7に示されているような電解液に湿潤されて使用すると徐々に分解されてしまう。
これは、非特許文献1の3697ページに記載されている29Si固体NMRで示されているように、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を構成するシロキサン架橋構造を形成するシロキサン単位中にCH(HO)SiOのシロキサン単位が多く含有されていることに起因している。
このようなことから、従来の有機シリコーン微粒子を含有する微多孔膜では、有機シリコーン微粒子が電解液と反応することにより経時的に非水電解質電池の性能が低下するおそれがあるため、実際に非水電解質電池セパレータとして使用するには改良が求められていた。
本発明が解決しようとする課題は、非水電解質電池セパレータにおいて、電解液との反応を抑制し、長期にわたり安定な性能を発揮できる非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子及びその製造方法と、係る非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を用いた非水電解質電池セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく研究した結果、2種の特定のシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体から成り、且つ水酸基価が特定範囲内にある非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子が、非水電解質電池セパレータに使用した場合に電解液との反応を抑制し、長期にわたり安定な性能を発揮できることを見出した。
すなわち本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記一般式(1)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(2)で示されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなり、水酸基価が0.5〜3.0KOHmg/gであることを特徴とする非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
SiO3/2 …(1)
(HO)SiO2/2 …(2)
(式(1)中のR及び式(2)中のRは、それぞれ独立に、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、式(1)中のO3/2及び式(2)中のO2/2はそれぞれケイ素原子に直結した酸素原子である。)
[2] 前記一般式(1)で示されるシロキサン単位、前記一般式(2)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(3)で示されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなる有機シリコーン微粒子を熱処理して得られる、[1]に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
(HO)SiO1/2 …(3)
(式(3)中のRは、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、O1/2はケイ素原子に直結した酸素原子である。)
[3] 前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子が真球状である、[1]又は[2]に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
[4] 前記ポリシロキサン架橋構造体を構成する全シロキサン単位に含まれる前記一般式(2)で示されるシロキサン単位の割合が15モル%以下である、[1]ないし[3]のいずれかに記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
[5] 平均粒子径が0.1〜3.0μmである、[1]ないし[4]のいずれかに記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
[6] [1]ないし[5]のいずれかに記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法であって、下記の第1工程及び第2工程を経ることを特徴とする非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法。
第1工程:下記一般式(4)で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を塩基性触媒とノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤とを存在させた条件下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、次いで縮合反応を行い、下記一般式(1)で示されるシロキサン単位、下記一般式(2)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(3)で示されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなる有機シリコーン微粒子を得る工程。
第2工程:第1工程で得られた有機シリコーン微粒子を80〜400℃にて熱処理をする工程。
SiY …(4)
(式(4)中、Rはケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、Yは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。)
SiO3/2 …(1)
(HO)SiO2/2 …(2)
(HO)SiO1/2 …(3)
(式(1)中のR、式(2)中のR、及び式(3)中のRは、それぞれ独立に、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、式(1)中のO3/2、式(2)中のO2/2、式(3)中のO1/2は、それぞれケイ素原子に直結した酸素原子である。)
[7] 前記第2工程中の熱処理を減圧下にて行う、[6]に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法。
[8] 前記第2工程中の熱処理を、150〜220℃で5時間以上加熱する条件下で行う、[6]又は[7]に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法。
[9] 多孔性樹脂基材層(以下「I層」という。)の少なくとも片面に、[1]ないし[5]のいずれかに記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を含有する多孔性層(以下「II層」という。)を有することを特徴とする非水電解質電池セパレータ。
[10] 前記I層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする、[9]に記載の非水電解質電池セパレータ。
[11] 前記II層が、さらに樹脂バインダーを含有する、[9]又は[10]に記載の非水電解質電池セパレータ。
[12] 前記II層中に占める前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の割合が20質量%以上、99質量%以下である、[9]ないし[11]のいずれかに記載の非水電解質電池セパレータ。
[13] [9]ないし[12]のいずれかに記載の非水電解質電池セパレータの製造方法であって、前記I層の少なくとも片面に、非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と樹脂バインダーと溶媒とを含む分散液を塗布する工程と、該溶媒を除去して前記II層を形成する工程とを含む、非水電解質電池セパレータの製造方法。
本発明によれば、非水電解質電池セパレータに使用した際に、電解液反応を抑制し、長期にわたり安定な性能を発揮できる非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子、及び、係る非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を用いた非水電解質電池セパレータを好適に得ることが出来る。
真球状メチルシリコーン微粒子の29Si固体NMRの測定チャートである。 実施例1で合成された真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)の29Si固体NMRの測定チャートである。 比較例5で合成された真球状有機シリコーン微粒子(RA−5)の29Si固体NMRの測定チャートである。
以下に、本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子及びその製造方法と、本発明の非水電解液二次電池セパレータ及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。
[非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子]
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子は、下記一般式(1)で示されるシロキサン単位(以下「シロキサン単位(1)」と称す場合がある。)及び下記一般式(2)で示されるシロキサン単位(以下「シロキサン単位(2)」と称す場合がある。)から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなり、水酸基価が0.5〜3.0KOHmg/gであることを特徴とするものであって、通常、シロキサン単位(1)とシロキサン単位(2)及び下記一般式(3)で示されるシロキサン単位(以下「シロキサン単位(3)」と称す場合がある。)から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなる有機シリコーン微粒子(以下、「有機シリコーン微粒子I」と称す場合がある。)を熱処理して得られる、好ましくは真球状のものである。
SiO3/2 …(1)
(HO)SiO2/2 …(2)
(HO)SiO1/2 …(3)
(式(1)中のR、式(2)中のR、及び式(3)中のRは、それぞれ独立に、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、式(1)中のO3/2、式(2)中のO2/2、式(3)中のO1/2は、それぞれケイ素原子に直結した酸素原子である。)
なお、本発明において、水酸基価は、下記の方法により測定されるものである。
<水酸基価(OHV)の測定方法>
有機シリコーン微粒子1〜3gを三角フラスコに採り、トルエン1〜2mLを加える。次に、アセチル化試薬(4−ジメチルアミノピリジン1g、無水酢酸15mLをトルエンに溶解し、全量100mLとした溶液)5mLを加えて振り混ぜ、室温で30分置く。その後、0.5Nジブチルアミン溶液(ジブチルアミン20mLをトルエン250mLに溶解した溶液)20mLを加えて振り混ぜ、1分以上置く。これにブロムフェノールブルー指示薬0.5mLを加え、0.5N塩酸溶液で滴定する。並行して空試験を行い、下記の計算式で水酸基価(OHV)を算出する。
水酸基価(OHV)=(A−B)×F/S
A:本試験の0.5N塩酸溶液の滴定量(mL)
B:空試験の0.5N塩酸溶液の滴定量(mL)
F:0.5N塩酸溶液の力価(KOHmg/mL)
S:試料採取量(g)
また、本発明において、「真球状」とは、微粒子のいかなる方向からの断面形状においても凹凸がなく円として認識され、断面の中心から外周(粒子表面)までの半径の最大距離と最小距離の比率が±1.5以下、好ましくは±1.2以下であることと定義する。
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子には、前記一般式(1)におけるRが異なるシロキサン単位(1)が含まれていてもよく、シロキサン単位(2)についても前記一般式(2)におけるRが異なるシロキサン単位(2)が含まれていてもよい。有機シリコーン微粒子Iにおいても同様であり、一般式(3)におけるRについても、異なるシロキサン単位(3)が含まれていてもよい。
図1に示されるように、有機シリコーン微粒子のポリシロキサン架橋構造体は、シロキサン単位(1)、シロキサン単位(2)及びシロキサン単位(3)から構成されたものである。
しかし、シロキサン単位(2)及びシロキサン単位(3)に含まれる非架橋のシラノール基は、非水電解質電池セパレータでの電解液反応を起こすため、長期にわたる安定な性能を発揮できないという問題の原因となる。従って、非水電解質電池セパレータでの電解液反応を抑制するためには、これらのシロキサン単位量を低減させる必要がある。
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を構成するポリシロキサン架橋構造は、図2で示されるように、シロキサン単位(3)が検出されず、かつ全シロキサン単位中のシロキサン単位(2)が好ましくは15モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。シロキサン単位(2)の含有割合が上記上限よりも多いと、本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の水酸基価を満たさない場合があり、非水電解質電池セパレータでの電解液反応を抑制し得ない場合がある。非水電解質電池セパレータでの電解液反応の抑制の面では、シロキサン単位(2)の含有割合は少ない程好ましいが、通常2モル%以上であり、若干のシロキサン単位(2)が存在する。
なお、本発明において、有機シリコーン微粒子のポリシロキサン架橋構造を形成するシロキサン単位の分析は、29Si固体NMRによって行う。式(1)〜(3)におけるR、R、Rがメチル基である場合、シロキサン単位(1)のケミカルシフトは、−66ppm付近に観測され、シロキサン単位(2)のケミカルシフトは、−56ppm付近に観測され、シロキサン単位(3)のケミカルシフトは、−47ppm付近に観測される。これらの存在比は、各ピーク積分値より算出することができる。
また、本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子は、水酸基価が0.5〜3.0KOHmg/gの範囲にある。
水酸基価が上記上限より大きいと、非水電解質電池セパレータでの電解液反応を十分に抑制し得ない。非水電解質電池セパレータでの電解液反応の抑制効果の面では水酸基価は小さい程好ましいが、水酸基価を上記下限よりも小さくすることは工業上困難である。本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の水酸基価は、好ましくは1.0〜2.8KOHmg/g、特に好ましくは1.5〜2.6KOHmg/gである。
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を構成するシロキサン単位(1),(2)中のR,Rとしては、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等の炭素数1〜12の有機基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
シロキサン単位(3)中のRとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等の炭素数1〜12の有機基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の平均粒子径に特に制限はないが、後述の非水電解質電池セパレータの多孔性層(II層)中における非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の分散性の観点から、0.1〜3.0μmが好ましく、0.3〜1.5μmがより好ましい。
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の平均粒子径(平均粒子直径)は、非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の走査電子顕微鏡像から抽出した任意の100個についてそれぞれ粒子径を測定し、その平均を求めた値である。
非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の平均粒子径は、非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造工程において、シラノール基形成性ケイ素化合物/塩基性触媒/界面活性剤/水の仕込質量比や加水分解反応および縮合反応の温度を変化させることにより調整することができる。
また、真球状の水酸基価低減有機シリコーン微粒子を製造するには、以下に示す一般式(4)で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を特定構造のものとすればよい。
[非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法]
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法には特に制限はないが、下記の第1工程及び第2工程を経る本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法により製造されることが好ましい。
第1工程:下記一般式(4)で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物(以下「シラノール基形成性ケイ素化合物(4)」と称す場合がある。)を塩基性触媒とノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤とを存在させた条件下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、次いで縮合反応を行い、有機シリコーン微粒子Iを得る工程。
第2工程:第1工程で得られた有機シリコーン微粒子Iを80〜400℃にて熱処理をする工程。
SiY …(4)
(式(4)中、Rはケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、Yは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。)
<第1工程>
(シラノール基形成性ケイ素化合物)
シラノール基形成性ケイ素化合物(4)を示す一般式(4)におけるRは、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基である。これには例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等の炭素数1〜12の有機基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(4)で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物におけるYとしては、
1)メトキシ基やエトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基
2)メトキシエトキシ基やブトキシエトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシエトキシ基
3)アセトキシ基やプロピオキシ基等の炭素数2〜4のアシロキシ基
4)ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基等の炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基
5)ヒドロキシル基
6)塩素原子や臭素原子等のハロゲン原子
7)水素原子
が挙げられるが、なかでも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
シラノール基形成性ケイ素化合物(4)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルシラントリオール、メチルクロルシランジオール、メチルトリクロルシラン、メチルトリハイドロジェンシラン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(塩基性触媒)
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造に用いる塩基性触媒としては、公知の化合物を特に制限なく用いることができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキサイド、カリウムブトシキド、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド等の無機又は有機のアルカリ化合物、テトラメトキシチタン、テトラブトキシチタン、オルトチタン酸ステアレート等のチタン化合物、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、トリブチルスズアセテート等のスズ化合物等を挙げることができる。
塩基性触媒の使用量は、その種類及び用いるシラノール基形成性ケイ素化合物(4)の種類によっても異なるが、シラノール基形成性ケイ素化合物(4)の全量に対して1質量%以下とするのが好ましく、0.5質量%以下とするのがより好ましい。また、シラノール基形成性ケイ素化合物(4)の全量に対して0.1質量%以上とするのが好ましく、0.2質量%以上とするのがより好ましい。塩基性触媒の使用量が少な過ぎると十分な触媒作用を得ることができず、多過ぎると反応速度が速すぎてシリコーン微粒子を安定的に得ることが困難となる。
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造において、前記塩基性触媒はシラノール基形成性ケイ素化合物(4)の加水分解における触媒としてだけでなく、縮合反応の触媒としても使用できるので、加水分解により生成させたシラノール化合物を含有する反応液をそのまま縮合反応に供することもできるし、該反応液に更に触媒を加えて縮合反応に供することもできるし、該反応液中に残存する触媒や未反応のシラノール基形成性ケイ素化合物を失活又は除去して縮合反応に供することもできる。
(界面活性剤)
本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法では、ノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤の存在下にシラノール基形成性ケイ素化合物(4)を加水分解し、次いで縮合反応させる。用いる界面活性剤としては例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油等のノニオン界面活性剤、オクチル硫酸塩、セチル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、オクチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、オレイルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフチルスルホン酸塩、ジイソプロピルナフチルスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤を例示することができ、これらのうちの2種以上を併用することもできる。
前記界面活性剤の合計使用量は、シラノール基形成性ケイ素化合物(4)の全量に対して、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。また、シラノール基形成性ケイ素化合物(4)の全量に対して0.01質量%以上とするのが好ましく、0.03質量%以上とするのがより好ましい。
界面活性剤の使用量が少な過ぎると凝集物が発生して、シリコーン微粒子を安定的に得ることが困難であり、多過ぎると望ましい範囲の粒子径を得られない。
(反応条件)
第1工程における加水分解、その後の縮合反応における反応温度には特に制限はないが、加水分解においては、加水分解反応によって生成させたシラノール化合物の即時的な縮合反応を避けるために0〜30℃の範囲とするのが好ましい。また縮合反応においては、安定した粒子形成反応を進行させるために0〜60℃の範囲が好ましい。反応時間についても特に制限はなく、シラノール基形成性ケイ素化合物(4)が十分に加水分解され、その後縮合反応で有機シリコーン微粒子Iが得られる時間であればよく、通常加水分解反応は0.1〜2時間程度、縮合反応は3〜24時間程度である。
<第2工程>
第1工程で得られた有機シリコーン微粒子Iを撹拌しながら80〜400℃の温度に加熱する熱処理を行うことにより、有機シリコーン微粒子I中のシロキサン単位(2)及びシロキサン単位(3)が減少し、29Si固体NMR分析においてシロキサン単位(3)を確認し得ず、シロキサン単位(2)がわずかに存在し、ポリシロキサン架橋構造体の殆どがシロキサン単位(1)からなる本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子が得られる。
有機シリコーン微粒子Iの熱処理工程は、系内を減圧にして行うことが好ましい。減圧にすることにより、水酸基価低減反応速度が速くなり、更に比較的低温においても反応が進行するため、有機シリコーン微粒子同士の凝集又は融着を防ぐことができるため、その後の解砕を容易に行うことができる。例えば、有機シリコーン微粒子Iを減圧下に150℃で24時間以上加熱する場合には、常圧下に200℃で7時間以上加熱する場合とほぼ同等の熱処理効果が得られ、同等の水酸基価の水酸基価低減有機シリコーン微粒子が得られる。
前記熱処理工程は、温度が150℃未満であると水酸基価を十分に低減させるためには非常に長時間の熱処理を必要とするし、220℃を超える温度で加熱すると有機シリコーン微粒子同士の凝集又は融着が起こり、その後の解砕が困難となるなどの弊害が起こる場合がある。このため、第2工程では150℃〜220℃の温度範囲で5時間以上の熱処理を実施することが特に好ましい。反応時間は熱処理温度や減圧の有無に応じて目的の水酸基価の水酸基価低減有機シリコーン微粒子が得られるように適宜決定される。
熱処理を減圧下で行う場合、減圧の程度は、加熱温度、加熱時間、用いる反応容器の耐圧性等から適宜設定されるが、通常、0.1kg/cm以下、例えば0.05〜0.1kg/cm程度とすることが好ましい。なお、常圧で所定の時間熱処理した後、減圧で更に所定の時間熱処理してもよい。
このようにして得られた水酸基価低減有機シリコーン微粒子を形成しているポリシロキサン架橋構造は、図2に示されるように、全シロキサン単位中に、シロキサン単位(1)が85モル%以上であり、シロキサン単位(2)が0.1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%で、シロキサン単位(3)は、全く観測されないものとなる。
[非水電解質電池セパレータ]
本発明の非水電解質電池セパレータは、多孔性樹脂基材層(以下「I層」という。)の少なくとも片面に、上記の本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を含有する多孔性層(以下「II層」という。)を有することを特徴とする。
<多孔性樹脂基材層(I層)>
本発明の非水電解質電池セパレータを構成する多孔性樹脂基材層(I層)は、非水電解質電池の安全性に影響を及ぼすことがなく、イオン透過性を有する多孔性樹脂層であれば、特に限定されることなく、各種の樹脂材料を用いて形成することができる。
これらの中でも、従来から非水電解質電池セパレータとして用いられているポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔性樹脂層が、化学的安定性が高く、吸湿性が低いため好ましい。
なお、本発明において「pがQの主成分である」という表現は、特に断らない限り、Q中にpを50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上(100質量%である場合も含む)含有することを示す。
I層に用いることができるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどのα−オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられる。さらに、フッ素を含むオレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体又は共重合体を2種以上混合したものを用いることもできる。
この中でも、本発明の非水電解質電池セパレータの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。また、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという、いわゆるシャットダウン機能(以下、「SD特性」と称す場合がある。)を発現させる観点から、ポリエチレン系樹脂を用いることも好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、又は、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、本発明の非水電解質電池セパレータの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜98%、さらに好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルでさらに規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠した。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、積層多孔フィルムの機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定される。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる非水電解質電池セパレータの機械的強度を十分に保持することができる。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、プライムポリマー社製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル社製)など市販されている商品を使用できる。
(ポリエチレン系樹脂)
本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とするエチレン系共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる少なくとも1種のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cmであることが好ましく、0.930〜0.970g/cmであることがより好ましく、0.940〜0.970g/cmであることがさらに好ましい。密度が0.910g/cm以上であれば適度なSD特性を有することができるため好ましい。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を有することができるほか、延伸性が維持される点で好ましい。
ポリエチレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112に準じて測定することができる。
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常MFRは0.03〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れ好ましい。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができるために好ましい。
ポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定されている。
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン系樹脂も使用可能である。
(他の成分)
本発明においては、前述した樹脂のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤をI層に適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性およびI層の諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤又は着色剤などの添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、各種樹脂や、ワックス等の低分子量化合物などを添加しても構わない。
(多孔性樹脂基材層(I層)の構成)
本発明において、I層は単層でも良いが、複数の多孔性樹脂層を積層したものをI層としても良く、特に制限されるものではない。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「A層」と称する場合がある)の単層や、当該A層の機能を妨げない範囲で、当該A層と他の層(以降「B層」と称する場合がある)との積層が好ましい。なお、B層がA層とは異なる前記ポリオレフィン系樹脂を含む層であっても構わない。
具体的にはA層/B層を積層した2層構造、A層/B層/A層、若しくは、B層/A層/B層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つ層との積層順序は特に問わない。さらに層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
(多孔性樹脂基材層(I層)の製造方法)
I層の製造方法は、従来公知の多孔性フィルムの製造方法を好適に用いることができ、特に限定されるものではないが、通常、I層を形成するための前駆体である無孔膜状物を作製し、これを多孔化することによってI層を形成する方法が好ましく採用される。
I層を形成するための前駆体である無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。またチューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化など、公知の方法を用いてもよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。また必要に応じて、延伸の前後に樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。
なお、I層にポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、前記無孔膜状物にいわゆるβ晶を生成させることが好ましい。無孔膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、優れた透気特性を有する非水電解質電池セパレータを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の無孔膜状物中にβ晶を生成させる方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
(β晶核剤)
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の市販品としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
前記ポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、I層を構成するポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.0001〜5質量部であることが好ましい。また、0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部がさらに好ましい。β晶核剤の割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成・成長させることができ、セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、β晶核剤の割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して5質量部以下であれば、経済的にも有利になるほか、I層表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
また、本発明において、I層を積層構造とする場合、その製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の4つに大別される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
(iv)多孔層を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔製樹脂層とする方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
前記I層の厚みは5〜100μmが好ましく、より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。I層の厚みが5μm以上であれば、非水電解質電池セパレータとして実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解質電池セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、I層の厚みが100μm以下であれば、非水電解質電池セパレータの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
<多孔性層(II層)>
本発明の非水電解質電池セパレータを構成する多孔性層(II層)は、本発明の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を含み、かつ多孔性であれば、その構成は特に限定されるものではない。
II層が非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を含むことにより、非水電解質電池セパレータと電解液の反応を抑制し、長期にわたり安定な性能を発揮できる。さらに、非水電解質電池セパレータが透気性(イオン伝導性)、耐熱性と突き刺し強度に優れたものとなる。
(樹脂バインダー)
II層を非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子のみからなる構成とすることは、前記I層の少なくとも片面にII層を形成する工程や、I層との接着性を鑑みると現実的ではないことから、II層にはさらに樹脂バインダーを含むことが好ましい。
樹脂バインダーは、II層中において非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子同士を結着すると共に、II層とI層の界面密着性を向上させる効果を有する。
本発明に用いる樹脂バインダーとしては、前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と、I層とを良好に接着することができ、電気化学的に安定で、かつ非水電解質電池において有機電解液に対して安定であれば、特に制限されるものではない。具体的には、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル由来の構造単位が0〜20モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−トリクロロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ポリビニルアルコール、シアノエチルポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの樹脂バインダーは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの樹脂バインダーの中でもポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその誘導体、マレイン酸変性ポリオレフィンが、水中でも比較的安定であることからより好ましい。
II層における非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の含有割合は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。一方、上限については、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の含有割合が上記下限以上であれば、連通性がある非水電解質電池セパレータを作製することができ、優れた透気性能を示すことができるために好ましい。一方、非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の含有割合が上記上限以下であれば、II層からの非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の脱落のおそれが小さく、かつI層とII層との界面密着性に優れる。
なお、II層中の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子以外の成分は通常前記樹脂バインダーである。
(多孔性層(II層)の形成方法)
本発明におけるII層の形成方法としては、例えば以下のような方法を好ましく例示できる。
(a)非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と樹脂バインダーとを含む樹脂組成物を溶融混練し、前記I層を形成する樹脂組成物と共押出して、II層を有する積層無孔膜状物を形成し、これをI層と同時に多孔化する方法。
(b)非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と樹脂バインダーとを含む樹脂組成物を溶融混練してII層の前駆体である無孔膜状物を形成し、これを多孔化した後、I層の少なくとも片面に、熱等によって積層しII層を形成する方法。なお、II層を多孔化する前にI層の前駆体である無孔膜状物と熱等によって積層し、両層を同時に多孔化しても良い。
(c)非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と樹脂バインダーとを、溶媒に溶解又は分散させて分散液を作製し、これをI層の少なくとも片面に塗布した後、溶媒を除去することによりII層を形成する方法。なお、I層の前駆体である無孔膜状物など、I層の多孔化前にII層を形成し、その後I層を多孔化しても良い
本発明においては上記の中でも、連続生産性や、II層中の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の含有量をなるべく多くする観点から、上記(c)の方法(塗布法)を採用することが好ましい。以下、(c)の方法について具体的に説明する。
II層を塗布法で作成する場合において、用いる分散液の溶媒としては、非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子、樹脂バインダーが適度に均一かつ安定に溶解又は分散可能な溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、ジオキサン、アセトニトリル、低級アルコール、グリコール類、グリセリン、乳酸エステルなどが挙げられるが、中でもコスト面、環境負荷の点で水を主成分とすることが好ましく、とりわけ水を分散媒として用いることが好ましい。
溶媒の使用量は、得られる分散液の固形分濃度(分散液中の溶媒以外の成分の濃度)が1〜20質量%程度となる量とするのが取り扱い性や塗膜形成効率の面で好ましい。
前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子、及び前記樹脂バインダーを溶媒に溶解又は分散させて、分散液を作製する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等が挙げられる。
また、前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子、及び前記樹脂バインダーを溶媒に溶解又は分散させて、分散液を作製する際に、その分散液の安定性の向上、粘性の最適化を図るために、pH調整剤、分散助剤、安定剤、増粘剤等をその前後で添加してもよい。
前記塗布工程における塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。また、前記分散液は、その用途に照らし、I層の片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。即ち、本発明の非水電解質電池セパレータにおいて、II層は、I層の片面にのみ形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。
分散液の塗布後、前記溶媒を除去する方法としては、I層に悪影響を及ぼさない方法であれば、特に限定することなく採用することができる。
前記溶媒を除去する方法としては、例えば、I層を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、前記樹脂バインダーに対する貧溶媒に浸漬して樹脂バインダーを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法などが挙げられる。
本発明におけるII層の厚みの下限としては、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは4μm以上である。II層の厚みが0.5μm以上であれば、本発明の非水電解質電池セパレータが耐熱性及び突き刺し強度に優れる。
一方、II層の厚みの上限としては、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。II層の厚みが90μm以下であれば、本発明の非水電解質電池セパレータが透気性に優れる。
また、I層の厚みT(μm)とII層の厚みTII(μm)との比T/TIIは、1以上10以下の範囲内であることが好ましく、2以上9以下の範囲内であることがより好ましく、3以上8以下の範囲であることがさらに好ましい。
I層とII層の厚み比T/TIIが1以上であれば、非水電解質電池セパレータとして十分な柔軟性が付与されるため好ましい。一方、T/TIIが10以下であれば、十分な耐熱性が付与されるため好ましい。
<非水電解質電池セパレータの物性>
本発明の非水電解質電池セパレータの透気度は1000秒/100mL以下が好ましく、10〜800秒/100mLがより好ましく、50〜500秒/100mLが更に好ましい。透気度が1000秒/100mL以下であれば、非水電解質電池セパレータに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該フィルムを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の非水電解質電池セパレータの透気度が低ければ、リチウムイオン二次電池に組み込んだ際に、リチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
非水電解質電池セパレータの透気度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の非水電解質電池セパレータの105℃における収縮率は、縦方向と横方向のいずれにおいても3%未満が好ましく、2%未満がより好ましく、1.5%未満であることが更に好ましい。前記105℃における収縮率が3%未満であれば、SD温度を超えて異常発熱した際においても、寸法安定性がよく、耐熱性を有することを示唆しており、破膜を防ぎ、内部短絡温度を向上させることができる。該収縮率の下限としては特に限定しないが、0%以上が好ましい。
非水電解質電池セパレータの収縮率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の非水電解質電池セパレータの突き刺し強度は100gf以上が好ましく、150gf以上がより好ましく、200gf以上が更に好ましい。突き刺し強度が100gf以上であれば、非水電解質二次電池に組み込んだ際に短絡する可能性を低減できるため好ましい。突き刺し強度の上限としては特に限定はしないが、1000gf以下が好ましい。
非水電解質電池セパレータの突き刺し強度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の非水電解質電池セパレータは、前記I層の少なくとも片面に前記II層を有しており、前記I層のみの場合と比較して電気抵抗の増加が小さいことが好ましい。
具体的には、25℃における前記II層の比抵抗ρIIが0.04Ω/μm未満であることが好ましく、0.03Ω/μm以下であることがより好ましく、0.02Ω/μm以下であることがさらに好ましい。
なお、25℃における前記II層の比抵抗ρIIは後述する実施例に記載の方法によって、本発明の非水電解質電池セパレータの厚みTと電気抵抗R、及び、前記I層のみの厚みTと電気抵抗Rを測定し、以下の式によって算出する。
ρII=(R−R)/(T−T
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔有機シリコーン微粒子の合成及び評価〕
[有機シリコーン微粒子の評価方法]
以下の実施例及び比較例で合成された有機シリコーン微粒子の評価方法は次の通りである。
<形状、平均粒子径>
得られた有機シリコーン微粒子について、走査型電子顕微鏡による観察を行い、粒子形状の観察および平均粒子径の算出を行った。平均粒子径は、100個の粒子を任意に選び出し、それらの直径の長さを測定して平均値を求めることにより算出した。
<シロキサン単位の構成モル%>
得られた有機シリコーン微粒子について、29Si固体NMRの測定を行い、一般式(1)、(2)、(3)、(5)で示されるシロキサン単位の各モル%を求めた。
<水酸基価(OHV)>
得られた有機シリコーン微粒子1〜3gを三角フラスコに採り、トルエン1〜2mLを加えた。次に、アセチル化試薬(4−ジメチルアミノピリジン1g、無水酢酸15mLをトルエンに溶解し、全量100mLとした溶液)5mLを加えて振り混ぜ、室温で30分置いた。その後、0.5Nジブチルアミン溶液(ジブチルアミン20mLをトルエン250mLに溶解した溶液)20mLを加えて振り混ぜ、1分以上置いた。これにブロムフェノールブルー指示薬0.5mLを加え、0.5N塩酸溶液で滴定した。並行して空試験を行い、下記の計算式で水酸基価(OHV)を算出した。
水酸基価(OHV)=(A−B)×F/S
A:本試験の0.5N塩酸溶液の滴定量(mL)
B:空試験の0.5N塩酸溶液の滴定量(mL)
F:0.5N塩酸溶液の力価(KOHmg/mL)
S:試料採取量(g)
<電解液安定性>
得られた有機シリコーン微粒子を90℃で6時間真空乾燥機で乾燥し、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質に浸漬させ、吸湿しない条件下、85℃で3日間放置し、その後外観を目視で測定した。
○:電解液との反応は殆ど起こらず安定。
△:僅かに電解液により分解される。
×:電解液中で分解反応が起こり、反応性が高い。
[実施例1:有機シリコーン微粒子(PA−1)の合成]
反応容器に700mLのイオン交換水、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.6g及びα−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)の20質量%水溶液0.25gを添加し、均一な溶液とした。この均一な溶液を15℃に保ち、これにメチルトリメトキシシラン136.2g(モル分子量136.22、1.0モル)のシリコーンモノマーを徐々に添加した。温度を15℃付近に保ちながら加水分解反応、次いで縮合反応を行い、1時間後、10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを添加し、更に3時間、15℃で同様にゆっくり攪拌した。引き続いて、温度を70〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行った。この水性懸濁液を高分子メンブランフィルター(アドバンテック社製)に通した後、遠心分離機を用いて白色微粒子を分離した。分離した白色微粒子を水洗し、150℃で5時間熱風乾燥を行った。得られた粉末を反応容器に仕込み、0.05kg/cmの減圧下で撹拌しながら150℃で24時間熱処理を行い、有機シリコーン微粒子(PA−1)52.0gを得た。
有機シリコーン微粒子(PA−1)について、前述の方法で走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。その結果、得られた有機シリコーン微粒子(PA−1)は、平均粒子径0.3μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(3)を有さず、シロキサン単位(1)とシロキサン単位(2)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)=96/4(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
有機シリコーン微粒子(PA−1)の29Si固体NMRの測定チャートを図2に示す。
[実施例2:有機シリコーン微粒子(PA−2)の合成]
α−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)の20質量%水溶液を0.5g添加すること以外、実施例1と同様にして得られた白色ウエットケーキを反応容器に仕込み、200℃で7時間熱処理を行い、有機シリコーン微粒子(PA−2)50.2gを得、同様に走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。
その結果、得られた有機シリコーン微粒子(PA−2)は、平均粒子径0.6μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(3)を有さず、シロキサン単位(1)とシロキサン単位(2)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)=98/2(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
[実施例3:有機シリコーン微粒子(PA−3)の合成]
α−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)の20質量%水溶液に代えて10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を0.5g添加すること以外、実施例1と同様にして得られた白色ウエットケーキを反応容器に仕込み、200℃で7時間熱処理を行い、有機シリコーン微粒子(PA−3)51.6gを得、同様に走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。
その結果、得られた有機シリコーン微粒子(PA−3)は、平均粒子径1.2μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(3)を有さず、シロキサン単位(1)とシロキサン単位(2)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)=97/3(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
[実施例4:有機シリコーン微粒子(PA−4)の合成]
α−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)を添加しないこと以外、実施例1と同様にして得られた白色ウエットケーキを反応容器に仕込み、200℃で6時間熱処理を行い、有機シリコーン微粒子(PA−4)50.2gを得、同様に走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。
その結果、得られた有機シリコーン微粒子(PA−4)は、平均粒子径2.0μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(3)を有さず、シロキサン単位(1)とシロキサン単位(2)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)=95/5(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
[実施例5:有機シリコーン微粒子(PA−5)の合成]
48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.6gを0.3gに変更した以外、実施例4と同様にして得られた白色ウエットケーキを反応容器に仕込み、0.05kg/cmの減圧下で撹拌しながら150℃で24時間熱処理を行い、有機シリコーン微粒子(PA−5)49.8gを得、同様に走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。
その結果、得られた有機シリコーン微粒子(PA−5)は、平均粒子径3.0μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(3)を有さず、シロキサン単位(1)とシロキサン単位(2)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)=90/10(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
[比較例1:有機シリコーン微粒子(RA−1)の合成]
反応容器に700mLのイオン交換水、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.6g及びα−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)の20質量%水溶液0.25gを添加し、均一な溶液とした。この均一な溶液を15℃に保ち、これにメチルトリメトキシシラン136.2g(モル分子量136.22、1.0モル)のシリコーンモノマーを徐々に添加した。温度を15℃付近に保ちながら加水分解反応、次いで縮合反応を行い、1時間後、10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを添加し、更に3時間、15℃で同様にゆっくり攪拌した。引き続いて、温度を30〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行った。この水性懸濁液を孔径5μmの高分子メンブランフィルター(アドバンテック社製)に通した後、遠心分離機を用いて白色微粒子を分離した。分離した白色微粒子を水洗し、150℃で5時間熱風乾燥を行い、有機シリコーン微粒子(RA−1)52.0gを得、同様に走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。
その結果、得られた有機シリコーン微粒子(RA−1)は、平均粒子径0.3μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(1)〜(3)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)/シロキサン単位(3)=70/28/2(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
[比較例2:有機シリコーン微粒子(RA−2)の合成]
撹拌翼付きの10リットルのガラス容器に0.2質量%の水酸化ナトリウムを含む水溶液7000gを張り込み、上層へ1000gのメチルトリメトキシシランを静かに注入し、2層を形成した後、10〜15℃にて20rpmの回転数で3時間界面反応させ、これにより粒子を生成させた。その後温度を70℃として4時間熟成し、冷却後、減圧濾過機で濾過し、続いて3000gの水で洗浄を行い、水分約50質量%のシリコーン樹脂微粒子のケーク状物を得た。得られたケークを90℃で15Torrにて2時間減圧乾燥し、更に150℃で5時間常圧乾燥を行い、シリコーン樹脂微粒子粉末約400gを得た。
得られた不定形粒子を含む概ね球状の有機シリコーン微粒子(RA−2)の平均粒子径は0.6μmであり、シロキサン単位(1)〜(3)をシロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)/シロキサン単位(3)=68/28/4(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
[比較例3:真球状有機シリコーン微粒子(RA−3)]
平均粒子径2.0μmの真球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(信越化学工業社製 KMP−590)を、有機シリコーン微粒子(RA−3)とした。
[比較例4:真球状有機シリコーン微粒子(RA−4)]
平均粒子径2.0μmの真球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TOSPEARL 120A)を、有機シリコーン微粒子(RA−4)とした。
[比較例5:有機シリコーン微粒子(RA−5)の合成]
反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを添加して水溶液とした。この水溶液にメチルトリメトキシラン109.0g(0.8モル)及びジメチルジメトキシラン24.0g(モル分子量120.22、0.2モル)を添加し、温度を13〜15℃に保ちながら1時間加水分解反応を行ない、更に10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを添加し、同温度で3時間加水分解反応を行なった。約4時間でシラノール化合物を含有する透明な反応物を得た。次いで得られた反応物の温度を30〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行なって、有機シリコーン微粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を孔径5μmの高分子メンブランフィルター(アドバンテック社製)に通した後、通過液状部を遠心分離機に供して白色微粒子を分離した。分離した白色微粒子を水洗し、150℃で5時間、熱風乾燥を行なって有機シリコーン微粒子(RA−5)60.1gを得、同様に走査型電子顕微鏡による観察、及び、29Si固体NMRの測定を行った。
その結果、得られた有機シリコーン微粒子(RA−5)は、平均粒子径が2.0μmの真球状有機シリコーン微粒子であり、シロキサン単位(1)及びシロキサン単位(2)と下記式(5)で示されるシロキサン単位(以下「シロキサン単位(5)」と称す場合がある。)を、シロキサン単位(1)/シロキサン単位(2)/シロキサン単位(5)=66/24/10(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであることが確認された。
SiO2/2 …(5)
(式(5)中、R及びRはメチル基。O2/2はケイ素原子に直結した酸素原子である。)
真球状有機シリコーン微粒子(RA−5)の29Si固体NMRの測定チャートを図3に示す。
上記で得られた真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)〜(PA−5)、(RA−1)〜(RA−5)の評価結果を表1にまとめて示す。
Figure 2015079588
〔非水電解質電池セパレータの作製及び評価〕
[非水電解質電池セパレータの評価方法]
以下の実施例及び比較例で作製された非水電解質電池セパレータの評価方法は次の通りである。
<微粒子含有率>
II層の微粒子含有率は、分散液中の微粒子と樹脂バインダーとの総量に占める微粒子の割合とした。
<II層の厚み>
非水電解質電池セパレータの総厚み(T)と、II層を積層する前のI層の厚み(T)をそれぞれ、1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。そして、その差(T−T)をII層の厚みとして算出した。
<透気度>
非水電解質電池セパレータの透気度は、JIS P8117に準拠して、王研式透気度計により測定した。
<熱収縮率>
非水電解質電池セパレータを150mm×10mm四方に切り出したサンプルをチャック間100mmとなるように印を入れ、105℃に設定したオーブン(タバイエスペック社製、タバイギヤオーブンGPH200)に当該サンプルを入れ、1時間静置した。その後、当該サンプルをオーブンから取り出して冷却した後、長さ(mm)を測定し、以下の式にて収縮率を算出した。
収縮率(%)={(100−加熱後の長さ)/100}×100
以上の測定は、非水電解質電池セパレータの縦方向、横方向についてそれぞれ行った。縦方向、横方向とも熱収縮率が3%以下であるものを合格とした。
<突き刺し強度>
日本農林規格告示1019号に順じ、ピン直径φ1mm、先端部0.5R、ピン刺し速度300mm/分で非水電解質電池セパレータのII層側の面から垂直に押し破るときの最大強度(gf)を測定した。
<25℃での電気抵抗>
25℃の空気雰囲気下にて非水電解質電池セパレータを3.5cm×3.5cm角に切ってガラスシャーレに入れ、1Mの過塩素酸リチウムを含むプロピレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(v/v)溶液(キシダ化学社製)を非水電解質電池セパレータが浸る程度入れ、溶液を染込ませた。その後、非水電解質電池セパレータを取り出し、余分な電解液を拭い、φ60mmのステンレス製シャーレの中央に置いた。底面がφ30mmの100gステンレス製分銅を、非水電解質電池セパレータのII層側の面にゆっくり載せ、シャーレと分銅に端子を接続し、HIOKI LCR HiTESTER(日置電機社製、型番3522−50)を用いて電気抵抗を測定した。
<電池特性>
II層の比抵抗ρIIを下記の式により算出し、電池特性を以下の要領で判定した。
ρII=(R−R)/(T−T
R :非水電解質電池セパレータの25℃での電気抵抗[Ω]
:I層の25℃での電気抵抗[Ω]
(評価)
○:II層の比抵抗ρIIが0.04[Ω/μm]未満
×:II層の比抵抗ρIIが0.04[Ω/μm]以上
[実施例6:非水電解質電池セパレータ(PB−1)の作製]
<ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム>
ポリプロピレン系樹脂であるノバテックPP FY6HA(日本ポリプロ社製、MFR;2.4g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合で各原材料をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂のペレットを作製した。
前記の原料を用いて、200℃に設定したTダイの口金より押出し、124℃のキャスティングロールで冷却固化させて膜状物を作製した。
前記膜状物を、ロール温度を105℃に温度調整した縦延伸機を用いて縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて150℃で横方向に2.1倍延伸後、153℃で熱固定を行い、続いて速度10m/min、処理量0.4kWの条件でコロナ表面処理を施すことでポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得た。
<II層の形成>
実施例1で得た真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)を38質量部、固形分濃度5質量%のポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA−124)水溶液を40質量部、水を15質量部、イソプロパノール5質量部を混合し、ホモジナイザーにて3分間分散混合処理を行ない、塗料を得た。
得られた塗料を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に目付け量#10のバーコーターを用いて塗布した後、60℃の乾燥炉にて2分間乾燥させた。
得られた積層多孔フィルムよりなる非水電解質電池セパレータ(PB−1)の物性評価を行い、結果を表2にまとめた。
[実施例7:非水電解質電池セパレータ(PB−2)の作製]
真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)に替え、実施例2で得た真球状有機シリコーン微粒子(PA−2)を用いた以外は、実施例6と同様にして積層多孔フィルムよりなる非水電解質電池セパレータ(PB−2)を得、その物性評価を行い、結果を表2にまとめた。
[比較例6:非水電解質電池セパレータ(RB−1)の作製]
真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)に替え、比較例1で得た真球状有機シリコーン微粒子(RA−1)を用いた以外は、実施例6と同様にして積層多孔フィルムよりなる非水電解質電池セパレータ(RB−1)を得、その物性評価を行い、結果を表2にまとめた。
[比較例7:非水電解質電池セパレータ(RB−2)の作製]
真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)に替え、比較例2で得た真球状有機シリコーン微粒子(RA−2)を用いた以外は、実施例6と同様にして積層多孔フィルムよりなる非水電解質電池セパレータ(RB−2)を得、その物性評価を行い、結果を表2にまとめた。
[比較例8:非水電解質電池セパレータ(RB−6)の作製]
実施例6で製造したポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを非水電解質電池セパレータ(RB−6)としてその物性評価を行い、結果を表2にまとめた。
[参考例1:非水電解質電池セパレータ(RB−7)の作製]
真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)に替え、同体積相当のアルミナ粒子(日本軽金属社製:LS−235C)を用いた以外は、実施例6と同様にして積層多孔フィルムよりなる非水電解質電池セパレータ(RB−7)を得、その物性評価を行い、結果を表2にまとめた。
Figure 2015079588
以上の結果から次のことが分かる。
実施例1〜5で合成された真球状有機シリコーン微粒子(PA−1)〜(PA−5)は、いずれもシロキサン単位(3)を含まず、水酸基価が低減されており、電解液安定性に優れる。これに対して、シロキサン単位(3)を含む比較例1〜4の真球状有機シリコーン微粒子(RA−1)〜(RA−4)は、水酸基価が大きく電解液安定性に劣る。また、シロキサン単位(5)を有する比較例5の真球状有機シリコーン微粒子(RA−5)も電解液安定性が十分でない。
また、実施例1、2で得られた水酸基価低減有機シリコーン微粒子(PA−1),(PA−2)は電解液安定性に優れ、実施例6,7においてセパレータとして用いた場合、優れた耐熱性と電池特性を有する。
一方、比較例1,2で得られた真球状有機シリコーン微粒子(RA−1),(RA−2)は電解液安定性に乏しく、比較例6,7においてセパレータとして用いた場合、電池特性が良好でない。
比較例8のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムはII層が積層されていない為、突き刺し強度に劣るものであった。
また、参考例1で得られたII層にアルミナ粒子を用いたものでも突き刺し強度が劣る。

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(2)で示されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなり、水酸基価が0.5〜3.0KOHmg/gであることを特徴とする非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
    SiO3/2 …(1)
    (HO)SiO2/2 …(2)
    (式(1)中のR及び式(2)中のRは、それぞれ独立に、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、式(1)中のO3/2及び式(2)中のO2/2はそれぞれケイ素原子に直結した酸素原子である。)
  2. 前記一般式(1)で示されるシロキサン単位、前記一般式(2)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(3)で示されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなる有機シリコーン微粒子を熱処理して得られる、請求項1に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
    (HO)SiO1/2 …(3)
    (式(3)中のRは、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、O1/2はケイ素原子に直結した酸素原子である。)
  3. 前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子が真球状である、請求項1又は2に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
  4. 前記ポリシロキサン架橋構造体を構成する全シロキサン単位に含まれる前記一般式(2)で示されるシロキサン単位の割合が15モル%以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
  5. 平均粒子径が0.1〜3.0μmである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法であって、下記の第1工程及び第2工程を経ることを特徴とする非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法。
    第1工程:下記一般式(4)で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を塩基性触媒とノニオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤とを存在させた条件下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、次いで縮合反応を行い、下記一般式(1)で示されるシロキサン単位、下記一般式(2)で示されるシロキサン単位及び下記一般式(3)で示されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン架橋構造体からなる有機シリコーン微粒子を得る工程。
    第2工程:第1工程で得られた有機シリコーン微粒子を80〜400℃にて熱処理をする工程。
    SiY …(4)
    (式(4)中、Rはケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、Yは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。)
    SiO3/2 …(1)
    (HO)SiO2/2 …(2)
    (HO)SiO1/2 …(3)
    (式(1)中のR、式(2)中のR、及び式(3)中のRは、それぞれ独立に、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基を表し、式(1)中のO3/2、式(2)中のO2/2、式(3)中のO1/2は、それぞれケイ素原子に直結した酸素原子である。)
  7. 前記第2工程中の熱処理を減圧下にて行う、請求項6に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法。
  8. 前記第2工程中の熱処理を、150〜220℃で5時間以上加熱する条件下で行う、請求項6又は7に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の製造方法。
  9. 多孔性樹脂基材層(以下「I層」という。)の少なくとも片面に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子を含有する多孔性層(以下「II層」という。)を有することを特徴とする非水電解質電池セパレータ。
  10. 前記I層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする、請求項9に記載の非水電解質電池セパレータ。
  11. 前記II層が、さらに樹脂バインダーを含有する、請求項9又は10に記載の非水電解質電池セパレータ。
  12. 前記II層中に占める前記非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子の割合が20質量%以上、99質量%以下である、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の非水電解質電池セパレータ。
  13. 請求項9ないし12のいずれか1項に記載の非水電解質電池セパレータの製造方法であって、前記I層の少なくとも片面に、非水電解質電池セパレータ用水酸基価低減有機シリコーン微粒子と樹脂バインダーと溶媒とを含む分散液を塗布する工程と、該溶媒を除去して前記II層を形成する工程とを含む、非水電解質電池セパレータの製造方法。
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