JP2015071825A - アルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 未浸透部が実質的に無いアルミニウム合金−セラミックス複合材を非加圧浸透法で安定して製造する方法を提供する。【解決手段】 セラミックスからなるプリフォームを、基材となるアルミニウム合金溶湯に大気圧下で浸漬して、アルミニウム合金をプリフォームに浸透させるアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法であって、アルミニウム合金溶湯がプリフォームに浸透する期間の前記アルミニウム合金溶湯100gあたりの水素含有量を0.60cm3以下とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、アルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法に関するものである。
近年、基材となる金属に、セラミックスの繊維や粒子等を強化材とする金属−セラミックス複合材が注目されている。金属−セラミックス複合材は、アルミニウムやアルミニウム合金など基材となる金属が有する強度、延性、靭性、成形性および熱伝導性等と、強化材である炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナなどの繊維や粒子からなるセラミックスが有する剛性、耐摩耗性、低熱膨張性等を併せもつために、軽量、高剛性、耐摩耗性、高熱伝導、低熱膨張などが要求される輸送用機器部品、電子部品等のさまざまな用途の製品に利用されている。特に、基材となる金属をアルミニウム合金とした、アルミニウム合金−セラミックス複合材は、軽量で、低熱膨張率と高熱伝導率を兼備したパワーエレクトロニクス向け放熱基板として、その需要が年々高まっている。
アルミニウム合金−セラミックス複合材(以下、複合材ともいう。)の製造方法には、主に、従来から粉末冶金法と、セラミックスで成形された多孔質の予備成形体であるプリフォームに、基材となるアルミニウム合金溶湯(以下、溶湯ともいう。)を浸透させて複合材を製造する浸透法がある。このうち浸透法は、浸透させる圧力によって、溶湯を加圧して強制的にプリフォームに浸透させる加圧浸透法と、大気圧下で溶湯をプリフォームに浸透させる非加圧浸透法に大別される。さらに、非加圧浸透法には、窒素ガス雰囲気中で浸透させる、いわゆるランキサイド法と、大気雰囲気中で浸透させる非加圧浸透法(以下、自発浸透法ともいう。)がある。
自発浸透法による従来技術として、例えば非特許文献1には、SiC粒子100gに対して金属酸化物を1.0g、および2.0gの割合で添加して製造したプリフォームを用いて、溶湯の浸透促進を図る方法が開示されている。
さらに非特許文献1には、プリフォームに添加された金属酸化物は溶湯中でテルミット反応によって還元されて溶質金属となるが、これが速やかにプリフォームの外に拡散せずに滞留すると、以後の反応が抑制されて自発浸透の進行が妨げられること、これを防止するための、還元された溶質元素のプリフォーム外への拡散放出を促進する手段として、溶湯を搖動する目的でArガスバブリングする方法、が開示されており、浸透率を91〜99%にできることが示されている。
山浦秀樹,「SiC粒子強化Al合金複合材料の作製における自発浸透機構とその材料特性」,早稲田大学,2006年7月,博士論文,p.56−69
しかしながら、非特許文献1に記載の自発浸透法で製造した複合材は、溶湯が浸透していない領域(以下、未浸透部ともいう。)が大きい傾向にあり、この未浸透部の領域の大きさは、ロットによるばらつきが大きく、品質が安定し難いこと、特に粒径の小さいセラミックスで構成されたプリフォームを用いた場合はその傾向が顕著であることがわかった。このため、切削などにより加工した際に未浸透部が露出する外観上の不良や、機械的性質や熱伝導率等の必要な性能が得られないことがある。
本発明が解決しようとする課題は、未浸透部が実質的に無いアルミニウム−セラミックス複合材を非加圧浸透法、特に自発浸透法で安定して製造する方法を提供することである。
本発明は、セラミックスからなるプリフォームを、基材となるアルミニウム合金溶湯に大気圧下で浸漬して、アルミニウム合金をプリフォームに浸透させるアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法であって、アルミニウム合金溶湯がプリフォームに浸透する期間の前記アルミニウム合金溶湯100gあたりの水素含有量を0.60cm以下とするアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法である。
本発明のアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法において、前記水素含有量を0.30cm以下とすることが好ましい。
本発明のアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法において、前記セラミックスは炭化ケイ素であることが、放熱基板の製造方法として好ましい。
本発明により、未浸透部が実質的に無いアルミニウム−セラミックス複合材を自発浸透法で安定して製造することが可能となり、特に機械的性質や熱特性の安定した、アルミニウム合金−セラミックス複合材を安価に提供することが可能となる。
発明の実施の形態において未浸透部が形成される機構を説明する模式図である。 アルミニウム合金の温度に対する水素溶解量を説明する図である。
発明を実施するための形態を示す前に、自発浸透法におけるアルミニウム合金溶湯のプリフォームへの浸透機構と、未浸透部が生じる原因について説明しておく。
先ず、浸透機構について説明する。Mgを含むアルミニウム合金溶湯に浸漬する前のプリフォームは、大気雰囲気中にあるため、セラミックス粒子以外の空隙部は、主に酸素ガス(O)と窒素ガス(N)とからなる空気で満たされている。したがって、このプリフォームを溶湯に浸漬すると、プリフォームの外形表面と溶湯との境界面において、溶湯を構成するAlおよびMgとプリフォーム内部のOとが反応して酸化皮膜が一旦形成される。この酸化被膜は、高温の溶湯中ではすぐに破れて溶湯中に拡散するために、新たな溶湯面がプリフォームの外形表面に露出するが、引き続きプリフォーム内のOと反応する。するとまた新たな酸化皮膜が形成されては破れ、溶湯中に拡散する、というような反応がプリフォーム内に残存するOが消費されるまで継続して、Oの分圧に相当する減圧がプリフォームの内部に生じる。
プリフォーム内部のOが消費された後、次いでプリフォーム内部のNが溶湯中のMgと反応してMgを生成する。このNの消費による、さらなるプリフォーム内の減圧と、Mgによるプリフォーム内のセラミックス粒子と溶湯との濡れ性の促進との相乗効果によって、プリフォーム内に溶湯が浸透するものとされている。以上が溶湯のプリフォームへの浸透機構の概要である。
次に未浸透部が生じる原因について説明する。本発明者らは、自発浸透法で製造した複合材の未浸透部を調査した結果、未浸透部である空隙には水素ガス(H)のみが存在することがわかった。そしてこの水素ガスは、基材となるアルミニウム合金溶湯が含有していた水素に由来するものであり、溶湯の凝固に伴って放出される水素ガスがプリフォームの内部に残留することによって、未浸透部が形成されるとの知見を得た。この機構を、図面を用いつつ以下に詳細に説明する。
図1は未浸透部が形成される機構を説明する模式図である。図1において、プリフォーム内の溶湯浸透部と未浸透部を、それぞれ、溶湯およびセラミックス粒子で構成される浸透部1と、浸透部1に囲まれたガス成分のみで構成される未浸透部分2とに簡略化して示す。
図1(a)はプリフォーム内への溶湯の浸透が進行している段階を示すものである。プリフォーム内にあるOとNは、溶湯中のAlおよびMgとそれぞれ反応して、AlおよびMg等の化合物となって浸透部1に取り込まれていくが、その結果、未浸透部2が減圧される。一方でその減圧分を補うように、溶湯中に存在する水素がHとして未浸透部2に侵入するが、前述のOとNが化合物となって浸透部1に取り込まれる反応が優勢であるために、未浸透部2の内部の減圧は進行し、未浸透部2が次第に縮小する、すなわち溶湯の浸透が進行する。
浸透が進行してOとNが消費し尽くされると、未浸透部2は溶湯から放出されたHのみとなって浸透が完了する。すなわち、Hで占められた未浸透部の内圧と、溶湯が未浸透部に浸透しようする圧力とが平衡している状態が、浸透が完了した段階である。この浸透完了段階における未浸透部の体積は、溶湯温度が等しい場合においては、溶湯の単位重量あたりの水素含有量(以下、溶存水素量ともいう。)に応じて変化する。このことを次に述べる。
図1(b)は溶存水素量が比較的多い場合において浸透が完了した段階を示す。図1(b)において溶湯温度Tmのとき、未浸透部2が内圧Pの状態で浸透の進行が停止して平衡した状態での、未浸透部2の体積をV、未浸透部2に存在するH分子のモル数をnとする。
これに対して、図1(c)は溶存水素量が比較的少ない場合において浸透が完了した段階を示す。図1(c)において、溶湯温度が図1(b)と同じTmの場合に、未浸透部2の内圧Pの状態で浸透の進行が停止して平衡した状態での、未浸透部2の体積をV、未浸透部2に存在するH分子のモル数をnとする。
ここで気体定数をRとすると、ボイル−シャルルの法則により、図1(b)においてはPV=nRTmの関係が、図1(c)においてはPV=nRTmの関係がそれぞれ成り立つので、両式の両辺同士を除して、V/V=n/nの関係が成り立つ。
前提より、溶存水素量は、図1(c)の方が図1(b)よりも少ない。また未浸透部2に溶湯から放出されるH分子の数は溶湯に含有されている水素量に比例するので、未浸透部分2に侵入して平衡しているH分子のモル数も図1(c)の方が図1(b)よりも少ない、すなわちn<nとなる。このため、上述のV/V=n/nの関係より、未浸透部2の体積はV<Vとなる。つまり、温度が等しい場合においては、溶存水素量が少ないほど、浸透が完了して平衡した状態の未浸透部の占める領域は小さくなる。
図2は、アルミニウム合金の温度に対する水素溶解量を説明する図である。例えば、文献(鋳造技術シリーズ6,「軽合金鋳物・ダイカストの生産技術」,財団法人 素形材センター,平成5年12月27日,p.95−96,図2.15参照)には、アルミニウム合金溶湯は大気中においては通常、図2に実線で示す溶解度線3の溶解度のHを含有することが開示されている。
図2によると、融点約660℃における溶湯の水素溶解量は溶湯100gあたり約0.7cm(以下、単位をcm/100gAlと表記する場合がある。)であるが、溶湯の温度が上昇するにしたがって水素溶解量も急激に上昇する。すなわちプリフォームを浸漬する溶湯温度、例えば、790℃においては、約1.6cm/100gAl、860℃においては約2.2cm/100gAlのHが溶湯に溶解しうる。このため、溶湯に脱水素処理を施さずにプリフォームを浸漬した場合は、溶湯温度に対応した溶存水素量相応の大きさの未浸透部が複合材に残ってしまうことになる。
したがって、未浸透部が実質的に無い複合材を得るためには、溶湯に含有されている水素を十分に減らした状態で、プリフォームに溶湯を溶浸させればよいと考え、本発明に想到した。本発明によって、非加圧浸透法、とりわけ自発浸透法において実質的に未浸透部の無い複合材を効率よく製造することができる。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
先ず、セラミックスからなるプリフォームを、基材となるアルミニウム合金溶湯に大気圧下で浸漬して、アルミニウム合金をプリフォームに浸透させるアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法を説明する。
複合材を得るためのプリフォームを製造するのに用いるセラミックス粒子を構成する材料は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、ジルコン、シリカ、ムライト、コーディエライト、フェライト、ステアタイトなどのファインセラミックスの1種類、または2種類以上の混合物で、セラミックス粒子の形状は真球状、涙滴状、回転楕円状、フレーク状、繊維状、不定形状などの任意の形状うちの1種類、または2種類以上とする。
なお、セラミックス粒子を構成する材料として炭化ケイ素(以下、SiCともいう。)を用いた複合材は、熱膨張率と熱伝導特性のバランスに優れること、また軽量かつ高い強度と剛性が得られる特長があるため、近年パワー半導体向けの放熱基板や軽量構造部材としての需要が高まっているが、これらの特性は未浸透部の存在によって大きく損なわれるため、本発明のアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法を適用することが好ましい。
セラミックス粒子と混合するバインダーは、無機バインダーもしくは有機バインダーの水溶液、または、これらのバインダーを溶質とし、アルコールや有機溶剤を溶媒とした有機溶液を用いるが、セラミックス粒子をハンドリング可能な程度に固めることが可能であるならば、バインダーを含まない液体、すなわち水、アルコール、有機溶剤の単体を用いてもよい。
前記セラミックス粒子と前記バインダーとを所定の割合で混合、攪拌して混合体とした後、所望の形状のキャビティをもつ成形型に充填し成形体とする。成形型は金型、樹脂型、石膏型、木型、セラミックス型等を使用する。
次に、成形体を成形型から抜型し、焼結炉に装入して800〜1200℃で焼結させてプリフォームを得る。なお、成形型が金型やセラミックス型などの耐火性の型である場合は、成形型に充填された状態のまま成形体を焼結し、次いで抜型してプリフォームを得てもよい。そして、アルミニウム合金溶湯に浸漬するプリフォームは、浸漬する前に750℃以上の温度に予熱しておくことが好ましい。
基材となるアルミニウム合金は、Mgを適量含むAl−Si−Mg系合金またはAl−Mg系合金を用いる。なお、基材としての所望の性能が得られる限り、Fe、Cu、Mn、Ti、Cr、Ni、Sr等その他の元素を含んでいてもよい。上記のアルミニウム合金をるつぼ炉等に装入して溶製し、750℃以上に保持しておく。
そして、プリフォームをアルミニウム合金溶湯に大気圧下で浸漬してアルミニウム合金をプリフォーム内部に浸透させ、浸透完了後のプリフォームを溶湯から引き上げ、冷却して複合材を得る。
次に、アルミニウム合金溶湯がプリフォームに浸透する期間の前記アルミニウム合金溶湯100gあたりの水素含有量を0.60cm以下とする、本発明の要部を説明する。
本発明者らは鋭意研究の結果、溶湯100gあたりの水素含有量を0.60cm以下にすることにより、未浸透部の面積率が1%以下となる知見を得た。特に、セラミックス粒子がSiCである場合は、熱伝導率が200W/m/K以上となるので、放熱基板の製造方法として好適である。
溶湯中の水素含有量を0.60cm/100gAl以下にする手段には、不活性ガスを溶湯中に吹き込む方法や、溶湯中でハロゲンガスを放出するハロゲン化物のフラックスを溶湯中に吹き込む方法等の公知の脱水素処理法を適用できる。これらの方法のうち、不活性ガスを溶湯に吹き込む方法は、継続的かつ安定的に脱水素処理を行うことができ、また処理後のフラックス除去の手間がないため好ましい。
不活性ガスとしては、希ガスの中でも安価で入手しやすいAr、またはNを用いることが好ましい。不活性ガスの吹込み方法は、ポーラスプラグ、ランスパイプ、回転脱ガス装置等の方法によって行うことができる。特に回転脱ガス装置を用いる場合は、短時間に多量の不活性ガスを吹き込むことができること、また不活性ガスの気泡を細かくできるために、溶湯中での気泡の上昇速度が緩慢になって、より多くの溶存水素を効率よく捕捉して溶湯外に排出できることなどで有利であるために好ましい。また、保持炉内の溶湯に対して万遍なく広範囲に気泡を充満させてもよいが、浸漬したプリフォームの周囲に局所的、集中的に気泡を充満させてもよい。
そして、自発浸透による未浸透部の生成を実質的に防止するためには、少なくともプリフォームへの溶湯の浸透開始から浸透完了までの期間、すなわちアルミニウム合金溶湯がプリフォームに浸透する期間(以下、正味浸透期間ともいう。)においては、浸漬プリフォーム周囲の溶湯の溶存水素量は、0.60cm/100gAl(以下、臨界溶存水素量ともいう。)以下とすることが好ましい。そのために、プリフォームを溶湯に浸漬する前に、溶湯の水素含有量を予め臨界溶存水素量以下にしておくことが好ましい。なお、臨界溶存水素量を0.30cm/100gAlとすると、未浸透部の生成がさらに抑制されるので、より好ましい。
一方で、プリフォームへの溶湯の浸透現象は、プリフォームの溶湯への浸漬完了後すぐには開始せず、通常は、浸漬完了から浸透開始までにある程度の時間(以下、浸透待ち時間ともいう。)を要することが多い。このため、浸透待ち時間に脱水素処理を行うことで、浸透が開始するまでに臨界溶存水素量以下になるようにしてもよい。
プリフォームに溶湯が浸透を開始するタイミングを検知する方法は、例えば浸漬したプリフォームに重量センサーを取り付けて、溶湯の浸透に伴う浮力の変化を計測する方法(例えば、中江秀雄著,「濡れ、その基礎とものづくりへの応用」,産業図書株式会社,2011年7月25日,p.120,図9.15参照。)を用いることができる。また、プリフォームを浸漬中の溶存水素量を炉前で測定する方法は、例えばテレガス法、イニシアルバブル法、プロトン導電性セラミックスセンサーによる方法等の公知の方法を用いることができる。
以下に、本発明を具体的に実施した例について表を参照しつつ説明する。
先ず、実施例1〜8および比較例1〜7について表1〜3を参照しつつ説明する。実施例1〜8および比較例1〜7は、溶湯温度、不活性ガスと吹込み方法および流量、溶湯への不活性ガス吹込みの位置とタイミングの影響を確認した例である。
[実施例1]
セラミックス粒子は、JIS R 6001に規定の粒度指数F150および#1000であるSiCを、それぞれ重量比3:1で混合したものを使用した。バインダーはケイ酸ソーダ(富士化学製、2号)と水とを体積比で1:3に希釈した水溶液とし、この水溶液を、SiC100gあたり4.5mlの割合で添加し、3分間撹拌し混合して混合体を得た。次いでキャビティ形状が縦150mm、横100mm、深さ8mmである鋼製の成形型に前記混合体を充填して成形後、炭酸ガスを通気させて、抜型とハンドリングが可能な程度まで前記混合体を硬化させた後、抜型して成形体を得た。次いで、この成形体を加熱炉に装入して800℃で2時間保持して焼結を行い、プリフォームを得た。次に鋼製の浸漬治具にプリフォームを装填し、850℃の加熱保持による予熱を行った。
アルミニウム合金は質量比でAl−12%Si−1%Mgの成分組成とし、黒鉛るつぼからなる保持炉を使用して溶製し、860℃に保持した(変動範囲は上下5℃以内とした)。
プリフォームは、前記浸漬治具に装填した状態で、プリフォームの最上部が溶湯の湯面から下10cmの深さとなるように溶湯に浸漬した。浸漬直後からプリフォームを溶湯から引き上げるまでの期間(以下、浸漬期間ともいう。)の長さは30分とした。
浸漬したプリフォームへの溶湯の浸透が開始するタイミングを検知する方法は、浸漬したプリフォームに重量センサーを取り付けて溶湯の浸透に伴う浮力の変化を計測する方法を採用した(他の実施例と比較例についても同様。)。
溶湯の脱水素方法は、不活性ガスをAr、吹込み方法としてランスパイプを使用し、不活性ガスの流量を0.4Nm/分、吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、吹込み深さは溶湯面から12cm、不活性ガス吹出し位置は溶湯に浸漬したプリフォームに対して側方とした。
溶湯中の溶存水素量はプロトン導電性セラミックスセンサーによる方法(TYK社製、NOTORP KYHS−A2型)で計測した(他の実施例および比較例でも同様。)。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.60cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.59cm/100gAl、浸漬完了時は0.53cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。
未浸透部の観察は、得られた複合材を切断し、切断面を光学顕微鏡で観察する方法で行った(他の実施例と比較例についても同様。)。未浸透部は空隙を呈するが、空隙を包囲するセラミックス粒子の表面にアルミニウム合金が存在しないことが未浸透部であることの特徴である。これに対して、浸透した溶湯が凝固時に収縮して生じる空隙(引け巣)は、空隙を包囲するセラミックス粒子の表面にアルミニウム合金が存在するか、または空隙がデンドライト状のアルミニウム合金に囲繞されていることが特徴である。したがって、光学顕微鏡、または必要に応じてSEM(走査型電子顕微鏡)による観察によって両者は容易に区別が可能である。
複合材に占める未浸透部の割合は、上記のように光学顕微鏡またはSEMで50倍に拡大した画像を、未浸透部とそれ以外の部分に2値化後、画像解析装置(旭化成エンジニアリング社製、商品名「A像くん」)で5視野をそれぞれ測定し、その平均値を未浸透部の面積率として評価した(他の実施例および比較例についても同様。)。未浸透部の面積率が1%未満であるものを、未浸透部が実質的に無いものとした。実施例1の複合材の未浸透部の面積率は0.95%であった。
複合材における未浸透部の機械的性質への影響を評価する方法として、曲げ試験を行った。複合材より長さ45mm、幅4mm、厚さ3mmの試験片を採取し、試験方法は、JIS R1601に記載の4点曲げ試験とした(他の実施例および比較例でも同様。)。実施例1の複合材の曲げ強度は251MPaであった。
複合材における未浸透部の熱特性への影響を評価する方法として、熱伝導率の測定を行った。複合材よりΦ10mm、厚さ3mmの試験片を採取し、測定はレーザーフラッシュ法(Netzsch社製、nanofrach、LFA447型)で行った(他の実施例および比較例でも同様。)。実施例1の複合材の熱伝導率は、202W/m/Kであった。
[実施例2]
実施例2は、溶湯温度を830℃、不活性ガスをN、吹込開始のタイミングを浸漬20分前、不活性ガス吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.52cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.52cm/100gAl、浸漬完了時は0.52cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例2の複合材の未浸透部の面積率は0.80%、曲げ強度は260MPa、熱伝導率は210W/m/Kであった。
[実施例3]
実施例3は、溶湯温度を830℃、不活性ガスの吹込開始のタイミングを浸漬25分前、不活性ガス吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.37cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.37cm/100gAl、浸漬完了時は0.37cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例3の複合材の未浸透部の面積率は0.60%、曲げ強度は275MPa、熱伝導率は215W/m/Kであった。
[実施例4]
実施例4は、溶湯温度を790℃、不活性ガスの吹込開始のタイミングを浸漬60分前としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.26cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.25cm/100gAl、浸漬完了時は0.24cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例4の複合材の未浸透部の面積率は0.50%、曲げ強度は285MPa、熱伝導率は218W/m/Kであった。
[実施例5]
実施例5は、溶湯温度を830℃、不活性ガス吹込み方法として回転脱ガス装置を使用し、不活性ガスの流量を5.0Nm/分、吹込み深さを溶湯面から20cm、吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.34cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.32cm/100gAl、浸漬完了時は0.29cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例5の複合材の未浸透部の面積率は0.65%、曲げ強度は276MPa、熱伝導率は214W/m/Kであった。
[実施例6]
実施例6は、溶湯温度を790℃、不活性ガス吹込み方法として回転脱ガス装置を使用し、不活性ガスの流量を10.0Nm/分、吹込み深さを溶湯面から20cm、吹込開始のタイミングを浸漬30分前、吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.19cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.19cm/100gAl、浸漬完了時は0.18cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例6の複合材の未浸透部の面積率は0.20%、曲げ強度は312MPa、熱伝導率は223W/m/Kであった。
[実施例7]
実施例7は、溶湯温度を830℃、不活性ガスの流量を0.7Nm/分、吹込み開始のタイミングを浸漬直後とし、不活性ガス吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が1.15cm/100gAlであったが、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.60cm/100gAlであった。そして浸漬完了時は0.59cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例7の複合材の未浸透部の面積率は0.90%、曲げ強度は256MPa、熱伝導率は201W/m/Kであった。
[実施例8]
実施例8は、溶湯温度を830℃、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬10分前、不活性ガス吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.80cm/100gAlであったが、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.58cm/100gAlであった。そして浸漬完了時は0.54cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例8の複合材の未浸透部の面積率は0.85%、曲げ強度は258MPa、熱伝導率は203W/m/Kであった。
[比較例1]
比較例1は、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、プリフォームを溶湯に浸漬する直前に吹込みを停止して浸漬期間には脱水素処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.67cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.66cm/100gAl、浸漬完了時は0.65cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例1の複合材の未浸透部の面積率は1.80%、曲げ強度は220MPa、熱伝導率は182W/m/Kであった。
[比較例2]
比較例2は、溶湯温度を830℃、不活性ガスをN、吹込み開始のタイミングを浸漬20分前とし、プリフォームを溶湯に浸漬する直前に吹込みを停止して浸漬期間に脱水素処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.65cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.64cm/100gAl、浸漬完了時は0.62cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例2の複合材の未浸透部の面積率は1.30%、曲げ強度は240MPa、熱伝導率は187W/m/Kであった。
[比較例3]
比較例3は、浸漬前および浸漬期間のいずれにおいても溶湯に不活性ガスの吹込みを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が1.53cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では1.56cm/100gAl、浸漬完了時は1.53cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例3の複合材の未浸透部の面積率は4.80%、曲げ強度は190MPa、熱伝導率は165W/m/Kであった。
[比較例4]
比較例4は、溶湯温度を830℃、浸漬前および浸漬期間のいずれにおいても溶湯に不活性ガスの吹込みを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が1.20cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では1.23cm/100gAl、浸漬完了時は1.25cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例4の複合材の未浸透部の面積率は3.10%、曲げ強度は202MPa、熱伝導率は175W/m/Kであった。
[比較例5]
比較例5は、溶湯温度を790℃、浸漬前および浸漬期間のいずれにおいても溶湯に不活性ガスの吹込みを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が1.02cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では1.02cm/100gAl、浸漬完了時は1.05cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例5の複合材の未浸透部の面積率は2.50%、曲げ強度は205MPa、熱伝導率は178W/m/Kであった。
[比較例6]
比較例6は、溶湯温度を830℃、不活性ガスの吹込み開始のタイミングを浸漬直後とし、不活性ガス吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が1.15cm/100gAlで、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.82cm/100gAlであった。そして浸漬完了時は0.63cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例6の複合材の未浸透部の面積率は1.24%、曲げ強度は243MPa、熱伝導率は188W/m/Kであった。
[比較例7]
比較例7は、溶湯温度を830℃、不活性ガスの吹込み開始のタイミングを浸漬5分前とし、不活性ガス吹出位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例1と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.90cm/100gAlで、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.70cm/100gAlであった。そして浸漬完了時は0.61cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例7の複合材の未浸透部の面積率は1.05%、曲げ強度は247MPa、熱伝導率は195W/m/Kであった。
Figure 2015071825





















Figure 2015071825
Figure 2015071825
次に、実施例9〜15および比較例8〜10について表4〜6を参照しつつ説明する。実施例9〜10と比較例8、実施例11〜12と比較例9、および実施例13〜15と比較例10は、セラミックス粒子の粒径と配合比、アルミニウム合金の成分組成、およびプリフォームの外形寸法を変えたものであり、さらにこれらについて溶湯温度、不活性ガスと吹込み方法および流量、溶湯への不活性ガス吹込みの位置とタイミングの影響を確認した例である。
[実施例9]
セラミックス粒子は、JIS R 6001に規定の粒度指数F80、F150、および#600であるSiCを、それぞれ重量比6:3:1で混合したものを使用した。バインダーはケイ酸ソーダ(富士化学製、2号)と水とを体積比で1:3に希釈した水溶液とし、この水溶液を、SiC100gあたり4.5mlの割合で添加し、3分間撹拌し混合して混合体を得た。次いでキャビティ形状が縦50mm、横50mm、長さ200mmである鋼製の成形型に前記混合体を充填して成形後、炭酸ガスを通気させて、抜型とハンドリングが可能な程度まで前記混合体を硬化させた後、抜型して成形体を得た。次いで、この成形体を加熱炉に装入して800℃で2時間保持して焼結を行い、プリフォームを得た。次に鋼製の浸漬治具にプリフォームを装填し、850℃の加熱保持による予熱を行った。
アルミニウム合金は質量比でAl−9%Si−5%Mgの成分組成とし、黒鉛るつぼからなる保持炉を使用して溶製し、830℃に保持した(変動範囲は上下5℃以内とした。)。
プリフォームは、前記浸漬治具に装填した状態で、プリフォームの最上部が溶湯の湯面から下10cmの深さとなるように溶湯に浸漬した。浸漬期間の長さは30分とした。
溶湯の脱水素方法は、不活性ガスにAr、吹込み方法としてランスパイプを使用し、不活性ガスの流量を0.4Nm/分、吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、吹込み深さを溶湯面から12cm、不活性ガス吹出し位置は溶湯に浸漬したプリフォームに対して側方とした。
計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.64cm/100gAlであったが、浸透開始時は0.59cm/100gAl、浸漬完了時は0.56cm/100gAlであり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例9の複合材の未浸透部の面積率は0.78%、曲げ強度は173MPa、熱伝導率は202W/m/Kであった。
[実施例10]
実施例10は、溶湯温度を800℃、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬60分前とし、不活性ガス吹出し位置を溶湯に浸漬したプリフォームの下方としたこと以外は、実施例9と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.32cm/100gAl、浸漬開始時は0.30cm/100gAl、浸漬完了時は0.28cm/100gAlであり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例10の複合材の未浸透部の面積率は0.45%、曲げ強度は193MPa、熱伝導率は211W/m/Kであった。
[比較例8]
比較例8は、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、プリフォームを溶湯に浸漬する直前に吹込みを停止して浸漬期間に脱水素処理を行わなかったこと以外は、実施例9と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.63cm/100gAl、浸透開始時は0.91cm/100gAl、浸漬完了時は1.24cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例8の複合材の未浸透部の面積率は1.66%、曲げ強度は132MPa、熱伝導率は190W/m/Kであった。
なお、複合材の曲げ強度は、未浸透部の面積率だけではなく、複合材を構成するセラミックス粒子の大きさによっても変化し、粗大なセラミックス粒子の割合が多くなると曲げ強度は低くなる傾向となる。実施例9〜10が実施例1〜8に対して、および比較例8が比較例1〜7に対して、いずれも曲げ強度が50MPa以上小さい値であった理由は、実施例9〜10および比較例8の複合材は粒度指数が大きいF80のSiCを多く含んでいるからである。したがって、実施例9〜10よりも大きい曲げ強度が必要とされる複合材を得たい場合には、プリフォームを構成する粒度指数の最も大きいセラミックスとして、F80よりも小さい粒度指数の、例えばF150のセラミックスをF80のセラミックスに替えて使用するか、あるいはF80のセラミックスを用いる場合はその混合割合を少なくすることが好ましい。
[実施例11]
セラミックス粒子は、JIS R 6001に規定の粒度指数F150、F220、#400、および#1000であるSiCを、それぞれ重量比65:20:10:5で混合したものを使用した。バインダーはケイ酸ソーダ(富士化学製、2号)と水とを体積比で1:3に希釈した水溶液とし、この水溶液を、SiC100gあたり4.5mlの割合で添加し、3分間撹拌し混合して混合体を得た。次いでキャビティ形状が縦150mm、横200mm、厚さ10mmである鋼製の成形型に前記混合体を充填して成形後、炭酸ガスを通気させて、抜型とハンドリングが可能な程度まで混合体を硬化させた後、抜型して成形体を得た。次いで、この成形体を加熱炉に装入して800℃で2時間保持して焼結を行い、プリフォームを得た。次に鋼製の浸漬治具にプリフォームを装填し、850℃の加熱保持による予熱を行った。
アルミニウム合金は質量比でAl−10%Si−3%Mgの成分組成とし、黒鉛るつぼからなる保持炉を使用して溶製し、800℃に保持した(変動範囲は上下5℃以内とした。)。
プリフォームは、前記浸漬治具に装填した状態で、プリフォームの最上部が溶湯の湯面から下10cmの深さとなるように溶湯に浸漬した。浸漬期間の長さは30分とした
溶湯の脱水素方法は、不活性ガスにAr、吹込み方法としてランスパイプを使用し、不活性ガスの流量を0.4Nm/分、吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、吹込み深さを溶湯面から12cm、不活性ガス吹出し位置は溶湯に浸漬したプリフォームに対して側方とした。
計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.58cm/100gAl、浸透開始時は0.50cm/100gAl、浸漬完了時は0.42cm/100gAlであり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例11の複合材の未浸透部の面積率は0.63%、曲げ強度は270MPa、熱伝導率は208W/m/Kであった。
[実施例12]
実施例12は、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬60分前としたこと以外は、実施例11と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.29cm/100gAl、浸漬開始時は0.28cm/100gAl、浸漬完了時は0.27cm/100gAlであり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例12の複合材の未浸透部の面積率は0.32%、曲げ強度は273MPa、熱伝導率は213W/m/Kであった。
[比較例9]
比較例9は、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、プリフォームを溶湯に浸漬する直前に吹込みを停止して浸漬期間に脱水素処理を行わなかったこと以外は、実施例11と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.60cm/100gAlであったが、浸透開始時は0.67cm/100gAl、浸漬完了時は0.74cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例9の複合材の未浸透部の面積率は1.30%、曲げ強度は228MPa、熱伝導率は197W/m/Kであった。
[実施例13]
セラミックス粒子は、JIS R 6001に規定の粒度指数F150、#1000、および#2500であるSiCを、それぞれ重量比92:6:2で混合したものを使用した。バインダーはケイ酸ソーダ(富士化学製、2号)と水とを体積比で1:3に希釈した水溶液とし、この水溶液を、SiC100gあたり4.5mlの割合で添加し、3分間撹拌し混合して混合体を得た。次いでキャビティ形状が縦150mm、横150mm、厚さ60mmである鋼製の成形型に前記混合体を充填して成形後、炭酸ガスを通気させて、抜型とハンドリングが可能な程度まで混合体を硬化させた後、抜型して成形体を得た。次いで、この成形体を加熱炉に装入して800℃で2時間保持して焼結を行い、プリフォームを得た。次に鋼製の浸漬治具にプリフォームを装填し、850℃の加熱保持による予熱を行った。
アルミニウム合金は質量比でAl−12%Si−5%Mgの成分組成とし、黒鉛るつぼからなる保持炉を使用して溶製し、800℃に保持した(変動範囲は上下5℃以内とした。)。
プリフォームは、前記浸漬治具に装填した状態で、プリフォームの最上部が溶湯の湯面から下10cmの深さとなるように溶湯に浸漬した。浸漬期間の長さは30分とした。
溶湯の脱水素方法は、不活性ガスをAr、吹込み方法としてランスパイプを使用し、不活性ガスの流量を0.4Nm/分、吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、吹込み深さを溶湯面から12cm、不活性ガス吹出し位置は溶湯に浸漬したプリフォームに対して側方とした。
計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.62cm/100gAlであったが、浸透開始時は0.57cm/100gAl、浸漬完了時は0.53cm/100gAlであり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例13の複合材の未浸透部の面積率は0.30%、曲げ強度は298MPa、熱伝導率は207W/m/Kであった。
実施例14は、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬60分前としたこと以外は、実施例13と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.28cm/100gAl、浸漬開始時は0.28cm/100gAl、浸漬完了時は0.25cm/100gAlであり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例14の複合材の未浸透部の面積率は0.24%、曲げ強度は301MPa、熱伝導率は210W/m/Kであった。
実施例15は、不活性ガス吹込み方法として回転脱ガス装置を使用し、不活性ガスの流量を15.0Nm/分、吹込み開始のタイミングを浸漬45分前とし、吹込み深さを溶湯面から20cm、不活性ガス吹出し位置を溶湯に浸漬したプリフォームに対して下方としたこと以外は、実施例13と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.18cm/100gAl、溶湯がプリフォームに浸透を開始した時点では0.14cm/100gAl、浸漬完了時は0.10cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えることはなかった。実施例15の複合材の未浸透部の面積率は0.12%、曲げ強度は305MPa、熱伝導率は218W/m/Kであった。
[比較例10]
比較例10は、不活性ガス吹込み開始のタイミングを浸漬15分前とし、プリフォームを溶湯に浸漬する直前に吹込みを停止して浸漬期間に脱水素処理を行わなかったこと以外は、実施例13と同様に複合材を作製した。計測された溶存水素量は、浸漬直前が0.55cm/100gAlであったが、浸透開始時は0.65cm/100gAl、浸漬完了時は0.87cm/100gAlとなり、正味浸透期間に0.60cm/100gAlを超えていた。比較例10の複合材の未浸透部の面積率は1.30%、曲げ強度は265MPa、熱伝導率は198W/m/Kであった。
Figure 2015071825
Figure 2015071825



Figure 2015071825
1 浸透部
2 未浸透部
3 溶解度線

Claims (3)

  1. セラミックスからなるプリフォームを、基材となるアルミニウム合金溶湯に大気圧下で浸漬して、アルミニウム合金をプリフォームに浸透させるアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法であって、アルミニウム合金溶湯がプリフォームに浸透する期間の前記アルミニウム合金溶湯100gあたりの水素含有量を0.60cm以下とすることを特徴とする、アルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法。
  2. 前記水素含有量を0.30cm以下とする請求項1に記載のアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法。
  3. 前記セラミックスは炭化ケイ素である請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法。
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