JP2015071812A - 粉末高速度工具鋼およびその製造方法 - Google Patents

粉末高速度工具鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐摩耗性および靱性をより優れるものとすることによって、切削工具のより長寿命化を達成することができるような粉末高速度工具鋼、およびこうした高速度工具鋼を得るために有用な高速度工具鋼用粉末およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:1.30〜2.30%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、Mo:0.5〜8.0%、W:5.0〜20.0%、V:3.0〜7.5%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなり、該鋼粉末を固化成形した後、焼入、焼戻したミクロ組織において100×100μm2 中に、2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個有することを特徴とする粉末高速度工具鋼およびその製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、切削工具や金型等に使用される粉末高速度工具鋼およびその製造方法に関する。
従来、高速度工具鋼はC,Cr,W,Mo,V,Co等の合金元素を多量に加えて高温で硬さや耐摩耗性を一層高めた工具鋼であり、エンドミルやドリルのように比較的靱性が要求される切削工具の素材として汎用されている。ところで、このような高速度工具鋼は、従来では溶製法によって製造されていたのであるが、この溶製法によって得られた高速度工具鋼では、粗大炭化物の存在や偏析という問題があったことから、近年では、従来の溶製法に代わって、粉末冶金法を用いた粉末高速度工具鋼が広く使用されるようになっている。この粉末高速度工具鋼は、高速度工具鋼の溶湯をアトマイズ法によって急冷凝固粉末とし、この粉末を熱間静水圧加圧(HIP)等の粉末冶金法によって製造される。
一方、上記のような粉末高速度工具鋼を切削工具の素材として実際使用した場合には、耐摩耗性および靱性が不十分なことから、工具の切削性能の向上という要求に十分対応できないことから、耐摩耗性および靱性をより高めて工具の切削性能をより向上させると言う観点で、これまでにも様々な粉末高速度工具鋼について提案されている。
例えば、特開2001−294986号公報(特許文献1)に開示されているように、C:1.2〜3%、Si:≦3.0%、Mn:≦3.0%、Cr:3〜6%、W:10〜15%、Mo:≦1.0%、V:3〜5%、Co:≦10%を含有する高速度工具鋼用粉末が提案されている。
また、特開平9−59748号公報(特許文献2)に開示されているように、NiおよびCoを含むMo系高速度工具鋼であって、Nbを0.5〜2.0%含有すると共に、炭化物の平均粒径が0.40〜0.80μmであり、且つ最大粒径が5μm以下である耐摩耗性及び耐チッピング性に優れた粉末高速度工具鋼が提案されている。
さらに、特開平5−163551号公報(特許文献3)は、C:0.7〜2.0%、Si:≦1.0%、Mn:≦0.6%、Cr:3.0〜6.0%、WまたはさらにMoをW+2Moで14〜20%かつV:≦5.0%、Nb:2.0〜7.0%、但しNb/V≧0.5%、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる粉末高速度工具鋼が提案されている。
特開2001−294986号公報 特開平9−59748号公報 特開平5−163551号公報
上述した、特許文献1は成分制御により耐摩耗性、靱性改善を狙っているが、炭化物サイズが2.0μmと微細で、耐摩耗性に懸念があり十分ではない。また、特許文献2はNbを0.5〜2.0%添加かつNi,Coを含む粉末高速鋼と耐摩耗性、靱性を高めているが、しかしながら、Nbを含む必要があり、そのため成分系に制約があるという問題がある。さらに、特許文献3はNbを2.0〜7.0%添加により耐摩耗性、靱性を持たせているが、V:≦5.0%、Nb/V≧0.5%とV添加量が少ないために耐摩耗性に劣るという問題がある。
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、粉末高速度工具鋼は、通常は単一粉末を母材に作製するのが一般的であるが、本発明では粉末高速度工具鋼をC濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を母材に用いて焼結し、さらに固化成形中や固化成形後に高温にある時間保持する熱処理(以下、ソーキング熱処理と言う。)を行い、焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中に、2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個存在するように炭化物径を制御することで靱性と耐摩耗性を兼ね備えた高速度工具鋼を得ることを見出した。
その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、C:1.30〜2.30%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、Mo:0.5〜8.0%、W:5.0〜20.0%、V:3.0〜7.5%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなり、該鋼粉末を固化成形した後、焼入、焼戻したミクロ組織において100×100μm2 中に、2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個有することを特徴とする粉末高速度工具鋼。
(2)前記(1)に記載の成分組成に加えて、Co:≦10.0%としたことを特徴とする粉末高速度工具鋼。
(3)前記(1)または(2)に記載の粉末高速度工具鋼において、C濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を混合し、混合した粉末をHIPまたは押出による固化成形法を用いて、固化成形中や固化成形後に熱処理をして一次炭化物の粒度を2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個となるように調整することを特徴とする粉末高速度工具鋼の製造方法にある。
以上述べたように、本発明により耐摩耗性および靱性をより優れるものとすることによって、切削工具のより長寿命化を達成することができるような粉末高速度工具鋼、およびこうした高速度工具鋼の製造方法を提供することが出来る。
本発明例No.1に示す2種類の混合粉末を固化成形後、ソーキング熱処理して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。 比較例No.5に示す単一粉末を固化成形後、ソーキング熱処理なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。 比較例No.6に示す2種類の混合粉末を固化成形後、ソーキング熱処理なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。 比較例No.7に示す単一粉末を固化成形後、ソーキング熱処理して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
粉末高速度工具鋼を作製する際の母材として、通常は狙いの粉末高速度鋼と同じ組成の金属粉末一種類(以下、単一粉末と言う。)を用いるのが一般的であるが、合金元素量は同一とし、C(炭素)量を一定値以上振った2種類の金属粉末(例えば、Fe−Cr−Mo−V−W−Co−C組成のC添加量が異なる粉末)を混合して、固化成形を行うと、マトリックス中のC濃度に大きな濃淡が生じる。その状態で、約1150℃以上の高温で保持してC拡散を促進させた場合、マトリックス中のCが豊富な領域は優先して炭化物が粗大化し、Cが少ない領域は、炭化物の粗大化が殆ど起こらない。結果として、微細炭化物と粗大炭化物が共に存在する組織となり、靱性と耐摩耗性を兼ね備えた高速度粉末工具鋼となる。そのことから、本発明では、粉末高速度工具鋼をC濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を母材に用いて焼結し、さらにソーキング熱処理により焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中に、2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個存在するように炭化物径を制御することで靱性と耐摩耗性を兼ね備えた粉末高速度工具鋼を得ることができる。
図1は、本発明例No.1に示す2種類の混合粉末を固化成形後、ソーキング熱処理して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。これに対し、図2は、比較例であるNo.5に示す単一粉末を固化成形後、ソーキング熱処理なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織であり、図3は、比較例であるNo.6に示す2種類の混合粉末を固化成形後、ソーキング熱処理なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織であり、図4は、比較例であるNo.7に示す単一粉末を固化成形後、ソーキング熱処理して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。これから分かるように、C量を一定値以上振った混合粉末を母材に用い、かつソーキング熱処理して作製した図1の本発明鋼の組織は、本発明を満たしていない(混合粉末を固化成形していない、もしくはソーキング熱処理を行っていない)図2〜4に示す鋼の組織に比較して、微細炭化物と粗大炭化物が一体組織となっていることが分かる。
以下、本発明に係る限定理由について説明する。
C:1.30〜2.30%
Cは、硬さ、焼入性に必要な元素である。しかし、1.30%未満ではその効果が十分でない。また、2.30%を超えると粗大すぎる炭化物を形成し靱性を悪化させることから、その範囲を1.30〜2.30%とした。
Si:0.1〜1.0%
Siは、脱酸剤であり、基地の硬さを得るために必要な元素である。しかし、0.1%未満では、その効果が十分に得られず、1.0%を超えると靱性と加工性が悪化することから、その範囲を0.1〜1.0%とした。
Mn:0.1〜1.0%
Mnは、脱酸剤であり、焼入性を得るために必要な元素である。しかし、0.1%未満では、その効果が十分に得られず、1.0%を超えるとマトリックスを脆化させ靱性、熱間加工性が悪化することから、その範囲を0.1〜1.0%とした。
Cr:3.0〜5.0%
Crは、焼入性を得るために必要な元素である。しかし、3.0%未満ではその効果が十分でない。また、5.0%を超えると靱性、熱間加工性が悪化することから、その範囲を3.0〜5.0%とした。
Mo:0.5〜8.0%
Moは、焼入性、硬さ、耐摩耗性、焼戻し軟化抵抗性を得るために必要な元素である。しかし、0.5%未満ではその効果が十分でない。また、8.0%を超えると靱性、熱間加工性が悪化することから、その範囲を0.5〜8.0%とした。好ましくは1.0〜6.0%とする。
W:5.0〜20.0%
Wは、焼入性、硬さ、耐摩耗性、焼戻し軟化抵抗性を得るために必要な元素である。しかし、5.0%未満ではその効果が十分でない。また、20.0%を超えると靱性、熱間加工性が悪化することから、その範囲を5.0〜20.0%とした。好ましくは8.0〜12.0%とする。
V:3.0〜7.5%
Vは、硬さ、耐焼付き性、靱性を得るために必要な元素である。しかし、3.0%未満ではその効果が十分でない。また、7.5%を超えると靱性、被削性が悪化することから、その範囲を3.0〜7.5%とした。好ましくは4.6〜7.0%とする。
Co:≦10.0%
Coは、耐熱性、耐摩耗性、耐焼戻し軟化抵抗性に必要な元素である。本元素を含まなくても本発明の効果は得られるが、上記効果から含有することが好ましい。しかし、10.0%を超える添加は炭化物の偏析や脱炭を促進することから、その上限を10.0%とした。
焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中に、2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個と、炭化物径を規制した理由は、靱性と耐摩耗性を両立させるには、微細な炭化物と粗大な炭化物を混在させる必要があり、微細な一次炭化物は結晶粒微細化効果を有し結晶粒の微細化により靱性を確保できるからである。また粗大な一次炭化物はマトリックスより硬い炭化物が存在することにより鋼の耐摩耗性が向上するためである。
ここで、2.0μm未満の一次炭化物による靱性を確保するためには、焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中に、2.0μm未満の微細な一次炭化物が500個以上必要である。しかし、微細な一次炭化物が800個を超えると、炭素が微細な炭化物によって消費されてしまい、粗大な一次炭化物が少なくなりすぎてしまい、耐摩耗性付加の観点から、同面積中に微細な一次炭化物を800個以下にする必要がある。
一方、2.0μm以上10.0μm以下の一次炭化物によって耐摩耗性を確保するためには、同面積中にこの粗大な一次炭化物が50個以上必要である。しかし、この粗大な一次炭化物が多すぎるとその分微細な炭化物が減少し、靱性を阻害するため、上限を300個とした。なお、10.0μmを超えの一次炭化物について言及していないのは、10.0μmを超えの炭化物が存在すると靱性を著しく阻害するため、本発明の対象外とした。以上によって、微細炭化物と粗大炭化物が共に存在する組織となり、靱性と耐摩耗性を兼ね備えた高速度粉末工具鋼を得ることができる。
混合する粉末のCの質量%の差、つまりCの濃度差は0.5%以上とする。0.5%以上とするのは、固化成形後のマトリックスのC濃度分布をばらつかせ、熱処理を行いC拡散を促進させた時に一部の炭化物のみの成長を促すには、0.5%以上のC濃度差が必要であるためである。なお、3種類以上の粉末を混合する場合は最もC濃度が近い粉末同士の差が0.5%以上かどうかを判断する。一方、混合量については、高C粉末の質量%を1.0とすると、低C粉末の混合質量%は、0.25〜4.0が好ましい。すなわち、高C粉末と低C粉末の混合比が、1.0:0.25〜4.0の範囲が好ましい。しかし、高C粉末と低C粉末の混合比がこの範囲を超えて離れると、固化成形後のマトリックスのC濃度差が確保できず、一部の炭化物のみの成長を促すことができない。
ソーキング熱処理は、粉末固化成形中や固化成形後のいずれかに行う。例えば、HIPまたは押出工程中の高温保持、HIPまたは押出成形後の固化成形体への熱処理が該当する。粉末固化成形中や固化成形後のソーキング熱処理(高温保持熱処理)の適正条件は、鋼種によって異なるが、例えばHIP処理後の成形体に1150〜1240℃で2〜12時間の熱処理が適正である。しかし、1150℃未満では炭化物が殆ど大きくならない。また、1240℃を超えると、炭化物が急激に大きくなりすぎてしまい、微細な析出物が消失しやすく制御が難しい。
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
合金添加元素は同じで、C(炭素)濃度を振って作製した2種類以上の金属粉末(例えばFe−0.3Si−0.3Mn−4.2Cr−1.0Mo−12.0W−4.6V−5.0CoのC添加量を1.3と2.5の二つに振ったもの)をガスアトマイズ法で作製し、粉末高速度工具鋼の母材とした。その後、それらを各混合比で混合、1170℃でHIP処理して固化成形し、表1に示す狙い組成A、B、C、D、E、F、Gの固化成形体を作製した。なお、金属粉末のC濃度差及び混合比は表2に示すとおりである。これらの固化成形体に対して、各組成毎に定めた温度条件(大気中1150℃〜1240℃、2〜8時間)でソーキング熱処理(高温にある時間保持する熱処理)を行った。その後、30mm径に鍛造加工し、1190℃で油冷焼入れ、560℃で3回焼戻し処理を行った。比較例としては、混合を行わず単一粉末のまま、1170℃でHIP処理し、成形後はソーキング熱処理を行なわず、そのまま30mm径に鍛造加工し、1190℃で油冷焼入れ、560℃で3回焼戻し処理を行った。
靱性の評価方法として、上記の焼入れ焼戻し後の試料において、JIS3号シャルピー衝撃性試験(2mmUノッチ)を行い、シャルピー衝撃性値を測定し、単一粉末、ソーキング無しのベンチマーク材と比較して、同等以上(下がり幅10%未満)であれば○、悪化(10%以上減)すれば×で評価した。また、耐摩耗性の評価方法として、上記の焼入れ焼戻し後の試料において、大越式摩耗試験を実施し、ベンチマーク材の耐摩耗性を1.0として、比較評価した。なお、大越式摩耗試験の条件は、相手材リングSCM420、荷重61.8N、摩耗距離200m、摩耗速度3.62mm/sec、乾式とした。
また、炭化物の個数は、熱処理した鋼材を縦20mm、横20mm、長さ10の角棒を切出し、湿式研磨、ピクラル腐食を行い、光学顕微鏡にてミクロ組織を確認、画像解析ソフトにより、炭化物のサイズ個数を解析した。なお、光学顕微鏡にて確認できないナノレベルの炭化物については、算出の対象外とした。その結果を表2に示す。
Figure 2015071812
Figure 2015071812
表2に示すように、No.1〜4、11〜12、16〜17、21、23、25、27は本発明例であり、No.5〜10、13〜15、18〜20、22、24、26、28は比較例である。
表2に示すように、比較例No.5は、表1に示す成分組成A、比較例No.13は成分組成B(表1)、比較例No.18は成分組成C(表1)、比較例No.22は成分組成D(表1)、比較例No.24は成分組成E(表1)、比較例No.26は成分組成F(表1)、比較例No.28は成分組成G(表1)の単一粉末を母材に作製し、ベンチマーク材とした。これらの比較例については、混合を行わず単一粉末のままであることから母材金属粉末のC濃度差はなく、また、ソーキング熱処理が無いことから、粗大な炭化物が存在せず、焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中に、2.0μm未満での炭化物個数が多く、2.0〜10.0μmの炭化物個数が少ない。そのため、靱性には優れるが、耐摩耗性に劣る。
比較例No.6、14、19、20は、2種類の粉末を母材に作製し、マトリックス中のC濃度差はあるが、ソーキング熱処理を行っていないために、焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中に、2.0μm未満での炭化物個数が多く、2.0〜10.0μmの炭化物個数が殆ど無いため、耐摩耗性が劣る。比較例No.7は、混合を行わず単一粉末のままであることから母材金属粉末のC濃度差がなく、ソーキング熱処理を行った時に、2.0μm未満の微細な炭化物が保たれず、全体的に炭化物が粗大化したため、靱性が悪い。
比較例No.8、9、10、15は、2種類の粉末を母材に作製し、ソーキング熱処理も行っているが、母材金属粉末のC濃度差が少ない、または粉末混合比が離れているため、マトリックス中のC濃度差が小さく、ソーキング熱処理中に全体的に炭化物が粗大化し、微細な炭化物が保たれず、2.0μm未満の炭化物個数が少なく、靱性が悪い。これに対して、本発明であるNo.1〜4、11〜12、16〜17、21、23、25、27は、いずれも本発明の条件を満足していることから、靱性および耐摩耗性に優れていることが分かる。
以上述べたように、本発明による粉末高速工具鋼をC濃度が0.5%以上異なる2種以上の金属粉末を母材に用いて混合、固化成形後、ソーキング熱処理を行い、焼入、焼戻したミクロ組織の100×100μm2 中の一次炭化物の個数を、2.0mm未満が500〜800個、2.0〜10.0μmが50〜300個に制御することにより微細炭化物と粗大炭化物が共に存在する組織となり、靱性と耐摩耗性を兼ね備えた高速度粉末工具鋼を提供することができる。


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:1.30〜2.30%、
    Si:0.1〜1.0%、
    Mn:0.1〜1.0%、
    Cr:3.0〜5.0%、
    Mo:0.5〜8.0%、
    W:5.0〜20.0%、
    V:3.0〜7.5%
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなり、該鋼粉末を固化成形した後、焼入、焼戻したミクロ組織において100×100μm2 中に、2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個有することを特徴とする粉末高速度工具鋼。
  2. 請求項1に記載の成分組成に加えて、Co:≦10.0%としたことを特徴とする粉末高速度工具鋼。
  3. 請求項1または2に記載の粉末高速度工具鋼において、C濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を混合し、混合した粉末をHIPまたは押出による固化成形法を用いて、固化成形中や固化成形後に熱処理をして一次炭化物の粒度を2.0μm未満の一次炭化物が500〜800個、2.0〜10.0μmの一次炭化物が50〜300個となるように調整することを特徴とする粉末高速度工具鋼の製造方法。
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