JP2015071713A - 脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造時には十分な分子量を有し、機械強度に優れ、土中、水中或いは多湿条件下、比較的マイルドな温度環境化において速やかに分子量低下を起こす脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してホスホナイト化合物(B)0.1〜5質量部を溶融混練して脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する方法であって、脂肪族ポリエステル樹脂(A)がジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを含有し、その含有量が脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに50〜100質量部である製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法に関し、さらに詳しくは、多湿条件下における分解特性が制御された脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法に関する。
脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂は、環境への負荷を軽減することを目的として、フィルム、シート、繊維、成形品などへ使用されている。しかしながら、農業用途、土壌改質用途および石油やガスなどの掘削用途など、使用後に速やかに分解することを求められる用途においては、使用初期に求められる機械強度と使用後に求められる分解速度を両立することが難しく、課題となっている。
従来、樹脂の色調、熱安定性、耐湿熱性、成形性を向上させる目的で有機リン化合物を重合時、あるいは溶融混練にて配合する事が提案されている(例えば、特許文献1〜6)。
特開2007−92048号公報 特開2001−49097号公報 特表2008−520806号公報 特開2006−249152号公報 国際公開第06/118096号 国際公開第10/053167号
しかしながら、上記公知文献には、有機リン化合物の配合量が多いと耐加水分解性が低下することが示唆されているが、本発明者らが必要とする分解特性は得られていないのが実状である。また、樹脂の色調改善や分子量維持を目的として脂肪族ポリエステルの重合時にリン系安定剤を多量に配合すると、十分な重合度の脂肪族ポリエステルが得られない場合があったり、色調が安定しないなどの問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題が解決された脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法、すなわち簡便な製造方法により、製造時には十分な分子量を有し、機械強度に優れ、特に、土中、水中等の多湿条件下において、制御された分解特性を有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定組成の脂肪族ポリエステル樹脂に、一定量のホスホナイト化合物を溶融混練することにより、製造時に十分な分子量を有し、土中・水中などの多湿条件下において制御された分解特特性をもつ脂肪族ポリエステル樹脂組成物が製造できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明の要旨は、下記の(1)〜(7)の通りである。
(1)脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してホスホナイト化合物(B)0.1〜5質量部を溶融混練して脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する方法であって、脂肪族ポリエステル樹脂(A)がジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを含有し、その含有量が脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに50〜100質量部であることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(2)ジオールが1,4−ブタンジオールであり、ジカルボン酸がコハク酸であることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)脂肪族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度(IV)が0.6〜1.8であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)脂肪族ポリエステル樹脂(A)がオキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを含有し、その含有量が脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに1〜50質量部であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の製造方法。
(5)脂肪族ポリエステル樹脂組成物の固有粘度(IV)が0.6〜1.8であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の製造方法。
(6)脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の固有粘度保持率が80〜100%であることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の製造方法。
(7)脂肪族ポリエステ樹脂組成物が地下資源採掘のための空隙の目止め材用であることを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載の製造方法。
本発明の製造方法で得られる脂肪族ポリエステル樹脂組成物(以下、「本発明に係る樹脂組成物」と称することがある。)は、製造時に十分な分子量を有するため、機械物性に優れている。また、土中、水中などの多湿条件下において制御された分解特性、すなわちマイルドな温度条件でも速やかに分子量が低下する特徴をもつため、土壌改質、原油掘削用途など使用後に速やかに分解が求められる用途に特に有用である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してホスホナイト化合物(B)0.1〜5質量部を溶融混練して脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する方法であって、脂肪族ポリエステル樹脂(A)がジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを含有し、その含有量が脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに50〜100質量部であることを特徴とするものである。本発明において、ホスホナイト化合物(B)は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分解促進剤としての機能をもつものである。
1.脂肪族ポリエステル樹脂(A)
本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、脂肪族構造のモル比率が全体構造に対して最大比率となる樹脂であって、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを上記のとおり含有するものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族構造以外に、部分的に芳香族構造を有する脂肪族芳香族ポリエステルを含有していてもよい。より具体的には、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステル以外に、例えば、オキシカルボン酸(ヒドロキシカルボン酸)を主成分としてなる脂肪族ポリエステル、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族芳香族ポリエステル、およびそれらの混合物等を含有していてもよい。
ここで、「主成分としてなる」とは、各単量体成分を50モル%以上用いて重合反応をさせて得られるものであることを意味する。各単量体成分の使用量は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
1.1.ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステル
ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルは、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単位および下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含んでなる脂肪族ポリエステル樹脂である。
−O−R−O− (1)
[式(1)中、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (2)
[式(2)中、Rは、直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
式(1)のジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4〜6の脂肪族ジオールが特に好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。上記脂肪族ジオールは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
式(2)のジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、炭素数2〜40の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数4〜10の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。具体的には、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等が挙げられる。中でもコハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、コハク酸とアジピン酸がより好ましく、コハク酸が特に好ましい。上記脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸がコハク酸である場合、コハク酸由来の構造単位量を所定範囲内とすることで、前記した使用後に速やかな分解が求められる用途に用いた場合に、適度な生分解性が可能となる。全脂肪族ジカルボン酸単位中のコハク酸由来の構造単位の割合は、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%である。
また、脂肪族ジカルボン酸がコハク酸とアジピン酸である場合、コハク酸由来とアジピン酸由来の構造単位量を所定範囲内とすることで、通常の条件における適度な生分解性が可能で、耐衝撃性の付与がより容易となる。全脂肪族ジカルボン酸単位中のコハク酸由来の構造単位の割合は、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜93モル%、さらに好ましくは70〜90モル%で、全脂肪族ジカルボン酸単位中のアジピン酸由来の構造単位の割合は、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは7〜40モル%、さらに好ましくは10〜30モル%である。
さらに、本発明におけるジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステル樹脂は、脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位(脂肪族オキシカルボン酸単位)を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシ吉草酸、リンゴ酸、クエン酸等、またはこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。また、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物も本発明において脂肪族オキシカルボン酸に包含される。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液であってもよい。これらの中で、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸が特に好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
上記脂肪族オキシカルボン酸単位の量は、成形性の観点から脂肪族ポリエステル樹脂(A)の全脂肪族ジカルボン酸単位中、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
また、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルは、カップリング剤等により鎖長延長されたものであってもよい。
カップリング剤としては、ジイソシアネート、オキサゾリン、ジエポキシ化合物、酸無水物等が挙げられる。具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。これらの添加量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部である。
ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルは、公知の方法(特開2012−144744号公報、特開2010−195989号公報、特開2009−173884号公報等に記載の方法)で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。
使用可能な製品(市販品)としては、三菱化学製ポリブチレンサクシネート系樹脂GS Pla(登録商標)(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等)、昭和電工社製ポリブチレンサクシネート樹脂ビオノーレ(登録商標)等が挙げられる。
本発明において、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルは、以下の物性をもつものが好ましい。
重量平均分子量は、下限が好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは50,000以上であり、上限が好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは400,000以下である。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、成形性と機械強度の点において有利である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
メルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が好ましくは0.1g/10分以上であり、上限が好ましくは100g/10分以下、より好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。メルトフローレートを上記範囲とすることにより、成形性と機械強度が良好となる。
融点は、下限が好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、上限が好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
固有粘度(IV)は、通常0.6以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上であり、上限が通常1.8以下、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.4以下である。固有粘度が小さすぎると、成形品の機械物性が低下する可能性があり、また固有粘度が大きすぎると、成形加工時に溶融粘度が高くなりすぎ、押出機負荷が上がるため、生産性が落ちる可能性がある。なお、本明細書において、固有粘度(IV)は、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において測定した値に基づくものである。
また、本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の物性は、上記とほぼ同様である。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)中の、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルの含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに、下限が50質量部以上、好ましくは70質量部以上、より好ましくは90質量部以上であり、上限が100質量部以下である。含有量を上記範囲とすることにより、特に、前記した使用後に速やかな分解が求められる用途に用いた場合に、適度な生分解性が可能となる。
1.2.オキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステル
オキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルは、少なくとも一つ以上の脂肪族オキシカルボン酸単位を含んでなる脂肪族ポリエステルである。
脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシ吉草酸、リンゴ酸、クエン酸等、またはこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。また、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物も本発明において脂肪族オキシカルボン酸に包含される。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液であってもよい。これらの中で、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、6−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシ吉草酸が好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
オキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3−ヒドロキシブチレート、ポリ4−ヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。これらの中でポリ乳酸が特に好ましい。
ポリ乳酸樹脂に含まれるポリ乳酸の構成としてはモル比として、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85: 15、または0:100〜15:85であることが好ましい。また、D−乳酸とL−乳酸との構成割合が異なった他のポリ乳酸をブレンドすることも可能である。D−乳酸のみ、または、L−乳酸のみを構造単位とするポリ乳酸系樹脂は結晶性樹脂となり、融点が高く、耐熱性、機械的物性に優れる傾向にある。
さらには、ポリ乳酸樹脂は、前述のポリ乳酸と、他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であってもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでもよい。他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、およびカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。このような他のヒドロキシカルボン酸単位は、ポリ乳酸系樹脂中15モル%未満で使用するのがよい。
上記樹脂に含んでいてもよい鎖延長剤残基としては、例えば、前記したカップリング剤に由来する残基が挙げられる。
オキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステル、例えばポリ乳酸樹脂は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法(特開平9−151244号公報、特開平8−12750号公報、国際公開第00/078839号等に記載の方法)で製造することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用してポリ乳酸系樹脂を得ることができる。なお、ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、D−乳酸およびL−乳酸の2量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合し、重合することによって任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
使用可能な製品(市販品)としては、ネイチャーワークス社製ポリ乳酸樹脂Ingeo(登録商標)などが挙げられる。
本発明において使用され得るポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、下限が好ましくは60,000以上、より好ましくは80,000以上、特に好ましくは100,000以上であり、上限が好ましくは700,000以下、より好ましくは400,000以下、特に好ましくは300,000以下である。重量平均分子量が60,000より小さいと機械物性や耐熱性等の実用物性が劣り、また700,000より大きいと溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣る傾向がある。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)中の、オキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルの含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに、下限が好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、上限が好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。含有量を上記範囲とすることにより、加水分解性が向上する場合がある。
前記のとおり、本発明においては、所望の生分解性を付与するために、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを、脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに、50〜100質量%含有させることを必須の要件とするものである。オキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルの含有量が上限を超えると本発明において必要とする生分解性が得られない。
1.3.ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族芳香族ポリエステル
ジオールとジカルボン酸を主成分とする脂肪族芳香族ポリエステル(以下、「脂肪族芳香族ポリエステル」と称することがある。)は、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、及び、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。ただし、オキシカルボン酸単位を有していてもよい。
−O−R−O− (3)
[式(3)中、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (4)
[式(4)中、Rは、直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (5)
[式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
式(3)のジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4〜6の脂肪族ジオールが特に好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。上記脂肪族ジオールは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
式(4)の脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、炭素数2〜40の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数4〜10の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。具体的には、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等が挙げられる。中でもコハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、コハク酸とアジピン酸がより好ましく、コハク酸が特に好ましい。上記脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらは酸無水物であってもよい。また、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、これらの芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、又はそれらの低級アルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)エステル誘導体が好ましく、特にテレフタル酸及び/又はテレフタル酸のメチルエステルか、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸のメチルエステルとイソフタル酸及び/又はイソフタル酸のメチルエステルとを含有する混合物が好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用してもよい。
脂肪族芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンテレフタレートアルキレートが好ましく、ポリブチレンアジペートテレフタレートまたはポリブチレンサクシネートテレフタレートがより好ましく、ポリブチレンアジペートテレフタレートが特に好ましい。
脂肪族芳香族ポリエステルは、公知の方法(特開2008−31457号公報、特開2008−31456号公報、特開2001−26643号公報等に記載の方法)で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。
使用可能な製品(市販品)としては、BASF社製ポリブチレンテレフタレートアジペート樹脂ECOFLEX(登録商標)などが挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)中の、脂肪族芳香族ポリエステルの含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに、下限が好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、上限が好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
2.その他樹脂
本発明において、上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他樹脂を含んでいてもよい。その他樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、芳香族ポリエステル等を挙げることができる。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物において、脂肪族ポリエステル樹脂(A)とその他樹脂との配合比については、脂肪族ポリエステル樹脂(A)が樹脂成分において主成分となるようにすればよい。具体的には、樹脂組成物に含まれる樹脂成分全体を100質量%として、脂肪族ポリエステル樹脂(A)が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
3.ホスホナイト化合物(B)
本発明において、ホスホナイト化合物(B)としては、特に限定されないが、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
Figure 2015071713
[式(6)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、又は炭素数6〜30のアリール基を示し、R、R及びRは、互いに結合して環を形成していてもよい。)
式(6)において、R〜Rの炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ステアリル等が挙げられる。また、炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル、ノニルフェニル、ブチルフェニル、ブチルメチルフェニル、ジブチルフェニル、ジブチルメチルフェニル、ビフェニル、オクチルフェニル等が挙がられる。これらアリール基は、例えば、メチル基、エチル基、i―プロピル基、t−ブチル基等の置換基を有していてもよい。
さらに、本発明におけるホスホナイト化合物としては、式(6)で表される化合物同士が結合してジホスホナイト等となっているものでもよい。
具体的には、例えば、テトラキス(ジ−t−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−1,1−ビフェニルー4,4’−ジイルビスホスホナイト等が挙げられる。これらの中で、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂組成物において、ホスホナイト化合物(B)の含有量は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、下限が通常0.1質量部以上、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、上限が通常5質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下ある。上記した脂肪族ポリエステル樹脂(A)に、ホスホナイト化合物(B)を上記含有量となるように添加して溶融混練することにより、製造時に十分な分子量を有し、土中・水中などの多湿条件下において制御された分解特性、すなわちマイルドな温度条件でも速やかに分子量低下を起こす特徴をもつ脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
4.その他の成分
本発明に係る樹脂組成物には、滑剤、フィラー(充填剤)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤等の各種添加剤や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物が「その他の成分」として含まれていてもよい。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に使用できる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。これら添加剤の添加量は、通常、樹脂組成物の物性を損なわないように、混合する化合物の総量が、樹脂組成物の総量に対して、0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
4.1.滑剤
本発明に係る樹脂組成物に滑剤を含ませると、樹脂組成物の成形性を向上させることができる。
滑剤としては、例えば、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸の金属塩;ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル;ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド;カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられる。これらの中で、エルカ酸アミドが特に好ましい。なお、滑剤やワックス類は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。これらの滑剤の含有量は、通常樹脂組成物中、通常0.01〜2質量%の範囲であり、好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲である。
4.2.フィラー
本発明に係る樹脂組成物にフィラーを含ませると、樹脂組成物の剛性を向上させることができる。また、樹脂組成物をフィルムとした場合にはフィルム同士のブロッキングを防止することができる。或いは、フィルムを袋に成形した場合に袋の口を開き易くすることもできる。さらに、フィルムや袋を着色し、遮光性や光反射性を向上させることもできる。
フィラーは、その形状により繊維状、粉粒状、板状のものがあり、特に粉粒状、板状のものが好ましい。粉粒状フィラーとしては、例えば、タルク、ゼオライト、ケイソウ土、カオリン、クレー、シリカ、石英粉末等の鉱物粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム等の金属炭酸塩粒子、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属珪酸塩粒子、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物粒子、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物粒子、カーボンブラック等の炭素粒子等が挙げられる。また板状フィラーとしては、例えば、マイカが挙げられる。袋の口を開き易くするとともにブロッキングを防止する観点からは、タルク、炭酸カルシウム、或いはシリカを用いるとよく、また、フィルムや袋を着色するとともに、遮光性或いは光反射性を向上させる観点からは、カーボンブラックや酸化チタンを用いるとよい。フィルム等の成形体或いは樹脂組成物中におけるフィラーの分散状態は、数平均粒径で0.08〜25μmであり、より好ましくは0.1〜5μmである。この範囲からはずれると、上記フィラーの添加効果が低くなる。フィラーは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。これらのフィラーは樹脂組成物中、通常0.05〜40質量%の範囲で使用される。
4.3.可塑剤
なお、樹脂組成物の流れ性が悪い場合は、可塑剤を加えるとよい。特に、樹脂組成物にフィラーを含ませた場合には、樹脂組成物の粘度が上昇して樹脂組成物の流れ性が悪くなる場合があり、樹脂組成物に可塑剤を加えることによって、これを改善することができる。
可塑剤としては、例えば、メチルアジペート、ジエチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、ジ−n−プロピルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシレート等の脂肪酸エステル、トリアセチン等のグリセリンエステル、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジオクチルマレエート、ジブチルフマレート、ジオクチルフマレート等のマレイン酸およびフマル酸エステル、アジピン酸−1,3−ブチレングリコール、エポキシ化大豆油等のポリエステル・エポキシ化エステル、トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルクエン酸トリブチル、グリセリンジアセトモノプロピオネート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノベヘネート、グリセリンモノアセトモノステアレート等のアセチル化モノグリセライド、ジグリセリンアセテート、デカグリセリンプロピオネート、テトラグリセリンカプリレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンオレート、デカグリセリンベヘネート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ロジン誘導体等が挙げられる。これら可塑剤は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。また、可塑剤は、樹脂組成物中に、好ましくは0.05〜10質量%の範囲で使用される。
4.4.帯電防止剤
また、本発明に係る樹脂組成物には、帯電防止剤を含ませることもできる。帯電防止剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。具体例としては、界面活性剤型のノニオン系、カチオン系、アニオン系が好ましい。
ノニオン系の帯電防止剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステルアルキルジエタノールアマイド類等が挙げられる。中でもアルキルジエタノールアミン類等が好ましい。
カチオン系の帯電防止剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
アニオン系の帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート等が挙げられる。中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。樹脂との混練性がよく、帯電防止効果も高いためである。
帯電防止剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、樹脂組成物に対して、下限が好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、上限が好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。上記範囲を上回ると、樹脂組成物の表面べたつきが発生し、製品価値が低下する傾向がある。また、上記範囲を下回ると、帯電防止性向上効果が低減する傾向がある。
4.5.その他添加剤
本発明に係る樹脂組成物は上記した添加剤の他に、澱粉、耐光剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、末端封止剤などを含有させることもできる。
澱粉としては、具体的にはコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、エンドウ澱粉等が挙げられ、これらは未変性品、変性品どちらも使用できる。変性とは化学的、物理的、生物学的等のあらゆる変性方法を含み、化学的変性としては、炭水化物(多糖類)の構成単位の一部または全部をエステル化、エーテル化、酸化、還元、カップリング、脱水、加水分解、脱水素、ハロゲン化等の化学反応により変性することを示し、特には、水酸基をエーテル化、エステル化することを示す。また、物理的変性は、結晶化度を変化させること等、物理的性質を変化させることを示す。また、生物学的変性は、生物を用いて化学構造等を変化させることを示す。
耐光剤としては、例えば、デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。耐光剤は、紫外線吸収剤と組み合わせて用いることが好ましく、ヒンダードアミン系安定剤と紫外線吸収剤との組み合わせが有効である。
耐光剤を混合する量は、樹脂組成物に対して、質量基準で、下限が好ましくは100ppm以上、より好ましくは200ppm以上であり、上限が好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%である。この範囲を下回ると耐光剤の効果が小さくなる傾向がある。また、この範囲を上回ると製造費が高くなる傾向があり、樹脂組成物の耐熱性が劣ったり、耐光剤のブリードアウトが生じたりする傾向がある。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤は、特に異なる種類のもの2種以上を任意の比率および組合せで用いることが好ましい。
紫外線吸収剤を混合する量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、樹脂組成物に対して、質量基準で、下限が好ましくは100ppm以上、より好ましくは200ppm以上であり、上限が好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。この範囲を下回ると紫外線吸収剤の効果が低下する傾向がある。また、この範囲を上回ると製造費が高くなりすぎたり、樹脂組成物の耐熱性が劣ったり、紫外線吸収剤のブリードアウトが生じたりする傾向ある。
熱安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド等のヒンダードフェノール系熱安定剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系熱安定剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。或いは、上記したホスホナイト化合物(B)により、リン系熱安定剤としての機能を兼用させることもできる。
熱安定剤を混合する量は、樹脂組成物に対して、質量基準で、下限が好ましくは100ppm以上、より好ましくは200ppm以上であり、上限が好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。この範囲を下回ると熱安定剤の効果が小さくなる傾向がある。一方、この範囲を上回ると、製造費が高くなる傾向があり、熱安定剤のブリードアウトが生じたりする可能性がある。
末端封止剤は、主に大気中の水分等による加水分解を抑制する目的で用いられ、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられるが、上記のカルボジイミド化合物の内、モノカルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、工業的に入手が容易であるので、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、Chemical Review 1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
これらのカルボジイミド化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の比率および組合せで用いてもよい。本発明においては、特に、ポリカルボジイミド化合物を用いることが好ましく、その重合度は、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは20以下である。これら、カルボジイミドの使用量は、樹脂組成全体に対して通常0.1〜5質量%である。
これらの他、公知の表面ぬれ改善剤、難燃剤、離型剤、焼却補助剤、顔料、分散助剤、界面活性剤、加水分解防止剤、結晶核剤、相溶化剤等が含まれていてもよい。
5.製造方法
本発明においては、ジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを特定の割合で含有する脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してホスホナイト化合物(B)0.1〜5質量部を、さらに必要に応じてその他の成分等を、溶融混練することにより、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する。
従来において、ホスホナイト化合物(例えばリン系酸化防止剤や熱安定剤等)は、樹脂の重合時に原料とともに混合(内添重合)するものであったが、このような場合においてホスホナイト化合物を多量に入れ過ぎると重合を阻害してしまう。また、製造される樹脂の分子量が低下してしまい、ポリマーとして好ましくなくなる。これに対して、本発明においては、ポリマーを予め重合した後に、当該ポリマー(脂肪族ポリエステル樹脂(A))とホスホナイト化合物(B)とを溶融混練することに特徴を有し、これにより、製造時には十分な分子量を有し、機械物性に優れ、また、ホスホナイト化合物が従来よりも多量に添加されたことで、製造後は土中・水中等の多湿条件で速やかに分子量低下が起こるという、従来にない顕著な効果を奏する樹脂組成物を得ることができる。
なお、脂肪族ポリエステル樹脂(A)とホスホナイト化合物(B)とを溶融混練するに際しては、混練前の脂肪族ポリエステル樹脂(A)中の水分量を所定範囲とすることが好ましい。すなわち、脂肪族ポリエステル樹脂(A)中の、溶融混練前の水分量は、上限が好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1500ppm以下である。これにより、脂肪族ポリエステル樹脂(A)とホスホナイト化合物(B)とを溶融混練して得られる脂肪族ポリエステル樹脂組成物の脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対する固有粘度保持率を80%以上に維持することがより容易となる。
樹脂組成物の製造に際しては、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また、混練機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混練機、一段型、二段型連続式混練機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機等を使用できる。本発明においては、混練効率の点から二軸スクリュー押出機を使用することが好ましく、さらにスクリューの回転方向が同方向であるものが好ましい。
製造方法の具体例としては、脂肪族ポリエステル樹脂(A)およびホスホナイト化合物(B)、必要に応じてその他の成分をブレンドしたのち同一の押出機で溶融混合する方法が挙げられる。或いは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)およびホスホナイト化合物(B)を混合して加熱溶融させたところに、必要に応じてその他の成分を添加して配合することもできる。この際、各成分を均一に分散させる目的で、ブレンド用オイル等を使用することもできる。
樹脂押出機としては単軸または2軸押出機が利用できる。特に樹脂押出機として真空ベントを備えるものを用い、当該真空ベントにより押出機内部を減圧しながら溶融混練を行うことが好ましい。減圧時の押出機内部圧力については5〜50kPa程度とすることが好ましい。溶融混練時に系内を減圧することにより、樹脂組成物から水分を除去することができ、機械物性等に一層優れる樹脂組成物を得ることができる。
6.脂肪族ポリエステル樹脂組成物の物性
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、固有粘度(IV)が0.6〜1.8であることが好ましい。固有粘度は、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上であり、また、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。固有粘度が小さすぎると、成形品の機械物性が低下する可能性があり、また固有粘度が大きすぎると、成形加工時に溶融粘度が高くなりすぎ、成形性が低下する可能性がある。
また、本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、原料としての脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対する固有粘度保持率が、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがさらに好ましい。固有粘度保持率が60%以上であれば特に問題はないが、60%未満であると、脂肪族ポリエステル樹脂組成物由来の低分子量成分が多く生成するために、該樹脂組成物の成形加工の際にトラブルが生ずる可能性がある。
また、本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、特定組成の脂肪族ポリエステル樹脂に、ホスホナイト化合物(B)を上記のとおり含有することにより、水浸漬後の固有粘度保持率が所定の好ましい範囲となる。すなわち、本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、40℃の水中に13日間浸漬した後の固有粘度保持率が70%以下であることが好ましい。固有粘度保持率は、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。これにより、速やかに分子量が低下するため、速やかな分解が求められる用途に好適に使用することができる。
7.成形品および用途
本発明に係る樹脂組成物から成形品を得る方法は、特に限定されることはなく、熱可塑性樹脂に採用されている各種成形方法を適用することができ、得られる成形品としては、例えば、射出成形、射出吹込成形、射出圧縮成形、発泡成形などの射出成形法による成形品;Tダイ法、インフレーション法、ラミネート加工などの押出成形法による、パイプ・チューブ、異形品、電線被覆、多層または単層のフィルム・シート、モノフィラメント、マルチフィラメント、芯鞘構造繊維などの成形品;ブロー成形法による成形品、真空成形法による成形品、カレンダー成形法による成形品、圧縮成形法による成形品、粉砕法による粉体または粒体などの成形品を挙げることができる。
なお、本発明においては、脂肪族ポリエステル(A)とホスホナイト化合物(B)との溶融混練を、上記した成形方法に用いる成形機にて直接行なうことにより、本発明に係る樹脂組成物を成形品として直接製造することもできる。
本発明に係る樹脂組成物は、使用初期において良好な機械的強度を有し、また、土中・水中等の多湿条件において速やかに分子量低下を起こす。当該特性を有効に利用するため、本発明に係る樹脂組成物は、土壌改質、農業、原油掘削等に用いられるフィルム、容器等に成形することが好ましい。フィルムに成形する場合は、本発明の効果を損なわない範囲で、数種の組成物を積層させた積層フィルムとすることも可能である。本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形した場合は、その後、ロール法、テンター法、チューブラー法等によって一軸または二軸延伸を施してもよい。延伸する場合は、延伸温度は通常30℃〜110℃の範囲で、延伸倍率は縦、横方向、それぞれ0.6〜10倍の範囲で行われる。また、延伸後、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる方法等によって熱処理を施してもよい。
本発明に係る樹脂組成物は、後述する実施例において具体的に示されているとおり、使用初期においては十分な機械的強度を有し、多湿条件下で、100℃以下の低温(マイルドな温度条件)においても制御された分解特性、すなわち速やかな低分子量化を起こすので、原油やガスなどの地下資源採掘、例えばシェールガス採掘時の空隙の目止め材として使用した場合、一時的な目止め機能を発揮した後に消失し、その後のガス回収効率の低下を引き起こすことはないと考えられるので、地下資源採掘における目止め材等としての適用が特に期待される。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
<評価方法および材料>
(1)水中分解(加水分解)試験
脂肪族ポリエステル樹脂組成物5.0gと脱イオン水15.0gをガラス瓶に入れ、フタをした後、40℃のオーブンに13日間置いた。その後、樹脂組成物をガラス瓶から取り出し、窒素流通下70℃にて6時間乾燥を行った。得られた樹脂組成物に対して、質量測定、固有粘度測定を実施し、本試験実施前の質量、固有粘度との比をとり、水中分解試験での質量保持率、固有粘度保持率を計算した。
(2)質量測定
質量測定は、sartorius社製デジタル天秤A200S(0.0001gまで秤量可能)を用いて行った。
(3)固有粘度測定(IV測定)
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリエステル試料溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(A)より求めた。
IV=((1+4KHηsp0.5−1)/(2KHC) (A)
ここで、ηsp=η/η−1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
(4)樹脂
使用した樹脂は以下の通り。
(PBS)三菱化学社製 ポリブチレンサクシネート FZ61PN、IV=1.228
(PBSA)三菱化学社製 ポリブチレンサクシネートアジペート FD92WN、IV=1.752
(PLA)ネイチャーワークス社製 ポリ乳酸 6302D、IV=1.383
(5)加水分解促進剤
加水分解促進剤として使用した添加剤は以下の通り。
テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト ; クラリアントジャパン社製 HOSTANOX P−EPQ(パウダー)
トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート ; 東京化成工業社製試薬 Tris(2-ethylhexyl)Phosphate
トリフェニルホスフェート ; 東京化成工業社製試薬 Triphenyl Phosphate
<脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造および評価>
[実施例1〜4、比較例1〜4]
樹脂、加水分解促進剤を表1に示す割合で1つのベント口を有する日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30;15シリンダー、L/D=52.5)にて溶融混練し、該2軸押出機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、窒素流通下70℃にて6時間乾燥を行い、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得た。なお、混練時の設定温度は140℃、スクリュー回転数は300rpmとした。また、各樹脂は防湿袋を開封して速やかに溶融混練に使用した。
得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、水中分解(加水分解)試験を行い、試験前後に測定した質量、固有粘度からそれぞれの保持率を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 2015071713
尚、実施例4における混練前IVは、下記式から算出した。
混練前IV=(PBSのIV)*0.92+(PLAのIV)*0.08
実施例1〜4では、いずれも混練後の固有粘度保持率は90%以上、且つ、樹脂組成物の水中分解(加水分解)試験(40℃、13日間後)における固有粘度保持率が70%以下であることから、原油やガスなどの地下資源採掘、例えばシェールガス採掘時の空隙の目止め材として使用した場合、一時的な目止め機能を発揮した後に消失し(温度により消失するまでの時間は変わる)、その後のガス回収効率の低下を引き起こすことはないと考えられる。従って、本願に示された材料は同用途において極めて好適に使用できるものと考えられる。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、製造時や使用初期においては十分な機械的強度を有し、土壌・水中等の多湿条件下で制御された分解特性を有し、速やかに分子量の低下を起こす。それゆえ、フィルム、シート、繊維、成形品などとしたうえで、農業用途、土壌改質用途および石油などの掘削用途など、使用後に速やかに分解することを求められる用途に広く利用することができる。

Claims (7)

  1. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してホスホナイト化合物(B)0.1〜5質量部を溶融混練して脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する方法であって、脂肪族ポリエステル樹脂(A)がジオールとジカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを含有し、その含有量が脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに50〜100質量部であることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  2. ジオールが1,4−ブタンジオールであり、ジカルボン酸がコハク酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度(IV)が0.6〜1.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)がオキシカルボン酸を主成分としてなる脂肪族ポリエステルを含有し、その含有量が脂肪族ポリエステル樹脂(A)全体を100質量部としたときに1〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
  5. 脂肪族ポリエステル樹脂組成物の固有粘度(IV)が0.6〜1.8であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
  6. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の固有粘度保持率が80〜100%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
  7. 脂肪族ポリエステ樹脂組成物が地下資源採掘のための空隙の目止め材用であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
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