JP2014118543A - ポリエステル樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】
十分な剛性と耐引き裂き性及び、適度な生分解性の全ての要件を高い水準で満足する樹脂組成物、及びその成形体を提供する。
【解決手段】
脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル系樹脂であるポリエステル樹脂(A)、芳香族ジカルボン酸単位を特定量含有する芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂であるポリエステル樹脂(B)、および、脂肪族オキシカルボン酸を含むポリエステル樹脂(C)を、特定割合で含有するポリエステル樹脂組成物、および、当該樹脂組成物を成形してなる成形体。
【選択図】なし

Description

本発明はポリエステル樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。詳しくは成形性に優れ、適度な生分解性を有するとともに、剛性と耐引き裂き性が共に優れた樹脂組成物、および、該樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
近年、廃棄物処理の問題から生分解性樹脂は世界的に大きく注目されており、各種生分解性樹脂が製品化されている。中でもポリ乳酸は最も一般的に使用されている生分解性樹脂である。ポリ乳酸は高い剛性を有するが、耐衝撃性や成形性、生分解速度が不十分であった。
ポリブチレンアジペートテレフタレート等の構造式中に芳香族単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂は優れた耐衝撃性と十分な成形性を有するが、剛性や生分解速度が不十分であった(特許文献1参照)。
一方、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂は高い生分解性を有するが、剛性、耐衝撃性共に不十分であった。
そこで、上記問題を解決すべく、様々な検討が行われており、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂に対してポリ乳酸系重合体を特定量含有する生分解性樹脂組成物や(特許文献2参照)、脂肪族ポリエステル共重合体とポリ乳酸系樹脂を特定比率で含み、脂肪族ポリエステル系樹脂におけるコハク酸由来の構造単位量を所定の範囲内とした樹脂組成物(特許文献3参照)、特定化合物を共重合した、数平均分子量が特定範囲の脂肪族ポリエステルと、数平均分子量が特定範囲のポリ乳酸とを特定比率で溶融ブレンドした脂肪族ポリエステル(特許文献4参照)等が提案されている。
特表2001−500907号公報 国際公報2002−094935号公報 特開2005−23128号公報 特開平09−272789号公報
しかしこれらの樹脂組成物は、適度な生分解性を有しても剛性と耐引き裂き性が不十分であったり、あるいは、耐引き裂き性は改良されるものの剛性が低く生分解性が遅すぎる等、十分な剛性と耐引き裂き性及び、適度な生分解性の全ての要件を満足する樹脂組成物やその成形品を得ることは非常に困難であった。
本発明では成形性に優れ、適度な生分解性を有するとともに、剛性と耐引き裂き性の全ての要件を高い水準で満足するポリエステル樹脂組成物、および、当該樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を持つ複数のポリエステル樹脂の混合割合を特定の比率とすることにより、成形性に優れ、適度な生分解性
を有するとともに、剛性と耐引き裂き性を共に優れた水準で有するポリエステル樹脂組成物及び、該樹脂組成物を成形してなる成形体を提供できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[8]に存する。
[1] 脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル系樹脂であるポリエステル樹脂(A)、
脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位、および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂であって、全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位を5モル%以上95モル%以下含有するポリエステル樹脂(B)、並びに
脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)を含有するポリエステル樹脂組成物であって、
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の合計に対して、ポリエステル樹脂(A)を10重量%以上89重量%以下含有し、且つ、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)の合計に対してポリエステル樹脂(C)を1重量%以上10重量%未満含有する、ポリエステル樹脂組成物。
[2] ポリエステル樹脂(A)が全脂肪族ジカルボン酸単位中、コハク酸単位を30モル%を超え、95モル%以下含有することを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3] ポリエステル樹脂(A)が全脂肪族ジカルボン酸単位中コハク酸単位を60モル%以上含有する脂肪族ポリエステル樹脂(A−1)、及び、全脂肪族ジカルボン酸単位中アジピン酸単位を10モル%を超えて含有する脂肪族ポリエステル樹脂(A−2)を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[4] 脂肪族ポリエステル樹脂(A−1)と脂肪族ポリエステル樹脂(A−2)の合計に対して、脂肪族ポリエステル樹脂(A−1)を5重量%以上49重量%以下含有することを特徴とする[3]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[5] さらにフィラーを含有する、[1]〜[4]の何れかに記載のポリエステル樹脂組成物。
[6] 前記フィラーが、タルク、炭酸カルシウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする[5]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成型体。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られるフィルム。
本発明によれば、成形性に優れ、適度な生分解性を有するとともに、剛性と耐引き裂き性を共に優れた水準で有する樹脂組成物、および、該樹脂組成物を成形してなる成形体が提供される。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明では成形性に優れ、適度な生分解性を有するとともに、剛性と耐引き裂き性の全ての要件を高い水準で満足する樹脂組成物、および、当該樹脂組成物を成形してなる成形品を提供する。
一般に「生分解性」とは微生物が関与した分解とされているが、ここでは、特定条件で土壌中に埋設して取り出した時に重量損失が認められる特性のことをいい、特定条件につ
いては後述する。
なお、適度な生分解性とは、生分解性が早すぎず遅すぎないことであり、生分解性が早すぎることは製品の耐久性の観点から好ましくなく、生分解性が遅すぎることは廃棄物処理の観点から好ましくない。また、生分解性は土壌の温度や含水率などの外部因子の影響を受けることが知られている。
本発明において「適度な生分解性」とは、特定条件において特定土壌に試料を埋設して取り出し、外観変化を後述の基準で評価したときの生分解性が14日以上28日以下であることをいう。ここで、特定条件とは、土壌の温度40℃であり土壌の含水率20重量%である。特定土壌とは、三菱化学(株)四日市事業所内の土中である。
[樹脂組成物]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、以下のポリエステル樹脂(A)、(B)、(C)を含有し、それぞれは同一でない。ポリエステル樹脂(A)とは、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル系樹脂である。ポリエステル樹脂(B)とは、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位、および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂であって、全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位を5モル%以上95モル%以下含有するポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(C)とは、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂である。
上記条件に該当するポリエステル樹脂が複数ある場合には、該ポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸単位、全ジオール単位、オキシカルボン酸単位の和100モル%に対して、初めに芳香族ジカルボン酸単位の含有量が最も多い樹脂をポリエステル樹脂(B)と特定し、次にオキシカルボン酸単位の含有量が最も多い樹脂をポリエステル樹脂(C)とする。芳香族ジカルボン酸単位の含有量が同一であった場合は、オキシカルボン酸単位の含有量が多いものをポリエステル樹脂(C)とする。
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の合計に対して、ポリエステル樹脂(A)を10重量%以上89重量%以下、ポリエステル樹脂(B)を11重量%以上90重量%以下含有し、且つ、 ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)の合計に対してポリエステル樹脂(C)を1重量%以上10重量%未満含有する。
また、本発明のポリエステル樹脂は、繰返し単位を有する重合体であるが、それぞれの繰返し単位は、それぞれの繰返し単位の由来となる化合物に対する「化合物単位」とも呼ぶ。具体例として、脂肪族ジオール化合物に由来する繰返し単位を「脂肪族ジオール単位」、脂肪族ジカルボン酸化合物に由来する繰返し単位を「脂肪族ジカルボン酸単位」、芳香族ジカルボン酸化合物に由来する繰返し単位を「芳香族ジカルボン酸単位」、脂肪族オキシカルボン酸化合物に由来する繰返し単位を「脂肪族オキシカルボン酸単位」と呼ぶ。
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との含有比率は、通常ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計に対して、ポリエステル樹脂(A)を10重量%以上89重量%以下、ポリエステル樹脂(B)を11重量%以上90重量%以下含有する。このような比率で含有させることにより、本発明のポリエステル樹脂組成物を用いてフィルムに成形した場合において、フィルムの成形性、衝撃強度や引き裂き強度が優れたものとなる。また、これらの物性をより優れたものとするためには、ポリエステル樹脂(A)の含有比率が40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは51重量%以上であり、更に好ましくは61重量%以上である。一方ポリエステル樹脂(A)の含有比
率の上限は、好ましくは81重量%以下、より好ましくは76重量%以下、更に好ましくは71重量%以下である。同様の理由により、ポリエステル樹脂(B)の含有比率は19重量%以上であることが好ましく、より好ましくは24重量%以上であり、更に好ましくは29重量%以上である、一方上限は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは49重量%以下、更に好ましくは39重量%以下である。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物を用いてフィルムに成形した場合において、フィルムの引き裂き強度やフィルムの衝撃強度をさらに優れたものとし、適度な生分解性を有するためには、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)の合計に対してポリエステル樹脂(C)を1重量%以上10重量%未満含有するが、1.5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.8重量%以上であり、更に好ましくは2重量%以上である、一方上限は、好ましくは9重量%以下、より好ましくは7重量%以下、更に好ましくは6重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)以外にも様々な化合物を含有していても構わない。これらその他の構成成分については後述する。
[ポリエステル樹脂(A)]
本発明に用いられるポリエステル樹脂(A)は脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂であり、一種又は複数の脂肪族ポリエステルを用いてもよい。
より具体的には、ポリエステル樹脂(A)は、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単位、および下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂である。
−O−R−O− (1)
−OC−R−CO− (2)
式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。ポリエステル樹脂(A)が共重合体である場合には、ポリエステル樹脂(A)中に2種以上の式(1)で表される脂肪族ジオール単位が含まれていてもよい。上記式(2)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A)中に2種以上の式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていてもよい。そして、式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸単位が、全脂肪族ジカルボン酸単位に対して86モル%を超え、100モル%以下含まれていることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)におけるコハク酸単位量を所定範囲内とすることで、引き裂き強度が向上されるとともに衝撃強度にも優れたフィルムを得ることが可能となる。そして同様の理由から、コハク酸単位は、全脂肪族ジカルボン酸単位に対して好ましくは88モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97モル%以上であり、一方、好ましくは99.5モル%以下、より好ましくは99モル%以下、特に好ましくは98.5モル%以下である。
尚、上記式(1)、(2)で表される脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合物由来であってもかまわないが、カーボンニュートラルの観点から植物原料から誘導された化合物を含む事が望ましい。
式(1)の脂肪族ジオール単位を与える脂肪族ジオール化合物としては、脂肪族炭化水素基に水酸基が2つ結合したものをいい、脂肪族炭化水素基としては、直鎖脂肪族炭化水素基が特に好ましく用いられるが、分岐構造を有していても構わないし、環状構造を有し
ていても構わず、それらを複数有していても構わない。成形性や機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールが特に好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。尚、上記脂肪族ジオールは、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
式(2)の脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等が挙げられ、中でもコハク酸、アジピン酸、セバシン酸が特に好ましい。尚、上記脂肪族ジカルボン酸は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
さらに、本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸化合物の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、これらの炭素数1〜4のアルキルエステル若しくは分子内エステルや、オキシカルボン酸のエステルが挙げられる。また、カプロラクトン等のラクトン類を原料とすることで脂肪族オキシカルボン酸単位としてもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸またはグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
上記脂肪族オキシカルボン酸単位の量は、後述するポリエステル樹脂(C)における含有量より少ないが、成形性の観点からポリエステル樹脂(A)を構成する全繰返し単位中、通常20モル%未満、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、芳香族ジカルボン酸化合物単位を有していてもよい。芳香族ジカルボン酸化合物としては、芳香族環が2以下であることが好ましく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる、中でも、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
上記芳香族ジカルボン酸化合物単位の含有量は、後述するポリエステル樹脂Bにおける含有量より少ないが、生分解性の観点からポリエステル樹脂(A)を構成する全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位が通常5モル%未満、好ましくは4モル%以下、特に好ましくは2モル%以下である。
また、本発明におけるポリエステル樹脂(A)は「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸またはその酸無水物」または「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよく、カップリング剤により鎖長延長されたものであってもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸またはその酸無水物の具体例としては、プロパントリカ
ルボン酸またはその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸またはその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸またはその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、成形性、機械強度や成形品外観の観点から(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、より具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
このような3官能以上の成分由来の構造単位の量は、ポリエステル樹脂(A)を構成する全構造単位を100モル%として、下限が、通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が、通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
カップリング剤としては、ジイソシアネート、オキサゾリン化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。これらの添加量はポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.1〜5重量部である。
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A)は、肪族族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位を含む脂肪族ポリエステル2種以上を用いてもよい。剛性と耐引き裂き性の観点から、全脂肪族ジカルボン酸単位中のコハク酸単位が通常60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%を超える値である脂肪族ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂(A−1)と称すことがある)と、全脂肪族ジカルボン酸単位中アジピン酸単位を10モル%を超えて含有する脂肪族ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂(A−2)と称すことがある)の二種類のポリエステル樹脂の混合物が好ましく用いられる。尚、ポリエステル樹脂(A−1)の脂肪族ジカルボン酸単位中アジピン酸単位の含有量は、通常、特に制限されないが、好ましくは10モル%未満である。
ポリエステル樹脂(A−1)とポリエステル樹脂(A−2)の混合割合は、剛性と引き裂き強度の観点から、ポリエステル樹脂(A−1)が5重量%以上含まれることが好ましく、更に好ましくは7重量%以上、特に好ましくは9重量%以上であり、一方上限は、好ましくは49重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。また、ポリエステル樹脂(A−2)は51重量%以上含有することが好ましく、70重量%以上が更に好ましい、一方上限は、好ましくは95重量%以下、更に好ましくは93重量%以下、特に好ましくは91重量%以下含まれることである。
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)は、公知の方法で製造することができる。例えば、コハク酸を含む上記脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造す
る方法が好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
ポリエステル樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、通常0.1g/10分以上であり、通常100g/10分以下である。成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
ポリエステル樹脂(A)の融点は70℃以上が好ましく、さらに好ましくは75℃以上であり、170℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは119℃以下、特に好ましくは100℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。引張弾性率は180〜500MPaである事が好ましい。融点が範囲外では成形性に劣り、引張弾性率が180MPa以下では成形性や製袋性が低下する傾向があり、引張弾性率が500MPa以上では引き裂き強度や衝撃強度の改良効果が得られにくい。ポリエステル樹脂(A)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、コハク酸以外の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
[ポリエステル樹脂(B)]
本発明に用いられるポリエステル樹脂(B)は、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位、および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂である。具体的には、例えば、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、および、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位からなる芳香族脂肪族共重合ポリエステルである。
−O−R−O− (3)
式(3)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基を表す。ポリエステル樹脂(B)中に2種以上のRが含まれていてもよい。
−OC−R−CO− (4)
式(4)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基を表す。ポリエステル樹脂(B)中に2種以上のRが含まれていてもよい。
−OC−R−CO− (5)
式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示す。ポリエステル樹脂(B)中に2種以上のRが含まれていてもよい。
式(3)の脂肪族ジオール単位を与える脂肪族ジオール化合物は、特に限定はされないが、コストと機械強度のバランスから炭素数が2以上10以下のものが好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下の脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
式(4)の脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸化合物は、特に限定はされないが、コストと生分解性とのバランスから炭素数が2以上12以下のものが好まし
い。例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、セバシン酸またはアジピン酸が好ましい。
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸化合物としては、Rの環構造が2以下であることが好ましく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる、中でも、生分解性の観点からRはフェニレン基であることが好ましく、より具体的には例えばテレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸であってもよい。
尚、脂肪族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジオール化合物、および芳香族ジカルボン酸化合物は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
ポリエステル樹脂(B)における、芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸(脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の和)100モル%に対して5モル%以上95モル%以下含有しており、融点と生分解性の観点から好ましくは15モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、好ましくは80モル%以下、より好ましくは60モル%以下である。
ポリエステル樹脂(B)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸化合物の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、これらの炭素数1〜4のアルキルエステル若しくは分子内エステルや、オキシカルボン酸のエステルが挙げられる。また、カプロラクトン等のラクトン類を原料とすることで脂肪族オキシカルボン酸単位としてもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸またはグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
この脂肪族オキシカルボン酸の単位量は、後述するポリエステル樹脂(C)における含有量より少ないが、ポリエステル樹脂(B)を構成する全構成単位中、好ましくは20モル%未満、より好ましくは10モル%以下である。
また、ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(A)と同様、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸またはその酸無水物」または「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよく、ジイソシアナートやジエポキシ化合物等のカップリング剤により鎖長延長されたものであってもよい。
ポリエステル樹脂(B)は、上記ポリエステル樹脂(A)と同様、公知の製法により製造することができる。
ポリエステル樹脂(B)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量が、通常5,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは10,000以上500,000以下である。
本発明に用いられるポリエステル樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通
常100g/10分以下である事が好ましく、さらに好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。ポリエステル樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、分子量により調節することができる。
ポリエステル樹脂(B)の融点は70℃以上が好ましく、さらに好ましくは75℃以上であり、205℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは180℃以下、特に好ましくは140℃以下である。融点が低すぎる場合は組成物の成形性や耐熱性が劣る傾向があり、高すぎる場合には他成分との融点差が大きくなり成形性に劣る傾向がある。ポリエステル樹脂(B)の融点は、芳香族ジカルボン酸含有量やオキシカルボン酸含有量により調節することができる。
[ポリエステル樹脂(C)]
本発明に用いられるポリエステル樹脂(C)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(C)における、脂肪族オキシカルボン酸単位の含有量は、ポリエステル樹脂(C)の全構造単位100モル%に対して、通常20モル%以上、好ましくは35モル%以上、特に好ましくは51モル%以上、より好ましくは75モル%以上、最も好ましくは90%以上である。脂肪族オキシカルボン酸単位の含有量が上記範囲にある場合、ポリエステル樹脂組成物の剛性が好ましい値となる。
脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸化合物としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシへキサン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等これらの炭素数1〜4のアルキルエステル若しくは分子内エステルや、オキシカルボン酸のエステルが挙げられる。また、カプロラクトン等のラクトン類を原料とすることで脂肪族オキシカルボン酸単位としてもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸またはグリコール酸であり、乳酸が最も好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
ポリエステル樹脂(C)は、脂肪族ポリエステルや芳香族脂肪族ポリエステルに記載したその他の構造単位を含んでいてもよい。ポリエステル樹脂(C)におけるその他の構造単位の含有量は、ポリエステル樹脂(C)の全構造単位100モル%に対して、下限が、通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が、通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
また、ポリエステル樹脂(C)は、その他の構造単位として、3官能以上の脂肪族オキシカルボン酸成分由来の脂肪族オキシカルボン酸単位を有していてもよい。3官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、ポリエステル樹脂(C)の着色や異物などを低減して品質を高めるという観点で、リンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸等好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
ポリエステル樹脂(C)は、上記の原料を直接脱水重縮合する方法、乳酸やヒドロキシカルボン酸類等の環状2量体を開環重合させる方法、微生物による産生等により得る事ができる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
[その他の成分]
本発明のポリエステル樹脂組成物には、滑剤、フィラー(充填剤)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤、公知の表面ぬれ改善剤、難燃剤、離型剤、焼却補助剤、顔料、分散助剤、界面活性剤、結晶核剤、相溶化剤等の各種添加剤や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等の合成樹脂や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物が「その他の成分」として含まれていてもよい。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に使用できる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。これら「その他の成分」の添加量は、通常、生分解性樹脂組成物の物性を損なわないために、混合する物質の総量が、生分解性樹脂組成物の総量に対して、0.01重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
[滑剤]
例えば、本発明のポリエステル樹脂組成物に滑剤を含ませると、樹脂組成物をフィルムとしたのち袋に成形する際の成形性が向上する場合がある。
滑剤としては、公知のものを特に限定されることなく用いることができる。具体的には、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸の金属塩;ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル;ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド等;カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられる。なお、滑剤やワックス類は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いてもよい。この中でもエルカ酸アミドが特に好ましい。これらの滑剤は通常、ポリエステル樹脂組成物中0.01〜2重量%であり、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲で使用される。
[フィラー]
本発明のポリエステル樹脂組成物にフィラーを含ませると、樹脂組成物の流動性と結晶化速度の改良によるフィルム成形時の安定化、フィルム機械物性の異方性の低減にも寄与させることができる場合がある。また、樹脂組成物をフィルムとした場合にフィルム同士のブロッキングを防止することができる場合がある。さらに、フィルムを着色し、遮光性や光反射性を向上させることもできる。
フィラーは、その形状により繊維状、粉粒状、板状、針状のものがあり、特に粉粒状、板状のものが好ましい。粉粒状フィラーとしては、タルク、ゼオライト、ケイソウ土、カ
オリン、クレー、シリカ、石英粉末等の鉱物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム等の金属炭酸塩粒子;珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属珪酸塩粒子;アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物粒子;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物粒子;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸塩粒子;カーボンブラック等の炭素粒子等が挙げられる。また板状フィラーとしては、マイカが挙げられる。ブロッキングを防止する観点からは、タルク、炭酸カルシウム、或いはシリカを用いるとよく、また、フィルムを着色するとともに、遮光性或いは光反射性を向上させる観点からは、カーボンブラックや酸化チタンを用いるとよい。フィルム等の成形体或いは樹脂組成物中におけるフィラーの粒径は、数平均粒径で0.08〜25μmであり、より好ましくは0.1μm〜5μmである。この範囲からはずれると、上記フィラーの添加効果が低くなる傾向にある。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのフィラーは樹脂組成物中、通常0.05〜40重量%の範囲で使用される。
上記フィラーは表面処理を施したものを使用してもよく、この場合、フィラーの分散性の向上、樹脂組成物の流動性の向上、フィルムとした場合の平滑性の向上や口開き性が向上する場合がある。さらに、表面処理することにより、樹脂組成物に配合するフィラーや可塑剤等の添加剤を低減することが期待できる。フィラーの表面処理方法としては、表面処理剤とフィラーとを通常知られる公知の方法によって行うことができ、処理方法には特に限定されない。表面処理剤の種類は、炭素数6以上40以下の直鎖状脂肪酸、分岐鎖状脂肪酸、それらのエステル化合物などが挙げられる。
用いるフィラーの粒径に特に制限は無いが、フィルム物性向上、ハンドリングの理由から平均粒子径が0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.6μm以上であって、更に好ましくは0.7μm以上である。また、同様の理由より平均粒子径は7μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以下であって、更に好ましくは1.0μm以下である。平均粒子径の測定方法は特に限定されないが、本発明では島津製作所製 粉体比表面積測定装置 SS−100型(恒圧式空気透過法)で測定した粉末1gあたりの比表面積値を求め、JIS M−8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から下記式からフィラーの平均粒子径を計算した。
Figure 2014118543
また針状フィラーを使用したときのアスペクト比は、通常、上限が通常1000以下であり、好ましくは500以下、更に好ましくは100以下であり、一方下限は通常1以上であり、好ましくは10以上、更に好ましくは15以上である。この比が低すぎると、剛性、耐熱性などの期待していた物性が発現しない傾向があり、高すぎると、外観不良の原因やフィルム物性の低下傾向がある。ここでいうアスペクト比とは、フィラーの長径と短径の比である。粒子のアスペクト比は、視野100μm×100μmの走査型電子顕微鏡写真において観察される少なくとも10個以上の粒子の最長径と最短径の比率の算術平均値とする。
体積平均粒子径の測定方法に特に制限は無いが、分散媒中に分散した粒子を沈降法で測定したり、レーザー散乱解析で測定したり、レーザードップラー法で測定したりすることができる。本発明では、島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置 SA−CP4L、島津製作所製粒度分布自動測定装置 RS−1000により、粒子の沈降速度(ストークス
の法則)に基づいて測定した値とする。
用いるフィラーの比表面積値には特に制限はないが、比表面積値が大きすぎると剛性が十分に向上しない傾向があり、小さすぎると透明性が低下する傾向がある。使用するフィラーの比表面積値は、通常8000cm/g以上、好ましくは10000cm/g以上、一方、通常50000cm/g以下、好ましくは40000cm/g以下である。
用いるフィラーの硬度には特に制限は無いが、硬度が低すぎると、剛性、耐熱性などの物性が低くなる傾向があり、高すぎると、外観不良やフィルム強度の物性低下を起こしやすい傾向がある。使用するフィラーの硬度(モース硬度)は、上限が通常9以下、好ましくは8以下、より好ましくは7以下であり、一方下限は通常1以上であって、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。ここでいうモース硬度とは、試料物質で標準物質をこすり、ひっかき傷の有無で硬さを測定した値を言う。標準物質は以下である。硬度1)滑石、硬度2)石膏、硬度3)方解石、硬度4)蛍石、硬度5)リン灰石、硬度6)正長石、硬度7)水晶、硬度8)黄玉、硬度9)コランダム(鋼玉)、硬度10)ダイヤモンドである。
フィラーとして用いる化合物として具体的には、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム等を使用することが可能であって、生分解後の環境に対する配慮から、タルク、炭酸カルシウム、及び、シリカが好ましく用いられる。より具体的には、タルクとしては、富士タルク工業製のLMS100、LMR100、PKP80、PKP53Sが挙げられる。炭酸カルシウムとしては、日東粉化製のNITOREX30P、NITOREX23P、NS#100、NCCシリーズのNITOREX30PS、NCC#2310、NCC#1010、NCC−V2300、NCC−V1000、また丸尾カルシウム社製のウィスカルA等が挙げられる。シリカ粒子としては、日本アエロジル社製、アエロジル200、アエロジル300等が挙げられる。酸化チタンとしては、石原産業社製CR−60、CR−80、CR−68を使用することができる。
[可塑剤]
本発明のポリエステル樹脂組成物の流れ性が悪い場合は、可塑剤を加えるとよい。特に、樹脂組成物にフィラーを含ませた場合、樹脂組成物の粘度が上昇して樹脂組成物の流れ性が悪くなる場合があり、樹脂組成物に可塑剤を加えることによって、これを改善することができる場合がある。
可塑剤としては、公知のものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、メチルアジペート、ジエチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、ジ−n−プロピルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシレート等の脂肪酸エステル;トリアセチン等のグリセリンエステル;ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジオクチルマレエート、ジブチルフマレート、ジオクチルフマレート等のマレイン酸およびフマル酸エステル;アジピン酸−1,3−ブチレングリコール、エポキシ化大豆油等のポリエステル;エポキシ化エステル;トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル;トリエチレングリコールジアセテート;アセチルクエン酸トリブチル;グリセリンジアセトモノプロピオネート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノベヘネート、グリセリンモノアセトモノステアレート等のアセチル化モノグリセライド;ジグリセリンアセテート、デカグリセリンプロピオネート、テトラグリセリンカプリレート、デカグリセリ
ンラウレート、デカグリセリンオレート、デカグリセリンベヘネート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ロジン誘導体等が挙げられる。これらの可塑剤は、樹脂組成物中、通常0.05〜10重量%の範囲で使用される。
[帯電防止剤]
また、本発明のポリエステル樹脂組成物に帯電防止剤を含ませると、樹脂組成物をフィルムとした後に袋に成形する場合の成形性を向上させることができる場合がある。帯電防止剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。具体例としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤が好ましい。
ノニオン系の帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステルアルキルジエタノールアマイド類等があげられる。中でもアルキルジエタノールアミン類等が好ましい。
カチオン系の帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等があげられる。アニオン系の帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート等があげられる。中でも、樹脂との混練性がよく、帯電防止効果も高いため、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
帯電防止剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリエステル樹脂組成物に対して、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。上記範囲を上回ると、さらに、ポリエステル樹脂組成物の表面べたつきが発生し、製品価値が低下する傾向がある。また、上記範囲を下回ると、帯電防止性向上効果が低減する傾向がある。
[澱粉]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、澱粉を加えることで、結晶化度を始めとした各種物性を変化させることができる。具体的にはコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、エンドウ澱粉等が挙げられ、これらは未変性品、変性品どちらも使用することができる。変性とは化学的、物理的、生物学的等のあらゆる変性方法を含み、化学的変性としては、炭水化物(多糖類)の構成単位の一部または全部をエステル化、エーテル化、酸化、還元、カップリング、脱水、加水分解、脱水素、ハロゲン化等の化学反応により変性することを示し、特には、水酸基をエーテル化、エステル化することを示す。また、物理的変性は、結晶化度を変化させること等、物理的性質を変化させることを示す。また、生物学的変性は、生物を用いて化学構造等を変化させることを示す。
[耐光剤]
耐光剤としては、デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドトキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチル
ブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系安定剤等があげられる。耐光剤は、紫外線吸収剤と組み合わせて用いることが好ましく、ヒンダードアミン系安定剤と紫外線吸収剤との組み合わせが有効である。
耐光剤を混合する量は、ポリエステル樹脂組成物に対して、重量基準で通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上であり、また、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。この範囲を下回ると耐光剤の効果が小さくなる傾向がある。また、この範囲を上回ると剛性や耐引き裂き性が減少する傾向があり、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が劣ったり、耐光剤のブリードアウトが生じたりする傾向がある。
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等があげられる。紫外線吸収剤は、特に異なる種類の紫外線吸収剤を2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
紫外線吸収剤を混合する量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリエステル樹脂組成物に対して、重量基準で通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。この範囲を下回ると紫外線吸収剤の効果が低下する傾向がある。また、この範囲を上回ると製造費が高くなりすぎたり、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が劣ったり、紫外線吸収剤のブリードアウトが生じたりする傾向がある。
[熱安定剤]
熱安定剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド等のヒンダードフェノール系熱安定剤;トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジファスファイト等のリン系熱安定剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系熱安定剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;等があげられる。
熱安定剤を混合する量は、ポリエステル樹脂組成物に対して、重量基準で通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上であり、また、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。この範囲を下回ると熱安定剤の効果が小さくなる傾向がある。一方、この範囲を上回ると、製造費が高くなる傾向があり、熱安定剤のブリードアウトが生じたりする可能性がある。
[末端封止剤]
主に大気中の水分等による加水分解を抑制する目的で用いられる末端封止剤として、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられるが、上記のカルボジイミド化合物の内、モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、日本国特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、およびChemicalReview1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
これらのカルボジイミド化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら、カルボジイミドの使用量は、ポリエステル樹脂組成物全体に対して通常0.1〜5重量%である。
このように、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とポリエステル樹脂(C)とを含んでなるものであり、上記樹脂(A)〜(C)の配合比を所定範囲内としたことに特徴を有する。
[ポリエステル樹脂組成物の製造方法]
本発明に係るポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、公知の手法を適用することができる。例えば、ブレンドしたポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)の原料ペレットを一括して押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。押出機としては、単軸または2軸押出機が利用できる。また、ポリエステル樹脂(A)〜(C)を混合して加熱溶融させたところに、その他成分を添加して配合することもできる。この際、その他成分を均一に分散させる目的で、ブレンド用オイル等を使用することもできる。一方、ポリエステル樹脂(A)〜(C)に係る各々の原料ペレットを直接成形機に供給して、樹脂組成物を調製すると同時に、そのままフィルム等の成形体を得ることも可能である。
[樹脂組成物成型体]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、公知のポリエステル成形法により成型することができる。成形方法は特に限定されず、圧縮成形、積層成形、射出成形、押出成形、真空成型、圧空成型、ブロー成形、インフレーション成形等の公知の方法を用いることができる。特に、押出成形やインフレーション成形によって成形すると、本発明の効果が顕著に現れる。より具体的には、例えば、Tダイ、Iダイまたは丸ダイ等から所定の厚みに押し出したフィルム状、シート状物または円筒状物を、冷却ロールや水、圧空等により冷却、固化させる方法等が挙げられる。
成型体の用途は限定されず、具体的には食品用フィルム、生鮮食品のトレーやファース
トフードの容器、野外レジャー製品、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート、コーティング資材、農業量マルチフィルム、肥料用コーティング材、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材及び合成紙などに利用可能である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<物性の評価>
(MFR)
MFR値は、JIS K7210(1990)に基づき、メルトインデクサーを用いて190℃、荷重2.16kgにて測定した。
H−NMR)
H−NMRの測定では、試料約30mgを外径5mmのNMR試料管に量り取り、重クロロホルム0.75mLに加えて溶かした後に、Bruker社製AVANCE400分光計を用い、室温でH−NMRスペクトルを測定した。化学シフトの基準は、テトラメチルシラン(TMS)を0.00ppmとした。
(融点)
融点の測定は、パーキンエルマー(株)製示差走査熱量計,製品名:DSC7を用い、10mgのサンプルを流量50mL/分の窒素気流下で加熱溶融させた後、10℃/分の速度で冷却後、引き続き10℃/分の速度で昇温する際の融解ピーク温度を使用した。
製造例1
[重縮合用触媒の調製]
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに酢酸マグネシウム・4水和物を100重量部入れ、更に400重量部の無水エタノール(純度99重量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合重量比は45:55)を65.3重量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを122.2重量部添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、ナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体が残った。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行った。粘稠な液体は表面から粉体状へと徐々に変化し、2時間後には完全に粉体化した。更に、粉体状の触媒を1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子として10,000ppmとなるように調製した。
[脂肪族ポリエステル系樹脂の製造]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計および減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸100重量部、1,4−ブタンジオール99.2重量部、リンゴ酸0.24重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら1時間かけて230℃まで昇温し、この温度で1時間反応させた。その後、前記の触媒溶液を添加した。添加量は得られるポリエステル樹脂あたりチタン原子として50ppmとなる量とした。30分かけて250℃まで昇温し、同時に1時間30分かけて0.06×10Paになるように減圧し、更に0.06×10Paの減圧下で4.2時間反応させポリエステル樹脂を得た。以下、このポリエステル樹脂を、樹脂A−1と呼ぶことがある。
得られたポリエステル樹脂の融点は114℃で、MFR値は4.4g/10分であり、
脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する全脂肪族ジカルボン酸単位中のコハク酸単位は100モル%であった。
製造例2
製造例1において、コハク酸100重量部、アジピン酸31.0重量部、1,4−ブタンジオール143重量部、リンゴ酸0.345重量部とした以外は製造例1と同様に重合を行い、ポリエステル樹脂を得た。以下、このポリエステル樹脂を、樹脂A−2と呼ぶことがある。
得られたポリエステル樹脂の融点は91℃で、MFR値は3.7g/10分、ポリエステル樹脂を構成する全脂肪族ジカルボン酸単位中のコハク酸単位は80モル%であった。
実施例1〜6、比較例1〜4
製造例1、2で製造した、ポリエステル樹脂(A)に該当する各樹脂と、ポリエステル樹脂(B)に該当する芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂として以下に示すEcoflex(商標)を、ポリエステル樹脂(C)に該当する脂肪族オキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂として以下に示すレイシアH−400を、フィラー(D)として以下に示す炭酸カルシウム、その他の成分として、イルガノックス 1330、アデカスタブ PEP−36を用いて、下記表1、表2に記載された組成比となるように配合し、200℃において二軸混練機(池貝鉄鋼社製PCM30)にて混練し、175℃でインフレーション成形し、20μm厚みのフィルムを作成した。
ポリエステル樹脂(B)
・樹脂B:商品名:Ecoflex(ポリブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート系樹脂、BASF社製 融点:120℃)
ポリエステル樹脂(C)
・樹脂C:商品名:レイシアH−400(ポリ乳酸、三井化学社製)
・フィラー(D)
フィラー1:炭酸カルシウム NITREX 30P (日東粉化工業製 平均粒子径:0.76μm、比重:2.7、比表面積:30000cm/g、無処理)
フィラー2:炭酸カルシウム NCC V2300 (日東粉化工業製 平均粒子径:0.96μm、比重:2.7、比表面積:23000cm/g、脂肪酸処理と有機化合物処理)
フィラー3:炭酸カルシウム NS#100 (日東粉化工業製 平均粒子径:2.1μm、比重:2.7、比表面積:10500cm/g、無処理)
・商品名:イルガノックス 1330 (BASF社製)
・商品名:アデカスタブ PEP−36 (アデカ社製)
得られたフィルムそれぞれについて、以下の評価を実施した。
<耐引き裂き性>
JIS K7128−1に準拠して、長さ150.0mm、幅50.0mm、厚さ20μmの試験片に75mmのスリットを入れて、卓上型精密万能試験機(オートグラフAGS−1000H、島津製作所製)にて200mm/minの速度で引き裂き試験を行い、引き裂き強さを測定した。引き裂き強さの値が大きいほど耐引き裂き性に優れることを表し、実用上から50N/mm以上を合格とした。
<剛性>
JIS K7127に準拠して、長さ150.0mm、幅15.0mm、厚さ20μmの試験片を使って、卓上型精密万能試験機(オートグラフAGS−1000H、島津製作所製)にて1.0mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率を測定した。当該引張弾性率の値が大きいほど剛性に優れることを表し、実用上から200MPa以上を合格
とした。
<剛性と引き裂き強度の積>
剛性と引き裂き強度の積は、一般に剛性の高いものほど耐引き裂き性が低くなるため、両者の積の大小でその剛性と耐引き裂き性の総合的な数値を判断する目安となる。当該積の値が大きいほど剛性と耐引き裂き性を共に高い水準で持つことから、本発明では上記の引張弾性率をMPaの単位で表したときの値と、上記の引き裂き強さをN/mmの単位で表したときの値との積が、15000以上であるときに剛性と耐引き裂き性が総合的に優れていると判断した。
<生分解性>
成形して得られたフィルムについて、JIS K7127に記載されている「試験片タイプ2」の試験片を打ち抜き刃にて打ち抜き、水分量を20重量%に調整した三菱化学(株)四日市事業所内の土中に該フィルムを埋没させた。生分解試験の温度条件は40℃で、埋設期間は7日、14日、21日、28日で、該フィルムを土中から取り出して外観を観察して、以下の基準に従って生分解性の程度を評価した。△が14日〜28日の間に現れるものを合格とした。
○:フィルムの外観に変化がなかった。
△:フィルムの外観に亀裂や細孔などの変化があった。
×:フィルムが元の形状を留めないほど大きく変化していた。
評価結果を下記表1に示す。
Figure 2014118543
表1から明らかなように、実施例1〜6に係るフィルムは、ポリエステル系樹脂(A)におけるコハク酸由来の構造単位の量と、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)の組成比とが、いずれも本発明に規定された範囲内にあることによって、50N/mm以上の引き裂き強度を有し、且つ、200MPa以上の引張弾性率を有し、引張弾性率をMPaの単位で表したときの値と引き裂き強さをN/mmの単位で表したときの値との積が15000以上であり、剛性と耐引き裂き性を共に高い水準で持っていることが分かる。また、生分解性も△が7日〜28日の間に現れていることから適度な生分解性を有することが分かる。一方、比較例1〜4に係るフィルムは、生分解性は△が7日〜28日の間に現れることから適度な生分解性を有するものの、引張弾性率をMPaの単位で表したときの値と引き裂き強さをN/mmの単位で表したときの値との積が15000未満であり、特に耐引き裂き性が不十分であることがわかる。
本発明に係る樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とポリエステル樹脂(C)とを含んでなるものであり、上記ポリエステル樹脂(A)におけるコハク酸由来の構造単位の量を所定範囲内とするとともに、上記樹脂(A)〜(C)の配合比を所定範囲内としたことに特徴を有する。このような特徴を有する樹脂組成物からフィルムを得ると、成形性に優れ、適度な生分解性を有するとともに、剛性と耐引き裂き性が共に優れた水準のフィルムを得る事ができる。

Claims (8)

  1. 脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とを含む脂肪族ポリエステル系樹脂であるポリエステル樹脂(A)、
    脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位、および芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族脂肪族共重合ポリエステル系樹脂であって、全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位を5モル%以上95モル%以下含有するポリエステル樹脂(B)、並びに
    脂肪族オキシカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂(C)を含有するポリエステル樹脂組成物であって、
    ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の合計に対して、ポリエステル樹脂(A)を10重量%以上89重量%以下含有し、且つ、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)の合計に対してポリエステル樹脂(C)を1重量%以上10重量%未満含有する、ポリエステル樹脂組成物。
  2. ポリエステル樹脂(A)が全脂肪族ジカルボン酸単位中、コハク酸単位を30モル%を超え、95モル%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. ポリエステル樹脂(A)が全脂肪族ジカルボン酸単位中コハク酸単位を60モル%以上含有する脂肪族ポリエステル樹脂(A−1)、及び、全脂肪族ジカルボン酸単位中アジピン酸単位を10モル%を超えて含有する脂肪族ポリエステル樹脂(A−2)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 脂肪族ポリエステル樹脂(A−1)と脂肪族ポリエステル樹脂(A−2)の合計に対して、脂肪族ポリエステル樹脂(A−1)を5重量%以上49重量%以下含有することを特徴とする請求項3に記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. さらにフィラーを含有する、請求項1〜4の何れか1つに記載のポリエステル樹脂組成物。
  6. 前記フィラーが、タルク、炭酸カルシウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成型体。
  8. 請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られるフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018165345A (ja) * 2017-03-28 2018-10-25 三菱ケミカル株式会社 樹脂組成物及び該樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品

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