JP2015071667A - ハロゲンフリーコンパウンドの製造方法及び絶縁電線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】予め金属水酸化物に表面処理を施す必要なく、機械的強度に優れた成形物を得ることができるようにする。
【解決手段】サンプル1に示すように、エチレン系ポリマー(例えばEVA)100重量部に対し、水分率が0.1〜3.0%の金属水酸化物(例えば水酸化マグネシウム)を50〜200重量部と、シランカップリング剤0.2〜5.0重量部と、を少なくとも添加し、混合してノンハロゲンコンパウンドを製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エチレン系ポリマーに金属水酸化物を添加したハロゲンフリーコンパウンド、およびそれを用いた絶縁電線の製造方法に関する。
絶縁電線等の絶縁材料等に多用されているポリオレフィンに難燃性を付与するために、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を添加した組成物が用いられている。これら金属水酸化物を用いた難燃性組成物は、ハロゲンフリーであるため、焼却時の有毒ガスやダイオキシンの生成などの問題が生じない。
ハロゲンフリーの難燃性組成物に係る技術として、例えば特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂に対して、シランカップリング剤と脂肪酸系処理剤とを用いて表面処理した金属水酸化物を添加した樹脂組成物が開示されている。
特開2009−84524号公報
特許文献1の発明によれば、シランカップリング剤で表面処理した金属水酸化物をポリオレフィン系樹脂に添加することにより、機械的強度に優れたハロゲンフリーの難燃性組成物を得ることができる。しかしながら、特許文献1の場合、予めシランカップリング剤を含む処理剤で金属水酸化物に表面処理を行っておく必要がある。この場合、予め表面処理を行う必要があることから工程が複雑になり、表面処理を行った状態で金属水酸化物を供給する供給者が限られ、樹脂のコストも高くなる。
これに対して、例えば、表面処理を行っていない金属水酸化物と、表面処理用のシランカップリング剤とを別々に用意し、オレフィン系樹脂に金属水酸化物を添加して混合してコンパウンドを製造する際に、金属水酸化物にシランカップリング剤を混合して、金属水酸化物の表面処理を行う手法が考えられる。しかしながら、この場合、予め表面処理を行っておいた金属水酸化物と異なり、金属水酸化物とシランカップリングとが十分に反応することができず、これをオレフィン系樹脂に添加したコンパウンドを加熱成形した場合、成形物の機械的強度が不足するという課題が生じる。
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、予め金属水酸化物に表面処理を施す必要なく、機械的強度に優れた成形物を得ることができるハロゲンフリーコンパウンドを製造する製造方法、およびそのハロゲンフリーコンパウンドを用いた絶縁電線の製造方法の提供を目的とする。
本発明のハロゲンフリーコンパウンドの製造方法は、エチレン系ポリマー100重量部に対し、金属水酸化物を50〜200重量部、前記金属水酸化物の0.1〜3.0%の水、及びシランカップリング剤0.2〜5.0重量部と、を少なくとも添加し、混合してコンパウンドを製造する工程を有する。
また、本発明のハロゲンフリーコンパウンドの製造方法は、エチレン系ポリマー100重量部に対し、水分率が0.1〜3.0%の金属水酸化物を50〜200重量部と、シランカップリング剤0.2〜5.0重量部と、を少なくとも添加し、混合してコンパウンドを製造する工程を有する。
本発明の絶縁電線の製造方法は、上記のハロゲンフリーコンパウンドの製造方法により製造したコンパウンドを導体に被覆して絶縁電線を製造する工程を有する。
本発明によれば、予め金属水酸化物に表面処理を施す必要なく、機械的強度に優れた成形物を得ることができるハロゲンフリーコンパウンドを製造する製造方法、およびそのハロゲンフリーコンパウンドを用いた絶縁電線の製造方法を提供することができる。
本発明によるハロゲンフリーコンパウンドの製造方法の実施例を説明する図である。
本発明に係る実施形態のハロゲンフリーコンパウンドの製造方法は、絶縁電線等の絶縁材料等に多用されるポリオレフィンとして、エチレン系ポリマーを使用し、エチレン系ポリマーに対して、金属水酸化物を混合することでコンパウンドに難燃性を付与する。金属水酸化物を用いることでハロゲンフリーの難燃性のコンパウンドを製造することができる。
また、コンパウンドによる樹脂成型品の機械的強度を向上させるために、金属水酸化物と反応させるシランカップリング剤を添加する。シランカップリング剤は、反応性の有機官能基と加水分解基を有する有機ケイ素化合物であり、加水分解基が加水分解によって反応することにより、金属水酸化物との化学結合を形成する。また、シランカップリング剤の反応性の有機官能基がエチレン系ポリマーと反応し、この結果エチレン系ポリマーと金属水酸化物とが強固に結びつけられる。これによりエチレン系ポリマーに金属水酸化物が添加されたコンパウンドの成形物の機械的強度を向上させることができる。
本発明に係る実施形態では、金属水酸化物の水分率が0.1〜3.0%の範囲になるように予め調整しておく。水分率の調整は、例えば高湿度の恒温恒湿槽内で金属水酸化物を吸湿させることにより実行することができる。
そして、水分率を調整した金属酸化物をエチレン系ポリマーに加え、混合して混練し、コンパウンドを製造する。コンパウンドの製造には、例えば加圧ニーダー、バンバリミキサー、混練押出機、二軸押出機、ロール等が適用できる。
金属水酸化物の混合量は、エチレン系ポリマー100重量部に対し50〜200重量部とし、水分率が0.1〜3.0%のシランカップリング剤を0.2〜5.0重量部混合する。このときに、滑性を与える滑剤や酸化防止剤などの添加材を適宜混合することができる。
水分率が0.1〜3.0%の範囲になるように調整した金属水酸化物を用いることにより、シランカップリング剤の加水分解反応が促進され、金属酸化物との化学結合がより強固になり、コンパウンドを成形した成形物の機械的強度をより向上させることができる。水分率が0.1%より小さいと成形物の機械強度を向上する効果が得られない。水分率が3%を超えると加水分解の促進効果は変わらない上コンパウンドの相溶性が悪くなるので好ましくない。
また、本発明に係る実施形態の他の例として、上記のように予め水分率を調整した金属水酸化物を用いることなく、コンパウンドの製造時に水を加えて混合することでも、同様に機械的強度の向上効果が得られる。
この場合、金属水酸化物の混合量は、エチレン系ポリマー100重量部に対し50〜200重量部とし、その金属水酸化物の0.1〜3.0%の水と、シランカップリング剤を0.2〜5.0重量部混合する。このときに、滑性を与える滑剤や酸化防止剤などの添加材を適宜混合することができる。金属水酸化物は、例えば水分率が1%より小さい。金属水酸化物は難燃性と押出性とが両立する量、シランカップリング剤は金属水酸化物の表面処理に必要な量が添加され、それぞれ上記の範囲の量である。
金属水酸化物と水とを加えてエチレン系ポリマーと混合することにより、シランカップリング剤の加水分解反応が促進され、金属酸化物との化学結合がより強固になり、コンパウンドを成形した成形物の機械的強度をより向上させることができる。
上記の例において、エチレン系ポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−スチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−ヘキセン三元共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン−オクテン共重合体、エチレン共重合ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、マレイン酸グラフト低密度ポリエチレン、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体、マレイン酸グラフト直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数が4〜20のαオレフィンとの共重合体、マレイン酸グラフトエチレン−メチルアクリレート共重合体、マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸三元共重合体、ブテン−1を主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体、などが挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムを用いることができる。また、これらを併用してもよい。
また、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランなどが適用できる。
本発明に係る絶縁電線の製造方法の実施形態は、上記の例で製造したハロゲンフリーコンパウンドを押出機に投入し、押出機内で溶融・混練し、クロスヘッドのダイスによって線状の導体の周囲に被覆して冷却する。この場合、金属水酸化物等と混合した紛体状のコンパウンドをペレタイズ用の押出機でペレット化した上で、導体周囲に被覆する押出機に投入することができる。
また、上記の押出成形された絶縁電線は、耐熱性を向上させるために押出後の被覆層を架橋させることができる。架橋させる手法としては電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。電子線架橋法の場合は、ハロゲンフリーコンパウンドを押出成形して導体周囲の被覆層を形成した後に電子線を照射することにより架橋を行う。効率よく架橋を行うために、コンパウンドの製造時に、メタクリレート系化合物、アリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有させるようにしてもよい。また、化学架橋を行う場合は、コンパウンドに例えば有機パーオキサイドを架橋剤として混合し、押出成形して導体周囲に被覆層として成形した後に加熱処理して架橋を行う。
上記の工程により得られた絶縁電線は、水分率が調整され、もしくは水が添加された金属水酸化物の加水分解反応により、被覆層の機械的強度が向上したものを得ることができる。
(実施例)
図1は、本発明によるハロゲンフリーコンパウンドの製造方法の実施例を説明する図で、ハロゲンフリーコンパウンドの配合例とその成形物の物性を示すものである。
ここでは図1に示す配合でエチレン系ポリマーに水酸化マグネシウム、およびシランカップリング剤等を添加し、加圧ニーダーを使用して混合してハロゲンフリーコンパウンドを作成した。そしてこのハロゲンフリーコンパウンドを熱プレスにより1mm厚のシートに成形し、さらに120kGyの電子線を照射して架橋させた。得られたシートの物性として引っ張り強度と伸び(引っ張り伸度)とを計測した。
図1において、サンプル1〜3は、本発明の実施例に相当し、サンプル4〜5は比較例に相当する。
各サンプル1〜5において、エチレン系ポリマーとして、VA含有率が46%でMI(メルトフローインデックス)が2.5のEVA(EVA−Iとする)と、VAの含有率が15%でMIが2のEVA(EVA−IIとする)とを20:80の重量比で混合したポリマーを使用した。
そしてサンプル1では、上記のエチレン系ポリマー100重量部に対して、平均粒径が0.8μm、水分率が0.25%で、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理を行っていない水酸化マグネシウム(水酸化マグシウムIIとする)を120重量部、シランカップリング剤としてメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを2重量部、滑剤としてオレイン酸アミドを0.5重量部、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量部配合した。ここでは、水酸化マグネシウムIIとして、低水分率の状態で供給された水酸化マグネシウムを温度60℃・湿度95%の恒温恒湿槽に24時間放置して水分率0.25%まで吸湿させたものを用いた。
サンプル2では、上記のエチレン系ポリマー100重量部に対して、平均粒径が0.8μm、水分率が0.08%で、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理を行っていない水酸化マグネシウム(水酸化マグシウムIとする)を120重量部、水(蒸留水)を1重量部、シランカップリング剤としてメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを2重量部、滑剤としてオレイン酸アミドを0.5重量部、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量部配合した。1重量部の水の添加料は、水酸化マグネシウムの0.8%に相当する。水酸化マグネシウムの水分率は、あらかじめ含まれる水分0.08%と合わせて0.88%であることになる。
また、サンプル3では、上記のエチレン系ポリマー100重量部に対して、水酸化マグネシウムIを120重量部、水を2.5重量部、シランカップリング剤として(アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランを2重量部、滑剤としてオレイン酸アミドを0.5重量部、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量部配合した。サンプル3はサンプル2よりもコンパウンド中の水分含有量を増やし、かつシランカップリング剤の種類をサンプル2から変更している。水酸化マグネシウムの水分率は0.28%であることになる。
比較例であるサンプル4は、上記のエチレン系ポリマー100重量部に対して、水酸化マグネシウムIを120重量部、シランカップリング剤としてメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを2重量部、滑剤としてオレイン酸アミドを0.5重量部、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量部配合した。
第2の比較例であるサンプル5は、上記のエチレン系ポリマー100重量部に対して、水酸化マグネシウムIを120重量部、シランカップリング剤として(アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランを2重量部、滑剤としてオレイン酸アミドを0.5重量部、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を1重量部配合した。
サンプル4、5は、シランカップリング剤の種類を変更したものであるが、いずれも水分率が0.1%より低く表面処理が未処理の水酸化マグネシウムを使用し、水を別途添加していない配合である。
上記の配合に基づく機械的強度(引っ張り強さ)の評価結果から、水分率を0.25%に調整した金属水酸化物を使用したサンプル1、及び0.08%の低水分率の金属水酸化物に水を加えて配合したサンプル2、3は、低水分率の金属水酸化物のみを使用したサンプル4、5の比較例よりも引っ張り強さが明らかに向上し、実施例の配合により機械的強度の高いハロゲンフリーコンパウンドが得られることがわかる。
また、シランカップリング剤の反応が促進されることにより、実施例としてのサンプル1〜3では、比較例のサンプル4、5よりも伸度が低下するが、絶縁電線用途等における実用上、問題のない範囲であった。

Claims (3)

  1. エチレン系ポリマー100重量部に対し、金属水酸化物を50〜200重量部、前記金属水酸化物の0.1〜3.0%の水、及びシランカップリング剤0.2〜5.0重量部と、を少なくとも添加し、混合してコンパウンドを製造する工程を有するハロゲンフリーコンパウンドの製造方法。
  2. エチレン系ポリマー100重量部に対し、水分率が0.1〜3.0%の金属水酸化物を50〜200重量部と、シランカップリング剤0.2〜5.0重量部と、を少なくとも添加し、混合してコンパウンドを製造する工程を有するハロゲンフリーコンパウンドの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のハロゲンフリーコンパウンドの製造方法により製造したコンパウンドを導体に被覆して絶縁電線を製造する工程を有する絶縁電線の製造方法。
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