JP2015068692A - 放射性セシウム分離濃縮方法及び放射性セシウム分離濃縮装置 - Google Patents

放射性セシウム分離濃縮方法及び放射性セシウム分離濃縮装置 Download PDF

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Abstract

【課題】汎用的な指標に基づいて土壌や焼却灰等の被処理物の組成を調整することで、被処理物に含まれる放射性セシウムを効率的に分離濃縮して、大きく減容化することができる放射性セシウム分離濃縮方法、放射性セシウム分離濃縮装置、放射性セシウム除去方法、及び放射性セシウム除去装置を提供する。【解決手段】被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮方法であって、被処理物の光学的塩基度が所定値以上になるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整工程と、光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、前記分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程と、を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、放射性セシウム分離濃縮方法、放射性セシウム分離濃縮装置、放射性セシウム除去方法、及び放射性セシウム除去装置に関する。
原子力発電所等の核分裂反応を利用する機器等から漏洩した放射性物質で汚染された土壌や草木、海や河川等の自然環境を回復するために、放射性物質を含む被処理物から放射性物質を分離して濃縮する様々な方策が研究されている。
放射性物質の中でもセシウム134、セシウム137は沸点、融点が低くて揮散しやすく、水溶性も高い物質であるため、健康への影響が大きく、ヨウ素131と併せて主要三核種と言われている。特にセシウム137は、半減期が30年と長く、土壌に吸着されると容易に除染できない。
特許文献1には、原子力発電所等から発生する核種を含む濃縮廃液から効率よく減容した処分用均質固化体を形成することを目的として、原子力発電所等から発生する核種を含む濃縮廃液またはその蒸発残留物を溶融炉において溶融する溶融工程と、溶融炉内の溶融物を水中で急冷して水砕スラグを得る急冷工程と、該水砕スラグをセメントで固化し処分用均質固化体を形成する固化工程とを含むことを特徴とする濃縮廃液処理方法が提案されている。
また、特許文献2には、放射性核種をガラス固化することを目的として、二つ以上の室を備える溶融炉において、ガラスを溶融させ、放射性成分をカプセルに入れる方法であって、ガラス供給材料を該溶融炉の主室に加え、溶融ガラスになるまで前記供給材料を加熱し、該溶融ガラスを該溶融炉の一つ以上の副室に流入させ、放射性成分を前記副室の前記ガラス溶融材料に加え、該放射性成分をカプセルに入れる方法が提案されている。
しかし、放射性核種の全てを確実にスラグやガラスに閉じ込めることは困難であり、揮発した放射性核種を別途捕集しなければならないという問題があった。
そこで、特許文献3には、揮発性のセシウムを溶融固体化中に捕捉するために、塩素とスラグ層との接触を防止できる放射性固体廃棄物のプラズマ溶融処理方法として、放射性固体廃棄物をプラズマ加熱によって溶融させる放射性固体廃棄物のプラズマ溶融処理方法において、前記放射性固体廃棄物を250℃以上でかつセシウムの沸点未満の温度で予熱した後に前記プラズマ加熱溶融処理を行うことを特徴とする放射性固体廃棄物のプラズマ溶融処理方法も提案されている。
また、特許文献4には、放射性セシウムで汚染された各種の廃棄物に、CaO、MgO、及びSiOの各々の質量が所定の関係式を満たす範囲でCaO源及びMgO源を配合し、液相が形成されないように1200〜1350℃で廃棄物を加熱焼成することによって放射性セシウムを揮散させる放射性セシウムの除去方法が提案されている。
特開2003‐84092号公報 特開平09‐329692号公報 特開平10‐26696号公報 特許第5159971号公報
しかし、特許文献1から特許文献3に記載された従来技術は、原子力発電所等から発生する核種を含む廃棄物を減容してスラグやガラスに閉じ込める技術であり、放射性物質、特に放射性セシウムで汚染された大量の土壌や、汚染物質を焼却した灰等の残渣や、汚染水を浄化した後の汚泥等の処理に適用することは困難であった。
これら汚染土壌、灰等の残渣、汚泥等は膨大な量に達し、放射性物質が閉じ込められたスラグやガラスが相当な量に達するため、長期に渡り管理可能な保管場所を確保することが困難なためである。
また、上述した特許文献4に記載された従来技術は、放射性セシウムに汚染された膨大な量の被処理物に対処できるようになるが、上述の所定の関係式を満たす範囲でCaO源及びMgO源を配合しても、放射性セシウムで汚染された廃棄物の組成或いは廃棄物への他の添加物によっては放射性セシウムを効率的に揮散させることができない場合があり、関係式が汎用性に欠けるという問題があった。
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、汎用的な指標に基づいて土壌や焼却灰等の被処理物の組成を調整することで、被処理物に含まれる放射性セシウムを効率的に分離濃縮して、大きく減容化することができる放射性セシウム分離濃縮方法、放射性セシウム分離濃縮装置、放射性セシウム除去方法、及び放射性セシウム除去装置を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による放射性セシウム分離濃縮方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮方法であって、被処理物の光学的塩基度が所定値以上になるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整工程と、光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、前記分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程と、を含む点にある。
上述した特許文献4は、スラグの溶融温度を調整する指標として従来用いられていた塩基度(CaO/SiOの比)を調整する考え方の範疇に入り、スラグを溶融させることなく放射性セシウムを揮散させる考え方であるが、このような指標はAl,Fe,NaO,KO等の他の組成、或いは被処理物に添加される他の助剤の影響を受けると、もはや放射性セシウムの揮散量を調整できないという問題が内包されていた。そのような状況下で、本願発明者らは、鋭意試験研究を重ねた結果、被処理物の組成のばらつき等にかかわらず、被処理物を加熱処理することによって得られる溶融スラグの光学的塩基度と加熱処理によって被処理物から揮散する放射性セシウムの揮散率との間に正の相関があり、光学的塩基度が高いほど放射性セシウムの揮散率が高くなるという新知見を得た。
光学的塩基度はDuffyとIngramによって見出された指標であり、紫外光吸収ピークがガラス組成に対して敏感に変化することに注目し、多成分系酸化物ガラスについて、ガラスの組成とそれらを構成するカチオンの電気陰性度とから、以下の数式に基づいて導き出される指標である。
光学的塩基度Λ=1−Σ(zi・ri/2)・(1−1/γi)
但し、γi=1.36(χi−0.26)
ここに、ziはi種カチオンの原子価であり、riは酸素1個あたりで表現したときのi種カチオンの数であり、χiはi種カチオンの電気陰性度である。
光学的塩基度を調整することにより溶融スラグの酸化物骨格構造が脆弱になり、放射性セシウムの酸化物骨格構造からの拘束力が低下して、揮散しやすい状態になると考えられる。
そこで、光学的塩基度調整工程で、予め被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加して被処理物の加熱処理後の光学的塩基度が所定値以上になるように調整し、分離工程で、被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離し、捕集工程で、揮散分離された放射性セシウムを捕集することによって、保管管理する必要がある放射性セシウムを分離濃縮して大幅に減容化でき、放射性セシウムが分離除去されたスラグを産業用資源として有効利用できるようになる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、前記光学的塩基度調整工程で添加される光学的塩基度調整助剤は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、マグネシウム化合物、ホウ素化合物、鉄化合物、鉛化合物の何れかから選択される単一または複数の物質である点にある。
上述した光学的塩基度調整助剤としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、マグネシウム化合物、ホウ素化合物、鉄化合物、鉛化合物、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ホウ砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄、一酸化鉛、二酸化鉛等から選択される単一または複数の物質が好適に利用できる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加工程をさらに含み、前記光学的塩基度調整工程で添加される光学的塩基度調整助剤の添加量に基づいて、前記塩素系助剤添加工程で添加される塩素系助剤の添加量が設定される点にある。
塩素系助剤添加工程で被処理物に塩素系助剤を添加すると、塩素系助剤に含まれる塩素とセシウムが結合して比較的沸点が低い塩化セシウムが生成されるため、被処理物中の放射性セシウムをより効率よく揮散させることができるようになる。しかし、塩素系助剤を添加することによって装置が腐食する虞もあるため、無制限に塩素系助剤を添加することは困難である。そこで、放射性セシウムの揮散率を上昇させる効果のある光学的塩基度調整助剤の添加量に基づいて塩素系助剤の添加量を設定すれば、塩素系助剤の過剰添加を抑制しながら効率的に放射性セシウムを揮散分離することができるようになる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記塩素系助剤添加工程で被処理物に添加される塩素系助剤は、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰、溶融飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質である点にある。
被処理物に添加する塩素系助剤として、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰、溶融飛灰を好適に用いることができ、塩素系プラスチック廃棄物や焼却飛灰を用いれば省資源化に資するようになる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、被処理物の加熱処理後の光学的塩基度が0.53以上になるように、前記光学的塩基度調整工程で添加される光学的塩基度調整助剤の添加量が調整される点にある。

被処理物の加熱処理後の光学的塩基度が0.53以上になるように光学的塩基度調整助剤を添加すれば、被処理物中の放射性セシウムの揮散率が非常に高くなる。
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記分離工程は、被処理物を1200℃から1400℃で溶融して溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離する工程である点にある。
比較的低い温度で溶融処理することで、加熱に要する燃料費等の運転コストを低減でき、加熱処理に用いる炉壁等の耐火物の焼損を回避して設備コストを低減できるようになる。
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第六特徴構成に加えて、前記光学的塩基度調整工程で添加される光学塩基度調整助剤は、被処理物の溶融温度を降下させる融点降下剤としての機能を備えている点にある。
光学塩基度調整助剤が同時に融点降下剤として機能するので、放射性セシウムの揮散率を高めながらも被処理物の溶融温度が低下し、燃料費等の運転コストをより低減できるようになる。
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、被処理物が、土壌、下水汚泥、浚渫汚泥、一般廃棄物、産業廃棄物、農業系バイオマス、木質系バイオマス、草本系バイオマス若しくはそれらの焼却残さから選択される単一または複数の物質である点にある。
放射性セシウムで汚染された土壌、雨水に溶けた放射性セシウムが流入する下水処理場の下水汚泥、放射性セシウムが沈降した海や河川等の浚渫汚泥、稲わらや樹木の葉や表皮、草等のバイオマス、そしてそれらが最終的に集積される一般廃棄物、産業廃棄物には比較的高濃度の放射性セシウムが濃縮されている。このような被処理物に本発明を適用することにより、放射性セシウムを効果的に分離濃縮して減容でき、大規模な保管スペースを確保しなくても厳重な管理下で長期にわたり保管することができ、除染されスラグとなった被処理物を様々な資源として安全に再利用することができるようになる。
本発明による放射性セシウム分離濃縮装置の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項9に記載した通り、被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮装置であって、被処理物の光学的塩基度が所定値以上になるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整装置と、光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えている点にある。
同第二の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加装置をさらに備え、前記光学的塩基度調整装置で添加される光学的塩基度調整助剤の添加量に基づいて、前記塩素系助剤添加装置で添加される塩素系助剤の添加量が設定される点にある。
同第三の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、被処理物が、土壌、下水汚泥、浚渫汚泥、一般廃棄物、産業廃棄物、農業系バイオマス、木質系バイオマス、草本系バイオマス若しくはそれらの焼却残さから選択される単一または複数の物質である点にある。
本発明による放射性セシウム除去方法の特徴構成は、特許請求の範囲の請求項12に記載した通り、被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により除去する放射性セシウム除去方法であって、被処理物の光学的塩基度が所定値以上となるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整工程と、光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、を含む点にある。
上述の構成によれば、被処理物から放射性セシウムを除去して被処理物を有効利用できるようになる。
本発明による放射性セシウム除去装置の特徴構成は、特許請求の範囲の請求項13に記載した通り、被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により除去する放射性セシウム除去装置であって、被処理物の光学的塩基度が所定値以上となるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整装置と、光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離装置と、を備えている点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、汎用的な指標に基づいて土壌や焼却灰等の被処理物の組成を調整することで、被処理物に含まれる放射性セシウムを効率的に分離濃縮して、大きく減容化することができる放射性セシウム分離濃縮方法、放射性セシウム分離濃縮装置、放射性セシウム除去方法、及び放射性セシウム除去装置を提供することができるようになった。
放射性セシウム分離濃縮(除去)装置の説明図 放射性セシウム分離濃縮(除去)方法のフロー図 試料の基材である模擬水田土壌の組成表 (a)〜(c)は溶流度試験の説明図 模擬水田土壌に光学的塩基度調整助剤を20wt%添加、CaClを10wt%添加した試料の加熱温度に対する溶流度の特性図 模擬水田土壌に光学的塩基度調整助剤を30wt%添加、CaClを10wt%添加した試料の加熱温度に対する溶流度の特性図 模擬水田土壌に光学的塩基度調整助剤を30wt%、塩素系プラスチック廃棄物(廃塩ビ)を10wt%添加した試料の加熱温度に対する溶流度の特性図 加熱温度1350℃での光学的塩基度調整助剤毎のセシウム揮散率の特性図 スラグの光学的塩基度に対するセシウム揮散率の特性図 添加金属元素の揮散率を示す図 ナトリウム及びカリウムの揮散率のセシウム揮散率に対する特性図
以下、本発明による放射性セシウム分離濃縮方法及び放射性セシウム分離濃縮装置の実施形態を説明する。
図1には、本発明による放射性セシウム分離濃縮装置が示されている。放射性セシウム分離濃縮装置1は、被処理物に含まれる放射性セシウムを分離濃縮する装置で、放射性セシウムを含有する被処理物を集積する受入部2と、被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離(除去)する溶融炉6と、溶融炉6で被処理物から揮散分離(除去)された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する第1集塵機11を備えている。
受入部2に集積された被処理物を溶融炉6に搬送する搬送機構3が設けられ、搬送機構3で搬送される被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整装置4が設置されている。
溶融炉6で溶融された被処理物は溶融スラグとして下方に設置された冷却水槽7に滴下され、急冷されて水砕スラグとなり、排出機構8により槽外に排出される。一方、溶融の過程で発生した排ガスは煙道9から流出し、煙道9に沿って配置された冷却装置10、第1集塵機11、中和剤添加装置12、第2集塵機13、白煙防止装置、煙突を経て排出される。尚、溶融炉6の炉室及び煙道9は耐火レンガや耐火セメント等の耐火物で被覆されている。
図2には、上述の放射性セシウム分離濃縮装置1によって実行される本発明の放射性セシウム分離濃縮方法が示されている。即ち、光学的塩基度調整装置4で被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整工程が実行され、溶融炉6で光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を溶融して溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離する分離工程が実行され、第1集塵機11で排ガスに含まれる放射性セシウムを捕集する捕集工程が実行される。
被処理物となるのは、土壌、下水汚泥、浚渫汚泥、一般廃棄物、産業廃棄物、農業系バイオマス、木質系バイオマス、草本系バイオマス若しくはそれらの焼却残さから選択される単一または複数の物質である。放射性セシウムで汚染された土壌、雨水に溶けた放射性セシウムが流入する下水処理場の下水汚泥、放射性セシウムが沈降した海や河川等の浚渫汚泥、稲わらや樹木の葉や表皮、草等のバイオマス、そしてそれらが最終的に集積される一般廃棄物、産業廃棄物には比較的高濃度の放射性セシウムが濃縮されている。
放射性セシウムは土壌中の粘土鉱物成分等への吸着性が高く、一旦吸着されてしまうと物理的に分離除去することが難しい。また、吸着された状態は構造が強固であるため、そのままでは加熱しても揮散分離しにくい。
光学的塩基度調整工程では、被処理物に光学的塩基度調整助剤が添加される。被処理物からのセシウム揮散率は加熱処理後の溶融スラグの光学的塩基度と明確な正の相関を有するため、被処理物の加熱処理後の光学的塩基度が所定値以上になるように調整することで、放射性セシウムで汚染された被処理物から効率よく放射性セシウムを揮散させることができる。尚、被処理物中に揮発成分が少ない場合には、加熱処理の前後で光学的塩基度に大きな違いはなく、加熱処理前の光学的塩基度を指標とすることもできる。
既述したように、光学的塩基度は、DuffyとIngramによって見出された指標であり、紫外光吸収ピークがガラス組成に対して敏感に変化することに注目し、多成分系酸化物ガラスについて、ガラスの組成とそれらを構成するカチオンの電気陰性度とから、以下の数式に基づいて導き出される指標である。
光学的塩基度Λ=1−Σ(zi・ri/2)・(1−1/γi)
但し、γi=1.36(χi−0.26)
ここに、ziはi種カチオンの原子価であり、riは酸素1個あたりで表現したときのi種カチオンの数であり、χiはi種カチオンの電気陰性度である。
スラグの骨格強度を評価する指標として光学的塩基度を用いることができ、予め被処理物の組成を分析すれば、目標となる光学的塩基度を得るために必要な光学的塩基度調整助剤の添加量が計算により求めることができる。もちろん、加熱によってスラグから揮散する助剤の量も勘案した添加量が算出される。
光学的塩基度調整助剤としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、マグネシウム化合物、ホウ素化合物、鉄化合物、鉛化合物の何れかから選択される単一または複数の物質、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ホウ砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄、一酸化鉛、二酸化鉛等の何れかから選択される単一または複数の物質が好適に用いられる。
このような光学的塩基度調整助剤を、被処理物の加熱処理後の光学的塩基度が所定値以上、例えば0.53以上、好ましくは0.6以上になるように添加することで、被処理物中の放射性セシウムをほぼ完全に揮散させることができる。
溶融スラグからの放射性セシウムの離脱挙動はスラグの酸化物骨格構造に支配され、スラグの酸化物骨格構造は理想的なSiO四面体構造に近ければ酸化物骨格構造が強く放射性セシウムの溶融スラグからの離脱の程度は低い。しかし、光学的塩基度調整助剤が添加され、光学的塩基度が適正な値に調整されたスラグ、つまり光学的塩基度を増加させたスラグは酸化物骨格構造が脆弱になり、放射性セシウムの、スラグの酸化物骨格構造からの拘束力が低下して放射性セシウムが離脱しやすくなると推測される。
また、スラグの融点降下剤としても機能する光学的塩基度調整助剤を用いれば、被処理物の溶融温度が低下するとともにスラグの酸化物骨格構造がより脆弱になり、放射性セシウムの離脱の程度をさらに向上させることができる。
分離工程では回転式表面溶融炉である溶融炉6で被処理物を1200℃〜1700℃の範囲、好ましくは1200℃〜1400℃の範囲に加熱して溶融する。溶融された被処理物は冷却水槽7に滴下されて水砕スラグとなる一方、放射性セシウムは溶融の過程で発生した排ガスとともに揮散して煙道9から流出するため、被処理物から放射性セシウムが分離、除去される。
捕集工程では、被処理物から揮散された放射性セシウムを含む排ガスがボイラ、熱交換器、冷却水噴霧機構を備えた冷却塔等で構成される冷却装置10で200℃程度に冷却され、沸点以下となり固化した放射性セシウムや重金属類を含む飛灰が第1集塵機11で捕集される。さらに、中和剤添加装置12によって消石灰(Ca(OH))や重曹(NaHCO)等が添加されて排ガスに含まれるHClやSOx等の酸性ガスが中和され、第2集塵機13で塩化物や硫化物として捕集された後に白煙防止装置で加熱されて煙突から排気される。尚、乾式で中和する場合には中和剤として消石灰や重曹が好適に用いられるが、これらに限るものではなく、例えば、湿式洗浄装置を利用する場合には水酸化ナトリウム(NaOH)も用いられる。
第1集塵機11で捕集された放射性セシウムが濃縮された飛灰は被処理物と比較すると十分に放射性セシウムが濃縮且つ容積が減容化されているので、所定の管理下で長期に渡って保管するためにそれほど広大な保管スペースを確保する必要が無い。通常、スラグと飛灰の重量比は8:2であり、飛灰の重量は処理前の被処理物の重量に比して1/5になっている。つまり、被処理物と飛灰の比重が同じとすると、1/5に減容される。
他方、排出されたスラグは、例えばコンクリート骨材、セメント材料、道路舗装材等の産業用資源として有効利用される。尚、スラグに含まれる放射性セシウムは極めて微量となるが、再利用のための用途がその放射能強度に応じて制限される場合もある。この場合は、光学的塩基度調整助剤の量や被処理物に含まれる放射性セシウムの濃度、溶融炉の運転温度等を調整し、制限された放射能強度となるように調整を行なう。
搬送機構3に、被処理物に塩素系助剤を添加するための塩素系助剤添加装置5(図1中、破線で示されている。)を設け、塩素系助剤添加工程を実行することがより好ましい。被処理物に塩素系助剤を添加することによって、塩素系助剤に含まれる塩素とスラグの酸化物骨格構造から離脱した放射性セシウムのイオン結合の機会が増加し、スラグを構成するセシウムの酸化物(酸化セシウム)の沸点より低い、沸点が1295℃の塩化セシウムに移行する反応が促進されるので、被処理物中の放射性セシウムをより効率よく揮散させることができるようになる。
塩素系助剤として、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰、溶融飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質が用いられ、無機塩化物として、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化第二鉄等が用いられ、高沸点の塩化物として塩化カルシウム等が好適に用いられる。尚、塩素が含まれていれば塩素系助剤として用いることができ、例えば塩素ガスや有機系塩化物等であってもよい。尚、溶融飛灰としては、他の施設から排出された塩素を含む溶融飛灰でも、自施設からの溶融飛灰でもよい。但し、第1集塵機11の飛灰は放射性セシウムが多く含まれ適していない。また、焼却飛灰も塩素が含まれていればよく、特に排ガス中の酸性ガス(HCl、SO)を中和、捕集した焼却飛灰は塩素分が多く含まれ、よりよい物である。
塩化セシウムより沸点が低い無機塩化物を用いると、無機塩化物がそのまま揮散して放射性セシウムを含む捕集物の量が増加するとともに、塩化セシウムに移行する放射性セシウムが減少し、放射性セシウムの揮散効率が抑制される虞があるが、塩化カルシウムのような高沸点無機塩化物を用いれば、カルシウム成分が揮散することなくスラグに残存し、放射性セシウムを揮散させるために塩素を効率的に利用できるようになり、より好適である。また、カルシウム成分がスラグに残存することで、放射性セシウムを含む飛灰の量を減らすこともできる。
塩素系助剤として塩素系プラスチックのうち塩素系廃プラスチックを用いれば、別途塩素系助剤を購入する必要が無く、更に別途の廃プラスチック処理設備で塩素系廃プラスチックを処理する必要が無くなり経済性が上がる。尚、塩素系プラスチックとは組成中に塩素を含むプラスチックのことであり、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等である。また塩素系プラスチックの排ガスを中和処理するために消石灰等の中和剤が添加された焼却飛灰には塩素から生じたHClを中和したCaCl、つまり塩素成分が多量に含まれているため、塩素系助剤として好適に利用でき、塩素系助剤として利用することで焼却飛灰の埋立て等の処理をする必要が無くなり経済性が上がる。
塩素系助剤として塩素そのものを用いることも可能である。この場合には、溶融炉6に投入された被処理物に塩素ガスを吹き込むノズルを設置すればよい。さらに、塩素系助剤として、塩酸を用いることも可能である。この場合には、被処理物に塩酸を噴霧するノズルを搬送機構3や受入部2、溶融炉6に設置すればよい。
尚、塩素系助剤の添加量が増えると、煙道9を含む排ガス処理設備が塩素により生じた塩酸により腐食する虞があるが、放射性セシウムの揮散率を上昇させる効果のある光学的塩基度調整助剤の添加量に基づいて塩素系助剤の添加量を設定すれば、塩素系助剤の過剰添加を抑制しながら効率的に放射性セシウムを揮散分離することができるようになる。
スラグに残存する放射線量が所定レベルを下回るように、被処理物に含まれる放射線量に基づいて溶融炉6に投入される被処理物の単位時間当たりの投入量を調整する投入量調整機構を備えてもよい。同様に、濃縮分離される飛灰に含まれる放射線量が所定レベルを下回るように、被処理物に含まれる放射線量に基づいて溶融炉6に投入される被処理物の単位時間当たりの投入量を調整する投入量調整機構を備えてもよい。
つまり、投入量調整機構は、溶融処理によって放射線セシウムがスラグから揮散分離される比率に基づいて、処理後のスラグ或いは飛灰の処理が適切に行なえるように被処理物の単位時間当たりの投入量を調整するのである。
図1中、一点鎖線で示されているように、光学的塩基度調整助剤として、第2集塵機13で捕集された塩化物を含む溶融飛灰を利用することもできる。放射性セシウムを含む飛灰は第1集塵機11で捕集されるため、この溶融飛灰は放射性セシウムを含まない。また、この溶融飛灰には塩化カルシウム等塩化物が含まれるので、塩素系助剤として作用させることもできる。このシステムでは、光学的塩基度調整助剤と塩素系助剤がシステムの中で得られるので、経済性が良いシステムとなる。
上述の実施形態では被処理物に光学的塩基度調整助剤とは別に塩素系助剤を添加する機構を備えた例を説明したが、同一の装置で光学的塩基度調整助剤及び塩素系助剤を纏めて投入してもよい。
煙道9では、排ガスの温度低下とともに揮散した放射性セシウムの一部が析出し、耐火物へ浸透する虞がある。上述の通り煙道9は耐火レンガや耐火セメント等の耐火物で被覆されているので、耐火物の張替えメンテナンス時に汚染された耐火物を粉砕して被処理物として同様に処理することも可能である。
上述の実施形態では加熱手段として連続で溶融できる回転式表面溶融炉で説明したが、必要な温度まで加温できれば連続式とバッチ式の何れでもよい。例えば電気炉、高周波炉、ロータリーキルン、プラズマ溶融炉等、何れの形式であってもいい。
尚、回転式表面溶融炉は被処理物に可燃物を含む下水汚泥、各種バイオマス等であっても安定して処理することができ、可燃物を燃料の補助として利用することができる、より良い形式である。
上述の実施形態では第1集塵機11及び第2集塵機13という二つの集塵機を備えた構成を説明したが、第2集塵機13を備えずに、中和剤を第1集塵機11の上流側で投入し、第1集塵機11で放射性セシウムを含む飛灰中の固形物をまとめて捕集してもよい。また集塵機として、バグフィルタ、電気集塵機、サイクロン等、どのような形態の集塵機を用いてもよいが、捕集率やメンテナンスを考慮するとバグフィルタが最適である。
上述した実施形態で用いた光学的塩基度調整助剤は何れも融点降下剤としても機能するものを説明したが、融点降下剤としての機能がそれほど顕著でない光学的塩基度調整助剤を用いることも可能である。
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的な構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
以下に実験例を説明する。
本実験では、試料の基材として模擬水田土壌を用いた。この模擬水田土壌は真砂土(砂成分)と腐葉土(腐植成分)の2mm以下粉砕物を重量比85:15で混合し、非放射性の炭酸セシウム(CsCO)試薬を0.5%添加したものである。図3に基材の組成を示す。
この基材に光学的塩基度調整助剤としての様々な金属化合物、及び塩素系助剤としてCaCl若しくは塩素系プラスチック廃棄物(廃塩ビ)を添加して試料とし、以下の実験を行った。尚、廃塩ビは上水用塩化ビニル管主体の市中リサイクル品を用いた。
第1の実験では、試料のスラグ溶流度を調べた。溶流度とは、図4(a),(b),(c)に示すように、舟形形状の磁性ボートの一端部側に試験片を充填し、充填部が上方になるように磁性ボートを所定角度(5°)傾斜させた状態で、所定温度に保持された電気炉内に所定時間(15分)静置し、その後取り出して室温で冷却したときの試験片の状態を計測して、以下の式に基づいて算出される値である。
溶流度(M値)=(L−L)/L×100
通常、溶流度が60%となる温度が溶流点として評価され、溶流度30%で溶融炉は運転可能で、溶流度が60%以上であれば溶流性が高いと判断される。溶流性が高いとは、粘性が低く流れやすいことを意味し、溶流度が60%以上であれば溶流性が高く、安定した溶融を行うことができる。尚、磁性ボートは長さ150mm、幅20mm、高さ70mmで、約10mlの容量に形成され、磁性ボートに充填される試験片の長さは70mmに設定される。
図5〜図7に添加した金属化合物及び塩素系助剤毎の溶流度を示す。尚、図5は、基材と助剤を含む全重量に対して光学的塩基度調整助剤が20wt%となるように、CaClが10wt%となるように添加した試料に対する溶流度、図6は、基材と助剤を含む全重量に対して光学的塩基度調整助剤が30wt%となるように、CaClが10wt%となるように添加した試料に対する溶流度、図7は、基材と助剤を含む全重量に対して光学的塩基度調整助剤が30wt%となるように、塩素系プラスチック廃棄物(廃塩ビ)が10wt%となるように添加した試料に対する溶流度である。
各図に示すように、溶流度はアルカリ金属を添加した試料が特に高い傾向にあり、特にLiCO添加試料は塩素系助剤の種類に関わらず1200℃でほぼ100%であった。一方NaCO添加試料は添加量が20%の条件では溶流度が若干低く、当該条件下で最も高温であった1350℃でも溶流度は70%程度であったが、添加量を30%にするとCaClと廃塩ビの何れの塩素系助剤を添加した場合でも1250℃でほぼ100%となった。
溶流度が低い傾向にあるPbO添加試料でも、添加量30wt%且つCaClを10wt%添加した試料では1400℃で溶流度60%を超えていることから、温度を1400℃まで上げれば今回の実験に用いた何れの光学的塩基度調整助剤を添加した場合でも溶融処理が可能であることが判った。
第2の実験では、加熱処理によるセシウム等の揮散率を調べた。試料を電気炉に挿入して1350℃で15分加熱溶融してスラグを作成し、取り出して自然冷却後、スラグの重量とセシウム含有濃度を分析し、それらの変化から揮散したセシウム等の比率を算出した。
図8に示した通り、Fe以外の光学的塩基度調整助剤については、助剤添加量30wt%且つCaClを10wt%添加した試料のセシウム揮散率が最も高かった。Feについては30wt%添加した試料よりも20wt%添加した試料の方が高いセシウム揮散率を示したものの、両者の間に大きな差はなかった。
この結果を溶融スラグの光学的塩基度との関係で表すと、図9の通りとなった。セシウムの揮散率はスラグの光学的塩基度と明確な正の相関を有し、光学的塩基度が高いほどセシウム揮散率も高い傾向を示した。即ち、スラグの光学的塩基度を高めることで基材からのセシウムの揮散(除去)を促進することができることが判明した。
また図8に示した実験結果では何れの光学的塩基度調整助剤を添加した場合においても、塩素系助剤として廃塩ビを添加した場合には同じ割合のCaClを添加した場合と比較してセシウム揮散率が低くなっている。しかし、廃塩ビとCaCl夫々を添加した試料のセシウム揮散率と光学的塩基度の関係を同一のグラフ上にプロットした図9においては、廃塩ビを添加した試料の実験結果とCaClを添加した試料の実験結果とが同様の曲線上にプロットされ、違った傾向は見られない。このことから、廃塩ビの塩素系助剤としてのセシウム揮散促進作用がCaClより低いのではなく、CaClを添加した試料ではCaが光学的塩基度調整助剤として作用し、同じ割合の廃塩ビを添加した試料よりも光学的塩基度が高くなったために、セシウム揮散率が高くなったものと考えられる。
尚、光学的塩基度の好ましい調整範囲は、0.53以上であり、上限は特に制限されることはない。塩素系助剤を約10wt%添加する条件下で放射性セシウムを95%以上除去したい場合、光学的塩基度が0.53から0.7の範囲に入るように光学的塩基度調整剤の添加量を調整すればよく、より好ましくは光学的塩基度が0.6から0.65の範囲に入るように光学的塩基度調整剤の添加量を調整すればセシウムの揮散率が90%以上、且つ不要な光学的塩基度の調整がなくなる。逆に、光学的塩基度調整剤の添加量を調整することによって、同じセシウム揮散率を得るために必要な塩素系助剤の添加量を低減させることも可能になる。
塩素系助剤を添加しない場合であっても、光学的塩基度調整剤の添加量を増やすことによって、光学的塩基度を0.53以上に調整でき、放射性セシウムを効率よく揮散分離することができる。つまり、塩素系助剤を添加しない場合であってもセシウム揮散率が光学的塩基度と正の相関を持つことは確認済みである。この場合、十分なセシウム揮散率を得るためには塩素系助剤を添加する場合よりも多量の光学的塩基度調整剤を添加して、より高い光学的塩基度に調整することが必要であり、0.7以上に調整することが好ましい。またそのような光学的塩基度を得るためには助剤によって差があるものの、少なくとも被処理物と助剤を加えた総重量に対して50wt%以上の添加量が必要となる。
図10に示すように、試料に添加した光学的塩基度調整剤を構成する金属元素の一部は加熱処理の過程で揮散していた。Ca,Mg,Feについてはほとんど揮散しなかったが、Li,Na等アルカリ金属元素やPbについては有意な揮散が見られ、特にPbの揮散率は50%を超えていた。揮散率の高い金属の化合物を光学的塩基度調整助剤として用いると必要添加量が多くなり、更に捕集される飛灰も多くなり、経済性が悪くなるため、助剤の選定の際には助剤自体の揮散率も考慮する必要がある。
ナトリウム、カリウムはセシウムと同じアルカリ金属元素であるため、溶融時に揮散が起こる。図11に示すように、それら元素の揮散率はセシウムの揮散率と正の相関を有する。しかし、ナトリウム、カリウムの金属単体及び塩化物の沸点および融点はセシウムと比較すると高いため、揮散率はセシウムより低い。具体的にはセシウムの揮散率が60%程度の条件下ではカリウム及びナトリウムはほとんど揮散しないが、セシウムの揮散率がそれより大きくなるとカリウム及びナトリウムの揮散率が上昇する傾向が見られる。
1:放射性セシウム分離濃縮装置
2:受入部
3:搬送機構
4:光学的塩基度調整装置
5:塩素系助剤添加装置
6:溶融炉
7:冷却水槽
8:排出機構
9:煙道
10:冷却装置
11:第1集塵機
12:中和剤添加装置
13:第2集塵機

Claims (13)

  1. 被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮方法であって、
    被処理物の光学的塩基度が所定値以上になるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整工程と、
    光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、
    前記分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程と、
    を含む放射性セシウム分離濃縮方法。
  2. 前記光学的塩基度調整工程で添加される光学的塩基度調整助剤は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、マグネシウム化合物、ホウ素化合物、鉄化合物、鉛化合物の何れかから選択される単一または複数の物質である請求項1記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  3. 被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加工程をさらに含み、
    前記光学的塩基度調整工程で添加される光学的塩基度調整助剤の添加量に基づいて、前記塩素系助剤添加工程で添加される塩素系助剤の添加量が設定される請求項1または2記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  4. 前記塩素系助剤添加工程で被処理物に添加される塩素系助剤は、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰、溶融飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質である請求項3に記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  5. 被処理物の加熱処理後の光学的塩基度が0.53以上になるように、前記光学的塩基度調整工程で添加される光学的塩基度調整助剤の添加量が調整される請求項1から4の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  6. 前記分離工程は、被処理物を1200℃から1400℃で溶融して溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離する工程である請求項1から4の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  7. 前記光学的塩基度調整工程で添加される光学塩基度調整助剤は、被処理物の溶融温度を降下させる融点降下剤としての機能を備えている請求項6記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  8. 被処理物が、土壌、下水汚泥、浚渫汚泥、一般廃棄物、産業廃棄物、農業系バイオマス、木質系バイオマス、草本系バイオマス若しくはそれらの焼却残さから選択される単一または複数の物質である請求項1から7の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮方法。
  9. 被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮装置であって、
    被処理物の光学的塩基度が所定値以上になるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整装置と、
    光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、
    前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、
    を備えている放射性セシウム分離濃縮装置。
  10. 被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加装置をさらに備え、
    前記光学的塩基度調整装置で添加される光学的塩基度調整助剤の添加量に基づいて、前記塩素系助剤添加装置で添加される塩素系助剤の添加量が設定される請求項9記載の放射性セシウム分離濃縮装置。
  11. 被処理物が、土壌、下水汚泥、浚渫汚泥、一般廃棄物、産業廃棄物、農業系バイオマス、木質系バイオマス、草本系バイオマス若しくはそれらの焼却残さから選択される単一または複数の物質である請求項9または10記載の放射性セシウム分離濃縮装置。
  12. 被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により除去する放射性セシウム除去方法であって、
    被処理物の光学的塩基度が所定値以上となるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整工程と、
    光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、
    を含む放射性セシウム除去方法。
  13. 被処理物に含まれる放射性セシウムを加熱処理により除去する放射性セシウム除去装置であって、
    被処理物の光学的塩基度が所定値以上となるように、被処理物に光学的塩基度調整助剤を添加する光学的塩基度調整装置と、
    光学的塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1700℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離装置と、
    を備えている放射性セシウム除去装置。
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