JP2015065803A - モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】小型化、低コスト化されたモータとインバータを提供する。
【解決手段】4極以上のモータにおいて、ロータの界磁巻線に必要な電力を、配置の異なる同一の相のステータ巻線を利用して給電し、ロータ側の複数の受電巻線1H、1P、1L、1Sの出力を整流して界磁巻線1J、1K、1Z、1M、1Q、1R、1G、1Tに界磁電流を供給する。そして、低速回転域でのトルクを増大し、また、界磁電流制御により基底回転数以上の駆動可能な回転範囲を拡大する。また、矩形波に近い台形状の電圧、電流として、モータ各部の利用率を高めて高効率化する。インバータの最大電流値も低減でき、小型化、低コスト化を実現する。
【選択図】図1

Description

近年、エネルギー問題などが顕在化し、モータを使用したハイブリッド自動車が普及し、モータで駆動する電気自動車の開発も進められている。また、産業用モータに関する高効率化の規制なども注目されている。本発明はこれらのモータ、発電機、および、それらの駆動技術の改良に関わるものである。すなわち、モータの高効率化、小型化、および、モータ駆動の低コスト化に関わるものである。
ハイブリッド自動車の主機モータや産業機械用の高精度、高応答モータとして、永久磁石型の同期モータが多く使用されている。これらの用途では、モータの回転速度の範囲を広く取るため、界磁磁束制御によるいわゆる定出力特性が求められている。例えば図2に示すように、基底回転数Nba=3000rpmに対して最高回転数Nmx=12000rpmまでの4倍の回転数まで駆動する。基底回転数Nbaの時の界磁磁束の大きさに対し、最高回転数Nmxの時の界磁磁束の大きさは、この場合1/4となる。このような定出力特性が求められ、最高回転数Nmxでは界磁磁束を減少させる制御が必要となる永久磁石型モータとして、磁石内蔵型同期モータIPMSMが使用されることが多い。通常、界磁磁束の大きさ制御は、ステータの巻線に通電する電流の制御で行われ、モータ特性とモータ制御技術とが密接に関わった高度な技術で実現されている。
この従来の永久磁石式同期モータは、最高回転数Nmxで界磁磁束を小さな値とする必要があるため、逆に、基底回転数Nba=3000rpm、以下の低速回転で、トルクT=120Nmでは、ステータの巻線へ大きな界磁電流成分If1を通電する必要があることが多い。界磁電流成分If1は無効電流であって、トルク電流成分It1に対して無視できない程度に大きな値となる。ステータの巻線に通電する電流は、有効電流のトルク電流成分It1と無効電流の界磁電流成分If1とが合わさった合成電流であり、ステータの巻線のジュール熱である銅損が大きな値となる。自動車の急坂の登坂運転のように、基底回転数Nba以下での大トルク運転が長時間続くことを想定する場合は、モータの大きさは大トルク運転での損失特性でおおよそ決まる。
対象とするモータの例について、具体的な数値の例を図2の回転数とトルクの特性例、および、図26の各電流のベクトル図で説明する。このモータの最大トルクは120Nmで、連続定格トルク40Nmの3倍であると仮定する。図2の24が連続出力が可能な点で、23は短時間定格の動作点である。動作点24は3000rpm、40Nmであり、例えば、図26の(a)に示すトルク電流261、界磁励磁電流262の電流を通電することによりその出力を得られる。合成電流263は261と262のベクトル和として得られる。この時力率は位相264の余弦値であり、264が30°の時、力率はcos(30°)=0.866となる。
次に、短時間定格の23の動作点について、各電流、力率を図26の(b)に示す。265はトルク電流で261の3倍の大きさの値となり、266が界磁励磁電流で、267は合成電流である。動作点23は短時間定格の最大トルクの点であり、通常のモータ設計では小型化、低コスト化の要求もあることから、モータの一部が磁気飽和するような設計となるようなことが多く、力率が0.6程度に低下することもある。その時、位相268は53.13°となり、トルク電流265より界磁励磁電流266の方が大きな値となる。力率が1の理想的なモータに比較すると、銅損が1/(0.6×0.6)=2.777倍の値に増加する。インバータの電流容量も1/0.6=1.666倍に増加する。
このように、無効電流の界磁電流成分If1が大きい場合はモータの力率が低くなり、有効電流であるトルク電流成分の銅損相当値に比較してかなり大きな銅損となるため、モータが大型化し、高コストなモータとなる問題がある。同時に、力率が低いとステータ巻線へ電流を通電するIGBTなどの電力素子も大きくなり、インバータも高コストなモータシステムとなる問題がある。
また一方、産業用として誘導モータも多く使用されている。誘導モータを図2に示すような特性で使用する場合で、基底回転数Nba以下での大トルク運転が長時間続く場合は、モータの低速域での力率が低くなり、モータが大型化し、高コストなモータとなる問題がある。力率が低い領域での大トルク運転が必要である場合には、インバータ容量が大きくなり、コストも高くなる問題がある。
他の従来モータとして界磁巻線型の同期モータの例を図25に示す。251はロータ軸、252はロータ、253は界磁巻線、255は界磁励磁用の直流電源、256と257はブラシ、258と259はスリップリングである。25Aはステータで、25Bはステータ巻線である。モータケース、軸受けおよび固定用の部材などは記載していない。
モータの界磁磁束は、界磁巻線253によって作られるので、合理的であり、直流電源255の供給電力は界磁巻線の抵抗消費分だけでよく、小さな電力で済む。界磁磁束を制御するためにステータ巻線25Bへ界磁電流成分を重畳させる必要はない。ステータに通電する電流はトルク電流であり、有効電流である。無効電流の重畳による銅損の増加はなく、インバータの電流容量の増加も必要がない。
しかし、ブラシとスリップリングは、湿度、周囲の化学物質などの使用環境により異常摩耗を起こす可能性があり、寿命もあるので、メンテナンスの負担、サービスの問題、信頼性の問題がある。また、設置スペース、メンテナンススペースのため、大型化する問題がある。
次に、図27に、ダイ―オードと直列に接続された界磁巻線を備えるロータ構成の横断面図を示す。279はロータの軟磁性体である。271と272とに巻回する界磁巻線ははロータのN極磁極27Fを励磁する。太線で示す27Gはこの界磁巻線のコイルエンド部の接続である。同様に、273、274、275、276、277、278の界磁巻線は、それらの電流方向を合わせて直列に巻回している。ロータ279の右側に界磁巻線の等価回路とダイオード27Aを示す。巻線27Bは271と272、巻線27Cは274と273、巻線27Dは271と272、巻線27Eは278と277であり、ダイオード27Aが直列に接続されている。
次に、このロータ279の動作について説明する。まず最初に、ステータ側の界磁電流Isfを通電し始め増加していくと、各ロータ磁極が励磁されて界磁磁束φfが作られ、Isfに比例して増加する。界磁磁束φfが増加している間は、図27のロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eには、ノイマンの公式に従って、(−dφf/dt)と巻き回数に比例した負の電圧Vfが発生していて、ダイオード27Aに逆電圧が印可されている状態となり、この状態ではロータ界磁電流Ifは流れない。次に、ステータ側の界磁電流Isfが減少すると、ロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eの誘起電圧は、ノイマンの公式に従って、(−dφf/dt)と巻き回数に比例した正の電圧Vfになるため、ダイオード27Aの順方向に界磁電流Ifが流れ出す。そして、ステータ側の界磁電流Isfが零になっても、ロータ界磁電流Ifにより界磁磁束φfが保持される。もし、ステータ側の界磁電流Isfが流れない状態が続くと、ロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eの銅損で界磁磁束φfの磁気エネルギーが消費され、界磁電流Isfが次第に減少し、界磁磁束φfも比例して次第に減少する。このような動作であるため、時々、ステータ側の界磁電流Isfにより界磁磁束φfを作ってやれば、その後はロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eとダイオード27Aが界磁磁束φfの保持回路として作用するので、界磁磁束φfはある程度増減して変動するものの、ほぼ一定に保つことができる。
前記説明の定性的な現象、作用に間違いはないが、現実的には実用上の問題がいくつかある。図26の(b)について説明したように、電気自動車の主機モータなどのような使い方、用途では、急坂道の登坂運転で高トルクが必要となり、このような動作での負担の大きさによりモータサイズ、モータコストが決まる。即ち、低速回転数時、中速回転数時の大トルク運転でのモータ効率、モータ電流とモータトルクの線形性、インバータ負担の大きさがモータのコスト、インバータのコストを決めることになる。図27で示したステータ側の界磁電流Isfによる界磁磁束φfの生成と、ロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eとダイオード27Aによる界磁磁束φfの保持は、低トルク領域では期待に近い作用をする。しかし、大トルク領域では、界磁電流Ifによる界磁巻線内での損失が増加すること、界磁磁束自体が磁気的に非線形領域で動作していること、界磁磁束φfを励磁するステータ側の界磁電流Isfの値が大きくなること、インバータ負担を軽減するために界磁電流Isfを通電する時間にはトルク電流を減少する必要があるためトルクリップルが大きく発生すること、ステータ側の界磁電流Isfの動作時間幅も増加してトルクリップル等による振動、騒音が発生すること、トルク電流を通電できるデユーテイが下がるとその分トルク電流の振幅を大きくする必要があることなどの問題がある。従って、大トルク領域では、図27に示すロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eとダイオード27Aによる界磁磁束保持機能の効果は、トータルの評価としては薄れる。すなわち、モータシステムの高効率化、小型化、低コスト化にも限界がある。
次に、正弦波の3相交流電圧、3相交流電流は構成部品の利用率という点で改善の余地があることを示す。モータは、古くより3相正弦波交流の方式が主流技術として使用され、現在まで発展してきている。誘導モータ、同期モータともに3相交流の方式が主流の技術である。図6に3相交流の電圧、あるいは、電流の正弦波波形を示す。61はU相、62はV相、63はW相である。今、振幅が1の3相正弦波電圧、3相正弦波電流が供給されたとすると、その時のU相電力は64、V相電力は65、W相電力は66となる。各相の電力平均値は1/2であり、3相合計の電力は3/2の一定値となる。直流電圧が1で直流電流が1の時、その出力が1であることから考えると、正弦波は1/2であり改善の余地があると見ることができる。最も効果的に活用する状態に対する比率を利用率と言うことにすると、電力素子であるIGBTの利用率は50%でありその電圧、電流の特性が利用し切れていないと見ることができる。
次に、モータの巻線の巻回方法の困難さもある。3相モータの全節巻き巻線は各相の巻線がコイルエンド部で交差するため複雑になり、各メーカで種々の工夫がなされ製作されているが多くの改良の余地がある。例えば、特開2004−166476号公報の図1,図2等にその例が示されている。生産性が低いことによる生産コスト増大の問題、生産設備が高価になることによる生産コスト増大の問題、スロット内の巻線占積率が低下するためモータが大型化する問題、コイルエンドのロータ軸方向長さが大きくなるためモータが大型化する問題、モータの大型化に伴う材料費増大の問題などがある。
特開平6−311786号公報(図1) 回転トランス東芝 特開2011−223713号公報(図1) SynRM三菱 特開2004−166476号公報(図1,図2) コイルエント゛トヨタ
請求項1が解決しようとする課題は、モータの小型化、低コスト化、高信頼性化が可能な界磁磁束の生成方法である。
請求項2が解決しようとする課題は、請求項1における界磁磁束の生成方法の具体化である。
請求項3が解決しようとする課題は、請求項1で生成する界磁磁束の円周方向の分布状態をより均一に、より効果的に生成できるロータ構造である。
請求項4が解決しようとする課題は、請求項3で生成する界磁磁束を永久磁石を使用して、より効果的に生成できるロータ構造である。
請求項5が解決しようとする課題は、請求項1で生成する界磁磁束を具体的に3相モータの高効率化に結びつける電流通電方法であり、3相モータの駆動方法である。
請求項6が解決しようとする課題は、請求項1で生成する界磁磁束を具体的にモータの高効率化に結びつける電流通電方法であり、5相モータの駆動方法である。
請求項7が解決しようとする課題は、請求項1の具体的モータ構成として、簡素な5相モータを実現することである。
請求項8が解決しようとする課題は、請求項1に示す界磁磁束の大きさを検出することである。
請求項9が解決しようとする課題は、請求項1に記載する給電巻線の具体化で、界磁巻線に必要な電力をロータ側へ送る具体的なモータ構造である。
請求項10が解決しようとする課題は、請求項1の具体的モータ構成として、簡素な5相モータを実現することである。
請求項11が解決しようとする課題は、請求項1の具体的モータ構成として、簡素な5相モータを実現することである。
請求項12が解決しようとする課題は、請求項1の5相モータで、モータを無理なく高出力で駆動することである。
請求項13が解決しようとする課題は、請求項1のモータを静止状態でもセンサレス制御で駆動するためのモータ構成とセンサレス位置検出方法である。
(請求項1に係わる発明)
請求項1に記載の発明は、4極以上であるPN極であって、3相以上のMN相のステータとロータを有する交流モータに関して、QNは2以上の整数として、ステータの円周方向に電気角で360°のQN倍の周期の交流磁束の成分を励磁する給電巻線PSWと、
RNはQN/2より小さい整数として、円周方向の巻線ピッチが(360°×RN)であって、界磁電力を受け取るロータの第1受電巻線PRW1と、円周方向の巻線ピッチが(360°×RN)であって、前記第1受電巻線PRW1とは異なる円周方向位置に配置した、界磁電力を受け取るロータの第2受電巻線PRW2と、ロータに配置していて、記第1受電巻線PRW1の出力を整流する整流器REC1と、ロータに配置していて、記第2受電巻線PRW2の出力を整流する整流器REC2と、ロータのN極磁極あるいはS極磁極あるいはそれらの両方に巻回した界磁巻線FMとを備え、前記整流器REC1の出力と前記整流器REC2の出力とを使用して前記界磁巻線FMへ界磁電流Ifを通電して前記N極磁極とS極磁極を励磁するモータの構成である。
この構成によれば、ステータ巻き線の接続方法と通電方法を変更することにより、ステータの巻線を利用して界磁励磁電力をロータ側へ供給できるので、ロータ界磁巻線型モータの小型化、低コスト化を実現することができる。
(請求項2に係わる発明)
請求項2に記載の発明は、前記給電巻線PSWは、前記MN相の一つであるU相の複数個の巻線を含み、U相の巻線の一つである巻線U1Mと、電気角で(360°×QN)の円周方向範囲の中で、前記巻線U1Mとは異なる円周方向位置に配置するU相の巻線U2Mと、前記界磁巻線FMへ界磁電流Ifを通電するために必要なステータ側の交流の界磁励磁電流成分をIf2として、前記巻線U1MへU相電流成分に重畳して界磁励磁電流成分If2を通電する駆動部DRU1と、前記巻線U2MへU相電流成分に重畳して界磁励磁電流成分(−If2)を通電する駆動部DRU2とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、界磁磁束の生成方法の具体化を実現することができる。
(請求項3に係わる発明)
請求項3に記載の発明は、ロータの前記N極磁極あるいはS極磁極において、並行する複数の軟磁性体と、前記軟磁性体の間に挟まれた空隙あるいは樹脂あるいは永久磁石と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ構成である。
この構成によれば、請求項1で生成する界磁磁束の円周方向の分布状態をより均一に、より効果的に生成できるので、誘起電圧を従来の正弦波状からより矩形波に近い台形状とすることができ、モータ出力の向上を可能とし、その結果、モータ効率向上、モータの小型化、モータの低コスト化を実現でき、さらに、後述するが、インバータの小型化も実現することができる。
(請求項4に係わる発明)
請求項4に記載の発明は、前記軟磁性体磁路とその磁束の方向に直列に配置する永久磁石を備えることを特徴とする請求項3に記載のモータの構成である。
この構成によれば、請求項1に示す界磁磁束を励磁する電磁気的負担を永久磁石を付加して軽減することができる。
(請求項5に係わる発明)
請求項5に記載の発明は、ステータに3相の星形結線の各相巻線を備え、各相の巻線の誘起電圧はロータの前記界磁巻線に励磁される磁束成分などにより矩形波に近いほぼ台形状の誘起電圧波形で、ほぼ台形状の正負電流波形は、前記誘起電圧の正と負の電圧が反転する電気角の幅をθrrとして、前記のほぼ台形状の正あるいは負の電流が零から波高値の80%まで変化する幅の電気角をθstとして、(θrr+θst)≦60°であることを特徴とする請求項1記載のモータの構成である
この構成によれば、請求項1で生成する界磁磁束を具体的に3相モータの高効率化に結びつける電流通電方法であり、3相モータをより効率よく、トルクリップルも小さく駆動することができる。
(請求項6に係わる発明)
請求項6に記載の発明は、ステータに5相の星形結線の各相巻線を備え、各相の巻線の誘起電圧はロータの前記界磁巻線に励磁される磁束成分などにより矩形波に近い台形状などの誘起電圧波形で、ほぼ台形状の正と負の電流波形は、前記誘起電圧の正と負の電圧が反転する電気角の幅をθrrとして、前記のほぼ台形状の正あるいは負の電流が零から波高値の60%まで変化する幅の電気角をθsfとして、(θrr+θsf)≦36°であることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、請求項1で生成する界磁磁束を具体的に5相モータの高効率化に結びつける電流通電方法であり、5相モータをより効率よく駆動することができる。誘起電圧を従来の正弦波状からより矩形波に近い台形状とすると同時に、電流波形についても矩形波に近い台形状とすることによりモータ出力を向上することができる。その時、正弦波理論ではないが、トルクリップルについても小さく駆動することができる。
(請求項7に係わる発明)
請求項7に記載の発明は、5相で、極数は4極以上のPN極のモータであって、 A相の巻線はステータの円周上の電気角で0°と180°の位置に配置し、B相の巻線はステータの円周上の電気角で72°と252°の位置に配置し、C相の巻線はステータの円周上の電気角で144°と324°の位置に配置し、D相の巻線はステータの円周上の電気角で216°と36°の位置に配置し、E相の巻線はステータの円周上の電気角で288°と216°の位置に配置し、2個のスロットに渡って巻回される各相それぞれの全節巻き巻線の数を(PN/2−1)以下とすることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、5相巻線のコイルエンド部の各相巻線の交差が複雑化する問題があるが、各相巻線の交差部を簡素化する技術により、この複雑化を減少させることができ、生産性の改善とコイルエンド部の小型化を図ることができる。
(請求項8に係わる発明)
請求項8に記載の発明は、前記駆動部DRU1により前記巻線U1Mへ通電する電流Iu1を検出する電流センサCT1と、前記駆動部DRU2により前記巻線U2Mへ通電する電流Iu2を検出する電流センサCT2と、前記電流センサCT1の出力であるIu1sと前記電流センサCT2の出力であるIu2sから、(2×If2s=Iu1s−Iu2s)としてステータ側の交流の界磁励磁電流成分の検出値としてIf2sを得る加算手段とを備えることを特徴とする請求項2に記載のモータの構成である。
この構成によれば、少しのコストで界磁電流成分を検出できるので、モータの駆動性能の向上を図ることができる。
(請求項9に係わる発明)
請求項9に記載の発明は、前記給電巻線PSWはステータの円周方向に電気角で360°のQN倍の周期の交流磁束の成分を励磁するための界磁電力供給巻線であることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、ステータ巻き線のわずかな追加により、ステータの巻線を利用して界磁励磁電力をロータ側へ供給できるので、ロータ界磁巻線型モータの小型化、低コスト化を実現することができる。
(請求項10に係わる発明)
請求項10に記載の発明は、4極の整数倍の極数の5相のモータであって、5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順として、ステータの各相巻線の円周方向位置を電気角で0°から720°の範囲について記述し、電気角で0°のスロットと電気角で144°のスロットへ巻回するA相巻線と、同様に、電気角で72°のスロットと気角で216°のスロットへ巻回するB相巻線と、同様に、電気角で144°のスロットと電気角で288°のスロットへ巻回するC相巻線と、同様に、電気角で216°のスロットと電気角で360°のスロットへ巻回するD相巻線と、同様に、電気角で288°のスロットと電気角で72°のスロットへ巻回するE相巻線とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、請求項6によるモータの高効率化策の弊害として、5相巻線のコイルエンド部の各相巻線の交差が複雑化する問題が発生するが、各相巻線の交差部を簡素化する技術により、この複雑化を減少させることができ、生産性の改善とコイルエンド部の小型化を図ることができる。
(請求項11に係わる発明)
請求項11に記載の発明は、8極の整数倍の極数の5相のモータであって、5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順として、ステータの各相巻線の円周方向位置を電気角で0°から1440°の範囲について記述し、電気角で0°のスロットと電気角で144°のスロットへ巻回する集中巻きのA相巻線と、同様に、電気角で144°のスロットと気角で288°のスロットへ巻回する集中巻きのC相巻線と、同様に、電気角で288°のスロットと電気角で432°のスロットへ巻回する集中巻きのE相巻線と、同様に、電気角で432°のスロットと電気角で576°のスロットへ巻回する集中巻きのB相巻線と、同様に、電気角で576°のスロットと電気角で720°のスロットへ巻回する集中巻きのD相巻線と、同様に、電気角で720°から1440°の各スロットへ前記同様に巻回するA相巻線、C相巻線、E相巻線、B相巻線、D相巻線とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、コイルエンド部の各相の巻線の重なりが少ない5相モータで、界磁励磁電力をロータ側へ供給でき、特にステータ巻線に生産性の高いモータを実現できるので、ロータ界磁巻線型モータの小型化、低コスト化を実現することができ、かつ、トルクリップルが小さく高品質なモータを実現することができる。
(請求項12に係わる発明)
請求項12に記載の発明は、5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順とする5相の交流モータであって、A相電圧は正弦波電圧にその正弦波周波数の3倍の3次高調波電圧を含む電圧で、B相電圧はA相電圧とC相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、C相電圧はB相電圧とD相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、D相電圧はC相電圧とE相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、E相電圧はD相電圧とA相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、A相電流は正弦波電流にその正弦波周波数の3倍の3次高調波電流を含む電流で、B相電流はA相電流とC相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流で、C相電流はB相電流とD相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流で、D相電流はC相電流とE相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流で、E相電流はD相電流とA相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流であることを特徴とする請求項1に記載のモータの構成である。
この構成によれば、インバータのPWM制御において、5相各相の電圧と電流に正弦波に加えて3次高調波電圧、3次高調波電流を重畳させるので、正弦波電圧と正弦波電流に比較して同一波高値の条件ではモータのパワー出力を増大でき、モータの高効率化、小型化を実現することができる。そして、その3次高調波重畳によるトルクリップルは理論上発生しない。
(請求項13に係わる発明)
請求項13に記載の発明は、前記界磁巻線FMへ界磁電流Ifを通電するために必要なステータ側の交流の界磁励磁電流成分をIf2として、前記給電巻線PSWへ通電する前記界磁励磁電流成分If2を増加、減少して可変することにより前記界磁電流Ifを増減して、その時のステータの各相巻線の端子間に電磁誘導作用で誘起する電圧成分の変化を検出してロータの回転位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のモータである。
この構成によれば、ロータの回転位置を各相の巻線から検出できるので、モータのセンサレス運転が可能となり低コスト化、高信頼化ができる。なお、ロータの円周方向磁気インピーダンスの変化が小さい場合にはセンサレス位置検出が難しいことがある。特に、静止からの起動あるいは低速回転の場合、大トルク出力の場合などであり、本発明によりこの問題を解決できる。
この発明に係わるモータは、ロータの界磁電力をステータの巻線の活用してロータ側へ給電するので、3相電流の力率が高く、モータの小型化、低コスト化を実現することができる。静止からの起動、低速での正逆運転、そして高速回転までと運転範囲が広い。また、この界磁の磁束特性の適正化とそれに伴うトルク電流の適正化により、モータの高効率化と小型化および低コスト化を実現することができる。また、前記のトルク電流の適正化策に伴う巻線の複雑化の問題を軽減するための巻線構造の改良により巻線の製作性の改善とコイルエンド部の縮小を実現することができる。
3相4極のモータ 速度−トルク特性 ステータ巻線の配置結線図 巻線の鎖交磁束 巻線の配置結線例 3相正弦波とパワー特性 矩形電圧、電流とパワー特性 4極のロータ 3相電流 5相4極のモータ ステータ巻線の配置結線図 5相電流 5相正弦波 5相8極のステータ 5相8極のステータ 歯とスロットの形状 巻線案内とステータ 4極のロータ 4極のロータ 4極のロータ 界磁電流 5相ベクトル 5相8極のモータ 5相12の極モータ スリップリングとブラシを備える従来のモータ ステータの電流 4極のロータ ステータ巻線の配置結線図 3相4極のモータ ステータ巻線の配置結線図 本発明のモータおよび駆動回路 界磁電力の供給電流If2および界磁電流If ロータ巻線の配置結線図 3相4極のモータ 3相4極のモータ ステータ巻線の配置結線図 5相4極のモータ ステータ巻線の配置結線図 5相8極のモータ 4極のロータ 5相モータの電圧と電流とパワー
本発明の目的は、モータの高効率化を実現し、モータの小型化、低コスト化を実現するものである。また、高効率化策の弊害として現れる巻線の複雑化の低減も必要である。本発明が特に対象とするモータは、速度制御範囲が広く、いわゆる定出力制御を行う同期モータで、低速回転で大トルクが必要とするモータである。例えば、ハイブリッド自動車の主機モータ、電気自動車の主機モータなどであり、静止からの起動、低速での正逆運転、そして高速回転までと運転範囲が広い。特に、急坂道の登坂では大トルクが必要であり、機器設計上重要である。モータの大きさは低速回転での大トルク時の損失、発熱、温度上昇で概ね決定されることになることが多く、モータの大きさ、モータのコストにその特性が直結する。類似のニーズは産業用モータにも多い。
また、電気自動車の主機モータニーズとしては高性能化と低コスト化の両方が必要である。例えば、単に高効率化の可能なモータ構成というだけでなく、後に詳しく示すが、ロータ側の界磁電流検出をステータ側からできること、停止時のセンサレス位置検出が可能なモータ構成であることも場合によって必要である。また、本発明に関わるステータの適正化技術、ロータの適正化技術も必要である。
請求項1および請求項2の実施例を説明する。図1に本発明実施例のモータの横断面図を示す。コイルエンド部のステータ巻線の配置関係を付記している。3相で4極の界磁巻線型の同期モータである。1Dはステータコアで、U相巻線は11から14へ巻回するU1相巻線と17から1Aへ巻回するU2相巻線である。V相巻線は13から16へ巻回する巻線と19から1Cへ巻回する巻線である。W相巻線は15から18へ巻回する巻線と1Bから12へ巻回する巻線である。これらの各巻線はステータの歯1Uが円周上に12個あって、それらの歯で囲われた各スロットの中に巻回されている。この図1のステータの巻線は、3相、4極、全節巻き、集中巻きである。各スロットには一つの相の巻線しか配置しない簡素な構造としている。従って、生産性に優れ、低コスト化が可能である。しかし、簡素な構造であるが故に、トルクリップルが増大しやすいという面もある。
1Eはロータであり、1Fはロータ軸である。1Vと1XはロータのN極磁極であり、1Wと1YはロータのS極磁極である。1Hから1Pへ巻回する巻線は、ステータの供給する界磁用の給電磁束を受け取る受電巻線であり、そのコイルエンド部の接続は27であり、電気角で360°のピッチの巻線となっている。1Lから1Sへ巻回する巻線は、ステータの供給する界磁用の給電磁束を受け取る受電巻線であり、そのコイルエンド部の接続は28であり、電気角で360°のピッチの巻線となっていて、前記受電巻線1H、1Pとは電気角で180°の位相差がある。1Jと1Kに巻回する巻線はN極磁極1Vを励磁する界磁巻線であり、そのコイルエンド部の接続は29である。1Mと1Zに巻回する巻線はS極磁極1Wを励磁する界磁巻線であり、そのコイルエンド部の接続は2Aである。1Qと1Rに巻回する巻線はN極磁極1Xを励磁する界磁巻線であり、そのコイルエンド部の接続は2Bである。1Tと1Gに巻回する巻線はS極磁極1Eを励磁する界磁巻線であり、そのコイルエンド部の接続は2Cである。
次に、図1のモータの特性の例として図2に、回転数に対するトルクとパワーの特性例を示す。水平軸は回転数で12000rpmまで示し、左側縦軸はトルクで120Nmまで、右縦軸はパワーで37.7kWまで示している。21はこのモータの最大トルクの特性であり、21の左下側が運転可能な領域である。24の動作点は基底回転数3000rpmで連続で駆動できる連続定格トルク40Nmの点である。23は連続トルクの3倍のトルク120Nmの最大トルク点であり、短時間定格トルクである。22は最大トルク特性21の各点のパワーを示す最大パワー特性である。例えば、動作点23は3000rpm、120Nmのトルクの点であり、その時のパワーは37.7kWとなり、パワーの動作点25である。最大パワー特性22は3000rpmから12000rpmまで37.7kWと一定であり、「定出力特性が1:4である」とも表現される。
モータのトルクT[Nm]と回転角速度ω[rad]と出力パワーPo[W]との関係は次式で表される。Itはトルク電流[A]でKtはトルク定数[Nm/A]である。
Po=ω×T (1)
=ω×Kt×It (2)
一方、モータへの供給する電力Pe[W]は、直流モータのように表現して、モータ電圧Vm、誘起電圧定数Kv[V/rad]とすると次式となる。
Pe=Vm×It (3)
=ω×Kv×It (4)
電力Peと出力パワーPoとが等しいので、(2)式と(4)式とを比較すると、トルク定数Ktと誘起電圧定数Kvとは同じ値であることが分かる。なおここでは、モータの理想的な状態を想定していて、巻線抵抗、鉄損、機械損が零であると仮定している。
通常、定出力特性の回転数範囲である3000から12000rpmでは、インバータの直流電源電圧が一定の条件で駆動するので、モータ電圧Vmが一定となるようにするために(3)、(4)式から誘起電圧定数Kvは次式となり、回転角速度に反比例した値となる。
Kv=Vm/ω (5)
この結果、界磁を励磁する界磁電流Ifは、界磁磁束の大きさおよび誘起電圧定数Kvに比例するので、回転角速度に反比例した値となる。従って、図1に示す界磁巻線1J、1K、1M、1Z、1Q、1R、1T、1Gの界磁電流は、最大値から最大値の1/4の大きさへ可変し、モータの回転数とともに、いわゆる界磁弱め制御を行う必要がある。図2のような出力特性を実現するためには、界磁磁束の制御が重要な技術である。なお、最大パワー特性22上の3000から12000rpmの間では、(1)から(5)式より、トルク電流Itは一定の最大電流の値となる。なお、現実的には各式の様に画一的ではないが、基底回転数3000rpm以上で界磁電流制御を自在に行えれば、基底回転数以上での回転制御が可能な領域が拡大できることになり、大きなメリットが発生する。
次に、図3において、図1のモータのステータ側から界磁電力を給電し、ロータ側で受電し、そして、界磁電流を通電する具体的構成、方法を示す。巻線31は図1の11と14のU1相巻線でU1相電流Iu1を通電し、巻線32は図1の17と1AのU2相巻線でU2相電流Iu2を通電する。巻線33と巻線34は直列に接続したV相巻線で、図1の13、16と19、1Cの両巻線であり、V相電流Ivを通電する。巻線35と巻線36は直列に接続したW相巻線で、図1の15、18と1B、12の両巻線でW相電流Iwを通電する。37は直流電源電圧で、T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8の8個の電力制御素子はIGBTなどであり、前記の各相巻線へ電圧、電流を供給する。各IGBTには逆方向通電用の逆並列ダイオードが取り付けられている。3Xはモータの制御を行うモータ制御部で、前記の各IGBTの電圧、電流制御を行う。また、界磁電力の供給制御も行う。前記IGBTおよび相電流の検出値から界磁電流の検出も行う。なお、電力制御素子には、MOSFET、SiC半導体など種々の素子が使える。
ここで、前記U1相巻線31とU2相巻線32は並列の巻線接続となっていて、V相巻線33、34とW相巻線35、36は直列の巻線接続となっていて、アンバランスである。このアンバランスを解消するために、前記U1相巻線31とU2相巻線32の巻き回数を他のV相巻線33、34、W相巻線35、36の2倍の巻き回数とする。そして、U1相電流Iu1、U2相電流Iu2は次式に示すように、1/2の大きさの電流とする。
Iu=Iu1+Iu2 (6)
このようにしてU相電流Iuの整合を取ることにより、通常の3相星形結線の電圧、電流と同等の関係にし、次式の関係を保つことができる。
Iu+Iv+Iw=0 (7)
なお、U1相巻線31とU2相巻線32の巻き回数を他の巻線の2倍の巻き回数とする時、巻線の断面積は逆に1/2とすることができるので、U相の銅線の総量としては同程度である。また、図3において、V相巻線33、34とW相巻線35、36とをそれぞれ並列巻線とする場合は、前記U1相巻線31とU2相巻線32は同一の巻き回数とすることができ、(7)式が保たれる。
図3の紙面で一点鎖線から上側はステータ側を示し、一点鎖線から下側はロータ側を示している。巻線38は図1の1Hと1Pおよび27の受電巻線で、巻線3Aは図1の1Lと1Sおよび28の受電巻線である。これらの両巻線38、3Aは360°ピッチの巻線で、相互に電気角で180°の位相差で配置している。これらの巻線38、3Aに作用する起磁力関係を図4に示す。水平軸はロータ円周方向を電気角で示している。縦軸は起磁力の方向を示していて、図の上側が内径側のロータ方向である。図4の(a)はU相巻線にU相の正電流を通電した状態で、巻線41は図1の11、巻線43は図1の14、巻線45は図1の17、巻線47は図1の1Aであり、巻線49は巻線41である。電流の方向は図中の電流のシンボルの方向であるとすると、矢印の方向の起磁力が生成される。電気角で180°ごとに反対方向の矢印となっていて、電気角で360°の範囲では、全ての360°領域で上向きの矢印と下向きの矢印が1個づつ含まれ、電気角360°の範囲の合計起磁力は零となっている。従って、前記の受電巻線38、3Aは電気角で360°ピッチで巻回されており、図4の(a)に示すU相巻線の電流Iuが生成する起磁力の影響は受けないことが分かる。同様に、受電巻線38、3Aは、V相電流Iv、W相電流Iwの影響も受けない。
なお、図1のモータではU,V,W相巻線の各巻線ピッチは電気角180°で各巻線周期は電気角360°である。そして、U相巻線をU1相巻線とU2相巻線に分けて給電巻線として使用する場合には、その巻線周期は720°になる。受電巻線27、28の巻線ピッチは電気角360°でこれらの受電巻線の巻線周期は電気角720°であると言える。しかし、図35の3相集中巻きモータのU,V,W相巻線の各巻線ピッチは電気角で120°であり、給電巻線の巻線ピッチはモータの相数、極数、巻線形式などにより変わる。給電巻線の巻線周期の最低条件は電気角で360°ではないことであり、給電巻線の巻線ピッチの制約は無い。また、受電巻線の巻線ピッチは電気角で360°の整数倍(RN倍)であれば、少なくとも、3相電流等のモータ駆動電流の影響を受けない。そして、受電巻線の巻線ピッチのRNの値は、対象モータの給電巻線の相数、極数、巻線形式などにより選択できる。
次に、図3のU1相巻線31とU2相巻線32を使用した界磁電力の給電と受電巻線38と3Aの受電について説明する。U1相電流Iu1、U2相電流Iu2は独立して通電できるので、3Gの矢印で示す界磁電力成分である給電電流If2を通電することができる。具体的には、U1相電流Iu1、U2相電流Iu2を相対的に界磁電力成分である給電電流If2を増減すれば良く、(6)式の関係から次式となる。
Iu1=Iu/2+If2 (8)
Iu2=Iu/2−If2 (9)
U1相電流Iu1、U2相電流Iu2の合計は、給電電流If2の影響を受けず、次式のようにU相電流Iuとなる。
Iu1+Iu2=Iu/2+If2+Iu/2−If2=Iu (10)
また、界磁電力成分の給電電流If2は、U1相電流Iu1とU2相電流Iu2の差として次式で示される。
Iu1−Iu2=2×If2
なお、界磁電力成分である給電電流If2は、ステータとロータ間で変圧器のように電磁気的な結合ができるような周波数Ff2の交流である。一方、U相電流Iuの基本周波数Fuは、ロータの毎分回転数Nrと極数PNにより次式で示される。
Fu=PN/2×Nr/60
ここで、界磁電力成分の電流If2の交流周波数Ff2と電流Iuの基本周波数Fuとの関係があるので、考慮する必要がある。例えば、Ff2=(500Hz)+Fuとすればよい。また、交流電流である給電電流If2の波形形状は、ロータの界磁電流が直流であることから矩形波交流とすれば理にかなっている。しかし、特に限定するものではなく、また界磁巻線の回路時定数が大きいので平滑効果が大きく、正弦波、三角波などでも可能である。
図4の(b)に(8)式、(9)式の内の界磁電力成分である給電電流If2だけを示す。巻線301は図1の11、巻線302は図1の14、巻線303は図1の17、巻線304は図1の1Aであり、巻線30Cは巻線301と同じである。界磁電力成分である給電電流If2による起磁力の方向をメッシュの矢印30Aと30Bで示している。電気角360°の範囲には1個の矢印だけが入っている。
図4の(c)に受電巻線38と作用する起磁力成分を示す。巻線305は図1の巻線1H、巻線306は図1の1Pであり、巻線307は巻線305と同じである。巻線305と巻線306の間に作用する起磁力は30A、42、44であり、42と44とは方向が逆なので相殺し、結局、起磁力30Aだけが残る。図4の(b)に示した界磁電力成分If2の給電成分だけが受電巻線38に作用する電磁誘導により電圧、電流が伝わったわけである。
同様に、図4の(d)に受電巻線3Aと作用する起磁力成分を示す。巻線308は図1の巻線1L、巻線309は図1の1Sである。巻線308と巻線309の間に作用する起磁力は44、30B、46であり、44と46とは方向が逆なので相殺し、結局、起磁力30Bだけが残る。図4の(b)に示した界磁電力成分If2の給電成分だけが受電巻線3Aに作用する電磁気結合により電圧、電流が伝わる。このように、受電巻線38と3Aとを電気角で360°ピッチの巻線、すなわち、電気角で720°周期の巻線とすることにより、電気角で180°ピッチで360°周期の通常の3相交流電流成分は伝わらないようにし、電気角で360°ピッチで720°周期の給電構成を作ることにより界磁電力をステータ側からロータ側へ伝えることを可能とした。巻線31と巻線32とは両巻線共にU相のステータ巻線であるが、電気角で0°から360°の間に配置するU1相巻線31と電気角で360°から720°の間に配置するU2相巻線32とに分け、それぞれの電流を通電できるようにし、電気角で720°周期の電流成分を通電できるようにしている。U1相巻線31とU2相巻線32はU相電流成分を通電する巻線であると同時に、給電電流If2による界磁電力の給電手段としての給電巻線となっている。
次に、受電巻線38に伝えられた電圧、電流成分は、全波整流器39へ接続し、位相が機械角で90°、電気角で180°異なる前記受電巻線3Aは全波整流器3Bへ接続し、両方の全波整流器の出力端子を直列接続している。これらの両方の全波整流器の出力は、電流の方向を合わせて直列に接続した界磁巻線3C、3D、3E、3Fへ接続し、界磁電流Ifを通電する。巻線3Cは図1の1Jと1Kの巻線で、巻線3Dは図1の1Zと1Mの巻線で、巻線3Eは図1の1Qと1Rの巻線で、巻線3Fは図1の1Gと1Tの巻線である。なお、受電巻線と全波整流器を2組使用している理由は、どの回転位置でも界磁電力を界磁巻線へ供給できるようにするためである。また、全波整流器39,3Bの出力電圧が低下する瞬間は、界磁電流Ifは全波整流器の4個のダイオードを介してフライホイール作用により通電することになる。これらの4個のダイオードの電圧降下を低減させたい場合には、ダイオード3Gを追加し、破線で示すように接続することにより、界磁電流Ifがフライホイール通電するときのダイオード部の電圧降下を1個分のダイオードの電圧降下を低減させることができる。
界磁電流Ifはダイオードを介してフライホイール作用によりある程度の時間は界磁電流を保持できるので、簡素化の工夫も可能である。逆に、受電巻線を3個にし、3相の整流器とすることもできる。前記全波整流器39、3Bの形態は変形も可能であり、4個のダイオードによる全波整流器に限定するものではない。例えば、後に示す図11では、全波整流器39,3Bの出力端子を直列に接続した例を示している。ステータ側からの界磁電力の供給を行うための電圧波形、電流波形および給電巻線、受電巻線などの電磁気的な結合特性により、直列あるいは並列あるいは半端整流などのその他のダイオード等の使い方、組合わせで整流機能を実現することもができる。また、これらのダイオードを使用した整流器は、図1には図示していないが、ロータ内に内蔵し、固定する。
次に、モータの3相交流の電圧、電流の大きさと周波数、および、前記界磁電力成分If2の大きさと周波数を明らかにし、本発明の内容をより具体化する。図1から図4に示して説明しているモータは、図2に示すように、最大出力37.7kWのモータで、最大トルク120Nmである。4極のモータなので、モータ誘起電圧の周波数Fuは、12000rpmの時、400Hzであり、回転数に比例した周波数となる。一方、前記界磁電力成分If2の出力電力は、定常的には、その負荷がロータの界磁巻線の抵抗であるから、数100W程度とモータ出力に較べると小さい値である。図25で示したように、ブラシとスリップリングを用いて給電すると、その装置のスペース、コスト、寿命、信頼性が問題になるが、図1、図3に示したように本来のステータ巻線を活用する方法であれば、コスト等の負担は小さい。また、前記界磁電力成分である給電電流If2の周波数Ff2は、自在に選択可能であり、原理的な制約はない。例えば、前記のようにFf2=(500Hz)+Fuとしてもよい。また、モータが高速回転になった場合には、インバータの周波数限界の問題があるので、そのような場合には逆に、If2の周波数Ff2をモータ周波数Fuより低くすることもできる。モータの鉄損などの損失、制御側の都合で、給電電流If2の周波数、電圧、電流を設計することができる。
図3で説明した界磁電力の給電と受電の方法は、原理的に変圧器の構成を成して電力をステータ側からロータ側へ供給している。そして、2次側へ供給された交流電力を整流して界磁巻線3C、3D、3E、3Fへ界磁電流Ifを通電している。従って、ロータ側に必要な界磁巻線の抵抗損失分の電力だけを効率よく供給できる。そのステータの給電電流If2はモータの各相電流に比較して十分に小さい。
従来の磁石内蔵型同期モータIPMSMの場合は、界磁磁束を励起する界磁電流成分であるd軸電流をトルク電流成分であるq軸電流に重畳して通電するので、特に大トルク出力時は磁気飽和現象などの効果によりd軸電流が大きくなるため、d軸とq軸の合成電流が大きくなり、ステータの銅損が大きくなる。力率が低下し、界磁磁束を励起するための無効電流が増加しているとも言える。この点、図3の構成では、界磁磁束を励起するために必要な界磁巻線の銅損分だけの小さな電力を供給すればよいので、大トルク出力時のステータの電流を大幅に低減できる。その結果モータ効率を向上でき、小型化、低コスト化が可能となる。
また、従来の磁石内蔵型同期モータIPMSMは、基底回転数以上の高速回転領域では界磁の強め制御、弱め制御を行うが、モータの磁気的非線形性などの原因により原理通りに界磁磁束の増減制御行うことは難しく、大トルク出力時には力率が低下し易いという問題もある。この点、図3の構成では、3相電流の制御とは別の経路で機能的に独立して界磁電力をロータの界磁巻線へ供給してその界磁電流を通電することができるので、界磁磁束を無理無く、無駄無く正確に増減して制御することができる。その結果、モータの界磁弱め制御、界磁強め制御、モータの定出力制御を正確に効率よく実現することができる。具体的なモータ特性としては、基底回転数以上の高速回転領域での可変速範囲を広くとることができる。即ち、低速回転での大トルク化と可変速範囲の拡大とを両立させることが重要である。また、ロータの界磁巻線での銅損を低減させるため、ロータに永久磁石を使用すること、ステータ巻線に界磁励磁電流であるd軸電流を重畳することも可能であり、適宜併用することができる。従って、用途、運転状況に応じて、永久磁石とd軸電流と界磁電流Ifを併用した最適運転化、高効率化、高性能化の設計を行うことができる。
また、本発明モータでは、特に最大トルク領域における力率が大幅改善でき、無効電流を大幅低減できるので、インバータの電流容量を大幅低減することができる。従って、インバータの小型化、低コスト化が可能となる。
なお、図27で示した従来方法では、ステータの巻線は界磁磁束、磁束エネルギーを供給できるが、変圧器のように電力をロータ側へ供給することはできない。そして、ロータ界磁巻線27B、27C、27D、27Eとダイオード27Aは界磁磁束を保持しようと作用するが、界磁電流Ifそのもの直接に増加させることはできない。その結果、前記したように、モータが大トルクを出力するときには、ステータ巻線の銅損の負担、インバータの電流の負担、断続電流による振動、騒音の問題などが大きくなる。
また、図3に示すインバータの負担について説明する。前記界磁電力成分If2は、4個のIGBTのT1、T2、T3、T4で差動的に交流電圧、交流電流を生成して供給している。(8)、(9)式の関係であって、If2は相対的に小さい。また、4個のIGBTのT1、T2、T3、T4はU相の電圧、電流も生成していて、U相電流Iuは(6)、(8)、(9)式の関係である。従って、4個のIGBTのT1、T2、T3、T4の電流容量は、V相駆動のIGBTのT5、T6の電流容量の約1/2で良く、U相駆動のIGBTの数が4個に増えるが、コスト的、スペース的な負担が2倍になるわけではない。特に、ある程度出力容量が大きいインバータでは、各IGBTを並列接続して使用することも多く、そのような場合には、図3のインバータ構成は各IGBTの接続関係を変更するだけで構成できる。その場合にはコスト負担は小さい。
なお、前記界磁電力成分If2はの供給方法は、図3の構成から種々の変形も可能である。同一の相の巻線に限らず、電気角で720°周期の成分を作り出せば、図3の受電巻線38、3Aはその電力を受け取ることが可能である。例えば、巻線31、33、35は0°〜360°の間の巻線であり、巻線32、34、36は360°〜720°の間の巻線なので、これらの6個の巻線の1個の巻線だけに界磁電力成分を重畳することができれば、電気角で720°周期の成分を作り出したことになる。また、複数の巻線に重畳することもできる。他の例として、図5に示すように、界磁電力成分53を付加することもできる。巻線51は図1の巻線11、14で、巻線52は図1の巻線17、1Aである。電流54はU相電流Iuである。これらの各種変形も本発明に含むものとする。図1、図3、図4とは異なる本発明実施例を後に示す。
次に請求項3の実施例として、図1で示した界磁磁束の分布に関する具体的な構成について述べる。最初に、従来の一般的な3相正弦波交流と本発明で実現する矩形波駆動について説明する。図6は3相正弦波交流の電圧、電流とその各時点でのパワーを示す図である。水平軸は電気角で0°から360°を示している。図6の上側の図の縦軸は電圧、電流の大きさである。図6の下側の図は上側の図と同期していて、その縦軸はパワーである。ここで、61はU相の誘起電圧であり、かつ、印加電流で、62はV相の誘起電圧であり、かつ、印加電流で、63はW相の誘起電圧であり、かつ、印加電流であるとすると、力率が1である場合を示しており、U相のパワーは64で、V相のパワーは65で、W相のパワーは66であり、各相のパワーは2倍周波数で、平均値はそれぞれ0.5となる。3相の合計パワーは67の1.5となり、常時一定値となる。これらは、電圧および電流が3相正弦波交流の場合を示している。
今、電線を有効に活用する割合を電線の利用率と呼ぶことにすると、正弦波の波形率は0.707であることから、パワーでは0.707の2乗となり、電線利用率が0.5と直流電圧、直流電流の電線の利用率1.0に比較して小さい値となる。また、半導体電力素子であるIGBTなどの観点で考えると、直流電圧、直流電流の場合に最も効果的に電力を供給でき、その場合の駆動の利用率を1.0とすると、図6の様な正弦波電圧、正弦波電流の駆動におけるIGBTの利用率は0.5となる。駆動を含めたモータシステムの高効率化、小型化、低コスト化を実現するためにはIGBTの利用率の向上が効果的である。
図7は、矩形交流に近い台形の交流を示す図で、水平軸は電気角で0°から360°を示している。図7の上側の図の縦軸は電圧、電流の大きさである。図7の下側の図は上側の図と同期していて、その縦軸はパワーである。もし、71が誘起電圧であり、かつ、印加電流であるとすると、パワーは71の二乗であって72はとなる。71の傾斜部であるθrrの幅が小さくなると矩形波交流に近づき、72のパワー平均値が1.0に近づく。72を図6の正弦波電圧、正弦波電流のU相パワー64と比較すると、72の平均値の方が大きくできることが分かる。なお、現状は正弦波を前提としたモータ駆動理論が主流であって、制御理論的には、回転座標形のd軸、q軸理論なども正弦波ベクトルの加減算などが高度に発展し、多く使われている。一方、本発明で説明する矩形波駆動、台形波駆動の場合は少し異なり、周波数的には高調波成分を多く含み、個々にそれぞれの考え方が必要となる。また、3相正弦波交流は4相以上の多相にしても原理的なメリットは少なく、簡素化のメリットから3相が現在の主流である。本発明の矩形波駆動、台形波駆動は3相に限らず、4相以上の多相の方が自由度が増す。また、小型化を追求したモータは磁気的に非線形な飽和領域で使用することが多く、モータの大トルク領域の飽和特性でモータ形状、コストなどが定まることが多い。従って、線形理論的な視点とは異なり、磁気飽和特性を持つ磁性材料をどのように効率よく、効果的に使うかという問題でもある。
次に、図8に図7のモータ誘起電圧をより効果的に実現できるロータ構成を示し、説明する。図1のロータ1Eの各磁極1V、1W、1X、1Yは、その詳細なロータ磁極構造まで示していない。電磁鋼板を積層した構造に各界磁巻線を巻回して界磁電流を通電した場合は、各ロータ磁極表面には均一した磁束分布の界磁磁束が生成され、各相巻線の誘起電圧が図7の71の様な波形となる。しかし、各相巻線にトルク電流が通電されると、電機子反作用により各ロータ磁極表面の磁束が片側へ偏り磁束分布の均一性が損なわれる。従って、各相巻線の誘起電圧が図7の71に示す台形の平坦部が変形し、大きな値となる部分と小さな値となる部分が発生する。この問題を低減するため、図8のロータでは、スリット状の空隙部83を各ロータ磁極に設けている。トルク電流によりロータ磁極の円周方向に作用する起磁力によって生成される円周方向の磁束成分を前記のスリット状の空隙部83により低減している。ロータ磁極の方向の磁束成分は、前記空隙部83に挟まれた細長い磁路84を通ってステータ側へ作用する。
81はロータのN極磁極で、82はロータのS極磁極である。88と8E、8Bと8Jは界磁電力の受電巻線で、87と8A、8Fと8KはロータのN極磁極を励磁する界磁巻線で、8Dと8C、89と8HはロータのS極磁極を励磁する界磁巻線である。なお、S極とN極は直列に接続されているので、界磁巻線は片側だけの界磁巻線でも界磁磁束を励磁することができ、例えば、S極の界磁巻線8D、8C、89、8Hを取り除くこともできる。スリット状の空隙部83は樹脂などの非磁性体を充填した構成でも良い。
図8の85はロータの強度を得るために必要なロータ外周繋ぎ部であり、ロータ外周の磁束密度が空隙部83の配置周期で脈動することを抑制する効果もある。しかし、ロータ外周繋ぎ部の幅が大きいと、そこを通過する円周方向磁束が増加し、ロータ特性が劣化する問題がある。その寸法はモータ特性上重要な値である。ロータの遠心力に対する強度を得るために、ロータの外周は図18の185のように接続し、ロータ外周を円形状にすることもできる。さらに、ロータの遠心力に対する強度を高めるため、ロータの外周をカーボンファイバーなどの強化プラスチックFRPで覆っても良い。また、図8の86はロータの強度を得るために必要なロータ内部繋ぎ部である。しかし、86の幅が広いとそこを通過する磁束が増加し、スリット状の空隙部83の効果が薄れる。従って、ロータ内部繋ぎ部86の幅寸法はこのロータ特性にとって重要なパラメータである。
次に、請求項4の実施例について説明する。図18に示すロータは、図8に示した4極のロータに永久磁石182、183、186、187などを追加している。81はロータのN極磁極で、82はロータのS極磁極である。これらの永久磁石の着磁方向は各ロータの磁極方向である。例えば、永久磁石182、183は内径方向がS極で外径方向がN極で、永久磁石186、187は内径方向がN極で外径方向がS極である。これらの永久磁石はロータの磁極の方向に励磁しているので、界磁巻線87、8Aおよび8C、8Dなど界磁電流による界磁磁束の励磁と直列となる電磁気的な関係である。従って、界磁巻線の界磁電流による界磁磁束の励磁を前記永久磁石が補助している。
83などはスリット状の空隙部であり、84などは前記空隙部に挟まれた細長い磁路である。86はロータの強度を得るために必要なロータ内部繋ぎ部であるが、ロータの電磁気特性上はロータ内部繋ぎ部の幅が小さい方が好ましい。
189、18Eなどは、前記の細長い磁路84などと永久磁石の間の軟磁性体であり、前記の細長い磁路84などを通過する磁束を円周方向に広く分散させる効果がある。しかし、189、18Eなどの幅が広すぎると、界磁磁束が電機子反作用などにより円周方向に移動し、変化するので、適正な狭い幅にする必要がある。
永久磁石の周辺の軟磁性体は、永久磁石が発生する磁束の一部がステータ側へ供給されない磁束成分の磁気的な通路となる。すなわち、界磁電流が零の時には、永久磁石が発生する磁束の一部が漏れ磁束となって通過する。具体的には、永久磁石の円周方向磁路18C、184、18Dと、永久磁石の外径側の磁路18A、18Bと、スロットの外径側の磁路181、185の部分である。これらの漏れ磁束の一部は、界磁巻線の励磁電流により磁束の方向を変え、ステータに有効に活用できる磁束に変化するので、必ずしも有害なだけではない。これらの幅の狭い軟磁性体の磁路は、その軟磁性体の磁気飽和特性を勘案した磁気回路設計を行うことができる。すなわち、ロータの強度上の必要性と磁気的特性とを勘案した各部の幅を設計することができる。
また、図18のスロットの外径側の磁路181、185の部分はロータ強度の点では有効に作用する。しかし、漏れ磁束が増加するという問題もある。一方で、図8のロータ構成では、ロータのスロットが開口している例を示している。ロータのスロットへ巻線を巻回する時にこのスロット開口部を使用することができる。ロータ界磁の特性の点でもスロットが開口している方が有利である。これらの構成も設計上の選択となる。また、ロータの磁極ごとに2個の永久磁石を配置しているが、1個にすることも、3個、4個、5個に分割することもできる。
次に、図19に永久磁石を使用した他のロータの例を示す。図8のロータのスリット状の空隙部83の外径側の先端部に永久磁石191、192、193、194を追加した構造である。図19の左上部分の拡大図を図20に示す。これらの永久磁石の着磁方向は各ロータの磁極方向である。例えば、永久磁石191、192、193、194は内径方向がS極で外径方向がN極である。これらの永久磁石はロータの磁極の方向に励磁しているので、界磁巻線87、8Aおよび8C、8Dなど界磁電流による界磁磁束の励磁と直列となる電磁気的な関係である。従って、界磁巻線の界磁電流による界磁磁束の励磁を前記永久磁石が補助している。スリット状の空隙部201に挟まれた細長い磁路202,203,204を通る磁束を磁路ごとに考察、設計できるので磁気特性が分かりやすい。例えば、細長い磁路202を通る磁束は、永久磁石191と192の半分づつと両永久磁石に挟まれて、狭くなった軟磁性体部を通る。
永久磁石191と192の内径側の磁路205の部分は、スリット状の空隙部201に挟まれた細長い磁路202を通る磁束が永久磁石191を通過しやすいように広がった形状としている。永久磁石191と192との間の幅の狭い軟磁性体部207は、界磁電流が零の時には、永久磁石が発生する磁束の一部が漏れ磁束となって通過し、ロータ内で一巡する磁束となる。図20の矢印付き破線が磁束の通過を示している。この時、この漏れ磁束は、ステータ側を通過していないので、モータのトルク発生に寄与しない磁束成分である。界磁電流が増加すると前記漏れ磁束は次第に減少し、ロータ側からステータ側へ通過する磁束が増加する。前記軟磁性体部207の幅は、軟磁性体の磁気飽和特性を勘案した寸法に設計することができる。すなわち、界磁電流が零の時には、前記永久磁石が適度に界磁電流、界磁磁束を補助し、大きな界磁磁束が必要なときには大きな界磁電流と永久磁石により目的とする磁束がロータ磁極で発生できるような磁気特性である。永久磁石の特性、永久磁石の形状、前記軟磁性体部207の幅を設計する。これらの永久磁石191、192、193、194の効果は、界磁電流容量の低減と界磁電流に起因する銅損の低減である。界磁電流を低減できるため、モータの高効率化、小型化の効果もある。
また、図18、図19、図20に示す永久磁石は界磁磁束を補助的に作り出している。従って、比較的に保磁力の小さい状態で使用することができるので、永久磁石の着磁、増磁により磁石特性を向上し、界磁磁束を増加することができる。逆に高速回転では、永久磁石の特性を弱めることにより、界磁磁束を弱めて定出力特性を容易に実現することができる。特に、本発明モータでは、ロータの界磁巻線を使用した界磁励磁とステータ巻線に通電する界磁励磁との両方を同時に行うことができ、着磁能力が高い。モータの運転状態においてもこれらの電流を利用して、磁石特性を可変することが可能である。
また、本発明では図40に示すような種々ロータを使用することもできる。なお、図40では、ロータ断面の半円形状を書いており、また、(b)と(c)では四分円でロータ形状を示している。図40の(a)の370、371、372、373は細長のスリットであり、370、372、373のスリットはロータ磁極間に概略繋がったスリットであるが、371のスリットはロータ表面側からロータのの中央近傍までのスリットになっている。このロータ構造では、スリット371近傍のロータ強度を確保できている。
図40の(b)の左側四分円のロータでは、374、375、376のスリットがロータ表面側からロータ中心部に向かった構造である。ロータ磁極方向であり、スリット375が向いている方向をd軸とすると、ロータの表面近傍ではq軸方向の磁束を遮蔽する効果がある。ロータの中央近傍では、スリットは無く、q軸方向の磁束遮蔽効果はない。ロータの強度は十分に確保できる。図40の(b)の左側四分円のロータでは、37C、37D、37Eのスリットに加え、37Bの永久磁石を追加している。ロータ磁極の表面へ均等に磁束磁石を供給できる。
図40の(c)の左側四分円のロータでは、378はスリットで377は永久磁石である。ロータ磁極の中央部に軟鉄部分があり、界磁電流による電磁石磁束を通しやすい。図40の(c)の右側四分円のロータは、ロータの磁極の方向へ磁石磁束を供給する構造である。図40の(d)のロータでは、ロータ外周にリング状あるいはパイプ状の永久磁石を配置している。特に小型のモータでは、樹脂と希土類磁石を混ぜて固めたこのような円形の磁石が広く使用されている。それ自体の強度も高く、接着剤でロータに固定して強度を得ることができる。永久磁石の378の部分はN極に着磁し、379の部分はS極に着磁する。永久磁石と界磁巻線の起磁力とを重畳させて作用させ、ロータの界磁電流を増減してロータ界磁を可変することができる。これらの例のように、永久磁石の能力を界磁電流の能力を組み合わせて、総合的な能力の高いモータを実現することができる。
次に請求項5の実施例を図9に示し、説明する。水平軸は回転角の電気角で、縦軸は電流の大きさである。本発明例の3相モータの誘起電圧波形は図7に示すような電圧波形で、U相、V相、W相の電圧Vu、Vv、Vwが相互に電気角で120°の位相差を持っている。図7の誘起電圧の傾斜部であるθrrの幅の領域では、誘起電圧変動が大きいため、この間にトルク電流を通電した時にそのトルク値を期待通りに得ることが難しい。図9の91はU相電流波形の例である。正の台形波と負の台形波を組み合わせたような電流波形となっている。U相電流Iuが正の値から負の値に変化する途中で電流値が零あるいは小さな値としていて、その区間の幅はθhz×2である。このθhzは図7のθrrの1/2よりわずかに大きな値とし、誘起電圧変化が大きい区間では電流を零に近い小さな値とし、トルク変動が大きくならないように工夫している。θstは、電流が台形状の上辺の値から零までに変化する回転角である。θhtはθstの1/2の値で、図9に示すように電流値が台形状に1/2だけ変化する回転角であり、その中間点は96である。同様に、92はV相電流波形、93はW相電流波形であり、相対的な位相差は電気角で120°である。ここでは、各相の台形状の電流波形が左右対称と仮定する。また、U、V、W相の電流波形は同一形状で、位相が120°づつ異なる形状に仮定する。
次に、この3相モータのパワーが一定となる条件について説明する。モータの出力パワーPmは、巻線抵抗に起因する銅損などのモータ内部損失を零ととして理想化すると、次式となる。
Pm=Vu×Iu+Vv×Iv+Vw×Iw (11)
まず、U相電圧Vuの電圧変動が大きい区間の電気角について図9で確認する。(180°−θhz)から(180°+θhz)の区間については、U相電流Iuが零なので、V相とW相とでモータの全パワーを出力する必要がある。V相電圧Vvは1でV相電流Ivは1で、W相電圧Vwは−1でW相電流Iwは−1で、(11)式よりモータパワーPmは2である。同様に、(180°+θhz)から(240°−θhz)の区間では、V相電圧Vvは1でV相電流Ivは1で、U相電圧VuとW相電圧Vwは−1なので、(Iu+Iw)が−1であれば(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。(240°−θhz)から(300°+θhz)の区間について、U相電圧Vuは−1でU相電流Iuは−1であり、V相電圧VvとW相電圧Vwは1なので、(Iv+Iw)が1であれば(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。(300°+θhz)から(360°−θhz)の区間では、W相電圧Vwは1でW相電流Iwは1で、U相電圧VuとV相電圧Vvは−1なので、(Iu+Iv)が−1であれば(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。(360°−θhz)から360°の区間については、U相電流Iuが零で、V相電圧Vvは−1でV相電流Ivは−1で、W相電圧Vwは1でW相電流Iwは1で、(11)式よりモータパワーPmは2である。0°から(0°+θhz)の区間については、U相電流Iuが零で、V相電圧Vvは−1でV相電流Ivは−1で、W相電圧Vwは1でW相電流Iwは1で、(11)式よりモータパワーPmは2である。(0°+θhz)から(60°−θhz)の区間では、V相電圧Vvは−1でV相電流Ivは−1で、U相電圧VuとW相電圧Vwは1なので、(Iu+Iw)が1であれば(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。(60°−θhz)から(120°+θhz)の区間について、U相電圧Vuは1でU相電流Iuは1であり、V相電圧VvとW相電圧Vwは−1なので、(Iv+Iw)が−1であれば(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。 (120°+θhz)から(180°−θhz)の区間では、W相電圧Vwは−1でW相電流Iwは−1で、U相電圧VuとV相電圧Vvは1なので、(Iu+Iv)が1であれば(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。以上で図9の全区間について説明したことになる。
ここで、図9の電流波形において、(11)式のモータパワーPmを2とすることのできる条件について考えてみる。図9の96の点から180°までについて考えると、電流の増減の回転角であるθht、すなわち、θst/2の値と、θhzの値の基準としている図7の誘起電圧の傾斜部であるθrrの回転角の1/2の値である。これらの値の和が30°より小さければ、各相電流を図9のように制御して、(11)式のモータパワーPmを2とすることができる。
(θrr/2+θst/2)≦30° (12)
(θrr+θst)≦60° (13)
(13)式のθrrはモータ誘起電圧の形状に起因する値であり、この値を小さくすることにはモータ設計上の限界がある。θstは電流の可変時間であって、電流の制御性で決まるので、例えば低速回転であれば時間的な余裕があるので、小さな値にすることができ、零に近づけることも可能である。また、U相電流波形91は、実際の制御においては、97の電流波形のように、台形が滑らかに変化したような電流波形となる。従って、(13)式の評価基準の曖昧さがある。モータの実用的な観点から、図9のような電流波形において、電流波高値の80%までの値の電流波形の範囲をこの台形形状の上辺と見なすことにする。これは実用的な観点で、20%のトルク変動を部分的に許容する基準である。部分的変動なので、平均トルクの低下は10%以下である。
また、前記のように、各相の電流値が正および負の波高値をとる角度幅は、電気角で120°+(電圧変動が大きい区間の幅θhz×2)である。そして、各相の(電圧変動が大きい区間の幅θhz×2)では、その相の電流値を零あるいは弊害が起きない程度の小さな値とし、その他の2相でパワーを出力する。その他の角度領域は二つの相の電流値が零と波高値の間で変化する角度領域であり、その二つの相の電流値の和の絶対値を相電流の波高値とする。従って、これら2つの相の電流値(Iu+Iv)=1の各値の取り方には自由度があり、図9に示す形状を変形することができる。より変化率が小さく、角部形状が滑らかな台形形状とすることもできる。
次に請求項6の実施例を説明する。図10に5相で4極のモータの横断面図を示す。コイルエンド部のステータ巻線の配置関係は、煩雑なので、8極の例を図14に示し後で説明する。を付記している。ステータにはA相、B相、C相、D相、E相の全節巻き巻線を巻回している。A相巻線はA1相巻線の101と106、および、A2相巻線の10Bと10Gであり、電気角の位置では0°と180°である。B相巻線は103と108、および、10Dと10Jであり、電気角の位置では72°と252°である。C相巻線は105と10A、および、10Fと10Kであり、電気角の位置では144°と324°である。D相巻線は107と10C、および、10Hと102であり、電気角の位置では216°と36°である。E相巻線は109と10E、および、10Kと104であり、電気角の位置では288°と108°である。ロータは図19、図20に示すロータと同じ構成である。また、図1、図8に示した構成のロータも適用できる。図19、図20の構成内容については後に詳しく説明する。
図11は図10のモータの各巻線の結線方法、電圧と電流の印加方法、界磁電力をステータからロータへ供給する方法、界磁電流の通電方法を示す図である。図3に示した3相モータの図を5相モータ用に編修しているが、界磁電力をステータ側からロータ側へステータ巻線を利用して供給する考え方は同じで、構成も類似している。巻線111は図10の101と106のA1相巻線でA1相電流Ia1を通電し、巻線112は図10の10Bと10GのA2相巻線でA2相電流Ia2を通電する。巻線112と巻線11Cは直列に接続したB相巻線で、図10の103、108と10D、10Jの両巻線であり、B相電流Ibを通電する。巻線113と巻線11Dは直列に接続したC相巻線で、図10の105、10Aと10F、10Lの両巻線であり、C相電流Icを通電する。巻線114と巻線11Eは直列に接続したD相巻線で、図10の107、10Cと10H、102の両巻線であり、D相電流Idを通電する。巻線115と巻線11Fは直列に接続したE相巻線で、図10の109、10Eと10K、104の両巻線であり、E相電流Ieを通電する。37は直流電源電圧で、116、117、118、119、11H、11J、11K、11L、11M、11N、11P、11Qの10個の電力制御素子はIGBTなどであり、前記の各相巻線へ電圧、電流を供給する。各IGBTには逆方向通電用の逆並列ダイオードが取り付けられている。3Zはモータの制御を行うモータ制御部で、前記の各IGBTの電圧、電流制御を行う。また、界磁電力の供給制御も行う。前記IGBTおよび相電流の検出値から界磁電流の検出も行う。
ここで、前記A1相巻線111とA2相巻線11Bは並列に配置した巻線接続となっていて、B相巻線112、11CとC相巻線113、11D、D相巻線114、11EとE相巻線115、11Fは直列の巻線接続となっていて、A相巻線はアンバランスである。このアンバランスを解消するために、A1相巻線31とA2相巻線32の巻き回数を他の相の巻線の2倍の巻き回数とする。そして、A1相電流Ia1、A2相電流Ia2は次式に示すように、1/2の大きさの電流とする。
Ia=Ia1+Ia2 (14)
このようにしてA相電流Iaの整合を取ることにより、通常の5相星形結線の電圧、電流と同等の関係にし、次式の関係を保つことができる。
Ia+Ib+Ic+Id+Ie=0 (15)
なお、A1相巻線111とA2相巻線11Bの巻き回数を他の巻線の2倍の巻き回数とする時、巻線の断面積は逆に1/2とすることができるので、A相の銅線の総量としては同程度である。また、図11において、B相巻線112、11CとC相巻線113、11D、D相巻線114、11EとE相巻線115、11Fを各相それぞれ並列巻線とする場合は、前記A1相巻線111とA2相巻線11Bと同一の配置関係となるので、前記A1相巻線111とA2相巻線11Bの巻き回数は他相の巻線と同一の巻き回数となり、(15)式が保たれる。
図11の紙面で一点鎖線から上側はステータ側を示し、一点鎖線から下側はロータ側を示している。そして、図11の一点鎖線から下側は、図3の一点鎖線から下側と全く同じである。また、図4に示す磁束成分の電磁気的な結合により、界磁電力の給電と受電を実現し、それらの関係も同じである。次に、図11のA1相巻線111とA2相巻線11Bを使用した界磁電力の給電と受電巻線38と3Aの受電について説明する。A相電流Ia1とIa2は独立して通電できるので、11Rの矢印で示す界磁電力成分If2を通電することができる。具体的には、A1相電流Ia1とA2相電流Ia2を相対的に界磁電力成分If2を増減すれば良く、(14)式の関係から次式となる。
Ia1=Ia/2+If2 (16)
Ia2=Ia/2−If2 (17)
A1相電流Ia1とA2相電流Ia2の合計は、界磁電力成分If2の影響を受けず、次式のようにA相電流Iaとなる。
Ia1+Ia2=Ia/2+If2+Ia/2−If2=Ia (18)
Ia1−Ia2=2×If2 (19)
巻線111と巻線11Bとは両巻線共にA相のステータ巻線であるが、電気角で0°から360°の間に配置する巻線111と電気角で360°から720°の間に配置する巻線11Bとに分け、それぞれの電流を通電できるようにし、電気角で720°周期の電流成分を通電できるようにしている。そして、受電巻線38、3Aに伝えられた電圧、電流成分および界磁巻線3C、3D、3E、3Fへ通電する界磁電流Ifの関係は、図3およびその説明と同じである。ただし、全波整流器39,3Bの出力端子を直列に接続した例を示している。111と11BはA相巻線であると同時に、界磁電力の給電手段としての給電巻線となっている。
次に、図11の5相モータの電圧波形、電流波形の例を図12に示す。3相の場合について、図6、図7、図9に示し、正弦波より矩形波に近づけた方がモータ各部の利用率が向上し、原理的に高効率化が可能であることを示した。同様に、図11、図12の5相モータについても矩形波に近い台形波状の電圧、電流として、モータの効率向上、モータの小型化、モータの低コスト化、そして、インバータの小型化と低コスト化を実現するものである。
図3、図9の3相モータの場合は、直流電圧源37からU、V、Wの3相巻線の内、1つの経路分にしか通電できない構成であって、2/3の利用率であって、1/3は利用できない構成である。これに対し、図11、図12の構成では、直流電圧源37からA、B、C、D、Eの5相巻線の内、2つの経路分に通電できる構成であって、4/5=0.8となり、利用率の改善ができる。各巻線の誘起電圧を矩形波にはできないこと、相電流の切り換え、可変時間が必要なことから、1/5=0.2の通電の冗長性があることは妥当である。
図12の紙面で下側にA相の電圧波形Vqaの例を示す。電圧振幅は1.0で示していて、水平軸はモータの円周方向の回転角の電気角である。0°と180°の近傍で電圧が急峻に変化する矩形波に近い台形波形状である。電圧が変化する角度幅はθsfである。B相電圧Vqa、C相電圧Vqc、D相電圧Vqd、E相電圧Vqeは、それぞれ電気角で72°づつ位相の遅れた同一形状の電圧波形であるが、波形が重なるので見難いので、記載していない。図12の紙面で上側に示すIqaはA相電流、IqbはB相電流、IqcはC相電流、IqdはD相電流、IqeはE相電流である。モータの出力パワーPmは、巻線抵抗に起因する銅損などのモータ内部損失を零ととして理想化すると、次式となる。
Pm=Vqa×Iqa+Vqb×Iqb+Vqc×Iqc
+Vqd×Iqd+Vqe×Iqe (20)
図12の回転角の表現方法は、図9の3相の場合と類似の方法で示している。各相の台形状の電流波形が左右対称と仮定する。また、A、B、C、D、E相の電流波形は同一形状で、位相が72°づつ異なる形状に仮定する。
誘起電圧の傾斜部であるθrrの幅の領域では、誘起電圧変動が大きいため、この間にトルク電流を通電した時にそのトルク値を期待通りに得ることが難しい。図12のA相電流Iqaは、正の台形波と負の台形波を組み合わせたような電流波形となっている。A相電流Iqaが正の値から負の値に変化する途中で電流値が零あるいは小さな値としていて、その区間の幅はθhy×2である。このθhyはA相電圧波形Vqaのθrrの1/2よりわずかに大きな値とし、誘起電圧変化が大きい区間では電流を零に近い小さな値とし、トルク変動が大きくならないように工夫している。θsfは、電流が台形状の上辺の値から零までに変化する回転角である。θhfはθsfの1/2の値で、図12に示すように電流値が台形状に1/2だけ変化する回転角であり、その中間点は126である。
次に、図12の電圧特性、電流特性において、モータの出力を大きく出力でき、かつ、モータ出力パワーが一定である条件について説明する。なお、モータ出力が一定であると言うことはトルクリップルが零であることを意味する。図11において、A相巻線はA1相巻線111とA2相巻線11Bに分かれているが、電力的な考察のため1個のA相巻線であると想定すると、5巻線の星形結線である。そして、各相の最大電圧が1.0〔単位電圧〕で、最大電流が1.0〔単位電流〕であるとすると、最大出力は5巻線の2経路分の2.0〔単位電圧×単位電流〕となる。
この条件を図12の角度幅に置き換え、表現する。まず、電圧が急峻に変化するθrrの間はトルクも大きく変化し、安定に制御して期待するトルク値を得ることが難しく、トルク値も小さいので、その間ではその相の電流を零、もしくは、零近傍の値とするものと仮定する。従って、そのθrrの間で最大出力である2.0〔単位電圧×単位電流〕を得るためには、他の4相の電圧が1.0〔単位電圧〕もしくは−1.0〔単位電圧〕であり、4相の電流が1.0〔単位電流〕でなければならない。θsfの間は、B相電流Iqbが1.0で、D相電流IqdとE相電流Iqeが−1.0なので、A相電流1qaとC相電流Iqcの和(Iqa+Iqc)が1.0とできる条件を求める。それは、θhyとθhfの和が72°/4=18°以下とできればよい。
θrr/2+θsf/2≦18°
(θrr+θsf)≦36° (21)
(13)式のθrrはモータ誘起電圧の形状に起因する値であり、この値を小さくすることはモータ設計上の限界がある。θsfは電流の可変時間であって、電流の制御性で決まるので、例えば低速回転であれば時間的な余裕があるので、小さな値にすることができ、零に近づけることも可能である。また、A相電流波形Iqaは、実際の制御において回転数が上昇すると、台形形状とすることは難しく、台形が滑らかに変化したような電流波形となる。従って、(21)式の評価基準の曖昧さがある。特に、図12の5相モータ電流特性は角度条件が図9の3相モータの場合より厳しくなる。
モータの実用的な観点から、図12の電流波形において、トルクの部分的な変動を20%と許容範囲を決める。図12の162°近傍では、B相電流Iqbが1で、D相電流IqdとE相電流Iqeが−1なので、A相電流とC相電流の和(Iqa+Iqc)が0.6の時、(1+0.6)/2=0.8となり、80%のトルクを出力することになる。このことから5相モータでは、電流波高値の60%までの値の電流波形の範囲をこの台形形状の上辺と見なすことにする。これは実用的な観点で、20%のトルク変動を部分的に許容する基準である。部分的変動なので、平均トルクの低下は10%以下である。また、これら2つの相の電流値(Iqa+Iqc)=1の各値の取り方には自由度があり、図9に示す形状を変形することができる。より変化率が小さく、角部形状が滑らかな台形形状とすることもできる。
なお、前記界磁電力成分である給電電流If2はの供給方法は、図11の構成から種々の変形も可能である。同一の相の巻線に限らず、電気角で720°周期の成分を作り出せば、図11の受電巻線38、3Aはその電力を受け取ることが可能である。例えば、図5に示したような構成も可能であり、これらの各種変形も本発明に含むものとする。
図11のモータ構成は、図3の説明で示したように、図25のブラシとスリップリングの機能をステータ巻線を活用して行い給電するので、その装置のスペース、コスト、寿命、信頼性の点で優れている。また、図3で説明したその特徴は、図11のモータ構成においても、3相が5相に変わるものの、類似の特徴、効果がある。また、界磁電流をトルク電流に重畳して通電するタイプのモータに比較すると、ステータ巻線の銅損を大幅に低減することが可能である。その理由は、図11のモータは界磁電力を伝達する電流成分は通電するが、界磁電流成分をステータ巻線に通電しないため、図4で示し説明したような力率の低下がなく、電流振幅が大きくならないため、ステータの銅損を大幅に低減することができる。なお、界磁電力をステータからロータへ伝達するためのステータ電流成分に起因する銅損は小さい。
さらに、図6に示すような正弦波から図12に示すような矩形波に近い台形波状の電圧、電流とすることにより、5相構成の内、常時4相が最大出力をする構成としているのでモータ各部の利用率4/5=0.8となり、正弦波電圧、電流の利用率が0.5であることに比較して大幅な改善を実現している。なお、4相、6相などの偶数相の場合は、インバータから流入、流出する出入りの電流数が一致するため、交流電流の反転時には出力が低下し、トルク脈動が発生する問題がある。7相、9相などは、図12のように、1相が電流切り換えの動作を行えるのでその点では好ましいが、モータおよびインバータの構成が複雑化する問題がある。本発明はこれらを排除するものではないが、長所と短所があり、用途による使い分けが必要である。
次に、図11に示すインバータの負担について説明する。前記界磁電力成分である給電電If2は、4個のIGBTの116、117、118、119で差動的に交流電圧、交流電流を生成して供給している。(16)、(17)式の関係であって、If2は相対的に小さい。また、4個のIGBTの116、117、118、119はA相の電圧、電流も生成していて、A相電流Iaは(14)、(16)、(17)式の関係である。従って、4個のIGBTの116、117、118、119の電流容量は、B相駆動のIGBTの11H、11Jの電流容量の約1/2で良く、A相駆動のIGBTの数が4個に増えるが、コスト的、スペース的な負担が2倍になるわけではない。特に、ある程度出力容量が大きいインバータでは、各IGBTを並列接続して使用することも多く、そのような場合には、図11のインバータ構成は各トランジスタの接続関係を変更するだけで構成できる。その場合にはコスト負担は小さい。インバータのIGBTの利用率という卯観点では、5相の内の4相分のIGBTを最大出力するために常時使用することが可能なので、利用率は0.8だといえる。そして、利用率が増加した分、IGBTの最大電圧、最大電流を低減できるので、インバータの小型化、低コスト化が可能である。
次に、3相と5相とを比較する。単純比較では、図3等で説明した3相モータの各部の利用率は2/3で、図11等で説明した5相モータの各部利用率は4/5なので、5相モータの方が利用率が高く、原理的に高効率化、小型化が可能である。インバータについては、最大電圧、最大電流が比較的明確なので、5相モータの方が原理的には有利である。さらに、界磁電流成分をある程度ステータの各電流で通電する場合は各巻線の角度位置分解能が重要になり、その点で5相モータは36°の角度分解能があり、有利である。また、種々制御要求により、いくつかの電流モードの変更を行う場合、5相は数学的に低次高調波のキャンセル効果が高く、トルクリップルがきわめて小さいという特徴がある。また、後で説明するように、図13に示す5相の正弦波電流で駆動することもできる。IsaはA相電流、IsbはB相電流、IscはC相電流、IsdはD相電流、IseはE相電流である。なお、5相モータは電気的な機能の面で優れた面がある反面、巻線の数が増加し複雑になるという問題がある。インバータについても、各インバータの通電容量を加算した総電流容量を低減することは可能であるが、制御素子数が増加して複雑になると言う問題がある。なお、これらの問題に対し、図15から図17に5相モータのコイルエンドの簡素化、図23、図24に5相モータの巻線の簡素化、図37、図39では5相モータの簡素化、図41では5相用インバータの有効利用の一方法について説明する。
次に、図14について説明する。5相モータのコイルエンド部の巻線の簡素化とコイルエンド部のロータ軸方向長さの短縮とステータ巻線の生産性の改善を目的としている。5相モータは巻線の数が多いので、コイルエンド部の巻線の交差が複雑になるため、使用されることが少ない。特に,出力が5KW以上のモータで、実用的な8極の構成で、巻線係数の大きい全節巻きの場合は、コイルエンド部の巻線配置は図14に示すような形状となり、各巻線が複雑に交差し、製作上の問題が多い。5相モータの前記の特長を生かすためには、この問題を同時に改善する必要がある。
図14のスロット数は40でコイルエンド部の巻線数は20で、ロータは8極である。ロータは各種のロータが可能で、例えば、図19のロータを配置することができる。A相巻線は287、28C、28H、28Nである。B相巻線は288、28D、28J、28Pである。C相巻線は289、28E、28K、28Qである。D相巻線は28A、28F、28L、28Rである。E相巻線は28B、28G、28M、28Sである。各コイルエンドの巻線は他の4個の巻線と交差している。例えばU相巻線287は、28R、28S、288、289の4個の巻線と交差している。各巻線を巻回が複雑になる問題がある。特に、隣接する2個のスロットの巻線の交差が難しい。具体的には、スロット141の巻線とスロット142の巻線との交差、スロット141の巻線とスロット142の巻線との交差、スロット143の巻線とスロット144の巻線との交差、スロット145の巻線とスロット146の巻線との交差、スロット147の巻線とスロット148の巻線との交差などである。
図15と図16にコイルエンド部の巻線の交差の問題を軽減する方法を示す。コイルエンド部で隣接する2個のスロットの形状を変形し、巻線の中心を外径側に移動させたスロットと巻線の中心を内径側に移動させたスロットとを作り、隣接する2個の巻線の巻回順を規定することにより、巻線の交差をより容易に改善する方法である。図15のモータは、図14と同じで、スロット数は40で、ロータは8極である。ロータは各種のロータが可能で、例えば、図19のロータを配置することができる。図15のA相巻線は297、29C、29H、29N、B相巻線は298、29D、29J、29P、C相巻線は299、29E、29K、29Q、D相巻線は29A、29F、29L、29R、E相巻線は29B、29G、29M、29Sである。
図15のスロット15Aの形状KSWは、図14のスロットSP1の形状と異なり、スロットの外径側が広くなりスロット開口部に近い内径側は狭くなっている。隣のスロット15Bの形状KSNは、逆に、スロットの内径側が広くなり、スロットの内径側が狭くなっている。この形状KSWとKSNとの目的は、巻線の巻回順に関係し、円周方向に隣接して配置する2個の巻線で先に巻回する巻線のスロット形状を外径側が広い形状KSWとし、スロットからコイルエンド側へ出る巻線をできるだけ外径側へ誘導して巻回する。
そして、2個の巻線の後から巻回する巻線のスロット形状を内径側を広い形状KSNとし、スロットからコイルエンド側へ出る巻線を先に巻回した巻線に重なるように巻回するなど、2個の巻線の交差ができるだけ少なくできるように巻回する。この方法により、巻線交差部のロータ軸方向への出っ張りを少なく巻回することができ、また、コイルエンド部の巻線長を短縮することができる。
次に、図15のステータコアに各巻線を巻回する手順の例を説明する。最初は、ステータコアに巻線を巻回していない状態から始め、A相巻線297をスロット151と156へ巻回する。次にB相巻線298をスロット153と158へ巻回する。次にC相巻線299をスロット155と15Aへ巻回する。この時、スロット155から出た巻線299は、スロット156に巻回しているA相巻線296に重ねて巻回し、スロット15Aへ巻回する。A相巻線296に重ねて巻回する部分に2重線を付記して、巻線の重なりを示している。他の相の巻線についても同様に、巻線の重なり部分に2重線を付記して示している。次にD相巻線29Aをスロット157と15Cへ巻回する。次にE相巻線29Bをスロット159と15Eへ巻回する。次にA相巻線29Cをスロット15Bと15Gへ巻回する。次にB相巻線29Dをスロット15Dと15Jへ巻回する。次にC相巻線29Eをスロット15Fと15Lへ巻回する。次にD相巻線29Fをスロット15Hと15Nへ巻回する。次にE相巻線29Gをスロット15Kと15Qへ巻回する。次にA相巻線29Hをスロット15Mと15Sへ巻回する。次にB相巻線29Jをスロット15Pと15Uへ巻回する。次にC相巻線29Kをスロット15Rと15Wへ巻回する。次にD相巻線29Lをスロット15Tと15Yへ巻回する。
次にE相巻線29Mをスロット15Vと291へ巻回する。次にA相巻線29Nをスロット15Xと293へ巻回する。次にB相巻線29Pをスロット15Zと295へ巻回する。
次にC相巻線29Qをスロット292と29Tへ巻回する。次にD相巻線29Rをスロット294と152へ巻回する。次にE相巻線29Sをスロット296と154へ巻回する。
スロット15Aと同様の、外径側が広い形状KSWのスロットは、151、153、156、158、15C、15E、15G、15J、15L、15N、15Q、15S、15U、15W、15Y、291、293、295である。スロット15Bと同様の、内径側が広い形状KSNのスロットは、152、154、157、159、15D、15F、15H、15K、15M、15P、15R、15T、15V、15X、15Z、292、294、296である。
次に、スロット形状の例について図16に示し、説明する。図16の(a)は図14の整然とした歯の断面形状であり、図16の(a)は図14の歯すなわち図16の(a)の歯に周囲を囲われたスロットの断面形状である。図16の(b)は、図16の(a)で示す歯を中心線に対して傾けた形状であり、歯の内径側の位置、形状は変えていない。この図16の(b)の形状によりスロットの形状を変形することができる。この時、スロット形状が広がる部分と狭くなる部分とができて、キャンセル効果があるため、スロットの断面積はほとんど変化しないと考えることができる。なお、歯幅一定の条件では、原理的に、スロット断面積はわずかに減少する。また、ロータに対向する歯の先端形状も変えていないので、ロータに対する電磁気的な影響もわずかである。図16の(c)は、図16の(b)とは反対方向に歯を傾けた形状である。
これらの図16の(a)、(b)、(c)の歯の形状を使いわけることにより、図16の(d)、(e)、(f)、(g)に示すような種々のスロット形状を得ることができる。
図16の(e)のスロット形状は、左側に(b)の歯を配置し、右側に(c)の歯を配置したスロット形状であり、外径側が広く内径側が狭い形状で、図15のスロット形状15Aなどの形状である。図16の(f)のスロット形状は、左側に(c)の歯を配置し、右側に(b)の歯を配置したスロット形状であり、外径側が狭く内径側が広い形状で、図15のスロット形状15Bなどの形状である。図16の(g)のスロット形状は、左側に(c)の歯を配置し、右側にも(c)の歯を配置したスロット形状であり、図15のスロット形状155と29Tのスロット形状である。ステータコアへの巻き始めと巻き終わりの近傍では、その非対称性から少し特殊なスロット形状となる。
図15、図16の構成により、5相モータで8極などと極数の大きいモータにおける複雑な巻線構成を、隣に配置される2個の巻線の立体的な交差形状を改良し巻線の交差を少なくすることにより、巻線の製作性をより容易にし、巻線交差部のロータ軸方向への出っ張りを少なく巻回することができるようにし、また、コイルエンド部の巻線長を短縮することができる。なお、スロット形状は図16に示した形状だけでなく、同一の趣旨で種々の変形が可能である。また、巻線の巻回順は一義的ではなく、種々の選択が可能であり、それらも本発明に含むものである。
次に、図17は巻線の配置位置を限定する巻線案内171,172、173、174、175、176などを、図15の構成に付加した図である。図15の説明でコイルエンド部の巻線巻回の例について説明したが、巻線の位置は3次元的に自由度があり、期待する位置へ整然と巻線を配置することは難しい。巻線位置を何らかの方法で特定できれば、巻線をより整然と簡素化して巻回することが可能となる。
図17の巻線案内171,172、173、174、175、176などは、巻線の巻回時に巻線の配置位置をある程度限定する棒状の巻線案内である。例えば、図17で最初に巻回するA相巻線297を巻回するとき、巻線案内171,172、173は297がスロット152、153、154、155の方へはみ出さないように巻線位置を限定することができる。次に巻回するB相巻線298は、巻線案内172、173、174は298がスロット153、154、155、156の方へはみ出さないように巻線位置を限定することができる。次に巻回するC相巻線299は、スロット156のA相巻線297が既に巻回されているので、スロット156とその巻線に重ねて巻回する。巻線案内174,175はC相巻線299がスロット157、158、159の方へはみ出さないように巻線位置を限定することができる。次に巻回するD相巻線29Aは、スロット158のB相巻線298が既に巻回されているので、スロット158とその巻線に重ねて巻回する。
巻線案内175,176はD相巻線29Aがスロット159、15A、15Bの方へはみ出さないように巻線位置を限定することができる。次に巻回するE相巻線29Bも、前記のC相巻線299、D相巻線29Aと同様に、スロット15AのC相巻線299が既に巻回されているので、スロット156とその巻線に重ねて巻回する。以下同様に、図17はに示す各巻線を紙面で反時計回転方向に、順次、巻回することができる。なお、ステータコアに各巻線を巻回するとき、巻き始めと巻き終わりの部分は、他の大半の部分の巻線とは条件が異なるため、巻線を重ねて巻く上下関係などが少し異なる巻き方となる。
図17に示したように、巻線案内171,172、173、174、175、176などを設けることにより、各巻線をより整然と簡素化して巻回することが可能となる。図17の例では簡素な棒状の巻線案内の例について示したが、巻線案内の数を増やす、巻線案内の形状を樹脂などにより精密化した3次元形状の巻線案内とする、複数の巻線案内を一体化することなども可能である。その結果、巻線の製作性をより容易にし、巻線交差部のロータ軸方向への出っ張りを少なく巻回することができるようにし、また、コイルエンド部の巻線長を短縮することができる。
さらには、巻線の巻回順、および、巻線の重なり関係を配慮した巻線案内を使用することにより、巻線の自動巻回機による直巻きも可能となる。少し複雑な巻線配置であるが、集中巻きモータの自動巻回機のように巻線の巻回位置を精密に制御し、ある程度の巻線張力をかけながら、巻線が整列して巻回することができる。また、巻線案内を巻線の端子台として兼用することできる。複数個の巻線案内を樹脂などで集約化したり、一体化する場合には、巻線案内の近傍に巻線の端子台を設けることもできる。
図12とその説明で、5相モータの矩形波に近い台形波状の電圧と電流でモータを駆動することにより、モータ各部の利用率を向上できることを説明した。しかし、図12の5相の電流波形は急峻な増減が含まれており、低速回転では周波数も低いので問題ないが、高速回転においてこれらの急峻な変化の電流を正確に通電することは巻線インダクタンスの都合上、インバータの直流電圧源の限界などにより難しい。この高速回転時の問題を解決する方法として、高速回転時には図13に示す5相正弦波のA相電流Isa、B相電流Isb、C相電流Isc、D相電流Isd、E相電流Iseを通電する。電流の変化率を大幅に低減できるので、電流制御の電圧負担が大幅に軽減される。モータの出力特性として、特に5相のモータは低次高調波のキャンセル効果が大きいため、5相の台形波電圧のモータへ5相の正弦波電流を通電しても、たいていの用途ではトルクリップルが実用上問題にならない程度の小さな値で駆動することができる。
特に、電気自動車などの主機モータの特性として、モータの最大トルクが必要な回転数は、急坂道の登坂運転であるから、モータの低速回転で効果的に最大トルクを発生できることが求められ、この最大トルク特性でモータの大きさ、モータのコストの概略が決まると言われている。なお、低速回転時の大トルク特性のニーズは、自動車だけでなく、産業機械などにも多い。
なお、図9の3相モータの電流特性についても正弦波化が可能であり、同様なことが言える。また、3相の正弦波界磁電流で円周方向に矩形状の磁束分布、矩形状の誘起電圧を作り出すことは難しい。5相の正弦波界磁電流で円周方向に矩形状の磁束分布、矩形状の誘起電圧を作り出すことは難しい。本発明で示すような、ロータに巻回した界磁巻線の界磁電流により円周方向に矩形状の磁束分布を作り出すことができる。そして、このような界磁磁束を界磁電流で可変可能であれば、界磁磁束制御、定出力制御などが可能である。他の例として、ロータ表面に永久磁石を配置したロータでは、円周方向に矩形状の磁束分布を作り出すことは比較的容易であるが、界磁磁束制御と両立させることは難しい。
次に、図10と図12などに示すような5相モータの界磁磁束分布、巻線の矩形に近い誘起電圧特性を得るためには、図10のロータの界磁巻線に界磁電流を通電すれば良い。しかし、ステータの各相巻線に界磁励磁電流成分を通電して、円周方向に矩形波状の分布を成す界磁磁束の増減をステータの巻線の電流で制御できれば、界磁磁束の応答性改善が可能となり、弱め界磁も可能となり、メリットがある。なお、従来のdq軸制御の考え方のように、ステータ巻線へ複数の相電流のベクトル和として得られる正弦波状の分布の起磁力では矩形に近い誘起電圧特性を得ることは難しい。
図21に、円周方向に矩形波状の分布を成す界磁磁束を励磁するステータの各相電流を示す。水平軸は回転方向角度を電気角で示している。Ida、Idb、Idc、Idd、Ideは、A相、B相C相、D相、E相の界磁励磁電流成分である。162°から198°の36°の幅θmの間では、A相の界磁励磁電流成分Idaは正の波高値である0.4としている。A相からE相までの正と負のベクトルは図22に示すような関係となる。A相巻線に流入する電流Idaは、逆方向ベクトルで最も近いC相電流Idcとd相電流Iddとして流れ出る。従って、(Idc+Idd)=−0.4である。また、図11の電流(Ia1+Ia2)が流入してU1相巻線111、U2相巻線11Bに流入し、C相巻線113、11DとD相巻線11E、114を通って流れ出ることに相当する。この図21のA相界磁電流成分Idaは、図12に示すトルク電流成分Iqaが90°を中心とした電流であるのに対して、180°を中心とした電流でありトルク電流成分Iqaより電気角で90°の位相遅れの関係となっている。
図21の126°から162°の幅θnの間は、C相の界磁励磁電流成分Idcが負の波高値である−0.4としている。この間では、同様に、(Ide+Ida)=0.4である。図21の198°から230°の幅θpの間は、D相の界磁励磁電流成分Iddが負の波高値である−0.4としている。この間ではA相電流IdaとB相電流Idbは、同様に、次式となる。
(Ida+Idb)=0.4 (22)
また、この間では、A相電流IdaとB相電流Idbが直線的に変化しているが、(22)式を満たせば良く、種々の値をとっても良い。例えばこの間でIdaとIdbが0.2の一定値であっても良い。また、(22)式は代表的な例であり、(15)式のように、5相星形結線の全電流の和が零となるように、本発明の趣旨に沿って多少変形することもできる。その他の角度範囲においても同様の関係の界磁電流成分となっている。
図21に示すような5相の界磁電流成分を通電することにより、図19のようなロータの各磁極を励磁して界磁磁束を増加あるいは減少させることができる。しかも、これらの界磁電流成分によりロータ磁極のほぼ全域に均一な起磁力を印加できるので、ロータ磁極の各位置に均一な界磁磁束を分布させることができる。その結果、円周方向に矩形波状の分布を成す界磁磁束を作ることができ、巻線の矩形に近い誘起電圧特性を得ることができる。そして、この5相の界磁電流成分はインバータで駆動するので、急激に増加あるいは減少させることもできる。なお、図19の永久磁石による界磁磁束の生成効果は一定であり可変はできない。また、界磁巻線87、8A、8C、8D、8F、8K、8H、89に通電する界磁電流による界磁磁束の生成は、磁束を比較的高速に増加できる。しかし、界磁磁束を減少させる場合は、ダイオードと界磁巻線で磁気エネルギーが保持されるので、界磁巻線の抵抗で磁気エネルギーが消費するのを待つしかなく、応答速度が遅い問題がある。
次に、請求項7の実施例について説明する。図23に本発明の5相モータの横断面図を示す。8極のモータで、コイルエンド部のステータ巻線の配置関係を付記している。破線で示すスロット形状の場所へは巻線を配置せず、取り除いている。図14に示した5相、8極のモータは、巻線の数が多く、各相の巻線が複雑に交差するため複雑になり、ステータの巻線の製作性が悪いという問題があった。図23に示す構成は、この問題を軽減するため、特定の関係で規則的に半数の巻線を取り除き、巻線の交差関係を大幅に単純化している。図23に示す本発明モータは、5相、8極、20スロットで、全節巻き巻線を10個配置したモータである。
図23で記載している巻線311、312、313、314、315、316、317、318、319、31Aの位置関係は、図14の巻線の位置関係と同じである。巻線を巻回する手順の例について説明する。最初に、311はA相巻線で、スロット231から236へ巻回する。312はE相巻線で、スロット239から23Eへ巻回する。313はD相巻線で、スロット23Hから23Nへ巻回する。314はC相巻線で、スロット23Rから23Wへ巻回する。315はB相巻線で、スロット23Zから23Hへ巻回する。これらの巻線311、312、313、314、315は他の巻線と交差、干渉することがないので、容易に巻回することができる。
次に、316はC相巻線で、スロット235から23Aへ巻回している。この時、スロット236と239には既に巻線が巻回されているが、後にその周辺でその他の巻線を巻回することはないので、これらの巻線にかぶせるように重ねて巻回することもできる。同様に、巻線317、318、319、319、31Aを巻回する。これら10個の巻線は、交差する巻線が少なく、図14の5相全節巻きステータの巻線に比較して容易に巻回することができる。また、図1に示す3相全節巻きステータの巻線に比較しても、巻線交差の関係が単純なので、容易に巻回することができる。
次に図23に示すスロット形状の修正について説明する。破線で示すスロット形状233、234、237、238、23B、23C、23F、23G、23K、23L、23P、23Q、23T、23U、23X、23Y、31E、31F、31J、31Kは必要がなく、軟鉄部とすることもができる。しかし、当然のことながら、できるだけ巻線を巻回するスペースを広くしたいので、破線で示したスロット形状の断面積分だけ、巻線を巻回するスロットの断面積を広くすることができる。具体的には、23Aに示すスロット断面積を太線31Bで示す場所まで拡大することができる。同様に、23Dに示すスロット断面積を太線31Cで示す場所まで拡大することができる。2倍近くの断面積に拡大できたことになる。他の各スロットについても同様に拡大することができる。各スロットの断面積の拡大により、スロット配置は円周上にほぼ均一に配置した構成とすることができる。
これらの結果、図14に示す5相、8極、40スロットの全節巻きモータの全スロット内の巻線量と同等の巻線を図23の各スロットに巻回できることになる。さらには、図14の巻線に比較して簡素な巻線構成であり、巻線の巻回が容易なので、図23のスロット内の巻線占積率を向上でき、スロット内絶縁物の総量の減少も期待できる。なお、スロット23Aと23Dとの間の歯の形状は、ロータとステータの間の磁束の通過が無理なくできるような形状、幅とする必要がある。
図23の巻線構成は、電気角720°の5相、4極、10スロットで全節巻き巻線を配置したモータ構成を円周上に2組配置した構成であって、5相、8極、20スロットで、全節巻き巻線を配置したモータである。電気角720°の構成をモータの中心に対して点対称に配置しているので、A相巻線311と318を図11のA相巻線111と11Bに置き換えて、界磁電力をステータ側からロータ側へ供給することができる。この時、ロータの受電巻線31Lと31Mの巻線ピッチは電気角で720°とする必要がある。受電巻線31Nと31Pも同様にの巻線ピッチは電気角で720°とする必要がある。なお、ロータの界磁巻線は、各ロータ磁極ごとに180°ピッチで巻回し、他に図示した界磁巻線と同じである。また、ロータの内部構成は、図19と図20示したような空隙部201、磁石201、202、203、204を8極の構成として配置した8極ロータとすることができ、モータの性能を向上することができる。
また、図23の各スロットの開口部の円周方向位置は、各巻線の電流のベクトルを決めているので、円周方向に2個おきに不均一な配置となるが、電気角で0°、72°、144°、216°、288°の位置は変えない。また、図23では円周方向に電気角で、0°、72°、288°、0°、216°、288°、144°、216°、72°、144°の円周位置にスロット開口部が配置され、それらが2組配置された例である。なお、破線で示すスロット開口部の位置に、あるいはその近傍に、スロット開口部に似せた小さなへこみを作って、疑似のスロット開口部を設けることにより、スロット開口部に起因する磁気抵抗の脈動を軽減し、トルクリップルを減少することもできる。
なお、図23に示した5相モータの構成は、電気角720°の構成で、5相、4極、10スロット、5個の全節巻き巻線のモータとしても構成することができる。また、図23に示した5相モータの構成に巻線を5個追加し、5相、8極、30スロットで、全節巻き巻線を15個配置したモータとして構成することもできる。破線で示す233と238へB相巻線、23Bと23GへA相巻線、23Kと23QへE相巻線、23Tと23YへD相巻線、31Eと31KへC相巻線を追加する。5相モータとしてのトルクのバランスは取れる。また、図15、図16に示した巻線の交差の容易化手法を適用することもできる。また、図17に示したような巻線案内を使用して巻線の巻回を容易化することもできる。
次に、図24に本発明の他の5相モータの横断面図を示す。12極のモータで、コイルエンド部のステータ巻線の配置関係を付記している。破線で示すスロット形状の場所へは巻線を配置せず、取り除いている。図14に示した5相、8極のモータは、巻線の数が多く、各相の巻線が複雑に交差するため複雑になり、ステータの巻線の製作性が悪いという問題があった。図24に示す構成は、この問題を軽減するため、特定の関係で規則的に1/3の巻線を取り除き、巻線の交差関係を大幅に単純化している。図24に示す本発明モータは、5相、12極、40スロットで、全節巻き巻線を20個配置したモータである。
図24の巻線を巻回する手順の例について説明する。最初に、321はA相巻線で、スロット241から246へ巻回する。A相巻線のスロットは、241、246、24B、24C、24D、24E、24F、24G、24H、24J、24Kである。次に同様に、D相巻線322、B相巻線323、E相巻線324、C相巻線325、A相巻線326、D相巻線327、B相巻線328E相巻線329、C相巻線32Aと巻回する。これらの巻線は他の巻線と交差、干渉することがないので、容易に巻回することができる。次に、巻回順が逆になった巻線で、−E相巻線32B、−C相巻線32C、−A相巻線32D、−D相巻線32E、−B相巻線32F、−E相巻線32G、−C相巻線32H、−A相巻線32J、−D相巻線32K、−B相巻線32Lと巻回する。
これら20個の巻線は、交差する巻線が少なく、図14の5相全節巻きステータの巻線に比較して容易に巻回することができる。また、図1に示す3相全節巻きステータの巻線に比較しても、巻線交差の関係が単純なので、容易に巻回することができる。
次に図24に示すスロット形状の修正について説明する。破線で示すスロット形状242、245、248、24Bなどは
は必要がなく、軟鉄部とすることもができる。しかし、当然のことながら、できるだけ巻線を巻回するスペースを広くしたいので、破線で示したスロット形状の断面積分だけ、巻線を巻回するスロットの断面積を広くすることができる。具体的には、24Pに示すスロット断面積を太線24Qで示す場所まで拡大することができる。同様に、24Sに示すスロット断面積を太線24Rで示す場所まで拡大することができる。3/2倍近くの断面積に拡大できたことになる。他の各スロットについても同様に拡大することができる。各スロットの断面積の拡大により、スロット配置は円周上にほぼ均一に配置した構成とすることができる。
これらの結果、破線で示したスロット断面形状も含めた全スロットへ巻線を巻回した基本構造の5相モータのスロット内巻線量に比較して、同等の巻線を図24の各スロットに巻回できることになる。さらには、図14の巻線に比較して簡素な巻線構成であり、巻線の巻回が容易なので、図24のスロット内の巻線占積率を向上でき、スロット内絶縁物の総量の減少も期待できる。なお、スロット24Pと24Sとの間の歯の形状は、ロータとステータの間の磁束の通過が無理なくできるような形状、幅とする必要がある。
図24の巻線構成は、電気角360°×3=1080°の5相、6極、20スロットで10個の全節巻き巻線を配置したモータ構成を円周上に2組配置した構成であって、5相、12極、40スロットで、全節巻き巻線を20個配置したモータである。電気角1080°の構成をモータの中心に対して点対称に配置しているので、A相巻線321と326を図11のA相巻線111と11Bに置き換えて、界磁電力をステータ側からロータ側へ供給することができる。この時、ロータの受電巻線24Tと24Uの巻線ピッチは電気角で1080°とする必要がある。受電巻線24Vと24Wも同様にの巻線ピッチは電気角で1080°とする必要がある。なお、ロータの界磁巻線は、各ロータ磁極ごとに180°ピッチで巻回し、他に図示した界磁巻線と同じである。また、ロータの内部構成は、図19と図20示したような空隙部201、202、203、204、磁石191、192、193、194を8極の構成として配置した12極ロータとすることができ、モータの性能を向上することができる。
また、図24の各スロットの開口部の円周方向位置は、各巻線の電流のベクトルを決めているので、円周方向に2個おきに不均一な配置となるが、電気角で0°、72°、144°、216°、288°の位置は変えない。なお、破線で示すスロット開口部の位置に、あるいはその近傍に、スロット開口部に似せた小さなへこみを作って、疑似のスロット開口部を設けることにより、スロット開口部に起因する磁気抵抗の脈動を軽減し、トルクリップルを減少することもできる。
なお、図24に示した5相モータの構成は、電気角1080°の構成で、5相、6極、20スロット、10個の全節巻き巻線のモータとしても構成することができる。また、図24に示した5相モータの構成のうち、5個の巻線を削除した、5相、12極、30スロットで、全節巻き巻線を15個配置したモータとして構成することもできる。例えば、巻線24B、32D、32F、32G、32Kを削除した構成である。5相モータとしてのトルクのバランスは取れる。また、図15、図16に示した巻線の交差の容易化手法を適用することもできる。また、図17に示したような巻線案内を使用して巻線の巻回を容易化することもできる。
次に、前記実施例1に示した図1、図3,図4のモータの巻線配置と相互接続をさらに明確に示すため、図28に巻線の配置結線図を示す。図28はステータの内周面をロータ側から見て、直線展開した図である。図28の水平方向は円周方向の回転角を電気角で示しており、4極のモータなので全周で720°である。太線はステータの各歯を示しており、全周で12個の歯を配置している。これらの歯と歯の間が巻線を挿入するスロットで、1から12までのスロット番号を付記している。ステータの全ての巻線を重ねて記載すると複雑になり見難いので、図28の紙面の上下2段に同じステータの歯を2組記載し、上段にU1相巻線とU2相巻線を示し、下段にV相巻線とW相巻線を記載している。実際には、上段の巻線と下段の巻線とが重なっている。また、686,687,688,689,68A,68Bの略6角形で示した巻線は、いわゆる亀甲型コイルである。この亀甲型コイルは1本の線で略6角形形状を表しているが、例えば、50ターンなどの複数の巻線を巻回したコイルであり、そのコイルの入り口と出口を示している。
図28の681はU1相の巻線端子であり、亀甲型コイル686は図1の巻線11と14である。亀甲型コイル686の他端は、このステータの星形結線の中性点である685へ接続している。同様に、682はU2相の巻線端子であり、亀甲型コイル687は図1の巻線17と1Aである。亀甲型コイル687の他端は、このステータの星形結線の中性点である685へ接続している。巻線端子681へU1相電流Iu1を通電し、巻線端子682へU2相電流Iu2を通電し、前記(6)式の関係となっている。
図28の683はV相の巻線端子であり、亀甲型コイル688は図1の巻線13と16で、亀甲型コイル68Aは図1の巻線19と1Cである。亀甲型コイル68Aの他端は、このステータの星形結線の中性点である685へ接続している。図28の684はW相の巻線端子であり、亀甲型コイル689は図1の巻線15と18で、亀甲型コイル68Bは図1の巻線1Bと12である。亀甲型コイル68Bの他端は、このステータの星形結線の中性点である685へ接続している。なお、破線で示す68Eはその左端の歯をイメージして示し、破線で示す68Fはその右端の歯をイメージして示し、破線で示す亀甲型コイル68Cは亀甲型コイル68Bと同一のものである。
次に、請求項1の他の実施例について説明する。図29の断面図に、3相、4極、全節巻き、集中巻き、一つのスロットに挿入するコイルの数が2の構成のモータを示す。先に説明した、請求項1の実施例である図1のモータの変形とも言え、マクロ的には等価である。図1の構成とは、ステータコアは同じで、巻線の構成と配置が異なる。U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwだけを両モータに通電する時、図1のモータの各スロットに流れる電流と図29のモータの該当するスロットに流れる総電流とは全く同じ値である。図29のロータ1Eは図1と同じ構成である。
690はステータコアで、U1相巻線は69Dから69Gへ巻回する巻線と69Nから69Mへ巻回する巻線である。U2相巻線は69Jから69Hへ巻回する巻線と69Kから69Lへ巻回する巻線である。V相巻線は69Fから69Xへ巻回する巻線と69Zから69Yへ巻回する巻線と501から502へ巻回する巻線と69Eから503へ巻回する巻線である。W相巻線は69Rから69Sへ巻回する巻線と69Uから69Tへ巻回する巻線と69Vから69Wへ巻回する巻線と69Qから69Pへ巻回する巻線である。
図1の巻線の数に比較して図29の巻線の数は2倍となっているが、巻線の総量は同じである。
図30に図29の巻線の配置結線図を示し説明する。なお、図30の配置結線図は、亀甲型コイル、歯、スロット、上下2段に分けた巻線配置説明など、図28と同様の表現方法としている。なお、図28,図30、図33、図35、図36などの巻線の配置結線図では、亀甲型コイルの巻線を配置するスロット番号とその位置を示し、また、亀甲型コイル間の接続関係も示している。図30の701はU1相の巻線端子であり、亀甲型コイル706は図29の巻線69Dと69Gであり、亀甲型コイル709は図29の巻線69Nと69Mである。亀甲型コイル709の他端は、このステータの星形結線の中性点である705へ接続している。同様に、702はU2相の巻線端子であり、亀甲型コイル707は巻線69Jと69Hであり、亀甲型コイル708は巻線69Kと69Lである。亀甲型コイル708の他端は、前記中性点705へ接続している。巻線端子701へU1相電流Iu1を通電し、巻線端子702へU2相電流Iu2を通電し、前記(6)式の関係となっている。
703はV相の巻線端子であり、亀甲型コイル70Aは巻線69Fと69Xであり、亀甲型コイル70Bは巻線69Zと69Yであり、亀甲型コイル70Cは巻線501と502であり、亀甲型コイル70Dは巻線69Eと503である。亀甲型コイル70Dの他端は、前記中性点705へ接続している。巻線端子703へV相電流Ivを通電し、3相電流の一つの相として作用し、前記(6)式の関係となっている。
704はW相の巻線端子であり、亀甲型コイル70Eは巻線69Rと69Sであり、亀甲型コイル70Fは巻線69Uと69Tであり、亀甲型コイル70Gは巻線69Vと69Wである。亀甲型コイル70Gは機構型コイル70Hへ接続していて、亀甲型コイル70Hは巻線69Qと69Pである。亀甲型コイル70Hの他端は、前記中性点705へ接続している。巻線端子704へW相電流Iwを通電し、3相電流の一つの相として作用し、前記(6)式の関係となっている。
次に、図29,図30で示したモータの電磁気的な作用について説明する。なお、図29の巻線69Dを挿入しているスロットをスロット1とし、反時計回りの順にスロット1からスロット12と命名し、そのスロット番号を該当するスロットの近傍に付記する。
U1相とU2相の具体的な通電例について、各亀甲型コイルの巻き回数は1ターンであると簡素化のために仮定して説明する。今、図30のU1相端子701とU2相端子702へU相電流成分を5Aづつ通電する。ただしここでは、U相電流成分について考察することを目的としているので、V相電流、W相電流については無視することにする。図30の亀甲型コイル706はスロット1とスロット4に挿入していて、亀甲型コイル709はスロット1とスロット10に挿入していて、U1相電流Iu1=5Aを通電している。
U2相電流はIu2=5Aで、亀甲型コイル707はスロット4とスロット7に挿入していて、亀甲型コイル708はスロット7とスロット10に挿入している。スロット1に通電する合計電流は、図30の紙面の上方から下方へ10Aが通電され、スロット4に通電する合計電流は、図30の紙面の下方から上方へ10Aが通電され、スロット7に通電する合計電流は、図30の紙面の上方から下方へ10Aが通電され、スロット10に通電する合計電流は、図30の紙面の下方から上方へ10Aが通電される。その結果、スロット1からスロット4の間では図30の紙面で裏側から表側の方向へ起磁力が作用し、スロット4からスロット7の間では図30の紙面で表側から裏側の方向へ起磁力が作用し、スロット7からスロット10の間では図30の紙面で裏側から表側の方向へ起磁力が作用し、スロット10からスロット1の間では図30の紙面で表側から裏側の方向へ起磁力が作用する。これらの起磁力は、U1相とU2相が通常の3相電流の内のU相電流として正しく作用している状態である。
次に、図30のU1相端子701とU2相端子702へU相電流成分ではなく、界磁電力を供給するための界磁電力成分である給電電流If2を通電するため、U1相端子701へU1相電流Iu1=2A、U2相端子702へU2相電流Iu2=−2Aを通電する状態を仮定する。この時、V相巻線およびW相巻線に流れる電流は零とする。スロット1に通電する合計電流は、図30の紙面の上方から下方へ4Aが通電され、スロット4に通電する合計電流は、U1相電流Iu1とU2相電流Iu2とが相殺し、0Aとなり、スロット7に通電する合計電流は、図30の紙面の下方から上方へ4Aが通電され、スロット10に通電する合計電流は、U1相電流Iu1とU2相電流Iu2とが相殺し、0Aとなる。これらの結果、スロット1とスロット7へ逆向きの電流4Aが通電され、図30のスロット1からその右側のスロット7の間では紙面で裏側から表側の方向へ起磁力が作用し、スロット7からその右側の端に位置するスロット1の間では図30の紙面で表側から裏側の方向へ起磁力が作用する。これらの起磁力の円周方向幅は電気角で360°であり、起磁力の円周方向周期は720°である。また、これらの起磁力は、円周方向の巻線ピッチが360°で巻線周期が720°の励磁巻線で励磁することと等価である。
後に図35の説明で受電巻線と界磁巻線について、それらの巻線の配置結線図を示し詳しく説明するが、受電巻線の巻線ピッチを360°とすれば、U相、V相、W相の3相電流の巻線周期は360°であり、3相電流に関する円周方向360°の間の起磁力合計は零なので、3相電流Iu、Iv、Iwの起磁力が受電巻線へ電磁気的に作用することは原理的にない。そして、受電巻線は界磁電力成分である前記給電電流If2の電磁気的な作用を受け、界磁巻線に界磁電流を通電するための電力をステータ側からロータ側へ電磁誘導作用により供給する。なお前記例では、U1相電流Iu1=2Aと一定値の瞬間について考察したが、前記給電電流If2は交流であり、ステータとロータ間を非接触で電磁誘導作用により界磁電力を供給することができる。
次に、請求項1の他の実施例について説明する。図34は、図1のモータ構成と図29のモータ構成を複合したモータ構成の例である。図34のスロット1、スロット4、スロット7、スロット10に巻回するU1相巻線およびU2相巻線は図29の構成と同じで、その他のスロットに巻回するV相巻線およびW相巻線は図1の構成と同じになっている。図34のモータの狙いは、界磁電力の供給の効率は図29の構成の方がやや優れていて、巻線の簡素化の点では図1のモータの方が優れているので、優れた点を活用することである。このように、本発明のモータは、分布巻き化、短節巻き化など種々形態に応用、変形することができる。
次に、請求項1の他の実施例について説明する。図35は、3相、4極、短節巻き、集中巻きの本発明モータの例である。図1、図29などのモータのスロットが12個で合ったのに対し、図35のモータのスロットの数は6個と少なく、集中巻きの巻線は生産性に優れているので、小型化、低コスト化できる特徴がある。342はU1相巻線で、344はU2相巻線である。34Cと34AはV相巻線である。346と348はW相巻線である。図35のモータの通電方法は図3に示した方法が適用でき、図31に示す方法によりロータの界磁巻線に界磁電力を供給することができる。ロータ1Eは図1などの他のモータと同様である。
3相の集中巻きモータは、巻線の製作性に優れていて、巻線のコイルエンド長を短くできること、巻線占積率を高くできること、巻線の自動巻化/高速化できることなどで優位性がある。そのため、モータの高性能化、小型化、低コスト化を実現でき、広く使われている。しかし、3相電流による界磁弱め制御の性能が低いため、界磁弱め特性をそれほど必要としない用途で使用されることが多い。従って、本発明の界磁電流制御を行うことにより界磁制御性能を大幅に向上し、今まで使用できなかった領域での活用を期待できる。
次に、ロータの受電巻線と界磁巻線の配置結線図を図33に示し説明する。このロータは、図1、図3、図18、図29、図34、図35などに示したロータの受電巻線と界磁巻線である。図33はロータ表面の円周方向形状を直線状に展開した展開図である。図33の水平軸はロータの円周方向の電気角であり、4極のロータなので0°から720°までを示している。図33の(a)に示す337と33BはロータのN極磁極で、339と33DはS極磁極である。亀甲型コイル33Fは巻線ピッチが電気角で360°の受電巻線JD1であり、図1のコイルエンド27に相当し、図3の受電巻線38に相当する。一方、ステータ側のU相、V相、W相の巻線の電流で励磁される電気角で360°周期の起磁力は、電気角で360°の間の起磁力の総和は原理的に零である。従って、この受電巻線JD1の出力端子333と334には、ステータ側のU相、V相、W相の巻線の(7)式の電流Iu、Iv、Iwで励磁される360°周期の起磁力の影響を原理的に受けない。亀甲型コイル33Gも巻線ピッチが電気角で360°の受電巻線JD2であり、図1のコイルエンド28に相当し、図3の受電巻線3Aに相当する。この受電巻線JD2は亀甲型コイル33Fの受電巻線JD1に対して電気角で180°の円周方向位相差となるように配置している。受電巻線JD2の出力端子は335、336である。
受電巻線の巻線ピッチが電気角で360°であれば、ステータの3相電流の影響を受けないことについて説明したが、受電巻線の巻線ピッチが電気角で360°の2倍、3倍などの整数倍であってもステータの3相電流の影響を受けない。この場合でも、ステータ側の給電電流によりロータ側の受電巻線へ界磁電力を供給することができる。また、受電巻線の巻線ピッチが電気角で360°前後の値であれば同様の効果を得ることができる。これらも本発明に含むものである。
次に、受電巻線JD1、JD2に誘起する電圧について説明する。図32は後に詳しく説明するタイムチャートであり、これらの波形を使用して説明する。今、図30の端子701から端子702へ給電電流成分If2が流れていて、その電流波形が図32の(e)であったとする。そして、図30の巻線の配置結線図に示すスロット1とスロット7が、図33のロータの亀甲型コイル33Fと対向する位置にロータ回転位置があった場合、亀甲型コイル33Fの出力端子333と334へは図32の(f)に示すVrc1の電圧が発生する。その時、受電巻線JD2は給電電流If2が生成する電気角で720°周期の磁束の位相とは電気角で180°位相差が発生するロータ回転位置にあるので、335と336の受電巻線JD2の出力端子には図32の(g)のVrc2のように電圧が発生しない。
このロータ回転位置からロータを回転させると、回転位置に同期して前記Vrc1の振幅が減少し、前記Vrc2の振幅が増加する。ロータ回転位置が電気角で180°回転した位置では、前記Vrc1の電圧が零となり、零であった前記Vrc2の電圧が図32の(f)のように最大値となる。このようにロータ回転位置により、受電巻線JD1と受電巻線JD2のどちらかへ給電電流If2による電圧が発生する。
前記Vrc1の電圧は図3の全波整流器39により直流電圧に整流され、前記Vrc2の電圧は図3の全波整流器3Bにより直流電圧に整流され、全波整流器39の出力と全波整流器3Bの出力の合計が界磁巻線3C、3D、3E、3Fに印加され、界磁電流Ifが通電する。界磁電流Ifの波形は、図32の(i)に示す界磁電流Ifの推定値Ifsのような平滑された波形である。前記全波整流器と前記界磁巻線で構成する界磁回路の時定数は、例えば100msecというような大きな時定数であり、前記全波整流器の出力が500Hzの2倍の周波数の脈動電圧成分を持っていても、それは十分に平滑される。これらの界磁巻線3C、3D、3E、3Fは、図33の亀甲型コイル338、33A、33C、33Eに相当する。界磁電流Ifは図33の端子331と332から通電する。
図33の(b)は、図33の(a)の変形例であり、亀甲型コイル33Mと33Nとを直列に接続して前記亀甲型コイル33Fと等価な磁束鎖交を行う受電巻線を実現している。なお、図33の(a)の亀甲型コイル33Gと33Jに相当する図33の(b)の受電巻線は配置結線図が複雑で見難くなるので省略している。図33の(b)の構成の特徴は亀甲型コイルをロータ磁極のピッチで製作できるので、ロータ巻線の製作性が良い点である。図33の(b)のように、等価的に巻線ピッチが360°の整数倍となるような受電巻線の構成も本発明に含むものである。なお、図33の(b)の方は重複する巻線部分があるので不利なようだが、受電巻線の巻き回数は界磁巻線の巻き回数に比較して格段に少ないので、受電巻線の巻線スペースの問題は少なく、トータルでどちら良いかを評価すれば良い。
次に、請求項8の実施例について説明する。図3にU1相巻線31、U2相巻線32を示したが、両巻線は界磁電力をステータ側からロータ側へ供給する給電巻線をも兼ねている。図3の矢印3Gに示す交流電圧、交流電流If2を供給すると、ロータ側の界磁巻線3C、3D、3E、3Fへ界磁電流Ifが通電されることを示した。そして、U1相電流Iu1とU2相電流Iu2と図3の3Gである給電電流If2の関係は(8)式、(9)式より次の(23)式となる。
If2=(Iu1−Iu2)/2 (23)
U1相電流Iu1は図3のIGBTであるT1とT2で駆動して通電し、U2相電流Iu2は図3のIGBTであるT3とT4で駆動して通電する。
次に、少し詳しい動作を説明するため、図31のブロックダイアグラムを示す。また、図32は図31の各部の信号、電流を示すタイムチャートであり、合わせて説明する。図31は図1、図37などのモータ739を速度制御するブロックダイアグラムであり、一般的な3相交流モータの速度制御装置に対して次の3点を追加している。一つは、図3に示すように4個の電流を駆動できるように、IGBTの数が6個から8個へ増加していて、電流検出器も増加している。2つ目は、界磁電力成分である給電電流If2を制御するための一点鎖線で示した74Lの給電電流制御部を追加している。三つ目は、(8)式で示すU1相電流の中のU相電流成分と(9)式で示すU2相電流の中のU相電流成分とのアンバランス量を補正するアンバランス補償部を追加している。アンバランス補償部は一点鎖線で示す74Mである。
73Aは本発明モータ739に機械的に接続されたロータ位置検出器であり、その出力信号は、そのインターフェイス74Eへ接続し、速度信号742と回転位置信号74Fを出力する。738は図3の8個のIGBTであるT1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8で構成する4相インバータであり、U1相電流Iu1、U2相電流Iu2、V相電流Iv、W相電流Iwを出力する。73Bは前記IGBTのT1、T2で駆動されるU1相電流Iu1を電流検出器74Wで検出した値Iu1s、73Cは前記IGBTのT3、T4で駆動されるU2相電流Iu2を電流検出器74Xで検出した値Iu2s、73Dは前記IGBTのT5、T6で駆動されるV相電流Ivを電流検出器で検出した値Iv1s、73Eは前記IGBTのT7、T8で駆動されるW相電流Iwを電流検出器で検出した値Iw1sである。73Gは(10)式より、Iu1sとIu2sよりU相電流検出値Iusを得る加算器である。74Gは固定座標のU、V、W軸信号を回転座標のd、q軸へ変換する変換器で、74Aはq軸電流Iqs、74Bはd軸電流Idsである。
741はモータの速度指令で、加算器743は速度指令741から速度信号742を減算してフィードバックし比例積分器744へ出力する。748は界磁制御情報であり、界磁制御モードなどの情報である。界磁制御部747は速度信号742を入力し、d軸電流指令Idcである74Uと、界磁電流指令Ifcである74Vを出力する。745はq軸電流指令Iqcからq軸電流Iqsを差し引いてフィーバックする加算器で、その出力は比例積分器746へ出力し、q軸電圧指令Vqcが出力される。749はd軸電流指令Idcからd軸電流Idsを差し引いてフィーバックする加算器で、その出力は比例積分器749へ出力し、d軸電圧指令Vdcが出力される。74Dは回転座標のd、q軸信号を固定座標のU、V、W軸信号へ変換する変換器でその出力741はU相電圧指令Vuc、出力732はV相電圧指令Vvc、出力733はW相電圧指令Vwcである。737はパルス幅変調器で、U1相のゲート信号、U2相のゲート信号、V相のゲート信号、W相のゲート信号を前記4相インバータ738へ出力する。
次に、前記給電電流制御部74Lでは、加算器73FがU1相電流の検出値Iu1sとU2相電流の検出値Iu2sとの差である給電電流検出値の2倍の値If2s×2を、(8)式、(9)式に基づいてもとめる。演算器731でIf2s×2を2で割り、その絶対値を計算して界磁電流推測値Ifsを求める。界磁変動指令部74Tの出力74Zが零の時、加算器の出力74Yは界磁電流指令Ifcと同じであり、加算器73Mで界磁電流推測値Ifsを差し引いてフィードバックし、比例積分器73Nへ出力する。74Sは+1と−1の大きさの矩形波で、例えば、500Hz矩形波を発生する。73Pは乗算器で、比例積分器73Nの出力である界磁電圧指令Vfcと前記矩形波を乗算し、給電電圧指令Vf2cを出力する。加算器735はU相電圧指令Vucと界磁電圧指令Vfcとを加算し、U1相電圧指令Vu1cを出力する。加算器736はU相電圧指令Vucと界磁電圧指令Vfcとを減算し、U2相電圧指令Vu2cを出力する。以上の動作により、前記4つの相の電圧と電流を制御し、界磁電流Ifを制御する。
図33のタイムチャートで界磁電流に関わる信号を示す。今、U相電圧指令Vucがある一定値で図32の(a)はの値であると仮定する。また、比例積分器73Nの出力である界磁電圧指令Vfcがある一定値であると仮定して、図32の(b)の給電電圧指令Vf2cを出力する。500Hzに交流化されている。先に述べたように、周波数を可変しても良い。U1相電圧指令Vu1cはU相電圧指令Vucと給電電圧指令Vf2cの和であり、図32の(c)となる。U2相電圧指令Vu2cはU相電圧指令Vucと給電電圧指令Vf2cの差であり、図32の(d)となる。これらの指令で通電すると、それらの差分で給電電流If2が通電されるので、加算器73Gの出力の1/2である給電電流検出値If2sは図32の(e)となる。演算器73Jの出力である界磁電流推測値Ifsは図32の(i)となる。界磁電流指令Ifcに対して前記界磁電流推測値Ifsは加算器73Mで減算され、フィードバックされる。
一方、この時ロータ側の動作は、例えばモータ739が図29,図30のモータであって、図30の巻線の配置結線図に示すスロット1とスロット7が、図33のロータの亀甲型コイル33Fと対向する位置にロータ回転位置があった場合、亀甲型コイル33Fの出力端子333と334へは図32の(f)に示すVrc1の電圧が発生する。その時、受電巻線JD2は給電電流If2が生成する電気角で720°周期の磁束の位相とは電気角で180°位相差が発生するロータ回転位置にあるので、335と336の受電巻線JD2の出力端子には図32の(g)のVrc2のように電圧がほとんど発生しない。前記したように、このロータ回転位置からロータを回転させると、回転位置に同期して前記Vrc1の振幅が減少し、前記Vrc2の振幅が増加する。
アンバランス補償部74Mは、U1相電流Iu1とU2相電流Iu2のそれぞれのU相電流成分がアンバランスにならないようにフィードバック制御する。73Hは回転座標形から固定座標形に変換してU相電流指令Iucを出力する。加算器74PはIuc/2と給電電流指令If2cを加算してU1相電流指令Iu1cを作成する。加算器74Qは前記U1相電流指令Iu1cからU1相電流検出値Iu1sを減算し、フィードバックしてU1相電流に含まれるU相電流成分のアンバランス量を求め、そのアンバランス量をU1相電圧指令に加え、U2相電圧指令から減ずることによりアンバランス量を補償制御する。(8)式、(9)式を精度良く成立させるためには、アンバランス補償部74Mが効果がある。
このようにして給電電流If2を検出し、界磁電流Ifの推測値Ifsの値を計算して求め、界磁電流Ifを制御することができる。その結果、モータを高トルクで駆動したり、界磁弱め制御で高速回転まで回転領域を広く駆動することができるようになる。そして、非接触で容易に界磁電力をロータ側へ供給できるので、モータの高効率化、小型化、低コスト化の面でも優れている。なお、図31では、給電電流If2を通電するために、加算器73Mなどを使用したフィードバック構成の例について説明したが、もっと単純に給電電流If2を駆動しても良い。例えば、U1相の駆動電圧とU2相の駆動電圧に単純に交流電圧を重畳するだけでも良い。給電経路の伝達関数が比較的単純であれば、重畳する交流電圧にほぼ比例して給電電流If2を通電することができる。
次に、請求項9の実施例について説明する。図36は、給電電流If2を専用に通電する給電巻線PSWSを付加するモータの例を示す巻線の配置結線図である。図36は図30などの巻線の配置結線図と同様の記載方法で示している。亀甲型コイル72Cとは、電気角で360°の巻線ピッチである。亀甲型コイル726、727、728、729はU相巻線である。図36の紙面で下側に示すV相巻線およびW相巻線は、図30の紙面で下側に示すV相巻線およびW相巻線と同じである。給電巻線72Cは、それらの入力端子72A、72Bへ交流の給電電流If2を通電することにより、円周方向に電気角で360°幅の磁束PSWFをステータとロータ間に作り出す。ロータ側の電気角で360°ピッチで位相差が電気角で180°の2個の受電巻線は、2個の受電巻線の組み合わせで前記磁束PSWFを受け取ることができるように構成している。なお、前記磁束PSWFは円周方向に電気角360°幅であり、その周期は電気角720°であるとも言える。
このように、給電巻線PSWSを設けることにより、自由な場所に前記磁束PSWFを生成できるので、モータ構造にもよるが、相対的に効率よく界磁電力を供給することができる。また、給電電流とモータの相電流が分離されるので、電流駆動の面で簡素化できる。なお、このように専用の給電巻線PSWSである72Cを設け、通常の3相巻線とは独立して構成するので、巻線の数は増加し、給電電流If2専用の駆動回路が必要となり、その点では複雑になる。しかし、その反面、図30などの構成に比較し、3相巻線への負担を軽減し、図3に示すインバータへの負担を軽減できるという特徴がある。また、給電電流If2の大きさは、モータサイズにもよるが、相電流最大値に較べて1/10以下であり、給電巻線PSWSのスペース的な負担は小さい。また、給電巻線PSWSは、モータの相巻線と一部の巻線を共用するなど、巻線および駆動回路の簡素化の工夫もできる。
次に、請求項10の実施例について説明する。図37は、5相、4極、スロット数は10,巻線ピッチは144°の短節巻きの5相モータである。図37の350はステータコアであり、スロットの数は10個で、図10に示す全節巻きスロットの半分の数である。電気角で0°から720°までを表現して、352と355は電気角0°と144°の位置のスロットへ巻回するA1相巻線、354と357は電気角72°と216°の位置のスロットへ巻回するB相巻線、356と359は電気角144°と288°の位置のスロットへ巻回するC相巻線、358と35Bは電気角216°と360°の位置のスロットへ巻回するD相巻線、35Aと35Dは電気角288°と72°の位置のスロットへ巻回するE相巻線、35Cと35Fは電気角360°と504°の位置のスロットへ巻回するA2相巻線、35Eと35Hは電気角432°と576°の位置のスロットへ巻回するB相巻線、35Gと35Kは電気角504°と648°の位置のスロットへ巻回するC相巻線、35Jと351は電気角576°と720°の位置のスロットへ巻回するD相巻線、35Lと353は電気角648°と72°の位置のスロットへ巻回するE相巻線である。ロータ1Eは図1などの他のモータと同様であり、本発明に示す各種ロータを使用することができる。
図37の5相モータの巻線の配置結線図を図38に示す。368の亀甲型コイルはA1相巻線で、A1相端子361からA1相電流Ia1を通電する。369の亀甲型コイルはA2相巻線で、A2相端子362からA2相電流Ia2を通電する。36A、36Eの亀甲型コイルはB相巻線で、B相端子363からB相電流Ibを通電する。36B、36Fの亀甲型コイルはC相巻線で、C相端子364からC相電流Icを通電する。36C、36Gの亀甲型コイルはD相巻線で、D相端子365からD相電流Idを通電する。36D、36Hの亀甲型コイルはE相巻線で、E相端子366からE相電流Ieを通電する。5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順として、この相順通りに円周方向に巻線を配置している。各相巻線の他端は星形結線の中性点である367へ接続する。そして、前記各相の電流は図11で示した方法で通電し、5相モータを駆動することができる。
図37、図38の5相モータの特徴は、巻線ピッチを電気角で144°の短節巻きとすることにより、コイルエンド部での他相の巻線との交差を減らし、コイルエンド部の巻線構造を簡素化することである。図37のスロットの数は10個で、図10に示す全節巻きスロットの半分の数であり、各スロットに二つの相の巻線を巻回している。スロット間に巻回される巻線の数は10個で、図14に示す巻線の数は同じである。スロット間に巻回される巻線がコイルエンド部で他相の巻線と交差する回数も半分になる。図10のモータに比較して、コイルエンド部の巻線交差を大幅に簡素化できるので、モータの小型化と生産性の果然ができる。機能的には、図10に示す全節巻き5相モータと同様に、d軸電流制御による界磁弱め、強め制御が可能である。なお、図37の5相モータに前記給電巻線PSWSを適切なスロットへ巻回し、A1相巻線とA2相巻線へはA相電流だけを通電する構成とすることもできる。
次に、請求項11の実施例について説明する。図39は、5相、8極、スロット数は10,巻線は集中巻きの5相モータである。巻線ピッチは144°となる。電気角で0°から1440°までを表現して、395は電気角0°と144°の位置のスロットへ巻回するA1相巻線、396は電気角144°と288°の位置のスロットへ巻回するC相巻線
397は電気角288°と432°の位置のスロットへ巻回するE相巻線、398は電気角432°と576°の位置のスロットへ巻回するB相巻線、399は電気角576°と720°の位置のスロットへ巻回するD相巻線、39Aは電気角720°と864°の位置のスロットへ巻回するA2相巻線、39Bは電気角864°と1008°の位置のスロットへ巻回するC相巻線、39Cは電気角1008°と1152°の位置のスロットへ巻回するE相巻線、39Dは電気角1152°と1296°の位置のスロットへ巻回するB相巻線、39Eは電気角1296°と1440°の位置のスロットへ巻回するD相巻線である。5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順として、このモータの巻線は相順通りに円周方向に配置していない。ロータ1Eは図1などの他のモータと同様であり、本発明に示す各種ロータを使用することができる。そして、前記各相の電流は図11で示した方法で通電し、5相モータを駆動することができる。
図39の5相モータの特徴は、巻線が集中巻きであること、巻線ピッチが電気角で144°と適度に大きく巻線係数が0.95と大きいことである。集中巻きモータは、巻線の製作性に優れていて、巻線のコイルエンド長を短くできること、巻線占積率を高くできること、巻線の自動巻化/高速化できることなどで優位性がある。そのため、モータの高性能化、小型化、低コスト化を実現できる。反面、従来の集中巻き巻線は、図10に示す全節巻き5相モータのように、d軸電流制御による界磁弱め、強め制御をステータ巻線で行うことは難しいという問題があった。しかし本発明では、ステータ側から界磁電流制御を行うことができるので、低速回転での大トルクの実現、高速回転まで回転領域を広げた駆動が可能となる。なお、図37の5相モータに前記給電巻線PSWSを適切なスロットへ巻回し、A1相巻線とA2相巻線へはA相電流だけを通電する構成とすることもできる。
次に、請求項12の実施例について説明する。図41は、5相モータ内の1相であるA相の電圧と5相の合計のモータの出力パワーを示す図である。水平軸は時間であるが、正弦波1周期の時間を360の目盛りを付けて示している。縦軸は、電圧とパワーの両方を示している。402は振幅が1のA相の正弦波電圧Vaである。今、A相電流Iaも振幅が1でその波形形状が前記Vaと同じであるとする。同様に、B相は位相がA相より72°遅れたB相電圧Vb、B相電流Ibで、C相は位相がB相より72°遅れたC相電圧Vc、C相電流Icで、D相は位相がC相より72°遅れたD相電圧Vd、B相電流Idで、
E相は位相がD相より72°遅れたE相電圧V、B相電流Ieであるとする。図13に示す5相正弦波電流と同様の形状である。この時の5相なパワーP5は下式のように2.5となる。図41の405である。
P5=Va・Ia+Vb・Ib+Vc・Ic+Vd・Id+Ve・Ie=2.5
図12では、5相なパワーP5を前記の2.5から4.0まで高めるために、矩形波化および台形波化の技術を示した。ここでは、正弦波に3次高調波を加える方法について説明する。図41の401は、3次高調波でその振幅は0.12である。正弦波402と3次高調波を加えた値は403となり、その波高値は0.89で、波高値の近傍は平坦な形状となりほぼ一定値となる。今、インバータの電力素子であるIGBTの定格電圧、定格電流があり、ある許容値で使用することを想定すると、前記403の波形の電圧、電流で制御する場合、その波高値は0.88となるので余裕があり、無駄が発生する。従って、電圧、電流ともに、1/0.88=1.1364倍とすることが可能となる。
一方、3次高調波を含んだ5相の電圧、電流のパワーP6がどのような特性になるかを説明する。ここで、K3=0.12、K4=1/0.88=1.1364とする。
Va=Ia=K4{sin(wt)+K3×sin(3・wt)
Vb=Ib=K4{sin(wt−72°)+K3×sin(3・wt−72°)
Vc=Ic=K4{sin(wt−144°)+K3×sin(3・wt−144°)
Vd=Id=K4{sin(wt−216°)+K3×sin(3・wt−216°)
Ve=Ie=K4{sin(wt−288°)+K3×sin(3・wt−288°)
とすると、パワーP6は次式となる。
P6=Va×Ia+Vb×Ib+Vc×Ic+Vd×Id+Ve×Ie
この式のA、B、C、D、E相の5項は、それぞれが基本波の二乗式の項、基本波と3次高調波の積の項、3次高調波の二乗の項の3項の式となる。基本波の二乗式の項の5相分の和は、1.1364×1.1364×2.5=3.2285となり、基本波と3次高調波の積の項の5相分の和は零となり、3次高調波の二乗の項の5相分の和は0.004649となる。この結果、5相のパワーP6は、図41の406であり、3.275となる。3次高調波を加えた電圧と電流で駆動することにより、インバータとモータの出力パワーを約31%増大できることになる。また、3次高調波を含む前記404の波形は、急峻な変化が無く滑らかな形状なので、大きな誤差を発生させずに各相の電流を比較的高精度に制御することができる。
ここで、もう一つの課題は、5相モータの誘起電圧波形を図41の404のような3次高調波を含んだ波形に設計する必要がある。この点については、モータの構造から、設計経験上から、402の正弦波形状の誘起電圧特性より、404のやや台形状の誘起電圧特性の方が遙かに容易である。なお、3相モータにおいて、3次高調波を含んだ電流で駆動することは、3相の3次高調波の位相が揃ってしまうために不可能である。5相モータの場合は、各3次高調波の総和が零になるので、駆動電流の不都合はない。
次に、請求項13の実施例について説明する。電気自動車用の主機モータは、静止状態からの起動、坂道運転などがあり、低速で高トルクな状態でのセンサレス位置検出が可能なことがモータの必要条件となる。d軸とq軸でのインピーダンス差が小さい場合、また、高トルク時にモータが磁気飽和によりd軸とq軸でのインピーダンス差が小さなる場合などでは、モータ特性が問題となることがある。図1などに示すモータでは、ロータ表面が軟磁性体であり、d軸とq軸でのインピーダンス差が小さく、低速でのセンサレス位置検出が難しい。
図31の界磁制御部747の出力74Vの界磁電流指令Ifcは界磁電流Ifの大きさを指令する信号であり、界磁磁束の大きさを指令している。一方、界磁変動指令部74Tの出力74Zは、前記給電電流指令If2cより低周波の交流信号である。例えば、界磁電流指令Ifcが1.0の一定値で、前記交流信号74Zが加算器で加えられると、その出力74Yである変動付き界磁電流指令Ifpcは図32の(j)の様な波形となる。このように、例えば50Hz程度で界磁磁束が増減するような界磁電流の指令を作っている。
ロータの界磁電流が図32の(j)の様に増減すれば、ロータが静止している状態でも、各相の巻線に界磁磁束の増減に応じた電圧が誘起するので、ロータの磁極位置を検出することができる。そして、前記74Yの変動付きの界磁電流指令Ifpcの大きさが増加している時に、相巻線に発生する電圧が正か負かを判別して、そのロータ磁極がN極かS極かを検出することができる。以上のような方法で、ロータ磁極のセンサレス位置検出が可能である。勿論、ある程度の回転数以上であれば、従来のモータ誘起電圧検出によるセンサレス位置検出も可能である。また、両方法を併用することもできる。
以上本発明について説明したが、種々の変形、応用、組み合わせが可能である。例えば、4極のモータを8極に変形するなど、極数の変更ができる。外径側に第1のモータを配置し、内径側に第2のモータを配置し、合計2個のモータを配置して一体化したモータ構成が可能である。最も外径側に第1のロータを配置し、最も内径側に第2のロータを配置し、中間に第1のステータと第2のステータを配置した構成では、第1のステータの巻線と第2のステータの巻線とを相互に配線することによりトロイダル状の巻線とし、コイルエンド部などの大幅な簡素化が可能である。図8のロータなどにおいて、スリット状の空隙部83にロータ磁極の磁束方向とは垂直な磁化方向を持つ永久磁石を配置することもできる。ステータのトルク電流による電機子反作用を軽減することができる。また、空隙部83に非磁性体である樹脂などを充填して強化する、あるいは、振動の減衰を図ることなども可能である。図8のロータの遠心力に対する強化策として、積層している電磁鋼板の一部を、空隙部83の無い非磁性のステンレス板などに置き換えることもできる。この場合、積層電磁鋼板とステンレス板とを接着剤などにより連結する。また、種々のロータを本発明モータに使用することができる。また、本発明モータを発電機として作用させることもできる。また、巻線の種類としてアルミ線などを使用することもでき、限定しない。軟磁性体も電磁鋼板だけでなく、圧分磁心など種々の材料が使える。また、永久磁石も種々のもが使用でき、使用時に磁石の強さを可変することも可能である。モータ用電流で磁石を可変する、あるいは、専用の着磁、減磁、脱磁の装置の付加も可能である。
11、14、17、1A U相巻線
13、16、19、1C V相巻線
15、18、1B、11 W相巻線
1D ステータ
1E ロータ
1F ロータ軸
1J、1K 界磁巻線
1Z、1M 界磁巻線
1Q、1R 界磁巻線
1G、1T 界磁巻線
1H、1P 受電巻線
1L、1S 受電巻線
1V、1X N極磁極
1W、1Y S極磁極

Claims (13)

  1. 4極以上であるPN極であって、3相以上のMN相のステータとロータを有する交流モータに関して、
    QNは2以上の整数として、ステータの円周方向に電気角で360°のQN倍の周期の交流磁束の成分を励磁する給電巻線PSWと、
    RNはQN/2より小さい整数として、円周方向の巻線ピッチが(360°×RN)であって、界磁電力を受け取るロータの第1受電巻線PRW1と、
    円周方向の巻線ピッチが(360°×RN)であって、前記第1受電巻線PRW1とは異なる円周方向位置に配置した、界磁電力を受け取るロータの第2受電巻線PRW2と、
    ロータに配置していて、記第1受電巻線PRW1の出力を整流する整流器REC1と、
    ロータに配置していて、記第2受電巻線PRW2の出力を整流する整流器REC2と、
    ロータのN極磁極あるいはS極磁極あるいはそれらの両方に巻回した界磁巻線FMとを備え、
    前記整流器REC1の出力と前記整流器REC2の出力とを使用して前記界磁巻線FMへ界磁電流Ifを通電して前記N極磁極とS極磁極を励磁する
    ことを特徴とするモータ。
  2. 前記給電巻線PSWは、前記MN相の一つであるU相の複数個の巻線を含み、
    U相の巻線の一つである巻線U1Mと、
    電気角で(360°×QN)の円周方向範囲の中で、前記巻線U1Mとは異なる円周方向位置に配置するU相の巻線U2Mと、
    前記界磁巻線FMへ界磁電流Ifを通電するために必要なステータ側の交流の界磁励磁電流成分をIf2として、前記巻線U1MへU相電流成分Iu1に重畳して界磁励磁電流成分If2を通電する駆動部DRU1と、
    前記巻線U2MへU相電流成分Iu2に重畳して界磁励磁電流成分(−If2)を通電する駆動部DRU2と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  3. ロータの前記N極磁極あるいはS極磁極において、
    並行する複数の軟磁性体と、
    前記軟磁性体の間に挟まれた空隙あるいは樹脂あるいは永久磁石と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  4. 前記軟磁性体磁路とその磁束の方向に直列に配置する永久磁石
    を備えることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
  5. ステータに3相の星形結線の各相巻線を備え、
    各相の巻線の誘起電圧はロータの前記界磁巻線FMの界磁電流Ifに励磁される磁束成分などにより矩形波に近いほぼ台形状の誘起電圧波形で、
    ほぼ台形状の正と負の交流電流波形は、前記誘起電圧の正と負の電圧が反転する電気角の幅をθrrとして、
    前記のほぼ台形状の正あるいは負の電流が零から波高値の80%まで変化する幅の電気角をθstとして、(θrr+θst)≦60°である
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  6. ステータに5相の星形結線の各相巻線を備え、
    各相の巻線の誘起電圧はロータの前記界磁巻線FMの界磁電流Ifに励磁される磁束成分などにより矩形波に近い台形状などの誘起電圧波形で、
    ほぼ台形状の正と負の交流電流波形は、前記誘起電圧の正と負の電圧が反転する電気角の幅をθrrとして、前記のほぼ台形状の正あるいは負の電流が零から波高値の60%まで変化する幅の電気角をθsfとして、(θrr+θsf)≦36°で
    あることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  7. 5相で、極数は4極以上のPN極のモータであって、
    A相の巻線はステータの円周上の電気角で0°と180°の位置に配置し、
    B相の巻線はステータの円周上の電気角で72°と252°の位置に配置し、
    C相の巻線はステータの円周上の電気角で144°と324°の位置に配置し、
    D相の巻線はステータの円周上の電気角で216°と36°の位置に配置し、
    E相の巻線はステータの円周上の電気角で288°と216°の位置に配置し、
    2個のスロットに渡って巻回される各相それぞれの全節巻き巻線の数を(PN/2−1)以下とすることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  8. 前記駆動部DRU1により前記巻線U1Mへ通電する電流Iu1を検出する電流センサCT1と、
    前記駆動部DRU2により前記巻線U2Mへ通電する電流Iu2を検出する電流センサCT2と、
    前記電流センサCT1の出力であるIu1sと前記電流センサCT2の出力であるIu2sから、(2×If2s=Iu1s−Iu2s)としてステータ側の交流の界磁励磁電流成分の検出値としてIf2sを得る加算手段と
    を備えることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
  9. 前記給電巻線PSWはステータの円周方向に電気角で360°のQN倍の周期の交流磁束の成分を励磁するための界磁電力の給電巻線PSWSである
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  10. 4極の整数倍の極数の5相のモータであって、
    5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順として、ステータの各相巻線の円周方向位置を電気角で0°から720°の範囲について記述し、電気角で0°のスロットと電気角で144°のスロットへ巻回するA相巻線と、
    同様に、電気角で72°のスロットと気角で216°のスロットへ巻回するB相巻線と、
    同様に、電気角で144°のスロットと電気角で288°のスロットへ巻回するC相巻線と、
    同様に、電気角で216°のスロットと電気角で360°のスロットへ巻回するD相巻線と、
    同様に、電気角で288°のスロットと電気角で72°のスロットへ巻回するE相巻線とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  11. 8極の整数倍の極数の5相のモータであって、
    5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順として、ステータの各相巻線の円周方向位置を電気角で0°から1440°の範囲について記述し、電気角で0°のスロットと電気角で144°のスロットへ巻回する集中巻きのA相巻線と、
    同様に、電気角で144°のスロットと気角で288°のスロットへ巻回する集中巻きのC相巻線と、
    同様に、電気角で288°のスロットと電気角で432°のスロットへ巻回する集中巻きのE相巻線と、
    同様に、電気角で432°のスロットと電気角で576°のスロットへ巻回する集中巻きのB相巻線と、
    同様に、電気角で576°のスロットと電気角で720°のスロットへ巻回する集中巻きのD相巻線と、
    同様に、電気角で720°から1440°の各スロットへ前記同様に巻回するA相巻線、C相巻線、E相巻線、B相巻線、D相巻線と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  12. 5相交流の相順をA相、B相、C相、D相、E相の順とする5相の交流モータであって、
    A相電圧は正弦波電圧にその正弦波周波数の3倍の3次高調波電圧を含む電圧で、
    B相電圧はA相電圧とC相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、
    C相電圧はB相電圧とD相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、
    D相電圧はC相電圧とE相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、
    E相電圧はD相電圧とA相電圧に対して72°の位相差を持ったA相電圧同様の電圧で、 A相電流は正弦波電流にその正弦波周波数の3倍の3次高調波電流を含む電流で、
    B相電流はA相電流とC相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流で、
    C相電流はB相電流とD相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流で、
    D相電流はC相電流とE相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流で、
    E相電流はD相電流とA相電流に対して72°の位相差を持ったA相電流同様の電流であることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  13. 前記界磁巻線FMへ界磁電流Ifを通電するために必要なステータ側の交流の界磁励磁電流成分をIf2として、前記給電巻線PSWへ通電する前記界磁励磁電流成分If2を増加、減少して可変することにより前記界磁電流Ifを増減して、
    その時のステータの各相巻線の端子間に電磁誘導作用で誘起する電圧成分の変化を検出してロータの回転位置を検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ。


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