本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態に係る手書入力システム1の概要を説明する。以下の説明では、便宜的に、図1の左上側、右下側、上側、下側、右上側、左下側が、各々、読取装置2の左側、右側、前側、後側、上側、下側である。
図1に示すように、手書入力システム1は、読取装置2、電子ペン3、PC19等を含む。読取装置2は、折り畳んで携行可能な、薄型軽量の手書き入力装置である。手書入力システム1では、ユーザは電子ペン3を用いて、読取装置2に固定された紙媒体100の用紙111に、線画によって情報を記入する。線画は、文字、数値、記号、及び図形等を含む。読取装置2は、電子ペン3の位置を検出する。読取装置2は、経時的に検出された電子ペン3の複数の位置に基づいて、電子ペン3の軌跡を特定する。
図2に示すように、読取装置2は、左右一対の読取部2L,2R、フラットケーブル6、及びカバー4を含む。読取部2L,2Rは、いずれも矩形薄板状であり、カバー4の前面に左右方向に見開き可能に配置されている。読取部2L,2Rは、フラットケーブル6によって電気的に接続されている。読取部2Lは、カバー4の左側に設けられている袋部4Aの内側に収容される。読取部2Rは、例えば両面テープによって、カバー4の右前面に貼り付けられる。読取部2Rの上端に、3つのLEDを有する表示部5が設けられている。表示部5は、複数パターンの表示状態を切り替え可能である。表示部5の表示状態によって、読取装置2の状態をユーザに通知可能である。
図1に示すように、紙媒体100は、左右方向に見開き可能な冊子状である。紙媒体100では、一対の表紙110L,110Rと複数の用紙111が、各々の縁部の一部で綴じられている。紙媒体100は、読取装置2の前面に着脱可能である。表紙110Lが読取部2Lの上面に載置され、且つ、表紙110Rが読取部2Rの上面に載置されるように、紙媒体100は読取装置2に装着される。表紙110L,110Rは各々、例えば両面テープによって、読取部2L,2Rに貼り付けられる。読取部2L,2Rは各々、表紙110L,110Rと一体的に移動可能である。
ユーザは電子ペン3を用いて、読取装置2に装着された紙媒体100の用紙111に情報を記入できる。本実施形態では、用紙111の右下部分に、保存チェックボックス111Aが印刷されている。保存チェックボックス111Aは、ユーザが用紙111に記入した情報を確定する場合に、チェックマークを入力するための領域である。
電子ペン3は、公知の電磁誘導式の電子ペンであり、略円筒状の筒体30を有する。筒体30の内部に、芯体31の一部、コイル32、可変容量コンデンサ33、基板34、コンデンサ35、及びインク収納部36が収容される。芯体31は、電子ペン3の先端部に設けられている。芯体31は図示外の弾性部材によって、電子ペン3の先端側に付勢されている。芯体31の先端部は、筒体30の外部に突出している。芯体31の後端側は、インクを収納するインク収納部36に接続されている。インク収納部36は、芯体31にインクを供給する。ユーザが電子ペン3を用いて用紙111に記入すると、インクによって用紙111に線画が形成される。
コイル32は、インク収納部36の周囲に巻回された状態で、芯体31と可変容量コンデンサ33との間に保持されている。可変容量コンデンサ33は、基板34によって電子ペン3の内部に固定されている。基板34には、コンデンサ35が搭載されている。コンデンサ35及び可変容量コンデンサ33はコイル32に並列に接続され、周知の共振(同調)回路を構成する。
PC19は、汎用のパーソナルコンピュータであり、入力部191及びディスプレイ192を含む。PC19は、読取装置2で特定された電子ペン3の軌跡のデータ(以下、線画データという。)に基づいて、用紙111に記入された線画を電子化する。これにより、用紙111に記入された情報を示す画像ファイルが作成される。
図3を参照して、手書入力システム1の電気的構成を説明する。読取装置2は、表示部5、センサ基板7L,7R、メイン基板20、及びセンサ制御基板28,29を備える。センサ基板7L,7Rは、夫々、読取部2L,2Rの内部に設けられる。メイン基板20は、CPU21、RAM22、フラッシュROM23、及び無線通信部24を備える。CPU21は、読取装置2の制御を行う。RAM22は、演算データ等の各種データを一時的に記憶する。フラッシュROM23は、CPU21が読取装置2を制御するために実行する各種プログラムを記憶する。フラッシュROM23は、線画データを記憶する。無線通信部24は、外部の電子機器と近距離無線通信を実行するためのコントローラである。
センサ基板7L,7Rに、X軸方向及びY軸方向の各々に細長いループコイルが多数配列されている。センサ基板7Lは、センサ制御基板28のASIC28Aに電気的に接続されている。センサ基板7Rは、センサ制御基板29のASIC29Aに電気的に接続されている。ASIC28A,29Aのうち、マスター側のASIC28AはCPU21に直接接続され、スレーブ側のASIC29AはASIC28Aを介してCPU21に接続されている。
線画データが取得される原理を、概略的に説明する。CPU21はASIC28A,29Aを制御して、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルに、一本ずつ特定の周波数の電流(励磁用送信電流)を流す。これにより、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルから磁界が発生する。この状態で、例えばユーザが電子ペン3を用いて、読取装置2に固定された紙媒体100の用紙111に線画を記入する動作を行うと、電子ペン3はセンサ基板7L,7Rに近接する。そのため、電子ペン3の共振回路は電磁誘導によって共振し、誘導磁界を生じる。
次に、CPU21はASIC28A,29Aを制御して、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルからの磁界の発生を停止させる。センサ基板7L,7Rの各々のループコイルは、電子ペン3の共振回路から発せられる誘導磁界を受信する。CPU21はASIC28A,29Aを制御して、センサ基板7L,7Rの各々のループコイルに流れる信号電流(受信電流)を検出させる。ASIC28A,29Aがこの動作を全てのループコイルについて一本ずつ実行することで、受信電流に基づいて電子ペン3の位置が座標情報として検出される。
電子ペン3を用いて用紙111に線画が記入されている状態では、芯体31に筆圧が付与される。コイル32のインダクタンスは、芯体31に付与される筆圧に応じて変化する。これにより、芯体31に付与される筆圧に応じて、電子ペン3の共振回路の共振周波数が変化する。CPU21は、共振周波数の変化(位相変化)を検出して、電子ペン3に付与された筆圧を特定する。CPU21は、特定した筆圧によって、用紙111に線画が記入されている状態であるか否かを判断できる。
つまり、CPU21は、用紙111に線画を記入している電子ペン3を検出している場合、用紙111に線画が記入されている状態(以下、ペンダウン)であると判断する。CPU21は、用紙111に線画を記入している電子ペン3を検出していない場合、用紙111に線画が記入されていない状態(以下、ペンアップ)であると判断する。CPU21は、ペンダウンを検知した場合、電子ペン3の軌跡を示す線画データを取得し、RAM22に一時記憶する。線画データは、軌跡上の複数の位置を示す複数の座標情報を含む。
本実施形態では、CPU21は線画データが示す線画の位置に基づいて、保存チェックボックス111A(図1参照)にチェックマークが入力されたか否かを判断できる。CPU21は、保存チェックボックス111Aにチェックマークが入力されたと判断した場合、RAM22に一時記憶されている線画データを、フラッシュROM23に保存する。これにより、用紙111に記入された情報を示す複数の線画データが、フラッシュROM23に用紙111毎に記憶される。
PC19は、CPU41,ハードディスクドライブ(HDD)42、RAM43、無線通信部44、入力回路45、出力回路46、入力部191、及びディスプレイ192を含む。CPU41は、PC19の制御を行う。HDD42は、CPU41が実行する各種プログラムを記憶する。RAM43は、種々の一時データを記憶する。無線通信部44は、外部の電子機器と近距離無線通信を実行するためのコントローラである。入力回路45は、CPU41へ入力部191からの指示を送る制御を行う。出力回路46は、CPU41からの指示に応じてディスプレイ192に画像を表示する制御を行う。
CPU41は、読取装置2から線画データを取得する指示が入力された場合、無線通信部44を介して読取装置2との間で近距離無線通信を実行する。読取装置2のフラッシュROM23に記憶されている線画データは、読取装置2からPC19に転送される。CPU41は、読取装置2から転送された線画データをRAM43に記憶する。CPU41は、RAM43に記憶した線画データに基づく画像に対して公知のOCR処理を実行することで、用紙111に記入された情報を取得できる。
図4及び図5を参照し、第一実施形態の表示制御処理を説明する。読取装置2の電源がONされた場合、CPU21がフラッシュROM23に記憶されたプログラムを実行することで、表示制御処理を開始する(後述の第二〜第四実施形態も同様)。
なお、CPU21は、読取装置2が電源ONされた場合、読取装置2にエラーが発生している場合を除いて、表示部5の表示状態を通常パターンに制御する(後述の第二〜第四実施形態も同様)。通常パターンは、読取装置2が電子ペン3による情報記入を待ち受ける状態(以下、待機状態)であることを示す、表示部5の表示状態である。例えば表示部5が通常パターンである場合、表示部5が有する3つのLEDがいずれも白色で発光する。ユーザは、通常パターンの表示部5を目視することで、読取装置2が待機状態であることを認識できる。
図4に示すように、第一実施形態の表示制御処理では、フラグdFLG、カウンタdCNT、及びディレイ時間DTが、RAM22に記憶される(S1)。フラグdFLGは、ペンアップが検知されたか否かを示すフラグである。カウンタdCNTは、ペンアップが検知された時点からの経過時間を示すカウンタである。ディレイ時間DTは、ペンアップが検知された時点から起算した、表示部5の表示状態を後述の記入報知パターンに切り替える経過時間を示す。
ステップS1では、ペンアップが検知されていないことを示す「False」が、RAM22のフラグdFLGに設定される。初期値「0」が、RAM22のカウンタdCNTに設定される。本実施形態では、ユーザが自由に設定した値(ユーザ設定値)が、フラッシュROM23に記憶されている。フラッシュROM23に記憶されているユーザ設定値が、RAM22のディレイ時間DTに設定される。なお、フラッシュROM23にユーザ設定値が記憶されていない場合、所定の初期値(例えば、0.5秒)がRAM22のディレイ時間DTに設定される。
次いで、RAM22のフラグdFLGが、ペンアップが検知されたことを示す「True」であるか否かが判断される(S3)。フラグdFLGが「True」である場合(S3:YES)、RAM22のカウンタdCNTが「0.1」加算される(S5)。RAM22のカウンタdCNTが、RAM22のディレイ時間DTよりも大であるか否かが判断される(S7)。カウンタdCNTがディレイ時間DTよりも大である場合(S7:YES)、RAM22のフラグdFLGが「False」に設定される(S9)。表示部5の表示状態が通常パターンに制御される(S11)。
フラグdFLGが「False」である場合(S3:NO)、先述したように受信電流及び位相変化に基づいて、ペンダウンを検知したか否かが判断される(S13)。カウンタdCNTがディレイ時間DT以下である場合(S7:NO)、又はステップS11の実行後も、ペンダウンを検知したか否かが判断される(S13)。ペンダウンが検知された場合(S13:YES)、RAM22のフラグdFLGが「True」であるか否かが判断される(S15)。フラグdFLGが「True」である場合(S15:YES)、RAM22のフラグdFLGが「False」に設定される(S17)。なお、ペンアップが検知されなかった場合(S13:NO)、処理はステップS3に戻る。
フラグdFLGが「False」である場合(S15:NO)、又はステップS17の実行後、表示部5の表示状態が記入報知パターンに制御される(S19)。記入報知パターンは、読取装置2が電子ペン3による情報記入を受け付けている状態(以下、記入中状態)であることを示す、表示部5の表示状態である。例えば表示部5が記入報知パターンである場合、表示部5が有する3つのLEDがいずれも赤色で点滅する。ユーザは、記入報知パターンの表示部5を目視することで、読取装置2が記入中状態であることを認識できる。
次いで、先述したように受信電流及び位相変化に基づいて、ペンアップを検知したか否かが判断される(S21)。ペンアップが検知された場合(S21:YES)、RAM22のフラグdFLGが「True」に設定され、且つRAM22のカウンタdCNTに「0」が設定される(S23)。ペンアップが検知されなかった場合(S21:NO)、処理がS21に戻ることによって、ペンアップの検知が待ち受けられる。なお、ステップS23の実行後、処理はステップS3に戻る。本実施形態では、0.1秒ごとに処理がステップS3に戻る。
第一実施形態の表示制御処理(図4参照)によって、表示部5の表示状態が次のように変化する。読取装置2が電源ONされた場合、表示部5はペンダウンされるまで通常パターンに制御される(S1、S3:NO、S13、NO)。ペンダウンされると、表示部5は通常パターンから記入報知パターンに変化する(S13:YES、S15:YES、S17、S19)。その後、ペンアップされると、カウンタdCNTのカウントアップが開始される(S21:YES、S23、S3:YES、S5)。カウンタdCNTのカウントアップは、再度ペンダウンされるまで継続される(S13:NO、S3:YES、S5)。
カウンタdCNTがディレイ時間DT(つまり、ユーザ設定値)に達する前にペンダウンされると、表示部5は記入報知パターンに制御されるため、表示部5は記入報知パターンから変化しない(S13:YES、S15:YES、S17、S19)。一方、ペンダウンされることなくカウンタdCNTがディレイ時間DTを超えると、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する(S7:YES、S9、S11)。この場合、表示部5はペンダウンされるまで通常パターンに制御される(S3:NO、S13、NO)。ペンダウンされると、表示部5は通常パターンから記入報知パターンに変化する(S13:YES、S15:NO、S19)。
図5は、ユーザが7回のペンダウンによって用紙111に情報を記入した場合における、表示部5の表示状態の変化を示している。本例では、ディレイ時間DTにユーザ設定値「0.5秒」が設定されている。ユーザが1回目のペンダウンを行うと、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する。1回目のペンアップ(0.3秒)は0.5秒以下であるため、表示部5は記入報知パターンから変化しない。同様に、2回目、4回目、5回目、及び6回目の各ペンアップも0.5秒以下であるため、表示部5は記入報知パターンから変化しない。
3回目のペンアップ(0.7秒)では、ペンアップから0.5秒を超えた時点で、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する。表示部5は、通常パターンが0.2秒継続したのち、4回目のペンダウンによって記入報知パターンに変化する。ユーザが7回目のペンダウンを行ったのち、0.5秒が経過すると、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する。
以上説明したように、第一実施形態によれば、読取部2L,2Rに配置された紙媒体100に情報を記入する電子ペン3の位置が検出される。検出された電子ペン3の軌跡を示す線画データが取得される。ペンアップからペンダウンに変化した場合、表示部5の表示状態が記入報知パターンに制御される。ペンダウンからペンアップに変化した時点からの経過時間(カウンタdCNT)がディレイ時間DTを超えた場合、表示部5の表示状態が通常パターンに制御される。
これによれば、電子ペン3が紙媒体100から離れる時間がディレイ時間DT未満となるように、ユーザが電子ペン3を用いて紙媒体100に情報が記入し続けている間、表示部5の表示状態は記入報知パターンから変化しない。ユーザにとって目障りになることを抑制しつつ、電子ペン3の記入状態に応じて表示部5の表示状態を変化させることができる。さらに第一実施形態では、ユーザの操作に応じて設定された値(ユーザ設定値)が、ディレイ時間DTに設定される(S1)。したがって、ユーザ毎に違和感を生じない最適なディレイ時間DTを、ユーザが自由に設定できる。
図6及び図7を参照し、第二実施形態の表示制御処理を説明する。第二実施形態の表示制御処理では、フラグdFLG、カウンタdCNT、及びディレイ時間DTが、RAM22に記憶される(S51)。ステップS51では、RAM22のフラグdFLGに、「False」が設定される。RAM22のカウンタdCNTに「0」が設定される。
本実施形態では、あらかじめ3パターンの設定値(Low、Mid、High)が、フラッシュROM23に記憶されている。Lowは、最も大きい設定値であり、例えば「0.7」である。Highは、最も小さい設定値であり、例えば「0.3」である。Midは、LowとHighとの間の設定値であり、例えば「0.5」である。ステップS51では、RAM22のディレイ時間DTに、Midが設定される。
ステップS51以降に実行されるステップS53〜S71の各処理は、第一実施形態のステップS3〜S21(図4参照)の各処理と同じであるため、説明を省略する。ステップS71の実行後、RAM22又はフラッシュROM23に記憶されている最新の線画データに基づいて、直前の筆記速度Lが取得される(S79)。直前の筆記速度Lは、最新の線画データが示す軌跡の筆記速度のうち、軌跡の末尾部分の筆記速度である。直前の筆記速度Lは、最新の線画データに含まれる、軌跡の末尾部分を示す複数の座標情報の座標間距離に基づいて算出すればよい。
具体的には、線画データは、均等な時間間隔(例えば、0.01秒)で取得された複数の座標情報を含む。最新の線画データに含まれる座標情報のうち、末尾の所定時間(例えば0.1秒)に取得された複数の座標情報に基づいて、時系列に隣り合う座標情報が示す座標間距離の平均値が算出される。 例えば最新の線画データが3.0秒間のペンダウンで記入された線画の軌跡を示す場合、ペンダウン末尾の0.1秒間に取得された複数の座標情報に基づいて、座標間距離の平均値(例えば、0.1mm)が算出される。算出された座標間距離の平均値「0.1mm」と、座標情報が取得される時間間隔「0.01秒」とに基づいて、直前の筆記速度L「秒速10mm」が算出される。
ステップS79で取得された直前の筆記速度Lが「高速」であるか否かが判断される(S81)。例えば直前の筆記速度Lが「秒速50mm」以上である場合、直前の筆記速度Lは「高速」であると判断される(S81:YES)。この場合、RAM22のディレイ時間DTに、Highが設定される(S83)。
ステップS79で取得された直前の筆記速度Lが「高速」でない場合(S81:NO)、直前の筆記速度Lが「低速」であるか否かが判断される(S85)。例えば直前の筆記速度Lが「秒速10mm」未満である場合、直前の筆記速度Lは「低速」であると判断される(S85:YES)。この場合、RAM22のディレイ時間DTに、Lowが設定される(S87)。
ステップS79で取得された直前の筆記速度Lが「低速」でない場合(S85:NO)、直前の筆記速度Lは「中速」である。この場合、RAM22のディレイ時間DTに、Midが設定される(S89)。ステップS83,S87,S89のいずれかの実行後、ステップS23と同じ処理が実行され(S91)、処理はステップS53に戻る。
第二実施形態の表示制御処理(図6参照)によって、表示部5の表示状態が次のように変化する。以下では、第一実施形態と異なる点を説明する。ペンダウンされた後にペンアップされると、直前の筆記速度Lに基づいて、Low、Mid、Highのいずれかがディレイ時間DTに設定される(S71:YES、S79〜S89)。カウンタdCNTがディレイ時間DT(つまり、Low、Mid、Highのいずれか)に達する前にペンダウンされると、表示部5は記入報知パターンから変化しない(S63:YES、S65:YES、S67、S69)。一方、ペンダウンされることなくカウンタdCNTがディレイ時間DTを超えると、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する(S57:YES、S59、S61)。
図7は、ユーザが7回のペンダウンによって用紙111に情報を記入した場合における、表示部5の表示状態の変化を示している。ユーザが1回目のペンダウンを行うと、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する。1回目のペンダウンでは、末尾の筆記速度(つまり、直前の筆記速度L)が「低速」である。したがって、直後に実行される1回目のペンアップでは、ディレイ時間DTは「Low」(0.7秒)に設定される。2回目、5回目、及び7回目のペンダウンについても同様である。
4回目のペンダウンでは、直前の筆記速度Lが「中速」である。したがって、直後に実行される4回目のペンアップでは、ディレイ時間DTは「Mid」(0.5秒)に設定される。6回目のペンダウンについても同様である。3回目のペンダウンでは、直前の筆記速度Lが「高速」である。したがって、直後に実行される3回目のペンアップでは、ディレイ時間DTは「High」(0.3秒)に設定される。
1回目のペンアップ(0.3秒)、2回目のペンアップ(0.1秒)、及び5回目のペンアップ(0.2秒)はいずれも0.7秒以下であるため、表示部5は記入報知パターンから変化しない。4回目のペンアップ(0.3秒)及び6回目のペンアップ(0.1秒)はいずれも0.5秒以下であるため、表示部5は記入報知パターンから変化しない。
3回目のペンアップ(0.7秒)では、ペンアップから0.3秒を超えた時点で、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する。表示部5は、通常パターンが0.4秒継続したのち、4回目のペンダウンによって記入報知パターンに変化する。ユーザが7回目のペンダウンを行ったのち、0.5秒が経過すると、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する。
以上説明したように、第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、ユーザにとって目障りになることを抑制しつつ、電子ペン3の記入状態に応じて表示部5の表示状態を変化させることができる。さらに第二実施形態では、最新の線画データに基づいて、電子ペン3の移動速度(直前の筆記速度L)が特定される(S79)。特定された移動速度に基づいて、ディレイ時間DTが設定される(S81〜S89)。したがって、ユーザの筆記速度に応じて、最適なディレイ時間DTを設定できる。
一般的に、記入する線画の末尾がトメである場合、人間は線画の末尾をしっかりと止めてから次の線画を書き始める。記入する線画の末尾がハネ又はハライである場合、人間は線画の末尾をしっかりと止めずに次の線画を書き始める。線画の末尾をしっかりと止めてから次の線画を書き始める場合、線画の末尾をしっかりと止めずに次の線画を書き始める場合よりも、次の線画を書き始めるまで所要時間が長くなりやすい。本実施形態では、直前の筆記速度Lが大きいほど、ディレイ時間DTが長くなる(S81〜S89)。したがって、ユーザが記入する線画の特性に応じて、最適なディレイ時間DTを設定できる。
図8及び図9を参照し、第三実施形態の表示制御処理を説明する。第三実施形態の表示制御処理では、フラグdFLG、カウンタdCNT、及びディレイ時間DTが、RAM22に記憶される(S101)。ステップS101では、RAM22のフラグdFLGに、「False」が設定される。RAM22のカウンタdCNTに「0」が設定される。RAM22のディレイ時間DTに、所定の初期値(例えば、0.5秒)が設定される。
ステップS101以降に実行されるステップS103〜S121の各処理は、第一実施形態のステップS3〜S21(図4参照)の各処理と同じであるため、説明を省略する。ステップS121の実行後、過去に取得された線画データに基づいて、後述する統計値Rが取得される(S123)。RAM22のディレイ時間DTに、統計値Rが設定される(S125)。その後、ステップS23と同じ処理が実行され(S127)、処理はステップS103に戻る。
ステップS79では、以下に説明するように、各種手法で統計値Rを取得可能である。第一の手法では、CPU21は、最新の線画データを取得するごとに、最新の線画データと直前の線画データとに基づいて、記入間隔時間を取得する。記入間隔時間は、直前の線画の記入が完了した時点から、最新の線画の記入を開始するまでの経過時間である。つまり、CPU21は、時系列に隣り合う二つの線画データ毎に、先に取得された線画データが示す軌跡の末尾が検出された時点から、後に取得された線画データが示す軌跡の先頭が検出された時点までの間隔時間を取得する。CPU21は、取得した全ての記入間隔時間の平均値を算出する。CPU21は、算出した平均値に「1.0以上」の係数(例えば、2.0)を乗算することで、統計値Rを取得する。
第二及び第三の手法では、CPU21は、フラッシュROM23に記憶されている統計テーブル90に基づいて、統計値Rを取得する。図9に示すように、統計テーブル90は、範囲、クラス、頻度を対応付けて記憶する。範囲は、所定の時間幅(本例では、1秒間)を、所定の時間単位(本例では、0.1秒単位)で区切った時間幅である。クラスは、範囲が定める時間幅の中央値である。CPU21は最新の線画データを取得するごとに、記入間隔時間を取得する。CPU21は、統計テーブル90において、取得した記入間隔時間が該当する範囲を特定し、特定した範囲に対応する頻度を「1」加算する。
第二の手法では、CPU21は、統計テーブル90を参照して、最も大きい頻度に対応するクラスを特定する。CPU21は、特定したクラスに「1.0以上」の係数(例えば、2.0)を乗算することで、統計値Rを取得する。図9に示す例では、最も大きい頻度は「12」であるため、クラス「0.35」と係数「2.0」の乗算によって統計値R「0.7」が取得される。
第三の手法では、CPU21は、統計テーブル90を参照して、「1」以上の頻度に対応する範囲のうち、最も大きい範囲に対応するクラスを特定する。CPU21は、特定したクラスに「1.0以上」の係数(例えば、1.2)を乗算することで、統計値Rを取得する。図9に示す例では、CPU21は、最も大きい範囲は「〜0.7」であるため、クラス「0.65」と係数「1.2」の乗算によって統計値R「0.78」が取得される。
第三実施形態の表示制御処理(図8参照)によって、表示部5の表示状態が次のように変化する。以下では、第一実施形態と異なる点を説明する。ペンダウンされた後にペンアップされると、統計値Rがディレイ時間DTに設定される(S121:YES、S123、S125)。カウンタdCNTがディレイ時間DT(つまり、統計値R)に達する前にペンダウンされると、表示部5は記入報知パターンから変化しない(S113:YES、S105:YES、S117、S119)。一方、ペンダウンされることなくカウンタdCNTがディレイ時間DTを超えると、表示部5は記入報知パターンから通常パターンに変化する(S107:YES、S109、S111)。
以上説明したように、第三実施形態によれば、第一実施形態と同様に、ユーザにとって目障りになることを抑制しつつ、電子ペン3の記入状態に応じて表示部5の表示状態を変化させることができる。さらに第三実施形態では、取得された複数の線画データに基づいて複数の記入間隔時間を取得し、取得した複数の記入間隔時間の統計値Rが特定される(S123)。特定された統計値Rに基づいて、ディレイ時間DTが設定される(S125)。したがって、ユーザの記入間隔時間に応じて、最適なディレイ時間DTを設定できる。
第一の手法では、複数の記入間隔時間の平均値に基づいて、統計値Rが特定される。第二の手法では、複数の記入間隔時間のうちで最多の記入間隔時間が分類される時間幅に基づいて、統計値Rが特定される。第三の手法では、複数の記入間隔時間の最大値に基づいて、統計値Rが特定される。したがって、ユーザに応じて最適な手法を選択することで、最適なディレイ時間DTを設定できる。
一般的に、例えばユーザは情報の記入中に考えを整理するために、情報の記入を中止してペンアップすることがある。情報の記入が中止されている状態で生じる記入間隔時間は、通常の記入状態で生じる記入間隔時間よりも、過剰に大きくなりやすい。情報の記入が中止されている状態で生じる記入間隔時間を含めて統計値Rを算出すると、統計値Rが適正な値にならない可能性がある。そこで、第一の手法では、所定の閾値(例えば、1秒)を超える記入間隔時間は含めずに、記入間隔時間の平均値が算出されることが好ましい。第二、第三の手法では、CPU21は、取得した記入間隔時間が「1秒」を超える場合、頻度が加算されないことが好ましい。
第一〜第三の手法では、所定タイミングから現在までに取得された複数の線画データを用いて、統計値Rが取得されればよい。所定タイミングとしては、読取装置2の製品出荷時、読取装置2の電源ON時、読取装置2のリセット時などが例示される。所定時間前から現在までに取得された複数の線画データ(例えば、直前の10秒間で取得された複数の線画データ)を用いて、統計値Rが取得されてもよい。係数、クラス、範囲等は、上記の例に限定されず変更可能である。
図10を参照し、第四実施形態の表示制御処理を説明する。第四実施形態の表示制御処理では、ステップS1(図4参照)と同様に、フラグdFLG、カウンタdCNT、及びディレイ時間DTが、RAM22に記憶される(S151)。次いで、特定操作ありか否かが判断される(S153)。特定操作は、読取装置2に対して所定の指示を行うユーザの操作である。例えば電子ペン3を用いて保存チェックボックス111Aにチェックマークが入力された場合、特定操作ありと判断される(S153:YES)。
この場合、表示部5の表示状態が実行報知パターンに制御される(S155)。実行報知パターンは、通常パターン及び記入報知パターンとは異なる、表示部5の表示状態である。例えば表示部5が実行報知パターンである場合、表示部5が有する3つのLEDがいずれも黄色で点滅する。ユーザは実行報知パターンの表示部5を目視することで、例えば読取装置2が線画データの保存中であることを認識できる。
ステップS153又はS155の以降に実行されるステップS157〜S177の各処理は、第一実施形態のステップS3〜S23(図4参照)の各処理と同じであるため、説明を省略する。第四実施形態の表示制御処理(図10参照)によって、表示部5の表示状態が次のように変化する。特定操作がない場合、第一実施形態と同様に表示部5の表示状態が変化する。特定操作がある場合、表示部5の表示状態は通常パターン又は記入報知パターンから実行報知パターンに変化する(S153:YES、S155)。
以上説明したように、第四実施形態によれば、第一実施形態と同様に、ユーザにとって目障りになることを抑制しつつ、電子ペン3の記入状態に応じて表示部5の表示状態を変化させることができる。さらに第四実施形態では、取得された線画データが所定の指示を示す場合、表示部5の表示状態が実行報知パターンに切り替えられる(S153:YES、S155)。したがって、通常パターン又は実行報知パターンの表示状態をキャンセルして、実行報知パターンの表示状態を優先的に実行できる。
上記第一〜第四実施形態において、読取装置2が本発明の「情報入力装置」の一例である。読取部2L,2Rが本発明の「検出手段」の一例である。電子ペン3が本発明の「筆記具」の一例である。線画データを取得するCPU21が、本発明の「データ取得手段」の一例である。表示部5が本発明の「表示手段」の一例である。ペンアップが本発明の「第一状態」の一例である。ペンダウンが本発明の「第二状態」の一例である。記入報知パターンが本発明の「第一パターン」の一例である。ステップS19、S69、S119、S173のいずれかを実行するCPU21が、本発明の「第一表示制御手段」の一例である。ステップS5、S55、S105、S159のいずれかを実行するCPU21が、本発明の「カウント手段」の一例である。通常パターンが本発明の「第二パターン」の一例である。ステップS11、S61、S111、S165のいずれかを実行するCPU21が、本発明の「第二表示制御手段」の一例である。
ステップS1を実行するCPU21が、本発明の「第一設定手段」の一例である。ステップS79を実行するCPU21が、本発明の「速度特定手段」の一例である。ステップS81〜S89を実行するCPU21が、本発明の「第二設定手段」の一例である。ステップS123を実行するCPU21が、本発明の「統計値特定手段」の一例である。ステップS125を実行するCPU21が、本発明の「第三設定手段」の一例である。ステップS155を実行するCPU21が、本発明の「第三表示制御手段」の一例である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。読取装置2は他の方法で電子ペン3の位置を検出してもよい。例えば読取装置2はタッチパネルを備えてもよい。タッチパネルの駆動方式は、抵抗膜方式であることが好ましい。タッチパネル上に紙媒体100が置かれてもよい。CPU21は、電子ペン3によって紙媒体100の用紙111に線画を記入する動作が行われた場合、タッチパネルを介して筆圧が加えられた位置を検出してもよい。
表示部5は、3つのLEDを有するものに限定されず、複数パターンの表示状態を切り替え可能であればよい。例えば、表示部5は、画像を表示するディスプレイでもよい。通常パターン、記入報知パターン、及び実行報知パターンは、互いに異なる表示状態であればよい。例えば、表示部5が単色で発光可能な一つのLEDである場合、通常パターンでは表示部5が消灯し、記入報知パターンでは表示部5が点灯し、実行報知パターンでは表示部5が点滅してもよい。
第一〜第四実施形態は組み合わせてもよい。例えば、第二及び第三実施形態においても、第四実施形態と同様に、特定操作がある場合、表示部5の表示状態が通常パターン又は記入報知パターンから実行報知パターンに変化されてもよい。