以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態における手書き入力装置1は、図1(a)に示すように、電子筆記具である電子ペン2と、電子筆記装置である座標検出装置3とを有する。手書き入力装置1では、使用者が電子ペン2を持つ。電子ペン2は、後述のノート30への筆記内容に対応してデータ入力を行うためのものであり、筆記具としての機能に加え、位置情報すなわち座標データの入力手段として機能する。
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示すように、座標検出装置3は、後述のノート30を略覆うように所定の方向(図1(b)中左右方向)に見開き可能な形状に構成された可塑性部材からなるシート体10を有している。シート体10は、左側コイルシート100Lを備えた左側シート部10Lと、右側コイルシート100Rを備えた右側シート部10Rとを有する。
そして、略ノート形状の被筆記体である上記所定の方向に見開き可能な形状のノート30が、シート体10に重なるように配置されている。なお、左側シート部10L及び右側シート部10Rに、図1(a)に示すようなノート保持部11をそれぞれ設けてもよい。これにより、座標検出装置3を容易かつ確実にノート30と一体化することができ、使用者による取り扱い性を向上することができる。
また、図1(c)に示すように、左側シート部10L及び右側シート部10Rの背面側(図1(c)中下側)には、磁気シールド15L及び磁気シールド15Rがそれぞれ設けられている。磁気シールド15L,15Rは、電磁波減衰機能を備えた磁性材料から構成されている。
使用者は、電子ペン2を用いてノート30の左筆記面31Lや右筆記面31Rに手書きの所望の文字列等を筆記する。この筆記動作に対応した電子ペン2の移動により、筆記された筆記内容に対応した電子的な入力情報、すなわち後述のペン位置データ列が電子ファイルに保存される。その際、実際にインクを用いてノート30の左筆記面31Lや右筆記面31R等にページを切り替えながら筆記が行われるのと同様、使用者が図示しないページ切替ボタンを操作することにより、電子ファイルのページ切り替え(ページ送り又はページ戻し)を行いながら保存することができる。
使用者が手書き入力装置1を使用する際には、電子ペン2に備えられた図示しない電源スイッチがオンされる。電子ペン2は、図2及び図3に示すように、先端に設けられたペン先2aと、永久磁石45と、磁界印加用コイルであるコイル44及びコンデンサ45を備えた、信号生成手段であるLC発振回路41と、先端スイッチ42と、電子ペン20全体の制御を行う制御部46及び上記コンデンサ45が配置された制御基板40と、電池43とを有する。なお、磁界印加用コイルを備えた信号生成手段としては、上記LC発振回路41のような発振回路に限られず、共振回路でもよい。
先端スイッチ42は、ペン先2aの筆記面31L,31Rへの接触状態に応じて動作し、コイル44から発生させる交番磁界(後述)の周波数を変更するための指令信号S0を、制御部46に対して出力するスイッチである。この先端スイッチ42は、使用者が文字等を筆記するために、ペン先2aを筆記面31L,31Rに押しつけた(ペンダウンした)ときにオンとなる。この場合、制御部46に対して指令信号S0が出力される。一方、使用者が文字等の筆記を止め、ペン先2aを筆記面31L,31Rから離した(ペンアップした)ときにオフとなる。この場合、制御部46に対して指令信号S0は出力されない。
LC発振回路41は、位置検出用の筆記信号である交番磁界(以下適宜、単に「磁界」と称する)を生成して出力するための回路である。LC発振回路41のコイル44は、永久磁石45に巻回するように配置されると共に、コンデンサ45と電気的に接続されており、LC発振回路41で生成された磁界を発生する。LC発振回路41がコイル44から発生させる磁界の周波数は、先端スイッチ42のオン又はオフに応じた制御部46による制御に基づき、コンデンサ45の容量を変化させることにより変更される。すなわち、先端スイッチ42がオンの場合、上記指令信号S0が入力された制御部46が、コイル44から特定の周波数f1の磁界を発生させるようにLC発振回路41を制御する。これにより、コイル44から発生される磁界の周波数は、上記特定の周波数f1となる。一方、先端スイッチ42がオフの場合、上記指令信号S0が入力されていない制御部46が、コイル44から特定の周波数f2の磁界を発生させるようにLC発振回路41を制御する。これにより、コイル44から発生される磁界の周波数は、上記特定の周波数f2となる。
なお、以下適宜、先端スイッチ42がオンの場合にコイル44から発生される磁界の周波数f1を「入力周波数f1」と称し、先端スイッチ42がオフの場合にコイル44から発生される磁界の周波数f2を「接近周波数f2」と称する。コイル44から発生された磁界は、座標検出装置3で検出される。なお、f1>f2とすることにより、接近周波数f2の磁界を発生する際の、電子ペン2での消費電力を低減することができる。
電池43は、電子ペン2の電源スイッチがオンにされることで、制御部46やLC発振回路41等に電力を供給する。
一方、座標検出装置3は、図3に示すように、コイルシート100L,100Rと、接近検出回路50と、位置検出回路60と、周辺回路70と、マイコン80と、電池21と、スイッチ部90とを有する。なお、コイルシート100L,100Rと接近検出回路50及び位置検出回路60とは、信号ラインを介して接続されている。接近検出回路50、位置検出回路60、及び周辺回路70と電池21とは、スイッチ部90を介して電力ラインによって接続されている。
マイコン80は、CPU80aと、ROM80bと、RAM80cと、カウンタ80dと、クロック80eと、その他のA/D変換機能部や割り込み機能部等とを、一つの集積回路として構成したものである。このマイコン80は、座標検出装置3で実行される各種の処理を制御し、接近検出回路50、位置検出回路60、及び周辺回路70の動作状態を制御する。その制御内容の詳細は、図7を用いて後述する。
例えば、マイコン80は、座標検出装置3が備える互いに異なる3つの動作モード、すなわち第1モードである位置検出モードと、第2モードである周波数監視モードと、第3モードである電圧監視モードとを切り替える。なお、位置検出モード、周波数監視モード、及び電圧監視モードの詳細、及び、位置検出モード、周波数監視モード、及び電圧監視モードの切り替えの詳細については、後述する。
コイルシート100L,100Rは、図3及び図4に示すように、センスコイル部110と、接近検出コイル部120とを含む。すなわち、図4に示すように配置されたセンスコイル部110及び接近検出コイル部120が例えば外形が長方形の薄板状に樹脂成形されて、コイルシート100L,100Rが構成されている。
センスコイル部110は、図4に示すように、x軸方向に配列されたm個のループ状のセンスコイルX1〜Xmと、y軸方向に配列されたn個のループ状のセンスコイルY1〜Ynとによって構成されている。なお、センスコイル部110を構成するm個のセンスコイルX1〜Xm及びn個のセンスコイルY1〜Ynのそれぞれは、電子ペン2のコイル44で発生された磁界を受信可能なコイルであり、各請求項記載の主コイルに相当する。センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとは、互いに直交した位置関係で配置されている。また、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、コイル面方向がノート30の筆記面31L,31Rの方向と略平行となっている。さらに、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、例えば表面に絶縁被膜層が形成された銅線によって形成されている。またさらに、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、図示及び説明を省略する引き出し線により後述する位置検出回路60のマルチプレクサ62に接続されている。そして、センスコイル部110のスキャン処理が開始され、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynが電子ペン2のコイル44で発生された磁界を受信することによって、言い換えれば、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynとコイル44で発生された磁界との電磁誘導によって、当該センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynには、起電力が発生する。すなわち、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynは、コイル44との磁気結合によって、信号S1(図3参照)を発生する。
センスコイルX1〜Xmは、それぞれ、x軸方向の幅P1の辺とP1より長いy軸方向の長さP2の辺とを備えた、略長方形状に形成されている。センスコイルX1〜Xmのそれぞれは、所定の一定ピッチでx軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接するセンスコイルX1〜Xmは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。
センスコイルY1〜Ynは、それぞれ、x軸方向の幅P3の辺とP3より短いy軸方向の長さP1の辺とを備えた、略長方形状に形成されている。センスコイルY1〜Ynのそれぞれは、所定の一定ピッチでy軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接するセンスコイルY1〜Ynは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。
なお、図4では、視覚的にわかりやすくするため、便宜上、センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとの各辺がそれぞれ重ならないようにしており、上記ピッチで配列された状態では図示されていない。また、図4では、後述するマルチプレクサ62に入る引き出し線を省略してセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの形状を図示している。
接近検出コイル部120は、図4に示すように、センスコイル部110のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynとは異なる一つのループ状の接近検出コイル121によって構成されている。なお、接近検出コイル部120を構成する接近検出コイル121は、電子ペン2のコイル44で発生された磁界を受信可能なコイルであり、各請求項記載の補助コイルに相当する。接近検出コイル121は、コイル面方向がノート30の筆記面31L,31Rの方向と略平行となっている。また、接近検出コイル121は、図示及び説明を省略する引き出し線により後述する接近検出回路50のバンドパスフィルタ52に接続されている。そして、接近検出コイル部120のスキャン処理が開始され、接近検出コイル121が電子ペン2のコイル44で発生された磁界を受信することによって、言い換えれば、接近検出コイル121とコイル44で発生された磁界との電磁誘導によって、当該接近検出コイル121には、起電力が発生する。すなわち、接近検出コイル121は、コイル44との磁気結合によって、信号S2(図3参照)を発生する。
図3に戻り、接近検出回路50は、接近検出コイル121で発生する信号S2に基づき、電子ペン2が座標検出装置3に接近したことを検出する、周知の回路である。この接近検出回路50は、図3に示すように、バンドパスフィルタ52と、増幅回路54と、切替回路55と、整流回路56と、電圧検出回路58と、リミッタ59とを備えている。
バンドパスフィルタ52は、入力される上記信号S2に対して、不要な帯域を除去する。このバンドパスフィルタ52は、例えば上記接近周波数f2よりも小さい特定の周波数f3(詳細は後述)から接近周波数f2までの範囲の周波数の信号S21を通過させる。
増幅回路54は、バンドパスフィルタ52を通過した信号S21を増幅し、信号S22とする。
切替回路55は、マイコン80からの出力先選択信号S27に基づき、増幅回路54と、整流回路56及びリミッタ59のうち一方とを接続する。切替回路55が増幅回路54と整流回路56とを接続した場合には、増幅回路54で増幅された信号S22に対応する信号S28が、切替回路55を介して整流回路56に出力される。整流回路56は、切替回路55から入力された信号S28の振幅検波を行う。
電圧検出回路58は、ノイズや周波数の値が不定状態である磁界による誤動作を防止し、上記特定の周波数f3から接近周波数f2までの範囲の周波数成分を除去する。そのために、電圧検出回路58は、整流回路56で振幅検波された信号S23の振幅を検出する。これにより、接近検出コイル部120のスキャン処理において接近検出コイル121で受信された磁界による出力電圧の値Vを検出する。そして、電圧検出回路58は、その検出した信号S23の振幅が所定のしきい値Vthを超えているかどうかを判定する。なお、電子ペン2がコイルシート100L,100R(詳細には接近検出コイル121)に対し接近した場合に、上記信号S23の振幅がしきい値Vthを超える。電子ペン2がコイルシート100L,100Rに対し接近し、電圧検出回路58により、上記信号S23の振幅がしきい値Vthを超えたことが検出された場合には、解除信号S24がマイコン80に出力される。解除信号S24は、上記電圧監視モードを解除するための信号である。
一方、切替回路55が増幅回路54とリミッタ59とを接続した場合には、増幅回路54で増幅された信号S22に対応する信号S25が、切替回路55を介してリミッタ59に出力される。リミッタ59は、切替回路55から入力された信号S25を周波数及び位相情報だけのデジタル信号S26に処理してマイコン80の図示しない割り込み入力に入力する。マイコン80は、リミッタ59から入力された信号S26の周期をタイマー等により計測することにより、上記接近検出コイル121からの信号S2の周波数を判定して、RAM80cに記憶する。
位置検出回路60は、電子ペン2が存在するコイルシート100L,100R上の位置を表す座標を検出する、周知の回路である。この位置検出回路60は、図3に示すように、マルチプレクサ62(以下適宜、「MUX62」と称する)と、増幅回路64と、整流回路66と、リミッタ68とを備えている。
MUX62は、マイコン80からのコイル選択信号S3に基づき、センスコイル部110のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを1つずつ順番に選択する。そして、MUX62は、選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynにおいて発生された上記信号S1を入力し、対応する信号S11を増幅回路64に出力する。
増幅回路64は、MUX62から入力される上記信号S11を増幅する。増幅回路64で増幅された信号S12すなわち電子ペン入力検知信号S12は、リミッタ68に入力される。リミッタ68は、増幅回路64から入力された信号S12を周波数及び位相情報だけのデジタル信号S15に処理してマイコン80の割り込み入力に入力する。マイコン80は、リミッタ68から入力された信号S15の周期をタイマー等により計測することにより、上記センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynからの信号S1の周波数を判定して、現在スキャンしているセンスコイル部110のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル番号と共にRAM80cに記憶する。
また、増幅回路64で増幅された別の信号S13は、整流回路66に入力される。整流回路66は、増幅回路64から入力された信号S13を振幅検波した後、平滑化して直流信号に変換する。整流回路66で振幅検波された信号S14は、マイコン80に入力される。マイコン80は、前述したようにA/D変換機能を備えており、上記入力された振幅検波後の信号S14をデジタル信号に変換する。このとき、マイコン80の上記ROM80bには、後述の位置座標テーブルが記憶されている。マイコン80は、上記デジタル信号に対し、位置座標テーブルを適用することにより、電子ペン2とノート30との接触点の座標データ(以下適宜、単に「電子ペン2の座標データ」という)、すなわち、x軸方向のx座標及びy軸方向のy座標を算出する。なお、算出された座標データは後述の周辺回路70のフラッシュメモリ72に記憶される。
また、マイコン80は、センスコイル部110のスキャン処理時にRAM80cに記憶した、最大出力のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル番号に基づき、当該コイル番号で表されるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから得られる上記信号S1の周波数を検出する。これにより、当該コイル番号で表されるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fを検出する。また、マイコン80は、接近検出コイル部120のスキャン処理時にRAM80cに記憶した、接近検出コイル121から得られる上記信号S2の周波数により、当該接近検出コイル121で受信された磁界の周波数の値fを検出する。なお、周波数検出の詳細については、後述する。
周辺回路70は、図3に示すように、フラッシュメモリ72と、通信インターフェース74と、表示部76とを備えている。
フラッシュメモリ72には、電子ファイルが予め用意されており、マイコン80で算出された複数の座標データを含む後述のペン位置データ列に基づくストロークデータ等が、上記電子ファイルに書き込まれ、保存される。
通信インターフェース74は、フラッシュメモリ72に保存された複数の座標データを含む後述のペン位置データ列に基づくストロークデータを、パーソナルコンピュータなどの外部装置に提供するためのインターフェースである。具体的には、通信インターフェース74は、例えばUniversal Serial Bus(USB)接続のためのUSBインターフェースや、SDカードなどのメモリカードスロットや、無線又は有線のネットワークインターフェースである。
表示部76は、例えば液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)によって構成され、電池21の残量など、座標検出装置3の動作状態に係わる所定の情報を表示する。
スイッチ部90は、マイコン80からの制御信号Saにしたがって、電池21を、接近検出回路50、若しくは、位置検出回路60及び周辺回路70に、選択的に接続する。
電池21は、座標検出装置3に備えられた図示しない電源スイッチがオンにされることで、マイコン80等に電力を供給する。
(A)本実施形態の手法原理
上記構成の本実施形態の特徴は、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の周波数態様に基づき、電子ペン2の姿勢の状態を判定し、動作モードが位置検出モードである状態において電子ペン2が放置姿勢(後述)の状態であると判定された場合には、動作モードを位置検出モードから周波数監視モードへ切り替え、動作モードが周波数監視モードである状態において電子ペン2が入力姿勢(後述)の状態であると判定された場合には、動作モードを周波数監視モードから位置検出モードへ切り替えることにある。すなわち、前述したように、本実施形態の座標検出装置3は、位置検出モード、周波数監視モード、及び電圧監視モードを備えている。
位置検出モードは、電子ペン2の位置情報の取得、すなわち座標データの算出が行われるモードである。この位置検出モードでは、所定の周期で各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順次選択し、選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、電子ペン2の座標データの算出が行われる。また、選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fを検出し、その検出された周波数の値fが所定値fth2以下より大きいかどうかの判定、及び、その検出された周波数の値fが不定状態となっているかどうかの判定等も行われる。
すなわち、使用者が電子ペン2を用いて筆記面31L,31Rへ筆記を行っているときは、電子ペン2で発生された磁界が、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信される。そして、その受信結果に基づき、電子ペン2の座標データが算出される。これにより、使用者が筆記面31L,31Rへ筆記するときの筆記動作に対応した、電子ペン2の移動軌跡を表す複数の座標データを含むペン位置データ列が算出される。
また、上記のように使用者が電子ペン2を用いて筆記動作を行っている場合、電子ペン2は、筆記面31L,31Rへの筆記内容に対応したデータ入力を行う入力姿勢の状態となる。図5(a)には、入力姿勢の状態となっている電子ペン2のコイル44と、座標検出装置3のコイルシート100L,100Rとの位置関係を表している。図5(a)に示すように、電子ペン2が入力姿勢の状態となっている場合には、一般に、電子ペン2のコイル44の軸線方向と、筆記面31L,31Rの方向、すなわちコイルシート100L,100Rに含まれるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121のコイル面方向とが、交差する位置関係となる。このような位置関係の場合には、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界の周波数の値fは、電子ペン2がペンダウン状態の場合(先端スイッチ42がオンの場合)に上記入力周波数f1となり、電子ペン2がペンアップ状態の場合(先端スイッチ42がオフの場合)に上記接近周波数f2となる。
これに対し、使用者が上記筆記動作を中断し電子ペン2を筆記面31L,31Rの上へ置いたままにしている場合、電子ペン2は、筆記面31L、31R上に載置されている放置姿勢の状態となる。なお、本実施形態の座標検出装置3のように電子筆記装置がノートカバータイプである場合には、被筆記体がノート30のようなノート状となるので、電子筆記具が被筆記体上に載置され放置されることが比較的発生しやすい。図5(b)には、放置姿勢の状態となっている電子ペン2のコイル44と、座標検出装置3のコイルシート100L,100Rとの位置関係を表している。図5(b)に示すように、電子ペン2が放置姿勢の状態となっている場合には、一般に、電子ペン2のコイル44の軸線方向と、筆記面31L,31Rの方向、すなわちコイルシート100L,100Rに含まれるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121のコイル面方向とが、略平行となる位置関係となる。このような位置関係の場合には、上記図5(a)に示すような位置関係の場合に比べて、例えば電子ペン2のコイル44がコイルシート100L,100Rの背面側に設けられた磁気シールド15L,15Rに近接するため、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121のインダクタンスが大きくなる。ここで、共振周波数をf0、インダクタンスをL、静電容量をCとすると、
で表される関係が成り立つ。したがって、上記のような位置関係の変化により、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121のインダクタンスが大きくなった場合には、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との共振周波数は小さくなる。この結果、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界の周波数態様が変化する。すなわち、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界の周波数の値fが、上記入力周波数f1及び接近周波数f2よりも小さい周波数、すなわち特定の周波数f3となる。
本実施形態ではこの点に着目し、座標検出装置3の動作モードが位置検出モードであるときに、マイコン80が、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、当該磁界の周波数の値fを検出する。そして、その検出された磁界の周波数態様、すなわち周波数の値fが所定値fth2より大きいかどうかを判定することにより、電子ペン2が放置姿勢の状態にあるか又は入力姿勢の状態にあるかを判定する。そしてこのとき、f≦fth2であったことにより、電子ペン2が放置姿勢の状態にあると判定された場合には、動作モードが位置検出モードから周波数監視モードへ切り替えられる。
また、電子ペン2が上記図5(a)に示すような入力姿勢の状態(若しくは上記図5(b)に示すような放置姿勢の状態)となっている場合には、図6(a)に示すように、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界の周波数の値fが、一定状態となる。これに対し、使用者が電子ペン2を上記入力姿勢の状態(若しくは上記放置姿勢の状態)から、電子ペン2をセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121から離間した状態、すなわち電子ペン2を筆記面31L,31Rから遠く離した状態とする場合がある。この場合には、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との磁気結合状態が変化し、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との共振周波数が不定となる。この結果、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界の周波数態様が変化する。すなわち、電子ペン2をセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121から離間した状態にした場合には、図6(b)に示すように、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界の周波数の値fが、不定状態となる。
本実施形態ではこの点に着目し、座標検出装置3の動作モードが位置検出モードであるときに、マイコン80が、上記検出された周波数の値fが不定状態となっているかどうかを判定することにより、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であるかどうかを判定する。そしてこのとき、上記検出された磁界の周波数の値fが不定状態となったことにより、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であると判定された場合には、動作モードが位置検出モードから電圧監視モードへ切り替えられる。
一方、周波数監視モードは、使用者が上記筆記動作を中断し電子ペン2を筆記面31L、31Rの上に置いて放置したときに対応した、上記位置検出モードよりも座標検出装置3での消費電力が少なくなるように設定されたモードである。この周波数監視モードでは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択を行わずに接近検出コイル121を選択し、選択された接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき、接近検出コイル121で受信された磁界の周波数の値fの検出が行われる。また、その検出された周波数の値fが不定状態となっているかどうかの判定、及び、その検出された周波数の値fが所定値fth2より大きいかどうかの判定等も行われる。
すなわち、本実施形態では、座標検出装置3の動作モードが周波数監視モードであるときに、マイコン80が、接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき、当該磁界の周波数の値fを検出する。そして、その検出された磁界の周波数態様、すなわち周波数の値fが不定状態となっているかどうかを判定することにより、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であるかどうかを判定する。そしてこのとき、上記検出された周波数の値fが不定状態となったことにより、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であると判定された場合には、動作モードが周波数監視モードから電圧監視モードへ切り替えられる。また、マイコン80は、上記検出された周波数の値fが所定値fth2より大きいかどうかを判定することにより、電子ペン2が放置姿勢の状態から入力姿勢の状態に復帰したかどうかを判定する。そしてこのとき、f>fth2であったことにより、電子ペン2が入力姿勢の状態に復帰したと判定された場合には、動作モードが周波数監視モードから位置検出モードへ復帰される。
また一方、電圧監視モードは、使用者が上記筆記動作を終了し電子ペン2を筆記面31L,31Rから遠く離したときに対応した、上記位置検出モード及び周波数監視モードよりも座標検出装置3での消費電力が少なくなるように設定されたモードである。この電圧監視モードでは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択を行わずに接近検出コイル121を選択し、選択された接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき、接近検出コイル121で生起される出力電圧の値Vの検出が行われる。また、その検出された出力電圧の値Vがしきい値Vthより大きくなっているかどうかの判定も行われる。
ここで、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で受信される磁界による出力電圧、すなわちセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121で生起される出力電圧の値Vは、一般に、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との距離に依存する。したがって、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との距離に応じて、上記生起される出力電圧の値Vが変化する。すなわち、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との距離が近いほど、上記生起される出力電圧の値Vが大きくなる。逆に、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121との距離が遠いほど、上記生起される出力電圧の値Vが小さくなる。したがって、上記のように電子ペン2が筆記面31L,31Rから遠く離された状態とされている場合には、電子ペン2のコイル44と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynや接近検出コイル121とが磁気結合状態とならないので、上記生起される出力電圧の値Vは、略0となる。
本実施形態ではこの点に着目し、座標検出装置3の動作モードが電圧監視モードであるときに、電圧検出回路58が、接近検出コイル部120のスキャン処理において接近検出コイル121で受信される磁界の出力態様、すなわち当該接近検出コイル121で生起される上記信号S2に基づいた上記信号S23の振幅がしきい値Vthを超えているかどうかを判定する。そしてこのき、電圧検出回路58により、上記信号S23の振幅がしきい値Vthを超えていることが検出された場合には、解除信号S24がマイコン80に出力される。マイコン80は、電圧検出回路58から解除信号S24が入力されたかどうかを判定することにより、接近検出コイル121で生起される出力電圧の値Vがしきい値Vthより大きいかどうかを判定する。これにより、電子ペン2が接近検出コイル121に対し接近したかどうかを判定する。そしてこのとき、解除信号S24が入力された(上記出力電圧の値Vがしきい値Vthより大きくなった)ことにより、電子ペン2が接近検出コイル121に対し接近した状態であると判定された場合には、動作モードが電圧監視モードから位置検出モードへ切り替えられる。
(B)本実施形態の制御処理
以上のような機能を実現するために、座標検出装置3のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図7により順を追って説明する。
図7において、このフローに示す処理は、例えば使用者が座標検出装置3の電源をオンした場合に開始される。まずステップSS10で、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを位置検出モードとする。すなわち、CPU80aは、スイッチ部90に制御信号Sa(図3参照)を出力し、スイッチ部90に、電池21と接近検出回路50とを遮断させるとともに、電池21と位置検出回路60及び周辺回路70とを接続させる。これによって、接近検出回路50への電力の供給は遮断され、位置検出回路60及び周辺回路70へ電力が供給される。この結果、接近検出回路50は休止状態に切り替えられるとともに、位置検出回路60及び周辺回路70は動作状態に切り替えられる。
その後、ステップSS20で、CPU80aは、コイルシート100L,100Rに備えられたセンスコイル部110のスキャン処理を実行する。具体的には、CPU80aは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順番に選択するコイル選択信号S3をMUX62に出力し、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順次選択させる。これにより、電子ペン2のコイル44で発生された磁界と、選択されたいずれかのセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynとの電磁誘導によって、信号S1(図3参照)が発生する。そして、信号S1が発生している状態においてMUX62により選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynからの信号S1は、MUX62へ入力される。MUX62は、その入力した信号S1に対応した信号S11(図3参照)を増幅回路64へ出力する。増幅回路64へ入力された信号S11は、増幅回路64によって増幅され、増幅後の信号S12(図3参照)がリミッタ68に入力される。リミッタ68に入力された信号S12は、周波数及び位相情報だけのデジタル信号S15(図3参照)に処理されてマイコン80の割り込み入力に入力される。マイコン80は、その入力された信号S15の周期をタイマー等により計測することにより、上記センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynからの信号S1の周波数を判定して、現在スキャンしているセンスコイル部110のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル番号と共にRAM80cに記憶する。また、増幅回路64で増幅された別の信号S13(図3参照)は、整流回路66に入力される。整流回路66に入力された信号S13は、振幅検波された信号S14となってマイコン80に入力される。マイコン80は、その入力された信号S14をデジタル信号に変換する。
そして、ステップSS30に移り、CPU80aは、上記ステップSS20で実行されたスキャン処理におけるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、当該磁界の周波数の値fを検出する。具体的には、CPU80aは、上記ステップSS20でRAM80cに記憶された最大出力のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル番号に基づき、当該コイル番号で表されるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから得られる上記信号S1の周波数を検出する。これにより、当該コイル番号で表されるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fを検出する。
その後、ステップSS40で、CPU80aは、上記ステップSS30でセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、不定状態となっているどうかを判定する。これにより、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であるかどうかを判定する。上記ステップSS30で検出された周波数の値fが一定状態である場合には、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynに接近した状態であるとみなされ、ステップSS40の判定が満たされず、ステップSS50に移る。
ステップSS50では、CPU80aは、上記ステップSS30でセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、所定値fth1より大きいかどうかを判定する。これにより、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fがf1であったかどうか、すなわち電子ペン2が入力姿勢におけるペンダウン状態(先端スイッチ42がオン状態)であるかどうかを判定する。f>fth1である場合には、電子ペン2が入力姿勢におけるペンダウン状態であるとみなされ、ステップSS50の判定が満たされて、ステップSS60に移る。
ステップSS60では、CPU80aは、上記ステップSS20で実行されたスキャン処理におけるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、公知の適宜の手法により、電子ペン2の座標データの算出を行う。本実施形態では、CPU80aは、この電子ペン2の座標データの算出は、マイコン80のROM80bに記憶された位置座標テーブルを用いて行う。
そして、ステップSS70に移り、CPU80aは、上記ステップSS60で算出された電子ペン2の座標データを用いて、ペン位置データ列Dを生成(更新)する。詳細には、複数の座標データにより構成されるペン位置データ列Dの最後に、上記ステップSS60で算出された座標データをストローク番号と関連付けて追加し、新たなペン位置データ列Dとする。なお、上記ステップSS60で算出された座標データが最初の座標データであった場合には、当該1つの座標データにより新規にペン位置データ列Dを生成する。このようにして生成したペン位置データ列Dは、RAM80cに一時的に保存される。なお、電子ペン2の座標データに対応したペン位置データ列Dによって、電子ペン2による筆記面31L,31Rへの記載に対応したストロークデータが生成される。すなわち、このペン位置データ列Dの生成は、言い換えれば、ストロークデータの生成と同等である。そして、ステップSS70が終了したら、上記ステップSS20に戻り、CPU80aは、センスコイル部110のスキャン処理を再び実行し、以下同様の手順を繰り返す。
一方、上記ステップSS50において、f≦fth1であった場合には、電子ペン2が入力姿勢におけるペンダウン状態であるとはみなされない。この場合には、ステップSS50の判定が満たされず、ステップSS80に移る。
ステップSS80では、CPU80aは、上記ステップSS30でセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、所定値fth2より大きいかどうかを判定する。これにより、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fがf2であったか、又はf3であったか、すなわち電子ペン2が入力姿勢におけるペンアップ状態(先端スイッチ42がオフ状態)であるか、又は放置姿勢の状態であるかを判定する。f>fth2である場合には、電子ペン2が入力姿勢におけるペンアップ状態であるとみなされ、ステップSS80の判定が満たされて、上記ステップSS20に戻り、CPU80aは、センスコイル部110のスキャン処理を再び実行し、以下同様の手順を繰り返す。一方、f≦fth2である場合には、電子ペン2が放置姿勢の状態であるとみなされ、ステップSS80の判定が満たされず、ステップSS90に移る。なお、f>fth2である場合でも、上記ステップSS50の判定が一定時間経過しても満たされない場合、すなわち一定時間経過しても電子ペン2がペンダウン状態であるとみなされない場合には、ステップSS90に移るようにしてもよい。
ステップSS90では、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを位置検出モードから周波数監視モードに切り替える。すなわち、CPU80aは、スイッチ部90に制御信号Saを出力し、スイッチ部90に、電池21と接近検出回路50とを接続させるとともに、電池21と位置検出回路60及び周辺回路70とを遮断させる。これによって、位置検出回路60及び周辺回路70への電力の供給は遮断され、接近検出回路50にだけ電力が供給される。この結果、接近検出回路50は動作状態に切り替えられるとともに、位置検出回路60及び周辺回路70は休止状態に切り替えられる。また、CPU80aは、接近検出回路50の切替回路55に出力先選択信号S27を出力し、切替回路55に、増幅回路54とリミッタ59とを接続させる。
その後、ステップSS100で、CPU80aは、コイルシート100L,100Rに備えられた接近検出コイル部120のスキャン処理を実行する。具体的には、CPU80aは、接近検出コイル121を選択する。これにより、電子ペン2のコイル44で発生された磁界と、選択された接近検出コイル121との電磁誘導によって、信号S2(図3参照)が発生する。そして、接近検出コイル121からの信号S2は、バンドパスフィルタ52へ入力される。バンドパスフィルタ52は、その入力された信号S2に対して不要な帯域を除去した信号S21(図3参照)を増幅回路54へ出力する。増幅回路54へ入力された信号S21は、増幅回路54によって増幅され、増幅後の信号S22(図3参照)が切替回路55を介して信号S25(図3参照)となって、リミッタ59に入力される。リミッタ59に入力された信号S25は、周波数及び位相情報だけのデジタル信号S26(図3参照)に処理されてマイコン80の割り込み入力に入力される。マイコン80は、その入力された信号S26の周期をタイマー等により計測することにより、上記接近検出コイル121からの信号S2の周波数を判定して、RAM80cに記憶する。
そして、ステップSS110に移り、CPU80aは、上記ステップSS100で実行されたスキャン処理における接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき、当該磁界の周波数の値fを検出する。具体的には、CPU80aは、上記ステップSS100でRAM80cに記憶された接近検出コイル121から得られる上記信号S2の周波数により、接近検出コイル121で受信された磁界の周波数の値fを検出する。
その後、ステップSS120で、CPU80aは、上記ステップSS110で接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、不定状態となっているどうかを判定する。これにより、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であるかどうかを判定する。上記ステップSS110で検出された周波数の値fが一定である場合には、電子ペン2が接近検出コイル121に接近した状態であるとみなされ、ステップSS120の判定が満たされず、ステップSS130に移る。
ステップSS130では、CPU80aは、上記ステップSS110で接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、所定値fth2より大きいかどうかを判定する。これにより、接近検出コイル121で受信された磁界の周波数がf1又はf2であったか、あるいはf3であったか、すなわち電子ペン2が入力姿勢の状態であるか、又は放置姿勢の状態であるかを判定する。f≦fth2である場合には、電子ペン2が放置姿勢の状態であるとみなされ、ステップSS130の判定が満たされず、ステップSS140に移る。
ステップSS140では、CPU80aは、所定の時間間隔t1だけ待機する。その後、上記ステップSS100に戻り、CPU80aは、接近検出コイル部120のスキャン処理を再び実行し、以下同様の手順を繰り返す。すなわち、座標検出装置3の動作モードが周波数監視モードである状態においては、接近検出コイル部121のスキャン処理が間欠的に実行される。
一方、上記ステップSS130において、f>fth2であった場合には、電子ペン2が入力姿勢の状態であるとみなされる、言い換えれば電子ペン2が入力姿勢の状態に復帰したとみなされる。この場合には、ステップSS130の判定が満たされて、上記ステップSS10に戻り、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを、周波数監視モードから位置検出モードに切り替え、言い換えれば周波数監視モードから位置検出モードへと復帰させ、以下同様の手順を繰り返す。
一方、上記ステップSS40において、上記ステップSS30で検出された周波数の値fが不定状態となっていた場合には、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であるとみなされ、ステップSS40の判定が満たされて、ステップSS150に移る。また一方、上記ステップSS120において、上記ステップSS110で検出された周波数の値fが不定状態となっていた場合には、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であるとみなされ、ステップSS120の判定が満たされて、ステップSS150に移る。
ステップSS150では、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを電圧監視モードに切り替える。具体的には、ステップSS40からステップSS150に移った場合には、位置検出モードから電圧監視モードに切り替え、ステップSS120からステップSS150に移った場合には、位置検出モードから電圧監視モードに切り替える。すなわち、CPU80aは、スイッチ部90に制御信号Saを出力し、スイッチ部90に、電池21と接近検出回路50とを接続させるとともに、電池21と位置検出回路60及び周辺回路70とを遮断させる。これによって、位置検出回路60及び周辺回路70への電力の供給は遮断され、接近検出回路50にだけ電力が供給される。この結果、接近検出回路50は動作状態に切り替えられるとともに、位置検出回路60及び周辺回路70は休止状態に切り替えられる。また、CPU80aは、接近検出回路50の切替回路55に出力先選択信号S27を出力し、切替回路55に、増幅回路54と整流回路56とを接続させる。なお、電圧監視モードでは、例えばセンスコイル部110のスキャン処理や周波数検出等の負荷の大きな処理が実行されないので、マイコン80自体もスリープモード(待機状態)に切り替えられる。
そして、ステップSS160に移り、CPU80aは、コイルシート100L,100Rに備えられた接近検出コイル部120のスキャン処理を実行する。具体的には、CPU80aは、接近検出コイル121を選択する。これにより、電子ペン2のコイル44で発生された磁界と、選択された接近検出コイル121との電磁誘導によって、信号S2が発生する。そして、接近検出コイル121からの信号S2は、バンドパスフィルタ52へ入力される。バンドパスフィルタ52は、その入力した信号S2に対して不要な帯域を除去した信号S21を増幅回路54へ出力する。増幅回路54へ入力された信号S21は、増幅回路54によって増幅され、増幅後の信号S22が切替回路55を介して信号S28(図3参照)となって、整流回路56に入力される。整流回路56に入力された信号S28は、整流回路56によって振幅検波され、信号S23(図3参照)となって、電圧検出回路58に入力される。電圧検出回路58により信号S23の振幅がしきい値Vthを超えたことが検出された場合、解除信号S24(図3参照)がマイコン80に出力される。
その後、ステップSS170で、CPU80aは、電圧検出回路58から解除信号S24が入力されたかどうかを判定することにより、上記ステップSS160で実行されたスキャン処理において接近検出コイル121で受信された磁界による出力電圧の値Vが、しきい値Vthより大きくなったかどうかを判定する。これにより、電子ペン2が接近検出コイル121に対し接近したかどうかを判定する。なお、解除信号S24の入力検知の処理には、割り込み機能が用いられる。解除信号S24が入力されていない場合、すなわち接近検出コイル121で生起された出力電圧の値Vがしきい値Vth以下である場合には、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であるとみなされ、ステップSS170の判定が満たされず、ステップSS180に移る。
ステップSS180では、CPU80aは、所定の時間間隔t2だけ待機する。その後、上記ステップSS160に戻り、CPU80aは、接近検出コイル部120のスキャン処理を再び実行し、以下同様の手順を繰り返す。すなわち、座標検出装置3の動作モードが電圧監視モードである状態においては、接近検出コイル部120のスキャン処理が間欠的に実行される。
一方、上記ステップSS170において、解除信号S24が入力された場合、すなわち接近検出コイル121で生起された出力電圧の値Vがしきい値Vthより大きくなった場合には、電子ペン2が接近検出コイル121に対し接近した状態であるとみなされる。この場合には、ステップSS170の判定が満たされて、上記ステップSS10に戻り、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを、電圧監視モードから位置検出モードに切り替え、以下同様の手順を繰り返す。なお、このフローに示す処理は、例えば使用者が座標検出装置3の電源をオフにした場合に終了する。
なお、上記において、ステップSS20及びステップSS60の手順が、各請求項記載の位置情報取得手段として機能する。また、ステップSS30及びステップSS110の手順が、周波数検出手段として機能する。さらに、ステップSS80及びステップSS130の手順が、状態判定手段として機能する。またさらに、ステップSS40及びステップSS120の手順が、不定状態判定手段として機能すると共に、離間判定手段としても機能する。またさらに、ステップSS170の手順が、接近判定手段として機能する。そして、ステップSS10、ステップSS90、及びステップSS150の手順が、モード切替手段として機能する。
以上説明したように、本実施形態においては、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn若しくは接近検出コイル121で受信された磁界の周波数態様や出力態様に基づいて、上記の例ではf>fth2であるかどうかに基づいて、電子ペン2が放置姿勢の状態(図5(b)に示す状態)であるか、又は入力姿勢の状態(図5(a)に示す状態)であるかを判定する(ステップSS80及びステップS130を参照)。そして、動作モードが位置検出モードである状態において、電子ペン2が上記放置姿勢の状態であると判定された場合、特に本実施形態ではセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fが所定値fth2以下であることにより電子ペン2が上記放置姿勢の状態であると判定された場合、動作モードを位置検出モードから周波数監視モードへと切り替える(ステップSS90を参照)。これにより、使用者が筆記面31L,31Rへの筆記を中断し電子ペン2を筆記面31L,31Rの上に置いて放置した場合には、当該放置状態が検出されて位置検出モードから周波数監視モードへと動作モードが切り替えられる。この結果、使用者が電源オフ操作を別途行わなくても確実に省電力を図ることができ、無駄な電力消費を防止できる。
また、動作モードが周波数監視モードである状態において、電子ペン2が上記入力姿勢の状態であると判定された場合、特に本実施形態では接近検出コイル121で受信された磁界の周波数の値fが所定値fth2より大きいことにより電子ペン2が上記入力姿勢の状態に復帰したと判定された場合には、動作モードを周波数監視モードから位置検出モードへと復帰させる(ステップSS10を参照)。これにより、使用者が筆記面31L,31Rの上に放置した電子ペン2を再び手にとって筆記面31L,31Rへの筆記を再開した場合には、当該筆記再開状態が検出されて周波数監視モードから位置検出モードへと動作モードが切り替えられる。この結果、使用者が電源オン操作を別途行わなくても確実に電子ペン2の座標データの算出を再開することができる。また、電源オン操作の失念により電子ペン2の座標データの算出に失敗することがない。また特に、周波数監視モードにおいてセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択を中止して接近検出コイル121で受信を行うことにより、周波数監視モードにおける省電力を確実に実現することができる。
また、本実施形態では特に、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの、若しくは、接近検出コイル121での、磁界(詳細には交番磁界)の受信結果に基づき、当該磁界の周波数の値fを検出する(ステップSS30及びステップSS110を参照)。そして、検出された周波数の値fが所定値fth2以下である場合には、電子ペン2が上記放置姿勢の状態であると判定し、検出された周波数の値fが所定値fth2より大きかった場合には、電子ペン2が上記入力姿勢の状態であると判定する。これにより、使用者が電子ペン2を手にとって筆記動作を行っている状態と、使用者が電子ペン2を筆記面31L、31R上に放置した状態とを、電子ペン2とセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn若しくは接近検出コイル121との位置関係の変化に基づく磁界の周波数の値fの変化により識別することができる。この結果、センサ等の検出手段を別途設け電子ペン2の上記状態を検出する場合よりも構成を簡略化し、コスト低減を図ることができる。
また、本実施形態では特に、接近検出コイル121で受信された磁界の周波数の値fが不定状態となったかどうかに基づいて、電子ペン2が上記接近検出コイル121から離間した状態であるか否かを判定する(ステップSS120を参照)。そして、周波数監視モードにおいて、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であると判定された場合、動作モードを周波数監視モードから電圧監視モードへと切り替える(ステップSS150を参照)。これにより、使用者が筆記面31L、31Rへの筆記を終了し電子ペン2を筆記面31L、31Rから遠く離した場合には、当該状態が検出されて周波数監視モードから電圧監視モードへと動作モードが切り替えられる。この結果、使用者による筆記終了の意志を確実に反映させた形で、無駄な電力消費を確実に防止することができる。
また、本実施形態では特に、電圧監視モードへ切り替わった状態における、電圧検出回路58からの上記解除信号S24がマイコン80に入力されたかどうかに基づいて、接近検出コイル121に対し電子ペン2が接近したか否かを判定する(ステップSS170を参照)。そして、動作モードが電圧監視モードである状態において、電子ペン2が接近検出コイル121に対し接近した状態であると判定された場合には、動作モードを電圧監視モードから位置検出モードへ切り替える(ステップSS10を参照)。これにより、使用者が、筆記面31L、31Rへの筆記を一旦終了した状態から、新たに筆記面31L、31Rへの筆記を開始することを意図した場合に対応することができる。すなわち、使用者が、電子ペン2を筆記面31L、31Rから遠く離した状態から筆記面31L、31Rへ近づけると、当該接近状態が検出されて電圧監視モードから位置検出モードへと動作モードが切り替えられる。この結果、使用者による上記筆記開始の意志を確実に反映させた形で、電子ペン2の座標データの算出を確実に開始することができる。また、使用者が電子ペン2を筆記面31L、31Rから遠く離した状態から、電子ペン2が筆記面31L、31Rへ再び接近した状態へ変化したことを、磁界の出力電圧の値Vが大きくなったことによって確実に識別することができる。また、電圧監視モードにおいて、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択が中止され、接近検出コイル121が選択される。そして、選択された接近検出コイル121で受信された磁界の出力電圧の値Vが検出され、電圧判定が行われる。このようにセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択を中止して接近検出コイル121で受信を行うことにより、電圧監視モードにおける省電力を確実に実現することができる。
また、本実施形態では特に、接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づき検出した当該磁界の周波数の値fが不定状態となったことにより、電子ペン2が接近検出コイル121から離間した状態であると判定する。そして、周波数監視モードにおいて、磁界の周波数の値fが不定状態となったと判定された場合には、動作モードを周波数監視モードから電圧監視モードに切り替える。これにより、使用者が電子ペン2を筆記面31L、31R上に放置した状態から、電子ペン2を筆記面31L、31Rから遠く離した状態へ変化したことを、磁界の周波数の値fが不定となったことによって確実に識別することができる。またこのとき、周波数監視モードにおいて、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択が中止され、接近検出コイル121が選択される。そして、選択された接近検出コイル121で受信された磁界の周波数の値fが検出され、上記不定状態の判定が行われる。このようにセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの選択を中止して接近検出コイル121で受信を行うことにより、周波数監視モードにおける省電力を確実に実現することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順次説明する。
(1)センスコイル部のスキャン処理を間欠的に実行する場合
上記実施形態においては、接近検出コイル部120のスキャン処理を間欠的に実行し、そのスキャン処理における接近検出コイル121での磁界の受信結果に基づいて当該磁界の周波数の検出及び当該磁界による出力電圧の検出を行っていたが、これに限られない。すなわち、センスコイル部110のスキャン処理を間欠的に実行し、そのスキャン処理におけるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づいて当該磁界の検出及び当該磁界による出力電圧の検出を行うようにしてもよい。
本変形例における手書き入力装置1の構成は、上記実施形態における手書き入力装置1の構成とほぼ同様である。但し、本変形例の座標検出装置3では、前述の位置検出コイル部120が省略されている。すなわち、本変形例の座標検出装置3では、前述の図4に示すように配置されたセンスコイル部110が例えば外形が長方形の薄板状に樹脂成形されて、コイルシート100L,100Rが構成されている。
また、本変形例における周波数監視モードでは、所定の周期、すなわち位置検出モードにおける各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期よりも長い周期で各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順次選択し、選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fの検出が行われる。また、その検出された周波数の値fが不定状態となっているかどうかの判定、及び、その検出された周波数の値fが所定値fth2より大きいかどうかの判定等も行われる。
さらに、本変形例における電圧監視モードでは、上記所定の周期よりも長い周期で各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを選択し、選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vの検出が行われる。また、その検出された出力電圧の値Vが前述のしきい値Vthより大きくなっているかどうかの判定も行われる。
本変形例において、座標検出装置3のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図8により順を追って説明する。なお、図8は、前述の図7に対応する図である。図7と同等の手順には同符号を付し説明を適宜省略する。
図8において、前述の図7と異なる点は、ステップSS100〜ステップSS140、及び、ステップSS160〜ステップSS180に代えて、ステップSS100′〜ステップSS140′、及び、ステップSS160′〜ステップSS180′を設けた点である。すなわち、ステップSS10〜ステップSS90は、前述の図7と同様である。ステップSS90において、座標検出装置3の動作モードを位置検出モードから周波数監視モードに切り替えたら、ステップSS100に代えて設けたステップSS100′に移る。
ステップSS100′では、CPU80aは、コイルシート100L,100Rに備えられたセンスコイル部110のスキャン処理を実行する。具体的には、CPU80aは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順番に選択するコイル選択信号を接近検出回路50に設けられたMUX(図示せず)に出力し、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順次選択させる。これにより、電子ペン2のコイル44で発生された磁界と、選択されたいずれかのセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynとの電磁誘導によって、信号が発生する。そして、当該信号が発生している状態においてMUXにより選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynからの上記信号は、MUXへ入力される。MUXは、その入力した信号に対応した信号をバンドパスフィルタ52へ出力する。バンドパスフィルタ52は、その入力された信号に対して不要な帯域を除去した前述の信号S21を増幅回路54へ出力する。増幅回路54へ入力された信号S21は、増幅回路54によって増幅され、増幅後の前述の信号S22が切替回路55を介して前述の信号S25となって、リミッタ59に入力される。リミッタ59に入力された信号S25は、周波数及び位相情報だけの前述のデジタル信号S26に処理されてマイコン80の割り込み入力に入力される。マイコン80は、その入力された信号S26の周期をタイマー等により計測することにより、上記センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynからの信号の周波数を判定して、現在スキャンしているセンスコイル部110のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル番号と共にRAM80cに記憶する。
そして、ステップSS110に代えて設けたステップSS110′に移り、CPU80aは、上記ステップSS100′で実行されたスキャン処理におけるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき、当該磁界の周波数の値fを検出する。具体的には、CPU80aは、上記ステップSS110′でRAM80cに記憶された最大出力のセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル番号に基づき、当該コイル番号で表されるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから得られる上記信号の周波数を検出する。これにより、当該コイル番号で表されるセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fを検出する。
その後、ステップSS120に代えて設けたステップSS120′で、CPU80aは、上記ステップSS110′でセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、不定状態となっているどうかを判定する。これにより、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であるかどうかを判定する。上記ステップSS110′で検出された周波数の値fが一定状態である場合には、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynに接近した状態であるとみなされ、ステップSS120′の判定が満たされず、ステップSS130に代えて設けたステップSS130′に移る。
ステップSS130′では、CPU80aは、上記ステップSS110′でセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき検出された当該磁界の周波数の値fが、所定値fth2より大きいかどうかを判定する。これにより、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数がf1又はf2であったか、あるいはf3であったか、すなわち電子ペン2が入力姿勢の状態であるか、又は放置姿勢の状態であるかを判定する。f≦fth2である場合には、電子ペン2が放置姿勢の状態であるとみなされ、ステップSS130′の判定が満たされず、ステップSS140に代えて設けたステップSS140′に移る。
ステップSS140′では、CPU80aは、所定の時間間隔t3だけ待機する。その後、上記ステップSS100′に戻り、CPU80aは、センスコイル部110のスキャン処理を再び実行し、以下同様の手順を繰り返す。すなわち、座標検出装置3の動作モードが周波数監視モードである状態においては、センスコイル部110のスキャン処理が間欠的に実行される。言い換えれば、位置検出モードにおける各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期よりも長い周期で各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynが順次選択される。
一方、上記ステップSS130′において、f>fth2であった場合には、電子ペン2が入力姿勢の状態であるとみなされる。この場合には、ステップSS130′の判定が満たされて、前述のステップSS10に戻り、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを、周波数監視モードから位置検出モードに切り替え、以下同様の手順を繰り返す。
一方、上記ステップSS120′において、上記ステップSS110′で検出された周波数の値fが不定状態となっていた場合には、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であるとみなされ、ステップSS120′の判定が満たされて、ステップSS150に移る。
ステップSS150は、前述の図7と同様であり、座標検出装置3の動作モードを電圧監視モードに切り替える。その後、ステップSS160に代えて設けたステップSS160′に移る。
ステップSS160′では、CPU80aは、コイルシート100L,100Rに備えられたセンスコイル部110のスキャン処理を実行する。具体的には、CPU80aは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順番に選択するコイル選択信号を接近検出回路50に設けられたMUXに出力し、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynを順次選択させる。これにより、電子ペン2のコイル44で発生された磁界と、選択されたいずれかのセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynとの電磁誘導によって、前述の信号が発生する。そして、当該信号が発生している状態においてMUXにより選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynからの上記信号は、MUXへ入力される。MUXは、その入力した信号に対応した信号をバンドパスフィルタ52へ出力する。バンドパスフィルタ52は、その入力された信号に対して不要な帯域を除去した前述の信号S21を増幅回路54へ出力する。増幅回路54へ入力された信号S21は、増幅回路54によって増幅され、増幅後の前述の信号S22が切替回路55を介して前述の信号S28となって、整流回路56に入力される。整流回路56に入力された信号S28は、整流回路56によって振幅検波され、前述の信号S23となって、電圧検出回路58に入力される。電圧検出回路58により信号S23の振幅が前述のしきい値Vthを超えたことが検出された場合、前述の解除信号S24がマイコン80に出力される。
その後、ステップSS170に代えて設けたステップSS170′で、CPU80aは、電圧検出回路58から解除信号S24が入力されたかどうかを判定することにより、上記ステップSS160′で実行されたスキャン処理においてセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界による出力電圧の値Vが、しきい値Vthより大きくなったかどうかを判定する。これにより、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynに対し接近したかどうかを判定する。なお、解除信号S24の入力検知の処理には、割り込み機能が用いられる。解除信号S24が入力されていない場合、すなわちセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起された出力電圧の値Vがしきい値Vth以下である場合には、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であるとみなされ、ステップSS170′の判定が満たされず、ステップSS180に代えて設けたステップSS180′に移る。
ステップSS180′では、CPU80aは、所定の時間間隔t4だけ待機する。その後、上記ステップSS160′に戻り、CPU80aは、センスコイル部110のスキャン処理を再び実行し、以下同様の手順を繰り返す。すなわち、座標検出装置3の動作モードが電圧監視モードである状態においては、センスコイル部110のスキャン処理が間欠的に実行される。言い換えれば、位置検出モードにおける各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期よりも長い周期で各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynが順次選択される。
一方、上記ステップSS170′において、解除信号S24が入力された場合、すなわちセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起された出力電圧の値Vがしきい値Vthより大きくなった場合には、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynに対し接近した状態であるとみなされる。この場合には、ステップSS170′の判定が満たされて、前述のステップSS10に戻り、CPU80aは、座標検出装置3の動作モードを、電圧監視モードから位置検出モードに切り替え、以下同様の手順を繰り返す。
なお、上記において、ステップSS30及びステップSS110′の手順が、周波数検出手段として機能する。また、ステップSS80及びステップSS130′の手順が、状態判定手段として機能する。さらに、ステップSS40及びステップSS120′の手順が、不定状態判定手段として機能すると共に、離間判定手段としても機能する。またさらに、ステップSS170′の手順が、接近判定手段として機能する。
以上説明した本変形例においては、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynでの磁界の受信結果に基づき検出した当該磁界の周波数の値fが不定状態となったことにより、電子ペン2がセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynから離間した状態であると判定する。そして、周波数監視モードにおいて、磁界の周波数の値fが不定状態となったと判定された場合には、動作モードを周波数監視モードから電圧監視モードに切り替える。これにより、上記実施形態と同様、使用者が電子ペン2を筆記面31L、31R上に放置した状態から、電子ペン2を筆記面31L、31Rから遠く離した状態へ変化したことを、磁界の周波数の値fが不定となったことによって確実に識別することができる。またこのとき、周波数監視モードにおいて、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期が位置検出モードよりも長い周期に変更される。そして、この長い周期で選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の周波数の値fが検出され、上記不定状態の判定が行われる。このようにセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期を長くすることにより、周波数監視モードにおける省電力を確実に実現することができる。
また特に、本変形例によれば、使用者が電子ペン2を筆記面31L、31Rから遠く離した状態から、電子ペン2が筆記面31L、31Rへ再び接近した状態へ変化したことを、磁界の出力電圧の値Vが大きくなったことによって確実に識別することができる。またこのとき、電圧監視モードにおいて、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期が位置検出モードよりも長い周期に変更される。そして、この長い周期で選択されたセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の出力電圧の値Vが検出され、電圧判定が行われる。このようにセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynの信号検出周期を長くすることにより、電圧監視モードにおける省電力を確実に実現することができる。
(2)コイルで受信された磁界の出力態様に基づいて電子ペンの姿勢の状態の判定を行う場合
以上においては、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の周波数態様に基づいて、電子ペン2の姿勢の状態の判定を行っていたが、これに限られない。すなわち、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の出力態様に基づいて、電子ペン2の姿勢の状態の判定を行うようにしてもよい。
図9(a)には、前述の入力姿勢の状態となっている電子ペン2のコイル44から発生された磁界により、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vの分布を表している。なお、図9(a)に示す例では、x軸方向に配列されたm個のセンスコイルX1〜Xmのうち、ある4つのセンスコイルの出力電圧V1,V2,V3,V4の分布を表している。図9(b)には、入力姿勢の状態となっている電子ペン2の位置に最も近いセンスコイルの出力電圧がピーク電圧となる範囲における、パラメータkの値の分布を表している。
図9(a)に示すように、電子ペン2が入力姿勢の状態となっている場合には、前述したように、電子ペン2のコイル44の軸線方向と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル面方向とが、交差する位置関係となる。このような位置関係の場合には、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vは、電子ペン2の位置に最も近いセンスコイルでの出力電圧の値Vをピークとしてx軸方向(又はy軸方向)に対称となる。そして、電子ペン2が入力姿勢の状態となっているときには、電子ペン2の位置に最も近いセンスコイル、この例では出力電圧がピーク電圧V2となるセンスコイル、に隣接するセンスコイルの出力電圧V1,V3のうちどちらか一方、この例では出力電圧V1と、ピーク電圧V2となるセンスコイルに近接する(具体的には出力電圧がV3となるセンスコイルに隣接する)センスコイルの出力電圧V4とは、いずれも相対的に小さな値となる。したがって、図9(b)に示すように、電子ペン2が入力姿勢の状態となっているときには、出力電圧V2がピーク電圧となる範囲におけるパラメータkの値は、所定のしきい値kthよりも大きくなる。なお、このときのパラメータkは、k=V2/V4である。
図10(a)には、前述の放置姿勢の状態となっている電子ペン2のコイル44から発生された磁界により、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vの分布を表している。なお、図10(a)に示す例では、x軸方向に配列されたm個のセンスコイルX1〜Xmのうち、上記図9(a)と同様の4つのセンスコイルの出力電圧V1′,V2′,V3′,V4′の分布を表している。図10(b)には、放置姿勢の状態となっている電子ペン2の位置に最も近いセンスコイルの出力電圧がピーク電圧となる範囲における、パラメータkの値の分布を表している。
図10(a)に示すように、電子ペン2が放置姿勢の状態となっている場合には、前述したように、電子ペン2のコイル44の軸線方向と、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynのコイル面方向とが、略平行となる位置関係となる。このような位置関係の場合には、各センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vは、x軸方向(又はy軸方向)に非対称となり、特有の電圧分布となる。すなわち、上記のような位置関係の変化により、筆記動作が行われる上記入力姿勢の状態と、電子ペン2が置かれた上記放置姿勢の状態とでは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信される磁束の向きが変化し、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信される磁界の出力態様が変化する。すなわち、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vが変化する。そして、電子ペン2が放置姿勢の状態となっているときには、電子ペン2の位置に最も近いセンスコイル、この例では出力電圧がピーク電圧V2′となるセンスコイル、に近接する(具体的には出力電圧がV3′となるセンスコイルに隣接する)センスコイルの出力電圧V4′が、相対的に小さな値とならない。したがって、図10(b)に示すように、電子ペン2が放置姿勢の状態となっているときには、出力電圧V2′がピーク電圧となる範囲におけるパラメータkの値は、上記図9(b)に示す電子ペン2が入力姿勢の状態となっている場合のパラメータkの値に比べて小さくなり、上記しきい値kth以下となる。なお、このときのパラメータkは、k=V2′/V4′である。また、放置姿勢の向きが反対の場合でも同様に、パラメータkの値は、上記しきい値kth以下となる。
本変形例ではこの点に着目し、マイコン80が、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の出力態様、すなわちパラメータkの値がしきい値kthよりも大きくなるか、又はパラメータkの値がしきい値kth以下となるかを判定する。これにより、電子ペン2が放置姿勢の状態にあるか又は入力姿勢の状態にあるかを判定する。そして、k>kthとなった場合には、電子ペン2が入力姿勢の状態にあると判定する。また、k≦kthとなった場合には、電子ペン2が放置姿勢の状態にあると判定する。つまり、本変形例では、このようにして電子ペン2の姿勢の状態の判定を行い、この判定の結果に応じて動作モードの切り替えが行われる。この場合も、上記実施形態や(1)の変形例と同様の効果を得る。なお、上記の例では、出力電圧がピーク電圧となるセンスコイルと当該センスコイルに近接するセンスコイルとの出力電圧の比により、電子ペン2の姿勢の状態を判定したが、これに限られず、他の方法によって当該判定を行うようにしてもよい。
なお、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信された磁界の他の出力態様、例えば、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vのピーク幅が広いか狭いか、あるいは、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで生起される出力電圧の値Vの分布全体の広がり、等を判定することにより、電子ペン2が放置姿勢の状態にあるか又は入力姿勢の状態にあるかを判定するようにしてもよい。また、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121から電子ペン2が離間したか否かの判定を、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の出力態様に基づいて行うようにしてもよい。これらの場合も同様の効果を得る。
(3)その他
上記実施形態や(1)の変形例においては、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121に対し電子ペン2が接近したか否かの判定を、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の出力態様に基づいて行っていたが、これに限られない。すなわち、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121に対し電子ペン2が接近したか否かの判定を、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の周波数態様に基づいて行うようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
また、以上においては、センスコイルX1〜Xm,Y1〜Yn又は接近検出コイル121で受信された磁界の周波数態様や出力態様に基づき、電子ペン2が放置姿勢の状態にあるか又は入力姿勢の状態にあるかの判定を行っていたが、これに限られない。すなわち、例えば加速度センサにより電子ペン2の姿勢の状態を検出し、その検出結果に基づき、電子ペン2が放置姿勢の状態にあるか又は入力姿勢の状態にあるかの判定を行うようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
また、以上においては、電子ペン2が自己電源としての電池43を備え、この電池43の起電力によりコイル44から発生した磁界をセンスコイルX1〜Xm,Y1〜Ynで受信し、電子ペン2とノート30との接触点の座標データの算出を行ったが、これに限られない。すなわち、電子ペン側に自己電源を設けず、装置側のコイルからの磁気誘導により電子ペンの共振回路に起電力を誘起して電子ペンのコンデンサに電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を用いて電子ペンが発生した磁界を装置側のコイルで受信し、電子ペンとノート30との接触点の位置座標を取得してもよい。この場合も同様の効果を得る。
また、以上においては、シート体10に設けたセンスコイル部110が電磁波を電子ペン2と送受する非接触方式によって、電子ペン2とノート30との接触点の位置情報を取得したが、これに限られない。すなわち、上記以外の方式、例えば、ペンを用いてタブレットシート上にて文字列等の筆記動作を行ったときのペンの動きがタブレットシートにより検出される、接触方式によってペンとノート30との接触点の位置情報を取得してもよい。この場合も同様の効果を得る。
なお、以上において、図3中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図7及び図8に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。