本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略しまたは他の構成などに置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
本実施形態の手書き入力システム10は、図1に示すように、電子ペン20と座標検出装置50とを備える。手書き入力システム10では、ユーザが電子ペン20を持つ。電子ペン20は、保存される座標データの入力器として機能する。そして、座標検出装置50は、コイルシート101と、コイルシート102とを備える。例えば座標検出装置50に重なるように置かれたノート12などの筆記面14に、電子ペン20により、手書き文字、図形などが描かれる。電子ペン20により描かれた手書き文字、図形などが、電子的なストロークデータとして保存される。なお、図1に示す手書き入力システム10では、見開き状態にあるノート12の両面に対してコイルシート101とコイルシート102とがセットされている。電子ペン20により記載された手書き文字、図形が、座標検出装置50により検出されて保存される方法の詳細は、後述する。
電子ペン20は、保存される座標データの入力器として機能する。ユーザが、手書き入力システム10を使用する際には、電子ペン20に備えられた不図示の電源スイッチがオンされる。電子ペン20は、図2に示すように、LC発振回路22と、先端スイッチ(先端SW)24と、電池26とを有する。LC発振回路22は、磁界(交番磁界)を発生させる回路である。LC発振回路22は、コンデンサを含む。LC発振回路22で発生される磁界の周波数は、先端スイッチ24のオンまたはオフに基づき、コンデンサの容量を変化させることで変更される。先端スイッチ24がオンの場合、LC発振回路22によって発生される磁界は、オフの場合とは異なる特定の周波数f1となる。一方、先端スイッチ24がオフの場合、LC発振回路22によって発生される磁界は、特定の周波数f2となる。なお、以下では、先端スイッチ24がオンの場合にLC発振回路22から発生される磁界の周波数f1を入力周波数ともいう。また、先端スイッチ24がオフの場合にLC発振回路22から発生される磁界の周波数f2を接近周波数ともいう。LC発振回路22で発生された磁界は座標検出装置50で検出される。f2<f1とすることにより接近周波数f2の磁界を発生する際の消費電力を低減することができる。
先端スイッチ24は、発生させる磁界の周波数を変更するための指令信号28を、LC発振回路22に対して出力するスイッチである。例えば、ユーザが、電子ペン20を用いて、文字などを記述するために電子ペン20の先端202を筆記面14に押しつけたとき、先端スイッチ24がオンとなる。そして、前述の指令信号28が出力される。また、ユーザが、文字などの記述を止め、電子ペン20の先端202を筆記面14から離したとき、先端スイッチ24はオフとされる。この場合、指令信号28は出力されず、LC発振回路22によって発生される磁界の周波数は、変更前の接近周波数f2に戻る。電池26は、LC発振回路22に電力を供給する。不図示の電源スイッチがオンにされることで、電池26は、LC発振回路22に電量を供給する。
座標検出装置50は、図2に示すように、マイコン52と、コイルシート101,102と、接近検出回路56と、位置検出回路58と、周辺回路60と、電池62、スイッチ部64とを備える。マイコン52と、接近検出回路56、位置検出回路58、周辺回路60とは、信号ラインを介して伝送可能に接続されている。コイルシート101,102と、接近検出回路56および位置検出回路58とは、信号ラインを介して接続されている。同じく、接近検出回路56、位置検出回路58および周辺回路60と電池62とは、スイッチ部64を介して電力ラインによって接続されている。
マイコン52は、CPU、ROMおよびRAMと、カウンタ、タイマー、A/D変換機能、割り込み機能などとを一つの集積回路として構成したものである。マイコン52は、座標検出装置50で実行される各種の処理を制御する。例えば、マイコン52は、スリープモードと、ノーマルモードとを切り替える。スリープモードは、低消費電力モードで、座標検出装置50を休止状態にするモードである。ノーマルモードは、座標検出装置50が、電子ペン20により発生された磁界を検出し、ストロークデータを保存する通常動作を行うモードである。マイコン52はスイッチ部64を制御し、スリープモードとノーマルモードとを切り替えながら、接近検出回路56、位置検出回路58および周辺回路60の動作状態を制御する。具体的に、マイコン52からの制御信号70により各回路はスリープモードとノーマルモードとが切替られる。スリープモードでは各回路が休止状態となるため、電力が消費されない(電力消費が低減される)。また、マイコン52自身も前述したようなスリープモードでは電力消費が小さくなる。スリープモードでは後述するように接近検出回路56からの解除信号80による割り込み処理が実行されてノーマルモードに切り替えられる。マイコン52は、詳細に後述する図8に示す処理を実行する。マイコン52が所定の処理を実行することで、所定の機能手段が構成される。本実施形態のノーマルモードと、スリープモードとを切り替える実現手段の詳細は後述する。
図2に示すコイルシート101とコイルシート102とは、図1に示すようにノート12の見開き方向に並列(隣接)して配置されている。コイルシート101とコイルシート102とはそれぞれ、図3に示すように、センスコイル542と、接近検出コイル544とを含む。コイルシート101とコイルシート102とはそれぞれ、図3に示すように配置されたセンスコイル542および接近検出コイル544を導電性インクで印刷形成し、例えば外形が長方形の外観を有する薄板状の構成である。なお、図3では、センスコイル542が破線で示され、接近検出コイル544が実線で示されている。
センスコイル542は、図3に示すように、X軸方向に配列されたm個のループ状のセンスコイルX1〜Xmと、Y軸方向に配列されたn個のループ状のセンスコイルY1〜Ynとによって構成されている。センスコイル542を構成するセンスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとは、電子ペン20によって発生された磁界に対応して、電子ペン20から座標検出装置50に情報を入力するための信号92(図2参照)を発生する。センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとは、例えば表面に絶縁被膜層が形成された銅線によって形成されている。
センスコイルX1〜Xmそれぞれは、X軸方向の幅P1の辺と、P1より長いY軸方向の長さP2の辺とからなり、コーナー部を円弧形状(R形状)とした略長方形状に形成されている。コイル形状はこれに限らない。センスコイルY1〜Ynそれぞれは、X軸方向の幅P3の辺と、P3より短いY軸方向の長さP1の辺とからなり、コーナー部を円弧形状(R形状)とした略長方形状に形成されている。センスコイルX1〜Xmと、センスコイルY1〜Ynとは交差、具体的には直交した位置関係で配置されている。センスコイルX1〜Xmそれぞれは、所定の一定ピッチでX軸方向に連続して配列されている。同様に、センスコイルY1〜Ynそれぞれは、所定の一定ピッチでY軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接するセンスコイルX1〜Xmは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。同じく隣接するセンスコイルY1〜Ynは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。なお、図3では、センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとの各辺が重ならないようにしているため、このようなピッチで配列された状態では図示されていない。センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとは、それぞれの一端である各引出線543aが、後述する位置検出回路58のマルチプレクサ(multiplexer、以下、「MUX」ともいう。)582に接続される。一方、他端である各引出線543bはグランドに接続される。また、センスコイルX1〜Xm、Y1〜Ymの形状は、上記で示したものに限らない。例えば、コーナー部が直角である長方形状であってもよいし、略楕円形状であってもよい。
接近検出コイル544は、電子ペン20の先端スイッチ24がオフの状態でLC発振回路22から発生された接近周波数f2の磁界との磁気誘導によって信号72(図2参照)を発生する。図3に示すようにセンスコイル542とは異なり、接近検出コイル544は、一つのループ状のコイルによって構成されている。なお、図3では図示を省略しているが、接近検出コイル544にも、上述したセンスコイル542の引出線543a,543bのような引出線が形成されている。そして、接近検出コイル544の一端は、後述する接近検出回路56、詳細にはバンドパスフィルタ562に接続され、他端はグランドに接続されている。
また、センスコイル542は、図4に示すセンスコイル領域S(図4でハッチングされた領域S参照)を形成する。センスコイル領域Sは、X軸方向の2つの線分と、Y軸方向の2つの線分とによって形成されている。X軸方向の各線分は、センスコイルX1〜Xmの幅P1の辺の部分をX軸方向に連結して形成される。Y軸方向の各線分は、センスコイルY1〜Ynの長さP1の辺の部分をY軸方向に連結して形成される。接近検出コイル544の一部である部分544a,544b,544c,544dは、センスコイル領域Sの内側に配置されている。部分544a〜544dは、長方形の形状をしたコイルシート101,102の外形に沿って配置されている部分である。また、部分544a〜544dは、センスコイル領域Sの外側に配置してもよい。このような構成によれば、接近検出コイル544の検出範囲を広くすることができ、電子ペン20の接近を素早く検知できる。
また、接近検出コイル544の他の一部である部分544e,544f,544g,544hは、センスコイル領域Sの内側から外側に突出して配置されている。部分544e〜544hは、長方形の形状をしたコイルシート101,102の四隅に対応して配置されている部分である。ところで、接近検出コイル544は、部分544e〜544hを形成することなく、部分544a〜544dによって、全周がコイルシート101,102の外形に沿った形状とすることもできる。ただし、このような形状の接近検出コイルでは、コイルシート101,102の四隅部分と、これ以外の部分とで、接近検出コイルとの距離が変化することとなる。つまり、コイルシート101,102の四隅部分と、これに対応する部分、具体的には互いに接する二辺(例えば、部分544aと部分544dとに対応する2つの部分)によって形成される接近検出コイルの四隅部分との距離が、図4に示すL1と比較して長くなる。したがって、電子ペン20がコイルシート101,102の四隅部分の方向から座標検出装置50に接近してきた場合、これ以外の部分の方向から接近してきた場合と比較し、電子ペン20の接近の検出が遅延してしまう。
この点に関し、接近検出コイル544では、部分544e〜544hをコイルシート101,102の四隅部分側に突出させ、図4に示すL2がL1と同一または同等となるように設定されている。そのため、電子ペン20がコイルシート101,102の四隅部分の方向から座標検出装置50に接近してきたとしても、電子ペン20の接近の検出が遅延することを防止することができる。なお、図3に示すX軸方向は、例えば図1に示すノート12の見開き方向に一致する。したがって、コイルシート101に含まれるセンスコイル542と、コイルシート102に含まれるセンスコイル542とは、ノート12の見開き方向に並列して配置されている。同じく、コイルシート101に含まれる接近検出コイル544と、コイルシート102に含まれる接近検出コイル544とは、ノート12の見開き方向に並列して配置されている。
図2に示す接近検出回路56は、コイルシート101またはコイルシート102いずれかの接近検出コイル544で発生した信号72に基づき、電子ペン20が座標検出装置50に接近したことを検出するための回路である。接近検出回路56は、接近検出コイル544に接続されている。接近検出回路56は、図2に示すように、通過周波数がf2であるバンドパスフィルタ562と、増幅回路564と、整流回路566と、持続検出回路568とを含む。バンドパスフィルタ562は、入力される信号72に対して、不要な帯域を濾波する。そしてバンドパスフィルタ562は、電子ペン20で先端スイッチ24がオフの場合にLC発振回路22から発生される磁界の周波数である接近周波数f2の信号74を通過させる。増幅回路564は、バンドパスフィルタ562を通過した信号74を増幅する。整流回路566は、増幅回路564で増幅された信号76を振幅検波する。持続検出回路568は、ノイズによる誤動作を防止し、f2成分を除去するために、整流回路566で振幅検波された信号78が所定の一定時間継続しているかを検出し、その信号78の振幅(電圧値)が、例えば図8(a)に示す所定の閾値Vthを超えているか判断する。解除信号80は持続検出回路568で接近周波数f2の信号78が一定時間継続し、振幅が閾値Vthを超えたことが検出された場合、休止状態(スリープモード)を解除するためマイコン52に出力される。電子ペン20がコイルシート101またはコイルシート102の上方で接近した場合に解除信号80が出力される。
位置検出回路58は、周知の電子ペン20が存在するコイルシート101,102上の位置を示す座標を検出する回路である。位置検出回路58は、図2に示すように、MUX582と、増幅回路584と、整流回路586とを含む。MUX582は、セレクタ素子として機能し、マイコン52からのコイル選択信号90に基づきセンスコイル542を順番に選択する。そして、MUX582は、選択されたセンスコイル542において、電子ペン20で先端スイッチ24がオンの場合にLC発振回路22から発生される入力周波数f1の磁界との磁気誘導によって発生した信号92(図2参照)を出力する。増幅回路584は、MUX582から入力される信号92を増幅する。増幅回路584で増幅された信号(電子ペン入力検知信号)94は、マイコン52に入力される。また、増幅回路584で増幅された信号96は、整流回路586に入力される。整流回路586は、信号96を振幅検波した後、平滑化して直流信号に変換する。なお、整流回路586で振幅検波された信号98は、マイコン52に入力される。マイコン52ではA/D変換機能を有しており、該入力された信号98をデジタルコードに変換する。
周辺回路60は、図2に示すように、フラッシュメモリ602と、通信インターフェース604と、表示部606とを含む。フラッシュメモリ602には、座標検出装置50で検出された座標データが保存される。通信インターフェース604は、フラッシュメモリ602に保存された座標データ(ストロークデータ)を、パーソナルコンピュータなどの外部装置に提供するためのインターフェースである。具体的に、USB(Universal Serial Bus)接続のためのUSBインターフェースがこれに該当する。また、SDカードなどのメモリカードスロットもこれに該当し、さらに、無線または有線のネットワークインターフェースなども該当する。表示部606は、電池62の残量など所定の情報を表示する。例えばLCD(Liquid Crystal Display)によって構成される。スイッチ部64は、マイコン52からの制御信号70にしたがい、接近検出回路56、位置検出回路58および周辺回路60の電気的な動作状態を切り替える。つまり、スイッチ部64は、マイコン52からの制御信号70にしたがい、電池62と、接近検出回路56、位置検出回路58および周辺回路60との電気的な接続状態を切り替える。例えば、スイッチ部64は、制御信号70にしたがい、接近検出回路56と電池62とが接続され、位置検出回路58および周辺回路60とが遮断(切断)された状態となる。また、スイッチ部64は、制御信号70にしたがい、接近検出回路56と電池62とが遮断され、位置検出回路58および周辺回路60とが接続された状態となる。各回路は、電池62と遮断された状態において、休止状態となり、接続された状態において動作状態となる。
ここで、マイコン52を構成するROMには、図8に基づき後述する座標検出装置50で実行される処理で用いられる位置座標テーブルが記憶されている。以下、この位置座標テーブルについて、図5(a)〜(c)および図6(a),(b)を参照して説明する。なお、以下では、コイルシート101のセンスコイル542を構成するセンスコイルX1〜Xmのうち、センスコイルX1,X2,X3に基づき説明する。コイルシート101のセンスコイル542を構成するセンスコイルY1〜Ynと、コイルシート102のセンスコイル542を構成する、センスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとについても、以下と同様にして、位置座標テーブルを得る。また、図5(a)では、図3とは異なりセンスコイルX1〜X3は、実線で示されている。
図5(a)においてコイルシート101のセンスコイルX1,X2,X3の中心線をそれぞれC1,C2,C3とし、コイルシート101のセンスコイルX1,X2,X3に発生する電圧値をそれぞれex1,ex2,ex3とする。図5(b)に示すように、電圧値ex1〜ex3は、それぞれコイルシート101のセンスコイルX1〜X3の中心C1〜C3において最大になり、長手方向の端部(Y軸方向の長さP2の辺を形成する部分)が近づくにつれて小さくなる単峰性を示す。なお、コイルシート101のセンスコイルX1〜X3は、自己のヌル点が隣接するセンスコイルの中心の外側となるようにP1の2分の1の幅で重ねられる。また、図5(c)に示すように、コイルシート101のセンスコイルX1〜X3の相互に隣接するセンスコイル間の電圧差は、コイルシート101のセンスコイルX1〜X3の中心C1〜C3上にそれぞれ最大値を有する。そして、コイルシート101のセンスコイルX1〜X3の中心とコイルシート101のセンスコイルX1〜X3の長辺部分(Y軸方向の長さP2の辺の部分)との中間点、つまり隣接するコイルシート101のセンスコイルX1〜X3が重なった部分の中間点に最小値を有するグラフとなる。
例えば、図5(c)において(ex1−ex2)を示すグラフの右半分(実線で示す部分)は、コイルシート101のセンスコイルX1の中心C1から、コイルシート101のセンスコイルX2が重ねられた部分の中間点Q2間での距離(重ねピッチの2分の1、つまりP1の4分の1)と(ex1−ex2)との関係を示す。今、仮に電子ペン20が、中間点Q2に存在する場合、(ex1−ex2)を検出すれば、中心C1から中間点Q2点までの距離ΔX1を検出できる。そのため、中間点Q2のX座標を求めることができる。仮にコイルシート101のセンスコイルX1〜X3の幅P1が50mmであるとすれば、P1/4=12.5mmである。例えば、図5(c)において(ex1−ex2)の特性を示す部分(実線で描いた部分)を8bitのデジタルデータに変換すると、図6(a)に示すグラフを得る。このグラフをテーブル形式に変換すると、図6(b)に示す位置座標テーブルを得る。なお、図5(a)では、コイルシート101のセンスコイルX1〜X3の配置を分かり易くするために、コイルシート101のセンスコイルX1〜X3の各辺が重ならないように図示している。
電子ペン20の位置wと、接近検出コイル544で発生する信号72の電圧値Vとの関係について、図7(a),(b)を参照して説明する。以下において、電子ペン20の位置wは、コイルシート101に対する位置を例に説明する。ここで、図7(a)に示すグラフd1は、図7(b)に示す、電子ペン20とコイルシート101との距離dが、d1である場合の結果を示す。同じく、グラフd2は距離dがd2の場合、グラフd3は距離dがd3の場合の結果を示す。なお、距離d1と距離d2と距離d3とは、d1>d2>d3の関係を有する。
また、図7(a)に示す位置wは、図7(b)に示すように、コイルシート101の幅Wの中央から電子ペン20までの距離を示す。なお、コイルシート101の幅Wは、図3に示すX軸方向の幅である。つまり、図7(a)は、コイルシート101に対して距離dが、d1,d2またはd3である電子ペン20を、コイルシート101のX軸方向に移動させた各位置wにおける信号72の電圧値Vの変化を、距離d1,d2,d3毎に示すものである。
距離dを変化させた場合における信号72の電圧値Vは、図7(a)から明らかなとおり、距離d3、距離d2、距離d1の順で高くなる。つまり、距離dが接近するほど、信号72の電圧値Vは高くなる。また、電子ペン20をX軸方向に移動させた各位置wにおける信号72の電圧値Vは、距離d1,d2,d3に関わらず、コイルシート101のX軸方向の中央に接近するにしたがい漸次増加する。そして、幅Wの範囲で、コイルシート101のX軸方向の中央を含む所定の範囲では一定値となる。なお、グラフd1,d2,d3は、X軸方向の中央を中心として対称な形状となる。
距離dがd1である場合、電子ペン20のX軸方向の位置wがいずれの場合であっても、信号72の電圧値Vが、解除信号80を出力するために定めた閾値Vthを超えることはない。これに対し、電子ペン20が接近し、距離dが距離d2である場合、またはさらに接近し、距離d3である場合には、位置wが所定の値となった時点で、信号72の電圧値Vが閾値Vthを超える。つまり、電子ペン20が、コイルシート101の上方に接近すると、接近検出コイル544では、閾値Vthを超えた値の電圧値の信号72が発生する。閾値Vthを超える位置wは、距離d2より距離d3の方が中央から離れた位置となる。
上述した持続検出回路568では、このような信号72に基づいた信号78の電圧値の振幅が、閾値Vthを超え、超えた状態が一定時間継続されたかが判断される。そして、信号72に基づいた信号78の電圧値が、一定時間継続して閾値Vthを超えた場合、マイコン52に、解除信号80が出力される。なお、上記では、コイルシート101の幅Wが、図2に示すX軸方向の幅である場合を例に説明した。電子ペン20をY軸方向に移動させた場合についても、図7(a)のような結果が得られる。また、コイルシート101と同一の構成であるコイルシート102についても、コイルシート101の場合と同一の結果、つまり図7(a)に示す結果が得られる。
次に、座標検出装置50で実行される処理について図8を参照して説明する。この処理は、ユーザが座標検出装置50の電源をオンした場合に開始される。この処理を開始したマイコン52は、座標検出装置50をスリープモードとする(S100)。S100でマイコン52は、スイッチ部64に制御信号70を出力する。マイコン52から制御信号70が入力されたスイッチ部64は、接近検出回路56を動作状態とし、位置検出回路58および周辺回路60を休止状態に切り替える。これによって、電池62から位置検出回路58および周辺回路60への電力の供給は遮断され、接近検出回路56にだけ電力が供給される。なお、休止状態では、例えば後述するS106で開始されるセンスコイル542のスキャン、S110およびS112などといった負荷のかかる処理が実行されないため、マイコン52も、後述するように、解除信号80のみを監視するスリープモードに切り替えられる。これによって省電力が図られる。
S100を実行した後、マイコン52は、座標検出装置50への電子ペン20の接近が検出されたかについて判断する(S102)。電子ペン20が接近したら解除信号80がマイコン52に入力される。マイコン52は、コイルシート101またはコイルシート102いずれかで発生した信号72に基づく接近検出回路56からの解除信号80が入力された場合、S102の判断を肯定し(S102:Yes)、処理をS104に移行する。一方、マイコン52は、解除信号80がマイコン52に入力されていない場合、S102の判断を否定し(S102:No)、S100の処理を継続する。解除信号80の処理には割り込み機能が用いられる。S102でマイコン52は、コイルシート101の接近検出コイル544と、コイルシート102の接近検出コイル544とを交互に繰り返してスキャンする。
S104でマイコン52は、動作した状態となり、座標検出装置50をノーマルモードに切り替える。S104でマイコン52は、接近検出回路56の動作を休止し、動作が休止されている位置検出回路58および周辺回路60を動作状態に切り替える。すなわち、マイコン52は、スイッチ部64に制御信号70を出力する。マイコン52から制御信号70が入力されたスイッチ部64では、動作指令が、接近検出回路56側から位置検出回路58および周辺回路60側に切り替えられる。これによって、電池62から位置検出回路58および周辺回路60への電力の供給が開始される。そして、マイコン52は、処理をS106に移行する。
S106でマイコン52は、コイルシート101およびコイルシート102それぞれのセンスコイル542、つまりコイルシート101およびコイルシート102それぞれのセンスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynのスキャンを開始する。具体的に、マイコン52は、コイルシート101およびコイルシート102それぞれのセンスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとを順番に選択するコイル選択信号90を、MUX582に出力する。そして、マイコン52は、コイルシート101およびコイルシート102それぞれのセンスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとのスキャンを行う。続いて電子ペン20の先端スイッチ24がオンの状態でLC発振回路22から発生された入力周波数f1の磁界と、コイルシート101またはコイルシート102のセンスコイルX1〜XmとセンスコイルY1〜Ynとのいずれかとの磁気誘導によって、信号92が発生する。発生した信号92は、増幅回路584によって増幅される。増幅された信号94がマイコン52に入力される。次に、マイコン52は、入力された信号94に基づき、内蔵のカウンタを用いて入力周波数f1の信号94が検出されたかを判断する(S108)。なお、入力周波数f1の信号94は、ユーザが電子ペン20を用いて筆記面14に文字などを描き出した場合に先端スイッチ24がオンとなり、LC発振回路22で発生される磁界とセンスコイル542との磁気誘導に基づく信号である。S108の判断の結果、入力周波数f1の信号94が検出された場合(S108:Yes)、マイコン52は、処理をS110に移行する。一方、入力周波数f1の信号94が検出されていない場合(S108:No)、マイコン52は、処理をS116に移行する。
S110でマイコン52は、センスコイル542毎の電圧値を比較する。そして、マイコン52は、電圧値の比較から電子ペン20の座標データを算出する(S112)。S110とS112とで実行される処理の詳細は、次のとおりである。なお、以下では、コイルシート101およびコイルシート102それぞれのセンスコイルX1〜Xmを例に説明する。まず、S110では、電子ペン20のLC発振回路22から発生した磁界と、コイルシート101またはコイルシート102のいずれかのセンスコイルX1〜Xmとの磁気誘導によって発生した信号92は、増幅回路584によって増幅される。増幅された信号96は、整流回路586で振幅検波され、振幅検波された信号98は、マイコン52に入力される。マイコン52は、入力された振幅検波後の信号98を、振幅つまり電圧値に対応したデジタル信号に変換する。
続いてマイコン52は、コイルシート101またはコイルシート102のいずれかのセンスコイルX1〜Xmをスキャンして入力された信号98から変換されたデジタル信号によって示される電圧値e1〜emを、コイルシート101またはコイルシート102のいずれかのセンスコイルX1〜Xmのコイル番号と対応付けて、マイコン52を構成するRAMの電圧値記憶エリアに順次記憶する。例えば、マイコン52は、コイルシート101のセンスコイルX1のコイル番号に対応付けて、このセンスコイルX1に基づくデジタル信号によって示される電圧値e1を記憶する。また、コイルシート102のセンスコイルXmのコイル番号に対応付けて、このセンスコイルXmに基づくデジタル信号によって示される電圧値emを記憶する。
S112でマイコン52は、コイルシート101またはコイルシート102のセンスコイルX1〜Xmのコイル番号に対応付けて、電圧値記憶エリアに記憶されている電圧値e1〜emの中で最大の電圧値emaxを選択する。そして、マイコン52は、電圧値emaxを発生したコイルシート101またはコイルシート102のセンスコイルX1〜Xmのコイル番号XmaxをRAMに記憶する。次に、マイコン52は、電圧値emaxを発生したコイルシート101またはコイルシート102のセンスコイルX1〜Xmの両隣のセンスコイルX1〜Xmの電圧値e1〜emのうちいずれか大きい方を決定する。そして、マイコン52は、決定された電圧値e1〜emを発生したコイルシート101またはコイルシート102のセンスコイルX1〜Xmのコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAMに記憶する。例えば、電圧値emaxがコイルシート101のセンスコイルX2によって発生されていた場合、マイコン52は、その両隣のセンスコイルX1の電圧値e1およびセンスコイルX3の電圧値e3を比較し、大きい電圧値e1または電圧値e3を決定する。そして、マイコン52は、決定された電圧値e1を発生したコイルシート101のセンスコイルX1のコイル番号または電圧値e3を発生したコイルシート101のセンスコイルX3のコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAMに記憶する。
続いてマイコン52は、RAMに記憶されたコイル番号maxおよびコイル番号max2を比較して、コイル番号max2はコイル番号maxからX軸の+方向または−方向のどちらに存在しているかを判定する。なお、X軸の+方向とは図3のX軸を示す矢印の方向であり、X軸の−方向とはその逆の方向である。判定の結果、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して+方向である場合、マイコン52は、変数SIDEを1に設定する。一方、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して−方向である場合、マイコン52は、変数SIDEを−1に設定する。例えば、電圧値emaxがコイルシート101のセンスコイルX2で発生され、コイル番号XmaxとしてこのセンスコイルX2を示すコイル番号がRAMに記憶され、コイルシート101のセンスコイルX3のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、マイコン52は、変数SIDEを1に設定する。一方、電圧値emaxがコイルシート101のセンスコイルX2で発生され、コイル番号XmaxとしてこのセンスコイルX2を示すコイル番号がRAMに記憶され、コイルシート101のセンスコイルX1のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、マイコン52は、変数SIDEを−1に設定する。
変数SIDEを設定したマイコン52は、
DIFF=e(max)−e(max2)・・・(1)
を算出する。マイコン52は、算出されたDIFFに最も近い位置座標を、マイコン52を構成するROMに予め記憶されている位置座標テーブル(図6(b)参照)から読み出す。そして、マイコン52は、位置座標テーブルから読み出した位置座標をOFFSETとする。続いてマイコン52は、
X=(P1/2)×max+OFFSET×SIDE・・・(2)
を算出し、電子ペン20のX軸方向の位置を示すX座標を求める。ここで、(P1/2)×maxは、コイル番号maxの中心のX座標を示す。
なお、マイコン52は、電子ペン20のLC発振回路22から発生した入力周波数f1の磁界と、コイルシート101またはコイルシート102のいずれかのセンスコイルY1〜Ynとの磁気誘導によって発生した信号92についても、コイルシート101およびコイルシート102におけるX軸方向のセンスコイルX1〜Xmを例に上述したS110およびS112の各処理を、上記同様に実行する。そして、マイコン52は、S110およびS112を実行して、電子ペン20のY軸方向の位置を示すY座標を算出する。
S112を実行した後、マイコン52は、S112で算出されたX軸方向のX座標およびY軸方向のY座標を、X座標およびY座標を含む座標データとしてフラッシュメモリ602に保存する。そして、マイコン52は、処理をS108に戻し、上述した処理を繰り返して実行する。座標データを時系列にしたがい連続的に保存することによって、連続的な座標データを、電子ペン20を用いて入力される情報に基づいたストロークデータとして保存することができる。フラッシュメモリ602に保存された時系列にしたがった連続的な座標データによるストロークデータは、通信インターフェース604を介してパーソナルコンピュータなどの外部装置に提供され、これによって利用することができる。
S108で入力周波数f1の信号94が検出されておらず(S108:No)、処理がS116に移行した場合、マイコン52は、現時点から最も直近にS108が肯定(S108:Yes)された時間から、予め定められた一定時間Tが経過したかについて判断する。なお、S108の判断が肯定された場合(S108:Yes)、マイコン52は、例えばマイコン52が備える計時手段から取得される、S108の判断が肯定された時点の時間を例えばRAMに記憶する。S116でマイコン52は、このRAMに記憶されている時間と現在時間とを比較し、一定時間の経過を判断する。この他、マイコン52に含まれるタイマーを用いて、S108の判断が肯定された場合(S108:Yes)、タイマーによるカウントを開始し、一定時間のカウントが終了しているかによって、S116の判断を行うようにしてもよい。
S116の判断の結果、一定時間が経過していない場合(S116:No)、マイコン52は、処理をS108に戻す。一方、一定時間が経過している場合(S116:Yes)、マイコン52は、座標検出装置50に対し、この処理の終了が指示されているかについて判断する(S118)。終了は、例えば座標検出装置50の電源スイッチ(不図示)がオフされることで入力される。判断の結果、終了が指示されていない場合(S118:No)、マイコン52は、処理をS100に戻し、上述したように座標検出装置50をスリープモードとし、接近検出回路56を動作状態として、位置検出回路58および周辺回路60を休止状態に切り替えるとともに、マイコン52自身を休止した状態に切り替える。一方、終了が指示されている場合(S118:Yes)、マイコン52は、この処理を終了する。
本実施形態の構成によれば、電子ペン20を用いた情報の入力がなされていない場合(S108:No,S116:Yes)などに、マイコン52は、座標検出装置50を休止状態に移行させる。そして、マイコン52は、スリープモードにおいて、電子ペン20が座標検出装置50に接近したことが、電子ペン20からの接近周波数f2の磁界と接近検出コイル544との磁気誘導によって検出された場合(S102:Yes)、位置検出回路58などに対して電力の供給を再開させる。したがって、座標検出装置50では、電子ペン20を用いた情報の入力がなされない場合の電力消費を低減し、電子ペン20が接近して入力が開始されるタイミングで、必要な動作を行うことができる。
以上説明した本実施形態の構成は、例えば次のような構成としてもよい。
(1)上記では、図8の座標検出装置50で実行される処理が、ユーザが座標検出装置50の電源をオンした場合に開始され、この処理が開始された場合、S100で、マイコン52は、座標検出装置50を休止状態に移行させることとした。この他、座標検出装置50で、ユーザが座標検出装置50の電源をオンした後、一定時間の間、電子ペン20の接近が検出されなかった場合に、座標検出装置50を休止状態に移行させる構成としてもよい。このような構成によっても、座標検出装置50での消費電力を低減させることができる。また、スリープモードではマイコン52は休止するとしたが、クロックを低周波数のものとしてもよい。さらに、座標検出装置50が、2枚のコイルシート101とコイルシート102とを備え構成を例としたが、コイルシート枚数は1枚としてもよい。
(2)座標検出装置が備えるコイルシート枚数が1枚で、例えば上述したコイルシート101のみを備える場合、コイルシート101に含まれるセンスコイル542と、MUX582およびグランドとの接続は、図9(a)のような構成となる。つまり、センスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynでは、それぞれの一端である各引出線543aが、それぞれMUX582に接続される。一方、それぞれの他端である各引出線543bはグランドに接続される。図9(a)の構成を備える座標検出装置に関し、図9(a)に示された接続形態以外の構成は、図2に示す座標検出装置50と同様である。
これに対し、座標検出装置が、2枚のコイルシート101とコイルシート102とを備える場合、コイルシート101とコイルシート102とにそれぞれ含まれるセンスコイル542と、MUX582およびグランドの接続は、図9(b),(c)のような構成となる。図9(a)〜(c)では、センスコイル542、具体的にはセンスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynについての図示は省略している。また、図9(b)の構成を備える座標検出装置または図9(c)の構成を備える座標検出装置に関し、図9(b),(c)に示された接続形態以外の構成は、図2に示す座標検出装置50と同様である。したがって、図9(b)または図9(c)の構成を備える座標検出装置に関し、図2と同様の構成には、図2で用いた符号と同一の符号を用いて説明する。
例えば、図9(b)の構成では、2枚のコイルシート101とコイルシート102とにそれぞれ対応して、2個のMUX582aとMUX582bとが設置される。そして、コイルシート101のセンスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynでは、各引出線543aが、それぞれMUX582aに接続される。一方、各引出線543bはグランドに接続される。同じく、コイルシート102のセンスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynでは、各引出線543aが、それぞれMUX582bに接続される。一方、各引出線543bはグランドに接続される。つまり、図9(b)の構成は、コイルシート枚数に対応した数だけ、図9(a)に示す構成を含む。
図9(c)では、MUX582の設置数を1個とする。そして、コイルシート101のセンスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynの各引出線543aと、コイルシート102のセンスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynの各引出線543aとが、ともに共通のMUX582に接続され、各引出線543bが、ともにグランドに接続される。具体的に、コイルシート101のセンスコイルX1の引出線543aと、コイルシート102のセンスコイルX1の引出線543aとが接続される。そして、各引出線543aが接続された状態でMUX582に接続される。コイルシート101のセンスコイルXmの引出線543aと、コイルシート102のセンスコイルXmの引出線543aとが接続され、接続された状態でMUX582に接続される。また、コイルシート101のセンスコイルX1〜Xmの各引出線543bと、コイルシート102のセンスコイルX1〜Xmの各引出線543bとはグランドに接続される。
同じく、コイルシート101のセンスコイルY1の引出線543aと、コイルシート102のセンスコイルY1の引出線543aとが接続される。そして、各引出線543aが接続された状態でMUX582に接続される。コイルシート101のセンスコイルYnの引出線543aと、コイルシート102のセンスコイルYnの引出線543aとが接続され、接続された状態でMUX582に接続される。また、コイルシート101のセンスコイルY1〜Ynの各引出線543bと、コイルシート102のセンスコイルY1〜Ynの各引出線543bとはグランドに接続される。
図9(c)の構成は、例えば図9(b)のような構成に対して次のような点で好適である。つまり、図9(b)のような構成では、センスコイル542の増加に対応して、センスコイルX1〜XmおよびセンスコイルY1〜Ynのスキャン(例えば図8のS106参照)に要する時間が増加する。その結果、電子ペン20の座標の算出(例えば図8のS112参照)に必要な時間も増加する。したがって、処理のサンプリング周期が長くなる。また、2個のMUX582a,582bを用いるため、消費電力が増加し、基板面積も大きくなってしまう。
これに対し、図9(c)の構成によれば、コイルシート101とコイルシート102とで、共通する閉ループが形成され、両者が同一の値を出力する。そのため、スキャンするセンスコイル数はコイルシート枚数が1枚であるときと比較して増加しない。そのため、位置算出時間の増加と、基板面積の増加と、消費電力の増加とを抑制することができる。また、コイルシート101またはコイルシート102のいずれか一方のセンスコイル542が断線することがある。コイルシート101またはコイルシート102のいずれか一方が取り外されて利用されることもある。図9(c)の構成では、このような場合においても、コイルシート101またはコイルシート102だけで閉ループを形成することができる。そのため、片面専用として信号92を出力することが可能である。
ところで、図9(c)の構成では、コイルシート101およびコイルシート102からの出力が同一となる。そのため、見開き状態にあるノート12のいずれか一方の筆記面14に対して、電子ペン20を用いて文字などが記載された場合、電子ペン20による入力が、コイルシート101の側であるか、コイルシート102の側であるかを判断する必要がある。図9(c)の構成を備える座標検出装置では、この判断を、コイルシート101およびコイルシート102それぞれが備える接近検出コイル544から出力される信号72に基づいて判断する。つまり、接近検出回路56に入力された信号72がコイルシート101の接近検出コイル544からのものである場合、電子ペン20による入力はコイルシート101の側であると判断される。一方、接近検出回路56に入力された信号72がコイルシート102の接近検出コイル544からのものである場合、電子ペン20による入力はコイルシート102の側であると判断される。
また、座標検出装置が、2枚のコイルシート101とコイルシート102とを備える場合、コイルシート101とコイルシート102とはそれぞれ、図2に示す接近検出回路56と接続される。つまり、座標検出装置は、2つの接近検出回路56を備えることになる。そして、コイルシート101とコイルシート102とからそれぞれ出力される信号72が、コイルシート101およびコイルシート102それぞれの接近検出回路56に入力される。さらに、座標検出装置が、2枚のコイルシート101とコイルシート102とを備える場合、コイルシート101およびコイルシート102と、各コイルシート101,102それぞれの接近検出回路56とは、共通のスイッチを介して接続される。共通のスイッチとは、例えば、MUXである。この場合、MUXは、マイコン52から出力される制御信号により、スイッチを切り替える。具体的には、コイルシート101に含まれる接近検出コイルにより、電子ペン20の接近が検出された場合、マイコン52は、コイルシート101と、コイルシート101の接近検出回路56との接続を遮断する制御信号をMUXに送信する。接続を遮断する制御信号を受信したMUXは、コイルシート101と、コイルシート101の接近検出回路56との接続を遮断する。一方、コイルシート102に含まれる接近検出コイルにより、電子ペン20の接近が検出された場合、マイコン52は、コイルシート102と、コイルシート102の接近検出回路56との接続を遮断する制御信号をMUXに送信する。接続を遮断する制御信号を受信したMUXは、コイルシート102と、コイルシート102の接近検出回路56との接続を遮断する。このように、電子ペン20の接近を検出したコイルシートと、そのコイルシートに接続された接近検出回路との接続を遮断することで、不必要なスキャンをなくし、座標検出装置の消費電力を低減することができる。また、接近を検出したコイルシート上に不必要なコイルが形成されないことによりノイズ低減にもつながる。そして、一定時間の間、電子ペン20により、入力がされなかったとき、マイコン52は、コイルシート101およびコイルシート102と、コイルシート101およびコイルシート102とのそれぞれに接続された接近検出回路56とを、再度接続させる制御信号を、MUXに送信する。これにより、コイルシート101およびコイルシート102と、コイルシート101およびコイルシート102とのそれぞれに接続された接近検出回路56とを、再度交互に接続させることができる。
以下、図9(c)の構成を備える座標検出装置で実行される処理について、図10を参照して説明する。なお、図9(a),(b)の構成を備える座標検出装置では、上述した図8に示す処理が実行される。図10に示す処理は、図8に示す処理と同じく、ユーザが座標検出装置の電源(図2で不図示)をオンした場合に開始される。この処理を開始したマイコン52は、コイルシート101の接近検出コイル544(以下、「第1接近検出コイル」ともいう。図10において同じ)と、コイルシート102の接近検出コイル544(以下、「第2接近検出コイル」ともいう。図10において同じ)とを交互にスキャンする(S202)。なお、図10の処理についても図8の処理と同じく、マイコン52は、電源オン後、S202の実行に先立ち、図8のS100と同じ処理を実行し、座標検出装置の状態をスリープモードとする。つまり、マイコン52は、スイッチ部64に制御信号70を出力する。マイコン52から制御信号70が入力されたスイッチ部64は、接近検出回路56を動作状態とし、位置検出回路58および周辺回路60を休止状態に切り替える。
S202を実行した後、マイコン52は、第1接近検出コイルと第2接近検出コイルとを交互に繰り返してスキャンする。そして、マイコン52は、第1接近検出コイルまたは第2接近検出コイルのいずれかにおいて、電子ペン20の接近が検出されたかについて判断する(S204)。なお、S204の処理は、図8のS102と同一の処理である。したがって、その説明は省略する。解除信号80がマイコン52に入力され、S204の判断が肯定される場合(S204:Yes)、マイコン52は、処理をS206に移行する。この際、マイコン52は、スイッチ部64を制御し、休止状態の位置検出回路58および周辺回路60を動作状態に切り替える。なお、この場合、スイッチ部64は、接近検出回路56と、位置検出回路58および周辺回路60とに、電池62から電力が供給される状態となる。一方、解除信号80がマイコン52に入力されておらず、S204の判断が否定される場合(S204:No)、マイコン52は、S202の処理を継続する。
S206でマイコン52は、電子ペン20の接近がコイルシート101の側であるか、コイルシート102の側であるかについて判断する。S206でマイコン52は、自身に入力された解除信号80が、第1接近検出コイルで発生した信号72に基づくものであるか、第2接近検出コイルで発生した信号72に基づくものであるかを判断する。そして、マイコン52は、第1接近検出コイルで発生した信号72に基づくものであった場合、電子ペン20の接近はコイルシート101の側であると判断し(S206:コイルシート101)、処理をS208に移行する。一方、第2接近検出コイルで発生した信号72に基づくものである場合、電子ペン20の接近はコイルシート102の側であると判断し(S206:コイルシート102)、処理をS218に移行する。
S208でマイコン52は、電子ペン20の接近を検出する接近検出コイルを、コイルシート102の側の第2接近検出コイルに固定する。つまり、マイコン52は、S204およびS206の判断において電子ペン20の接近が既に検出されたコイルシート101の側の第1接近検出コイルのスキャンを停止する。そして、マイコン52は、未だ電子ペン20の接近が検出されていない側のコイルシート102の側に電子ペン20が移動したことを検出するため、第2接近検出コイルのみをスキャンする。これによって、座標検出装置における電力消費を低減することができる。
続けて、S210でマイコン52は、MUX582に接続されたセンスコイル542、つまりセンスコイルX1〜Xmと、センスコイルY1〜Ynとを順番に選択するコイル選択信号90を、MUX582に出力し、これらを順次スキャンする。そして、マイコン52は、電子ペン20のX軸方向の位置を示すX座標と、Y軸方向の位置を示すY座標とを算出する。S208で実行される、センスコイル542のスキャンと、X座標およびY座標の算出とは、上述した図8のS106〜S112と同様の処理である。したがって、その説明は省略する。
S212でマイコン52は、S208で算出されたX座標およびY座標を含む座標データを、コイルシート101に関連付けて管理されているデータにマッピングした状態で、フラッシュメモリ602に保存する。つまり、マイコン52は、今回算出されたX座標およびY座標を含む座標データを、それまでに算出され、既にコイルシート101に関連付けて管理されているデータに追加する。
S212を実行した後、マイコン52は、電子ペン20の接近がスキャンされている第2接近検出コイルにおいて、電子ペン20の接近が検出されているかについて判断する(S214)。この判断は、例えば図8のS102と同様に行われる。そして、マイコン52は、自身に解除信号80が入力され、電子ペン20の接近が検出された場合(S214:Yes)、処理をS218に移行する。一方、マイコン52は、自身に解除信号80が入力されておらず、電子ペン20の接近が検出されていない場合(S214:No)、処理をS216に移行する。
S216でマイコン52は、コイルシート101およびコイルシート102の両面に対して、一定時間、電子ペン20による入力が検出されていないかについて判断する。具体的にマイコン52は、現時点から最も直近にS212または後述するS222が実行された時間から、予め定められた一定時間Tが経過したかについて判断する。なお、S216の判断は、図8のS116と同様に行われる。例えば、S212またはS222が実行された場合、マイコン52は、自身が備える計時手段から取得される、その時点の時間を例えばRAMに記憶する。S216でマイコン52は、このRAMに記憶されている時間と現在時間とを比較し、一定時間の経過を判断する。この他、図8のS116の場合と同じく、タイマーによって、一定時間のカウントが終了しているかで判断してもよい。
S216の判断の結果、一定時間、電子ペン20による入力が検出されていない場合(S216:Yes)、マイコン52は、処理をS228に移行する。一方、一定時間経過していない場合(S216:No)、マイコン52は、処理をS210に戻す。そして、マイコン52は、上述したS210〜S214の各処理を繰り返して実行する。
S218でマイコン52は、電子ペン20の接近を検出する接近検出コイルを、コイルシート101の側の第1接近検出コイルに固定する。つまり、マイコン52は、S204およびS206の判断において電子ペン20の接近が既に検出されたコイルシート102の側の第2接近検出コイルのスキャンを停止する。そして、マイコン52は、未だ電子ペン20の接近が検出されていない側のコイルシート101の側に電子ペン20が移動したことを検出するため、第1接近検出コイルのみをスキャンする。これによって、座標検出装置における電力消費を低減することができる。
S218を実行した後、S220でマイコン52は、MUX582に接続されたセンスコイル542、つまりセンスコイルX1〜Xmと、センスコイルY1〜Ynとを順番に選択するコイル選択信号90を、MUX582に出力し、これらを順次スキャンする。そして、マイコン52は、電子ペン20のX軸方向の位置を示すX座標と、Y軸方向の位置を示すY座標とを算出する。S220で実行される、センスコイル542のスキャンと、X座標およびY座標の算出とは、S210の場合と同じく上述した図8のS106〜S112と同様の処理である。したがって、その説明は省略する。
続けて、S222でマイコン52は、S208で算出されたX座標およびY座標を含む座標データを、コイルシート102に関連付けて管理されているデータにマッピングした状態で、フラッシュメモリ602に保存する。つまり、マイコン52は、今回算出されたX座標およびY座標を含む座標データを、それまでに算出され、既にコイルシート102に関連付けて管理されているデータに追加する。
S222を実行した後、マイコン52は、電子ペン20の接近がスキャンされている第1接近検出コイルにおいて、電子ペン20の接近が検出されているかについて判断する(S224)。この判断は、例えば図8のS102と同様に行われる。そして、マイコン52は、自身に解除信号80が入力され、電子ペン20の接近が検出された場合(S224:Yes)、処理をS208に移行する。一方、マイコン52は、自身に解除信号80が入力されておらず、電子ペン20の接近が検出されていない場合(S224:No)、処理をS226に移行する。
S226でマイコン52は、コイルシート101およびコイルシート102の両面に対して、一定時間、電子ペン20による入力が検出されていないかについて判断する。S226は、上述したS216と同様の処理である。したがって、その説明は省略する。S226の判断が肯定される場合(S226:Yes)、マイコン52は、処理をS228に移行する。一方、S226の判断が否定される場合(S226:No)、マイコン52は、処理をS220に戻す。そして、マイコン52は、上述したS220〜S224の各処理を繰り返して実行する。
S228でマイコン52は、座標検出装置に対し、この処理の終了が指示されているかについて判断する(S228)。終了は、図8のS118の場合と同じく、例えば座標検出装置の電源スイッチ(不図示)がオフされることで入力される。判断の結果、終了が指示されていない場合(S228:No)、マイコン52は、処理をS202に戻し、上述した各処理を繰り返して実行する。一方、終了が指示されている場合(S228:Yes)、マイコン52は、この処理を終了する。
図10に示す処理によって、電子ペン20を用いてコイルシート101の側に連続的に入力される情報に基づいた座標データを、コイルシート101の側に入力された時系列にしたがった連続的なストロークデータとして保存することができる。また、電子ペン20を用いてコイルシート102の側に連続的に入力される情報に基づいた座標データを、コイルシート102の側に入力された時系列にしたがった連続的なストロークデータとして保存することができる。つまり、コイルシート101の側への入力によるストロークデータと、コイルシート102の側への入力によるストロークデータとを、フラッシュメモリ602に別々に保存し、管理することができる。
ところで、図9(c)のようなセンスコイル542とMUX582との接続形態は、座標検出装置が備えるコイルシートの大型化にも対応することができる。つまり、コイルシート101とコイルシート102とを、1枚の大きなコイルシート103と見立て、2つの接近検出コイル(以下、各接近検出コイルを「第1接近検出コイル544L」、「第2接近検出コイル544R」ともいう。)を設ける。この点について、図11および図12を参照して説明する。なお、図11では、センスコイル542’が破線で示され、第1接近検出コイル544Lおよび第2接近検出コイル544Rが実線で示されている。また、図11および図12に示す構成を備える座標検出装置に関し、図11および図12に示された接続形態以外の構成は、図2に示す座標検出装置50と同様である。したがって、図11および図12に示す構成を備える座標検出装置に関し、図2と同様の構成には、図2で用いた符号と同一の符号を用いて説明する。
コイルシート103は、図11に示すように、センスコイル542’を含む。センスコイル542’は、X軸方向に配列されたセンスコイルLX1〜LXmおよびセンスコイルRX1〜RXmと、Y軸方向に配列されたセンスコイルY1〜Ynとによって構成されている。センスコイルLX1〜LXmおよびセンスコイルRX1〜RXmはそれぞれX軸方向に配列された同数のコイルである。第1接近検出コイル544Lは、センスコイルLX1〜LXmに対応して配置されている。第2接近検出コイル544Rは、センスコイルRX1〜RXmに対応して配置されている。センスコイルY1〜Ynは、センスコイルLX1〜LXmおよびセンスコイルRX1〜RXmを横断して配置されている。
つまり、コイルシート103では、X軸方向に配列されたセンスコイルが、センスコイルLX1〜LXmとセンスコイルRX1〜RXmとの2つのグループに分けられている。そして、センスコイルLX1〜LXmおよびセンスコイルRX1〜RXmでは、図11および図12に示すように、図9(c)の場合と同じくそれぞれの出力が共通化されている。具体的に、センスコイルLX1の引出線543aと、センスコイルRX1の引出線543aとが接続され、接続された状態でMUX582に接続される。センスコイルLXmの引出線543aと、センスコイルRXmの引出線543aとが接続され、接続された状態でMUX582に接続される。また、センスコイルLX1〜LXmの各引出線543bと、センスコイルRX1〜RXmの各引出線543bとはグランドに接続される。なお、センスコイルY1〜Ynについては、各引出線543aがそれぞれMUX582に接続され、各引出線543bはグランドに接続される。
このような構成のコイルシート103によれば、2枚のコイルシートを1枚のコイルシートとして考えることが可能となる。そして、コイルシート103を備える座標検出装置では、図10に基づき上述した処理と同様の処理が実行される。そのため、装置の大型化に対しても、基板面積および消費電力の増加を抑えるといったメリットを得ることができる。