JP2015063678A - シート成形用ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents

シート成形用ポリプロピレン樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】加工性、透明性および剛性に優れたシートを与えるポリプロピレン樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、並びに(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体で、該重合体の25℃でのキシレン不溶分が95〜98重量%であり、多分散指数が3.0〜4.5である重合体と結晶核剤を含む組成物で、該組成物の230℃におけるメルトフローレートが3.0〜7.8g/10分であり、前記組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線において複数の結晶化ピークを有し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下、かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である、シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、シート成形用のポリプロピレン樹脂組成物に関する。詳しくは、加工性に優れ、かつ透明性および剛性に優れたシートを与えるポリプロピレン樹脂組成物に関する。
安価で剛性、耐湿性、および耐熱性に優れているポリプロピレンは、各種産業分野において広く使用されている。特にポリプロピレン系樹脂組成物は、外観、機械的性質、包装適性等が優れているため、成形品、特に食品包装や繊維包装などの包装用途におけるシート状成形品の製造に用いられている。包装用途においては、特に内容物を確認することができるように透明性が要求される。
ポリプロピレン樹脂組成物の透明性を改善するために、いくつかの提案がなされている。特許文献1には、プロピレンとエチレンの共重合体に透明化核剤を添加する方法が開示されている。特許文献2には、ジイソブチルフタレートを電子供与体化合物として用いた触媒によって重合して得たポリプロピレンに透明化核剤を添加する方法が開示されている。特許文献3には、ポリオレフィン系高分子に特定の構造を有する環状リン酸エステルのリチウム塩、脂肪族有機酸金属塩および有機酸アミドの構造を有する特定の化合物を含有してなる結晶性高分子組成物が開示されている。特許文献4には、ポリプロピレン系樹脂と、特定のソルビトール系の構造を有する化合物とを含む、熱成形シート用ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
これらの特許文献では、樹脂の透明性を改善することについては言及されているが、シート成形性や2次加工性、加熱(2次加工)後の成形品の透明性などについては言及されていない。
特開2010−242046号 特開2001−2859号 特開2005−120237号 特開2009−299039号
発明者らは予備的に前記特許文献に記載の方法について検討したところ、特にこれらの樹脂組成物の透明性と加工性が十分なレベルではないとの知見を得た。かかる事情に鑑み、本発明は、加工性に優れ、かつ透明性および剛性に優れたシートを与えるポリプロピレン樹脂組成物を提供することを課題とする。
発明者らは、特定の触媒を用いて重合されたポリプロピレンと結晶核剤を含み、特定のメルトフローレート(以下「MFR」ともいう)、キシレン不溶分、および多分散指数を有するポリプロピレン樹脂組成物により前記課題を解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
[1](A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、ならびに
(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物、
を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体100重量部に対し、
結晶核剤0.01〜1重量部を含み、
前記ポリプロピレン単独重合体の25℃でのキシレン不溶分が95〜98重量%であり、多分散指数が3.0を超えかつ4.5未満であり、
前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが3.0〜7.8g/10分であり、
前記組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線において複数の結晶化ピークを有し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下、かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である、
シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
[2]前記組成物から製造したシート。
本発明の方法により、加工性に優れ、かつ透明性および剛性に優れたシートを与えるポリプロピレン組成物が得られる。
実施例1における100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線を示す図 比較例1における100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線を示す図 反復アニーリングを示す図 実施例4における最終融解曲線を示す図 比較例1における最終融解曲線を示す図 比較例3における最終融解曲線を示す図
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」は両端の値を含む。
I.本発明のポリプロピレン樹脂組成物
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン単独重合体100重量部に対し、結晶核剤0.01〜1重量部を含む。以下、成分や特性について説明する。
1.ポリプロピレン単独重合体
本発明で用いるポリプロピレン単独重合体(以下単に「ポリプロピレン」ともいう)は、(A)特定の固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、および(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物を含む触媒によって得られる。ただし、本発明の単独重合体は、重合体の製造プロセスの特質上混入する可能性のある微量(0.3重量%未満)のα−オレフィンとの共重合体も含む。
(A)成分である固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する。この固体触媒成分については、多くの先行技術文献が、その製造方法を提示している。具体的には、この固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物ならびに電子供与体化合物を相互接触させることにより得られる。例えば、次の方法が知られている。
(1)マグネシウム化合物もしくはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体と、反応条件下に液相をなすチタン化合物とを、反応させる方法(前記錯化合物は、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下で粉砕して用いてもよいし粉砕せずに用いてもよい)、
(2)マグネシウム化合物の液状物と、液状のチタン化合物を電子供与体化合物の存在下または不存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法、
(3)固体状のマグネシウム化合物と液状のチタン化合物および電子供与体化合物と反応させる方法、
(4)上記(2)や(3)で得られるものに、さらにチタン化合物を反応させる方法、
(5)上記(1)や(2)や(3)で得られるものにさらに電子供与体化合物およびチタン化合物を反応させる方法、
(6)マグネシウム化合物またはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を、電子供与体化合物、およびチタン化合物の存在下に粉砕し、電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法(前記粉砕は、粉砕助剤等の存在下で行ってもよい)、
(7)前記(1)〜(5)で得られる化合物を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物、または芳香族炭化水素で処理する方法。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:
Ti(OR)4−g
(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。
より具体的には、TiCl、TiBr、TiIなどのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(OisoC)Brなどのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−CCl、Ti(OCBrなどのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−CCl、Ti(OCBrなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(O−Cなどのテトラアルコキシチタンなどが挙げられ、これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、とくにテトラハロゲン化チタンであり、とくに好ましいものは、四塩化チタンである。
固体触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物として、マグネシウム・炭素結合やマグネシウム・水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状状態であっても固体状態であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、弗化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フエノキシ塩化マグネシウム、メチルフエノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フエノキシマグネシウム、ジメチルフエノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸又は無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートのような含窒素電子供与体などが知られているが、本発明においてはフタレート系の電子供与体化合物が好ましい。フタレート系の化合物とは、フタル酸エステルであり、例えば、ジイソブチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−n−フェニルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ヘキシルフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレートまたはジ−2−エチルへキシルフタレート等の公知のものを使用できる。中でもジイソブチルフタレートが特に好ましい。
(B)成分である有機アルミニウム化合物は、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシドのほかに、R 2.5Al(OR0.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム等から選択することができる。
(C)成分である電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、本発明では、有機ケイ素化合物を用いる。好ましい有機ケイ素化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサンなどが挙げられ、とりわけエチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、2−ノネボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ケイ酸エチルなどが挙げられる。
有機ケイ素化合物は、特にキシレン不溶分の量を本発明で特定する範囲に調整するのに重要な役割を果たす。他の触媒成分が同じ場合、キシレン不溶分の量は、有機ケイ素化合物の種類と量および重合温度に依存するが、適切な有機ケイ素化合物を用いた場合においても、通常ジエーテル系触媒を除き、有機ケイ素化合物の量が特定の値以下になると大きく低下する。このため、重合温度が75℃の場合、有機ケイ素化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比の下限は0.015が好ましく、0.018がより好ましい。当該比の上限は、0.30が好ましく、0.20がより好ましく、0.10がさらに好ましい。内部電子供与体化合物としてフタレート系化合物を用いる場合は、重合温度を上げるとキシレン不溶分が増加するので、好ましい有機ケイ素化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比の下限および上限が低下する。
2.結晶核剤
本発明の第2成分である結晶核剤は、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。結晶核剤は、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含むことが好ましい。
キシリトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、ビス−1,3:2,4−(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン)1−アリルキシリトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−プロピルキシリトールが挙げられる。
ソルビトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−メチル−4’−フルオロ−ベンジリデン)1−プロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1’−メチル−2’−プロペニルソルビトール、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’,3’−ジブロモプロピルソルビトール、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’−ブロモ−3’−ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、モノ2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−メチルソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(ベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール等が挙げられる。
このうち、市販の結晶核剤としては、ノニトール系では例えば1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含むMillad NX8000、NX8000K、NX8000J(以上ミリケンジャパン株式会社製)、ソルビトール系ではRiKAFAST R−1(新日本理化株式会社製)、Millad 3988(ミリケンジャパン株式会社製)、ゲルオールE−200(新日本理化株式会社製)、ゲルオールMD(新日本理化株式会社製)等が挙げられる。
リン酸エステル系結晶核剤として、アルミニウム−ビス(4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−メチレンジフェニル−ホスファート)−ヒドロキシド、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウム塩系化合物等が挙げられる。市販のリン酸エステル系結晶核剤として、例えばアデカスタブNA−21(株式会社ADEKA製)、アデカスタブNA−71(株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
トリアミノベンゼン誘導体結晶核剤として、例えば、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。市販のトリアミノベンゼン誘導体結晶核剤として、例えばIRGACLEAR XT386(BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
カルボン酸金属塩核剤として、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩等が挙げられる。市販のカルボン酸金属塩核剤として、例えばHyperform HPN−20E(ミリケンジャパン株式会社製)などが挙げられる。特に2次加工(加熱)後の透明性を維持するためには、ノニトール系核剤またはソルビトール系核剤の使用が好ましい。
これらの結晶核剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
結晶核剤の配合量は、樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部であるが、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。
さらに本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などのオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。
3.特性
本発明の第1成分であるポリプロピレンの25℃でのキシレン不溶分は95〜98重量%であり、好ましくは96〜98重量%である。キシレン不溶分は後述する方法で求められる。キシレン不溶分はポリプロピレンの立体規則性の指標である。本発明では、キシレン不溶分が95〜98重量%と比較的低い。すなわち、本発明では立体規則性を比較的低くすることで高い透明性を達成する。本発明はこの点において、エチレン等との共重合によりポリプロピレンの透明性を向上させる従来の方法とは相違する。
本発明の第1成分であるポリプロピレンの多分散指数(PI)は3.0を超え4.5未満であり、3.5以上4.5未満が好ましい。PIが3.0以下であるとドローダウン時間が短くドローダウンし易い。PIが4.5以上であると透明性が悪化する。多分散指数は後述する方法で測定できる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の、230℃におけるメルトフローレートは、3.0〜7.8g/10分である。その上限は、7.5g/10分以下が好ましく、7.0g/10分以下がより好ましく、6.0g/10分以下がさらに好ましい。その下限は3.2g/10分以上が好ましく、3.5g/10分以上がより好ましい。メルトフローレートが3.0g/10分未満では成形性が悪くなる。また、ロールへの転写性が悪くなる結果、透明性が低下する。メルトフローレートが7.8g/10分を超えると耐ドローダウン性が悪化するとともに耐衝撃性も低下する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、実際のシート成形の冷却速度に対応する100℃/秒の冷却速度における結晶化曲線において複数のピークを示し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である。最高温側の結晶化ピークトップ温度が上記の値以下であることにより、シート成形時の冷却固化が速過ぎて成形が困難になることがなく、低温側の結晶ピークトップ温度が上記の値以下であることにより、メゾフェーズが形成されることで透明性に優れるシートを得ることができると考えられる。さらに、上記最高温側の結晶化ピークトップ温度と上記最低温側の結晶化ピークトップ温度との温度差が、30℃以上であることが好ましい。これにより、成形温度の制御範囲が広がり、加工性が向上する。
また、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱するという熱分析を行って得た最終融解曲線において、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーの、全体の融解エンタルピーに対する割合が15%以下であることが好ましい。極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返すとは、図2に示すように、加熱温度の最大値が徐々に低くなるように反復して加熱と冷却を繰り返してアニーリングを行うことである。本発明においては、極大加熱温度は5℃ずつ低くなるようにし、最低温度は20℃、昇(降)温速度は10℃/分、最終の極大加熱温度を80℃とすることが好ましい。このようにアニーリングを行ったサンプルを再度加熱して、最終融解曲線の全融解エンタルピー(ΔHtot)と、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピー(ΔH175 o C)を求める。本発明においては、ΔH175 o C/ΔHtotは15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。後で詳しく述べるとおり、最終融解曲線の175℃以上で融解する成分は、ポリプロピレン単独重合体における「欠陥の少ない成分」に相当する。この成分が高温で結晶化して形成する規則的な高次構造は光の散乱の要因となり、透明性を悪化させる。したがって、ΔH175 o C/ΔHtotが15%以下であると透明性に優れるシートを得ることができる。
4.用途
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、シート状成形品用途に特に好適に用いることができる。シート状成形品への使用に好適な理由として、好適なシート成形性(押出特性)と2次加工性(耐ドローダウン性)と、成形品が良好な剛性を有することが挙げられる。従来シート状成形品用途に用いられてきた透明なポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工特性、特にシートの2次加工性が充分でなかった。シート成形性を向上させるためにメルトフローレートを増加させると、2次加工性が低下し、2次加工性を向上させる為にメルトフローレートを低下させるとシート成形性が低下するという相関関係があった。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、透明性と好適なシート成形性を維持しつつ、2次加工性を向上させることができた。シートの厚みは、100〜1,000μmが好ましい。
II.本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
次に本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法を具体的に説明する。
本発明の組成物に使用されるポリプロピレン単独重合体は、既存のスラリープロセス(液体モノマー中の重合)や気相重合等で得られる。また、各後続の重合が直前の重合反応中に形成された重合性物質の存在下で行われる少なくとも2つの逐次重合ステージを具備する逐次重合方法を用いてもよい。
また、ポリプロピレン単独重合体を得る方法として、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いて行う方法が挙げられる。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法では、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物、あるいは両者を下降管中に導入する。
上記の重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
重合ステージは、立体特異的チーグラーナッタ(Ziegler−Natta)触媒の存在下で行われる。好ましい実施形態によれば、全重合ステージは、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;(B)有機アルミニウム化合物;および(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物含む触媒成分の存在下で行われる。上記特徴を有する触媒は、特許文献により周知である。重合ステージは、液相中、気相中又は液−気相中で生じてもよい。ポリプロピレン単独重合体の調製用の重合ステージにおける反応温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃の範囲であり、さらに好ましくは70〜80℃の範囲である。ポリプロピレン単独重合体を調製するための重合ステージの圧力は、液体モノマー中で行われる場合には、用いられる運転温度での液体プロピレンの蒸気圧と競合する圧力であり、触媒混合物を供給するために用いられる少量の不活性希釈剤の蒸気圧によって、モノマーの過圧によっておよび分子量調節剤として用いられる水素によって調節されてもよい。
重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜45barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素又はZnEthyl)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
結晶核剤の添加は、例えば、重合により得られた重合パウダーと結晶核剤を酸化防止剤とともにヘンシェルミキサー、ブラベンダー等で撹拌した後、押出機を用いて180℃から280℃で溶融ブレンドして行うことができる。結晶核剤や酸化防止剤の添加は、重合、残留モノマー除去、乾燥工程を経た後、連結された押出機を用いて行ってもよい。重合パウダーは50〜5,000μmの平均粒径(光散乱法による)を有する。表面積の大きい重合パウダーと結晶核剤とを混合することで結晶核剤の分散が良好となり、得られるシートの透明性がより向上する。
特に、また本発明においては、高濃度の結晶核剤をポリプロピレンと溶融混練した、いわゆるマスターバッチをシート成形時にポリプロピレン樹脂に混合してもよい。
また、本発明においては、MFRの制御を押出機による溶融混練時の熱的分解、機械的分解(分子切断)、または双方により行なうことができる。押出機によるMFRの制御は、樹脂温度やスクリュー回転数の選定、酸化防止剤の調整や有機過酸化物の添加により行なうことができる。一般的に欠陥の割合が少ない高分子量の成分の方が優先的に分解されるので、分解によるMFR制御により、欠陥の少ない成分が減少する結果、透明性がより向上すると考えられるが、この理論に限定されない。
以下に実施例により本発明についてさらに説明する。なお、実施例における分析等は以下の方法で行った。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
[キシレン不溶分]
2.5gのポリマーを攪拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させた。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させた。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%(100−可溶性のポリマーの重量%)は、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。
[エチレン含有量(C2)]
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した値から算出した。
[多分散指数]
190℃の温度において、PaarPhysica社製UDS200を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に増加する振動数で駆動させることによって測定した。多分散指数の値は、以下の等式を用いてクロスオーバー弾性率から誘導した。
PI=10/Gc
式中、Gcは、G’=G”(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)における値(Paとして表す)として定義されるクロスオーバー弾性率である。
[スタンダードDSCによる結晶化ピークトップ温度、融解ピークトップ温度および融解熱の測定]
0.3mm厚のシートから約5mgをサンプリングし、電子天秤で秤量した後、示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社製 Q−200)で230℃まで加熱して、当該温度で5分保持して融解し、10℃/分の速度で30℃まで冷却して結晶化曲線を得た。引続き、30℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱して融解曲線を得た。上記結晶化曲線から結晶化ピークトップ温度、上記融解曲線から融解ピークトップ温度及び融解熱を算出した。10℃/分の冷却速度は、実際のシート成形における冷却速度よりはるかに遅いが、結晶化ピークトップ温度は結晶化し易さ、融解ピークトップ温度と融解熱は、それぞれ組成物が有する耐熱性と結晶化度(剛性に影響)のポテンシャルの目安となる。
[超高速DSC測定による高温側結晶化ピークトップ温度及び低温側結晶化ピークトップ温度の測定]
プレス成形にて作製した10μm厚フィルムから100μm×100μm程のサンプルを切り出した後、メトラートレド社製のFlashDSC1にサンプルを装着し、230℃で5分間保持して融解した後、100℃/秒の速度で冷却して結晶化曲線を得た。
図1Aおよび1Bに、実施例1および比較例1で得た樹脂組成物の100℃/秒で冷却した結晶化曲線を示す。
[最終融解曲線による欠陥の少ない成分の割合の算出]
最終融解曲線は、0.3mm厚のシートから約5mgをサンプリングし、電子天秤で秤量した後、通常の示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社製 Q−200)を使用して得た。具体的には、まず、測定試料を、一旦、融解した後、冷却した。次いで、図2に示すように、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱し、その再加熱の際の測定試料の熱分析を行って、最終融解曲線を得た。最終融解曲線の熱分析は、通常のDSCと同様の分析であり、簡便である。
極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返す熱処理では、測定試料のアニーリングとその後の冷却による結晶化とが高温から順次繰り返される結果、欠陥の少ない分子から順次、結晶を容易に形成することができる。また、冷却時に低温で形成された欠陥の多い分子からなる結晶は、極大加熱温度が充分低くなるまでは、昇温および極大加熱温度で保持している間に融解する。以下、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返す熱処理のことを、「反復アニ−リング処理」という。
反復アニーリング処理での加熱および冷却では、例えば、一定の昇温速度でTsまで加熱し、温度を保持した後、一定の降温速度で20℃まで冷却し、次いで、Ts−5[℃](この温度をTsとする。)まで一定の昇温速度で加熱し、温度を保持した後、一定の降温速度で20℃まで冷却する。その後、n回目の加熱の際の極大加熱温度TsがTs−5×(n−1)[℃]になるように加熱および冷却を繰り返す。Tsが80℃になるまで繰り返すと、欠陥の多い成分に対しても信頼性の高い結果が得られる。
また、最終融解曲線を得る際の再加熱では、それぞれの極大加熱温度でのアニーリングとその後の冷却時の結晶化によって得られた結晶全ての融解挙動を得るため、一定の昇温速度で、20℃から200℃以上まで昇温する。高温で結晶化した欠陥の少ない分子からなる結晶は融点が高くなる一方、低温で結晶化した欠陥の多い分子からなる結晶は融点が低いので、最終融解曲線は試料の欠陥の分布を反映する。
実施例では、上記の方法において、測定試料を230℃で30分間融解後、10℃/分で20℃に冷却して10分間保持した。引続き、Tsを170℃、昇温速度と降温速度を10℃/分、保持時間を10分として得られた最終融解曲線において、以下の式により、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピー(ΔH175 o C)の、全体の融解エンタルピー(ΔHtot)に対する割合(S)を求め、欠陥の少ない成分の割合の指標とした。
S=ΔH175℃/ΔHtot
図3A、3Bおよび3Cにそれぞれ実施例4、比較例1、および比較例3の最終融解曲線を示す。
[シート成形]
25mmφ単層押出型エアーナイフ付キャストシート成形機を用い、ポリプロピレン樹脂組成物からシートを製造した。スクリュウとしてフルフライトスクリュウを使用した。当該スクリュウのL/Dは24であった。
成形条件を以下に示す。
<温度>
C(シリンダー)1:200℃、C2:230℃、C3:250℃、C5:250℃、H(ネック):250℃
D(ダイス)1:250℃、D2:250℃、D3:250℃
<スクリュウ回転数>
約90rpm
<ロール設定温度>
80℃
<引取り速度>
約1.3〜1.5m/分
<シート厚み>
0.3mm
[剛性(テーバースティフネス)]
上記のように成形した0.3mm厚みのシートを用いて、ASTM D747に準拠して測定した。
[透明性]
ISO 14782に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用し、上記のように成形した0.3mm厚みのシートのヘーズ測定を行い、透明性を評価した。同時に成形条件に由来するシート表面の凹凸の影響を除外するため、シートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033-00)を刷毛にて塗布し、同様にヘーズ測定を行った。前者を「全ヘーズ」、後者を「内部ヘーズ」と定義した。またシート表面の寄与を見るため、「外部ヘーズ」(「全ヘーズ」−「内部ヘーズ」)を定義した。
[耐ドローダウン性]
100mm×150mmの金枠に固定した厚み約0.3mmのシートを、210℃(ポリプロピレンの平衡融点である約186℃を超え、真空成形における予熱温度付近である温度)のオーブンに入れ、融解後、シートが張り戻った時刻tから自重によりシート中央部が2cm垂れ下がるまでの時刻tまでの時間(t−t)により耐ドローダウン性を評価した。ドローダウンは製品肉厚の不均一を招く原因になる。ドローダウン時間(t−t)が長いほどドローダウンし難いので、2次加工性に優れる。
[実施例1]
(1)固体触媒成分の調製
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。該固体触媒は、MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。
(2)重合および組成物の製造
上記固体触媒と、TEALおよびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が8であり、CHMMS/TEALのモル比が0.02となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、ポリプロピレンを製造した。
得られたパウダー状のポリプロピレン100重量部に、結晶核剤として、ノニトール系核剤(ミリケンジャパン株式会社製Millad NX8000K)を0.5重量部、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.08重量部および中和剤(カルシウムステアレート)を0.05重量部とともに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練してポリプロピレン樹脂組成物を得た。
[実施例2]
異なる種類と量の結晶核剤を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。使用した結晶核剤は、アデカスタブNA−71(リン酸エステル系結晶核剤、株式会社ADEKA製)であった。
[実施例3および4]
CHMMS/TEALのモル比および水素濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
[実施例5]
パウダー状のポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PX600N)に、結晶核剤として、ノニトール系核剤(ミリケンジャパン株式会社製Millad NX8000K)を5重量%、ポリプロピレンと結晶核剤の総和100重量部に対し、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.08重量部および中和剤(カルシウムステアレート)を0.05重量部とともに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練してマスターバッチを準備した。
このマスターバッチと実施例1で得たパウダー状のポリプロピレンとを押出機を用いて230℃で溶融混練して、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。ただし、樹脂組成物中の結晶核剤、酸化防止剤および中和剤の濃度は、実施例1の樹脂組成物の濃度と同じになるようにした。
[実施例6および7]
水素濃度を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
[比較例1]
外部電子供与体化合物として、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が11であり、水素濃度とDCPMS/TEALのモル比を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。当該樹脂組成物のキシレン不溶分は、本発明の規定する範囲外であり、透明性が低かった。
また、組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線の最高温側と最低温側の結晶化ピークトップ温度が本発明の規定する範囲外であり、シート成形性に劣ると考えられる。
[比較例2および3]
CHMMS/TEALのモル比を表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物のキシレン不溶分は、本発明の規定する範囲外であり、剛性が低かった。
[比較例4]
予備重合後の重合において、コモノマーとしてエチレンを用い、表1に示す水素濃度とCHMMS/TEALのモル比において共重合した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物は剛性が低かった。
実施例および比較例の結果を、表1に示す。
[比較例5および6]
水素濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物のMFRは、本発明の規定する範囲外であり、比較例5は表面の凹凸の増大により透明性が低く、比較例6は耐ドローダウン性が劣っていた。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物から得られたシートは内部ヘーズおよび外部ヘーズともに低い。内部ヘーズは、樹脂本来の透明性を反映する値である。また、外部ヘーズはシート表面の凹凸の影響を示す値である。したがって、本発明の樹脂組成物は高い透明性を有していることが明らかである。これに加えて、本発明の樹脂組成物は優れた加工性および高い剛性も有するシートを与えることが明らかである。
1 反復アニーリング処理
2 最終融解曲線の取得
20 ベースライン
21 175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーに相当

Claims (7)

  1. (A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
    (B)有機アルミニウム化合物、ならびに
    (C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物、
    を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体100重量部に対し、
    結晶核剤0.01〜1重量部を含み、
    前記ポリプロピレン単独重合体の25℃でのキシレン不溶分が95〜98重量%であり、多分散指数が3.0を超えかつ4.5未満であり、
    前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが3.0〜7.8g/10分であり、
    前記組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線において複数の結晶化ピークを有し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下、かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である、
    シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
  2. 請求項2記載の最高温側の結晶化ピークトップ温度と最低温側の結晶化ピークトップ温度との温度差が、30℃以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 結晶核剤が、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4一プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物
  5. 前記組成物を、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱することにより得た最終融解曲線において、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーをΔH175℃、全体の融解エンタルピーをΔHtotとするとき、
    ΔH175℃/ΔHtotが15%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 前記ポリプロピレン単独重合体を、重合パウダーの状態で前記結晶核剤と溶融混練して得られる、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の組成物から製造したシート。
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