JP2015063678A - シート成形用ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、並びに(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体で、該重合体の25℃でのキシレン不溶分が95〜98重量%であり、多分散指数が3.0〜4.5である重合体と結晶核剤を含む組成物で、該組成物の230℃におけるメルトフローレートが3.0〜7.8g/10分であり、前記組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線において複数の結晶化ピークを有し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下、かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である、シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
これらの特許文献では、樹脂の透明性を改善することについては言及されているが、シート成形性や2次加工性、加熱(2次加工)後の成形品の透明性などについては言及されていない。
[1](A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、ならびに
(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物、
を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体100重量部に対し、
結晶核剤0.01〜1重量部を含み、
前記ポリプロピレン単独重合体の25℃でのキシレン不溶分が95〜98重量%であり、多分散指数が3.0を超えかつ4.5未満であり、
前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが3.0〜7.8g/10分であり、
前記組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線において複数の結晶化ピークを有し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下、かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である、
シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
[2]前記組成物から製造したシート。
I.本発明のポリプロピレン樹脂組成物
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン単独重合体100重量部に対し、結晶核剤0.01〜1重量部を含む。以下、成分や特性について説明する。
本発明で用いるポリプロピレン単独重合体(以下単に「ポリプロピレン」ともいう)は、(A)特定の固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、および(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物を含む触媒によって得られる。ただし、本発明の単独重合体は、重合体の製造プロセスの特質上混入する可能性のある微量(0.3重量%未満)のα−オレフィンとの共重合体も含む。
(1)マグネシウム化合物もしくはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体と、反応条件下に液相をなすチタン化合物とを、反応させる方法(前記錯化合物は、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下で粉砕して用いてもよいし粉砕せずに用いてもよい)、
(2)マグネシウム化合物の液状物と、液状のチタン化合物を電子供与体化合物の存在下または不存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法、
(3)固体状のマグネシウム化合物と液状のチタン化合物および電子供与体化合物と反応させる方法、
(4)上記(2)や(3)で得られるものに、さらにチタン化合物を反応させる方法、
(5)上記(1)や(2)や(3)で得られるものにさらに電子供与体化合物およびチタン化合物を反応させる方法、
(6)マグネシウム化合物またはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を、電子供与体化合物、およびチタン化合物の存在下に粉砕し、電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法(前記粉砕は、粉砕助剤等の存在下で行ってもよい)、
(7)前記(1)〜(5)で得られる化合物を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物、または芳香族炭化水素で処理する方法。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:
Ti(OR)gX4−g
(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。
本発明の第2成分である結晶核剤は、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。結晶核剤は、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含むことが好ましい。
結晶核剤の配合量は、樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部であるが、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。
本発明の第1成分であるポリプロピレンの25℃でのキシレン不溶分は95〜98重量%であり、好ましくは96〜98重量%である。キシレン不溶分は後述する方法で求められる。キシレン不溶分はポリプロピレンの立体規則性の指標である。本発明では、キシレン不溶分が95〜98重量%と比較的低い。すなわち、本発明では立体規則性を比較的低くすることで高い透明性を達成する。本発明はこの点において、エチレン等との共重合によりポリプロピレンの透明性を向上させる従来の方法とは相違する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、シート状成形品用途に特に好適に用いることができる。シート状成形品への使用に好適な理由として、好適なシート成形性(押出特性)と2次加工性(耐ドローダウン性)と、成形品が良好な剛性を有することが挙げられる。従来シート状成形品用途に用いられてきた透明なポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工特性、特にシートの2次加工性が充分でなかった。シート成形性を向上させるためにメルトフローレートを増加させると、2次加工性が低下し、2次加工性を向上させる為にメルトフローレートを低下させるとシート成形性が低下するという相関関係があった。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、透明性と好適なシート成形性を維持しつつ、2次加工性を向上させることができた。シートの厚みは、100〜1,000μmが好ましい。
次に本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法を具体的に説明する。
本発明の組成物に使用されるポリプロピレン単独重合体は、既存のスラリープロセス(液体モノマー中の重合)や気相重合等で得られる。また、各後続の重合が直前の重合反応中に形成された重合性物質の存在下で行われる少なくとも2つの逐次重合ステージを具備する逐次重合方法を用いてもよい。
上記の重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜45barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素又はZnEthyl2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
2.5gのポリマーを攪拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させた。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させた。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%(100−可溶性のポリマーの重量%)は、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した値から算出した。
190℃の温度において、PaarPhysica社製UDS200を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に増加する振動数で駆動させることによって測定した。多分散指数の値は、以下の等式を用いてクロスオーバー弾性率から誘導した。
PI=105/Gc
式中、Gcは、G’=G”(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)における値(Paとして表す)として定義されるクロスオーバー弾性率である。
0.3mm厚のシートから約5mgをサンプリングし、電子天秤で秤量した後、示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社製 Q−200)で230℃まで加熱して、当該温度で5分保持して融解し、10℃/分の速度で30℃まで冷却して結晶化曲線を得た。引続き、30℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱して融解曲線を得た。上記結晶化曲線から結晶化ピークトップ温度、上記融解曲線から融解ピークトップ温度及び融解熱を算出した。10℃/分の冷却速度は、実際のシート成形における冷却速度よりはるかに遅いが、結晶化ピークトップ温度は結晶化し易さ、融解ピークトップ温度と融解熱は、それぞれ組成物が有する耐熱性と結晶化度(剛性に影響)のポテンシャルの目安となる。
プレス成形にて作製した10μm厚フィルムから100μm×100μm程のサンプルを切り出した後、メトラートレド社製のFlashDSC1にサンプルを装着し、230℃で5分間保持して融解した後、100℃/秒の速度で冷却して結晶化曲線を得た。
図1Aおよび1Bに、実施例1および比較例1で得た樹脂組成物の100℃/秒で冷却した結晶化曲線を示す。
最終融解曲線は、0.3mm厚のシートから約5mgをサンプリングし、電子天秤で秤量した後、通常の示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社製 Q−200)を使用して得た。具体的には、まず、測定試料を、一旦、融解した後、冷却した。次いで、図2に示すように、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱し、その再加熱の際の測定試料の熱分析を行って、最終融解曲線を得た。最終融解曲線の熱分析は、通常のDSCと同様の分析であり、簡便である。
S=ΔH175℃/ΔHtot
図3A、3Bおよび3Cにそれぞれ実施例4、比較例1、および比較例3の最終融解曲線を示す。
25mmφ単層押出型エアーナイフ付キャストシート成形機を用い、ポリプロピレン樹脂組成物からシートを製造した。スクリュウとしてフルフライトスクリュウを使用した。当該スクリュウのL/Dは24であった。
成形条件を以下に示す。
<温度>
C(シリンダー)1:200℃、C2:230℃、C3:250℃、C5:250℃、H(ネック):250℃
D(ダイス)1:250℃、D2:250℃、D3:250℃
<スクリュウ回転数>
約90rpm
<ロール設定温度>
80℃
<引取り速度>
約1.3〜1.5m/分
<シート厚み>
0.3mm
上記のように成形した0.3mm厚みのシートを用いて、ASTM D747に準拠して測定した。
ISO 14782に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用し、上記のように成形した0.3mm厚みのシートのヘーズ測定を行い、透明性を評価した。同時に成形条件に由来するシート表面の凹凸の影響を除外するため、シートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033-00)を刷毛にて塗布し、同様にヘーズ測定を行った。前者を「全ヘーズ」、後者を「内部ヘーズ」と定義した。またシート表面の寄与を見るため、「外部ヘーズ」(「全ヘーズ」−「内部ヘーズ」)を定義した。
100mm×150mmの金枠に固定した厚み約0.3mmのシートを、210℃(ポリプロピレンの平衡融点である約186℃を超え、真空成形における予熱温度付近である温度)のオーブンに入れ、融解後、シートが張り戻った時刻t1から自重によりシート中央部が2cm垂れ下がるまでの時刻t2までの時間(t2−t1)により耐ドローダウン性を評価した。ドローダウンは製品肉厚の不均一を招く原因になる。ドローダウン時間(t2−t1)が長いほどドローダウンし難いので、2次加工性に優れる。
(1)固体触媒成分の調製
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。該固体触媒は、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。
上記固体触媒と、TEALおよびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が8であり、CHMMS/TEALのモル比が0.02となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、ポリプロピレンを製造した。
異なる種類と量の結晶核剤を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。使用した結晶核剤は、アデカスタブNA−71(リン酸エステル系結晶核剤、株式会社ADEKA製)であった。
CHMMS/TEALのモル比および水素濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
パウダー状のポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PX600N)に、結晶核剤として、ノニトール系核剤(ミリケンジャパン株式会社製Millad NX8000K)を5重量%、ポリプロピレンと結晶核剤の総和100重量部に対し、酸化防止剤(BASF社製B225)を0.08重量部および中和剤(カルシウムステアレート)を0.05重量部とともに配合し、押出機を用いて230℃で溶融混練してマスターバッチを準備した。
このマスターバッチと実施例1で得たパウダー状のポリプロピレンとを押出機を用いて230℃で溶融混練して、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。ただし、樹脂組成物中の結晶核剤、酸化防止剤および中和剤の濃度は、実施例1の樹脂組成物の濃度と同じになるようにした。
水素濃度を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
外部電子供与体化合物として、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が11であり、水素濃度とDCPMS/TEALのモル比を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。当該樹脂組成物のキシレン不溶分は、本発明の規定する範囲外であり、透明性が低かった。
また、組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線の最高温側と最低温側の結晶化ピークトップ温度が本発明の規定する範囲外であり、シート成形性に劣ると考えられる。
CHMMS/TEALのモル比を表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物のキシレン不溶分は、本発明の規定する範囲外であり、剛性が低かった。
予備重合後の重合において、コモノマーとしてエチレンを用い、表1に示す水素濃度とCHMMS/TEALのモル比において共重合した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物は剛性が低かった。
実施例および比較例の結果を、表1に示す。
水素濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物のMFRは、本発明の規定する範囲外であり、比較例5は表面の凹凸の増大により透明性が低く、比較例6は耐ドローダウン性が劣っていた。
2 最終融解曲線の取得
20 ベースライン
21 175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーに相当
Claims (7)
- (A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、ならびに
(C)外部電子供与体化合物としての有機ケイ素化合物、
を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体100重量部に対し、
結晶核剤0.01〜1重量部を含み、
前記ポリプロピレン単独重合体の25℃でのキシレン不溶分が95〜98重量%であり、多分散指数が3.0を超えかつ4.5未満であり、
前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが3.0〜7.8g/10分であり、
前記組成物を融解させた後、100℃/秒で冷却して得た結晶化曲線において複数の結晶化ピークを有し、最高温側の結晶化ピークトップ温度が83℃以下、かつ最低温側の結晶化ピークトップ温度が40℃以下である、
シート用ポリプロピレン樹脂組成物。 - 請求項2記載の最高温側の結晶化ピークトップ温度と最低温側の結晶化ピークトップ温度との温度差が、30℃以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
- 結晶核剤が、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4一プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物
- 前記組成物を、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱することにより得た最終融解曲線において、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーをΔH175℃、全体の融解エンタルピーをΔHtotとするとき、
ΔH175℃/ΔHtotが15%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。 - 前記ポリプロピレン単独重合体を、重合パウダーの状態で前記結晶核剤と溶融混練して得られる、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の組成物から製造したシート。
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