JP6235804B2 - シート成形用ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
これらの特許文献では、樹脂の透明性を改善することについては言及されているが、シート成形性や2次加工性、加熱(2次加工)後の成形品の透明性などについては言及されていない。
[1](A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに
(B)有機アルミニウム化合物、を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体またはプロピレンとエチレンとを共重合させて得た0.5重量%以下のエチレンを含有するポリプロピレン共重合体99〜99.99重量%と、
結晶核剤0.01〜1重量%と、を含むシート用ポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体の25℃でのキシレン不溶分が92.5〜97.5重量%であり、多分散指数が4.5〜10であり、
前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが0.3〜10g/10分である、
シート用ポリプロピレン樹脂組成物。
[2]前記[1]に記載のポリプロピレン樹脂組成物から製造したシート。
I.本発明のポリプロピレン樹脂組成物
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体99.99〜99重量%と、結晶核剤0.01〜1重量%とを含む。以下、成分や特性について説明する。
本発明で用いるポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体(以下まとめて単に「ポリプロピレン」ともいう)は、(A)特定の固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、および、必要に応じて(C)特定の外部電子供与体化合物を含む触媒系によって得られる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:
好適なスクシネート系化合物は、式I:
のコハク酸エステル(スクシネート)構造を有する化合物から選択される。
式Iの化合物のうち、基R3〜R6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R3〜R6が第15族原子を含む化合物としては、特許文献8に開示される化合物が挙げられる。一方、基R3〜R6が第16族原子を含む化合物としては、特許文献9に開示される化合物が挙げられる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造に使用する固体触媒成分を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物をあげることができ、とくに塩素が好ましい。
本発明の第2成分である結晶核剤は、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。
これらの結晶核剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
結晶核剤の配合量は、樹脂組成物に対して0.05〜0.5重量%であるが、0.2〜0.45重量%が好ましい。
本発明の第1成分であるポリプロピレンの25℃でのキシレン不溶分は92.5〜97.5重量%であり、好ましくは93.5〜97.5重量%であり、より好ましくは94〜96.5重量%である。キシレン不溶分は後述する方法で求められる。キシレン不溶分はポリプロピレンの立体規則性の指標である。本発明では、キシレン不溶分が92.5〜97.5%と比較的低い。すなわち、本発明では立体規則性を比較的低くすることで高い透明性を達成する。本発明はこの点において、多量のエチレンとの共重合によりポリプロピレンの透明性を向上させる従来の方法とは相違する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、シート状成形品用途に特に好適に用いることができる。シート状成形品への使用に好適な理由として、好適なシート成形性(押出特性)と2次加工性(ドローダウン性)と、成形品が良好な剛性を有することが挙げられる。従来シート状成形品用途に用いられてきた透明なポリプロピレン系樹脂組成物は、成形加工特性、特にシートの2次加工性が充分でなかった。シート成形性を向上させるためにメルトフローレートを増加させると、2次加工性が低下し、2次加工性を向上させる為にメルトフローレートを低下させるとシート成形性が低下するという相関関係があった。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、透明性と好適なシート成形性を維持しつつ、2次加工性を向上させることができた。シートの厚みは、100〜1000μmが好ましい。
次に本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法を具体的に説明する。
本発明の組成物に使用されるポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体は、既存のスラリープロセス(液体モノマー中の重合)や気相重合等で得られる。また、各後続の重合が直前の重合反応中に形成された重合性物質の存在下で行われる少なくとも2の逐次重合ステージを具備する逐次重合方法を用いても良い。ポリプロピレン共重合体は、プロピレンモノマー、エチレンモノマー、水素、触媒を供給し、プロピレンモノマーとエチレンモノマーとを共重合させて得られる。
上記の重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜43barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素又はZnEt2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
2.5gのポリマーを攪拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させた。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させた。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%(100−可溶性のポリマーの重量%)は、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。キシレン不溶分は、沈殿物をメタノールで残留したキシレンを十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させて採取する。
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した値から算出した。
190℃の温度において、PaarPhysica社製UDS200を用い、0.1rad/秒から100rad/秒に増加する振動数で運転することによって測定した。多分散性指数の値は、等式を用いてクロスオーバー弾性率から誘導した。
PI=105/Gc
式中、Gcは、G’=G”(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は損失弾性率である)における値(Paとして表す)として定義されるクロスオーバー弾性率である。
最終融解曲線は、通常の示差熱分析計(DSC)(TA Instruments社のQ−200)を使用して得た。具体的には、まず、測定試料を、一旦、融解した後、冷却した。次いで、図1に示すように、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱し、その再加熱の際の測定試料の熱分析を行って、最終融解曲線を得た。最終融解曲線の熱分析は、通常のDSCと同様の分析であり、簡便である。
25mmφ単層押出型エアーナイフ付キャストシート成形機を用い、ポリプロピレン樹脂組成物からシートを製造した。スクリュウとしてフルフライトスクリュウを使用した。当該スクリュウのL/Dは24であった。
成形条件を以下に示す。
<温度>
C1:200℃、C2:230℃、C3:250℃、C5:250℃、H(ネック):250℃
D1:250℃、D2:250℃、D3:250℃
<スクリュウ回転数>
約90rpm
<ロール設定温度>
80℃
<引取り速度>
約1.3〜1.5m/分
<シート厚み>
0.3mm
上記のように成形した0.3mm厚みのシートを用いて、ASTM D747に準拠して測定した。
ISO 14782に準拠しヘイズ測定を行い、透明性を評価した。具体的に、上記のように成形した0.3mm厚みのシートの両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033-00)を刷毛にて塗布し、株式会社村上色彩技術研究所製、HM−150を使用し、定法にて内部ヘイズを測定した。
100mm×150mmの金枠に固定した厚み約0.3mmのシートを、210℃(ポリプロピレンの平衡融点である約186℃を超え、真空成形における予熱温度付近である温度)のオーブンに入れ、融解後、シートが張り戻った時刻t1から自重によりシート中央部が2cm垂れ下がるまでの時刻t2までの時間(t2−t1)によりドローダウン性を評価した。ドローダウンは製品肉厚の不均一を招く原因になる。ドローダウン時間(t2−t1)が長いほどドローダウンし難いので、2次加工性に優れる。
(1)固体触媒成分の調製
特開2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OH(USP−4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した)、及び9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、以下の方法で製造した:
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、ポリプロピレンを製造した。
重合反応器の水素濃度および温度を表1に示すとおりにしてポリプロピレンのMFRおよびキシレン不溶分を表1に示すように調整した。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
外部電子供与体化合物としてシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、CHMMS/TEALのモル比が0.03となる量で添加した触媒を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
予備重合後の重合において、水素濃度およびプロピレンとエチレンを表1に示す量に示すとおりにし、CHMMS/TEALのモル比を0.016に変更して重合した以外は、実施例3と同様にして比較用樹脂組成物を得た。
異なる種類の結晶核剤を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。使用した結晶核剤は、実施例5ではRiKAFAST R−1(ソルビトールアセタール系結晶核剤、新日本理化株式会社製)、実施例6ではアスカタブNA−71(リン酸エステル系結晶核剤、株式会社アデカ製)であった。
フタレート系の電子供与化合物を含む固体触媒成分を用いて重合したポリプロピレンの樹脂組成物を製造した。具体的には以下のようにして樹脂組成物を製造した。
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。該固体触媒は、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。
上記固体触媒と、TEAL及びシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11であり、CHMMS/TEALのモル比が0.01となるような量で、−5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、実施例1と同様の重合反応器を導入して、表1に示す条件でプロピレンを重合させた。得られたポリプロピレン単独重合体から、実施例1と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)の代わりにジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、DCPMS/TEALのモル比が0.02となるような量で用いた以外は実施例3と同様にして触媒系を調整した。この触媒系を用い、実施例3と同様にして表1に示す条件でプロピレンを重合させた。ただし重合条件は表1に示すとおりとした。得られたポリプロピレン単独重合体から、実施例3と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。
予備重合後の重合において、プロピレンとエチレンを表1に示す量で重合した以外は、実施例3と同様にして比較用樹脂組成物を得た。ただし、外部電子供与体化合物(CHMMS)の量および重合条件は表1のとおりとした。なお、比較例4においては、2段に連結された逐次重合装置を用い、1段目の重合反応器でポリプロピレン単独重合体を重合した後、2段目の重合反応器でポリプロピレン共重合体の重合を行い、重合体混合物を得た。その際、1段目と2段目の重合反応器での水素濃度、および2段目の重合反応器でのエチレン濃度を表1に示す様にした。また、ポリプロピレン単独重合体とポリプロピレン共重合体の重量比が1:1となる様に、1段目と2段目の滞留時間を調整した。
比較例1と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。ただし、外部電子供与体化合物(CHMMS)の量と重合条件は表1のとおりとした。
実施例および比較例の結果を、表1に示す。
2 最終融解曲線の取得
20 ベースライン
21 175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーに相当
Claims (5)
- (A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、ならびに
(B)有機アルミニウム化合物、を含む触媒を用いてプロピレンを重合させて得たポリプロピレン単独重合体またはプロピレンとエチレンとを共重合させて得た0.5重量%以下のエチレンを含有するポリプロピレン共重合体99〜99.99重量%と、
結晶核剤0.01〜1重量%と、を含むシート用ポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレン単独重合体またはポリプロピレン共重合体の25℃でのキシレン不溶分が92.5〜97.5重量%であり、多分散指数が5〜10であり、
前記組成物の、230℃におけるメルトフローレートが0.3〜10g/10分である、
シート用ポリプロピレン樹脂組成物。 - 前記触媒がさらに(C)外部電子供与体化合物としてのケイ素化合物を含む、請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記結晶核剤が、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤からなる群より選択される、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 前記組成物を、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱することにより得た最終融解曲線において、175℃以上で融解する成分の融解エンタルピーをΔH175℃、全体の融解エンタルピーをΔHtotとするとき、
ΔH175℃/ΔHtotが15%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物から製造したシート。
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