本発明は、光通信で用いられる光回路に関する。より詳細には、波長分割多重光信号から特定の波長の光信号を取り出しまたは加えるための光信号終端装置に使用される光可変フィルタに関する。
光ファイバを伝送媒体とする光通信技術は、信号の伝送距離の長延化をもたらし、大規模な光通信網が構築されてきた。近年では、インターネット通信が広く普及するのに伴って、通信トラフィックが急速に増大しており、通信網に対する大容量化、高速化、高機能化および低消費電力化の要求が高まっている。これまでに、波長の異なる複数の光信号を1本の光ファイバ伝送路で同時に伝送する波長多重通信技術の導入によって、2地点間の伝送容量を増大することが可能となった。しかし、通信網においては、複数の伝送路が集まるノードにおいて、信号の経路(パス)を設定(ルーティング)したり、切替(スイッチング)したりする必要がある。近年の急激な伝送容量の増大に伴って、経路設定や切替などの信号処理がボトルネックになってきている。
これまでは、伝送されてきた光信号を一旦電気信号に変換した後に経路設定や経路切替を行ない、再び電気信号を光信号に変換して伝送路に送出する方式が用いられてきた。しかし、今後は光信号を電気信号に変換することなく、光信号のままで信号経路の設定や切替処理を行なう方式を用いる、いわゆるフォトニックネットワークが実現されることになる。フォトニックネットワークを使用することによって、ノードのスループットを飛躍的に拡大するとともに、ノード装置の消費電力を大幅に削減することも期待されている。
フォトニックネットワークを用いた光ノードシステムとしては、複数のノードをリング状またはバス状に接続した再構成可能光アドドロップ多重(ROADM:Reconfigurable Optical Add Drop Multiplexing)システム、および、複数のノードをメッシュ状に接続した光クロスコネクト(OXC:Optical Cross-Connect)システムが知られている。ROADMシステムの各ノードには、1本の入力側光ファイバ伝送路と、1本の出力側光ファイバ伝送路とが接続され、入力側光ファイバ伝送路から入力される波長分割多重光信号に対して、波長ごとに接続を切り替える光スイッチが装備されている。この構成によって、波長分割多重光信号のうち任意の波長の光信号について、スルー状態とアド/ドロップ状態とを切り替えることが可能となる。
スルー状態とは、入力側光ファイバ伝送路から入力された光信号が、出力側光ファイバ伝送路へ出力される状態のことである。また、アド/ドロップ状態とは、入力側光ファイバ伝送路側から入力された光信号がノードに接続された端局装置に出力される「ドロップ状態」、または、端局装置から入力された光信号が出力側光ファイバ伝送路に出力される「アド状態」のことである。
一方、OXCシステムでは、各ノードに複数の入力側光ファイバ伝送路と、複数の出力側光ファイバ伝送路とが接続され、入力側光ファイバ伝送路から入力される波長分割多重光信号に対して、波長ごとに接続経路(方路)を切り替える光スイッチが備えられている。この構成によって、任意の入力側光ファイバ伝送路から入力された波長分割多重光信号のうち任意の波長の光信号を、任意の出力側光ファイバ伝送路へ出力することができる。最近では、柔軟性の高いネットワークを構築するために、OXCノードにおいても端局装置を接続し、入出力光ファイバ伝送路間での接続経路の切替に加えて、端局装置へのアド/ドロップも可能なシステムが必要とされてきている。
図1は、フォトニックネットワークにおけるOXCシステムの構成を概念的に示した図である。図1に示した構成は、当初のOXCシステムにさらにアドシステム/ドロップシステムを追加したものである。視点を変えれば、図1のOXCシステムは、ROADMシステムの方路数を1本から複数(K本)にした構成を持つものと見ることもできる。本発明は、複数の入力伝送路ファイバおよび複数の出力伝送路ファイバを備え、かつ、光信号を伝送路光ファイバからアド/ドロップすることのできるノードで使用される光部品(装置)に関連するものである。以下では、便宜的にOXCシステムに基づいて説明をするが、ROADMシステムにも適用できることは言うまでも無い。尚、フォトニックネットワークにおいて、複数の伝送路が集まり、さらに光レイヤと電気レイヤとの交換および通信信号の処理を行うノードを、フォトニックノードと呼ぶ。
図1に示したOXCシステムは、基本要素として、J個の波長分割多重光信号1−1〜1−Jがそれぞれ入力されるK本の入力側光ファイバ伝送路2−1〜2−Kと、光クロスコネクト部3と、J個の波長分割多重光信号5−1〜5−Jがそれぞれ出力されるK本の出力側光ファイバ伝送路4−1〜4−Kとを備える。さらに、アド/ドロップ機能を実現するために、ドロップシステム6−1およびアドシステム6−2が追加されている。図1において、入力側および出力側の光ファイバの数Kと、波長分割多重光信号の数Jとが、同じ場合であっても良い。
波長分割多重光信号は、異なる波長の複数の光信号を多重化した光信号である。複数の波長の光信号を多重化して1つの波長群を構成し、さらに複数の異なる波長群を多重化して波長分割多重光信号を構成することもできる。また、1つの波長群に含まれる波長は、波長の値が、その長さの順に連続的に配置された複数の波長から構成することができる。例えば、波長(番号)が、λ1、λ2、・・λ8のように、連続して並んでいる8つの波長で1波長群を構成できる。また、波長の長さ順に連続ではなくて、飛び飛びに不連続に配置された複数の波長から構成することもできる。例えば、波長(番号)が、λ1、λ5、λ9・・λ29のように、所定の間隔を置いて不連続(離散的に)に並んだ8つの波長で1波長群を構成することもできる。1つの波長群を構成する波長の数も、上述の所定の間隔なども様々な場合が可能である。
ドロップシステム6−1によってドロップされた光信号は、複数の受信器(伝送路Rxとも呼ぶ)8に接続されて終端信号処理が行われ、電気レイヤの別のネットワーク7(例えば、電気ルータ)などへ供給される電気信号10が出力される。また、電気レイヤの別のネットワーク7から供給される電気信号11が、複数の送信器(伝送路Txとも呼ぶ)9に接続され、アドシステム6−2を経由して光信号がアドされる。上述の終端信号処理とは、光信号および電気信号の間の変換、レベル調整、変換後の電気信号における誤り検出・訂正、適切な信号フォーマットの変換等の信号処理を含む。ドロップシステム6−1およびアドシステム6−2ならびに受信器8および送信器9は、合わせて光信号終端装置とも呼ばれる。また、受信器8および送信器9は、端局装置とも呼ばれる。
一般に、図1に示したようなOXCシステムでは、理想的なアド/ドロップシステムとして、カラーレス(Colorless、波長無依存)、ディレクションレス(Directionless、方路無依存)、およびコンテンションレス(Contentionless)の3つの特性が求められている。カラーレスとは、任意の波長の光信号を任意のドロップポートから受信器へ出力することができ、任意の波長の光信号を、アドシステムを介して送信器からアドポートを経て出力側光ファイバ伝送路へ入力することができる構成のことである。また、ディレクションレスとは、任意の入力側光ファイバ伝送路から入力された光信号を、任意のドロップポート(受信器)から出力することができ、アドシステムへ入力された任意の光信号を任意の出力側光ファイバ伝送路から出力することができる構成のことである。
さらに、当然のことではあるが、同一波長を有する異なる2つ以上の光信号が、同時に、光ファイバ伝送路の同一の光経路に存在すれば、光信号同士の衝突が起きて混信が生じてしまう。その光経路は使用不能(ブロッキング状態)となってしまう。このような衝突は、アド/ドロップ動作に関わる光経路の接続設定においても生じる可能性がある。アド/ドロップ動作に関わる光経路の接続設定は、ブロッキングを生じさせることが無いようコンテンションレスに行う必要がある。アド/ドロップシステムは、その様な光信号同士の衝突が起こらない構成を有している必要がある。
現在、運用が開始されているアド/ドロップシステムでは、予め定められたポートにしか接続ができない、また、ポートの接続変更にマニュアル操作が必要であるなどの制限がある。理想的には、フォトニックネットワークにおける上述の3つの特性(CDC:Colorless, Directionless and Contentionless)を実現する必要がある。次に、理想的フォトニックネットワークとして、現在提案されている構成を説明する。
図2は、OXCシステムにおいて、フルメッシュ接続の光スイッチを用いた従来技術のアド/ドロップシステムの構成を説明する図である。図2の構成は、図1に示したOXCシステムの概要構成において、アド/ドロップ機能部分をより具体化して示したものである。したがって、ここでは図1に示した構成との相違点のみを説明する。入力側光ファイバ伝送路2−1〜2−Kと光クロスコネクト部3との間には、K本の入力側光ファイバ伝送路2−1〜2−Kからの各波長分割多重光信号を分岐する光カプラ21−1〜21−Kが備えられている。1つの光カプラには、分波器22−1〜22−Kの内の対応する1つが接続される。例えば、1番目の入力側光ファイバ伝送路2−1には、光カプラ21−1が接続され、分岐した波長分割多重光信号12は分波器22−1に導かれる。
図2のアド/ドロップシステムにおいて、光カプラで分岐され、受信器へドロップされる波長の光信号は、光クロスコネクト部3において重複しないように適切に処理されるのは言うまでもない。光カプラは、方路切替の機能は持たないが、入力された波長を分岐して出力することが可能である。光カプラのコストは、光マトリックススイッチと比べて非常に小さく、1/100程度である。
分波器22−1〜22−Kの出力は、M入力L出力を持つフルメッシュ構成の光マトリックススイッチ23に接続される。光スイッチ23のL個の出力は、L個の受信器24−1〜24−Lに接続される。一般に、光マトリクススイッチは、任意の粒度の光信号(波長パス、波長群パス)に関して、入力された光信号を任意の順序(ポート位置)に組み替えて各出力ポートに出力する。したがって、光スイッチ23のM入力の内の任意の入力ポートに入る光信号は、L出力の内の任意の出力ポートに現れる。光スイッチデバイスを実現するに当たってのコストは、一般に、入力・出力ポートの数に大きく依存し、ポート数の増加とともにコストは増える。
一例を挙げれば、1つの波長分割多重光信号に96個の異なる波長の光信号が多重化されており、K=8本の入力側光ファイバ伝送路がある場合、光スイッチ23は入力として768の入力ポートを持つ。1つのノード当たりの、アドポート数およびドロップポート数は、入力ポート数に対して所定の割合(ドロップ率/アド率)で決定される。例えば、アドポート数およびドロップポート数をそれぞれ16とすれば、光スイッチ23は、768入力×16出力を持つ巨大なマトリックスを構成することになる。これは、アド側の光スイッチ28についても同様である。
上述のように、図2に示したOXCノードの構成では、カラーレス、ディレクションレス、コンテンションレスの3特性を実現できるものの、大型で高価な光スイッチを必要とする欠点がある。また、スイッチ素子の数の多さに起因して、信頼性が低下する問題も重要であった。そこで、アド/ドロップシステムに対して、いくつかの改善された構成が提案されている。例えば、特許文献1では、ROADMシステムにおけるカラーレスの構成例が示されている。また、OXCノードに関するものとして、特許文献2では、波長群の分波選択および波長の分波選択をコンパクトな光スイッチを組み合わせて構成する例が提案されている。
図3は、特許文献2による別の従来技術のアド/ドロップシステムの構成を説明する図である。図3に示したOXCシステムの構成は、図2に示した構成において、アド/ドロップ機能部分を異なる構成で実現したものであるので、以下、図2の構成との相違点のみを説明する。図3に示したOXCノードにおけるアド/ドロップシステムは、ドロップ側の光信号終端装置30およびアド側の光信号終端装置31を備えている。K個の光カプラ21−1〜21−Kによって分岐される各入力側光ファイバ伝送路からの各波長分割多重光信号は、光増幅器31−1〜31−Kでそれぞれ光出力レベルを調整される。その後、1×Lの光カプラ(スターカプラ)32−1〜32−Kによって、受信器35−1〜35−Lの数に相当するL個の波長分割多重光信号に分岐される。
L個に分岐された各入力側光ファイバ伝送路からの波長分割多重光信号は、ファイバ選択スイッチ33−1〜33−Lの各々に接続される。ファイバ選択スイッチは、K個の入力側光ファイバ伝送路の中から、いずれか1つのファイバの波長分割多重光信号を選択する。ファイバ選択スイッチは、K入力1出力のスイッチによって構成できる。一例を挙げれば、図3では、K本すべての入力側光ファイバ伝送路からの波長分割光信号がファイバ選択スイッチ33−1に与えられるが、入力側光ファイバ伝送路2−1の波長分割多重光信号1−1、36、37だけが、ファイバ選択スイッチ33−1によって選択される。選択された波長分割多重光信号38−1は、光可変フィルタ(波長可変フィルタ)34−1に与えられ、さらに所望の波長の光信号39−1のみが選択される。光可変フィルタは、複数の波長を含む波長分割多重光信号から、所望の波長のみを選択するので、同調可能なフィルタ(チューナブルフィルタ)とも呼ばれる。
図4は、A入力1出力のスイッチの構成例を示す図である。A入力1出力を持つA×1スイッチは、A個の入力信号の中から1個の信号を抽出する能力を持ち、基本エレメントである1×2スイッチ40、41を組み合わせて構成できる。図4の(a)に示したスイッチは、ツリー型の構成であって、入力ポートによって生じる入力出力間の損失のばらつきを抑えられる点に特徴がある。図4の(b)に示したスイッチは、格子型の構成であって、損失のばらつきの補正が必要となる。ファイバ選択スイッチは、上述のA×1スイッチによって構成できる。
上述のように、図3に示したアド/ドロップシステムは、上述の光可変フィルタ34−1〜34−Lの実現方法にその特徴がある。後述するように、発明者らは、図3に示した光可変フィルタをさらに改善したものを提供した。本発明では、発明者らがさらに改善を加えた光可変フィルタが開示されることになる。したがって、まず光可変フィルタの詳細についてさらに説明する。
図5は、従来技術のアド/ドロップシステムにおける光可変フィルタの構成方法を説明する概念図である。波長選択フィルタは、複数の入力側光ファイバ伝送路から選択された1つのファイバ伝送路の波長分割多重光信号から、所望の波長(光周波数)の光信号のみを選択する機能を持つ。光可変フィルタの構成には、様々なものが考えられる。その1つの例は、図5の(a)に示したように、波長分割多重光信号50を、分波器52によって波長パス単位で分波し、その後、分波された光信号を、選択スイッチ51で選択して、ドロップした波長の光信号53を得る方法である。しかし、図5の(a)の構成は、スイッチの規模が波長パス数と同じ以上となって巨大となるため、コストおよび信頼性の点で問題であった。
特許文献2に開示された発明は他の光可変フィルタを提案しており、図5の(b)に示すように、可変フィルタとして多段階の分波機能を縦続接続することによって、(a)の構成の光可変フィルタの問題を解決しようとした。すなわち、1段目の分波機能部54−1および選択スイッチ54−2を持つ1段目の光可変フィルタ54から、n段目の分波機能部55−2および選択スイッチ55−2を持つn段目の光可変フィルタ55が、n段縦続接続されている。一例として、2段構成の場合を例にとると、第1段目の光可変フィルタ54では、波長分割多重化光信号を波長群に分波し、所望の波長を含む波長群を選択した後、2段目の光可変フィルタ55で、1つの波長群の波長分割多重化光信号を波長ごとに分波し、所望の波長を選択する構成である。
図6は、従来技術の2段構成の光可変フィルタの構成例を示す図である。図3に示した特許文献2に開示された従来技術のアド/ドロップシステムにおける光信号終端装置内の光可変フィルタ60の構成例を示している。光可変フィルタ60は、第1段目の波長群選択光可変フィルタ54および2段目の波長選択光可変フィルタ55を備える。第1段目の波長群選択光可変フィルタ54は、1×M周回性アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)61およびM×1選択スイッチ62から構成される。第2段目の波長選択光可変フィルタ55は、1×N周回性AWG63およびN×1選択スイッチ64から構成される。波長分割多重光信号50が第1段目の波長群選択光可変フィルタ54に与えられ、1×M周回性AWG61によって例えば複数の波長群に群分波されて、1つのある波長群の波長分割多重光信号66が選択される。さらに、ある波長群の波長分割多重光信号66は、1×N周回性AWG63によって各波長に分波され、1つの波長の光信号53が選択される。
詳細は、特許文献2に記載されているが、MとNは互いに素の関係にある。また、1×M周回性AWG61のFSRは、チャネル間隔δfのM倍に対応し、1×N周回性AWG63のFSRは、チャネル間隔δfのN倍に対応する関係にあれば良い。選択スイッチ62、64は、コンパクトなスイッチを組み合わせることによって、カラーレス、ディレクションレス、コンテンテョンレスのドロップ機能を実現できた。
図6に示した光可変フィルタによれば、多段階でドロップする波長を選択するので、光スイッチの規模の小さいデバイスを利用することができる。スイッチの数は、概ね次式によって表される。ここで、nは、光可変フィルタの段数である。
必要なスイッチ規模は、波長多重数が5以上であれば、周回性AWGの段数を増加するほど減少することが知られている。
しかしながら、スマートフォンの爆発的な普及に代表されるように、ネットワークトラフィックが急激に増加する状況を踏まえると、特許文献2に開示された構成の光可変フィルタも、スイッチ規模の大きさの点で依然として十分なものではなかった。ネットワークトラフィックの増加に加えて、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術、各光デバイスの技術的な進展が見込まれており、近い将来には1本の光ファイバ伝送路の中で取り扱われる波長の数は、最大で200を越えることが予測された。光終信号端装置における光可変フィルタが処理すべき波長パス(波長)の数が増加すれば、スイッチの数もさらに増加することは必至であった。したがって、さらにスイッチ規模を縮小させることのできる光可変フィルタの新しい構成が望まれていた。そこで、発明者らは、図3に示した従来技術のアド/ドロップシステムにおける光信号終端装置内の光可変フィルタを改善する新しい提案を行った。
図7は、発明者らが提案した光スイッチの規模をさらに縮小することのできる光可変フィルタの構成を示した図である。発明者らは、従来技術の光可変フィルタにおいて着目されていなかった、周回性波長合分波器の入力ポートによる波長選択機能を利用して、波長光可変フィルタをさらにコンパクトかつ低コストで高信頼性のデバイスにより構成できることを見出した。周回性波長合分波器のFSRを設定し、実際に分波に利用する入力ポートおよび出力ポートを選択し、分波する波長数を特定の条件に決定して、同一ポートに重複することなく各波長を出力するよう動作する。図7の構成によって、光スイッチの規模を低減することができた。
図7に示した光可変フィルタの動作の概略は、以下のとおりである。提案された光可変フィルタ70は、図6で示した従来技術の光可変フィルタ60に対応するものである。したがって、図3に示したフォトニックノードにおけるドロップシステム30において、光可変フィルタ34−1〜34−Lを、それぞれ光可変フィルタ70によって置き換えることができる。光可変フィルタ70には、複数の光ファイバの中より選択された1つの入力側光ファイバ伝送路から、波長分割多重光信号50が入力される。光可変フィルタ70によって、所望の波長の光信号が選択されて、ドロップされた光信号53が得られ、受信器35−1〜35−Lのうちの1つに渡される。
光可変フィルタ70は、1入力m出力(1×m)を持つ第1の光スイッチ71と、M入力M出力を持つ第1の周回性AWG72と、m´入力n出力を持つ第2の光スイッチ73と、N入力N出力を持つ第2の周回性AWG74と、n´入力1出力(n´×1)を持つ第3の光スイッチ75とを備えている。波長分割多重光信号50は、第1の光スイッチ71の入力ポート76に入力されて、ドロップされた波長の光信号53は、第3の光スイッチ75の出力ポート77から得られる。フォトニックノードの光信号終端装置においては、光可変フィルタ70は、複数の光受信器の各々に対して備えられる。
1×mの第1の光スイッチ71は、入力された波長分割多重光信号を、m個のいずれかの出力ポートに切り替える機能を持つ。第1の光スイッチ71の出力ポートは、それぞれ、第1の周回性AWGのM個の入力ポートのうちのいずれかm個に接続されている。したがって、少なくともm≦Mの関係が成り立つ。第1の光スイッチ71は、第1の周回性AWG72の入力ポートのうちのいずれか1つを選択する機能を持つことになる。すなわち、第1の周回性AWG72の入力ポート選択機能を持つ。
第1の周回性AWG72は、選択されたいずれか1つの入力ポートに波長分割多重光信号が入力され、その出力ポートに波長(群)ごとに光信号を分波して出力する。第1の周回性AWG72は、M入力M出力を持ち、その分波特性はサイクリックであって周回性を持っている。したがって、第1の周回性AWG72は、周回性波長合分波器またはサイクリック波長合分波器と呼ばれる。Mは同一ポートに入出力されるチャネル番号の周期となる。1つの出力ポートに着目すれば、Mチャネルごとの異なる波長番号を持つ複数の光信号が出力される。
第1の周回性AWG72は、その分波機能のうちの一部だけしか利用されていない。図7の光可変フィルタにおいては、M個の入力ポートおよびM個の出力ポートの内で、それぞれ、m個の入力ポートおよびm´個の出力ポートしか利用されていない。したがって、第1の周回性AWG72は、波長合分波器としてM入力M出力の合分波特性を持つように、その構成要素であるスラブ導波路およびアレイ導波路などが設定されているが、デバイスとしての入出力ポート配線は、一部であるm個の入力ポートおよびm´個の出力ポートだけ備えれば良い。
また、mおよびm´は、Mに対して次式の関係を持つ。
M≦m×m´ 式(2)
第1の光スイッチ71によって選択される第1の周回性AWGのm個の入力ポートに応じて、第1の周回性AWGのm´個の出力ポートの各々に現れる光信号の波長が決定される。したがって、m×m´通りの異なる波長群(または波長)を選択できる。第1の周回性AWG72は、チャネル間隔をδf(Hz)とするとき、次式で表されるFSR1を持つ。
FSR1=M×δf 式(3)
第1の周回性AWG72は、同一出力ポートにMチャネル毎にサイクリック(周回的)に異なる波長の光信号を出力するので、式(2)を満たせば、重複することなく波長群(または波長)を分波できる。
第2の光スイッチ73は、第1の周回性AWG72のm´個の出力の内の1つを選択し、かつ、後続の第2の周回性AWG74のn個の入力ポートを選択する機能を持つ。すなわち、第2の光スイッチ73は、(m´×1)スイッチ機能部分(前段部分)と(1×n)スイッチ機能部分(後段部分)とを縦続接続したものとなる。第2の光スイッチ73によって、第1の周回性AWGのm´個の出力ポートの内のいずれか1つの光信号が選択されて、さらに後続の第2の周回性AWG74のn個の入力ポートの1つに入力される。
第2の周回性AWG74は、選択されたいずれか1つの入力ポートに波長分割多重光信号が入力され、その出力ポートに波長ごとに光信号を分波して出力する。第2の周回性AWG74は、N入力N出力を持ち、その分波特性に周回性を持っている。Nは同一ポートに入出力されるチャネル番号の周期となる。したがって、1つの出力ポートに着目すれば、Nチャネルごとの異なるチャネル(波長)番号を持つ複数の光信号が出力され得る。ここで、第2の周回性AWG74も、第1の周回性AWG72同様に、その分波機能のうちの一部だけしか利用されていない。すなわち、N個の入力ポートおよびN個の出力ポートの内で、それぞれ、n個の入力ポートおよびn´個の出力ポートしか利用されていない。したがって、第2の周回性AWG74は、波長合分波器としてN入力N出力の合分波特性を持つように構成要素であるスラブ導波路およびアレイ導波路などが設定されているが、デバイスとしての入出力ポート配線は、一部であるn個の入力ポートおよびn´個の出力ポートだけを備えれば良い。
また、nおよびn´は、Nに対して次式の関係を持つ。
N≦n×n´ 式(4)
第2の周回性AWG74において第2の光スイッチ73によって選択されるn個の入力ポートに応じて、第2の周回性AWG74のn´個の出力ポートの各々に現れる波長が決定される。したがって、第2の周回性AWG74によってn×n´通りの異なる組み合わせに応じて、チャネル(波長)番号を一意に選択できる。第2の周回性AWG74は、チャネル間隔をδf(Hz)とするとき、次式で表されるFSR2を持つ。
FSR2=N×δf 式(5)
第2の周回性AWG74は、同一出力ポートにNチャネル毎にサイクリック(周回的)に異なる波長の光信号を出力するので、式(4)を満たせば、重複することなく波長ごとに光信号を分波できる。ここで、第1の周回性AWG72のMと、第2の周回性AWG74のNは、互いに素の関係にあることが必要である。
第2の周回性AWG74のn´個の出力ポートは、そのうちの1つがn´入力1出力を持つ第3の光スイッチ75によって選択される。第3の光スイッチ75の出力ポート77から、ドロップさせる特定の波長を持つ光信号53が出力される。上述のように、光可変フィルタ70は、全体として第1の周回性AWG72による1段目の光可変フィルタ機能と、第2の周回性AWG74による2段目の光可変フィルタ機能とを備えている。この点では、図6に示した従来技術の光可変フィルタの構成と似ている。しかしながら、図6に示した構成には無い、第1の周回性AWG72の入力ポートを選択する第1の光スイッチと、第2の周回性AWG74の入力ポートを選択する第2の光スイッチを備えている点で、提案された光可変フィルタは従来技術と相違していた。
図8は、提案された光可変フィルタの機能を含む光信号終端部(光信号終端装置)の機能を説明する図である。図8の(a)は、提案された光可変フィルタの機能を説明するものであり、(b)は従来技術の光可変フィルタの機能を対比させて説明するものである。提案された光信号終端部では、従来技術と同様に、ファイバ選択スイッチ33−1〜33−L(図3を参照)によって、複数の入力側光ファイバ伝送路から1本のファイバの選択(段階80)が実行される。さらに、図7に示した提案された光可変フィルタにおいて、第1の光スイッチ71によって、第1の周回性AWG71の入力ポート選択が実行される(段階81)。その後、第1の周回性AWG71によって波長群分波または波長分波が行われる(段階82)。さらに、第2の光スイッチ73の前段の光スイッチ部分によって、第1の周回性AWGの出力ポート選択が実行される(段階83)。さらに、第2の光スイッチ73の後段の光スイッチ部分によって、第2の周回性AWGの入力ポート選択が実行される(段階84)。次に、第2の周回性AWG74によって波長分波が行われる(段階85)。最後に、第3の光スイッチ75によって、第2の周回性AWGの出力ポート選択が実行される(段階86)。
図8の(b)は、従来技術の光可変フィルタにおける機能を、提案された光可変フィルタの機能の(a)と対比させて示している。図8の(b)の従来技術の光可変フィルタの機能は、図5の(b)に示した概念図に示した機能と対応している。また、図8の(a)と(b)とを対比することによって、提案された光可変フィルタは、第1の周回性AWGの入力ポート選択機能81および第2の周回性AWGの入力ポート選択機能84を備えている点に新規な特徴があることが分かる。
発明者らによって提案された図7の光可変フィルタでは、周回性を持つAWGの入力ポートを選択することによって、AWGの持つ分波機能を効率的に使用するとともに、周回性AWGのFSRの設定(MおよびNの設定)と利用する入力ポートおよび出力ポートを選び、出力される波長に重複が生じない構成を選択していた。すなわち、同一の出力ポートからは、所望波の波長の光信号のみが出力される構成となっていた。第1の周回性AWGの入力ポート選択機能81および第2の周回性AWGの入力ポート選択機能84を利用して、光スイッチの規模を従来技術よりもさらに低減したものであった。光可変フィルタを構成する要素スイッチ素子の数を減らし光スイッチの規模を大幅に減らすことができるので、デバイスの構成を簡略化し低コスト化をすることができる。回路規模の縮小により、デバイスの信頼性の向上も期待できるものであった。
本発明は、光信号のままで信号経路の設定や切替処理を行なう光パスネットワークにおける光クロスコネクト装置の光信号終端部などで使用される光可変フィルタに関する。光信号終端部は、複数の光ファイバを介してそれぞれ中継ノードへ並列的に伝送されてきた複数の波長分割多重光の中より選択された1つの波長分割多重光から、その波長分割多重光に含まれる所定の波長パスの光信号を選択して、電気レイヤへドロップさせる光可変フィルタを複数備えている。したがって、光可変フィルタは、所定の波長の光信号を透過させる透過帯域の中心波長(光周波数)を可変することができるフィルタを意味している。以下では、簡単のため光可変フィルタと呼ぶ。異なる波長の複数の波長多重化光信号から1つの波長を選択するものであれば、光信号終端部以外の用途にも当然に利用できる。
本発明の光可変フィルタは、一例を挙げれば、25GHz間隔で192チャネルの光信号が多重化された光通信システムに適用が可能である。しかし、他のチャネル間隔や他の多重化信号数を取り扱う光通信システムにも適用できる。さらに、光信号終端部だけではなく、複数の光信号から所望波のみを取り出す用途に適用できる。
本発明の光可変フィルタが取り扱う波長分割多重光信号は、複数の異なる波長の光信号が多重化されたものであるが、波長分割多重光信号の構成は様々なものを含む。例えば、波長分割多重光信号が、複数の波長群から構成され、1つの波長群は、複数の波長を含むような構成とすることができる。光通信システムにおいては、波長の値、または対応する光周波数と、チャネル番号とが関連付けられている。
1つの波長群に含まれる波長は、波長の値が、その長さの順に連続的に配置された複数の波長から構成することができる(連続配置型波長群)。例えば、波長(番号)が、λ1、λ2、・・λ8のように、連続して並んでいる8つの波長(チャネル番号でも連続)で1波長群を構成できる。また、波長の長さ順に連続ではなくて、所定のチャネル番号間隔で選択され飛び飛びに不連続な順に配置された複数の波長から構成することもできる(分散配置型波長群)。例えば、波長(番号)が、λ1、λ5、λ9・・λ29のように、所定の間隔を置いて不連続(離散的に)に並んだ8つの波長で1波長群を構成することもできる。波長群の数、1つの波長群を構成する波長の数、上述の所定のチャネル番号間隔なども様々な場合が可能である。尚、チャネルの間隔は、システムによって、等波長間隔または等光周波数間隔で構成される。
従来技術の光可変フィルタでは、周回性波長合分波器が使用されており、代表的なものとして、アレイ導波路回折格子(AWG)を利用できる。AWGにおいては、入力ポートへ入力された波長多重信号を分波して、各出力ポートに分波された光信号が出力される。FSR(Free Spectral Range:自由スペクトル領域)を適切に設定してAWGを構成することによって、出力ポートに現れる波長は、サイクリックなものすなわち周回性を持ったものとなる。光スイッチの規模を大幅に減らし、さらにクロストークの影響を抑えることができる本発明の特徴は、周回性を持つ波長合分波器を使用することによって得られるので、波長合分波器はAWGだけには限られないが、後述する実施例では、周回性AWGを利用した例で説明する。
本発明は、発明者らが提案した図7の構成の光可変フィルタにさらに新しい機能を含めたものである。すなわち、図7に示した光可変フィルタに含まれる複数の光スイッチに新たにフィルタ機能を担わせることによって、クロストークの問題を解決する。したがって、図7に示した光可変フィルタの一部の構成を変更するだけで、クロストークの影響を減らし、狭帯域のチャネル構成の光通信システムにおいても受信器における受信特性の劣化を防止することができる。尚、後に述べるが、本発明の構成は、クロストークの問題を生じる図6の構成の光可変フィルタにおいても、同様に適用できる点に留意されたい。
以下、本発明の光可変フィルタの構成および動作を詳細に説明する。最初に本発明の光可変フィルタで使用される光スイッチにより実現するフィルタ機能について説明する。具体的には、非対称マッハツェンダー干渉計(非対称MZI:ここでMZIは、Mach-Zehnder interferometerの略である)の構成を説明する。次に、フィルタ機能を持った光スイッチ(MZI)をより効果的に使用するための周回性AWGの構成について説明する。尚、以下の記述では、光可変フィルタは2つのAWGを持っているもの(2段構成)を例に説明をするが、本発明の基本的な概念は、AWGを3段以上含む構成の光可変フィルタにも適用できる。
図11は、本発明の光可変フィルタの構成を概念的に示した図である。図11に示した光フィルタ100の構成は、先に図7に示した構成と概ね同一である。図7においては、第2の光スイッチ73は、前段および後段からなる2つのスイッチ機能が直列接続された一体のものとして表現していた。図11においては、本発明の説明を簡単にするために、図7の第2の光スイッチ73を、第2の光スイッチ103および第3の光スイッチ104に分けて表現している。しかし、本発明の光可変フィルタにおいて、第2の光スイッチ103および第3の光スイッチ104を別個のものとして構成する必要はなく、図7のように一体のものとして構成して良い。また、図11では、2つの周回性AWG102、105を備えた、2段構成の光可変フィルタを例として示しているが、3段以上の構成であっても、本発明を適用できる。その他の構成要素は、図7において説明しているので、ここでは詳細を省略し、図7の構成との相違点に絞って説明する。
本発明の光可変フィルタ100は、第1の光スイッチ101、第2の光スイッチ103、第3の光スイッチ104および第4の光スイッチ106の内の1つ以上の光スイッチに、クロストークを減らすためのフィルタ機能を持たせている。図11では、第2の光スイッチ103および第4の光スイッチ106がフィルタ機能を持ったスイッチ要素素子109a、109bをそれぞれ含んでいる例を示している。後述するが、フィルタ機能を持ったスイッチ要素素子は、第1〜第4の光スイッチのいずれに含めることもできる。
したがって、本発明の光可変フィルタは、波長分割多重光の中から所定の波長の光信号を選択する光可変フィルタにおいて、前記波長分割多重光を、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有する第1の周回性波長合分波器の前記複数の入力ポートの内の1つの入力ポートに選択的に入力するための第1の光スイッチと、前記第1の周回性波長合分波器の前記複数の出力ポートの内から1つの出力ポートを選択する第2の光スイッチと、前記第1の周回性波長合分波器の前記選択された出力ポートからの分波出力光を、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有し、前記第1の周回性波長合分波器とは異なる周回性を持つ第2の周回性波長合分波器の前記複数の入力ポートの内の1つの入力ポートに選択的に入力するための第3の光スイッチと、前記第2の周回性波長合分波器の前記複数の出力ポートの内から1つの出力ポートを選択する第4の光スイッチとを備えている。
そして、第1の光スイッチ、第2の光スイッチ、第3の光スイッチおよび第4の光スイッチの内の少なくとも1つの光スイッチにおいて、所定の波長の光信号を透過させる単一のスイッチ要素素子または複数のスイッチ要素素子が、上述の所定の波長の光信号を透過させかつ波長分割多重光に含まれる他の波長の光信号を減衰させるフィルタ特性を有することになる。
フィルタ機能を持ったスイッチ要素素子を含む光スイッチの数は、2つの周回性AWG102、105の構成(M、N)によって変化する。逆に、2つの周回性AWG102、105の構成を選択することによって、フィルタ機能を持ったスイッチ要素素子を含む光スイッチの数および位置を決定することができる。さらに、光スイッチに持たせるフィルタ特性を決定することができる。以下、クロストークを減らすためのフィルタ機能を持つ光スイッチの実現方法について説明する。
図7に示した光可変フィルタおよび図11に示した本発明の光可変フィルタにおいて使用される光スイッチは、図4の(a)および(b)で説明した基本構成を持つ。図4で示した1×2スイッチ40、41は、スイッチ要素素子に対応している。これらのスイッチ要素素子は、マッハツェンダー干渉計(MZI)によって実現され、光スイッチは複数のMZIを組み合わせて構成されている。最初に、MZIの基本動作および本発明における利用方法について説明する。
図12は、MZIの基本構成を示す図である。MZIでは、1つの入力光を方向性結合器(カプラ)122によって2つに分岐し、再び方向性結合器123で合流させることで光を干渉させる。2分岐した光が伝播するアーム導波路124a、124b上には薄膜ヒーター125a、125bが備えられ、ヒーターに電流を流す(電力Pを印加する)ことで導波路の温度を変える。MZIへの電流をオンにした時とオフにした時では光の伝播速度が変わり、分岐光間に位相差が生じる。この位相差に応じて、合流時の光の干渉度合が変化して、出力ポート(out1、out2)を切り替えることができる。図12の(a)は基板125の上方から見た上面図であり、(b)は図中のA−A’において光の進行方向に沿って見た基板125の断面図である。
入力導波路121aに入力した光信号は、2つの出力導波路127a、127bのいずれかに切り替えられる。したがって、1つの出力導波路127aに着目すると、入力した光信号のオン・オフを実現できる。図7に示した従来の光可変フィルタでは、このMZIを組み合わせて、光信号を選択または合流する光スイッチを構成していた。また、光信号のオン・オフは、波長多重光信号に含まれるすべての波長の光信号を一括してオン・オフするよう動作していた。すなわち、例えはCバンド全体をまとめてオン・オフするようにMZIの構成パラメータが設定される。具体的には、2つのアーム導波路124a、124b間の光路長差を適切に設定する。
通常、2つのアーム導波路124a、124bの光路長差が0の場合は、対称MZIと呼ばれる。2つのアーム導波路124a、124bの光路長差が、対象とする波長(光周波数)で半波長の長さ以上に相当する場合は、非対称MZIと呼ばれる。光路長差が半波長の場合も含めて、広義の対称MZIと呼ぶ場合もある。また、ヒーター125a、125bには、電極129a〜129dを経由して電力Pが印加される。図12の構成例では、ヒーターは両方のアーム導波路上に備えられているが、片方のアーム導波路上のみに備えられていても良い。また、2つのアーム導波路間の位相差を変化させる手段は、温度の変化以外にもあるので、必ずしもヒーターによる加熱の方法だけに限定されない。
本発明の光可変フィルタでは、光スイッチ内の一部のスイッチ要素素子を非対称MZIとして、この非対称MZIに所望のフィルタ特性を持たせることで、クロストークの除去を行う。従来技術では、Cバンド全体をまとめてオン・オフするように構成されていたのとは対照的に、本発明では周回性AWGの構成に対応した所望のフィルタ特性を持つように、非対称MZIを構成する。図7で示した光可変フィルタの全体構成は何ら変更することなく、また、新たな構成要素を付加することもなく、クロストークの問題に対応する。
非対称MZIの動作は、よく知られているので詳細は述べないが、2つの出力out1(スルーポート)、out2(クロスポート)からの出力T1、T2および次数mは、下の各式によって表される。
また、FSR(Free Spectral Range)、Δfは、次式で表される。
ここで、各符号等は以下の通りである。K:方向性結合器の結合率、f:光周波数、c:光速、f0:透過中心光周波数、λ0:透過中心波長(=c/f0)、nc:導波路の等価屈折率、ng:導波路の群屈折率、ΔL:アーム部の導波路長差、P:位相シフタの印加電力(短アーム側に印加する場合P>0、長アーム側に印加する場合P<0)、Pπ:半波長電力、m:次数(光路長差がλ0の何倍かを示す)
図13は、非対称MZIにおける次数mの効果を説明するための図である。図13の(a)は横軸を光周波数で表示した場合の出力ポート(クロスポート)T2の透過特性を、次数mをパラメータとして示す。図13の(b)は横軸を波長で表示した場合の出力ポートT2の透過特性を示す。(a)では、m=0.5の場合(非対称MZI)の特性131からm=3の場合(非対称MZI)の特性134までの光周波数依存特性を、m=0.5、1、2、3と変化させて示している。(b)でも、同様に、m=0.5の場合(非対称MZI)の特性135からm=3の場合(非対称MZI)の特性138までの波長依存特性を、m=0.5、1、2、3と変化させて示している。尚、m=0の場合は、光路長差が0であって、対称MZIの透過特性を示しており、出力ポート(クロスポート)T2は、全帯域で透過率1を意味する。このとき、スルーポートT1では、全帯域で遮断となる。また図13の(a)において、左端のf=150THzはλ=1998.6nmに相当し、右端のf=500THzはλ=599.6nmに相当する。
上述のT1、T2の式からも分かるように、MZIの透過率特性は正弦波状の形状を持ち、図13はCバンド(1530〜1565nm)の概ね中央であるλ0=1550nmにおいて、透過率1となるように設定した場合を示している。λ0=1550nmは、光周波数f0=193.4THzに対応している。次数mが0より大きいとき、次数mを変化させることによって、透過特性の周期は変化し、透過率特性のピークおよびディップの位置も変化する。次数m(光路長差)を1、2、 3, ・・と順次増やしていくにしたがって、クロスポートout2の透過帯域が狭くなっていき、光フィルタとして機能するようになる。したがって、スイッチ要素素子として非対称MZIを用いると、次数mを適切に選択することで、所望のフィルタ特性を得ることができる。尚、図7に示した従来の光可変フィルタでは、光スイッチを構成するスイッチ要素素子としてのMZIは、m=0またはm=0.5の広義の対称MZIを使用していた。したがって、スイッチ要素素子であるMZIは、少なくともCバンドにおいて全帯域透過(オン)または全帯域遮断(オフ)の特性を持つ。各MZIのオン・オフ特性の組み合わせによって、1つのポートを選択する光スイッチを構成していたことに留意されたい。全帯域透過または全帯域遮断の切り替えは、例えば図12に示したヒーターによる加熱によって行っていた。
図14は、非対称MZIにおける透過特性の切り替え動作を説明する図である。図14の(a)は、横軸を光周波数で表示した場合の出力ポート(クロスポート)T2の透過特性を、次数mをパラメータとして示す。(b)は、横軸を波長で表示した場合の出力ポート(クロスポート)T2の透過特性を、次数mをパラメータとして示す。いずれも、m=40、40.5の場合を示しており、(b)に示したように、Cバンド(1530〜1565nm)中央であるλ0=1550nmにおいて、m=40のときに透過率が1となるフィルタ特性144となるように設定した場合を示している。フィルタ特性144は、FSR=4800GHzの光フィルタとして機能している。ここで、mを40.5にすると、透過域および阻止域が逆転する。(a)の光周波数軸で見た場合も、透過率が1のフィルタ特性142は、mを40から40.5にすると、透過域と阻止域が逆転したフィルタ特性141となる。図14の(a)および(b)から、非対称MZIの次数mを制御することで、特定の波長(光周波数)における透過または阻止を制御可能であり、Cバンド内においても特定の波長(光周波数)の光信号を選択的に透過または阻止するフィルタ特性を実現できることが分かる。
図15は、非対称MZIにおいて次数mを連続的に変化させた場合の動作を説明する図である。図15の(a)および(b)いずれも、図15と同じ条件の透過特性を示しているが、mを40から40.5の間でより細かく変化させた場合の透過特性変化を示す。例えば(b)では、m=40のときの透過特性153からm=40.5のときの透過特性154までmを変化させて、透過域の中心波長λ0が、1550nmから1570nmまで滑らかに可変できることが分かる。具体的には、透過中心周波数は印加電力にほぼ比例してシフトし、長アーム導波路側に電力印加すると低周波数側(長波長側)へ、短アーム導波路側に電力を印加すると高周波数側(短波長側)へシフトする。したがって、式(7)における電力Pをアナログ的に連続的に変化させれば、非対称MZIのフィルタ特性(透過特性)のピークおよびディップを所望の波長(光周波数)に一致させることができる。上述のようにスイッチ要素素子である非対称MZIのフィルタ特性を利用して、所望波である光信号に対しては、透過させる(オン)スイッチとして機能し、クロストークの問題を生じさせる非所望波である1つ以上の光信号に対しては、これを阻止するフィルタとして機能させる。図11に示した4つの光スイッチのいずれか1つ以上の光スイッチで、その一部のスイッチ要素素子を、対称MZIから非対称MZIとすることで構成できる。
後に具体的な例を挙げて説明するが、クロストークを生じる非所望波である光信号の数、および、所望波である光信号と非所望波である光信号との位置関係は、2つの周回性AWGの構成に依存する。すなわち、図11における第1の周回性AWG102のFSRの設定(Mの設定)および第2の周回性AWG105のFSRの設定(Nの設定)に依存する。したがって、非対称MZIを効率的に利用して、様々なクロストークの発生状況に対応する必要がある。
図16は、本発明の光可変フィルタにおいて非対称MZIによりフィルタ特性を実現する方法を説明する図である。(a)および(b)いずれも、横軸は波長を表しており、次数mを様々な条件に設定した非対称MZIによる1つの出力ポートの透過特性161、162、163、164を示している。図16の(a)は、従来技術における(非対称)MZIのフィルタ特性の利用方法を示している。図7に示した従来技術の光可変フィルタでは、次数mが0または0.5の広義の対称MZIを使用している。次数mが小さい非対称MZIの場合には、概ねCバンドのすべての光信号を透過させるか(フィルタ特性161)または遮断する(フィルタ特性162)かの2つの状態を選択していた。光可変フィルタの4つの光スイッチを構成するすべてのMZIが、このような対称MZIを利用していた。
これに対して、本発明の光可変フィルタでは、図16の(b)に示したように、Cバンド内で所望波である特定の波長の光信号のみを透過させ、非所望波であってクロストークを生じる他の波長の光信号を遮断するような非対称MZIのフィルタ特性を利用する。非対称MZIの次数mを大きく設定することで、例えば、フィルタ特性163によって、波長λ1の光信号のみを選択して、クロストークを生じる他の波長(λ49、λ97、λ145)の光信号を減衰させることができる。また、次数mを0.5だけ変化させて透過帯域のピークを反転させれば、フィルタ特性164によって、波長λ97の光信号のみを選択して、クロストークを生じる他の波長(λ1、λ49、λ145)の光信号を減衰させることもできる。
図17は、本発明の光可変フィルタにおいて非対称MZIによりフィルタ特性を実現する方法を説明する別の図である。図17の(a)に示したように、本発明の光可変フィルタでは、Cバンド内で所望波である特定の波長の光信号のみを透過させ、非所望波であってクロストークを生じる他の波長の光信号を遮断するような非対称MZIのフィルタ特性を利用する。非対称MZIの次数mを大きく設定することで、例えば、フィルタ特性171によって、波長λ1の光信号のみを選択して、クロストークを生じる他の波長(λ49、λ97、λ145)の光信号を減衰させることができる。また、次数mをヒーターなどによって0.5だけ変化させて透過帯域のピークを反転させれば、フィルタ特性172によって、波長λ97の光信号のみを選択して、クロストークを生じる他の波長(λ1、λ49、λ145)の光信号を減衰させることもできる。さらに、次数mをヒーターなどによって連続的に変化させて透過帯域のピークを滑らかに変化させれば、フィルタ特性173、174によって、波長λ49の光信号、波長λ145の光信号のみを選択して、クロストークを生じる他の波長の光信号を減衰させることができる。
尚、図17の(b)に示した2つのフィルタ特性171、172は、透過域および阻止域が相互に反転した特性となっており、非対称MZIをオン・オフすることで、1つの非対称MZIにより実現できる。所望波および非所望波としてλ1、λ97の2つのみの光信号が存在する場合、図17の(b)を見れば分かるように、フィルタ特性171によれば、λ1の波長を選択的に取り出し、クロストークとなるλ97の光信号は十分に減衰できる。しかしながら、所望波および非所望波としてλ1、λ49、λ97、λ145の4つの光信号が存在する場合、同じくクロストークとなるλ49、λ145における光信号の減衰量は半分(−3dB)程度で、不十分である。そこで、次に述べるようにFSRの異なる2つ以上のフィルタ特性を組み合わることによって、より効果的にクロストークを抑えたフィルタ特性を実現できる。
図18は、本発明の光可変フィルタにおいて非対称MZIによりフィルタ特性を実現する方法を説明するさらに別の図である。非所望波であってクロストークを生じさせる光信号を効果的に減衰させるために、異なるFSRを持つ2つ以上の非対称MZIのフィルタ特性を組み合わせることができる。図18の(a)は、横軸に波長をとっており、異なる波長を持つ4つの光信号のうちの1つを選択的に透過させる状況を示す。ここで、第1のFSRを持つ第1の非対称MZIによるフィルタ特性181と、第2のFSRを持つ第2の非対称MZIによるフィルタ特性182とを組み合わせることで、所望波に対して非所望波を効果的に減衰させることができる。(a)では、所望波である波長λ1のみを透過させるため、フィルタ特性181およびフィルタ特性182の両方がλ1においてピークとなるように次数mおよび印加電力Pが設定される。このとき、クロストークを生じる他の波長(λ49、λ97、λ145)の光信号は、フィルタ特性181またはフィルタ特性182のいずれかのディップと一致している。
図18に示したフィルタ特性の実現方法は、光可変フィルタに入力する光多重信号において、所望波である選択する光信号および非所望波であるクロストークを生じさせる光信号が、波長(光周波数)軸上で概ね等間隔に並ぶような状況にうまく適合する。異なるFSRを持つ複数の非対称MZIのフィルタ特性を組み合わせることによって、所望波および非所望波の多様な状況に対して、十分なクロストーク減衰を可能とするフィルタ特性を実現できる。また、クロストークを生じる光信号の数や間隔、配置が予め特定できるように、周回性AWGの構成を選択することによって、異なるFSRを持つ複数の非対称MZIのフィルタ特性の組み合わせを、より効果的に利用できる。
例えば、予め等間隔で並ぶ4つ(22)の光信号の内の1つを選択する状況(他の3つはクロストーク)となるように周回性AWGの構成を選択すれば、図18のように異なるFSRを持つ2種類(タイプ)の非対称MZIのフィルタ特性を組み合わせて、クロストークを減らすことができる。同様に、予め等間隔で並ぶ8つ(23)の光信号の内の1つを選択する状況(他の7つはクロストーク)となるように周回性AWGの構成を選択すれば、異なるFSRを持つ3種類の非対称MZIのフィルタ特性を組み合わせてクロストークを減らすことができる。具体的な例は、後述する。
図19は、光可変フィルタにおける光スイッチの具体的な構成例を示した図である。いずれも、発明者らが提案した図7の光可変フィルタ構成における光スイッチ73の構成例を示す。図19の(a)は第1の構成例を、(b)は第2の構成例を示す。(a)の第1の構成例では、光スイッチ73は、図19左側にある前段のA入力1出力の光スイッチ103と、図19右側にある後段の1入力B出力の光スイッチ104とが接続されている。図19では、A=8、B=9の例を示している。いずれの光スイッチも、要素素子である1×2スイッチ112を、単独でまたは複数個組み合わせて構成できる。
光スイッチ103のA個の入力ポートのうちのいずれか1つのポートへの入力光信号が選択される。次に、その選択された入力光信号は、後段の光スイッチ104の入力ポートに接続される。さらに、光スイッチ104のB個の出力ポートのいずれか1つに接続される。結局、光スイッチ73は、A入力から1入力のみを選択して、それをB出力のうちの任意の1ポートに出力するスイッチである。このような光スイッチは、図19に示した構成だけに限定されず、他のどのような方法でも実現できる。図19に示すように、光スイッチ73は前段および後段の2つのスイッチ103、104から構成されているかのように描かれてはいるが、光スイッチ73を一体の光スイッチデバイスとして構成することができる。
別の構成例として、図19の(b)に示すように、中央部に2×2スイッチ113を用いて構成することもできる。すなわち、(a)の構成において、前段スイッチ103の出力スイッチおよび後段スイッチ104の入力スイッチを、1つの2×2スイッチ113によって実現することができる。図19の(a)、(b)の構成に限られず、他にも様々な方法で、光スイッチ73を実現できることは言うまでもない。
本発明の光可変フィルタでも光スイッチの構成は、図19の例と同様である。上述の光スイッチの要素素子である1×2スイッチ112および2×2スイッチ113は、図12に示したMZIによって実現できることが簡単に理解できるだろう。したがって、光スイッチのさらに具体的構成は、図19のスイッチ要素素子をMZIに置き換えて考えれば良い。本発明では、光可変フィルタのいずれかの光スイッチにおいて、その光スイッチの中の少なくとも一部のMZIについて、非対称MZIを利用する。
図20は、本発明の光可変フィルタを構成する光スイッチで使用される非対称MZIの配置位置を説明する図である。図20の(a)は、従来の対称MZIのみを使用した4×1(4入力1出力)の光スイッチの例に示している。4つの入力ポート204からの入力信号を選択して、1つの出力ポート205に出力する。スイッチ要素素子201a〜201cは、いずれも対称MZIである。(b)は、本発明で使用される、少なくとも一部が非対称MZI(ASと表記)で構成された4×1(4入力1出力)の光スイッチを示している。(b)に示した光スイッチは、あるFSRを持つ1種類の非対称MZIを含み、光スイッチに1種類のフィルタ特性の機能を持たせる場合である。ここで、(b)に示した光スイッチは、最終段すなわちすべての入力光信号が通過するスイッチ要素素子を非対称MZI202とする必要がある点に留意されたい。前段側にある2つのスイッチ要素素子201a、201bは対称MZIである。
図20の(c)は、本発明で使用される、少なくとも一部が非対称MZIで構成された4×1(4入力1出力)の光スイッチの別の例を示している。(c)に示した光スイッチは、すべての要素素子が非対称MZI202、203a、203bとなっており、1種類以上のFSRを持つ1種類以上の非対称MZIを含み、光スイッチに1種類以上のフィルタ特性の機能を持たせる場合である。ここで、1種類以上とは、1つの光スイッチ内の複数のMZIが同一のFSRを持つ構成も妨げないという意味である。後述の周回性AWGのパラメータM、Nの選択によっては、1つの光スイッチ内の複数のMZIが同一のFSRを持つ構成でも利用できるからである。しかしながら、図18で説明したように、異なるFSRを持つ2種類のフィルタ特性を組み合わせて利用する場合には、図20の(c)において、最終段の非対称MZI202が第1のFSRを持ち、前段側の2つの非対称MZI203a、203bが、第1のMZIとは異なる第2のFSRを持つ構成が、本発明における光スイッチ内の非対称MZIの配置の好適な例となる。
ここで、注意すべきことは、図19および図20で例示しているツリー構造を持つ光スイッチの場合に、最終段以外の前段側に非対称MZIを用いるときは、同じ段にあるすべての要素素子を同一のFSRを持つ非対称MZIとしなければならないことである。したがって、図20に示した2段構成よりもさらに段数が多い(3段、4段・・)光スイッチで、例えば、最終段から数えて3段目の要素素子を非対称MZIとする場合は、3段目にある8個の要素素子のすべてを同一のFSRを持つ非対称MZIとしなければならない。
つまり、本発明の光可変フィルタにおいて、光スイッチは、1つの波長分割多重光に含まれるすべての光信号を透過させる単一のスイッチ要素素子(最終段の場合)または複数のスイッチ要素素子(最終段以外の場合)が、所定の波長パス(所望波)の光信号を透過させかつ1つの波長分割多重光に含まれる他の波長(非所望波)の光信号を減衰させるフィルタ特性を有することになる。
したがって、1つの種類のFSRを持つフィルタ特性を実現するためには、光スイッチの最終段にあってすべての光信号が通過する要素素子を非対称MZIとするのが簡単で合理的である。非対称MZIを利用する場合、対称MZIに比べてアーム導波路間の光路長差のぶんだけ回路長が長くなるため、できるだけ少ない数の非対称MZIとする構成が合理的である。また、1つの光スイッチ内で、異なるFSRを持つ2種類のフィルタ特性を実現するためには、図20(c)のように最終段の1つの要素素子およびその隣の段の2つの要素素子を非対称MZIとすれば良い。
以上の説明および図11の本発明の光可変フィルタの構成からわかるように、フィルタ機能を持った非対称MZIを含める光スイッチは、4つの光スイッチ101、103、104、106の内のいずれでも良い。また、2種類以上の異なるFSRを持つフィルタ特性を利用する場合に、各々が非対称MZIを含む2つ以上の光スイッチを組み合わせても良い。また、1つの光スイッチ内に2種類以上の異なるFSRを持つ複数の非対称MZIを含めても良い。
具体的には、光可変フィルタにおいて、クロストークを低減するため1種類のFSRを持つフィルタ特性を利用する場合には、4つの光スイッチ101、103、104、106の内のいずれか1つが非対称MZIを含めば良い。この場合は、最終段のスイッチ要素素子を非対称MZIとするのが好ましい。尚、光スイッチ101、104は、1入力多出力のスイッチなので、上記説明における「最終段」は、1段目と読み替えることになる。すなわち、すべての入力(出力)光信号が通過する段の要素素子を非対称MZIとする。
したがって、本発明においては、第1の光スイッチ、第2の光スイッチ、第3の光スイッチおよび第4の光スイッチの内の前記少なくとも1つの光スイッチにおいて、ツリー型に構成された複数のスイッチ要素素子の中の最終段のスイッチ要素素子、ツリー型に構成された複数のスイッチ要素素子の中の最終段を除くツリーの同一階層の段にある複数のスイッチ要素素子、または、格子型に構成された複数のスイッチ要素素子の中の最終段のスイッチ要素素子を、非対称MZIとすることになる。
また、光可変フィルタにおいて、クロストークを低減するため2種類のFSRを持つフィルタ特性を利用する場合には、4つの光スイッチ101、103、104、106の内の2つを組み合わせ、組み合わせた光スイッチの各々に1つずつ異なるFSRを持つ非対称MZIを含めば良い。具体的には、1つ目の光スイッチに第1のFSRを持つ非対称MZIを含め、2つ目の光スイッチに第2のFSRを持つ非対称MZIを含めれば良い。この場合も、最終段の要素素子を非対称MZIとするのが好ましい。また、4つの光スイッチ101、103、104、106の内の1つの光スイッチに、第1のFSRを持つ非対称MZIと第2のFSRを持つ非対称MZIを含めても良い。
上述の説明では、図19および図20で例示しているツリー構造を持つ光スイッチについて説明したが、図4の(b)で説明した格子型の構成の場合でも、本発明を適用できる。
図21は、格子型の光スイッチにおける非対称MZIの配置位置を説明する図である。説明のため簡単な3入力1出力の3×1スイッチの例を示している。格子型の構成の光スイッチでは、原理的にすべての光信号が通過するスイッチ要素素子は最終段だけである。したがって、格子型の光スイッチでは、最終段の要素素子のみ非対称MZI213とすることができる。要素素子211、212を非対称MZIとすることはできない。2種類以上の異なるFSRを持つフィルタ特性を利用する場合は、複数の光スイッチにそれぞれ異なるFSRを持つフィルタ特性を担わせることになる。この場合であっても、非対称MZIを含む光スイッチは、4つの光スイッチ101、103、104、106のどれを選択しても良いし、どのように組み合わせても良い。
ツリー型および格子型の選択は、素子数やチップ上で回路を構成する大きさ・形状、選択動作を行う場合に必要な消費電力など考慮して選択すれば良い。以上これまでは、本発明で利用されるフィルタ特性を持った非対称MZIおよび光スイッチの構成を説明してきた。以下では、周回性AWGの具体的な構成とともに、周回性AWGの構成パラメータとの組み合わせで非対称MZIをより効果的に利用する実施例を説明する。以下の実施例では、Cバンドにおいて25GHz間隔で192チャネルを有する波長分割多重光信号から所望の光信号を選択する光可変フィルタについて説明する。しかし、本発明のクロストーク問題を解決する基本的な考え方は、他の通信バンド、チャネル間隔、チャネル数の場合にも適用可能である。
以上の説明のように、本発明においては、光スイッチに含まれる1つ以上のスイッチ要素素子は、アーム導波路間の光路長差が1波長以上の光路長差を持つ非対称マッハツェンダー干渉計(MZI)で構成され、非対称MZIが有するフィルタ特性は、第1の周回性波長合分波器の第1の周期および第2の周回性波長合分波器の第2の周期に関連付けられた周期(FSR)を有する1種類以上の非対称MZIで構成される。
また、光スイッチに含まれる1つ以上のスイッチ要素素子は、アーム導波路間の光路長差が1波長以上の光路長差を持つ非対称マッハツェンダー干渉計(MZI)で構成され、
非対称MZIが有するフィルタ特性は、第1の周回性波長合分波器の第1の周期および第2の周回性波長合分波器の第2の周期に関連付けられた異なる周期(FSR)を有する複数の種類の非対称MZIの組み合わせによって構成されることになる。
本発明の光可変フィルタでは、所望波の光信号の波長とクロストークを生じる非所望波の光信号の波長との関係によって、非対称MZIに必要なフィルタ特性が変わってくる。しかし、周回性AWGの構成パラメータ(M、N)に何らかの条件を付加すれば、非対称MZIをより簡単に構成できる。以下、周回性AWGが特定の構成パラメータ(M、N)を持つ場合において、非対称MZIの構成例を示す。
最初に、図11の構成をとりながら同一出力ポートにおいて2以上の光信号が現れることを許容するようなAWG構成の場合に、本発明を適用する例を説明する。発明者らが提案した図7の従来の光可変フィルタの構成では、MおよびNが互いに素の関係を持つことによって、光可変フィルタの同一出力ポートには1つの波長の光信号のみが現れるようにしていた。しかしながら、MとNの関係を互いに素の場合以外に拡張しても、本発明のクロストークを除去する非対称MZIの構成を採用することで、出力ポートに重複して現れる光信号もクロストークとして除去し、MおよびNの選択範囲に多様性をもたらすことができる。さらに、MとNの関係が素数の場合に適用する実施例も示す。
図22は、本発明の実施例1の光可変フィルタの構成を示す図である。図11に示した構成において、周回性AWG102、105および各光スイッチ101、103、104、106の構成を具体化したものである。実施例1では、第1のAWG102は14×14の構成(M=14)を持ち、第2のAWG105は16×16の構成(N=16)を持つ。各光スイッチは、順に、1×3スイッチ、5×1スイッチ、1×4スイッチ、4×1スイッチの構成を持つ。MとNとは互いに素ではなく、MとNの間には共通因数k=2を持つ。したがって、第4の光スイッチ106の出力には、共通因数k=2に対応した数の波長の光信号が同時に現れる。
図23は、実施例1の構成の光可変フィルタにおける各AWGの出力ポートから出力される波長を説明する図である。図23は、AWGの入力ポートに波長分割多重光信号を入力した場合に、各出力ポートに分波される波長の番号を表の形式で示している。上の表は、M=14の第1のAWG102に対応し、下の表は、N=16の第2のAWG105に対応する。波長は、波長番号1から192までを含む。例えば、上の表に着目すると、太線の矩形領域235で囲った1行目の波長群230は、ある出力ポートから出力される波長を示す。2行目の波長群は、周回性AWGの特性から、上記ある出力ポートから1つだけずれた隣の出力ポートから出力される波長となる。
ここで、波長番号1すなわちλ1の光信号を本発明の光可変フィルタで選択する場合を考える。第1のAWG102については、上の表の、λ1のセル232を含む第1行目235に対応する出力ポートを選択すれば良い。さらに、第2のAWG105については、下の表の、λ1のセル232が含まれる第1行目236に対応する出力ポートからの波長群231を選択すれば良い。しかしながら、上記のように各AWGの入力ポートおよび出力ポートを選択すると、所望波のλ1だけでなくλ113の光信号も同一出力ポートに出力される。λ113の光信号は、波長λ1に対して、2つのいずれのAWGに関しても同一の波長グループに属するので、全く減衰を受けずに所望波のλ1と同じレベルで出力される。これは、MとNとが共通因数k(=2)を持つためである。したがって、所望波のλ1に対して、非所望波であるクロストークと同様に作用するλ113の光信号を除去する必要がある。ここで、図12〜図21で説明をした非対称MZIを含む光スイッチのフィルタ特性を利用することができる。
図24は、実施例1の光可変フィルタにおいて利用する非対称MZIによるフィルタ特性を説明する図である。非対称MZIによって、所望波λ1を透過させ、非所望波λ113を除去するためには、1つの光スイッチのうちの1つの非対称MZIが図24のフィルタ特性240を備えれば良い。すなわち、所望波λ1が透過域のピークに対応し、非所望波λ113が阻止域のピーク(すなわちディップ)に対応するようなフィルタ特性を実現すれば良い。具体的には、非対称MZIがFSR=M×N×帯域幅=14×16×25=5600GHzを持てば良い。尚、所望波の波長が変わっても、非所望波との関係(波長間隔は112チャンネル相当)は同じなので、非対称MZIの次数mを調整して透過域の中心波長を調整すれば良い。
上記構成の非対称MZIを含める光スイッチは、光スイッチ101、103、104、106の内のいずれか1つで良い。いずれかの光スイッチ内で、すべての光信号が通過するスイッチ要素素子を、FSR=5600GHzの非対称MZI(次数m=34.5、中心光周波数は193.4THz)とすれば良い。
以上説明したように、実施例1の光可変フィルタでは、共通因数をk=2とすると、第1のAWG103の構成はM=mp×k=14=7×kであり、第2のAWG105の構成はN=np×k=16=8×kとなる。ここで、mp=7およびnp=8は互いに素の関係にある。第2のAWG105の同一の出力ポートから出力される光信号はk=2=21個となる。本実施例では、所望波に対して、非所望波の波長はAWGのフィルタ特性における隣接チャネルに相当せず、MおよびNに共通因数を含むために当然に所望波の透過域に完全に一致して現れる光信号である。本実施例では、2つのAWGの構成(MおよびN)に共通因数k=2を含む場合に、同一出力ポートから現れる非所望波をクロストークとして取り扱い、非対称MZIによるフィルタ特性によって除去している。次に、共通因数kの値が異なる場合の実施例を示す。
図25は、本発明の実施例2の光可変フィルタの構成を示す図である。実施例1と同様に、図11に示した構成において、周回性AWG102、105および各スイッチ101、103、104、106の構成を具体化したものである。実施例2では、第1のAWG102は12×12の構成(M=12)を持ち、第2のAWG105は16×16の構成(N=16)を持つ。各光スイッチは、順に、1×3スイッチ、4×1スイッチ、1×4スイッチ、4×1スイッチの構成を持つ。MとNとは互いに素ではなく、MとNの間には共通因数k=4を持つ。したがって、第4の光スイッチ106の同一の出力ポート上には、波長の異なる共通因数k=4に対応した数の光信号が現れる。
図26は、実施例2の構成の光可変フィルタにおける各AWGの出力ポートから出力される波長を説明する図である。図26は、AWGの入力ポートに波長分割多重光信号を入力した場合に、各出力ポートに分波される波長の番号を表の形式で示している。上の表は、M=12の第1のAWG102に対応し、下の表は、N=16の第2のAWG105に対応する。波長は、波長番号1から192までを含む。例えば、上の表に着目すると、太線の矩形領域265で囲った1行目の波長群261は、ある出力ポートから出力される波長を示す。2行目の波長群は、周回性AWGの特性から、上記ある出力ポートから1つだけずれた隣の出力ポートから出力される波長となる。
ここで、波長番号1すなわちλ1の光信号を本発明の光可変フィルタで選択する場合を考える。第1のAWG102については、上の表の、λ1のセル263aを含む第1行目265に対応する出力ポートを選択すれば良い。さらに、第2のAWG105については、下の表の、λ1のセル264aが含まれる第1行目266に対応する出力ポートからの波長群262を選択すれば良い。しかしながら、上記のように各AWGの入力ポートおよび出力ポートを選択すると、所望波のλ1だけでなくλ49、λ97およびλ145の3つの光信号も同時に出力される。λ49、λ97およびλ145の各光信号は、波長λ1に対して、2つのいずれのAWGに関しても同一の波長グループに属するので、全く減衰を受けずに所望波のλ1と同じレベルで出力される。これは、MとNとが共通因数k(=4)を持つためである。したがって、所望波のλ1に対して、非所望波であるクロストークと同様に作用するλ49、λ97およびλ145の光信号を除去する必要がある。ここで、図12〜図21で説明をした非対称MZIを含む光スイッチのフィルタ特性を利用することができる。
図27は、実施例2の光可変フィルタにおいて利用する非対称MZIによるフィルタ特性を説明する図である。非対称MZIによって、所望波λ1を透過させ、非所望波λ49、λ97およびλ145を除去するためには、図18で説明したような、異なるFSRを持つ2種類の非対称MZIのフィルタ特性を組み合わせて、クロストークを除去すれば良い。すなわち、2種類の非対称MZIのフィルタ特性270、271を組み合わせた図27のフィルタ特性を備えれば良い。図27に示すように、所望波λ1が、2種類の非対称MZIのフィルタ特性270、271の両方の透過域のピークにそれぞれ対応し、非所望波λ49、λ97およびλ145が2種類の非対称MZIのフィルタ特性270、271のどちらかが阻止域のピーク(すなわちディップ)に対応するような各フィルタ特性を実現すれば良い。
具体的には、本実施例では、2種類の非対称MZIを4つの光スイッチのいずれかに含めれば良い。第1の非対称MZIは、FSR=M×N×帯域幅=12×16×25=4800GHzを持ち、図27におけるフィルタ特性270に対応する。第2の非対称MZIは、FSR=M×N×帯域幅/2=12×16×25/2=2400GHzを持ち、図27におけるフィルタ特性271に対応する。2つのフィルタ特性270、271を組み合わせれば、λ1、λ49、λ97およびλ145の内のいずれか1つが所望波となり、残りの3つが非所望波の場合であっても、所望波のみを取り出すことができる。尚、所望波の波長が変わっても、所望波の波長と3つの非所望波の波長との関係(波長間隔は48チャンネル相当)は同じなので、2種類の非対称MZIの次数mを、それぞれヒーター等によって調整すれば良い。また、2つのFSR値に関しては、一方の非対称MZIのFSR値(2400GHz)は、他方のMZIのFSR値(4800GHz)の半分(1/2)の関係にあることに注目されたい。
上記構成の2種類の非対称MZIを含める光スイッチは、2種類のいずれの非対称MZIについても、光スイッチ101、103、104、106の内のどれであっても良い。すなわち、第1の種類の非対称MZIは、光スイッチ101、103、104、106の内のどれに含めても良い。同様に、第2の種類の非対称MZIも、光スイッチ101、103、104、106の内のどれに含めても良い。さらに、光スイッチ101、103、104、106のどれか1つの中に、2種類の非対称MZIの両方を含めることもできる。1つの光スイッチに1種類のMZIを含める場合は、図20の(b)に示したように、すべての光信号が通過する最終段のスイッチ要素素子を非対称MZIとするのが好ましい。1つの光スイッチ内に2種類のMZIを含める場合は、図20の(c)に示した構成となる。
より具体的には、より緩やかな広いフィルタ特性を持つ第1の種類の非対称MZIは、FSR=4800GHzの非対称MZI(次数m=40.3、中心光周波数は193.4THz)とすれば良い。より狭いフィルタ特性を持つ第2の種類の非対称MZIは、FSR=2400GHzの非対称MZI(次数m=80.6、中心光周波数は193.4THz)とすれば良い。任意の組み合わせの2つの光スイッチにおいて、一方の光スイッチの最終段のスイッチ要素素子を第1の種類の非対称MZIとし、他方の光スイッチの最終段のスイッチ要素素子を第2の種類の非対称MZIとすれば、非対称MZIの数は光可変フィルタ全体では2つで済む。
以上説明したように、実施例2の光可変フィルタでは、共通因数k=4であって、第1のAWGの構成はM=mp×k=3×k=12であり、第2のAWGの構成はN=np×k=4×k=16となる。ここで、mp=3およびnp=4は互いに素の関係にある。第2のAWG105の同一の出力ポートから出力される光信号はk=4=22個となる。本実施例でも、所望波に対して、3つの非所望波の波長はAWGのフィルタ特性における隣接チャネルに相当せず、共通因数を含めために当然に完全に所望波(透過域)に一致して現れる光信号である。図7に示した光可変フィルタでは、共通因数k=1となるようにMおよびNを選択して、重複を避けていたことを確認されたい。本実施例では、2つのAWGの構成パラメータのMおよびNが共通因数k=4を含む場合に、同一出力ポートから現れる非所望波をクロストークとして取り扱い、異なるFSRを持つ2種類の非対称MZIによるフィルタ特性の組み合わせによって、クロストークを除去している。次に、共通因数k=1の場合、すなわち、MおよびNが互いに素の関係にある場合の実施例を示す。この場合は、図7に示した構成の光可変フィルタに本発明の非対称MZIを含む光スイッチの構成を適用することになる。
図28は、本発明の実施例3の光可変フィルタの構成を示す図である。実施例1、実施例2と同様に、図11に示した構成において、周回性AWG102、105および各スイッチ101、103、104、106の構成を具体化したものである。実施例3では、第1のAWG102は13×13の構成(M=13)を持ち、第2のAWG105は15×15の構成(N=15)を持つ。各光スイッチは、順に、1×3スイッチ、5×1スイッチ、1×3スイッチ、5×1スイッチの構成を持つ。MとNとは互いに素の関係にあり、MとNの間の共通因数はk=1である。また、「N=M+2」であって、「Mは奇数」の条件も満たすことにも留意されたい。MとNとは互いに素の関係にあるので、図7で説明したように、第4の光スイッチ106の出力には、波長の重複は生じず所望波の光信号のみが現れる(実施例1、2同様に、共通因数k=1に対応した数の波長の光信号が現れる)。
図29は、実施例3の構成の光可変フィルタにおける各AWGの出力ポートから出力される波長を説明する図である。図29は、AWGの入力ポートに波長分割多重光信号を入力した場合に、各出力ポートに分波される波長の番号を表の形式で示している。上の表は、M=13の第1のAWG102に対応し、下の表は、N=15の第2のAWG105に対応する。ここで、図29では、後の説明の都合のために、波長分割多重光信号が、波長番号0から始まって波長番号191までの192チャネルで構成されるものとする。上の表に着目すると、太線の矩形領域297で囲った1行目の波長群291は、ある出力ポートから出力される波長を示す。2行目の波長群は、周回性AWGの特性から、上記ある出力ポートから1つだけずれた隣の出力ポートから出力される波長となる。
ここで、波長番号0すなわちλ0の光信号を本発明の光可変フィルタで選択する場合を考える。第1のAWG102については、上の表の、λ0のセル293を含む第1行目297に対応する出力ポートを選択すれば良い。さらに、第2のAWG105については、下の表の、λ0のセル295が含まれる第1行目298に対応する出力ポートからの波長群292を選択すれば良い。しかしながら、上記のように各AWGの入力ポートおよび出力ポートを選択すると、所望波のλ0だけでなく、セル294a、294bおよび296a、296bで示した隣接チャネルに相当するλ90、λ91およびλ104、λ105の4つの光信号がクロストークを生じる。このクロストークの問題を説明する。
図30は、実施例3において生じるクロストークを説明する図である。実施例3におけるクロストークは、図10で説明をしたM=7、N=9の構成におけるクロストークの問題と同様である。図30は、M=13の場合の波長λ0からλ191(全192ch)の透過帯域を概念的に示したものである。簡単のため、図内の数字は波長番号を示す。第1のAWGは、周回性を持っているため、λ0の透過帯域301は、λ13の透過帯域と同一である。同様に、λ26、λ39、・・λ182も、λ0の透過帯域301と同一となる。つまり、図30で縦方向に並ぶ一群の波長は、同一のフィルタ特性に対応しており、これらの一群の波長が第1のAWGの1つの出力ポートから出力される。例えば、λ6に着目すれば、同様に図30のλ97、λ110も同一の帯域特性に対応する。
多チャンネル化のために、1つのチャネルの帯域幅が50GHzから25GHzとなり狭くなると、光可変フィルタにより透過させる所望の光信号のチャネル(帯域)に隣接するチャネルにおける妨害信号、クロストークが問題となる。具体的には、所望波の光信号としてλ6のチャネルに着目すれば、λ6の両脇にあるλ5、λ7における光信号が妨害となる。さらに、AWGの周回性によって、図面上では、λ96、λ98、λ109、λ111における光信号も、妨害となる。尚、所望波の光信号のチャネルから離れれば、クロストークは問題にならない。すなわち、λ6に対して、λ8、λ4などの次隣接チャネルはAWGのフィルタ特性で十分に減衰される。
ここで、λ0(192チャネル内の第1番目の波長)を所望波として選択し透過させる場合を考える。第1のAWG(M=13)からは、λ0、λ13、λ26、λ39、λ52、λ65、λ78、λ91、λ104、λ117、λ130、λ143、λ156、λ168、λ182の波長の各光信号(波長群1)が出力される。一方、第2のAWG(N=15)では、透過し得るのは、λ0、λ15、λ30、λ45、λ60、λ75、λ90、λ105、λ120、λ135、λ150、λ165、λ180の波長の各光信号(波長群2)となる。
上に列挙した2つの波長群1および波長群2を比較すれば分かるように、λ0に隣接するλ90、およびλ105の帯域に存在する光信号成分については、第2のAWGを素通りしてしまう。したがって、光可変フィルタ全体のフィルタ特性は、λ0のフィルタ特性301における隣接チャネルの減衰量によって決定される。例えば、波長多重光信号にλ90の信号が含まれていれば、不十分な隣接チャネル減衰量しか持っていないフィルタ特性301のために、第1のAWGを透過してきたこのλ90の光信号の隣接チャネルの電力がλ0の所望波に対して雑音として影響を与えるクロストークが生じる。すなわち、所望波であるλ0の光信号に対して、λ90の光信号が雑音として働き、受信器におけるSN比は劣化し、復号特性も劣化する。第1のAWGを透過してきたこのλ105の光信号の隣接チャネルの電力も、λ0の所望波に対して雑音として影響を与えるクロストークが生じる。
また、第1のAWGを素通りするλ91およびλ104の光信号は、第2のAWGで阻止されるが、第2のAWGのフィルタ特性が不十分な隣接チャネル減衰量しか持っていなければ、λ91およびλ104の光信号もクロストークを生じさせる。したがって、図30の実施例3の例を考えると、λ0が所望波の光信号の場合、λ90、λ91およびλ104、λ105の4つの光信号をさらに減衰させるようなフィルタを、非対称MZIによって構成すれば良い。ここでも、図12〜図21で説明をした非対称MZIを含む光スイッチのフィルタ特性を利用することができる。
図31は、実施例3の光可変フィルタにおいて利用する非対称MZIによるフィルタ特性を説明する図である。非対称MZIによって、所望波の光信号λ0を透過させ、非所望波のλ90、λ91およびλ104、λ105の4つの光信号を除去するフィルタ特性311を備えれば良い。すなわち、λ0の所望波312が透過域のピークに対応し、第1の非所望波ペア(λ90、λ91)のλ90.5相当の光信号313と、第2の非所望波ペア(λ104、λ105)のλ104.5相当の光信号314とを阻止域のピーク(すなわちディップ)に対応するようなフィルタ特性を実現すれば良い。したがって、概ねλ97.5相当の位置に阻止域のピーク(ディップ)を持てば良い。λ97.5は、全192チャネルをカバーする帯域を1周期とした場合に、概ね透過波長λ0から半周期離れた位置に相当する。図31の非対称MZIによって実現するフィルタ特性を正弦波状とすると、ややピークから外れたλ90、λ91およびλ104、λ105の4つの光信号であっても、10dB程度の減衰量を確保できる。クロストークは、隣接チャネルにおいて、フィルタ全体で25dB程度の減衰が取れれば十分であるので、非対称MZIによって実現するフィルタ特性で10dB程度の減衰量が確保できれば良い。
尚、図10で示したM=7(奇数)、N=M+2=9の場合でも、クロストークは、全チャネル数63を1周期とした場合に所望波λ0から概ね半周期離れたλ31.5相当の位置の近傍に集中している点に留意されたい。図31で示した非対称MZIによるフィルタ特性は、実施例1で示したのと同様に、構成できる。図31の構成の非対称MZIを含める光スイッチは、光スイッチ101、103、104、106の内のいずれか1つで良い。いずれかの光スイッチ内で、すべての光信号が通過するスイッチ要素素子を、FSR=13×15×25=4875GHzの非対称MZI(次数m=39.7、中心光周波数は193.4THz)とすれば良い。ここで、実施例3のMとNが互いに素の関係にある場合を整理すれば、以下の通りである。
図32は、本発明においてAWGのパラメータが特定の場合におけるクロストークの発生を一般的に説明する図である。(a)は第1のAWG321(図11の第1のAWG102に対応)を示しており、(b)は第2のAWG324(図11の第2のAWG105に対応)を示している。ここで、第1のAWG321は、M入力ポートM出力ポートを持つ。第2のAWG324は、N入力ポートN出力ポートを持つ。ここで、Mは奇数であり、N=M+2の関係があるものとする。このときMとNは互いに素の関係となる。入力光320は、λ(0)から始まるものとすると、N×M−1=M(M+2)−1=M2+2M−1の関係から、λ(M2+2M−1)までとなる。
λ(0)の波長を取り出す光可変フィルタを考えると、第1のAWG321の1つの出力ポートからは、透過波長群λ(0), λ(M), λ(2M), λ(3M), ・・・が得られる。また、第2のAWG324の1つの出力ポートからは、透過波長群λ(0), λ(M+2), λ(2(M+2)), λ(3(M+2))・・が得られる。2つの波長群には、重複する波長は存在しないので、光可変フィルタからは所望波であるλ(0)の波長の光信号のみが現れる。しかしながら、峡帯域なチャネル構成では隣接チャネルのフィルタ減衰量が不十分なため、クロストークが生じる。2つの波長群において、クロストークが生じるのは、λ{M(M+1)/2, (M+2)(M−1)/2}の波長ペアおよび λ{M(M+3)/2, (M+2)(M+1)/2}の波長ペアとなる。クロストークは、所望波の光信号λ(0)から概ね半波長離れた位置、λ(M(M+2)/2)に集中する。したがって、1周期を全チャネルの帯域幅(M×N×1ch帯域幅)に対応するとした場合に、非対称MZIのFSRを全帯域幅に等しくすれば、概ね半波長離れた位置のクロストークを除去できる。
上記のような、所望波の波長とクロストークが生じる波長との特定の位置関係は、MおよびNに上述のような条件(制限)を加えることで得られ、非対称MZIのFSRになるべく大きい値を選択し、緩いフィルタ特性でクロストークを除去できる。
実施例1および実施例2のように、MおよびNの間に共通因数kを持つ場合も、必要とする非対称MZIの数および構成は以下のように整理できる。Mは第1のAWGの入力ポートおよび出力ポート数に対応し、同一出力ポートにMチャネル毎にサイクリック(周回的)に異なる波長の光信号を出力する。同様に、Nは第2のAWGの入力ポートおよび出力ポート数に対応し、同一出力ポートにNチャネル毎にサイクリック(周回的)に異なる波長の光信号を出力する。MおよびNが互いに素ではなくて、共通因数kを持つものとすると、互いに素の関係にある自然数mpおよびnpを使って、次式の関係でM、Nを定義できる。
M=mp×k 式(10)
N=np×k 式(11)
ここで、共通因数kは2以上の自然数となる。尚、k=1とすれば、MとNが互いに素の関係となり、実施例3に対応することになる。この光可変フィルタによって対応可能な波長(チャネル)の最大数Nmaxは、M×N=mp×np×k2個となる。また、このとき、入力波長多重信号として、λ1、λ2、・・・λmpnpk2の波長を有する光信号が光可変フィルタに与えられる。実施例1および実施例2から容易に分かるように、このとき、第2のAWGの同一出力ポートからはk個の光信号が現れる。実施例1では、k=2であってλ1およびλ113の2つの波長の光信号が同一出力ポートから出力されている。実施例2では、k=4であってλ1、λ49、λ97およびλ145の4つの波長の光信号が同一出力ポートから出力されている。
実施例1および実施例2の場合に、必要とする非対称MZIの数および構成は以下のように一般化できる。非対称MZIは、k個の光信号から所望波のみを取り出して、残りの(k−1)個の非所望波を減衰させるフィルタ特性を備えれば良い。実施例1では、k=2=21であって、所望波および非所望波は合計2個であり、1つの波長の非所望波の光信号を減衰させれば良い。実施例2では、k=4=22であって、所望波および非所望波は合計4個であり、3つの波長の非所望波の光信号を減衰させれば良い。また、実施例1および実施例2のいずれにおいても、所望波および非所望波は、等間隔で生じることに注目されたい。
必要な非対称MZIの種類の数NMZIは、[log2k]個で良いことが分かる。ここで[X]はX以上の整数であって最小の数を表す。例えば、k=3であれば、NMZI=2となる。また、k=5、6、7、8であれば、NMZI=3となる。すなわち、実施例1のようにk=2のときは、NMZI=1で、1種類のFSRを持つ非対称MZIによって必要なフィルタ特性を実現できる。実施例2のようにk=4のときは、NMZI=2で、異なるFSRを持つ2種類の非対称MZIによって必要なフィルタ特性を実現できる。ここで、2つのFSR値に関しては、一方の種類の非対称MZIのFSR値は、他方の種類のMZIのFSR値の半分(1/2)の関係にある。
実施例1および実施例2から容易に理解できるように、k=8でNMZI=3の場合であれば、異なるFSRを持つ3種類の非対称MZIによって必要なフィルタ特性を実現できる。3つのFSR値に関しては、第2の種類の非対称MZIのFSR値は、第1の種類のMZIのFSR値の半分(1/2)となり、第3の種類の非対称MZIのFSR値は、第2の種類のMZIのFSR値のさらに半分(1/22=1/4)とすれば良い。
本発明の光可変フィルタでは、波長分割多重光の1つの光信号に対応するチャネルの帯域幅をΔfとし、MおよびNは合い異なる自然数とするとき、第1の周回性波長合分波器の第1の周期はM×Δfであり、第2の周回性波長合分波器の第2の周期はN×Δfであって、非対称MZIの周期は、M×N×Δfに関連付けられていることになる。さらに、MおよびNは、共通因数kを持てば、非対称MZIの前記周期は、kおよびM×N×Δfに関連付けられている。
実施例1および実施例2では、MおよびNに共通因数kを含むことで、同一出力ポートに異なる波長の複数の信号光が現れることを許容する一方で、クロストークとして作用し非所望波である信号光を、本発明特有の非対称MZIを含む光スイッチのフィルタ特性によって除去している。また、実施例3では、MおよびNに共通因数k=1であって互いに素の関係にあるとして、同一出力ポートに所望波のみが現れる場合に、クロストークとして作用し非所望波(隣接チャネルに相当)となる信号光を本発明特有の非対称MZIを含む光スイッチのフィルタ特性によって除去している。いずれの場合でも、クロストークの問題を生じる非所望波を、従来の光可変フィルタの構成の一部(光スイッチ)の変更によって効果的に除去している。実施例3のように、MおよびNの選択の特定の条件(例えば、Mは奇数、N=M+2)を付加することで、非対称MZIの種類の数およびその構成(FSR)を単純化できる。
本発明の光可変フィルタは、図7に関連しても説明したように、2つのAWGの入力ポートおよび出力ポートの一部しか利用していない。したがって、例えば第2のAWGを別個の光可変フィルタの間で共有利用することで、複数の光可変フィルタを効率的に構成できる。次に、第1のAWG(M=12)および第2のAWG(N=16)の光可変フィルタ(実施例2の構成に相当)を、第2のAWGを共有して使用して、2つの光可変フィルタを構成する例を説明する。
図33は、実施例4の光可変フィルタの第1のAWGにおける分波動作を説明する図である。第1のAWG332は12×12構成を持ち、光スイッチ331によって3つの入力ポート334a、334b、334cが選択される。これらの入力ポートが選択されると、図33に示した出力ポート2、5、8、11から、それぞれのボックスの中に記載された波長群が現れる。ただし、各ボックス内には、3つの入力ポートが選ばれた場合のすべての波長が記載されている。すなわち、出力ポート2(237)から出力され波長群の内で、入力ポート7(334c)が選択された場合、ボックス内の3行目のλ3、λ15、・・、λ183の波長群335が現れる。同様に、入力ポート5(334a)が選択された場合、ボックス1行目のλ1、λ13、・・、λ181の波長群が現れる。同様に、入力ポート6(334b)が選択された場合、ボックス2行目のλ2、λ14、・・、λ182の波長群が現れる。光スイッチ333によって、いずれかのボックスの波長群が選択され、第2のAWGへの出力336が得られる。
図34は、実施例4の光可変フィルタの第2のAWGにおける分波動作を説明する図である。第1のAWGからの出力が、スイッチ341に入力される。図34の(a)および(b)は、第2のAWG342で選択される入力ポートが異なる2つの場合の分波波長を示している。選択される入力ポートが異なれば、出力ポートが異なることが示されている。すなわち、入力ポート5〜8が選択されれば、出力ポート2、6、10、14から光信号が現れる。入力ポート10〜13が選択されれば、出力ポート4、8、12、16から光信号が現れる。したがって、入力ポートを重複することなく割り当てれば、第2のAWGのすべてのポートを利用することができる。
図35は、実施例4の光可変フィルタ構成を説明する図である。図33の第1のAWGと図34の第2のAWGを組み合わせた全体構成を示す。このように、前段側の第1のAWG351、352を2つ備え、後段側の第2のAWG353を共用することで、第2のAWGを効率的に利用できる。本実施例では、2つの光可変フィルタを構成しているが、これらのAWGの構成(M=12、N=16)では最大4つの光可変フィルタを第2のAWGを共用して構成できる。実施例4の発明は、第1の光可変フィルタおよび第2の光可変フィルタを含み、これらの2つの光可変フィルタの各々の第2の周回性波長合分波器が単一のアレイ導波路回折格子(AWG)を共用して構成されることになる。
図36は、本発明の光可変フィルタで共通因数kを持つ場合に非対称MZIの取り得る構成をまとめた表を示す。共通因数kの範囲、非対称MZIの種類の数、および非対称MZIのFSRの関係を示している。ここでPは、光可変フィルタで対応可能な最大数のチャネル(1チャネルの帯域幅:Δf)に対応した帯域幅を示す。すなわち、P=M×N×Δfとなる。この表では、各光スイッチに最大で1種類の非対称MZIを含めること、および、図11に示したように周回性AWGを2つ含むことを条件とすれば、表の2列目は、非対称MZIの数となる。各光スイッチの中の最終段のスイッチ要素素子1つを非対称MZIとすれば、非対称MZIの数を最小化できる。kが小さければ、非対称MZIを含まないスイッチも存在することになる。
したがって、本発明の光可変フィルタでは、MおよびNが、共通因数kを持つときは、P=M×N×Δfとするとき、kの値に応じて、非対称MZIの周期(FSR)は、21P/k、22P/k、23P/kおよび24P/kの内のいずれかを含むことになる。また図36から、周期が21P/kの非対称MZIは必ず含まれ、kの値によって、さらに他の周期の非対称MZIが含まれることになる。さらに、kの値が16を越えれば、21P/k、22P/k、23P/kおよび24P/k以外の、周期が2AP/k(Aは2以上の自然数)の非対称MZIも含まれる。
既に、図20、図21において説明してきたように、非対称MZIを含める光スイッチは、図11に示した4つの光スイッチの内のいずれの光スイッチでも良い。また複数の種類の非対称MZIを備える場合でも、すべての波長の光信号が共通に通過するような方法で非対称MZIを構成する限り、その順序・および配置位置に制限はない。各光スイッチの最終段のスイッチ要素素子を非対称MZIにするのが最も簡易な構成となる。
実施例1に当てはめると、k=2であって、非対称MZIのFSRは、2×14×16×25/2=5600GHzとなる。実施例2に当てはめると、k=4であって、各非対称MZIのFSRは、第1の(種類の)非対称MZIについては2×12×16×25/2=2400GHzとなり、第2の(種類の)非対称MZIについては4×12×16×25/2=4800GHzとなる。
上述のすべての説明および実施例では、光可変フィルタはAWGを2つ含む2段構成のものとして説明してきた。しかしながら、3段構成の場合であっても、クロストークとして作用し非所望波となる信号光を本発明特有の非対称MZIを含む光スイッチのフィルタ特性によって除去できることに変わりはない。この場合には、AWGのポートを選択する光スイッチの数が4よりも多くなり、非対称MZIを含める光スイッチの選択も多様となる。
すなわち本発明は、波長分割多重光の中から所定の波長の光信号を選択する光可変フィルタにおいて、前記波長分割多重光を、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有する第1の周回性波長合分波器の前記複数の入力ポートの内の1つの入力ポートに選択的に入力するための第1の光スイッチと、前記第1の周回性波長合分波器の前記複数の出力ポートの内から1つの出力ポートを選択する第2の光スイッチとを含む第1の光可変フィルタ機能部と、前記第1の周回性波長合分波器の前記選択された出力ポートからの分波出力光を、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有し、前記第1の周回性波長合分波器とは異なる周回性を持つ第2の周回性波長合分波器の前記複数の入力ポートの内の1つの入力ポートに選択的に入力するための第3の光スイッチと、前記第2の周回性波長合分波器の前記複数の出力ポートの内から1つの出力ポートを選択する第4の光スイッチとを含む第2の光可変フィルタ機能部と、入力ポート選択のための光スイッチ、周回性波長合分波器および出力ポート選択のための光スイッチからなり、前記第1の光可変フィルタ機能部または前記第2の光可変フィルタ機能部に直列に接続された1つ以上の別の光可変フィルタ機能部とを備える光可変フィルタとすることができる。
そして、上述の第1の光スイッチ、第2の光スイッチ、第3の光スイッチ、第4の光スイッチ、および、上述の別の光可変フィルタ機能部に含まれる前記光スイッチの内の少なくとも1つの光スイッチにおいて、所定の波長の光信号を透過させる単一のスイッチ要素素子または複数のスイッチ要素素子が、所定の波長の光信号を透過させかつ波長分割多重光に含まれる他の波長の光信号を減衰させるフィルタ特性を有することになる。
また、1つのチャネルの帯域幅も25GHzに限られず、12.5GHzなどにも適用できる。チャネルの数についても192chに限定されず、様々な光通信システムに適用できる。また、適用できる通信バンドもCバンドに限定されない。
本発明は、光可変フィルタにおいて生じるクロストークの問題を、光スイッチ内に備えられた非対称MZIによるフィルタ特性を利用して、解決する点に新規な特徴がある。したがって、本発明の基本的構成として説明してきた図11に示した各AWGの入力ポート選択機能(選択スイッチ101、104)を備えた構成だけに限られず、従来技術として図6に示した2つのAWGの入力ポート選択スイッチを含まない光可変フィルタに対しても適用できる。図6に示した光可変フィルタにおいても、チャネル帯域幅が狭くなった場合にクロストークの問題が生じることには何ら変わりはない。図11で説明した本発明の構成と同様に、図6における選択スイッチ62、64のいずれかの光スイッチの中に、本発明で説明してきたフィルタ特性を持つ非対称MZIを含めることができる。
したがって、本発明の光可変フィルタは、波長分割多重光から所定の波長の光信号を選択する光可変フィルタにおいて、前記波長分割多重光が入力される1つの入力ポートおよび複数の出力ポートを有する第1の周回性波長合分波器(61)と、前記第1の周回性波長合分波器の前記複数の出力ポートの内から1つの出力ポートを選択する第1の光スイッチ(62)と、前記第1の周回性波長合分波器の前記選択された出力ポートからの分波出力光が入力される1つの入力ポートおよび複数の出力ポートを有し、前記第1の周回性波長合分波器とは異なる周回性を持つ第2の周回性波長合分波器(63)と、前記第2の周回性波長合分波器の前記複数の出力ポートの内から1つの出力ポートを選択する第2の光スイッチ(64)とを備え、前記第1の光スイッチおよび前記第2の光スイッチの光スイッチの内の少なくとも1つの光スイッチにおいて、前記所定の波長の光信号を透過させる単一のスイッチ要素素子または複数のスイッチ要素素子が、上述の所定の波長の光信号を透過させかつ波長分割多重光に含まれる他の波長の光信号を減衰させるフィルタ特性を有する光可変フィルタとしても実現できる。
以上、詳細に説明してきたように、本発明の光可変フィルタによって、光スイッチの規模を小型化し、デバイスの構成を簡略化および低コスト化をしながら、さらに狭帯域のチャネル構成においてもクロストークの問題を解決することができる。クロストークの影響を抑え、受信器における受信特性の劣化を防止する新たな光可変フィルタの構成を実現することができる。