JP2015059892A - 定量方法、プログラム、ラマン分光装置、および電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い精度で標的物質を定量することができる定量方法を提供する。【解決手段】本発明に係るラマン定量方法は、標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射して、前記標的物質のラマン散乱光を検出する工程と、検出した前記ラマン散乱光のラマンシフトを取得する工程と、取得した前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程と、を含む。【選択図】図1
Description
本発明は、定量方法、プログラム、ラマン分光装置、および電子機器に関する。
近年、医療診断や飲食物の検査等に用いられるセンサーチップ(光学素子)の需要が増大しており、高感度かつ小型のセンサーチッブの開発が求められている。このような要求に応えるために、電気化学的な手法をはじめ様々なタイプのセンサーチップが検討されている。これらの中で、集積化が可能であること、低コスト、測定環境を選ばないこと等の理由から、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を利用した分光分析、特に表面増強ラマン散乱分光(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)を用いたセンサーチップに対する関心が高まっている。
ここで、表面プラズモンとは、表面固有の境界条件により光とカップリングを起こす電子波の振動モードである。表面プラズモンを励起する方法としては、金属表面に回折格子を刻み、光とプラズモンとを結合させる方法やエバネッセント波を利用する方法がある。例えば、SPRを利用したセンサーチップとしては、全反射型プリズムと、当該プリズムの表面に形成された標的物質に接触する金属膜と、を具備して構成されるものがある。このような構成により、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、標的物質の吸着の有無を検出している。
ところで、金属表面に伝搬型の表面プラズモンが存在する一方、金属微粒子には局在型の表面プラズモンが存在する。局在型の表面プラズモン、つまり、表面の金属微細構造上に局在する表面プラズモンが励起された際には、著しく増強された電場が誘起されることが知られている。
さらに、金属ナノ粒子を用いた局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)によって形成される増強電場にラマン散乱光が照射されると表面増強ラマン散乱現象によってラマン散乱光が増強されることが知られており、高感度のセンサー(検出装置)が提案されている。この原理を用いることで、各種の微量な物質を検出することが可能になる。
上記のようなラマン散乱光を用いた定量分析(ラマン分光法による定量分析)は、特許文献1に記載されているように、標的物質の濃度とラマン散乱光の強度との相関関係を利用して行われる。
しかしながら、金属構造体の大きさは、ナノメートル単位であり、高い精度で金属構造体を形成することは、困難である。したがって、SERS光の強度は、センサーチップの金属構造体(金属粒子)の形状等のばらつきによって、ばらつく。一方、SPRによって増強されるラマン散乱光(SERS光)の強度は、SPRにより増強された電場の4乗に比例する。したがって、SERS光の強度に基づいて標的物質を定量する定量方法では、高い精度で標的物質を定量することはできない。
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い精度で標的物質を定量することができる定量方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い精度で標的物質を定量することができるプログラムを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い精度で標的物質を定量することができるラマン分光装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記のラマン分光装置を含む電子機器を提供することにある。
本発明に係る定量方法は、
標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射して、前記標的物質のラマン散乱光を検出する工程と、
検出した前記ラマン散乱光のラマンシフトを取得する工程と、
取得した前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程と、
を含む。
標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射して、前記標的物質のラマン散乱光を検出する工程と、
検出した前記ラマン散乱光のラマンシフトを取得する工程と、
取得した前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程と、
を含む。
このような定量方法では、ラマン散乱光の強度に基づいて標的物質を定量する場合に比べて、高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係る定量方法において、
前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線を作成する工程と、
前記標的物質の濃度とラマン散乱光の強度との関係を示した第2検量線を作成する工程と、
取得した前記ラマンシフトと、前記第1検量線から得られた前記金属構造体に対する前記標的物質の被覆率が1の場合のラマンシフトと、の差Δνを求める工程と、
を含み、
前記標的物質を定量する工程は、
前記差Δνと、前記第2検量線から得られた前記被覆率が1の場合のラマン散乱光の強度Iθ=1と、に基づいて前記標的物質のラマン散乱光の強度ISERSを求める工程と、
前記第2検量線に基づいて、前記強度ISERSから前記標的物質の濃度を求める工程と、
を有していてもよい。
前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線を作成する工程と、
前記標的物質の濃度とラマン散乱光の強度との関係を示した第2検量線を作成する工程と、
取得した前記ラマンシフトと、前記第1検量線から得られた前記金属構造体に対する前記標的物質の被覆率が1の場合のラマンシフトと、の差Δνを求める工程と、
を含み、
前記標的物質を定量する工程は、
前記差Δνと、前記第2検量線から得られた前記被覆率が1の場合のラマン散乱光の強度Iθ=1と、に基づいて前記標的物質のラマン散乱光の強度ISERSを求める工程と、
前記第2検量線に基づいて、前記強度ISERSから前記標的物質の濃度を求める工程と、
を有していてもよい。
このような定量方法では、ラマンシフトを強度に変換し、関係式として表すことが容易な濃度と強度との相関を利用して標的物質の濃度を求めることにより、より高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係る定量方法において、
前記強度ISERSを求める工程では、下記式(1)に基づいて行われてもよい。
ISERS=(1−Δν/A)×Iθ=1 ・・・ (1)
ただし、式(1)において、Aは、前記標的物質の濃度と前記差Δνとの相関を示すプロットに、前記標的物質の濃度と、前記強度ISERSと前記強度Iθ=1との相対強度(前記強度ISERS/前記強度Iθ=1)と、の相関を示すプロットを、フィッティングさせるための係数である。
前記強度ISERSを求める工程では、下記式(1)に基づいて行われてもよい。
ISERS=(1−Δν/A)×Iθ=1 ・・・ (1)
ただし、式(1)において、Aは、前記標的物質の濃度と前記差Δνとの相関を示すプロットに、前記標的物質の濃度と、前記強度ISERSと前記強度Iθ=1との相対強度(前記強度ISERS/前記強度Iθ=1)と、の相関を示すプロットを、フィッティングさせるための係数である。
このような定量方法では、ラマンシフトを強度に変換し、関係式として表すことが容易な濃度と強度との相関を利用して標的物質の濃度を求めることにより、より高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係る定量方法において、
検出した前記ラマン散乱光の強度を取得する工程と、
取得した前記強度に基づいて前記標的物質を定量する工程と、
前記差Δνに基づいて、前記被覆率が1未満か1以上か判定する工程と、
前記被覆率が1未満の場合は、前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定し、前記被覆率が1以上の場合は、前記強度に基づいて前記標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定する工程と、
を含んでいてもよい。
検出した前記ラマン散乱光の強度を取得する工程と、
取得した前記強度に基づいて前記標的物質を定量する工程と、
前記差Δνに基づいて、前記被覆率が1未満か1以上か判定する工程と、
前記被覆率が1未満の場合は、前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定し、前記被覆率が1以上の場合は、前記強度に基づいて前記標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定する工程と、
を含んでいてもよい。
このような定量方法では、被覆率が1以上の場合においても、標的物質を定量することができる。
本発明に係る定量方法において、
前記標的物質を定量する工程では、
前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線に基づいて、取得した前記ラマンシフトから前記標的物質の濃度を定量してもよい。
前記標的物質を定量する工程では、
前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線に基づいて、取得した前記ラマンシフトから前記標的物質の濃度を定量してもよい。
このような定量方法では、ラマン散乱光の強度に基づいて標的物質を定量する場合に比べて、高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係る定量方法において、
前記金属構造体の材質は、Ag、Au、またはAlであり、
前記標的物質は、含窒素化合物、含硫化合物、またはカルボン酸であってもよい。
前記金属構造体の材質は、Ag、Au、またはAlであり、
前記標的物質は、含窒素化合物、含硫化合物、またはカルボン酸であってもよい。
このような定量方法では、高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係るプログラムは、
標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射し、前記標的物質のラマン散乱光を検出して、前記標的物質を定量するプログラムであって、
コンピューターを、
検出した前記ラマン散乱光からラマンシフトを取得するラマンシフト取得部、
取得した前記ラマンシフトに基づいて、前記標的物質の濃度を求める第1定量値算出部、として機能させる。
標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射し、前記標的物質のラマン散乱光を検出して、前記標的物質を定量するプログラムであって、
コンピューターを、
検出した前記ラマン散乱光からラマンシフトを取得するラマンシフト取得部、
取得した前記ラマンシフトに基づいて、前記標的物質の濃度を求める第1定量値算出部、として機能させる。
このようなプログラムでは、高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係るプログラムにおいて、
コンピューターを、
検出した前記ラマン散乱光の強度を取得する強度取得部と、
取得した前記強度に基づいて、前記標的物質の濃度を求める第2定量値算出部と、
取得した前記ラマンシフトと、前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線から得られた前記金属構造体に対する前記標的物質の被覆率が1の場合のラマンシフトと、の差Δνを求めるラマンシフト差算出部と、
前記差Δνに基づいて、前記被覆率が1未満か1以上か判定する被覆率判定部と、
前記被覆率が1未満の場合は、前記第1定量値算出部において求めた値を定量値として決定し、前記被覆率が1以上の場合は、前記第2定量値算出部において求めた値を定量値として決定する定量値決定部、として機能させてもよい。
コンピューターを、
検出した前記ラマン散乱光の強度を取得する強度取得部と、
取得した前記強度に基づいて、前記標的物質の濃度を求める第2定量値算出部と、
取得した前記ラマンシフトと、前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線から得られた前記金属構造体に対する前記標的物質の被覆率が1の場合のラマンシフトと、の差Δνを求めるラマンシフト差算出部と、
前記差Δνに基づいて、前記被覆率が1未満か1以上か判定する被覆率判定部と、
前記被覆率が1未満の場合は、前記第1定量値算出部において求めた値を定量値として決定し、前記被覆率が1以上の場合は、前記第2定量値算出部において求めた値を定量値として決定する定量値決定部、として機能させてもよい。
このようなプログラムでは、被覆率が1以上の場合においても、標的物質を定量することができる。
本発明に係るラマン分光装置は、
標的物質を定量するラマン分光装置であって、
光を射出する光源と、
前記光により照射される前記標的物質が吸着され、前記光の波長のよりも小さい金属構造体と、
前記標的物質から放射されるラマン散乱光を受光する光検出器と、
前記光検出器において受光した前記ラマン散乱光のラマンシフトから前記標的物質の濃度を求める処理部と、
を含む。
標的物質を定量するラマン分光装置であって、
光を射出する光源と、
前記光により照射される前記標的物質が吸着され、前記光の波長のよりも小さい金属構造体と、
前記標的物質から放射されるラマン散乱光を受光する光検出器と、
前記光検出器において受光した前記ラマン散乱光のラマンシフトから前記標的物質の濃度を求める処理部と、
を含む。
このようなラマン分光装置では、高い精度で標的物質を定量することができる。
本発明に係る電子機器は、
本発明に係るラマン分光装置と、
前記光検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、
前記健康医療情報を記憶する記憶部と、
前記健康医療情報を表示する表示部と、
を含む。
本発明に係るラマン分光装置と、
前記光検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、
前記健康医療情報を記憶する記憶部と、
前記健康医療情報を表示する表示部と、
を含む。
このような電子機器では、本発明に係るラマン分光装置を含むため、微量物質の検出を容易に行うことができ、高精度な健康医療情報を提供することができる。
本発明に係る電子機器において、
前記健康医療情報は、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、および抗原・抗体からなる群より選択される少なくとも1種の生体関連物質、または、無機分子および有機分子から選択される少なくとも1種の化合物の有無若しくは量に関する情報を含んでもよい。
前記健康医療情報は、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、および抗原・抗体からなる群より選択される少なくとも1種の生体関連物質、または、無機分子および有機分子から選択される少なくとも1種の化合物の有無若しくは量に関する情報を含んでもよい。
このような電子機器では、本発明に係るラマン分光装置を含むため、微量物質の検出を容易に行うことができ、高精度な健康医療情報を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. ラマン分光装置
まず、本実施形態に係るラマン分光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るラマン分光装置100を模式的に示す図である。ラマン分光装置100は、図1に示すように、測定部102と、定量計算部104と、を含む。
まず、本実施形態に係るラマン分光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るラマン分光装置100を模式的に示す図である。ラマン分光装置100は、図1に示すように、測定部102と、定量計算部104と、を含む。
1.1. 測定部
測定部102は、図1に示すように、光学素子(センサーチップ)10と、光源20と、光検出器30と、を有している。
測定部102は、図1に示すように、光学素子(センサーチップ)10と、光源20と、光検出器30と、を有している。
図2は、ラマン分光装置100の光学素子10を模式的に示す断面図である。光学素子10は、図2に示すように、基板12と、金属構造体14と、を有している。
基板12は、例えば、ガラス基板である。図示はしないが、基板12の下面には、金属層が設けられていてもよい。なお、基板12の材質は、金属、半導体、誘電体であってもよい。
金属構造体14は、基板12上に設けられている。金属構造体14の形状は、特に限定されないが、金属構造体14の大きさ(平面視における大きさであって、平面形状が円の場合は直径)は、光源20から射出される光LINの波長以下である。金属構造体14の大きさは、10nm以上1000nm以下である。金属構造体14の厚さは、例えば、1nm以上500nm以下である。
金属構造体14は、複数設けられている。図示の例では、複数の金属構造体14の形状は、互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。図示の例では、複数の金属構造体14は、周期的に設けられているが、周期的に設けられていなくてもよい。隣り合う金属構造体14の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。
金属構造体14の材質は、例えば、Ag、Au、Alなどである。Ag、Au、およびAlは、紫外〜可視光領域における誘電率の虚部が小さい金属であり、電場増強効果(詳細は後述)を高めることができる。
金属構造体14には、図示はしないが、光LINにより照射される標的物質(標的分子)が吸着される。ここで、「吸着」とは、物体の界面において、濃度が周囲よりも増加する現象のことをいい、具体的には、共有結合や配位結合など電子の授受を伴う化学吸着のことをいう。
金属構造体14に吸着する標的物質の被覆率θは、例えば、1未満である。ここで、「被覆率」とは、金属構造体14の表面積(基板12に接していない面の面積)SALLに対する、金属構造体14の表面(基板12に接していない面)のうちの標的物質が吸着している領域の面積SADSの比(SADS/SALL)である。θ=1の場合は、表面上の吸着サイトがすべて吸着分子に覆われている状態であり、θ=1の場合の吸着量を飽和吸着量ともいう。θ=1以上では表面第2層目に吸着分子が吸着していく。なお、一般的に、吸着脱離平衡状態の被覆率と濃度とは、正の相関がある。したがって、平衡状態での被覆率がわかれば、濃度を知ることができる。
金属構造体14に吸着している標的物質に光LINを照射すると、散乱光として、入射光LINと同じ波長を有するレイリー散乱光LRAYと、光LINとは異なる波長を有するラマン散乱光LRAMと、が発生し、光検出器30において受光される(図1参照)。ラマン散乱光LRAMのエネルギーは、標的物質の構造に応じた特有の振動エネルギーに対応している。そのため、ラマン散乱光LRAMの波数(振動数)と、入射光LINの波数と、の差であるラマンシフトを求めることにより、標的物質を特定することができる。
金属構造体14は、入射光LINにより表面プラズモン共鳴(SPR)を生じる。具体的には、金属構造体14は、入射光LINにより局在型プラズモン共鳴(LSPR)を生じる。「LSPR」とは、光の波長以下の金属構造体に光を入射させると、金属内に存在する自由電子が光の電場成分により集団的に振動し、外部に局在電場を誘起する現象である。この局在電場により、ラマン散乱光を増強することができる。このように、SPRによる誘起される電場によって、ラマン散乱光が増強されることを「電場増強効果」という。SPRによって増強されるラマン散乱光(SERS光)の強度は、SPRにより増強された電場の4乗に比例する。
金属構造体14に吸着する標的物質は、化学増強効果を発現する物質である。ここで、「化学増強効果」とは、標的物質の分子が金属構造体に化学吸着する際に形成される混成軌道準位がエネルギー的な幅を持つことで、励起状態に遷移する確率が高くなってラマン散乱光が増強されることをいう。化学増強効果を発現する物質は、該物質の濃度に応じて、ラマンシフトが変化する。具体的には、標的物質は、ピリジン、アンモニアなどの含窒素化合物、メタンチオールやヘキサデカンチオールなどの含硫化合物、カルボン酸などである。化学増強効果は、金属構造体14の表面に吸着した分子(第1層目の標的物質)において、ラマン散乱光の強度が極端に増大する現象である。すなわち、第1層目の標的物質に被覆する第2層目の標的物質では、化学増強効果は発現されない。
金属構造体14は、基板12上に、例えば、Agを0.1Å/秒以上1Å/秒以下の成膜速度で10nm程度成膜することにより形成される。このような成膜条件で成膜することにより、島状の金属構造体14を形成することができる。なお、金属構造体14の形成方法は、特に限定されず、電子線描画法や干渉露光法を用いてもよい。
光源20は、図1に示すように、光LINを射出する。光源20は、例えば半導体レーザーであり、光LINは、レーザー光である。光LINの波長は、特に限定されないが、例えば、350nm以上1000mn以下であり、より具体的には633nm程度である。光LINは、金属構造体14にLSPRを生じさせる。
光検出器30は、光学素子10から放射される(標的物質から放射される)ラマン散乱光LRAMを受光する。光検出器30は、CCD(Charge Coupled Device)、光電子増倍管、フォトダイオード、イメージングプレートなどを含んで構成されていてもよい。
1.2. 定量計算部
定量計算部104は、図1に示すように、操作部40と、表示部50と、記憶部60と、記憶媒体70と、処理部80と、を含んで構成されている。定量計算部104は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)などで実現される。
定量計算部104は、図1に示すように、操作部40と、表示部50と、記憶部60と、記憶媒体70と、処理部80と、を含んで構成されている。定量計算部104は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)などで実現される。
操作部40は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部80に信号を送る処理を行う。操作部40は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
表示部50は、処理部80から入力される表示信号に基づいて、処理部80の処理結果等を文字やグラフその他の情報として表示するものである。具体的には、表示部50には、処理部80で求められた定量値が表示される。表示部50は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、タッチパネル型ディスプレイなどである。
記憶部60は、処理部80が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。記憶部60は、さらに、処理部80の作業領域として用いられ、操作部40から入力された操作信号、記憶媒体70から読み出されたプログラムやデータ、処理部80が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶する。記憶部60には、データベース62が記憶されている。
データベース62には、分析の対象となる標的物質に関するデータが登録されている。具体的には、データベース62には、ラマンシフトから標的物質を特定するための(定性するための)データが登録されている。
データベース62には、さらに、標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線、および標的物質の濃度とラマン散乱光LRAMの強度(SERS強度)との関係を示した第2検量線が登録されている。図3は、標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線C1を模式的に示す図である。図4は、標的物質の濃度とラマン散乱光の強度との関係を示した第2検量線C2を模式的に示す図である。
データベース62には、さらに、下記式(1)が登録されている。下記式(1)において、Δνは、金属構造体14に対する標的物質の被覆率θが1の場合のラマンシフトと、定量分析の対象となる標的物質のラマンシフトと、の差である。Iθ=1は、被覆率θが1の場合の強度であって、θ=1となる濃度のうちの最小濃度の強度である。Aは、標的物質の成分と、金属構造体14の形状、大きさ、および材質と、によって決定される係数である。
ISERS=(1−Δν/A)×Iθ=1 ・・・ (1)
データベース62には、標的物質の材質および金属構造体14の形状等に対応する、複数の式(1)が登録されていてもよい。なお、データベース62は、記憶媒体70に記憶されていてもよい。
記憶媒体70には、各種のアプリケーションプログラムやデータを記憶するための、コンピューター読み取り可能な記憶媒体である。なお、当該プログラムは、ホスト装置(サーバー)が有する情報記憶媒体からネットワーク等を介して記憶媒体70(記憶部60)に配信されてもよい。
記憶媒体70は、処理部80の処理により生成されるデータのうち、長期的な保存が必要なデータを記憶する記憶部としても機能してもよい。記憶媒体70は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現される。
処理部80は、記憶部60に記憶されているプログラムや記憶媒体70に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理を行う。本実施形態では、処理部80は、記憶部60に記憶されているプログラムを実行することで、ラマンシフト取得部81、強度取得部82、ラマンシフト差算出部83、強度算出部84、第1定量値算出部85、第2定量値算出部86、被覆率判定部87、定量値決定部88として機能する。処理部80の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。なお、処理部80の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
ラマンシフト取得部81は、光検出器30において検出したラマン散乱光(測定部102において検出したラマン散乱光)LRAMのラマンシフトを取得する。
強度取得部82は、光検出器30において検出したラマン散乱光(測定部102において検出したラマン散乱光)LRAMの強度を取得する。
ラマンシフト差算出部83は、ラマンシフト取得部81において取得したラマンシフトと、データベース62に記憶されている被覆率θが1の場合のラマンシフトνMAXと、の差Δνを求める。
強度算出部84は、ラマンシフト差算出部83において求めた差Δνと、データベース62に登録されている被覆率θが1の場合の強度Iθ=1と、に基づいて、標的物質のラマン散乱光LRAMの強度ISERSを求める。具体的には、強度算出部84は、データベース62に記憶されている上記式(1)に基づいて、ラマン散乱光の強度ISERSを算出する。
第1定量値算出部85は、図4に示す第2検量線C2に基づいて、強度算出部84において算出したISERSから、標的物質の濃度を求める。
第2定量値算出部86は、図4に示す第2検量線C2に基づいて、強度取得部82において取得した強度から、標的物質の濃度を求める。
被覆率判定部87は、ラマンシフト差算出部83において求めた差Δνに基づいて、金属構造体14に対する標的物質の被覆率θが1未満か1以上か判定する。具体的には、被覆率判定部87は、Δνが正の値であれば、被覆率θは1未満であると判定し、Δνが0(ゼロ)であれば、被覆率θは1以上であると判定する。
定量値決定部88は、被覆率判定部87において被覆率θが1未満と判定された場合は、第1定量値算出部85において求めた値を定量値として決定し、被覆率判定部87において被覆率θが1以上と判定された場合は、第2定量値算出部86において求めた値を定量値として決定する。処理部80は、定量値決定部88において決定された定量値(標的物質の濃度)を、表示部50に表示する処理を行う。処理部80は、定量値決定部88において決定された定量値を、データベース62に登録する処理を行ってもよい。
1.3. ラマン分光装置を用いた定量方法
本実施形態に係る定量方法(具体的にはラマン分光装置100を用いた定量方法)について、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る定量方法を説明するためのフローチャートである。
本実施形態に係る定量方法(具体的にはラマン分光装置100を用いた定量方法)について、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る定量方法を説明するためのフローチャートである。
標的物質の定量方法は、図5に示すように、第1検量線C1および第2検量線C2を準備(作成)する工程(S1)と、上記式(1)を準備する工程(S2)と、標的物質のラマン散乱光LRAMを検出する工程(S3)と、強度およびラマンシフトを取得する工程(S4)と、ラマンシフト差Δνを求める工程(S5)と、強度ISERSを求める工程(S6)と、算出した強度ISERSに基づいて濃度を求める工程(S7)と、取得した強度に基づいて濃度を求める工程(S8)と、被覆率θを判定する工程(S9)と、定量値を決定する工程(S10)と、含む。以下、順に説明する。
まず、標的物質の濃度とラマンシフトとの関係示した第1検量線C1(図3参照)と、標的物質の濃度とラマン散乱光の強度との関係を示した第2検量線C2(図4参照)と、を準備(作成)する(S1)。具体的には、取得部81,82は、既知の濃度の被検物質(標的物質と同じ物質)のラマン散乱光の強度およびラマンシフトを取得する。処理部80は、取得された強度およびラマンシフトに基づいて、検量線C1,C2を作成する。作成した検量線C1,C2を、データベース62に登録する。
次に、上記の式(1)を準備する(S2)。まず、被覆率θが1の場合のラマンシフトνMAXを求める。具体的には、処理部80は、第1検量線C1に基づいて、被覆率θが1の場合のラマンシフトνMAXを求める。図3に示すように、ラマンシフトは、濃度が大きくなるに従って大きくなるが、ある濃度以上(θ≧1となる濃度)では、ラマンシフトは一定となって最大値νMAXをとる。求めたラマンシフトνMAXをデータベース62に登録する。
次に、強度Iθ=1を求める。強度Iθ=1は、被覆率θが1の場合の強度である。具体的には、処理部80は、第1検量線C1に基づいて、θ≧1となる濃度のうちの最小の濃度Nθ=1を求め、図4に示す第2検量線C2に基づいて、濃度Nθ=1から強度Iθ=1を求める。求めた強度Iθ=1をデータベース62に登録する。なお、ラマンシフトは、図3に示すように、θ≧1となる濃度において一定となるが、強度は、図4に示すように、θ≧1となる濃度において一定とならずに、単調に増加する。
次に、係数Aを求める。具体的には、処理部80は、第1検量線C1に基づいて、濃度と、ラマンシフトνMAXから各濃度におけるラマンシフトを引いた値Δνと、の第1相関図を作成する。さらに、処理部80は、第2検量線C2に基づいて、濃度と、強度ISERSと強度Iθ=1との相対強度(ISERS/Iθ=1)と、の第2相関図を作成する。次に、処理部80は、第1相関図のプロットに第2相関図のプロットをフィティングさせて、係数Aを求める。求めた係数Aを、データベース62に登録する。なお、係数Aの求め方の詳細については、後述する。
以上により、式(1)を準備することができ、データベース62を準備することができる。
次に、定量分析の対象となる標的物質のラマン散乱光LRAMを検出する(S3)。具体的には、測定部102において、標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体14に光を照射して、標的物質のラマン散乱光LRAMを検出する(図1参照)。
次に、ラマンシフト取得部81は、検出したラマン散乱光LRAMのラマンシフトを取得し、強度取得部82は、検出したラマン散乱光LRAMの強度を取得する(S4)。
次に、ラマンシフト差算出部83は、ラマンシフト取得部81において取得したラマンシフトと、データベース62に登録されているラマンシフト(第1検量線C1から得られたθ=1の場合のラマンシフト)νMAXと、の差Δνを求める(S5)。
次に、強度算出部84は、ラマンシフト差算出部83において求めた差Δνと、データベース62に登録されている強度(第2検量線C2から得られたθ=1の場合の強度)Iθ=1と、に基づいて、標的物質のラマン散乱光LRAMの強度ISERSを求める(S6)。具体的には、強度算出部84は、差Δνと、データベース62に登録されている式(1)と、に基づいて、強度ISERSを求める。
次に、第1定量値算出部85は、データベース62に登録されている第2検量線C2に基づいて、強度算出部84において算出したISERSから、標的物質の濃度を求める(S7)。すなわち、本実施形態に係る定量方法では、工程(S6)および工程(S7)によって、取得したラマンシフトに基づいて標的物質を定量することができる。
次に、第2定量値算出部86は、データベース62に登録されている第2検量線C2に基づいて、強度取得部82において取得した強度から、標的物質の濃度を求める(S8)。
次に、被覆率判定部87は、ラマンシフト差算出部83で求めた差Δνに基づいて、被覆率θが1未満か1以上か判定する(S9)。
次に、定量値決定部88は、被覆率判定部87において被覆率θが1未満と判定された場合は、工程(S7)において定量した値を定量値として決定し、被覆率判定部87において被覆率θが1以上と判定された場合は、工程(S8)において定量した値を定量値として決定する(S10)。
以上の工程により、標的物質を定量することができる。
なお、工程(S8)の順番は、工程(S4)の後であって工程(S9)の前であれば、特に限定されない。
また、工程(S9)は、工程(S7)および工程(S8)の前に行われてもよい。この場合、工程(S10)は行われず、工程(S9)において被覆率θが1未満と判断された場合には、工程(S7)において標的物質の濃度を求め、工程(S9)において被覆率θが1と判断された場合には、工程(S8)において標的物質の濃度を求めてもよい。
1.4. 測定部の具体的な構成
ラマン分光装置100の測定部102の具体的な構成について説明する。図6は、ラマン分光装置100の測定部102の具体的な構成を模式的に示す図である。
ラマン分光装置100の測定部102の具体的な構成について説明する。図6は、ラマン分光装置100の測定部102の具体的な構成を模式的に示す図である。
ラマン分光装置100の測定部102は、図6に示すように、気体試料保持部110と、検出部120と、制御部130と、検出部120および制御部130を収容している筐体140と、を含む。
気体試料保持部110は、光学素子10と、光学素子10を覆うカバー112と、吸引流路114と、排出流路116と、を有している。検出部120は、光源20と、レンズ122a,122b,122c,122dと、ハーフミラー124と、光検出器30と、を有している。制御部130は、光検出器30において検出された信号を定量計算部104(図1参照)に送る検出制御部132と、光源20などの電力を制御する(供給する)電力制御部134と、を有している。制御部130は、図6に示すように、外部との接続を行うための接続部136と、電気的に接続されていてもよい。
ラマン分光装置100の測定部102では、排出流路116に設けられている吸引機構117を作動させると、吸引流路114および排出流路116内が負圧になり、吸引口113から検出すべき標的物質を含んだ気体試料が吸引される。吸引口113には除塵フィルター115が設けられており、比較的大きな粉塵や一部の水蒸気などを除去することができる。気体試料は、吸引流路114、光学素子10の表面付近、および排出流路116を通り、排出口118から排出される。気体試料が光学素子10の表面付近を通る際に、標的物質は、光学素子10の表面に吸着して検出される。
吸引流路114および排出流路116の形状は、外部からの光が光学素子10に入射しないような形状である。これにより、ラマン散乱光以外の雑音となる光が入射しないため、信号のS/N比を向上させることができる。流路114,116を構成する材料は、例えば、光を反射し難いような材料や色である。
吸引流路114および排出流路116の形状は、気体試料に対する流体抵抗が小さくなるような形状である。これにより、高感度な検出が可能になる。例えば、流路114,116の形状を、できるだけ角部をなくし滑らかな形状にすることで、角部における気体試料の滞留をなくすことができる。吸引機構117としては、例えば、流路抵抗に応じた静圧、風量のファンモーターやポンプを用いる。
ラマン分光装置100の測定部102では、光学素子10に、単一波長の光源(レーザー光源)20から光が照射される。光源20から射出された光は、レンズ122aで集光された後、ハーフミラー124およびレンズ122bを介して、光学素子10に入射する。光学素子10からは、SERS光が放射され、該光は、レンズ122b、ハーフミラー124、およびレンズ122c,122dを介して、光検出器30に至る。SERS光には、光源20からの入射波長と同じ波長のレイリー散乱光が含まれているので、光検出器30のフィルター126によってレイリー散乱光を除去する。レイリー散乱光が除去された光は、光検出器30の分光器127を介して受光素子128にて受光される。
光検出器30の分光器127は、例えば、ファブリペロー共振を利用したエタロン等で形成されており、通過波長帯域を可変とすることができる。光検出器30の受光素子128によって、標的物質に特有のラマンスペクトルが得られ、例えば、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータとを照合することで、標的物質の信号強度を検出することができる。
なお、ラマン分光装置100の測定部102は、光学素子10、光源20、および光検出器30を含み、光学素子10に標的物質を吸着させ、そのラマン散乱光を取得することができれば、上記の例に限定されない。
本実施形態に係る定量方法では、例えば、以下の特徴を有する。
本実施形態に係る定量方法では、取得したラマンシフトに基づいて標的物質を定量する工程を含む。ラマンシフトの変動係数は、ラマン散乱光LRAMの強度の変動係数よりも小さい(後述する表1参照)。そのため、本実施形態に係る定量方法では、ラマン散乱光LRAMの強度に基づいて標的物質を定量する場合に比べて、高い精度で標的物質を定量することができる。
ここで、化学増強効果を発現する吸着物質のラマン散乱光LRAMの強度(SERS強度)ISERSは、下記式(2)で表される。下記式(2)において、Nは、標的物質の吸着分子数であり、EはSPRによって誘起される電場である。
ISRES∝N×|E|4 ・・・ (2)
N0を被覆率1のときの標的物質の分子数とし、θを標的物質の分子の被覆率とすると、N=N0×θであるから、式(2)は、下記式(3)と表される。
ISRES∝N0×θ×|E|4 ・・・ (3)
式(3)より、ISERSは、θに依存することがわかる。したがって、低濃度(被覆率が1よりも小さい場合)は、十分なSERS強度を得ることができず、S/Nが悪くなり、高い精度で標的物質を定量することができない。
しかしながら、本実施形態に係る定量方法では、強度ISERSではなくラマンシフトに基づいて、標的物質を定量するので、被覆率が1より小さい場合に、高い精度で標的物質を定量することができる。
本実施形態に係る定量方法では、標的物質を定量する工程は、差Δνと強度Iθ=1とに基づいて、標的物質のラマン散乱光の強度ISERSを求める工程と、第2検量線C2に基づいて、強度ISERSから標的物質の濃度を求める工程と、を有する。このように、本実施形態に係る定量方法では、第1検量線C1に基づいて、取得したラマンシフトから直接的に標的物質の濃度を求めるのではなく、取得したラマンシフトを強度に変換し、第2検量線C2に基づいて、強度から標的物質の濃度を求める。ここで、濃度とラマンシフトとの相関を示す曲線は、線形性に乏しく、関係式として表すことが困難である。本実施形態に係る定量方法では、ラマンシフトを強度に変換し、関係式として表すことが容易な濃度と強度との相関を利用して標的物質の濃度を求めることにより、より高い精度で標的物質を定量することができる。
本実施形態に係る定量方法では、差Δνに基づいて、被覆率θが1未満か1以上か判定する工程と、被覆率θが1未満の場合は、ラマンシフトに基づいて標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定し、被覆率θが1以上の場合は、強度に基づいて標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定する工程と、を含む。そのため、本実施形態に係る定量方法では、被覆率θが1以上の場合においても、標的物質を定量することができる。
2. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
2.1. 光学素子の作製
ガラス基板(基板12)上に、真空蒸着法によって、厚さ10nmのAgを成膜速度0.2Å/秒で成膜して、Agナノ粒子(金属構造体14)を形成した。これにより、光学素子を形成した。図7は、本実験に用いた光学素子のSEM写真である。
ガラス基板(基板12)上に、真空蒸着法によって、厚さ10nmのAgを成膜速度0.2Å/秒で成膜して、Agナノ粒子(金属構造体14)を形成した。これにより、光学素子を形成した。図7は、本実験に用いた光学素子のSEM写真である。
2.2. ラマン散乱光検出
標的物質として、メタンチオールを用いた。濃度を165ppb(part per billion)および260ppbに調整した気体状のメタンチオールを、光学素子に曝露した。光学素子のAgナノ粒子に接触したメタンチオールの一部は、Agナノ粒子表面に吸着した。メタンチオールを暴露させながら、光学素子表面に、強度1mW、波長632.8nmのレーザー光を30秒間照射し、光学素子表面から放射されるラマン散乱光を検出してSERSスペクトルを得た。
標的物質として、メタンチオールを用いた。濃度を165ppb(part per billion)および260ppbに調整した気体状のメタンチオールを、光学素子に曝露した。光学素子のAgナノ粒子に接触したメタンチオールの一部は、Agナノ粒子表面に吸着した。メタンチオールを暴露させながら、光学素子表面に、強度1mW、波長632.8nmのレーザー光を30秒間照射し、光学素子表面から放射されるラマン散乱光を検出してSERSスペクトルを得た。
図8は、測定位置を変えて7回測定した濃度165ppbのSERSスペクトルである。図9は、測定位置を変えて7回測定した濃度260ppbのSERSスペクトルである。図8および図9に示すように、670cm−1〜690cm−1に、メタンチオールに特徴的なS−C振動のピークが確認された。
図10は、165ppbおよび260ppbの7回の測定からそれぞれ1回を抜き出して比較したものである。図10に示すように、メタンチオールの濃度に応じて、ピークの強度およびラマンシフトに差があることがわかる。このピークの強度およびラマンシフトと、メタンチオールの濃度と、の相関関係を用いて、濃度未知の試料について定量を行うことができる。
2.3. スペクトルの解析
図8および図9で得られたSERSスペクトルのピークの強度およびラマンシフトを表1に示す。ピークの強度は、670cm−1〜690cm−1に見られるS−C振動のピークの最大値からバックグラウンドのピークの高さを差し引くことで算出した。ラマンシフトは、670cm−1〜690cm−1に見られるS−C振動のピークの最大値のラマンシフトを読み取った。強度およびラマンシフトについて、平均、標準偏差、変動係数を、それぞれ下記式(4)〜(6)を用いて算出した。
図8および図9で得られたSERSスペクトルのピークの強度およびラマンシフトを表1に示す。ピークの強度は、670cm−1〜690cm−1に見られるS−C振動のピークの最大値からバックグラウンドのピークの高さを差し引くことで算出した。ラマンシフトは、670cm−1〜690cm−1に見られるS−C振動のピークの最大値のラマンシフトを読み取った。強度およびラマンシフトについて、平均、標準偏差、変動係数を、それぞれ下記式(4)〜(6)を用いて算出した。
式(4)および式(5)において、xiは、i番目の実験結果の値、nは、データ数(今回はn=7)である。変動係数とは、データのばらつきを示す指標であり、変動係数の値が小さいほどばらつきは小さく、変動係数の値が大きいほどばらつきは大きい。
表1に示すように、165ppbの場合は、強度の変動係数が13.6%、ラマンシフトの変動係数が0.09%であり、260ppbの場合は、強度の変動係数が5.8%、ラマンシフトの変動係数が0.08%である。すなわち、ラマンシフトの変動係数の方が、強度の変動係数に比べて、小さく、ばらつきが抑えされていることがわかる。図11は、表1の結果をプロットしたものである。プロットの上下に変動係数をエラーバーで表示している。
表1および図11に示すように、強度よりもラマンシフトの方がばらつきが小さく、ラマンシフトに基づいて濃度を求めることで、ばらつきを抑えることができ、高い精度で標的物質を定量できることがわかる。
2.4. 検量線の作成
メタンチオールの濃度を165ppb、260ppb、410ppb、800ppbと変化させて光学素子に曝露したときのSERSスペクトルを測定した。図12は、メタンチオールの濃度と、SERSスペクトルのピークのラマンシフトと、の関係を示すグラフである。図13は、メタンチオールの濃度と、SERSスペクトルのピークの強度と、の関係を示すグラフである。図12は、上述した第1検量線C1となり、図13は、上述した第2検量線C2となる。
メタンチオールの濃度を165ppb、260ppb、410ppb、800ppbと変化させて光学素子に曝露したときのSERSスペクトルを測定した。図12は、メタンチオールの濃度と、SERSスペクトルのピークのラマンシフトと、の関係を示すグラフである。図13は、メタンチオールの濃度と、SERSスペクトルのピークの強度と、の関係を示すグラフである。図12は、上述した第1検量線C1となり、図13は、上述した第2検量線C2となる。
メタンチオールの濃度が高いほど、光学素子表面に対するメタンチオールの被覆率θは大きくなり、Agナノ粒子に吸着したメタンチオール分子間の距離は小さくなる。そのため、吸着したメタンチオール分子は、分子間相互作用によって、より安定化される。これにより、濃度が高いほど、分子振動のエネルギーが大きくなり、図12に示すように、ラマンシフトは大きくなる。また、濃度が高いほど、被覆率θは大きくなるため、図13に示すように、強度も大きくなる。
2.5. 係数Aの算出
図12に示すように、濃度800ppbのときは、ラマンシフトは飽和しており、被覆率θは1である。800ppbのときのピークのラマンシフトをνMAXとし、強度をIθ=1とした。
図12に示すように、濃度800ppbのときは、ラマンシフトは飽和しており、被覆率θは1である。800ppbのときのピークのラマンシフトをνMAXとし、強度をIθ=1とした。
図14は、ラマンシフトνMAXからそれぞれの濃度でのラマンシフトを差し引いた値Δνをプロットしたものである。図15は、それぞれの濃度での強度ISERSをIθ=1で割った値(ISERS/Iθ=1)を相対強度として、プロットしたものである。
図15のプロットに対して以下の演算処理を施し、図14のプロットに近づける操作を行った。まず、図15のプロットにマイナスを掛けて、上下を逆転させた。次に、マイナス値をプラス値にするために、オフセットをかけてプラス値とした(具体的には、1を足した)。その後、図14の縦軸のΔνの値に合わせるように、係数Aを乗じた。本実験では、A=18とすることにより、図15のプロットを、図14のプロットに重ねる(フィッティングさせる)ことができた。図16は、図15のプロット(ISERS/Iθ=1)を、図14のプロット(Δν)にフィッティングさせた状態を示すグラフである。
以上のように、係数Aは、メタンチオール(標的物質)の濃度とΔνとの関係を示したプロットに、メタンチオール(標的物質)の濃度と相対強度(ISERS/Iθ=1)と関係を示したプロットを、フィティングさせるための係数である。
なお、「フィティング」とは、図15のプロットを図14のプロットに完全に重ねる場合と、図15のプロットを14のプロットに完全には重ねずに、所定の単位でAを変化させて、図15のプロットを図14のプロットに最も近づける場合と、を含む。Aを変化させる所定の単位は、特に限定されず、「1」であってもよいし、「0.1」であってもよい。すなわち、Aを1ずつ変化させて図15のプロットが図14のプロットに最も近づいたときの値を係数Aとして算出してもよいし、Aを0.1ずつ変化させて図15のプロットが図14のプロットに最も近づいたときの値を係数Aとして算出してもよい。係数Aは、整数であってもよい。
2.6. メタンチオール以外の標的物質
標的物質として、メタンチオールの代わり、ヘキサデカンチオールを用いて実験を行った。図17は、ヘキサデカンチオールの濃度を200ppb、420ppb、850ppbと変化さて光学素子に暴露したときのSERSスペクトルである。図17で得られたSERSスペクトルのピークの強度およびラマンシフトを表2に示す。
標的物質として、メタンチオールの代わり、ヘキサデカンチオールを用いて実験を行った。図17は、ヘキサデカンチオールの濃度を200ppb、420ppb、850ppbと変化さて光学素子に暴露したときのSERSスペクトルである。図17で得られたSERSスペクトルのピークの強度およびラマンシフトを表2に示す。
図17および表2に示すように、ヘキサデカンチオールの場合でも、メタンチオールの場合と同様に、濃度に応じてピークの強度およびラマンシフトが変化することがわかる。メタンチオールおよびヘキサデカンチオールは、化学増強効果を発現する物質である。本実験より、メタンチオールに限らず、化学増強効果を発現する標的物質であれば、濃度に応じてピークの強度およびラマンシフトが変化するといえる。
3. 変形例
次に、本実施形態の変形例に係る定量方法について、図面を参照しながら説明する。図18は、本実施形態の変形例に係る定量方法を説明するためのフローチャートである。 以下、本実施形態の変形例に係る定量方法において、本実施形態に係る定量方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
次に、本実施形態の変形例に係る定量方法について、図面を参照しながら説明する。図18は、本実施形態の変形例に係る定量方法を説明するためのフローチャートである。 以下、本実施形態の変形例に係る定量方法において、本実施形態に係る定量方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
本実施形態に係る定量方法では、図5に示すように、取得したラマンシフトを強度に変換し、第2検量線C2に基づいて、強度から標的物質の濃度を求めた。具体的には、工程(S7)では、第2検量線C2に基づいて、工程(S6)において算出した強度ISERSから、標的物質の濃度を求めた。
これに対し、本実施形態の変形例に係る定量方法では、図18に示すように、図3に示す第1検量線C1に基づいて、取得したラマンシフトから直接的に標的物質を定量する。具体的には、工程(S7)では、第1検量線C1に基づいて、工程(S4)において取得したラマンシフトから、標的物質の濃度を求める。なお、本実施形態の変形例に係る定量方法では、図18に示すように、図5に示す工程(S2)および工程(S6)は、有していなくてもよい。
本実施形態の変形例に係る定量方法では、本実施形態に係る定量方法と同様に、高い精度で標的物質を定量することができる。
4. 電子機器
次に、本実施形態に係る電子機器200について、図面を参照しながら説明する。図19は、本実施形態に係る電子機器200を模式的に示す図である。電子機器200は、本発明に係るラマン分光装置を含むことができる。以下では、本発明に係るラマン分光装置としてラマン分光装置100を含む電子機器200について説明する。
次に、本実施形態に係る電子機器200について、図面を参照しながら説明する。図19は、本実施形態に係る電子機器200を模式的に示す図である。電子機器200は、本発明に係るラマン分光装置を含むことができる。以下では、本発明に係るラマン分光装置としてラマン分光装置100を含む電子機器200について説明する。
電子機器200は、図19に示すように、ラマン分光装置100と、光検出器30からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部210と、健康医療情報を記憶する記憶部220と、健康医療情報を表示する表示部230と、を含む。
演算部210は、例えば、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistance)であり、光検出器30から送出される検出情報(信号等)を受け取る。演算部210は、光検出器30からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する。演算された健康医療情報は、記憶部220に記憶される。
記憶部220は、例えば、半導体メモリー、ハードディスクドライブ等であり、演算部210と一体的に構成されてもよい。記憶部220に記憶された健康医療情報は、表示部230に送出される。
表示部230は、例えば、表示板(液晶モニター等)、プリンター、発光体、スピーカー等により構成されている。表示部230は、演算部210によって演算された健康医療情報等に基づいて、ユーザーがその内容を認識できるように、表示または発報する。
健康医療情報としては、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、および抗原・抗体からなる群より選択される少なくとも1種の生体関連物質、または、無機分子および有機分子から選択される少なくとも1種の化合物の有無若しくは量に関する情報を含むことができる。
なお、演算部210は、図1に示す処理部80によって構成されていてもよい。記憶部220は、図1に示す記憶部60によって構成されていてもよい。表示部230は、図1に示す表示部50によって構成されていてもよい。
電子機器200では、高い精度で標的物質を検出することができるラマン分光装置100を含む。そのため、電子機器200では、微量物質の検出を容易に行うことができ、高精度な健康医療情報を提供することができる。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…光学素子、12…基板、14…金属構造体、20…光源、30…光検出器、40…操作部、50…表示部、60…記憶部、62…データベース、70…記憶媒体、80…処理部、81…ラマンシフト取得部、82…強度取得部、83…ラマンシフト差算出部、84…強度算出部、85…第1定量値算出部、86…第2定量値算出部、87…被覆率判定部、88…定量値決定部、100…ラマン分光装置、102…測定部、104…定量計算部、110…気体試料保持部、112…カバー、113…吸引口、114…吸引流路、115…除塵フィルター、116…排出流路、117…吸引機構、118…排出口、120…検出部、122a,122b,122c,122d…レンズ、124…ハーフミラー、126…フィルター、127…分光器、128…受光素子、130…制御部、132…検出制御部、134…電力制御部、136…接続部、140…筐体、200…電子機器、210…演算部、220…記憶部、230…表示部
Claims (11)
- 標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射して、前記標的物質のラマン散乱光を検出する工程と、
検出した前記ラマン散乱光のラマンシフトを取得する工程と、
取得した前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程と、
を含む、定量方法。 - 請求項1において、
前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線を作成する工程と、
前記標的物質の濃度とラマン散乱光の強度との関係を示した第2検量線を作成する工程と、
取得した前記ラマンシフトと、前記第1検量線から得られた前記金属構造体に対する前記標的物質の被覆率が1の場合のラマンシフトと、の差Δνを求める工程と、
を含み、
前記標的物質を定量する工程は、
前記差Δνと、前記第2検量線から得られた前記被覆率が1の場合のラマン散乱光の強度Iθ=1と、に基づいて前記標的物質のラマン散乱光の強度ISERSを求める工程と、
前記第2検量線に基づいて、前記強度ISERSから前記標的物質の濃度を求める工程と、
を有する、定量方法。 - 請求項2において、
前記強度ISERSを求める工程では、下記式(1)に基づいて行われる、定量方法。
ISERS=(1−Δν/A)×Iθ=1 ・・・ (1)
ただし、式(1)において、Aは、前記標的物質の濃度と前記差Δνとの相関を示すプロットに、前記標的物質の濃度と、前記強度ISERSと前記強度Iθ=1との相対強度(前記強度ISERS/前記強度Iθ=1)と、の相関を示すプロットを、フィッティングさせるための係数である。 - 請求項2または3において、
検出した前記ラマン散乱光の強度を取得する工程と、
取得した前記強度に基づいて前記標的物質を定量する工程と、
前記差Δνに基づいて、前記被覆率が1未満か1以上か判定する工程と、
前記被覆率が1未満の場合は、前記ラマンシフトに基づいて前記標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定し、前記被覆率が1以上の場合は、前記強度に基づいて前記標的物質を定量する工程において、定量した値を定量値として決定する工程と、
を含む、定量方法。 - 請求項1において、
前記標的物質を定量する工程では、
前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線に基づいて、取得した前記ラマンシフトから前記標的物質の濃度を定量する、定量方法。 - 請求項1ないし5のいずれか1項において
前記金属構造体の材質は、Ag、Au、またはAlであり、
前記標的物質は、含窒素化合物、含硫化合物、またはカルボン酸である、定量方法。 - 標的物質が吸着した、入射光の波長よりも小さい金属構造体に光を照射し、前記標的物質のラマン散乱光を検出して、前記標的物質を定量するプログラムであって、
コンピューターを、
検出した前記ラマン散乱光からラマンシフトを取得するラマンシフト取得部、
取得した前記ラマンシフトに基づいて、前記標的物質の濃度を求める第1定量値算出部、として機能させるためのプログラム。 - 請求項7において、
コンピューターを、
検出した前記ラマン散乱光の強度を取得する強度取得部と、
取得した前記強度に基づいて、前記標的物質の濃度を求める第2定量値算出部と、
取得した前記ラマンシフトと、前記標的物質の濃度とラマンシフトとの関係を示した第1検量線から得られた前記金属構造体に対する前記標的物質の被覆率が1の場合のラマンシフトと、の差Δνを求めるラマンシフト差算出部と、
前記差Δνに基づいて、前記被覆率が1未満か1以上か判定する被覆率判定部と、
前記被覆率が1未満の場合は、前記第1定量値算出部において求めた値を定量値として決定し、前記被覆率が1以上の場合は、前記第2定量値算出部において求めた値を定量値として決定する定量値決定部、として機能させるためのプログラム。 - 標的物質を定量するラマン分光装置であって、
光を射出する光源と、
前記光により照射される前記標的物質が吸着され、前記光の波長のよりも小さい金属構造体と、
前記標的物質から放射されるラマン散乱光を受光する光検出器と、
前記光検出器において受光した前記ラマン散乱光のラマンシフトから前記標的物質の濃度を求める処理部と、
を含む、ラマン分光装置。 - 請求項9に記載のラマン分光装置と、
前記光検出器からの検出情報に基づいて健康医療情報を演算する演算部と、
前記健康医療情報を記憶する記憶部と、
前記健康医療情報を表示する表示部と、
を含む、電子機器。 - 請求項10において、
前記健康医療情報は、細菌、ウィルス、タンパク質、核酸、および抗原・抗体からなる群より選択される少なくとも1種の生体関連物質、または、無機分子および有機分子から選択される少なくとも1種の化合物の有無若しくは量に関する情報を含む、電子機器。
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---|---|---|---|
JP2013195081A JP2015059892A (ja) | 2013-09-20 | 2013-09-20 | 定量方法、プログラム、ラマン分光装置、および電子機器 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20200065504A (ko) * | 2018-11-30 | 2020-06-09 | 서강대학교산학협력단 | 수용액 상의 물질 종류와 물질 농도 예측 장치 및 그 예측 방법 |
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2013
- 2013-09-20 JP JP2013195081A patent/JP2015059892A/ja active Pending
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KR20200065504A (ko) * | 2018-11-30 | 2020-06-09 | 서강대학교산학협력단 | 수용액 상의 물질 종류와 물질 농도 예측 장치 및 그 예측 방법 |
KR102234340B1 (ko) * | 2018-11-30 | 2021-03-31 | 서강대학교산학협력단 | 수용액 상의 물질 종류와 물질 농도 예측 장치 및 그 예측 방법 |
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