JP2017116449A - センサーチップパッケージ、センサーチップパッケージアレイ、ガス検出装置及びガス検出方法 - Google Patents

センサーチップパッケージ、センサーチップパッケージアレイ、ガス検出装置及びガス検出方法 Download PDF

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めぐみ 江成
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【課題】小型で、かつ、センサーチップを容易に校正することができ、標的ガスの測定精度の良好な、センサーチップパッケージを提供すること。【解決手段】本発明に係るセンサーチップパッケージ103は、センサーチップ10を収容するチップ収容セル12と、第1校正ガスが封入され、チップ収容セルと連通可能な第1校正ガス収容セル14と、を含む。【選択図】図7

Description

本発明は、センサーチップパッケージ、センサーチップパッケージアレイ、ガス検出装置及びガス検出方法に関する。
近年、医療診断や食物の検査等における需要がますます増大し、小型で高速なセンシング技術の開発が求められている。電気化学的な手法をはじめさまざまなタイプのセンサーが検討されているが、集積化が可能、低コスト、そして、測定環境を選ばないといった理由から、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を用いたセンサーに対する関心が高まっている。
例えば、全反射型プリズム表面に設けた金属薄膜に発生させたSPRを用いて、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、標的ガスの吸着の有無を検出するものが知られている。この手法は、SPRによる消光波長が、検出対象分子(標的ガス)の吸着前後でシフトするのを検出することで、検出対象分子の存在をセンシングする。
また、非常に低濃度の標的ガスや標的ガスを検出する高感度分光技術の1つとして、SPRを利用した表面増強ラマン分光(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)が注目されている。SERSとはナノメートルスケールの凸凹構造を持つ金属表面でラマン散乱光が10〜1014倍に増強される現象である。レーザーなどの単一波長の励起光を分子に照射すると、励起光の波長から分子の振動エネルギー分だけ僅かにずれた波長の光(ラマン散乱光)が散乱される。この散乱光を分光処理すると、分子種に固有のスペクトル(指紋スペクトル)が得られる。この指紋スペクトルの形状や強度を分析することで、非常に低濃度の分子を同定、定量することが可能となる。
しかし、SERSセンサーチップは、精密なデバイスであるので、工場出荷時に校正済であっても、周囲の環境によるセンサー特性の変動が起きる。そのため、経時劣化に対応する感度校正が必要となることがある。このような劣化の要因としては、センサー周囲の環境、例えば、湿度、酸素、大気に含まれる分子、光照射、圧力などが挙げられる。
一般に気体試料の特定成分のガス濃度を検出するセンサーの校正方法としては、既知濃度の校正ガスを用いる方法がある。特許文献1には、複数の既知の被測定ガス成分を標準ガスとし、これに対するポンピング電流を検量線として校正するガス分析計の校正方法が提案されている。
特開2001−159620号公報
しかしながら、特許文献1に記載のガス分析計では、センサーの校正のためのガスをセンサーに供給するために、例えば、装置に接続したボンベから校正用ガスを供給したり、装置にボンベを搭載したりすることになる。そのためガス分析計の大型化は避けられず、小型でポータブルなガス分析計とすることは難しい。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、小型で、かつ、センサーチップを容易に校正することができ、標的ガスの測定精度の良好な、センサーチップパッケージ、センサーチップパッケージアレイ、ガス検出装置及びガス検出方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係るセンサーチップの一態様は、センサーチップを収容するチップ収容セルと、第1校正ガスが封入され、前記チップ収容セルと連通可能な第1校正ガス収容セルと、を含む。
このようなセンサーチップパッケージは、小型であり、センサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから、第1校正ガスを容易に導入する(拡散させる)ことができる。これにより、センサーチップを容易に校正することができ、標的ガスの測定精度が良好である。
本発明に係るセンサーチップパッケージにおいて、第2校正ガスが封入され、前記チップ収容セルと連通可能な第2校正ガス収容セルをさらに含んでもよい。
このようなセンサーチップパッケージは、小型であり、センサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから第1校正ガスを容易に導入することができ、第2校正ガス収容セルから第2校正ガスを容易に導入することができる。これにより校正のための校正ガス中の標的ガスの濃度を二水準とすることができるので、センサーチップをより精度よく校正することができ、標的ガスの測定精度がさらに良好である。また、第1校正ガス中と第2校正ガス中の標的ガスの濃度を二水準の濃度とする必要が無く、製造が容易である。
本発明に係るセンサーチップパッケージにおいて、前記第1校正ガス及び前記第2校正ガスは、同種の標的ガスを含んでもよい。
このようなセンサーチップパッケージによれば、センサーチップをさらに精度よく校正することができ、標的ガスの測定精度がさらに良好である。また、第1校正ガス中と第2校正ガス中の標的ガスの濃度を二水準の濃度とする必要が無く製造が容易である。さらに、同種の標的ガスを含む校正ガスを用いるので、センサーチップに対して標的ガスの濃度の低い方から標的ガスを接触させることも可能であり、センサーチップの校正による誤差もより小さくすることができる。
本発明に係るセンサーチップパッケージにおいて、前記第2校正ガスは、不活性ガスであってもよい。
このようなセンサーチップパッケージは、小型であり、センサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから第1校正ガスを容易に導入することができ、第2校正ガス収容セルから不活性ガスを容易に導入することができる。これにより校正のための校正ガス中の標的ガスの濃度を二水準とすることができるので、センサーチップをより精度よく校正することができ、標的ガスの測定精度がさらに良好である。
本発明に係るセンサーチップパッケージにおいて、前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとは、隣接していてもよい。
このようなセンサーチップパッケージは、簡易な操作でセンサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから、第1校正ガスを容易に導入することができる。
本発明に係るセンサーチップパッケージにおいて、前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとは、弁が設けられた流路で接続されてもよい。
このようなセンサーチップパッケージは、弁の開放という簡易な操作でセンサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから、第1校正ガスを容易に導入することができる。
本発明に係るセンサーチップパッケージアレイの一態様は、上述のセンサーチップパッケージを複数含む。
このようなセンサーチップパッケージアレイによれば、複数のセンサーチップを一度に操作、輸送することができる。そのため、例えばガス検出装置に、センサーチップパッケージアレイを装着することにより、センサーチップパッケージを交換することなく、複数のセンサーチップによるガス検出を行うことができる。これにより、ユーザーによるセンサーチップパッケージの交換作業の手間を削減することができる。
本発明に係るガス検出装置の一態様は、上述のセンサーチップパッケージ、又は上述のセンサーチップパッケージアレイを装着可能な装着部と、前記センサーチップに励起光を照射する光源と、前記センサーチップから放射される光を検出する検出器と、前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとを連通させる連通機構と、を備える。
このようなガス検出装置は、小型であり、連通機構によって、センサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから、第1校正ガスを容易に導入する(拡散させる)ことができる。これにより、センサーチップを容易に校正することができ、精度よく標的ガスを検出することができる。
本発明に係るガス検出装置において、前記センサーチップパッケージ又は前記センサーチップパッケージアレイは、交換可能であってもよい。
このようなガス検出装置は、装着部に対してセンサーチップパッケージ又はセンサーチップパッケージアレイを着脱することができる。これにより、装着したセンサーチップパッケージ又はセンサーチップパッケージアレイのセンサーチップが劣化した際に、新しいセンサーチップパッケージ又はセンサーチップパッケージアレイに交換してガス検出を行うことができる。このようなガス検出装置は長期間使用することができる。
本発明に係るガス検出装置において、前記第1校正ガスと、前記ガス検出装置の検出対象である標的ガスとが同種であってもよい。
このようなガス検出装置によれば、センサーチップをさらに精度よく校正することができ、標的ガスの測定精度がさらに良好である。また、第1校正ガスと第2校正ガスの濃度を二水準の濃度とする必要が無く製造が容易である。さらに、同種の校正ガスを用いるので、センサーチップに対して低い濃度の方から校正ガスを接触させることも可能であるので、センサーチップの校正による誤差もより小さくすることができる。
本発明に係るガス検出方法の一態様は、
上述のガス検出装置を用い、前記連通機構により、前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとを連通させ、前記チップ収容セル内に前記第1校正ガスを拡散させる工程と、前記第1校正ガス中の標的ガスを検出する工程と、前記標的ガスを含む試料ガスを前記チップ収容セルに拡散させる工程と、前記試料ガス中の前記標的ガスを検出する工程と、前記第1校正ガス中の前記試料ガスの検出結果に基づいて、前記試料ガス中の前記試料ガスの検出結果を校正する工程と、を含む。
このようなガス検出方法によれば、連通機構によって、センサーチップが収容されたチップ収容セルに、第1校正ガス収容セルから、第1校正ガスを容易に導入する(拡散させる)ことができる。これにより、センサーチップを容易に校正することができ、精度よく標的ガスを検出することができる。
実施形態に係るセンサーチップの断面の模式図。 実施形態に係るセンサーチップの平面及び断面の模式図。 実施形態に係るセンサーチップパッケージを模式的に示す斜視図。 変形形態に係るセンサーチップパッケージの説明図。 実施形態のセンサーチップパッケージ内の標的ガスの濃度変化の模式図。 実施形態のセンサーチップパッケージのセルを連通させる様子を示す模式図。 変形実施形態に係るセンサーチップパッケージの模式図。 実施形態に係るセンサーチップパッケージアレイの模式図。 実施形態に係るガス検出装置の一例を示す模式図。 実施例に係る検量線を示すグラフ。 濃度測定の一例を模式的に示す図。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.センサーチップパッケージ
本実施形態に係るセンサーチップパッケージは、センサーチップを収容するチップ収容セルと、第1校正ガスが封入され、チップ収容セルと連通可能な第1校正ガス収容セルと、第2校正ガスが封入され、チップ収容セルと連通可能な第2校正ガス収容セルと、を含む。以下、まずセンサーチップについて説明し、その後、各収容セル、校正ガス等について説明する。
1.1.センサーチップ
センサーチップは、標的ガスが吸着して励起光が照射される表面に、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)を発生することができる限り特に限定されない。このような表面の例としては、金属のナノ粒子が、ランダムに又は規則的に配置された表面であり、当該表面に標的ガスが吸着した状態で、励起光を照射すると、標的ガスの振動エネルギーの分だけ、励起光の波長からずれた波長の光(ラマン散乱光)が散乱される態様が挙げられる。係る散乱は、表面増強ラマン散乱(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)であり、ラマン散乱光が102〜1014倍に増強されている。そしてこのSERS光を分光処理することにより、標的ガスの種類(分子種)に固有のスペクトル(指紋スペクトル)を高感度で得ることができる。
以下、センサーチップの一実施形態として、表面に金属微細構造体7の一例としての金属粒子が配置されたセンサーチップ10について説明する。図1は、センサーチップ10の断面の模式図である。図2は、センサーチップ10の2つの態様を平面的に見た(金属層2の厚さ方向から見た)図及びそれらの断面図である。図2(a−1)のI−I線の断面が図2(a−2)に、図2(b−1)のII−II線の断面が図2(b−2)にそれぞれ相当する。本実施形態のセンサーチップ10は、金属層2と、誘電体層4と、金属微細構造層6と、を含む。
1.1.1.金属層
本実施形態のセンサーチップ10は、金属層2を有する。金属層2は、光を透過しない金属の表面を提供するものであれば、特に限定されず、例えばフィルム、板、層又は膜の形状とすることができる。金属層2は、例えば基板1の上に設けられてもよい。この場合の基板1としては、特に限定されないが、金属層2に励起される伝搬型表面プラズモンに影響を与えにくいものが好ましい。基板1としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、樹脂基板などが挙げられる。基板1の金属層2が設けられる面の形状も特に限定されない。金属層2の表面に所定の構造を形成する場合にはその構造に対応する表面を有してもよいし、金属層2の表面を平面とする場合には、対応する部分の表面を平面としてもよい。図1の例では、基板1の表面(平面)の上に層状の金属層2が設けられている。なお、基板1としては、ガラス基板、シリコン基板等を用いることができる。
本明細書では、センサーチップ10において、金属層2の厚さ方向を、厚み方向、高さ方向等と称する場合がある。本実施形態では、金属層2の厚さ方向とは、後述の誘電体層4及び金属微細構造層6の厚さ方向と一致している。また、金属層2が基板1の表面に設けられる場合には、基板1の表面の法線方向を厚さ方向、厚み方向又は高さ方向と称する場合がある。さらに、基板1からみて、金属層2側の方向を上、又は上方と表現し、その逆方向を下、又は下方と表現する場合がある。
また、本明細書において、例えば、「部材Aの上に部材Bが設けられる」との表現は、部材Aの上に接して部材Bが設けられる場合と、部材Aの上に他の部材又は空間を介して部材Bが配置される場合と、を含む意味である。
金属層2は、例えば、蒸着、スパッタ、鋳造、機械加工等の手法により形成することができる。金属層2が薄膜状に基板1の上に設けられる場合には、基板1の上面全体に設けられてもよいし基板1の一部に設けられてもよい。金属層2の厚さは、特に限定されず、例えば、10nm以上1mm以下、好ましくは20nm以上100μm以下、より好ましくは30nm以上1μm以下とすることができる。
金属層2は、入射光(励起光)により与えられる電場と、その電場によって誘起される分極とが逆位相で振動するような電場が存在しうる金属、すなわち、特定の電場が与えられた場合に、誘電関数の実数部が負の値を有し(負の誘電率を有し)、虚数部の誘電率が実数部の誘電率の絶対値よりも小さい誘電率を有することのできる金属によって構成されることが好ましい。可視光領域におけるこのような誘電率を有しうる金属の例としては、銀、金、アルミニウム、銅、白金、及びそれらの合金等を挙げることができる。また、金属層2の表面(厚さ方向の端面)は、特定の結晶面であってもなくてもよい。また、金属層2は、平面視において、誘電体層4の外側まで形成されてもよい。
金属層2は、センサーチップ10において伝搬型表面プラズモン(PSP)を発生させる機能を有してもよい。特定の条件下では、金属層2に光が入射することにより、金属層2の表面(厚さ方向の端面)近傍に伝搬型表面プラズモンが発生する。本明細書では、金
属層2の表面付近の電荷の振動と電磁波とが結合した振動の量子を、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:Surface Plasmon Plariton)と称することがある。係る金属層2に伝搬型表面プラズモンを発生させる場合には、後述の金属微細構造層6に発生する局在型表面プラズモン(LSP)と相互作用させてもよい。
1.1.2.誘電体層
本実施形態のセンサーチップ10は、金属層2と金属微細構造層6(金属微細構造体7)とを電気的に隔てる誘電体層4を有する。誘電体層4は、図1に示すように、金属層2の上に設けられる。これにより、金属層2と金属微細構造層6内に含まれる金属微細構造体7とを隔てることができる。誘電体層4は、フィルム、層又は膜の形状を有することができる。
誘電体層4は、正の誘電率を有すればよく、例えば、SiO2、Al23、TiO2、高分子、ITO(Indium Tin Oxide)などで形成することができる。また誘電体層4は、材質の互いに異なる複数の層から構成されてもよい。これらのうち、誘電体層4の材質としては、SiO2であることがより好ましい。このようにすれば、400
nm以上の波長の入射光(励起光)を用いて、試料を測定する際に、入射光(励起光)及びラマン散乱光の両者を増強しやすくすることができる。
誘電体層4の厚さは、センサーチップ10に照射される特定の波長の入射光(励起光)を入射した際のラマン散乱光の波長等を考慮して設計される。誘電体層4は、例えば、蒸着、スパッタ、CVD、各種コーティング等の手法により形成することができる。誘電体層4は、金属層2の表面の全面に設けられてもよいし金属層2の表面の一部に設けられてもよい。誘電体層4は、少なくとも金属微細構造層6の下に設けられ、さらに、金属微細構造層6の存在しない位置にも設けられてもよい。
誘電体層4の厚さは、特に限定されず、例えば、10nm以上2000nm以下、好ましくは20nm以上500nm以下、より好ましくは20nm以上300nm以下とすることができる。誘電体層4内(平面方向:誘電体層4と平行な方向)には光を伝搬させることができる。また、誘電体層4は、誘電体層4と金属層2との界面近傍に発生する伝搬型表面プラズモン(PSP)を、誘電体層4内(平面方向)で伝搬させることができる。また、金属微細構造層6を1つの層とみなす場合には、金属層2及び金属微細構造層6によって、両端で光が反射される構造の共振器とみなすことができ、誘電体層4は、その共振器の光路として機能することができる。このような共振器では、入射光(励起光)と反射光との重ね合わせを起すことができる。誘電体層4の厚さは、入射光(励起光)と反射光との重ね合わせにより生じる定在波の腹が、金属微細構造層6の厚さ方向の中央付近となるように設定されることにより、金属微細構造層6に生じるLSPの強度をさらに高めることができる。このような点を考慮して誘電体層4の厚さを設定することもでき、この場合には、例えば、入射光(励起光)の波長が633nmのときに誘電体層4の厚さを230nmとすることが挙げられるが、誘電体層4の厚さはこれに限定されない。
1.1.3.金属微細構造層
金属微細構造層6は、誘電体層4の上に設けられる。平面視において、金属微細構造層6は、誘電体層4が形成された領域内の一部又は全部に形成される。金属微細構造層6は、金属微細構造体7を含む。図示の例では、金属微細構造体7は、粒子状の構造(金属粒子)となっているが、金属微細構造体7は、このような態様に限定されない。金属微細構造層6に含まれる金属微細構造体7の数、大きさ(寸法)、形状、配列等については、特に限定されない。また、金属微細構造層6は、金属微細構造体7以外に気体(空間)、誘電体等を含んでもよい。
金属微細構造層6は、誘電体層4の上面から、金属微細構造体7の誘電体層4から離れた側の上端に接する面との間の部分と定義する。例えば、金属微細構造層6の上面及び下面は、金属微細構造層6に金属微細構造体7と気体(空間)が含まれている場合には、仮想的な面となり、金属微細構造層6には、金属微細構造体7の側方に配置された気体(空間)も含まれるものとする。
金属微細構造層6の平面的な形状は、特に限定されず、矩形、多角形、円形、楕円形等、任意の形状とすることができる。また、金属微細構造層6の平面的な形状は、入射光(励起光)の照射領域の形状と相似的な形状とすると、入射光(励起光)のエネルギーをより効率的に電場増強に充てることができる場合がある。
金属微細構造層6に含まれる金属微細構造体7は、入射光(励起光)の照射により、局在型表面プラズモンを発生することができれば、その数、大きさ(寸法)、形状、配列等について、特に限定されない。図1は、金属微細構造層6に含まれる金属微細構造体7の一例を粒子状の微細構造(金属粒子)として示している。また、図2(a−1)、(a−2)に示す例では、金属微細構造層6は、金属微細構造体7が、平面視において、所定の方向に所定のピッチで複数並んだストライプ状となっている。すなわち、この例では金属微細構造層6は、金属微細構造体7が、平面視において、グレーティング状(縞状)に配列されている。さらに図2(b−1)、(b−2)に示す例では、金属微細構造層6は、金属微細構造体7が、平面視において、所定の方向に所定のピッチで複数並んだ金属微細構造列を有し、かつ、金属微細構造列が、前記所定の方向と交差する方向(図では直交方向)に、所定のピッチで複数並んだ構造を有している。すなわち、この例では金属微細構造層6は、金属微細構造体7が、平面視において、格子状に配列されている。
金属微細構造層6が、粒子又はストライプ状の金属微細構造体7で構成される場合、金属微細構造体7の数は、複数であればよく、好ましくは10個以上、より好ましくは100個以上である。なお、図2の例では、同一形状の金属微細構造体7が設けられているが、異なる形状の金属微細構造体7が設けられてもよく、例えば、ストライプ状の金属微細構造体7及び粒子状の金属微細構造体7が混在してもよい。
金属微細構造体7は、誘電体層4の存在により、金属層2から厚さ方向に離間して設けられる。金属微細構造体7は、金属層2の上に誘電体層4を介して配置される。図1の例では、金属層2の上に誘電体層4が設けられ、その上に金属微細構造体7が形成されているが、誘電体層4は層状でなくても、金属層2と金属微細構造体7とが厚さ方向で離間して配置されていればよい。さらに、図示しないが、誘電体層4の上に金属微細構造体7を配置する場合には、密着層を介してもよい。密着層の材質としては、金、銅、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、白金、モリブデン、クロム、チタン、又はこれらの合金若しくは複合体、又は酸化チタン、酸化タングステンなどを挙げることができる。
金属微細構造体7の形状は、特に限定されず、例えば、粒子状の構造である場合には、金属層2又は誘電体層4の厚さ方向に投影した場合に(厚さ方向からの平面視において)円形、楕円形、多角形、不定形又はそれらを組合わせた形であることができ、厚さ方向に直交する方向に投影した場合にも円形、楕円形、多角形、不定形又はそれらを組合わせた形状であることができる。図1の例では金属微細構造体7は、誘電体層4の厚さ方向に中心軸を有する円柱状の形状で描かれているが、金属微細構造体7の形状はこれに限定されず、例えば、角柱状、楕円柱状、半球状、球状、錐状、錐台状等であってもよい。
金属微細構造体7の高さ方向(誘電体層4の厚さ方向)の大きさTは、高さ方向に垂直な平面によって金属微細構造体7を切ることができる区間の長さを指し、1nm以上300nm以下とすることができる。また、金属微細構造体7の高さ方向に直交する第1方向
の大きさは、第1方向に垂直な平面によって金属微細構造体7を切ることができる区間の長さを指し、5nm以上300nm以下とすることができる。例えば、金属微細構造体7の形状が高さ方向を中心軸とする円柱である場合には、金属微細構造体7の高さ方向の大きさ(円柱の高さ)は、1nm以上300nm以下、好ましくは2nm以上100nm以下、より好ましくは3nm以上50nm以下、さらに好ましくは4nm以上40nm以下とすることができる。また金属微細構造体7の形状が高さ方向を中心軸とする円柱である場合には、金属微細構造体7の大きさ(円柱底面の直径)は、10nm以上300nm以下、好ましくは20nm以上200nm以下、より好ましくは25nm以上180nm以下としてもよい。
金属微細構造体7の形状、材質は、入射光(励起光)の照射によって、局在型表面プラズモン(LSP)を生じうる限り任意である。可視光付近の光によって局在型表面プラズモンを生じうる材質としては、金、銀、アルミニウム、銅、白金、パラジウム、ニッケル又はそれらの合金を挙げることができる。これらの中でも、金属微細構造体7の材質としては、Au又はAgであることがより好ましい。このような材質を選ぶことにより、より強いLSPが得られ、素子全体の電場増強度を強めることができる。
金属微細構造体7は、例えば、スパッタ、蒸着等によって薄膜を形成した後にパターニングを行う方法、マイクロコンタクトプリント法、ナノインプリント法などによって形成することができる。また、金属微細構造体7は、基板上に塗布したレジストを電子線描画等により感光させ、スパッタ、蒸着等によって金属薄膜を成膜した後にレジストを除去してパターニングを行うリソグラフィー法などによって形成することができる。また、金属微細構造体7は、コロイド化学的手法によって形成することができ、これを適宜の手法によって誘電体層4上に配置してもよい。
さらに、金属微細構造体7は、干渉露光法によって形成することもできる。すなわち、パターン形成のための露光を、レーザー光の干渉縞を利用して行うことができる。また、この方法によれば、多重露光や多光束露光が可能であり、周期的なパターンを有する金属微細構造体7を非常に容易に形成することができる。例えば、縞状のパターンを形成する場合には、レーザー光の干渉縞をレジスト等に露光することにより形成することができる。また、二次元格子状のパターンを形成する場合には、レーザー光の干渉縞を交差するように、同時に又は回分的にレジスト等に露光することにより形成することができる。係る方法は、電子線描画に比較して装置構成を小規模にすることができ、かつ、必要に応じて多数のセンサーチップ10をより効率的に製造することができる。
金属微細構造体7は、本実施形態のセンサーチップ10において局在型表面プラズモン(LSP)を発生させる機能を有している。金属微細構造体7に、特定の条件で入射光(励起光)を照射することにより、金属微細構造体7の周辺に局在型表面プラズモンを発生させることができる。金属微細構造体7に発生した局在型表面プラズモンが、金属層2と誘電体層4との界面近傍に発生する伝搬型表面プラズモンと相互作用できるように入射光(励起光)の波長、誘電体層4の厚さ、金属微細構造体7の配列等を設定してもよい。
センサーチップ10には、金属微細構造層6側から入射光(励起光)が照射される。そして、入射光(励起光)は、金属微細構造層6、誘電体層4、及び金属層2と、回折、屈折、反射等の各種の相互作用をして入射光(励起光)の照射された領域及びその近傍にて、プラズモン共鳴を生じ、高い電場増強効果を示すことができる。
本実施形態のセンサーチップ10は、金属微細構造層6を、誘電体層4を介して金属層2の上に配列させた構造であり、いわゆるGap type Surface Plasmon(GSP)となっている。
さらに、金属微細構造体7は、各種の分子膜等により表面修飾されてもよい。表面修飾分子としては、例えば、アニリンが挙げられ、アニリン分子膜を採用すると、標的ガスが一酸化窒素である場合に、一酸化窒素を吸着する効率が高いため、より高感度な標的ガスの検出が可能となる。
以上例示したセンサーチップ10では、入射光(励起光)の照射により、金属微細構造層6の金属微細構造体7の近傍に、非常に大きい増強電場が形成される。したがって、センサーチップ10の金属微細構造層6の金属微細構造体7に標的ガスを吸着(付着、接触)させた状態で、入射光(励起光)を照射することにより、入射光(励起光)及び標的ガスによるラマン散乱光の両者を大幅に増幅することができる。
また、係るセンサーチップ10は、チップ収容セル内に配置され、センサーチップパッケージとして、例えばラマン分光装置に用いられる。このような場合には、センサーチップパッケージ及びガスの流路は、ガス中の標的ガスがセンサーチップ10の金属微細構造層6の金属微細構造体7に吸着(付着、接触)しやすいように配置されることが好ましい。
1.2.チップ収容セル
図3は、本実施形態のセンサーチップパッケージ100を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、本実施形態のセンサーチップパッケージ100は、チップ収容セル12を含む。
チップ収容セル12は、上述のセンサーチップ10を収容する。チップ収容セル12は、センサーチップ10を収容し、密閉できる空間を形成でき、第1校正ガス収容セル14と連通可能であれば、どのような構成であってもよい。
チップ収容セル12は、例えば、箱形の形状を有してもよい。チップ収容セル12は、図3の例では、平行六面体の箱状の形状となっている。チップ収容セル12内に収容されるセンサーチップ10は、例えば、チップ収容セル12を構成する壁の内面に設置される。チップ収容セル12内でセンサーチップ10が設けられる位置は、チップ収容セル12に標的ガスを含むガスが導入された際にセンサーチップ10にガスが接触可能で、励起光を照射でき、放射光を観測できる位置であれば、特に限定されない。センサーチップ10は、例えば、接着剤によってチップ収容セル12を構成する壁に接着されてもよい。図3の例では、センサーチップ10は、チップ収容セル12の内面のうち、第1校正ガス収容セル14と隣接しない内面に設けられている。これは、本実施形態においてセンサーチップ10が設けられた面は、後述するニードル142がセンサーチップ10に接触しない位置となるからである。
チップ収容セル12が形成する空間の大きさは、センサーチップ10を収容できる限り、特に限定されないが、例えば、1mm以上1000mm以下、好ましくは5mm以上800mm以下、より好ましくは10mm以上500mm以下程度である。空間の大きさがこの範囲であれば、センサーチップ10の校正のための校正ガスの量を少量とすることができるし、センサーチップパッケージ100を小型に形成できる。また、空間の大きさがこの範囲であれば、持ち運んだり交換したりする際のユーザーの操作性を良好にすることができる。
チップ収容セル12は、センサーチップ10を収容し、密閉されることにより、センサーチップ10が経時劣化することを抑制する。上述の通り、センサーチップ10には、金属微細構造層6が存在する。金属微細構造層6は、例えば、水分や酸素に接触した状態が
続くと、金属微細構造体7のマイグレーションを生じることがある。このような劣化を抑制するために、チップ収容セル12内には、例えば、不活性ガス、乾燥窒素等の金属微細構造層6に対して悪影響を及ぼしにくいガスを封入することが好ましい。なお、図示しないが、チップ収容セル12には、不活性ガス等を導入するための導入口を有してもよい。また、チップ収容セル12内部には、酸素吸着材料や除湿材料を封入してもよい。酸素吸着材料の例として、鉄粉や有機系の物が挙げられる。除湿材料の例として、シリカゲル、酸化カルシウム、塩化カルシウムが挙げられる。いずれも、センサーチップ10の表面の金属、有機分子(アニリン等)や標的ガスと反応しない材料が選択される。
チップ収容セル12は、後述する校正の操作の後、センサーチップ10が、特定対象のガスに接触しやすいように、開放できるような構造となっていてもよいし、測定対象のガスを導入できるような導入口や排出口を有してもよい。
チップ収容セル12の材質は、特に限定されないが、ガス透過性が小さいことが好ましい。そのような材質としては、例えば、ガラス、金属、セラミック、フィルム状金属、樹脂等が挙げられ、単一の材料である必要はない。また、樹脂としては、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸等が挙げられ、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着膜等との積層体としてもよい。また、チップ収容セル12と第1校正ガス収容セル14との連通方法として、後述のニードル142を用いる場合には、ニードル142により穿孔された際の気密性を確保しやすい(後述する)観点から、樹脂を含んで形成されることがより好ましい。
なお、センサーチップ10に対して光源から光が照射される際の光路、及び、センサーチップ10から放射される光の光路となるチップ収容セル12の部分は、当該光に対して透明であるように形成される。そのような材質としては、例えば、ガラス、PMMA等が挙げられ、光路の部分は、平坦でも、曲面を持っていても、レンズ型でもよい。
1.3.第1校正ガス収容セル
本実施形態のセンサーチップパッケージ100は、第1校正ガスが封入され、チップ収容セル12と連通可能な第1校正ガス収容セル14を有する。
第1校正ガス収容セル14は、チップ収容セル12と連通可能に形成される。第1校正ガス収容セル14は、密閉できる空間を形成でき、チップ収容セル12と連通可能であれば、どのような構成であってもよい。また、第1校正ガス収容セル14がチップ収容セル12に隣り合って設けられる場合には、両者の間の壁は共通であってもよい。
第1校正ガス収容セル14は、例えば、箱形の形状を有してもよい。第1校正ガス収容セル14は、図3の例では、平行六面体の箱状の形状となっている。第1校正ガス収容セル14内に収容される第1校正ガスの種類等については後述する。
第1校正ガス収容セル14には第1校正ガスが封入され密閉される。なお、図示しないが、第1校正ガス収容セル14には、第1校正ガスを導入するための導入口を有してもよい。第1校正ガス収容セル14の大きさ、材質については、上述のチップ収容セル12と同様であるため説明を省略する。
1.4.第2校正ガス収容セル
本実施形態のセンサーチップパッケージ100は、第2校正ガスが封入され、チップ収容セル12と連通可能な第2校正ガス収容セル16を有する。
第2校正ガス収容セル16は、チップ収容セル12と連通可能に形成される。第2校正ガス収容セル16は、第1校正ガス収容セル14を介してチップ収容セル12に連通可能であってもよいし、第1校正ガス収容セル14を介さず、直接、チップ収容セル12に連通可能であってもよい。第2校正ガス収容セル16は、密閉できる空間を形成でき、チップ収容セル12と連通可能であれば、どのような構成であってもよい。また、第2校正ガス収容セル16が、チップ収容セル12及び/又は第1校正ガス収容セル14に隣り合って設けられる場合には、隣り合うセルの間の壁は共通であってもよい。
第2校正ガス収容セル16は、例えば、箱形の形状を有してもよい。第2校正ガス収容セル16は、図3の例では、平行六面体の箱状の形状となっている。第2校正ガス収容セル16内に収容される第2校正ガスの種類等については後述する。
第2校正ガス収容セル16には第2校正ガスが封入され密閉される。なお、図示しないが、第2校正ガス収容セル16には、第2校正ガスを導入するための導入口を有してもよい。第2校正ガス収容セル16の大きさ、材質については、上述のチップ収容セル12と同様であるため説明を省略する。
1.5.セルの配置
図4は、本発明に係るセンサーチップパッケージの幾つかの変形形態の説明図である。図4では、各セルを形成する部材を単純化して線で描いてある。本実施形態のセンサーチップパッケージは、上述のようにチップ収容セル12、第1校正ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16を有するが、これらのセルの配置には、図4に示すようなバリエーションがある。
図4(a)は、上述の本実施形態のセンサーチップパッケージ100の各セルの配置を模式的に示している。すなわち、本実施形態のセンサーチップパッケージ100は、チップ収容セル12、第1校正ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16がこの順に一列に隣接して配置されている。そのため、例えば、後述するニードル142を用いて、各セルを互いに連通させることができる。
図4(b)は、変形形態のセンサーチップパッケージ101を示しており、係るセンサーチップパッケージ101は、第1校正ガス収容セル14、チップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16がこの順に一列に隣接して配置されている。そのため、例えば、後述するニードル142を用いて、各セルを互いに連通させることができる。
図4(c)は、変形形態のセンサーチップパッケージ102を示しており、係るセンサーチップパッケージ101は、第1校正ガス収容セル14、チップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16がこの順に配列されている。センサーチップパッケージ102では、チップ収容セル12と、第1校正ガス収容セル14との間、及び、チップ収容セル12と、第1校正ガス収容セル14との間に、それぞれ、弁18が設けられた流路17が設けられている。係る弁18を開放することにより、流路の両端のセルが互いに連通可能となっている。
ここで、流路17としては、公知の樹脂管、樹脂チューブ、金属管等を用いることができ、材質も上述のセルを校正する部材と同様とすることができる。また、弁18としては、公知のコックやリリーフ弁等を用いることができる。
なお、本実施形態のセンサーチップパッケージは、後述するガス検出装置の装着部に装着されることができるが、正確な位置にセットしたり、係る装着の操作を容易化するために、図示しない位置決め機構を備えてもよい。
1.6.校正ガスの組み合わせ及び封入濃度
第1校正ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16にそれぞれ収容される第1校正ガス及び第2校正ガスについて述べる。
センサーチップ10は、ラマン散乱光を観測できるかぎり、各種のガスを高感度に検出することができる。そのような検出対象となるガス(本明細書では「標的ガス」ということがある。)の種類としては、特に限定されないが、一酸化窒素(NO)、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)等が挙げられる。
一方、センサーチップ10は、例えば、金属微細構造層6を適切に設計することにより、特定の標的ガスに対する感度を高めることができる。すなわち、特定の標的ガスに対する感度を、他のガスに対する感度よりも高くなるように設計することができる。そのため、センサーチップ10の校正を行う際には、標的ガスと同種の校正ガスによって校正されることが望ましい。この場合、第1校正ガスは、標的ガスと同種のガスであることが好ましい。したがって、第1校正ガスとしては、一酸化窒素(NO)、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)等が挙げられる。
第1校正ガス中の標的ガスの濃度は、測定するガス中の標的ガスの濃度付近であることが好ましい。また、第1校正ガス中の標的ガス以外のガスは、標的ガスのラマン散乱光と波長又は波数が重畳しない種類のガスであればよく、標的ガスの種類に応じて選択されるが、例えば、窒素(N)、アルゴン(Ar)等とすることができる。
第2校正ガスは、センサーチップ10に対して接触した第1校正ガス中の標的ガスの濃度を変化させるためのガスである。第2校正ガスは、第1校正ガスと同種の標的ガスを含んでもよいし、窒素(N)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスであってもよい。
第2校正ガスが第1校正ガスと同種の標的ガスを含む場合には、第2校正ガス中の標的ガスの濃度は、チップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通されたときのセ標的ガスの濃度と異なる濃度となるようにする。すなわち、c2が、C1と異なるようにする(記号は、下記参照)。このようにすることで、チップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16が連通された場合に、2つの異なる濃度の標的ガスをセンサーチップ10に接触させることができる。
また、第2校正ガスが不活性ガスである場合には、第2校正ガス中の標的ガスの濃度は0(ゼロ)であるため、チップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16が連通された場合に、チップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通されたときよりも低い濃度の標的ガスをセンサーチップ10に接触させることができ、2つの異なる濃度の標的ガスをセンサーチップ10に接触させることができる。
図5は、センサーチップパッケージ100の各セルを連通させた際の標的ガスの濃度の変化を模式的に示す図である。図5は、(a−1)〜(a−3)、(b−1)〜(b−3)、(c−1)〜(c−3)のそれぞれ順に、各収容セルが連通していない状態、チップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通された状態、及び、チップ収容セル12、第1校正ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16が連通された状態を表している。
図5(a−1)〜(a−3)は、第1校正ガス収容セル14に、標的ガス濃度c1の第1校正ガスが収容され、第2校正ガス収容セル16に、標的ガス濃度c2の第2校正ガスが収容された例を示している(c1<c2)。図5(b−1)〜(b−3)は、第1校正
ガス収容セル14に、標的ガス濃度c1の第1校正ガスが収容され、第2校正ガス収容セル16に、標的ガス濃度c2の第2校正ガスが収容された例を示している(c1=c2)。図5(c−1)〜(c−3)は、第1校正ガス収容セル14に、標的ガス濃度c1の第1校正ガスが収容され、第2校正ガス収容セル16に、標的ガスを含まない不活性ガスが収容された例を示している(c2=0)。
ここで、チップ収容セル12、第1校正ガス収容セル14、及び第2校正ガス収容セル16の容積を、それぞれ、v0、v1、v2とする。なお、v0、v1、v2は、互いに異なっていてもよいし同じであってもよい。
図5において、中段(a−2)、(b−2)、(c−2)に示されたチップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通された状態での、センサーチップ10に接触する標的ガス濃度C1は、いずれも、C1=c1*v1/(v0+v1)となる。そして、下段(a−3)、(b−3)、(c−3)に示されたチップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16が連通された状態での、センサーチップ10に接触する標的ガス濃度C2は、いずれも、C2=(c1*v1+c2*v2)/(v0+v1+v2)となる。なお、図5中に記載した濃度は、v0、v1、v2が同体積である場合の濃度を示している。
図5に示したいずれの場合においても、センサーチップ10は、図中段(a−2)、(b−2)、(c−2)のチップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通された状態と、図下段(a−3)、(b−3)、(c−3)のチップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16が連通された状態と、の2種類の標的ガス濃度に曝されることが理解されよう。
1.7.セルの連通
図6は、本実施形態のセンサーチップパッケージ100の各セルを連通させる様子を示す模式図である。図6は、連通機構141として、ニードル142を用いる例を示している。
連通機構141としては、ニードル142以外には、上述した弁18が挙げられる。しかし、連通機構141は、各セルを連通させることができれば、どのような機構であってもよい。
図6に示す例では、ニードル142は、円柱形の円柱部143の先端が各セルの壁を貫通できる程度に先鋭化された先鋭部144となっている。そのため、ニードル142により穿孔した壁の内部は、気密が保たれるようになっている。ニードル142の形状は、このような態様に限定されないが、本実施形態のセンサーチップパッケージ100の必要に応じて各セルの気密が保たれるように設計される。また、図6に示す例では、ニードル142は、説明のために太く描かれているが、ニードル142の太さは、例えば、穿孔する穴の径や、ガスの拡散の効率、取り扱い易さ等を考慮して適宜に選択される。
また、ニードル142の太さがセルの容積に対して無視できる程度に細ければ、上述のセルの容積(v0、v1、v2)は、補正する必要が無く、また、ニードル142の太さがセルの容積に対して無視できない程度に太ければ、上述のセルの容積(v0、v1、v2)は、これを考慮した値となる。
なお、ニードル142は、センサーチップ10に対して照射する光源の光路、及び、センサーチップ10から放射される光の光路からは外れた位置となるように配置される。図6の例では、説明の便宜上センサーチップ10を配置しているが、以下に示すいずれの状態でも、測定のための光路にはニードル142が存在しないようになっている。
図6(a)は、第1校正ガス収容セル14に、第1校正ガスが収容され、第2校正ガス収容セル16に、第2校正ガスが収容された例を示している。図6(a)は、連通機構141(ニードル142)によって各セルを連通できる状態(例えば、後述のガス検出装置の装着部150に装着された状態)を表している。また、図6(a)では、第2校正ガス収容セル16内の第2校正ガスの標的ガス濃度c2は、第1校正ガス収容セル14内の第1校正ガスの標的ガス濃度c1よりも高くなっている。
図6(b)に示すように、ニードル142をチップ収容セル12側から前進させることによって、チップ収容セル12と第1校正ガス収容セル14の間の壁を貫通する。そして、図6(c)に示すように、チップ収容セル12内にニードル142の先端の先鋭部144がチップ収容セル12内に存在できる位置までニードル142を後退させる。そうするとチップ収容セル12及び第1標的ガス収容セル14との間が連通される。そして第1校正ガス中の標的ガスが第1標的ガス収容セル14からチップ収容セル12へと拡散し、チップ収容セル12及び第1標的ガス収容セル14内で均一な濃度となる。
図6(c)の状態で、センサーチップ10に光源から励起光を照射し、標的ガスに由来するラマン散乱光のSERS強度(ISERS)を測定する。
次に、図6(d)に示すように、ニードル142をチップ収容セル12側から前進させることによって、第1校正ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16の間の壁を貫通する。そして、図6(e)に示すように、チップ収容セル12内にニードル142の先端の先鋭部144がチップ収容セル12内に存在できる位置までニードル142を後退させる。そうするとチップ収容セル12及び第2標的ガス収容セル16との間が連通される。なおこのとき第1校正ガス収容セル14も連通されている。そして第2校正ガス中の標的ガスが第2標的ガス収容セル16からチップ収容セル12へと拡散し、チップ収容セル12、第1標的ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16内で均一な濃度となる。
図6(e)の状態で、センサーチップ10に光源から励起光を照射し、標的ガスに由来するラマン散乱光のSERS強度(ISERS)を測定する。
以上の工程により、センサーチップ10の校正に用いる、2種類の濃度の標的ガスの測定結果が得られる。
次に、図6(f)に示すように、ニードル142を引き抜くと、各セルが環境に開放される。これにより、校正のために用いた標的ガスは、系外に拡散し、測定対象のガスを測定できる状態となる。測定対象となるガスは、図6(f)のようにニードル142を抜いた状態で、センサーチップ10に接触可能となるが、必要に応じて、図6(g)に示すように、チップ収容セル12の壁を取り去るようにして、より接触しやすくしてもよい。また、図示しないガス導入口等によりチップ収容セル12内に測定対象のガスを導入してもよい。
以上のようにすれば、二水準の濃度の標的ガスをセンサーチップ10に容易に接触させることができるので、容易に精度の良好な校正を行うことができる。なお、二水準以上の濃度で校正する場合、濃度の低い方から順に高い方へ測定することが好ましい。そのため、図6の例のように、第1校正ガス中の標的ガスの濃度c1のほうが第2校正ガス中の標的ガスの濃度c2よりも低くすることがより好ましい。
ここでは、チップ収容セル12、第1校正ガス収容セル14及び第2校正ガス収容セル16がこの順で配列されたセンサーチップパッケージ100について例示した。しかし、
図4(b)に示すような、センサーチップパッケージ101(第1校正ガス収容セル14、チップ収容セル12及び第2校正ガス収容セル16がこの順に配列)を用いる場合でも、連通機構141にニードル142を2本設けるなどすることにより、容易に上記測定が実施できることは理解されるであろう。
1.8.校正方法
上述のように、本実施形態では、二水準の濃度でSERS強度を測定することにより、センサーチップ10の校正を行うことができる。より具体的には、縦軸にSERS強度(ISERS)(count)をとり、横軸を対数軸として標的ガスの濃度(ppb)をとったグラフに、二水準の測定結果をプロットする。そしてこれら二点を直線で結び、これを検量線とする。その後、測定対象のガスからのSERS強度を測定し、当該検量線から、測定対象のガス中の標的ガスの濃度を算出すれば、非常に精度のよい結果が得られる。
なお、校正ガス中の標的ガスの二水準の濃度は、測定対象のガス中の標的ガスの濃度に近い方がより好ましい。したがって、測定対象のガス中の標的ガスの濃度を予測できる場合(例えば、呼気中のNOの濃度など)には、予測濃度付近で校正できるように、校正ガス中の標的ガスの濃度を調節することがより好ましい。
1.9.作用効果
本実施形態のセンサーチップパッケージは、小型であり、センサーチップ10が収容されたチップ収容セル12に、第1校正ガス収容セル14から第1校正ガスを容易に導入することができ、第2校正ガス収容セル16から第2校正ガスを容易に導入することができる。これにより校正のための、校正ガス中の標的ガスの濃度を二水準とすることができるので、センサーチップを精度よく校正することができ、標的ガスの測定精度が良好である。また、第1校正ガス中と第2校正ガス中の標的ガスの濃度を二水準の濃度とする必要が無く、製造が容易である。
1.10.その他の実施形態
本発明に係るセンサーチップパッケージは、第2校正ガス収容セル16を有しなくてもよい。図7は、変形実施形態に係るセンサーチップパッケージ103を模式的に示す図である。
センサーチップパッケージ103は、センサーチップ10を収容するチップ収容セル12と、第1校正ガスが封入され、チップ収容セル12と連通可能な第1校正ガス収容セル14と、を含むものであり、上述のセンサーチップパッケージ100から、第2校正ガス収容セル16を除いたものに相当する。したがって、各構成の詳細の説明は省略する。
図7(a)に示すように、センサーチップパッケージ103では、第1校正ガス収容セル14及びチップ収容セル12が隣接して配置されている。そのため、例えば、上述のニードル142を用いて、各セルを互いに連通させることができる。
また、図7(b−1)、(b−2)に示すように、チップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通された状態での、センサーチップ10に接触する標的ガス濃度C1は、いずれも、C1=c1*v1/(v0+v1)となる。なお、簡便のため、図7においては、v0、v1が同体積である場合の濃度の値を示している。
図7の場合においても、センサーチップ10は、上段(b−1)のチップ収容セル12が封止された状態と、下段(b−2)のチップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通された状態と、の2種類の標的ガス濃度に曝されることが理解されよう。
チップ収容セル12が不活性ガス等が導入されて封止された状態で、標的ガスの濃度は、ゼロに近くなる。この場合上記実施形態で述べたような対数軸のプロットは困難となる。しかし、濃度ゼロ付近の微量な濃度範囲では検量線が変化することが分かっており、極微量の濃度範囲では、SERS強度と濃度とは比例関係となることが分かっている。そのため、標的ガス濃度がゼロである場合のSERS強度及び第1校正ガスを用いた一水準の濃度のSERS強度を用いて、縦軸にSERS強度(ISERS)(count)をとり、横軸に対数軸としない標的ガスの濃度(ppb)をとったグラフに、標的ガスの濃度がゼロに近い場合(チップ収容セル12が封じられた状態)におけるSERS強度と、第1校正ガスが拡散した場合(チップ収容セル12及び第1校正ガス収容セル14が連通した状態)におけるSERS強度との、二水準の測定結果をプロットする。そしてこれら二点を直線で結び、これを検量線とする。係る直線は、原点を通る必要はない。その後、測定対象のガスからのSERS強度を測定し、当該検量線から、測定対象のガス中の標的ガスの濃度を算出すれば、精度のよい結果が得られる。
2.センサーチップパッケージアレイ
図8は、本発明の一実施形態に係るセンサーチップパッケージアレイ104の模式図である。センサーチップパッケージアレイ104は、上述のセンサーチップを複数含む。センサーチップパッケージアレイ104は、2個以上であればセンサーチップをいくつ含んでもよい。各センサーチップは、配列されており、ガス分析装置に装着された際に、センサーチップパッケージアレイ104の位置や、連通機構の位置を変更することにより、センサーチップパッケージアレイ104を交換することなく、複数のセンサーチップ10を測定に供することができる。
センサーチップパッケージアレイ104におけるセンサーチップパッケージの配列は、センサーチップ10が測定対象のガスに接触できるように配列されれば、特に限定されない。図8の例では、センサーチップパッケージ100が10個、5行2列に配列されている。そして、各センサーチップパッケージ100のチップ収容セル12側からニードル142を刺すことにより、全てのセンサーチップ10を使用できるようになっている。
このようなセンサーチップパッケージアレイ104によれば、複数のセンサーチップ10を一度に操作、輸送することができる。そのため、例えばガス検出装置に、センサーチップパッケージアレイ104を装着することにより、センサーチップパッケージ100を交換することなく、複数のセンサーチップ10によるガス検出を行うことができる。これにより、ユーザーによるセンサーチップパッケージ100の交換作業の手間を削減することができる。
3.ガス検出装置
図9は、本実施形態に係るガス検出装置200を模式的に示す図である。ガス検出装置200は、例えば、ラマン分光装置であり、以下ガス検出装置200はラマン分光装置であるものとして説明する。ガス検出装置200は、図9に示すように、気体試料保持部110と、検出部120と、制御部130と、検出部120及び制御部130を収容している筐体140と、を含む。気体試料保持部110は、本発明に係るセンサーチップパッケージ又はセンサーチップパッケージアレイを含む。以下では、上述のセンサーチップパッケージ100を含む例について説明する。
気体試料保持部110は、センサーチップパッケージ100と、装着部150と、連通機構141と、センサーチップパッケージ100を覆うカバー112と、吸引流路114と、排出流路116と、を有している。検出部120は、光源210と、レンズ122a,122b,122c,122dと、ハーフミラー124と、光検出器220と、を有している。制御部130は、光検出器220において検出された信号を処理して光検出器2
20の制御をする検出制御部132と、光源210などの電力や電圧を制御する電力制御部134と、を有している。制御部130は、図9に示すように、外部との接続を行うための接続部136と電気的に接続されていてもよい。
図9の例では、上記実施形態で述べたセンサーチップパッケージ100が装着部150に装着されている。またガス検出装置200では、センサーチップパッケージ100に対してニードル142を刺すことにより、各セルを連通させる連通機構141が設けられている。連通機構141は、上記実施形態で述べたように、各セルを連通させるのに適切なタイミングで制御部130によって駆動される。
ガス検出装置200では、排出流路116に設けられている吸引機構117を作動させると、吸引流路114及び排出流路116内が負圧になり、吸引口113から検出対象となる標的ガスを含んだ気体試料が吸引される。吸引口113には除塵フィルター115が設けられており、比較的大きな粉塵や一部の水蒸気などを除去することができる。気体試料は、吸引流路114及び排出流路116を通り、排出口118から排出される。気体試料は、係る経路を通る際に、センサーチップパッケージ100のチップ収容セル12内のセンサーチップ10の金属微細構造体7と接触する。なお、校正のために用いた標的ガス(校正ガス)は、校正後に排出流路116を通じて排出口118から排出されてもよい。
吸引流路114及び排出流路116の形状は、外部からの光がセンサーチップパッケージ100に入射しないような形状である。これにより、ラマン散乱光以外の雑音となる光が入射しないため、信号のS/N比を向上させることができる。吸引流路114、排出流路116を構成する材料は、例えば、光を反射し難いような材料や色である。
吸引流路114及び排出流路116の形状は、気体試料に対する流体抵抗が小さくなるような形状である。これにより、高感度な検出が可能になる。例えば、吸引流路114、排出流路116の形状を、できるだけ角部をなくし滑らかな形状にすることで、角部における気体試料の滞留をなくすことができる。吸引機構117としては、例えば、流路抵抗に応じた静圧、風量のファンモーターやポンプを用いる。
ガス検出装置200では、光源210は、センサーチップパッケージ100に光(例えば波長633nmのレーザー光、励起光)を照射する。光源210としては、例えば、半導体レーザー、気体レーザーを用いることができる。光源210から射出された光は、レンズ122aで集光された後、ハーフミラー124及びレンズ122bを介して、センサーチップパッケージ100に入射する。センサーチップパッケージ100からは、SERS光が放射され、該光は、レンズ122b、ハーフミラー124、及びレンズ122c,122dを介して、光検出器220に至る。すなわち、光検出器220は、センサーチップパッケージ100から放射される光を検出する。SERS光には、光源210からの入射波長と同じ波長のレイリー散乱光が含まれているので、光検出器220のフィルター126によってレイリー散乱光を除去してもよい。レイリー散乱光が除去された光は、ラマン散乱光として、光検出器220の分光器127を介して受光素子128にて受光される。受光素子128としては、例えば、フォトダイオードを用いる。
光検出器220の分光器127は、例えば、ファブリペロー共振を利用したエタロン等で形成されており、通過波長帯域を可変とすることができる。光検出器220の受光素子128によって、標的ガスに特有のラマンスペクトルが得られ、例えば、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータとを照合することで、標的ガスの信号強度を検出することができる。
なお、ガス検出装置200は、センサーチップパッケージ100、光源210、及び光
検出器220を含み、センサーチップパッケージ100に標的ガスを吸着させ、そのラマン散乱光を取得することができれば、上記の例に限定されない。
ガス検出装置200では、校正及び交換が容易なセンサーチップパッケージ100を含む。そのため、ガス検出装置200は、標的ガスの検出及び精度の高い定量(濃度測定)を行うことができる。
本実施形態のガス検出装置200は、センサーチップパッケージ100を装着するため、二水準の既知の濃度の標的ガスによって、センサーチップ10の感度を校正することができる。そして、校正されたセンサーチップパッケージ100そのものにより、交換を行うことなく、気体試料(標的ガスを含む測定対象ガス)中の標的ガスのラマン信号を測定することができる。したがって、センサーチップ10の感度劣化に対する感度校正を非常に容易に行うことができる。
また、感度の校正は、例えば、呼気ガス成分のように、標的ガスのおよその濃度範囲が判明している場合、該当濃度範囲で検量線の式を求めるようにしてもよい。さらに、ガス検出装置200は使用者が測定対象(標的ガス)を選択することにより、適切な検量線が選択されるようにプログラミングされてもよい。
本実施形態に係るガス検出装置200は、装着部150に対してセンサーチップパッケージ100又はセンサーチップパッケージアレイ104を着脱することができる(交換可能である。)。これにより、装着したセンサーチップパッケージ100又はセンサーチップパッケージアレイ104のセンサーチップ10が劣化した際に、新しいセンサーチップパッケージ100又はセンサーチップパッケージアレイ104に交換してガス検出を行うことができる。このようなガス検出装置200は、センサーチップ10を交換できるので、長期間使用することができる。
4.ガス検出方法
本実施形態のガス検出方法は、例えば、上述のガス検出装置200によって実行される。すなわち、本実施形態のガス検出方法は、少なくとも、連通機構141により、チップ収容セル12と、第1校正ガス収容セル14とを連通させ、チップ収容セル12内に第1校正ガスを拡散させる工程と、第1校正ガス中の標的ガスを検出する工程と、標的ガスを含む試料ガスをチップ収容セル12に拡散させる工程と、試料ガス中の標的ガスを検出する工程と、第1校正ガス中の試料ガスの検出結果に基づいて、試料ガス中の試料ガスの検出結果を校正する工程と、を含む。また、本実施形態のガス検出方法は、連通機構141により、チップ収容セル12と、第2校正ガス収容セル16とを連通させ、チップ収容セル12内に第2校正ガスを拡散させる工程を含んでもよい。各工程の具体的な内容については、既に述べたため説明を省略する。
5.実施例
呼気中に含まれる一酸化窒素(FeNO:Fractional exhaled nitric oxide)を測定するセンサーチップの感度校正を行った。FeNOの濃度と喘息による気管の炎症には相関が確認されており、FeNO濃度は喘息の指標として認知されている。健常者、喘息患者のFeNO濃度は大部分が10ppbから100ppbの範囲である(呼気NO測定ハンドブック第2版参照)。
上記実施形態で述べたと同様に、金属微細構造体にアニリン分子膜を形成したセンサーチップを作成した。基板としてガラス基板を用い、基板上に、密着層としてCr層をスパッタ法により形成し、Cr層上に金属層としてAu層をスパッタ法により形成した。Cr層の厚さを5nm以下とし、Au層の厚さを、100nmとした。次に、Au層上に、誘
電体層として、Al層及びSiO層をこの順でスパッタ法により形成した。Al層の厚さを5nm以下とし、SiO層の厚さを、30nmとした。次に、SiO層上に、金属粒子としてAu粒子アイランドを真空蒸着法により形成した。次に、アニリン分子膜を曝露形成させた。このセンサーチップは、GSPPのアイランド構造の金属微細粒子(Au)にアニリン膜を形成したものである。
そして濃度10ppb及び100ppbの濃度の一酸化窒素ガスをボンベから供給してSERS信号を測定した。
図10は、600cm−1のラマン散乱スペクトルのピーク強度(ISERS)を縦軸にとり、横軸を対数軸とし、標的ガス(NO)の濃度cをプロットしたグラフである。図10に示すように、対数グラフ上で良好な直線関係がある(ISERSと、log(c)とが、比例関係にある)ことが判明した。
したがって、上記濃度範囲で二水準以上の既知濃度の校正ガスのISERSを測定し、下記式、
SERS=A[log(c)]+B
に従う検量線(式中、A,Bはいずれも定数)をフィッティングにより求めれば、図11に示すように、測定対象ガス中の標的ガスのラマン散乱スペクトルのピーク強度のISERSの測定値から、測定対象ガス中の標的ガスの精度のよい濃度を算出できることが判明した。
上述した実施形態及び変形形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
例えば、本発明に係るセンサーチップパッケージは、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無などのように、物質の吸着の有無を検出するアフィニティー・センサーなどとして用いることもできる。アフィニティー・センサーは、該センサーに白色光を入射し、波長スペクトルを分光器で測定し、吸着による表面プラズモン共鳴波長のシフト量を検出することで、検出物質のセンサーチップへの吸収を高感度に検出することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…基板、2…金属層、4…誘電体層、6…金属微細構造層、7…金属微細構造、10…センサーチップ、12…チップ収容セル、14…第1校正ガス収容セル、16…第2校正ガス収容セル、17…流路、18…弁、100,101,102,103…センサーチップパッケージ、104…センサーチップパッケージアレイ、110…気体試料保持部、112…カバー、113…吸引口、114…吸引流路、115…除塵フィルター、116…排出流路、117…吸引機構、118…排出口、120…検出部、122a,122b,122c,122d…レンズ、124…ハーフミラー、126…フィルター、127…分光器、128…受光素子、130…制御部、132…検出制御部、134…電力制御部、136…接続部、140…筐体、141…連通機構、142…ニードル、143…円柱部、144…先鋭部、150…装着部、200…ラマン分光装置、210…光源、220…
光検出器

Claims (11)

  1. センサーチップを収容するチップ収容セルと、
    第1校正ガスが封入され、前記チップ収容セルと連通可能な第1校正ガス収容セルと、を含む、センサーチップパッケージ。
  2. 請求項1において、
    第2校正ガスが封入され、前記チップ収容セルと連通可能な第2校正ガス収容セルをさらに含む、センサーチップパッケージ。
  3. 請求項2において、
    前記第1校正ガス及び前記第2校正ガスは、同種の標的ガスを含む、センサーチップパッケージ。
  4. 請求項2において、
    前記第2校正ガスは、不活性ガスである、センサーチップパッケージ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとは、隣接している、センサーチップパッケージ。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとは、弁が設けられた流路で接続された、センサーチップパッケージ。
  7. 請求項1ないし請求項6に記載のセンサーチップパッケージを複数含む、センサーチップパッケージアレイ。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のセンサーチップパッケージ、又は請求項7に記載のセンサーチップパッケージアレイを装着可能な装着部と、
    前記センサーチップに励起光を照射する光源と、
    前記センサーチップから放射される光を検出する検出器と、
    前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとを連通させる連通機構と、
    を備えた、ガス検出装置。
  9. 請求項8において、
    前記センサーチップパッケージ又はセンサーチップパッケージアレイは、交換可能である、ガス検出装置。
  10. 請求項8又は請求項9において、
    前記第1校正ガスと、前記ガス検出装置の検出対象である標的ガスとが同種である、ガス検出装置。
  11. 請求項8ないし請求項10に記載のガス検出装置を用い、
    前記連通機構により、前記チップ収容セルと、前記第1校正ガス収容セルとを連通させ、前記チップ収容セル内に前記第1校正ガスを拡散させる工程と、
    前記第1校正ガス中の標的ガスを検出する工程と、
    前記標的ガスを含む試料ガスを前記チップ収容セルに拡散させる工程と、
    前記試料ガス中の前記標的ガスを検出する工程と、
    前記第1校正ガス中の前記試料ガスの検出結果に基づいて、前記試料ガス中の前記試料
    ガスの検出結果を校正する工程と、
    を含む、ガス検出方法。
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JP2019168357A (ja) * 2018-03-23 2019-10-03 新コスモス電機株式会社 反射構造体および反射構造体を用いた光分析装置
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