JP2015058682A - 感熱転写記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速印画時においても基材と染料層との密着性が高く異常転写が発生せず、かつ、印画における転写感度が高い感熱転写記録媒体を提供する。【解決手段】基材の一方の面に耐熱滑性層が設けられ、該基材の他方の面に下引き層及び染料層が順次形成されており、該下引き層は、金属酸化膜からなることを特徴とする、感熱転写記録媒体。【選択図】図1

Description

本発明は、感熱転写方式のプリンタに使用される感熱転写記録媒体に関するもので、基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に下引き層及び染料層を順次積層形成した感熱転写記録媒体に関する。
一般に、感熱転写記録媒体は、サーマルリボンと呼ばれ、感熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、基材の一方の面に感熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)を設けたものである。ここで感熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
現在、感熱転写方式の中でも昇華転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書等のカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では基材シートの同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けた複数の感熱転写層をもつ感熱転写記録媒体がかなり普及してきている。
そのような状況の中、用途の多様化と普及拡大に伴い、よりプリンタの印画速度の高速化が進むに従って、従来の感熱転写記録媒体では充分な印画濃度が得られないという問題が生じてきた。そこで転写感度を上昇させるべく、感熱転写記録媒体の薄膜化により印画における転写感度の向上を試みることが行われてきた。しかしながら、感熱転写記録媒体の製造時や印画の際に熱や圧力等によりシワが発生したり、場合によっては破断が生じるという問題を抱えている。
また、感熱転写記録媒体の染料層において、樹脂に対する染料の比率(Dye/Binder)を大きくして、印画濃度や印画における転写感度の向上を試みることが行われている。しかしながら、染料を増やすことでコストアップとなるばかりではなく、製造工程における巻き取り状態時に感熱転写記録媒体の耐熱滑性層へ染料の一部が移行し(裏移り)、その後の巻き返し時に、その移行した染料が他の色の染料層、あるいは保護層に再転移し(裏裏移り)、この汚染された層を被転写体へ熱転写すると、指定された色と異なる色相になったり、いわゆる地汚れが生じたりする。
また、感熱転写記録媒体側ではなく、プリンタ側で画像形成時のエネルギーをアップする試みも行われているが、消費電力が増えるばかりではなく、プリンタのサーマルヘッドの寿命を短くする他、染料層と被転写体が融着する、いわゆる異常転写が生じやすくなる。異常転写を防止するためには、基材と染料層との密着性を高める必要があり、その対策として、易接着処理した基材を用いたり、基材上に接着層(下引き層)を設けたりしている。易接着処理には、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等があるが、易接着処理した基材を用いた場合、基材と染料層と密着性は高まるが、基材の入手コストが非常に高く、また充分な印画濃度が得られないという問題がある。
このような問題を解決するために、例えば特許文献1、2では、基材と染料層との間にポリビニルピロリドンと変性ポリビニルピロリドンとを含有する接着層(下引き層)を設けた感熱転写記録媒体が提案されている。
しかしながら、特許文献1、2に提案されている感熱転写記録媒体を用い、昨今の昇華転写方式の高速プリンタにて印画を行ったところ、異常転写は確認されなかったものの、印画における転写感度が低く、充分なレベルにまで至っていなかった。
また、特許文献3には、転写感度不足を解消するために、ポリビニルピロリドン/ポリビニルアルコールとコロイド状無機顔料微粒子とからなる下引き層を設けた感熱転写記録媒体が提案されている。
しかしながら、特許文献3に提案されている感熱転写記録媒体を用い、同様に昇華転写方式の高速プリンタにて印画を行ったところ、印画における転写感度は高く、充分なレベルにまで至っているものの、異常転写が確認された。
このように、従来技術では、異常転写の防止及び高い転写感度を同時に満足する感熱転写記録媒体は見出されていない状況である。
特開2003−312151号公報 特開2005−231354号公報 特開2006−150956号公報
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑み、昨今の昇華転写方式の高速プリンタを用いた高速印画時においても、基材と染料層との密着性が高く異常転写が発生せず、かつ、印画における転写感度が高い感熱転写記録媒体を提供することを目的とするものである。
本発明に係わる感熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層が設けられ、該基材の他方の面に下引き層及び染料層が順次形成されており、該下引き層が、金属酸化膜からなることを特徴とする。
また、本発明に係わる感熱転写記録媒体においては、前記金属酸化膜が、チタンオリゴマー及びチタンアルコキシドを主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係わる感熱転写記録媒体においては、前記金属酸化膜が、チタンオリゴマー、チタンアルコキシド及びアルカノールアミン類を主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係わる感熱転写記録媒体においては、前記金属酸化膜が、チタンオリゴマー、チタンアルコキシド及びグリコール類を主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係わる感熱転写記録媒体においては、前記金属酸化膜が、下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであり、該下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後に残った固形分量で表される、前記下引き層の乾燥後の塗布量が、0.05〜0.30g/mであることが好ましい。
本発明の感熱転写記録媒体は、下引き層に金属酸化膜が用いられているので、昨今の昇華転写方式の高速プリンタを用いた高速印画時においても基材と染料層との密着性が高く異常転写が発生せず、かつ、印画における転写感度が高い。
本発明に基づく実施形態に係る感熱転写記録媒体の側断面図
本発明の一実施例の感熱転写記録媒体は、図1に示すように、基材10の一方の面に、サーマルヘッドとの滑り性を付与する耐熱滑性層40を設け、基材10の他方の面に、下引き層20及び染料層30を順次形成した構成である。
基材10としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が必要とされ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、及びコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で、または組み合わされた複合体として使用可能である。中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材10の厚さは、操作性、加工性を考慮し、2μm以上、50μm以下の範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2μm以上、9μm以下程度のものが好ましい。
次に、耐熱滑性層40は、従来公知のもので対応することができ、例えば、バインダーとなる樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して耐熱滑性層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥して形成することができる。この耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量は、特に限定がないが、0.1g/m以上、2.0g/m以下程度が適当である。
ここで、耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量とは、耐熱滑性層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。また、後述する下引き層20の乾燥後の塗布量及び染料層30の乾燥後の塗布量も、同様に、後述する下引き層形成用塗布液及び染料層形成用塗布液を各々塗布し、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。
耐熱滑性層の一例を挙げると、バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、及びこれらの変性体等を挙げることができる。
機能性添加剤としては、例えば、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
次に、下引き層20には、前記基材10及び後述する染料層30との密着性、及び転写感度の向上が求められる。本発明では、下引き層20に金属酸化膜が用いられる。
このように、下引き層20に金属酸化膜を用いることで基材10及び染料層30との密着性が発現する。これは、金属酸化膜中の活性水素に起因すると考えられる。また、金属酸化膜は染料層30中の染料と相溶せず、さらには樹脂系の膜と比較して熱伝導率に優れているので、転写感度が向上すると考えられる。
金属酸化膜の代表例としては、例えば、Al、SiO、SiO、TiO、ZnO、ZrO等が挙げられる。これらの中でも、Al及びTiOが好ましく、基材10及び染料層30との密着性の観点から、TiOが特に好ましい。
金属酸化膜の形成方法は、一般に気相法(蒸着)と塗布法とに大別される。
蒸着とは、物質を高温にして蒸発させて処理物に吸着させ、その表面上に物質の固体被膜を形成する方法である。蒸着には大まかに、物理的反応を利用した物理蒸着(PVD)と、化学的反応を利用した化学蒸着(CVD)との二種類がある。
物理蒸着では、蒸発させる金属(蒸発源)を加熱して気化させる。その際、蒸発源を気化しやすくするため、真空近くまで減圧する。化学蒸着では、素材となる反応物質を気化させ、これを反応ガスと混合して反応室内に充填する。反応室内で、ヒーターによって熱された処理物にガスが接触すると、その熱平衡反応によって処理物表面に皮膜が形成される。化学蒸着も物理蒸着と同様に真空近くまで減圧して行う。
蒸着は緻密な金属酸化膜を形成することができるが、真空系での精密な制御が必要であり、さらには大掛かりな製造装置を用いるため、コストが高くなる。したがって、本発明に用いる金属酸化膜を形成する際には、塗布法を採用することがより好ましい。
塗布法は、塗布液を塗布し、乾燥して塗膜を形成する方法であり、塗布法の一例として、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法等を挙げることができる。
塗布法によって金属酸化膜を得る方法として、例えば、金属微粒子を有機質バインダー溶液中に分散してなる分散液を基材に塗布し、乾燥して塗膜を形成する方法や、金属アルコキシドを基材に塗布し、乾燥して塗膜を形成する方法がある。ここで、金属微粒子を有機質バインダー溶液中に分散させて分散液を得る方法は、塗膜に所望の特性を付与するために、バインダー溶液中に多量の金属微粒子を添加する必要があり、金属微粒子を多量に添加すると該金属微粒子が強い凝集体を形成するため、塗膜の均一性や塗布液の安定性を著しく損なう恐れがある。したがって、本発明では、塗布法によって金属酸化膜を得る際に、金属アルコキシドを基材に塗布し、乾燥して塗膜を形成する方法を採用することが好ましい。
金属アルコキシドの具体例として、例えばチタンアルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ジイソプロポキシジ−n−ブトキシチタン、ジ−tert−ブトキシジイソプロポキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、テトライソオクトキシチタン、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。
前記以外の金属アルコキシドの具体例として、例えばアルミニウムアルコキシドとしては、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリス(ヘキシルオキシド)、アルミニウムトリス(2−エチルヘキシルオキシド)、アルミニウムトリス(2−メトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2−エトキシエトキシド)、アルミニウムトリス(2−ブトキシエトキシド)等が挙げられる。
これら金属アルコキシドは、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
金属アルコキシドのOR(アルコキシ)基は、活性が高く空気中の水分によって容易に加水分解すると同時に、基材や他の材料とも容易に反応するので、塗布液中ではアルコキシ基を安定に残しておくことが、塗布液を塗布した際の基材や他の材料との密着性を向上させる点で好ましい。なお、金属アルコキシド単体では加水分解し易いため、塗膜形成能や塗布液安定性を向上させるには、金属アルコキシドだけでなく、金属オリゴマーを併用することが好ましい。金属オリゴマーは、金属アルコキシドが縮合することによって得られるものであり、金属アルコキシドを縮合させる方法には特に限定はないが、金属アルコキシドを、アルコール溶液中で水と反応させる方法が挙げられる。
金属アルコキシドと金属オリゴマーとを併用する場合の両者の配合比率には特に限定がないが、質量基準での配合比率が、金属アルコキシド/金属オリゴマー=20/80〜60/40程度であることが好ましい。
さらに、塗布液安定性をより向上させるために、金属アルコキシド及び金属オリゴマーと配位結合錯体を形成する、例えばジメチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類や、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類を、金属アルコキシド及び金属オリゴマーと併用することが好ましい。なお、これらアルカノールアミン類やグリコール類は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
金属アルコキシド及び金属オリゴマーと、アルカノールアミン類やグリコール類とを併用する場合の両者の配合比率には特に限定がないが、質量基準での配合比率が、金属アルコキシド及び金属オリゴマーの総量/アルカノールアミン類やグリコール類の総量=100/30〜100/150程度であることが好ましい。
以上より、本発明においては、金属酸化膜が、チタンオリゴマー及びチタンアルコキシドを主成分として含む下引き層形成用塗布液、又は、チタンオリゴマー、チタンアルコキシド及びアルカノールアミン類を主成分として含む下引き層形成用塗布液、又は、チタンオリゴマー、チタンアルコキシド及びグリコール類を主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることが、基材と染料層との密着性がより高く異常転写が発生せず、かつ、印画における転写感度がより高いという点から特に好ましい。
なお、本明細書でいう主成分とは、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の成分が含まれていてもよい旨を表し、形成された下引き層中に50質量%を超える割合で含まれる成分のことであり、好ましくは80質量%以上の割合で含まれる成分のことである。
下引き層20の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.05g/m以上、0.30g/m以下の範囲内であることが好ましく、さらには0.10g/m以上、0.25g/m以下の範囲内であることがより好ましい。0.05g/m未満では、染料層30を積層した際の下引き層20の劣化により、高速印画時における転写感度が不足し、基材10あるいは染料層30との密着性が低下する恐れがある。一方、0.30g/m超では、感熱転写記録媒体自体の感度は変わらず、印画濃度は飽和する。よってコスト面から、0.30g/m以下であることが好ましい。
次に、染料層30は、従来公知のもので対応することができ、例えば、熱移行性染料、バインダー、溶剤などを配合して染料層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成される。なお、染料層は、1色の単一層で構成することもでき、色相の異なる染料を含む複数の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成することもできる。
前記熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料である。例えば、イエロー成分としては、C.I.ソルベントイエロー56、16、30、93、33、あるいはC.I.ディスパースイエロー201、231、33等を挙げることができる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースバイオレット31、26、C.I.ディスパースレッド60、あるいはC.I.ソルベントレッド27、19等を挙げることができる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、257、24、あるいはC.I.ソルベントブルー63、36、266等を挙げることができる。なお、墨の染料としては、前記各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
染料層30に含まれるバインダーは、従来公知の樹脂バインダーをいずれも使用することができ、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
ここで、染料層30を形成する際の熱移行性染料とバインダーとの質量基準での配合比率は、熱移行性染料/バインダー=10/100〜300/100であることが好ましい。これは、熱移行性染料/バインダーの配合比率が10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不充分となり、良好な熱転写画像が得られず、また、この配合比率が300/100を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、得られる感熱転写記録媒体は、保存安定性が低下し、染料が析出し易くなる恐れがあるためである。
また、染料層30には、前記性能を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。
染料層30の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、例えば1.0g/m程度が適当である。
なお、耐熱滑性層40及び染料層30は、いずれも、各々耐熱滑性層形成用塗布液及び染料層形成用塗布液を、従来公知の塗布方法にて塗布し、乾燥することで形成可能である。塗布方法の一例として、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
以下に、本発明の各実施例及び各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準であり。また、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、厚さ4.5μmの表面未処理のポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に、下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.5g/mになるように塗布し、100℃で1分間乾燥することで耐熱滑性層付き基材を得た。
<耐熱滑性層形成用塗布液>
シリコン変性アクリル樹脂(東亜合成(株)製US−350)50.0部
メチルエチルケトン 50.0部
<チタンオリゴマーの調製>
テトライソプロポキシチタン14.2g(0.05モル)をイソプロパノール25.0gに溶解させた後、水1.8g(0.10モル)とイソプロパノール25.0gとの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌してチタンオリゴマーを得た。
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材の未処理面に、化学蒸着法により、塗布量が0.15g/mになるようにAlを形成し、下引き層とした。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/mになるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
<染料層形成用塗布液>
C.I.ソルベントブルー63 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
(実施例2)
耐熱滑性層付き基材の未処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/mになるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、実施例1と同様にして染料層を形成し、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−1>
アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート 5.0部
純水 20.0部
イソプロピルアルコール 75.0部
(実施例3)
実施例2で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−2にて形成した以外は、実施例2と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−2>
テトライソプロポキシチタン 3.0部
チタンオリゴマー 7.0部
純水 20.0部
イソプロピルアルコール 70.0部
(実施例4)
実施例2で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−3にて形成した以外は、実施例2と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−3>
テトライソプロポキシチタン 3.0部
チタンオリゴマー 7.0部
ジエタノールアミン 5.0部
純水 15.0部
イソプロピルアルコール 70.0部
(実施例5)
実施例2で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−4にて形成した以外は、実施例2と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−4>
テトライソプロポキシチタン 3.0部
チタンオリゴマー 7.0部
プロピレングリコール 7.0部
純水 13.0部
イソプロピルアルコール 70.0部
(実施例6)
実施例2で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−5にて形成した以外は、実施例2と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−5>
テトライソプロポキシチタン 3.0部
チタンオリゴマー 7.0部
ジエタノールアミン 5.0部
プロピレングリコール 7.0部
純水 18.0部
イソプロピルアルコール 60.0部
(実施例7)
実施例3で作製した感熱転写記録媒体において、乾燥後の塗布量が0.03g/mになるように下引き層を形成した以外は、実施例3と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
(実施例8)
実施例3で作製した感熱転写記録媒体において、乾燥後の塗布量が0.35g/mになるように下引き層を形成した以外は、実施例3と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
(比較例1)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
(比較例2)
実施例2で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−6にて形成した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−6>
ポリビニルピロリドン 5.0部
純水 47.5部
イソプロピルアルコール 47.5部
(比較例3)
実施例2で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−7にて形成した以外は、実施例2と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層形成用塗布液−7>
アルミナゾル 5.0部
ポリビニルピロリドン 5.0部
純水 45.0部
イソプロピルアルコール 45.0部
<被転写体の作製>
基材として、厚さ188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/mになるように塗布し、乾燥することで、感熱転写用の被転写体を作製した。
<受像層形成用塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
<常温における染料層の密着性評価>
実施例1〜8、比較例1〜3の感熱転写記録媒体について、常温にて保存した感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより、常温における染料層の密着性を評価した。その結果を表1に示す。
密着性評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
<印画評価>
実施例1〜8、比較例1〜3の感熱転写記録媒体について、常温にて養生した感熱転写記録媒体と被転写体とを使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を測定して印画評価を行った。その結果を表1に示す。なお、最高反射濃度はX−Rite社製の分光濃度計「X−Rite528」にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃、50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
<異常転写評価>
実施例1〜8、比較例1〜3の感熱転写記録媒体について、常温にて養生した感熱転写記録媒体、及び、40℃、90%RH環境下にて96時間保存後、常温にて24時間養生した感熱転写記録媒体と、被転写体とを使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。その結果を表1に示す。
異常転写評価は、以下の基準にて行った。
◎:被転写体への異常転写が、全く認められない
○:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
△:被転写体への異常転写が、僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
なお、○以上であれば実用上問題ないレベルである。
Figure 2015058682
表1に示す結果から、下引き層として金属酸化膜を設けた実施例1〜8の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例1の感熱転写記録媒体、及び金属酸化膜ではない従来の下引き層が設けられた比較例2、3の感熱転写記録媒体と比較して、高速印画時においても基材と染料層との密着性が高く異常転写が発生せず、かつ、印画における転写感度が高いことがわかった。
実施例2と実施例3との比較から、金属酸化膜がTiOの場合は、Alの場合よりも基材と染料層との密着性がより高く、常温養生及び40℃、90%RH環境で96時間保存いずれにおいても、異常転写評価がより優れていることがわかった。
塗布液安定性をより向上させるために、グリコール類及び/又はアルカノールアミン類を添加した下引き層形成用塗布液を用いた実施例4〜6の感熱転写記録媒体は、実施例3の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性がほぼ同等に優れていることが確認された。
実施例7の感熱転写記録媒体は、下引き層の乾燥後の塗布量が0.05g/m未満と少し少ないので、実施例3の感熱転写記録媒体と比較すると、若干、転写感度の低下及び密着性の低下が確認された。
実施例8の感熱転写記録媒体は、下引き層の乾燥後の塗布量が0.30g/mを超えて少し多いが、実施例3の感熱転写記録媒体と比較すると、転写感度及び密着性はほぼ同等であることがわかった。
本発明により得られる感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。
10 基材
20 下引き層
30 染料層
40 耐熱滑性層

Claims (5)

  1. 基材の一方の面に耐熱滑性層が設けられ、該基材の他方の面に下引き層及び染料層が順次形成されており、
    該下引き層は、金属酸化膜からなることを特徴とする、感熱転写記録媒体。
  2. 前記金属酸化膜は、チタンオリゴマー及びチタンアルコキシドを主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
  3. 前記金属酸化膜は、チタンオリゴマー、チタンアルコキシド及びアルカノールアミン類を主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
  4. 前記金属酸化膜は、チタンオリゴマー、チタンアルコキシド及びグリコール類を主成分として含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
  5. 前記金属酸化膜は、下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して形成されたものであり、
    該下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後に残った固形分量で表される、前記下引き層の乾燥後の塗布量は、0.05〜0.30g/mであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の感熱転写記録媒体。
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