JP2015058608A - ポリアミド樹脂を含有する成形品 - Google Patents

ポリアミド樹脂を含有する成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリアミド樹脂を含有する複数の一次成形体を接合した成形品であって、一次成形体間の溶着強度に優れる成形品を提供する。【解決手段】溶着用樹脂収容部を有する複数の一次成形体が、前記溶着用樹脂収容部に充填された溶着用樹脂により接合された成形品であって、前記一次成形体が、全ジアミン単位中、脂肪族ジアミン単位を50〜100モル%、ならびに全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を50〜100モル%含有し、かつ融点が250〜340℃であるポリアミド樹脂(A)を含有するものであり、前記一次成形体の溶着用樹脂収容部の肉厚が0.75〜5mmであり、前記成形品の接合部における、接合方向および前記一次成形体の肉厚方向に沿った断面において、溶着用樹脂充填部の面積が9〜15mm2である、成形品。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリアミド樹脂を含有する複数の一次成形体を接合した成形品に関する。
成形品の中でも自動車部品は、射出成形、押出成形、ブロー成形等、様々な成形方法によって製造される。自動車部品の中で、中空体の部品は数多く、中空成形品を得る方法としては、溶着法や低融点合金を使用した溶融中子法が挙げられる。溶着法としては、2部品以上の成形品を接合面で振動させて発生する摩擦熱によって成形品を溶着する振動溶着法や、加熱した熱板を溶着面に接近させて樹脂の一部を溶融させて成形品を溶着する熱板溶着法が挙げられ、その他、超音波溶着法やレーザー溶着法などがある。
溶融中子法は、複雑な形状の中空成形品を作る場合に適しており、接合部分がないために強度の点では優れているが、一品ごとに低融点合金を完全に除去しなければならないため、生産性の点で課題がある。振動溶着法は、溶融中子法に比べて生産性に優れるが、成形品の吸水状態やそりの影響を受けやすく、安定した溶着強度を得るには生産面での管理が複雑である。熱板溶着法は、比較的簡便な装置で溶着が可能であるが、熱劣化しやすい材料や結晶化度速度が速い材料では十分な溶着強度が得られないという課題がある。
これに対して、例えば特許文献1に記載された、ダイスライドインジェクション(DSI)法、ダイロータリーインジェクション(DRI)法等の射出溶着法が開発されている。これらは、2つ以上の成形体を金型内で溶着する方法で、一次射出で中空成形品の半分ずつ(2つの一次成形体)を一度に成形した後、金型を開き、金型コアをスライドまたは回転させることにより中空成形品の半分ずつを互いに合わせ、金型を閉じ、その後、二次射出で2つの一次成形体の接合部に樹脂を充填し、一次成形体を互いに溶着させることより中空成形品を得る方法である。この方法は、一次成形体を型から取り出す必要が無いため、周囲の環境の影響も受けにくく、振動溶着法や熱板溶着法に比べて生産性に優れている。
一方、自動車分野では軽量化による燃費改善のために金属部品の樹脂化が積極的に進められているため、樹脂材料に要求される機能、性能は高度化している。スーパーエンプラと呼ばれる高機能材料を自動車部材として使用する例も増えているが、加工が難しいという面もあり、DSI法への適応事例も少ない。そこで、DSI法やDRI法に適用可能な樹脂材料について、耐熱性、耐薬品性等に優れ、一次成形体同士の溶着が可能である材料として、特許文献2〜4ではポリアミド樹脂を使用することが提案されている。また、特許文献5では、熱可塑性樹脂製の成形品をDSI法において製造する際に、溶着強度を高めるために、接合部の断面積と溶着部の断面積の比についての検討がなされている。しかしながら、これらの技術には、ポリアミド樹脂製の一次成形体間の溶着強度に改善の余地があった。
特開平4−91914号公報 特開2000−061983号公報 特開2002−030214号公報 特開2007−92004号公報 特開平11−235734号公報
本発明は、ポリアミド樹脂を含有する複数の一次成形体を接合した成形品であって、一次成形体間の溶着強度に優れる成形品を提供することを目的とする。
本発明は
〔1〕溶着用樹脂収容部を有する複数の一次成形体が、前記溶着用樹脂収容部に充填された溶着用樹脂により接合された成形品であって、
前記一次成形体が、全ジアミン単位中、脂肪族ジアミン単位を50〜100モル%、ならびに全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を50〜100モル%含有し、かつ融点が250〜340℃であるポリアミド樹脂(A)を含有するものであり、
前記一次成形体の溶着用樹脂収容部の肉厚が0.75〜5mmであり、
前記成形品の接合部における、接合方向および前記一次成形体の肉厚方向に沿った断面において、溶着用樹脂充填部の面積が9〜15mm2である、成形品;
〔2〕前記脂肪族ジアミン単位が、炭素数が6〜13の脂肪族ジアミン単位である、上記〔1〕の成形品;
〔3〕前記脂肪族ジアミン単位が、1,6−ヘキサンジアミン単位、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン単位、1,9−ノナンジアミン単位、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位および1,10−デカンジアミン単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記〔2〕の成形品;
〔4〕前記脂肪族ジアミン単位が分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかの成形品;
〔5〕前記分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位が、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である、上記〔4〕の成形品;
〔6〕前記芳香族ジカルボン酸単位がテレフタル酸単位である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかの成形品;
〔7〕前記脂環式ジカルボン酸単位が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかの成形品;
〔8〕前記ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー単位として、さらにラクタム単位および/またはアミノカルボン酸単位を含有する、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかの成形品;
〔9〕前記一次成形体が、前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、無機充填剤(B)を20〜150質量部さらに含有する、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかの成形品;
〔10〕前記無機充填剤(B)が、ガラス繊維および/または炭素繊維である、上記〔9〕の成形品;
〔11〕前記成形品が中空体であり、前記溶着用樹脂充填部が中空体の周囲方向に沿って略一周して形成されている、上記〔1〕〜〔10〕のいずれかの成形品;
〔12〕射出溶着法により製造されたものである、上記〔1〕〜〔11〕のいずれかの成形品;
〔13〕前記成形品が、自動車のエンジン冷却系部品である、上記〔1〕〜〔12〕のいずれかの成形品;
〔14〕前記成形品が、自動車のエンジン吸気系部品である、上記〔1〕〜〔12〕のいずれかの成形品;および、
〔15〕前記成形品が、自動車の燃料系部品である、上記〔1〕〜〔12〕のいずれかの成形品;
に関する。
本発明によれば、ポリアミド樹脂を含有する複数の一次成形体を接合した成形品であって、一次成形体間の溶着強度に優れる成形品が提供される。
本発明の成形品の一次成形体間の接合部の一例の断面図である。 本発明の成形品の一次成形体間の接合部の別の例の断面図である。
本発明は、溶着用樹脂収容部を有する複数の一次成形体が、前記溶着用樹脂収容部に充填された溶着用樹脂により接合された成形品であって、
前記一次成形体が、全ジアミン単位中、脂肪族ジアミン単位を50〜100モル%、ならびに全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を50〜100モル%含有し、かつ融点が250〜340℃であるポリアミド樹脂(A)を含有するものであり、
前記一次成形体の溶着用樹脂収容部の肉厚が0.75〜5mmであり、
前記成形品の接合部における、接合方向および前記一次成形体の肉厚方向に沿った断面において、溶着用樹脂充填部の面積が9〜15mm2であることを特徴とする。
一次成形体のポリアミド樹脂材料として、後述するポリアミド樹脂(A)を使用し、かつ一次成形体の溶着用樹脂収容部の肉厚を限定し、かつ溶着用樹脂充填部の断面積を限定するという3つの特徴の組み合わせにより、耐熱性、耐薬品性等に優れ、かつ、一次成形体間の溶着強度に優れた成形品が得られる。
本発明の一次成形体は、全ジアミン単位中、脂肪族ジアミン単位を少なくとも50〜100モル%含有し、全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を50〜100モル%含有し、融点が250〜340℃であるポリアミド樹脂(A)を含む。
ポリアミド樹脂(A)を構成する脂肪族ジアミン単位としては、炭素数が6〜13の脂肪族ジアミン単位が好ましく、例としては、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、2,4−ジメチルオクタンジアミン、5−メチルノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン等から誘導される単位が挙げられる。上記の脂肪族ジアミン単位は1種単独で含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。上記の中でも、1,6−ヘキサンジアミン単位、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン単位、1,9−ノナンジアミン単位、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位および1,10−デカンジアミン単位からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
耐薬品性の観点から、脂肪族ジアミン単位としては、炭素数が8〜13の脂肪族ジアミン単位であることがより好ましく、炭素数が9または10の脂肪族ジアミン単位であることがさらに好ましく、1,9−ノナンジアミン単位、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位および1,10−デカンジアミン単位からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが最も好ましい。
本発明の成形品は、後述のように好適には射出溶着法により製造される。射出溶着法とは、二次射出された溶着用樹脂(二次成形材料)の保有する熱エネルギーによって一次成形体表面を溶融させ、一次成形体と溶着用樹脂を溶着させる方法である。従って、一次成形体に融解熱量が少ない結晶性樹脂を用いた場合には、得られる成形品の溶着強度に特に優れる。よって、ポリアミド樹脂(A)の融解熱量を少なくし、より高い溶着強度の成形品を得る観点から、脂肪族ジアミン単位としては、分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位であることが好ましく、例として、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン、5−メチルノナンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2,4−ジメチルオクタンジアミン等から誘導される単位が挙げられる。中でも、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含有する場合には、融解熱量が少ないながらも、耐熱性に優れるポリアミド樹脂(A)となるため好ましい。分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位の好ましい含有量は全ジアミン単位中、50〜95モル%であり、さらに好ましい含有量は50〜85モル%である。分岐脂肪鎖を含む脂肪族ジアミン単位を上記範囲とすることで、溶着強度の高い成形品が得られる。
ポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン単位は全ジアミン単位中、脂肪族ジアミン単位を50〜100モル%含有することが必要である。脂肪族ジアミン単位のより好ましい含有量は60〜100モル%であり、さらに好ましい含有量は70〜100モル%である。脂肪族ジアミン単位を上記範囲とすることで、耐熱性の高いポリアミド樹脂(A)が得られる。
ポリアミド樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で脂肪族ジアミン単位以外のジアミン単位を含有させてもよい。そのようなジアミン単位としては、例えば1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミンから誘導される単位;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)を構成する芳香族ジカルボン酸単位としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等から誘導される単位が挙げられ、中でもテレフタル酸単位が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)を構成する脂環式ジカルボン酸単位としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などから誘導される単位が挙げられ、中でも1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位が好ましい。ポリアミド樹脂(A)は、上記のジカルボン酸単位を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
ポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸単位は全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を50〜100モル%含有することが必要である。芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位のより好ましい含有量は60〜100モル%であり、さらに好ましい含有量は70〜100モル%である。芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を上記範囲とすることで、耐熱性の高いポリアミド樹脂(A)が得られる。
ポリアミド樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を含有してもよい。そのようなジカルボン酸単位としては、例えばシュウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)は、モノマー単位としてさらにラクタム単位および/またはアミノカルボン酸単位を含有していてもよい。ラクタム単位としてはε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等から誘導される単位が挙げられ、アミノカルボン酸単位としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等から誘導される単位が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)は、その分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。末端封止率が10%以上のポリアミド樹脂(A)を用いると、溶着強度のより高い成形品が得られる。
ここで、末端封止率は、ポリアミド樹脂(A)に存在する末端のカルボキシル基、末端のアミノ基および末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、以下に示す数式(1)に従って求めることができる。各末端基の数は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値に基づいて求めることができる。なお、数式(1)中、Xは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい。)を表し、Yは封止されずに残った末端カルボキシル基および封止されずに残った末端アミノ基の合計数を表す。
末端封止率(%)=[(X−Y)/X]×100 (1)
ポリアミド樹脂(A)の末端を封止するための末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの観点からモノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの観点からモノカルボン酸がより好ましい。その他、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等を使用することもできる。
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物等が挙げられ、中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物等が挙げられ、中でも、反応性、高沸点、封止末端の安定性および価格等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、ジアミンとジカルボン酸を原料として、通常知られている任意の方法、例えば酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法または界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法等の方法により製造することができる。
ポリアミド樹脂(A)の好適な製造方法としては、例えば最初にジカルボン酸成分と、ジアミン成分と、触媒と、必要に応じて末端封止剤とを一括して添加してナイロン塩を製造した後、200〜250℃の温度において加熱重合して、濃硫酸中の試料濃度が0.2g/dLの30℃における固有粘度(ηinh)が0.1〜0.6dL/gであるプレポリマーとし、さらに固相重合するか、あるいは溶融押出機を用いて重合させる方法が挙げられる。ここで、プレポリマーのηinhが0.1〜0.6dL/gの範囲内であると、後の重合の段階においてカルボキシル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なく、さらに分子量分布の小さな、各種物性や成形性に優れたポリアミド樹脂(A)が得られる。
なお、重合の最終段階を固相重合により行う場合、減圧下または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、重合温度が200〜280℃の範囲内であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色やゲル化を有効に抑制することができる。重合の最終段階を溶融押出機により行う場合の重合温度としては、370℃以下であることが好ましい。かかる条件で重合すると、ポリアミド樹脂(A)の分解がほとんど起こらず、劣化の無いポリアミド樹脂(A)が得られる。
ポリアミド樹脂(A)の製造に際し、前記の末端封止剤の他に、例えば触媒として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩またはエステルを添加することができる。上記の塩またはエステルとしては、例えばリン酸、亜リン酸または次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属との塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等のエステルが挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)は、濃硫酸中の試料濃度が0.2g/dLの30℃で測定したηinhが0.4〜3.0dL/gの範囲内であることが好ましく、0.5〜2.0dL/gの範囲内であることがより好ましく、0.6〜1.8dL/gの範囲内であることがさらに好ましい。ηinhが上記の範囲内のものを使用すると、耐熱性が特に優れた成形品を与えるポリアミド樹脂(A)が得られる。
一次成形体は、成形品の機械的強度を高めるために、無機充填剤(B)をさらに含有することが好ましく、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、無機充填剤(B)を20〜150質量部含有することがより好ましく、20〜100質量部含有することがさらに好ましい。無機充填剤(B)が20質量部よりも少ないと成形品の機械的強度が十分でなくなるおそれがあり、150質量部よりも多くなると、ポリアミド樹脂組成物の流動性が低下し、一次成形体間の溶着強度が低下するおそれがある。
無機充填剤(B)としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイト等が挙げられる。中でも、機械的強度をより一層向上させることができる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウムおよびクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ガラス繊維および/または炭素繊維がより好ましい。
ガラス繊維や炭素繊維としては、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、および長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。
ガラス繊維や炭素繊維は、優れた機械的強度をポリアミド樹脂組成物および成形品に付与できる観点から、ポリアミド樹脂組成物中での数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、且つ重量平均繊維長(l)と数平均繊維径(d)とのアスペクト比(l/d)が10〜100であることが好ましい。
また、板状成形品の反りを低減させ、耐熱性、靭性、低吸水性および耐熱エージング性を向上させる観点から、ガラス繊維および/または炭素繊維の扁平率は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.5〜10.0、さらに好ましくは2.5〜10.0、さらにより好ましくは3.1〜6.0である。扁平率が上記範囲内の場合、他の成分との混合、混練や成形などの処理の際に破砕されてしまうことを効果的に防止でき、成形品にとって所望の効果が十分得られる。なお、本明細書において「扁平率」とは、当該繊維の断面長径D2および断面短径D1で表わされるD2/D1の値のことをいう(真円状は、扁平率が約1となる。)。扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維の太さは、当該繊維の断面短径D1が0.5〜25μmおよび断面長径D2が1.25〜250μmであることが好ましい。D1およびD2が上記範囲内の場合、繊維の紡糸の困難性を有効に回避でき、且つポリアミド樹脂(A)との接触面積を減少させることなく成形品の強度を向上させることができ得る。より好ましくは、断面短径D1が3〜25μmであり、且つ扁平率が3より大きい。
これらの扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維は、例えば特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報などに記載の方法を用いて製造することができる。特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、当該底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、または単数若しくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップのいずれかを使用して製造された扁平率が1.5以上のガラス繊維が好ましい。これらの繊維は、繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を経て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
上記のガラス繊維や炭素繊維を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
一次成形体には、ポリアミド樹脂(A)および任意の無機充填剤(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて結晶核剤、銅系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、着色剤、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤等の他の成分を含有させてもよい。
本発明の一次成形体の成形に用いられる材料の製造法については特に制限はなく、成形に用いられる当該材料がポリアミド樹脂(A)と他の任意成分の混合物であった場合には、これらを均一に混合させ得る方法であればよく、通常溶融混練する方法が採用される。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができ、溶融混練条件などは特に限定されないが、例えばポリアミド樹脂(A)の融点よりも30〜50℃高い温度範囲で1〜30分間混練することにより得ることができる。
本発明において、溶着用樹脂は、一次成形体の材料と溶着可能な熱可塑性樹脂であれば特に制限はないが、一次成形体間の溶着強度を高めるためにポリアミド樹脂(A)またはポリアミド樹脂(A)と無機充填剤(B)を含有するポリアミド樹脂組成物が好ましく、一次成形体の材料として用いられたポリアミド樹脂(A)と同じポリアミド樹脂であることがより好ましい。
一次成形体間の溶着強度には、溶着部の形状が大きく影響する。以下、本発明の成形品の一次成形体間の接合部について図面を用いて説明する。
図1および2に、具体例として、本発明の成形品の一次成形体間の接合部の断面図を示す。
図1の例では、接合部において各一次成形体が、2つの壁部を有することによって、溶着用樹脂収容部1が形成されている。2つの一次成形体の溶着用樹脂収容部1が組み合わさって、1つの空洞を形成し、当該空洞に、溶着用樹脂が充填されて溶着用樹脂充填部2が形成されている。図1の例では、溶着用樹脂は、成形品の内部に取り込まれる。
図2の例では、接合部において各一次成形体が、左側に1つの壁部を有することによって、溶着用樹脂収容部1が形成されている。2つの一次成形体の溶着用樹脂収容部1が組み合わさって、1つの凹部を形成し、当該凹部に、溶着用樹脂が充填されて溶着用樹脂充填部2が形成されている。図2の例では、溶着用樹脂の3つの面が一次成形体1に接触し、残り1つの面が露出している。
なお、本発明の成形品の一次成形体間の接合部の構成は上記に限られない。図1および2において、各一次成形体は、接合部まで曲線を描いた形状を有していてもよい。溶着用樹脂充填部2の断面形状は、四角形に限られず、四角形以外の多角形、円形、半円形等の形状であってもよい。
図1および2において、一次成形体の接合方向は矢印Xにより示される方向である。接合部における一次成形体の肉厚方向は矢印Yにより示される方向である。接合部の断面において接合方向Xおよび肉厚方向Yは直交する。一次成形体の溶着用樹脂収容部1の肉厚は、溶着用樹脂を収容するために一次成形体に設けられた部分(例えば上記の壁部)であり、Zで表される長さである。
本発明において、溶着用樹脂充填部2の面積(断面積)は、9〜15cm2であり、好ましくは10〜15cm2である。溶着用樹脂充填部2の面積が9cm2よりも小さいと一次成形体の表面を溶着するための溶着用樹脂(二次射出材料)の熱エネルギーが不足するため溶着強度が低くなる。溶着部断面積が15cm2よりも大きいと成形品のサイズが大きくなり、成形品の設計自由度の点で好ましくない。
さらに、一次成形体の溶着用樹脂収容部1の肉厚Zも溶着強度を高めるために重要な因子である。本発明では一次成形体の溶着用樹脂収容部1の肉厚Zが0.75〜5mmであり、好ましくは1〜3mmである。肉厚Zが0.75mmよりも小さいと、溶着用樹脂の射出(二次射出)の際に樹脂漏れを起こすことがある。肉厚Zが5mmよりも大きいと、成形品のサイズが大きくなり成形品の設計自由度が制限される。図1のように溶着用樹脂が成形品の内部に取り込まれる場合、一次成形体の溶着用樹脂収容部1は2つの壁部を有するが、当該2つの壁部の厚さ(肉厚Z)は、上記範囲内にある限り異なっていてもよい。また、上記範囲内にある限り、溶着用樹脂収容部を形成する壁部の厚さ(肉厚Z)は、一定でなくてもよい。
また、図1および2では、接合部の2つの一次成形体が接触する面において、一方の一次成形体に凸部を設け、他方の一次成形体に凹部を設けて篏合可能に構成されているが、一次成形体は、このような凹凸を有さないものであってもよい。
本発明の成形品の好ましい形態は中空体である。このとき、前記溶着用樹脂充填部2が、中空体の周囲方向に沿って略一周して形成されていることが好ましい。すなわち、溶着用樹脂が溶着用樹脂収容部1に充填されて形成された接合部が、中空体の周囲方向に沿って略一周して形成されていることが好ましい。
一次成形体の溶着用樹脂収容部1に沿って溶着用樹脂を二次射出する場合には、射出された樹脂の流動末端のウエルド部では、ショートショットやガス抜き不良が起こるおそれがあり、その結果、溶着強度の低下が起こり易い。これを防止するために、流動末端部近傍にリブを設けてもよい。リブを設けると、成形品の溶着強度を高めることができる。
本発明の成形品は、2つの一次成形体が接合されて構成されていてもよいし、3つ以上の一次成形体が接合されて構成されていてもよい。このとき、各一次成形体の形状は、異なっていてもよいし同一であってもよい。
本発明の成形品は、好適には射出溶着法により製造することができる。射出溶着法としては、DSI法、DRI法等が挙げられる。DSI法あるいはDRI法とは、2つ以上の成形品を金型内で溶着する方法であり、例えば以下のようにして行われる。一次射出で成形品(典型的には中空成形品)の複数の一次成形体を一度に成形した後、金型を開き、金型コアをスライドあるいは回転させることにより複数の一次成形体を互いに合わせ、金型を閉じる。その後、高温の溶着用樹脂を一次成形体の接合部の溶着用樹脂収容部1に射出(二次射出)し、溶着用樹脂収容部1に高温の溶着用樹脂を充填することで溶着用樹脂の保有する熱エネルギーによって一次成形体の表面を溶融させ、当該表面において一次成形体と溶着用樹脂が一体化して、一次成形体同士が接合される。
一次射出する際の一次成形体の材料の温度としては、通常、ポリアミド樹脂(A)の融点〜融点+100℃以内、好ましくは融点〜融点+80℃以内である。融点よりも過度に高い温度では、ポリアミド樹脂(A)が劣化し、一次成形体間の溶着強度が低下するおそれがある。金型温度は、通常、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度〜ガラス転移温度+80℃以内である。ガラス転移温度よりも過度に高い温度では、金型からの離型不良が起こり、一次成形体が変形してしまうおそれがある。ガラス転移温度よりも低い温度では、ポリアミド樹脂(A)の結晶化が十分に進まないため、一次成形体の機械的強度が低下する。
二次射出される溶着用樹脂の温度は、通常、使用する熱可塑性樹脂の融点〜融点+100℃以内、好ましくは融点〜融点+80℃以内である。融点よりも過度に高い温度では樹脂が劣化し、溶着強度が低下するおそれがある。なお、溶着用樹脂の温度は、一次射出材料の樹脂温度と同じでも構わないが、溶着用樹脂の温度を高く設定すると一次成形体間の溶着強度が高くなる。
本発明で得られる成形品は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、さらに高い溶着強度を有する。本発明の成形品は、電気・電子用、自動車用、産業資材用、工業材料用、日用および家庭品用等の用途において使用可能であるが、特に自動車用部品として好適に使用できる。自動車用部品としては、自動車エンジン部品、特にラジエータータンク部品、ラジエーター液リザーブタンク、ウォーターポンプ、ウォーターインレットパイプ、ウォーターアウトレットパイプ、ウォーターポンプハウジング、サーモスタットハウジング等の自動車エンジンルーム内で冷却水との接触下で使用されるエンジン冷却系部品;エアインテークパイプ、インテークマニホールド等のエンジン吸気系部品;フューエルデリバリーパイプ、燃料ポンプハウジング、バルブ、燃料タンク等の燃料系部品に好適に使用される。また、自動車部品以外の用途としては、例えば床暖房用温水パイプ、道路融雪用散水パイプ、海底オイルパイプ、海上オイルパイプ、地中オイルパイプ、パイプライナー、芝刈り機の小型燃料タンク等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(1)測定法
各実施例、比較例で用いたポリアミド樹脂(A)の融点、溶液粘度、末端アミノ基含量、末端封止率、ポリアミド樹脂組成物の荷重たわみ温度、耐薬品性〔耐ロングライフクーラント性(耐LLC性)および耐酸性〕、成形体の溶着強度は以下の方法で測定した。
<融点>
メトラー・トレド株式会社製の示差走査熱量分析装置(DSC822)を使用して、ポリアミド樹脂(A)10mgを窒素雰囲気下で30℃から360℃へ10℃/分の速度で加熱し、360℃で2分間保持して試料を完全に融解させた後、10℃/分の速度で30℃まで冷却し30℃で2分間保持した。再び10℃/分の速度で360℃まで昇温した時に現れる融解ピークのピーク温度を融点(℃)とし、融解ピークが複数ある場合は最も高温側の融解ピークのピーク温度を融点(℃)とした。
<溶液粘度>
ポリアミド樹脂(A)50mgをメスフラスコ中で98%濃硫酸25mLに溶解させ、ウベローデ型粘度計にて、得られた溶液の30℃での落下時間(t)を計り、濃硫酸の落下時間(t0)から下記数式(2)より溶液粘度ηinh(dL/g)を算出した。
ηinh(dL/g)={ln(t/t0)}/0.2 (2)
<末端アミノ基含量>
ポリアミド樹脂(A)1gをフェノール35mLに溶解し、そこへメタノールを2mL混合し、試料溶液とした。チモールブルーを指示薬とし、0.01規定の塩酸水溶液を使用した滴定を実施し、末端アミノ基含量([NH2]、単位:μモル/g)を測定した。
<末端封止率>
ポリアミド樹脂(A)20〜30mgをトリフルオロ酢酸−d(CF3COOD)1mLに溶解し、日本電子株式会社製核磁気共鳴装置JNM−ECX400(400MHz)を用いて、室温、積算回数256回の条件で1H−NMR測定を行った。そして、カルボキシル基末端の数(a)、アミノ基末端の数(b)および末端封止剤によって封止された末端の数(c)を各末端基の特性シグナルの積分値よりそれぞれ求め、数式(3)から末端封止率(%)を求めた。
末端封止率(%)=c/(a+b+c)×100 (3)
<荷重たわみ温度>
東芝機械株式会社製の射出成形機(型締力:80トン、スクリュー径:φ32mm)を使用して、ポリアミド樹脂組成物の融点よりも20〜30℃高いシリンダ温度、かつ、ガラス転移温度よりも20〜30℃高い金型温度の条件下で、Tランナー金型を用いてISO多目的試験片A型(長さ80mm、幅10mm、厚み4mm)を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 75−2/Afに従って1.8MPaの負荷を与えたときの荷重たわみ温度(℃)を測定し、耐熱性の指標とした。
耐薬品性として耐LLC性および耐酸性を評価した。
<耐薬品性>
〔耐LLC性〕
東芝機械株式会社製の射出成形機(型締力:80トン、スクリュー径:φ32mm)を使用して、ポリアミド樹脂組成物の融点よりも20〜30℃高いシリンダ温度、さらに、ガラス転移温度よりも20〜30℃高い金型温度の条件下で、Tランナー金型を用いてISO多目的試験片A型ダンベルを作製し、引張り強さ評価用試験片とした。この試験片の引張強さをISO 527に従って測定した。続いて、同様に作製したISO多目的試験片A型ダンベルを50%エチレングリコール水溶液中に浸漬し、130℃、500時間浸漬した後の引張強さをISO 527に従って測定し、浸漬する前の試験片の引張強さに対する割合(%)を算出することで、耐薬品性の指標とした。
〔耐酸性〕
上記と同様に作製したISO多目的試験片A型ダンベルを80℃、pH=1のギ酸水溶液中に浸漬し、90℃、168時間浸漬した後の引張強さをISO 527に従って測定し、浸漬する前の試験片の引張強さに対する割合(%)を算出することで、耐酸性の指標とした。
<成形体の溶着強度>
日本製鋼所社製成形機(J220EII−P−2M、型締力:220トン、主ユニットスクリュー径:Φ53、副ユニットスクリュー径:Φ40)を用いて、表1に示す条件にて直径100mmで肉厚が3mmの球状で、中空体内部に通じる穴を有する中空体をダイスライドインジェクション法にて作製した。貫通穴にホースを接続し、水圧試験により得られた中空体の接着部の破断強度(MPa)を測定し、溶着強度の指標とした。一次成形材料と溶着用樹脂(二次成形材料)には同じポリアミド樹脂組成物を使用した。
(2)原材料
<PA−1の製造方法>
テレフタル酸9870.6g(59.42モル)、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物[前者/後者=80/20(モル比)]9497.4g(60.00モル)、安息香酸142.9g(1.17モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物19.5g(原料の総質量に対して0.1質量%)および蒸留水5リットルを内容積40リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間攪拌し、2時間かけてオートクレーブ内部の温度を220℃に昇温した。この時、オートクレーブ内部の圧力は2MPaまで昇圧した。そのまま2時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を1MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、ηinhが0.16dL/gのプレポリマーを得た。これをホソカワミクロン株式会社製フレーククラッシャーで2mm以下の粒径まで粉砕し、100℃、減圧下で12時間乾燥した。これを230℃、13Pa(0.1mmHg)にて10時間固相重合し、融点が305℃、ηinhが1.30dL/g、末端アミノ基含量([NH2])が9μモル/g、末端封止率が46%である白色のポリアミドを得た。このポリアミド樹脂(A)を「PA−1」と略称する。
<PA−2の製造方法>
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物の比率を前者/後者=50/50(モル比)に変更した以外はPA−1と同様の製造方法により、融点が265℃、ηinhが1.19dL/g、末端アミノ基含量([NH2])が9μモル/g、末端封止率が38%である白色のポリアミドを得た。このポリアミド樹脂(A)を「PA−2」と略称する。
<PA−3の製造方法>
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物9497.4g(60.00モル)を1,6−ヘキサンジアミンと2−メチル−1,5−ペンタンジアミンの混合物[前者/後者=50/50(モル比)]6972g(60.00モル)に変更した以外はPA−1と同様の製造方法により、融点が306℃、極限粘度ηinhが0.98dL/g、末端アミノ基含量([NH2])が18μモル/g、末端封止率が30%である白色のポリアミドを得た。このポリアミド樹脂(A)を「PA−3」と略称する。
<PA−4の製造方法>
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物を1,9−ノナンジアミンに変更した以外はPA−1と同様の製造方法により、融点が315℃、極限粘度ηinhが1.30dL/g、末端アミノ基含量([NH2])が10μモル/g、末端封止率が48%である白色のポリアミドを得た。このポリアミド樹脂(A)を「PA−4」と略称する。
<PA−5の製造方法>
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物を1,10−デカンジアミン10339.2g(60.00モル)に変更した以外はPA−1と同様の製造方法により、融点が318℃、極限粘度ηinhが1.30dL/g、末端アミノ基含量([NH2])が10μモル/g、末端封止率が45%である白色のポリアミドを得た。このポリアミド樹脂(A)を「PA−5」と略称する。
<無機充填剤(B)>
ガラス繊維:日東紡績株式会社製「CS−3J−256」、円形断面形状(扁平率=1)、直径11μm、繊維長さ3mm
<実施例1〜7、比較例1および2>
表1に示す組成に従って、ポリアミド樹脂(A)を同方向回転二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−26SS」)の供給口に一括投入してポリアミド樹脂(A)の融点よりも30℃高いシリンダ温度の条件下に溶融混練した後に、サイドフィーダーから無機充填材(B)を投入してさらに溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却、切断してペレット状の成形用材料(ポリアミド樹脂組成物)を製造した。得られたペレットを用いて、各種評価を行った。また、溶着強度の評価においてペレットをDSI成形する際に、一次成形体の溶着用樹脂収容部1の肉厚Z、および接合部における、接合方向および前記一次成形体の肉厚方向に沿った断面での溶着用樹脂充填部2の面積は表1の値に従った。
Figure 2015058608
本発明の範囲内のポリアミド樹脂(A)を用いたDSI成形品について、一次成形体の溶着用樹脂収容部1の肉厚Zおよび溶着用樹脂充填部2の断面積が本発明の範囲内にある実施例1〜7のDSI成形品は、溶着強度に優れていた。なお、実施例1〜5は分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位を含むポリアミド樹脂(A)を使用しているため、さらに溶着強度に優れていた。また、ポリアミド樹脂組成物の評価結果より、実施例1〜7の成形品は、耐熱性、耐薬品性にも優れていた。一方、比較例1のDSI成形品は、溶着用樹脂充填部2の断面積が本発明の範囲から外れるため、溶着強度に劣っていた。また、比較例2のDSI成形品は、一次成形体の溶着用樹脂収容部1の肉厚Zが薄いため、成形品内部に樹脂漏れが起こり、溶着強度に劣っていた。
本発明の成形品は、電気・電子用、自動車用、産業資材用、工業材料用、日用および家庭品用等の用途において使用可能であり、特に自動車用部品として好適に使用できる。
1 一次成形体の溶着用樹脂収容部
2 溶着用樹脂充填部

Claims (15)

  1. 溶着用樹脂収容部を有する複数の一次成形体が、前記溶着用樹脂収容部に充填された溶着用樹脂により接合された成形品であって、
    前記一次成形体が、全ジアミン単位中、脂肪族ジアミン単位を50〜100モル%、ならびに全ジカルボン酸単位中、芳香族ジカルボン酸単位および/または脂環式ジカルボン酸単位を50〜100モル%含有し、かつ融点が250〜340℃であるポリアミド樹脂(A)を含有するものであり、
    前記一次成形体の溶着用樹脂収容部の肉厚が0.75〜5mmであり、
    前記成形品の接合部における、接合方向および前記一次成形体の肉厚方向に沿った断面において、溶着用樹脂充填部の面積が9〜15mm2である、成形品。
  2. 前記脂肪族ジアミン単位が、炭素数が6〜13の脂肪族ジアミン単位である、請求項1に記載の成形品。
  3. 前記脂肪族ジアミン単位が、1,6−ヘキサンジアミン単位、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン単位、1,9−ノナンジアミン単位、2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位および1,10−デカンジアミン単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の成形品。
  4. 前記脂肪族ジアミン単位が分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位である、請求項1〜3のいずれかに記載の成形品。
  5. 前記分岐脂肪族鎖を含む脂肪族ジアミン単位が、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である、請求項4に記載の成形品。
  6. 前記芳香族ジカルボン酸単位がテレフタル酸単位である、請求項1〜5のいずれかに記載の成形品。
  7. 前記脂環式ジカルボン酸単位が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位である、請求項1〜6のいずれかに記載の成形品。
  8. 前記ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー単位として、さらにラクタム単位および/またはアミノカルボン酸単位を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の成形品。
  9. 前記一次成形体が、前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、無機充填剤(B)を20〜150質量部さらに含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の成形品。
  10. 前記無機充填剤(B)が、ガラス繊維および/または炭素繊維である、請求項9に記載の成形品。
  11. 前記成形品が中空体であり、前記溶着用樹脂充填部が中空体の周囲方向に沿って略一周して形成されている、請求項1〜10のいずれかに記載の成形品。
  12. 射出溶着法により製造されたものである、請求項1〜11のいずれかに記載の成形品。
  13. 前記成形品が、自動車のエンジン冷却系部品である、請求項1〜12のいずれかに記載の成形品。
  14. 前記成形品が、自動車のエンジン吸気系部品である、請求項1〜12のいずれかに記載の成形品。
  15. 前記成形品が、自動車の燃料系部品である、請求項1〜12のいずれかに記載の成形品。
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