JP2015052089A - 軽油留分の脱硫方法 - Google Patents

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信治 木村
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睦修 岩波
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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Abstract

【課題】 2種以上の原油由来の油を混合して軽油留分を得る場合であっても、水素化精製触媒の劣化を抑制しつつ軽油留分を脱硫することができる軽油留分の脱硫方法を提供すること。【解決手段】 本発明の軽油留分の脱硫方法は、2種以上の原油由来の油を含有する軽油留分を、水素存在下で水素化精製触媒に接触させる工程を備え、上記軽油留分は、ナフタレン類、ビフェニル類、ジフェニルメタン類、フルオレン類及びアセナフテン類からなる群より選択される2環芳香族分の総含有量が5〜10質量%であり、2環芳香族分の総含有量に対するナフタレン類の含有比率が60%以下であり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量が30〜100質量ppmであり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量に対するアニリン類の含有比率が20〜79%であることを特徴とする。【選択図】 なし

Description

本発明は、軽油留分の脱硫方法に関する。
近年、石油製品の需要は軽質化傾向にあり、重油の需要が低迷している。そのため、原油から軽油を製造するに際し、重油の基材として利用されていた留分を軽油に活用することが検討されている。
重油の基材としては、例えば、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油、直留軽油、接触分解軽油(LCO)などをそれぞれ必要に応じて水素化精製処理して得られたものがある。下記特許文献1には、直留軽油及びLCOの混合油を水添脱硫して得られる深度脱硫軽油基材に、さらにLCOを配合してなるディ−ゼル軽油組成物が開示されている。
特開平8−259966号公報
しかし、直留軽油にLCOを混合した原料油を水素化精製触媒によって脱硫して軽油留分を製造する場合、直留軽油単独での水素化精製処理に比べて、水素化精製触媒の劣化速度が速くなり、触媒寿命が短くなるという問題があった。
本発明は、2種以上の原油由来の油を混合して軽油留分を得る場合であっても、水素化精製触媒の劣化を抑制しつつ軽油留分を脱硫することができる軽油留分の脱硫方法及び脱硫軽油の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、直留軽油に他の油を混合して軽油留分を得るに際し、軽油留分に含まれる特定の芳香族化合物の総含有量及びそのうちの特定の芳香族化合物の割合並びに特定の含窒素化合物の総含有量及びそのうちの特定の含窒素化合物の割合がそれぞれ特定の範囲内となるように上記混合を行い、係る軽油留分を水素化精製触媒によって脱硫することにより、水素化精製処理に伴う水素化精製触媒の劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、2種以上の原油由来の油を含有する軽油留分を、水素存在下で水素化精製触媒に接触させる工程を備え、上記軽油留分は、ナフタレン類、ビフェニル類、ジフェニルメタン類、フルオレン類及びアセナフテン類からなる群より選択される2環芳香族分の総含有量が5〜10質量%であり、2環芳香族分の総含有量に対するナフタレン類の含有比率が60%以下であり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量が30〜100質量ppmであり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量に対するアニリン類の含有比率が20〜79%であることを特徴とする軽油留分の脱硫方法を提供する。
本発明の軽油留分の脱硫方法によれば、2種以上の原油由来の油を混合して軽油留分を得る場合であっても、水素化精製触媒の劣化を抑制しつつ軽油留分を脱硫することができる。これにより、直留軽油に重油基材などの他の油を混合して軽油留分とする場合の触媒劣化を抑制することができ、重油基材の有効利用を図ることができる。
本発明の方法において、上記軽油留分は少なくとも直接脱硫軽油を含むことが好ましい。
本発明の方法において、上記軽油留分は、燃費の観点から、15℃における密度が0.84〜0.89g/cmであり、90%留出温度が330〜355℃であることが好ましい。
脱硫性能の観点から、上記水素化精製触媒は、担体と、該担体に担持された、Co及び/又はNiと、Mo及び/又はWと、を含有する触媒であることが好ましい。
本発明は、上記本発明の軽油留分の脱硫方法により脱硫軽油を得ることを特徴とする脱硫軽油の製造方法を提供する。
本発明の脱硫軽油の製造方法によれば、直留軽油に重油基材などの他の油を混合する場合であっても水素化精製触媒の劣化を抑制することができ、重油基材の有効利用を図りながら脱硫軽油を製造することができる。
本発明は、2種以上の原油由来の油を混合して軽油留分を得る場合であっても、水素化精製触媒の劣化を抑制しつつ軽油留分を脱硫することができる軽油留分の脱硫方法及び脱硫軽油の製造方法を提供することができる。
包括的2次元GCシステムを説明するための概略図である。 (a)は、原油由来の油の「2環芳香族分の総含有量」及び「ナフタレン類比率」を求めるときの手順の一例を示すフロー図であり、(b)は、原油由来の油の「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」を求めるときの手順の一例を示すフロー図である。 包括的2次元GCシステム(検出器:FID)によって得られる2次元チャートの一例を示す図である。 包括的2次元GCシステム(検出器:NCD)によって得られる2次元チャートの一例を示す図である。
本実施形態の軽油留分の脱硫方法は、2種以上の原油由来の油を含有する軽油留分を、水素存在下で水素化精製触媒に接触させる工程を備え、上記軽油留分は、ナフタレン類、ビフェニル類、ジフェニルメタン類、フルオレン類及びアセナフテン類からなる群より選択される2環芳香族分の総含有量(以下、「2環芳香族分の総含有量」という場合もある)が5〜10質量%であり、2環芳香族分の総含有量に対するナフタレン類の含有比率(以下、「ナフタレン類比率」という場合もある)が60%以下であり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量(以下、「含塩基性窒素化合物の総含有量」という場合もある)が30〜100質量ppmであり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量に対するアニリン類の含有比率(以下、「アニリン類比率」という場合もある)が20〜79%である。
上記2環芳香族分とは、下記表1に示されるナフタレン類、ビフェニル類、ジフェニルメタン類、フルオレン類及びアセナフテン類を指し、これらは炭素数1〜8の炭化水素基を有していてもよい。なお、置換基として2以上の上記炭化水素基を有する場合、炭素数の合計が10以下であるものを上記2環芳香族分とする。

また、上記塩基性窒素を有する化合物とは、UOP試験法 No.269−90で検出される化合物を指す。
更に、上記アニリン類とは、下記表2に示される主骨格を有する化合物を指し、これは炭素数1〜8の炭化水素基を有していてもよい。なお、置換基として2以上の上記炭化水素基を有する場合、炭素数の合計が10以下であるものを上記アニリン類とする。

本実施形態に係る軽油留分を構成する原油由来の油としては、原油から得られる、直留軽油(LGO)、接触分解軽油(LCO)、並びに常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油等の水素化精製物を用いることができる。
上記直留軽油は、原油を常圧蒸留することで得られる軽油留分を指す。
上記接触分解軽油としては、常圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき油、又はそれらの水素化精製油を流動接触分解装置により接触分解して得られる軽油留分が挙げられる。
上記水素化精製物としては、例えば、常圧蒸留残油を水素化精製して得られる直接脱硫軽油(RDS−GO)、減圧蒸留残油を水素化精製して得られる間接脱硫軽油が挙げられる。
本実施形態においては、軽油留分が直留軽油を含むことが好ましい。
この場合、直留軽油の15℃における密度は、燃費の観点から、0.83〜0.88g/cmであることが好ましく、0.84〜0.87g/cmであることがより好ましい。なお、本明細書において、15℃における密度とはJIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定されるものを指す。
直留軽油の90%留出温度は、燃焼効率およびPM(粒子状物質)抑制の観点から、330〜360℃であることが好ましく、340〜355℃であることがより好ましい。なお、本明細書において、蒸留性状とはJISK2254に規定する「石油製品−蒸留試験方法」によって得られるものを指す。
直留軽油中の硫黄分は、脱硫性能の観点から、3質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、硫黄分とはJIS K 2541−1992に規定する「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定されるものを指す。
直留軽油中の窒素分は、脱硫性能の観点から、300質量ppm以下であることが好ましく、200質量ppm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、窒素分とは、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定されるものを指す。
また、触媒長寿命化の観点から、軽油留分が直留軽油と直接脱硫軽油とを含むことが好ましい。この場合、直留軽油は上記条件を満たすことが好ましく、直接脱硫軽油は以下の条件を満たすことが好ましい。
直接脱硫軽油の15℃における密度は、燃費の観点から、0.83〜0.88g/cmであることが好ましく、0.84〜0.87g/cmであることがより好ましい。
直接脱硫軽油の90%留出温度は、燃焼効率およびPM抑制の観点から、320〜350℃であることが好ましく、330〜340℃であることがより好ましい。
直接脱硫軽油の硫黄分は、脱硫性能の観点から、1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましい。
直接脱硫軽油の窒素分は、脱硫性能の観点から、30〜500質量ppmであることが好ましく、100〜300質量ppmであることがより好ましい。
本実施形態においては、脱硫処理を施す軽油留分、すなわち水素化精製触媒に接触させる軽油留分が、上記「2環芳香族分の総含有量」、「ナフタレン類比率」、「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」の条件を満たすように、上述した油を2種以上混合して軽油留分を得ることができる。
この場合、予め混合する各油について「2環芳香族分の総含有量」、「ナフタレン類比率」、「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」の値を求め、これらの値に基づき油の混合割合を設定することができる。
以下、原油由来の油の「2環芳香族分の総含有量」、「ナフタレン類比率」、「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」を求める方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る方法で用いられる包括的2次元GCシステムを説明するための概略図である。図1に示される包括的2次元GCシステム100は、試料導入部10と、試料導入部10から導入された試料を分離するための第1カラム12、モジュレーションカラム14及び第2カラム18と、分離された試料を検出器に送るためのスプリッター20と、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)22、化学発光窒素検出器(NCD)24及び質量分析計(MS)30と、を備えている。また、包括的2次元GCシステム100は、モジュレーションカラム14を加熱ガスで加熱するための加熱部15及び液体窒素で冷却するための冷却部16を有するモジュレータ部50を備えている。
包括的2次元GCシステム100では、試料導入部10から導入された試料が第1カラム12にて沸点毎に分離される。分離された成分は、モジュレータ部50で液体窒素により冷却され、一時的にモジュレーションカラム14でトラップされる。次に、分離成分をトラップしたモジュレーションカラム14に一定の時間間隔で加熱ガスを吹きかけることで、その都度トラップされた成分が第2カラム18に移動する。第2カラム18に移動した成分は極性毎に分離され、スプリッター20にて3種類の検出器に送り込まれる。
次に、包括的2次元GCシステムを用いる測定及び解析について説明する。
図2は、原油由来の油の「2環芳香族分の総含有量」、「ナフタレン類比率」、「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」を求める方法の例を示すフロー図である。図2の(a)は、原油由来の油の「2環芳香族分の総含有量」及び「ナフタレン類比率」を求めるときの手順の一例を示すフロー図である。ステップS11で、2次元GCを用いて試料のFIDデータ及びMSデータを得る。ステップS12で、得られたFIDデータ及びMSデータを2次元処理する。ステップ13で、2環芳香族分由来のピークをMSデータに基づき同定し、該当するFIDピークの体積値を求める。ステップ14で、検出された全ピークの体積値を求める。ステップ15で、全FIDピークの体積値(この値を100%とみなす)と2環芳香族分のFIDピークの体積値に基づき試料中の2環芳香族分の総含有量(質量%)を算出する。ステップ16で、2環芳香族分のFIDピークの体積値に基づき2環芳香族分全量に対するナフタレン類の比率を算出する。この例では、各ステップが図2(a)に示される順に行われているが、一部のステップが同時に行われてもよく、順序が変更されてもよい。
図2の(b)は、原油由来の油の「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」を求めるときの手順の一例を示すフロー図である。ステップS21で、2次元GCを用いて試料のNCDデータ及びMSデータを得る。ステップS22で、得られたNCDデータ及びMSデータを2次元処理する。ステップ23で、アニリン類のピークをMSデータに基づき同定し、該当するNCDピークの体積値を求める。ステップ24で、検出された全ピークの体積値を求める。ステップ25で、全NCDピークの体積値に対するアニリン類のNCDピークの体積値の比率を算出する。ステップ26で、JIS K 2609 原料及び石油製品−窒素分試験方法により、試料中の全窒素濃度を求める。ステップ27で、求められた全窒素濃度とアニリン類の比率を用いて試料中のアニリン類の濃度(質量ppm)を算出する。ステップ28で、UOP試験法 No.269−90により、試料中の塩基性窒素の濃度を求める。ステップ29で、塩基性窒素の濃度及びアニリン類の濃度に基づき含塩基性窒素化合物の総含有量に対するアニリン類の比率を算出する。この例では、各ステップが図2(b)に示される順に行われているが、一部のステップが同時に行われてもよく、順序が変更されてもよい。
ステップS11及びステップS21では、例えば、表3に示される分析条件で測定を行うことができる。

試料は所定の前処理をすることができる。例えば、アニリン類を分析する場合、試料のメタノール抽出物を測定用の試料とすることができる。メタノール抽出は、以下の手順で行うことができる。まず、メタノール及び試料を等量で容器に採取し、5分間激しく振とうする。その後、1時間以上静置してメタノール層を採取し、これを測定用の試料とする。
ステップS12及びステップS22では、解析ソフトGC Imageを用いて2次元処理を行うことができる。これにより、例えば、図3及び図4に示される2次元チャートが得られる。
図3のチャートには、沸点順及び極性順に分解された炭化水素化合物のピークが示されている。MSデータに基づき、ナフタレン類、ビフェニル類、ジフェニルメタン類、フルオレン類及びアセナフテン類に該当するピークを同定し、それぞれのピークの体積値を得ることができる。図4のチャートには、沸点順及び極性順に分解された含窒素化合物のピークが示されている。MSデータに基づき、アニリン類に該当するピークを同定し、そのピークの体積値を得ることができる。このようにして、ステップ13及びステップ23を実施することができる。
ステップ14及びステップ24では全ピークの体積値を求めるが、このときステップ13及びステップ23で体積値を求めるときと同じしきい値を設定することが好ましい。
上述した方法により、原油由来の油の「2環芳香族分の総含有量」、「ナフタレン類比率」、「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」を求めることができる。本実施形態においては、軽油留分における2環芳香族分の総含有量が5〜10質量%となり、ナフタレン類比率が60%以下となり、含塩基性窒素化合物の総含有量が30〜100質量ppmとなり、アニリン類比率が20〜79%となるように、原油由来の油を混合し、軽油留分を得る。これにより、2種以上の原油由来の油を混合して軽油留分を得る場合であっても、水素化精製触媒の劣化を抑制しつつ軽油留分を脱硫することができる。なお、このような効果が得られる理由を本発明者らは以下のとおり推察する。
軽油留分の脱硫をする水素化精製触媒の劣化は、反応過程において触媒上に堆積するコーク(炭素質)により脱硫反応が阻害されるため起こると考えられている。コークは、脱硫触媒の担体表面上の酸点に堆積し、コークが蓄積するに従って、原料油中のS化合物が活性種(MoS)へ近づくのが阻害されるために反応性が低下すると考えられる。
触媒上のコーク堆積挙動についてコークの生成過程と成長過程に分けて考えた場合、コーク生成過程では原料油に含まれる芳香族化合物や含窒素化合物が触媒担体表面に堆積(吸着)すると考えられる。触媒担体(例えば、アルミナなど)表面に存在するルイス酸点への吸着挙動は、含窒素化合物であればEnd−on(η1配位)、芳香族化合物であればSide−on(η6配位)になると考えられる。End−on吸着したコークの成長は担体表面に対して垂直方向への成長と考えられるのに対して、Side−on吸着したコークの成長は担体表面と平行に積み重なると考えられる。また、End−onで吸着・成長したコーク種はそれぞれ担体表面上でまちまちの方向を向くため、表面上でのコーク密度が低くなると推定される。一方、Side−onで吸着・成長したコーク種は担体表面で積層するため、コーク密度が高くなると推定される。このような違い、すなわちコーク生成過程における吸着挙動の違いが、その後のコークの成長過程でのコーク堆積量に影響し、その結果として、触媒の劣化挙動に違いが生じると考えられる。
芳香族化合物を多く含む原料油(高アロマ原料油)と含塩基性窒素化合物を多く含む原料油(高塩基性N化合物原料油)を通油した際のコーク生成量について考えた場合、担体表面に強く吸着する含塩基性窒素化合物を多く含む高塩基性N原料油では、コーク生成過程において担体表面上にEnd−on吸着した密度が低いコーク(ソフトコーク)を多く生成し、この異方性に富むと考えられるソフトコークが元となるためコーク生成量は大きくは伸びないものと推測される。一方、塩基性N化合物に比べて吸着力の弱い芳香族化合物を多く含む高アロマ原料油では、コーク生成過程においてコーク生成量が少なくなると推測されるが、担体表面上に積層する形で等方性が高いコークが生成し、このコークが元となることからコーク生成量は相対的に高くなると考えられる。
本実施形態の方法によれば、軽油留分の「2環芳香族分の総含有量」、「ナフタレン類比率」、「含塩基性窒素化合物の総含有量」及び「アニリン類比率」を上記範囲とすることにより、コークの生成過程において上述したソフトコークがより多く生成し、等方性が高いコークの生成は抑制され、その結果、コークの成長過程におけるコーク生成速度を低下させることができ、触媒の劣化を抑制できたと考えられる。
軽油留分における2環芳香族分の総含有量は、触媒長寿命化の観点から、5〜10質量%であり、6〜8質量%であることが好ましい。また、ナフタレン類比率は、触媒長寿命化の観点から、60%以下であり、58%以下であることが好ましく、56%以下であることがより好ましい。
軽油留分における含塩基性窒素化合物の総含有量は、触媒長寿命化の観点から、30〜100質量ppmであり、70〜95質量ppmであることが好ましい。また、アニリン類比率は、触媒長寿命化の観点から、20〜79%であり、50〜75%であることが好ましく、60〜75%であることがより好ましい。
軽油留分は、燃費の観点から、15℃における密度が0.84〜0.89g/cmであり、90%留出温度が330〜355℃であることが好ましい。
本実施形態で用いられる水素化精製触媒は、通常用いられている触媒であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、活性金属元素として、Co及びNiのうちの少なくとも1種類から選ばれる元素、及び、Mo及びWのうちの少なくとも1種類から選ばれる元素を含む多孔質体からなるものを用いることができる。
多孔質体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア等の酸化物、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ−チタニア、シリカ−アルミナ−ジルコニア等の複合酸化物、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライト及びMCM−22等のゼオライトから選ばれる1種又は2種以上からなる多孔質無機酸化物が挙げられる。
本実施形態においては、脱硫性能の観点から、触媒全量を基準として、Co及びNiの合計含有量が金属元素換算で1〜10質量%、Mo及びWの合計含有量が金属元素換算で2〜30質量%である触媒が好ましい。
水素化精製触媒は、リン、ホウ素、フッ素等の元素を含んでもよいし、さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸、ニトリロ三酢酸、クエン酸等のキレ−ト性の有機化合物などを含んだものも用いることができる。
水素化精製触媒は、メソポアの中央細孔直径が4〜20nmのものが好ましく、4〜15nmのものがより好ましい。また、水素化精製触媒のBET比表面積は、30〜800m/gのものが好ましく、50〜600m/gのものがより好ましい。
水素化精製触媒の形態については、粉体ではなく、成形体であることが好ましい。成形体の形状や成形方法に特に制限はないが、球状や柱状の形状が好ましい。また、球状の場合には、直径が0.5〜20mmのものが好ましく、柱状の場合の断面形状は、特に制限はされないが、円型、三つ葉型、四つ葉型であることが好ましい。柱状の成形体の寸法は、断面積が0.25〜400mm、長さ0.5〜20mm程度であることが好ましい。
水素化精製の条件としては、水素分圧が1〜10MPaであることが好ましく、3〜8MPaであることがより好ましい。水素圧力が1MPaより低いと、軽油留分中の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、また、水素圧力が10MPaを超えると軽油留分の単位体積あたりの発熱量が小さくなり、好ましくない。
LHSVは、0.1〜5h−1であることが好ましく、1〜3h−1であることがより好ましい。LHSVが0.1h−1未満の場合には、脱硫軽油を製造するための反応装置が大きくなり過ぎるおそれがあり、LHSVが5h−1を超えると、軽油留分の硫黄分を10質量ppm以下にするために反応温度が高くなりすぎて触媒の劣化が促進されるおそれがある。
水素オイル比は、30〜500NL/Lであることが好ましく、100〜300NL/Lであることがより好ましい。水素/オイル比が30NL/L未満では、軽油留分の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難であり、また、500NL/Lを超えると、水素供給のためのコストが嵩み、経済的な軽油の製造がしにくくなる。
反応温度は、250〜420℃であることが好ましく、250〜400℃であることがより好ましい。反応温度が250℃より低いと、軽油留分中の硫黄分を10質量ppm以下にすることが困難になり、一方、反応温度が420℃を超えると触媒の劣化が促進されるため、好ましくない。
本実施形態の軽油留分の脱硫方法によって脱硫軽油を得ることができる。
脱硫軽油はそのまま軽油製品として用いることができ、あるいは他の基材と混合して軽油製品を調製するための軽油基材として用いることもできる。この軽油基材と混合される他の軽油基材としては、例えば、原油を精製して生産される灯油、フィッシャ−・トロプシュ法等で誘導される合成軽油、水素化分解軽油、あるいはそれらの半製品、中間製品等の配合用基材が挙げられる。また、植物油メチルエステル、エ−テル類等も他の軽油基材として配合することが可能である。本実施形態で得られる脱硫軽油と他の軽油基材とを配合して、製品軽油を調製する場合、所望の品質の軽油となるように適宜配合割合を選定することができるが、他の軽油基材の配合割合は、20質量%以下、特には15質量%以下にすることが好ましい。
脱硫軽油の硫黄分は、10質量ppm以下であることが好ましく、8質量ppm以下であることがより好ましい。硫黄分が10質量ppmを超えると、ディ−ゼルエンジン燃焼により生成する硫黄酸化物が高濃度となり、排ガス用触媒の劣化を促進したり、当該触媒の再生に要する燃料コストが増加して燃費が悪化したりする恐れがある。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
<水素化精製触媒の調製>
(触媒A)
アルミナ−シリカ−リン酸化物担体に、触媒全量を基準として、Coを金属元素換算で2.4質量%、Moを金属元素換算で15.0質量%となるように担持して、BET比表面積が210m/gである触媒Aを得た。
(触媒B)
アルミナ−シリカ−チタニア担体に、触媒全量を基準として、Coを金属元素換算で2.4質量%、Moを金属元素換算で15.0質量%となるように担持して、BET比表面積が230m/gである触媒Bを得た。
<原油由来の油の準備>
表4に示される直留軽油A、直留軽油B、接触分解軽油A、直接脱硫軽油A、直接脱硫軽油B、直接脱硫軽油C、直接脱硫軽油D、直接脱硫軽油Eをそれぞれ準備した。
なお、本実施例において、蒸留性状、密度、硫黄分、窒素分は、以下のように得られる。
蒸留性状:JISK2254に規定する「石油製品−蒸留試験方法」によって得られるものである。
密度:15℃における密度は、JIS K 2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(抜粋)」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定されるものである。
硫黄分:JIS K 2541−1992に規定する「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定されるものである。
窒素分:JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定されるものである。
塩基性窒素分:UOP試験法No.269−90に準拠して測定されるものである。
また、2環芳香族分の総含有量(質量%)、2環芳香族分中のナフタレン類比率(%)、含塩基性窒素化合物の総含有量(質量ppm)及び含塩基性窒素化合物中のアニリン類比率(%)は、図1に示されるものと同様の構成を有する2次元GCシステム(ZOEX社製 KT2006(GC及び検出器はAgilent社製))を用い、図2に示されるフロー図と同様の手順で求めた。

<軽油留分の水素化精製>
(実施例1〜5、比較例1〜5)
表5、6に示される油及び混合比率で得られた軽油留分を、同表に示される触媒を用いて下記に示す条件で水素化精製(脱硫)した。
水素化処理触媒量:100mL
反応温度:340〜380℃
LHSV:3.0h−1
水素分圧:5.5MPa
水素/オイル比:200NL/L
<水素化精製触媒の劣化速度の算出>
反応時間と、処理後の軽油留分(脱硫軽油)中の硫黄分を8質量ppmとするために必要な反応温度との関係を得て、21日目の必要反応温度と84日目の必要反応温度の差から水素化精製触媒の劣化速度(℃/日)を算出した。


表5に示されるように、軽油留分における2環芳香族分の総含有量(質量%)、2環芳香族分中のナフタレン類比率(%)、含塩基性窒素化合物の総含有量(質量ppm)及び含塩基性窒素化合物中のアニリン類比率(%)が本発明に係る条件を満たす実施例1〜5は、条件を満たさない比較例1〜5に比べて触媒の劣化速度が小さいことが確認された。
10…試料導入部、12…第1カラム、14…モジュレーションカラム、15…加熱部、16…冷却部、18…第2カラム、20…スプリッター、22…水素炎イオン化検出器(FID)、24…化学発光窒素検出器(NCD)、30…質量分析計(MS)、50…モジュレータ部、100…包括的2次元GCシステム。

Claims (5)

  1. 2種以上の原油由来の油を含む軽油留分を、水素存在下で水素化精製触媒に接触させる工程を備え、
    前記軽油留分は、ナフタレン類、ビフェニル類、ジフェニルメタン類、フルオレン類及びアセナフテン類からなる群より選択される2環芳香族分の総含有量が5〜10質量%であり、前記2環芳香族分の総含有量に対するナフタレン類の含有比率が60%以下であり、塩基性窒素を有する化合物の総含有量が30〜100質量ppmであり、前記塩基性窒素を有する化合物の総含有量に対するアニリン類の含有比率が20〜79%であることを特徴とする軽油留分の脱硫方法。
  2. 前記軽油留分が、少なくとも直接脱硫軽油を含むことを特徴とする請求項1に記載の軽油留分の脱硫方法。
  3. 前記軽油留分は、15℃における密度が0.84〜0.89g/cmであり、90%留出温度が330〜355℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軽油留分の脱硫方法。
  4. 前記水素化精製触媒は、担体と、該担体に担持された、Co及び/又はNiと、Mo及び/又はWと、を含有する触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軽油留分の脱硫方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により脱硫軽油を得ることを特徴とする脱硫軽油の製造方法。
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