JP2015051018A - キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質 - Google Patents
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Abstract
【課題】キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、および特に標的に送達するための、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するベクターを含むキャプシド形成系を提供する。【解決手段】本発明は、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、消化管関連リンパ系組織(GALT)内に存在する細胞に結合することができるタンパク質に関する。また、本発明は、キャプシド系、および本発明に包含されるキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現することができるベクター、特にアデノウイルスベクターを提供する。また、本発明は、このようなベクター、特にワクチン用のベクターを含むウイルス粒子、宿主細胞および組成物、免疫応答を誘起する方法、ならびに目的細胞を標的にして抗原などの異種タンパク質を送達する方法を提供する。【選択図】なし
Description
(関連出願の相互参照)
本出願は2003年6月10日付提出の米国仮特許出願第60/477,539号の利益を主張するものであり、この仮出願については全文引用により本明細書に組み込まれている。
本出願は2003年6月10日付提出の米国仮特許出願第60/477,539号の利益を主張するものであり、この仮出願については全文引用により本明細書に組み込まれている。
(技術分野)
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、および特に標的に送達するための、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するベクターを含むキャプシド形成系を提供する。また、本発明は、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質およびこれを発現するベクターを作製し、使用する方法を提供する。
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、および特に標的に送達するための、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するベクターを含むキャプシド形成系を提供する。また、本発明は、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質およびこれを発現するベクターを作製し、使用する方法を提供する。
(発明の背景)
アデノウイルスは、家畜および実験動物ばかりでなく、ヒトにおいても腸管もしくは呼吸器感染症を引き起こす。アデノウイルス科についての全般的な概説については、Fieldsほか、Fundamental Virology(1991年、第2版、レイバンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(New York)、第31章)を参照されたい。アデノウイルスおよびアデノウイルスベクター系の開発に関する一般的な背景についての参考文献としては、Grahamほか(1973年)Virology 52:p456−467;Talciffほか(1981年)Lancet 11:p832−834;Berknerほか(1983年)Nucleic Acid Research 11:p6003−6020;Graham(1984年)EMBO J 3:p2917−2922;Bettほか(1993年)J.Virology 67:p5911−5921;およびBettほか(1994年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:p8802−8806を参照されたい。
アデノウイルスは、家畜および実験動物ばかりでなく、ヒトにおいても腸管もしくは呼吸器感染症を引き起こす。アデノウイルス科についての全般的な概説については、Fieldsほか、Fundamental Virology(1991年、第2版、レイバンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(New York)、第31章)を参照されたい。アデノウイルスおよびアデノウイルスベクター系の開発に関する一般的な背景についての参考文献としては、Grahamほか(1973年)Virology 52:p456−467;Talciffほか(1981年)Lancet 11:p832−834;Berknerほか(1983年)Nucleic Acid Research 11:p6003−6020;Graham(1984年)EMBO J 3:p2917−2922;Bettほか(1993年)J.Virology 67:p5911−5921;およびBettほか(1994年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:p8802−8806を参照されたい。
BAVは、通常不顕性感染をもたらす代表的なウシの病原体である(Darbyshireほか、1965年、J.Comp.Pathol.75:p327−330)が、時として、さらに重篤な気道感染症を起こすことがある(Darbyshireほか、1966年、Res.Vet.Sci.7:p81−93およびMattsonほか1988年、J.Vet Res 49:p67−69)。ブタアデノウイルス(PAV)感染症は、脳炎、肺炎、腎障害および下痢を伴う(Derbyshire、1992年、「Diseases of Swine」(Lemanほか編)、第7版、アイオワ大学出版(Iowa State University Press)、エームズ(Ames)、IA.、p225−227)。PAVは、感染子ブタの腸の液性反応および粘膜抗体反応を賦活することができることが明らかにされている。Tubolyほか(1993年)Res.in Vet.Sci.54:p345−350。ヒトアデノウイルスの続発症については、例えば、Foy H.M.(1989年)Adenoviruses Evans AS編 Viral Infections of Humans.ニューヨーク(New York)、プレナム出版(Plenum Publishing)、p77−89、および Rubin B.A.(1993年)Clinical picture and epidemiology of adenovirus infections、Acta Microbiol.Hung 40:p303−323に記載されている。
一般に、アデノウイルスは、宿主細胞への感染に続いて溶菌複製サイクルを経る。この感染細胞が溶解される他に、アデノウイルスのこの複製過程では、宿主細胞mRNAの輸送および翻訳がブロックされる結果、細胞のタンパク質合成が阻害される。アデノウイルスおよびアデノウイルスの複製に関する概説については、Shenk,T.およびHorwitz,M.S.の記載(Virology、第3版、Fields,B.N.ほか編、レイバンプレスリミテッド(Raven Press Limited)、ニューヨーク(New York)(1996年),第67および68章)を参照されたい。
遺伝子操作を応用することによって、アデノウイルス発現系を調製し、ワクチンを作製する試みがいくつか行われている。米国特許第6,001,591号、第5,820,868号および第6,319,716号では、ウシアデノウイルス発現ベクター系を用いた組換えタンパク質の作製法が開示されている。米国特許第6,492,343号では、ブタアデノウイルス発現ベクター系を用いた組換えタンパク質の作製法が開示されている。
米国特許第5,922,576号では、組換えアデノウイルス作製のための系が開示されている。
米国特許第5,922,576号では、組換えアデノウイルス作製のための系が開示されている。
Krasnykhほか(1996年、Journal of Virology、70:p6839)およびZabnerほか(1999年、Journal of Virology、73:p8689)は、ファイバー領域を修飾したヒトアデノウイルスベクターの作製法について報告している。Xuほか(1998年、Virology、248:p156−163)は、ヒト5型アデノウイルスのファイバー蛋白細胞結合ドメインを有するヒツジアデノウイルスについて開示している。ヒトアデノウイルスの14.3kDaの微量構造成分であるアデノウイルスキャプシドタンパク質IX(pIX)については、PCT公報第WO02/096939号および第WO01/58940号;Colbyほか(1981年、J Virol.39:p977−980);Akaluほか1999年、J.Virology、1999年、73:p6182−6187;およびDmitrievほか、2002年に開示されている。
全ての参考文献および特許公報は全文引用により本明細書に組み込まれている。
(発明の要約)
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)の細胞中に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含み、この細胞に結合することができるタンパク質を提供する。一部の例として、このアデノウイルスキャプシドタンパク質はヘキソン、ペントン、ファイバー、pIX、IIIa、VIおよびVIIIタンパク質からなる群から選ばれる。別の例として、このアデノウイルスは、ヒト、ブタ、ウシ、ヒツジなどの哺乳動物のアデノウイルスである。一部の例として、この哺乳動物のアデノウイルスは反芻動物のアデノウイルスである。別の例として、上記結合パートナーは、モノクロナール抗体などの抗体もしくはその断片である。一部の例として、この抗体は一本鎖抗体である。さらに別の例として、この抗体はGALT中に存在する上皮細胞に特異的に結合する。別の例として、この抗体はバイエル板中に存在する細胞に結合する。
別の例として、この抗体はミクロフォールド(M)細胞に結合する。別の例として、この抗体は哺乳動物のGALT内の細胞に存在する細胞表面結合部位に結合し、異種の哺乳動物種と交差反応する。一部の例として、この抗体はこの細胞の表面に存在するタンパク質に結合し、さらに別の例として、この細胞の表面に存在する糖質に結合する。
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)の細胞中に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含み、この細胞に結合することができるタンパク質を提供する。一部の例として、このアデノウイルスキャプシドタンパク質はヘキソン、ペントン、ファイバー、pIX、IIIa、VIおよびVIIIタンパク質からなる群から選ばれる。別の例として、このアデノウイルスは、ヒト、ブタ、ウシ、ヒツジなどの哺乳動物のアデノウイルスである。一部の例として、この哺乳動物のアデノウイルスは反芻動物のアデノウイルスである。別の例として、上記結合パートナーは、モノクロナール抗体などの抗体もしくはその断片である。一部の例として、この抗体は一本鎖抗体である。さらに別の例として、この抗体はGALT中に存在する上皮細胞に特異的に結合する。別の例として、この抗体はバイエル板中に存在する細胞に結合する。
別の例として、この抗体はミクロフォールド(M)細胞に結合する。別の例として、この抗体は哺乳動物のGALT内の細胞に存在する細胞表面結合部位に結合し、異種の哺乳動物種と交差反応する。一部の例として、この抗体はこの細胞の表面に存在するタンパク質に結合し、さらに別の例として、この細胞の表面に存在する糖質に結合する。
一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、このキャプシドタンパク質の一部もしくは全体をコードしている核酸および上記結合パートナーのアミノ酸配列をコードしている核酸を含むポリヌクレオチドによってコードさせる。別の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質はこの結合パートナーに結合させたこのキャプシドタンパク質の一部もしくは全体を含む。また、本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むアデノウイルスキャプシドを発現することができるキャプシド形成系、およびGALTの細胞に存在する細胞表面結合部位に結合させたキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む複合体を提供する。
また、本発明は、複製可能型および複製欠損型アデノウイルスベクターを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている組換えベクターを提供する。一部の例として、このアデノウイルスベクターは、ヒト、ブタ、ウシおよびヒツジアデノウイルスなどの哺乳動物のアデノウイルスベクターである。別の例として、この哺乳動物のアデノウイルスベクターは反芻動物のアデノウイルスベクターである。別の例として、ベクターは、さらにウシ、ブタおよびヒトアデノウイルスの配列を含むキャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列を含む。一部の例として、複製欠損型ウシアデノウイルスベクターは、E1機能を欠き、別の実施例として、E1遺伝子領域の一部もしくは全体の欠損および/またはE3遺伝子領域の一部もしくは全体の欠損を有する。さらに別の例として、ベクターは、さらに、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヒト、ネコおよびイヌの病原体を含む哺乳動物の病原体の抗原などの異種タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含む。また、本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質もしくはキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するベクターを含む免疫原性組成物、ワクチン組成物などの組成物、宿主細胞、およびウイルス粒子を包含する。一部の例として、組成物は、さらに薬学的に受容可能な賦形剤を含む。
また、本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するベクターもしくはウイルス粒子を含む免疫原性組成物を哺乳動物宿主に投与することを含む、哺乳動物宿主において免疫応答を誘発させる方法を提供する。一部の実施態様として、この免疫原性組成物は経口的に投与する。別の実施態様として、上記哺乳動物宿主細胞はウシもしくはヒツジなどの反芻哺乳動物である。
また、本発明は、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーをアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体に結合させることを含む、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を作製する方法であって、このキャプシドタンパク質はこのアデノウイルスキャプシドの表面に配置されるものとする方法を提供する。また、本発明は、キメラアデノウイルスベクターを発現することができるアデノウイルスベクターをこのベクターからのウイルス粒子形成を可能にする条件下で用いて形質転換させた、もしくはこのベクターを含む適切な宿主細胞を培養する工程、および任意選択的にこのウイルスを回収する工程を含む、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルスを調製する方法を提供する。
(発明の詳細な説明)
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクター、および消化管関連リンパ系組織(GALT)に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むアデノウイルスキャプシド(即ち、キメラアデノウイルスキャプシド)を発現するキャプシド形成系に関する。一部の例として、このアデノウイルスベクターは、特に哺乳動物のGALTを標的にしてタンパク質もしくはポリペプチドを送達するために用いる。一部の例として、このようなアデノウイルスベクター、キャプシド形成系およびアデノウイルスキャプシドは、GALTを標的にして哺乳動物の病原体の抗原などの抗原を送達することによりこの抗原に対する粘膜免疫応答を誘発させるのに用いる。一部の例として、上記結合パートナーは、モノクロナール抗体などの抗体もしくはその断片またはその最小認識単位である。例証となる例として、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーは、ウシ、ブタおよびヒツジの空腸パイエル板(PP)と交差反応性を有する(即ち、特異的に結合する)モノクロナール抗体である。このような抗体には、数種の哺乳動物のGALT内の細胞と交差反応する1種の結合パートナーを有するという利点がある。別の例として、この結合パートナーは、GALTミクロフォールド(M)細胞の細胞表面結合部位に特異的に結合する。家畜、特にウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に対してアデノウイルスベクターを経口ワクチンとして用いることは、多室胃が存在し、消化管内でベクターが分解するため、これまで問題があった。本発明は、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターなどのアデノウイルスベクター、およびこの結合パートナーを有しないかこの結合パートナーをコードしている核酸を有しない同様なアデノウイルスキャプシドもしくはアデノウイルスベクターよりも分解の程度が少ないこのアデノウイルスキャプシドを産生するキャプシド形成系を提供する。
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクター、および消化管関連リンパ系組織(GALT)に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むアデノウイルスキャプシド(即ち、キメラアデノウイルスキャプシド)を発現するキャプシド形成系に関する。一部の例として、このアデノウイルスベクターは、特に哺乳動物のGALTを標的にしてタンパク質もしくはポリペプチドを送達するために用いる。一部の例として、このようなアデノウイルスベクター、キャプシド形成系およびアデノウイルスキャプシドは、GALTを標的にして哺乳動物の病原体の抗原などの抗原を送達することによりこの抗原に対する粘膜免疫応答を誘発させるのに用いる。一部の例として、上記結合パートナーは、モノクロナール抗体などの抗体もしくはその断片またはその最小認識単位である。例証となる例として、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーは、ウシ、ブタおよびヒツジの空腸パイエル板(PP)と交差反応性を有する(即ち、特異的に結合する)モノクロナール抗体である。このような抗体には、数種の哺乳動物のGALT内の細胞と交差反応する1種の結合パートナーを有するという利点がある。別の例として、この結合パートナーは、GALTミクロフォールド(M)細胞の細胞表面結合部位に特異的に結合する。家畜、特にウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に対してアデノウイルスベクターを経口ワクチンとして用いることは、多室胃が存在し、消化管内でベクターが分解するため、これまで問題があった。本発明は、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターなどのアデノウイルスベクター、およびこの結合パートナーを有しないかこの結合パートナーをコードしている核酸を有しない同様なアデノウイルスキャプシドもしくはアデノウイルスベクターよりも分解の程度が少ないこのアデノウイルスキャプシドを産生するキャプシド形成系を提供する。
従って、本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーを含み、消化管関連リンパ系組織(GALT)内に存在するこの細胞(上記細胞表面結合部位)に結合することができるタンパク質を提供する。一部の例として、このアデノウイルスキャプシドタンパク質はこのアデノウイルスキャプシドの表面に配置される。GALT内の細胞に結合し、哺乳動物の病原体の抗原などの異種タンパク質を発現する本発明のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むベクター、特にアデノウイルスベクターは、哺乳動物に対して経口ワクチンとして用いるのに特に有利である。一部の例として、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は(例えば、ウシを免疫するのに用いられるウシアデノウイルスキャプシドタンパク質のように)GALT内の細胞と同種であり、別の例として、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は(ウシ以外の哺乳動物に対する免疫用にウシアデノウイルスキャプシドタンパク質を使用する場合のように)GALT内の細胞に対して異種である。
一部の例として、上記結合パートナーは、GALT内の細胞表面のタンパク質その他の構造、例えば、糖質に特異的に結合する抗体、例えば、モノクロナール抗体もしくはその断片である。一部の例として、この結合パートナーはGALTの上皮に存在する細胞に特異的に結合する。別の例として、この結合パートナーはGALTのミクロフォールド(M)細胞に特異的に結合する。一部の例として、本発明は、少なくとも1つのキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および上記結合パートナーをコードしている核酸を含むポリヌクレオチドによってコードされているキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を提供する。別の例として、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、この結合パートナーに共有結合もしくは共役または連結させたアデノウイルスキャプシドタンパク質一部もしくは全体を含む。従って、本発明は、キメラキャプシドタンパク質(およびこれをコードしているアデノウイルスベクター)を含むアデノウイルスキャプシドを提供する。また、本発明は、哺乳動物のGALT内の細胞に結合させたキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む複合体およびこのような複合体を含む組成物を提供する。
また、本発明は、上記キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしているポリヌクレオチドおよび少なくとも1つのアデノウイルスキャプシド形成配列を有する、アデノウイルスベクターを含むがこれに限定されるものではないウイルスベクターなどのベクターであって、アデノウイルスキャプシドを形成することができるベクターを提供する。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含む、複製可能型および複製欠損型アデノウイルスベクターなどのウイルスベクターを提供する。一部の例として、このアデノウイルスベクターは、複製に不可欠なアデノウイルスタンパク質をコードしている1つ以上の核酸を欠き、複製欠損型である。また、本発明は、本発明のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む宿主細胞およびウイルス粒子、ならびに特にワクチン組成物に用いるための本発明のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質およびベクターを作製し、使用する方法、免疫応答を誘発させる方法、およびタンパク質、例えば、病原体の抗原をコードしている核酸を標的細胞へ送達する方法に関する。
一部の例証となる例として、本発明は、アデノウイルスキャプシドpIXの一部もしくは全体を含むことを特徴とするキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、およびこのタンパク質を発現するベクターを提供する。一部の例として、前記結合パートナーは、哺乳動物のGALT内に存在する細胞に結合する抗体の断片もしくは最小認識単位である。
別の例として、本発明は、哺乳動物のGALT内の細胞に存在する細胞表面結合部位に対する一本鎖抗体の作製を提供する。一部の例として、特に、細胞(即ち、細胞表面結合部位)の結合パートナーは、GALT内に存在する細胞、例えば、M細胞に対する一本鎖抗体である。
別の例として、本発明は、哺乳動物のGALT内の細胞に存在する細胞表面結合部位に対する一本鎖抗体の作製を提供する。一部の例として、特に、細胞(即ち、細胞表面結合部位)の結合パートナーは、GALT内に存在する細胞、例えば、M細胞に対する一本鎖抗体である。
(一般的技術)
本発明の実施では、別の記載がない限り、当該分野の技術の範囲内にある(組換え技術を含む)分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を用いる。
このような技術については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookほか1989年)コールドスプリングハーバープレス社(Cold Spring Harbor Press);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984年);Methods in Molecular Biology、ヒューマナプレス社(Humana Press);Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998年)アカデミックプレス社(Academic Press);Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987年);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998年)プレナムプレス社(Plenum Press);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993−8年)ジョンワイリーアンドサンズ社(J.Wiley and Sons);Methods in Enzymology((アカデミックプレス社(Academic Press,Inc.));Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987年);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelほか編、1987年);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisほか編、1994年);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganほか編、1991年);Short Protocols in Molecular Biology(ジョンワイリーアンドサンズ社(Wiley and Sons))、1999年);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997年);Antibodies(P.Finch、1997年);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRLプレス社(IRL Press、1988−1989年);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、2000年)などの文献に詳しく説明されている。
本発明の実施では、別の記載がない限り、当該分野の技術の範囲内にある(組換え技術を含む)分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を用いる。
このような技術については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookほか1989年)コールドスプリングハーバープレス社(Cold Spring Harbor Press);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984年);Methods in Molecular Biology、ヒューマナプレス社(Humana Press);Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998年)アカデミックプレス社(Academic Press);Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987年);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998年)プレナムプレス社(Plenum Press);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993−8年)ジョンワイリーアンドサンズ社(J.Wiley and Sons);Methods in Enzymology((アカデミックプレス社(Academic Press,Inc.));Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987年);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelほか編、1987年);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisほか編、1994年);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganほか編、1991年);Short Protocols in Molecular Biology(ジョンワイリーアンドサンズ社(Wiley and Sons))、1999年);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997年);Antibodies(P.Finch、1997年);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRLプレス社(IRL Press、1988−1989年);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、2000年)などの文献に詳しく説明されている。
本明細書に用いている「キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質」とは、このタンパク質が少なくとも1つのアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体、および消化管関連リンパ系組織(GALT)内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むことを意味する。一部の例として、このアデノウイルスキャプシドタンパク質をこのアデノウイルスキャプシドの表面に配置することによって、上記結合パートナーはこのアデノウイルスキャプシドの表面にディスプレイされ、結合に利用可能となる。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、このキメラキャプシドタンパク質の結合パートナーがアデノウイルスキャプシドタンパク質のN末端の範囲内もしくはN末端に存在し、またはこのアデノウイルスキャプシドタンパク質のC末端の範囲内もしくはC末端に存在し、あるいは(上記結合パートナーをこのキャプシドの表面にディスプレイすることができる限り)アデノウイルスキャプシドタンパク質の内部に存在するタンパク質を包含する。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターがアデノウイルスキャプシドを形成することができる限り、このキャプシドの表面に配置された上記アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部を含むこのキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を包含する。一部の例として、このキメラキャプシドタンパク質の結合パートナーはアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体に融合させる、即ち、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、このアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体をコードしている核酸およびこの結合パートナーのアミノ酸配列をコードしている核酸を、中間に核酸配列が挿入されるか挿入されることなく、含むポリヌクレオチドによってコードさせる。別の例として、このキメラキャプシドタンパク質の結合パートナーは、当該分野で公知の任意の手段によってアデノウイルスキャプシドに共有結合もしくは共役または連結させる。この結合パートナーは、直接あるいはスペーサ基を介して間接的に結合もしくは共役または連結させることができる。アデノウイルスキャプシドタンパク質は当該分野で公知であり、本明細書にも記載している。Fields Virology第3版(Fieldsほか編、リッピンコット−レイバン社(Lippincott−Raven)出版、p2115)に記載されているように、アデノウイルスキャプシドタンパク質としては、ヘキソン、ペントン、ファイバータンパク質ならびにタンパク質IIIa、VI、VIIIおよびIXが挙げられる。本発明は、任意のアデノウイルスキャプシドタンパク質について、このタンパク質がアデノウイルスキャプシドの表面に配置され、もしくはこのキャプシドの表面に消化管関連リンパ系組織(GALT)内の細胞の細胞表面結合部位に対するドメインをディスプレイすることができる限り、その使用を含む。一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、このキャプシドの表面に配置された以下のアデノウイルスキャプシドタンパク質、即ち、ヘキソン、ペントン、ファイバー、pIXおよびIIIaのうちの少なくとも1種を包含する。一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、アデノウイルスキャプシドタンパク質IXの一部もしくは全体を含む。別の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、アデノウイルスキャプシドファイバータンパク質の一部もしくは全体を含む。本明細書に用いている「キャプシド形成系」とは、ベクター、および任意選択的に、アデノウイルスキャプシドの形成に必要なアデノウイルスの配列を含み、ウイルスタンパク質を含んでも含まなくてもよいヘルパー細胞を含むシステムのことを意味する。例えば、アデノウイルスの複製、アデノウイルスのキャプシド形成などに不可欠なウイルスタンパク質は、ヘルパー細胞によって形成させることができる。
本明細書に用いている「結合パートナー」とは、GALT組織内に存在する細胞の細胞表面結合部位に結合することができる任意の適切な分子もしくは物質のことを意味し、このようなものとしては、レクチン、もしくは(例えば、糖タンパク質、ムコタンパク質などの修飾タンパク質およびペプチドを含む)ペプチド;アミノ酸モチーフ、もしくはペプチドホルモンを構成するようなアミノ酸の短鎖;標的細胞に結合することができる構造内に単独で折り畳めるポリペプチドのドメイン;モノ−、ジ−およびオリゴサッカライドなどの糖質;脂質;ムチン分子;モノクロナール抗体を含むがこれに限定されない抗体もしくは細胞表面結合部位に結合することができるその断片、一本鎖の抗体、単一ドメイン抗体または抗体の最小認識単位などの細胞結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この結合パートナーは、抗体の一部(例えば、Fabフラグメント)もしくは合成抗体断片(例えば、ScFv)とすることができる。
免疫系の主要な構成要素である消化管関連リンパ系組織(GALT)は、当業者によって十分理解される用語であり、このような組織としては、バイエル板(PP)という小腸粘膜にあり、回腸PP、空腸PPおよび他の空腸にもみられることがある上皮下リンパ濾胞の集合体の細胞;この上を覆う絨毛のない上皮である特殊化したPPのミクロフォールド(M)細胞;PPの濾胞部上皮を含む腸上皮細胞、および腸細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。小腸および大腸のM細胞は、バイエル板のドーム領域および他のGALT組織に存在する。GALTに関する記載のために特に全文引用により本明細書に組み込まれているGebertほかの文献(1996年、Int.Rev.CytoL 167:91−151)を参照されたい。
本明細書に用いている「キャプシド形成に不可欠な領域」、「キャプシド形成領域」、「キャプシド形成に不可欠な配列」、「キャプシド形成配列」および「パッケージングドメイン」もしくは「パッケージングモチーフ」とは(これらは本明細書では同じ意味で使用しているが)、アデノウイルスDNAをアデノウイルスキャプシドに挿入するために必要なアデノウイルスゲノムの配列のことを意味する。一部の例として、キャプシド形成配列はシス作用性である。本発明は、キャプシド形成に不可欠なウシ、ヒツジ、ブタ、ヒトなどの任意の哺乳動物の配列について、この配列がアデノウイルスDNAをアデノウイルスキャプシドに挿入することができる限り、この配列の使用を包含するものである。キャプシド形成に不可欠な「ウシアデノウイルス」配列には、この配列がアデノウイルスDNAをアデノウイルスキャプシドに挿入することができる限り、キャプシド形成に不可欠な任意のウシアデノウイルスの配列が含まれる。本明細書に例証となる例を開示する。一部の例として、キャプシド形成に不可欠なウシアデノウイルスの配列はBAV−3配列である。「アデノウイルスベクターに対して異種であるキャプシド形成に不可欠なウシアデノウイルスの配列」とは、このアデノウイルスベクター配列がウシ以外のアデノウイルスの配列であるか、このアデノウイルスベクター配列がキャプシド形成に不可欠なウシアデノウイルスの配列と異なる血清型のウシアデノウイルスの配列であることを意味する。これらの異種のアデノウイルスベクター配列は限定されるものではなく、上記のキャプシド形成に不可欠なウシアデノウイルスの配列がアデノウイルスDNAをアデノウイルスキャプシドに挿入するよう機能することができる限り、任意のアデノウイルス配列とすることができる。一部の例として、キャプシド形成に不可欠なウシアデノウイルスの配列は、ウシアデノウイルス配列を含むアデノウイルスベクター内に用いる。本明細書では全てのBAV3ヌクレオチドの番号付けはこのアデノウイルスの左端を基準にしており、BAV3の基準配列はジェンバンク(GenBank)アセッション番号AF030154で規定されている。キャプシド形成に不可欠な「ブタアデノウイルス」配列には、この配列がアデノウイルスDNAをアデノウイルスキャプシドに挿入することができる限り、キャプシド形成に不可欠な任意のブタアデノウイルスの配列が含まれる。本明細書に例証となる例が開示されている。本明細書に用いている「アデノウイルスベクターに対して異種であるキャプシド形成に不可欠なブタアデノウイルスの配列」とは、このアデノウイルスベクター配列がブタ以外のアデノウイルスの配列であるか、キャプシド形成に不可欠な上記ブタアデノウイルスの配列と異なる血清型のものであることを意味する。こうした異種のアデノウイルスベクター配列は限定されるものではなく、上記のキャプシド形成に不可欠なブタアデノウイルスの配列がアデノウイルスDNAをアデノウイルスキャプシドに挿入するよう機能することができる限り、任意のアデノウイルス配列とすることができる。一部の例として、キャプシド形成に不可欠なブタアデノウイルスの配列を、ブタアデノウイルス配列を含むアデノウイルスベクター内に用いる。アデノウイルスベクターはキャプシド形成に不可欠な複数のアデノウイルス配列、例えば、複数の同一配列もしくは複数の異なる配列を含むように構築することができ、またはアデノウイルスベクターのキャプシド形成配列はこのアデノウイルスベクターに対して異種のものとすることができる。ヒトアデノウイルスのキャプシド形成配列は当該分野で公知である。例えば、Grableほか、1990年、J.Virol.64:p2047を参照されたい。
「アデノウイルスベクター」もしくは「アデノウイルス性ベクター」(これらは同じ意味で用いている)は、本発明のポリヌクレオチド構築体を含む。本発明のポリヌクレオチド構築体は、DNA、アデノウイルス外殻に封入したDNA、(単純疱疹、AAVなどの)別のウイルスもしくはウイルス様構造内にパッケージングしたDNA、リポソームに封入したDNA、ポリリジンと複合体を形成させたDNA、合成ポリカチオン分子と複合体を形成させたDNA、トランスフェリンと結合させたDNA、分子を免疫的に「マスク」し、および/または半減期を延長させるためにPEGなどの化合物と複合体を形成させたDNA、および非ウイルス性タンパク質と結合させたDNAを含むが、これらに限定されるものではない複数の形態のうちの任意の形態で用いることができる。このポリヌクレオチドはDNAであることが好ましい。本明細書に用いている「DNA」は、塩基A、T、CおよびGを含むばかりでなく、これらの塩基のアナログもしくは修飾型形態、例えば、メチル化ヌクレオチド、非荷電性結合、チオ酸エステルのようなヌクレオチド間修飾体、糖アナログの使用、ならびにポリアミドのような修飾型および/または代替的主鎖構造などのうちの任意の形態をも含む。アデノウイルスベクターは標的細胞内で複製可能型もしくは複製欠損型とすることができる。複製欠損型アデノウイルスベクターは、複製欠陥型(replication−deficient)アデノウイルスから欠けている複製に不可欠なアデノウイルスタンパク質を発現する適切なヘルパー細胞株中で増殖させることができる。本明細書では「複製欠陥型」と「複製欠損型(replication−defective)」とは同じ意味で用いている。
本明細書に用いている「向性の変化」という用語は、アデノウイルスの特異性を変えることを意味している。この「向性の変化」という用語は、アデノウイルスの組織もしくは細胞特異性を変えることだけでなく、種特異性を変えることも含む。本発明は、細胞特異性、例えば、GALT内に存在する細胞に対する細胞特異性を示すことに加え、種に対する向性の変化を示すこともあるキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、ベクター、アデノウイルスベクターおよびウイルス粒子を包含する。一部の例として、これらキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、ベクター、アデノウイルスベクターおよびウイルス粒子は、GALT内の標的細胞種に対して異種である。
「抗体」とは、その可変領域にある少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的、例えば、タンパク質、ペプチド、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書に用いているこの用語は、完全な状態のポリクロナールもしくはモノクロナール抗体ばかりでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要な特異性を有する抗原認識部位を含む上記免疫グロブリン分子の任意の他の修飾形態を包含する。抗体とは、IgG、IgA、IgM(もしくはこれらのサブクラス)などの全てのクラスの抗体を含み、この抗体は特定のクラスのものである必要はない。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、種々のクラスに割り振ることができる。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分類することができる。免疫グロブリンのこれらの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造についてはよく知られている。
「モノクロナール抗体」とは、このモノクロナール抗体が抗原の選択的な結合に関与する(天然もしくは非天然型)アミノ酸からなることを特徴とする均一な抗体集団のことを意味する。モノクロナール抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的とする。この「モノクロナール抗体」という用語は、完全な状態のモノクロナール抗体および完全長のモノクロナール抗体ばかりでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクロナール抗体、キメラモノクロナール抗体、ならびに必要な特異性を有する認識部位および抗原に対する結合能を有するこの免疫グロブリン分子の任意の他の修飾形態をも包含する。これは、この抗体の原料もしくはこれが作製される(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、遺伝子導入動物などによる)方法に関して限定されるものではない。
抗体もしくはポリペプチドに「特異的に結合する」もしくは「選択的に結合する」(これらは同じ意味で用いている)エピトープは、当該分野で十分理解される用語であり、このような特異的もしくは選択的結合を測定する方法についても当該分野でよく知られている。また、この用語は「抗原決定基」もしくは「抗原決定部位」と同じ意味で用いられている。分子が、ある特定の細胞もしくは物質に対して、別の細胞もしくは物質に対するよりも高頻度で、速やかに、持続的に、および/または高い親和力で反応もしくは結合する場合、この分子は「特異的な結合」もしくは「選択的な結合」を示すという。抗体が、ある標的に対して、別の物質に対するよりも高い親和力、結合力で、容易に、および/または持続的に結合する場合、この抗体はこの標的に「選択的に結合する」もしくは「特異的に結合する」。例えば、ミクロフォールド(M)細胞のエピトープに特異的もしくは選択的に結合する抗体は、このM細胞に対して、他のエピトープに対するよりも高い親和力、結合力で、容易に、および/または持続的に結合する抗体である。また、例えば、第1の標的に特異的もしくは選択的に結合する抗体(もしくは部分もしくはエピトープ)が第2の標的には特異的もしくは選択的に結合するかも知れないし、結合しないかも知れないことは、上記の定義の解釈により理解されよう。従って、「特異的な結合」もしくは「選択的な結合」は、排他的な結合を(含むことはあるが)必ずしも必要としない。結合への言及は選択的な結合を意味するのが一般的であるが、必ずしもそうとは限らない。抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖の可変領域もしくは抗体重鎖の可変領域のいずれか、またはこれらの組み合わせのことを意味する。抗体の「定常領域」とは、抗体軽鎖の定常領域もしくは抗体重鎖の定常領域のいずれか、またはこれらの組み合わせのことを意味する。
「抗原」とは、宿主の免疫系を賦活して液性および/または細胞性抗原特異的反応を行う1種以上のエピトープを含む分子のことを意味する。また、この用語は「免疫原」と同じ意味で用いられている。
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では同じ意味で用いており、任意の長さのアミノ酸のポリマーのことを意味する。このポリマーは直鎖型でも分枝型でもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。また、この用語は、自然もしくは介入による修飾、即ち、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、または標識成分への結合などの任意の他の処理もしくは修飾を受けたアミノ酸ポリマーを包含する。また、この定義の範囲内にあるものとしては、例えば、アミノ酸の1種以上のアナログ(例えば、非天然型アミノ酸など)および当該分野で公知の他の修飾体を含むポリペプチドがある。本発明のポリペプチドは抗体に基づくものであるので、こうした抗体が一本鎖もしくは結合(associated)鎖として存在し得ることは理解されよう。
本明細書に用いている「ベクター」という用語は、1つ以上の細胞種の形質導入/形質移入のために設計されたポリヌクレオチド構築体のことを意味する。ベクターは、例えば、挿入ヌクレオチドの単離、増殖および複製を行うために設計された「クローニングベクター」、宿主細胞内でヌクレオチド配列を発現させるために設計された「発現ベクター」、または組換えウイルスもしくはウイルス様粒子を作製するために設計された「ウイルスベクター」、あるいは1種以上のベクターの属性を有する「シャトルベクター」とすることができる。
「生ウイルス」とは、「死菌ウイルス」との対比で用いており、組織培養および接種動物で同一子孫を産生することができるウイルスのことを意味する。
「ヘルパーフリー」ウイルスベクターとは、このベクターに欠如しているものを補給するために別のウイルスもしくは細胞株を必要としないベクターである。「ヘルパー依存性」ウイルスベクターは、このベクターに欠如しているものを補給するための別のウイルスもしくは細胞株を必要とする。
「二本鎖DNA分子」とは、標準的な二本鎖ヘリックスとしてのデアキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミジンもしくはシトシン)の重合体構造のことを意味する。この用語は、この分子の一次および二次構造のみのことを指し、これをいかなる特定の三次構造にも限定するものではない。従って、この用語は、とりわけ線状DNA分子(例えば、ウイルス、プラスミドおよび染色体からのDNAの制限断片)内に存在する二本鎖DNAを含む。本明細書で特定の二本鎖DNA分子を論じる際、DNAの非転写鎖(即ち、そのmRNAに相同の配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向の配列のみを示すという通常の慣例に従って配列を記載する。
DNA「コーディング配列」とは、適切な調節配列の制御下に置いた場合、インビボで転写され、ポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。このコーディング配列の範囲は、5’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンとによって決まる。コーディング配列としては、原核生物の配列、真核mRNA、真核(例えば、哺乳動物の)DNAからのゲノムDNAからのcDNA、ウイルスDNA、さらには合成DNA配列を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コーディング配列の3’側にある。
「転写プロモータ配列」とは、細胞のRNAポリメラーゼに結合して下流(3’方向)のコーディング配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明の定義において、このプロモータ配列は、3’末端にコーディング配列の翻訳開始コドン(ATG)が結合しており、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最低限の数の塩基もしくはエレメントを含むように上流(5’方向)に伸びている。このプロモータ配列内には、(ヌクレアーゼS1によるマッピングにより都合良く規定される)転写開始部位、およびRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が存在する。多くの場合、真核プロモータは「TATA」ボックスおよび「CAAT」ボックスを含むが、必ずしもそうとは限らない。原核プロモータは−10および−35コンセンサス配列の他に、シャイン‐ダルガーノ配列を含む。
DNA「制御配列」とは、一括して、プロモータ配列、リボソーム結合部位、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、エンハンサ、翻訳終結配列などのことを意味し、これらは、共同して宿主細胞におけるコーディング配列の転写および翻訳を規定する。
コーディング配列、即ち、タンパク質をコードしている配列が細胞内で制御配列に「動作可能なように連結」され、もしくはその「制御下」にあると、RNAポリメラーゼがこのプロモータ配列に結合してコーディング配列をmRNAに転写し、次いで、これがこのコーディング配列によってコードされているポリペプチドに翻訳される。
「宿主細胞」とは、外来DNA配列によって形質転換されたか、形質転換され得る細胞である。
外来DNAが細胞膜内に導入された場合に、この細胞はこの外来DNAによって「形質転換された」という。外来DNAは、この細胞のゲノムを構成する染色体DNAに(共有結合によって)組み込まれる場合もあり、組み込まれない場合もある。例えば、原核生物および酵母では、外来DNAはプラスミドなどのエピソームエレメントに保持させることができる。安定的に形質転換された細胞とは、この外来DNAがその染色体中に組み込まれたことによってこれが染色体の複製を通じて娘細胞に受け継がれるような細胞である。
哺乳動物細胞の場合、この安定性は、この細胞がこの外来DNAを含む娘細胞の集団からなる細胞株もしくはクローンを形成する能力によって証明される。
哺乳動物細胞の場合、この安定性は、この細胞がこの外来DNAを含む娘細胞の集団からなる細胞株もしくはクローンを形成する能力によって証明される。
「クローン」とは、単一の細胞もしくは共通の祖先に由来する娘細胞の集団である。「細胞株」とは、多世代にわたってインビトロで安定増殖することができる初代細胞のクローンである。
DNA構築体の「異種」領域とは、自然界で他の分子と結合した形では存在しない別のDNA分子の内部にあるか、これに結合しているDNAの特定可能なセグメントである。
従って、この異種領域がウイルス遺伝子をコードしている場合、この遺伝子は、通常、元のウイルスもしくはウイルス感染細胞のゲノム内でこのウイルス遺伝子を挟んでいないDNAによって挟まれることになる。異種コーディング配列の別の例は、このコーディング配列自体が自然界に存在しない構築体(例えば、天然の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。対立遺伝子の変異もしくは自然界で生じる突然変異事象は、本明細書で言うDNAの異種領域をもたらさない。アデノウイルスベクターの説明において本明細書に用いている「異種哺乳動物キャプシド領域」もしくは「異種哺乳動物キャプシドタンパク質」とは、このキャプシドタンパク質がこのアデノウイルスベクターの種とは異なる哺乳動物の種から得ることができるか、哺乳動物種は同じであるが異なるタイプもしくはサブタイプのアデノウイルスから得ることができることを意味する。例えば、「異種哺乳動物キャプシドタンパク質」には、あるサブタイプの哺乳動物アデノウイルスキャプシドタンパク質を別のサブタイプの哺乳動物アデノウイルスキャプシドタンパク質で置換すること、もしくはある哺乳動物アデノウイルスキャプシドタンパク質を別の哺乳動物種のキャプシドタンパク質で置換することが含まれる。
従って、この異種領域がウイルス遺伝子をコードしている場合、この遺伝子は、通常、元のウイルスもしくはウイルス感染細胞のゲノム内でこのウイルス遺伝子を挟んでいないDNAによって挟まれることになる。異種コーディング配列の別の例は、このコーディング配列自体が自然界に存在しない構築体(例えば、天然の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。対立遺伝子の変異もしくは自然界で生じる突然変異事象は、本明細書で言うDNAの異種領域をもたらさない。アデノウイルスベクターの説明において本明細書に用いている「異種哺乳動物キャプシド領域」もしくは「異種哺乳動物キャプシドタンパク質」とは、このキャプシドタンパク質がこのアデノウイルスベクターの種とは異なる哺乳動物の種から得ることができるか、哺乳動物種は同じであるが異なるタイプもしくはサブタイプのアデノウイルスから得ることができることを意味する。例えば、「異種哺乳動物キャプシドタンパク質」には、あるサブタイプの哺乳動物アデノウイルスキャプシドタンパク質を別のサブタイプの哺乳動物アデノウイルスキャプシドタンパク質で置換すること、もしくはある哺乳動物アデノウイルスキャプシドタンパク質を別の哺乳動物種のキャプシドタンパク質で置換することが含まれる。
「天然型」タンパク質もしくはポリペプチドとは、アデノウイルスもしくはアデノウイルス感染細胞から回収されたタンパク質もしくはポリペプチドのことを意味する。従って、「天然型アデノウイルスポリペプチド」という用語は、天然のアデノウイルスタンパク質もしくはその断片を含むことになる。「非天然型」ポリペプチドとは、組換えDNA法もしくは直接合成により作製されたポリペプチドのことを意味する。「組換え」ポリペプチドとは、組換えDNA法により作製されたポリペプチド、即ち、所望のポリペプチドをコードしている外来DNA構築体により形質転換した細胞から産生されたポリペプチドのことを意味する。
組成物もしくはワクチンに対する「免疫応答」とは、対象とする組成物もしくはワクチンに対する細胞性および/または抗体媒介性免疫応答が宿主において形成されることである。通常、このような反応は、被験体が、対象とする組成物もしくはワクチンに含まれる抗原もしくは諸抗原を特異的に標的とする抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサT細胞および/または細胞傷害性T細胞を産生することからなる。
「免疫原性ポリペプチド」および「免疫原性アミノ酸配列」および「免疫原」という用語は、それぞれ、ウイルスの感染力を中和し、および/または抗体−補体もしくは抗体依存性細胞傷害を媒介して免疫された宿主を保護する抗体を誘導するポリペプチドもしくはアミノ酸配列のことを意味する。本明細書に用いている「免疫原性ポリペプチド」は、所望のタンパク質の完全長(もしくはほぼ完全長)の配列またはその免疫原性断片を包含する。
「免疫原性断片」とは、1種以上のエピトープを含むと共に、ウイルスの感染力を中和し、および/または抗体−補体もしくは抗体依存性細胞傷害を媒介して免疫された宿主を保護する抗体を誘導するポリペプチドの断片を意味する。通常、このような断片は、長さが少なくとも約5アミノ酸長、好ましくは少なくとも約10−15アミノ酸長である。この断片の長さには重要な意味を持つ上限はなく、ほぼ完全長のタンパク質、場合によっては2種以上の抗原の断片を含む融合タンパク質を含んでいてもよい。本明細書に用いている「処置」という用語は、ウシ、ヒツジ、ヒトその他の哺乳動物の処置、即ち、(i)感染もしくは再感染を防止すること(予防)または(ii)感染の症状を改善、軽減もしくは除去することを意味する。一部の例として、このワクチンは、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を産生する組換えアデノウイルスを含む。
「感染性の」とは、ウイルスゲノムを細胞内に送達する能力を有することである。
本明細書で同じ意味に用いている「ポリヌクレオチド」および「核酸」とは、ヌクレオチド、即ち、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドの任意の長さの重合体構造のことを意味する。これらの用語には、一本鎖、二本鎖もしくは三本鎖DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA−RNAハイブリッド、あるいはプリンおよびピリミジン塩基または他の天然型、化学的、生化学的修飾型、非天然型もしくは誘導体化型ヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。このポリヌクレオチドの主鎖は、(通常RNAもしくはDNA内に見ることができるような)糖およびリン酸基、または修飾もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含んでいてもよい。あるいは、このポリヌクレオチドの主鎖は、ホスホラミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含むことができ、従って、オリゴデオキシヌクレオシドホスホラミデート(P−NH2)もしくは混成ホスホラミデート−ホスホジエステルオリゴマーとすることができる。Peyrottesほか、(1996年)Nucleic Acids Res.24:p1841−8;Chaturvediほか、(1996年)Nucleic Acids Res.24:p2318−23;Schultzほか、(1996年)Nucleic Acids Res.24:p2966−73。ホスホジエステル連鎖の代わりにホスホロチオエート連鎖を用いることができる。Braunほか、(1988年)J.Immunol.141:p2084−9;Latimerほか、(1995年)Molec.Inmiunol.32:p1057−1064。さらに、二本鎖ポリヌクレオチドは、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド生成物をもとに、これの相補鎖を合成してこれらの鎖を適切な条件下でアニーリングすることにより、もしくはDNAポリメラーゼを適切なプライマーと共に用いてデノボでこの相補鎖を合成することにより、得ることができる。また、(配列番号への言及などの)ポリヌクレオチド配列への言及は、相補配列をも含む。
以下はポリヌクレオチドの例であるが、これらに限定されるものではない:遺伝子もしくは遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチド、ウラシル、他の糖およびフルオロリボース、チオエートなどの結合基、ならびにヌクレオチド分枝を含んでいてもよい。ヌクレオチドの配列には、非ヌクレオチド成分を割り込ませることができる。さらに、ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば標識成分と結合させることにより修飾することができる。この定義に含まれる別の種類の修飾には、キャップ、1つ以上の天然ヌクレオチドのアナログによる置換、およびこのポリヌクレオチドをタンパク質、金属イオン、標識成分、別のポリヌクレオチドもしくは固体担体に結合させるための手段の導入がある。ポリヌクレオチドはDNAであることが好ましい。本明細書に用いている「DNA」は、塩基A、T、CおよびGを含むばかりでなく、これらのアナログもしくはこれらの塩基の修飾型構造、例えば、メチル化ヌクレオチド、非荷電性結合、チオ酸エステルのようなヌクレオチド間修飾体、糖アナログの使用、ならびにポリアミドのような修飾型および/または代替的主鎖構造などのうちの任意のものをも含む。
別の配列に対して一定のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%もしくは95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域とは、アラインメントを行った場合に、このパーセンテージの塩基がこれら2つの配列の比較において同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性もしくは配列同一性パーセントは、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelほか編、1987年)サプルメント30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されているものを用いて調べることができる。アラインメントプログラムは、好ましくはデフォルトパラメータ:不一致=2;ギャップ開始=0;ギャップ延長=2を用いるアラインプラス(ALIGN Plus)(サイエンティフィックアンドエデュケーショナルソフトウェア社(Scientific and Educational Software)、ペンシルバニア州)とすることが好ましい。
「転写制御」下というのは、当該分野で十分理解される用語であり、通常DNA配列であるポリヌクレオチド配列の転写は、一部の例では、この配列が転写の開始に導き、転写を促進するエレメントに実施可能なように(動作可能なように)結合されていることに依存することがあり、別の例では、エンハンサの場合のように、遠く離れたところから作動させることができることを意味している。本明細書に記載しているウシおよびブタアデノウイルスE1転写制御領域は、エンハンサの役割を果たすと考えられ、プロモータ(もしくは他の制御エレメント)に動作可能なように結合させる必要がなく、対象遺伝子のプロモータ(もしくは他の制御エレメント)からある距離を置いて機能させることができる。
「動作可能なように結合させた」とは、これらのエレメントが機能可能な配列状態にあるような並置のされ方のことを意味する。
「動作可能なように結合させた」とは、これらのエレメントが機能可能な配列状態にあるような並置のされ方のことを意味する。
アデノウイルスとの関連において、「異種ポリヌクレオチド」もしくは「異種遺伝子」もしくは「異種導入遺伝子」とは、野性型アデノウイルスに存在しない任意のポリヌクレオチドもしくは遺伝子である。また、この導入遺伝子は、アデノウイルスベクターにより導入する前には標的細胞で発現されない、もしくは存在しないものであることが望ましい。
アデノウイルスとの関連において、「異種」プロモータもしくはエンハンサは、アデノウイルス遺伝子とは関連がない、もしくはこれに由来するものではないものである。
アデノウイルスとの関連において、「内在性」プロモータ、エンハンサもしくは制御領域とは、アデノウイルスに固有のもの、もしくはこれに由来するものである。
「複製」および「増殖」は同じ意味で用いており、本発明のアデノウイルスベクターの複製もしくは増殖能のことを意味する。これらの用語は当該分野で十分理解されよう。本発明では、複製は、アデノウイルスタンパク質の産生を含み、通常アデノウイルスの複製に関することである。複製は、バーストアッセイもしくはプラークアッセイなどの、当該分野で標準的な、本明細書に記載したアッセイ法により測定することができる。「複製」および「増殖」にはウイルスの生成過程に直接もしくは間接的に関与するすべての作用が含まれ、こうしたものとしては、ウイルス遺伝子の発現;ウイルスタンパク質、核酸その他の成分の産生;ウイルス成分の完全なウイルス内へのパッケージング;および細胞溶解が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ある配列番号「で示される」ポリヌクレオチド配列とは、この配列がその配列番号で示された配列内のものと同一の連続的な配列として存在することを意味する。この用語は、その配列番号の配列内に含まれる配列全体のみならず、この配列番号の配列内の部分もしくは領域も包含する。
「宿主細胞」には、本発明のアデノウイルスベクターの受容体となり得るか、受容体であることが分かっている個別細胞もしくは培養細胞が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、この子孫は、自然的、偶発的もしくは意図的な突然変異および/または変化という要因を背景として、元の親細胞と(形態もしくは全DNA相補体が)必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のアデノウイルスベクターを用いてインビトロもしくはインビボで形質移入もしくは感染させた細胞が含まれる。
「生体サンプル」とは、個体から得られる種々のサンプル型を含めて言い、診断分析もしくはモニタリング分析において用いることができる。この定義は、生体由来の血液その他の液体サンプル、生検材料などの固形組織サンプルまたはそれから得られる培養組織もしくは細胞、およびその子孫を含む。また、この定義は、獲得後に任意の方法で、例えば、試薬による処理、可溶化、もしくはタンパク質、ポリヌクレオチドなどの特定の成分の濃縮などによって処理されたサンプルを含む。「生体サンプル」という用語は臨床サンプルを含み、また、培養細胞、細胞上清、細胞可溶化物、血清、血漿、体液および組織サンプルも含む。
「個体」もしくは「哺乳類被験体」とは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタなどの家畜、スポーツ動物、齧歯動物、霊長類およびペットを含む脊椎動物である。反芻哺乳動物は当業者に知られており、ウシ、ヒツジ、シカ、キリン、ラクダなどの3もしくは4室の胃を有する有偶蹄の哺乳動物を含む反芻類亜目の哺乳動物またはこれに関連する哺乳動物のことを言う。
「有効量」とは、疾患による1種以上の症状の軽減;疾患に罹患している者の生活の質の向上;疾患の処置に必要な他の薬剤の用量低減;ターゲッティングなどによる他の治療組成物の効果の増強;疾患進行の遅延および/または疾患にかかりやすい個体の生存期間の延長;および/または動物用の場合、動物の体重増加の亢進;動物の体重減少の予防などの、臨床成績を含む有益もしくは所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与において投与することができる。本発明では、アデノウイルスベクターの有効量とは、疾患状態の増悪を緩和し、改善し、安定化させ、停止させ、緩徐化し、もしくは遅延させるのに十分な量である。
「発現」とは、転写および/または翻訳を含めて言う。
本明細書に用いている「含む(comprising)」という用語およびその同族語は包括的な意味で用いており、換言すれば、「包含する(including)」およびこれに相当する同族語と同義である。
本明細書に用いている「単離された(isolated)」とは、ポリペプチドもしくは核酸が自然界でこれらと結合している少なくとも1成分から分離されたことを意味する。
原文に用いている「A」、「an」および「the」は、文脈からはっきりと違ったふうに読み取れない限り、複数の内容を含む。
(アデノウイルス配列)
ヒトアデノウイルスについては少なくとも47種の血清型が報告されている。特定の疾患と関連づけられる最も一般的な血清型については総説が発表されている。例えば、Foy H.M.(1989年)Adenoviruses、Evans AS編、Viral Infections of Humans.ニューヨーク(New York)、プレナム出版(Plenum Publishing)、p77−89およびRubin B.A.(1993年)Clinical picture and epidemiology of adenovirus infections、Acta Microbiol.Hung 40:p303−323を参照されたい。ヒトアデノウイルスのキャプシドは正20面体対称を示し、252個のカプソマーを含む。これらのカプソマーは、240個のヘキソンおよび12個のペントンから成り、各ペントンの表面には突起ファイバーがある。これらのペントンおよびヘキソンは、種々のウイルスポリペプチドに由来する。抗体の型特異性に関与するこのファイバーは、ヒトの株間で長さが異なる。ヘキソンはグループ特異的補体結合抗体であるのに対し、ペントンは、特に赤血球凝集反応において活性がある(PlotkinおよびOrenstein、Vaccines、第3版、W.B.ソンダーズ社(W.B.Saunders Company)、フィラデルフィア(Philadelphia)、p609−623)。このファイバー領域は、アデノウイルスキャプシドの形成において成熟ファイバータンパク質とペントンベースとの結合に必要なホモ三量体構造をとっている。ファイバーは、このファイバー三量体のアミノ末端とペントンベース内の保存ドメインとの間の非共有相互作用によって、ペントンベースと結合する。アデノウイルスファイバータンパク質の球状カルボキシ末端ノブドメインがアデノウイルスの一次細胞受容体への結合のリガンドであることはこれまでに分かっている(Krasnykhほか(1996年)、Journal of Virology、70:p6839)。三量体ファイバー分子の遠位のC末端ドメインは、特定の一次受容体に対して高親和性で結合するノブ内に終わる。結合後、ペントンベース内のArg−Gly−Asp(RGD)モチーフが、二次受容体として機能する細胞インテグリンと相互作用する。この相互作用が引き金となって細胞内への取り込みが起こることにより、ビリオンがエンドソーム内に入る。このエンドソームの膜はペントンベースにより媒介されるプロセスにおいて溶解され、このエンドソームの内容物が細胞質へ放出される。これらのプロセスの間に、上記ビリオンは徐々に脱殻し、アデノウイルスDNAが核内に移送される(Shayakhmetovほか(2000年)Journal of Virology、74:p2567−2583)。ヒトアデノウイルスAd3、Ad4、Ad5、Ad9およびAd35はアメリカンティシューカルチャーコレクション(American Tissue Culture Collection)(ATCC)から入手可能である。Ad5の全米バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)GenBank登録番号はM73260/M29978;Ad9はX74659;Ad35はU10272である。Chowほか(1977年、Cell 12:p1−8)はヒトアデノウイルス2の配列、Davisonほか(1993年、J.Mole.Biol.234:p1308−1316)はヒトアデノウイルスタイプ40のDNA配列、Sprengelほか(1994年、J Virol.68:p379−389)はヒトアデノウイルスタイプ12DNAのDNA配列を開示している。国際公開番号第WO02/096939号に開示されているように、ヒトAd5pIX遺伝子は、E1B領域とE2領域との間、例えば、約3,609番目から約4,031番目のヌクレオチドの位置にあるA5アデノウイルスゲノムの左端に存在する。ヒトアデノウイルスキャプシドタンパク質IXの配列についてはPCT公開番号第WO01/58940号に開示されている。
ヒトアデノウイルスについては少なくとも47種の血清型が報告されている。特定の疾患と関連づけられる最も一般的な血清型については総説が発表されている。例えば、Foy H.M.(1989年)Adenoviruses、Evans AS編、Viral Infections of Humans.ニューヨーク(New York)、プレナム出版(Plenum Publishing)、p77−89およびRubin B.A.(1993年)Clinical picture and epidemiology of adenovirus infections、Acta Microbiol.Hung 40:p303−323を参照されたい。ヒトアデノウイルスのキャプシドは正20面体対称を示し、252個のカプソマーを含む。これらのカプソマーは、240個のヘキソンおよび12個のペントンから成り、各ペントンの表面には突起ファイバーがある。これらのペントンおよびヘキソンは、種々のウイルスポリペプチドに由来する。抗体の型特異性に関与するこのファイバーは、ヒトの株間で長さが異なる。ヘキソンはグループ特異的補体結合抗体であるのに対し、ペントンは、特に赤血球凝集反応において活性がある(PlotkinおよびOrenstein、Vaccines、第3版、W.B.ソンダーズ社(W.B.Saunders Company)、フィラデルフィア(Philadelphia)、p609−623)。このファイバー領域は、アデノウイルスキャプシドの形成において成熟ファイバータンパク質とペントンベースとの結合に必要なホモ三量体構造をとっている。ファイバーは、このファイバー三量体のアミノ末端とペントンベース内の保存ドメインとの間の非共有相互作用によって、ペントンベースと結合する。アデノウイルスファイバータンパク質の球状カルボキシ末端ノブドメインがアデノウイルスの一次細胞受容体への結合のリガンドであることはこれまでに分かっている(Krasnykhほか(1996年)、Journal of Virology、70:p6839)。三量体ファイバー分子の遠位のC末端ドメインは、特定の一次受容体に対して高親和性で結合するノブ内に終わる。結合後、ペントンベース内のArg−Gly−Asp(RGD)モチーフが、二次受容体として機能する細胞インテグリンと相互作用する。この相互作用が引き金となって細胞内への取り込みが起こることにより、ビリオンがエンドソーム内に入る。このエンドソームの膜はペントンベースにより媒介されるプロセスにおいて溶解され、このエンドソームの内容物が細胞質へ放出される。これらのプロセスの間に、上記ビリオンは徐々に脱殻し、アデノウイルスDNAが核内に移送される(Shayakhmetovほか(2000年)Journal of Virology、74:p2567−2583)。ヒトアデノウイルスAd3、Ad4、Ad5、Ad9およびAd35はアメリカンティシューカルチャーコレクション(American Tissue Culture Collection)(ATCC)から入手可能である。Ad5の全米バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)GenBank登録番号はM73260/M29978;Ad9はX74659;Ad35はU10272である。Chowほか(1977年、Cell 12:p1−8)はヒトアデノウイルス2の配列、Davisonほか(1993年、J.Mole.Biol.234:p1308−1316)はヒトアデノウイルスタイプ40のDNA配列、Sprengelほか(1994年、J Virol.68:p379−389)はヒトアデノウイルスタイプ12DNAのDNA配列を開示している。国際公開番号第WO02/096939号に開示されているように、ヒトAd5pIX遺伝子は、E1B領域とE2領域との間、例えば、約3,609番目から約4,031番目のヌクレオチドの位置にあるA5アデノウイルスゲノムの左端に存在する。ヒトアデノウイルスキャプシドタンパク質IXの配列についてはPCT公開番号第WO01/58940号に開示されている。
ウシアデノウイルス(BAV)は、2つのサブグループに分類される少なくとも9種の血清型を含む。これらのサブグループは、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイによる血清学的検討、ウイルス中和試験、免疫電子顕微鏡法に基づき、またこれらの宿主特異性および臨床症状によって特徴付けられている。サブグループ1のウイルスとしてはBAV1、2、3および9が挙げられ、これらは、BAV4、5、6、7および8を含むサブグループ2と比較してウシ株化細胞内で比較的よく増殖する。
BAV3は1965年に最初に単離され、BAV遺伝子型の中で最も特徴が明らかにされており、約35kbのゲノムを含んでいる(Kurokawaほか(1978年)、J.Virol.28:p212−218)。Reddyほか(1999年、Journal of Virology、73:p9137)は、発現ベクターとしての複製欠損型BAV3について開示している。代表的なサブグループ1のBAVであるBAV3(Bartha(1969年)、Acta Vet.Acad.Sci.Hung.19:p319−321)は、通常不顕性感染を生じるウシの代表的な病原体である(Darbyshireほか(1965年)、J.Comp.Pathol.75:p327−330)が、時として比較的重篤な気道感染症を起こすことがある(Darbyshireほか、1966年、Res.Vet.Sci.7:p81−93;Mattsonほか、1988年、J.Vet Res 49:p67−69)。他のアデノウイルスと同様に、BAV3は線状二本鎖DNA分子を含む直径75nmのエンベロープを有さない20面体の粒子(Niiyamaほか(1975年)、J.Virol.16:p621−633)である。BAV3は、ハムスターに注射すると腫瘍を引き起こすことができ(Darbyshire、1966年、Nature 211:p102)、ウイルスDNAは、マウス、ハムスターもしくはラットの培養細胞に対し効率よく形態変換をもたらすことができる(TsukamotoおよびSugino、1972年、J.Virol.9:p465−473;Motoi、1972年、Gann 63:p415−418)。ゲノムの左端ではなくその近傍のいくつかの領域を含むゲノムの大部分の領域において、BAV3とヒトアデノウイルスタイプ2(HAd2)との交差ハイブリッド形成が認められた(Huほか、1984年、J Virol.49:p604−608)。Reddyほか(1998年、Journal of Virology、72:p1394)は、BAV3のヌクレオチド配列、ゲノム構成および転写マップについて開示している。また、Reddyほか(1998年、Journal of Virology、上記と同じ)は、BAV3のヌクレオチド配列について開示している。BAV3のポリヌクレオチド配列では、ペントン領域は12,919番目から始まって14,367番目に終わり、ヘキソン領域は17,809番目から始まって20,517番目に終わり、ファイバー領域は27,968番目から始まって30,898番目に終わる。ファイバータンパク質のノブ領域(もしくはドメイン)は残基TLWTモチーフの後から始まる。BAV3の転写マップについては、特に引用により本明細書に組み込まれている米国公開特許出願US2002−0034519A1に開示されている。BAV3キャプシドpIX領域についてはZhengほか、(1994年、Virus Research 31:p163−186)に開示されている。BAV3キャプシドタンパク質は、ジェンバンク(GenBank)アセッション番号AF03154に基づいた以下のヌクレオチド(nt)範囲によってコードされている:pIX nt3,200から3,577番目;IIIa nt11,098から12,804番目;VI nt16,871から17,662番目およびVIII nt25,803から26,453番目。別のウシアデノウイルスキャプシドタンパク質も当該分野で知られている。ウシアデノウイルス発現系については、1998年10月31日に付与された米国特許第5,820,868号、2001年11月20日に付与された同第6,319,716号、および米国公開特許出願US2002−0034519A1に開示されている。
種々のPAV血清型のゲノムのセグメントについてヌクレオチド配列が決定されている。PAV−3のE3、pVIIIおよびファイバー遺伝子の配列は、Reddyほか(1995年)、Virus Res.36:p97−106によって決定された。PAV−1およびPAV−2のE3、pVIIIおよびファイバー遺伝子の配列は、Reddyほか(1996年)、Virus Res.43:p99−109によって決定され、一方、PAV−4のE3、pVIIIおよびファイバー遺伝子配列は、Kleiboeker(1994年)、Virus Res.31:p17−25によって決定された。PAV−4のファイバー遺伝子配列はKleiboeker(1995年)Virus Res.39:p299−309によって決定された。5種のPAV血清型(PAV−1からPAV−5まで)の全ての逆方向末端反復(ITR)配列がReddyほか(1995年)、Virology 212:p237−239によって決定された。PAV−3ペントン配列はMcCoyほか(1996年)、Arch.Virol.141:p1367−1375によって決定された。PAV−4のE1領域のヌクレオチド配列はKleiboeker(1995年)、Virus Res.36:p259−268によって決定された。PAV−3のプロテアーゼ(23K)遺伝子の配列はMcCoyほか(1996年)、DNA Seq.6:p251−254によって決定された。PAV−3ヘキソン遺伝子の配列(および23Kプロテアーゼ遺伝子の14個のN末端コドン)はジェンバンク(GenBank)のデータベースにアセッション番号U34592として寄託されている。PAV−3 100K遺伝子の配列はジェンバンク(GenBank)のデータベースにアセッション番号U82628として寄託されている。PAV−3 E4領域の配列はReddyほか(1997年)、Virus Genes 15:p87−90によって決定された。交差中和研究によってPAVの少なくとも5種の血清型の存在が明らかにされている。Derbyshireほか(1975年)、J Comp.Pathol.85:p437−443およびHiraharaほか、(1990年)、Jpn.J.Vet.Sci.52:p407−409を参照されたい。PAVゲノムに関するこれまでの研究は、PAVタイプ3(PAV−3)の制限マップを決定し、PAV−3の完全なゲノムを表す制限断片をクローニングするものであった。Reddyほか(1993年)、Intervirology 36:p161−168を参照されたい。さらに、PAV−1およびPAV−2の制限マップが決定されている。Reddyほか(1995年b)Arch.Virol.140:p195−200を参照されたい。1999年10月21日公開のPCT公開番号WO 99/53047および米国特許第6,492,343号ではPAV−3の転写マップが提供されており、これらについては特に引用により本明細書に組み込まれている。具体的には、Reddyほか(1998年、Virology、251:p414−426)に開示されているPAV3配列に関して、PAV−3 pIX遺伝子の転写開始部位はポリヌクレオチドの3377番目にあり(3394番目にはATGがある)、ポリAはポリヌクレオチドの4085番目にある。
Vratiほか、1995年(Virology、209:p400−408)およびVratiほか、1996年(Virology、220:p186)は、ヒツジアデノウイルスの配列について開示している。
本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質およびこれを発現するベクター、特にアデノウイルスベクターであって、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は少なくとも1つのアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)の細胞中に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含むものとし、このアデノウイルスキャプシドタンパク質はこのアデノウイルスキャプシドの表面に配置され、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は消化管関連リンパ系組織(GALT)内に存在するこの細胞に結合することができるものとするタンパク質およびベクターを提供する。このようなキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むベクター、特にアデノウイルスベクターは、哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)の細胞中に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含まない同様なアデノウイルスベクターと比較した場合、哺乳動物のGALTへタンパク質もしくは抗原を送達するために、および経口ワクチンとして特に有利である。理論にとらわれるまでもなく、GALT内の細胞の細胞表面の特定部位に対する結合パートナーの存在によりGALT内の細胞に結合することができる本発明のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むベクター、特にアデノウイルスベクターは、結合パートナーを含まない同様なベクターと比較してこのベクターの消化管での分解が少ないため、ウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に対して経口ワクチンとして用いるのに特に有利である。別の例として、結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターを用いることにより、例えば、このベクターを結合パートナーの担体に吸着させることによって、このベクターの精製が可能となる。このような方法は当該分野で公知である。
本発明は、任意のアデノウイルスキャプシドタンパク質について、このタンパク質がそのキャプシドの表面に配置され、もしくはそのキャプシドの表面に結合パートナーをディスプレイすることができる限り、その使用を包含する。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターがアデノウイルスキャプシドを形成することができる限り、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部を含むこのキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を包含する。従って、本発明は、キメラキャプシドタンパク質を含むアデノウイルスキャプシド、ならびにこのアデノウイルスキャプシドを含む宿主細胞および組成物を提供する。本発明は、GALT組織内に存在する細胞に結合させたキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む複合体を包含する。さらに、アデノウイルスキャプシドは、例えば、異種の細胞に結合でき、従って異種の細胞への本発明に包含されるアデノウイルスの結合を可能にする、別のタンパク質もしくは糖質などの他の物質を発現させるように改変することができる。さらに、例えば、ヒト病原体の抗原を発現し、GALT内のヒト細胞の細胞表面結合部位と融合してウシアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するアデノウイルス利用ワクチン組成物は、ヒト細胞、即ち、ヒト細胞表面結合部位に特異的に結合する物質を発現させるように遺伝子操作することができる。このようなアデノウイルスベクターでは、ウシアデノウイルスによりヒトの抗原をGALT内に存在するヒト細胞を標的にして送達し、これによってヒトアデノウイルスの使用でみられる中和抗体産生の可能性が少なくなるという利点が得られる。さらに、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むベクターは、特にワクチン用の病原体の抗原などの別のタンパク質を発現させるように改変することができる。
一部の例として、上記のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質およびこのタンパク質を発現するベクターは、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を用意することにより、組換えDNA法で作製する。キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸の一部もしくは全体は、当業者に公知の化学的手段によって合成することができる。このような核酸はインビトロでベクターに結合させることができる。別の例として、GALT内の細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーは、キャプシドの表面に配置されるアデノウイルスキャプシドタンパク質に、一部の例ではアデノウイルスキャプシドを形成させた後に、共有結合もしくは共役または連結させる。結合パートナーは、アデノウイルスキャプシドタンパク質に直接共有結合もしくは共役または連結させることができ、もしくはアデノウイルスキャプシドタンパク質に、例えば、スペーサを用いることによって、間接的に共有結合もしくは共役または連結させることができる。ファイバータンパク質、pIXタンパク質などのアデノウイルスキャプシドタンパク質は、O’Sullivanほか(1979年、Anal. Biochem. 100:p100−108)に一般的に記載されているようなポリペプチドを架橋結合させる従来の方法のうちの任意の方法によって、結合パートナーと結合させることができる。例えば、結合パートナーをチオール基リッチなものにし、このウイルスもしくはウイルス様粒子の表面の分子、例えば、上記pIXタンパク質を、このチオール基と反応することができる二官能性物質、例えば、ヨード酢酸のN−ヒドロキシサクシンイミドエステル(NE11A)もしくはN−サクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)と反応させることができる。例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシンイミドエステルを用いて得られるアミドおよびチオエステル結合は、ジスルフィド結合よりも一般にインビボで安定である。オリゴ糖および脂質をポリペプチドに結合させるのには他の化学的方法が有用と考えられる。また、結合パートナーとキャプシドタンパク質との共有結合は、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはその誘導体などのポリマーを用いて行うこともできる(例えば、国際公開番号第WO99/40214号;Bioconjugate Techniques、1996、p606−618;G Hennanson編、Academic PressおよびFrischほか、1996年、Bioconjugate Chem.7:p180−186を参照されたい)。また、結合パートナーとキャプシドタンパク質とは、例えば、静電相互作用によって、もしくは結合パートナー同士を結合させることができるプロテインA、ビオチン/アビジンなどの親和性成分を用いて非共有結合させることもできる。また、本発明では、例えば、結合パートナーをキャプシドタンパク質に結合する抗体を用いて、免疫的に結合させることもできる。例えば、Rouxほか(1989年、Proc.Natl.Acad Sci USA 86:p9079)により開示された方法に従って、キャプシド表面のキャプシドタンパク質に対するビオチニル化抗体および結合パートナーに対するストレプトビジン標識抗体を用いることが可能である。また、これらの結合パートナーのそれぞれに対する二価抗体もこの目的に適している。一部の例として、結合パートナーは、アデノウイルスキャプシドが形成された後にこのアデノウイルスキャプシドに結合させる。
一部の例として、上記のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質およびこのタンパク質を発現するベクターは、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を用意することにより、組換えDNA法で作製する。キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸の一部もしくは全体は、当業者に公知の化学的手段によって合成することができる。このような核酸はインビトロでベクターに結合させることができる。別の例として、GALT内の細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーは、キャプシドの表面に配置されるアデノウイルスキャプシドタンパク質に、一部の例ではアデノウイルスキャプシドを形成させた後に、共有結合もしくは共役または連結させる。結合パートナーは、アデノウイルスキャプシドタンパク質に直接共有結合もしくは共役または連結させることができ、もしくはアデノウイルスキャプシドタンパク質に、例えば、スペーサを用いることによって、間接的に共有結合もしくは共役または連結させることができる。ファイバータンパク質、pIXタンパク質などのアデノウイルスキャプシドタンパク質は、O’Sullivanほか(1979年、Anal. Biochem. 100:p100−108)に一般的に記載されているようなポリペプチドを架橋結合させる従来の方法のうちの任意の方法によって、結合パートナーと結合させることができる。例えば、結合パートナーをチオール基リッチなものにし、このウイルスもしくはウイルス様粒子の表面の分子、例えば、上記pIXタンパク質を、このチオール基と反応することができる二官能性物質、例えば、ヨード酢酸のN−ヒドロキシサクシンイミドエステル(NE11A)もしくはN−サクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)と反応させることができる。例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシンイミドエステルを用いて得られるアミドおよびチオエステル結合は、ジスルフィド結合よりも一般にインビボで安定である。オリゴ糖および脂質をポリペプチドに結合させるのには他の化学的方法が有用と考えられる。また、結合パートナーとキャプシドタンパク質との共有結合は、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはその誘導体などのポリマーを用いて行うこともできる(例えば、国際公開番号第WO99/40214号;Bioconjugate Techniques、1996、p606−618;G Hennanson編、Academic PressおよびFrischほか、1996年、Bioconjugate Chem.7:p180−186を参照されたい)。また、結合パートナーとキャプシドタンパク質とは、例えば、静電相互作用によって、もしくは結合パートナー同士を結合させることができるプロテインA、ビオチン/アビジンなどの親和性成分を用いて非共有結合させることもできる。また、本発明では、例えば、結合パートナーをキャプシドタンパク質に結合する抗体を用いて、免疫的に結合させることもできる。例えば、Rouxほか(1989年、Proc.Natl.Acad Sci USA 86:p9079)により開示された方法に従って、キャプシド表面のキャプシドタンパク質に対するビオチニル化抗体および結合パートナーに対するストレプトビジン標識抗体を用いることが可能である。また、これらの結合パートナーのそれぞれに対する二価抗体もこの目的に適している。一部の例として、結合パートナーは、アデノウイルスキャプシドが形成された後にこのアデノウイルスキャプシドに結合させる。
本明細書に開示した一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質はアデノウイルスキャプシドタンパク質IX(pIX)を含む。アデノウイルスキャプシド「pIX」という用語は、当該分野では十分理解されるものであり、ウイルスもしくはウイルス様粒子のキャプシド内に組み込まれることが知られているアデノウイルスゲノムによってコードされているpIXタンパク質のことを意味する。アデノウイルスキャプシドpIXは、本明細書に記載されているような通常の組換え法によりアデノウイルスゲノムから単離することができ、また、任意の供給源から単離することができる。本明細書で説明した例のアデノウイルスキャプシドpIXはBAV3から得ることができる。別のアデノウイルスキャプシドpIXは、本明細書に記載されていて公共データベースからも入手可能なヌクレオチドおよびアミノ酸に基づき特定することができる。別の例として、アデノウイルスキャプシドタンパク質はアデノウイルスファイバータンパク質である。一部の例として、キメラキャプシドタンパク質の結合パートナーは、アデノウイルスキャプシドタンパク質のN末端の範囲内もしくはN末端に存在し、またはアデノウイルスキャプシドタンパク質のC末端の範囲内もしくはC末端に存在し、あるいは(キメラキャプシドタンパク質がこのキャプシドの表面に結合パートナーをディスプレイすることができる限り)アデノウイルスキャプシドタンパク質の内部に存在する。N末端ドメインなどのビリオンキャプシドに埋め込まれたキャプシドタンパク質の場合、リンカーを用いることによってこのキャプシド表面における結合パートナーのディスプレイを容易にすることができる。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターがアデノウイルスキャプシドを形成することができる限り、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部を含むこのキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を包含する。国際公開番号第WO02/096939号には、ヒトアデノウイルスキャプシドpIXがそのN末端において高度に保存されており、理論にとらわれるまでもなく、このキャプシドのキャプシド的構造特性に不可欠となる場合があることが開示されている。国際公開番号第WO02/096939号には、このヒトアデノウイルスキャプシドpIXのC末端はロイシンの反復配列を含み、理論にとらわれるまでもなく、トランス活性化機能に重要であると考えられると共に、ここを修飾してもpIXの構造機能に変化はないことが開示されている。一部の例として、アデノウイルスキャプシドpIXタンパク質を修飾することにより、結合パートナーを、そのC末端の範囲内もしくはC末端に配置し、一部の例では、そのC末端よりアミノ酸約40個分、アミノ酸約30個分、アミノ酸約20個分、アミノ酸約10個分、もしくはアミノ酸約5個分だけ前に配置する。この挿入は、pIXの残基間に行うことができ、もしくはpIXの残基を置換することによって行うことができる。別の例として、アデノウイルスキャプシドpIXタンパク質を修飾することにより、結合パートナーを、そのN末端の範囲内もしくはN末端に配置し、一部の例では、そのN末端よりアミノ酸約40個分、アミノ酸約30個分、アミノ酸約20個分、アミノ酸約10個分、もしくはアミノ酸約5個分だけ前に配置する。この挿入は、pIXの残基間に行うことができ、もしくはpIXの残基を置換することによって行うことができる。特に引用により本明細書に組み込まれている国際公開番号第WO01/58940号に開示されているように、別の修飾を行ってキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターとすることにより、哺乳動物宿主の中和抗体形成能を低下させることができる。pIXのC末端内に異種タンパク質を含むBAV−3について開示している、特に引用により本明細書に組み込まれているZakhartchoukほか、2004年、Virology,vol.320:p291−300を参照されたい。
本発明は、ベクター、および任意選択的に、アデノウイルスキャプシドの形成に必要なアデノウイルスの配列を含み、ウイルスタンパク質を含んでいてもいなくてもよいヘルパー細胞を含むキャプシド形成系の使用を包含する。例えば、アデノウイルスの複製もしくは、例えば、アデノウイルスのキャプシド形成に不可欠なウイルスタンパク質は、ヘルパー細胞により供給させることができ、もしくはベクーを用いて供給させることができる。
このベクターは、ウイルスの複製に必要な核酸配列を含み、キャプシド形成に必要な核酸配列を含んでいてもよい複製可能型アデノウイルスベクター;複製に必要な配列、例えば、複製のためにE1機能(即ち、E1機能タンパク質)を発現するヘルパー細胞を必要とするE1機能をコードしている核酸を欠く複製欠損型アデノウイルス;またはキャプシド形成に必要なアデノウイルスの配列を含むベクターであって、アデノウイルスタンパク質はヘルパー細胞もしくはアデノウイルスタンパク質を含むベクターによって供給されるものとし、キャプシド形成に必要なアデノウイルスの配列はヘルパー細胞により供給されるものとするベクターとすることができる。全ての例において、このベクターは、さらに、病原体の抗原などのタンパク質をコードしている異種核酸を含むことができる。
このベクターは、ウイルスの複製に必要な核酸配列を含み、キャプシド形成に必要な核酸配列を含んでいてもよい複製可能型アデノウイルスベクター;複製に必要な配列、例えば、複製のためにE1機能(即ち、E1機能タンパク質)を発現するヘルパー細胞を必要とするE1機能をコードしている核酸を欠く複製欠損型アデノウイルス;またはキャプシド形成に必要なアデノウイルスの配列を含むベクターであって、アデノウイルスタンパク質はヘルパー細胞もしくはアデノウイルスタンパク質を含むベクターによって供給されるものとし、キャプシド形成に必要なアデノウイルスの配列はヘルパー細胞により供給されるものとするベクターとすることができる。全ての例において、このベクターは、さらに、病原体の抗原などのタンパク質をコードしている異種核酸を含むことができる。
(結合パートナー)
GALT内に存在する細胞の結合パートナーは、GALT組織内に存在する細胞の表面結合部位に結合することができる分子もしくは物質であり、このようなものとしては、レクチンなどの細胞結合性タンパク質もしくは(例えば、糖タンパク質、ムコタンパク質などの修飾タンパク質およびペプチドを含む)ペプチド;アミノ酸モチーフ、もしくはペプチドホルモンを構成するようなアミノ酸の短鎖;標的細胞に結合することができる構造内に単独で折り畳めるポリペプチドのドメイン;オリゴ糖などの糖質;脂質;ムチン分子;モノクロナール抗体を含むがこれに限定されない抗体もしくは細胞の表面結合部位に結合することができるその断片、一本鎖の抗体、単一ドメインからなる抗体または抗体の最小認識単位が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質がアデノウイルスキャプシドの表面に存在する結合パートナーを含むことにより、このキメラキャプシドタンパク質は標的細胞の細胞表面結合部位に結合することが可能になる。本明細書に用いている「標的細胞」とは、ベクターもしくはウイルスの導入および/または感染を目的とする細胞である。本明細書に用いている「GALT組織の標的細胞」としては、パイエル板の細胞、パイエル板(PP)の上皮細胞を含むGALTの任意の組織の上皮細胞およびパイエル板のM細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の例として、上記標的細胞は哺乳動物の空腸PP細胞である。
GALT内に存在する細胞の結合パートナーは、GALT組織内に存在する細胞の表面結合部位に結合することができる分子もしくは物質であり、このようなものとしては、レクチンなどの細胞結合性タンパク質もしくは(例えば、糖タンパク質、ムコタンパク質などの修飾タンパク質およびペプチドを含む)ペプチド;アミノ酸モチーフ、もしくはペプチドホルモンを構成するようなアミノ酸の短鎖;標的細胞に結合することができる構造内に単独で折り畳めるポリペプチドのドメイン;オリゴ糖などの糖質;脂質;ムチン分子;モノクロナール抗体を含むがこれに限定されない抗体もしくは細胞の表面結合部位に結合することができるその断片、一本鎖の抗体、単一ドメインからなる抗体または抗体の最小認識単位が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質がアデノウイルスキャプシドの表面に存在する結合パートナーを含むことにより、このキメラキャプシドタンパク質は標的細胞の細胞表面結合部位に結合することが可能になる。本明細書に用いている「標的細胞」とは、ベクターもしくはウイルスの導入および/または感染を目的とする細胞である。本明細書に用いている「GALT組織の標的細胞」としては、パイエル板の細胞、パイエル板(PP)の上皮細胞を含むGALTの任意の組織の上皮細胞およびパイエル板のM細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の例として、上記標的細胞は哺乳動物の空腸PP細胞である。
パイエル板は、特殊化したリンパ−上皮が被さったリンパ濾胞の経粘膜クラスターを含み、腸管における粘膜免疫応答の誘起において役割を果たしている(Makalaほか2002年、Pathobiology、70:p55−68)。この上皮は、粘膜免疫応答の惹起部位として機能する有機的な粘膜リンパ組織に少量の管腔物質を送達することによって免疫防御に中心的な役割を果たしている。こうした部位のリンパ濾胞は、粒子および巨大分子の経上皮移送に特化したユニークな細胞であるミクロフォールド(M)細胞を含む濾胞部上皮によって覆われている。このM細胞は、抗原および病原体の進入路となっている。(Giannascaほか1994年、Am.J.Physiol.267(Gastrointest.Liver Physiol.30):G1108−G1121)。本発明は、GALTのパイエル板の細胞、特に上皮細胞およびM細胞の表面のタンパク質もしくは糖質などの他の構造の結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質(およびこのようなキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現することができるベクター、特にアデノウイルスベクターなどのウイルスベクター)を包含する。このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現し、病原体の抗原などの異種タンパク質を発現するアデノウイルスベクターは、複製可能型もしくは複製欠損型とすることができる。一部の例として、結合パートナーが免疫系への抗原の進入路となるパイエル板M細胞に結合する場合、複製欠損型もしくは複製可能型アデノウイルスを用いる。
別の例として、結合パートナーが上皮細胞などのGALTもしくはパイエル板の他の組織に結合する場合、M細胞の近傍で多くのウイルス粒子を産生させるために複製可能型アデノウイルスを用いる。このようなアデノウイルスベクターおよびこのベクターを含むウイルス粒子は、このベクターおよびこれにより発現される抗原の哺乳動物、特に反芻哺乳動物への送達、特に経口ワクチンの送達のために用いる。
別の例として、結合パートナーが上皮細胞などのGALTもしくはパイエル板の他の組織に結合する場合、M細胞の近傍で多くのウイルス粒子を産生させるために複製可能型アデノウイルスを用いる。このようなアデノウイルスベクターおよびこのベクターを含むウイルス粒子は、このベクターおよびこれにより発現される抗原の哺乳動物、特に反芻哺乳動物への送達、特に経口ワクチンの送達のために用いる。
特に引用により本明細書に組み込まれているGiannascaほか(1994年、Am.J Physiol.267(Gastrointest.Liver Physiol.30):G1108−G1121)では、マウスの腸M細胞の複合糖質について報告されている。簡単に言えば、マウス腸の切片の免疫組織化学的分析にレクチンおよび抗体プローブ(表1に示された)が用いられた。表2には、M細胞を含むマウスパイエル板上皮のレクチン/抗体結合パターンが示されている。Giannascaほかの報告から明らかなように、α(1−2)−フコース特異的レクチンであるハリエニシダタイプI(UEA)レクチン(Pereira、1978年、Arch.Biochem.Biophys.185:p108−115);ヨーロッパウナギ(AAA)レクチン(Kelly、1984年、Biochem.J.220:p221−226);およびロータス豆(LTA)レクチン(Pereira、1974年、Biochemistry 13:p3184−3192)は濾胞部上皮(FAE)のM細胞に選択的に結合する。M細胞に特有のこれらの分子の特定は、通常の手段を用いて、哺乳動物のパイエル板のM細胞を標的とする抗体などの結合パートナーを開発するのに利用される。
特に引用により本明細書に組み込まれているGebertほか(1994年、Cell Tissue Res.276:p213−221)の報告には、ブタパイエル板のM細胞マーカとしてのサイトケラチン(Cytokeratin)18について記載されている。Gebertほかは、サイトケラチン18抗体のCK5、CY90およびKS−B17.2(これらは全てシグマ社(Sigma)から入手可能)について報告している。
ブタM細胞に結合するこの分子の特定は、通常の手段を用いて、哺乳動物のパイエル板のM細胞を標的とする抗体などの結合パートナーを開発するのに利用される。
ブタM細胞に結合するこの分子の特定は、通常の手段を用いて、哺乳動物のパイエル板のM細胞を標的とする抗体などの結合パートナーを開発するのに利用される。
特に引用により本明細書に組み込まれているPappoほか(1989年、Cellular Immunology、120:p31−41)の報告には、ウサギGALTの濾胞上皮M細胞を認識するモノクロナール抗体の作製および特性決定について記載されている。Pappoほかによる1989年の上記文献では、モノクロナール抗体5D9および5B11はウサギのFAEからの食作用性M細胞を認識することが記載されている。
本明細書に記載した実施例では、ウシおよびブタの空腸パイエル板(PP)、回腸PPおよび空腸組織と交差反応するヒツジ小腸の上皮細胞に対するモノクロナール抗体を作製した。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、キメラアデノウイルスキャプシドを発現することができるキャプシド形成系、ならびに少なくとも1つのアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体およびヒツジ小腸上皮細胞に対するモノクロナール抗体もしくはその結合断片を含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するアデノウイルスベクターなどのベクターを包含する。一部の例として、このモノクロナール抗体は、ウシ、ヒツジおよびブタのGALT組織内の細胞表面結合部位と交差反応性である。このような抗体には、数種の哺乳動物のGALT内の細胞と交差反応する1つの結合パートナーを有するという利点がある。一部の例として、アデノウイルスベクターは、アデノウイルスキャプシドタンパク質IXの一部もしくは全体およびヒツジ小腸上皮細胞に対するモノクロナール抗体の断片を含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現する。一部の例として、結合パートナーは、一本鎖抗体、一部の例では、別の哺乳動物種のGALTと交差反応する哺乳動物のGALT内の細胞に対するモノクロナール抗体をベースとした一本鎖抗体である。一本鎖抗体は、当該分野で公知の方法、例えば、特に引用により本明細書に組み込まれているEugganほか(2001年、Virol.Immunology、14:p263)の方法に基づいて作製する。
特定のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質の哺乳動物のGALT組織への結合については、免疫組織化学染色などの組織化学染色を含む当該分野で公知の任意の手段によりアッセイする。例えば、GALTの上皮細胞もしくはM細胞などの対象とする細胞を含むことが確認されている哺乳動物GALT組織の断面を、適切な条件下で適切に標識したキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質と接触させる。次いで、このキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質の特定細胞への結合を検出する。哺乳動物のGALTの断面については、Gebertほか、前記文献のInternational Review of Cytology、第167巻に示されている。さらに、モノクロナール抗体もしくはその結合断片を含む、GALT内の細胞表面に存在する細胞マーカもしくはタンパク質に対する抗体は、当業者に公知であり、本明細書にも記載した手段により作製する。
(キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質の作製)
本明細書に開示した一部の例では、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は組換えDNA法により作製する。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含むアデノウイルスベクターなどのベクターを提供する。分子クローニングおよびウイルス構築については当該分野で一般に知られている。一部の例として、アデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターは、結合パートナーをコードしている核酸にインビトロで結合させた後、当該分野で公知の手段によって宿主細胞内に導入する。一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質および/または導入遺伝子をコードしているポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルスベクターは、プラスミドとアデノウイルスゲノムとの間のインビボ組換えによって構築する。一般に、導入遺伝子は所望のアデノウイルスゲノムの一部を含むプラスミドベクターに挿入し、一部の例では、このアデノウイルスゲノムはウイルスタンパク質をコードしている1つ以上のアデノウイルス配列の突然変異、例えば欠損を有する場合がある。一部の例として、E1領域などのウイルス複製に不可欠なタンパク質機能領域をコードしているアデノウイルス配列を突然変異、例えばE1配列の一部もしくは全体を欠損させる。別の例として、このアデノウイルスは複製可能型である。導入遺伝子は、プラスミドベクターのアデノウイルス挿入部分に挿入することにより、アデノウイルスゲノム上で隣接しているアデノウイルス配列によって挟む。こうしたアデノウイルス配列は、「ガイド配列」としての役目を果たすことによりアデノウイルスゲノム内の特定の部位への導入遺伝子の挿入を誘導するが、その挿入部位はガイド配列の遺伝子位置によって決まる。哺乳動物アデノウイルスのパッケージング配列は、当業者に公知の手段によってアデノウイルスベクターに付加することができる。
本明細書に開示した一部の例では、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は組換えDNA法により作製する。本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含むアデノウイルスベクターなどのベクターを提供する。分子クローニングおよびウイルス構築については当該分野で一般に知られている。一部の例として、アデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクターは、結合パートナーをコードしている核酸にインビトロで結合させた後、当該分野で公知の手段によって宿主細胞内に導入する。一部の例として、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質および/または導入遺伝子をコードしているポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルスベクターは、プラスミドとアデノウイルスゲノムとの間のインビボ組換えによって構築する。一般に、導入遺伝子は所望のアデノウイルスゲノムの一部を含むプラスミドベクターに挿入し、一部の例では、このアデノウイルスゲノムはウイルスタンパク質をコードしている1つ以上のアデノウイルス配列の突然変異、例えば欠損を有する場合がある。一部の例として、E1領域などのウイルス複製に不可欠なタンパク質機能領域をコードしているアデノウイルス配列を突然変異、例えばE1配列の一部もしくは全体を欠損させる。別の例として、このアデノウイルスは複製可能型である。導入遺伝子は、プラスミドベクターのアデノウイルス挿入部分に挿入することにより、アデノウイルスゲノム上で隣接しているアデノウイルス配列によって挟む。こうしたアデノウイルス配列は、「ガイド配列」としての役目を果たすことによりアデノウイルスゲノム内の特定の部位への導入遺伝子の挿入を誘導するが、その挿入部位はガイド配列の遺伝子位置によって決まる。哺乳動物アデノウイルスのパッケージング配列は、当業者に公知の手段によってアデノウイルスベクターに付加することができる。
上記プラスミドベクターは、一般に、クローニングした配列の複数のコピーの作製を可能にする細菌プラスミドである。一実施態様として、このプラスミドは、適切な宿主細胞内に、アデノウイルスゲノムもしくはその一部と同時形質移入する。このアデノウイルスゲノムは、ビリオンから単離することができ、もしくは分子生物学およびバイオテクノロジーの標準的な技術を用いてプラスミドに挿入されたゲノムを含むことができる。一部の例として、アデノウイルスベクターの配列は、例えば、E1、E3、E4および/またはE4とこのゲノムの右端との間の領域および/またはL1〜L5などの後期領域のような領域を欠損させることができる。アデノウイルスゲノムは、不可欠な機能領域がヘルパー細胞株によって供給される場合、E1などの不可欠な領域を欠損させることができる。ブタのE1A、E1BラージおよびE4ORF3はPAV3のウイルス複製に不可欠であることが明らかにされている。PAV3の場合、E1A領域は、Reddyほか、1998年、Virology 251:p414−426に開示されているPAV3配列に関して533番目のヌクレオチドから1,222番目のヌクレオチドまでであり、E1Bスモールは、Reddyほかの上記文献に関して1,461番目のヌクレオチドから2,069番目のヌクレオチドまでであり、E1Bラージ領域は、Reddyほかの上記文献の1,829番目のヌクレオチドから3,253番目のヌクレオチドまでである。E1BスモールおよびE1Bラージヌクレオチド領域は重なり合っており、識別的に転写される。PAVベクターの目的とする用途にもよるが、E1Bスモール領域の一部もしくは全体を欠損させたPAV構築体を作製することができる。例えば、E1B機能全体を欠損させることを目的とする場合、1,461番目から3,253番目のヌクレオチドのE1Bヌクレオチド領域全体を欠損させることができ、もしくは1,461番目から2,069番目のヌクレオチド領域を欠損させることができ(これによりE1BスモールおよびE1Bラージの機能が共に阻害される)、または1,461番目から2,069番目の領域と、さらに2,069番目から3,253番目のヌクレオチドのうちの任意の部分とを欠損させることができる。E1Bスモールヌクレオチドは欠損させるがE1Bラージの機能を保持させることを目的とする場合は、1,461番目から1,829番目のヌクレオチドを欠損させ、E1Bラージのヌクレオチド領域を完全な状態で残す。PAVのE4ORF3は複製に不可欠であることが明らかにされている。PAVのE4ORF3は、Reddyほかの上記文献に示されているPAV配列の約nt32,656からnt33,033までである。一部の例として、アデノウイルスベクターは、複製に不可欠な全ての配列がヘルパーウイルスによって与えられる限り、ウイルスタンパク質をコードしている複数の核酸配列を欠損させる。
クローニングした導入遺伝子のウイルスゲノム内への挿入は、(アデノウイルスガイド配列に挟まれた導入遺伝子を含む)プラスミドベクターおよびアデノウイルスゲノムを適切な宿主細胞内に同時形質移入させた後、これらの間でインビボ組換えを行うことにより実施することができる。このアデノウイルスゲノムは、ウイルスDNAの複製開始に必要な逆方向末端反復(ITR)配列を含むものとする(Reddyほか(1995年)、Virology 212:p237−239)。クローニングした導入遺伝子をこのアデノウイルスゲノム内に組み込むことにより、この導入遺伝子配列はアデノウイルスの配列を含むDNA分子内に配置される。
クローニングした導入遺伝子をこのアデノウイルスゲノム内に組み込むことにより、こうした配列は、このアデノウイルスが複製欠損型であっても複製に不可欠なアデノウイルスの機能領域を発現するヘルパー細胞株などの適切なヘルパー細胞株内で複製させ、パッケージングすることができるDNA分子中に配置される。単一の導入遺伝子配列の複数のコピーを挿入することによってこの遺伝子産物の収率を向上させることができ、もしくは複数の導入遺伝子配列を挿入することにより、その組換えウイルスに2種以上の異種遺伝子産物を発現させることができる。こうした導入遺伝子配列に付加、欠損および/または置換を施すことによって発現される遺伝子産物の発現および/または免疫学的効果を増強させることができる。
また、異種の配列へのガイド配列の結合は、インビトロの連結反応によって達成することもできる。この場合、アデノウイルスガイド配列に挟んだ導入遺伝子配列を含む核酸はアデノウイルスゲノムと共に宿主細胞内に同時導入させることができ、組換えが行われることによって組換えアデノウイルスベクターが得られる。細胞内への核酸の導入は当該分野で公知の任意の方法によって達成することができ、このような方法としては、微量注入、形質移入、電気穿孔、CaPO4沈降、DEAE−デキストラン、リポソーム、微粒子銃などを用いる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一実施態様として、適切な制限酵素で野性型アデノウイルスゲノムを切断してこのゲノムの一部分であるアデノウイルス制限断片を作製することにより組換えアデノウイルス発現カセットを得ることができる。この制限断片はプラスミドなどのクローニング媒体内に挿入することができ、その後、(異種タンパク質をコードしていてもしていなくてもよい)少なくとも1つの導入遺伝子配列を、動作可能なように結合させた真核性転写調節配列を有するか有しないアデノウイルス領域内に挿入することができる。この組換え発現カセットは、上記アデノウイルスゲノムと接触させ、相同組換え法その他の通常の遺伝子操作法を用いて所望の組換え体を得る。その場合、これらのDNA構築体は、適切な宿主細胞の形質転換もしくは形質移入の前もしくは後にアデノウイルスゲノムとの組換えをインビトロもしくはインビボで行わせることができる。
異種配列の挿入部位を得るため、もしくは別の部位への挿入キャパシティを増やすためのアデノウイルス配列の削除、またはアデノウイルスE3遺伝子領域などの配列の付加は、当業者に公知の方法により遂行することができる。例えば、プラスミド内でクローニングしたアデノウイルス配列の場合、(このアデノウイルスの挿入断片内に少なくとも1つの認識配列を有する)1種以上の制限酵素で消化させた後、連結反応を行わせると、これらの制限酵素認識部位間の配列が削除される場合がある。あるいは、このアデノウイルスの挿入断片内の単一の制限酵素認識部位で消化させた後、エキソヌクレアーゼで処理し、次いで連結反応を行わせると、この制限部位に隣接したアデノウイルス配列が削除される。上記のようにして構築した、1箇所以上の欠損を有するアデノウイルスゲノムの1つ以上の部分を含むプラスミドを完全長のアデノウイルスゲノムを含むプラスミドと共に細菌細胞内に同時形質移入することによって、相同的組換えが起こり、特定部位に欠損を有するアデノウイルスゲノムを含むプラスミドが得ることができる。次いで、この特定部位に欠損を有するアデノウイルスゲノムを含むプラスミドを用い、適切な哺乳動物細胞、例えば、アデノウイルスベクターから削除された相補アデノウイルスヌクレオチド配列を含む哺乳動物細胞を形質移入することにより、上記欠損(もしくは付加)を有するアデノウイルスビリオンを得ることができる。
組換えアデノウイルスベクター内の挿入配列の発現はその挿入部位によって左右されることになる。従って、挿入部位はアデノウイルスのプロモータの近傍および(転写の観点から)下流とすることができる。挿入部位として用いるためのアデノウイルスプロモータの下流の制限酵素認識配列の位置については、当該分野で公知のアデノウイルスヌクレオチド配列から当業者が容易に決定することができる。また、特定部位への制限酵素認識配列の挿入もしくは制限酵素認識配列を含まない部位への異種配列の挿入には種々のインビトロによる方法を用いることができる。このような方法としては、1種以上の制限酵素認識配列を挿入するためのオリゴヌクレオチド媒介性ヘテロ二本鎖形成法(例えば、Zollerほか(1982年)Nucleic Acids Res.10:p6487−6500;Brennanほか(1990年)Roux’s Arch.Dev.Biol.199:p89−96;およびKunkelほか(1987年)Meth.Enzymology 154:p367−382参照)ならびに比較的長い配列を挿入するためのPCR媒介法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Zhengほか(1994年)Virus Research 31:p163−186を参照されたい。
別の例として、アデノウイルスベクターは、さらに、異種導入遺伝子の5’側のイントロンであって、このベクターは、異種導入遺伝子を含むがこの異種導入遺伝子の5’側にイントロンを有しない同様のアデノウイルスベクターよりもこの異種導入遺伝子を高いレベルで発現することができるものとするイントロンを含むことができる。アデノウイルス系内にイントロンを使用することについては、全文引用により本明細書に組み込まれている米国出願公開公報第2002−0064859号に開示されている。
また、異種配列がさらに真核細胞内で活性のある転写調節配列を含む場合には、アデノウイルスプロモータから下流にない部位に挿入されたこの導入遺伝子もしくは異種核酸を発現させることも可能である。このような転写調節配列としては、例えばウシhsp70プロモータなどの細胞プロモータならびに、例えば、ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびパポバウイルスプロモータなどのウイルスプロモータ、ならびに長い末端反復(LTR)配列のDNAコピーを挙げることができる。
別の例として、原核細胞内での相同組換え法を利用してアデノウイルスゲノムをクローニングすることができ、このクローニングされたアデノウイルスゲノムをプラスミドとして増殖させることができる。プラスミドを含む細胞から回収したこのクローニングされたアデノウイルスゲノムで哺乳動物細胞を形質移入することにより、感染性ウイルスを得ることができる。
適切な宿主細胞としては、アデノウイルスゲノムとアデノウイルス配列を含むプラスミドとの間の組換え、もしくはそれぞれがアデノウイルス配列を含む2種以上のプラスミド間の組換えに対応できる任意の細胞が挙げられる。組換えは、一般に大腸菌などの原核細胞を用いて行うが、ウイルスゲノムを含むプラスミドの形質移入によるウイルス粒子の作製は、ウシ培養細胞、ヒト培養細胞およびブタ培養細胞を含む哺乳動物細胞などの真核細胞を用いて行う。細菌培養細胞の増殖方法ならびに真核細胞および哺乳動物細胞株の培養および維持方法は、当業者には公知である。従って、本発明は、本発明のアデノウイルスベクターを含む宿主細胞を提供する。また、本発明はウイルスベクターを含むウイルス粒子を提供する。
本発明の一例として、病原体の抗原などの導入遺伝子を発現させるために、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現することができる複製欠損型組換えアデノウイルスベクターを用いる。一部の例として、この複製欠損型アデノウイルスベクターはE1領域の機能を欠くものである(即ち、これはE1機能性タンパク質を欠くものである)。別の例として、このアデノウイルスベクターは複数のアデノウイルス遺伝子をコードしている核酸を欠くものである。導入遺伝子の配列は、アデノウイルスの欠損(諸)領域と置き換わるように挿入することができ、および/またはこのゲノム内の他の部位に挿入することができる。不可欠な領域に欠損を有する複製欠損型ベクターは、この欠損した機能を提供するヘルパー細胞株内で増殖させる。
従って、本発明は、アデノウイルスベクター内の欠損したアデノウイルス諸領域を補完するのに必要なアデノウイルス(諸)領域を含む発現カセットを構築し、これを用いて宿主細胞を形質転換して欠損機能を提供する補完性細胞株もしくは培養細胞を得ることにより、本発明に従って作製した組換えヘルパー細胞株を提供する。一部の例として、このアデノウイルスベクターは、複製に不可欠なE1領域を欠くものであり、上記宿主細胞はこのアデノウイルスE1領域で形質転換する。「補完性(complementing)細胞」、「補完性細胞株」、「ヘルパー細胞」および「ヘルパー細胞株」という用語は、本明細書では同じ意味でもちいており、欠損型アデノウイルスベクターに欠けているウイルス機能を提供する細胞株のことを意味する。こうした組換え補完性細胞株は欠損型組換えアデノウイルスが複製し、1種以上の導入遺伝子もしくはその断片を発現するのを可能にすることができる。
より一般的に言えば、アデノウイルスゲノムによりコードされている1種以上の不可欠な機能領域を欠如している複製欠損型組換えアデノウイルスベクターは、特定の補完性細胞株が特定の欠損型組換えアデノウイルスベクターに欠如している機能もしくは諸機能を提供することを特徴とする適切な補完性細胞株内で増殖させることができる。補完性細胞株は、例えば、ヘルパーウイルスと同時感染させることによって、または特定のウイルス機能領域をコードしているウイルスゲノムの断片を組み込むか安定な形で維持させることによって、ウイルス機能を提供することができる。本発明の別の実施態様として、ベクターが欠損する機能領域を発現するウイルスを用いて細胞を同時感染させることによりアデノウイルス機能を供給すること(これにより補完性細胞株を得ること)ができる。別の例として、本発明は、抗原の病原体などの導入遺伝子を発現させるのに用いるキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現することができる複製可能型アデノウイルスベクターを提供する。
本発明は、1つ以上の哺乳動物パッケージングドメインを含むアデノウイルスベクターなどのベクターを包含する。ウイルスゲノムの左端を基準としてヌクレオチドの位置(nt)約224から約540番目に局在するBAV−3の主要なシス作用性パッケージングドメインが同定されている。従って、本発明は、ウシアデノウイルスキャプシド形成配列を含むベクターを包含する。また、本発明は、E1転写制御領域に修飾部位を有するアデノウイルスベクターを包含する。BAVE1転写制御領域は、上記シス作用性パッケージングドメインおよびBAV−3ゲノムの左末端を基準として約537から約560番目のヌクレオチドと部分的に重なる、BAV−3ゲノムの左末端を基準として約224から約382番目のヌクレオチドを含む。BAV−3ヌクレオチドは全て基準配列のジェンバンク(GenBank)アセッション番号AF030154に関するものである。本発明は、BAV、ならびに1つ以上のE1転写制御領域が修飾されているBAVベクターであって、この修飾は1つ以上のE1転写制御領域の一部もしくは全体の欠損および/または付加とすることができるベクターを包含する。本発明は、BAV、ならびに1つ以上の追加的な単離ウシアデノウイルスE1転写制御領域の一部もしくは全体を含むBAVベクターであって、この付加配列は同じE1転写制御領域でも別のE1転写制御領域でもよいものとするベクターを包含する。本発明は、BAV、および単離ウシアデノウイルスE1転写制御領域の一部もしくは全体を欠損しているBAVベクターを包含する。
BAdV−3の左側ITRはE1Aプロモータのコアエレメントを含むと予想される。
このBAdV−3の左側ITRについてDNA配列を解析したところ、CCAATボックス(nt 45−49)、TATA様ボックス(nt 68−72)、およびGCボックスの大部分(nt 108−209)の存在が明らかとなった。BAV−3ヌクレオチドは全て基準配列のGenBank登録番号AF030154に関するものである。本発明は、複製可能型ウシアデノウイルスの使用を包含する。また、本発明は、E1Aプロモータを含む複製可能型ウシアデノウイルスを包含する。一部の例として、この複製可能型アデノウイルスは、不可欠でない遺伝子領域(即ち、E3領域の一部もしくは全体などの複製に不可欠ではないゲノム領域)を欠損し、本明細書に記載したE1Aプロモータと共に不可欠なE1遺伝子領域を含む(保持する)。
このBAdV−3の左側ITRについてDNA配列を解析したところ、CCAATボックス(nt 45−49)、TATA様ボックス(nt 68−72)、およびGCボックスの大部分(nt 108−209)の存在が明らかとなった。BAV−3ヌクレオチドは全て基準配列のGenBank登録番号AF030154に関するものである。本発明は、複製可能型ウシアデノウイルスの使用を包含する。また、本発明は、E1Aプロモータを含む複製可能型ウシアデノウイルスを包含する。一部の例として、この複製可能型アデノウイルスは、不可欠でない遺伝子領域(即ち、E3領域の一部もしくは全体などの複製に不可欠ではないゲノム領域)を欠損し、本明細書に記載したE1Aプロモータと共に不可欠なE1遺伝子領域を含む(保持する)。
PAV3にパッケージング能を与えることができるPAV3の6つのATリッチのモチーフの特性が明らかにされている。本発明は、キャプシド形成に不可欠なPAVアデノウイルス配列を含む組換えベクターを提供する。PAV3のキャプシド形成配列を以下の表に示した。
表Iはこれらの領域の一覧表である。
(表I)
(PAV3のパッケージング配列のアラインメント)
(PAV3のパッケージング配列のアラインメント)
(表II)
(PAV5の予想パッケージング配列のアラインメント)
(PAV5の予想パッケージング配列のアラインメント)
(対象導入遺伝子)
本発明は導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターを包含する。また、本発明は、サブユニットワクチンおよび核酸免疫に用いるための、哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジその他の哺乳動物の種々の病原体の防御決定基をコードしている異種核酸配列を含むベクターを包含する。代表的なヒト病原体抗原としては、HIVウイルス抗原および肝炎ウイルス抗原が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なブタ病原体抗原としては、仮性狂犬病ウイルス(PRV)gp50;伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)S遺伝子;ブタ呼吸繁殖障害症候群ウイルス(PRRS)の遺伝子、特にORF3、4および5;ブタ伝染性下痢症ウイルスの遺伝子;ブタコレラウイルスの遺伝子;ブタパルボウイルスの遺伝子;およびブタインフルエンザウイルスの遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なウシ病原体抗原としては、ウシヘルペスウイルスタイプ1;ウシ下痢症ウイルス;およびウシコロナウイルスが挙げられる。以上列挙したものは限定的なものではなく、本発明では他の任意の導入遺伝子を対象として用いることができる。場合によっては、特定抗原の遺伝子は多数のイントロンを含んでいてもよく、もしくはRNAウイルス由来のものでもよく、こうした場合には相補DNAコピー(cDNA)を用いることができる。また、(タンパク質をコードしているヌクレオチド配列の断片が防御免疫応答もしくは特定の生物学的作用を生じるのに十分である場合)野性型生物に存在するような完全な配列ではなく、単にこうした断片を用いることも可能である。入手可能な場合には、合成遺伝子もしくはその断片を用いることもできる。しかしながら、本発明は多種多様な遺伝子、断片などと共に用いることができ、上述のものに限定されるものではない。アデノウイルスベクターは、例えば、サブユニットワクチン形成のための抗原を発現させるのに用いることができる。本発明に用いる抗原は、天然型もしくは組換え型の抗原性ポリペプチドもしくは断片とすることができる。これらは部分配列、完全長配列、さらには(例えば、組換え宿主の適切なリーダー配列を有するか別の病原体の別の抗原配列を含む)融合体とすることができる。本発明のウイルス系により発現されることになる抗原性ポリペプチドは、抗原をコードしている完全長(もしくはほぼ完全長)の配列を含むことができ、または抗原性のある(即ち、1種以上のエピトープをコードしている)より短い配列を用いることができる。このより短い配列は、インビトロアッセイでウイルス感染性を中和する抗体を誘導することができるエピトープと定義される「中和エピトープ」をコードしていてもよい。また、このペプチドは、宿主において「防御免疫応答」、即ち、免疫された宿主を感染から防御する液性(即ち、抗体媒介性)、細胞性、および/または粘膜性免疫応答を惹起することができる「防御エピトープ」をコードしていてもよい。
本発明は導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターを包含する。また、本発明は、サブユニットワクチンおよび核酸免疫に用いるための、哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジその他の哺乳動物の種々の病原体の防御決定基をコードしている異種核酸配列を含むベクターを包含する。代表的なヒト病原体抗原としては、HIVウイルス抗原および肝炎ウイルス抗原が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なブタ病原体抗原としては、仮性狂犬病ウイルス(PRV)gp50;伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)S遺伝子;ブタ呼吸繁殖障害症候群ウイルス(PRRS)の遺伝子、特にORF3、4および5;ブタ伝染性下痢症ウイルスの遺伝子;ブタコレラウイルスの遺伝子;ブタパルボウイルスの遺伝子;およびブタインフルエンザウイルスの遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なウシ病原体抗原としては、ウシヘルペスウイルスタイプ1;ウシ下痢症ウイルス;およびウシコロナウイルスが挙げられる。以上列挙したものは限定的なものではなく、本発明では他の任意の導入遺伝子を対象として用いることができる。場合によっては、特定抗原の遺伝子は多数のイントロンを含んでいてもよく、もしくはRNAウイルス由来のものでもよく、こうした場合には相補DNAコピー(cDNA)を用いることができる。また、(タンパク質をコードしているヌクレオチド配列の断片が防御免疫応答もしくは特定の生物学的作用を生じるのに十分である場合)野性型生物に存在するような完全な配列ではなく、単にこうした断片を用いることも可能である。入手可能な場合には、合成遺伝子もしくはその断片を用いることもできる。しかしながら、本発明は多種多様な遺伝子、断片などと共に用いることができ、上述のものに限定されるものではない。アデノウイルスベクターは、例えば、サブユニットワクチン形成のための抗原を発現させるのに用いることができる。本発明に用いる抗原は、天然型もしくは組換え型の抗原性ポリペプチドもしくは断片とすることができる。これらは部分配列、完全長配列、さらには(例えば、組換え宿主の適切なリーダー配列を有するか別の病原体の別の抗原配列を含む)融合体とすることができる。本発明のウイルス系により発現されることになる抗原性ポリペプチドは、抗原をコードしている完全長(もしくはほぼ完全長)の配列を含むことができ、または抗原性のある(即ち、1種以上のエピトープをコードしている)より短い配列を用いることができる。このより短い配列は、インビトロアッセイでウイルス感染性を中和する抗体を誘導することができるエピトープと定義される「中和エピトープ」をコードしていてもよい。また、このペプチドは、宿主において「防御免疫応答」、即ち、免疫された宿主を感染から防御する液性(即ち、抗体媒介性)、細胞性、および/または粘膜性免疫応答を惹起することができる「防御エピトープ」をコードしていてもよい。
対象とする遺伝子は、宿主細胞にこれを発現させるのに適切な調節配列の制御下に置くことができる。適切な調節配列とは、遺伝子のRNA(リボザイム、アンチセンスRNAもしくはmRNA)への転写、RNAのプロセシングおよびmRNAのタンパク質への翻訳に必要なエレメントのセットを意味するものである。転写に必要なエレメントの中で、プロモータは特別な重要性を帯びている。これは構成的プロモータもしくは調節可能なプロモータとすることができ、真核、原核もしくはウイルス由来、さらにはアデノウイルス由来の遺伝子から単離することができる。あるいは、これは対象とする遺伝子の固有のプロモータとすることができる。一般的に言えば、本発明に用いるプロモータは、細胞特異的調節配列を含むように選択し、もしくはこのような配列を含むように修飾することができる。プロモータとしては、HSV−1 TK(ヘルペスウイルスタイプ1チミジンキナーゼ)遺伝子プロモータ、特にヒトアデノウイルスタイプ2のアデノウイルスMLP(主要後期プロモータ)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)LTR(長い末端反復配列)、CMV(サイトメガロウイルス)初期プロモータ、および例えば、多数の細胞種での発現を可能にするPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)遺伝子プロモータが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(粘膜免疫応答のモデル)
本発明は、少なくとも1つのアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物のGALT内に存在する細胞の結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を包含する。このようなキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むベクターは、ワクチンを用いる組成物および方法において使用され、一部の例として、経口ワクチン組成物および哺乳動物、特にウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に経口ワクチンを送達する方法において用いられる。
本発明は、少なくとも1つのアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全体および哺乳動物のGALT内に存在する細胞の結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を包含する。このようなキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むベクターは、ワクチンを用いる組成物および方法において使用され、一部の例として、経口ワクチン組成物および哺乳動物、特にウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に経口ワクチンを送達する方法において用いられる。
特に引用により本明細書に組み込まれているGerdtsほか(2001年、J.of Immunological Methods,256:p19−33)には、粘膜免疫応答を分析するためのインビボ腸係蹄(intestinal loop)モデルが報告されている。手短に言えば、先ず4〜6ヶ月令の子羊の空腸を用いて無菌の腸管片を調製する。この腸管片をさらに連続切片、即ち、パイエル板(PP)もしくは目に見えるPPのない間空を含む「係蹄」に細分する。この腸係蹄を用いてM細胞取り込み機能の完全性を、種々の用量の抗原により誘発される免疫応答を比較することによって評価する。特に引用により本明細書に組み込まれているVan der Lubbenほか(Journal of Drug Targeting,10:p449−456)には、ヒト腸M細胞モデルが報告されている。簡単に言えば、Caco−2細胞をヒトBリンパ球(ラージ細胞)と同時培養すると、形態的、機能的にM細胞に類似した細胞を誘導することができる。キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターなどのベクターは、Gerdtsほかの前記文献のモデルもしくはVan der Lubbenほかの前記文献のモデルを用いてアッセイすることができる。
(本発明のアデノウイルスベクターの使用)
治療および予防法においてウイルスベクターを使用することについては文献に十分な記載がある。家畜、特にウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に対して経口ワクチンとしてアデノウイルスベクターを使用することについては、多室胃の存在および消化管でのベクターの分解のため、これまで問題があった。本発明は、キャプシド形成系、アデノウイルスベクターなどのベクター、および哺乳動物のGALT内に存在する細胞の細胞結合部位に対する結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するウイルス粒子を提供する。一部の例として、本発明に包含されるベクターおよびアデノウイルスキャプシドは、本明細書に記載したGerdtsほかの前記文献にあるモデルなどの動物モデルでは、上記結合パートナーを有しない同様なベクターよりも分解の程度が少ない。
従って、本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクター、および特に哺乳動物の腸付属リンパ組織(GALT)を標的にしてタンパク質を送達するための、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むアデノウイルスキャプシドを発現するキャプシド形成系を提供する。このようなアデノウイルスベクター、キャプシド形成系およびアデノウイルスキャプシドは、GALTを標的として哺乳動物の病原体の抗原などの抗原を送達することによりこの抗原に対する粘膜免疫応答を誘起するのに用いられる。例証となる例として、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーは、ウシ、ブタおよびヒツジの空腸パイエル板(PP)と交差反応性を有する(即ち、特異的に結合する)モノクロナール抗体である。このような抗体には、数種の哺乳動物のGALT内の細胞と交差反応する1種の結合パートナーを有するという利点がある。別の例として、この結合パートナーは、GALTミクロフォールド(M)細胞の細胞表面結合部位に特異的に結合する。本発明は、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーの存在を利用してGALT内の細胞を標的に送達される病原体の抗原などの異種タンパク質を発現するアデノウイルスベクターなどのベクターを提供する。
治療および予防法においてウイルスベクターを使用することについては文献に十分な記載がある。家畜、特にウシ、ヒツジなどの反芻哺乳動物に対して経口ワクチンとしてアデノウイルスベクターを使用することについては、多室胃の存在および消化管でのベクターの分解のため、これまで問題があった。本発明は、キャプシド形成系、アデノウイルスベクターなどのベクター、および哺乳動物のGALT内に存在する細胞の細胞結合部位に対する結合パートナーを含むキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現するウイルス粒子を提供する。一部の例として、本発明に包含されるベクターおよびアデノウイルスキャプシドは、本明細書に記載したGerdtsほかの前記文献にあるモデルなどの動物モデルでは、上記結合パートナーを有しない同様なベクターよりも分解の程度が少ない。
従って、本発明は、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードしている核酸を含むアデノウイルスベクター、および特に哺乳動物の腸付属リンパ組織(GALT)を標的にしてタンパク質を送達するための、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーを含むアデノウイルスキャプシドを発現するキャプシド形成系を提供する。このようなアデノウイルスベクター、キャプシド形成系およびアデノウイルスキャプシドは、GALTを標的として哺乳動物の病原体の抗原などの抗原を送達することによりこの抗原に対する粘膜免疫応答を誘起するのに用いられる。例証となる例として、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナーは、ウシ、ブタおよびヒツジの空腸パイエル板(PP)と交差反応性を有する(即ち、特異的に結合する)モノクロナール抗体である。このような抗体には、数種の哺乳動物のGALT内の細胞と交差反応する1種の結合パートナーを有するという利点がある。別の例として、この結合パートナーは、GALTミクロフォールド(M)細胞の細胞表面結合部位に特異的に結合する。本発明は、GALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーの存在を利用してGALT内の細胞を標的に送達される病原体の抗原などの異種タンパク質を発現するアデノウイルスベクターなどのベクターを提供する。
結合パートナーをGALT内に存在するM細胞に結合させる、抗原をこの免疫系に送達させるよう特定化する例では、複製欠損型もしくは複製可能型アデノウイルスを用いることができる。結合パートナーを上皮細胞もしくはGALT内に存在するM細胞以外の細胞に結合させる例では、複製可能型アデノウイルスを用いることにより、M細胞の近傍に比較的多くのウイルス粒子を産生させることができる。ある特定のワクチン接種プロトコルをデザインすることにより、標的細胞結合パートナーに関係なく複製欠損型および/または複製可能型アデノウイルスを用いることができ、このようなものとしては、例えば、本発明に包含される複製欠損型アデノウイルスで最初にワクチン接種した後、本発明に包含される複製可能型アデノウイルスでブーストワクチン接種を行うプロトコル、もしくはその逆のプロトコルが挙げられる。
本発明のアデノウイルスベクターは、細胞もしくは組織および種に対する特異性が改良されるよう処理することができる。キャプシドタンパク質IX(pIX)、キャプシドファイバータンパク質などのキャプシドタンパク質;GALT組織内の細胞の細胞表面結合部位に対する結合パートナー;および異種細胞へのアデノウイルスの結合および/または侵入を可能にする分子、タンパク質、ペプチドその他の物質を発現するアデノウイルスを作製することができる。本明細書に開示した例示的な実施態様として、RGDモチーフを発現するよう改変したキャプシドタンパク質pIXを含むBAV3は、特定のヒト細胞に対し形質導入することができる。
キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクター内に結合パートナーが存在することにより、当該分野で公知のアフィニティー法などによるアデノウイルスの精製法を容易にすることができる。
また、本発明のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子によりコードされている異種ポリペプチドの発現を調節するために用いることができる。例えば当業者に知られている標準的な細胞培養条件を用いることにより、組換えポリペプチドを発現させることが可能になる。さらに、これは、例えばアンチセンスの用途およびリボザイムの発現におけるように、異種ヌクレオチド配列によりコードされているRNAの発現を調節するのに用いることができる。キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を発現することができる本発明のアデノウイルスベクターは、インビトロでのポリペプチド作製、ワクチン作製、核酸免疫および遺伝子送達のような用途において病原体の抗原などのポリペプチドを発現させるために用いることができる。治療的および/または予防的に有用なポリペプチドとしては、凝固因子、成長ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、腫瘍抑制ポリペプチド、細胞受容体、細胞受容体のリガンド、プロテアーゼ阻害剤、抗体、毒素、免疫毒素、ジストロフィン、嚢胞性繊維症膜透過性調節因子(CFTR)および免疫原性ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一部の例として、アデノウイルスベクターは、サブユニットワクチンおよび核酸免疫に用いるための、哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジその他の哺乳動物の種々の病原体の防御決定基をコードしている異種核酸配列を含む。代表的なヒト病原体抗原としては、HIVウイルス抗原および肝炎ウイルス抗原が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なブタ病原体抗原としては、仮性狂犬病ウイルス(PRV)gp50;伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)S遺伝子;ブタ呼吸繁殖障害症候群ウイルス(PRRS)の遺伝子、特にORF3、4および5;ブタ伝染性下痢症ウイルスの遺伝子;ブタコレラウイルスの遺伝子;ブタパルボウイルスの遺伝子;およびブタインフルエンザウイルスの遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なウシ病原体抗原としては、ウシヘルペスウイルスタイプ1;ウシ下痢症ウイルス;およびウシコロナウイルスが挙げられる。
種々の外来の遺伝子もしくはヌクレオチド配列もしくはコーディング配列(原核性および真核性)を本発明に従ってアデノウイルスベクターに挿入することにより、特に広範な疾患に対する防御が可能になる。
異種(即ち、外来)ヌクレオチド配列もしくは導入遺伝子は、対象とする1種以上の遺伝子を含むことがあり、治療的もしくは診断的に有用であると考えられる。本発明では、対象遺伝子はアンチセンスRNAもしくはリボザイム、もしくは対象とするタンパク質に翻訳されることになるmRNAをコードすることができる。対象遺伝子は、ゲノム型、相補DNA(cDNA)型もしくは混合型(少なくとも1つのイントロンが削除されているミニ遺伝子)とすることができる。また、これは、成熟タンパク質、成熟タンパク質の前駆体、特に分泌させるためものであり、従ってシグナルペプチドを含む前駆体、さまざまな由来の配列の融合により得られるキメラタンパク質、または生物学的特性が改善もしくは改変された天然タンパク質の突然変異体をコードすることができる。このような突然変異体は、天然タンパク質をコードしている遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの削除、置換および/または付加、あるいは転位、逆位などの、天然タンパク質をコードしている配列の任意の他のタイプの変更によって得ることができる。
場合によっては、特定抗原の遺伝子は多数のイントロンを含んでいてもよく、もしくはRNAウイルス由来のものでもよく、こうした場合には相補DNAコピー(cDNA)を用いることができる。また、(遺伝子のヌクレオチド配列の断片が防御免疫応答もしくは特定の生物学的作用を生じるのに十分である場合)野性型生物に存在するような完全な配列ではなく、単にこうした断片を用いることも可能である。入手可能な場合には、合成遺伝子もしくはその断片を用いることもできる。しかしながら、本発明は多種多様な遺伝子、断片などと共に用いることができ、上述のものに限定されるものではない。
本発明の組換えベクターは、例えば、サブユニットワクチン形成のための抗原を発現させるのに用いることができる。本発明に用いる抗原は、天然型もしくは組換え型の抗原性ポリペプチドもしくは断片とすることができる。これらは部分配列、完全長配列、さらには(例えば、組換え宿主の適切なリーダー配列を有するか別の病原体の別の抗原配列を含む)融合体とすることができる。本発明のウイルス系により発現されることになる抗原性ポリペプチドは、抗原をコードしている完全長(もしくはほぼ完全長)の配列を含むことができ、または抗原性のある(即ち、1種以上のエピトープをコードしている)より短い配列を用いることができる。このより短い配列は、インビトロアッセイでウイルス感染性を中和する抗体を誘導することができるエピトープと定義される「中和エピトープ」をコードしていてもよい。好ましくは、このペプチドは、宿主において「防御免疫応答」、即ち、免疫された宿主を感染から防御する液性(即ち、抗体媒介性)、細胞性、および/または粘膜性免疫応答を惹起することができる「防御エピトープ」をコードしているものとする。
本発明に用いる抗原は、特に短いオリゴペプチドからなる場合、ワクチン担体に結合させることができる。ワクチン担体については当該分野で公知であり、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)がある。好ましい担体タンパク質であるロタウイルスVP6については、欧州公開特許公報第0259149号に開示されており、この内容は引用により本明細書に組み込まれている。
挿入することができる所望の抗原の遺伝子もしくはそのコーディング配列としては、哺乳動物に疾患を引き起こす生物のものが挙げられる。
本発明の組換えアデノウイルスベクターを用いると、疾患抗原に対する免疫応答を誘起し、および/またはブタ、ウシ、ヒトその他の哺乳動物を冒す多種多様な疾患に対して防御することが可能である。本発明の組換え抗原決定基もしくは組換え生ウイルスは、いずれも製剤化して、抗原決定基ワクチンもしくは生ワクチンベクターについて報告されているのとほぼ同じようにして用いることができる。
また、本発明は、薬学的に受容可能なビヒクルもしくは担体および/またはアジュバントと組み合わせた、本発明の組換えアデノウイルスベクター、本発明の組換えウイルスもしくは本発明の方法により作製した組換えタンパク質の治療的有効量を含む組成物を包含する。このような組成物は、当該分野で公知の方法により調製し、投与量決定を行うことができる。本発明の医薬用組成物は、任意の既知の投与経路から投与することができ、このような経路としては、全身性(例えば、静脈内、気管内、腹腔内、鼻腔内、非経口、腸内、筋肉内、皮下、腫瘍内もしくは頭蓋内)のものまたはエアゾール適用もしくは肺内注入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一部の例として、前記アデノウイルスもしくはアデノウイルスベクターは哺乳動物の経口ワクチンとして用いるのに特に有利である。投与は、単回投与、もしくは一定時間間隔の後の一度以上の繰返し投与によって行うことができる。適切な投与経路および用量は状況(例えば、処置すべき個体、処置すべき疾患または対象とする遺伝子もしくはポリペプチド)により異なるが、当業者であれば決定することができるものである。
ヒトおよび種々の動物種の経口免疫のための組成物および方法についてはこれまでに報告がある。例えば、米国特許第5,352,448号には、消化管の反芻後の部分の粘膜付属リンパ組織への抗原の送達を可能にする水膨潤性ヒドロゲルマトリクスからなる送達ビヒクルに抗原組成物を含む、反芻動物用の経口ワクチン製剤が開示されている。米国特許第5,176,909号には、免疫原、特定分子量範囲のゼラチンおよび腸溶コーティン剤を含む、ヒトもしくは動物への経口投与用組成物が開示されている。米国特許第5,075,109号には、パイエル板を標的にして生物活性物質、例えば、抗原を送達するために、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)などの生体適合性ポリマーもしくはコポリマーにこの抗原を入れてマイクロカプセル化する方法が開示されている。米国特許第5,032,405号には、マルトース、粒状希釈剤、およびアルカリ可溶性高分子フィルムを含むコーティング剤との組み合わせで15生物活性物質、例えば、免疫原のIyophilized混合物を含む経口製剤が開示されている。アデノウイルスのキャプシド形成に関する別の参考文献としては、Periwalほか1997年、J.Virol.71:p2844;Bowersockほか1998年、Immunology Letters,60:p37;およびMittalほか2000年、Vaccine 19:p253が挙げられる。米国特許第4,152,415号には、トレポネーマハイオディセンテリー(Treponema hyodysenteriae)の有毒分離株死細胞の一連の非経口および腸溶性経口製剤を順次投与することを含む、野外飼育のブタの赤痢に対する免疫方法が開示されている。
外来遺伝子もしくは断片を有する本発明のワクチンは、腸溶性投与形態とするなど、適切な経口担体を用いて経口投与することができる。経口製剤には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常用いられている賦形剤を添加する。経口ワクチン組成物は、有効成分を約10%〜約95%、好ましくは約25%〜約70%含む液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤もしくは散剤として服用させることができる。経口ワクチンは、全身性免疫との組み合わせで、(腸管感染病原体に対する防御において重要な役割を果たす)粘膜免疫を惹起するのに好ましいと考えられる。米国特許第6,387,397号には、ワクチンの経口および/または粘膜送達用の重合リポソームが開示されている。
本発明のワクチン組成物を個体に投与するためのプロトコルは、本発明の開示内容を考慮すると、当該分野の技術の範囲内にある。当業者であれば、前記抗原性断片に対する抗体、細胞媒介性および/または粘膜性免疫応答を誘発するのに有効な用量としてこのワクチン組成物の濃度を選択することができる。広い範囲内で、この投与量は危険ではないと考えられる。通常、このワクチン組成物は、都合のよい容量、例えば1〜10mlのビヒクルを用いて約1〜約1,000マイクログラムのサブユニット抗原を送達できるように投与する。単回免疫における投与では、サブユニット抗原を好ましくは約1〜約500マイクログラム、より好ましくは約5から10〜約100から200マイクログラム(例えば、5〜200マイクログラム)送達する。
また、投与スケジュールも重要と考えられる。例えば、一次接種の後に、例えば、必要な場合、最初の免疫の数週間〜数ヶ月後に、ブースター接種を行うことが好ましい場合がある。疾患に対する高いレベルの防御の維持を確保するためには、一定の間隔をおいて、例えば数年毎に1回、ブースター免疫を繰り返すことが有効であると考えられる。あるいは、初期用量を経口投与した後、接種を行うかその逆を行うことができる。好適なワクチン接種プロトコルは、通常のワクチン接種プロトコル実験によって設定することができる。
組換えウイルスワクチンのインビボにおける全ての投与経路に対する投与量は、種々の要因、例えば、対象哺乳動物の大きさ、防御を必要とする感染の性質、担体などによって決まるが、当業者であれば容易に決定することができる。例えば、約103pfu〜108pfuの用量を用いることができるが、これに限定されるものではない。インビトロサブユニットワクチンの場合と同様に、関連する臨床的要因により決定される場合、別の用量を投与することができる。
また、本発明は、処置を必要とする対象哺乳動物に本発明の治療的有効量のアデノウイルスベクター、組換えアデノウイルスもしくは宿主細胞を投与する処置方法を包含する。
異種配列が抗原性ポリペプチドをコードしている場合、異種ヌクレオチド配列が挿入されているアデノウイルスベクターを用いて大量の抗原を得ることができ、さらにこれは抗体の調製のために有用である。抗体の調製方法は当業者に公知である。手短に言えば、最初に、(ウサギなどの)動物に抗原だけでなく完全フロインドアジュバントを皮下注射する。その後、抗原と共にフロイント不完全アジュバントを約3週間間隔で1〜2回注射する。最終の注射の約10日後に、血清を採取し、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降もしくは当業者に公知の任意の他の免疫学的アッセイによって特異抗体の有無について調べる。
アデノウイルスE1遺伝子の産物は多くの細胞遺伝子をトランス活性化するので、E1タンパク質を構成的に発現する細胞株は他の細胞株よりも高レベルで細胞ポリペプチドを発現することができる。導入遺伝子をコードしているアデノウイルスを含む本発明の組換え哺乳動物細胞株は、ポリペプチドを作製し、単離するのに用いることができる。
また、本発明は、遺伝子をこれを必要とするウシ、ヒトもしくは他の哺乳動物などの哺乳動物に送達することにより遺伝子の欠如をコントロールする方法を包含する。一実施態様として、この方法は、非欠損型の上記遺伝子をコードしている異種ヌクレオチド配列を含む本発明の生きている組換えアデノウイルスの上記哺乳動物への投与を、この組換えウイルスベクターゲノムを上記哺乳動物ゲノム内に組み込むか単独で染色体外に維持することにより標的臓器もしくは組織においてその必要な遺伝子の発現が得られる条件下で行うことを含む。こうした種類の方法は、現在、欠損遺伝子もしくはその一部を元の場所に戻すために当業者によって用いられている。導入遺伝子、異種ヌクレオチド配列もしくは遺伝子治療用に組み込むことができるそれらの一部分などの外来遺伝子の例としては、成長因子、サイトカインなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明は、本明細書に記載した特定の実施態様によって範囲が限定されるものではない。本明細書に記載したものの他に本発明の様々な変形例があり得ることは、前記の説明および添付図から当業者には明かであろう。このような変形例は添付の特許請求の範囲に包含されるものである。
(実施例1)
(BAV−3の修飾pIX遺伝子を含む組換えプラスミドの構築)
pEYFP−N1(クロンテク社(CLONTECH))を用い、このDNAをAgeIおよびNotIで消化することにより、改良型黄色蛍光タンパク質(EYFP)の遺伝子を得た。この731bpの断片をクレノウで平滑末端化し、pBAVNdAのHpaI部位にクローニングした(図1A)。
(BAV−3の修飾pIX遺伝子を含む組換えプラスミドの構築)
pEYFP−N1(クロンテク社(CLONTECH))を用い、このDNAをAgeIおよびNotIで消化することにより、改良型黄色蛍光タンパク質(EYFP)の遺伝子を得た。この731bpの断片をクレノウで平滑末端化し、pBAVNdAのHpaI部位にクローニングした(図1A)。
これらの重なり合う合成オリゴヌクレオチドを用いてRGDモチーフを含むDNA配列を作製した。センスオリゴ配列は
これらのオリゴヌクレオチドを混合し、pBAVNdAのHpaI部位にクローニングした(図1A)。得られたプラスミドをそれぞれpBNdAYFPおよびpBNdARGDと命名した。
このBAV−3ゲノムのAgeI断片による4382をpBNdAYFPおよびpBNdARGDのAgeI部位に挿入することにより、以下の大腸菌を用いた組換えのための相同配列を延長させた。得られたプラスミドをpBAVNotYFPおよびpBAVNotRGDと命名した(図1B参照)。pBAVNotYFPおよびpBAVNotRGDをPacIおよびNotIで切断し、大きい方の断片を用いて、BsaBIおよびPmeIで消化したpFBAV3 DNAとの相同組換えを行った(図1C)。この組換えは大腸菌株BJ5183を用いて行った。得られた完全長のゲノムプラスミドをpFBAV951(EYFP)およびpFBAV950(RGD)と命名した。
EYFPと融合させたキメラpIX遺伝子の配列を図2に、RGD含有ペプチドと融合させたキメラpIX遺伝子の配列を図3に示した。
(実施例2)
(修飾pIX遺伝子を含む組換えBAV−3ウイルスの構築)
pFBAV951およびpFBAV950の5μgのDNAをPacIで消化し、これらを用いてリポフェクチン法によりVIDO−R2細胞の形質移入を行った。形質移入して14日後にはウイルスのプラークが出現した。これらの外来配列の挿入についてはこのウイルスDNAを用いるPCRによって分析した。分析に用いたプライマーは、P91 CTAATCGATACATGTACACTG(BAV−3ゲノムの3,057bp)およびP92 CCAACCGGTTGTGGAAAATC(BAV−3ゲノムの4,450bp)であった。野性型ゲノムで得られたPCR産物は長さが1,393塩基対(bp)であった(図4;列1)。RGD含有配列の挿入の結果では、その産物の長さは1,456bpまで増加した(図4;列2)。EYFP配列の挿入の結果では、その産物の長さは2,125bpまで増加した(図4;列4)。ウイルスDNA継代2および10からの産物の長さに差はなかった(図4、列2および3;列4および5)。以上のことから、これらの組換え体が安定であるとの証拠が得られた。
(修飾pIX遺伝子を含む組換えBAV−3ウイルスの構築)
pFBAV951およびpFBAV950の5μgのDNAをPacIで消化し、これらを用いてリポフェクチン法によりVIDO−R2細胞の形質移入を行った。形質移入して14日後にはウイルスのプラークが出現した。これらの外来配列の挿入についてはこのウイルスDNAを用いるPCRによって分析した。分析に用いたプライマーは、P91 CTAATCGATACATGTACACTG(BAV−3ゲノムの3,057bp)およびP92 CCAACCGGTTGTGGAAAATC(BAV−3ゲノムの4,450bp)であった。野性型ゲノムで得られたPCR産物は長さが1,393塩基対(bp)であった(図4;列1)。RGD含有配列の挿入の結果では、その産物の長さは1,456bpまで増加した(図4;列2)。EYFP配列の挿入の結果では、その産物の長さは2,125bpまで増加した(図4;列4)。ウイルスDNA継代2および10からの産物の長さに差はなかった(図4、列2および3;列4および5)。以上のことから、これらの組換え体が安定であるとの証拠が得られた。
(実施例3)
(ウイルスキャプシド内への修飾pIXの組み込み)
これらの組換え体および野性型BAV−3をCsCl勾配超遠心分離により精製した。
精製ビリオンのタンパク質は12%変性PAAGを用いて分離し、BAV−3 pIXに対するウサギポリクロナール抗血清を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
抗pIX血清は、野性型ウイルスの場合14KDaのタンパク質、RGD含有組換えBAV950の場合16KDaのタンパク質、およびEYFP含有組換えBAV951の場合41KDaのタンパク質を認識した(図5A〜5B)。
(ウイルスキャプシド内への修飾pIXの組み込み)
これらの組換え体および野性型BAV−3をCsCl勾配超遠心分離により精製した。
精製ビリオンのタンパク質は12%変性PAAGを用いて分離し、BAV−3 pIXに対するウサギポリクロナール抗血清を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
抗pIX血清は、野性型ウイルスの場合14KDaのタンパク質、RGD含有組換えBAV950の場合16KDaのタンパク質、およびEYFP含有組換えBAV951の場合41KDaのタンパク質を認識した(図5A〜5B)。
EYFPがビリオンの表面にあることを証明するために、精製ビリオンおよび抗EYFP血清を用いて免疫電子顕微鏡法を行った。免疫金電子顕微鏡では、精製ビリオンはニッケルグリッドに吸着していた。この吸着の見られたグリッドを適切に希釈した抗血清と共に1時間インキュベートした。数回の洗浄工程を行った後、このグリッドを金標識プロテインAと共に室温で1時間インキュベートした。次いで、グリッドを2%リンタングステン酸で染色し、透過電子顕微鏡法により調べた。図6A〜図6Bから明らかなように、BAV951ビリオンはEYFP特異的抗体および金標識プロテインAで標識されていたが、BAV−3ビリオンは抗EYFP血清と反応しなかった。
要約すると、以上のデータから、ウイルス粒子内にキメラpIXが組み込まれたこと、およびpIXと融合させたEYFPタンパク質が外面に局在していることが分かる。
(実施例4)
(pIX修飾BAV−3の感染効率)
pIX内へのRGDの組込みが感染効率を向上されるかどうかを調べるために、インテグリン含有細胞(HeLaおよびA549)を感染の多重度(m.o.i.)100TCID50/細胞でBAV−3もしくはBAV950に感染させた。2時間吸着させた後、細胞をPBSで2回洗浄し、培地をMEM+10%FBSに変更した。感染の48時間後に、細胞をトリプシン処理して回収した。この細胞から、キアゲンDNAイージーティシューキット(QIAGEN DNAeasy Tissue Kit)を用いてトータルDNAを抽出した。トータルDNAの70ngのアリコートを実時間PCR分析に用いた。プライマーは、BAV−3ヘキソン遺伝子配列からのRTP−1 TACAGTAATGTGGCGTTGTAおよびRTP−2 CGTATCAATAAGGCCGCTAAを用いた。PCR反応には5’末端標識FAM(6−カルボキシ−フルオレセイン、レポータ色素)および3’標識TAMRA(6−カルボキシテトラメチル−フォーダミン(fhodamine)、クエンチャー色素)プローブを用いた。このプローブの配列はCCGCCTAACCACGAACACCTACGである。DNAサンプル中のウイルスゲノムの絶対定量にはpFBAV3 DNAの希釈溶液を用いた。図7から明らかなように、両細胞株において、BAV950感染細胞内に存在するウイルスDNAは、BAV−3感染細胞に比し、10倍多かった。
(pIX修飾BAV−3の感染効率)
pIX内へのRGDの組込みが感染効率を向上されるかどうかを調べるために、インテグリン含有細胞(HeLaおよびA549)を感染の多重度(m.o.i.)100TCID50/細胞でBAV−3もしくはBAV950に感染させた。2時間吸着させた後、細胞をPBSで2回洗浄し、培地をMEM+10%FBSに変更した。感染の48時間後に、細胞をトリプシン処理して回収した。この細胞から、キアゲンDNAイージーティシューキット(QIAGEN DNAeasy Tissue Kit)を用いてトータルDNAを抽出した。トータルDNAの70ngのアリコートを実時間PCR分析に用いた。プライマーは、BAV−3ヘキソン遺伝子配列からのRTP−1 TACAGTAATGTGGCGTTGTAおよびRTP−2 CGTATCAATAAGGCCGCTAAを用いた。PCR反応には5’末端標識FAM(6−カルボキシ−フルオレセイン、レポータ色素)および3’標識TAMRA(6−カルボキシテトラメチル−フォーダミン(fhodamine)、クエンチャー色素)プローブを用いた。このプローブの配列はCCGCCTAACCACGAACACCTACGである。DNAサンプル中のウイルスゲノムの絶対定量にはpFBAV3 DNAの希釈溶液を用いた。図7から明らかなように、両細胞株において、BAV950感染細胞内に存在するウイルスDNAは、BAV−3感染細胞に比し、10倍多かった。
(実施例5)
(小腸の細胞に対する抗体の作製)
(材料および方法)
ヒツジ空腸パイエル板(JPP)上皮細胞から得た膜抗原100μgを完全フロインドアジュバントに混合したものでBALB/cマウス(10〜12週齢)を腹腔内免疫した。最初の免疫から21、35および45日後に同量のAgとフロインド不完全アジュバント(IFA)との混液でマウスに追加免疫した。最後の追加免疫から5日後に、免疫したマウスのうちの1匹を屠殺し、脾臓細胞をNS−1骨髄細胞と融合させた。このハイブリドーマから得られた上清をFACSによりJPP上皮細胞を用いて調べることによって、細胞表面分子に特異的なMoAbを分泌するハイブリドーマを選定した。EACS分析用の上皮細胞はEDTAもしくはコラゲナーゼ消化によりヒツジJPPから得た。全部で181個のクローンを得、そのうち36個のクローンがFACS分析によりJPP上皮細胞に対して陽性であることが分かった。FACSで陽性のクローンの一部は、JPP組織を用いて免疫組織化学(ICH)染色により調べた。上皮細胞染色に対してFACSおよびIHCの両者で陽性の4個のクローンは、限界希釈によりさらにサブクローニングした。
MoAbのアイソタイプ決定は、JPP上皮細胞染色および種々のマウスAbアイソタイプ特異的FITC結合を用いて行った。これら4種のMoAbは全てIgMアイソタイプであることが分かった。これら4種のMoAb上清については、さらに、ヒツジ空腸PP上皮細胞を用いるFACSならびにヒツジJPP、回腸PP(IPP)および空腸組織を用いるICH染色により特性を調べた。これらのMoAbの他の種との交差反応性についてはIHC染色によって調べた。これらのMoAbはウシおよびブタJPP、IPPおよび空腸組織と交差反応した。
(小腸の細胞に対する抗体の作製)
(材料および方法)
ヒツジ空腸パイエル板(JPP)上皮細胞から得た膜抗原100μgを完全フロインドアジュバントに混合したものでBALB/cマウス(10〜12週齢)を腹腔内免疫した。最初の免疫から21、35および45日後に同量のAgとフロインド不完全アジュバント(IFA)との混液でマウスに追加免疫した。最後の追加免疫から5日後に、免疫したマウスのうちの1匹を屠殺し、脾臓細胞をNS−1骨髄細胞と融合させた。このハイブリドーマから得られた上清をFACSによりJPP上皮細胞を用いて調べることによって、細胞表面分子に特異的なMoAbを分泌するハイブリドーマを選定した。EACS分析用の上皮細胞はEDTAもしくはコラゲナーゼ消化によりヒツジJPPから得た。全部で181個のクローンを得、そのうち36個のクローンがFACS分析によりJPP上皮細胞に対して陽性であることが分かった。FACSで陽性のクローンの一部は、JPP組織を用いて免疫組織化学(ICH)染色により調べた。上皮細胞染色に対してFACSおよびIHCの両者で陽性の4個のクローンは、限界希釈によりさらにサブクローニングした。
MoAbのアイソタイプ決定は、JPP上皮細胞染色および種々のマウスAbアイソタイプ特異的FITC結合を用いて行った。これら4種のMoAbは全てIgMアイソタイプであることが分かった。これら4種のMoAb上清については、さらに、ヒツジ空腸PP上皮細胞を用いるFACSならびにヒツジJPP、回腸PP(IPP)および空腸組織を用いるICH染色により特性を調べた。これらのMoAbの他の種との交差反応性についてはIHC染色によって調べた。これらのMoAbはウシおよびブタJPP、IPPおよび空腸組織と交差反応した。
多数の病原菌が胃腸管の粘膜表面から体内に侵入する。腸管の粘膜免疫応答を誘発するために必要な条件は、腸付属リンパ組織(GALT)へ抗原が効率的に経上皮移送されることである。パイエル板(PP)の濾胞部上皮(FAE)に局在する特殊化した上皮M細胞は、外来抗原をGALTに効率的に送達する。前述の方法により特定した抗体は、キメラキャブシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターの作製に用いる。このようなアデノウイルスベクターは、哺乳動物のGALT組織へ抗原を送達するためのワクチン組成物および方法において用いる。GALT内に存在するウシ、ヒツジおよびブタの細胞と交差反応する抗体の特定は、複数の哺乳動物種用のワクチンプロトコルに用いることができるアデノウイルスベクターの調製に利用する。
本発明は以下に関するものである。
1.キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、該タンパク質は、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全部、および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)の細胞中に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含み、ここで該キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、該細胞に結合し得る、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
2.前記キャプシドタンパク質が、ヘキソン、ペントン、ファイバー、pIXおよびIIIaからなる群より選択される、前記1に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
3.前記アデノウイルスが、哺乳動物のアデノウイルスである、前記1または2に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
4.前記アデノウイルスが、反芻哺乳動物のアデノウイルスである、前記1〜3のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
5.前記哺乳動物のアデノウイルスが、ヒト、ブタ、ウシおよびヒツジからなる群より選択される、前記1〜3のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
6.前記アデノウイルスキャプシドタンパク質が、タンパク質IX(pIX)である、前記1〜5のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
7.前記アデノウイルスキャプシドタンパク質が、ファイバータンパク質である、前記1〜5のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
8.前記結合パートナーが、抗体またはそのフラグメントである、前記1〜7のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
9.前記抗体が、GALT内に存在する上皮細胞に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
10.前記抗体が、哺乳動物のパイエル板内に存在する細胞に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
11.前記抗体が、ミクロフォールド(M)細胞に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
12.前記抗体が、前記細胞の表面に存在するタンパク質に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
13.前記抗体が、前記細胞の表面に存在する糖質に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
14.前記タンパク質が、前記キャプシドタンパク質の一部または全部をコードする核酸および前記結合パートナーについてのアミノ酸配列をコードする核酸を含むポリペプチドによってコードされる、前記1〜13のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
15.前記タンパク質が、前記結合パートナーに結合したキャプシドタンパク質の一部または全部を含む、前記1〜13のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
16.前記1〜15のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む、アデノウイルスキャプシド。
17.哺乳動物のGALTの細胞内に存在する細胞表面結合部位に結合した、前記1〜15のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む、複合体。
18.前記1〜14のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
19.前記ベクターが、アデノウイルスベクターである、前記18に記載のベクター。
20.前記アデノウイルスベクターが、哺乳動物のアデノウイルスベクターである、前記19に記載のベクター。
21.前記哺乳動物のアデノウイルスが、ヒト、ブタ、ウシおよびヒツジのアデノウイルスからなる群より選択される、前記20に記載のベクター。
22.前記哺乳動物のアデノウイルスベクターが、反芻動物のアデノウイルスベクターである、前記20に記載のベクター。
23.前記ベクターが、キャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列を含む、前記18〜22のいずれか1項に記載のベクター。
24.前記キャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列が、ウシアデノウイルス配列である、前記23のベクター。
25.前記キャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列が、ブタアデノウイルス配列である、前記23のベクター。
26.前記アデノウイルスが、複製可能型アデノウイルスベクターである、前記19〜25のいずれか1項に記載のベクター。
27.前記複製可能型アデノウイルスが、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、前記26のベクター。
28.前記アデノウイルスベクターが、複製欠損型である、前記19〜25のいずれか1項に記載のベクター。
29.前記アデノウイルスベクターが、複製欠損型ウシアデノウイルスベクターである、前記28に記載のベクター。
30.前記複製欠損型ウシアデノウイルスベクターが、E1機能を欠く、前記29に記載のベクター。
31.前記ウシアデノウイルスベクターが、E1遺伝子領域の一部または全部の欠失を含む、前記30に記載のベクター。
32.E3遺伝子領域の一部または全部を欠失をさらに含む、前記31に記載のベクター。
33.前記ベクターが、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、前記29に記載のベクター。
34.前記異種タンパク質が、病原体の抗原である、前記33に記載のベクター。
35.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
36.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、ウイルス粒子。
37.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、組成物。
38.薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、前記37に記載の組成物。
39.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、ワクチン組成物。
40.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む、免疫原性組成物。
41.哺乳動物宿主において免疫応答を誘発するための方法であって、前記40に記載の免疫原性組成物を該哺乳動物宿主に投与する工程を包含する、方法。
42.前記免疫原性組成物が、経口投与される、前記41に記載の方法。
43.前記哺乳動物宿主が、反芻哺乳動物である、前記42に記載の方法。
44.前記反芻哺乳動物が、ウシ哺乳動物またはヒツジ哺乳動物である、前記43の方法。
45.キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を作製するための方法であって、該方法は、哺乳動物のGALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーをアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部または全部に結合させる工程を包含し、ここで該キャプシドタンパク質は、該アデノウイルスキャプシドの表面に配置される、方法。
46.前記アデノウイルスキャプシドタンパク質が、ヘキソン、ペントン、ファイバー、pIXおよびIIIaからなる群より選択される、前記45に記載の方法。
47.キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルスベクターを調製するための方法であって、適切な条件下で、前記18に記載のアデノウイルスベクターで形質転換した適切な宿主細胞を培養し、該ベクターからウイルス粒子の形成を可能にする工程、および必要に応じて該ウイルスを回収する工程、を包含する、方法。
1.キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質であって、該タンパク質は、アデノウイルスキャプシドタンパク質の一部もしくは全部、および哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)の細胞中に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含み、ここで該キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質は、該細胞に結合し得る、キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
2.前記キャプシドタンパク質が、ヘキソン、ペントン、ファイバー、pIXおよびIIIaからなる群より選択される、前記1に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
3.前記アデノウイルスが、哺乳動物のアデノウイルスである、前記1または2に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
4.前記アデノウイルスが、反芻哺乳動物のアデノウイルスである、前記1〜3のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
5.前記哺乳動物のアデノウイルスが、ヒト、ブタ、ウシおよびヒツジからなる群より選択される、前記1〜3のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
6.前記アデノウイルスキャプシドタンパク質が、タンパク質IX(pIX)である、前記1〜5のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
7.前記アデノウイルスキャプシドタンパク質が、ファイバータンパク質である、前記1〜5のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
8.前記結合パートナーが、抗体またはそのフラグメントである、前記1〜7のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
9.前記抗体が、GALT内に存在する上皮細胞に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
10.前記抗体が、哺乳動物のパイエル板内に存在する細胞に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
11.前記抗体が、ミクロフォールド(M)細胞に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
12.前記抗体が、前記細胞の表面に存在するタンパク質に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
13.前記抗体が、前記細胞の表面に存在する糖質に結合する、前記8に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
14.前記タンパク質が、前記キャプシドタンパク質の一部または全部をコードする核酸および前記結合パートナーについてのアミノ酸配列をコードする核酸を含むポリペプチドによってコードされる、前記1〜13のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
15.前記タンパク質が、前記結合パートナーに結合したキャプシドタンパク質の一部または全部を含む、前記1〜13のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質。
16.前記1〜15のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む、アデノウイルスキャプシド。
17.哺乳動物のGALTの細胞内に存在する細胞表面結合部位に結合した、前記1〜15のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を含む、複合体。
18.前記1〜14のいずれか1項に記載のキメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
19.前記ベクターが、アデノウイルスベクターである、前記18に記載のベクター。
20.前記アデノウイルスベクターが、哺乳動物のアデノウイルスベクターである、前記19に記載のベクター。
21.前記哺乳動物のアデノウイルスが、ヒト、ブタ、ウシおよびヒツジのアデノウイルスからなる群より選択される、前記20に記載のベクター。
22.前記哺乳動物のアデノウイルスベクターが、反芻動物のアデノウイルスベクターである、前記20に記載のベクター。
23.前記ベクターが、キャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列を含む、前記18〜22のいずれか1項に記載のベクター。
24.前記キャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列が、ウシアデノウイルス配列である、前記23のベクター。
25.前記キャプシド形成に不可欠なアデノウイルス配列が、ブタアデノウイルス配列である、前記23のベクター。
26.前記アデノウイルスが、複製可能型アデノウイルスベクターである、前記19〜25のいずれか1項に記載のベクター。
27.前記複製可能型アデノウイルスが、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、前記26のベクター。
28.前記アデノウイルスベクターが、複製欠損型である、前記19〜25のいずれか1項に記載のベクター。
29.前記アデノウイルスベクターが、複製欠損型ウシアデノウイルスベクターである、前記28に記載のベクター。
30.前記複製欠損型ウシアデノウイルスベクターが、E1機能を欠く、前記29に記載のベクター。
31.前記ウシアデノウイルスベクターが、E1遺伝子領域の一部または全部の欠失を含む、前記30に記載のベクター。
32.E3遺伝子領域の一部または全部を欠失をさらに含む、前記31に記載のベクター。
33.前記ベクターが、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、前記29に記載のベクター。
34.前記異種タンパク質が、病原体の抗原である、前記33に記載のベクター。
35.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
36.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、ウイルス粒子。
37.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、組成物。
38.薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、前記37に記載の組成物。
39.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターを含む、ワクチン組成物。
40.前記18〜34のいずれか1項に記載のベクターおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む、免疫原性組成物。
41.哺乳動物宿主において免疫応答を誘発するための方法であって、前記40に記載の免疫原性組成物を該哺乳動物宿主に投与する工程を包含する、方法。
42.前記免疫原性組成物が、経口投与される、前記41に記載の方法。
43.前記哺乳動物宿主が、反芻哺乳動物である、前記42に記載の方法。
44.前記反芻哺乳動物が、ウシ哺乳動物またはヒツジ哺乳動物である、前記43の方法。
45.キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質を作製するための方法であって、該方法は、哺乳動物のGALT内に存在する細胞の細胞表面結合部位の結合パートナーをアデノウイルスキャプシドタンパク質の一部または全部に結合させる工程を包含し、ここで該キャプシドタンパク質は、該アデノウイルスキャプシドの表面に配置される、方法。
46.前記アデノウイルスキャプシドタンパク質が、ヘキソン、ペントン、ファイバー、pIXおよびIIIaからなる群より選択される、前記45に記載の方法。
47.キメラアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルスベクターを調製するための方法であって、適切な条件下で、前記18に記載のアデノウイルスベクターで形質転換した適切な宿主細胞を培養し、該ベクターからウイルス粒子の形成を可能にする工程、および必要に応じて該ウイルスを回収する工程、を包含する、方法。
SEQUENCE LISTING
<110> University of Saskatchewan
<120> CHIMERIC ADENOVIRUS CAPSID PROTEINS
<130> F1-0536BR3
<140> JP 2006-516610
<141> 2004-06-10
<150> US 60/477,539
<151> 2003-06-10
<160> 25
<170> FastSEQ for Windows Version 4.0
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<213> Porcine Adenovirus
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<110> University of Saskatchewan
<120> CHIMERIC ADENOVIRUS CAPSID PROTEINS
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<140> JP 2006-516610
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<150> US 60/477,539
<151> 2003-06-10
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<170> FastSEQ for Windows Version 4.0
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Claims (1)
- キメラウシアデノウイルスキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、組換えウシアデノウイルスベクターであって、
該キメラウシアデノウイルスキャプシドタンパク質が、ウシアデノウイルスキャプシドタンパク質pIXの一部もしくは全部、および、哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)のミクロフォールド(M)細胞に存在する細胞表面結合部位の結合パートナーを含み、
該キメラウシアデノウイルスキャプシドタンパク質は、哺乳動物の消化管関連リンパ系組織(GALT)のM細胞に結合し得るものであり、かつ
該ベクターがウシアデノウイルスキャプシドを形成することができる
上記ベクター。
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