JP2015049128A - 非破壊放射能測定装置、およびその放射能測定方法 - Google Patents
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2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震などに起因する福島第一原子力発電所の事故などにより、原子力発電所などで生成される放射性セシウムなどの放射性物質が大気中や水中などに放出される場合がある。農畜産物、水産物などの食品、土などが放射性物質により汚染される場合がある。
また、被測定物の材質として、例えば、食品を想定した場合、概ね「比重1の水」で近似することができる。
上述した放射能測定装置(ベクレルモニター)では、吸収補正係数を被測定物の測定ごとに求めなくともいいように、マリネリ容器に被測定物を隙間なく詰め込むことを要求していた。
Nは単位時間当りの計数値[counts/sec]、Mは質量[kg]、
S0はガンマ線検出部の検出面の面積[m2]、S1は被測定物の底面積[m2]、
N/Mは単位時間且つ単位質量当りの計数値[counts・sec-1・kg-1]、
aは係数(正数)、bは係数(正数)。
尚、係数a、係数bは、標準試料を用いた測定により求めてもよい。
また、非破壊放射能測定装置は、標準試料を用いた測定により求められた係数a、係数bを記憶する記憶部、または、予め規定された係数a、係数bを記憶する記憶部を有していてもよい。算出部は、記憶部に記憶された係数a、係数bを用いて、被測定物の比放射能を算出してもよい。
また、本発明によれば、非破壊放射能測定装置の放射能測定方法を提供することができる。
(A) 食品などの被測定物9を細かくすることなく、その形のままの状態で(丸ごと)、ガンマ線検出部1を平面状に並べて配置した検出面1aの上に接して設置された載置面4aに載置する。例えば、同一種類の複数の食品を載置面4aに載置する場合、それらの間隙を最小とするように、載置面4aの全面積を満たすように載置することが好ましい。本実施形態では、検出面1aと載置面4aは略一致した構成となっている。
もし、被測定物9内でガンマ線の吸収がないと仮定した場合、被測定物9から放射される全ガンマ線の略半分を上記ガンマ線検出部1で検出することになる。この場合、上記ガンマ線検出部1で検出されるガンマ線の計数は、被測定物9とガンマ線検出部1との相対位置に依存しない。また、この場合、上記ガンマ線検出部1で検出されるガンマ線の計数は、食品などの被測定物9の形状に依存しない。また、この場合、被測定物9の比放射能[Bq/kg]は、ガンマ線の計数に比例する。
具体的には、被測定物9の線吸収係数μを用いると、被測定物9内の高さhでの垂直方向に発せられたガンマ線の吸収は、exp(-μh)であり、凹凸の位置での吸収は、exp(-μ(h+δh))≒exp(-μh)(1−μδh)となる。高さhを被測定物の平均の高さとするとΣδh=0であるから、吸収の効果の和はexp(-μh)となる。このため、図3(a)に示したように、直方体などに近似したものの吸収効果だけを考慮すればよい。
被測定物9の底面積S1とは、被測定物9をガンマ線検出部1の検出面1aへ射影した領域の面積である。尚、被測定物9をザルなどの容器に収容して測定を行う場合、その容器の底面積を、上記被測定物9の底面積S1としてもよい。
尚、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100による被測定物9としては、農畜産物、水産物などの食品などを挙げることができる。
被測定物9の比重が大きい場合、係数a、bを別途測定する。また、比放射能A[Bq/kg]は、数式(1)に示したように、被測定物9の底面積S1に対するガンマ線検出部1の検出面1aの面積S0の割合にも依存する。
<非破壊放射能測定装置100の構成>
本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100は、図1、図2に示したように、ガンマ線検出部1と、増幅器2と、アナログデジタル変換部3(ADC)と、質量計測部4と、制御装置5と、などを有する。
本実施形態では、遮蔽体15は、平面状の載置面4aを備えた質量計測部4、ガンマ線検出部1、および、質量計測部4の載置面4aに載置された被測定物9を覆うように構成されている。
光電子増倍管は、光電効果により、シンチレータからの蛍光の光エネルギーを電気エネルギーに変換して検出信号を出力する。
尚、ガンマ線検出部1は、この形態に限られるものではなく、ガンマ線のエネルギーを測定できるものであれば、例えば、ゲルマニウム半導体検出器、シリコン半導体検出器などの半導体検出器であってもよい。
ROM53は、測定用(制御用)のプログラムなどを記憶し、制御部51によりプログラムが読み出されて実行される。
操作入力部54は、操作ボタン、スイッチ、マウスなどの操作入力装置などを有し、操作者の操作に応じた信号を制御部51に出力する。
表示部58は、制御部51の制御により、本発明に係る所定の表示処理、本実施形態では、被測定物9の比放射能[Bq/kg]などを表示する。
図4はガンマ線のエネルギースペクトルの一例を示す図である。図4において、横軸にガンマ線のエネルギー[keV]を示し、縦軸に計数値Nを示す。
ガンマ線検出部1は、例えば、図4に示したように、被測定物9内の放射性核種が放射性崩壊して放射された放射線(ガンマ線)のエネルギースペクトルを得る。詳細には、放射性核種に応じたエネルギーピーク、例えば、137Csに対応したエネルギーピーク(662keV)、134Csに対応したエネルギーピーク(複数のエネルギーピーク)などが得られる。
計数部512は、放射性核種毎に弁別して計数を行うことができる。また、計数部512は、バックグラウンド計数を除いて、放射性核種毎に計数を行うことができる。
尚、計数部512は、数秒〜数分程度の時間のガンマ線検出部1によるガンマ線を計数した後、単位時間当たり(1秒間)の計数値[counts/sec]を算出して出力してもよい。
また、本実施形態では、計数部512は、137Csに対応したエネルギーピークについて計数値を出力するように構成されているが、他の核種に関する計数値を出力するように構成されていてもよい。
この数式(1)は、予め実測で求められた被測定物9の質量Mおよび底面積S1の逆数に関する一次式で示されるガンマ線の吸収補正係数である。
次に、非破壊放射能測定装置100の動作の一例を説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
先ず、標準試料(標準線源)を用いて、非破壊放射能測定装置100によりガンマ線の測定を行い、非破壊放射能測定装置100で用いられる係数a、係数bを決定する。詳細には、規定の比放射能の標準試料を用意する。この際、異なる質量および底面積の標準試料を複数個用意する。
本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100は、この複数の標準線源それぞれについて、質量計測部4で質量を計測するとともに、ガンマ線検出部1などで標準線源からのガンマ線を計数し、得られた計数値および質量に基づいて係数a、係数bを決定する。尚、標準試料の質量が予め規定されている場合、その質量を用いてもよい。
図1、図2に示したように、先ず、底面積S1の被測定物9をガンマ線検出部1の検出面1aまたは載置面4aに載置する。この際、被測定物9を規定の底面積の容器(例えば軽いザルなど)に収容し、その容器の底面積を、被測定物9の底面積S1としてもよい。この場合、異なる底面積の容器を複数個用意しておき、被測定物9に適合する容器、詳細には、被測定物9の幅と略同じ内径または僅かに小さい内径の容器にその被測定物9を収容することで、容器の底面積をその被測定物9の底面積S1として代用してもよい。こうすることで、被測定物9の底面積S1を容易に規定することができる。また、同一種類の複数個の被測定物9(例えば、複数の桃など)を測定する場合、ザルなどの容器(底面積が既知の容器)に収容することで、この被測定物9の底面積S1を容易に規定可能である。
尚、同一種類の複数の被測定物9をまとめて測定する場合、被測定物9間の隙間を最小にして載置面4a(検出面1a)上に載置することが好ましい。
また、制御部51は、算出部514により算出した被測定物9の比放射能A[Bq/kg]を通信部56を介して、他のコンピュータに送信する処理を行ってもよい。
本願発明者は、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100による効果を確認するために、被測定物9をそのままの状態(本発明)、被測定物9を細かくミンチ状にした状態(比較例)それぞれで、比放射能[Bq/kg]を測定した。
つまり、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100は、比較例と比較して、被測定物9をそのままの形状で(丸ごと)、短時間で、簡単に、精度よく、被測定物9の比放射能[Bq/kg]を得ることができる。
次に、本願発明者は、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100において、被測定物9の底面積S1とガンマ線検出部1の検出面1aの面積S0を変化させた場合、高精度にガンマ線を測定可能な範囲を調べた。
図7は本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100のガンマ線検出部1の斜視図である。
図8において、縦軸に、実測されたガンマ線の単位時間及び単位質量当りの計数値(N/M)の逆数を示し、横軸にS0/S1を示す。S1は被測定物9の底面積、S0はガンマ線検出部1の検出面1aの面積を示す。
すなわち、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100において、「S0/S1が約0.8以上」という条件を満たす場合に、高精度に換算式(数式(A4))を適用することができる。
次に、本願発明者は、本発明の実施形態に係る非破壊放射能測定装置100において、ガンマ線検出部1と被測定物9の幾何学的条件の適用範囲について調べた。
また、hは、追加した標準試料ブロックの重心と、ガンマ線検出部1の検出面1aの間の距離(高さ)である。本実施形態では、円柱形状の標準試料を積み上げて、高さhの最大値hmax=43.5cm程度まで測定を行った。
この場合、被測定物9としての標準試料を、有底の円柱形状または多角形の筒形状のザルなどに収容することで、簡単にガンマ線を測定することができる。
図10はS0/S1=1.00の場合、単位時間当りの計数値(カウント数)[counts・sec-1]の質量依存性を示す図である。図10において、縦軸にガンマ線の計数値(カウント数)を示し、横軸にh/Rを示す。
図10に示したように、h/Rが約3以上(M=約0.3kg以上)の場合、計数値(カウント数)が略一定値を示した(飽和状態)。すなわち、高さhが16.25cm以上で計数値(カウント数)が飽和することが分かった。
このため、質量Mを増大させて、所定の質量以上(所定の高さh以上)となった場合、カウント数は一定値となる(飽和する)。
本発明に係る非破壊放射能測定装置100では、このような複雑な数値計算を行うことなく、質量Mの一次関数である数式(A4)、数式(1)により、簡単に比放射能を算出することができる。この数式(A4)が、上述した飽和領域でも高精度に成り立てば、数式(1)の有用性を示すことができる。
このことは、被測定物9の密度が略一様(均一)で、放射性物質の分布が略一様(均一)である場合、被測定物9の質量Mを測定することで、質量Mが0kgより大きい範囲で、数式(1)、数式(A4)により比放射能を高精度に測定することができることを示している。つまり、数式(A3)に基づいた比放射能の測定方法の質量に対する制限はないことを示している。
すなわち、本実施形態に係る非破壊放射能測定装置100では、被測定物9の質量が小さい場合であっても、大きい場合であっても、被測定物9の質量Mおよびガンマ線の計数を測定することで、数式(1)、数式(A4)により比放射能を高精度に測定することができる。
図12はS0/S1=1.66の場合、単位時間当りの計数値(カウント数)[counts・sec-1]の質量依存性を示す図である。図13はS0/S1=1.66の場合、図12に示した実測データを換算式(数式(A4))で変換したグラフの一例を示す図である。
これは、被測定物9の上部からガンマ線検出部1の端部付近へ、自己吸収されることなく到達するガンマ線の経路が存在するからである。
このように、ガンマ線検出部1の検出面1aの面積S0が被測定物9の標準試料よりも僅かに大きい場合についても、数式(A3)が成り立つことが分かった。
図14はS0/S1=11.7の場合、単位時間当りの計数値(カウント数)[counts・sec-1]の質量依存性を示す図である。図15はS0/S1=11.7の場合、図14に示した実測データを換算式(数式(A4))で変換したグラフの一例を示す図である。
本条件の測定では、ガンマ線検出部1の検出面1aの直径Rが、被測定物9の底面の直径よりも十分に大きい。
図9(c)に示したように、被測定物9の上部から放射される放射線(ガンマ線)のうち、被測定物9内を通って略真下方向に沿って放射されるものは、被測定物9の自己吸収によりガンマ線検出部1に到達する量が非常に小さくなる。
図9(c)に示したように、被測定物9の上部から放射される放射線(ガンマ線)のうち、所定の角度以上の斜め方向に放射されるものは、被測定物9内を僅かに通る、又は被測定物9内を全く通らずに、自己吸収されることなく、ガンマ線検出部1に到達する(斜出効果)。
すなわち、換算式(数式(A4))の有用性が示された。
以上の実験結果より、換算式(A3)がS0/S1や被測定物9の質量に依存せずに有用であることが示された。
詳細には、本実施形態では、非破壊放射能測定装置100は、被測定物9が載置され、ガンマ線検出部1の検出面1aと同じ幅の平面状の載置面4aを備え、載置面4aに間隙を最小に全面積を満たすように載置された被測定物9からのガンマ線のエネルギーに応じた信号を出力するガンマ線検出部1と、ガンマ線検出部1による信号に基づいて、所定のエネルギーに対応した信号を計数して所定時間の計数値を出力する計数部512と、被測定物9の質量を測定する質量計測部4と、計数部512による単位時間当りの計数値[counts/sec]、質量計測部4で計測された被測定物9の質量[kg]、被測定物9の底面積S1、及び、数式(1)に基づいて、被測定物9の比放射能[Bq/kg]を算出する算出部514と、を有する。
このように、食品などの被測定物9を破壊することなく丸ごと、その被測定物9の比放射能を、簡単に、測定可能な非破壊放射能測定装置100を提供することができる。
また、この非破壊放射能測定装置100では、被測定物9を細かくすることなく、そのままの状態で、比放射能を測定することができ、測定した被測定物9をそのままの状態で、流通させることができる。
また、被測定物9は、放射性物質が略均一の分布となっていることが好ましく、吸収補正係数が数式(1)で示したように、1次式で示すことができる。
このため、ガンマ線検出部1への外部からの不要なバックグラウンドを遮断することができ、高精度に比放射能を測定可能な非破壊放射能測定装置100を提供することができる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
質量計測部4は、遮蔽体15よりも外部に設けられていてもよい。
[付記1]
食品などの被測定物を破壊することなく該被測定物の比放射能を測定する非破壊放射能測定装置であって、
載置面に載置された前記被測定物からのガンマ線のエネルギーに応じた信号を出力するガンマ線検出部と、
前記ガンマ線検出部による前記信号に基づいて、所定の範囲のエネルギーを示す信号を計数して所定時間の計数値を出力する計数部と、
前記被測定物の質量を測定する質量計測部と、
前記計数部による前記計数値、前記質量計測部で計測された前記被測定物の質量、被測定物の底面積、及び、数式(1)に基づいて、前記被測定物の比放射能[Bq/kg]を算出する算出部と、を有することを特徴とする
非破壊放射能測定装置。
[付記2]
S0/S1が0.8以上であることを特徴とする付記1に記載の非破壊放射能測定装置。
[付記3]
付記1に記載の非破壊放射能測定装置の放射能測定方法であって、
前記質量計測部が前記被測定物の質量を計測する第1のステップと、
前記ガンマ線検出部および前記計数部が前記被測定物からのガンマ線の所定時間の計数値を出力する第2のステップと、
前記算出部が、前記計数部による前記計数値、前記質量計測部で計測された前記被測定物の質量、被測定物の底面積、及び、数式(1)に基づいて、前記被測定物の比放射能[Bq/kg]を算出する第3のステップと、を有することを特徴とする
非破壊放射能測定装置の放射能測定方法。
1a 検出面
2 増幅器
3 アナログデジタル変換部(ADC)
4 質量計測部
4a 載置面
5 制御装置
9 被測定物(農畜産物や水産物等の食品、土など)
15 遮蔽体(鉛遮蔽体など)
51 制御部(CPU)
52 RAM
53 ROM
54 操作入力部
55 インタフェース(I/F)
56 通信部
57 計時部
58 表示部
59 通信線(バス)
511 ガンマ線検出制御部
512 計数部
513 質量計測制御部
514 算出部
Claims (2)
- 食品などの被測定物を破壊することなく該被測定物の比放射能を測定する非破壊放射能測定装置であって、
載置面に載置された前記被測定物からのガンマ線のエネルギーに応じた信号を出力するガンマ線検出部と、
前記ガンマ線検出部による前記信号に基づいて、所定の範囲のエネルギーを示す信号を計数して所定時間の計数値を出力する計数部と、
前記被測定物の質量を測定する質量計測部と、
前記計数部による前記計数値、前記質量計測部で計測された前記被測定物の質量、及び、数式(1)に基づいて、前記被測定物の比放射能[Bq/kg]を算出する算出部と、を有することを特徴とする
非破壊放射能測定装置。
Nは単位時間当たりの計数値[counts/sec]、Mは質量[kg]、
N/Mは単位時間且つ単位質量当りの計数値[counts・sec-1・kg-1]、
S0はガンマ線検出部の検出面の面積[m2]、S1は被測定物の底面積[m2]、
aは係数(正数)、bは係数(正数)。 - 請求項1に記載の非破壊放射能測定装置の放射能測定方法であって、
前記質量計測部が前記被測定物の質量を計測する第1のステップと、
前記ガンマ線検出部および前記計数部が前記被測定物からのガンマ線の所定時間の計数値を出力する第2のステップと、
前記算出部が、前記計数部による前記計数値、前記質量計測部で計測された前記被測定物の質量、及び、数式(1)に基づいて、前記被測定物の比放射能[Bq/kg]を算出する第3のステップと、を有することを特徴とする
非破壊放射能測定装置の放射能測定方法。
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