JP2013156116A - 家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置 - Google Patents

家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
生きている肉牛などの家畜体内の放射能濃度をより正確に測定することが可能な家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】
家畜1を専用の檻2に導き入れ、家畜1の側面で測定部位近傍に、コリメータ付き遮へい体5を含む放射線検出器4を設置して所定時間測定する。パルス波高分析器7でγ線スペクトルを求め、γ線スペクトルから放射能濃度評価装置8においてカリウム-40及び測定対象核種のγ線ピークの計数率を評価し、カリウム-40の計数率に基づき測定領域の大きさを評価し、測定領域の評価結果に基づき被測定対象核種の放射能濃度を補正する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置に係り、特に、家畜体内の放射能濃度測定において、家畜の大きさの違いによる測定誤差を最小限におさえることのできる家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置に関するものである。
東日本大震災によって福島原子力発電所が被災して放射能が環境に流出し、野菜や土壌等被災直後に屋外にあったものが放射能によって汚染された。この放射能汚染によって稲藁や牧草を食べた肉牛等も放射能汚染された。
肉牛の汚染は、食肉処理後、食肉を所定の計量容器に充填し、重量測定後、Ge半導体検出器を用いて放射能分析され、単位重量当たりの放射能濃度として測定されている。
一般的な放射能濃度を測定する装置の構成例を図3に示す。この測定では、試料12と放射線検出器(ゲルマニウム半導体検出器)4が、遮へい体11の中に入っているため、試料から発生する放射線以外の放射線(バックグランド)を低く抑えることができること、標準物質を含む校正線源と同じ形状で測定していることから、正確な放射能濃度を測定することができる。
試料に含まれる放射能を測定するには、測定試料と校正線源の測定条件を同一にする。これによって、放射線検出器の検出効率に影響を及ぼす数々のパラメータをキャンセルできるため、単純な校正定数によって、計数率から放射能量を求めることができる。
なお、試料の放射能Asと放射線検出器で観測される計数率Csの関係は、数1で与えられる(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
Figure 2013156116
ここで、a:放射線検出器の半径
d:試料から検出器までの距離
μ:試料内部及び試料と放射線検出器間の遮へい効果
ε:放射線検出器固有効率
δ:γ線の1崩壊当りの放出率
また、校正線源の放射能Acと放射線検出器で観測される計数率Ccの関係は、数2で与えられる。
Figure 2013156116
線源の形状を試料と同一とし、測定条件も変えなければ、括弧内の定数が同一となるため、一つの校正定数に纏めることができる。この校正定数を校正線源に基づき予め求め、計数率Csを観測すれば、数1に基づき試料の放射能Asを求めることができる。
特開平3-123881号公報 特開平1-101489号公報
Glenn F.Knoll(木村逸郎、阪井英次訳)、「放射線計測ハンドブック」、日刊工業新聞社(1982)、p77〜79 Nicholas Tsoulfanidis(阪井英次訳)、「放射線計測の理論と演習」、上巻・基礎編、現代工学社(1986)、p261〜268
上述のように、肉牛の放射能濃度の測定は、食肉処理後に行っている。しかし、放射能測定は生きている肉牛に対しても行えるようにすることが望ましい。しかしながら、生きている肉牛に関しては放射線サーベイメータを用いて測定しているのが現状である。放射線サーベイメータは、手軽な測定器ではあるが、元々測定目的が異なるため、次のように家畜の放射能測定には向いていない。
(1)汚染サーベイメータ
汚染サーベイメータは、β線に対して高感度なガイガー・ミュラー検出器(GM検出器)が使用されている。
β線は、物質との相互作用が大きいため、僅かな物質の層厚で遮へいされる性質がある。検出器周りを薄い金属で覆うと簡単にバックグランドを遮へいでき、被測定物の厚さが厚いと被測定物内部の放射性物質から放出されたβ線は検出できない。このため、物質深部からの影響を受けず(物質層が厚いと遮へいされてしまう)、物質表面だけの放射能測定が可能である。被測定物質表面の放射能汚染だけを測定する場合は、GM検出器式の汚染サーベイメータがよいが、家畜体内の放射能濃度測定は、家畜体内深部の放射能濃度測定が目的であるため使用できない。
(2)空間線量率サーベイメータ
空間線量率サーベイメータは、γ線を高感度に測定することができるNaI(Tl)シンチレーション検出器や電離箱検出器が使用されている。空間線量率は、360°方向に対して特異な感度を持たないことが求められているため、空間線量率サーベイメータは、無指向性である。このため、被測定物である家畜の放射線と同時にバックグランド放射線も検出器に検出されてしまう。
放射線に対する指向性がないことやγ線はβ線のように簡単に遮へいできないことから、バックグランドの割合が高く、家畜から直接出ている放射線を識別するには、高濃度に汚染しないと識別できず、国が定めている暫定基準レベルの放射能を測定することは困難である。
以上のように、サーベイメータでは、家畜の放射能濃度を測定することができない。
また、ゲルマニウム半導体検出器やNaI(Tl)シンチレーション検出器でパルス波高分析器を設けたポータブル型γ線スペクトロメータが開発されているが、前述の空間線量率サーベイメータと同様バックグランドが測定の障害となっている。
バックグランドの影響を受けないようにするため、ゲルマニウム半導体検出器やNaI(Tl)シンチレーション検出器等の放射線検出器の周りを遮へい体で囲み、被測定対象物の方向に穴(コリメータ)を開けて指向性を持たせて測定する方法が用いられることがある。
こうしたコリメータを使用した測定は、図4に示すように原子力施設の放射能を帯びた配管の放射能測定や放射性廃棄物の放射能濃度測定等に応用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。なお、図中、4は放射線検出器、5はコリメータ付き遮へい体、10はコリメータ視野の境界、13はコリメータ、14は測定対象物を示す。
但し、図4のように被測定対象物(配管等)の物理的パラメータ(配管径や配管厚さ、放射能分布の場所等)が分かっている場合で、これらを模擬した配管で校正されている場合に限り定量可能となる。なお、ここでも数1と数2の関係が成り立つ、校正と試料測定の測定条件が同一であるという原則が成立すると、校正定数を用いて試料の定量が可能となる。
このように、放射能濃度測定では、被測定物の形状や検出器との位置関係(ジオメトリー)が一定でないと正確な測定は困難である。
しかし、配管等の測定では、配管径や厚みが決まっているため、放射能濃度を評価することができるが、家畜の場合、家畜一頭毎に体躯の大きさが異なるため、正確な放射能濃度測定が困難である。
本発明の目的は、生きている肉牛などの家畜体内の放射能濃度を測定することが可能な家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、家畜一頭毎に体躯の大きさが異なっても、より正確な放射能濃度測定が可能な家畜体内の放射能濃度測定方法及び装置を提供することにある。
本発明は、検出器周りを遮へい体で覆い、その遮へい体の所定の場所にコリメータを設け、家畜の測定部位を特定して家畜の放射能濃度測定をするようにしたことを特徴とする。
さらに、本発明は、カリウム-40の計数率から家畜の測定部位の評価し、この評価に基づき、測定された被測定核種の放射能濃度を補正するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、生きている肉牛などの家畜体内の放射能濃度を測定することが可能となる。
また、本発明によれば、家畜一頭毎に体躯の大きさが異なり被測定部位の重量が異なっても、コリメータによる測定部位の特定とカリウム-40の解析によって、被測定部位の放射能濃度を精度よく測定することができる。
本発明に係る家畜体内の放射能濃度測定装置の構成の一例を示す図である。 家畜体内のγ線スペクトルの一例を示す図である。 一般的な放射能濃度測定をする装置の構成例を示す図である。 測定対象が大きい場合の放射能濃度測定をする装置の構成例を示す図である。 本発明に係る体脂肪測定手段を設けた家畜体内の放射能濃度測定装置の構成を示す図である。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
先ず、本発明の原理について説明する。
家畜の放射能濃度測定をするには、検出器周りを遮へい体で覆い、その遮へい体の所定の場所にコリメータを設け、家畜の測定部位を特定する。
家畜の測定部位は、コリメータの軸中心に検出器中心を頂点とする立体角α内の円錐形部分内の部位である(測定部位の形はコリメータ開口の形を反映した底面が相似の錐形となるがここではコリメータの開口が円として考える)。立体角αは、コリメータの絞り具合で変化する。
被測定家畜の胴体の中にこの円錐形のγ線が検出器に入射する領域があれば、検出されるγ線量が、γ線が検出器に入射する領域の肉体の重量に比例すると考えると、家畜放射能濃度を測定することができると考えられる。
しかし、配管等の測定では、配管径や厚みが決まっているため、放射能濃度を評価することができるが、家畜の場合、家畜一頭毎に体躯の大きさが異なるため、コリメータで選択された円錐形は同じでも、家畜の胴周りの大きさが異なると円錐の高さが異なってしまい、測定部位の体積が測定毎に異なってしまう。これによって円錐の体積を評価しなければ、正確な放射能濃度測定ができないことになる。
このように、家畜体内の放射能濃度を正確に測定するには、測定部位の放射能と体積(重量)を知る必要がある。しかし、生きている家畜の測定部位の重量を測ることはできない。
本発明者等は、家畜の体内のカリウム濃度及びカリウム中の放射性カリウム(K-40)濃度が一定であることに着目した。
即ち、家畜は、人間と同様に生体内のカリウム濃度は、約50mEq/kgであり、微妙な個体差はあるが、ほぼ一定の濃度である。
放射性カリウムの内、カリウム-40は、自然放射性核種であり、その成因は、超新星爆発によって、地球誕生以前からあるものと、大気中のアルゴン-40に宇宙線が作用して生成した物であり、全カリウムに対するカリウム-40の割合に対して、偏在することはなく、0.0117%の割合で存在している。
従って、家畜の単位重量当たりのカリウム-40の濃度は数3で与えられ、家畜の個体に係らず一定であると言える。
Figure 2013156116
ここで、AK-40:K-40の放射能濃度[Bq/kg]
K:家畜体内のカリウム濃度[mol/kg] ・・・ (5.0×10-3mol/kg)
K-40:全カリウム中のK-40のモル分率[-] ・・・ (1.17×10-4)
A:アボガドロ定数[1/mol] ・・・ (6.02×1023/mol)
λK-40:K-40の崩壊定数[1/s] ・・・ (1.72×10-17/s)
数3に基づき、家畜の単位重量当たりのカリウム-40の濃度を計算すると61Bq/kgとなる。従って、カリウム-40の計数率から測定部位の重量を知ることができる。
次に、本実施例の家畜体内の放射能濃度測定装置を使用して家畜の放射能を測定する場合の模式図を図1に示す。
家畜1の横に放射線検出器4が設置されている。放射線検出器4は、家畜1の方向以外はコリメータ付き遮へい体5に囲まれており、バックグランドの低減を図っている。
家畜の方向は、コリメータが設けられ、一定の立体角でγ線が検出器に入射するようになっている(コリメータ視野の境界10内の測定部位からのγ線が検出器に入射する。)。
この立体角内の円錐形の部分を家畜の胴体で満たせば、数4で示すように放射能を測定することができる。
Figure 2013156116
ここで、B:放射能量[Bq]
C:放射線の計数率[1/s]
η:放射線の計数効率[-]
δ:1崩壊当りのγ線放出率[-]
放射能濃度は、数5で与えられる。
Figure 2013156116
ここで、A:放射能濃度[Bq/kg]
W:試料の重量[kg]:
被測定対象の家畜のカリウム-40の計数率を求めれば、数3、数4、数5を用いて数6で立体角内の家畜の測定部分の重量を求めることができる。
Figure 2013156116
ここで、CK-40:K-40の1461keVγ線ピークの計数率[1/s]
ηK-40:K-40の1461keVγ線の計数効率[-]
δK-40:K-40の1461keVγ線の放出率[-]
立体角内の円錐形部分は、他の核種でも同じなので、数7によって測定対象の核種の放射能濃度を測定することができる。
Figure 2013156116
ここで、Ai:被測定対象核種の放射能濃度[Bq/kg]
i:被測定核種のγ線ピークの計数率[1/s]
ηi:被測定核種のγ線の計数効率[-]
δi:被測定核種のγ線の放出率[-]
本発明を含め、放射線計測では、標準線源の放射能濃度と放射線検出器で計数される計数率の関係(計数効率)を予め測定しておく必要がある。
標準線源は、カリウム-40と被測定対象核種を標準線源とするが、ゲルマニウム半導体検出器の場合は、被測定対象核種のγ線エネルギー範囲をカバーするγ線を複数放出していれば、混合核種線源やγ線を複数種類放出する単一核種線源でもよい。
カリウム-40は、家畜のカリウム濃度(5×10-3mol/kg)に相当するカリウム塩で調整する。
家畜の生体密度を模擬するため、標準線源を含む線源は、家畜の生体密度と一致するように生理食塩水に溶解する。
標準線源を家畜の胴体を模擬した容器に充填し、ファントムを作成する。本発明ではこのファントムを家畜ファントムと称する。家畜ファントムの側面から放射線検出器で計測し、カリウム-40および被測定対象核種の標準線源のγ線ピークの計数率を求める。カリウム-40および被測定対象核種の標準線源の計数効率は、数8及び数9で与えられる。
Figure 2013156116
Figure 2013156116
ここで、ファントムの立体角内の標準線源の重量Wを求めるのは、計算上可能かもしれないが、実際の測定では困難である。
そこで、先ず、(ηK-40×W)と(ηi×W)をそれぞれη'K-40とη'iとすると、数8と数9はそれぞれ数10と数11のように変形できる。
Figure 2013156116
Figure 2013156116
数10と数11を用いて、カリウム-40および被測定対象核種の標準線源のγ線ピークのCK-40とCiを計測することにより、η'K-40とη'iを求める。
被測定対象核種の標準線源のη'iが求められれば、数12に示すように、家畜体内の放射能濃度Aiは計数率Ciを放射線検出器で計測することにより求めることができる。
Figure 2013156116
しかし、この場合、被測定対象物と放射線検出器のジオメトリーが標準線源校正時のジオメトリーと完全に一致している必要がある。もし、ジオメトリーが異なって、立体角内の重量が変化すると、重量に比例して計数率が変化してしまい、正確な放射能濃度測定ができなくなる。
ところが、立体角内の重量Wは、カリウム-40の標準線源でも被測定対象核種の標準線源でも同じであるので、このとき、カリウム‐40も同様に重量に比例して計数率が変化しているのである。即ち、数8と数9からWを消去すると、測定対象核種濃度は数13で与えられる。
Figure 2013156116
数13はさらに数14のように変形できる。
Figure 2013156116
η'i、δi、AK-40、η'K-40、δK-40は、既知なので、数14にカリウム-40と測定対象核種の計数率を代入することにより、正確な測定対象核種の放射能濃度を求めることができる。
家畜体内のカリウム-40濃度は、前述のように家畜の体躯の大きさに係らずほぼ一定であり、カリウム-40の計数率変化は、立体角内の重量変化に起因している。従って、カリウム-40を基準にして立体角内の重量変化を補正すれば、常に正確な放射能濃度を求めることができる。即ち、数14により求められる被測定対象核種の放射能濃度は、カリウム-40の計数率に基づき測定部位(領域)の大きさ(重量)を評価した結果に基づき測定対象核種の放射能濃度を補正しているとも言うことができる。
次に本発明による家畜体内の放射能濃度測定装置に家畜を導入して測定対象核種の放射能濃度を求める方法について説明する。
本実施例では、家畜を専用の檻2に導き入れ、家畜の運動を制限するが、ロープなどで固ばくするものではない。むしろ、測定時間中家畜が歩行せずリラックスできる状態がよい。
専用の檻2は、測定時以外は家畜1が一方方向に通り抜けられるようになっている。家畜投入時は、前方のゲート(図示省略)が閉じ、後方のゲート(図示省略)が開いており、後方ゲートから家畜が導入される。
家畜1の檻2への導入が完了すると、後方のゲートが閉じられる。家畜は、前方のゲートに設けられた餌箱3から餌を食べることができる。
檻2には検出器架台6が設けられており、検出器架台6にコリメータ付き遮へい体5を含む放射線検出器4を設置できるようになっている。家畜導入後、放射線検出器4は家畜の側面で、かつ、家畜の測定部位付近に設置される。家畜が驚かないように家畜と接触しない位置でなるべく家畜近傍の位置を選択する。遮へい体を含む放射線検出器4は、家畜の測定部位に合わせて、左右及び上下に位置調整ができるようになっている。
放射線検出器4は、コリメータを除く部分は、所定の遮へい厚の遮へい体で遮へいされており、家畜以外のバックグランドが低く抑えられている。
また、放射線検出器4は、家畜方向にはコリメータが設けられており、家畜の測定部位を特定できるようになっている。
放射線検出器4は、ゲルマニウム半導体検出器または、NaI(Tl)シンチレーション検出器、ランタンブロマイド(LaBr3(Ce))検出器を使用することができる。本実施例では、放射線検出器4としてゲルマニウム半導体検出器を使用している。
放射線検出器4を家畜1の測定部位近傍に設置した後、放射線検出器の測定を開始し、所定時間測定する。
放射線検出器4から出力された電気パルスは、パルス波高分析器7に接続され、γ線スペクトルが求められる。パルス波高分析器7としては、マルチチャネルアナライザーを使用している。
測定後のγ線スペクトルを図2に示す。γ線スペクトルには、測定対象核種であるセシウム-134とセシウム-137、カリウム-40のγ線ピークが観測されている。
これらのγ線ピークについて、それぞれの計数率を求める。即ち、得られたγ線スペクトルから放射能濃度評価装置8においてカリウム-40及び測定対象核種のγ線ピークの計数率を評価(計算)し、数14に基づき被測定対象核種の放射能濃度を求める。
表1は、標準条件で校正用標準線源を測定した場合の測定結果である。
Figure 2013156116
次に、校正用標準線源の位置を標準条件より検出器からの距離を遠ざけて測定した結果を表2に示す。
Figure 2013156116
測定値の値は、標準条件より41.5%減少しているが、K-40の計数率で補正すると校正標準値とほぼ一致する結果となっている。
本実施例によれば、コリメータによる測定部位の特定とカリウム-40の解析によって、被測定部位の重量変化を補正できるので、家畜の放射能濃度を精度よく測定することができる。
なお、家畜は、所定の檻で囲うことによって、測定するのに十分な固定をすることができると考えられるが、生き物であることや測定時間が少なくとも10分以上掛ることから検出器から見た家畜の位置は必ずしも一定であるとは限らない。特に、放射線検出器と家畜との距離の変化が生じるものと考えられる。
しかし、測定時間中に計測した範囲のカリウム-40と被測定対象核種の放射能濃度の比率は一定である。従って、本発明を適用すると、家畜と放射線検出器間の位置の変化による計数効率の変化を自動的に補正することができ、家畜体内の放射能濃度を正確に測定できる効果がある。
次に、本発明の他の実施例を説明する。
家畜は、肥育の程度によって体脂肪の割合が異なっている。体内のカリウムは、筋肉組織等水分の多い部分の方が体内カリウム濃度が高くなり、脂肪組織では、カリウム濃度が低くなる傾向がある。従って、体脂肪率が異なると同じ重量でもカリウム-40の計数率が異なる可能性がある。家畜ファントムは体脂肪率0%を想定しているが、実際の家畜は体脂肪をもっている。実際に測定すると、測定値はカリウム-40で補正するため、体脂肪率0%の状態での値となる。このため、実際の放射能濃度より、やや高めに補正される。しかし、精度よく測定するためには、家畜の体脂肪率を評価し、測定値を補正する必要がある。
この場合、図5に示すように体脂肪測定用電極15を家畜1に取り付け、放射能濃度測定と同時に体脂肪測定装置16で体脂肪率を測定する。体脂肪率(筋肉組織の割合)とカリウム濃度との関係を予め求めておき、体脂肪率を測定して筋肉組織の割合を評価することで、測定部位の適切なカリウム濃度を推測する。そして、数3に基づき、家畜の単位重量当たりのカリウム-40の放射能濃度を再計算し、測定部位の正確な放射能濃度を再評価する。このようにすることで、測定対象核種の体内の放射能濃度をより正確に評価することができる。
1…家畜、2…檻、3…餌箱、4…放射線検出器、5…コリメータ付き遮へい体、6…検出器架台、7…パルス波高分析器、8…放射能濃度評価装置、9…家畜胴断面、10…コリメータ視野の境界、11…遮へい体、12…試料、13…コリメータ、14…測定対象物、15…体脂肪測定用電極、16…体脂肪測定装置。

Claims (13)

  1. 家畜の胴体の一部のγ線を選択的に透過するコリメータを介して放射線検出器により検出し、放射線検出器から出力される電気パルスをパルス波高分析器でγ線スペクトルを求め、パルス波高分析器で得られたγ線スペクトルに基づきカリウム-40と被測定核種の計数率を求め、カリウム-40の計数率に基づきコリメータで選択された測定領域の大きさを評価し、被測定核種の計数率と測定領域の大きさに基づき被測定核種の放射能濃度を求めるようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定方法。
  2. 請求項1において、生理食塩水と所定濃度のカリウム塩及び所定濃度の測定対象放射性核種からなる校正溶液を充填した家畜ファントムを使用して放射能濃度測定の校正を行うようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定方法。
  3. 請求項1において、放射線検出器としてゲルマニウム半導体検出器を使用し、生理食塩水と所定濃度のカリウム塩及び被測定対象核種のγ線エネルギー範囲をカバーするγ線を複数放出する濃度既知の混合線源又は複数種類のγ線を放出する濃度既知の単一線源からなる校正溶液を充填した家畜ファントムを使用して放射能濃度測定の校正を行うようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定方法。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、家畜の体脂肪率を測定し、家畜の体脂肪率から脂肪と赤身の割合を評価し、脂肪増加によるカリウム濃度低下を反映させてカリウム-40の計数率を求めるようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定方法。
  5. γ線検出器、前記γ線検出器から発生する電気パルスを解析するパルス波高分析器、前記パルス波高分析器のデータを解析し放射能濃度を評価する放射能濃度評価装置を備え、前記γ線検出器は、家畜の側面に設けられ、家畜の胴体の一部のγ線を選択的に透過するコリメータと、前記コリメータ以外の検出器周りを覆う遮へい体を有することを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  6. 請求項5において、前記放射能濃度評価装置は、前記パルス波高分析器で得られたγ線スペクトルのカリウム-40のピーク計数率に基づき、前記コリメータで選択された家畜の測定領域の大きさを評価し、被測定核種の放射能濃度を前記測定領域の大きさに基づき補正することを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  7. 請求項5又は6において、家畜の行動を制限する檻を設け、前記檻の側面に前記γ線検出器を設けたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  8. 請求項5〜7の何れかにおいて、前記γ線検出器は、ゲルマニウム半導体検出器、NaI(Tl)シンチレーション検出器、又は、ランタンブロマイド(LaBr3(Ce))検出器が用いられていることを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  9. 請求項5〜8の何れかにおいて、生理食塩水と、所定濃度のカリウム塩及び所定濃度の測定対象放射性核種を含む標準線源からなる校正溶液を充填した家畜ファントムを備え、前記家畜ファントムを使用して放射能濃度測定の校正を行うようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  10. 請求項5〜8の何れかにおいて、前記γ線検出器はゲルマニウム半導体検出器であり、生理食塩水と、所定濃度のカリウム塩及び被測定対象核種のγ線エネルギー範囲をカバーするγ線を複数放出する濃度既知の混合線源又は複数種類のγ線を放出する濃度既知の単一線源を含む標準線源からなる校正溶液を充填した家畜ファントムを備え、前記家畜ファントムを使用して放射能濃度測定の校正を行うようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  11. 請求項9又は10において、前記校正溶液は、家畜の生体密度と略一致するように標準線源が生理食塩水に溶解されていることを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  12. 請求項5〜11において、家畜用体脂肪率測定手段を設けたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
  13. 請求項12において、前記家畜用体脂肪率測定手段で評価した家畜の体脂肪率から脂肪と赤身の割合を評価し、脂肪増加によるカリウム濃度低下を反映させてカリウム-40の計数率を求めるようにしたことを特徴とする家畜体内の放射能濃度測定装置。
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