JP2015048443A - 消毒剤含浸用担体 - Google Patents

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Abstract

【課題】カチオン系消毒剤の吸着を防止できる消毒剤含浸用担体を提供する。
【解決手段】カチオン系消毒剤を含浸させるための消毒剤含浸用担体である。この消毒剤含浸用担体は、カルボキシル基がエステル化されたセルロース系繊維から形成されている。消毒剤含浸用担体は、セルロース系繊維からなる担体を、酸の濃度が0.0001mol/L以上1mol/L以下である酸溶液に浸漬することにより、セルロースのカルボキシル基をエステル化した後、酸溶液が含まれた担体を水洗処理して製造される。そして、カルボキシル基がエステル化されているため、セルロースがマイナス電荷を帯びにくく、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、カチオン系消毒剤を含浸させるための消毒剤含浸用担体に関する。
従来から、例えば外皮の殺菌や消毒等の際には、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)や塩化ベンザルコニウム(BAC)等のカチオン系消毒剤を含む溶液を、セルロース系繊維からなる担体に含浸させて使用する。
しかしながら、セルロース系繊維からなる担体にカチオン系消毒剤を含浸させると、カチオン系消毒剤がセルロース系繊維に吸着してしまう。
このようなセルロース系繊維によるカチオン系消毒剤の吸着は、セルロースにおける天然由来のカルボキシル基、または、漂白工程におけるセルロース分子内の6位水酸基の酸化によって生じるカルボキシル基によるものと考えられている。すなわち、カルボキシル基によってセルロースがマイナス電荷を帯びるため、電気的相互作用によりカチオン系消毒剤が吸着すると考えられている。
ここで、カチオン系消毒剤の吸着は、吸着量に上限があり所定の範囲内でのみ吸着される。そのため、カチオン系消毒剤が高濃度である場合には、一定量のカチオン系消毒剤が吸着されても、相対的な濃度が低下せず消毒効果は殆ど低下しない。一方、カチオン系消毒剤が低濃度である場合には、一定量のカチオン系消毒剤が吸着されると濃度への影響が大きく、相対的に濃度が低下してしまって消毒効果が低下してしまう。
そこで、カチオン系消毒剤に2価以上の金属塩を添加することにより、担体へのカチオン系消毒剤の吸着を防止する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、担体としてセルロース系繊維ではなく、界面活性剤の少ないポリエステルやポリエチレン等の合成繊維を使用することにより、カチオン系消毒剤の吸着を防止する構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、漂白工程において使用する漂白剤の種類を選択することにより、セルロース系繊維の酸化を抑えてカチオン系消毒剤の吸着を防止する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
特開昭50−18618号公報 特開2005−13309号公報
梶本晴彦,外2名,「薬物吸着に配慮した脱脂綿製造工程中における漂白処理剤の選定」,病院薬学,1999年,vol.25,No.6,p.614−620
しかしながら、上述の特許文献1の構成は、添加する金属塩によって例えば皮膚への刺激性等の種々の副作用が考えられるため、外皮消毒剤などに使用される消毒剤含浸用の担体には適切ではないと考えられる。
また、上述の特許文献2の構成では、界面活性剤の使用を抑制したとしても、少量の界面活性剤が含まれているため、カチオン系消毒剤の濃度が低い場合には、カチオン系消毒剤の濃度が低下してしまう。また、洗浄等によって界面活性剤を除去した場合、ポリエステル等の合成樹脂は、繊維自体で溶液を吸収できないとともに、撥水性を有するため、消毒剤を担体に保持しにくくなってしまい、消毒剤を適切に含浸できなくなる可能性が考えられる。
上述の非特許文献1に記載された漂白剤では、セルロース系繊維の漂白を十分に行えない場合が考えられる。また、漂白剤の種類の選定によりセルロース系繊維の酸化を抑制しているたけで、酸化自体を防止している訳ではないため、カチオン系消毒剤の吸着を十分に防止できない可能性も考えられる。
したがって、例えば外皮の殺菌消毒などに使用可能であり、カチオン系消毒剤を適切に含浸できるだけでなく、カチオン系消毒剤を含浸させた際にカチオン系消毒剤の吸着を防止できる消毒剤含浸用担体が求められていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる消毒剤含浸用担体を提供することを目的とする。
請求項1に記載された消毒剤含浸用担体は、カチオン系消毒剤を含浸させるための消毒剤含浸用担体であって、カルボキシル基がエステル化されたセルロース系繊維にて構成されるものである。
請求項2に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項1記載の消毒剤含浸用担体において、セルロース系繊維からなる担体を、酸の濃度が0.0001mol/L以上1mol/L以下である酸溶液に浸漬した後、この酸溶液が含まれた担体を水洗処理したものである。
請求項3に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項1または2記載の消毒剤含浸用担体において、酸は、塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸および酢酸の少なくともいずれか1つであるものである。
請求項4に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項1記載の消毒剤含浸用担体において、セルロース系繊維からなる担体を、酸および有機溶媒の混合溶液に浸漬した後、この混合溶液が含まれた担体を水洗処理したものである。
請求項5に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項4記載の消毒剤含浸用担体において、有機溶媒は、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方からなる単一有機溶媒、または、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方と、極性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒および無極性有機溶媒のうちの少なくともいずれか1つとを混合した混合有機溶媒であるものである。
請求項6に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項4または5記載の消毒剤含浸用担体において、酸は、強酸であるものである。
請求項7に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項4乃至6いずれか一記載の消毒剤含浸用担体において、混合溶液は、酸の濃度が0.0001mol/L以上0.1mol/L未満であるものである。
請求項8に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項1乃至7いずれか一記載の消毒剤含浸用担体において、セルロース系繊維は、脱脂および漂白された天然セルロース系繊維、または、再生セルロース系繊維であるものである。
請求項9に記載された消毒剤含浸用担体は、請求項1乃至8いずれか一記載の消毒剤含浸用担体において、含浸させるカチオン系消毒剤は、含浸液量が3ml/g以上15ml/g以下で、濃度が0.001w/v%以上5w/v%以下であるものである。
請求項1に記載された発明によれば、カルボキシル基がエステル化されているため、セルロースがマイナス電荷を帯びにくく、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
請求項2に記載された発明によれば、酸の濃度が0.0001mol/L以上であるため、セルロース系繊維のカルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。また、酸の濃度が1mol/L以下であるため、担体の劣化を防止できる。
請求項3に記載された発明によれば、酸が塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸および酢酸の少なくともいずれか1つであるため、セルロース系繊維のカルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
請求項4に記載された発明によれば、担体を混合溶液に浸漬するため、セルロース系繊維のカルボキシル基をより効果的にエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
請求項5に記載された発明によれば、有機溶媒が、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方からなる単一有機溶媒、または、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方と、極性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒および無極性有機溶媒のうちの少なくともいずれか1つとを混合した混合有機溶媒であるため、カチオン系消毒剤の吸着を防止できるとともに担体の劣化を防止しやすい。
請求項6に記載された発明によれば、酸が強酸であるため、セルロース系繊維のカルボキシル基をより効果的にエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
請求項7に記載された発明によれば、酸の濃度が0.0001mol/L以上であるため、セルロース系繊維のカルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。また、酸の濃度が0.1mol/L未満であるため、担体の劣化を防止できる。
請求項8に記載された発明によれば、セルロース系繊維が天然セルロース系繊維または再生セルロース系繊維であっても、カルボキシル基をエステル化してカチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
請求項9に記載された発明によれば、含浸液量が3ml/g以上15ml/g以下で、0.001w/v%以上5w/v%以下の濃度範囲のカチオン系消毒剤を含浸させる場合に、効果的にカチオン系消毒剤の濃度の低下を防止できる。
実施例6および比較例6における溶液温度と非吸着率との関係を示すグラフである。 実施例7および比較例7における非吸着率と浸漬時間の対数値との関係を示すグラフである。
以下、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。
本実施の形態に係る消毒剤含浸用担体は、例えば外皮の殺菌や消毒等をする際に、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)や塩化ベンザルコニウム(BAC)等のカチオン系消毒剤を含浸させて使用されるものである。
この消毒剤含浸用担体は、カルボキシル基がエステル化されたセルロース系繊維からなる。
セルロース系繊維としては、例えば脱脂綿等の脱脂および漂白された天然セルロース系繊維や、例えばキュプラ、リヨセル、レーヨンおよびアセテート等の脱脂および漂白された再生セルロース系繊維や、再生セルロース系繊維に化学繊維を複合した複合セルロース系繊維が用いられる。
キュプラは、実綿から綿花を取り去った後に残る短い繊維(リンター)を原料パルプとして使用し、銅アンモニア溶液に溶解させて紡糸液として紡糸し、セルロースを凝固および再生して製造されるものである。
リヨセルは、パルプを特殊な溶剤で溶解した後に紡糸し、セルロースを凝固および再生して製造されるものである。
レーヨンは、木材パルプや竹等の植物原料をアルカリおよび二硫化炭素と反応させてアルカリ水溶液中に溶解して口金から硫酸水溶液中に押し出し、引き伸ばして、繊維素(セルロース)を凝固および再生して製造されるものである。
アセテートは、木材パルプを原料に、酢酸反応させたアセチルセルロースを凝固および再生して製造されるものである。
複合セルロース系繊維は、例えば再生セルロース系繊維であるレーヨンに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を混合して成型したものである。
そして、このようなセルロース系繊維からなる担体を酸溶液に浸漬することにより、セルロース系繊維のカルボキシル基がエステル化され、酸溶液が含まれた担体を水洗処理して、消毒剤含浸用担体が製造される。
ここで、セルロースは、化1にて示す化学式にて表される。
Figure 2015048443
担体の漂白等によってセルロースが酸化されると、6位水酸基(CH2OH)が酸化され、化2にて示す化学式のようにカルボキシル基(COOH)が生じる。
Figure 2015048443
カルボキシル基が生じた状態で担体を酸溶液に浸漬すると、6位カルボキシル基と2,3,6−水酸基のいずれかとが、化3に示すようにセルロース分子内においてエステル結合するか、または、化4に示すようにセルロース分子間においてエステル結合する。そのため、カルボキシル基がエステル化されて他の置換基へと置換される。
Figure 2015048443
Figure 2015048443
このような酸(H)の存在下でカルボキシル基がエステル化する化学反応のメカニズムは、酸が触媒となって、化5に示す可逆反応が連続的に生じることにより、カルボキシル基(COOH)からエステル(COOR)が生成する反応が基本となっている。
Figure 2015048443
カルボキシル基をエステル化するための酸溶液の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸および酢酸の少なくともいずれか1つを用いると好ましい。
また、酸溶液は、酸の濃度が0.0001mol/L未満であると、カルボキシル基をエステル化することによる吸着防止効果を奏しにくい可能性がある。一方、酸の濃度が1mol/Lを超えると、担体が劣化して形状を維持できなくなる可能性がある。したがって、酸溶液の酸の濃度は、0.0001mol/L以上1mol/L以下が好ましい。
さらに、酸溶液は、担体を浸漬する際の液温が0℃未満であるとカルボキシル基をエステル化することによる吸着防止効果を奏しにくい可能性がある。一方、50℃より高いと担体の脱落繊維が多くなり、80℃より高いと担体が劣化して形状を維持できなくなる可能性がある。したがって、担体を浸漬する酸溶液の温度は、0℃以上80℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以上50℃以下である。
酸溶液への担体の浸漬時間は、5分未満であるとカルボキシル基をエステル化することによる吸着防止効果を奏しにくい可能性がある。また、72時間より長いと担体が劣化して形状を維持できなくなる可能性がある。したがって、酸溶液への担体の浸漬時間は、5分以上72時間以下が好ましい。
ここで、担体に吸着するカチオン系消毒剤の量には上限があるため、消毒剤濃度が高くなるにしたがい、カチオン系消毒剤が吸着されることによる消毒剤濃度への影響が小さくなる。そして、5w/v%より高濃度のカチオン系消毒剤では、カチオン系消毒剤が吸着されてもそれほど濃度に影響がない。また、0.001w/v%より低濃度のカチオン系消毒剤では、吸着防止効果を奏しにくい。したがって、0.001w/v%以上5w/v%以下の濃度範囲のカチオン系消毒剤を用いると、カチオン系消毒剤の濃度の低下防止効果が明確になるので好ましい。
次に、上記第1の実施の形態の作用および効果を説明する。
上記消毒剤含浸用担体によれば、カルボキシル基がエステル化されているため、カルボキシル基からのHの放出が防止されてセルロースがマイナス電荷を帯びにくい。そのため、電気的相互作用によるセルロース系繊維へのカチオン系消毒剤の吸着を防止でき、含浸させるカチオン系消毒剤の濃度の低下を抑制できる。
特に0.001w/v%以上5w/v%以下の濃度範囲のカチオン系消毒剤を含浸させる場合には、効果的にカチオン系消毒剤の濃度の低下を防止でき、例えば外皮などの殺菌や消毒等の際に、低濃度のカチオン系消毒剤も使用できる。
そして、酸溶液にセルロース系繊維からなる担体を浸漬することにより、セルロース系繊維のカルボキシル基をエステル化できる。
酸溶液の酸の濃度が0.0001mol/L以上であることにより、セルロース系繊維のカルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。また、酸の濃度が1mol/L以下であることにより、担体を酸溶液に浸漬することによる担体の劣化を防止でき、担体の形状を維持できる。
担体を浸漬させる際の酸溶液の温度が0℃以上80℃以下であることにより、カルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。また、酸溶液の温度を50℃以下にすることにより、担体の劣化を防止でき、担体の形状を維持できる。
担体の酸溶液に5分以上浸漬させることにより、カルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。また、浸漬時間を72時間以下にすることにより、担体の劣化を防止でき、担体の形状を維持できる。
酸溶液の酸が塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸および酢酸の少なくともいずれか1つであることにより、カルボキシル基をエステル化でき、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
担体を形成するセルロース系繊維は、天然セルロース系繊維または再生セルロース系繊維であっても、カルボキシル基をエステル化してカチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
次に、第2の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成及び作用については、その説明を省略する。
この第2の実施の形態に係る消毒剤含浸用担体は、セルロース系繊維からなる担体を酸および有機溶媒の混合溶液に浸漬した後、この混合溶液が含まれた担体を水洗処理して製造される。
このように酸と有機溶媒との混合溶液に担体を浸漬すると、酸溶液に浸漬した場合と同様に、セルロース分子内またはセルロース分子間において6位カルボキシル基と2,3,6−水酸基のいずれかとが、セルロース分子内またはセルロース分子間でエステル結合する。また、酸および有機溶媒の存在下では、セルロース分子内やセルロース分子間のみならず、化6に示すようにセルロースの6位カルボキシル基とアルコール(アルキル基)とがエステル結合される。なお、化6におけるRは、CH3−(メチル)、CH3CH22−(エチル)、CH3CH2CH2CH2−(n−ブチル)などの炭化水素基である。
Figure 2015048443
したがって、酸のみの場合よりも効果的にカルボキシル基をエステル化できるため、カルボキシル基からのHの放出を防止でき、マイナス電荷を帯びにくいので、カチオン系消毒剤の吸着を防止できる。
このような酸(H)および有機溶媒の存在下でカルボキシル基がエステル化する化学反応のメカニズムは、酸が触媒となって、化7に示す可逆反応が連続的に生じることにより、カルボキシル基(COOH)からエステル(COOR)が生成する反応が基本となっている。
Figure 2015048443
ここで、酸とともに混合溶液に用いる有機溶媒は、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方からなる単一有機溶媒、または、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方と、極性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒および無極性有機溶媒の少なくともいずれか1つとを混合した混合有機溶媒が好ましい。
なお、極性有機溶媒としては、例えば、脱水メタノール、工業用メタノール、脱水エタノール、合成エタノール99度およびブタノールなどがある。
非プロトン性有機溶媒としては、アセトンなどがある。
無極性有機溶媒としては、ヘキサンおよびトルエンなどがある。
有機溶媒とともに混合溶液に用いる酸は、例えば、クエン酸、リン酸および酢酸などの弱酸や、メタノール性塩酸、水性塩酸、硫酸、硝酸および塩化チオニルなどがあるが、強酸を用いた方が吸着防止効果を向上できるので好ましい。
混合溶液における酸の濃度は、0.0001mol/L未満だと吸着防止効果を奏しにくい可能性がある。また、0.1mol/L以上で吸着防止効果が平衡状態となる。さらに、0.1mol/L以上であると担体の繊維が脱落する可能性がある。したがって、混合溶液における酸の濃度は、0.0001mol/L以上0.1mol/L未満が好ましい。また、担体へのダメージを考慮すると酸の濃度が低い方が好ましいため、混合溶液における酸の濃度は、0.05mol/L以下がより好ましい。さらに吸着防止効果および担体へのダメージ防止の両方のバランスを考慮すると、0.001mol/L以上0.01mol/L以下がより好ましい。
混合溶液は、担体を浸漬する際の液温が−80℃未満であると吸着防止効果を奏しにくい可能性がある。一方、100℃より高いと担体が劣化して形状を維持できなくなる可能性がある。したがって、担体を浸漬させる混合溶液の温度は、−80℃以上100℃以下が好ましい。また、80℃以上だと担体の脱落繊維が発生する可能性がある。さらに、10℃以上であると吸着防止効果が著しく向上する。したがって、混合溶液への浸漬による効果と担体の劣化とを考慮すると、担体を浸漬させる混合溶液の温度は、10℃以上50℃以下がより好ましい。
担体の浸漬時間は、5分未満であると吸着防止効果を奏しにくいため、5分以上が好ましい。また、浸漬時間が48時間を越えると吸着防止効果が平衡状態となるため、担体の浸漬時間は48時間以下が好ましい。さらに、浸漬時間が1時間以上であると吸着防止効果を奏しやすく、24時間を越えると担体が劣化する可能性があるため、1時間以上24時間以下がより好ましい。
以下、本発明の実施例および比較例について、カチオン系消毒剤の吸着防止効果および担体の形状維持に関する性能試験を実施したので説明する。
[実施例1]
イオン交換水12mLに所定量の塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.0001mol/L、0.001mol/L、0.01mol/L、0.1mol/L、1mol/L、5mol/L、10mol/Lである酸溶液としての塩酸水溶液を作製し、各塩酸水溶液に、セルロース系繊維からなる担体としての脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、塩酸水溶液をそれぞれ50℃で24時間加熱した。
塩酸水溶液の加熱後、吸引ろ過しながら脱脂綿をガラス棒で圧し、脱脂綿をイオン交換水で洗浄し、凍結乾燥して検体とした。
[比較例1]
イオン交換水12mLに所定量の塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.00001mol/Lである塩酸水溶液を作製し、塩酸水溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。また、塩酸を添加していないイオン交換水12mLに脱脂綿を浸漬させた。
これらの脱脂綿を実施例1と同様に処理して検体とした。
実施例1および比較例1の洗浄後における各検体の形状を目視にて確認し、形状変化がなかったものを○とし、脱落繊維が多かったものを△とし、形状が維持できていなかったものを×とした。この結果を表1に示す。
また、0.05w/v%に調整したカチオン系消毒剤としてクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)水溶液の初期濃度を定量した後、このCHG水溶液を各検体80mgに対して15mL/gの割合で含浸させ、0.22μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで遠心ろ過し、そのろ液を試験液とした。
また、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により試験液のCHG水溶液濃度を定量した。
なお、定量した試験液のCHG水溶液濃度が脱脂綿に吸着していないCHG濃度となる。したがって、試験液の濃度が高い方が吸着を防止できていることになる。
そして、CHG水溶液の初期濃度に対する試験液濃度の割合により非吸着率(%)を算出した。この結果を表1に示す。なお、非吸着率を算出した式は、以下の通りである。
非吸着率(%)=(試験液濃度/初期濃度)×100
Figure 2015048443
表1に示すように、酸が含まれていない水溶液(酸濃度0mol/L)で処理した比較例1は、非吸着率が38%であり、カチオン系消毒剤(CHG)が脱脂綿に吸着されていた。
また、酸の濃度が0.00001mol/Lである水溶液で処理した比較例1は、酸を用いなかった場合と同様に非吸着率が38%であり、カチオン系消毒剤が吸着されていた。
これに対して、塩酸0.0001mol/L水溶液で処理した実施例1は非吸着率が約50%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。また、酸の濃度が高くなるにしたがって非吸着率も向上しており、各実施例1では、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
なお、脱脂工程および漂白工程を経て脱脂漂白された一般的な脱脂綿は、中和工程で例えば硫酸等の酸の添加によって中和され、その後水洗処理される。そして、中和工程では、酸処理後に、pH6〜7すなわち酸濃度が0.000001mol/L程度になるように酸が添加される。
したがって、従来の脱脂綿の中和工程の濃度0.000001mol/L(pH6)や上記酸濃度が0.00001mol/L(pH5)の水溶液で処理した比較例1では、吸着防止効果がなかったものの、酸の濃度が0.0001mol/L以上(pH4以下)の水溶液で処理した各実施例1では、カチオン系消毒剤の吸着防止効果を奏している。
ここで、酸の濃度が高くなるにしたがって非吸着率が向上し平衡状態に近づくものの、酸の濃度が5mol/L以上の水溶液の処理では、綿球の形状が維持できない状態になってしまった。これは酸の作用により脱脂綿が劣化したものと考えられる。
脱脂綿の劣化現象は、セルロース連鎖を形成している部分の酸素(O)がダメージを受けて一部の連鎖が切断されてしまうためと考えられる。
したがって、セルロース系繊維からなる担体を酸溶液に浸漬させる際には、酸の濃度は、0.0001mol/L以上が好ましく、綿繊維の劣化を考慮すると1mol/L以下がより好ましい。
[実施例2]
イオン交換水12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が1mol/Lである塩酸水溶液を作製し、塩酸水溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、塩酸水溶液を所定の温度(0℃、30℃、50℃、80℃、100℃)で24時間加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
[比較例2]
塩酸を添加していないイオン交換水12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、イオン交換水を50℃または100℃で24時間加熱した後、上記実施例2と同様に処理して検体とした。
そして、実施例2および比較例2の各検体について、実施例1と同様に、脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2015048443
表2に示すように、酸を用いなかった比較例2では、イオン交換水の温度が50℃であっても100℃であっても非吸着率は、40%未満であり、カチオン系消毒剤が吸着されていた。
これに対して、酸溶液で処理した実施例2では、酸溶液の温度が0℃であっても非吸着率が56%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。また、酸溶液の温度が上昇するにしたがって、非吸着率が向上し、より効果的にカチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
一方、実施例2において、酸溶液の温度を80℃にすると脱落繊維が多くなり、酸溶液の温度を100℃にすると脱脂綿が劣化して、綿球の形状が維持できない状態になってしまった。
したがって、セルロース系繊維からなる担体を酸溶液に浸漬させる際の酸溶液の温度は、0℃以上80℃以下が好ましく、綿繊維の劣化を考慮すると50℃以下がより好ましい。
[実施例3]
イオン交換水12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が1mol/Lである塩酸水溶液を作製し、塩酸水溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、塩酸水溶液を50℃で所定時間(5分、30分、1時間、24時間、48時間、72時間、168時間)加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
[比較例3]
塩酸を添加していないイオン交換水12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、イオン交換水を50℃で24時間加熱した後、実施例3と同様に処理して検体とした。
そして、実施例3および比較例3の各検体について、実施例1と同様に、脱脂綿の形状の観察、および非吸着率の測定を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2015048443
表3に示すように、酸を用いなかった比較例3では、50℃のイオン交換水に24時間浸漬させても非吸着率は38%であり、カチオン系消毒剤が吸着されていた。
これに対して、酸溶液で処理した実施例3では、浸漬時間が5分であっても非吸着率は50%で、浸漬時間が24時間であると非吸着率は64%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。また、浸漬時間を長くするにしたがって、非吸着率が向上し、より効果的にカチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
一方、浸漬時間を長くするにしたがって非吸着率は平衡状態となり、72時間の場合と168時間の場合とでは非吸着率がほとんど等しくなるものの、168時間では脱脂綿が劣化して、綿球の形状が維持できない状態になってしまった。
したがって、セルロース系繊維からなる担体を酸溶液に浸漬させる際の浸漬時間は、5分以上72時間以内が好ましい。
[実施例4]
イオン交換水12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が1mol/Lである塩酸水溶液を作製し、塩酸水溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、塩酸水溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
[比較例4]
塩酸を添加していないイオン交換水12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、イオン交換水を50℃で24時間加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
実施例4および比較例4の各検体について、実施例1と同様に、脱脂綿の形状の観察を行った。その結果を表4に示す。
また、カチオン系消毒剤として0.025w/v%に調整した塩化ベンザルコニウム(BAC)水溶液の初期濃度を定量した後、このBAC水溶液を実施例4および比較例4の各検体80mgに対して15mL/gの割合で含浸させ、0.22μmPVDFフィルターで遠心ろ過し、そのろ液を試験液とした。
そして、日本薬局方に基づき、滴定法により試験液のBAC水溶液濃度を定量して、この定量結果に基づいて実施例1と同様に非吸着率を算出した。その結果を表4に示す。
Figure 2015048443
表4に示すように、酸を用いなかった比較例4では、非吸着率が12%であり、多量のカチオン系消毒剤(BAC)が吸着されてしまった。
これに対して、酸溶液で処理した実施例4では、非吸着率が61%であり、カチオン系消毒剤の非吸着率が向上し、カチオン系消毒剤(BAC)の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
したがって、カチオン系消毒剤としてBAC水溶液を用いても、CHG水溶液と同様に消毒剤濃度の低下を抑制できる。このように化学式が異なっていてもカチオン系の消毒剤であれば、BACやCHG以外のカチオン系消毒剤に対しても、担体への吸着を抑制でき、消毒剤濃度の低下を抑制できると考えられる。
[実施例5]
イオン交換水12mLに各酸(塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸、酢酸)をモル濃度が1mol/Lとなるように添加して酸溶液を作製し、各酸溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて各酸溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
[比較例5]
酸を添加していないイオン交換水12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、イオン交換水を50℃で24時間加熱した後、上記実施例5と同様に処理して検体とした。
そして、実施例5および比較例5の各検体について、実施例1と同様に、脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表5に示す。
Figure 2015048443
表5に示すように、酸を用いなかった比較例5では、非吸着率が38%であるのに対して、実施例5はいずれも、比較例5より非吸着率が向上しており、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
したがって、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸および酢酸の少なくともいずれか1つを用いることが好ましい。
なお、塩化チオニルは、それ自体が酸ではないが、水と反応して塩化水素を生成するため、酸の一種として試験を行った。また、塩化チオニル1分子から塩化水素を2分子生成するため、酸濃度は他の酸と比較して2倍になる。その結果、エステル化の効率は他の酸より高くなるため、溶液濃度が同じであればカチオン系消毒剤の吸着が他の酸より効果的に抑制される。一方、酸濃度が他の酸より高くなるため、脱脂綿が劣化しやすく、処理後の脱脂綿では脱落繊維が多くなる。
[実施例6]
有機溶媒である脱水メタノール12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製し、混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液を所定温度(−80℃、−10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、50℃、80℃、100℃)で24時間加熱した。なお、メタノールの凝固点は−97℃である。
混合溶液の加熱後、吸引ろ過しながら脱脂綿をガラス棒で圧し、その後、メタノール、イオン交換水の順に洗浄し、凍結乾燥して検体とした。
[比較例6]
塩酸を添加していない脱水メタノール12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、脱水メタノールを所定の温度(50℃、100℃)で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
そして、実施例6および比較例6の各検体について、実施例1と同様に脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表6に示す。
Figure 2015048443
表6に示すように、酸を用いずにメタノール溶液で処理した比較例6は、溶液温度が50℃の場合も100℃の場合も非吸着率が40%以下であり、非吸着率に大きな変化はなかった。
これに対して、酸および有機溶媒の混合溶液で処理した実施例6は、溶液温度が−80℃の場合の非吸着率が51%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。また、溶液温度が上昇するにしたがって、非吸着率が向上し、より効果的にカチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
ここで、図1に示すように溶液温度と非吸着率との関係をグラフ化すると、酸および有機溶媒の混合溶液を用いた実施例6では、溶液温度が10℃以上になると非吸着率が著しく向上してグラフの傾きが急激に大きくなる。したがって、酸および有機溶媒の混合溶液を用いる場合の溶液温度は、10℃以上が好ましい。
一方、溶液の温度を80℃にすると脱落繊維が多くなり、溶液の温度を100℃にすると脱脂綿が劣化して、綿球の形状が維持できない状態になってしまった。
したがって、酸および有機溶媒の混合溶液を用いる場合の溶液温度は−80℃以上80℃以下が好ましく、混合溶液への浸漬による効果と脱脂綿繊維の劣化とを考慮すると、10℃以上50℃以下がより好ましい。
[実施例7]
有機溶媒である脱水メタノール12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製し、混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液を50℃で所定時間(5分、30分、1時間、24時間、48時間)加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例7]
塩酸を添加していない脱水メタノール12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、脱水メタノールを50℃で24時間加熱した後、実施例7と同様に処理して検体とした。
そして、実施例7および比較例7の各検体について、実施例1と同様に脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表7に示す。
Figure 2015048443
表7に示すように、酸を用いずにメタノール溶液で処理した比較例7の非吸着率が37%であるのに対して、酸および有機溶媒の混合溶液で処理した実施例7は、浸漬時間が5分であっても非吸着率が50%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。また、浸漬時間が長くなるにしたがって、非吸着率が向上し、より効果的にカチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
ここで、図2に示すように非吸着率と浸漬時間の対数値との関係をグラフ化すると、浸漬時間が5分から30分までのグラフの傾きと、30分から1時間までのグラフの傾きとが異なっており、また、浸漬時間が1時間から24時間までのグラフの傾きは5分から30分までのグラフの傾きとほとんど等しくなっている。
この結果から、吸着防止効果が大きく変化するのは浸漬時間が30分から1時間までの間であるため、より確実に吸着防止効果を確保することを考慮すると、混合溶液への浸漬時間は1時間以上であると好ましい。
したがって、混合溶液への担体の浸漬時間は、5分以上48時間以下が好ましい。また、吸着防止効果の確実な確保を考慮すると1時間以上がより好ましく、浸漬時間が短い方が担体へのダメージが少ないので24時間以下がより好ましい。
[実施例8]
有機溶媒である脱水メタノール12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製し、混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例8]
塩酸を添加していない脱水メタノール12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、脱水メタノールを50℃で24時間加熱した後、実施例8と同様に処理して検体とした。
そして、実施例8および比較例8の各検体について、実施例1と同様に脱脂綿の形状の観察を行った。その結果を表8に示す。
また、0.025w/v%に調整したカチオン系消毒剤としての塩化ベンザルコニウム(BAC)水溶液の初期濃度を定量した後、このBAC水溶液を各検体80mgに対して10mL/gの割合で含浸させ、0.22μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで遠心ろ過し、そのろ液を試験液とした。
また、日本薬局方に基づき、滴定法により試験液のBAC水溶液濃度を定量した。
そして、この定量結果に基づいて実施例1と同様に非吸着率を算出した。その結果を表8に示す。
Figure 2015048443
表8に示すように、酸を用いずにメタノール溶液で処理した比較例8は、カチオン系消毒剤としてBAC水溶液を用いても、非吸着率が12%であり、多量のカチオン系消毒剤が吸着されていた。
これに対して、酸および有機溶媒の混合溶液で処理した実施例8は、非吸着率が88%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されて、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制された。
このように上記実施例8および比較例8の結果から、カチオン系消毒剤としてCHG水溶液だけでなくBAC水溶液を用いても、担体への吸着を防止できることを確認できた。
したがって、化学式が異なるものであってもカチオン系消毒剤であればCHGやBAC以外の消毒剤であっても、CHGやBACと同様に吸着を抑制できると考えられる。
[実施例9]
極性有機溶媒(脱水メタノール、工業用メタノール、脱水エタノール、合成エタノール99度、ブタノール)、非プロトン性有機溶媒(アセトン)または無極性有機溶媒(ヘキサン、トルエン)の単一有機溶媒12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製した。
また、極性有機溶媒(工業用メタノール)と非プロトン性有機溶媒(アセトン)とを体積比1:1で混合した混合有機溶媒、極性有機溶媒(工業用メタノール)と無極性有機溶媒(トルエン)とを体積比1:1で混合した混合有機溶媒、および、非プロトン性有機溶媒(アセトン)と無極性有機溶媒(トルエン)とを体積比5:1からなる混合有機溶媒を作製した。これら混合有機溶媒12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製した。
なお、脱水メタノールは水分量が0.005%以下であり、工業用メタノールは水分量が0.1%以下であり、脱水エタノールは水分量が0.005%以下であり、合成エタノール99度は水分量が1%未満である。
各混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例9]
塩酸を添加していない脱水メタノール12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、脱水メタノールを50℃で24時間加熱した後、実施例9と同様に処理して検体とした。
そして、実施例9および比較例9の各検体について、実施例1と同様に脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表9に示す。
Figure 2015048443
表9に示すように、酸を用いずにメタノール溶液で処理した比較例9の非吸着率が37%であるのに対して、酸と単一有機溶媒との混合溶液で処理した実施例9は、いずれの有機溶媒を用いた場合であっても非吸着率が比較例9より高く、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。
また、極性有機溶媒であるアルコールの中でも、メタノール溶媒(脱水メタノールおよび工業用メタノール)を用いた場合の方が、エタノール溶媒(脱水エタノールおよび合成エタノール)やブタノール溶媒を用いた場合よりも非吸着率を向上できた。これは、アルキル基の炭素数が少ない方が、セルロースの2位、3位または6位の水酸基とのエステル化の反応効率を向上できるためと考えられる。
さらに、メタノール溶媒では、水分量の少ない脱水メタノールを用いた場合の方が、水分量の多い工業用メタノールを用いた場合より非吸着率が向上した。これは、カルボキシル基のエステル化反応が、水酸基との脱水縮合反応と加水分解反応との平衡反応であり、水の存在によって平衡が加水分解反応へ傾いてエステル化効率が低下するので、水分量の少ない方がエステル化の反応効率が向上できるためと考えられる。
また、極性有機溶媒(アルコール)のみならず、非プロトン性有機溶媒(アセトン)または無極性有機溶媒(ヘキサンおよびトルエン)を用いた場合であっても、非吸着率が向上していることから、セルロースのカルボキシル基は、アルコールのみならず、セルロースの2位、3位、6位の水酸基ともエステル化が進行していると考えられる。
しかしながら、無極性有機溶媒(ヘキサンおよびトルエン)を用いた場合には、綿球の形状が維持できないほど担体が劣化した。これは、無極性有機溶媒では、プロトン(H)が遊離できないため分散されず、局所的に塩酸濃度が高くなり、セルロース高次構造の水素結合ネットワークおよびグリコシド結合が切断されたからであると推測される。
また、極性有機溶媒と非プロトン性有機溶媒とからなる混合有機溶媒、極性有機溶媒と無極性有機溶媒とからなる混合有機溶媒、および、非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒とからなる混合有機溶媒のいずれかと酸との混合溶液を用いた場合には、混合有機溶媒の組み合わせがいずれの場合であっても、非吸着率が比較例9より高く、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。
一方、担体形状については、極性有機溶媒と非プロトン性有機溶媒との組み合わせでは良好だが、極性有機溶媒と無極性有機溶媒との組み合わせ、および、非プロトン性有機溶媒と無極性有機溶媒との組み合わせのように無極性有機溶媒を用いた場合に、脱落繊維が確認された。しかしながら、無極性有機溶媒と異なる極性の有機溶媒とを混合することで、無極性有機溶媒だけを酸と混合した混合溶液にて処理した場合よりも担体の形状が維持されていた。これは、無極性有機溶媒のみでは上述のように局所的に塩酸濃度が高くなっていたが、極性有機溶媒や非プロトン性有機溶媒を混合することで、局所的に塩酸濃度が高くなる状態を解消できるためと考えられる。
なお、この実施例9では、3種類の有機溶媒を混合した場合についての結果を示していないが、3種類の混合有機溶媒で処理した場合であっても同様の効果が期待できる。
[実施例10]
有機溶媒である脱水メタノール12mLに強酸(メタノール性塩酸、水性塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル)、および、弱酸(クエン酸、リン酸、酢酸)のいずれかを添加して、各酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製し、混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例10]
酸を添加していない脱水メタノール12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、脱水メタノールを50℃で24時間加熱した後、実施例10と同様に処理して検体とした。
そして、実施例10および比較例10の各検体について、実施例1と同様に脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表10に示す。
Figure 2015048443
表10に示すように、酸を用いずにメタノール溶液で処理した比較例10の非吸着率が37%であるのに対して、強酸を用いて処理した実施例10および弱酸を用いて処理した実施例10のいずれも、非吸着率が向上しており、塩酸だけでなく他の酸を用いた場合でもカチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。特に、弱酸を用いた場合の非吸着率が50%前後であるのに対して、強酸を用いた場合の非吸着率は約80%以上であった。これは、強酸は弱酸より酸解離定数が大きく、カルボキシル基(COOH)からエステル(COOR)を生成するための反応触媒となる酸(H)の放出量が多いので、強酸を用いた方がエステル化の反応効率を向上できるためと考えられる。
[実施例11]
脱水メタノールに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.0001mol/L、0.0005mol/L、0.001mol/L、0.005mol/L、0.01mol/L、0.05mol/L、0.1mol/Lである混合溶液を12mL作製し、各混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液をそれぞれ50℃で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例11]
脱水メタノールに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.00001mol/Lである混合溶液を12mL作製し、混合溶液に脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。また、塩酸を添加していない脱水メタノール12mLに脱脂綿約0.4g(白十字株式会社製綿球No.10を5球)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液および脱水メタノールを50℃で24時間加熱した後、実施例11と同様に処理して検体とした。
そして、実施例11および比較例11の各検体について、実施例1と同様に脱脂綿の形状の観察、および、非吸着率の測定を行った。その結果を表11に示す。
Figure 2015048443
表11に示すように、酸を用いずにメタノール溶液で処理した比較例11の非吸着率が37%であった。
また、酸濃度が0.00001mol/Lの混合溶液で処理した場合には、酸を用いなかった場合と同様に非吸着率が37%であり、カチオン系消毒剤が吸着されていた。
これに対して、酸濃度が0.0001molの混合溶液で処理した場合は、非吸着率が46%であり、カチオン系消毒剤の吸着が抑制されていた。また、混合溶液における酸の濃度が高くなるにしたがって、非吸着率も向上している。そして、酸の濃度が0.1mol/Lの場合には、非吸着率が100%であったが、酸の濃度が0.01mol/Lの場合の非吸着率は95%であるため、酸の濃度が0.01mol/L以上では非吸着率にそれほど変化がないと言える。また、酸の濃度が0.1mol/Lの場合には、脱落繊維が多い状態になってしまった。
したがって、カチオン系消毒剤の吸着防止効果を考慮すると、混合溶液における酸の濃度は0.0001mol/L以上0.1mol/L以下が好ましい。
また、綿繊維の劣化を考慮すると、0.1mol/Lでは脱落繊維が発生してしまうので、混合溶液における酸の濃度は0.05mol/L以下が好ましい。
さらに、混合溶液における酸の濃度が0.01mol/Lの場合と、0.05mol/Lの場合とでは、非吸着率がほとんど等しいため、担体へのダメージを考慮すると酸濃度の低い0.01mol/L以下にするとより好ましい。すなわち、実施例11および比較例11の結果から、非吸着率と担体へのダメージとを考慮すると、混合溶液における酸の濃度は、0.001mol/L以上0.01mol/L以下がより好ましい。
[実施例12]
イオン交換水12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が1mol/Lである塩酸水溶液を作製し、塩酸水溶液に各綿素材0.4gを浸漬させた。
綿素材としては、天然セルロース(脱脂綿)および再生セルロース(キュプラ、リヨセル、レーヨン70%+PET30%、レーヨン70%+PP・PE30%)を用いた。
このように各綿素材を浸漬させた状態にて、塩酸水溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
[比較例12]
実施例12と同じ綿素材を用い、そのまま検体とした。
そして、実施例12および比較例12の各検体について、実施例1と同様に非吸着率の測定を行った。また、実施例12の各検体については、実施例1と同様に各綿素材の形状の観察を行った。その結果を表12に示す。
Figure 2015048443
表12に示すように、比較例12の結果に比べて実施例12では、いずれの綿素材においても非吸着率が向上している。すなわち、脱脂および漂白された天然セルロース(脱脂綿)および再生セルロース(キュプラ、リヨセル)だけでなく、再生セルロースに化学繊維を複合させた担体(レーヨン70%+PET30%、レーヨン70%+PP・PE30%)においても、酸溶液で処理することによって非吸着率を向上でき、カチオン系消毒剤の吸着を抑制できる。したがって、天然セルロース、再生セルロース、および、セルロースと化学繊維とを複合した複合セルロースであっても、消毒剤含浸用担体の材料として使用できる。
[実施例13]
有機溶媒である脱水メタノール12mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである混合溶液を作製し、実施例12と同じ各綿素材を浸漬させた。
このように各綿素材を浸漬させた状態にて、混合溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例13]
実施例13と同じ綿素材を用い、そのまま検体とした。
そして、実施例13および比較例13の各検体について、実施例1と同様に非吸着率の測定を行った。また、実施例13の各検体については、実施例1と同様に各綿素材の形状の観察を行った。その結果を表13に示す。
Figure 2015048443
表13に示すように、比較例13の結果に比べて実施例13では、いずれの綿素材においても非吸着率が向上している。すなわち、脱脂および漂白された天然セルロースおよび再生セルロースだけでなく、再生セルロースに化学繊維を複合させた担体においても混合溶液で処理することによって非吸着率を向上でき、カチオン系消毒剤の吸着を抑制できる。したがって、天然セルロース、再生セルロース単体およびセルロースと化学繊維の複合素材であっても、消毒剤含浸用担体の材料として使用できる。
[実施例14]
イオン交換水3000mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が1mol/Lである塩酸水溶液を作製し、塩酸水溶液に脱脂綿約100g(白十字株式会社製)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、塩酸水溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例1と同様に処理して検体とした。
[比較例14]
脱脂綿約100g(白十字株式会社製)をそのまま検体とした。
実施例14および比較例14の各検体1gに対して、所定の初期濃度(0.0005w/v%、0.001w/v%、0.005w/v%、0.01w/v%、0.02w/v%、0.05w/v%、0.2w/v%、0.5w/v%、1w/v%、2w/v%、5w/v%、10w/v%)に調整した各CHG水溶液を所定量(3mL、5mL、10mL、15mL)含浸させた。
実施例1と同様に、各検体から分離した液体を試験液とし、HPLCにより試験液のCHG水溶液濃度を定量した。また、実施例1と同様に、CHG水溶液濃度の定量結果から非吸着率を算出した。これらの結果を表14に示す。
Figure 2015048443
表14に示すように、0.0005w/v%および10w/v%のCHG濃度範囲では、実施例14と比較例14との各含浸液量での非吸着率がほとんど同じであり、脱脂綿を酸溶液で処理することによる吸着防止効果は少ない。
一方0.001〜5w/v%のCHG濃度範囲では、実施例14の非吸着率が比較例14の非吸着率よりも向上しており、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制されていた。
担体に吸着するカチオン系消毒剤の量には上限があるため、理論的には、消毒剤濃度や含浸液量が高くなるにしたがい、担体への非吸着率が高くなる。したがって、消毒剤溶液が高濃度の場合には酸溶液での処理による吸着防止効果を奏しにくくなるが、0.001〜5w/v%の濃度範囲では、酸溶液での処理による吸着防止効果が確認された。
なお、消毒剤濃度が低くなるにしたがい、実施例14の非吸着率と比較例14の非吸着率との差が大きくなっており、低濃度の消毒剤を担体に含浸する場合は、酸溶液での処理による吸着防止効果が明確である。
[実施例15]
工業メタノール3000mLに塩酸を添加して、塩酸のモル濃度が0.01mol/Lである酸および有機溶媒の混合溶液を作製し、混合溶液に脱脂綿約100g(白十字株式会社製)を浸漬させた。
このように脱脂綿を浸漬させた状態にて、混合溶液を50℃で24時間加熱した後、実施例6と同様に処理して検体とした。
[比較例15]
脱脂綿約100g(白十字株式会社製)をそのまま検体とした。
実施例15および比較例15の各検体1gに対して、所定の初期濃度(0.0005w/v%、0.001w/v%、0.005w/v%、0.01w/v%、0.02w/v%、0.05w/v%、0.2w/v%、0.5w/v%、1w/v%、2w/v%、5w/v%、10w/v%)に調整した各CHG水溶液を所定量(3mL、5mL、10mL、15mL)含浸させた。
実施例1と同様に、各検体から分離した液体を試験液とし、HPLCにより試験液のCHG水溶液濃度を定量した。また、実施例1と同様に、CHG水溶液濃度の定量結果から非吸着率を算出した。これらの結果を表15に示す。
Figure 2015048443
表15に示すように、0.0005w/v%および10w/v%のCHG濃度範囲では、実施例15と比較例15との各含浸液量での非吸着率がほとんど同じであり、脱脂綿を混合溶液で処理することによる吸着防止効果は少ない。
一方、0.001〜5w/v%のCHG濃度範囲では、実施例15の非吸着率が比較例15の非吸着率よりも向上しており、カチオン系消毒剤の濃度の低下が抑制されていた。
上述のように、理論的には、消毒剤濃度や含浸液量が高くなるにしたがい、担体への非吸着率が高くなるため、混合溶液での処理による吸着防止効果を奏しにくくなるが、0.001〜5w/v%の濃度範囲では、混合溶液での処理による吸着防止効果が確認された。
なお、消毒剤濃度が低くなるにしたがい、実施例15の非吸着率と比較例15の非吸着率との差が大きくなっており、低濃度の消毒剤を担体に含浸する場合は、混合溶液での処理による吸着防止効果が明確である。

Claims (9)

  1. カチオン系消毒剤を含浸させるための消毒剤含浸用担体であって、
    カルボキシル基がエステル化されたセルロース系繊維にて構成される
    ことを特徴とする消毒剤含浸用担体。
  2. セルロース系繊維からなる担体を、酸の濃度が0.0001mol/L以上1mol/L以下である酸溶液に浸漬した後、この酸溶液が含まれた担体を水洗処理した
    ことを特徴とする請求項1記載の消毒剤含浸用担体。
  3. 酸は、塩酸、硫酸、硝酸、塩化チオニル、クエン酸、リン酸および酢酸の少なくともいずれか1つである
    ことを特徴とする請求項1または2記載の消毒剤含浸用担体。
  4. セルロース系繊維からなる担体を、酸および有機溶媒の混合溶液に浸漬した後、この混合溶液が含まれた担体を水洗処理した
    ことを特徴とする請求項1記載の消毒剤含浸用担体。
  5. 有機溶媒は、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方からなる単一有機溶媒、または、極性有機溶媒および非プロトン性有機溶媒のいずれか一方と、極性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒および無極性有機溶媒のうちの少なくともいずれか1つとを混合した混合有機溶媒である
    ことを特徴とする請求項4記載の消毒剤含浸用担体。
  6. 酸は、強酸である
    ことを特徴とする請求項4または5記載の消毒剤含浸用担体。
  7. 混合溶液は、酸の濃度が0.0001mol/L以上0.1mol/L未満である
    ことを特徴とする請求項4乃至6いずれか一記載の消毒剤含浸用担体。
  8. セルロース系繊維は、脱脂および漂白された天然セルロース系繊維、または、再生セルロース系繊維である
    ことを特徴とする請求項1乃至7いずれか一記載の消毒剤含浸用担体。
  9. 含浸させるカチオン系消毒剤は、含浸液量が3ml/g以上15ml/g以下で、濃度が0.001w/v%以上5w/v%以下である
    ことを特徴とする請求項1乃至8いずれか一記載の消毒剤含浸用担体。
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