JP2015048442A - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 得られるポリアリーレンスルフィドの結晶性を向上させることができる、ポリアリーレンスルフィドの新規な製造方法を提供すること。【解決手段】 (A)バナジウム化合物、(B)酸、(C)酸化剤、及び、(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドの存在下で、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを含むモノマーを重合する工程を有する、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関し、特に結晶性の高いポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィド(PAS)は、N−メチルピロリドンなどのラクタム系溶媒中で、パラジクロロベンゼンとナトリウムスルフィドとを重縮合させることで製造されている。この反応では、炭素−硫黄結合を作る際にNaClを副生しており、アトムエコノミーの観点からすると、必ずしも好ましい方法ではない。また、近年の環境問題から、ポリマー中に残存する塩素も、一部では問題視されている。
また、NaClを副生しないPAS合成方法として、ジスルフィド類の重合によりPASを合成する方法が挙げられる。この重合方法では多くの場合、室温においてジクロロメタンなどの溶媒を使用し、ジスルフィド類からスルフォニウムカチオンを形成させ、フリーデルクラフツ型の付加反応を繰り返すことで、PAS骨格を形成する(例えば、特許文献1〜8及び非特許文献1〜3参照)。
特開昭63−213526号公報 特開昭63−213527号公報 特開昭63−241032号公報 特開平2−169626号公報 特開平4−55434号公報 特開平4−57830号公報 特開平11−12359号公報 特開2008−163223号公報
Macromolecules,1992, 25, 2698-2704 Bull.Chem. Soc. Jpn., 1994, 67, 251-256 Bull.Chem. Soc. Jpn., 1994, 67, 1456-1461
しかしながら、上述したジスルフィド類を用いたPAS合成方法には、得られるPASの結晶性が必ずしも高くはないという欠点があった。
そこで、本発明は、得られるポリアリーレンスルフィドの結晶性を向上させることができる、ポリアリーレンスルフィドの新規な製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、(A)バナジウム化合物、(B)酸、(C)酸化剤、及び、(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドの存在下で、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを含むモノマーを重合する工程を有する、ポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
上記本発明の製造方法によれば、(A)バナジウム化合物、(B)酸、及び、(C)酸化剤に加え、更に(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドの存在下で上記モノマーの重合反応を行うことにより、重合反応を効率的に進行させることができ、得られるPASの結晶性を向上させることができる。また、本発明の製造方法は、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを原料モノマーとしているため、NaClを副生せず、アトムエコノミー及び環境問題の観点からも好ましい。
また、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法において、上記(A)バナジウム化合物は、オキソバナジウム化合物であることが好ましい。これにより、重合反応をより効率的に進行させることができる。
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法において、上記(C)酸化剤は、酸素分子を含むガスであることが好ましい。これにより、重合反応をより経済的に進行させることができる。
またさらに、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法において、上記(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドは、未置換ジフェニルスルフィドであることが好ましい。これにより、重合反応をより効率的に進行させることができ、得られるPASの結晶性をより向上させることができる。
本発明によれば、得られるポリアリーレンスルフィドの結晶性を向上させることができる、ポリアリーレンスルフィドの新規な製造方法を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法は、(A)バナジウム化合物、(B)酸、(C)酸化剤、及び、(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドの存在下で、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを含むモノマーを重合する工程(以下、場合により「重合工程」と言う)を有する。
重合工程においては、ポリアリーレンスルフィドの原料となるモノマーとして、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを用いる。なお、ジフェニルジスルフィド及びチオフェノールはそれぞれ、置換のものと未置換のものとを併用してもよい。すなわち、ポリアリーレンスルフィドの原料となるモノマーは、置換ジフェニルジスルフィド、未置換ジフェニルジスルフィド、置換チオフェノール、及び、未置換チオフェノールからなる群より選択される一種又は二種以上のモノマーを含む。
置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィドとしては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2015048442

[式(I)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。]
上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、ジフェニルジスルフィド、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタメチルジフェニルジスルフィド、2,2’−ジエチルジフェニルジスルフィド、3,3’−ジエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’−テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’−テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’−テトラエチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタエチルジフェニルジスルフィド、2,2’−ジプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’−ジプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’−テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’−テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’−テトラプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’−テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’−ジイソプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’−ジイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’−テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’−テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタイソプロピルジフェニルジスルフィドなどが挙げられる。これらの中でも、原料の入手性の観点から、ジフェニルジスルフィド、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタメチルジフェニルジスルフィドが好適に使用できる。
また、これらの置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィドは、置換もしくは未置換のチオフェノールの酸化によっても容易に調製できる。そのため、重合工程においては、上述した置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィドの前駆体として、置換もしくは未置換のチオフェノールも使用することができる。置換もしくは未置換のチオフェノールとしては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2015048442

[式(II)中、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。]
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、上記一般式(I)で表される化合物の具体例の前駆体となる化合物が挙げられるが、それらの中でも、原料の入手性の観点から、チオフェノール(ベンゼンチオール)、2−メチルベンゼンチオール、3−メチルベンゼンチオール、2,3−ジメチルベンゼンチオール、2,5−ジメチルベンゼンチオール、2,6−ジメチルベンゼンチオールが好適に使用できる。これらの置換もしくは未置換のチオフェノールは、上述した置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィドと同様に使用することができる。なお、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィドを用いた場合でも、その前駆体である置換もしくは未置換のチオフェノールを用いた場合でも、置換基の有無や種類が同じであれば、PASとしては同等のものが得られる。
また、重合工程において、モノマーとして置換基を有するジフェニルジスルフィド及び/又は置換基を有するチオフェノールを用いた場合、合成されたポリマーのモノマーに対する溶解度が向上し、より高分子量体が得られる傾向がある。特に、置換基が炭素数1〜8のアルキル基、アラルキル基又はアリール基であると、合成されたポリマーがモノマーにより一層溶解しやすくなり、より高分子量化するため好ましい。アラルキル基は炭素数7〜14であることが好ましく、アリール基は炭素数6〜14であることが好ましい。炭素数が上記範囲内であると、合成されたポリマーがモノマーにより一層溶解しやすくなり、より高分子量化するため好ましい。また、置換基を有さないジフェニルジスルフィド及び/又は置換基を有さないチオフェノールを用いた場合、置換基を有するものに比べて原料の入手性が極めて高く、工業的に有利であるとともに、従来のポリフェニレンスルフィドと同じポリマーを合成することができる。本発明の製造方法は、置換基を有さないポリフェニレンスルフィド、及び、置換基を有するポリフェニレンスルフィドのいずれの製造にも適した方法である。上述した置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド及び置換もしくは未置換のチオフェノールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、モノマーは、未置換ジフェニルジスルフィド及び未置換チオフェノールのうちの少なくとも一方(以下、「未置換モノマー」と言う)と、置換ジフェニルジスルフィド及び置換チオフェノールのうちの少なくとも一方(以下、「置換モノマー」と言う)とを含んでいてもよい。このように、入手容易な未置換モノマーに置換モノマーを共重合させることにより、工業的に有利でありながら、未置換モノマーを単独で用いた場合と比較して、生成するポリマーの、モノマー及び/又は溶媒に対する溶解度を向上させることができ、より高分子量のポリマーを得ることができる。未置換モノマーと置換モノマーとを併用する場合の両者の比率は特に限定されない。所望の物性を有するポリマーを得るために,未置換モノマーと置換モノマーの割合を適宜決めればよい。
(A)バナジウム化合物は、上記モノマーの酸化重合触媒として機能するものである。(A)バナジウム化合物としては、好ましくは、分子内にV=O結合を有するオキソバナジウム化合物が使用される。オキソバナジウム化合物として具体的には、N,N’−ビスサリチリデンエチレンジアミンオキソバナジウム、フタロシアニンオキソバナジウム、テトラフェニルポルフィリンオキソバナジウムなどが挙げられる。その他に下記一般式(III)で表されるバナジウム化合物も使用される。
Figure 2015048442

[式(III)中、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は、炭素数6〜8のアリール基を表し、R17及びR18はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、炭素数6〜8のアリール基を表す。]
上記一般式(III)で表されるバナジウム化合物としては、4価のオキソバナジウムに、β−ジケトンのアニオンが2分子付加した構造を持つものであれば使用することができる。具体例を示すと、バナジル(IV)アセチルアセトネート、バナジル(IV)ベンゾイルアセトネート(R13=R16=メチル基、R14=R15=フェニル基、R17=R18=水素原子)が挙げられる。
上述した(A)バナジウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(A)バナジウム化合物の添加量は、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び、置換もしくは未置換のチオフェノールの総量100モルに対して、0.001〜100モルであることが好ましく、0.01〜50モルであることがより好ましい。この添加量が少ないと重合反応が進行しにくく、添加量が多いと得られるポリマー中に(A)バナジウム化合物が残存しやすくなる。
(B)酸としては、硫酸、酢酸、メタンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸などの酸のほか、下記一般式(IV)で表される有機酸を使用することができる。
Figure 2015048442

[式(IV)中、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。]
上記一般式(IV)で表される有機酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルフォン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルフォン酸、ペンタフルオロエタンスルフォン酸、ヘプタフルオロプロパンスルフォン酸、ヘプタフルオロイソプロパンスルフォン酸、ノナフルオロブタンスルフォン酸、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。これらの中でも、入手性の観点から、トリフルオロメタンスルフォン酸、1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルフォン酸を用いることが好ましい。
上述した(B)酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B)酸の添加量は、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び、置換もしくは未置換のチオフェノールの総量100モルに対して、0.001〜100モルであることが好ましく、0.01〜50モルであることがより好ましい。この添加量が少ないと反応が進行しにくく、添加量が多いとポリマー中に(B)酸が残存しやすくなる。
(C)酸化剤は、(A)バナジウム化合物を酸化重合触媒として有効に機能させるために用いられる。(C)酸化剤として具体的には、ジシアノジクロロベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、1,4−ジフェノキノン、テトラメチルジフェノキノン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、四酢酸鉛、酸酢酸タリウム、セリウム(IV)アセチルアセトネート、マンガン(III)アセチルアセトネート、及び、酸素ガスや空気などの酸素分子を含むガスなどが挙げられる。これらの中でも酸素分子を含むガスが好ましい。酸素分子を含むガスとして具体的には、空気、酸素ガスの他、酸素と、窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合物などが挙げられる。これらの中でも酸素ガス、空気のほか、酸素と窒素との混合物が好ましく使用される。酸素と窒素との混合物を使用する場合、酸素濃度は任意である。
上述した(C)酸化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドとしては、例えば、下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2015048442

[式(V)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。]
上記一般式(V)で表される化合物の具体例としては、ジフェニルスルフィド(未置換ジフェニルスルフィド)、2,2’−ジメチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’,6,6’−テトラメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’−テトラメチルジフェニルスルフィド、2,2’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジエチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジエチルジフェニルスルフィド、2,2’,6,6’−テトラエチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’−テトラエチルジフェニルスルフィド、2,2’,5,5’−テトラエチルジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサエチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサエチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタエチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジプロピルジフェニルスルフィド、3,3’−ジプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,6,6’−テトラプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’−テトラプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,5,5’−テトラプロピルジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタプロピルジフェニルスルフィド、2,2’−ジイソプロピルジフェニルスルフィド、3,3’−ジイソプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,6,6’−テトライソプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’−テトライソプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサイソプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサイソプロピルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタイソプロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。これらの中でも、原料の入手性の観点から、ジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチルジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’,6,6’−テトラメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’−テトラメチルジフェニルスルフィド、2,2’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサメチルジフェニルスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタメチルジフェニルスルフィドが好適に使用できる。これらの化合物は重合初期から加えても、重合途中に加えてもよい。いずれの場合においても、結晶性の向上に効果を発揮する。
上述した(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合工程において、反応温度は特に限定はない。しかしながら、得られるポリマーの劣化を抑制する観点から、反応温度は室温以上300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。
また、反応温度が100℃未満の場合は、反応で副生する水を除去するため、上記一般式(IV)で表される有機酸等の無水物を使用することが好ましい。特に、室温での溶液重合の場合、水が存在していると、すなわち酸無水物を使用しないと、重合が十分に進行しない場合がある。但し、(C)酸化剤として酸素分子を含むガスを使用する場合は、副生する水をガスに同伴させて除去することも可能であるため、上記のような有機酸の無水物は必ずしも必要ではない。また、150℃を超える温度で反応を行えば、副生する水は十分に蒸発除去されるため、上記のような有機酸の無水物は必ずしも必要ではない。特に、150℃を超える温度での反応の場合、酸無水物の使用により、得られるポリアリーレンスルフィドの構造に分岐が現れるなどの乱れが生じることがあるため、高温での重合工程では上記のような有機酸の無水物を添加しないことが好ましい。
本発明において、(C)酸化剤として酸素分子を含むガスなどの気体を使用する場合、圧力は特に限定はなく、常圧〜10MPaまでが好ましく選定される。過度の圧力は肉厚の装置が必要となり、コストを上昇させるため、好ましくない。また、特に圧力を高く、かつ温度を高くした場合、得られるポリアリーレンスルフィドのスルフィド部位を酸素が酸化して、スルフォキシドやスルフォンを与えるので、注意を要する。その点を考慮すると、圧力は常圧〜1MPa程度が好適である。なお、ガスの供給方法は、連続式でもバッチ式でもよい。
本発明において、重合工程での反応時間は特に限定されないが、通常、0.1〜240時間である。反応時間が0.1時間よりも短い場合には、所望の重合が進行しない傾向がある。一方、反応時間が240時間を越えると、スルフォキシドやスルフォンが形成される可能性が高くなる。適切な反応時間は1〜50時間であり、より好ましくは2〜48時間である。
本発明においては、必要に応じて反応に溶媒を使用することができる。反応には強酸を使用することから、酸に影響を与えるような溶媒、例えばN−メチルピロリドンなどは好ましくない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。これらの溶媒の沸点が反応温度以下である場合には、密閉容器を使用しての反応が好ましい。
本発明においては、原料として使用するモノマーの融点以上の温度で反応を行えば、モノマーを溶融状態で重合することができる。この場合、反応に溶媒を使用することなく重合することが可能である。例えば、ジフェニルジスルフィドを原料モノマーとする場合、その融点は61℃であるから、その温度以上の反応温度とすることで、溶融重合することが可能となる。
重合工程では、重合反応中に、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを含むモノマーを逐次的に添加することも可能である。反応後期には触媒である(A)バナジウム化合物が活性を維持しているにもかかわらず、反応するモノマー濃度が減少するため、重合反応が進行しにくくなるという問題がある。モノマーを適宜追加することで、重合停止を阻止することができる。
重合工程で得られたポリマーには、(A)バナジウム化合物や(B)酸が残存している可能性があるため、得られたポリマーの洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法に特に限定はない。例えば、得られたポリマーを粉砕して、有機溶媒で未反応モノマーやオリゴマー成分を抽出することができる。残ったポリマーは、水、酸、塩基などで洗浄することができる。また、得られたポリマーを溶媒に完全に、あるいは一部溶解し、水、酸、塩基などで洗浄することも可能である。その際使用できる溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどに加え、N−メチルピロリドンなども挙げることができる。そのような溶媒には未反応モノマーやオリゴマーが溶出してくるので、必要に応じて精製をすることで、回収したオリゴマーやモノマーを原料として再利用することが可能である。一般にポリアリーレンスルフィドは溶媒に対する溶解度が低いため、少なくともポリマーの4質量倍の溶媒を加え、150℃以上に加熱することが必要である。その溶液状態で、水、酸、塩基などで洗浄することが好ましい。これらの洗浄剤として水系のものを使用する場合は、水の沸点以上の温度の溶液と接触させるため、圧力容器中で洗浄することが肝要である。実験室的には得られたポリマーを乳鉢などですりつぶし、ジクロロメタンに分散させて、メタノールと塩酸の混合液で洗浄する。このような方法で洗浄を行ってもよい。
また、重合工程で得られたポリマーを、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、N−メチルピロリドン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶媒で抽出することも可能である。上記抽出を行うことによって、ポリマー中の低分子量成分が抽出・除去され、結果的に残ったポリマーの結晶性を向上させ、さらには平均分子量を向上させることもできる。
また、本発明においては、温度などの種々条件を二種類以上用いて、多段式に重合することも可能である。その際、同一反応器を用いて条件を変える方法でも、内容物を別の反応器に移送して新たな条件で重合することも可能である。
以上説明した本発明の製造方法によれば、後述するDSC測定において、明確に結晶化ピークが確認できる、結晶性の高いポリアリーレンスルフィドを効率的に得ることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られたポリマーの融点、結晶化温度及び分子量の測定方法は以下の通りである。また、各実施例及び比較例で得られたポリマー(精製PPS)の収率、融点、数平均分子量及び重量平均分子量を、各重合条件と共に表1に示した。
(融点及び結晶化温度の測定)
融点は、示差走査熱量計(DSC、セイコー電子工業(株)製)を用い、リファレンスとしてα−アルミナを使用して測定した。測定条件は、室温から20℃/分で310℃まで昇温した際の吸熱ピークの頂点を融点とした。また、310℃から室温まで20℃/分で降温した際の発熱ピークの頂点を結晶化温度とした。
(分子量の測定)
高温GPC装置(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名:PL−220)にカラム(PL gel 10μm MIXED−B LS)2本を連結し、示差屈折率検出器とした。試料10mgに1−クロロナフタレン溶媒5mlを加え、220℃で約30分加熱撹拌した。このように溶解した試料を、流速0.7ml/分で分析することで、分子量(数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mw)を測定した。
[実施例1]
50mlの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(5.45g)を加え、さらに、バナジル(IV)アセチルアセトネート(VO(acac))及びトリフルオロメタンスルフォン酸(TfOH)を、モル比でジフェニルジスルフィド:VO(acac):TfOH=100:5:10となるように加えた。フラスコ内をスターラーチップで撹拌しながら、オイルバスにて100℃に加熱し、常圧の酸素ガスを10ml/分の流量で三口フラスコに導入した。20時間後に反応液を1g採取した。採取した反応液に対し、ジフェニルスルフィド(2ml)を加え、上記と同条件で、攪拌及び加熱をしながら再び酸素を導入した。トータル40時間後に酸素ガスの供給を止め、オイルバスをはずして室温まで冷却した。得られたポリマーを粉砕し、200mlのジクロロメタンに分散し、塩酸酸性メタノールで沈殿精製した。沈殿物をろ過、減圧乾燥することで、精製ポリフェニレンスルフィド(PPS)を得た。得られた精製PPSは、収率61%、Mn=700、Mw=1300であり、DSCにおいて、融点(Tm)=162℃であり、90℃に明確な結晶化温度(Tc)が現れた。DSCにおいて明確な結晶化温度が現れたことから、得られた精製PPSの結晶性が高いことが確認された。
[比較例1]
50mlの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(5.45g)を加え、さらに、バナジル(IV)アセチルアセトネート(VO(acac))及びトリフルオロメタンスルフォン酸(TfOH)を、モル比でジフェニルジスルフィド:VO(acac):TfOH=100:5:10となるように加えた。フラスコ内をスターラーチップで撹拌しながら、オイルバスにて100℃に加熱し、常圧の酸素ガスを10ml/分の流量で三口フラスコに導入した。20時間後に酸素ガスの供給を止め、オイルバスをはずして室温まで冷却した。得られたポリマーを粉砕し、200mlのジクロロメタンに分散し、塩酸酸性メタノールで沈殿精製した。沈殿物をろ過、減圧乾燥することで、精製ポリフェニレンスルフィド(PPS)を得た。得られた精製PPSは、収率60%、Mn=600、Mw=1200であり、DSCにおいて、融点(Tm)=138℃であったが、結晶化温度(Tc)は現れなかった。
Figure 2015048442

Claims (4)

  1. (A)バナジウム化合物、(B)酸、(C)酸化剤、及び、(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドの存在下で、置換もしくは未置換のジフェニルジスルフィド、及び/又は、置換もしくは未置換のチオフェノールを含むモノマーを重合する工程を有する、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記(A)バナジウム化合物が、オキソバナジウム化合物である、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記(C)酸化剤が、酸素分子を含むガスである、請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記(D)置換ジフェニルスルフィド及び/又は未置換ジフェニルスルフィドが、未置換ジフェニルスルフィドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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