JP2015045085A - 結晶配向セラミックス積層材料及びその製造方法 - Google Patents

結晶配向セラミックス積層材料及びその製造方法 Download PDF

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【課題】結晶配向度の高いα−アルミナからなる層を有する結晶配向セラミックス積層材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の結晶配向セラミックス積層材料10は、無機材料(金属又は無機化合物)からなる基部11と、基部11の表面に形成されたα−アルミナ結晶からなる層12とを備え、α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面(特に、(0001)面)が、基部11の表面に対して略平行に配向している。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶配向度の高いα−アルミナからなる層を有する結晶配向セラミックス積層材料及びその製造方法に関する。
従来、アルミナ膜は、各種基材の表面に形成されて、耐食性、耐熱性、耐摩耗性、電気絶縁性等の性質を生かして、防食膜、切削用工具、摺動用部材、電気・電子分野の製品用基板等に広く用いられている。これらの用途のうち、結晶配向度の高いアルミナ膜、特に、表面エネルギーの低い結晶面が基板等の表面方向に対して平行に高配向したアルミナ膜を備えるものは、防食膜、切削用工具(被切削材移着抑制)等に有用であると考えられている。
アルミナ膜の製造方法としては、例えば、特許文献1には、フッ素原子を含むガス中でアルミニウム含有ターゲットをスパッタする方法が開示されている。また、特許文献2には、塗布により製膜可能なアルミニウム含有化合物を含む酸化アルミニウム膜形成用溶液を基板に塗布して酸化アルミニウム膜の前駆体を得た後、この前駆体をコランダム結晶化温度以上に加熱して、基板上にコランダム結晶膜を形成する方法が開示されている。これらの技術においては、結晶配向について全く着眼されていない。
一方、特許文献3には、酸化チタンを0.1〜0.4質量%、酸化カルシウムを0.03〜2.0質量%含む酸化アルミニウム焼結体であって、X線回折像のシグナル強度により算出される結晶配向度I300/(I300+I104)が0.1〜0.5である焼結体が開示されている。
特開平9−316631号公報 特開2009−221051号公報 特開2012−66949号公報
本発明の目的は、結晶配向度の高いα−アルミナからなる層を有する結晶配向セラミックス積層材料及びその製造方法を提供することである。
本明細書では、結晶方位を示す、{10−12}、{10−10}、{11−23}、{32−54}等における、−1、−2又は−5の表記は、各数字(1、2又は5)の上付きバーであることを示す。
本発明は、以下に示される。
1.無機材料からなる基部と、該基部の表面に形成されたα−アルミナ結晶からなる層とを備える積層材料であって、上記α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面が、上記基部の表面に対して略平行に配向していることを特徴とする結晶配向セラミックス積層材料。
2.上記α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面が、該α−アルミナ結晶の底面である(0001)面である上記1に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
3.上記α−アルミナ結晶の底面方位15度以内の体積分率が9%以上である上記2に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
4.上記無機材料が、金属又は無機化合物である上記1乃至3のいずれか一項に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
5.上記金属が、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム合金、Fe基合金、Ni基合金及びCo基合金から選ばれた少なくとも1種である上記4に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
6.上記無機化合物が、ムライト、アルミナ又はチタン酸イットリウム(YTi)である上記4に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
7.上記1乃至6のいずれか一項に記載の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法であって、無機材料からなる基材に向けて、α−アルミナ結晶からなる微粒子を含むエアロゾルを噴射して、上記α−アルミナ結晶微粒子を上記基材の表面に堆積させる噴射工程を備える結晶配向セラミックス積層材料の製造方法。
8.上記α−アルミナ結晶微粒子が、80℃〜200℃の温度に予熱されている上記7に記載の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法。
9.上記噴射工程の後、上記α−アルミナ結晶微粒子が堆積している基材を、800℃〜1700℃の温度で処理する熱処理工程を備える上記7又は8に記載の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法。
本発明の結晶配向セラミックス積層材料は、α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面(特に、(0001)面)が高配向したα−アルミナの層を有するので、防食膜、切削用工具等の構成材料として好適である。
本発明の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法によれば、噴射工程を、例えば、50℃以下、好ましくは10℃〜30℃といった、穏和な温度条件下で進めることができるので、α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面(特に、(0001)面)が高配向したセラミックス積層材料を、効率よく且つ経済的に製造することができる。
また、噴射工程において用いるα−アルミナ結晶微粒子が、80℃〜200℃の温度に予熱されている場合には、結晶配向度の高いセラミックス積層材料を、より効率よく製造することができる。
本発明の結晶配向セラミックス積層材料の断面構造を示す概略図である。 本発明の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法における噴射工程に用いられる装置(α−アルミナ結晶層形成装置)の一例を示す概略図である。 本発明の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法に係る各工程を説明する概略図である。 (A)は、実施例1−1により得られた積層材料(M1)のX線回折像であり、(B)は、原料として用いたα−アルミナ結晶のX線回折像である。 (a)及び(b)は、積層材料(M1)の正極点図であり、それぞれ、図4(A)に示した4種の回折線をもとにして作成した、(0001)及び{10−10}の再計算正極点図である。 実施例1−1により得られた積層材料(M1)の断面を示すTEM画像である。 図6におけるα−アルミナ結晶層の制限視野回折像である。 実施例1−3により得られた積層材料(M3)の断面を示すTEM画像である。 (a)及び(b)は、積層材料(M6)の正極点図であり、それぞれ、(0001)及び{10−10}の再計算正極点図である。 実施例1−6により得られた積層材料(M6)の断面を示すTEM画像である。 実施例1−7により得られた積層材料(M7)におけるα−アルミナ結晶層の表面を、電子後方散乱回折法(EBSD)により分析して得られた結晶方位マップであり、(a)及び(b)は、得られた方位を基にアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)及び{10−10}再計算正極点図であり、(c)及び(d)は、ND方向及びTD方向からの逆極点図である。 実施例2−1により得られた積層材料(A1)の断面を示すTEM画像である。 図12におけるα−アルミナ結晶層の制限視野回折像である。 (a)は、実施例3−1により得られた積層材料(Y1)のアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)再計算正極点図であり、(b)は、ND方向での逆極点図である。 (a)は、実施例3−2により得られた積層材料(Y2)のアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)再計算正極点図であり、(b)は、ND方向での逆極点図である。 (a)は、実施例3−3により得られた積層材料(Y3)のアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)再計算正極点図であり、(b)は、ND方向での逆極点図である。 実施例3−1により得られた積層材料(Y1)の熱処理温度と(0001)面方位の体積分率との関係を示すグラフである。 (a)は、実施例4−1により得られた積層材料(Z1)のアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)再計算正極点図であり、(b)は、ND方向での逆極点図である。 (a)は、実施例4−2により得られた積層材料(Z2)のアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)再計算正極点図であり、(b)は、ND方向での逆極点図である。 (a)は、実施例4−3により得られた積層材料(Z3)のアルミナ結晶層の表面を投影面として描いた(0001)再計算正極点図であり、(b)は、ND方向での逆極点図である。 実施例4−1により得られた積層材料(Z1)の熱処理温度と(0001)面方位の体積分率との関係を示すグラフである。 実施例5−1〜5−5、5−7〜5−11、及び、5−13〜5−17により得られた積層材料(T1)〜(T5)、(T7)〜(T11)及び(T13)〜(T17)の熱処理温度と(0001)面方位の体積分率との関係を示すグラフである。
本発明の結晶配向セラミックス積層材料は、図1に示されるように、無機材料からなる基部11と、この基部11の表面に形成されたα−アルミナ結晶層12とを備える。そして、α−アルミナ結晶層12は、α−アルミナ結晶(近似的に六方晶)からなる粒子が配列して形成されており、α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面が、基部11の表面に対して略平行に配向している。この「配向」は、α−アルミナ結晶層12を構成するα−アルミナ結晶のX線回折(XRD)により得られた少なくとも3種の回折線を用い、例えば、Arbitrarily Defined Cells法による結晶方位解析により確認することができる。尚、基部11が結晶性物質である場合、α−アルミナ結晶の回折線は、基部11を構成する材料の回折線と重複しないところで、選択される。
上記「α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面」とは、α−アルミナ結晶が有する底面、柱面、錘面等に対して、電子状態計算により算出された表面エネルギーが最も低い結晶面を意味し、好ましくは底面、即ち、(0001)面である。
上記基部11を構成する無機材料は、金属及び無機化合物(酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩等)のいずれでもよく、これらの中の2種又は3種以上を組み合わせてなるものであってもよい。これらのうち、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物等のセラミックス及び金属が好ましい。
上記酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ハフニア、マグネシア、カルシア、希土類酸化物(Ln、Ln:Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、並びに、これらの複合酸化物(ムライト、コーディエライト、チタン酸イットリウム(YTi)等)等が挙げられる。
上記窒化物としては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム等が挙げられる。
上記炭化物としては、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム等が挙げられる。
上記ホウ化物としては、ホウ化ケイ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム等が挙げられる。
上記金属としては、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム合金(例えば、Alと、Fe、Si、Cu、Ni、Cr、Ti、Zr、Zn、Mn、Mg及びGaから選ばれた少なくとも1種とからなるもの)、Fe基合金、Ni基合金、Co基合金等が挙げられる。
上記無機材料は、基部11とα−アルミナ結晶層12との組み合わせにおいて、好ましい用途に応じて、適宜、選択される。例えば、結晶配向セラミックス積層材料を、防食膜等に利用する場合には、上記無機材料としてはアルミナ又はムライトが好適である。また、切削工具等に利用する場合には、上記無機材料として金属が好適である。
上記基部11は、1種又は2種以上の材料からなる単一物体であってよいし、複数の層からなる多層型物体であってもよい。後者の場合、例えば、結晶配向セラミックス積層材料の全体として、α−アルミナ結晶層12を表層とする積層体とすることができる。
上記α−アルミナ結晶層12は、通常、空隙のない高密度層である。そして、後述する製造方法における工程の内容によって、(1)α−アルミナ結晶からなる微粒子群が加圧により押し固められたような形態、(2)熱処理によりα−アルミナ結晶が粒成長した形態等とすることができる。
上記態様(1)の場合、α−アルミナ結晶微粒子の大きさは、小さすぎて測定できないことがあるが、平均粒子径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは5〜100nm、更に好ましくは5〜50nmである。上記態様(2)の場合、平均粒子径は、好ましくは200〜6000nm、より好ましくは500〜4000nm、更に好ましくは1000〜3000nmである。尚、平均粒子径は、電子顕微鏡による画像解析により求めることができる。
上記α−アルミナ結晶層12の厚さは、好ましくは10〜10000nm、より好ましくは500〜6000nm、更に好ましくは1000〜3000nmである。
上記α−アルミナ結晶層12において、α−アルミナ結晶の(0001)面は、基部11の表面に対して略平行に配向している。完全に平行である場合に対するずれは、通常、1〜15度である。
また、上記のように、任意に選択した複数種の回折線の強度をもとに(0001)又は{10−10}の不完全正極点図を作製した後、例えば、Resmat社製のプログラムソフト「Tex Tools」を用いて、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)を求め、次いで、このODFにより再計算正極点図(例えば、図5、図9等)及び逆極点図を描いて結晶方位解析を行うことにより、特定の方位から15度以内の極の体積分率を定量することができるが、その体積分率は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは11%以上である。
本発明の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法は、無機材料からなる基材に向けて、α−アルミナ結晶からなる微粒子を含むエアロゾルを噴射して、α−アルミナ結晶微粒子を基材の表面に堆積させる噴射工程を備える。この噴射工程は、所謂、エアロゾルデポジション法を利用するものである。
尚、噴射工程の後、必要に応じて、更に、α−アルミナ結晶微粒子が堆積している基材を、800℃〜1700℃の温度で処理する熱処理工程(後述)を備えることができる。本発明においては、少なくとも噴射工程により、結晶配向セラミックス積層材料を製造することができ、熱処理工程を行っても、噴射工程後の結晶配向度を維持した結晶配向セラミックス積層材料を製造することができる。
上記基材を構成する無機材料は、金属及び無機化合物のいずれでもよく、これらの中の2種又は3種以上を組み合わせてなるものであってもよい。これらのうち、噴射工程又は必要によりその後行われる工程においてα−アルミナ結晶と反応しない金属又はセラミックスが好ましい。セラミックスとしては、酸化物、炭化物、窒化物等が好ましく、酸化物等が特に好ましい。
上記基材は、目的、用途等に応じて、1種又は2種以上の材料からなる単一物体であってよいし、複数の層からなる多層型物体であってもよい。後者の場合、特定の材料からなる表層(α−アルミナ結晶層を形成せしめる表層)を備える多層型物体を用いることができる。
上記基材の形状及び大きさは、特に限定されない。尚、形成されるα−アルミナ結晶層における高い結晶配向を容易に保持できることから、基材における被形成面が平面であることが好ましい。
上記α−アルミナ結晶微粒子の形状は、特に限定されない。上記α−アルミナ結晶微粒子の平均粒子径は、通常、3000nm以下であり、好ましくは50〜2500nm、より好ましくは80〜1000nm、更に好ましくは100〜500nmである。尚、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定することができる。上記α−アルミナ結晶微粒子の平均粒子径が100〜500nmの範囲にあると、結晶配向度の高いα−アルミナ結晶層を高密度で形成することができる。
上記噴射工程は、具体的には、α−アルミナ結晶微粒子を、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、圧縮空気、酸素ガス等のガス中に分散させて発生させたエアロゾルを、ノズルを用いて基材に向けて噴射し、基材にα−アルミナ結晶微粒子を衝突させた後、これを連続的に行うことで基材の表面にα−アルミナ結晶微粒子を堆積させ、α−アルミナ結晶層を形成するものである。基材に対して、α−アルミナ結晶微粒子の衝突による衝撃が大きいことから、α−アルミナ結晶微粒子が破砕することがあるが、基材の表面に対して密着性に優れたα−アルミナ結晶層を形成することができる。
上記噴射工程において用いるエアロゾルを構成するガス及びα−アルミナ結晶微粒子の割合、並びに、ノズルによるエアロゾルの噴射方法は、特に限定されない。
また、エアロゾルの噴射速度(供給速度)は、特に限定されないが、緻密なα−アルミナ結晶層を形成することができること等から、例えば、窒素ガスの場合、好ましくは3〜20リットル/分、より好ましくは4〜15リットル/分、更に好ましくは5〜10リットル/分である。エアロゾルの噴射速度が上記範囲にあっても、基材の硬度等によって、被形成面が粗化されて、歪みが形成される場合があるが、結晶配向度の高いα−アルミナ結晶からなる層を効率よく製造することができる。また、基材に吹き付けられるエアロゾルの衝撃は大きいものの、ノズルによる吹き付け圧力は、限られた領域に対してであるので、上記噴射速度であれば、基材の損傷を抑制することができる。
尚、エアロゾルの噴射角、即ち、基材に対して、ノズルの開口部と、噴射されたエアロゾルの中心とを結ぶ直線により形成される角度は、表面エネルギーの低いα−アルミナの結晶面が高配向した層が効率よく得られることから、好ましくは45〜90度、より好ましくは50〜90度である。
上記噴射工程は、通常、密閉空間において進められるが、その雰囲気は、特に限定されない。エアロゾルを構成するガスと同じ雰囲気であってよいし、大気雰囲気であってもよい。更に、エアロゾルの噴射は、常圧条件及び減圧条件のいずれであってもよい。
また、基材の温度も特に限定されず、例えば、50℃以下、好ましくは10℃〜30℃といった、穏和な温度条件下で噴射工程を行って、アルミナ焼結体と同等の機械的強度を有するα−アルミナ結晶層を形成することができる。
本発明では、安定であり且つより厚いα−アルミナ結晶層を有する結晶配向セラミックス積層材料を効率よく製造するために、予熱したα−アルミナ結晶微粒子を含むエアロゾルを用いることが好ましい。予熱温度は、好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは100℃〜180℃、更に好ましくは120℃〜170℃である。
ここで、上記噴射工程に用いられる装置について、説明する。図2は、基材の表面にα−アルミナ結晶層を形成する装置の一例である。
図2の結晶配向セラミックス積層材料製造装置(α−アルミナ結晶層形成装置)20は、α−アルミナ結晶微粒子を含むエアロゾルを発生させるエアロゾル発生機21と、エアロゾル搬送用配管22を介して供給されたエアロゾルを粉体噴射用ノズル25から噴射して基材27の表面にα−アルミナ結晶層を形成する製膜室23とを備える。製膜室23には、製膜室23の内部を減圧にするための真空ポンプ29が連結されている。
図2の製膜室23では、粉体噴射用ノズル25からのエアロゾルが、基材27に対して斜め方向(角度θ)に吹き付けられるように示しているが、θ=90度でもよい。エアロゾルを連続的に噴射する場合、基材27の表面に堆積せずに跳ね返るα−アルミナ結晶微粒子と、粉体噴射用ノズル25からのエアロゾルとが衝突しないので、好ましい態様である。
基材27の広い領域にα−アルミナ結晶層を形成する場合には、粉体噴射用ノズル25及び基材27の少なくとも一方の位置を変化させる手段を備えることができる。
尚、粉体噴射用ノズル25の先端部の開口面積、粉体噴射用ノズル25と基材27との距離(L)等は、特に限定されない。
図2の装置は、製膜室23の内部を減圧にするための真空ポンプ29を備えるが、製膜室23の内部を減圧にすることにより、エアロゾル発生機21(エアロゾル搬送用配管22を含む)と、製膜室23との差圧を生じさせて、基材27に対するエアロゾルの衝突効率を向上させることができる。
尚、噴射工程に際して、製膜室23の内部の雰囲気は、特に限定されないが、エアロゾルを構成するガスと同じ種類のガスを主とすることが好ましい。
本発明においては、上記のように、基材27が加熱されていなくても、焼結体と同等の機械的強度を有するα−アルミナ結晶層を形成することができるが、製膜室23の内部(特に、基材27)を、所望の温度とするために、製膜室23は、加熱手段を備えてもよい。
一方、エアロゾル搬送用配管22を介して製膜室23内の粉体噴射用ノズル25にエアロゾルを供給するエアロゾル発生機21は、従来、公知の構成を備えることができる。図2におけるエアロゾル発生機21は、上記例示したガスと、α−アルミナ結晶微粒子とを混合して、エアロゾルを発生させる装置であり、α−アルミナ結晶微粒子33を収容する粉体容器31と、エアロゾル発生機21の内部においてα−アルミナ結晶微粒子33を撒き上げるための粉体撒き上げ用ガス供給部35と、エアロゾル搬送用ガス供給部37とを備える。
粉体撒き上げ用ガス供給部35から、ガスがα−アルミナ結晶微粒子33の集合体内部に導入されると、エアロゾル発生機21の内部において、α−アルミナ結晶微粒子が撒き上げられ、ガスの中にα−アルミナ結晶微粒子33が分散したエアロゾルとなる。エアロゾル発生機21の内部が密閉空間であるので、粉体撒き上げ用ガス供給部35からのガス流量に基づいてエアロゾルを粉体噴射用ノズル25に送ることができるが、エアロゾル搬送用ガス供給部37からのガスを併用することにより、噴射に十分な流量のエアロゾルを製膜室23内の粉体噴射用ノズル25に送ることができる。
上記のように、予熱されたα−アルミナ結晶微粒子33を含むエアロゾルを用いることができるので、そのために、粉体容器31内のα−アルミナ結晶微粒子33を加熱するヒーター39を配設することができる。
次に、本発明の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法において、任意に備えることができる熱処理工程について、説明する。この熱処理工程の具体的な手法は、通常、基材を構成する無機材料の種類等により、適宜、選択される。
上記熱処理工程は、α−アルミナ結晶層を構成するα−アルミナ結晶の変質を抑制する条件下で進められる。熱処理がα−アルミナ結晶の粒成長を招く場合があるが、下記の条件であれば、高い結晶配向度が保持される。
熱処理温度の上限は、好ましくは1700℃、より好ましくは1500℃であり、下限温度は、通常、800℃である。また、雰囲気は、例えば、大気雰囲気等とすることができる。
尚、本発明の製造方法において、用いた基材27を構成する無機材料の種類によっては、噴射工程及び熱処理工程のうちの、特に、熱処理工程後において、図1に示されるα−アルミナ結晶層12に面する基部11の最表層が、結晶配向セラミックス積層材料の製造前に、予め、準備された基材27を構成する無機材料と異なる場合があるが、この場合も、基部11が無機材料からなることから、本発明の結晶配向セラミックス積層材料に含まれる。
図3は、本発明の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法に係る各工程を説明する概略図である。(I)は、α−アルミナ結晶微粒子33を含むエアロゾルを基材27に向けて噴射しているところを表し、(II)は噴射工程により得られた積層材料を表す。また、(III)は、噴射工程の後、必要に応じて、熱処理工程を行って得られた、粒成長して形成されたα−アルミナ結晶層を備える積層材料を表す。
本発明者らは、特に、80℃以上に予熱したα−アルミナ結晶微粒子を含むエアロゾルを用いて、常温の平滑基材の表面に堆積させて形成したα−アルミナ結晶層において、α−アルミナ結晶において表面エネルギーの低い(0001)面が、基部(基材27)の表面に対して略平行に配向するメカニズムについて、以下のように推定している。
噴射工程において、α−アルミナ結晶微粒子33が基材27の表面に衝突すると、そのままの形状を保持した状態で、あるいは、一部が破砕して細片を含む状態で、基材27の表面に堆積する。このとき、衝突の衝撃により基材27の表面が粗化することがあるものの、基材27の温度に関わらず、衝突による局所的な応力場が発生しやすくなることにより、α−アルミナ結晶の(0001)面での滑りが誘発されて、図3の(II)に示すように、大部分の微粒子が、空隙を埋めつつ(0001)面で重なるように堆積し、高い結晶配向度が得られるものと考えられる。
尚、噴射工程の後、必要により、熱処理工程に供すると、α−アルミナ結晶の粒成長が観察されることがあるが、特に、上限を1700℃とする熱処理であれば、結晶配向は維持される。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
1.基材の作製
基材として、下記の作製例1で得られたムライト基板、作製例2で得られたα−アルミナ基板、作製例3で得られたYTi基板、及び、作製例4で得られたモリブデン基板を用いた。これらの基板の、嵩密度及び気孔率(水を用いた液浸法による)、ビッカース硬さ、及び、弾性率(超音波パルス法による)の測定結果を表1に示す。
作製例1(ムライト基板の作製)
共立マテリアル社製ムライト粉末「KM101」を、カーボン製の型内に充填し、アルゴンガス雰囲気下、ホットプレス(1650℃、40MPa、1時間)を行い、板状の焼結体を得た。
次いで、この焼結体を、酸素ガス雰囲気下、1750℃で5時間加熱した。その後、1面側の表面を研磨して、鏡面を有するムライト基板(10mm×10mm×3mm)を作製した。
作製例2(α−アルミナ基板の作製)
大明化学工業社製α−アルミナ粉体「TM−DAR」(純度99.99%、D50=140nm)を用いて、一軸加圧の予備成形(20MPa)を行った後、CIP成形(250MPa)に供し、板体を得た。
次いで、この板体を、大気雰囲気下、1500℃で5時間加熱し、焼結体を得た。その後、1面側の表面を研磨して、鏡面を有するα−アルミナ基板(10mm×10mm×3mm)を作製した。
作製例3(YTi基板の作製)
初めに、噴霧熱分解法により、YTi粉末を合成し、その後、焼結体を得て、所定形状のYTi基板を作製した。
東邦チタニウム社製四塩化チタン水溶液(高純度試薬、Ti:16.0〜17.0%)と、関東化学社製硝酸イットリウム六水和物(高純度試薬、純度99.99%)と、純水とを用いて、YTiの濃度が0.05mol/Lである前駆体水溶液を調製した。
その後、このYTi前駆体水溶液を冷却し、チューブポンプで霧化部へ循環し、超音波(周波数1.6〜1.75MHz)により液滴を発生させた。次いで、液滴を、マントルヒーターと、炉心管を含む電気炉と、粉末回収フィルターと、捕集器とを、順次、備える噴霧熱分解装置の前段部と後段部との圧力差(−4kPa)及びキャリアガス(空気:7.5L/分)により炉心管内を通過させ、YTi前駆体の熱分解及び乾燥を行って、捕集器でYTi粉末を回収した。このとき、液滴を導入する際の各部の温度は、最前段のマントルヒーターでは120℃とし、電気炉を構成する第1炉では200℃、第2炉では500℃、第3炉では800℃とし、粉末回収フィルターでは130℃とした。
次に、得られたYTi粉末を、大気雰囲気下、800℃で1時間仮焼した後、48μmメッシュのふるいを通した。次いで、一軸加圧の予備成形(20MPa)を行った後、CIP成形(250MPa)に供し、板体を得た。
その後、この板体を、大気雰囲気下、1700℃で5時間加熱し、焼結体を得て、両面を研磨して、鏡面を有するYTi基板(φ23.5mm、厚さ0.25mm)を作製した。
作製例4(モリブデン基板の作製)
純度が99.95質量%以上であり、不純元素として、Ni(0.0020質量%)、Cu(0.0020質量%)、O(0.0040質量%)、Mg(0.0010質量%)、Al(0.0020質量%)、Fe(0.0015質量%)、Si(0.0020質量%)及びN(0.0015質量%)を含むモリブデン製丸棒(直径15mm)を切削加工した後、1面側の円形表面をダイヤモンドスラリーにより鏡面加工し、他面側の円形表面を#600の耐水研磨紙で平滑加工し、厚さ3mmのモリブデン基板を得た。
2.結晶配向セラミックス積層材料の製造及び評価
2−1.製造装置
下記の実施例において用いる結晶配向セラミックス積層材料の製造装置は、図2に示される。図2の結晶配向セラミックス積層材料製造装置20は、α−アルミナ粉体を含むエアロゾルを製造するエアロゾル発生機21と、粉体噴射用ノズル25を用いて基材27の表面にエアロゾルを吹き付けてα−アルミナ結晶層を形成させる製膜室23とを備える。粉体噴射用ノズル25は、エアロゾル搬送用配管22を介して、エアロゾル発生機21と接続されている。
エアロゾル発生機21は、ヒーター39により所定の温度に加熱されたα−アルミナ結晶微粒子33を収容する粉体容器31と、粉体容器31内のα−アルミナ結晶微粒子33の集合体内部に窒素ガスを供給して、エアロゾル発生機21の内部においてα−アルミナ結晶微粒子33を撒き上げて均一なエアロゾルを発生させるための粉体撒き上げ用ガス供給部35と、窒素ガスにより、エアロゾルを一定速度で製膜室23に供給するエアロゾル搬送用ガス供給部37とを備える。エアロゾルを効率よく発生させるために、粉体撒き上げ用ガス供給部35の配管の開口部を、予め、α−アルミナ結晶微粒子33の集合体内部に配している。
粉体撒き上げ用ガス供給部35からの窒素ガスにより発生したエアロゾルは、エアロゾル搬送用ガス供給部37からの窒素ガスにより、噴射に十分な量のエアロゾルを製膜室23内の粉体噴射用ノズル25に送られる。
一方、製膜室23は、その内部に、所定の方向にエアロゾルを噴射する粉体噴射用ノズル25と、図示していない支持部材に固定された基材27とを備える。そして、基材27の表面に広くα−アルミナ結晶層を形成させるために、基材27が水平方向に移動できるようにしている。また、製膜室23は、外部に連結した真空ポンプ29により、その内部を減圧としている。
2−2.結晶配向セラミックス積層材料の製造及び評価(1)
以下において、上記作製例1及び2により得られたムライト基板及びα−アルミナ基板を基材27(図2)として用い、その各表面(鏡面側表面)に対し、下記の条件により、大明化学工業社製α−アルミナ粉体「TM−DAR」(純度99.99%、D50=140nm、ランダム形状のα−アルミナ結晶微粒子)を衝突させて、各基板の表面にα−アルミナ結晶層を形成した実験例を示す。
<製造条件>
A.エアロゾル発生機
α−アルミナ結晶微粒子(α−アルミナ粉体)の使用量:50g
粉体撒き上げ用窒素ガスの流量:3L/分
エアロゾル搬送用窒素ガスの流量:3L/分
B.製膜室
製膜室内の圧力:150Pa
粉体噴射用ノズルの開口サイズ:5mm×0.3mm
ノズルと、基板との距離(L):7.4mm
基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θ:60度
基板の温度:20℃
基板の移動速度:50mm/分
実施例1−1(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
α−アルミナ結晶微粒子33を粉体容器31に収容した後、粉体容器31内のα−アルミナ結晶微粒子33をヒーター39により加熱して150℃とした。次いで、エアロゾル発生装置21の内部に、粉体撒き上げ用ガス供給部35及びエアロゾル搬送用ガス供給部37から窒素ガスを導入した。このとき、エアロゾル発生装置21内でα−アルミナ結晶微粒子33が舞い上がるように、粉体撒き上げ用ガス供給部35から、窒素ガスを、粉体容器31に収容されているα−アルミナ結晶微粒子33の集合体の中に供給した(図2参照)。これにより、粉体撒き上げ用ガス供給部35及びエアロゾル搬送用ガス供給部37からの両方の窒素ガスの合計流量をもって、α−アルミナ結晶微粒子を含むエアロゾルを、エアロゾル搬送用配管22を介して、真空ポンプ29により減圧条件とした製膜室23内の粉体噴射用ノズル25に供給した。そして、一定速度で移動する基材27(ムライト基板)に対し、エアロゾルを粉体噴射用ノズル25から連続的に噴射して衝突させて、厚さが150nm以上となるように堆積させ、積層材料(M1)を得た。
得られた積層材料(M1)のα−アルミナ結晶層の表面について、集合組織測定及び結晶方位解析に供した。測定装置は、リガク社製試料水平型多目的X線回折装置「Ultima IV」であり、測定方法は、シュルツ反射法である。
使用したX線は、CuのKα線であり、加速電圧は40kV、電流は40mA、α角は15〜90度(5度ステップ)、β角は0〜360度(連続法)、γ角は振動有り(±5mm)である。また、X線検出には、モノクロメーターを装備したシンチレーションカウンターを用いた。得られたX線回折像を図4(A)に示す。
集合組織の測定に用いたα−アルミナ回折線は、ムライト回折線と重ならない、{10−12}、{10−10}、{11−23}及び{32−54}の4種(図4参照)である。一般に、α角の変化によって、X線を回折する試料の体積やX線が通過する経路の変化が生ずるため、α角の変化に伴って正極点図の外周部の領域に回折強度の低下が見られる。これを補正するため、粉末焼結により作製した直径10mmのα−アルミナランダム試料を用いて補正係数を決定し、得られた集合組織に反映させた。
上記4種の回折線の強度をもとに作成した4つの不完全正極点図(図示せず)から、Resmat社製のプログラムソフト「Tex Tools」を用いて、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)を求めた。尚、ODFは、Arbitrarily Defined Cells法に基づいて求められている。そして、求めたODFにより描いた再計算正極点図から結晶方位解析を行った。更に、特定の方位から10度又は15度以内の極の体積分率を定量的な集合組織評価のために用いた。
図5の(a)及び(b)は、それぞれ、α−アルミナ結晶層の表面(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面)を投影面として描いた(0001)及び{10−10}再計算正極点図である。平均極密度を1としてその倍数で等高線を描いている。いずれの図においても、極の分布が同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、図5(a)の(0001)再計算正極点図では、(0001)面がα−アルミナ結晶層の表面から(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面を基準として)15〜20度傾いているように見える。更に、図5(b)の{10−10}再計算正極点図では、(10−10)面が外周部から15〜20度内側に傾いているように見える。従って、得られた正極点図において、方位関係の矛盾は見られない。α−アルミナ結晶層における極密度分布を示した逆極点図(図示せず)においては、最大極密度は(0001)面から(10−10)面に15〜20度傾いた位置にあった。また、(0001)面方位の体積分率は、10度以内が6.8%、15度以内が14.0%であった(表2参照)。以上より、α−アルミナ結晶層を構成するα−アルミナ結晶の(0001)面が、ムライト基板の表面に対して、略平行に配向していることが分かる。
次に、得られた積層材料(M1)の断面観察及び結晶性評価を、日本電子社製電界放出型透過電子顕微鏡「JEM−2100F」により行った。
観察用の試料は、収束イオンビーム装置(FIB)を備える走査型電子顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「SMI−3050SE」)を使用し、FIB−マイクロサンプリング法にて作製した。尚、結晶性評価のための電子線回折の際には、プローブ径を、約3nmとした。
図6のTEM画像によれば、エアロゾルの衝撃により生じたと思われる、ムライト基板の表面部における歪みが観察されたが、界面に新たな物質からなる層は観察されなかった。また、電子線回折による制限視野回折像を図7に示したが、α−アルミナ結晶層が微結晶からなることが分かる。
実施例1−2(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例1−1により得られた積層材料(M1)を、大気雰囲気中、900℃で5時間加熱し、積層材料(M2)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が4.5%、15度以内が13.4%であった(表2参照)。
実施例1−3(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例1−1により得られた積層材料(M1)を、大気雰囲気中、1000℃で5時間加熱し、積層材料(M3)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が5.3%、15度以内が15.4%であった(表2参照)。
また、得られた積層材料(M3)の断面観察を行ったところ、α−アルミナ結晶層の結晶粒径が20〜100nmの範囲にあることが分かった(図8参照)。
実施例1−4(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例1−1により得られた積層材料(M1)を、大気雰囲気中、1100℃で5時間加熱し、積層材料(M4)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が3.9%、15度以内が9.9%であった(表2参照)。
実施例1−5(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例1−1により得られた積層材料(M1)を、大気雰囲気中、1300℃で5時間加熱し、積層材料(M5)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が6.3%、15度以内が15.7%であった(表2参照)。
実施例1−6(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例1−1により得られた積層材料(M1)を、大気雰囲気中、1300℃で100時間加熱し、積層材料(M6)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が4.0%、15度以内が10.3%であった(表2参照)。
また、図9の(a)及び(b)は、積層材料(M6)について、実施例1−1と同様にして、それぞれ、α−アルミナ結晶層の表面(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面)を投影面として描いた(0001)及び{10−10}再計算正極点図である。いずれの図においても、極の分布が同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、図9(a)の(0001)再計算正極点図では、(0001)面がα−アルミナ結晶層の表面から(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面を基準として)15〜20度傾いているように見える。更に、図9(b)の{10−10}再計算正極点図では、(10−10)面が外周部から15〜20度内側に傾いているように見える。従って、得られた正極点図において、方位関係の矛盾は見られない。α−アルミナ結晶層における極密度分布を示した逆極点図(図示せず)においては、最大極密度は(0001)面から(10−10)面に15〜20度傾いた位置にあった。また、(0001)面方位の体積分率は、10度以内が4.0%、15度以内が10.3%であった(表2参照)。以上より、α−アルミナ結晶層に含まれるα−アルミナ結晶の(0001)面が、ムライト基板の表面に対して、略平行に配向していることが分かる。
更に、得られた積層材料(M6)の断面観察を行ったところ、α−アルミナ結晶層の結晶が板状(長さ100〜800nm)であることが分かった(図10参照)。更に、アニール(熱処理)によって、ムライト及びα−アルミナの両方とも粒成長が進行し、実施例1−1の積層材料(M1)に見られたムライト基板の表面層における歪みが抑制された。
実施例1−7(ムライト基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例1−1により得られた積層材料(M1)を、大気雰囲気中、1400℃で1時間、そして、1300℃で100時間加熱し、積層材料(M7)を得た。
得られた積層材料(M7)について、アセトンで超音波洗浄を行った後、日本電子社製ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡「JSM−7001F」と、それに接続されたTSLソリューションズ社製EBSD検出器とを用いた、電子後方散乱回折法(EBSD)により、α−アルミナ結晶層の表面に電子線を照射して、結晶方位解析を行った。測定は、50nmのステップ間隔で行った。取得したEBSDパターンをもとに、OIM Analysis ver.6.2を使用して、信頼性係数(CI)が0.1以上の結晶方位データを用いた解析を行った。α−アルミナ結晶層上の個々の結晶粒と結晶方位の関係を示すため、CIが0.1未満の結晶方位を有する領域を黒、ND方向から観察して、(0001)面から15度以内の結晶方位の領域をグレー、それ以上の結晶方位の領域を白で表示する結晶方位マップを描いた(図11の左上の画像参照)。ここで、NDは、α−アルミナ結晶面の垂直方向を意味し、RD−TDは、X−Y方向を意味する。尚、測定時のRD−TD方向は区別していない。また、結晶方位分布関数(ODF)は、球面調和関数による級数展開法により求めた。ODFにより描いた再計算正極点図及び逆極点図(いずれも図示せず)から結晶方位解析を実施した。
図11の結晶方位マップから明らかなように、ND方向では、広い領域でグレーとなっていることから、(0001)面から15度以内の領域が多く、α−アルミナ結晶層は(0001)面に配向していることが分かる。全測定領域中での(0001)面から15度以内の領域は30.3%であり、CIが0.1以上を示す結晶方位領域中での(0001)面から15度以内の領域は49.7%であった。
図11の(a)及び(b)は、それぞれ、EBSD測定を実施した領域のα−アルミナ結晶層の表面(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面)を投影面として描いた(0001)及び{10−10}の再計算正極点図であり、平均極密度を1として、その倍数で等高線を描いたものである。いずれにおいても、極の分布が同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、(0001)再計算正極点図(a)では、極密度の高い位置が中心に存在する。また、{10−10}再計算正極点図(b)では、外周部に比較的極密度の高い領域が見られることから、得られた正極点図において、結晶方位関係の矛盾は見られない。図11の(c)及び(d)は、それぞれ、同一試料において、α−アルミナ結晶層の極密度分布を示した、ND方向及びTD方向の逆極点図である。α−アルミナ結晶層の極密度分布を平均極密度を1(ランダム配向)としてその倍数で等高線を描いている。ND方向での逆極点図(c)では、(0001)の位置に極密度が最大の位置があり、最大極密度の値は25.6であった。一方、TD方向での逆極点図(d)では、(0−110)−(1−210)に沿った外周部において、最大で4程度の極密度の比較的高い領域が見られる。
実施例2−1(α−アルミナ基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
ムライト基板に代えて、作製例2により得られたα−アルミナ基板を用いた以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、α−アルミナ結晶層を備える積層材料(A1)を得た。得られた積層材料(A1)の断面観察を、日本電子社製電界放出型透過電子顕微鏡「JEM−2100F」により行った。図12のTEM画像によれば、製膜時の衝撃により生じたと思われる、α−アルミナ基板の表面層における歪みが観察されたが、界面に新たな層は観察されなかった。また、電子線回折による制限視野回折像を図13に示したが、α−アルミナ結晶層が微結晶からなることが分かる。
2−3.結晶配向セラミックス積層材料の製造及び評価(2)
以下において、上記作製例3により得られたYTi基板を基材27(図2)として用い、その表面(鏡面側表面)に対し、下記の条件により、大明化学工業社製α−アルミナ粉体「TM−DAR」(純度99.99%、D50=140nm、ランダム形状のα−アルミナ結晶微粒子)を衝突させて、YTi基板の表面にα−アルミナ結晶層を形成した実験例を示す。
<製造条件>
A.エアロゾル発生機
α−アルミナ結晶微粒子(α−アルミナ粉体)の使用量:50g
粉体撒き上げ用窒素ガスの流量:3L/分
エアロゾル搬送用窒素ガスの流量:3L/分
B.製膜室
製膜室内の圧力:150Pa
粉体噴射用ノズルの開口サイズ:5mm×0.3mm
ノズルと、基板との距離(L):7.0mm
基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θ:60度
基板の温度:20℃
基板の移動速度:50mm/分
実施例3−1(YTi基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
上記のように、ムライト基板に代えて、作製例3により得られたYTi基板を用い、更に、α−アルミナ結晶膜の製造条件を上記のように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、YTi基板の鏡面側表面にα−アルミナ結晶層を備える積層材料(Y1)を得た。
得られた積層材料(Y1)のα−アルミナ結晶層の表面について、実施例1−1と同様にして、集合組織測定及び結晶方位解析に供した。但し、結晶方位分布関数(ODF)は、{10−12}、{11−23}、{11−26}及び{21−34}の4種のα−アルミナ回折線の強度をもとに作成した4つの不完全正極点図(図示せず)から、Labosoft社製のプログラムソフト「LaboTex ver.3.0.24」を用いて求めた。そして、求めたODFにより描いた再計算正極点図及び逆極点図から結晶方位解析を行った(図14(a)及び(b)参照)。
図14(a)及び(b)は、それぞれ、α−アルミナ結晶層の表面(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面)を投影面として描いた(0001)再計算正極点図、及び、α−アルミナ結晶層における極密度分布を示した逆極点図である。図14(a)において、極の分布は、やや乱れているが、同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、図14(a)では、(0001)面がα−アルミナ結晶層の表面から(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面を基準として)約15度傾いているように見える。更に、図14(b)においては、最大極密度は(0001)面から(11−20)面に約18度傾いた位置にあり、最大極密度は2.6であった。また、(0001)面方位の体積分率は、10度以内が1.29%、15度以内が3.36%であった。以上より、α−アルミナ結晶層を構成するα−アルミナ結晶の(0001)面が、YTi基板の表面に対して、略平行に配向していることが分かる。
実施例3−2(YTi基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例3−1により得られた積層材料(Y1)を、大気雰囲気中、900℃で5時間加熱し、積層材料(Y2)を得た。
その後、実施例3−1と同様にして、結晶方位解析を行った(図15(a)及び(b)参照)。図15(a)及び(b)は、それぞれ、α−アルミナ結晶層の表面(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面)を投影面として描いた(0001)再計算正極点図、及び、α−アルミナ結晶層における極密度分布を示した逆極点図である。図15(a)において、極の分布は、乱れることなく、同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。そして、上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が5.17%、15度以内が11.04%であった。
実施例3−3(YTi基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例3−1により得られた積層材料(Y1)を、大気雰囲気中、1300℃で5時間加熱し、積層材料(Y3)を得た。
その後、実施例3−1と同様にして、結晶方位解析を行った(図16(a)及び(b)参照)。図16(a)及び(b)は、それぞれ、α−アルミナ結晶層の表面(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面)を投影面として描いた(0001)再計算正極点図、及び、α−アルミナ結晶層における極密度分布を示した逆極点図である。図16(a)において、極の分布は、乱れることなく、同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。そして、上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が17.17%、15度以内が30.32%であった。
上記の実施例3−2及び3−3で得られた積層材料(Y2)及び(Y3)は、それぞれ、実施例3−1により得られた積層材料(Y1)を、大気雰囲気中、それぞれ、900℃及び1300℃で、いずれも5時間の熱処理を行って得られた積層材料であり、15度以内における(0001)面方位の体積分率は上記の通りである。図17は、積層材料(Y1)を、大気雰囲気中、1000℃で、5時間の熱処理を行って得られた積層材料の体積分率のデータ(10度以内は7.63%、15度以内は14.42%)を含む、熱処理温度と、15度以内における(0001)面方位の体積分率との関係を示すグラフであるが、熱処理温度が高くなるにつれて、(0001)面方位の体積分率も高くなっており、より高い結晶配向性を有することが分かる。
2−4.結晶配向セラミックス積層材料の製造及び評価(3)
以下において、上記作製例4により得られたモリブデン基板を基材27(図2)として用い、その表面(鏡面側表面)に対し、下記の条件により、大明化学工業社製α−アルミナ粉体「TM−DAR」(純度99.99%、D50=140nm、ランダム形状のα−アルミナ結晶微粒子)を衝突させて、モリブデン基板の表面にα−アルミナ結晶層を形成した実験例を示す。
<製造条件>
A.エアロゾル発生機
α−アルミナ結晶微粒子(α−アルミナ粉体)の使用量:50g
粉体撒き上げ用窒素ガスの流量:4L/分
エアロゾル搬送用窒素ガスの流量:0、3L/分又は10L/分
B.製膜室
粉体噴射用ノズルの開口サイズ:5mm×0.5mm
ノズルと、基板との距離(L):5.0mm
基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θ:60度又は90度
基板の温度:20℃
基板の移動速度:300mm/分
実施例4−1(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
上記のように、ムライト基板に代えて、モリブデン基板を用い、更に、粉体撒き上げ用窒素ガスの流量を4L/分、エアロゾル搬送用窒素ガスの流量を3L/分、基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θを60度とした以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、モリブデン基板の鏡面側表面にα−アルミナ結晶層を備える積層材料(Z1)を得た。
得られた積層材料(Z1)のα−アルミナ結晶層の表面について、実施例3−1と同様にして、集合組織測定及び結晶方位解析に供した。但し、結晶方位分布関数(ODF)については、{10−12}、{10−14}、{11−23}及び{21−34}の4種のα−アルミナ回折線の強度をもとに作成した4つの不完全正極点図(図示せず)から求めた。そして、求めたODFにより描いた再計算正極点図及び逆極点図から結晶方位解析を行った(図18(a)及び(b)参照)。
図18(a)において、極の分布が同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、図18(a)では、(0001)面がα−アルミナ結晶層の表面から(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面を基準として)約10度傾いているように見える。更に、図18(b)においては、最大極密度は(0001)面から(11−20)面に約6度傾いた位置にあり、最大極密度は6.4であった。また、(0001)面方位の体積分率は、10度以内が6.75%、15度以内が13.96%であった。以上より、α−アルミナ結晶層を構成するα−アルミナ結晶の(0001)面が、モリブデン基板の表面に対して、略平行に配向していることが分かる。
実施例4−2(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例4−1により得られた積層材料(Z1)を、大気雰囲気中、900℃で5時間加熱し、積層材料(Z2)を得た。
その後、実施例4−1と同様にして、結晶方位解析を行った(図19(a)及び(b)参照)。図19(a)において、極の分布が同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、図19(a)では、(0001)面がα−アルミナ結晶層の表面から(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面を基準として)約9度傾いているように見える。更に、図19(b)においては、最大極密度は(0001)面から(11−20)面に約8度傾いた位置にあり、最大極密度は6.0であった。また、(0001)面方位の体積分率は、10度以内が7.19%、15度以内が14.22%であった。以上より、α−アルミナ結晶層を構成するα−アルミナ結晶の(0001)面が、モリブデン基板の表面に対して、略平行に配向していることが分かる。
実施例4−3(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例4−1により得られた積層材料(Z1)を、大気雰囲気中、1300℃で5時間加熱し、積層材料(Z3)を得た。
その後、実施例4−1と同様にして、結晶方位解析を行った(図20(a)及び(b)参照)。図20(a)において、極の分布が同心円状にあるように見えることから、繊維集合組織が形成されていることが分かる。また、図20(a)では、(0001)面がα−アルミナ結晶層の表面から(α−アルミナ結晶層を形成した基板の表面を基準として)約4度傾いているように見える。更に、図20(b)においては、最大極密度は(0001)面から(11−20)面に約3度傾いた位置にあり、最大極密度は9.1であった。また、(0001)面方位の体積分率は、10度以内が9.72%、15度以内が16.18%であった。以上より、α−アルミナ結晶層を構成するα−アルミナ結晶の(0001)面が、モリブデン基板の表面に対して、略平行に配向していることが分かる。
上記の実施例4−2及び4−3で得られた積層材料(Z2)及び(Z3)は、それぞれ、実施例4−1により得られた積層材料(Z1)を、大気雰囲気中、それぞれ、900℃及び1300℃で、いずれも5時間の熱処理を行って得られた積層材料であり、体積分率は上記の通りである。図21は、積層材料(Z1)を、大気雰囲気中、1000℃で、5時間の熱処理を行って得られた積層材料の体積分率のデータ(10度以内は9.00%、15度以内は17.25%)を含む、熱処理温度と、(0001)面方位の体積分率との関係を示すグラフであるが、熱処理の効果はわずかであることが分かる。
実施例5−1(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
モリブデン基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θを90度とし、エアロゾル搬送用窒素ガスの流量を0L/分とした以外は、実施例4−1と同様の操作を行い、モリブデン基板の鏡面側表面にα−アルミナ結晶層を備える積層材料(T1)を得た。実施例4−1と同様にして測定した(0001)面方位の体積分率は、10度以内が6.31%、15度以内が12.46%であった(表3参照)。
実施例5−2(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−1により得られた積層材料(T1)を、大気雰囲気中、900℃で5時間加熱し、積層材料(T2)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が8.53%、15度以内が16.62%であった(表3参照)。
実施例5−3(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−1により得られた積層材料(T1)を、大気雰囲気中、1000℃で5時間加熱し、積層材料(T3)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が7.42%、15度以内が14.29%であった(表3参照)。
実施例5−4(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−1により得られた積層材料(T1)を、大気雰囲気中、1200℃で5時間加熱し、積層材料(T4)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が13.02%、15度以内が23.24%であった(表3参照)。
実施例5−5(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−1により得られた積層材料(T1)を、大気雰囲気中、1300℃で5時間加熱し、積層材料(T5)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が12.50%、15度以内が20.19%であった(表3参照)。
実施例5−6(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−1により得られた積層材料(T1)を、大気雰囲気中、1300℃で25時間加熱し、積層材料(T6)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が11.52%、15度以内が21.27%であった(表3参照)。
実施例5−7(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
モリブデン基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θを90度とし、エアロゾル搬送用窒素ガスの流量を3L/分とした以外は、実施例4−1と同様の操作を行い、モリブデン基板の鏡面側表面にα−アルミナ結晶層を備える積層材料(T7)を得た。実施例4−1と同様にして測定した(0001)面方位の体積分率は、10度以内が6.23%、15度以内が12.34%であった(表3参照)。
実施例5−8(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−7により得られた積層材料(T7)を、大気雰囲気中、900℃で5時間加熱し、積層材料(T8)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が7.53%、15度以内が14.63%であった(表3参照)。
実施例5−9(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−7により得られた積層材料(T7)を、大気雰囲気中、1000℃で5時間加熱し、積層材料(T9)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が8.68%、15度以内が16.69%であった(表3参照)。
実施例5−10(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−7により得られた積層材料(T7)を、大気雰囲気中、1200℃で5時間加熱し、積層材料(T10)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が10.54%、15度以内が19.73%であった(表3参照)。
実施例5−11(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−7により得られた積層材料(T7)を、大気雰囲気中、1300℃で5時間加熱し、積層材料(T11)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が11.41%、15度以内が20.69%であった(表3参照)。
実施例5−12(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−7により得られた積層材料(T7)を、大気雰囲気中、1300℃で25時間加熱し、積層材料(T12)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が12.23%、15度以内が21.44%であった(表3参照)。
実施例5−13(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
モリブデン基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θを90度とし、エアロゾル搬送用窒素ガスの流量を10L/分とした以外は、実施例4−1と同様の操作を行い、モリブデン基板の鏡面側表面にα−アルミナ結晶層を備える積層材料(T13)を得た。実施例4−1と同様にして測定した(0001)面方位の体積分率は、10度以内が5.92%、15度以内が12.13%であった(表3参照)。
実施例5−14(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−13により得られた積層材料(T13)を、大気雰囲気中、900℃で5時間加熱し、積層材料(T14)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が7.27%、15度以内が14.15%であった(表3参照)。
実施例5−15(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−13により得られた積層材料(T13)を、大気雰囲気中、1000℃で5時間加熱し、積層材料(T15)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が6.19%、15度以内が12.23%であった(表3参照)。
実施例5−16(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−13により得られた積層材料(T13)を、大気雰囲気中、1200℃で5時間加熱し、積層材料(T16)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が8.89%、15度以内が17.18%であった(表3参照)。
実施例5−17(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−13により得られた積層材料(T13)を、大気雰囲気中、1300℃で5時間加熱し、積層材料(T17)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が9.34%、15度以内が16.74%であった(表3参照)。
実施例5−18(モリブデン基板を用いた結晶配向セラミックス積層材料の製造)
実施例5−13により得られた積層材料(T13)を、大気雰囲気中、1300℃で25時間加熱し、積層材料(T18)を得た。上記と同様にして、(0001)面方位の体積分率を求めたところ、10度以内が8.76%、15度以内が16.46%であった(表3参照)。
表3において、「low」、「middle」及び「high」は、それぞれ、エアロゾル搬送用窒素ガスの流量を0、3及び10L/分としたことを示す。
図22は、実施例5−1〜5−5、5−7〜5−11、及び、5−13〜5−17により得られた積層材料(T1)〜(T5)、(T7)〜(T11)及び(T13)〜(T17)の熱処理温度と(0001)面方位15度以内の体積分率との関係を示すグラフであり、基板に対するエアロゾルの吹き付け角度θが60度の場合に比べて、高い結晶配向性は、熱処理温度に依存していることが分かる。
本発明の結晶配向セラミックス積層材料は、防食膜、切削用工具等に好適である。
10:結晶配向セラミックス積層材料
11:基部
12:α−アルミナ結晶層
20:結晶配向セラミックス積層材料製造装置(α−アルミナ結晶層形成装置)
21:エアロゾル発生機
22:エアロゾル搬送用配管
23:製膜室
25:粉体噴射用ノズル
27:基材
29:真空ポンプ
31:粉体容器
33:α−アルミナ結晶微粒子(α−アルミナ粉体)
35:粉体撒き上げ用ガス供給部
37:エアロゾル搬送用ガス供給部
39:ヒーター

Claims (9)

  1. 無機材料からなる基部と、該基部の表面に形成されたα−アルミナ結晶からなる層とを備える積層材料であって、
    前記α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面が、前記基部の表面に対して略平行に配向していることを特徴とする結晶配向セラミックス積層材料。
  2. 前記α−アルミナ結晶における表面エネルギーの低い結晶面が、該α−アルミナ結晶の底面である(0001)面である請求項1に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
  3. 前記α−アルミナ結晶の底面方位15度以内の体積分率が9%以上である請求項2に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
  4. 前記無機材料が、金属又は無機化合物である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
  5. 前記金属が、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム合金、Fe基合金、Ni基合金及びCo基合金から選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
  6. 前記無機化合物が、ムライト、アルミナ又はチタン酸イットリウムである請求項4に記載の結晶配向セラミックス積層材料。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法であって、
    無機材料からなる基材に向けて、α−アルミナ結晶からなる微粒子を含むエアロゾルを噴射して、α−アルミナ結晶微粒子を前記基材の表面に堆積させる噴射工程を備えることを特徴とする結晶配向セラミックス積層材料の製造方法。
  8. 前記α−アルミナ結晶微粒子が、80℃〜200℃の温度に予熱されている請求項7に記載の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法。
  9. 前記噴射工程の後、前記α−アルミナ結晶微粒子が堆積している基材を、800℃〜1700℃の温度で処理する熱処理工程を備える請求項7又は8に記載の結晶配向セラミックス積層材料の製造方法。
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