JP2018082154A - 構造物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、イットリウムのオキシフッ化物を含む焼結体を、真空や窒素雰囲気などの不活性雰囲気下で焼成することが検討されている(特許文献5、6)。この方法では、不活性雰囲気下での焼成により、得られる焼結体にイットリア(Y2O3)が混入してしまうことを抑えることができる。しかし、焼結体では、焼結に伴う粒成長により、結晶構成粒子が大きくなるため、パーティクルが大きくなりやすいという課題がある。
また、例えば、希土類元素のオキシフッ化物を原料として溶射膜を形成することも検討されている(特許文献7)。しかし、溶射では、加熱時に大気中の酸素によって酸化が生じる。そのため、得られた溶射膜中にY2O3が混入し、組成の制御が難しいことがある。また、溶射膜には、依然として緻密性に課題がある。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、耐プラズマ性を高めることができる構造物を提供することを目的とする。
本願発明者らは、イットリウムオキシフッ化物を含む構造物において、ピーク強度比γ/δと耐プラズマ性との関係を見出した。ピーク強度比γ/δを0%以上150%以下とすることで、耐プラズマ性を高めることができる。
本願発明者らは、イットリウムフッ化物を含む構造物において、ピーク強度比α/βと耐プラズマ性との関係を見出した。ピーク強度比α/βを0%以上100%未満とすることで、耐プラズマ性を高めることができる。
第4の発明は、第1の発明において、前記ピーク強度比γ/δは、110%以下である構造物である。
この構造物によれば、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
この構造物によれば、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
第7の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記平均結晶子サイズは、30ナノメートル未満である構造物である。
第8の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記平均結晶子サイズは、20ナノメートル未満である構造物である。
これらの構造物によれば、平均結晶子サイズが小さいことにより、プラズマによって構造物から発生するパーティクルを小さくすることができる。
第10の発明は、第2の発明において、X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記αに対する前記εの割合が1%未満である構造物である。
これらの構造物によれば、構造物に含まれるY2O3が微少であるため、CF系プラズマによるフッ化が抑制され、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
この構造物によれば、Y2O3が実質的に含まれないため、CF系プラズマによるフッ化が抑制され、耐プラズマ性をさらに高めることができる。
図1は、実施形態に係る構造物を有する部材を例示する断面図である。
図1に示すように、部材10は、例えば基材15と、構造物20と、を有する複合構造物である。
部材10は、例えば、チャンバを有する半導体製造装置用の部材であり、チャンバ内部に設けられる。チャンバの内部にはガスが導入されプラズマが生じるため、部材10には耐プラズマ性が要求される。なお、部材10(構造物20)は、チャンバの内部以外に用いられてもよいし、半導体製造装置は、アニール、エッチング、スパッタリング、CVDなどの処理を行う任意の半導体製造装置(半導体処理装置)を含む。また、部材10(構造物20)は、半導体製造装置以外の部材に用いられてもよい。
まず、イットリウムオキシフッ化物を含む構造物20に対してX線回折(θ−2θスキャン)を行う。X線回折により回折角2θ=32.0°付近において検出されるピーク強度をγとし、X線回折により回折角2θ=32.8°付近において検出されるピーク強度をδとし、ピーク強度比γ/δ(δに対するγの比)を算出する。
まず、YF3の含む構造物20に対してX線回折(θ−2θスキャン)を行う。X線回折により回折角2θ=24.3°付近において検出されるピーク強度をαとし、X線回折により回折角2θ=25.7°付近において検出されるピーク強度をβとし、ピーク強度比α/β(βに対するαの比)を算出する。
平均結晶子サイズとして、以下のシェラーの式により、結晶子サイズを算出することができる。
D=Kλ/(βcosθ)
ここで、Dは結晶子サイズであり、βはピーク半値幅(ラジアン(rad))であり、θはブラッグ角(rad)であり、λは測定に用いたX線の波長である。
シェラーの式において、βは、β=(βobs−βstd)により算出される。βobsは、測定試料のX線回折ピークの半値幅であり、βstdは、標準試料のX線回折ピークの半値幅である。Kはシェラー定数である。イットリウムのオキシフッ化物において、結晶子サイズの算出に用いることができるX線回折ピークは、例えば、回折角2θ=28.1°付近のイットリウムのオキシフッ化物の斜方晶に起因するピーク、回折角2θ=46.9°付近のイットリウムのオキシフッ化物の斜方晶に起因するピーク、などである。また、イットリウムフッ化物において、結晶子サイズの算出に用いることができるX線回折ピークは、例えば、回折角2θ=25.7°付近のイットリウムフッ化物の斜方晶に起因するピーク、回折角2θ=27.8°付近のイットリウムフッ化物の斜方晶に起因するピーク、回折角2θ=30.8°付近のイットリウムフッ化物の斜方晶に起因するピーク、などである。
なお、TEM観察などの画像から、結晶子サイズを算出してもよい。例えば、平均結晶子サイズには、結晶子の円相当直径の平均値を用いることができる。
「エアロゾルデポジション法」は、脆性材料などを含む微粒子をガス中に分散させた「エアロゾル」をノズルから基材に向けて噴射し、金属やガラス、セラミックスやプラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子に変形や破砕を起させしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料を含む構造物(例えば層状構造物または膜状構造物)をダイレクトに形成させる方法である。この方法によれば、特に加熱手段や冷却手段などを必要とせず、常温で構造物の形成が可能であり、焼結体と同等以上の機械的強度を有する構造物を得ることができる。また、微粒子を衝突させる条件や微粒子の形状、組成などを制御することにより、構造物の密度や機械強度、電気特性などを多様に変化させることが可能である。
なお、本願明細書において「常温」とは、セラミックスの焼結温度に対して著しく低い温度で、実質的には0〜100℃の室温環境をいう。
本願明細書において「粉体」とは、前述した微粒子が自然凝集した状態をいう。
図2は、構造物の原料を例示する表である。
本検討においては、図2に示した原料F1〜F11の11種類の粉体が用いられる。これらの原料は、YF3を含む粉体である。また、原料F5〜F11は、11.2(重量パーセント濃度:wt%)以下の範囲で酸素を含有しており、1:1:2のYOF(例えば、Y5O4F7、Y7O6F9などのイットリウムオキシフッ化物)を含む。一方、これらの原料では酸素含有量が比較的少ないため、Y2O3及びYOF(モル比がY:O:F=1:1:1)を実質的に含まない。
また、YOF(モル比がY:O:F=1:1:1)を実質的に含まないとは、X線回折において、回折角2θ=13.8°付近または36°付近のYOF(モル比がY:O:F=1:1:1)に起因するピーク強度が、回折角2θ=32.8°付近の1:1:2のYOFに起因するピーク強度、または、回折角2θ=24.3°付近のYF3に起因するピーク強度の1%未満であることをいう。なお、2θ=13.8°付近とは、例えば13.8±0.4°程度(13.4°以上14.2°以下)である。2θ=36°付近とは、例えば36°±0.4°程度(35.6°以上36.4°以下)である。
これらの原料と、製膜条件(キャリアガスの種類及び流量)と、の組み合わせを変化させて複数の構造物(層状構造物)のサンプルを作製し、耐プラズマ性の評価を行った。なお、この例では、サンプルの作製にはエアロゾルデポジション法を用いている。
図3に示すように、キャリアガスには、窒素(N2)又はヘリウム(He)が用いられる。エアロゾルは、エアロゾル発生器内において、キャリアガスと原料粉体(原料微粒子)とが混合されることで得られる。得られたエアロゾルは、圧力差によってエアロゾル発生器に接続されたノズルから、製膜チャンバの内部に配置された基材に向けて噴射される。この際、製膜チャンバ内の空気は真空ポンプによって外部に排気されている。キャリアガスの流量は、窒素の場合、2.5(リットル/分:L/min)〜10(L/min)であり、ヘリウムの場合、5(L/min)程度である。
XRD装置としては「X‘PertPRO/パナリティカル製」を使用した。管電圧45kV、管電流40mA、Step Size 0.033°、Time per Step 336秒以上を使用した。
平均結晶子サイズとして、上述のシェラーの式による結晶子サイズを算出した。シェラーの式中のKの値として0.94を用いた。
図3に示すように、ピーク強度比α/βは、原料と製膜条件との組み合わせによって大きく変化する。
耐プラズマの評価には、プラズマエッチング装置と表面形状測定器を用いた。
プラズマエッチング装置には「Muc−21 Rv−Aps−Se/住友精密工業製」を使用した。プラズマエッチングの条件は、電源出力としてICP出力を1500W、バイアス出力を750W、プロセスガスとしてCHF3100ccmとO210ccmの混合ガス、圧力を0.5Pa、プラズマエッチング時間を1時間とした。
すなわち、YF3の(100)面のピーク強度(α)に対して、(020)面のピーク強度(β)を相対的に高くすることで、耐プラズマ性が向上する。
一方、YF3やイットリウムオキシフッ化物は劈開性を有するため、例えば、原料の微粒子は、機械的衝撃の付与により劈開面に沿って割れやすい。そのため、機械的衝撃力により製膜時に微粒子が劈開面に沿って割れ、構造物が特定の結晶方向に配向すると考えられる。
図4には、図3に関して説明したサンプル12〜24を示す。また、図4において、原料、製膜条件及び耐プラズマ性については、図3に関する説明と同様である。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
Claims (11)
- 斜方晶の結晶構造を有するイットリウムオキシフッ化物の多結晶体を主成分とし、前記多結晶体における平均結晶子サイズが100ナノメートル未満である構造物であって、X線回折により回折角2θ=32.0°付近において検出されるピーク強度をγとし、回折角2θ=32.8°付近において検出されるピーク強度をδとしたときに、ピーク強度比γ/δは、0%以上150%以下である構造物。
- イットリウムフッ化物の多結晶体を含み、前記多結晶体における平均結晶子サイズが100ナノメートル未満である構造物であって、X線回折により回折角2θ=24.3°付近において検出されるピーク強度をαとし、回折角2θ=25.7°付近において検出されるピーク強度をβとしたときに、ピーク強度比α/βは、0%以上100%未満である構造物。
- 前記ピーク強度比γ/δは、120%以下である請求項1記載の構造物。
- 前記ピーク強度比γ/δは、110%以下である請求項1記載の構造物。
- 前記構造物は、イットリウムフッ化物の多結晶体をさらに含み、
X線回折により回折角2θ=24.3°付近において検出されるピーク強度をαとし、回折角2θ=25.7°付近において検出されるピーク強度をβとしたときに、ピーク強度比α/βは、0%以上100%未満である請求項1記載の構造物。 - 前記平均結晶子サイズは、50ナノメートル未満である請求項1〜5のいずれか1つに記載の構造物。
- 前記平均結晶子サイズは、30ナノメートル未満である請求項1〜5のいずれか1つに記載の構造物。
- 前記平均結晶子サイズは、20ナノメートル未満である請求項1〜5のいずれか1つに記載の構造物。
- X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記δに対する前記εの割合が1%未満である請求項1記載の構造物。
- X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記αに対する前記εの割合が1%未満である請求項2記載の構造物。
- X線回折により回折角2θ=29.1°付近において検出されるピーク強度をεとしたときに、前記αに対する前記εの割合が0%である請求項1〜10のいずれか1つに記載の構造物。
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