JP2015040260A - ナノコンポジット樹脂組成物 - Google Patents

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隆之 広瀬
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Abstract

【課題】 シラカップリング剤を用いることなく、無機フィラーと樹脂の密着性を向上させ、耐熱性、熱伝導性、強度を向上させ、制御して、長期信頼性を確保したナノコンポジット樹脂組成物を得る。【解決手段】 熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、粒径が異なる少なくとも二種類の無機フィラーとを含んでなるナノコンポジット樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有し、前記無機フィラーが、表面にアミノ基が導入された無機粒子を含む、ナノコンポジット樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、高耐熱性、高熱伝導性、高強度の樹脂材料を得るためのナノコンポジット樹脂組成物に関する。
近年、大容量、高電圧環境下でも動作可能なIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などのパワーモジュールが、民生用機器や産業用機器に広範に使用されている。これらの、半導体素子を用いる各種のモジュール(以下、「半導体モジュール」という)の中には、搭載している半導体素子によって生成される熱が高温に達するものがある。その理由としては、半導体素子が扱う電力が大きい場合、半導体素子における回路の集積度が高い場合、または回路の動作周波数が高い場合などが挙げられる。この場合、半導体モジュールを構成する絶縁封止樹脂には、半導体素子の発熱温度以上のガラス転移温度(Tg)が必要となる。
樹脂のTgを向上させるためには、樹脂の分子運動を抑制することが有効である。このため、樹脂に、ナノサイズの粒子径を有する無機フィラーを混合する方法が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2)。また、一般的には、無機フィラーと樹脂との結合を強くするために、樹脂にシランカップリング剤を添加することも知られている(例えば、非特許文献1)。
一方、半導体モジュールの絶縁封止樹脂には、高耐熱性だけでなく、さまざまな物性が同時に要求される。例えば、曲げ弾性率や線膨張係数といった機械的物性、密着性、低吸湿性(低含水化)などの多くの要件を充足する必要がある。樹脂の用途によっては、さらに、熱伝導率も重要な物性となる。
これらの要件を満たすために、シランカップリング剤及び最大粒径が100μm以下の溶融シリカ被覆アルミナ粉末を添加したエポキシ樹脂組成物も知られている(特許文献3)。さらに、シランカップリング剤を用いることなく、無機フィラー表面にアミノ基を高効率で導入した、絶縁特性の高いナノコンポジット樹脂もまた知られている(特許文献4)。
特開2009−292866号公報 特開2009−13227号公報 特開平11−35801号公報 特開2012−171975号公報
シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社カタログ、2008年10月発行)
樹脂に、耐熱性、熱伝導性、強度、機械的物性、密着性、低吸湿性といった各種特性を付与するために所望の特性を有する無機フィラーを添加する場合、上記のように、無機フィラーと樹脂との結合を強めるために、一般的にシランカップリング剤が用いられてきた。しかし、シランカップリング剤を用いる場合には、無機フィラー表面にシランカップリング剤を結合させたり、樹脂に混合したりするための工程を要する。また、樹脂内に存在するシラカップリング剤が原因となって、樹脂の強度低下、耐熱性低下を招く場合がある。
中でも、樹脂の熱伝導率を高めるために、シランカップリング剤とともに、無機フィラーとしてAlやMgOを樹脂に添加した場合、これらのフィラーは、特に、シランカップリング剤の効果が得られにくい場合があった。すなわち、AlやMgOからなる無機フィラーと樹脂との界面で剥離が発生しやすくなる場合が多く、そのため、機械的物性や熱伝導率について所望の特性が得られなかったり、制御することが困難になったりする場合があるという問題があった。
一方で、未処理の無機フィラーを用いた場合には、無機フィラーと樹脂との界面の密着性が弱いために、ナノコンポジット樹脂の製造初期には無機フィラーと樹脂との界面が密着していても長期間の使用においてその界面で剥離が発生し、それに伴う特性変動・劣化、クラック発生などが生じ、長期の信頼性には問題が生じる場合があった。
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものである。すなわち、シラカップリング剤を用いることなく、無機フィラーと樹脂の密着性を向上させ、耐熱性、熱伝導性、強度を向上させ、制御して、長期信頼性を確保したナノコンポジット樹脂組成物及びこれを硬化させてなる硬化物を得ることを目的とする。
本発明は、一実施形態によれば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、粒径が異なる少なくとも二種類の無機フィラーとを含んでなるナノコンポジット樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有し、前記無機フィラーが、表面にアミノ基が導入された無機粒子を含む、ナノコンポジット樹脂組成物である。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、前記無機粒子が、SiO、ZrO、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上を含むことが好ましい。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、前記少なくとも二種類の無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子であって、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーが、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上からなる無機粒子であることが好ましい。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、前記少なくとも二種類の無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子であって、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーが、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上からなる無機粒子であることが好ましい。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、前記少なくとも二種類の無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子であって、前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上からなる無機粒子であることが好ましい。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、強化繊維をさらに含むことが好ましい。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
前記ナノコンポジット樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であることが好ましい。
本発明は、また別の実施形態によれば、前記いずれかのナノコンポジット樹脂組成物を硬化させてなる、ナノコンポジット樹脂硬化物である。
本発明は、さらにまた別の実施形態によれば、半導体素子と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板とを含む部材を、前記ナノコンポジット樹脂組成物を含んでなる封止材で封止してなる半導体装置である。
前記半導体素子が、SiC半導体素子であることが好ましい。
本発明に係るナノコンポジット樹脂組成物あるいはそれを硬化してなる樹脂硬化物においては、無機フィラーと樹脂との密着性が向上しており、その結果、機械的物性や熱伝導率特性を向上させ、及びそれらの特性を制御することができるようになった。このようなナノコンポジット樹脂組成物あるいはそれを硬化してなる樹脂硬化物は、絶縁材として長期信頼性を得ることが可能になる。また、本発明に係るナノコンポジット樹脂組成物を含む封止材は、広く使用されているSi半導体素子に加え、動作温度が高くなるSiCなどのワイドギャップ半導体素子の絶縁封止に特に有用であり、このような封止材により、Si半導体素子あるいはSiC半導体素子を封止してなる半導体装置は、絶縁特性の長期信頼性に優れる。
図1は、本発明によるナノコンポジット樹脂硬化物について、ヒートサイクル試験を行ったサンプルについて、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離の発生率を調べた結果を示すグラフである。
[第1実施形態]
本発明は、第1実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、粒径が異なる少なくとも二種類の無機フィラーとを含んでなり、前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有するものである。第1実施形態において、ナノコンポジット樹脂組成物に含まれる無機フィラーは、粒径の異なる少なくとも第一の無機フィラーと第二の無機フィラーとから構成され、これらの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子である。また、第1実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物は、シランカップリング剤を含まない。
本実施形態において、第一の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が1〜99nmの無機粒子であって、SiO、ZrOからなる群から選択される一以上の無機粒子である。したがって、SiOのみであってもよく、ZrOのみであってもよく、これらの混合物であっても良い。これらの粒径からなる無機粒子は、樹脂のガラス転移温度[Tg]の向上に寄与する。本明細書中、フィラーの平均粒径とは、BET法により測定して得られた値をいうものとする。いっぽう、フィラーの長径とは、例えば細長い針状粒子では長手方向の粒子の長さのことであり、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られた値をいうものとする。上記第一の無機フィラーの平均粒径もしくは長径は、好ましくは、5〜30nmであり、さらに好ましくは、10〜20nmである。第一の無機フィラーの形状は、典型的には球形であるが、球形に限定されず、楕円形状、針状、板状のものであってもよい。第一の無機フィラーの形状が、球形ではない場合、長径が、上記のサイズの範囲にあることが好ましい。
あるいは、第一の無機フィラーを構成する無機粒子は、好ましくは、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーである。ここでいう、粒径とは、平均粒径とは異なり、各々の無機粒子そのものの粒子の直径であり、各々の粒子を完全な球体と仮定した場合にその直径に相当する値である。粒径が1〜99nmの無機フィラーとは、最大粒径が99nm以下であり、最小粒径が1nm以上である一群の無機フィラーをいい、最大粒径及び最小粒径は、電子顕微鏡による観察で測定して得られた値をいうものとする。またここでいう長径は、例えば細長い針状粒子では長手方向の粒子の長さのことであり、同様に、電子顕微鏡による観察で測定して得られた値をいうものとする。
上記第一の無機フィラーは、多孔性(気孔率が70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または、95%以上)であってもよく、非多孔性(気孔率が70%未満、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下)であってもよい。
第二の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機粒子であって、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNからなる群から選択される一以上の無機粒子である。これらの化合物からなる無機粒子は、室温で高い電気絶縁性(1011Ω・m以上)を与え、ナノコンポジット樹脂の機械的物性や熱伝導率の特性の向上に寄与する。また、第二の無機フィラーとしては、一種類であってもよく、これらの二種類以上を混合したものであってもよい。
第二の無機フィラーの平均粒径もしくは長径は、好ましくは、10〜100μmであり、さらに好ましくは、10〜60μmである。第二の無機フィラーの形状は、典型的には球形であるが、球形に限定されず、楕円形状、針状、板状のものであってもよい。第二の無機フィラーの形状が、球形ではない場合、平均粒径ではなく、長径が100nm〜100μmであることが好ましい。
あるいは、第二の無機フィラーを構成する無機粒子は、好ましくは、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーである。ここでいう、粒径とは、平均粒径とは異なり、各々の無機粒子そのものの粒子の直径であり、各々の粒子を完全な球体と仮定した場合にその直径に相当する値である。粒径が100nm〜100μmの無機フィラーとは、最大粒径が100μm以下であり、最小粒径が100nm以上である一群の無機フィラーをいい、最大粒径及び最小粒径は、電子顕微鏡による観察で測定して得られた値をいうものとする。またここでいう長径は、例えば細長い針状粒子では長手方向の粒子の長さのことであり、同様に、電子顕微鏡による観察で測定して得られた値をいうものとする。
第二の無機フィラーもまた、多孔性(気孔率が70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または、95%以上)であってもよく、非多孔性(気孔率が70%未満、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下)であってもよい。
本実施形態による第一の無機フィラーと第二の無機フィラーは、その両方が、表面にアミノ基が導入されている無機粒子である。「アミノ基が導入されている無機粒子」とは、例えば下記の方法により無機フィラーにアミノ基を導入する操作を実施した無機粒子をいう。無機フィラーにアミノ基を導入する方法としては、無機フィラー表面の水酸基をアミノ基に置換する方法が挙げられ、かかる方法は、無機フィラー表面を加熱処理する工程と、熱処理した無機フィラーをアミノ化試薬と接触させる工程とを備える。
無機フィラー表面を加熱処理する工程は、無機フィラーを、例えば、1000℃〜1200℃の加熱炉等で、通常、10分から120分程度加熱する工程である。かかる工程により、無機フィラー表面の水酸基が除去され、アミノ基の導入が容易になる。無機フィラー表面を加熱処理する工程は、また、レーザー光の照射によっても実施することができる。ただし、加熱処理工程は、ここで示した加熱温度や時間、方法に限定するものではなく、無機フィラーの組成や材質によって適宜決定することができる。
上記加熱処理する工程の後、アミノ基の導入温度に設定した別の加熱炉に投入して、所望の温度になってからアミノ基の導入処理を行うことが好ましい。上記加熱処理工程後に水酸基の再結合が起らないようにするためである。別の加熱炉の設定温度は、例えば、約100〜300℃であり、好ましくは、約200〜260℃であるが、この温度範囲には限定されない。
無機フィラーを、別の加熱炉にて所望の温度とした後、加熱処理した無機フィラーをアミノ化試薬と接触させる工程を行う。かかる工程は、無機フィラー表面の水酸基が極力低減される条件下、すなわち、乾燥剤を用いるなどして、乾燥雰囲気にしたグローブボックス等で実施することが好ましい。
アミノ化試薬は、アンモニアそのものであってもよい。アンモニアそのものをアミノ化試薬として用いる場合、加熱処理した無機フィラーをアミノ化試薬と接触させる工程は、好ましくは、20〜500℃の温度で、10〜180分間で行う。この時のアンモニアの蒸気圧(分圧)は、0.3〜1気圧とすることが好ましい。あるいはまた、アミノ化試薬として、アンモニア発生剤も使用することができる。アンモニア発生剤は、必要に応じて加熱し、また必要に応じて適切な触媒に接触させて分解することでアンモニアを生じるものであり、例えば、ジメチルアミン、尿素、塩化アンモニウム等が挙げられる。アンモニア発生剤を使用する場合も、発生したアンモニアの分圧を、上記範囲内とすることが好ましい。
アミノ化試薬にはアミン系シランカップリング剤は含まれない。本願でアミノ化試薬として最終生成するアンモニアは、水蒸気が含まれている場合、無機フィラーの表面へのシラノール基生成を助長しないように乾燥して用いることが好ましい。乾燥剤としては、塩基性乾燥剤であることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム、ゼオライト、モレキュラーシーブ等の物理的乾燥剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム等の化学的乾燥剤を単独使用または2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
上記アミノ化試薬と接触させる工程の後、無機フィラー表面に、アミノ基が導入されていることは、例えば、赤外分光法や飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)等によって確認することができる。このように処理して得られたアミノ基を導入した無機フィラーは、処理後直ちに熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂と混合することが好ましいが、直ぐに使用しない場合は窒素雰囲気のデシケータに保管しておいてもよい。
このような無機フィラー表面の水酸基をアミノ基に置換する方法は、第一の無機フィラー、第二の無機フィラーとも、同様に実施することができる。
ナノコンポジット樹脂組成物を構成する樹脂成分は、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される1以上の分子構造を有するものであれば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。本明細書において、熱硬化性樹脂主剤と硬化剤と任意選択的に硬化促進剤とからなる熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂を総称して、樹脂成分と指称する。
熱硬化性樹脂としては、ガラス転移温度[Tg]が比較的高く、誘電率が、約4〜7といった低誘電率のものを用いることができる。好ましい熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を挙げることができるが、これらには限定されない。樹脂成分が熱硬化性樹脂であるときは、樹脂成分は、熱硬化性樹脂主剤と、硬化剤と、必要に応じて硬化促進剤とを含む。硬化促進剤は、硬化反応を制御するために有効に用いることができる。
好ましい熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂の主剤としては、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される分子構造を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂主剤自体が、これらの構造を有していなくても、硬化剤との架橋反応の過程でカルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される分子構造を形成しうるものであれば良い。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂を単独で又は複数組み合わせて使用することができる。特に、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される分子構造を、エポキシ樹脂主剤自体の分子構造に多く含む、あるいは、硬化剤と架橋して得られる硬化後の高分子化合物に多く含むようになる、といった観点から、エポキシ樹脂主剤としては、例えば、多官能型エポキシ樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂の硬化剤は、熱硬化性樹脂主剤との関係で選択することができる。例えば、熱硬化性樹脂主剤として、エポキシ樹脂主剤を用いる場合には、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。特には、硬化剤としては、酸無水物系硬化剤を好ましく用いることができる。具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤およびそれらの異性体、変成体を用いることができる。また、硬化剤は、これらのうち1種のものを単独で用いることができ、あるいは、2種以上のものを混合して用いることができる。特には、これらの硬化剤は、硬化後の高分子化合物に、カルボキシル基、エステル基といった分子構造を導入し得る点で好ましい。
硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等の芳香族フォスフィン類、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸、ホウ酸エステル等を用いることができるが、これらには限定されない。
硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂主剤のエポキシ当量及び硬化剤のアミン当量もしくは酸無水物当量から決定することができる。エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂主剤を用いる場合にも、同様に、各樹脂主剤の反応当量、硬化剤の反応当量に基づき、配合割合を決定することができる。また、硬化促進剤を用いる場合には、硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂主剤の質量を100%としたときに、0.1〜5質量%とすることが好ましい。
樹脂成分が熱可塑性樹脂であるとき、好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂を使用することができる。ポリアミド樹脂を構成する高分子化合物の末端のカルボキシル基構造により、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーの表面に導入したアミノ基との結合を形成するためである。しかし、熱可塑性樹脂は、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される分子構造を有するものであれば、ポリアミド樹脂には限定されない。
本実施形態による樹脂組成物中の第一の無機フィラー、第二の無機フィラーの混合の割合は、それぞれ、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の質量を100%としたとき、0.1〜7質量%、70〜85質量%とすることができるが、これに限定されるものではない。
本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物は、上記の樹脂成分と、無機フィラーとからなり、他の成分を含まないものであってもよい。あるいは、さらなる任意成分として、従来公知のガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維等の強化繊維を含んでいてもよい。その他、本発明の目的の範囲内でナノコンポジット樹脂組成物の物性を損なわない、その他の添加物を含んでいても良い。
本発明は、別の局面によればナノコンポジット樹脂硬化物であって、第1実施形態に係
るナノコンポジット樹脂組成物を硬化してなる。
次に、第1実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物を製造方法の観点から説明する。ナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物の製造方法は、第一の無機フィラーと第二の無機フィラーの表面にアミノ基を導入する第1の工程と、熱硬化性樹脂主剤もしくは熱可塑性樹脂と、第一の無機フィラーと第二の無機フィラーとを混合し、分散させる第2の工程と、熱硬化性樹脂硬化剤と、任意選択的に硬化促進剤とを混合する第3の工程と、第3の工程で得られた混合物を加熱硬化させる第4の工程とを備える。なお、熱可塑性樹脂を用いる場合には、第3、第4の工程を省くことができる。
第1の工程は、上記無機フィラーについて説明した表面をアミノ基に置換する方法に従って、第一の無機フィラーと第二の無機フィラーとの両方の表面にアミノ基を導入することができる。
第2の工程として、熱硬化性樹脂主剤と、第一の無機フィラーと第二の無機フィラーとを混合し、分散させる。熱硬化性樹脂主剤に代えて、熱可塑性樹脂を使用する場合も、この段階で混合する。分散には、市販の微粒化装置、粉体混合装置、もしくは超微粒子複合化装置を用いることができ、例えば、ナノマイザー株式会社製のナノマイザー(高圧湿式メディアレス微粒化装置)、ホソカワミクロン株式会社製のノビルタやナノキュラ等を用いることができるが、これらには限定されない。ナノマイザーを用いる場合の処理条件としては、処理圧力を100〜150MPaとし、5〜10分の処理を2〜5回繰り返すことで行うことができる。なお、処理圧力や処理時間は適宜変更することは可能であり、特定の値には限定されない。
続く第3の工程は、第2の工程で得られた分散させた混合物に、硬化剤と、任意選択的に硬化促進剤とを添加する工程である。第3の工程では、さらに手動撹拌により、分散させた樹脂混合物に、硬化剤と硬化促進剤を混合することができる。
第4の工程は、前記硬化剤を添加した混合物を加熱し、硬化させる加熱硬化工程である。ここでは、通常の方法にしたがって、混合物を、熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度で加熱し、硬化させる。加熱は、例えばエポキシ樹脂の場合には、100〜250℃において、1〜20時間程度行うことが好ましい。なお、樹脂成分として、熱可塑性樹脂を使用する場合には、硬化剤の添加及び加熱の必要はない。
本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物は、IGBTやMOSFET半導体装置において、半導体素子の絶縁封止樹脂に使用することができ、封止材として用いることができる。封止する半導体素子としては、広く用いられているSi半導体素子のほか、SiCなどのワイドギャップ半導体素子が挙げられる。本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物を含んでなる封止材には、その用途及び目的に合わせて、任意成分として、難燃剤、樹脂を着色するための顔料、耐クラック性を向上するための可塑剤やシリコンエラストマーをさらに添加することができる。
このような封止材を用いた半導体装置について説明すると、半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板とを含む部材を、本実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物を含んでなる封止材で封止してなる。このような半導体装置の代表的な構成については、本出願人による特開2013-004729号公報や、特開2012-191010号公報等に詳述されているものであってよい。
第1実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物は、より含有量が多い第二の無機フィラーとして、アミノ基が導入された、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNからなる群から選択される一以上の無機粒子を用い、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有する樹脂成分を組み合わせることで、第二の無機フィラーと樹脂の結合をより良好にすることができ、ナノコンポジット樹脂の機械的物性や熱伝導率の特性の向上に寄与する、といった利点がある。
[第2実施形態]
本発明は、第2実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、粒径が異なる少なくとも二種類の無機フィラーとを含んでなり、前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有するものである。第2実施形態においても、ナノコンポジット樹脂組成物に含まれる無機フィラーは、粒径の異なる少なくとも第一の無機フィラーと第二の無機フィラーとから構成され、これらの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子である。第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物もまた、シランカップリング剤を含まない。
本実施形態において、第一の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が1〜99nmの無機粒子であって、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNからなる群から選択される一以上の無機粒子である。あるいは、第一の無機フィラーを構成する無機粒子は、あるいは、粒径もしくは長径が1nm〜99nmである。ここでいう、粒径とは、平均粒径とは異なり、各々の無機粒子そのものの粒子の直径であり、各々の粒子を完全な球体と仮定した場合にその直径に相当する値である。
そして、第二の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が100nm〜100μmのSiO、ZrOからなる群から選択される一以上の無機粒子である。あるいは、第二の無機フィラーを構成する無機粒子は、あるいは、粒径もしくは長径が100nm〜100μmである。ここでいう、粒径とは、平均粒径とは異なり、各々の無機粒子そのものの粒子の直径であり、各々の粒子を完全な球体と仮定した場合にその直径に相当する値である。
第2実施形態においても、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーには、アミノ基が導入されており、そのアミノ基の導入方法は、第1実施形態において説明したとおりである。また、多孔性等の性質も、第1実施形態において説明したのと同様であってよい。
第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物において、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーと混合する樹脂成分は、第1実施形態において説明したとおりであり、同様の形態とすることができる。また、強化繊維などの任意成分も、第1実施形態と同様とすることができる。
第2実施形態による樹脂組成物中の第一の無機フィラー、第二の無機フィラーの混合の割合もまた、第1実施形態と同様とすることができ、それぞれ、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の質量を100%としたとき、0.1〜7質量%、70〜85質量%であるが、これに限定されるものではない。
第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物の製造方法もまた、第1実施形態において説明したのと概ね同様である。そして、第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物もまた、硬化することにより樹脂硬化物とすることができ、半導体装置の絶縁封止のための封止材として用いることができる。封止材として用いる場合に添加することができる任意成分は、第1実施形態で説明したものと同様とすることができる。さらに、第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物を含んでなる封止材により封止してなる半導体装置も同様にして得ることができる。
第2実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物は、熱伝導率が高い、アミノ基が導入されたAl、MgO、TiO、ZnO、AlNなどの無機粒子が、より粒径の小さい第一の無機フィラーとして使用されて樹脂内で微細に分散され、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有する樹脂成分を組み合わせることで、熱伝導の均一性と剥離しにくい特性とを併せ持つナノコンポジット樹脂として期待できる。
[第3実施形態]
本発明は、第3実施形態によれば、ナノコンポジット樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、粒径が異なる少なくとも二種類の無機フィラーとを含んでなり、前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有するものである。第3実施形態においても、ナノコンポジット樹脂組成物に含まれる無機フィラーは、粒径の異なる少なくとも第一の無機フィラーと第二の無機フィラーとから構成され、これらの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子である。第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物もまた、シランカップリング剤を含まない。
本実施形態において、第一の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が1〜99nmの無機粒子であって、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNからなる群から選択される一以上の無機粒子である。また、第二の無機フィラーは、平均粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機粒子であって、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNからなる群から選択される一以上の無機粒子である。より詳細には、第3実施形態において、第二の無機フィラーは、第1実施形態における第二の無機フィラーと同様とすることができ、第一の無機フィラーは、第2実施形態における第一の無機フィラーと同様とすることができる。
第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物において、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーと混合する樹脂成分は第1実施形態において説明したとおりであり、同様の形態とすることができる。また、強化繊維などの任意成分も、第1実施形態と同様とすることができる。
第3の実施形態による樹脂組成物中の第一の無機フィラー、第二の無機フィラーの混合の割合もまた、第1実施形態と同様とすることができ、それぞれ、硬化前のナノコンポジット樹脂組成物全体の質量を100%としたとき、0.1〜7質量%、70〜85質量%であるが、これに限定されるものではない。
第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物の製造方法もまた、第1実施形態において説明したのと概ね同様である。そして、第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物もまた、硬化することにより樹脂硬化物とすることができ、半導体装置の絶縁封止のための封止材として用いることができる。封止材として用いる場合に添加することができる任意成分は、第1実施形態で説明したものと同様とすることができる。さらに、第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物を含んでなる封止材により封止してなる半導体装置も同様にして得ることができる。
第3実施形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物は、第一の無機フィラーと第二の無機フィラーともに、熱伝導率の高い、アミノ基が導入されたAl、MgO、TiO、ZnOまたはAlNから選択される無機粒子が用いられ、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有する樹脂成分を組み合わせることで、より熱伝導の均一性に優れ、剥離しにくく、長期信頼性に優れた特性を併せ持つナノコンポジット樹脂として期待できる。
上記第1実施形態から第3実施形態のさらなる変形形態として、第1の無機フィラーと第2の無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基を導入したSiOもしくはZrO、あるいはそれらの両方であるナノコンポジット樹脂組成物とすることができる。この場合、第一の無機フィラーは、第1実施形態における第一の無機フィラーと同様とすることができ、第二の無機フィラーは、第2実施形態における第二の無機フィラーと同様とすることができ、その他の点は上記第1実施形態から第3実施形態で説明したのと同様である。かかる変形形態によるナノコンポジット樹脂組成物及び硬化物は、第一および第二の無機フィラーに特にSiO粒子を適用する場合、熱・機械特性が十分であれば、高価なAlを使用しなくても良いといった利点を有する。
以下、本発明を実施例と比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
[実施例]
本発明の第1実施形態にしたがって、ナノコンポジット樹脂組成物及びナノコンポジット樹脂硬化物を製造した。実施例では、第二の無機フィラーとして、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーである平均粒径が30μmのAlを用いた。平均粒子径は、BET法により測定して得られた値である。この無機フィラー表面の水酸基をアミノ基に置換するため、次の工程を実施した。
底の浅いトレー上にAl粒子を薄く敷き詰め、それを約1100℃に保持したベーク炉に投入した。1時間後にトレーを取り出し、その後、250℃に保持したベーク炉に2時間程度放置した。その後、アンモニア雰囲気の容器内にトレーごと移動させた。アンモニア雰囲気は、25%アンモニア水をガラス容器に入れたものを、前記容器内に入れることで生成した。このときの温度は室温とした。30分経過後、一度トレーを取り出し、ステンレス棒でAl粒子をかき混ぜ、再度薄く敷き詰めた後、再度アンモニア雰囲気の容器に投入した。これを、5回ほど繰り返すことで、Al表面の水酸基をアミノ基に置換した。
第一の無機フィラーとしては、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーである平均粒径が12nmのSiO粒子を準備した。この第一の無機フィラーも、第二の無機フィラーと同じ方法を実施して、表面にアミノ基を導入した。
エポキシ樹脂主剤にはビスフェノールA型エポキシ樹脂(品番:828、三菱化学社製)を用いた。そして、ナノコンポジット樹脂組成物の総質量を100%としたときに、第一の無機フィラーの配合割合が3質量%、第二の無機フィラーの配合割合が、85質量%となるように、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーを、エポキシ樹脂主剤に混合した。
次に、この混合物を攪拌することによって、第一の無機フィラー及び第二の無機フィラーを樹脂内で分散させた。ここでは、ナノマイザー株式会社製のナノマイザーを用いて分散させた。その際、処理圧力を130MPaとし、1回6分の処理を3回繰り返した。分散後の混合物に硬化剤と硬化促進剤を混合し、手動で攪拌した。硬化剤には酸無水物硬化剤(品番:307、三菱化学社製)、硬化促進剤にはイミダゾール(品番:EMI24、三菱化学社製)を用いた。硬化剤、硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂主剤の質量を100%としたときに、0.1〜5質量%とすることが好ましい。撹拌後、硬化処理を実施した。処理条件は80℃で3時間保持した後、150℃で6時間保持することで実施した。
[比較例1]
比較例では、上記実施例において用いた第一および第二の無機フィラーと同じ平均粒径が12nmのSiO粒子、平均粒径が30μmのAl粒子を、アミノ基の導入処理を行うことなく、そのまま使用した。それ以外は実施例と同様の組成および方法で、比較例1のナノコンポジット樹脂を得た。
[比較例2]
比較例1に対し、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製、品番:Z−6011)を、フィラー質量に対して、1質量%となるように混合し、それ以外は実施例と同様の組成および方法で比較例2のナノコンポジット樹脂を得た。
[試験例]
実施例と比較例1、比較例2のナノコンポジット樹脂硬化物について、ヒートサイクル試験を行った。この試験は、長期間の使用後の界面剥離を確認する目的で行った。低温側は、−40℃で30分保持、高温側は150℃で30分保持を1サイクルとし、これを1000サイクル実施した。試験途中のサンプルを抜取り、第一無機フィラー及び第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離の発生率を調べた。界面剥離の発生率とは、樹脂硬化物の断面観察によって剥離発生数を観察することによって求めた。具体的には樹脂硬化物を切断、研磨することによって断面を出し、電子顕微鏡によって無機フィラーと樹脂の界面を観察し、100個の界面のうちの剥離している個数を数え、発生率とした。第一無機フィラー及び第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離の発生率を示すグラフを図1に示す。
実施例では、1000サイクルの試験で、第一及び第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離の発生はなかった。比較例1では、試験前から、すでに半分の試験片で界面剥離が発生しており、試験サイクル数の増加とともに剥離の発生率が増加し、500サイクル後には、全サンプルで第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離が発生していた。比較例2でも試験前に約30%の試験片で既に剥離が発生し、1000サイクルでは約60%に剥離が発生した。
なお、第一の無機フィラーの粒径を7nm、または30nmとした場合、第二の無機フィラーとしてAlに替えてMgOとした場合、第二の無機フィラーのAl及びMgOの粒径を、それぞれについて、10μm、または60μmとした場合の樹脂硬化物も製造した。結果は詳細に示していないが、いずれも同様に、1000サイクルの試験での界面剥離の発生はなかった。
実施例と、比較例1、比較例2のナノコンポジット樹脂硬化物について、曲げ試験方法によって曲げ弾性率を評価した。評価対象は、それぞれの硬化物について、ヒートサイクル試験を行う前のサンプルと、1000サイクル後のサンプルとした。ヒートサイクル試験前のサンプルの曲げ弾性率は、実施例では15GPaであったが、比較例1では10GPa、比較例2では13GPaとなり、比較例では実施例より低い値を示した。1000サイクル後のサンプルの曲げ弾性率は、実施例では変化は見られなかった。また、上述の範囲で第一の無機フィラーの粒径、第二の無機フィラーの粒径、及び第二の無機フィラーの化合物の種類を変えたものでも、同様に1000サイクル後のサンプルの曲げ弾性率は変化しなかった。一方、比較例1のサンプルでは、曲げ弾性率がヒートサイクル試験前の10GPaから7GPa程度に低下していた。また、比較例2のサンプルでは、曲げ弾性率がヒートサイクル試験前の13GPaから10GPa程度に低下していた。第二の無機フィラーと樹脂との界面剥離が、曲げ弾性率に影響していると推測される。
ヒートサイクル試験による界面剥離の発生は長期間の使用によって特性が変化しやすいことを示す。よって、比較例の樹脂硬化物では、長期信頼性に問題があることが示された。一方、実施例ではヒートサイクル試験で界面剥離の発生は見られなかった。すなわち、長期間の使用によって特性変化がなく、長期信頼性が得られることがわかった。
本発明によるナノコンポジット樹脂組成物は、半導体モジュールの絶縁封止、太陽電池
などの電気部品、電気製品といった、発熱温度が高くなるおそれがある機器において有効
に使用することができる。特には、本発明によるナノコンポジット樹脂組成物は、動作温度が高くなるSiC半導体素子を用いた半導体モジュールの絶縁封止樹脂として有効に用いられる。

Claims (11)

  1. 熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、粒径が異なる少なくとも二種類の無機フィラーとを含んでなるナノコンポジット樹脂組成物であって、
    前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が、カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物、エステル基から選択される一以上の分子構造を有し、
    前記無機フィラーが、表面にアミノ基が導入された無機粒子を含む、ナノコンポジット樹脂組成物。
  2. 前記無機粒子が、SiO、ZrO、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上を含む、請求項1に記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  3. 前記少なくとも二種類の無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、
    前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子であって、
    前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーが、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上からなる無機粒子である、請求項1に記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  4. 前記少なくとも二種類の無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、
    前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子であって、
    前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーが、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上からなる無機粒子である、請求項1に記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  5. 前記少なくとも二種類の無機フィラーが、粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとを含み、
    前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、表面にアミノ基が導入された無機粒子であって、
    前記粒径もしくは長径が1nm〜99nmの無機フィラーと、前記粒径もしくは長径が100nm〜100μmの無機フィラーとの両方が、Al、MgO、TiO、ZnO、AlNから選択される一以上からなる無機粒子である請求項1記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  6. 強化繊維をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  7. 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1〜6のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂である、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物を硬化させてなる、ナノコンポジット樹脂硬化物。
  10. 半導体素子と、前記半導体素子の一方の面に接合された絶縁基板と、前記半導体素子の他方の面に接合された外部回路との接続用プリント基板とを含む部材を、請求項1〜8のいずれかに記載のナノコンポジット樹脂組成物を含んでなる封止材で封止してなる半導体装置。
  11. 前記半導体素子が、SiC半導体素子である、請求項10に記載の半導体装置。
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