JP2015036376A - 血中トリグリセライド低下剤 - Google Patents
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現在、高トリグリセライド血症の治療には、フィブラート系薬剤(例えば、2−メチル−2−(4−クロロフェノキシ)プロピオン酸エチル)がよく用いられているが、副作用として一過性の肝機能障害を引き起こしやすい。
例えば、特許文献1には、グロビン蛋白分解物中から単離されたVal-Val-Try-Proのペプチドを有効成分として含む血中トリグリセライド濃度上昇抑制剤が提案されている。
例えば、特許文献2には、ダンマラン型サポニンのアグリコン体であるプロトパナキサトリオール、パナキサトリオール、プロトパナキサトリオール及びパナキサジオールの少なくともいずれかを含有することを特徴とする中性脂肪量調整剤が提案されている。
本発明は、血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤及び脂質代謝改善剤から選択されるいずれかを提供しようとするものである。
すなわち、本発明は、カゼイン分解物を有効成分として含有する血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤及び脂質代謝改善剤から選択されるいずれかを提供するものである。
また、前記カゼイン分解物が、カゼインの蛋白質加水分解酵素による加水分解物であってもよい。
前記カゼイン分解物の分子量が1000Da以下であってもよい。
<非蛋白態窒素比率の算出方法>
ケルダール法日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定した。また、ラッパポート(Rappaport)−梅田変法(臨床検査、第9巻、第534乃至537頁、1965年)に基づく測定キット(商品名:NPN−テストワコー;和光純薬工業社製)を使用し、該測定キットの説明書に従って試料の非蛋白態窒素量を測定し、得られた値に6.38を乗じて非蛋白態窒素化合物量を算出した。これらの測定値から非蛋白態窒素比率(%)を次式により算出する。
非蛋白態窒素比率(%)=(非蛋白態窒素化合物量/全窒素量)×100
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6規定の塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6規定の塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸自動分析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定した。
上記の方法により試料中の各アミノ酸の組成を測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を上記の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出する。これらの値から、試料中の遊離アミノ酸含有率を次式により算出した。
アミノ酸遊離率(%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100
本開示におけるカゼイン分解物の分子量は、以下の数平均分子量の概念により求めるものである。
数平均分子量(Number Average of Molecular Weight)は、例えば文献(社団法人高分子学会編、「高分子科学の基礎」、第116〜119頁、株式会社東京化学同人、1978年)に記載されているとおり、高分子化合物の分子量の平均値を次のとおり異なる指標に基づき示すものである。
すなわち、タンパク質加水分解物等の高分子化合物は不均一な物質であり、かつ分子量に分布があるため、タンパク質加水分解物の分子量は、物理化学的に取り扱うためには、平均分子量で示す必要があり、数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、分子の個数についての平均であり、ペプチド鎖iの分子量がMiであり、その分子数をNiとすると、次の式により定義される。
すなわち、本発明に用いられるカゼイン分解物は、蛋白質であるカゼインを出発原料として加水分解された分解物であることが好適である。
また、プロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及び酸性プロテアーゼに分類される。このうち中性プロテアーゼを用いるのが好適である。
このうち、スブチリシン(subtilisin:例えば、ビオプラーゼ)、トリプシン(trypsin:例えばPTN6.0S)、バシロシン(bachillolysin:例えばプロテアーゼN)から選ばれる1種又は2種以上のものが好適であり、これらは中性のプロテアーゼである。さらに、これら3種の組み合わせが好適である。
加水分解終了後、必要に応じて分解液のpHを、好ましくは6〜8、より好ましくは7.0±0.5、さらに好ましくは7.0±0.3とするのが好適である。
また、前記カゼイン水溶液を、熱処理にて加水分解してもよい。このカゼイン水溶液は、pH未調整でもよく、またpH調整(具体的には、酸性(pH5以下)、中性(pH6〜8)、アルカリ性(pH8以上))してもよい。熱処理は、4〜100℃程度で、上記酸アルカリ処理のような条件にて行えばよい。
例えば、得られたカゼイン加水分解物に対して分子量分画を行い、本開示の効能を高めることも可能である。これにより、カゼイン加水分解物を分子量2000Da未満又は以下にすることが好ましく、さらに分子量1000Da以下にすることが好ましい。
限外濾過の場合には、所望の限外濾過膜を使用すればよく、ゲル濾過の場合には、所望のサイズ排除クロマトグラフィーに用いるゲルろ過剤を使用すればよい。
さらに、脱塩や不純物を除去したり、純度を高めたりするために、公知の分離精製方法(例えば、イオン交換樹脂等)を用いてもよい。
従って、本開示の血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤、脂質代謝異常改善剤及び高トリグリセライド血症改善剤等は、本開示のカゼイン分解物を有効成分として含有する。
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
また、本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;疾患、症状又は状態の悪化の防止、遅延若しくは疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、或いは適用対象の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
また、食品に配合する場合には、上述の血中トリグリセライド上昇、血中LDL/HDLコレステロール比上昇、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセライド血症によって引き起こされる各種疾患等の予防、改善又は治療をコンセプトとする機能性食品、病者用食品、特定保健用食品等に応用できる。また、本開示のカゼイン分解物は、これら食品等の製造のために使用可能である。
製剤化に際しては、本開示のカゼイン分解物の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、公知の又は将来的に見出される上述の血中トリグリセライド上昇抑制作用等を有する薬、脂質代謝異常改善薬、高脂血症治療薬などを併用することも可能である。
このような食品として、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料類、これら以外の市販食品等が挙げられる。
前記即席食品類として、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
例えば、前記農産加工品として、 農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
前記水産加工品として、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
前記畜産加工品として、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
前記油脂類として、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
例えば、前記基礎調味料として、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられる。
前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
例えば、前記冷凍食品として、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
例えば、前記飲料類として、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
例えば、上記以外の市販食品として、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。
本開示のカゼイン分解物の摂取量又は投与量は、年齢、症状等により異なるが、通常、0.001〜3000mg/kg体重/日、好ましくは0.01〜200mg/kg体重/日であり、1日1回から3回に分けて投与してもよい。ヒトに対する摂取量又は投与量は、好ましくは10mg/kg体重/日である。
HED=[動物への投与量(mg/kg体重)]×{[動物の体重(kg)]÷[ヒトの体重(kg)]}0.33
ヒトの体重:60kg
マウスの体重:20g
参考文献1:Guidance for Industry, Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers, V. STEP 2: HUMAN EQUIVALENT DOSE CALCULATION, July 2005, Pharmacology and Toxicology, p.6-7 / U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER)
〔1〕 カゼイン分解物を有効成分として含有する血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤又は脂質代謝改善剤。また、高脂血症治療剤又は高トリグリセライド血症治療剤としても使用することが可能である。
〔2〕 前記カゼイン分解物が蛋白質加水分解酵素による加水分解物である前記〔1〕記載の血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤又は脂質代謝改善剤。
〔3〕 前記カゼイン分解物の分子量が1000Da以下である前記〔1〕又は〔2〕記載の血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤又は脂質代謝改善剤。
〔4〕 前記蛋白質加水分解酵素が、エンドヌクレアーゼである前記〔2〕又は〔3〕記載の血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤又は脂質代謝改善剤。
〔6〕 血中トリグリセライド低下用食品、血中LDL/HDLコレステロール比低下用食品又は脂質代謝改善剤用食品の製造のための、カゼイン分解物の使用。
〔7〕 カゼイン分解物の、血中トリグリセライド低下剤、血中LDL/HDLコレステロール比低下剤又は脂質代謝改善剤、又は血中トリグリセライド低下用食品、血中LDL/HDLコレステロール比低下用食品又は脂質代謝改善剤用食品への使用。
〔9〕 血中トリグリセライド上昇、血中LDL/HDLコレステロール比上昇、脂質代謝異常等が関与する疾病、疾患や症状、又は高脂血症、高トリグリセライド血症等の予防、改善又治療における使用のための、カゼイン分解物。
〔10〕 血中トリグリセライド上昇、血中LDL/HDLコレステロール比上昇、脂質代謝異常等が関与する疾病、疾患や症状、又は高脂血症、高トリグリセライド血症等の予防、改善又治療のための、カゼイン分解物の使用。
〔11〕 カゼイン分解物を有効成分として摂取又は投与する、血中トリグリセライド上昇、血中LDL/HDLコレステロール比上昇、脂質代謝異常等が関与する疾病、疾患や症状、又は高脂血症、高トリグリセライド血症等の予防、改善又治療方法。
〔13〕 前記〔12〕に記載のカゼイン分解物は、カゼインの蛋白質加水分解酵素による加水分解物であるのが好適である。
〔14〕 前記〔5〕〜〔13〕の何れかに記載のカゼイン分解物の分子量が1000Da以下であるのが好適である。
〔製造例1:カゼインの酵素分解によるペプチドの製造〕
市販のカゼイン(ニュージーランドデーリーボード製)100 mgに水900 mgを加え、よく分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約10%のカゼイン水溶液を調製した。
該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5に調整した後、ビオプラーゼsp-20(長瀬生化学工業社製)100活性単位(蛋白質1g当たり1200活性単位)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)170活性単位(蛋白質1g当たり2000活性単位)、及びPTN6.0S(ノボザイムズ・ジャパン社製)600活性単位(蛋白質1g当たり7000活性単位)を添加して、加水分解反応を開始した。8時間後に80℃で6分間加熱して酵素を失活させて酵素反応を停止し、10℃に冷却した。
この加水分解液を分画分子量1000の限外ろ過膜(日本ポール社製)で限外ろ過し、濃縮後凍結乾燥し、凍結乾燥品85mgを得た。
実験動物:B6.KOR/Stm Slc-Apoeshl(アポE欠損マウス:アテローム型動脈硬化症モデル、日本SLC社)、非病態動物としてB6(C57BL/6J)マウス。
実験方法:実験動物を6週齢で入荷後直ちに1.25%コレステロール、10%ココナッツオイル添加MF飼料(オリエンタル酵母工業社製)を自由摂取させた。非病態群はMF飼料を自由摂取させた。
1週間の馴化後病態動物を、カゼイン100 mg/kg体重投与群(未分解カゼイン:casein 100 mg/kg)、カゼイン分解物25 mg/kg体重投与群(casein hydrolysate 25 mg/kg)、及びカゼイン分解物100 mg/kg体重投与群(casein hydrolysate 100 mg/kg)の3群に分け、それぞれを1日1回8週間、経口ゾンデを用いて経口投与した。
最終投与終了後に、実験動物を16時間絶食させ、その後、イソフルラン麻酔下で下大静脈より採血し、12000rpm、15分間遠心分離して血漿を採取した。スポットケムII及び検診-2(アークレイ社製)を使用して、血中の総トリグリセライド濃度、総コレステロール濃度、及びHDLコレステロール濃度を測定した。
LDLコレステロール濃度は[総コレステロール濃度]−[HDLコレステロール濃度]−[中性脂肪濃度]÷5の計算式から算出した。
動脈硬化症モデルを用いた動物実験において、カゼイン分解物の経口投与は、未分解のカゼインと比較して血中トリグリセライド濃度の上昇を抑制する効果を示し、100 mg/kg体重の投与量でその濃度差は有意であった。また血中LDL/HDLコレステロール濃度比も同様の傾向を示した(図1及び2参照)。
カゼイン酵素加水分解物は、血中トリグリセライド濃度上昇抑制作用及び血中LDL/HDLコレステロール比低下作用を有するので、脂質代謝異常の予防、改善若しくは治療、又は脂質異常症の予防、改善若しくは治療に利用することができる。
Claims (5)
- カゼイン分解物を有効成分として含有する血中トリグリセライド低下剤。
- 前記カゼイン分解物が蛋白質加水分解酵素による加水分解物である請求項1記載の血中トリグリセライド低下剤。
- 前記カゼイン分解物の分子量が1000Da以下である請求項1又は2記載の血中トリグリセライド低下剤。
- カゼイン分解物を有効成分として含有する血中LDL/HDLコレステロール比低下剤。
- カゼイン分解物を有効成分として含有する脂質代謝改善剤。
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