JP2015035644A - アンテナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回路GNDがアンテナ化することによる影響を抑制し、全体として良好な垂直偏波を形成することが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】グランド部12が形成された基板11に、給電ループエレメント13が実装される。給電ループエレメント13は、一端が給電部14に接続されて他端がグランド部12に接続されている。更に、無給電ループエレメント15を備える。無給電ループエレメント15は、基板11のグランド部12から物理的に離れて配置されている。給電ループエレメント13の開口面の少なくとも一部は、無給電ループエレメント15の開口面と対向している。
【選択図】図1

Description

本発明は、無線機に内蔵されるアンテナ装置に関する。
車両のキーレスシステム等で用いられる携帯型の無線機(以下「携帯機」ともいう)には、アンテナ装置が搭載される。この種のアンテナ装置として、無線回路や回路グランド(以下「回路GND」ともいう)が実装される基板にエレメントが実装された構成のアンテナ装置がある。
従来の携帯機は、基板板面に水平な偏波を形成(放射)可能なアンテナ装置が搭載されたものが一般的である。なお、本明細書では、基板板面に垂直な偏波を「垂直偏波」と称し、基板板面に平行な偏波を「水平偏波」と称する。
しかし、水平偏波を主体とする従来のアンテナ装置では、車両と通信する際、例えば車室内でのマルチパスでヌルが発生し、通信が不安定になることがある。通信を安定化させるためには、ヌルを低減する必要がある。ヌルを低減する方法の1つとして、偏波ダイバーシティを用いる方法がある。具体的には、水平偏波用のアンテナと垂直偏波用の2つのアンテナを携帯機に搭載し、各アンテナを時分割で動作させて受信感度の最大値選択を行う。換言すれば、水平偏波で発生するヌルを垂直偏波で補間する。
垂直偏波を形成可能なアンテナとして、基板板面に対してループ面(開口面)が垂直となるようにループアンテナ(ループエレメント)が配置されてなるアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されているアンテナ装置は、基板に対してループエレメントが垂直に配置され、ループエレメントの一端は給電線を介して無線回路に接続され、他端は回路GND板に接地された構成となっている。
水平偏波用のアンテナを備えた従来のアンテナ装置に、特許文献1に記載されている垂直偏波用のアンテナを搭載すれば、偏波ダイバーシティ機能を備えたアンテナ装置を実現することが可能となる。
特開2010−239495号公報
効果的な偏波ダイバーシティを実現するためには、水平偏波用のアンテナと垂直偏波用のアンテナの利得は同等であることが望ましい。また、水平偏波用のアンテナから送信するときは水平偏波だけを送信し、垂直偏波用のアンテナから送信するときは垂直偏波だけを送信するのが望ましい。つまり、各アンテナそれぞれ、対応する偏波の偏波比が高いことが望ましい。
これに対し、特許文献1に記載のアンテナ装置は、ループエレメント自体は垂直偏波を形成することができるものの、ループエレメントが回路GNDに接続(接地)された構成であるため、ループエレメントから回路GNDへ帰還する電流により回路GNDがアンテナ化し、これにより不要な水平偏波が形成されてしまう。しかもその水平偏波の利得は、垂直偏波の利得に近いレベルとなる。つまり、垂直偏波だけでなくそれに近い利得の水平偏波も形成されてしまい、結果、アンテナ装置全体として斜め偏波が形成されることになる。
仮に、ループエレメントの他端が回路GNDに直接接続されていない構成をとったとしても、ループエレメントは、少なくともその使用周波数帯域においては、無線回路を介して間接的に回路GNDに接続された状態となっている。そのため、ループエレメントから回路GNDへ流れる電流の発生は避けがたく、利得の大きい水平偏波が形成されてしまい、所望の垂直偏波を形成することが困難となる。
垂直偏波用のアンテナを設けたものの実際には斜め偏波が発生すると、水平偏波用のアンテナと時分割で動作させても、水平偏波と斜め偏波との偏波ダイバーシティとなってしまい、偏波ダイバーシティの効果が十分に得られない。
垂直偏波用のアンテナを大型化すれば垂直偏波の利得を高めることが可能であるが、アンテナの大型化は携帯機の大型化を伴う。しかも、仮にアンテナを大型化したとしても、上述した回路GNDのアンテナ化などに起因して斜め偏波が発生するという問題は依然として残されているため、偏波比の高い垂直偏波を得るのは難しい。そのため、小型ながらも水平偏波成分の小さい(理想的にはゼロの)垂直偏波用のアンテナを実現することが望まれる。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大型化を抑制しつつ、回路GNDがアンテナ化することによる影響を抑制して全体として良好な垂直偏波を形成することが可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明のアンテナ装置は、基板と、グランド部と、給電ループエレメントと、給電部と、無給電ループエレメントとを備える。グランド部は、基板上に形成された導電性の部材である。給電ループエレメントは、基板に実装されたループ状のエレメントであって、一端がグランド部に接続され、基板の板面に垂直な開口面を有する。給電部は、給電ループエレメントの他端に接続されて給電ループエレメントへ電力を供給する。無給電ループエレメントは、グランド部と接触しないように設けられたループ状のエレメントであって、給電ループエレメントの開口面に平行な開口面を有する。そして、給電ループエレメントの開口面の少なくとも一部が、無給電ループエレメントの開口面と対向している。
このように構成されたアンテナ装置では、給電ループとは別に、グランド部と非接触の無給電ループエレメントを有し、この無給電ループエレメントにより基板の板面に垂直な偏波を放射させることができる。これにより、アンテナ装置全体として、水平偏波に対して垂直偏波の利得が相対的に非常に大きくなる。つまり、水平偏波を無視し得る程度の垂直偏波を発生させることができる。
従って、本発明のアンテナ装置によれば、大型化を抑制しつつ、グランド部がアンテナ化することにより発生する水平偏波の影響を抑制して、全体として良好な垂直偏波を形成することが可能なアンテナ装置を提供することが可能となる。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
(a)は第1実施形態の携帯機の概略構成を表す斜視図、(b)は給電ループエレメントの他端と回路GNDとの接続状態を表す説明図、(c)は携帯機内蔵のアンテナ装置の動作原理を説明するための説明図である。 無給電開ループエレメントのギャップ間隔と共振周波数との関係を説明するための説明図である。 第1実施形態のアンテナ装置の水平面指向性を表す説明図である。 給電ループエレメントと無給電開ループエレメントの各開口面の対向面積と垂直偏波の利得との関係を表す説明図である。 (a)は第2実施形態のアンテナ装置の概略構成を表す斜視図、(b)及び(c)はアンテナ装置の動作原理を説明するための説明図である。 第3実施形態のアンテナ装置の概略構成を表す斜視図である。 第3実施形態のアンテナ装置の実施例およびその性能を表す説明図である。 第3実施形態のアンテナ装置の比較例およびその性能を表す説明図である。
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態を採り得る。また、下記の実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も本発明の実施形態であり、下記の複数の実施形態を適宜組み合わせて構成される態様も本発明の実施形態である。
[第1実施形態]
(1)携帯機1の全体構成
図1(a)に示すように、本実施形態の携帯機1は、ケース(筐体)3と、ケース3に内蔵されたアンテナ装置5とを備えている。携帯機1は、例えば車両のキーレスシステムにおいてユーザにより所持、操作等される無線機であり、図示しない操作スイッチ等を備えている。
ケース3は、各面が例えば樹脂製薄板で形成された中空の略直方体形状となっている。図1(a)においてケース3として破線で示している部分は、詳しくは、ケース3全体における、容積を占める空間(中空空間)を示している。
(2)アンテナ装置5の構成
アンテナ装置5は、基板11と、回路GND12と、垂直偏波用アンテナ6と、給電部14とを備えている。垂直偏波用アンテナ6は、給電ループエレメント13と、無給電開ループエレメント15とを備えている。
基板11は、樹脂製の基板である。回路GND12は、基板11の裏面(図1(a)における下側の面)に実装された導体パターン(例えばベタパターン)を有するものであり、基板11の表面(図1(a)における上側の面)上に搭載される無線回路(給電部14)や給電ループエレメント13のグランド(接地電位)として機能する。
給電ループエレメント13は、基板11の表面においてアーチ状に搭載(実装)されている。給電ループエレメント13は、具体的には、薄板状の長尺導体板を略コの字型に折り曲げた形状となっており、一端が給電部14に接続され、他端が基板裏面の回路GND12に接続されている。給電ループエレメント13の他端は、より詳しくは、図1(b)に示すように、基板を貫通するように設けられたスルーホール13aを介して回路GND12に接続されている。
給電ループエレメント13は、上記のように基板11上に実装されることにより、基板11の板面に垂直な開口面を有する。給電ループエレメント13の開口面は、詳しくは、当該給電ループエレメント13、スルーホール13a、および回路GND12によって囲まれる長方形状の面である。即ち、図1(b)に示すように、横方向寸法wvで縦方向寸法がwhの長方形状の面が、給電ループエレメント13の開口面である。この開口面は、基板11の板面に対して垂直であると共に、x軸方向(図1(a)参照)に対しても垂直(つまりyz面に平行)である。
給電部14は、給電ループエレメント13へ送信用の電力を供給したり、給電ループエレメント13により受信された受信電力を受電する。図1(a)では、給電部14の詳細な構成の図示を省略しているが、給電部14は、詳しくは、送信信号や受信信号の各種処理を行う無線回路や、この無線回路と給電ループエレメント13の一端(給電点)とを接続する給電線路などを含んでおり、本実施形態ではこれらをまとめて給電部14と称している。給電部14は、給電ループエレメント13の一端に接続されると共に、図示しないスルーホールを介して基板裏面の回路GND12に接続されている。給電部14により送受信される信号の周波数(換言すれば給電ループエレメント13による送受信対象の電波の中心周波数)F1は、本実施形態では、300MHz〜400MHzの帯域内の周波数である。
無給電開ループエレメント15は、ケース3の内壁上に固定されている。無給電開ループエレメント15は、所定の線幅のストリップ状導体によって、長方形ループ形状に形成されている。ただし、完全に閉じた閉ループではなく、図1(a)に示すように間隔Lgのギャップ15aが形成され、これにより開ループとして形成されている。
無給電開ループエレメント15は、基板11とは物理的につながっておらず、基板11とは非接触状態である。そのため、当然ながら、無給電開ループエレメント15は、基板11の給電部14及び回路GND12のいずれにも物理的に接続されていない。
無給電開ループエレメント15は、開口面も含め、基板11の板面を含む平面に対しては垂直となるよう、且つ給電ループエレメント13の開口面に対しては平行となるように(つまりyz面と平行になるように)配置されている。また、無給電開ループエレメント15の開口面と給電ループエレメント13の開口面は、各面に垂直な方向(x軸方向)において所定間隔隔てられている。
なお、図1(a)からも明らかなように、無給電開ループエレメント15は、水平方向(y軸方向)の寸法が、給電ループエレメント13よりも長い。具体的には、無給電開ループエレメント15の水平方向の寸法は、ケース3におけるその無給電開ループエレメント15が固定されている内壁の水平方向(y軸方向)の寸法よりもわずかに短いだけである。
そのため、無給電開ループエレメント15の開口面の面積(開口面積)は、給電ループエレメント13の開口面の開口面積よりも大きい。給電ループエレメント13は、基板11上に配置されることから、その大きさは制限される(あまり大きくできない)が、無給電開ループエレメント15は、基板11から離れて配置されるため、形状や大きさ等の自由度が大きい。そのため、無給電開ループエレメント15は、ケース3の内部空間において可能な限り大きく形成することができ、これによりその開口面積も大きくとることができる。
また、無給電開ループエレメント15の開口面の一部(中央部近傍)は、給電ループエレメント13の開口面と対向している。つまり、無給電開ループエレメント15を、給電ループエレメント13側とは反対側からx軸方向に見たとき、給電ループエレメント13の開口面のほぼ全て(90%以上)が、無給電開ループエレメント15の開口面に重なった(対向した)状態となる。
給電ループエレメント13及び無給電開ループエレメント15は、いずれも、エレメント長が使用周波数の波長の約1/10前後のいわゆる微小ループアンテナである。以下の説明では、給電ループエレメント13を単に「給電ループ」ともいい、無給電開ループエレメント15を単に「無給電開ループ」ともいう。
なお、図1では図示を省略したが、アンテナ装置5には、実際には、垂直偏波用アンテナ6とは別に、水平偏波用のアンテナも設けられている。つまり、携帯機1は、図1に示した給電ループ13及び無給電開ループ15を有する垂直偏波用アンテナ6と、水平偏波用のアンテナ(図示略)とを備え、これら各アンテナを時分割で動作させることで、水平偏波と垂直偏波との偏波ダイバーシティを実現している。
ただし、以下の説明では、水平偏波用のアンテナについての説明は省略し、垂直偏波用アンテナ6の構成や機能等について詳しく説明する。そして、以下の説明で「アンテナ装置」というときは、特に断りのない限り、垂直偏波用アンテナを意味するものとする。
(3)無給電開ループ15の動作原理
無給電開ループ15は、直接的には給電部14から給電はされないが、給電ループ13との磁気結合により電流が流れてアンテナ化する。即ち、図1(c)に示すように、給電部14からの給電により給電ループ13に電流が流れると、給電ループ13からはその電流による磁界が発生する。給電ループ13から発生した磁界の一部は、無給電開ループ15の開口面を貫き(つまり磁気結合し)、これにより無給電開ループ15に電流が流れる。
給電ループ13は、それ自体は垂直偏波の電波を放射して水平偏波の電波はほとんど放射しない。しかし、給電ループ13は、他端が回路GND12に接続されているため、給電ループ13に流れる電流が回路GNDにも流れ込み、これにより回路GND12もアンテナとして動作する。回路GND12がアンテナとして動作すると、水平偏波の電波が放射される。そのため、基板11全体としては、給電ループ13からの垂直偏波と回路GND12からの水平偏波とが合成された斜め偏波が形成されることになる。
一方、垂直偏波用アンテナ6には、当然ながら、垂直偏波を良好に送受信できる性能を有することが求められる。つまり、理想的には垂直偏波のみ放射されるような性能が求められ、仮に水平偏波が放射されるとしても垂直偏波の方が相対的に非常に大きくて水平偏波を無視し得る(垂直偏波が支配的となって全体として垂直偏波とみなせる)ような性能が求められる。しかし、給電ループ13のみでは、回路GND12による水平偏波の影響を受けて、全体としては斜め偏波となってしまう。つまり、良好な垂直偏波を送受信することが困難である。
これに対し、本実施形態のアンテナ装置5では、垂直偏波用アンテナ6が、回路GND12とは非接触の無給電開ループ15を備えており、この無給電開ループ15もアンテナとして動作する。しかも、無給電開ループ15は、回路GND12とは非接触であることから、基板11に垂直な垂直偏波のみを放射可能である。
(4)無給電開ループ15の共振周波数について
無給電開ループ15をアンテナとして効率的に動作させるためには、使用周波数F1で共振するように無給電開ループ15を形成する必要がある。無給電開ループ15の共振周波数は、ギャップ15aのギャップ間隔Lgを調整することにより所望の周波数に設定することができる。ギャップ間隔Lgと共振周波数との関係について、図2を用いて説明する。
給電部14から見たアンテナ(各ループ13,15)の等価回路は、図2(a)のように表すことができる。つまり、各ループ13,15を等価的にトランスと見なすことができる。なお、図2(a)において、L1は給電ループ13のインダクタンス、L2は無給電開ループ15のインダクタンス、Rは無給電開ループ15の抵抗成分、Cは無給電開ループ15の容量成分である。容量成分Cは、主にギャップ15aにより生じる。ギャップ15aのギャップ間隔Lgが長くなるほど容量成分Cは小さくなり、逆にギャップ間隔Lgが短くなるほど容量成分Cは大きくなる。
図2(a)の等価回路は、さらに、図2(b)の回路に変換できる。図2(b)の等価回路において、L3は、次式(1)で表される。
=κ√(L・L)・・・(1)
図2(b)の等価回路から、給電部14から見たアンテナのインピーダンスZは、次式(2)で表される。
Z=(R・(ω・L)/(R+(ω・L−1/(ω・C))
+j(ω・L+((ω・L−1/(ω・C))・(ω・L
(R+(ω・L−1/(ω・C)))) ・・・ (2)
アンテナを共振させるためには、上記式(2)で表されるインピーダンスZの虚部が0になるようにすればよい。従って、インピーダンスZの虚部が0になるように容量成分Cを求めると、共振周波数fと容量成分Cは、は、次式(3)の関係がある。
f∝1/C・・・(3)
上記式(3)から、容量成分Cを調整することで共振周波数fを調整可能であることがわかる。即ち、容量成分Cを大きくするほど共振周波数fは小さくなり、逆に容量成分Cを小さくするほど共振周波数fは大きくなる。したがって、共振周波数fを小さくするためにはギャップ間隔Lgを大きくすればよく、逆に、共振周波数fを大きくするためにはギャップ間隔Lgを小さくすればよい。
本実施形態では、使用周波数F1で無給電開ループ15が共振するように、無給電開ループ15のギャップ間隔Lgが設定されている。なお、無給電開ループ15の共振周波数は、使用周波数F1に一致させることが好ましいが、必ずしも厳密に使用周波数F1に一致しなくてもよく、使用周波数F1を含む所定周波数帯域内の共振周波数(周波数F1の電波を実用上十分に送受信し得る共振周波数)であればよい。
(5)アンテナ装置5(垂直偏波用アンテナ6)の放射指向性
アンテナ装置5の性能について、図3の放射指向性(水平面指向性)を用いて説明する。図3(a)は、本実施形態のアンテナ装置5の水平面(xy面)指向性であり、図3(b)は、比較のための、無給電開ループ15がなく且つ給電ループをその開口面積が本実施形態の給電ループ13の開口面積よりも大きくなるように(無給電開ループ15の開口面の形状・面積に近くなるように)形成したアンテナ装置の水平面指向性である。
図3(b)に示す比較例のアンテナ装置は、無給電開ループがなく給電ループのみの構成であることから、給電ループによる垂直偏波と回路GNDによる水平偏波がほぼ同等の利得となり、偏波比はほぼ0dBである。なお、この比較例のアンテナ装置は、垂直偏波の利得を大きくするために、給電ループの開口面積を本実施形態の給電ループ13よりも大きくしているが、それでも、垂直偏波は回路GNDによる水平偏波と同等の利得となり、垂直偏波が支配的な状態とすることは困難である。
これに対し、本実施形態のアンテナ装置5は、回路GND12と非接触の無給電開ループ15を備えている。しかも、給電ループ15は、図3(b)の比較例の給電ループよりも開口面積が非常に小さい。そのため、本実施形態のアンテナ装置5は、図3(a)に示すように、全体として垂直偏波が支配的となり、偏波比は約43dBである。つまり、実用上は、水平偏波は無視できて垂直偏波のアンテナとして扱うことができる。
(6)第1実施形態の効果等
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置5は、垂直偏波用アンテナ6を備えている。この垂直偏波用アンテナ6は、基板11上の給電ループ13とは別に、基板11と非接触(回路GND12と非接触)の無給電開ループ15を有している。無給電開ループ15は、給電ループ13との磁気結合により給電ループ13からワイヤレスで給電され、これにより基板11に垂直な垂直偏波用のアンテナとして動作する。しかも、無給電開ループ15は、回路GND12とは非接触であるため、垂直偏波のみを放射可能である。
そのため、垂直偏波用アンテナ6全体として、水平偏波よりも垂直偏波を大きく形成することができ、垂直偏波が支配的なアンテナとして動作させることができる。つまり、本実施形態のアンテナ装置5によれば、回路GND12がアンテナ化することによる影響(水平偏波発生の影響)を抑制し、全体として良好な垂直偏波を形成することが可能となる。
また、無給電開ループ15の開口面積を給電ループ13の開口面積よりも大きくし、且つ、給電ループ13の開口面のほぼ全面積が無給電開ループ15の開口面に対向するように各ループ13,15が配置されている。これにより、給電ループ13と無給電開ループ15との間で強い磁気結合が実現される。
そのため、垂直偏波の大部分を無給電開ループ15から発生させることができ、その分、給電ループ13は小さく形成することができる。携帯機1は、一般に小型であるため、基板11上においてはループエレメントの体格を十分に確保することができない。そのため、基板11上の給電ループ13だけでは、回路GND12から水平偏波が発生するのに加え、垂直偏波自体もあまり大きな利得を得ることができない。
これに対し、本実施形態の垂直偏波用アンテナ6は、ワイヤレス(磁気結合)で給電される無給電開ループ15を、基板11上ではなくケース3内に実装できる。そのため、体格の大きな無給電開ループ15を形成、実装でき、これにより垂直偏波の高利得化が可能となる。
また、無給電開ループ15のギャップ間隔Lgを調整することで、垂直偏波用アンテナ6全体の共振周波数を調整することができる。そのため、垂直偏波用アンテナ6の共振周波数を容易に所望の周波数に調整することができる。
(7)第1実施形態の変形例
(7−1)給電ループ13の形状等(寸法や開口面積も含む)や無給電開ループ15の形状等は、図1に示した形状等に限定されない。図1に示した形状等はあくまでも一例である。
(7−2)給電ループ13の開口面のうちどの程度を無給電開ループ15の開口面と対向させるかについても、適宜決めることができる。本実施形態では、一例として、給電ループ13の開口面のほとんど(90%以上)が無給電開ループ15の開口面と対向している例を示したが、これはあくまでも一例である。
ただし、無給電開ループ15を垂直偏波用のアンテナとしてより効果的に機能させるためには、給電ループ13の開口面のできるだけ広い範囲(例えば40%以上)が無給電開ループ15の開口面に対向するように構成するのが好ましい。
給電ループ13の開口面の40%以上を無給電開ループ15の開口面に対向させることが好ましいことの根拠を、図4を用いて説明する。まず、評価用として、図4(a)に示すアンテナ装置21(垂直偏波用アンテナ)を用意する。このアンテナ装置21は、給電ループ23以外は図1(a)のアンテナ装置5と同じである。即ち、図4(a)のアンテナ装置21が備える給電ループ23は、その開口面が、無給電開ループ15の開口面と同じ形状且つ同じ面積となるように形成されている。
図4(a)は、給電ループ23の開口面と無給電開ループ15の開口面が完全に対向している状態を示している。つまり、給電ループ23の開口面全体の面積に対する、無給電開ループ15の開口面と対向している部分の面積の割合が1(100%)の状態を示している。図4(a)に示す状態から、無給電開ループ15をy軸方向に移動させると、各ループ23,15の各開口面が対向する領域が小さくなっていく。図4(b)は、給電ループ23に対して相対的に無給電開ループ15をy軸方向に移動させることにより、給電ループ23の開口面積全体に対する無給電開ループ15の開口面との対向面積の割合を変化させたときの、アンテナ装置21全体の垂直偏波の利得の変化を示す。
図4(b)から明らかなように、対向面積の割合が大きくなるほど、垂直偏波の利得は大きくなる。携帯機1への搭載アンテナとして所望の性能を発揮させるためには、垂直偏波の利得が−1.5dBm以上であることが好ましく、そのためには、対向面積の割合が0.4以上であればよい。つまり、対向面積の割合を0.4以上とすれば、所望の性能を得ることができる。
なお、図4では、評価用として各ループ23,15の開口面を同じ形状、同じ面積としたが、図1(a)のアンテナ装置5でも同じように評価を行うことができ、その場合も、図4(b)と同様の傾向の評価結果が得られる。
(7−3)給電ループ13と無給電開ループ15は、両者の開口面が完全に平行となるように配置することは必須ではない。両開口面が完全に平行ではなく角度差があっても、全体として所望の垂直偏波を形成することができればよい。
(7−4)回路GND12を基板11の裏面に形成するのは必須ではなく、基板11の表面に形成してもよい。或いは、表面と裏面の双方に適宜形成してもよい。或いは、基板11の内部に積層形成してもよい。
(7−5)給電ループ13及び無給電開ループ15は、いずれも微小ループアンテナであるものとして説明したが、本発明の適用は微小ループアンテナに限定されるものではなく、各種形状、寸法のループアンテナ(ループエレメント)に適用可能である。また、使用周波数(送受信電波の周波数)F1の帯域が300MHz〜400MHzであることもあくまでも一例にすぎない。
(7−6)無給電開ループ15を基板11から物理的に離れるように配置することは必須ではなく、無給電開ループ15を基板11上に配置(固定)してもよい。ただしその場合、無給電開ループ15と基板11上の回路GND12とが物理的に接触(導通)しないように配置する必要がある。
(7−7)携帯機1が偏波ダイバーシティ機能を備えていること、即ちアンテナ装置1が垂直偏波用アンテナ6とは別に水平偏波用アンテナ(図示略)を備えていることは、必須ではない。本発明は、偏波ダイバーシティ機能を備えた装置等への適用に限定されるものではなく、垂直偏波用アンテナを備えたあらゆる装置に対して適用可能である。
(7−8)本発明の適用は、車両のキーレスシステム等の携帯機1への適用に限定されない。本発明は、アンテナを用いて無線通信を行うあらゆる種類の無線機に対して適用可能である。
[第2実施形態]
第2実施形態のアンテナ装置30について、図5を用いて説明する。図5(a)に示すアンテナ装置30は、車両のキーレスシステムのうち特にスマートシステムにおいて、その携帯機に搭載される。
スマートシステムにおいては、2種類の周波数帯域の電波を用いて個別選択的に通信を行う必要がある。そのため、本実施形態のアンテナ装置30は、第1周波数F1(例えば300MHz〜400MHzの帯域)の電波と、第2周波数F2(例えば134kHz)の電波の何れか一方を選択的に送受信可能である。
(1)アンテナ装置30の構成
本実施形態のアンテナ装置30は、図5に示すように、基板31と、回路GND32と、第1給電部34と、第2給電部36と、垂直偏波用アンテナ38とを備えている。垂直偏波用アンテナ38は、第1ループエレメント33と、第2ループエレメント35とを有する。基板31及び回路GND32の形状等は第1実施形態のアンテナ装置5と同じである。
第1給電部34は、第1周波数F1の送信電力を第1ループエレメント33へ出力する。第1ループエレメント33は、第1周波数F1の電力を電波にて良好に送受信可能に構成されており、第1ループエレメント33で受信された受信電力は第1給電部34に入力される。第1給電部34は、第1ループエレメント33の一端に接続されると共に、図示しないスルーホールを介して基板裏面の回路GND32に接続されている。
第2給電部36は、第2周波数F2の送信電力を第2ループエレメント35へ出力する。また、第2ループエレメント35からみた第2給電部36の入力インピーダンスは、第2周波数F2に対してはロー(低)インピーダンス(例えば1[Ω]より小)であるが、第1周波数F1に対してはハイ(高)インピーダンス(例えば300[Ω]より大)である。第2給電部36は、第2ループエレメント35の一端に接続されると共に、図示しないスルーホールを介して基板裏面の回路GND32に接続されている。
第1ループエレメント33は、第1実施形態の給電ループ13と同様、略コの字状の形状であるが、開口面が第1実施形態よりもy軸方向に長く形成されている。第1ループエレメント33は、第1実施形態の給電ループ13と同様、基板11の板面に垂直でyz面に平行な開口面を有する。
第2ループエレメント35は、複数回巻回された螺旋形状(コイル型)のアンテナエレメントである。第2ループエレメント35は、基板11上において、中心軸がx軸と平行になるように配置されている。第2ループエレメント35は、x軸と平行な中心軸を中心として、線状の導体がx軸方向に複数回巻回されることにより、コイル状に形成されている。そのため、第2ループエレメント35の開口面(ループ面)は、x軸に垂直(yz面と平行)であり、その形状は円形である。
第2ループエレメント35の円形状の開口面は、そのほぼ全面積(90%以上)が、第1ループエレメントの開口面に対向している。そのため、第1ループエレメント33に電流が流れて第1ループエレメント33から磁界が発生すると、その磁界の一部が第2ループエレメント35をx軸方向に貫き、これにより第2ループエレメント35に電流が流れる。
また、第2ループエレメント35は、一端が第1コンデンサC1に接続されている。第1コンデンサC1の他端は回路GND32に接続されている。また、第2ループエレメント35の両端には、第2コンデンサC2が接続されている。そして、第2ループエレメント35における、第1コンデンサC1が接続されている一端とは反対側の他端が、第2給電部36に接続されている。
第1コンデンサC1は、第2周波数F2に対してはローインピーダンスとなり、第1周波数F1に対してはハイインピーダンスとなる。より具体的には、第1コンデンサC1の容量は、下記の式(4),(5)を同時に満たす。
1/(2πF1・C1)>300[Ω]・・・(4)
1/(2πF2・C1)<1[Ω] ・・・(5)
第2コンデンサC2は、第2周波数F2に対してはハイインピーダンスとなり、第1周波数F1に対してはローインピーダンスとなる。より具体的には、第2コンデンサC2の容量は、下記の式(6)を満たす。
1/(2πF2・C2)>300[Ω]・・・(6)
(2)アンテナ装置30の動作
本実施形態のアンテナ装置30は、図示しない制御回路によって、第1給電部34からの給電(即ち第1周波数F1の電波の送受信動作)と、第2給電部36からの給電(即ち第2周波数F2の電波の送受信動作)とが、適宜切り替えられる。つまり、2つの給電部34,36から同時に給電されることはない。
そのため、例えば第2ループエレメント35から何らかの信号を第2周波数F2にて送信する場合、第1給電部34は動作を停止して、第2給電部36から第2周波数F2の電力が第2ループエレメント35へ出力される。
ここで、アンテナ装置30全体から、第2ループエレメント35及びその給電系統を含む給電回路を抽出すると、図5(b),(c)の左側に示すような回路図で表すことができる。第2給電部36から第2周波数F2の電力を供給して第2ループエレメントを第2周波数F2で動作させる場合、この第2周波数F2に対しては、第1コンデンサC1はローインピーダンス、第2コンデンサC2はハイインピーダンスとなる。そのため、第2周波数F2に対しては、第2ループエレメント35の給電回路は、図5(b)の右側に示すような回路と等価となる。つまり、第2ループエレメント35は、第2給電部36からの第2周波数F2の電力に対しては給電ループとして機能し、電波を良好に放射できる。
一方、第1ループエレメント33から何らかの信号を第1周波数F1にて送信する場合は、第2給電部36は動作を停止して、第1給電部34から第1周波数F1の電力が第1ループエレメント33へ出力される。これにより、第1ループエレメント33からは、第1周波数F1の電波が放射される。
更に、本実施形態では、第1ループエレメント33が第1周波数F1で動作する際、動作を停止している(正確には第2周波数F2のアンテナとしては動作を停止している)第2ループエレメント35も、放射素子(無給電素子)として機能する。
第1ループエレメント33が第1周波数F1で動作すると、第1ループエレメント33から発生する磁界の一部が第2ループエレメント35の開口面を貫き、これにより第2ループエレメント35に第1周波数F1の電流が流れる。
第1周波数F1に対しては、第1コンデンサC1はハイインピーダンス、第2コンデンサC2はローインピーダンス、第2給電部36の入力インピーダンスはハイインピーダンスとなる。そのため、第1周波数F1に対しては、第2ループエレメント35の給電回路は、図5(c)の右側に示すような回路と等価となる。つまり、第2ループエレメント35は、第1周波数F1の電力に対しては、無給電ループエレメント(以下「無給電ループ」ともいう)として機能する。
そのため、第1給電部34が動作して第1周波数F1の電力が給電されると、第1ループエレメント33から電波が放射されるのに加え、第2ループエレメント35も無給電ループとして機能して、第2ループエレメント35からも第1周波数F1の電波が放射される。
第2ループエレメント35は、第1周波数F1に対しては、回路GND32から等価的に切り離された状態になる。そのため、第2ループエレメント35に流れる第1周波数F1の電流は回路GND32には流れず、第2ループエレメント35は第1周波数F1に対しては垂直偏波のみを形成することが可能である。
(3)第2実施形態の効果等
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置30では、第1給電部34から第1周波数F1の電力が第1ループエレメント33へ供給される際、第2ループエレメント35は、第2周波数F2用の放射素子としての動作は停止されるものの、第1周波数F1に対して無給電ループとして機能し、第1周波数F1の電波を放射する。
つまり、本実施形態では、第1実施形態のように無給電開ループ15を別途独立して設けるのではなく、本来は第2周波数F2用として設けられている既存の第2ループエレメント35を第1周波数F1に対する無給電ループとしても利用するようにしている。
そのため、別途無給電ループエレメントを設けることなく、既存の構成をほぼそのまま利用して(各コンデンサC1,C2を調整する必要はあるが)、垂直偏波の良好な第1周波数F1の放射特性を安価に得ることができる。
また、第2ループエレメント35の開口面のほぼ全面積が第1ループエレメント33の開口面に対向するように各ループエレメント33,35が配置されている。これにより、各ループエレメント33,35間で強い磁気結合が実現され、第2ループエレメント35を第1周波数F1の垂直偏波放射用の無給電ループとして効率的に機能させることができる。
(4)第2実施形態の変形例
(4−1)各ループエレメント33,35の形状等(寸法や開口面積も含む)は、図5に示した形状等に限定されない。図5に示した形状等はあくまでも一例である。特に、第2ループエレメント35については、コイル状の形状に限定されるものではなく、他の形状のループエレメントを用いることができる。
(4−2)各周波数F1,F2の具体的数値例や、上記式(4)〜(6)に示した数値例は、あくまでも一例である。各コンデンサC1,C2の容量は、各周波数F1,F2に対してそれぞれ上述した所望の特性を実現できる範囲内で適宜決めることができる。各コンデンサC1,C2自体についても、具体的にどのような種類のコンデンサを用いるかは適宜決めることができる。また、コンデンサ以外の他の素子や回路等(周波数によってインピーダンスが異なる素子等)を用いて、上記各コンデンサC1,C2と等価な機能を実現してもよい。
[第3実施形態]
第3実施形態のアンテナ装置40について、図6を用いて説明する。図6に示すアンテナ装置40は、第1実施形態のアンテナ装置5と同様、車両のキーレスシステムで用いられる携帯機に搭載されるものである。
第1実施形態のアンテナ装置5によれば、回路GND12と非接触の無給電開ループ15を設け、基板11上の給電ループ13との磁気結合によりワイヤレスで給電される構成をとることで、垂直偏波の良好な放射が実現される。
垂直偏波についてより高い放射電力を得るためには、次のa,bの双方を両立させることが必要である。
a.無給電開ループの高利得化。
b.給電ループから無給電開ループへのワイヤレスワイヤレス電力伝送の高効率化。
このうちaの実現のためには、無給電開ループの開口面積を拡大していくことが必要である。しかし、無給電開ループの開口面積に対する給電ループの開口面積の比率が小さくなると(つまり無給電開ループの開口面積が相対的に大きくなると)、ワイヤレス電力伝送の効率は悪化する。そのため、bの実現のためには、給電ループと無給電開ループの相互インダクタンスを高めていく必要がある。つまり、給電ループと無給電開ループの開口面積は同等で、且つ、各ループエレメントの各辺が対向し(つまり各開口面が完全に対向し)近接している状態が理想的となる。
したがって、上記a,bを両立するためには、給電ループと無給電開ループの双方を拡大していく必要があり、携帯機の大型化に繋がる。そこで、本実施形態のアンテナ装置40では、図6に示すように、無給電開ループ45を、外コイル46及び内コイル47の2重コイル形状とすることで、上記a,bの両立を可能としている。
(1)アンテナ装置40の構成
本実施形態のアンテナ装置40は、図6に示すように、基板41と、回路GND42と、給電部44と、垂直偏波用アンテナ48とを備えている。垂直偏波用アンテナ48は、給電ループ43と、無給電開ループ45とを有する。基板41及び回路GND42は第1実施形態のアンテナ装置5と同じである。給電ループ43及び給電部44についても、第1実施形態のアンテナ装置5の給電ループ13及び給電部14と同じである。本実施形態のアンテナ装置40が第1実施形態のアンテナ装置5と異なるのは、無給電開ループ45である。
本実施形態の無給電開ループ45は、外コイル46と内コイル47とを備えた2重コイル形状となっている。外コイル46は、第1実施形態の無給電開ループ15と基本的に同じであり、ギャップ46aを備えた開ループ構造となっている。外コイル46は、携帯機のケース3に内蔵可能な最大の体格をとっている。つまり、外コイル46の水平方向(y軸方向)の寸法は、ケース3の内部における同じ方向の収容可能な寸法とほぼ同じである。
内コイル47は、外コイル46の開口面内においてその開口面上に配置されている。内コイル47も、外コイル46と同様、ストリップ状の導体により形成され、全体として矩形状であり、ギャップ47aを有している。図6や図7(a)から明らかなように、内コイル47の一端は、外コイル46の一端と導体で接続されている。
また、内コイル47は、その開口面の形状及び面積が、給電ループ43の開口面の形状及び面積と同等となるように(両開口面の面積比が例えば0.9〜1.1の範囲内となるように。理想的には一致するように。)形成されている。更に、内コイル47は、その開口面のほぼ全面積が給電ループ43の開口面に対向するように、外コイル46内に配置(ひいてはケース3の内壁に固定)されている。つまり、無給電開ループ45全体をx軸方向外側(給電ループ43側とは反対側)から見たとき、無給電開ループ45における内コイル47の開口面のほぼ全て(少なくとも90%以上)が、給電ループ43の開口面に重なった(対向した)状態となる。
無給電開ループ45と給電ループ43の相互インダクタンスは、無給電開ループ45の線幅が細いほど高くなる。これは、線幅が太いほど、自己インダクタンスとの打ち消しが生じるためである。そのため、相互インダクタンスだけを考慮すれば、無給電開ループ45は、外コイル46および内コイル47のいずれも、線幅はできる限り細い方がよい。しかし、アンテナ全体の利得を考慮すると、逆に、線幅が太い方がよい。線幅が太いほど、エレメントの抵抗が小さくなって、アンテナの利得は増加する。
そこで、本実施形態の無給電開ループ45は、内コイル47については、線幅を細くすることで、給電ループ43と強く磁気結合させ、相互インダクタンスが大きくなるようにしている。一方、外コイル46については、線幅を太くすることで、アンテナ全体としての利得を大きくとれるようにしている。つまり、外コイル46の線幅よりも内コイル47の線幅が細くなっている。
内コイル47のギャップ47aのギャップ間隔は、外コイル46のギャップ46aのギャップ間隔Lgと同じく、使用周波数F1で内コイル47が共振するように設定されている。
(2)アンテナ装置40の性能
アンテナ装置40の性能について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、本発明が適用された第3実施形態のアンテナ装置40の一実施例を示している。即ち、図7(a)はアンテナ装置40の具体的な寸法例、同図(b)はその寸法で形成されたアンテナ装置40の磁界強度、同図(c)はその水平面指向性を示している。一方、図8は、図7の実施例に対する比較例として、第1実施形態のアンテナ装置5について、その各部寸法(同図(a))や磁界強度(同図(b))、水平面指向性(同図(c))の一例を示している。
実施例のアンテナ装置40における各ループ43,45の各部寸法は、図7(a)に示す通りである。図7(a)に示すように、無給電開ループ45における、内コイル47の線幅dは、外コイル46の線幅Dよりも細い。また、内コイル47の水平方向(y軸方向)の寸法Wbは、給電ループ43の同方向の寸法W1と同じである。
一方、比較用のアンテナ装置5における各ループ13,15の各部寸法は、図8(a)に示す通りである。給電ループ13については、図7(a)の実施例の給電ループ43と同じである。無給電開ループ15についても、図7(a)の無給電開ループ45における外コイル46と同じである。
図7(a)に示す実施例のアンテナ装置40の動作中(給電部44から電力が供給中)における、各ループ43,45近傍の磁界強度分布は、図7(b)に示す通りである。図8(b)に示す比較例の磁界強度分布と比較して明らかなように、実施例の無給電開ループ45からの放射電力は、比較例の無給電開ループ15からの放射電力よりも大きい。特に、内コイル47からの放射電力が大きくなっている。
これは、実施例のアンテナ装置40の相互インダクタンスMが約4.5nHであるのに対して、比較例のアンテナ装置5の相互インダクタンスMが約2.3nHであり、実施例の方が比較例よりも相互インダクタンスが大きいからである。相互インダクタンスが相対的に大きいことにより、給電ループから無給電開ループへの電力伝送効率は、比較例が約65%であるのに対して実施例が約89%と大きい値になっている。
また、実施例のアンテナ装置40の水平面指向性は、図7(c)に示すように、水平偏波の利得に対して垂直偏波の利得が非常に大きく、垂直偏波が支配的となっている。図8(c)に示す比較例のアンテナ装置5の水平面指向性も、垂直偏波が支配的となっているが、実施例のアンテナ装置40の垂直偏波利得は、比較例のアンテナ装置5の垂直偏波利得よりもさらに約2dBほど増加している。
なお、比較例として示したアンテナ装置5自体、本発明が適用された第1実施形態のアンテナ装置5であって、図3を用いて説明したように、無給電開ループのない従来のアンテナ装置に比べると、格段に性能が向上している。これに対し、本実施形態のアンテナ装置40は、無給電開ループ45を外コイル46および内コイル47の2重ループ形状とするなど、より工夫が加えられたことで、第1実施形態のアンテナ装置5に対してさらなる高性能化が実現されている。
(3)第3実施形態の効果等
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置40は、無給電開ループ45が、外コイル46及び内コイル47の2重ループ形状となっている。そして、内コイル47の開口面が、基板41に実装された給電ループ43の開口面と対向するように構成されている。そのため、第1実施形態と同様、アンテナ装置40全体として、水平偏波よりも垂直偏波を大きく形成することができ、垂直偏波が支配的なアンテナ装置として動作させることができる。つまり、本実施形態のアンテナ装置40によれば、回路GND42がアンテナ化することによる影響(水平偏波発生の影響)を抑制し、全体として良好な垂直偏波を形成することが可能となる。
また、基板41に実装された給電ループ43の開口面積と内コイル47の開口面積は同等であり、これら各開口面がほぼ完全に対向している。これにより、給電ループ43から無給電開ループ45への(特に内コイル47への)ワイヤレス電力伝送の高効率化が可能となる。
しかも、無給電開ループ45における外コイル46の水平方向の寸法は、携帯機のケース3内に内蔵可能な最大限(又はそれに近い)寸法となっている。そのため、無給電開ループ45から(特に外コイル46から)高い利得での垂直偏波の放射が可能となる。
つまり、無給電開ループ45を2重コイル形状とし、外コイル46は、高利得化のために携帯機に搭載可能な範囲で最大限大きくとり、内コイル47は、ワイヤレス電力伝送の高効率化のために給電ループ43と同等の形状・面積の開口面とするとで、上記a,bの両立が可能となる。
さらに、無給電開ループ45において、外コイル46の線幅は内コイル47の線幅よりも大きい。このような構成により、内コイル47については給電ループ43との相互インダクタンスが大きくなってワイヤレス電力伝送の高効率化が可能となり、外コイル46についてはエレメント抵抗が低く抑えられて利得向上が可能となる。そのため、無給電開ループ45全体として、ワイヤレス電力伝送の高効率化と利得向上の両立がより効果的に実現される。
また、外コイル46の線幅よりも内コイル47の線幅が小さいことから、外コイル46と内コイル47の離間距離を大きくとることができる。その波及効果として、内コイル47と外コイル46の間の近接効果による抵抗成分の増大を抑制することができ、その分、アンテナ利得の向上が可能となる。
(4)第3実施形態の変形例
(4−1)内コイル47は、複数巻の(渦巻状の)形状としてもよい。
(4−2)内コイル47と外コイル46との接続位置や接続方法は、図6に示した本実施形態の接続位置や接続方法以外の他の接続位置、接続方法であってもよい。
1…携帯機、3…ケース、5,21,30,40…アンテナ装置、6,38,48…垂直偏波用アンテナ、11,31,41…基板、12,32,42…回路GND、13,23,43…給電ループエレメント(給電ループ)、13a…スルーホール、14,24,44…給電部、15,45…無給電開ループエレメント(無給電開ループ)、15a,46a,47a…ギャップ、33…第1ループエレメント、34…第1給電部、35…第2ループエレメント、36…第2給電部、46…外コイル、47…内コイル、C1…第1コンデンサ、C2…第2コンデンサ。

Claims (11)

  1. 基板(11、31,41)と、
    前記基板上に形成された導電性のグランド部(12,32,42)と、
    前記基板に実装されたループ状のエレメントであって、一端が前記グランド部に接続され、前記基板の板面に垂直な開口面を有する給電ループエレメント(13,33,43)と、
    前記給電ループエレメントの他端に接続されて前記給電ループエレメントへ電力を供給する給電部(14,34,44)と、
    前記グランド部と接触しないように設けられたループ状のエレメントであって、前記給電ループエレメントの開口面に平行な開口面を有する無給電ループエレメント(15,35,45)と、
    を備え、
    前記給電ループエレメントの開口面の少なくとも一部が、前記無給電ループエレメントの開口面と対向している
    ことを特徴とするアンテナ装置(5,30,40)。
  2. 請求項1に記載のアンテナ装置であって、
    前記開口面の面積である開口面積は、前記給電ループエレメントの開口面積よりも無給電ループエレメントの開口面積の方が大きい
    ことを特徴とするアンテナ装置(5,40)。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電ループエレメントの開口面のうちその開口面積の40%以上が前記無給電ループエレメントの開口面と対向している
    ことを特徴とするアンテナ装置(5,40)。
  4. 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記無給電ループエレメント(46)には、その開口面内に、一巻き以上の巻回数の開ループ形状の内ループエレメント(47)が設けられている
    ことを特徴とするアンテナ装置(40)。
  5. 請求項4に記載のアンテナ装置であって、
    前記内ループエレメントの開口面積は前記給電ループエレメントの開口面積と略同じである
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  6. 請求項5に記載のアンテナ装置であって、
    前記内ループエレメントの開口面はその略全面が前記内ループエレメントの開口面と対向している
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  7. 請求項4〜請求項6の何れか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記無給電ループエレメント及び前記内ループエレメントはそれぞれ所定線幅のストリップ状の導体により形成されており、
    前記無給電ループエレメントの線幅は前記内ループエレメントの線幅よりも大きい
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  8. 請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記無給電ループエレメントは、ループの一部にギャップ(46a)が設けられることにより開ループとして形成されている
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  9. 請求項8に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電部は、所定の第1周波数を含む周波数帯域の電力を供給するよう構成されており、
    前記無給電ループエレメントは、その共振周波数が前記第1周波数となるように前記ギャップの間隔が設定されている
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  10. 請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電ループエレメントを第1の給電ループエレメント(33)として、この第1の給電ループエレメントとは別に、前記無給電ループエレメントとして機能可能な第2の給電ループエレメント(35)を備え、
    前記給電部を第1の給電部(34)として、この第1の給電部とは別に第2の給電部(36)を備え、
    前記第1の給電部は所定の第1周波数の電力を供給可能であり、
    前記第2の給電部は所定の第2周波数の電力を供給可能であり、
    前記第1の給電部及び前記第2の給電部は、何れか一方のみが選択的に切り替えて動作されるよう構成されており、
    前記第2の給電ループエレメントは、
    一端が前記第2の給電部に接続されて他端が第1のインピーダンス素子(C1)を介して前記グランド部に接続され、且つ両端に第2のインピーダンス素子(C2)が接続されていて、前記第1のインピーダンス素子は前記第2周波数に対するインピーダンスが前記第1周波数に対するインピーダンスよりも低く、前記第2のインピーダンス素子は前記第2周波数に対するインピーダンスが前記第1周波数に対するインピーダンスよりも高く、前記第2の給電ループエレメントから前記第2の給電部を見た入力インピーダンスが前記第2周波数よりも前記第1周波数の方が高くなるよう構成されていることによって、前記第2の給電部からの電力供給がなく前記第1の給電部が動作している間は前記無給電ループエレメントとして機能する
    ことを特徴とするアンテナ装置(30)。
  11. 請求項1〜請求項10の何れか1項に記載のアンテナ装置であって、
    当該アンテナ装置は、筐体(3)内に収容されており、
    前記無給電ループエレメントは、前記筐体の内部においてその筐体上に配置されている
    ことを特徴とするアンテナ装置。
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