ところで、上記のような車輌用前照灯には、光源から出射される光の遮蔽量を制御して光源から出射される光によって形成される配光パターンを動作位置に応じて変更する可動シェードが設けられたものがある。
このような車輌用前照灯にあっては、可動シェードがステッピングモーターやソレノイド等の各種のアクチュエーターによって動作され、アクチュエーターも灯具外筐の内部に配置される。可動シェードの動作時にはアクチュエーターに通電が行われるため、発熱によりアクチュエーターの温度も上昇するが、アクチュエーターの温度が高くなりすぎてしまうと、アクチュエーターの性能の劣化を生じるおそれがある。特に、アクチュエーターも灯具外筐の内部に配置されるため、温度が上昇し易い環境下での駆動になり、アクチュエーターの温度上昇が生じ易いと言う不具合がある。
そこで、アクチュエーターの温度の上昇を抑制するために、灯具外筐の内部に冷却手段を配置することも考慮されるが、冷却手段を配置すると、その分のスペースが必要になり車輌用前照灯の小型化を阻害すると共に冷却手段を設ける分のコストの上昇を引き起こしてしまう。
そこで、本発明車輌用前照灯は、上記した問題点を克服し、大型化及びコストの高騰を来すことなくアクチュエーターの温度上昇を抑制してアクチュエーターの良好な動作状態を確保することを目的とする。
第1に、本発明に係る車輌用前照灯は、少なくとも一方に開口を有するランプハウジングと前記ランプハウジングの前記開口を覆うカバーとによって構成された灯具外筐の内部に光源を有する灯具ユニットが配置された車輌用前照灯であって、前記灯具ユニットは、前記光源から出射された光の遮蔽量を制御する可動シェードと、前記可動シェードを動作させるアクチュエーターと、前記光源の駆動時に前記光源に発生する熱が伝達され伝達された熱を放出して前記光源の温度の上昇を抑制するヒートシンクと、前記ヒートシンクからの熱の放出を促進させる冷却風を生じさせるファンとを備え、前記ファンの回転によって前記冷却風の一部が前記ファンから前記アクチュエーターへ向けて流動又は前記アクチュエーターから前記ファンへ向けて流動されるものである。
これにより、光源に発生する熱のヒートシンクからの放出を促進させるファンによってアクチュエーターの温度上昇が抑制される。
第2に、上記した本発明に係る車輌用前照灯においては、前記ヒートシンクに前記冷却風を前記ファンと前記アクチュエーターの間で流動させる通風孔が形成されることが望ましい。
これにより、冷却風がファンとアクチュエーターの間で通風孔を介して流動される。
第3に、上記した本発明に係る車輌用前照灯においては、前記光源と前記アクチュエーターがそれぞれ所定の位置に離隔して配置され、前記ヒートシンクが前記光源と前記アクチュエーターの間に配置されることが望ましい。
これにより、ヒートシンクが光源とアクチュエーターの温度上昇を抑制する位置として最適な位置に配置される。
第4に、上記した本発明に係る車輌用前照灯においては、前記ヒートシンクに所定の方向に並ぶ複数の放熱フィンが設けられ、前記複数の放熱フィンの並び方向が前記光源と前記アクチュエーターの配置方向に対して直交する方向にされることが望ましい。
これにより、放熱フィンに沿う冷却風の流動方向がアクチュエーターと光源の配置方向に一致される。
第5に、上記した本発明に係る車輌用前照灯においては、前記ファンと前記アクチュエーターがそれぞれ所定の位置に離隔して配置され、前記ヒートシンクが前記アクチュエーターと前記ファンの間に配置されることが望ましい。
これにより、ヒートシンクがアクチュエーターの温度上昇を抑制する位置として最適な位置に配置される。
本発明によれば、光源に発生する熱のヒートシンクからの放出を促進させるファンによってアクチュエーターの温度上昇が抑制されるため、大型化及びコストの高騰を来すことなくアクチュエーターの温度上昇を抑制してアクチュエーターの良好な動作状態を確保することができる。
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
灯室5には灯具ユニット6が配置されている。灯具ユニット6は、ベース体7とレンズホルダー8と投影レンズ9と連結板10、10と支持板11、11とリフレクター12と光源ユニット13と可動シェード14を有している(図1乃至図3参照)。
ベース体7は上下方向を向く前側ベース部7aと前側ベース部7aの後端部から上方へ突出された段差部7bと段差部7bの上端部から後方へ突出され上下方向を向く後側ベース部7cとを有している。前側ベース部7aの前端部における左右両端部からはそれぞれ取付突部7d、7dが上方へ突出されている。
ベース体7の一部は左右方向に等間隔に並ぶ短冊状に形成され、これらの短冊状に形成された部分の全体がヒートシンク15として設けられ、短冊状に形成された各部がそれぞれ放熱フィン16、16、・・・として設けられている。放熱フィン16、16、・・・間の空間は上下及び後方の空間に連通され通風孔16a、16a、・・・として形成されている。
放熱フィン16、16、・・・のうち左右一方の側に位置された放熱フィン16A、16A、・・・は他の放熱フィン16、16、・・・より前方に延びるように形成されている。
放熱フィン16、16、・・・は、放熱フィン16A、16A、・・・以外が段差部7bと後側ベース部7cの各一部によって構成され、放熱フィン16A、16A、・・・が前側ベース部7aと段差部7bと後側ベース部7cの各一部によって構成されている。
放熱フィン16A、16A、・・・間に形成された通風孔16a、16a、・・・は段差部7bにおいて前方へ開口されると共に前側ベース部7aにおいて上下方向に開口されている(図2乃至図4参照)。段差部7bにおける前方側の開口は第1の吹出口16b、16b、・・・として形成され、前側ベース部7aにおける上側の開口は第2の吹出口16c、16c、・・・として形成されている(図2参照)。
レンズホルダー8は円環状に形成され前側ベース部7aの前端部及び取付突部7d、7dに取り付けられている(図2乃至図4参照)。
投影レンズ9はレンズホルダー8に取り付けられてベース体7の前側に保持されている。
連結板10、10はそれぞれベース体7における後側ベース部7cの上面の左右両端部に取り付けられている。
支持板11、11は左右方向を向きそれぞれベース体7における前側ベース部7aの後端部における上面の左右両端部に取り付けられている。
リフレクター12は前方及び下方に開口された椀状の反射部17と反射部17の下端部から後方へ突出された平板状の被取付部18とを有し、反射部17の内面が反射面17aとして形成されている。リフレクター12は被取付部18が連結板10、10上に取り付けられている。
光源ユニット13は回路基板13aと回路基板13aの上面に搭載された光源13bとを有し、光源13bとしては、例えば、発光ダイオード(LED)が用いられている。光源ユニット13はベース体7の後側ベース部7c上に配置され、放熱フィン16、16、・・・の真上に位置された状態でリフレクター12の反射部17によって上方から覆われている。
可動シェード14は横長の形状に形成され、左右両端部が支持板11、11に支持されている。可動シェード14は支持板11、11に対して回転可能とされている。
一方の支持板11には駆動ギヤ19と伝達ギヤ20が支持されている。また、一方の支持板11にはアクチュエーター21が取り付けられ、アクチュエーター21の駆動力が伝達ギヤ20を介して駆動ギヤ19に伝達される。駆動ギヤ19は可動シェード14の一端部に連結され、可動シェード14がアクチュエーター21の駆動力によって回転可能とされている。
アクチュエーター21はベース体7の前側ベース部7aの上方において光源13bより前側に位置されている。アクチュエーター21は第1の吹出口16b、16b、・・・の直ぐ前側かつ第2の吹出口16c、16c、・・・の直ぐ上側に位置されている(図2及び図3参照)。
ベース体7における後側ベース部7cの下面にはファンユニット22が取り付けられている(図1、図3及び図4参照)。ファンユニット22はベース部7cに取り付けられたケース体22aとケース体22aの内部において回転されるファン22bとを有している。
ファン22bが回転されると、ファン22bによって冷却風が発生し、発生した冷却風がファンユニット21の上方に位置されたヒートシンク15に向かい、放熱フィン16、16、・・・間の空間である通風孔16a、16a、・・・を通過される。
上記のように構成された車輌用前照灯1において、光源13bから光が出射されると、出射された光がリフレクター12における反射部17の反射面17aで反射され投影レンズ9及びカバー3を透過されて前方へ向けて照射される。このときアクチュエーター21に図示しない電源回路から通電が行われ、アクチュエーター21の駆動力によって可動シェード14が回転され、光源13bから出射された光の遮蔽量が光制御部18によって制御される。投影レンズ9及びカバー3を透過されて前方へ向けて照射された光によって可動シェード14の回転位置に応じた所定の配光パターンが形成される。
光が出射される光源13bの駆動時には、光源13b及び回路基板13aから熱が発生し、発生した熱がヒートシンク15に伝達され放熱フィン16、16、・・・から放出される。このときファン22bが回転され、ファン22bの回転によって発生する冷却風が上方へ向けて通風孔16a、16a、・・・を流動されて灯具外筐4の内部に強制的に対流が生じ、放熱フィン16、16、・・・からの熱の放出が促進される。放熱フィン16、16、・・・から放出された熱は灯具外筐4の外部へ放出されて光源13bの温度の上昇が抑制される。
また、光源13bの駆動時には、上記したように、アクチュエーター21の駆動力によって可動シェード14が回転され、通電が行われたアクチュエーター21が発熱する。このときファン22bによって発生した冷却風の一部が放熱フィン16A、16A、・・・間の空間である通風孔16a、16a、・・・を通過し第1の吹出口16b、16b、・・・及び第2の吹出口16c、16c、・・・から吹き出されてアクチュエーター21に吹き付けられる(図5の実線の矢印参照)。従って、アクチュエーター21の温度上昇が抑制される。
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、ファン22bによって発生する冷却風の一部がアクチュエーター21へ向けて流動され、光源13bに発生する熱のヒートシンク15からの放出を促進させるファン22bによってアクチュエーター21の温度上昇が抑制される。
従って、アクチュエーター21の温度の上昇を抑制するために、灯具外筐4の内部にアクチュエーター21についての専用の冷却手段を配置する必要がなく、大型化及びコストの高騰を来すことなくアクチュエーター21の温度上昇を抑制してアクチュエーター21の良好な動作状態を確保することができる。
また、ヒートシンク15に冷却風をファン22bとアクチュエーター21の間で流動させる通風孔16a、16a、・・・が形成されているため、冷却風がファン22bとアクチュエーター21の間で通風孔16a、16a、・・・を介して確実に流動されアクチュエーター21に対する冷却効率の向上を図ることができる。
さらに、ヒートシンク15が光源13bとアクチュエーター21の間に配置されているため、ヒートシンク15が光源13bとアクチュエーター21の温度上昇を抑制する位置として最適な位置に配置され、小型化を確保した上で光源13bとアクチュエーター21の双方に対する冷却効率の向上を図ることができる。
さらにまた、アクチュエーター21と光源13bが前後に離隔して配置され、ヒートシンク15の放熱フィン16、16、・・・の並び方向がアクチュエーター21と光源13bの配置方向に対して直交する左右方向にされている。従って、放熱フィン16、16、・・・に沿う冷却風の流動方向がアクチュエーター21と光源13bの配置方向に一致され、光源13bとアクチュエーター21の双方に対する一層の冷却効率の向上を図ることができる。
加えて、ヒートシンク15がアクチュエーター21とファン22bの間に配置されているため、ヒートシンク15がアクチュエーター21の温度上昇を抑制する位置として最適な位置に配置され、小型化を確保した上でアクチュエーター21に対する冷却効率の向上を図ることができる。
尚、上記には、ファン22bの回転により発生した冷却風が上方に位置されたヒートシンク15に向かう例を示したが、逆に、ファン22bの回転により発生した冷却風が下方へ向かいファン22bに吸気される冷却風が上方側から下方側へ向けて通風孔16a、16a、・・・を通過されるように構成することも可能である(図5の点線の矢印参照)。