JP2015034107A - カバーガラス - Google Patents

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優 村山
賢治 北岡
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賢治 北岡
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shusaku Akiba
周作 秋葉
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Abstract

【課題】軽量・薄型化されていても、(1)ガラス表面の加傷されにくさ及び加傷視認性、(2)ガラス表面の(鋭角物の接触・衝突による)加傷強度、(3)ガラス裏面の曲げ強度、等の強度が高く多様な破損状況に耐え得るディスプレイ装置等に用いられる強度の高いカバーガラスを提供する。
【解決手段】表面圧縮応力が150〜1500MPaかつ内部引張応力が15MPa以下の第一の化学強化ガラス板2と、表面圧縮応力が700〜2000MPaの第二の化学強化ガラス板4と、前記第一の化学強化ガラス2及び前記第二の化学強化ガラス4の間に設けられた樹脂層3と、を備えるカバーガラス1。
【選択図】図1

Description

本発明は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、タブレットPCなどのモバイル機器、タッチパネル、大型液晶テレビなどの大型薄型テレビ、車載メータ表示装置等のディスプレイ装置等に用いられるカバーガラスに関する。
近年、携帯電話、PDA、タブレットPC等のモバイル機器やタッチパネル、液晶テレビなどのディスプレイ装置に対しては、ディスプレイの保護ならびに美観を高めるためのカバーガラス(保護ガラス)が用いられることが多くなっている。また、液晶テレビなど薄型テレビのカバーガラスなどには、例えば反射防止、衝撃破損防止、電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、色調補正などの機能を有する膜の形成、など表面加工が行われることがある。
このようなディスプレイ装置に対しては、薄型デザインによる差異化や移動のための負担の減少のため、軽量・薄型化が要求されている。そのため、ディスプレイ保護用に使用されるカバーガラスも薄くすることが要求されている。しかし、カバーガラスの厚さを薄くしていくと、強度が低下し、据え置き型の場合には物体の飛来や落下による衝撃、または携帯機器の場合には使用中の落下などによりカバーガラス自身が割れてしまうことがあり、ディスプレイ装置を保護するという本来の役割を果たすことができなくなるという問題があった。
上記問題を解決するためには、カバーガラスの強度を高めることが考えられ、その方法としてガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法が一般的に知られている。
ガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法としては、軟化点付近まで加熱したガラス板表面を風冷などにより急速に冷却する風冷強化法(物理強化法)と、ガラス転移点以下の温度でイオン交換によりガラス板表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)をイオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはNaイオン、Kイオン)に交換する化学強化法が代表的である。
前述したようにカバーガラスの厚さは薄いことが要求されている。しかしながら、カバーガラスとして要求される、厚みが2mmを下回るような薄いガラス板に対して風冷強化法を適用すると、表面と内部の温度差がつきにくいために圧縮応力層を形成することが困難であり、目的の高強度という特性を得ることができない。そのため、化学強化法によって強化されたカバーガラスが通常用いられている。
このようなカバーガラスとしてはソーダライムガラスやアルミノシリケートガラスを化学強化したものが広く用いられている。カバーガラスに要求される特性は、(1)ガラス表面の加傷されにくさ及び加傷視認性、(2)ガラス表面の(鋭角物の接触・衝突による)加傷強度、(3)ガラス裏面の曲げ強度、の3つに大別され、それら全てで高い強度が要求される。ここで、加傷視認性とは、加傷された傷の見えやすさのことである。化学強化ガラスでは表層に大きな圧縮応力(CS)を導入することが可能であり、上記(3)に対して、高い信頼性を持ったガラスを実現することが可能である。
しかし、上記(2)の加傷強度に関しては、加傷により圧縮応力層深さ(DOL)を突き抜けるクラックが発生してしまうと、内部に存在する高い引張応力(CT)により、簡単に自走分断破壊してしまうという欠点がある。この欠点を克服するためにはCTを小さくすれば良いが、そのためにはCSもしくはDOLを小さくする必要があるため、上記(1)〜(3)の要求を全て満たすカバーガラスを提供することが困難である。
特開2007−11210号公報 米国特許出願公開第2009/0298669号明細書
上記したように、カバーガラスに要求される特性は、(1)ガラス表面の加傷視認性、(2)ガラス表面の(鋭角物の接触・衝突による)加傷強度、(3)ガラス裏面の曲げ強度、の3つに大別され、それら全てで高い強度が要求される。CTを小さくするためには、CSもしくはDOLを小さくする必要があるため、単一のガラスで上記(1)〜(3)の要求を全て満たすカバーガラスを提供することが困難である。
モバイル機器は、手やポケットやカバンから落としてしまいそのカバーガラスに傷(圧痕)がつく機会が多く、また、落としたモバイル機器を踏んだりモバイル機器をポケットに入れたままその上に座ってしまったりすることもあるのでカバーガラスに大きな負荷がかかる機会も多い。大小のディスプレイ装置がより広く利用されるようになってくると、利用数が少なかったときに比べてカバーガラスが破損する状況が多様化する。そのため、このような多様化に対し破損しにくいカバーガラスの提供が求められている。なお、多様な破損状況を説明するために一例としてモバイル機器のカバーガラスの例を挙げたが本発明はそれに限定されるものではない。
本発明の一態様のカバーガラスは、表面圧縮応力が150〜1500MPaかつ内部引張応力が15MPa以下の第一の化学強化ガラス板と、表面圧縮応力が700〜2000MPaの第二の化学強化ガラス板と、前記第一の化学強化ガラス及び前記第二の化学強化ガラスの間に設けられた樹脂層と、を備える。
本発明によれば、多様な破損状況に耐え得るカバーガラスが得られる。
本発明の第一の実施形態のカバーガラスの一態様を模式的に示した断面図である。 本発明の第二の実施形態のカバーガラスの一態様を模式的に示した断面図である。 本発明の第三の実施形態のカバーガラスの一態様を模式的に示した断面図である。 本発明の第三の実施形態のカバーガラスの製造方法の各工程を模式的に示した断面図である。 本発明の第三の実施形態のカバーガラスの製造方法の各工程を模式的に示した断面図である。 本発明の第三の実施形態のカバーガラスの製造方法の各工程を模式的に示した断面図である。 本発明の第三の実施形態のカバーガラスの製造方法の各工程を模式的に示した断面図である。 本発明の第四の実施形態のカバーガラスの一態様を模式的に示す断面図である。
(第一の実施形態)
前記したようなカバーガラスの破損状況の多様化について、この欠点を克服する材料の検討を行った結果、本発明に係るカバーガラスの開発に至った。
図1は本発明の第一の実施形態に係るカバーガラス1を模式的に示した断面図である。このカバーガラス1は、第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の間に樹脂層3が設けられている。なお、カバーガラス1において、第一の化学強化ガラス2側がユーザー面側であり、第二の化学強化ガラス4側が表示装置側(図示せず)となっている。
本発明者らは、カバーガラス1に対し、様々な強度試験を実施することで以下のような知見を得た。(1)カバーガラス1表面の加傷されにくさ及び加傷視認性の向上に関しては第一の化学強化ガラス2の表面にCS層を形成することで改善可能であり、(2)カバーガラス1表面の(鋭角物の接触・衝突による)加傷強度の向上には、第一の化学強化ガラス1の表面にCS層を導入しつつ、内部引張応力(CT)の値を低く抑えることが重要であり、(3)カバーガラス1裏面の曲げ強度の向上には第二の化学強化ガラス4の表面CSの値が重要であることを見出した。本明細書では、傷がより見えにくくなることを加傷視認性が向上すると、定義する。
(2)に関し、CTが高いガラスの場合、クラックが入った際に自走分断破壊を誘起してしまうおそれがあるため、CTを低く抑えるため、CSもしくはDOLを低く抑えなければならず、十分な曲げ強度を確保できないという問題が生じてしまっていた。(2)に関する課題が発生するのは主に表面(ユーザー側の最外面)側である。そこで本発明者らは、図1に示すように、表面側のCTを抑え、裏面(表示デバイス側の最外面)側は十分な曲げ強度を確保できるようなCSとしたカバーガラス1の発明に至った。(2)のクラックを抑制するために、表面側のガラスを未強化のガラスとすると、(1)の加傷強度が低下してしまうため好ましくない。表面側はユーザー側であり、デバイスの筐体からむき出しになっている場合が多いため加傷強度は特に重要視される。
ここで、第二の化学強化ガラス4は、例えば、700MPa以上のCSを有し、DOLが20μm以上の化学強化ガラスを用いることができる。一方、第一の化学強化ガラス2は本実施形態に合わせて特殊な条件で強化したガラスを用いている。具体的には、第二の化学強化ガラス4に比較してCS、もしくはDOLを低く抑え、CTの低い構成としている。簡単に破断しない程度の曲げ強度を持たせているが、従来の第二の化学強化ガラス4と比較して曲げ強度は低くなっている。そのため、単体で化学強化したカバーガラスとして用いるには曲げ強度が十分ではないが、本実施形態では第二の化学強化ガラス4と積層して用いることで、前記した(1)〜(3)の要求を全て満たすカバーガラス1を提供することができる。
樹脂層3には、無色透明であり、ガラスとの接着力及び耐湿性が高い樹脂を用いることができる。樹脂層3の、25℃におけるせん断弾性率は、10Pa〜109Paが好ましく、10Pa〜109Paがより好ましい。樹脂層3のせん断弾性率が10Pa以上であれば、樹脂層3の形状を維持できる。樹脂層3のせん断弾性率が10Pa以上であれば、第一の化学強化ガラス2の鋭角物の衝突破壊に対する耐性を高めることができ、かつ積層体の曲げ強度を向上させることができるため好ましい。
第一の化学強化ガラス2の板厚は、0.03〜0.6mmが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6mmである。第二の化学強化ガラス4の板厚は、0.3〜1.3mmが好ましく、より好ましくは0.4〜0.8mmである。樹脂層3の厚さは0.001〜0.3mmの間で適宜調整することができる。カバーガラス1としての厚さ(第一の化学強化ガラス2+樹脂層3+第二の化学強化ガラス4)は、0.3〜2mmが好ましく、より
好ましくは0.3〜1mmである。例えば、第一の化学強化ガラス2を第二の化学強化ガラス4よりも厚くした場合、第一の化学強化ガラス2のCTを大きくすることなくCS及びDOLを大きくし易くなり、(2)の加傷強度を損ねることなく(1)の加傷視認性を向上させることができる。また、第二の化学強化ガラス4を第一の化学強化ガラス2よりも厚くした場合、CSの値を大きくし易くなり、かつ曲げ強度も向上させることができる。
(1)の加傷視認性の向上にはCSが高い程効果があり、CSの値は具体的には150MPa以上、より好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは450MPa以上である。一方、CSが高すぎるとCTが高くなってしまい(2)ガラス表面の加傷強度が低くなってしまう為好ましくない。CSの値は具体的には1500MPa以下、より好ましくは1200MPa以下、さらに好ましくは900MPa以下である。(3)の曲げ強度の向上にはCSが高い程効果があり、必要なCSの値は具体的には700MPa以上、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは900MPa以上であり、また、2000MPa以下、より好ましくは1800MPa以下、さらに好ましくは1600MPa以下である。(3)の曲げ強度の向上には圧縮応力層の深さ(DOL)が大きい程効果があり、具体的には20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μmである。第一の化学強化ガラス2は、表面に圧縮強化層を有し、加傷強度が高められている一方、DOLよりも深い層にクラックが入った場合に、自走分断破壊を誘起しない程度に抑えられている。このCTは具体的には15MPa以下、13MPa、より好ましくは10MPa以下程度である。第二の化学強化ガラス4は第一の化学強化ガラス及び樹脂層3の背面に位置するため、CT増加による(2)に関する加傷強度の低下を気にすることなく、曲げ強度の向上のために大きなCS及びDOLを導入することができる。このときCTの値は第一の化学強化ガラスと比較して大きく、20MPa以上、30MPa以上、典型的には40MPa以上のCTのガラスを用いることができる。
そのため、第一の化学強化ガラス2の板厚が、例えば、0.03〜0.6mmの場合、CSが150〜1500MPaであり、CTが15MPa以下、13MPa、より好ましくは10MPa以下とすることが好ましい。特に、CTが10〜15MPaの場合、CSは、より好ましくは150〜1200MPa、さらに好ましくは150〜900MPaである。また、第二の化学強化ガラス4の板厚が、例えば、0.3〜1.3mmの場合、CSが700〜2000MPaであり、DOLが20μm以上とすることが好ましい。特に、CSが700〜2000MPa、DOLが20μm以上のとき、CTは20MPa以上、30MPa以上、典型的には40MPa以上である。
第一の実施形態のカバーガラス1は、例えば、第一の化学強化ガラス2或いは第二の化学強化ガラス4いずれかの表面に樹脂層3の材料となる硬化性樹脂組成物を供給し、もう一方のガラス板を積層した後、樹脂組成物を硬化させることによって製造することができる。硬化性樹脂組成物の供給法としては、ダイコート法やスピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法等を用いることができる。
(第二の実施形態)
図2は本発明の第二の実施形態に係るカバーガラス5を模式的に示した断面図である。本実施形態は前記した第一の実施形態とは、樹脂層3の周囲をシール部6が取り囲んでいる点で異なり、それ以外の部分は前記した第一の実施形態と同様の構成である。従って、第一の実施形態と共通する部分には同じ符号を用いて、その説明は省略する。
シール部6は樹脂により形成されており、樹脂層3の周囲を切れ目なく取り囲むように形成されている。シール部6の樹脂の弾性率は、樹脂層3の樹脂の弾性率より高い方が好ましい。なお、シール部6の外側の面は第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の側面よりも外側にせり出していても構わない。
第二の実施形態のカバーガラス5の製造方法は、例えば、第一の化学強化ガラス2或いは第二の化学強化ガラス4いずれかの表面にシール部6の材料となる硬化性樹脂組成物を供給し、硬化させてシール部6を形成する。その後、シール部6で囲まれた領域に樹脂層3の材料となる硬化性樹脂組成物を供給し、もう一方のガラス板を積層した後、樹脂組成物を硬化させることによって製造することができる。本実施形態によれば、シール部6の形成後に樹脂層3を形成するため、寸法精度良く樹脂層3を形成することができる。
(第三の実施形態)
図3は本発明の第三の実施形態に係るカバーガラス7を模式的に示した断面図である。本実施形態は前記した第一の実施形態とは、樹脂層3が第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の側面を覆うように形成されている点で異なり、それ以外の部分は前記した第一の実施形態と同様の構成である。従って、第一の実施形態と共通する部分には同じ符号を用いて、その説明は省略する。
図3に示すように、本発明の第三の実施形態に係るカバーガラス7は、樹脂層3が第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の端面を覆うように形成されている。これにより、第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の端面が樹脂層3により覆われているため、カバーガラス7の強度をさらに高めることができる。
次に、第三の実施形態に係るカバーガラス7の製造方法について説明する。図4〜7は第三の実施形態に係るカバーガラス7の製造方法の各工程を模式的に示した断面図である。まず、図4に示すように、第一の粘着フィルム8上に第一の化学強化ガラス2を配置する。その後、第一の化学強化ガラス2を取り囲むようにガイド部9を配置する。ガイド部9は樹脂材料でも金属材料でも構わない。
続いて、図5に示すように、ガイド部9で取り囲まれた領域に樹脂層3の材料となる硬化性樹脂組成物10を供給する。硬化性樹脂組成物10の供給後、図6に示すように、第二の粘着フィルム11上に貼り付けられた第二の化学強化ガラス4を、第二の化学強化ガラス4を下側にして硬化性樹脂組成物10に接触させる。第二の粘着フィルム11がガイド部9の上に載るため、ガイド部9の高さを調整することによって樹脂層3の膜厚及びカバーガラス7の厚さを調整することができる。なお、予め、ガイド部9の高さに応じて硬化性樹脂組成物10の供給量を調整しておくことが好ましい。
次いで図7のように、積層後に硬化性樹脂組成物10を硬化させて樹脂層3を形成してから第一の粘着フィルム8、第二の粘着フィルム11、ガイド部9を外すことでカバーガラス7を得る。硬化性樹脂組成物10は特に限定されず、熱を加えて硬化させたり、光を照射して硬化させたりすることができる。なお、本説明においては、第一の化学強化ガラス2を載置してから第二の化学強化ガラス4を積層する方法について説明したが、第二の化学強化ガラス4を載置してから第一の化学強化ガラス2を積層する方法であってももちろん構わない。
本製造方法では、ガイド部9の位置により、第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の端面を覆うように設けられる樹脂層3の幅(カバーガラス主面と平行方向)を自由に調整することができる。そのため、樹脂層3を予め大きめに形成し、後に樹脂層3を削ることで寸法精度の高いカバーガラス7を製造することができるため好ましい。
(第四の実施形態)
図8は本発明の第四の実施形態に係るカバーガラス12を模式的に示した断面図である。本実施形態は前記した第三の実施形態とは、第一の化学強化ガラス2の表面側に面取り部13が設けられており、面取り部13上に樹脂層3が回り込んで形成されている点で異なり、それ以外の部分は前記した第三の実施形態と同様の構成である。従って、第三の実施形態と共通する部分には同じ符号を用いて、その説明は省略する。
本実施形態は、第一の化学強化ガラス2の表面側の端部が面取りされ、樹脂層3で覆われている。カバーガラス8が衝撃を受けた際に、破壊起点となりやすい、第一の化学強化ガラス2の端部が露出していないため、第三の実施形態と比較してさらに割れにくい構造とすることができる。なお、本実施形態のカバーガラス12は、前記した第三の実施形態のカバーガラス7と同様の方法で製造することができる。
前記した第三の実施形態のカバーガラス7及び第四の実施形態のカバーガラス8の場合、第二の化学強化ガラスの端面は樹脂層で覆われており、端面がむき出しの化学強化ガラスと比較して低いDOLの値でも十分な端面強度が期待できる。そのため、第一及び第二の実施形態と比較してDOL及びCTを低く抑えることができる。この場合、第二の化学強化ガラスのDOLの値は、具体的には10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μmである。また、このとき、CTの値は、具体的には10MPa以上、15MPa以上、20MPa以上とすることが可能である。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4のガラス転移点Tgは400℃以上であることが好ましい。400℃未満ではイオン交換時に表面CSが緩和してしまい、十分な応力を得られないおそれがある。より好ましくは550℃以上である。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4のガラスの粘度が10dPa・sとなる温度T2は好ましくは1800℃以下、より好ましくは1750℃以下である。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4のガラスの粘度が10dPa・sとなる温度T4は1350℃以下であることが好ましい。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4のガラスの比重ρは2.20〜2.55であることが好ましい。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4のガラスのヤング率Eは65GPa以上であることが好ましい。68GPa未満ではガラスの剛性や破壊強度が不十分となるおそれがある。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4のガラスのポアソン比σは0.25以下であることが好ましい。0.25超ではガラスの耐クラック性が不十分となるおそれがある。
次に、本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2のガラス組成について、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。
SiOはガラスの骨格を構成する成分であり必須であり、また、ガラス表面に傷(圧痕)がついた時のクラックの発生を低減させる、または化学強化後に圧痕をつけた時の破壊率を小さくする成分である。SiOが50%未満ではクラッキング耐性またはチッピング耐性が低下する。SiOは好ましくは52%以上、より好ましくは54%以上である。SiOが79%超ではガラスの粘性が増大して溶融性が低下する。
Alはイオン交換性能及びチッピング耐性を向上させるために有効な成分であり、表面CSを大きくする成分であり、または対面角110°圧子で圧痕をつけた時のクラック発生率を小さくする成分であり、必須である。Alが1%未満ではイオン交換により、所望の表面CS値またはDOLが得られなくなる。好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上、典型的には5%以上である。Alが25%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。Alは好ましくは23%以下、典型的には20%以下である。
SiO及びAlの含有量の合計SiO+Alは85%以下であることが好ましい。85%超では高温でのガラスの粘性が増大し、溶融が困難となるおそれがあり、好ましくは82%以下、より好ましくは81%以下である。また、SiO+Alは60%以上であることが好ましい。60%未満では圧痕がついた時のクラック耐性が低下し、より好ましくは62%以上である。
NaOもしくはLiOはイオン交換により表面CS層を形成させ、またガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須である。
LiOを含まない場合、NaOが4%未満ではイオン交換により所望の表面CS層を形成することが困難となり、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。NaOが27%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは25%以下である。
NaOを含まない場合、LiOが4%未満ではイオン交換により所望の表面CS層を形成することが困難となり、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。LiOが25%超ではガラスが失透し易くなり、製造が困難になる。好ましくは24%以下である。
NaOとLiOの合計が4%未満の場合ではイオン交換により所望の表面CS層を形成することが困難となり、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。NaOとLiOの合計が27%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは25%以下である。
Oは必須ではないがイオン交換速度を増大させるため、10%以下の範囲で含有してもよい。10%超では圧痕からクラックが発生しやすくなる、または硝酸カリウム溶融塩中のNaNO濃度による表面CSの変化が大きくなるおそれがある。KOは5%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下、典型的には0.3%以下である。硝酸カリウム溶融塩中のNaNO濃度による表面CSの変化を小さくしたい場合にはKOは含有しないことが好ましい。
MgOは必須ではないが表面CSを大きくする成分であり、また溶融性を向上させる成分であり、18%以下の範囲で含有してもよい。応力緩和を抑制したい場合などにはMgOを含有させることが好ましい。MgOを含有しない場合は化学強化処理を行う際に溶融塩温度のばらつきに起因して応力緩和の度合いが化学強化処理槽の場所により変化しやすくなり、その結果安定したCS値を得ることが困難になるおそれがある。また、MgOが19%超ではガラスが失透しやすくなり、または硝酸カリウム溶融塩中のNaNO濃度による表面CSの変化が大きくなるおそれがあり、好ましくは18%以下である。
ZrOは必須ではないが、高温での粘性を低下させるために、または表面CSを大きくするために5%までの範囲で含有してもよい。ZrOが5%超では圧痕からクラックが発生する可能性が高まるおそれがある。そのため、2%以下が好ましく、1%以下がさらに好ましく、典型的にはZrOは含有しない。
は必須ではないが、高温での溶融性またはガラスのクラッキング耐性向上のために16%以下の範囲で含有してもよい。Bが16%超では均質なガラスを得にくくなり、ガラスの成型が困難になるおそれがある。
SiO、Al、NaO、MgO、及びBの合計、もしくはSiO、Al、LiO、MgO、及びBの含有量の合計は好ましくは98%以上である。当該合計が98%未満ではクラック耐性を維持しつつ所望のCS層を得ることが困難になるおそれがある。典型的には98.3%以上である。
本発明の各実施形態に係る第一の化学強化ガラス2の好ましいガラス成分は本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は2%未満であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
ZnOはガラスの高温での溶融性を向上するために例えば2%まで含有してもよい場合があるが、好ましくは1%以下であり、フロート法で製造する場合などには0.5%以下にすることが好ましい。ZnOが0.5%超ではフロート成型時に還元し製品欠点となるおそれがある。典型的にはZnOは含有しない。
TiOはガラス中に存在するFeイオンと共存することにより、可視光透過率を低下させ、ガラスを褐色に着色するおそれがあるので、含有するとしても1%以下であることが好ましく、典型的には含有しない。
CaOは高温での溶融性を向上させる、または失透を起こりにくくするために9%以下の範囲で含有してもよい。CaOが9%超ではイオン交換速度またはクラック発生に対する耐性が低下する。典型的にはCaOは含有しない。
SrOは必要に応じて含有してもよいが、MgO、CaOに比べてイオン交換速度を低下させる効果が大きいので含有する場合であってもその含有量は1%未満であることが好ましい。典型的にはSrOは含有しない。
BaOはアルカリ土類金属酸化物の中でイオン交換速度を低下させる効果が最も大きいので、BaOは含有しないこととするか、含有する場合であってもその含有量は1%未満とすることが好ましい。
SrOまたはBaOを含有する場合それらの含有量の合計は1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%未満である。
CaO、SrO、BaO及びZrOのいずれか1以上を含有する場合それら4成分の含有量の合計は1.5%未満であることが好ましい。当該合計が1.5%以上ではイオン交換速度が低下するおそれがあり、典型的には1%以下である。
ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。ただし、タッチパネルなどディスプレイ装置の視認性を上げるため、可視域に吸収をもつFe、NiO、Crなど原料中の不純物として混入するような成分はできるだけ減らすことが好ましく、各々質量百分率表示で0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下である。
次に、本発明の各実施形態に係る第二の化学強化ガラス4のガラス組成について、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。
SiOはガラスの骨格を構成する成分であり必須であり、また、ガラス表面に傷(圧痕)がついた時のクラックの発生を低減させる成分である。SiOが50%未満ではガラスとしての安定性や耐候性またはチッピング耐性が低下する。SiOは好ましくは52%以上、より好ましくは54%以上である。SiOが79%超ではガラスの粘性が増大して溶融性が低下する。
Alはイオン交換性能及びチッピング耐性を向上させるために有効な成分であり、表面CSを大きくする成分であり、または110°圧子で圧痕をつけた時のクラック発生率を小さくする成分であり、必須である。Alが1%未満ではイオン交換により、所望の表面CS値またはDOLが得られなくなる。好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、典型的には7%以上である。Alが25%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。Alは好ましくは23%以下、典型的には20%以下である。
SiO及びAlの含有量の合計SiO+Alは85%以下であることが好ましい。85%超では高温でのガラスの粘性が増大し、溶融が困難となるおそれがあり、好ましくは82%以下、より好ましくは81%以下である。また、SiO+Alは60%以上であることが好ましい。60%未満では圧痕がついた時のクラック耐性が低下し、より好ましくは62%以上である。
NaOもしくはLiOはイオン交換により表面CS層を形成させ、またガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須である。
LiOを含まない場合、NaOが6%未満ではイオン交換により所望の表面CS層を形成することが困難となり、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。NaOが27%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは25%以下である。
NaOを含まない場合、LiOが6%未満ではイオン交換により所望の表面CS層を形成することが困難となり、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。Li」Oが25%超ではガラスが失透し易くなり、製造が困難になる。好ましくは24%以下である。
NaOとLiOの合計が6%未満の場合ではイオン交換により所望の表面CS層を形成することが困難となり、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。NaOとLiOの合計が27%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは25%以下である。
Oは必須ではないがイオン交換速度を増大させるため、10%以下の範囲で含有してもよい。10%超では圧痕からクラックが発生しやすくなる、または硝酸カリウム溶融塩中のNaNO濃度による表面CSの変化が大きくなるおそれがある。KOは5%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下、典型的には0.3%以下である。硝酸カリウム溶融塩中のNaNO濃度による表面CSの変化を小さくしたい場合にはKOは含有しないことが好ましい。
MgOは必須ではないが表面CSを大きくする成分であり、また溶融性を向上させる成分であり、18%以下の範囲で含有してもよい。応力緩和を抑制したい場合などにはMgOを含有させることが好ましい。また、MgOが19%超ではガラスが失透しやすくなり、または硝酸カリウム溶融塩中のNaNO濃度による表面CSの変化が大きくなるおそれがあり、好ましくは18%以下である。
ZrOは必須ではないが、高温での粘性を低下させるために、または表面CSを大きくするために5%までの範囲で含有してもよい。ZrOが5%超では圧痕からクラックが発生する可能性が高まるおそれがある。そのため、2%以下が好ましく、1%以下がさらに好ましく、典型的にはZrOは含有しない。
は必須ではないが、高温での溶融性またはガラス強度の向上等のために16%以下の範囲で含有してもよい。Bが16%超では均質なガラスを得にくくなり、ガラスの成型が困難になるおそれがある。
SiO、Al、NaO、LiO、MgO、及びBの合計は好ましくは98%以上である。当該合計が98%未満ではクラック耐性を維持しつつ所望のCS層を得ることが困難になるおそれがある。典型的には98.3%以上である。
本発明の各実施形態に係る第二の化学強化ガラス4の好ましいガラス成分は本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は2%未満であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
ZnOはガラスの高温での溶融性を向上するために例えば2%まで含有してもよい場合があるが、好ましくは1%以下であり、フロート法で製造する場合などには0.5%以下にすることが好ましい。ZnOが0.5%超ではフロート成型時に還元し製品欠点となるおそれがある。典型的にはZnOは含有しない。
TiOはガラス中に存在するFeイオンと共存することにより、可視光透過率を低下させ、ガラスを褐色に着色するおそれがあるので、含有するとしても1%以下であることが好ましく、典型的には含有しない。
CaOは高温での溶融性を向上させる、または失透を起こりにくくするために8%以下の範囲で含有してもよい。CaOが9%超ではイオン交換速度またはクラック発生に対する耐性が低下する。典型的にはCaOは含有しない。
SrOは必要に応じて含有してもよいが、MgO、CaOに比べてイオン交換速度を低下させる効果が大きいので含有する場合であってもその含有量は1%未満であることが好ましい。典型的にはSrOは含有しない。
BaOはアルカリ土類金属酸化物の中でイオン交換速度を低下させる効果が最も大きいので、BaOは含有しないこととするか、含有する場合であってもその含有量は1%未満とすることが好ましい。
SrOまたはBaOを含有する場合それらの含有量の合計は1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%未満である。
CaO、SrO、BaO及びZrOのいずれか1以上を含有する場合それら4成分の含有量の合計は1.5%未満であることが好ましい。当該合計が1.5%以上ではイオン交換速度が低下するおそれがあり、典型的には1%以下である。
ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。ただし、タッチパネルなどディスプレイ装置の視認性を上げるため、可視域に吸収をもつFe、NiO、Crなど原料中の不純物として混入するような成分はできるだけ減らすことが好ましく、各々質量百分率表示で0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下である。
本発明の各実施形態に係る樹脂層3の、25℃におけるせん断弾性率は、10Pa〜109Paが好ましく、10Pa〜109Paがより好ましい。樹脂層3の35℃におけるせん断弾性率は、下記のように測定する。
レオメーター(アントンパール(Anton paar)社製、モジュラーレオメーター PhysicaMCR−301)を用い、測定スピンドルと透光性の定板の隙間を樹脂層3の厚みと同一として、その隙間に樹脂層3となる材料(後述する未硬化の硬化性樹脂組成物)を配置する。さらに、硬化に必要な熱や光を未硬化の硬化性樹脂組成物に加えながら硬化過程のせん断弾性率を測定し、所定の硬化条件における計測値を樹脂層3のせん断弾性率とする。
樹脂層3の厚みは、0.001〜0.3mm好ましい。樹脂層3の厚みが厚い程、第一の化学強化ガラス2の表面側からの外力による衝撃等を樹脂層3が効果的に緩和して、第一の化学強化ガラス2及び第二の化学強化ガラス4の衝突破壊に対する耐性を高めることができる。
樹脂層3となる材料である硬化性樹脂組成物は、低温で硬化でき、かつ硬化速度が速い点から、硬化性化合物及び光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。
硬化性樹脂組成物としては、粘度を前記範囲に調整しやすい点から、前記硬化性化合物として、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が1000〜100000であるオリゴマーの1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマーの1種以上とを含み、モノマーの割合が、オリゴマーとモノマーとの合計(100質量%)のうち、40質量%〜80質量%であるものが好ましい。
オリゴマーの硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点及び透明性の高い樹脂層3が得られる点から、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。
モノマーの硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点及び透明性の高い樹脂層3が得られる点から、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。
モノマーとしては、硬化性樹脂組成物の硬化性、樹脂層3の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられる。
(実施例)
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例用のサンプルとして、板厚の異なるガラス板を複数準備(0.2mm、0.4mm、0.55mm、0.75mm、0.95mm、1.0mm)し、それぞれのガラス板に対して化学強化処理を行った。化学強化処理を行ったガラス板を積層し、例1〜5を作成した。例1〜5のカバーガラスは前記した第一の実施形態に示した製造方法で製造した。例6、7は例1〜5と破壊強度を比較するためのガラス板である。表1に各例の詳細を示す。表1では、第一の化学強化ガラスを表面ガラス、第二の化学強化ガラスを裏面ガラスとしている。試験例1及び例3が実施例、例2、4〜7が比較例である。
Figure 2015034107
これら例1〜7に対して、ROR(Ring On Ring)試験及びビッカース圧子を用いた破壊強度試験を実施した。なお、ROR試験はオリエンテック社製のテンシロンUTA―5kNを用い、押し込み速度0.5mm/minにて試験を実施した。ビッカース圧子を用いた破壊強度試験はFuture−tech製ビッカース硬度計FLC−50Vを用いて実施した。表2にその結果を示す。なお、本結果で言う「破壊」とは、5mm角の領域に渡って破断が起こった場合に破壊されたと定義している。なお、荷重をかけた面以外が破断した場合であっても、カバーガラス全体としては破断が生じているため、破壊されたものとしている。
Figure 2015034107
表面の面に曲げが発生する事例としてはモバイル機器の落下時が大半を占める。表面に発生する曲げ応力を以下の方法で見積もった。種々のスマートフォンのカバーガラス表面に歪ゲージを設置した状態で1.0mの高さからグラナイト面に落下させたときに観測された発生応力は150MPa以下であった。本試験における曲げ応力は荷重440Nのとき200MPaの応力が発生する。本試験において表面の破壊荷重が440N以上であると、カバーガラス表面の曲げ破壊が抑制できる。カバーガラスの面の曲げ強度は一般的に表面よりも裏面部分に高い強度が要求され、裏面の破壊荷重は高ければ高いほど望ましい。表2から分かるように、例1及び例3のカバーガラスは、カバーガラスとして重要視される特性である対表面の鋭角物圧入、対表面裏面の曲げ耐性ともに優れている。すなわち、前記した(1)〜(3)の全ての要求を満たすものであることが分かった。
一方、例2のように、DOLの値が大きくなることでCTの値が大きくなってしまうと、表面裏面の曲げ耐性は確保できるものの、表面の鋭角物圧入に弱くなる。従って表面ガラスのDOLを調整し、CTを15MPa以下に抑えることが好ましいと言える。
例4及び5は、表面ガラスに化学強化処理をしていないガラス(以下未強化ガラスと称する)を用いたものである。表2から分かるように、例4、5ともに未強化ガラスではROR試験における表面破壊荷重が440N以下であり、対表面の曲げ耐性が十分ではない。
また、例6及び7は、比較として本発明の実施形態ように積層構造とせず、1枚のガラス板である。表2から分かるように、例6、7ともに十分な表面裏面の曲げ耐性を有している一方で鋭角物圧入に弱い。これは、十分な曲げ耐性を確保するために表面のCSを大きくした結果、ガラス内部のCTも大きくなるため鋭角物圧入に弱くなってしまうためと考えられる。
以上に示したように、表面ガラスのCSの値を150〜1500MPa、CTの値を15MPa以下、裏面ガラスのCSの値を700〜2000MPaとし、これらのガラスを積層することで多様な破損状況に対して破損しにくいカバーガラスを提供することができる。
1、6、7、12 カバーガラス
2 第一の化学強化ガラス
3 樹脂層
4 第二の化学強化ガラス
5 シール部
8 第一の粘着フィルム
9 ガイド部
10 硬化性樹脂組成物
11 第一の粘着フィルム
13 面取り部

Claims (17)

  1. 表面圧縮応力が150〜1500MPaかつ内部引張応力が15MPa以下の第一の化学強化ガラス板と、
    表面圧縮応力が700〜2000MPaの第二の化学強化ガラス板と、
    前記第一の化学強化ガラス及び前記第二の化学強化ガラスの間に設けられた樹脂層と、を備えるカバーガラス。
  2. 前記第二の化学強化ガラスの内部引張応力が20MPa以上である請求項1に記載のカバーガラス。
  3. 前記第一の化学強化ガラスの内部引張応力が13MPa以下である請求項1または2に記載のカバーガラス。
  4. 前記第二の化学強化ガラス板の板厚は、前記第一の化学強化ガラス板の板厚よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  5. 前記第二の化学強化ガラス板の板厚は、前記第一の化学強化ガラス板の板厚よりも小さい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  6. 前記樹脂層は、前記第一及び第二の化学強化ガラス板の端面を覆うように設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  7. 前記第一の化学強化ガラス板の樹脂層とは反対側の面の端部には面取り部が設けられており、前記樹脂層が前記面取り部を覆うように設けられていること、請求項6に記載のカバーガラス。
  8. 前記樹脂層の周囲を隙間無く取り囲むシール部をさらに有する、請求項1に記載のカバーガラス。
  9. 前記シール部の25℃におけるせん断弾性率は、前記樹脂層の25℃におけるせん断弾性率よりも大きい、請求項8に記載のカバーガラス。
  10. 厚さが0.3〜2mmである請求項1〜9のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  11. 前記第一の化学強化ガラス板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを50〜79%、Alを3〜25%、NaOを0〜27%、LiOを0〜25%、NaOとLiOの合計が4〜27%、KOを0〜10%、MgOを0〜18%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜9%、Bを0〜16%含有するガラスである請求項1〜10のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  12. 前記第一の化学強化ガラス板は、SiO、Al、NaO、LiO、MgO、及びBの合計が98%以上である請求項11に記載のカバーガラス。
  13. 前記第二の化学強化ガラス板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを50〜79%、Alを5〜25%、NaOを6〜27%、LiOを6〜25%、NaOとLiOの合計が6〜27%、KOを0〜10%、MgOを0〜18%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜9%、Bを0〜16%含有するガラスである請求項11または12に記載のカバーガラス。
  14. 前記第二の化学強化ガラス板は、NaO含有量からAl含有量を減じた差が5%未満である請求項13に記載のカバーガラス。
  15. 前記第二の化学強化ガラス板は、LiO含有量からAl含有量を減じた差が5%未満である請求項13に記載のカバーガラス。
  16. 前記第二の化学強化ガラス板は、SiO、Al、NaO、LiO、MgO及びBの含有量の合計が98%以上である請求項13〜15のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  17. 前記第二の化学強化ガラス板は、SiO、Al、NaO及びMgOの含有量の合計が98%以上である請求項13〜15のいずれか1項に記載のカバーガラス。
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