JP2015032889A - 弾性表面波素子、発振器及び電子部品 - Google Patents

弾性表面波素子、発振器及び電子部品 Download PDF

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和博 廣田
Kazuhiro Hirota
和博 廣田
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Abstract

【課題】圧電基板上に櫛歯状の電極を設けた弾性表面波素子において、当該弾性表面波素子に良好な温度特性を持たせること。【解決手段】オイラー角が(0?,17?〜22?,0?)の面上を弾性表面波(SAW)が伝搬するように構成(切断)された水晶基板10上に、IDT電極2及び反射器3を備えた共振子1を配置する。そして、この水晶基板10における共振子1が形成された表面側に、酸化シリコン膜を形成する。補償膜20の具体的な形成位置の一例としては、IDT電極2において互いに隣接する電極指6、6間のスペース領域15が挙げられる。【選択図】図7

Description

本発明は、弾性表面波素子、この弾性表面波素子を備えた発振器及び電子部品に関する。
弾性表面波デバイスとして、タンタル酸リチウム(LiTaO3)やタンタル酸ニオブ(LiNbO3)、あるいは水晶(SiO2)などの圧電基板上に櫛歯状の電極(IDT(Inter Digital Transducer)電極)を配置した構成が知られている。前記デバイスとして、具体的には、IDT電極を入力電極及び出力電極として配置したSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタや、IDT電極の両側に反射器を形成したSAW共振子などが挙げられる。
このデバイスでは、IDT電極における電極指の周期長に応じて圧電基板上を伝搬する弾性表面波の波長が変わるので、当該デバイスが使用される周波数帯に基づいて前記周期長が設定される。そして、例えば圧電基板のカット角、IDT電極の膜厚(詳しくは波長比膜厚)あるいは電極指のライン占有率などのパラメータを介して、当該デバイスの特性が調整される。
しかしながら、前記デバイスの周波数帯を例えば500MHz以上もの高周波域に設定しようとすると、良好な特性が得られにくい。具体的には、電極指の膜厚寸法や幅寸法には現実的に製造可能な下限値があり、一方前記高周波域ではこの下限値を下回る範囲に前記パラメータの最適値が収束しやすい。そのため、このような高周波域にて弾性表面波が伝搬するように実際のデバイスを構成しようとすると、前記下限値を越えるようにパラメータを設計する必要があるので、それ程良好な特性は得られない。
特許文献1には、YカットX伝搬水晶基板や、弾性表面波の伝搬路に絶縁膜を形成する技術について記載されており、特許文献2には水晶基板表面を誘電体膜により被覆した素子について記載されている。特許文献3には、水晶ウエハのSTカットについて記載されている。しかしながら、これら特許文献1〜3には、既述の高周波帯において、周波数特性のみならず伝搬損失についても良好な特性が得られる技術については記載されていない。
特開2005−51574 特開昭61−199315 特表2006−513649
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電基板上に櫛歯状の電極を設けた弾性表面波素子において、当該弾性表面波素子に良好な温度特性を持たせることのできる技術を提供することにある。
本発明の弾性表面波素子は、
オイラー角が(0°,17°〜22°,0°)の面上を弾性表面波が伝搬するように構成された水晶基板と、
この水晶基板上に配置され、弾性表面波が伝搬する方向と交差する方向に伸びる電極を当該伝搬方向に沿って互いに平行に複数本並べると共に、これら電極同士を互いに電気的に接続するようにバスバーを形成した、アルミニウムを主体として設けられた周期構造部と、
前記水晶基板の表面のうち前記周期構造部側の表面における少なくとも一部に形成され、温度特性を補償するための絶縁体からなる補償膜と、を備えたことを特徴とする。
前記弾性表面波素子としては、以下のように構成しても良い。
前記補償膜は、前記水晶基板と前記周期構造部との間における当該水晶基板の表面、及び互いに隣接する前記電極間の領域における前記水晶基板の表面の少なくとも一方に形成されている構成。
前記補償膜は、前記電極の露出面及び互いに隣接する前記電極間の領域における前記水晶基板の表面を覆うように形成されている構成。
弾性表面波の伝搬方向における前記電極の幅寸法をD、弾性表面波の伝搬方向における前記電極間の離間寸法をSとすると、前記幅寸法Dと前記離間寸法Sとの合計値に対する前記幅寸法Dの割合である前記電極のライン占有率は、0.5よりも小さい構成。
前記補償膜の膜厚寸法は、前記電極の膜厚寸法よりも薄くなるように形成されている構成。
前記電極は、前記水晶基板の表面において500MHz以上の周波数に対応する波長の弾性表面波が伝搬するように配置されている構成。
本発明の発振器は、既述の弾性表面波素子を備えたことを特徴とする。
本発明の電子部品は、既述の弾性表面波素子を備えたことを特徴とする。
本発明は、オイラー角が(0°,17°〜22°,0°)の面上を弾性表面波が伝搬するように水晶基板を構成すると共に、この弾性表面波の波長に対応するように電極を周期的に水晶基板上に並べている。そして、水晶基板の表面のうち前記電極側の表面における少なくとも一部に、温度特性を補償するための絶縁膜からなる補償膜を形成している。そのため、弾性表面波素子の周波数温度特性に対して、伝搬損失の温度特性を独立して調整できる。従って、温度特性に優れた弾性表面波素子を得ることができる。
本発明の弾性表面波素子の一例を示す平面図である。 前記弾性表面波素子を示す縦断面図である。 前記弾性表面波素子を示す縦断面図である。 従来の弾性表面波素子について得られた特性図である。 従来の弾性表面波素子について得られた特性図である。 本発明の弾性表面波素子について得られた特性図である。 本発明の弾性表面波素子について得られた特性図である。 本発明の他の例における弾性表面波素子を示す縦断面図である。 本発明の別の例における弾性表面波素子を示す縦断面図である。 前記別の例について得られた特性図である。 前記別の例について得られた特性図である。 前記弾性表面波素子が適用される電子部品の一例を示す電気回路図である。
[弾性表面波素子の概観]
本発明の弾性表面波素子の実施の形態の一例について、図1〜図3を参照して説明する。この弾性表面波素子は、図1に示すように、オイラー角が(0°,17°〜22°,0°)の面上を弾性表面波(SAW)が伝搬するように切断された水晶基板10上に共振子1を配置して構成されている。共振子1は、アルミニウム(Al)を主体とした導電膜(導電膜に含まれるアルミニウムが90重量%以上)により形成されている。弾性表面波は、図1中前後方向に伝搬するように構成されている。また、この例では、前記オイラー角は、(0°,18.9°,0°)となっている。図1中41はトランジスタなどを含むICチップであり、40はこのICチップ41及び水晶基板10が搭載されるベース基板である。また、図2中43はこのベース基板40の上方領域を気密に塞ぐカバー体である。尚、弾性表面波素子が適用される電気回路については後で説明する。
共振子1は、IDT電極2と、弾性表面波の伝搬方向においてこのIDT電極2の一方側及び他方側に各々形成された反射器3、3とを備えている。IDT電極2は、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように配置された一対のバスバー5、5と、これらバスバー5、5間において互いに交差するように櫛歯状に形成された複数本の電極指6と、を備えている。この例では、IDT電極2は、一対のバスバー5、5のうち一方側のバスバー5から伸びる電極指6と、当該電極指6に隣接して他方側のバスバー5から伸びる電極指6と、が弾性表面波の伝搬方向に沿って交互に配置されて正規型電極をなしている。図1中、7は反射器バスバー、8は反射器電極指である。また、図1中4はベース基板40上を引き回された引き回し電極であり、42はこの引き回し電極4とバスバー5やICチップ41とを接続するためのワイヤなどからなる電極部である。
そして、各々の電極指6は、図3に示すように、互いに隣接する2本の電極指6、6の各々の幅寸法Dと、これら電極指6、6間の離間寸法Sと、からなる周期長λが水晶基板10上を伝搬する弾性表面波(リーキーSAW)の周波数に対応するように構成されている。具体的には、前記周期長λは、共振周波数fが500MHz以上の弾性表面波が伝搬するように構成されており、例えば1.945μmとなっている。共振子1を構成する導電膜(アルミニウム膜)の膜厚寸法h1は、周期長λで規定すると0.0223λであり、具体的には43.4nmである。また、前記幅寸法D及びライン占有率r(r=D÷(D+S))は、夫々0.4862μm及び0.5となっている。尚、図3は水晶基板10を図1のA−A線で切断した縦断面図を示しており、水晶基板10やIDT電極2などの厚さ寸法については模式的に示している。
ここで、水晶基板10の表面において共振子1などの電極膜が形成されていないスペース領域15には、図3に示すように、酸化シリコン膜(アモルファスSiO2)膜からなる絶縁膜が弾性表面波素子の温度特性を補償するための補償膜20として形成されている。言い換えると、補償膜20は、互いに隣接する電極指6、6間の領域、互いに隣接する反射器電極指8、8間の領域及び互いに隣接する電極指6と反射器電極指8との間の領域に形成されている。補償膜20の膜厚寸法h2は、この例では電極指6の膜厚寸法h1よりも小さくなっており、具体的には0.007λ(13.6nm)となっている。
以上の共振子1や補償膜20を水晶基板10上に形成する手法の一例について簡単に説明すると、初めに共振子1や各ポート11〜13を構成する導電膜と、レジスト膜とを下側からこの順番で水晶基板10の表面に積層する。次いで、レジスト膜にパターンを形成し、例えばドライエッチングにより前記導電膜に共振子1、各ポート11〜13及び引き回し電極4をパターニングする。続いて、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、パターニングされた導電膜やレジスト膜を覆うように、補償膜20を構成する絶縁膜を積層する。従って、この絶縁膜は、前記スペース領域15と、レジスト膜の上層側とに形成される。その後、前記絶縁膜や共振子1、更にはレジスト膜が形成された水晶基板10について、例えば有機溶剤やアルカリ水溶液などの薬液に浸漬する。この薬液によってレジスト膜が除去されるので、このレジスト膜の上層側に形成された絶縁膜は、下層側の共振子1から遊離して除去される。こうして既述の図3に示す構造体が得られる。
[従来の弾性表面波素子について]
ここで、以上の弾性表面波素子を構成した理由について、初めに従来の弾性表面波素子の構成及び特性を説明した上で詳述する。図4及び図5は、以下の条件1にて従来の弾性表面波素子の無限周期構造について解析(シミュレーション)して得られた特性を示しており、本発明の補償膜20については形成していない。即ち、図4は、リーキーSAWの共振周波数(1987MHz)が温度変化に応じてどの程度変動するかを示した特性(周波数温度偏差)を示しており、下に凸の2次曲線となっている。図5は、バルク放射による伝搬損失が温度変化に応じてどの程度変動するかを示した特性(伝搬損失特性)であり、右上がりの曲線となっている。
(条件1)
オイラー角:(0°,18°,0°)
周期長λ:1.946μm
電極指6の膜厚h1:0.018λ(=35nm)
ライン占有率r:0.4
電極指8の幅寸法D:0.3892μm
この条件1は、フォトリソグラフィの解像度などについて、特に実際に弾性表面波素子を製造する上で困難なものではない。
図4に示す周波数温度偏差は、弾性表面波素子の使用温度範囲においてできるだけ小さいことが好ましい。そのため、既述の条件1は、前記使用温度範囲を−10℃〜85℃と想定して最適化を行っており、この温度範囲の中央(37.5℃)付近に2次曲線の頂点が位置するように設定されている。図4では、前記温度範囲では、周波数温度偏差は20ppm以内に収まっている。
一方、図5の伝搬損失特性についても、広い温度範囲に亘って小さいことが好ましいが、既述のように温度が高くなる程増加している。
以上の図4及び図5の結果は、電極指6の数量が有限の既述の共振子1についてもほとんど同じである。具体的には、開口長(バスバー5、5間の寸法)が20λの標準的な共振子1を構成した時、共振点におけるQは、25℃では3990になり、一方85℃では2230に低下する。尚、この計算には、電極指6の抵抗によるオーミック損失や1900MHz帯における水晶基板10自身の粘性損失を考慮している。
ここで、図5の伝搬損失特性は、図4における周波数温度偏差と同様に、実際には下に凸の2次曲線となっているが、図5では頂点よりも右側の部分だけが現れている。そのため、伝搬損失特性についても弾性表面波素子の使用温度範囲においてできるだけ小さくするためには、この使用温度範囲における中央付近に前記頂点が位置することが好ましい。言い換えると、図5に現れている2次曲線が右側(プラス側)にシフトするように、パラメータを調整することが好ましい。
一方、パラメータを調整することによって図4の周波数温度偏差の曲線の頂点を右側あるいは左側に移動させると、図5の2次曲線の頂点についても図4の周波数温度偏差の2次曲線の頂点と同様に移動する。即ち、図4における2次曲線の頂点が右側(プラス側)に移動するようにパラメータを調整すると、図5における2次曲線の頂点についても同様に右側に移動する。また、図4における2次曲線の頂点が左側に移動するようにパラメータを調整すると、図5における2次曲線の頂点についても左側に移動する。従って、従来の弾性表面波素子では、周波数温度偏差と、伝搬損失特性と、のいずれについても当該弾性表面波素子の使用温度範囲にてできるだけ小さくなるように(2次曲線の頂点がこの使用温度範囲の中央付近に位置するように)設定することは極めて困難である。そのため、図4及び図5に示す温度特性を持つ従来の弾性表面波素子は、使用温度範囲において周波数温度偏差ができるだけ小さくなるように設定した場合には、低いQを許容できる(使用温度範囲における高温側では伝搬損失特性が高い)用途にしか適用できない。
[本発明の弾性表面波素子について]
そこで、本発明では、既述のように温度特性を補償するための補償膜20を水晶基板10上に形成している。各パラメータについては既に記載済みであるが、既述の従来例との比較のために、条件2として再度記載しておく。尚、この条件2における共振周波数は、従来例と同じ1987MHzである。
(条件2)
オイラー角:(0°,18.9°,0°)
周期長λ:1.945μm
電極指6の膜厚h1:0.0223λ(=43.4nm)
ライン占有率r:0.5
電極指8の幅寸法D:0.4862μm
補償膜20の膜厚寸法h2:0.007λ(=13.6nm)
図6及び図7は、この条件2の本発明(本発明1)にて得られた周波数温度偏差及び伝搬損失特性を夫々示しており、既述の図4及び図5に示した従来例についても併せて実線で描画している。図6の周波数温度偏差において、本発明では、周波数温度偏差が15ppm以下になっており、従来よりも減少している。また、図7の伝搬損失特性は、2次曲線の頂点が弾性表面波素子の使用温度範囲内に収まるように移動しており、0.0012dB/λ程度もの低い水準に改善されている。即ち、本発明では、従来例と比べて、使用温度範囲内における高温側の伝搬損失を大きく低減できると共に、周波数温度偏差についても抑えることができる。そして、弾性表面波素子の使用温度範囲において伝搬損失特性がなるべく小さくなるようにパラメータを調整しても、周波数温度偏差の曲線の頂点位置についてはほとんど変化していない。従って、補償膜20を設けることにより、周波数温度偏差に対して伝搬損失特性を独立して調整できると言える。また、電極指6の数量を有限に設定して共振子1を構成した場合のQを計算すると、25℃では5630、85℃では4600となり、従来例と比べて大幅に改善する。
ここで、条件1と条件2とを比べて分かるように、共振周波数を互いに同じ値に調整しながら、本発明ではライン占有率rを0.5に設定しており、従来例の0.4よりも大きい。従って、条件2よりも更に電極指6の幅寸法Dを狭めることができるので、より一層の高周波数化を図ることができると言える。具体的には、他のパラメータを維持しながら、幅寸法Dだけを条件1と同じ0.3892μmに設定すると、周期長λが1.557μmとなり、共振周波数は2481MHzとなる。膜厚寸法h1、h2は夫々34.8nm及び10.9nmになるので、現実的に製造可能なレベルである。
上述の実施の形態によれば、オイラー角が(0°,17°〜22°,0°)の水晶基板10上に共振子1を配置すると共に、共振子1が配置されていないスペース領域15に補償膜20を形成している。そのため、詳述したように、周波数温度偏差に対して伝搬損失特性を独立して調整できる。言い換えると、周波数温度偏差及び伝搬損失特性のいずれについても弾性表面波素子の使用温度範囲において良好な値となるようにパラメータを調整できる。従って、使用温度範囲において良好な(高い)Qを維持できる。また、従来の構成と比べて電極指6の幅寸法Dの調整幅を広く確保できるため、500MHz以上もの高周波数帯であっても良好な特性を持つ弾性表面波素子を得ることができると。
即ち、伝搬損失をできるだけ小さくするためには、電極指6の波長比膜厚(膜厚寸法h1÷弾性表面波の波長)をなるべく小さくすることが好ましい。しかしながら、弾性表面波素子の高周波化が進むにつれて、前記波長比膜厚を小さくしにくくなる。即ち、既述のように、電極指6の膜厚寸法h1については、現実的な製法上、成膜出来る膜厚寸法には下限がある。具体的には、前記下限は30nmレベルとなる。従って、弾性表面波素子を高周波化しようとする程、波長比膜厚の計算式における分母が小さくなるので、見かけ上の波長比膜厚が大きくなり、そのため伝搬損失特性が劣化する。一方、ライン占有率rについても小さくすることによって伝搬損失特性を改善できるが、弾性表面波素子の高周波化に伴って電極指6の幅寸法Dをある程度小さく設定する必要があり、またフォトリソグラフィの解像度についても限界があるので、それ程良好な伝搬損失特性が得られない。
以上纏めると、伝搬損失特性を改善するにあたって、波長比膜厚及びライン占有率rをパラメータとして調整できるが、弾性表面波素子の高周波化が進む程、パラメータは、現実的に製造可能な下限に近くなり、あるいは前記下限を下回りやすくなる。そのため、これらパラメータの調整自由度が小さくなり、従って伝搬損失特性が劣化しやすくなる。一方、本発明の手法を採ることにより、現実的に製造可能レベルのパラメータに設定しつつ、周波数温度偏差及び伝搬損失特性を改善できる。しかも、ライン占有率rには更に小さくできる自由度を残しているので、より一層の高周波化を図ることができる。
オイラー角が(0°,17°〜22°,0°)となるように切断した水晶基板10は、一般的に、伝搬損失特性については良好な値を取らないカット角として知られており、従って弾性表面波素子に使用する基板として適していないが、本発明の手法によって良好な特性を持つ弾性表面波素子用の基板として使用できる。
ここで、補償膜20について、既述のように電極指6の膜厚寸法h1よりも薄い薄膜としていることから、言い換えると膜厚寸法h1よりも厚く形成しなくても温度特性を改善させる効果が得られることから、当該補償膜20を容易に形成できる。
続いて、本発明の他の例について説明する。図8は、補償膜20をスペース領域15に設けることに代えて、水晶基板10と共振子1との間に介在させた例を示している。即ち、この例では、水晶基板10の表面の全面に亘って補償膜20を成膜した後、共振子1の形成及びパターニングを行っている。具体的なパラメータの一例を以下に条件3として挙げておく。尚、図8では、弾性表面波素子を概略的に示している。後述の図9についても同様である。
(条件3)
オイラー角:(0°,19°,0°)
周期長λ:1.944μm
電極指6の膜厚h1:0.0161λ(=31.3nm)
ライン占有率r:0.5
電極指8の幅寸法D:0.4860μm
補償膜20の膜厚寸法h2:0.005λ(=9.7nm)
この構成について得られた特性を既述の図6及び図7に「本発明2」として表すと、既述の本発明1と同様に良好な特性が得られている。
また、図9は、補償膜20について、スペース領域15に設けること(図3)に代えて、更には水晶基板10と共振子1との間に設けること(図8)に代えて、共振子1の露出面及びスペース領域15における水晶基板10の表面を覆うように形成した例を示している。即ち、水晶基板10の表面に共振子1や各ポート11〜13などを形成した後、当該水晶基板10の表面に補償膜20を積層する。具体的なパラメータとしては、以下の条件4の通りである。
(条件4)
オイラー角:(0°,19.452°,0°)
周期長λ:1.948μm
電極指6の膜厚h1:0.02136λ(=41.6nm)
ライン占有率r:0.3
補償膜20の膜厚寸法h2:0.0077λ(=15.0nm)
この条件4にて得られた周波数温度偏差及び伝搬損失特性について、図10及び図11に「本発明3」として示す。尚、図10及び図11には、補償膜20を設けない従来例についても併せて示しており、この従来例の具体的なパラメータは以下の条件5の通りである。また、図11では、水晶基板10自身の粘性損失も含めて評価しているため、曲線の頂点においても損失がゼロになっていない。
(条件5)
オイラー角:(0°,17.8°,0°)
周期長λ:1.948μm
電極指6の膜厚h1:0.0193λ(=37.6nm)
ライン占有率r:0.3
この例では弾性表面波素子の使用温度範囲を−40℃〜85℃に設定したところ、本発明では、周波数温度偏差が38ppm以下もの小さい値となっており、また伝搬損失特性については最大でも0.003dB/λに改善していた。即ち、本発明では、従来例と比べて、使用温度範囲における高温側の伝搬損失特性を改善できると共に、周波数温度偏差についても改善できる。
また、このように共振子1を覆うように補償膜20を設けることにより、図3の例と比べて、補償膜20を部分的に除去する工程が不要になるので、当該補償膜20の形成プロセスを簡略化できる。更に、図9では、既述の図3の構成と比べて、平面で見た時の補償膜20の形成面積が大きくなる分、当該補償膜20の膜厚寸法h2については少なくて済む。即ち、弾性表面波素子の温度特性を改善するにあたって、補償膜20の重量や体積がある任意の量だけ必要な場合、図9では、図3と比べて、スペース領域15以外の領域においても補償膜20を形成しているため、このスペース領域15における補償膜20の量については少なくなる。従って、互いに隣接する電極指6、6同士の間の領域における比誘電率は、図9では図3よりも小さい。そのため、図9では、図3と比べて、互いに隣接する電極指6、6同士の間で電界が形成される時、補償膜20によって当該電界の形成が阻害されにくくなるので、容量比の増大(結合係数の減少)を避けやすくなる。更にまた、電極指6などの共振子1全体を補償膜20により覆っているので、例えば金属などの導電体により構成された異物が弾性表面波素子の表面に付着しても、ショート不良などの発生を抑制できる。
以上の各例において、補償膜20の膜厚寸法h2としては、水晶基板10上を伝搬する弾性表面波の波長(周期長λ)の1.5%以下、好ましくは0.5%以下であり、別の言い方をすると電極指6の膜厚寸法h1以下である。また、弾性表面波素子の適用周波数帯としては、500MHz以上、好ましくは600MHz以上である。
ここで、本発明の弾性表面波素子を電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)に適用した電気回路について、図12に示す。このVCO(電子部品)は、コンデンサ30、インダクタ21、抵抗22、トランジスタ23及びダイオード24を組み合わせたコルピッツ回路を用いた構成を採っており、トランジスタ23(ICチップ41)のベース端子と入力端子25との間には既述の共振子1が介在している。図12中26はトランジスタ23を駆動するために電圧が印加されるポートであり、27は出力ポートである。
本発明の弾性表面波素子をVCOに組み込むことにより、GHz帯もの高い周波数域において、温度特性が安定で且つ、良好な位相雑音を持つデバイスの実現に寄与できる。
以上説明した補償膜20としては、酸化シリコン膜に代えて、リン酸アルミニウム(AlPO4)や、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化シリコン(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)などを用いても良い。また、図3の構成、図8の構成及び図9の構成のうち少なくとも2種類を組み合わせても良い。このような構成の一例について具体的に挙げると、スペース領域15に補償膜20を形成すると共に、IDT電極2や反射器3と水晶基板10との間に補償膜20を介在させても良い。
また、以上の各例における補償膜20としては、共振子1を構成するIDT電極2及び反射器3のいずれについても同様に形成したが、IDT電極2及び反射器3のうち一方だけに既述の各例にて説明した補償膜20を設けても良い。従って、本発明における「周期構造部」とは、IDT電極2及び反射器3のうち少なくとも一方を表している。
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h 膜厚
r ライン占有率
1 共振子
2 IDT電極
6 電極指
10 水晶基板
20 補償膜

Claims (8)

  1. オイラー角が(0°,17°〜22°,0°)の面上を弾性表面波が伝搬するように構成された水晶基板と、
    この水晶基板上に配置され、弾性表面波が伝搬する方向と交差する方向に伸びる電極を当該伝搬方向に沿って互いに平行に複数本並べると共に、これら電極同士を互いに電気的に接続するようにバスバーを形成した、アルミニウムを主体として設けられた周期構造部と、
    前記水晶基板の表面のうち前記周期構造部側の表面における少なくとも一部に形成され、温度特性を補償するための絶縁体からなる補償膜と、を備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
  2. 前記補償膜は、前記水晶基板と前記周期構造部との間における当該水晶基板の表面、及び互いに隣接する前記電極間の領域における前記水晶基板の表面の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
  3. 前記補償膜は、前記電極の露出面及び互いに隣接する前記電極間の領域における前記水晶基板の表面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波素子。
  4. 弾性表面波の伝搬方向における前記電極の幅寸法をD、弾性表面波の伝搬方向における前記電極間の離間寸法をSとすると、前記幅寸法Dと前記離間寸法Sとの合計値に対する前記幅寸法Dの割合である前記電極のライン占有率は、0.5よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波素子。
  5. 前記補償膜の膜厚寸法は、前記電極の膜厚寸法よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の弾性表面波素子。
  6. 前記電極は、前記水晶基板の表面において500MHz以上の周波数に対応する波長の弾性表面波が伝搬するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の弾性表面波素子。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1つに記載の弾性表面波素子を備えたことを特徴とする発振器。
  8. 請求項1ないし6のいずれか一つに記載の弾性表面波素子を備えたことを特徴とする電子部品。
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