JP2015032369A - 黒鉛ペーストの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 黒鉛粒子32、カルボキシメチルセルロース33及び水AQを有する黒鉛ペースト31Yの製造方法は、黒鉛粒子の表面に存在する塩基性官能基BFの量Mを測定する測定工程S1と、測定した量Mが50.0mmol/g以上の黒鉛粒子を、カルボキシメチルセルロース及び水と共に混練して、黒鉛粒子及びカルボキシメチルセルロースの総重量に占める黒鉛粒子の重量割合が99.0〜99.5%の範囲内の初混練ペースト31Xを作製する初混練工程S5と、初混練ペーストを水で希釈して混練する希釈混練工程S6とを備える。
【選択図】 図3
Description
この電池に用いる負極板に関して、例えば、特許文献1には、黒鉛粒子を主剤とする炭素材料、増粘剤及び結着材を混練分散したペーストを用いた非水系二次電池の負極用電極板の製造方法が開示されている。この電極板の製法は、黒鉛粒子にカルボキシメチルセルロースのNa塩(以下、単にCMCともいう)を粉末状態で添加し、分散媒と共に混練する初混練工程と、この初混練工程の混練物を分散媒で希釈し混練する希釈混練工程とを含む。
また、上述のトルクを最大とする固形分率に配合し混練した初混練ペーストを用いた黒鉛ペーストの粘度が、前述した極小値を示すことも知られている。
これらの知見に基づき、上述の黒鉛ペーストの製造方法は、初混練工程よりも前に、上述の混練物を混練したときのトルクを最大とする固形分率を検知する検知工程を備え、初混練工程では、検知した固形分率を狙って、黒鉛粒子、カルボキシメチルセルロース及び水を配合し混練する。このため、粘度の低い黒鉛ペーストを確実に得ることができる。
なお、検知工程でトルクが最大となる固形分率を検知するにあたっては、例えば吸収量測定器を用いると良い。この吸収量測定器としては、例えば、あさひ総研製の吸収量測定装置S-500が一例として挙げられる。
まず、本実施形態の製造方法で製造した実施例1の黒鉛ペースト31Yを用いて作製した電池1について説明する。この電池1は、いずれも帯状の正極板20、負極板30及びセパレータ40を備え、これらを捲回した扁平捲回型の電極体10と、この電極体10を内部に収容する電池ケース80とを備えるリチウムイオン二次電池である(図1参照)。
このうち負極活物質層31は、黒鉛粒子からなる負極活物質粒子32(以下、黒鉛粒子32ともいう)、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC−Na)からなる増粘剤33、及び、スチレンブタジエンゴム(SBR)からなる結着材34を含む。なお、黒鉛粒子32には、平均粒径が5〜15μmの天然黒鉛を用いた。
まず、ステップS1では、黒鉛粒子32の表面に存在する塩基性官能基BFの量Mを測定する(測定工程)。具体的には、既知の流動式微少熱量計(Microscal社製のFMC 3Vi)を用いて、黒鉛粒子32を1,4−ジオキサンに溶かした溶液Aを、1,4−ジオキサンに酢酸を溶かした溶液(0.005mol/mol)に通過させる。そして、通過前後の、溶液における酢酸の濃度の変化量(減少量)から、黒鉛粒子32の表面の塩基性官能基BFの量Mを算出する。なお、本実施形態の黒鉛粒子32の塩基性官能基BFの量Mは、730.0mmol/gであった。
ここで、塩基性官能基BFの量Mが50.0mmol/g以上である場合、黒鉛ペースト31Yの作製に適すると判定し、図3に示すステップS4の検知工程に進む。一方、塩基性官能基BFの量Mが50.0mmol/gよりも小さい場合には、黒鉛ペースト30Yの作製に不適と判定し、測定した黒鉛粒子を廃棄する(ステップS3)。
黒鉛ペーストの粘度Tが極小値TAとなる初混練ペーストの第1固形分率SAでは、その付近の固形分率Sよりも粘度Tが低くなる。また、この極小値TAとなる第1固形分率SAを狙いの固形分率とすると、後述する初混練工程において、黒鉛粒子32等の配合の誤差により、実際の固形分率JSが狙いの第1固形分率SAからずれた場合でも、黒鉛ペースト31Yの実際の粘度JTについて極小値TAからの変動(ずれ)が少なくて済む。このように、初混練工程において、黒鉛ペースト31Yの粘度Tが極小値TAとなる第1固形分率SAを、初混練ペースト31Xの狙いの固形分率とするのが好ましい。
また、公知の吸収量測定器(あさひ総研製の吸収量測定装置S-500)を用いて、後述する初混練ペースト31Xと同じ重量割合にした黒鉛粒子32と増粘剤33との混合物GAに一定量ずつの水AQを添加していき、これら混合物GAと水AQとの混練物GBを混練した。このときの、混練物GBの固形分率Sと、この混練物GBを混練したときのトルクとの関係を図5のグラフに示す。
このグラフは、縦軸の正側に凸であり、このグラフには、トルクを最大(最大トルクZA)とする固形分率Sが存在することが知られている。
また、この固形分率Sに配合し混練した初混練ペースト31Xを用いた黒鉛ペースト31Yの粘度Tが、前述した極小値TAを示すことも知られている。このことから、図5に示す関係において、最大トルクZAを示す固形分率Sは前述の第1固形分率SAであることが判る。
なお、本実施例1では、第1固形分率SAがSA=65.0%であった。
まず、初混練ペースト31X(固形分率Sが65%)を希釈した黒鉛ペースト31Yのほか、この初混練ペースト31Xよりも固形分率Sが2%分低い、即ち固形分率Sが63%の初混練ペーストについて、同様にSBRを加えて希釈し混練した黒鉛ペーストである低分率ペーストを用意した。さらに、初混練ペースト31Xに比して固形分率が2%分高い、即ち固形分率が67%の初混練ペーストについて、同様にSBRを加えて希釈し混練した黒鉛ペーストである高分率ペーストも用意した。そして、公知のE型粘度計を用いて、黒鉛ペースト31Y、低分率ペースト及び高分率ペーストの粘度をそれぞれ測定した。なお、E型粘度計のシェアレートを40s-1とした。
測定後、黒鉛ペースト31Yの粘度と低分率ペーストの粘度との差、及び、黒鉛ペースト31Yの粘度と高分率ペーストの粘度との差をそれぞれ算出し、これらの差のうち大きい方を、黒鉛ペースト31Yの粘度差とした。
この粘度差が1.0Pa・s以下の場合、実際の固形分率JSが狙いの第1固形分率SA(本実施形態では65.0%)からずれても、実際の粘度JTの変動を小さくできる良好な黒鉛ペーストであると判定し、表1において「○」で示す。逆に、粘度差が1.0Pa・sを超える場合には、狙いの第1固形分率SA(=65.0%)からずれた際には、実際の粘度JTの変動が大きくなる黒鉛ペーストであると判定し、表1において「×」で示す。
実施例1の黒鉛ペースト31Yの粘度差に関する判定結果を、表1の「粘度差」欄に示す。
このうち黒鉛ペースト31Yの静置安定性については、具体的には、黒鉛ペースト31Y(固形分率が54%)を試験管の中に入れ、3日間静置した。その後、試験管内の上層側に位置する黒鉛ペーストを一定量採取して、固形分率を測定した。具体的にはまず、採取した黒鉛ペーストの重量を測定した(加熱前重量)。次いで、この黒鉛ペーストを加熱して水AQを十分蒸発させた後、再び重量を測定した(加熱後重量)。そして、加熱前後の各重量から固形分率を算出した((固形分率)=(加熱後重量)/(加熱前重量))。この固形分率が、黒鉛ペースト31Yの狙いとしている固形分率(54%)から1%分増減している範囲、即ち53〜55%の範囲の中にある場合、黒鉛ペースト31Yの静置安定性が良好であると判定し、表1の「静置安定性」欄において「○」で示す。逆に、53〜55%の範囲から外れている場合には、静置安定性が良好でないと判定し、表1において「×」で示す。
実施例1の黒鉛ペースト31Yでは、黒鉛粒子32及び増粘剤33の総重量に占める黒鉛粒子32の重量割合を99.3%とし、塩基性官能基の量Mが730.0mmol/gの黒鉛粒子32を用いたことにより、黒鉛ペースト31Yについて粘度差を1Pa・s未満にできる。このため、初混練ペースト31Xの実際の固形分率JSが狙いの第1固形分率SA(=65.0%)からずれても、これを希釈した黒鉛ペースト31Yの実際の粘度JTの変動を小さくできる。その上、静置安定性、フィルタの透過性及び塗工性も良好となった。これにより、黒鉛ペースト31Yを銅箔38に塗布して良好な負極活物質層31(黒鉛層)を形成することができる。
このうち、実施例2の黒鉛ペーストは、塩基性官能基の量Mが50.0mmol/gの黒鉛粒子を用いている点で実施例1と異なる。また、実施例3,4の黒鉛ペーストは、黒鉛粒子及び増粘剤の総重量に占める黒鉛粒子の重量割合を99.5%としている点で実施例1,2とそれぞれ異なる。さらに、実施例5,6の黒鉛ペーストは、上述の黒鉛粒子の重量割合を99.0%としている点で実施例1,2とそれぞれ異なる。
なお、表1では、黒鉛ペーストの「粘度差」、「静置安定性」、「フィルタの透過性」及び「塗工性」欄がいずれも「○」の場合、黒鉛ペーストは良好であると判定して、「評価」欄において「○」で記した。それ以外の場合、即ち、「粘度差」、「静置安定性」、「フィルタの透過性」又は「塗工性」に「×」がある場合には、「評価」欄において「×」で記した。
これに対し、黒鉛粒子の重量割合が99.5%よりも高いと、黒鉛ペースト中で粘度を発現する増粘剤(CMC−Na)の量が相対的に少なくなり過ぎて、黒鉛ペーストの粘度が低くなり、黒鉛ペースト中で黒鉛粒子が沈降しやすく、静置安定性が劣る傾向にある。
一方、黒鉛粒子の重量割合が99.0%よりも低いと、黒鉛ペースト中の増粘剤の量が相対的に多くなり過ぎて、黒鉛ペーストの粘度が高くなり過ぎ、フィルタの透過性及び塗工性が劣る傾向にある。
練する。このため、粘度Tの低い黒鉛ペースト31Yを確実に得ることができる。
例えば、実施形態では、希釈混練工程(ステップS6)において、結着材34を投入し初混練ペースト31X及び水AQと共に混練した。しかし、希釈混練工程に先立つ、初混練工程(ステップS5)において、結着材34を黒鉛粒子32等と共に混練しても良い。
なお、前述した実施形態では、ステップS4で、混練物GBを混練したときのトルクが最大となる第1固形分率SAを検知する検知工程を行った。しかし、第1固形分率SAを、黒鉛粒子32のメーカやメーカにおけるグレードによって定められる場合や、黒鉛粒子32のロット間で第1固形分率SAの変動が小さい場合には、図3において破線で示すように、ステップS4を除き、予め定めた第1固形分率SAを用い、ステップS2の後にステップS5を実行することもできる。
31Y 黒鉛ペースト
32 負極活物質粒子(黒鉛粒子)
33 増粘剤(カルボキシメチルセルロース)
34 結着材
AQ 水
BF 塩基性官能基
GA 混合物
M 塩基性官能基の量
S 固形分率
SA (極小値となる)第1固形分率
TA 極小値
T 粘度
Claims (2)
- 黒鉛粒子、カルボキシメチルセルロース及び水を有する黒鉛ペーストの製造方法であって、
上記黒鉛粒子の表面に存在する塩基性官能基の量Mを測定する測定工程と、
測定した上記量Mが50.0mmol/g以上の上記黒鉛粒子を、上記カルボキシメチルセルロース及び上記水と共に混練して、上記黒鉛粒子及び上記カルボキシメチルセルロースの総重量に占める上記黒鉛粒子の重量割合が99.0〜99.5%の範囲内の初混練ペーストを作製する初混練工程と、
上記初混練ペーストを上記水で希釈して混練する希釈混練工程と、を備える
黒鉛ペーストの製造方法。 - 請求項1に記載の黒鉛ペーストの製造方法であって、
前記初混練工程よりも前に、前記初混練ペーストと同じ重量割合にした前記黒鉛粒子と前記カルボキシメチルセルロースとの混合物に一定量ずつの水を添加してゆき、これらを混練したときのトルクが最大となる固形分率を検知する検知工程を備え、
上記初混練工程は、
上記黒鉛粒子、上記カルボキシメチルセルロース及び上記水を配合して、検知した上記固形分率に混練する
黒鉛ペーストの製造方法。
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