JP2015030555A - 巻き取り品 - Google Patents

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Abstract

【課題】複合材が芯材からずり落ちず、巻癖がつきにくい巻き取り品の提供。
【解決手段】ポリアミド樹脂と連続繊維を含む複合材を芯材にトラバース巻きで巻き取った巻き取り品であって、前記複合材は、幅が3〜100mmであり、厚さが20〜300μmであり、巻き取り品を芯材の幅方向の最大断面に垂直な方向から投影したとき、芯材の中心軸に対応する線2と、巻き取られた複合材のうち、前記芯材の幅方向の中央を通る複合材に対応する辺3のなす角のうち小さい方の角θが70〜89°であり、下記式を満たす巻き取り品。式:200≦D/t≦3000(上記式中、Dは芯材の外径(単位:mm)を表し、tは複合材の厚さ(単位:mm)を示す。)
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリアミド樹脂と連続繊維を含む複合材を芯材に巻き取った巻き取り品に関する。
従来から、ポリアミド樹脂と連続繊維を含む複合材が広く検討されている。かかる複合材は、繊維強化樹脂成形品に広く用いられている。ここで、複合材は板材で輸送されることが多いが、板材形状ではハンドリングが不便なことがあった。そこで、板状以外の形態としてテープ状が提案されている。
例えば、特許文献1には、炭素繊維と芳香族ポリアミド樹脂又は脂肪族ポリアミド樹脂を含む複合体からなる炭素繊維テープが、円筒状芯材に巻き付けられた炭素繊維巻きテープであって、式(I)から求められる炭素繊維テープの幅(W)が5〜100mmの範囲であり、前記幅(W)が5〜100mmの範囲の炭素繊維テープが巻き付けられた円筒状芯材の最小直径(D)が、式(II)から求められるものである炭素繊維巻きテープが開示されている。
0.2×10-3×N≦W≦2×10-3×N (I)
(式(I)中、Nは、炭素繊維を構成する炭素繊維の本数である。)
4.5×F×t≦D≦50×F×t (II)
(式(II)中、Fは炭素繊維量で、20〜60質量%の範囲であり、tは炭素繊維テープの厚みで、0.1〜0.5mmの範囲である。)
国際公開WO2012/002410号パンフレット
ここで、本発明者が特許文献1について検討を行ったところ、特許文献1に記載の巻き方では、炭素繊維巻テープの巻きはじめを芯材に固定して巻き始めても、炭素繊維巻テープが芯材からずり落ちてしまう場合があることが分かった。さらに、巻き取り品を使用する際にいわゆる巻癖が大きく、その後の作業性が悪くなるなどの問題を生じることが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリアミド樹脂と連続繊維を含む複合材を巻き取った巻き取り品であって、複合材が芯材からずり落ちず、巻癖がつきにくい巻き取り品を提供することを課題とする。
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段<1>により、好ましくは、<2>〜<10>により、上記課題を解決しうることを見出した。
<1>ポリアミド樹脂(A)と連続繊維(B)を含む複合材(C)を芯材にトラバース巻きで巻き取った巻き取り品であって、前記複合材(C)は、幅dが3〜100mmであり、厚さtが20〜300μmであり、巻き取り品を芯材の幅方向の最大断面に垂直な方向から投影したとき、芯材の中心軸に対応する線と、巻き取られた複合材(C)のうち、前記芯材の幅方向の中央を通る複合材(C)に対応する辺のなす角のうち小さい方の角θが70〜89°であり、下記式を満たす巻き取り品。
式:200≦D/t≦3000
(上記式中、Dは芯材の外径(単位:mm)を表し、tは複合材(C)の厚さ(単位:mm)を示す。)
<2>前記ポリアミド樹脂(A)として、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物であり、前記ジアミン化合物の50モル%以上が、キシリレンジアミンであるXD系ポリアミド樹脂を含む、<1>に記載の巻き取り品。
<3>前記ポリアミド樹脂(A)として、さらに、脂肪族ポリアミド樹脂を含む、<2>に記載の巻き取り品。
<4>前記キシリレンジアミンがメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンである、<2>または<3>に記載の巻き取り品。
<5>前記XD系ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)が、6,000〜30,000であり、かつ、該ポリアミド樹脂のうち、分子量が1000以下の成分の量が0.5〜5質量%である、<2>〜<4>のいずれかに記載の巻き取り品。
<6>前記芯材の外径が、60〜350mmである、<1>〜<5>のいずれかに記載の巻き取り品。
<7>前記複合材(C)中における連続繊維(B)の割合が10〜65質量%である、<1>〜<6>のいずれかに記載の巻き取り品。
<8>前記複合材(C)の1m2当たりの重量が、50〜3000gである、<1>〜<7>のいずれかに記載の巻き取り品。
<9>前記D/tが300≦D/t≦2500である、<1>〜<8>のいずれかに記載の巻き取り品。
<10>前記なす角θが85〜89°である、<1>〜<9>のいずれかに記載の巻き取り品。
ポリアミド樹脂と連続繊維を含む複合材を巻き取った巻き取り品であって、複合材が芯材からずり落ちず、巻癖がつきにくい巻き取り品を提供可能になった。
本発明におけるなす角θを説明するための図である。 本発明の巻き取り品を示す概略図である。 本発明における投影方向を説明するための概念図である。 本発明における投影する方法の一例を示す概念図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明の巻き取り品は、ポリアミド樹脂(A)と連続繊維(B)を含む複合材(C)を芯材にトラバース巻きで巻き取った巻き取り品であって、前記複合材(C)は、幅dが3〜100mmであり、厚さtが20〜300μmであり、巻き取り品を芯材の幅方向の最大断面に垂直な方向から投影したとき、芯材の中心軸に対応する線と、巻き取られた複合材(C)のうち、前記芯材の幅方向の中央を通る複合材(C)に対応する辺のなす角のうち小さい方の角θが70〜89°であり、下記式を満たすことを特徴とする。
式:200≦D/t≦3000
(上記式中、Dは芯材の外径(単位:mm)を表し、tは複合材(C)の厚さ(単位:mm)を示す。)
このような構成とすることにより、複合材(C)が芯材からずり落ちることなく、また、巻癖少なく、巻き取ることが可能になる。
以下、本発明の構成について説明する。
本発明では、巻き取り品を芯材の幅方向の最大断面に垂直な方向から投影したとき、芯材の中心軸に対応する線と、巻き取られた複合材(C)のうち、前記芯材の幅方向の中央を通る複合材(C)に対応する辺のなす角のうち小さい方の角θ(以下、単に、「なす角θ」ということがある)が70〜89°であることを特徴とする。図1は本発明における巻き取り品を投影したときの概略図の一例を示すものであって、1が巻き取り品を投影した形状であり、2が中心軸に対応する線であり、3が複合材に対応する辺であり、θが本発明におけるなす角θに相当する。
ここで、芯材の幅方向とは、芯材の複合材(C)が巻き取られる面(通常は曲面)の幅方向をいう。例えば、図2に示す巻き取り品の概略図では、4が芯材を、5が複合材(C)を、6が中心軸を示すが、この場合、矢印の方向が幅方向になる。従って、芯材の幅方向の最大断面とは、芯材を幅方向に切断したときに現れる面のうち、最も大きな面をいう。芯材が円筒の場合、前記中心軸を通る面となる。
一方、中心軸とは、芯材の外径の中心を通る線であって、仮想の線である。すなわち、巻き取り品に実在する線ではなく、芯材を立体と考えたときにその中心となる軸を意味する。当然に投影しても映らない。例えば、図3(a)は、図2において、芯材の幅方向に垂直な方向から見た芯材の概略図であるが、6が中心軸となる。芯材を斜視図で示すと、図3(b)の点線部分となる。尚、芯材は、必ずしも円筒である必要はなく、芯材の外径方向の断面積が一定であれば、多角形(3角形以上であるが、好ましくは6角形や8角形)でもよいし、楕円形でもよい。この場合、芯材の中心軸は、疑似円筒として定められる。
また、本発明における幅方向の最大断面に垂直な方向とは、図3(a)および(b)における矢印の方向となる。投影する際には、例えば、図4に示すように、平面の上に中心軸が垂直になるように巻き取り品を立てて、矢印の方向から投影を行うことが好ましい。このような方向から投影すると、芯材が円筒の場合、芯材の投影図は長方形となる。
そして、本発明では、巻き取り品を芯材の幅方向の最大断面に垂直な方向から投影した形状からなす角θを決定する。
本発明では、複合材(C)は芯材に対して一定の規則性を持った角度を持って巻かれている。この角度は、芯材の中心軸に対応する線(図1の2)と複合材(C)に対応する辺(図1の3)のなす角θのうち小さい方である。そして、本発明では複合材(C)がトラバース巻きに巻き取られる。すなわち、複合材(C)は、芯材の幅方向に往復運動させて巻き取られる。そのため、芯材の中心軸に対応する線と複合材(C)に対応する辺のなす角は、芯材の幅方向の中央を含む大半は一定のなす角θとなるが、巻はじめや巻き終わりや芯材の末端では、芯材の端部ではなす角が変動し、θとはならないこともあり、90°ともなりえる。しかしながら、複合材(C)の大半の部分は図1に示すように規則的に巻き取られている。そして、本発明では、芯材の幅方向の中央のなす角θが所定の値となるようにトラバース巻きで巻き取ることによって、複合材(C)が芯材からずり落ちることなく、また、巻癖を少なく、巻き取ることに成功したものである。尚、巻き取られた複合材(C)のうち、前記芯材の幅方向の中央を通る複合材(C)に対応する辺が存在しないときは、これに最も近い辺を本発明における芯材の幅方向の中央を通る複合材(C)に対応する辺として考えることができる。
尚、本発明における「線」、「辺」、「面」は、数学的な厳密な意味での直線ではなく、当業者が通常認識し得る程度の誤差を含むものであることは言うまでもない。
本発明のけるなす角θは、80〜89°が好ましく、85〜89°がより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明で用いる複合材(C)は、幅dが好ましくは、3〜90mmであり、より好ましくは5〜85mmである。この範囲であると成形加工およびハンドリングがより容易となり好ましい。
さらに、本発明の巻き取り品は、複合材(C)の厚さtと芯材の外径Dが下記の要件を満たす。
式:200≦D/t≦3000
(上記式中、Dは芯材の外径(単位:mm)を表し、tは複合材(C)の厚さ(単位:mm)を示す。)
本発明では、複合材(C)の厚さと巻き取る芯材が上記関係を満たすことにより、巻癖が付きにくく、ムラおよびシワの発生を抑制し適切に巻き取ることが可能になる。本発明では、300≦D/t≦2500を満たすことが好ましく、320≦D/t≦2300を満たすことがより好ましい。公知の巻き取り品は、通常、D/tは1桁から2桁程度の数値となると推測されるが、本発明ではこれよりもD/tの値を大きくすることにより、適切な巻き取りに成功したものである。尚、芯材の断面が円形でない場合、同じ面積の円形に換算した場合の外径を発明における外径Dとする。
本発明で用いる複合材(C)の厚さtは、20〜250μmであることが好ましく、30〜230μmであることがより好ましく、50〜200μmがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より適切な巻き取り品とすることができる。
本発明で用いる芯材の外径Dは、60〜350mmであることが好ましく、75〜310mmがより好ましい。このような範囲とすることにより、より適切な巻き取り品とすることができる。
また、本発明で用いる複合材(C)の1m2当たりの重量は、50〜3000gであることが好ましく、50〜1000gであることがより好ましく、60〜500gであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より適切な巻き取り品とすることができる。
次に、本発明で用いる複合材(C)の材料の詳細について述べる。本発明で用いる複合材(C)は、ポリアミド樹脂(A)を、連続繊維(B)に含浸してなる複合材(C)であることが好ましい。
<ポリアミド樹脂>
本発明におけるポリアミド樹脂とは、その分子中に酸アミド基(−CONH−)を有する、加熱溶融できるポリアミド重合体である。具体的には、ラクタムの重縮合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、またはそれ等の共重合ポリアミド樹脂やブレンド物等である。従って、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
これらの原料から重縮合されてなるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド9MT等が挙げられる。本発明においては、これらポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
これらの中でも、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物であり、ジアミン化合物の50モル%以上が、キシリレンジアミンであるXD系ポリアミド樹脂が好ましく、前記XD系ポリアミド樹脂において、キシリレンジアミンがメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンであるXD系ポリアミド樹脂がより好ましい。
よりさらに好ましくは、本発明で用いるXD系ポリアミド樹脂は、ジアミン化合物の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンであり、ジカルボン酸化合物の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特には80モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20の、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であるジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物が好ましい。
メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンは、任意の割合に混合して使用できるが、耐熱性を重視する場合は、メタキシリレンジアミン0〜50モル%及びパラキシレンジアミン50〜100モル%が好ましく、後述するポリアミド樹脂フィルムの成形加工性を重視する場合は、メタキシリレンジアミン50〜100モル%及びパラキシレンジアミン0〜50モル%が好ましい。
XD系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン構成単位の50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
XD系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましく、セバシン酸が特に好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、イソフタル酸を用いることが好ましい。イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂(A)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の好ましい実施形態の一例は、ポリアミド樹脂(A)の90重量%以上がXD系ポリアミド樹脂からなる態様であるが、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の好ましい実施形態の他の一例として、XDポリアミド樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂の混合物も挙げられる。XDポリアミド樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂を併用することにより、表面外観がより向上する傾向にある。この場合、XD系ポリアミド樹脂および脂肪族ポリアミド樹脂の好ましい配合比(モル比)は、5:95〜95:5であり、より好ましくは10:90〜90:10である。
上記実施形態において、XD系ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が、6,000〜30,000のXD系ポリアミド樹脂であって、かかるXD系ポリアミド樹脂のうち、分子量が1000以下の成分の量が0.5〜5質量%であるポリアミド樹脂が好ましい。
数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000の範囲内とすることにより、ポリアミド樹脂の連続繊維(B)への含浸性が向上し、得られる複合材(C)の強度がより向上する傾向にある。より好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、さらに好ましくは9,000〜26,000であり、よりさらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000であり、より特に好ましくは12,000〜20,000である。このような範囲とすることにより、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより向上する傾向にある。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
また、本発明では、XD系ポリアミド樹脂として、分子量が1,000以下のXD系ポリアミド樹脂成分を0.1〜5質量%含有することが好ましいが、このような低分子量のポリアミド樹脂成分を含有することにより、ポリアミド樹脂の連続繊維への含浸性が優れ、得られる複合材(C)の強度や低そり性がより向上する傾向にある。5質量%以下とすることにより、低分子量ポリアミド樹脂成分がブリードして強度が悪化したり、表面外観が悪くなってしまうのをより効果的に抑制できる。
分子量が1,000以下のポリアミド樹脂成分の好ましい含有量は、0.1〜4.5質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%である。
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、XD系ポリアミド樹脂の重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量ポリアミド樹脂成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量ポリアミド樹脂成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量ポリアミド樹脂成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量ポリアミド樹脂成分を後から高分子量のポリアミド樹脂成分に添加することでも調節可能である。
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明で用いるXD系ポリアミド樹脂は、環状のポリアミド樹脂を0.01〜1質量%含有することが好ましい。本発明において環状化合物とは、ポリアミド樹脂(A)の原料であるジアミン成分とジカルボン酸成分からなる塩が環を形成してなる化合物をいい、以下の方法により定量することができる。
ポリアミド樹脂のペレットを超遠心粉砕機にて粉砕し、φ0.25mmのふるいにかけ、φ0.25mm以下の粉末試料10gを円筒ろ紙に測りとる。その後メタノール120mlにて9時間ソックスレー抽出を行い、得られた抽出液をエバポレータにて乾固しないように注意しながら10mlに濃縮する。なお、その際、オリゴマーが析出する場合は、適宜PTFEフィルターに通液して取り除く。得られた抽出液をメタノールにて50倍希釈した液を測定に供し、日立ハイテクノロジー社(Hitachi High−Technologies Corporation)製高速液体クロマトグラフHPLCによる定量分析を実施して環状のポリアミド樹脂の含有量を求める。
環状のポリアミド樹脂をこのような範囲で含有することにより、XD系ポリアミド樹脂の連続繊維(B)への含浸性が優れ、得られる複合材(C)の強度がより向上する傾向にあり、さらにそりが少なくなり、寸法安定性がより向上しやすい傾向にある。環状のポリアミド樹脂のより好ましい含有量は、0.05〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。
溶融重合により製造されたXD系ポリアミド樹脂中には、環状のポリアミド樹脂が相当量含まれている場合が多く、通常、熱水抽出等を行ってこれらは除去されている。この熱水抽出の程度を調整することにより、環状のポリアミド樹脂の量を調整することができる。また、溶融重合時の圧力を調整することでも可能である。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.85〜2.8、さらに好ましくは1.9〜2.7である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の連続繊維(B)への含浸性がより向上し、機械特性に優れた複合材(C)が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂(A)の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
また、ポリアミド樹脂(A)は、溶融粘度が、ポリアミド樹脂(A)の融点+30℃、せん断速度122sec-1、XD系ポリアミド樹脂の水分率が0.06質量%以下の条件で測定したときに、50〜1200Pa・sであることが好ましい。溶融粘度を、このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の連続繊維への含浸性が良くなる。なお、後述するような、ポリアミド樹脂(A)が融点を2つ以上有する場合は、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度を融点とし、測定を行う。
ポリアミド樹脂の溶融粘度は、例えば、原料ジカルボン酸成分およびジアミン成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤、重合温度、重合時間を適宜選択することにより調整できる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、吸水時の曲げ弾性率保持率が、85%以上であることが好ましい。吸水時の曲げ弾性率保持率を、このような範囲とすることにより、得られる複合材(C)の高温高湿度下での物性低下が少なく、そりなどの形状変化が少なくなる傾向にある。
ここで、吸水時の曲げ弾性率保持率とは、ポリアミド樹脂(A)からなる曲げ試験片の0.1質量%の吸水時の曲げ弾性率に対する、0.5質量%の吸水時の曲げ弾性率の比率(%)として定義され、これが高いということは吸湿しても曲げ弾性率が低下しにくいことを意味する。
吸水時の曲げ弾性率保持率は、より好ましくは86%以上、さらに好ましくは88%以上である。
ポリアミド樹脂の吸水時の曲げ弾性率保持率は、例えば、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの混合割合によりコントロールでき、パラキシリレンジアミンの割合が多いほど曲げ弾性率保持率を良好なものとすることができる。また、曲げ試験片の結晶化度をコントロールすることによっても調整できる。
ポリアミド樹脂(A)の吸水率は、23℃にて1週間、水に浸漬した後取り出し、水分をふき取ってすぐ測定した際の吸水率として1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.48質量%以下である。この範囲であると、得られる複合材(C)及びそれからなる成形品の吸水による変形を防止しやすく、また、加熱加圧時等の複合材(C)を成形加工する際の発泡を抑制し、気泡の少ない成形品を得ることができる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、末端アミノ基濃度([NH2])が好ましくは150μ当量/g以下、より好ましくは5〜120μ当量/g、さらに好ましくは10〜60μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度([COOH])は、好ましくは250μ当量/g以下、より好ましくは10〜120μ当量/g、さらに好ましくは30〜80μ当量/gのものが好適に用いられる。このような末端基濃度のポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂(A)をフィルム状又は繊維状に加工する際に粘度が安定しやすく、また、後述のカルボジイミド化合物との反応性が良好となる傾向にある。
また、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])は、2.5以下である者が好ましく、0.8以下であるものがより好ましい。この比が2.5よりも大きいものは、ポリアミド樹脂(A)を重合する際に、分子量の制御が難しくなる場合がある。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数、以下「反応モル比」という場合がある。)が、0.97〜1.02であることが好ましい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の分子量や分子量分布を、任意の範囲に制御しやすくなる。反応モル比は、より好ましくは1.0未満、さらに好ましくは0.995未満、特には0.990未満であり、下限は、より好ましくは0.975以上、さらに好ましくは0.98以上である。
ここで、反応モル比(r)は次式で求められる。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015 (水の分子量(g/mol))
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
なお、ジアミン成分、ジカルボン酸成分として分子量の異なるモノマーからポリアミド樹脂を合成する際は、M1およびM2は原料として配合するモノマーの配合比(モル比)に応じて計算されることはいうまでもない。なお、合成釜内が完全な閉鎖系であれば、仕込んだモノマーのモル比と反応モル比とは一致するが、実際の合成装置は完全な閉鎖系とはなりえないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。仕込んだモノマーが完全に反応するとも限らないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。したがって、反応モル比とは出来上がったポリアミド樹脂の末端基濃度から求められる実際に反応したモノマーのモル比を意味する。
ポリアミド樹脂(A)の反応モル比の調整は、原料ジカルボン酸成分およびジアミン成分の仕込みモル比、反応時間、反応温度、キシリレンジアミンの滴下速度、釜内の圧力、減圧開始タイミング等の反応条件を適当な値にすることにより、可能である。
ポリアミド樹脂の製造方法がいわゆる塩法である場合は、反応モル比を0.97〜1.02にするには、具体的には、例えば、原料ジアミン成分/原料ジカルボン酸成分比をこの範囲に設定し、反応を十分進めればよい。また溶融ジカルボン酸に連続的にジアミンを滴下する方法の場合は、仕込み比をこの範囲とすることの他に、ジアミンを滴下する最中に還流させるジアミン量をコントロールし、滴下したジアミンを反応系外に除去することでも可能である。具体的には還流塔の温度を最適な範囲にコントロールすることや充填塔の充填物、所謂、ラシヒリングやレッシングリング、サドル等を適切な形状、充填量に制御することで、ジアミンを系外に除去すればよい。また、ジアミン滴下後の反応時間を短くすることでも未反応のジアミンを系外に除去することができる。さらにはジアミンの滴下速度を制御することによっても未反応のジアミンを必要に応じて反応系外に除去することができる。これらの方法により仕込み比が所望範囲から外れても反応モル比を所定の範囲にコントロールすることが可能である。
ポリアミド樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミド樹脂の重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、キシリレンジアミンを含むジアミン成分とアジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸からなる塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、キシリレンジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造できる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行っても良い。固相重合の方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)の融点は、150〜310℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移点は、50〜100℃が好ましく、55〜100℃がより好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
また、ポリアミド樹脂(A)は、融点を少なくとも2つ有するポリアミド樹脂であることも好ましい。融点を少なくとも2つ有するポリアミド樹脂は、耐熱性と複合材(C)を成形する際の成形加工性が良くなる傾向にあり好ましい。
融点を少なくとも2つ有するポリアミド樹脂としては、ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であって、キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来単位を50〜100モル%、メタキシリレンジアミン由来単位を0〜50モル%含有し、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、融点を少なくとも2つ有するポリアミド樹脂を、好ましく挙げることができる。
この際、2つ以上の融点は、通常250〜330℃の範囲にあって、好ましくは260〜320℃、より好ましくは270〜310℃、特に好ましくは275〜305℃にある。融点を2つ以上、好ましくはこのような温度範囲に有することで、良好な耐熱性と複合材(C)を成形する際の成形加工性を有するポリアミド樹脂となる。このようなポリアミド樹脂の製造は、特許第4894982号の段落番号0071〜0080の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂のみからなっていてもよいし、エラストマー成分等の他の成分を含んでいても良い。エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。
これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂(A)に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
このような他のポリアミド樹脂やエラエストマー成分の含有量は、ポリアミド樹脂(A)中の通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特には10質量%以下である。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を1種以上ブレンドすることもできる。この場合、ポリアミド樹脂(A)成分の3重量%以下であることが好ましい。
さらに、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号の段落番号0129〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
<連続繊維(B)>
本発明に用いる連続繊維(B)としては、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などが挙げられる。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。
これら連続繊維(B)は、例えば単にモノフィラメントまたはマルチフィラメントを一方向または交互の交差するように並べたものが好ましい。さらに、これらを積層し、バインダー等を含浸したプリプレグも好ましく用いられる。
連続繊維(B)の平均繊維径は、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmがより好ましく、4〜20μmであることがさらに好ましく、5〜10μmが特に好ましい。平均繊維径がこの範囲であると、加工が容易であり、得られる成形品の弾性率・強度が優れたものとなる。なお、平均繊維径は走査型電子顕微鏡(SEM)などによる観察によって測定することが可能である。50本以上の繊維を無作為に選んで長さを測定し、個数平均の平均繊維径を算出する。
連続繊維(B)の繊度は、20〜3,000texが好ましく、50〜2,000texがより好ましい。繊度がこの範囲であると、加工が容易であり、得られる成形品の弾性率・強度が優れたものとなる。なお、繊度は任意の長さの長繊維の重量を求めて、1,000m当りの重量に換算して求めることができる。フィラメント数は通常、500〜30,000程度の炭素繊維を好ましく用いることができる。
本発明で用いる複合材(C)中に存在する連続繊維(B)の繊維長は、通常、巻き取られる複合材(C)の長さに相当し、1〜2000m程度の範囲内で適宜定めることができる。
なお、複合材(C)中における平均繊維長の測定方法は、特に限定されるものではないが、たとえば複合材(C)をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させポリアミド樹脂溶解させた後に残る繊維の長さを測れば良く、目視、場合によっては光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などによる観察によって測定することが可能である。
本発明では、長い連続繊維をそのまま使用し、ポリアミド樹脂(A)と重ね合わせて、これを加熱加圧して、含浸して複合材(C)を得る態様が好ましい。このように長い繊維状態の連続繊維(B)を用いることで、従来型のチョップドストランドや所謂、長繊維といった破断された連続繊維を用いた成形材料よりも、得られる成形品の弾性率や強度を向上させることができる。また、長い繊維状の連続繊維を用いることで成形品の特定の方向の強度を向上させるなど、成形品の強度に異方性を持たせることも可能になる。しかし、当然のことであるが、本発明が、連続繊維(B)をカットした短繊維(D)を合わせて用いることを排除するものではない。短繊維(D)を併用する場合は、短繊維(D)の平均繊維径が、連続繊維(B)の平均繊維径よりも短いことが好ましい。
連続繊維(B)のポリアミド樹脂(A)との濡れ性、界面密着性を向上させるために、連続繊維(B)の表面にポリアミド樹脂と反応性を有する官能基を有するものが好ましい。
ポリアミド樹脂と反応性を有する官能基を有する例として、表面処理剤または収束剤等で表面処理したものが好ましく挙げられる。
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
収束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。また、エポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
<複合材(C)の製造方法>
本発明で用いる複合材(C)は、ポリアミド樹脂(A)と連続繊維(B)を重ね、加熱加工することによって、ポリアミド樹脂(A)を連続繊維(B)に含浸させることによって製造できる。ポリアミド樹脂(A)を連続繊維(B)に含浸させる際のポリアミド樹脂(A)の形状は特に定めるものではなく、フィルム状、繊維状、粉状等の各種の形状のものを採用でき、フィルム状が好ましい。
特に、本発明では、ポリアミド樹脂フィルムは、その表面にシボ加工を施す方法を採用し、フィルムを成形することも好ましい。特に、成形加工時の微細な応力や不均等な応力がかかることによって、薄く加工しようとする際に破断しやすい場合に有効である。表面にシボ加工されていること、すなわち表面に微細な凹凸を有する凹凸状シボ表面を有するフィルムとすることにより、フィルムを成形する際にフィルム表面と引取り機、すなわちロール等との摩擦抵抗が少なくなり、フィルムにかかる応力を少なくかつ均一に制御できるため、フィルムの破断を防ぐことができるものと考えられる。また、巻き取る際には、フィルム表面同士の摩擦をより効果的に低減しシワなく巻き取ることが可能であり、巻取り時の応力を緩和し、フィルムの破断を防ぐことができる。さらに、フィルムロールを任意の幅にスリット加工する際に、装置との摩擦を防止し破断を防ぐことから生産性を向上させることができる。
シボは、フィルムの片面のみに設けてあっても、また両面に設けてあってもよいが、表裏両面に設けることが好ましい。
シボ加工されたポリアミド樹脂フィルムの表面粗さ(Ra)は、0.01〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.015〜0.8μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μm、特には0.2〜0.5μmである。Raを0.01μm以上とすることにより、フィルムとフィルム成形機間の摩擦力を効果的に低減でき、成形加工時のフィルムの破断を効果的に抑制できる。
ポリアミド樹脂フィルム表面の凹凸状のシボは、隣り合うシボの頂点間の距離が0.1〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.9μm、さらに好ましくは0.5〜0.8μm、特には0.6〜0.7μmである。この範囲であると、フィルムとフィルム成形機間の摩擦力を十分に低減でき、フィルムにかかる応力を緩和できることから成形加工時のフィルム破断を防ぎやすくなる。また、フィルムとフィルムとの間の摩擦力が十分に低下することから、フィルムをロール状に巻き取った際にシワが入ることを防ぎやすくなる。さらに、フィルムを後加工する際のフィルムの破断を防止することが容易になる。
フィルム表面の表面粗さ(Ra)および隣り合うシボの頂点間距離は、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定できる。詳細は、特許第489482号公報の段落番号0107の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
このようにして得られたポリアミド樹脂フィルムは、その厚みが5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは10〜55μmであり、特に好ましくは10〜30μmである。このような範囲とすることにより、連続繊維(B)への含浸性が向上し、そりをより効果的に抑制できる。
含浸させる工程におけるポリアミド樹脂フィルムは、ある程度の結晶化熱量を有するものが好ましく、結晶化熱量が5J/g以上であることが好ましい。このようにポリアミド樹脂フィルムまたは繊維の結晶化度を調整することで、ポリアミド樹脂(A)が溶解・溶融しやすくなり、含浸時の加熱・加圧エネルギーが少なく済み、含浸加工に要する時間を短くすることができる。結晶化熱量は、より好ましくは6〜60J/g、さらに好ましくは10〜50J/gである。なお、本発明における結晶化熱量とは、DSC測定法により観測される昇温時の発熱ピークの熱量である。測定には、例えば、島津製作所社製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱した際に観測される発熱ピークから結晶化熱量を求めることができる。
また、含浸工程でのポリアミド樹脂フィルムまたは繊維には、水分がある程度含まれている方が、可塑効果が働くので好ましく、その水分率は、0.01〜0.15質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、ポリアミド樹脂フィルムまたは繊維を含浸させる際の流動性が向上し、連続繊維(B)間に滲みこみやすくなり、複合材(C)中の気泡を少なくすることができ、また水分に由来する発泡を防止することができる。水分率は、より好ましくは0.04〜0.12質量%、さらには0.05〜0.1質量%である。なお、水分率はカールフィッシャー法により、ポリアミド樹脂(A)の融点−5℃の温度で、30分間測定することにより求めることができる。
ポリアミド樹脂(A)を含浸させる際の、連続繊維(B)の形態についても特に定めるものではないが、通常、連続繊維(B)を一方向に引き揃えたものに含浸させる。好ましくは、巻き取り方向が、連続繊維の長手方向となるように、連続繊維(B)を引き揃える。
加熱加圧は、ポリアミド樹脂フィルムに連続繊維(B)を重ね合わせ又は積層したものを、スリットして、複数枚以上重畳して行ってもよい。複数枚以上重畳する場合は、例えば、ポリアミド樹脂(A)フィルム/連続繊維(B)積層物の好ましくは2枚、より好ましくは5枚以上を、その両外側がポリアミド樹脂層になるように重ね合せることが好ましい。
加熱加圧において、連続繊維(B)層へのポリアミド樹脂(A)の含浸、これらの一体化のための温度は、ポリアミド樹脂(A)が軟化溶融する温度以上とする必要があり、ポリアミド樹脂(A)の種類や分子量によっても異なるが、一般にポリアミド樹脂(A)のガラス転移点+10℃以上の温度から熱分解温度−20℃の温度範囲が好ましい。また、融点を有するポリアミド樹脂(A)の場合は、融点+10℃以上が好ましく、より好ましくは融点+20℃以上である。このような温度範囲で加熱加圧することで、ポリアミド樹脂(A)の連続繊維(B)への含浸がより良く行われ、複合材(C)の物性が向上する傾向にある。なお、ポリアミド樹脂(A)が融点を2つ以上有する場合、ここでいう融点とは、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度である。
また、加圧の際のプレス圧力は0.1MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましく、1MPa以上が特に好ましい。加熱加圧は、減圧下、特には真空下で行うのが好ましく、このような条件で行うと、得られる複合材(C)に気泡が残存しにくくなり好ましい。
また、本発明で用いる複合材(C)をさらに加熱溶融して成形品に加工する場合には、複合材(C)中のポリアミド樹脂(A)の結晶化熱量は5J/g以上であることが好ましい。結晶化熱量は、より好ましくは6〜60J/g、さらには10〜50J/gである。このような範囲であると、複合材(C)を芯材に巻き取る際に、複合材(C)は適度な柔軟性を有し、巻取り性が良好となる。
また、本発明における複合材(C)は、ポリアミド樹脂(A)/連続繊維(B)の、断面における面積比率が20/80〜80/20であることが好ましい。このような範囲とすることにより、複合材(C)の強度がより向上する傾向にある。断面における面積比率は、より好ましくは30/70〜70/30、さらには40/60〜60/40である。なお、ここでいう断面とは、連続繊維(B)が一方向に配向しているような場合には、連続繊維(B)の長手方向に直角な断面をいう。連続繊維(B)が複数の方向に配向しているような場合には、複数の配向方向から任意に一方向を選択し、その配向している連続繊維(B)の長手方向に直角な面を断面とする。連続繊維(B)が配向していない場合は、複合材(C)の任意の一方向を断面とする。ポリアミド樹脂(A)/連続繊維(B)の面積比率は、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
なお、加熱加圧する際に、ポリアミド樹脂が溶融し流れ出すことがあるので、必ずしも用いたポリアミド樹脂(A)の質量と連続繊維(B)の質量とそれらの密度から計算される面積比率どおりに、複合材断面の面積比率がならないことがあるが、上記範囲の面積比率にすることによって、成形品の強度が良好となる。
また、複合材(C)中における連続繊維(B)の割合は、10〜65質量%であることが好ましく、35〜55質量%であることがより好ましい。
さらに、本発明で用いる複合材(C)は、空隙の少ない緻密なものとすることが可能であり、断面における空隙面積率が5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。なお、ここでいう断面は、前記ポリアミド樹脂(A)/連続繊維(B)の断面面積比率における断面と同義である。また、断面における空隙面積率は、SEM観察により求めることができる。
その他、本発明で用いる複合材(C)の製造方法の詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0111〜0118の記載を参酌することができ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
<巻き取り品の巻き取り方法>
本発明では、複合材(C)を芯材に巻き取る。巻き取り条件については特に限定はなく、複合材(C)の種類に応じて適宜調節でき、例えば、巻き取り張力40〜60MPa、巻き取り速度1〜100m/分の条件で巻き取ることができる。
巻き取りの際の温度は、例えば、15〜35℃で行うことができる。また、巻き取りの際の相対湿度は25℃で20〜65%であることが好ましい。
複合材(C)の巻き取りは、幅方向に揺動を加えながら行ってもよい。複合材(C)の幅方向に厚みムラがある場合、かかる複合材(C)を芯材に巻き取ると、わずかな厚みムラであっても巻き重ねられてゆくことによって巻き取り品の外周表面に凹凸が生じやすい傾向にある。このような幅方向に厚みムラがある複合材(C)であっても、揺動を加えながら巻取ることで、厚みムラがほぼ均一になるように巻取ることができ、得られる巻き取り品の外周の表面凹凸をより小さくできる。
本発明の巻き取り品は、複合材(C)巻き取る際に、複合材(C)の巻きはじめを固定することが好ましい。固定する手段としては、テープ止めしたり、芯材の表面に両面テープを貼ったり、接着剤を用いることができる。固定する領域としては、複合材(C)の10cm2以内とすることが好ましく、5cm2以内とすることがより好ましい。
巻き取り品の複合材(C)の長さは、200m以上が好ましく、より好ましくは200〜5000mであり、特に好ましくは500〜2000mである。また、複合材(C)の巻き数は、使用する芯の外径、複合材(C)の厚さにもよるが、100巻回以上であることが好ましく、より好ましくは500〜5000回であり、特に好ましくは1000〜4000回である。
また、巻き取り品の芯材の材質は特に定めるものではないが、例えば、紙、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。複合材(C)への帯電を防止するために、芯材に導電加工したものが特に好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<合成例>
(ポリアミド樹脂(PXD10)の合成)
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ(次亜リン酸カルシウムと酢酸ナトリウムのモル当量比は1.0)。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.3MPaに加圧し、攪拌しながら160℃に昇温してセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン6026g(44.24mol)を攪拌下で170分を要して滴下した。この間、内温は281℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.5MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、0.4MPa/時間の速度で降圧し、60分間で常圧まで降圧した。この間に内温は299℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で降圧し、20分間で0.08MPaまで降圧した。その後攪拌装置のトルクが所定の値となるまで0.08MPaで反応を継続した。0.08MPaでの反応時間は10分であった。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂(PXD10)を得た。
(ポリアミド樹脂(MP10)の合成)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したセバシン酸12,135g(60mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)3.105g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として50ppm)、酢酸ナトリウム1.61gを入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム一水和物のモル比は0.67とした。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの7:3(モル比)の混合ジアミン8,172g(60mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。混合メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分間溶融重合反応を継続した。
その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出して、これをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂(MP10)を得た。
(ポリアミド樹脂(MXD10)の合成)
上記MP10の合成において、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合品に変えて、メタキシリレンジアミンを使用した以外は、MP10の合成例と同様にしてポリアミド樹脂MXD10を得た。
ポリアミド樹脂(A)の各種物性の測定方法は、特許第4894982号公報の段落番号0157〜0168の記載に従った。
<実施例1>
真空乾燥機により乾燥したMXD10を30mmφのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、500mm幅のTダイを介して押出成形し、表面に凹凸状シボを設けたステンレス製の対ロールにより、ロール温度70℃、ロール圧0.4MPaで加圧し、フィルム表面にシボを有するフィルムを成形した。フィルム端部をスリットし、厚さ20μm、500mm幅のキャストフィルムを得た。
次いで、一方向に引き揃えた東レ(株)(Toray Industries)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維(トレカ(TORAYCA)T300−3000、3000フィラメント、198tex、引張弾性率:230GPa、平均繊維径7μm)を一方向に引きそろえたシート状物と上記MXD10フィルムを、複数のロールを用いて220℃に加熱しながら1MPaで加圧し、連続的に貼り合わせた後、40℃のロールで冷却した。加熱圧縮するのに用いたロールは、ロール表面をフッ素樹脂でコーティングしたものを用いた。ついで、複合材を下記表に記載の幅となるように切断しながら、巻きはじめの3cm2をテープで紙製の芯材に固定し、巻き取り張力10MPa、巻き取り速度1m/分、25℃、相対湿度50%の条件で巻き取った。
尚、得られた複合材中の樹脂/連続繊維の断面における面積比率及び断面における空隙面積率の測定は、特許第4894982号公報の段落番号0184〜0185の記載に従った。
<他の実施例および比較例>
実施例1において、樹脂の種類や複合材の製造条件を下記表に記載の通り変更し、他は同様に行って巻き取り品を製造した。
樹脂は下記のものを用いた。
N6:宇部興産製 グレード1022B 分子量22000
PP:日本ポリプロ株式会社製 ノバテックPP(グレードFB3HAT 密度0.9g/cm3
<θの測定方法>
上記で得られた巻き取り品の複合材の末端をテープ止めし、図4に示すように立てて、図4の矢印の方向から投影した。得られた投影図に基づき、θを測定した。
<複合材のずり落ち性>
得られた巻き取り品の複合材のずり落ち性について目視にて観察し、以下の通り評価した。
A: 複合材の末端をテープ止めした巻き取り品を、図4に示すように立てておいたときに、複合材がずり落ちることが無い。
B:複合材の末端をテープ止めした巻き取り品を、図4に示すように立てておいたときに、複合材の表層またはそれに近い層が若干ずり落ちることがある。
C:複合材の末端をテープ止めした巻き取り品を、図4に示すように立てておいたときに、芯材に近い側からも複合材がずり落ちる。
<巻癖の評価>
得られた巻き取り品(長さ30cm)を切り出し、その一端を机の上に抑え、もう一端の空中への反り上がり具合を、先端の角度(先端が水平状態からどの程度傾いているか)で評価した。先端角度は、例えば、全く反らなかったら0°、真上を向いたら90°と評価した。つまり、巻き上がり高さと先端角度が小さいほど巻き癖が小さいと言える。
Figure 2015030555
上記結果から明らかなとおり、本発明の巻き取り品は、ずり落ちにくく、かつ、巻癖が抑制されていることが分かった。
1 巻き取り品を投影した図
2 中心軸に対応する線
3 複合材に対応する辺
4 芯材
5 複合材
6 中心軸

Claims (10)

  1. ポリアミド樹脂(A)と連続繊維(B)を含む複合材(C)を芯材にトラバース巻きで巻き取った巻き取り品であって、前記複合材(C)は、幅dが3〜100mmであり、厚さtが20〜300μmであり、巻き取り品を芯材の幅方向の最大断面に垂直な方向から投影したとき、芯材の中心軸に対応する線と、巻き取られた複合材(C)のうち、前記芯材の幅方向の中央を通る複合材(C)に対応する辺のなす角のうち小さい方の角θが70〜89°であり、下記式を満たす巻き取り品。
    式:200≦D/t≦3000
    (上記式中、Dは芯材の外径(単位:mm)を表し、tは複合材(C)の厚さ(単位:mm)を示す。)
  2. 前記ポリアミド樹脂(A)として、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物であり、前記ジアミン化合物の50モル%以上が、キシリレンジアミンであるXD系ポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の巻き取り品。
  3. 前記ポリアミド樹脂(A)として、さらに、脂肪族ポリアミド樹脂を含む、請求項2に記載の巻き取り品。
  4. 前記キシリレンジアミンがメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンである、請求項2または3に記載の巻き取り品。
  5. 前記XD系ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)が、6,000〜30,000であり、かつ、該ポリアミド樹脂のうち、分子量が1000以下の成分の量が0.5〜5質量%である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の巻き取り品。
  6. 前記芯材の外径が、60〜350mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の巻き取り品。
  7. 前記複合材(C)中における連続繊維(B)の割合が10〜65質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の巻き取り品。
  8. 前記複合材(C)の1m2当たりの重量が、50〜3000gである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の巻き取り品。
  9. 前記D/tが300≦D/t≦2500である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の巻き取り品。
  10. 前記なす角θが85〜89°である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の巻き取り品。
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