JP2015026578A - 有機el発光装置の製造方法 - Google Patents

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優記 大嶋
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Abstract

【課題】封止工程で必要となる大気との遮蔽空間をなくすことにより、封止工程で発生する装置コストの増大やタクトの低下を抑制し、生産コストを下げることにより、より安価で、かつ、背面部材の少なくとも一部が陰極と接している封止構造において、陰極エッジ領域から発光領域までの非発光幅(シュリンク)の拡大を抑制することができる有機EL発光装置の製造方法を提供する。【解決手段】基板1と、少なくとも第1の電極2、有機機能層3、第2の電極4を含む有機EL素子及び該第2電極の少なくとも一部に接触している背面部材を含む、有機EL発光装置の製造方法であって、少なくともアルミを含む第2の電極により有機EL素子を形成する工程、酸素を18体積%以上、22体積%以下含む環境で有機EL素子と背面部材を貼合する工程、を含む、有機EL発光装置の製造方法。【選択図】図1

Description

陽極、陰極の2電極間に有機発光層を挟んだ構造を持つ有機エレクトロルミネセンス(以下、有機ELと称す)素子は、前記2電極間に数V程度の電圧を印加することで自ら発光することから、照明やディスプレイとして応用可能な素子である。また有機EL素子では、平面で発光するというこれまでにない特徴に加え、軽量、低コスト、高調色性、安価供給可能などの特徴を有することから、近年実用化に向けて精力的に開発が行われている。(非特許文献1)
有機EL素子は、例えばガラスやプラスチック等の基板上に必要な膜を積層することで作製されるが、膜として一般的に用いられる有機発光層や電極層が大気中の水分や酸素と反応しやすいことから、前記構造のままでは大気中で安定動作することが困難となる。具体的には、大気中の水分や酸素と反応した有機発光層や電極層は、ダークスポットなどの非発光領域となるため、素子寿命を低下させる大きな要因となっている。(非特許文献2)
前記寿命低下を抑制するために、多くの有機EL素子は、基板と対向する面側に第二の基板を配置し、第二基板と有機EL素子基板とで大気との接触を遮断する、封止構造を有している。封止構造を形成するに際し、使用される一手法としては、凹構造を有したガラスを第二基板として、内部にゲッター剤を配置し、第一の基板に第二の基板を重置し、第一の基板と第二の基板の外周部を硬化性樹脂等で硬化させる方法(以下、中空封止と称する)が例示できる。
このように、有機EL素子は、封止構造を有して初めて大気中で動作させることが可能となる素子である。したがって、封止工程を経て封止構造を形成するまでは、素子を大気中に暴露することを避けることが好ましく、前記中空封止においても、大気を遮断し、有機発光層や電極層等に不活性な気体に置換した空間中で作業が行われるのが通常である。
しかしながら、有機EL素子に対して封止構造を形成するためには、数多くの工程を必要とする。例えば前記中空封止を行う場合、ゲッター剤の配置、硬化性樹脂の塗布、第一基板と第二基板のアライメント及び貼り合わせ、硬化性樹脂の硬化作業、などである。これら全ての工程を不活性ガス中で行う場合、大気と遮蔽された巨大な空間を生み出す必要があり、多大なコストを要してしまう。また、作製された素子を外部に取り出す機構が必要となるため、置換気体と大気との入れ替え作業によって、生産タクトを低下させてしまうという問題も有している。さらには、遮蔽された空間内の封止装置に何らかのトラブルが生じた場合、トラブル解消のために該空間を大気置換する必要があるため、メンテナンスが困難でもある。
そこで、大気中で封止工程を実施する検討も行われており、特許文献1には、封止缶や、中空型の封止基板を用いる、いわゆる中空封止を、大気中で実施することに関して、封止缶と基板との接着層の幅、厚みを適切に選択することで、良好な素子特性が得られる、という記載がある。
特開2010−238606号公報
Appl.Phys.Lett.,51巻,913項,1987年 有機ELディスプレイ, 時任静士,安達千波矢,村田英幸, オーム社
したがって、本発明の課題は、封止工程で必要となる大気との遮蔽空間をなくすことにより、封止工程で発生する装置コストの増大やタクトの低下を抑制し、有機EL素子の生産コストを下げることにある。また、前記生産コストの低減によって、効率的な有機EL素子の生産ラインとし、より安価な有機EL発光装置を供給することにある。さらに、背面部材の少なくとも一部が陰極と接している封止構造において、陰極エッジ領域から発光領域までの非発光幅(シュリンク)が拡大するのを抑制することにある。
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討した結果、大気中で比較的安定な電極層を選択することにより、有機EL素子を、封止構造を持たない状態で大気中に取り出し、かつ大気中で封止できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に存する。
[1]:基板と、少なくとも第1の電極、有機機能層、第2の電極を含む有機EL素子及び該第2電極の少なくとも一部に接触している背面部材を含む、有機EL発光装置の製造方法であって、
少なくともアルミを含む第2の電極により有機EL素子を形成する工程、
酸素を18体積%以上、22体積%以下含む環境で有機EL素子と背面部材を貼合する工程、を含む、有機EL発光装置の製造方法。
[2]:前記貼合する工程が、湿度が露点−20℃以下の環境下で行われるものである、[1]に記載の有機EL発光装置の製造方法。
[3]:前記貼合する工程が、下記(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす環境下で行われるものである、[1]又は[2]に記載の有機EL発光装置の製造方法。
(1)二酸化炭素濃度が0.7g/m以下
(2)硫黄酸化物濃度が2.2μg/m以下
(3)窒素酸化物濃度が3.1μg/m以下
[4]:前記有機機能層の少なくとも一層が、塗布によって成膜される、[1]〜[3]のいずれかに記載の有機EL発光装置の製造方法。
[5]:前記背面部材が、少なくとも一層の粘着層を含むものである、[1]〜[4]のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
本発明による有機EL製造方法は、製造時のコストを低減し、より安価な有機EL発光装置、有機EL照明装置、有機EL表示装置を提供するものである。また、封止工程の装置メンテナンス性を向上させることによって、より安定に有機EL発光装置、有機EL照明装置、有機EL表示装置を提供することも可能となる。さらに、背面部材の少なくとも一部が陰極と接している封止構造において、陰極エッジ領域から発光領域までの非発光幅(シュリンク)が拡大するのを抑制することが可能になる。
本発明の有機EL発光装置の好適な実施態様を示す概略図である。 本発明の有機EL発光装置の他の実施態様を示す概略図である。 有機EL素子の形成工程を示す概略図である。 有機EL発光装置の背面部材の形成工程を示す概略図である。 有機EL発光装置の他の背面部材の形成工程を示す概略図である。 実施例1及び比較例2における有機EL発光装置のシュリンク幅の変化の測定結果である。
以下、図面を参照しながら本発明の有機EL発光装置の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容により限定されるものではない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
図1は、本発明の有機EL発光装置の好適な一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す有機EL発光装置10は、有機EL素子と、その背面に形成された背面部材とから構成されるものである。以下、有機EL素子及び背面部材について詳細に説明する。
1.有機EL素子
有機EL発光装置10の有機EL素子は、透光性基板1と、透光性基板1上に形成された第1の電極2と、第1の電極2上に形成された有機機能層3と、有機機能層3上に形成された第2の電極4を有するものである。有機EL素子の有機機能層3の発光層で発光された光は、透光性基材1を通して取り出される。有機EL素子の構成及びその構成材料は、従来公知のものを採用することができるが、構成材料として、例えば、次のものを挙げることができる。
(透光性基板)
透光性基板1は有機EL素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等を用いることができる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂製基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。
透光性基板1のガスバリア性が小さすぎると、透光性基板1を透過した外気により有機EL素子が劣化することがある。このため、合成樹脂製基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
透光性基板1の厚みは、通常0.01〜10mm、好ましくは0.1〜1mmである。
(第1の電極)
第1の電極2は図1に示すように、透光性基板1と有機機能層3の間に設けられる。第1の電極2は、陽極でも陰極でも良いが、通常は本発明の実施例のように陽極である。陽極は、有機機能層3へ正孔注入の役割を果たすものである。また、陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラックの他、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、その上限は通常1000nm、好ましくは500nmである。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は透光性基板1と同一でもよい。なお、第1の電極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
(有機機能層)
有機機能層3は、少なくとも発光層を有するものであれば、単層構造でも、多層構造でもよい。多層構造の例としては、正孔注入輸送層、発光層及び電子注入層からなる3層構
造や、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層及び電子注入層からなる5層構造などが挙げられ、適宜選択することが可能である。
正孔輸送材料としては、例えば、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、キナクリドン化合物、インダンスレン化合物、芳香族アミン化合物などが挙げられる。中でも、芳香族アミン化合物が好ましく、で表される4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4’−ビス[N−(9−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(PPD)、スピロ−(spiro−)NPB、スピロ−(spiro−)TAD、2−TNATAが、有機EL素子の耐熱性の観点から、特に好ましい。
電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体、ピリジン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ナフチリジン誘導体、シロール誘導体などを挙げることができる。
電荷輸送材料は、本発明の目的を損なわない限り、前述の正孔輸送材料や電子輸送材料などを適宜選択して使用することが可能であり、もちろんそれ以外の材料も使用することができる。
発光材料としては、例えば、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N′−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N′−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等の低分子材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェンなどの高分子材料などを挙げることができる。
有機機能層3の厚みは、単層構造又は多層構造により一様ではないが、通常1000nm以下であり、薄型化の観点から、好ましくは50〜150nmである。
本発明の目的を損なわない限り、発光層の上に適宜材料を選択して、正孔阻止層、電子輸送層などを形成しても構わない。
(第2の電極)
第2の電極4は、図1に示すように、有機機能層の第1の電極2の反対側に設けられる。第2の電極4は、陽極でも陰極でも良いが、通常は本発明の実施例のように陰極であり、有機機能層3に電子を注入する役割を果たすものである。この陰極は、大気中に取り出しても安定であることが望ましく、且つ有機機能層3に電子を注入するために仕事関数の低い金属であることが望ましい。また、陰極の材料組成としては、1種類であっても、2種類以上の材料を任意の比率で混合してもよい。具体的には、アルミニウム、アルミニウ
ム−リチウム合金等のアルミ合金などが挙げられる。
<背面部材>
一方、有機EL発光装置10の背面部材は、例えば封止層5と、吸湿層6と、保護層7を具備するものである。封止層5は、有機EL素子の透光性基板1上の露出面を覆うように形成されるものである。本実施形態に係る封止層5は、透光性基板1の主面の一部と、第1の電極(陽極)2、有機機能層3及び第2の電極(陰極)4の表面に直接接触して被覆する状態で形成されている。また、封止層5の上面には、これを覆うように保護層7が形成されている。封止層5と保護層7の間には、保護層7に接触するように吸湿層6が形成されている。本実施形態に係る吸湿層6は、有機機能層3を構成する発光層の発光領域を取り囲むように、発光領域の外周に沿って一定の間隔を保ちながら中空方形の形状に形成されている。
この背面部材は、封止性能の点から第2電極の少なくとも一部に接触しているのが好ましく、特に有機EL素子の発光領域において、接触しているのがさらに好ましい。
また、背面部材は、吸湿層6の端部6aが、水平方向に沿って、有機機能層3を構成する発光層の発光領域端部3aよりも長く、かつ封止層5の端部5aよりも短い。すなわち、吸湿層6の端部6aは、有機機能層3の発光層の発光領域端部3aよりも水平方向に沿って突出しており、また封止層5の端部5aは、吸湿層6の端部6aよりも水平方向に沿って突出している。ここで、本明細書において「端部」とは、水平方向に沿って有機EL発光装置の外側に最も突出した部分をいい、「水平方向」とは透光性基板1の主面に対して平行な方向をいう。また、本明細書において「発光層の発光領域」とは、電極間に電圧を印加したときに有機機能層3を構成する発光層の中で発光する領域をいい、「発光層の発光領域端部3a」は、第1の電極2、有機機能層3及び第2の電極4が重なり合った領域における発光層の最外表面とする。
発光層の発光領域端部3aから吸湿層6の端部6aまでの水平方向における間隔xは、通常0.4mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上である。その上限は、通常100mm、好ましくは50mm、より好ましくは10mmである。
また、吸湿層6の端部6aから封止層5の端部5aまでの水平方向における間隔yは、通常0.4mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上である。その上限は、通常100mm、好ましくは50mm、より好ましくは10mmである。
このように、有機EL発光装置10の背面部材は、封止層5、吸湿層6及び保護層7を順次積層し、吸湿層6の端部6aが所定の位置に配置された全面封止を採用するため、外部からの水分を遮断できるだけなく、発光層により発生した熱の放熱性にも優れる。そのため、有機EL素子の劣化が抑制され、長期間にわたって安定な発光特性を維持することが可能になる。
また、有機EL発光装置10は、保護層7が可撓性材料で構成されているため、従来に比して軽量化、薄膜化が可能になるとともに、低コスト化を実現することができる。更に、封止層5が熱可塑性樹脂を含むため、有機EL素子が劣化した場合に当該封止層の熱可塑性樹脂を溶融させて基板をリサイクルすることもできる。
(封止層)
封止層5に含まれる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリエステル、ポリイソプレンなどを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、低透湿性の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましい。
封止層5には、熱可塑性樹脂以外の成分を含有していてもよく、例えば、石油樹脂や環
状オレフィン系重合体などが挙げられる。
石油樹脂としては、例えば「14906の化学商品」(化学工業日報社刊行)のp.1192に記載のC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9共重合石油樹脂等が挙げられる。 環状オレフィン系重合体は、具体的には、クイントン1000シリーズ、クイントン100シリーズ(以上、ZEON製)、YSレジンTR105、YSレジンTO125、YSレジンPX1250(以上、ヤスハラケミカル製)、水添テルペン系樹脂(例えば、クリアロンP,M,Kシリーズ)、水添ロジン及び水添ロジンエステル系樹脂(例えば、Foral AX,Foral1105,ペンセルA,エステルガムH,スーパーエステルAシリーズ等)、不均化ロジン及び不均化ロジンエステル系樹脂(例えば、パインクリスタルシリーズ等)、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添加樹脂である水添ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、エスコレッツ5300,5400シリーズ、Eastotac Hシリーズ等)、部分水添芳香族編成ジシクロペンジエン系樹脂(例えば、エスコレッツ5600シリーズ等)、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α又はβ−メチルスチレンなどのC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂を水添した樹脂(例えば、アルコンP又はMシリーズ)、上記したC5留分とC9留分の共重合石油樹脂を水添した樹脂(例えば、アイマーブシリーズ)等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂には、さらにその粘着物性等を阻害しない範囲で、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤などが適宜添加されていてもよい。
封止層5の厚みは、通常1〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
(吸湿層)
吸湿層6には乾燥剤が含まれるが、乾燥剤としては吸湿性の高いものであれば特に限定されるものではない。例えば、アルカリ土類金属、アルカリ金属若しくはそれらの酸化物、又は無機多孔質材料などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、吸湿性と取り扱いの安全性の観点から、アルカリ土類金属又はアルカリ金属の酸化物、無機多孔質材料が好ましく、酸化カルシウム、ゼオライトが特に好ましい。
吸湿層6は、乾燥剤以外の成分を含有していてもよく、例えば、高熱伝導性のSi,AlN,Cからなる粒子、ロッドなどを挙げることができる。
吸湿層6の形状としては、図1では中空方形であるが、外部から透過した水分を吸収可能であれば特に限定されず、発光層の発光領域の配置に応じて、方形、矩形、円形、楕円形などを適宜選択することが可能である。また、外部からの水分を遮断できる構造であれば、中空構造でも、平面構造であってもよい。
吸湿層6の厚みは、通常0.1〜500μm、好ましくは1〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。
(保護層)
保護層7は、外部からの水分や酸素を遮断するとともに、背面部材を形成する際の支持体としても機能するものである。また、保護層7は、可撓性を有する。
保護層7は、通常、金属箔又はプラスチックフィルムと無機化合物層の積層体などを用いることができる。保護層7は、ガスバリア性を有するものが好ましい。ガスバリア性を有する金属としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルや、ステンレス、アルミニウム合金などの合金材料などが挙げられる。また、プラスチックフィルムと無機化合物層の積層体としては、プラスチックフィルムに酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機酸化
物の層、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物の層を一層又は多層積層してなる積層フィルムなどがあげられる。中でも、加工やコスト低減の観点から、保護膜7は、アルミニウム箔が好ましい。
保護層7の厚みは、通常1〜500μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは40〜100μmである。
有機EL発光装置10の厚みは、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜2mmである。
以上、本発明を図1に示す実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、本実施形態では、透光性基板1上に、第1の電極(陽極)2、有機機能層3及び第2の電極(陰極)4が順次積層された有機EL素子について説明したが、透光性基板1上に、第2の電極(陰極)4、有機機能層3及び第1の電極(陽極)2が順次積層された有機EL素子とすることもできる。
また、図1の実施形態では、中空方形の形状をした吸湿層6について説明したが、図2に示すように、発光層の発光領域の外周に沿って一定の間隔(例えば、間隔x)を保ちつつ、発光層の発光領域を全て覆う平面形状とすることもできる。なお、図2に示す有機EL発光装置の構成は、吸湿層6の形状を除き、図1に示す有機EL発光装置の構成と同様である。
2.有機EL発光装置の製造方法
次に、本発明の有機EL発光装置の製造方法について説明する。
本発明の有機EL発光装置の製造方法は、有機EL素子の形成工程、背面部材の形成工程、貼合工程及び熱処理工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
(有機EL素子の形成工程)
本工程では公知の方法を採用することが可能であるが、例えば、次の方法により行うことができる。図3(a)〜(c)は、有機EL発光装置の有機EL素子の形成工程を示す概略断面図である。図3(a)〜(c)を参照しながら、有機EL素子の形成方法について説明する。
先ず、透光性基板1を準備する。次に、図3(a)に示すように、透光性基板1の表面に第1の電極2を形成する。
第1の電極2は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて第1の電極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、透光性基板1上に塗布することにより第1の電極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接透光性基板1上に薄膜を形成したり、透光性基板1上に導電性高分子を塗布して第1の電極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
次に、図3(b)に示すように、第1の電極2上に、少なくとも発光層をする有機機能層3を形成する。
有機機能層3の形成方法としては、材料に応じて適宜選択することが可能であるが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などを用いることができる。
次に、図3(c)に示すように、有機機能層3上に第2の電極4を形成する。第2の電極4の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法などを用いることができる。
上記の方法で形成した有機EL素子は、必要であれば、封止工程までの間、窒素ガス中又は真空中に保管する。
(背面部材の形成工程)
図4(a)〜(d)は、有機EL発光装置の背面部材の形成工程を示す概略断面図である。図4(a)〜(d)を参照しながら、背面部材の形成方法について説明する。
先ず、図4(a)に示すような保護膜7となる可撓性のフィルム又は箔などを準備する。
次に、図4(b)に示すように、保護膜7の表面に吸湿層6を、発光層の発光領域を取り囲むように、発光領域の外周に沿って一定の間隔を保ちながら中空方形の形状に形成する。
吸湿層6の形成方法としては、材料に応じて適宜選択することが可能であるが、例えば、真空蒸着法などの乾式成膜法;スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサによる塗布法などの湿式成膜法などを用いることができる。中でも、印刷パターンの自由度とコスト低減の観点から、湿式成膜法が好ましく、ダイコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサによる塗布法などの印刷法が更に好ましく、スクリーン印刷、ディスペンサ塗布が特に好ましく採用される。
また、吸湿層6に関しては、あらかじめ整形されたフィルム状の形態のものを、保護膜7に直接貼り合わせることでも形成可能である。
次に、図4(b)に示すように吸湿層6が行列状に形成された保護膜7を、図4(c)に示すように、吸湿層6の外周に沿って一定の間隔を保ちながら一片ずつ裁断する。なお、この裁断工程は、状況に応じて、背面部材形成工程内のどの順番にでも移動可能である。例えば、保護膜7及び封止層5を裁断してから前記の吸湿層6形成工程を行ってもよいし、下記の封止層5形成工程後に行ってもよい。
次に、図4(d)に示すように、吸湿層6上に熱可塑性樹脂を含む封止層5を形成する。この場合、吸湿層6の表面を封止層5で全て覆い、かつ封止層5の端部5aが吸湿層6の端部6aよりも突出するように封止層5を形成する。
封止層5の形成方法としては、ロールコート、スピンコート、スクリーン印刷法、スプレーコートなどのコーティング法、印刷法等の方法を用いてもよいが、作業性の観点から、シート状の熱可塑性粘着剤を貼付する方法が好ましく採用される。
また、有機EL発光装置の背面部材の形成において、図5に示す方法により製造することも可能である。図5(a)〜(d)は、有機EL発光装置の背面部材の他の製造工程を示す概略断面図である。図5(a)〜(d)を参照しながら、背面部材の形成方法について説明する。
図5(a)に示すような保護膜7となる可撓性のフィルム又は箔などを準備し、図5(b)に示すように、保護膜7の表面に吸湿層6を、発光層の発光領域の外周に沿って一定の間隔を保ちつつ、発光層の発光領域を全て覆う平面形状に形成する。なお、吸湿層6の形成方法は、前記において説明したとおりである。
次に、図5(c)に示すように、吸湿層6の外周に沿って一定の間隔を保ちながら一片ずつ裁断した後、図5(d)に示すように、吸湿層6上に熱可塑性樹脂を含む封止層5を
形成する。なお、この裁断は、次の封止層を形成する工程の後に行なってもよい。次に、図5(d)に示すように、吸湿層6上に熱可塑性樹脂を含む封止層5を形成する。この封止層5の形成方法は、前記図4(d)と同様に行う。
(貼合工程)
次に、上記工程により得られた有機EL素子と、背面部材とを用いて、有機EL素子の電極形成面側と、背面部材の封止層形成面側とを、吸湿層の端部が水平方向に沿って発光層の発光領域端部よりも突出するように貼合する。貼合方法としては、ローラー貼合などの方法がある。
ここで本貼合工程においては、酸素濃度は通常18体積%以上、22体積%以下の環境下で行う。なお、前記の酸素体積%の範囲は、通常大気中に含まれる酸素濃度と同程度として定義している。酸素濃度がこの範囲であれば、外部環境と遮断するための大型装置、及びガスの置換作業などを必要としない。また、貼合工程中の湿度は、温度23℃において露点−20℃以下である。
さらに、下記(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす環境下で行うのが好ましく、より好ましくは下記(1)〜(3)の少なくとも2つを満たす環境下で行うのが好ましく、さらに好ましくは(1)〜(3)の全てを満たす環境下で行うのが好ましい。また、続いて行われる熱処理工程も同一の環境下で行うのがより好ましい。
(1)二酸化炭素濃度が0.7g/m以下
(2)硫黄酸化物濃度が2.2μg/m以下
(3)窒素酸化物濃度が3.1μg/m以下
1)二酸化炭素について
(1)測定方法
環境中の二酸化炭素濃度は、例えば、熱伝導検出器を備えたガスクロマトグラフィー(GC/TCD法)によって測定することができる。具体的には、以下の手順で測定する。
GC/TCD装置に、所定濃度の二酸化炭素を含有するHe標準ガスと窒素ガスとを様々な流量比で混合したガスを導入して、ガスクロマトグラフを測定する。二酸化炭素量とGC/TCDのシグナル強度の検量線を作成する。次に、先端にコックを有するシリンジ内に、測定対象のガスを所定量、例えば、0.5cm捕集し、これを前述の装置に導入してGC/TCD測定を行う。先述の検量線から0.5cm中の二酸化炭素量を計算することにより、二酸化炭素濃度を定量する。
GC/TCD装置としては、例えば、島津製作所製「GC−2010」などを用いることができる。この方法における二酸化炭素濃度の検出限界は、0.04g/mである。
なお、上記装置と同様の測定が可能であれば、GC/TCDの測定は、これ以外の装置を用いてもよい。
(2)二酸化炭素濃度を制御する理由
二酸化炭素は、通常、大気中に0.5〜1.0g/m程度含有される。本発明においては、以下の理由により、成膜環境中の二酸化炭素濃度を所定値以下とする。
二酸化炭素は、大気中の水分と反応して、炭酸イオンとなることが知られている。この炭酸イオンが、有機電界発光素子の有機層中に混入することによって、有機層中を移動する電荷のクエンチを引き起こすと考えられる。そして、このクエンチによる有機層内のキャリアバランスの変化が有機電界発光素子の低効率化や短寿命化の要因となると考えられる。従って、上記のようなクエンチャーの生成を避けるために、成膜環境中の二酸化炭素を低減させる必要があると考えられる。
(3)二酸化炭素濃度
成膜環境1において、成膜環境中の二酸化炭素濃度は、有機層内における電荷移動の阻害による有機電界発光素子特性の低下が起こり難いことから低い方が好ましい。具体的には、成膜環境中の二酸化炭素濃度は、上記測定方法により測定した値で、通常0.7g/m以下、好ましくは0.5g/m以下である。また、成膜環境中の二酸化炭素濃度は、低ければ低いほど好ましいので下限は特に無いが、通常0.00004g/mである。
2)硫黄酸化物について
(1)測定方法
環境中の硫黄酸化物は、化石燃料の燃焼や火山ガスなどに由来するものである。硫黄酸化物とは、一酸化硫黄、二酸化硫黄、三酸化硫黄などの総称である。硫黄酸化物濃度は、例えば、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。硫黄酸化物濃度の定量は、具体的には、測定対象のガスを水に1.5L/minで1時間捕集し、これをイオンクロマトグラフ分析装置「DX500型」(DIONEX社製)によって分析することにより行うことができる。この方法における硫黄酸化物濃度の検出限界は、0.1μg/mである。なお、上記装置と同様の測定が可能であれば、硫黄酸化物濃度の測定は、他の装置を用いて行ってもよい。
(2)硫黄酸化物濃度を制御する理由
硫黄酸化物は、大気中に通常50〜1700μg/m程度含有される。本発明においては、以下の理由により、環境中の硫黄酸化物濃度を所定値以下とする。
硫黄酸化物は、大気中の水分と反応して、強力な酸化剤である硫酸になることが知られている。また、硫黄酸化物の一種である、二酸化硫黄及び三酸化硫黄は、それぞれ還元剤及び酸化剤として機能する。そこで、酸化剤や還元剤の働きによって、有機電界発光素子を構成している有機化合物が酸化もしくは還元され、その有機化合物が持つ特性、例えばイオン化ポテンシャルや電子親和力、キャリア移動度などが変化すると考えられる。そして、このために、有機電界発光素子の寿命が短くなり、効率が低下すると考えられる。
また、硫酸のような酸が、有機電界発光素子の有機層中に混入することによって、有機層中を移動する電荷のクエンチを引き起こすと考えられる。これによる有機層内のキャリアバランスの変化が、有機電界発光素子の低効率化や短寿命化の要因となると考えられる。
従って、上記のような有機化合物の変質や酸の混入によるクエンチャーの生成を避けるために、環境中の硫黄酸化物を低減させる必要があると考えられる。
(3)硫黄酸化物濃度
成膜環境2において、成膜環境中の硫黄酸化物濃度は、有機層の変質や有機層内の電荷移動の阻害による、有機電界発光素子特性の低下が起こり難いことから、低い方が好ましい。具体的には、成膜環境中の硫黄酸化物濃度は、上記測定方法により測定した値で、通常2.2μg/m以下、好ましくは1.2μg/m以下である。また、成膜環境中の硫黄酸化物濃度は、低ければ低いほど好ましいので下限は特に無いが、通常0.0001μg/mである。
3)窒素酸化物について
(1)測定方法
環境中の窒素酸化物は、化石燃料の燃焼などに由来するものである。なお、窒素酸化物とは、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、五酸化二窒素などの窒素の酸化物の総称である。窒素酸化物濃度は、例えば、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。具体的には、ガス中の窒素酸化物濃度の定量は、測
定対象のガスを水に1.5L/minで1時間捕集し、これをイオンクロマトグラフ分析装置「DX500型」(DIONEX社製)を用いて分析することにより測定することができる。この方法における窒素酸化物濃度の検出限界は0.1μg/mである。尚、上記装置と同様の測定が可能であれば、窒素酸化物濃度の測定は、他の装置を用いて行ってもよい。
(2)窒素酸化物を制御する理由
窒素酸化物は、大気中に通常70〜5400μg/m程度含有される。本発明においては、以下の理由により、環境中の窒素酸化物濃度は所定値以下とする。
窒素酸化物は大気中の水分と反応して、強力な酸化剤である硝酸になることが知られている。この酸化剤の働きによって、有機発光素子を構成している有機化合物が酸化され、その有機化合物が持つ独自の特性、例えばイオン化ポテンシャルや電子親和力、キャリア移動度などが変化すると考えられる。このために、有機電界発光素子の寿命が短くなり、効率が低下すると考えられる。
また、窒素酸化物の一種で、不対電子を有するラジカル分子である二酸化窒素が、有機電界発光素子の有機層中に混入することによって、有機層中を移動する電荷のクエンチを引き起こすと考えられる。そして、これによる有機層内のキャリアバランスの変化が、有機電界発光素子の低効率化や短寿命化の要因となると考えられる。
従って、上記のような有機化合物の変質や酸の混入によるクエンチャーの生成を避けるために、環境中の窒素酸化物を低減させる必要があると考えられる。
(3)窒素酸化物濃度
成膜環境3において、成膜環境中の窒素酸化物濃度は、有機層の変質や有機層内の電荷移動の阻害による有機電界発光素子特性の低下が起こり難いことから、低い方が好ましい。具体的には、成膜環境中の窒素酸化物濃度は、上記測定方法による値で、通常3.1μg/m以下、好ましくは2.5μg/m以下である。また、成膜環境中の窒素酸化物濃度は、低ければ低いほど好ましいので下限は特に無いが、通常0.0001μg/mである。
(二酸化炭素・硫黄酸化物・窒素酸化物濃度の低減手段)
環境中の二酸化炭素濃度、硫黄酸化物濃度、及び窒素酸化物濃度を低減させる方法としては、例えば、ケミカルフィルター、活性炭、或いは水を用いる方法が挙げられ、これは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下に、各手段の定義、具体例、好適理由等を示す。
(1)ケミカルフィルター
本発明におけるケミカルフィルターは、空気中から粉塵、無機ガス成分など特定成分を除去する機能を有するもので、フィルタ内には、特定ガス除去成分を溶着した活性炭や活性アルミナ等の吸着機能のあるものが使用される。
ケミカルフィルターとしては、本発明の効果を損わない限り特に限定されないが、例えば、ケミカルガード(ニチアス社製)、ピュアライトフィルタ(日本ピュアテック社製)、ピュアスメル(日本無機社製)、TIOS(高砂熱化学社製)などが挙げられる。
本発明においては、成膜環境1〜3とする為に、ケミカルフィルターを用いるのは、通気性及びガス状不純物成分の吸着捕集性能が高く、更にコストが安くて、入手が容易である点で好ましい。
(2)活性炭
本発明における活性炭は、ある特定の物質を分離、除去、精製するなどの目的で吸着能力を高めるために化学的又は物理的な処理を施した1〜20nmの微細孔を多数有する炭
素であり、構成物質は90%以上が炭素である。
活性炭としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はないが、例えば、白鷺(日本エンバイロケミカルズ社製)、クラレコール(クラレケミカル社製)、カルゴン(三菱化学カルゴン社製)、活性炭(フタムラ化学社製)、などが挙げられる。
本発明においては、成膜環境1〜3とする為に、活性炭を用いるのは、物理吸着なので吸着速度が速く、導入空気の流速に依存しにくく、また一度使用した活性炭の再利用が可能であり、またコストが安価で、入手が容易である点などで好ましい。
(3)水
用いる水は特に制限はないが、二酸化炭素、硫黄酸化物、及び窒素酸化物などが除去され易い点で、好ましくは脱塩水、イオン交換樹脂を通した水、純水、超純水が挙げられる。
水を用いる場合は、空気を通過させる方法以外に、例えば、流動中の空気に、水を噴霧したり、空気と水とを向流接触させることで、所望の効果が得られる。
本発明においては特に、上記の中でケミカルフィルターを用いることが好ましい。
本発明においては、成膜環境に送給する空気を、例えば、上記のケミカルフィルターや活性炭充填層、もしくは水層、或いはこれらの組み合わせよりなる浄化手段に通気することにより、空気中のアンモニウム濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度のいずれか1以上を低減した後、有機層の成膜環境に送給して前述の成膜環境1〜3を実現することができる。
この場合、浄化手段への空気の供給速度(風量)としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はないが、通常0.1m/s以上、1.0m/s以下が好ましい。この範囲内であると、上記浄化手段により空気中の目的物を十分に除去することができるため好ましい。
(熱処理工程)
上記貼合工程後、熱処理を行う。熱処理方法としては、熱ラミネータやオーブン、ホットプレート、熱圧着機などを用いることができる。熱処理中には、加熱ローラーや加熱ブレードなどを用いて、背面部材を加圧することも可能である。なお、熱処理温度は、熱可塑性樹脂の種類により一様ではないが、通常、70〜130℃である。
このようにして、本発明の有機EL発光装置を製造することができるが、本発明の有機EL発光装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、及びタッチパネルを備えた機器などの表示部や面発光や曲面発光を可能とする有機EL照明装置として適用することができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。図1に示す有機EL発光装置を以下の方法により製造した。
[実施例1]
先ず、図3に示す手順にて7mm角の発光領域を持つ有機EL素子を製造した。
<ITO基板の形成>
透光性基板1としてガラス基板を準備した(縦3.75cm、横2.5cm、厚み0.7mm)。ガラス基板上に、膜厚70nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜(第1の電極2)が形成されたものを用いた(以下、ITO基板と称す)。
<正孔注入層の形成>
次いで、下記式(1)に示す繰り返し構造を有する高分子化合物(PB−1、重量平均分子量:52000、数平均分子量:32500)と、4−イソプロピル−4′−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートとを質量比100対20で混合し、混合物の濃度が2.5質量%となるように安息香酸エチルに溶解させた組成物を調製した。この組成物を、大気雰囲気中で、前記ITO基板上に、スピナ回転数500rpmで2秒、更に3500rpmで30秒の2段階でスピンコートした。その後、230℃で20分間加熱することで、膜厚25nmの正孔注入層を形成した。
<正孔輸送層の形成>
次いで、正孔輸送層として、4,4′−ビス[N−(9−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(PPD)を膜厚40nmとなるように真空蒸着法により製膜した。
<発光層の形成>
次いで、発光層としてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)を膜厚60nmとなるように真空蒸着法により製膜した。
<電子注入層の形成>
次いで、発光層上にフッ化リチウム(LiF)を膜厚0.5nmとなるように真空蒸着法によって蒸着し電子注入層を形成した。正孔注入層から電子注入層までを有機機能層3とした。
<陰極の形成>
次いで、アルミニウムを膜厚80nmとなるように真空蒸着法によって蒸着し、陰極4を形成した。
以上までの工程で、製造した有機EL素子は、封止工程までの間、窒素ガス中で保管した。
次に、図4に示す手順にて背面部材を製造した。
<吸湿層の形成>
保護層7として、厚さ95μmのアルミニウム箔を準備し、22mm角に裁断した。吸湿層6として、厚さ80μmの酸化カルシウムとポリエチレンの混合フィルムを18mm角に裁断したフィルムを用い、前記アルミニウム箔上に乾燥窒素中で加熱融着させることで、吸湿層6を形成した。加熱融着は、アルミ側を120℃のホットプレートで加熱した状態で、ウレタン製のローラーにより圧着した。
次いで、吸湿層6が形成されたアルミニウム箔を、平板とウレタン製のローラーの間に吸湿層6が平板側になるように挟み、乾燥窒素中でローラーを前後させることで、図4に示すような形状に保護層6の成形を行った。
<封止層の形成>
2枚のPETフィルムに挟みこまれた厚さ50μmの熱可塑性シート状粘着剤を22m
m角に裁断後、片側のPETフィルムを剥離し、吸湿層6の全面を被覆し、かつ封止層7の端部が水平方向に沿って吸湿層6の端部から2mm突出するように、熱可塑性シート状粘着剤を重ねてアルミニウム箔に貼り付け、封止層7を形成した。アルミニウム箔及び吸湿層6と、封止層7との間に気泡が入らないように密着させるために、乾燥窒素中において120℃のホットプレート上で、シート状粘着剤をPETフィルムの上からローラー圧着した。
次に、前記工程により得られた有機EL素子と背面部材を貼合することで、有機EL発光装置を製造した。
<有機EL素子と背面部材の貼合工程>
前記工程で製造された背面部材のアルミ側と反対側のPETフィルムを剥離し、当該剥離面が有機EL素子の発光層を覆い、かつ背面部材の吸湿層の端部が水平方向に沿って発光層の発光領域端部から1mm突出するように貼り合わせた。
貼り合わせはガラス基板の有機EL素子側に背面部材を載せ、背面部材のアルミニウム箔をローラー圧着することで行った。また、有機EL素子の保存、封止部材の貼り合わせは露点−20℃以下、二酸化炭素濃度が検出限界以下、硫黄酸化物が0.2μg/m、窒素酸化物が1.9μg/mの乾燥大気中で行った。
なお、環境中の二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物の除去は、前述に記載の方法で行った。
<有機EL素子と背面部材の圧着>
前記工程で得られた部材の接着面をより密着させるために、アルミ箔とガラスが封止層を介して接着される領域に対して、温度110℃に加熱し、且つ圧力をかけて圧着した。
[比較例1]
実施例1において、有機EL素子のアルミニウム陰極の代わりに銀を陰極として使用し、真空蒸着法によって成膜を行った。それ以外は実施例1と同様の工程で封止部材の貼り合わせまでを行い、有機EL発光装置を製造した。
[試験例1]
実施例1及び比較例1で得られた有機EL発光装置に対して、2電極間に電圧を印加して一定電流を流したときの発光面を、工業用顕微鏡(ECLIPSE LV100D,NiKon製)を用いて観察した。初期観察時の、発光面内での陰極エッジ領域から発光領域までの非発光幅(シュリンク)を計測した結果を、表1に示す。
表1から、アルミニウムを陰極として用いた有機EL発光装置の初期シュリンク幅と比較して、銀を陰極として用いた有機EL発光装置のそれは、2.5倍以上の値を示している。これは、アルミニウムを陰極として用いることで、アルミと大気中の酸素もしくは水分が結合して酸化皮膜を形成するために、素子内部まで酸素が入りにくくなり、大気中での素子の安定性が向上し、大気中での封止工程に耐えられていることを示している。一方、銀を陰極として用いた場合、大気が不安定な有機層に到達しやすいため、大気中での封止工程に耐えられずシュリンクが拡大してしまったと考えられる。
[比較例2]
実施例1において、有機EL素子と背面部材を貼り合わせる環境を、酸素濃度10ppm、水分濃度10ppm以下の乾燥窒素中とした。それ以外は、実施例1と同様の工程を行い、有機EL発光装置を製造した。
[試験例2]
実施例1及び比較例2で製造した有機EL発光装置を、85℃,85%RHの環境下で恒温恒湿保管し、経過時間に対するシュリンク幅の変化を測定した。その結果を、グラフ1(図6)に示す。
大気中で封止された素子は、窒素中で封止された素子と比較して、シュリンクの進行幅が小さい。これは、大気に暴露されたアルミ陰極が、大気中の酸素や水分と反応して酸化され、表面に酸化皮膜を形成したことによる耐久性向上が考えられる。このように、大気中での封止工程を行うことで、その封止性能が向上することが確認された。
1.透光性基板
2.第1の電極
3.有機機能層
4.第2の電極
5.封止層
6.吸湿層
7.保護層
10.有機EL発光装置

Claims (5)

  1. 基板と、少なくとも第1の電極、有機機能層、第2の電極を含む有機EL素子及び該第2電極の少なくとも一部に接触している背面部材を含む、有機EL発光装置の製造方法であって、
    少なくともアルミを含む第2の電極により有機EL素子を形成する工程、
    酸素を18体積%以上、22体積%以下含む環境で有機EL素子と背面部材を貼合する工程、を含む、有機EL発光装置の製造方法。
  2. 前記貼合する工程が、湿度が露点−20℃以下の環境下で行われるものである、請求項2に記載の有機EL発光装置の製造方法。
  3. 前記貼合する工程が、下記(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす環境下で行われるものである、請求項1又は2に記載の有機EL発光装置の製造方法。
    (1)二酸化炭素濃度が0.7g/m以下
    (2)硫黄酸化物濃度が2.2μg/m以下
    (3)窒素酸化物濃度が3.1μg/m以下
  4. 前記有機機能層の少なくとも一層が、塗布によって成膜される、請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL発光装置の製造方法。
  5. 前記背面部材が、少なくとも一層の粘着層を含むものである、請求項1〜4のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
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