JP2015025517A - 回転同期機能付噛合式クラッチ - Google Patents

回転同期機能付噛合式クラッチ Download PDF

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Abstract

【課題】構造がシンプルで、設計の自由度が高く、回転同期を安定して確実に行うことができ、締結状態を確実に解除できる回転同期機能付噛合式クラッチを提供すること。【解決手段】回転同期機能付噛合式クラッチ50は、スリーブ14の軸方向の移動に伴う力が伝達手段10を通じて係合部材12に伝達され、係合部材12と摩擦板22が摩擦係合することにより、相手部材24の回転とドラム27の回転とが同期するので、第一ギア15と第二ギア26との締結時の衝撃を緩和することができる。摩擦板22と係合部材12との平面同士の摩擦を利用しているので、回転同期時のトルク容量が安定しており、クラッチの締結解除時に、摩擦板22と係合部材12との摩擦係合状態を確実に解除することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、回転同期機能を具えた噛合式クラッチ、及びこれを利用した油圧式クラッチ、手動変速機に関する。
従来、トルクの断続手段としては、車両用変速機の動力断続手段として広く用いられている摩擦締結クラッチ、例えば2輪車用変速機の駆動ギア選択手段に用いられている機械式噛合いクラッチ、自動車用手動変速機の駆動ギア選択手段に用いられる回転同期式噛合いクラッチがある。これらの例として、特許文献1から3に示すものがある。
特開2012−17808号公報 特開2009−127852号公報 特開2008−144894号公報
特許文献1のような摩擦締結クラッチ(湿式多板クラッチ)の場合、締結時の衝撃をピストンの押付荷重をコントロールすることにより緩和することができるが、機械式噛合いクラッチに比べて強度・耐久性が低いので、トルク容量を確保するためには締結部位が大型化するという問題がある。また、締結状態を維持するためには、常に、摩擦面を押付け続ける大きな力が必要なため、その分、油圧ポンプには常時負荷が掛かる。また、構造が複雑という問題がある。
特許文献2のような機械式噛合いクラッチの場合、特許文献1のような摩擦締結クラッチに比べて、噛合部の部品強度があるので、トルク容量を確保し易く、その分、締結部位の小型化が可能である。しかし、締結時、噛合部の相対回転の差を瞬時に吸収するため、条件によっては大きな衝撃や異音が発生するという問題がある。
特許文献3のような回転同期式噛合いクラッチの場合、上記の摩擦締結クラッチ及び機械式噛合いクラッチの利点を併せ持つが、現在の自動車用手動変速機の主流であるシンクロメッシュ機構では、以下の問題がある。すなわち、コーンのテーパ面の摩擦を利用するため、摩擦板と相手部材というような平面同士の摩擦に比べてトルク容量が不安定である。また、回転同期から締結完了までの一連の正常な動作が、テーパ面の摩擦係数や角度、噛合いギアのチャンファの角度等と密接に関連した上で実現されているので、あらゆる条件下で安定した作動を実現できる訳ではなく、条件によってギア鳴り等の不具合が生じるという問題がある。また、締結状態から解除状態へ移行させるときに、楔効果によってコーン同士が離れ難く、トルクの伝達が完全に切断され難い場合があるという問題もある。
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、構造がシンプルで、設計の自由度が高く、回転同期を安定して確実に行うことができ、且つ、締結状態を確実に解除できる回転同期機能付噛合式クラッチを提供することを目的とする。
本発明は、シフト手段によって軸方向に可動するスリーブと、
前記スリーブに具えられている第一ギアと、
前記スリーブが軸方向に移動することによって、前記第一ギアと噛合い、又は噛合いが解除される第二ギアと、
前記第二ギアが設けられている相手部材と、
前記相手部材とともに回転する摩擦板と、
前記摩擦板と摩擦係合する係合部材と、
前記スリーブの軸方向の移動に伴う軸方向の力を前記係合部材に伝え、前記摩擦板と係合部材とを摩擦係合させる伝達手段を有することを特徴とする回転同期機能付噛合式クラッチ、
又は、シフト手段によって軸方向に可動するスリーブと、
前記スリーブに具えられている第一ギアと、
前記スリーブが軸方向に移動することによって、前記第一ギアと噛合い、又は噛合いが解除される第二ギアと、
前記第二ギアが設けられている相手部材と、
前記スリーブとともに回転する摩擦板と、
前記摩擦板と摩擦係合する係合部材と、
前記スリーブの軸方向の移動に伴う軸方向の力を前記係合部材に伝え、前記摩擦板と相手部材とを摩擦係合させる伝達手段を有することを特徴とする回転同期機能付噛合式クラッチによって前記課題を解決した。
本発明によれば、スリーブが軸方向に移動したときに、摩擦板と相手部材又は係合部材とを摩擦係合させる伝達手段を有し、第一ギアと第二ギアとが噛合う前に摩擦板と相手部材又は係合部材とが摩擦係合して双方の回転を同期させるから、第一ギアと第二ギアとの締結時の衝撃を緩和することができる。また、摩擦板と相手部材又は係合部材との平面同士の摩擦を利用しているので、回転同期時のトルク容量が安定しており、また、クラッチの締結解除時に、シンクロメッシュ機構のように、楔効果によってコーン同士が離れ難いという問題が生じないので、回転同期のための摩擦係合状態を確実に解除することができる。また、第一ギアと第二ギアとの機械式噛合いによってトルクを伝達できる。
また、回転同期手段であるコーン部にもスプラインギアが設けられている一般的なシンクロメッシュ機構に比べて、本発明は、回転を同期させるための伝達手段にスプラインギアを別個に設ける必要がない。このため、その分、構造がシンプルで、小型化が可能である。そして、回転を同期させるための伝達手段の構造、及び摩擦板の取付位置等の設計自由度が高いという利点を有する。
また、本発明を油圧式クラッチに適用した場合、クラッチの締結時、第一ギアと第二ギアとの機械式噛合いによってトルクを伝達するので、湿式多板クラッチのように、摩擦面を常に押付け続けるための力は不要となる。従って、その分、油圧式ピストンを押圧するための動力を低減することができる。
(a)は本発明の第一実施形態が組込まれた油圧式クラッチの要部の一部断面正面図、(b)は一部拡大図。 本発明の第一実施形態が組込まれた油圧式クラッチの作動を説明する縦断面図。 本発明の第二実施形態が組込まれた油圧式クラッチの作動を説明する縦断面図。 本発明の第三実施形態が組込まれた手動変速機の一部の縦断面図。 本発明の第三実施形態が組込まれた手動変速機の作動を説明する縦断面図。 本発明の第三実施形態の要部横断面図。
本発明の実施例を、図1〜6を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1(a)は、本発明の第一実施形態の回転同期機能付噛合式クラッチ(以下、単に、「ドグクラッチ」という。)50が組込まれた油圧式クラッチ100の要部の一部断面正面図である。図1(a)に示すように、ドグクラッチ50は、係合部材である環状のロータ12、及びスリーブ14を有し、スリーブ14はその内周側に第一ギアである内歯スプライン15を具える。ロータ12は、伝達手段10を軸方向同位置、且つ、周方向に等間隔で5箇所有する構成であるが、伝達手段10の個数は適宜変更することが可能である。なお、図示は省略するが、ロータ12とスリーブ14の径方向の位置関係を逆にしても本発明を適用することができる。すなわち、スリーブ14がロータ12の外周側に設けられる構成であってもよい。
図1(b)に示すように、伝達手段10は、ロータ12に収納されている曲面体である、球状の転動体18、及び転動体18をスリーブ14方向に付勢するコイルばね16、そして、転動体18と係合する、スリーブ14の径方向の表面に設けられた突起部13から構成されている。なお、曲面体としては、後述するように、スリーブ14に設けられた突起部13と曲面が接するものであれば、例えば、縦断面が半円形状のものでもよい。
次に、図2を参照して、油圧式クラッチ100の作動を具体的に説明する。図2は、油圧式クラッチ100の縦断面図であって、径方向上半分(上下対称であるので下半分は省略する。)を示している。図2(a)は、ドグクラッチ締結前、(b)は、回転同期中、(c)は、ドグクラッチ締結後の状態である。なお、油圧式クラッチ100自体の作動原理は、基本的には、通常の油圧クラッチと同様である。
図2に示すように、油圧クラッチ100は、ドラム27を具え、ドラム27とスプライン嵌合しており、軸方向に可動するロータ12、及び固定部材17を具える。一方、ドラム27内部には、作動油が供給されることによって作動する油圧式ピストン21、油圧式ピストン21に連結されるスリーブ14が配設されており、ロータ12とスリーブ14とは伝達手段10を介して連動するようにされている。また、ドラム27内部には、出力軸(図示省略。)に連結されている相手部材24、相手部材24に設けられ、ロータ12の内歯スプライン15と噛合う外歯スプライン26(第二ギア)、及び相手部材24にスプライン嵌合する摩擦板22も配設されており、摩擦板22にはその両面に摩擦材が貼付けられている。
図2(a)に示す状態のとき、ドラム27が駆動され、油圧式ピストン21、スリーブ14、ロータ12、固定部材17はドラム27と一体的に回転しており、第二ギア26及び摩擦板22が設けられている相手部材24にはトルクは伝達されていない。
ドラム27に設けられた第一連通孔23を通じて油圧作動油が供給されると、油圧式ピストン21とスリーブ14は、軸方向(図中で左方向)に移動する。このとき、図2(b)に示すように、スリーブの径方向の外側に設けられた突起部13の斜面と転動体18とが係合し、転動体18が突起部13の斜面から押圧力を受ける。よって、ばね16の押圧力が突起部13の斜面に作用し、当該斜面の反作用の成分がロータ12を押す力となる。すなわち、スリーブ14が軸方向に移動すると、ロータ12を同方向に動かす。なお、突起部13の斜面の傾斜角は、摩擦板22とロータ12及び固定部材17との締結に要するロータ12の軸方向の力を考慮して設定される。また、突起部13は、図示しているような、転動体18と接する部分に斜面を有する山形形状のものの他、転動体18と接する部分に曲面を有する円弧形状のものでもよい。かくして、ロータ12の摩擦係合面11が摩擦板22の摩擦材と摩擦係合するとともに、摩擦板22を固定部材17の摩擦係合面19に押付けるので、相手部材24の回転がドラム27の回転と同期される。このように、ロータ12の摩擦係合面11及び固定部材17の摩擦係合面19と摩擦板22の摩擦材との平面同士の摩擦を利用するので、回転同期時のトルク容量が安定し、確実に回転を同期させることができる。また、図示は省略するが、ロータ12、摩擦板22、固定部材17に係る構成を多板構造、すなわち、摩擦板22を複数枚設け、その間にドラム27とスプライン嵌合する中間部材を設けるという構成とすることで、回転同期のためのトルク容量をさらに大きく設計することも可能である。
図2(b)の状態から、第一連通孔23を通じて油圧作動油がさらに供給されると、油圧式ピストン21及びスリーブ14は、軸方向(図中で左方向)にさらに移動し、転動体18が突起部13を乗り越えるとともに内歯スプライン15と外歯スプライン26とが噛合い、ドグクラッチの締結が完了する。このとき、内歯スプライン15と外歯スプライン26とが噛合う前に双方の回転が同期されているから、内歯スプライン15と外歯スプライン26との噛合い時の衝撃を緩和することができる。ドグクラッチの締結状態では、伝達手段10によるロータ12への軸方向の押圧力は加えられておらず、ロータ12の摩擦係合面11及び固定部材17の摩擦係合面19と摩擦板22の摩擦材とは解放状態であるので、内歯スプライン15と外歯スプライン26との噛合いによってのみトルクが伝達されている。このように、ドグクラッチ50の締結時は、内歯スプライン15と外歯スプライン26が機械的に噛合うので、摩擦締結クラッチに比べて小さな油圧(ピストン21の押圧のための。)でトルクを確実に伝達できるという利点がある。なお、内歯スプライン15と外歯スプライン26には、これらが噛合い易いようにチャンファを設けるのがよい。また、突起部13の形状は、転動体18が乗り越えられる形状であって、突起部13が転動体18を押すことが出来るようなものであればよく、転動体18は、スリーブの突起部13と係合するように設けられているものであれば、例えば、円柱形のものでもよい。また、転動体18を付勢するばねとしては、コイルばね16以外にも、転動体18をスリーブ14方向に安定して付勢できるものであれば適用可能である。
ドグクラッチの締結状態において、スリーブ14の軸方向右への移動は、コイルばね16によって径方向に押されている転動体18と突起部13との係合によって阻止されるので、内歯スプライン15と外歯スプライン26との噛合いが外れることはない。換言すると、伝達手段10は、内歯スプライン15と外歯スプライン26との噛合いのロック手段を兼ねている。このように、油圧式クラッチ100によれば、内歯スプライン15と外歯スプライン26との機械式噛合いによってトルクを伝達することができ、且つ、その噛合いがロックされているので、油圧式ピストン21を押圧するための油圧を最小限に低下、或いは不要とすることができ、油圧ポンプ(図示省略。)の負荷を大幅に低減することができる。
図2(c)の状態から第二連通孔25を通じて油圧作動油が供給されると、油圧式ピストン21は軸方向(図中で右方向)に移動し、スリーブ14及びロータ12も連動して移動するが、ロータ12は止め輪20によってその移動が止められるので、スリーブ14のみが移動をし続け、やがて転動体18が突起部13を再び乗り越え、図2(a)に示す状態に戻る。このとき、伝達手段10aによるロータ12への軸方向の荷重は加えられておらず、ロータ12の摩擦係合面11及び固定部材17の摩擦係合面19と摩擦板22の摩擦材とは摩擦係合していないので、内歯スプライン15と外歯スプライン26との噛合いが外れたのと同時に、トルクの伝達を確実に切断することができる。
次に、図3は、本発明の第二実施形態のドグクラッチ50aが組込まれた油圧式クラッチ100aを示している。基本的な動作は油圧式クラッチ100と同様であるが、伝達手段が異なる。ドグクラッチ50aの伝達手段10aは、スリーブ14に一体的に設けられている、径方向に延びるピン13aと、ロータ12に収納されるばね16aからなる。ばね16aは、ロータ12に設けられるロケイトピン28によって固定されており、ばね16a内部に挿通されるピン13aと摩擦係合する括れ部16bを有する。
図3(a)は、ドグクラッチ締結前、(b)は、回転同期中、(c)は、ドグクラッチ締結後の状態を示しており、図3(d)〜(f)は、(a)〜(c)それぞれの場合のピン13aとばね16aとの関係を横断面図で示している。油圧式ピストン21及びスリーブ14が、軸方向(図中で左方向)に移動すると、ピン13aと括れ部16bが摩擦係合するので、スリーブ14の軸方向の力は、ばね16aを通じてロータ12に伝わり、ロータ12を動かす。かくして、ロータ12の摩擦係合面11と固定部材の摩擦係合面19(図2参照。)が摩擦板22の摩擦材と摩擦係合し、相手部材24とドラム27との回転が同期される。
ドグクラッチ50aにおいても、伝達手段10aがロック手段を兼ねている。すなわち、図3(c)に示すように、ドグクラッチ締結時においても、ピン13aと括れ部16bが摩擦係合しているので、内歯スプライン15と外歯スプライン26との噛合いが外れることはない。この場合、括れ部16bの括れ具合を絞ることで、ロックを一層強固にすることができる。
以上に説明したように、伝達手段としては、ばねの弾性力を利用して、スリーブ14の軸方向の移動に伴う軸方向の力をロータ12に伝え、摩擦板22とロータ12とを摩擦係合させるものであれば適用可能である。また、伝達手段10,10aを軸方向同位置、且つ、周方向に等間隔で設ければ、スリーブ14が軸方向に移動したときに、突起部13又はピン13aがばね16,16aからの押圧力を受けても、その押圧力はスリーブ14の周方向に均等に働くので、スリーブ14の傾きを防止することができる。なお、伝達手段10,10aの設置数が多い程、スリーブ14の作動の安定性を高めることができる。
図4は、本発明の第三実施形態のドグクラッチ50bを組込んだ手動変速機100bの一部の縦断面図である。手動変速機100bは、インプットシャフト32、カウンターシャフト34、及びアウトプットシャフト36を有する。インプットシャフト32からカウンターシャフト34を介してギアG1〜G6へトルクが伝達され、そのトルクをアウトプットシャフト36に伝えるためのクラッチとして、本発明のドグクラッチ50bを用いることができる。このように、本発明のドグクラッチは、トルクの伝達及び解除を行う種々の機構に適用可能である。ドグクラッチ50bでは、伝達手段10bは、図5、6に示されているように、スリーブ14aに設けられ、スリーブ14aの軸方向に開口する貫通孔14bと、貫通孔14bに嵌め込まれる括れ部16d、貫通孔14bと摺動する膨出部16g、及び摩擦板22aとの係合面を有し、係合部材を兼ねるばね16cから構成されている。
次に、ドグクラッチ50bの作動について説明する。図5は、図4の手動変速機100bの要部を拡大した縦断面図である。図5(a)は、ドグクラッチ締結前、(b)は、回転同期中、(c)は、ドグクラッチ締結後の状態を示している。図5(a)に示すように、ドグクラッチ50bは、シフト手段としてのシフトフォーク21a、シフトフォーク21aに連結されているスリーブ14a、及び摩擦板22aを有し、後述するように、スリーブ14aに組込まれたばね16cを有する。スリーブ14a及び摩擦板22a,22bはハブ29にスプライン嵌合するように設けられている。また、スリーブ14aには外歯スプライン15a(第一ギア)が設けられ、相手部材24aには、外歯スプライン15aと噛合う内歯スプライン26a(第二ギア)が設けられている。なお、摩擦板22a,22bには、相手部材24a,24bとの摩擦係合面に、摩擦材が貼付けられている。
図5(a)に示す状態において、相手部材24a、24bに設けられている内歯スプライン26a,26bは、インプットシャフト32(図4参照。)の回転に応じて(原動機の回転に応じて)、一方、スリーブ14aに設けられている外歯スプライン15aは、アウトプットシャフト36の回転に応じて(車速に応じて)、それぞれ独立して回転可能にされている。しかし、インプットシャフト32からアウトプットシャフト36へはトルクが伝達されていない状態であり、車両への駆動力は発生していない。
ここで、スリーブ14aとばね16cとの関係について、図6を参照して説明する。スリーブ14aは、ハブ29とスプライン嵌合しているので軸方向に移動可能で、また、軸方向に開口する貫通孔14bが設けられている。ばね16cは、周方向断面T字形であり、T字の結合部分の軸方向に括れ部16dが形成され、括れ部16dが貫通孔14bに嵌まっている。ばね16cには、軸方向両端にスリット16eが設けられており、ばね16cの括れ部16dがスリーブ14aの貫通孔14bに嵌まっている状態でも、スリーブ14aが軸方向に移動することができるように設計されている。スリーブ14aが軸方向に移動すると、貫通孔14bの端部において、ばね16cの膨出部16gが弾性変形、密着し、ばね16cの弾性変形の復元力によって、スリーブ14aの貫通孔14bとばね16cとが摩擦係合するので、ばね16cもスリーブ14aとともに軸方向に移動する。なお、ばね16cは摩擦板22a(図5参照。)との係合面16fを有しており、ばね16cが係合部材を兼ね、摩擦板22aへスリーブ14aの移動時の押圧力を伝達するように構成されている。
次に、スリーブ14aの移動により回転同期する作用について説明する。図5(a)に示す状態からシフトフォーク21aを軸方向(図中で右方向)に移動させると、貫通孔14bの端部において、括れ部16aから膨出部に移行する際の括れ部の端部から膨出部の頂点までの変形部にスリーブ14aが当接し、シフトフォーク21aの移動による押圧力が伝達される。そして、ばね16cの係合面16f(図6参照。)が摩擦板22aを相手部材24aに押付ける。かくして、相手部材24aからのトルクが摩擦板22aを通じてスリーブ14aへ伝達され、内歯スプライン26aと外歯スプライン15aとの回転が同期される。
図5(b)の状態から、シフトフォーク21aをさらに同方向に移動させると、外歯スプライン15a及び内歯スプライン26aとが噛合い、ドグクラッチの締結が完了する。ドグクラッチの締結状態では、ばね16cの係合面16f(図6参照。)が摩擦板22aを相手部材24aに押付けたままの状態であるが、外歯スプライン15aと内歯スプライン26aとの機械式噛合いによって確実にトルクが伝達されている状態である。なお、このとき、ばね16cの弾性変形の復元力によって、スリーブ14aの貫通孔14bとばね16cとが摩擦係合しているので、スリーブ14aの軸方向左への移動は阻止されるが、スリーブ14aが不意に移動して、外歯スプライン15aと内歯スプライン26aとの噛合いが外れてしまうということを防止するために、別途、シフトフォーク21aをロック手段(図示省略。)で固定することもできる。
また、伝達手段10bを軸方向同位置、且つ、周方向に等間隔で設ければ、スリーブ14aが軸方向に移動したときに、摩擦板22aに対して周方向に均等に押圧力を与えることができるので、摩擦板22aの傾きを防止することができ、摩擦板22aを介して相手部材24aに、回転同期のためのトルクを安定して伝達することができる。なお、伝達手段10bの設置数が多い程、トルク伝達の安定性を高めることができる。
図5(c)に示すようなドグクラッチの締結状態から解除状態に移行するときは、シフトフォーク21aの軸方向(図中で左方向)への移動に伴い、まず、ばね16cが摩擦係合によりスリーブ14aとともに同方向に移動し、摩擦板22aと相手部材24aとの係合状態が解除され、その後、外歯スプライン15aと内歯スプライン26aとの噛合いが解除される。従って、ドグクラッチ50,50aと同様、締結状態から解除状態への切り換えたときには、トルクの伝達を確実に切断することができる。
ドグクラッチ50,50aと50bとでは、伝達手段、摩擦板の取付位置、及び摩擦板22、22aに貼付けられる摩擦材の面数が異なるが、これは、本発明のドグクラッチの適用対象、回転同期に必要なトルク容量等を考慮して自由に設計・組合わせることができる。すなわち、図示しての説明は省略するが、例えば、ドグクラッチ50,50a(図2,3参照。)において、摩擦板22の耐荷重強度を十分確保した上で相手部材24に固定し、摩擦材を貼付ける面を係合部材12側のみにすれば、固定部材17を省略することもできる。一方、ドグクラッチ50b(図5参照。)において、摩擦板22aの両面に摩擦材を貼付けて相手部材24a,24bの内歯スプライン26aに嵌合させ、ハブ29には摩擦板22aを挟むように、ばね16c側にはプッシャプレートをスプライン嵌合させ、相手部材側にはエンドプレートを固定する、という構成とすることもできる。また、摩擦板22aを複数枚設け、その間にハブ29とスプライン嵌合する中間部材を設けることによって多板構造にすることもできる。
以上説明したように、本発明によれば、構造がシンプルで、設計の自由度が高く、回転同期を安定して確実に行うことができ、且つ、締結状態を確実に解除できる回転同期機能付噛合式クラッチを提供することができる。
10,10a,10b 伝達手段
12,(16c) 係合部材
13 突起部
13a ピン
14,14a スリーブ
14b 貫通孔
15,15a 第一ギア
16,16a,16c ばね
16b,16d 括れ部
16f 係合面
16g 膨出部
18 転動体(曲面体)
21 油圧式ピストン(シフト手段)
21a シフトフォーク(シフト手段)
22,22a 摩擦板
24,24a,24b 相手部材
26,26a,26b 第二ギア
50,50a,50b 回転同期機能付噛合式クラッチ
100,100a 油圧式クラッチ
100b 手動変速機

Claims (11)

  1. シフト手段によって軸方向に可動するスリーブと、
    前記スリーブに具えられている第一ギアと、
    前記スリーブが軸方向に移動することによって、前記第一ギアと噛合い、又は噛合いが解除される第二ギアと、
    前記第二ギアが設けられている相手部材と、
    前記相手部材とともに回転する摩擦板と、
    前記摩擦板と摩擦係合する係合部材と、
    前記スリーブの軸方向の移動に伴う軸方向の力を前記係合部材に伝え、前記摩擦板と係合部材とを摩擦係合させる伝達手段を有することを特徴とする、
    回転同期機能付噛合式クラッチ。
  2. 前記伝達手段が、前記スリーブの径方向の表面に設けられた突起部と、前記係合部材に収納され、前記突起部と接する曲面を有する曲面体と、該曲面体を前記スリーブ方向に付勢するばねからなり、前記スリーブの軸方向の移動に伴い前記突起部が前記曲面体の曲面と係合して軸方向の力を前記係合部材に伝える、請求項1の回転同期機能付噛合式クラッチ。
  3. 前記突起部が前記曲面体と接する部分に斜面を有する、請求項2の回転同期機能付噛合式クラッチ。
  4. 前記突起部が前記曲面体と接する部分に曲面を有する、請求項2の回転同期機能付噛合式クラッチ。
  5. 前記伝達手段が、前記スリーブに一体的に設けられている、径方向に延びるピンと、前記係合部材に収納され、前記ピンと摺動する括れ部を有するばねからなり、前記スリーブの軸方向の移動に伴い前記ピンが前記括れ部と係合して軸方向の力を前記係合部材に伝える、請求項1の回転同期機能付噛合式クラッチ。
  6. 前記伝達手段が、軸方向同位置で、且つ、周方向に等間隔で複数設けられている、請求項2から5のいずれかの回転同期機能付噛合式クラッチ。
  7. 前記シフト手段が油圧式ピストンである、請求項1から6のいずれかの回転同期機能付噛合式クラッチが組込まれた油圧式クラッチ。
  8. シフト手段によって軸方向に可動するスリーブと、
    前記スリーブに具えられている第一ギアと、
    前記スリーブが軸方向に移動することによって、前記第一ギアと噛合い、又は噛合いが解除される第二ギアと、
    前記第二ギアが設けられている相手部材と、
    前記スリーブとともに回転する摩擦板と、
    前記摩擦板と摩擦係合する係合部材と、
    前記スリーブの軸方向の移動に伴う軸方向の力を前記係合部材に伝え、前記摩擦板と相手部材とを摩擦係合させる伝達手段を有することを特徴とする、
    回転同期機能付噛合式クラッチ。
  9. 前記伝達手段が、前記スリーブに設けられ、該スリーブの軸方向に開口する貫通孔と、該貫通孔に嵌め込まれる括れ部、前記貫通孔と摺動する膨出部、及び前記摩擦板との係合面を有し、前記係合部材を兼ねるばねからなり、前記スリーブの軸方向の移動に伴い前記貫通孔が前記膨出部と係合して軸方向の力を前記ばねに伝える、請求項8の回転同期機能付噛合式クラッチ。
  10. 前記伝達手段が、軸方向同位置で、且つ、周方向に等間隔で複数設けられている、請求項9の回転同期機能付噛合式クラッチ。
  11. 前記シフト手段がシフトフォークである、請求項8から10のいずれかの回転同期機能付噛合式クラッチが組込まれた手動変速機。
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