JP2015021591A - 転がり軸受 - Google Patents

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Hideyuki Tobitaka
秀幸 飛鷹
大輔 渡貫
Daisuke Watanuki
大輔 渡貫
一輝 田村
Kazuki Tamura
一輝 田村
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Abstract

【課題】風力発電機や建設機械、産業用ロボット等のように、高い荷重や衝撃的な荷重が加わるような用途に使用される転がり軸受にも対応可能で、優れた寿命と靭性とを両立させた転がり軸受を提供する。
【解決手段】軌道輪の少なくとも一方が、DI値が1.0以上で、球状化焼鈍処理された鋼材を高周波加熱処理して少なくとも軌道面及び嵌め合い面に硬度550HV以上の硬化層を形成してなり、かつ、高周波加熱処理された軌道輪において、(A)平均残留オーステナイト量が12体積%以下であり、(B)軌道面の残留オーステナイト量が12体積%以上で、残留圧縮応力が−100MPa以下であり、(C)軌道面の硬度と、硬度550HV未満の領域の最低硬度との差が150HV以上であることを特徴とする転がり軸受。
【選択図】なし

Description

本発明は転がり軸受に関し、より詳細には風力発電機や建設機械、鉄鋼設備、産業用ロボット等のように、高い荷重や衝撃的な荷重が加わるような用途に使用される転がり軸受に関する。
転がり軸受には寿命と靭性とが要求され、特に風力発電機や建設機械、鉄鋼設備、産業用ロボット等のように、高い荷重や衝撃的な荷重が加わるような用途に使用される転がり軸受には両者のバランスが重要視される。
軸受の転がり寿命は、内部起点型の剥離と、表面起点型の剥離とに大別される。内部起点型剥離は鋼材中に含まれる非金属介在物を起点とするため、鋼材の酸素量を低減させる手法により長寿命化が行われている。これまで、様々な鉄鋼プロセスの改善により酸素量の低減が図られているが、化学成分において炭素量が多いことが酸素量の低減に望ましいことが知られており、中炭素鋼であるS53Cに比べてSUJ2に代表される軸受鋼は高い清浄度を示す。
表面起点型剥離では、油中に含まれる金属粉等の異物の噛み込みによって生じる圧痕の縁の応力集中により剥離が生じるため、これを緩和する目的で残留オーステナイト量を制御して長寿命化を図っている。また、一般に、表面起点型剥離は内部起点型剥離に比べて明らかに軸受を短寿命化することから、長寿命軸受の開発は表面起点型剥離の低減に関するものが多い。しかし、残留オーステナイトを多量に発生させるためには表面に炭素や窒素の富化領域を形成させる必要があり、そのためには浸炭や浸炭窒化等の特殊なガス雰囲気下での焼入れ処理が必要となる。更には、多量の残留オーステナイトの析出は転がり軸受に最も必要な表面硬度の低下をもたらすため、これを硬質の炭窒化物で補う必要があり、そのためにはMo等の高価な合金元素を添加することが多い。
一方、靭性は材料の硬度とトレードオフの関係にあり、靭性を向上させるためには硬度の低い領域をできるだけ多く確保することが基本的な方針になる。このような視点から、低・中炭素鋼に浸炭あるいは浸炭窒化処理を施して表面のみ硬化させた浸炭軸受が開発されている。しかし、浸炭鋼は鉄鋼設備用の軸受のように比較的大型の軸受に使用されることが多く、焼入れ性を確保するためにNiやMo、Cr等の高価な合金元素を添加するのが主流であり、浸炭処理等の熱処理の煩雑さと併せて生産コストの増大を招いているのが現状である。
このような背景から、高周波加熱により鋼材の表面のみを硬化させることも行われている(例えば、特許文献1、2参照)。高周波加熱により、同一の部品の中で、高い面圧に耐える硬化層が表面に存在し、靭性に優れる非硬化層が内部(心部)に存在し、寿命と靭性とが両立した軸受が得られる。
特開2009−270172号公報 特許第4208426号公報
しかしながら、従来の転がり軸受では、特許文献1のように、高周波加熱による硬化処理は軌道面のみであり、他の部分は柔らかいままである。そのため、組み付けに細心の注意が必要であり、それはそのまま製品の生産性低下につながる。また、軸受はハウジングに組み込まれて使用されるのが一般的であるが、荷重による変形を抑えるために、ハウジングと軸受の隙間は必要最小限に抑えられている。そのため、例えば外輪の外径面をハウジングに組み込む場合、外輪の外径面に傷があると、傷の周囲が盛り上がりハウジングへの組み込みが非常に困難になる。
また、高周波加熱処理は、特許文献2のように、S53C等の低合金鋼を用いた軌道輪に対して行われており、特にCr等が炭化物に濃化し、炭素の溶け込みを阻害するような合金成分は避けられる傾向にある。多くの炭素が溶け込んだ領域では残留オーステナイトが残存し、圧縮の残留応力が維持されやすい利点があるが、S53Cのような低合金鋼ではこのような作用が得られない。
そこで本発明は、風力発電機や建設機械、産業用ロボット等のように、高い荷重や衝撃的な荷重が加わるような用途に使用される転がり軸受にも対応可能で、優れた寿命と靭性とを両立させた転がり軸受を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は下記の転がり軸受を提供する。
(1)一対の軌道輪及び転動体の何れか1つ以上の部品を含む転がり軸受において、
前記軌道輪の少なくとも一方が、下記(1)式に示すDI値が1.0以上で、球状化焼鈍処理された鋼材を高周波加熱処理して少なくとも軌道面及び嵌め合い面に硬度550HV以上の硬化層を形成してなり、かつ、
高周波加熱処理された軌道輪において、(A)平均残留オーステナイト量が12体積%以下であり、(B)軌道面の残留オーステナイト量が12体積%以上で、残留圧縮応力が−100MPa以下であり、(C)軌道面の硬度と、硬度550HV未満の領域の最低硬度との差が150HV以上であることを特徴とする転がり軸受。
DI=D0×fSi×fMn×fNi×fCr×fMo・・・(1)
D0=0.2×(C)+0.14
fSi=1+0.64×(Si)
fMn=1+4.1×(Mn)
fNi=1+0.52×(Ni)
fCr=1+2.33×(Cr)
fMo=1+3.14×(Mo)
(但し、(C)、(Si)、(Mn)、(Ni)、(Cr)及び(Mo)は、鋼材中の各元素の含有量(質量%)である。)
(2)前記鋼材が、Cを0.7〜1.1質量%、Siを0.15〜0.7質量%、Mnを0.01〜1.15質量%、Crを0.9〜1.6質量%、Moを0〜2.0質量%及びNiを0〜2.0質量%含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であることを特徴とする上記(1)記載の転がり軸受。
(3)高周波処理された軌道輪における軌道面の硬度550HV以上の領域の深さをY(mm)、転動体と接触する領域の平均肉厚をT(mm)及び硬度550HV未満の領域の肉厚をW(mm)とし、反軌道面における硬度550HV以上の領域の深さをY´(mm)、前記転動体の直径をD(mm)とするとき、
(a)Y≧0.07D
(b)Y>Y´
(c)Y/T≦30%
(d)W/T≧55%
の全てを満たすことを特徴とする上記(1)または(2)記載の転がり軸受。
尚、以降の説明では、「硬度550HV未満の領域」を「心部」ともいう。
本発明の転がり軸受は、軌道輪材料に球状化焼鈍処理した炭素含有量が0.7質量%以上の鋼材を用い、更に高周波加熱処理により軌道面、嵌め合い面及びシールとの接触部にのみ特定物性の硬化層が形成され、心部に非硬化層が存在することにより、寿命と靭性とに優れたものとなる。そのため、風力発電機や建設機械、産業用ロボット等の高荷重、衝撃荷重が加わるような用途に使用されても、剥離の発生を抑えて寿命の延長を図ることができる。
(A)円筒ころ軸受、(B)円錐ころ軸受、(C)自動調心ころ軸受を例示して軌道輪の肉厚Tの規定方法を説明するための図である。 玉軸受における軌道輪の肉厚Tの規定方法を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
本発明の転がり軸受は、一対の軌道輪間に、複数の転動体を転動自在に保持したものであるが、何れか一方の軌道輪、好ましくは両方の軌道輪の少なくとも軌道面及び嵌め合い面に、高周波加熱により、硬度550HV以上の硬化層が形成されている。
上記したように、従来では高周波加熱処理は軌道面のみに施されているため、例えばハウジングへの組み込みに使用される外輪の外径面等は硬化されていないのに対し、本発明では軌道面に加えて嵌め合い面にも、好ましくは更に潤滑油やグリース等の潤滑剤を封止するシールとの接触部分や軌道輪の全表面に高周波加熱による硬化層を形成する。
軌道輪の出発材料として、炭素量が0.7質量%以上で、球状化焼鈍処理された鋼材を用いることが好ましい。本発明では、風力発電機や建設機械、産業用ロボット等に使用される大型の、具体的には外輪外径が180mm以上の転がり軸受が主たる対象となるが、基本的に軸受が大きくなると転動体も大きくなるため、せん断応力も大きくなり、必然的に必要な焼入れ深さが深くなる。しかし、硬化層が深くなると、表面近傍の残留圧縮応力が一旦大きくなった後に元に戻る傾向があり、中炭素鋼(炭素量が0.30〜0.45質量%)の場合、ある一定以上の温度に曝されて炭化物が全て溶けてしまうと、オーステナイトの成分上、それ以上の変化が起こらなくなる。これに対し炭素含有量が多い高炭素鋼では、炭素の供給量が十分であり、更には多くの炭素が溶け込んだ領域では残留オーステナイトが残存して残留圧縮応力が維持されやすくなる。そのため、残留オーステナイト量を確保するために、本発明では炭素量を0.7質量%以上にすることが好ましく、より好ましくは0.95質量%以上にする。但し、巨大な炭化物の発生を抑制するためには炭素量は1.2質量%以下が好ましく、1.1質量%以下であることがより好ましい。
残部は及び不可避的不純物とすることもできるが、焼入れ性を確保するために、Siを0.1〜2.0質量%、Mnを0.01〜2.0質量%、Crを0.1〜2.0質量%含有することが好ましく、焼入れ性が不足する場合には更にMnを2質量%以下、Niを2.0質量%以下含有することが好ましい。
Siは焼入れ性確保のために0.1質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましいが、2.0質量%を越えると切削特性が低下する。切削特性の低下を抑えるには0.7質量%以下がより好ましい。
Mnは焼入れ性確保のために0.01質量%以上が好ましいが、2.0質量%を越えると切削特性が低下する。切削特性の低下を抑えるには1.15質量%以下がより好ましい。
Crは焼入れ性確保のために0.1質量%以上が好ましく、0.9質量%以上がより好ましいが、2.0質量%を越えると切削特性が低下する。切削特性の低下を抑えるには1.6質量%以下がより好ましい。
更に、Moを2.0質量%以下添加することにより、加工性が高まり、価格も抑えることができる。また、Niを2.0質量以下添加することにより、価格を抑えることができる。
即ち、鋼材組成として、C:0.7〜1.1質量%、Si」0.15〜0.7質量%、Mn:0.01〜1.15質量%、Cr:0.9〜1.6質量%、Mo:を0〜2.0質量%、Ni:0〜2.0質量%、残部が鉄及び不可避的不純物であることが特に好ましい。
更に、鋼材は、下記(1)式に示すDI値が1.0以上である。尚、下記において、(C)、(Si)、(Mn)、(Ni)、(Cr)及び(Mo)は、鋼材中の各元素の含有量(質量%)である。
DI=D0×fSi×fMn×fNi×fCr×fMo・・・(1)
D0=0.2×(C)+0.14
fSi=1+0.64×(Si)
fMn=1+4.1×(Mn)
fNi=1+0.52×(Ni)
fCr=1+2.33×(Cr)
fMo=1+3.14×(Mo)
DI値は焼入れのしやすさを示す指標であり、DI値が低いと焼入性が悪いことを示すが、DI値が1.0以上、好ましくは2.1以上であると高周波加熱による焼入れ性が良好になる。
尚、上記の組成を満足する鋼材として、SUJ2やSUJ3等を市場が入手することができる。
また、球状化焼鈍処理を施すことにより、微細な球状化炭化物が母材中に分散し、炭化物のピン止め効果により微細な組織が維持される。
本発明では、上記組成で、球状化焼鈍処理された鋼材を、所定の形状に機械加工した起動輪に高周波加熱して硬化層を形成するが、硬化層が形成された軌道輪において、平均残留オーステナイト量を12体積%以下とする。残留オーステナイトは、軸受を使用している最中に次第にマルテンサイトに変態し、その密度差から寸法が膨張することが知られている。そして、硬化層が形成された軌道輪全体の残留オーステナイト量の平均値を12体積%以下に抑えることにより、マルテンサイトに変態したときの寸法変化量を、一般的な炉加熱により硬化処理した軸受と同等以上のレベルに維持することができる。
また、硬化層が形成された軌道輪において、軌道面の残留オーステナイトが12体積%以上であり、かつ、残留圧縮応力が−100MPa以下である。軌道面の残留オーステナイトが12体積%未満では、特に異物が混入するような潤滑環境下において、硬度不足による表面起点型剥離が発生する。このような表面起点型剥離をより確実に防ぐためには、軌道面の残留オーステナイトを18体積%以上とする。
残留圧縮応力は亀裂の発生及び進展を遅延させる効果と関係があり、残留圧縮応力が−100MPa以下であると、寿命延長に効果が見られる。また、水素の侵入による白色組織剥離は、一般に計算寿命よりも短い時間で発生する場合があることから、残留圧縮応力が−200MPa以下であると白色組織剥離に起因する寿命低下も効果的に抑制することができ、更なる寿命延長効果が得られる。
加えて、硬化層が形成された軌道輪において、軌道面と心部との硬度差が150HV以上である。高周波加熱処理による残留圧縮応力の発生メカニズムは、基本的には、表面がオーステナイト域まで加熱され、心部が未変態のままであることに起因する。また、表面の高周波加熱処理時間が長く、心部がオーステナイト域になるまで加熱された場合においても、心部の温度は表面の温度よりも低いために、その組織はパーライト、ベイナイトあるいは低炭素マルテンサイトとなり、表面の組織との差異により圧縮の残留応力が発生する。つまり、表面と心部とで組織が大きく異なることが必要であり、軌道面と心部との硬度差が150HV以上、好ましくは280HV以上であると、長寿命化に必要な圧縮の残留圧縮応力を確保することができる。
但し、残留圧縮応力は、表層部が受け持つ圧縮部と、心部が受け持つ引張部とで相殺されるように発生するため、表層での圧縮の残留応力の有効活用、並びに心部での引張の残留応力の有害度低減の2つの意味からも適切なバランスとする必要がある。そのためには、軌道面においては転がり疲労に対する耐久性を確保するために、せん断応力分布に応じた硬化層深さが必要である。また、嵌め合い面等の耐摩耗性や耐傷特性が要求される部位については、その硬化層は必要以上に厚くならないようにすべきである。そのため、下記に示す(a)〜(d)の関係を満たすことが好ましい。
即ち、軌道面の硬度550HV以上の領域の深さをY(mm)、転動体と接触する領域の平均肉厚をT(mm)及び硬さ550HV未満の領域(心部)の肉厚をW(mm)とし、反軌道面における硬度550HV以上の領域の深さをY´(mm)、前記転動体の直径をD(mm)とするとき、
(a)Y≧0.07D
(b)Y>Y´
(c)Y/T≦30%
(d)W/T≧55%
を全て満たすことが好ましい。
尚、Yは、高周波加熱処理された軌道輪を厚さ方向に切断し、その断面について軌道面の表面から内部に向かってビッカース硬度計を走査し、硬さが550HV以上である領域の表面からの距離(深さ)を求めればよい。尚、Y´は、軌道面とは反対側の面(内輪では内輪内径面、外輪では外輪外径面)の表面から、硬さが550HV以上である領域までの距離(深さ)を求めればよい。また、残部がWとなる。
また、Tは次のようにして規定される。図1(A)は円筒ころ軸受において内輪10の外径面10aに有効硬質層を形成した場合を示すが、ころ1の転動面1aのR部側両端P1から内輪10に垂線Lを引き、垂線Lの内輪外径面10aから内輪内径面10bまでの距離を測定し、その平均値をTとする。同図(B)は円錐ころ軸受において内輪10の外径面10aに有効硬質層を形成した場合を示すが、内輪外径面10aの逃げ溝11を除く領域においてころ1の転動面1aと接触する幅方向両端P2から内輪10に垂線Lを引き、この垂線Lの内輪外径面10aから内輪内径面10bまでの距離を測定し、その平均値をTとする。また、図1(C)は自動調心ころ軸受において、外輪12の内径面12aに有効硬化層を形成した場合を示すが、外輪12の内径面12aにおいて、ころ1の転動面1aのR部側両端P3から外輪12に垂線Lを引き、この垂線Lの外輪内径面12aから外輪外径面12bまでの距離を測定し、その平均値をTとする。
また、図2に示すように、玉軸受においては、玉2の転動面2aと、内輪20の軌道溝21とが点接触になるため、軌道溝21の最深部及びその近傍から内輪内径面20aまでの距離(L)の平均値がTとなる。
高周波加熱では、硬化させたい部分に加熱コイルを対向配置し、加熱コイルに高周波電流を流すことで誘導加熱し、加熱部分をある深さにわたって硬化させる。本発明では、軌道輪の軌道面、嵌め合い面(反軌道面)及びシールとの接触部分と対面して、好ましくは軌道輪の全面に対向して加熱コイルを配置し、加熱コイルの出力や処理時間等を調整して、上記の硬化層を形成する。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1〜2)
表1に示す合金組成の鋼材を用意し、球状化焼鈍処理を施した後、機械加工によりスラスト軸受51305のレースを作製し、下記の加熱条件にて高周波加熱処理してレース面に硬化層を形成した。また、上記(1)式からDI値を算出した。更に、レース面を10μm程度電解研磨し、研磨面についてX線回折法により組織分析を行い、オーステナイト相の体積分率(残留オーステナイト量)を求めた。結果を表1に示す。
<加熱条件>
・周波数:10kHz
・加熱時間:10〜30秒
・焼戻し:180℃で2時間
また、研磨加工した後、下記条件にて寿命試験を行った。結果を表1に、比較例1に対する相対値(寿命比)で示す。
<寿命試験条件>
・接触面圧:2.8GPa
・回転数:1000min−1
・潤滑:VG68 油浴潤滑
・異物:HV850程度で74〜147μmの粉体を、VG68中に200pm添加
Figure 2015021591
比較例1では、本発明で規定する炭素量及び残留オーステナイト量を下回っており、異物圧痕を起点とする剥離が生じていた。比較例2では、本発明で規定する炭素量及び残留オーステナイト量を満足するものの、早期剥離が発生して比較例1に比べて短寿命であった。剥離の様子を観測したところ、内部を起点とした剥離が発生しており、焼入性の不足により内部から破壊が生じたことが原因であると考えられる。また、DI値を求めると、0.9であった。即ち、比較例2から、内部起点型剥離を抑えるためにはDI値で1.0以上の焼入性が必要であることがわかる。
これに対し本発明に従う実施例1〜3では、寿命を大幅に延長できる。剥離の形態は比較例1と同様に異物圧痕を起点とした表面起点型剥離であったが、異物が混入するような潤滑環境においては、硬度不足による内部起点型剥離が生じないような焼入れ性が確保され(DI値で1.0以上、好ましくは2.1以上)、かつ、残留オーステナイト量が12体積%以上必要であることがわかる。
(実施例4〜7、比較例3〜4)
上記実施例2の鋼材はSUJ2、実施例3の鋼材はSUJ3に相当する。そこで、SUJ2またはSUJ3に球状化焼鈍処理を施した鋼材を機械加工して、円筒ころ軸受NU2326の内輪を作製し、更に表2に示すように、比較例3では炉加熱によりずぶ焼入れを行い、比較例4及び実施例4〜7では上記の加熱条件にて高周波加熱を行った。但し、比較例4及び実施例4〜7では、処理条件により表2に示す軌道面、心部及び平均の残留オーステナイト量に調整した。
そして、130℃にて恒温保持し、加熱前後における寸法測定から寸法変化量を求めた。結果を表2に、比較例3に対する相対値(寸法変化比)で示す。
Figure 2015021591
比較例3は標準的な炉加熱による硬化処理を施したものであり、標準的な品質といえる。寸法変化量は平均残留オーステナイト量と良い相関関係を有しており、平均残留オーステナイト量が12体積%以下であれば、軌道面の残留オーステナイト量を12体積%以上に多量に確保しても、標準的な軸受以上の寸法変化は生じないことがわかる。
(実施例8〜11、比較例5〜6)
SUJ2またはSUJ3に球状化焼鈍処理を施した鋼材を機械加工して、円筒ころ軸受NU2326の内輪を作製し、更に表3に示すように、比較例5では炉加熱によりずぶ焼入れを行い、比較例6及び実施例8〜11では上記の加熱条件にて高周波加熱を行った。但し、比較例6及び実施例8〜11では、処理条件により表3に示す表面及び心部の各硬度、並びに軌道面の残留圧縮応力に調整した。尚、表面硬度とは軌道面の表面から深さ0.2mmの位置での硬度であり、心部硬度とは測定位置にかかわらずに最も低い硬度を示す。また、軌道面の残留圧縮応力はX線回折法により求めた。
そして、各内輪を用いて円筒ころ軸受NU2326を組み立て、下記条件にて寿命試験を行った。結果を表3に、比較例5に対する相対値(寿命比)で示す。
<寿命試験条件>
・荷重:面圧1.7GPa
・回転数:1300min−1
・潤滑:特殊潤滑油(白色組織剥離が発生しやすい油)
Figure 2015021591
比較例5は、上記比較例3と同様に標準的な軸受である。寿命延長効果と残留圧縮応力とは良い相関関係にあり、−100MPa以下の残留圧縮応力(100MPa以上の圧縮の残留応力)が付与されていると、比較例5に対して2倍以上の寿命延長効果が得られる。特に、実施例8、9のように、残留圧縮応力が−200MPa以下になると3倍を超える寿命延長効果が得られる。潤滑には白色組織剥離が発生しやすい油に用いているが、一般に白色組織剥離は計算寿命に比べて短い時間で剥離を生じることから、残留圧縮応力を−200MPa以下にすることによりこの白色組織剥離の抑制にも効果があると考えられる。
更に、表面及び心部の硬度差は、150HV以上必要であることが同時に判明した。
また、軌道面、心部及び平均の残留オーステナイト量を測定し、上記と同様にして寸法安定性を調べたが、実施例では寸法安定性にも優れていた。
Figure 2015021591
(実施例12〜22、比較例7〜11)
比較例7、比較例8、比較例11及び実施例19についてはSUJ2、その他はSUJ3を用い、球状化焼鈍処理を施した素材を機械加工して、表5に示す緒元の円筒ころ軸受の内輪を作製した。尚、表5において、dは軸受内径(mm)、Dは軸受外径(mm)、Fwは内輪外径(mm)である。
Figure 2015021591
次いで、比較例7、比較例8及び比較例11では炉加熱によりずぶ焼入れを行った。一方、実施例では、軌道面側及び反軌道面側(内輪内径面)に加熱コイルを対向配置し、上記の加熱条件にて各加熱コイルの出力を調整して、軌道面及び反軌道面の硬化状況を表6に示すように変化させた。また、何れの内輪にも、軌道面及び反軌道面以外の部分に同一条件にて高周波加熱処理を施して硬化層を形成した。
そして、作製した内輪について、断面をビッカース硬度計により走査してY、Y´及びWを測定した。また、軌道面の残留圧縮応力及び圧砕強度を測定した。結果を表6に示すが、圧砕強度については比較例7、比較例8または比較例11に対する相対値(圧砕強度比)で示す。
Figure 2015021591
比較例7、比較例8及び比較例11は何れも炉加熱により焼入れを行ったものであり、何れも軌道面の残留圧縮応力が−100MPaを超えており、それらとの圧砕強度比をみると、高周波加熱処理して硬化層を形成した各実施例は強度が高くなっている。各実施例では、軌道面の残留圧縮応力が何れも−100MPa以下であり、軌道面の残留圧縮応力を−100MPa以下にする必要があるといえる。
但し、実施例20ではずぶ焼入れを行った場合に比べて圧砕強度が若干劣っている。これは、軌道面の硬化層よりも反軌道面の硬化層が厚い(Y<Y´)ことによると考えられる。尚、軌道面の硬化層と軌道面の硬化層との深さの関係では、反軌道面の硬化層の深さを軌道面の硬化層の深さの半分以下の割合(Y´/Y≦0.5)にすることにより、圧砕強度の向上が顕著になるといえる。
また、比較例9では、内輪における軌道面の硬化層が厚すぎて(Y/T>30%)、軌道面表面に必要な残留圧縮応力が確保できなかったためと考えられる。更に、比較例10では、心部が薄すぎて(W/T>55%)必要な残留圧縮応力が得られず、寿命が短くなっている。
更に、軌道面の硬化層の深さ(Y)と、円筒ころの直径(D)との関係についても、実施例では「Yo≧0.07D」を満足している。
1 ころ
1a 転動面
10 内輪
10a 内輪外径面
10b 内輪内径面
12 外輪
12a 外輪内径面
12b 外輪外径面
2 玉
2a 転動面
20 内輪
21 軌道溝
L 垂線

Claims (3)

  1. 一対の軌道輪及び転動体の何れか1つ以上の部品を含む転がり軸受において、
    前記軌道輪の少なくとも一方が、下記(1)式に示すDI値が1.0以上で、球状化焼鈍処理された鋼材を高周波加熱処理して少なくとも軌道面及び嵌め合い面に硬度550HV以上の硬化層を形成してなり、かつ、
    高周波加熱処理された軌道輪において、(A)平均残留オーステナイト量が12体積%以下であり、(B)軌道面の残留オーステナイト量が12体積%以上で、残留圧縮応力が−100MPa以下であり、(C)軌道面の硬度と、硬度550HV未満の領域の最低硬度との差が150HV以上であることを特徴とする転がり軸受。
    DI=D0×fSi×fMn×fNi×fCr×fMo・・・(1)
    D0=0.2×(C)+0.14
    fSi=1+0.64×(Si)
    fMn=1+4.1×(Mn)
    fNi=1+0.52×(Ni)
    fCr=1+2.33×(Cr)
    fMo=1+3.14×(Mo)
    (但し、(C)、(Si)、(Mn)、(Ni)、(Cr)及び(Mo)は、鋼材中の各元素の含有量(質量%)である。)
  2. 前記鋼材が、Cを0.7〜1.1質量%、Siを0.15〜0.7質量%、Mnを0.01〜1.15質量%、Crを0.9〜1.6質量%、Moを0〜2.0質量%及びNiを0〜2.0質量%含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
  3. 高周波処理された軌道輪における軌道面の硬度550HV以上の領域の深さをY(mm)、転動体と接触する領域の平均肉厚をT(mm)及び硬度550HV未満の領域の肉厚をW(mm)とし、反軌道面における硬度550HV以上の領域の深さをY´(mm)、前記転動体の直径をD(mm)とするとき、
    (a)Y≧0.07D
    (b)Y>Y´
    (c)Y/T≦30%
    (d)W/T≧55%
    の全てを満たすことを特徴とする請求項1または2記載の転がり軸受。
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