以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならせしめてある。
(実施形態1)
「液晶装置の概要」
実施形態1に係る液晶装置100は、電気光学装置の一例であり、薄膜トランジスター(以降、TFTと称す)30を備えた透過型の液晶装置である。本実施形態に係る液晶装置100は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子として好適に使用することができるものである。
まず、本実施形態に係る液晶装置100の概要について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、液晶装置の構成を示す概略平面図である。図2は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。図3は、図1のA−A’線で切った概略断面図である。
図1及び図3に示すように、本実施形態に係る液晶装置100は、素子基板10、対向基板20、及び素子基板10と対向基板20とで挟持された液晶層50などを有する。
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材52を介して接着され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材52は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が使用されている。シール材52には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
額縁状に配置されたシール材52の内側には、同じく額縁状に見切り部53が設けられている。見切り部53は、表示の見切りであり、見切り部53の内側が表示領域Eとなる。表示領域Eには、画素Pがマトリックス状に複数配置されている。なお、表示領域Eには、表示に寄与する複数の画素Pを囲んで配置されたダミー画素を含んでいてもよい。
見切り部53の詳細は、後述する。
素子基板10の複数の外部接続用端子102が配列された第1辺と該第1辺に沿ったシール材52との間には、データ線駆動回路101が設けられている。該第1辺と直交し互いに対向する他の第2辺、第3辺に沿ったシール材52と表示領域Eとの間には、走査線駆動回路104が設けられている。該第1辺と対向する他の第4辺に沿ったシール材52と表示領域Eとの間には、二つの走査線駆動回路104を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101や走査線駆動回路104に繋がる配線は、該第1辺に沿って配列された複数の外部接続用端子102に接続されている。
「液晶装置の電気的な構成」
次に、図2を参照して、液晶装置100の電気的な構成を説明する。
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線12及び複数のデータ線16や、データ線16に対して平行に延在する容量線41などを有する。なお、容量線41の配置はこれに限定されず、走査線12に対して平行に延在するように配置してもよい。
また、走査線12、データ線16、及び容量線41は、遮光性の導電材料で構成され、素子基板10に設けられている。
走査線12とデータ線16とで区分された領域には、画素電極17、TFT30、及び蓄積容量40などが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
走査線12は、TFT30のゲート電極に電気的に接続されている。データ線16は、TFT30のソース電極に電気的に接続されている。画素電極17は、TFT30のドレイン電極に電気的に接続されている。
データ線16はデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号VS1,VS2,…,VSnを各画素Pに供給する。走査線12は走査線駆動回路104(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路104から供給される走査信号G1,G2,…,Gmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線16に供給される画像信号VS1,VS2,…,VSnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線16同士に対してグループごとに供給してもよい。
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号G1,G2,…,Gmの入力によりオン状態とされた期間に同期して、データ線16から供給される画像信号VS1,VS2,…,VSnがTFT30を介して画素電極17に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極17に書き込まれた所定レベルの画像信号VS1,VS2,…,VSnは、画素電極17と共通電極として機能する共通電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号VS1,VS2,…,VSnがリーク(劣化)するのを防止するために、画素電極17と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に、蓄積容量40が接続されている。蓄積容量40は、TFT30のドレイン電極と容量線41との間に設けられている。
このような液晶装置100は透過型であって、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも大きくて明表示となるノーマリーホワイトモードや、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも小さくて暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子(図示省略)が配置されて用いられる。
「素子基板の概要」
次に、素子基板10の概要を説明する。
図3に示すように、素子基板10は、素子基板本体11、並びに素子基板本体11の液晶層50側の面に順に積層された走査線12、絶縁層13、TFT30、絶縁層14、データ線16、絶縁層15、画素電極17、配向膜18などを有している。
走査線12は、素子基板本体11の上に設けられている。走査線12は、例えば、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)などの金属材料の少なくとも一つを含む金属単体、これら金属の合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、ナイトライド、あるいはこれらを積層したものからなり、遮光性を有している。
絶縁層13は、素子基板本体11と走査線12とを覆うように設けられている。絶縁層13は、例えば酸化シリコンで構成され、光透過性を有している。TFT30は、絶縁層13上に設けられている。TFT30は、画素電極17を駆動するスイッチング素子である。図示を省略するが、TFT30は、半導体層、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極で構成されている。
半導体層は、例えば多結晶シリコン膜からなり、島状に形成されている。半導体層には、不純物イオンが注入されて、ソース領域、チャネル領域、およびドレイン領域が形成されている。チャネル領域とソース領域、または、チャネル領域とドレイン領域との間には、LDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
ゲート電極は、Z方向から見て半導体層のチャネル領域と重なる領域に絶縁層14の一部(ゲート絶縁膜)を介して配置されている。図示を省略するが、ゲート電極は、下層側に配置された走査線12にコンタクトホールを介して電気的に接続されている。
絶縁層14は、絶縁層13とTFT30とを覆うように設けられている。絶縁層14は、例えば酸化シリコンで構成され、光透過性を有している。絶縁層14は、TFT30の半導体層とゲート電極との間を絶縁するゲート絶縁膜を含む。絶縁層14により、TFT30によって生じる表面凹凸が緩和される。
絶縁層14上には、データ線16が設けられている。データ線16は、走査線12と同様の材料で形成され、遮光性を有している。TFT30は、遮光性を有する走査線12及びデータ線16との間に挟まれるように配置されている。これにより、TFT30の半導体層に光が入射することによるリーク電流の増加(TFT30の誤動作)が抑制される。
図示を省略するが、絶縁層14上には、データ線16と配線層を異ならせて容量線41が設けられている。絶縁層14とデータ線16と容量線41とを覆うように、絶縁層15が設けられている。絶縁層15は、例えば酸化シリコンで構成され、光透過性を有している。
画素電極17は、絶縁層15上に設けられている。画素電極17は、絶縁層14や絶縁層15に設けられたコンタクトホール(図示省略)を介して、TFT30の半導体層におけるドレイン領域に電気的に接続されている。配向膜18は、画素電極17を覆うように設けられている。
画素電極17を覆う配向膜18は、液晶装置100の光学設計に基づいて設定されており、本実施形態では、酸化シリコンなどの無機材料の斜め蒸着膜(無機配向膜)が使用されている。また、配向膜18には、ポリイミドなどの有機配向膜を使用してもよい。
上述したように、走査線12、データ線16、及び容量線41は、遮光性の導電材料で構成され、表示領域Eの内側に遮光領域を形成する。遮光領域(走査線12、データ線16、容量線41など)は、Z方向から見て、X方向及びY方向に延在する格子形状を有し、画素Pと隣り合う画素Pとの境界に重なるように配置されている。また、遮光領域で囲まれた領域が、光を透過し変調する領域(以降、変調領域と称す)となる。画素電極17は変調領域に跨って配置され、Z方向から見て、画素電極17の外縁部は遮光領域と重なっている。
「対向基板の概要」
次に、対向基板の概要を説明する。
図3に示すように、対向基板20は、電気光学装置用基板5、絶縁膜22、共通電極23、配向膜24などを有している。換言すれば、電気光学装置用基板5に、絶縁膜22と、共通電極23と、配向膜24とが順に積層されて対向基板20となる。
電気光学装置用基板5は、基板本体6、プリズム70、見切り部53などを有している。
基板本体6は、透光性の絶縁基板であり、例えば石英基板が使用されている。基板本体6には、石英基板の他にガラス基板などを使用することができる。
なお、基板本体6は、本発明における「基板」の一例である。
基板本体6の液晶層50側の面6aには、プリズム70が形成されている。プリズム70は、第1の溝71、第1絶縁膜81、第2の溝75、第2絶縁膜82、第3絶縁膜83、及び空気層85などで構成される。
以降、基板本体6の液晶層50側の面6aを、基板本体6の表面6aと称す。
第1の溝71は、基板本体6の表面6aをエッチングすることで形成され、X方向から見てZ(−)方向に広がったV字形状の断面を有している。第1の溝71が形成された基板本体6の表面6aは、第1絶縁膜81で覆われている。第1の溝71の内部も第1絶縁膜81で覆われ、第1の溝71の内部に第2の溝75が形成される。第2の溝75は、第1の溝71と同様に、X方向から見てZ(−)方向に広がったV字形状の断面を有している。第2絶縁膜82は、第1絶縁膜81を覆い、第2の溝75の開口部を塞ぐように設けられている。第2の溝75の開口部に配置された第2絶縁膜82には、第2の溝75の内部に連通された孔79が設けられている。第3絶縁膜83は、第2絶縁膜82を覆い、第2絶縁膜82に設けられた孔79を塞ぐ。つまり、第2の溝75の開口部は、第2絶縁膜82及び第3絶縁膜83で塞がれ(密封され)、第2の溝75の内部に空気層85が密封されている。
第1絶縁膜81、第2絶縁膜82、及び第3絶縁膜83は、例えば酸化シリコンで構成され、透光性を有している。上述したように、基板本体6は石英基板で構成されている。このため、基板本体6、第1絶縁膜81、第2絶縁膜82、及び第3絶縁膜83は、同じ屈折率の材料で構成されている。第2の溝75の内部に密封された空気層85は、基板本体6よりも低屈折率の材料で構成されている。
かかる構成において、第2の溝75(空気層85)が配置されていない領域では、同じ屈折率の材料(基板本体6、第1絶縁膜81、第2絶縁膜82、第3絶縁膜83)が積層されている。同じ屈折率の材料の界面(境界)では、反射等による光の減衰が発生せず、光が良好に透過する。一方、第2の溝75(空気層85)が配置された領域では、第2の溝75の斜面75aが異なる屈折率の材料(基板本体6、空気層85)の界面となり、光が反射される。このように、第1の溝71と、第1絶縁膜81と、第2の溝75と、第2絶縁膜82と、第3絶縁膜83と、空気層85とで光の反射部としてのプリズム70が形成され、第2の溝75の斜面75aが、プリズム70における光の反射面となる。
なお、第1絶縁膜81、第2絶縁膜82、及び第3絶縁膜83は、本発明における「基板の屈折率と略同じ屈折率の材料で構成された絶縁膜」の一例である。
第2の溝75の斜面75aが形成された領域は、光を反射し、光を透過しないので、対向基板20における遮光領域(光が透過しない領域)となる。表示領域Eの内側では、Z方向から見て、第2の溝75の斜面75aが形成された領域(対向基板20の遮光領域)は、素子基板10の遮光領域(走査線12、データ線16、容量線41など)と重なっている。このため、第2の溝75の斜面75aが形成された領域は、Z方向から見て、X方向及びY方向に延在する格子形状を有し、画素Pと隣り合う画素Pとの境界に重なるように配置されている。さらに、Z方向から見て、第2の溝75の斜面75aが形成された領域の外縁部は、見切り部53と重なっている。
見切り部53は、額縁形状を有し、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮光して、表示領域Eの表示における高いコントラストを実現する。さらに、見切り部53は、平面的に走査線駆動回路104(図1)と重なり、対向基板20から素子基板10に向けて入射する光を遮光して、走査線駆動回路104の光による誤動作を防止している。
見切り部53の詳細は、後述する。
絶縁膜22は、透光性の無機絶縁材料で構成され、例えばプラズマCVDなどを用いて形成された酸化シリコンを使用することができる。絶縁膜22は、電気光学装置用基板5に見切り部53を形成することで生ずる表面凹凸を緩和可能な程度の膜厚を有している。
共通電極23は、例えばITOなどの透明導電膜からなり、表示領域Eに跨って形成される。共通電極23は、図1に示すように、対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106によって、素子基板10の側の配線に電気的に接続されている。
共通電極23を覆う配向膜24は、画素電極17を覆う配向膜18と同じ材料、すなわち酸化シリコンなどの無機材料の斜め蒸着膜(無機配向膜)が使用されている。また、配向膜24には、ポリイミドなどの有機配向膜を使用してもよい。
本実施形態の液晶装置100は、後述する液晶プロジェクターに好適に使用できる光変調素子(ライトバルブ)である。光源(図示省略)から発した光は、Z(−)方向に沿って進行し、対向基板20から素子基板10に向けて入射し、変調され、表示光としてZ(−)方向に射出されるようになっている。
図3において符号L1,L2が付された矢印は、光源から発せられ対向基板20から素子基板10に向けて入射する光(以降、入射光と称す)である。また、入射光L1は、変調領域に向けて進行する光であり、入射光L2は対向基板20の遮光領域に向けて進行する光である。
変調領域に向けて進行する入射光L1は、変調領域を通過してZ(−)方向に射出され、表示光となる。対向基板20の遮光領域に向けて進行する入射光L2は、プリズム70(第2の溝75の斜面75a)によって変調領域に向けて反射され、変調領域を通過してZ(−)方向に射出され、表示光となる。
このように、プリズム70によって、変調領域に向けて進行する入射光L1以外に、対向基板20の遮光領域に向けて進行する入射光L2も表示光として利用できるので、プリズム70を形成していない場合と比べて光の利用効率を高めることができ、より明るい表示が実現される。
「見切り部が抱える課題」
次に、見切り部53が抱える課題の概要を説明する。
図1に示す対向基板20には、見切り部53と同じ材料(同じ工程)で、対向基板20の位置を検出するためのアライメントマーク(図示省略)が形成されている。見切り部53及びアライメントマークを、別の材料(別の工程)で形成することもできるが、工数の増となるため好ましくない。このため、見切り部53及びアライメントマークは、同じ材料(同じ工程)で形成されている。さらに、素子基板10にも、素子基板10の位置を検出するためのアライメントマーク(図示省略)が形成されている。
液晶装置100を形成する工程では、例えば貼り合せ装置を用いて、対向基板20と素子基板10とを所定の位置に貼り合せている。当該貼り合せ装置では、対向基板20から素子基板10に向かう光(検出光)が照射され、アライメントマークの反射光を検出して対向基板20及び素子基板10の位置が求められている。このため、アライメントマークの検出光が照射される側には、光の反射性を有する膜を配置する必要があった。
アルミニウムは、光の反射性を有し、酸化シリコンとの密着性に優れ、安価で微細加工が容易であるという優れた長所を有しているので、アライメントマークの構成材料(光の反射性を有する膜)として好適である。さらに、アルミニウムは、光の遮光性にも優れているので、見切り部53の構成材料(光を遮光する膜)としても好適である。つまり、見切り部53及びアライメントマークの構成材料として、アルミニウムが好ましい。なお、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金、例えばシリコンや銅などが添加されたアルミニウム合金は、アルミニウムと同様の性質を有し、アルミニウムと同様に見切り部53及びアライメントマークの構成材料として好適である。よって、見切り部53及びアライメントマークの構成材料としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好適である。
以降、アルミニウム及びアルミニウム合金を、アルミニウムと称する。つまり、以降の説明では、アルミニウムはアルミニウム合金を含む。
しかしながら、アルミニウムはストレスによってマイグレーション(以降、ストレスマイグレーションと称す)が発生しやすいという課題を有している。
例えば、アルミニウムで構成された見切り部53やアライメントマークの上に絶縁膜22を成膜すると、絶縁膜22の成膜温度でアルミニウムが常温に対して膨張した状態になり、絶縁膜22の成膜温度から常温に冷却すると、アルミニウムは絶縁膜22に比べて大きく収縮しようとし、さらに絶縁膜22の応力の影響が加わり、アルミニウムに引っ張り応力が作用し、ストレスマイグレーションが発生する恐れがある。
例えば、第3絶縁膜83の上にアルミニウムを成膜して見切り部53やアライメントメークを形成する場合、第3絶縁膜83の上にアルミニウムを成膜し、アルミニウムの成膜温度(高温状態)から常温に冷却すると、アルミニウムは第3絶縁膜83に比べて大きく収縮しようとし、さらに第3絶縁膜83の残留応力の影響が加わり、アルミニウムに引っ張り応力が作用し、ストレスマイグレーションが発生する恐れがある。
当該ストレスマイグレーションによって、見切り部53やアライメントマークに概略数μm以下の大きさの微小なピンホールが発生する。後述する液晶プロジェクターでは、液晶装置100の映像が拡大表示されるので、見切り部53の微小なピンホールは拡大表示され、輝点不良(点欠陥)となる。一方、アライメントマークに微小なピンホールが発生しても、貼り合せ装置への悪影響は少なく、アライメントマーク側の微小なピンホールで不具合が生じることはない。
見切り部53及びアライメントマークの絶縁膜22の側は、検出光が照射される側でないので、見切り部53及びアライメントマークのアルミニウムと絶縁膜22との間に、バリア膜(例えば窒化チタンなど)を配置することで、アルミニウムのストレスマイグレーションを抑制することができる。
一方、見切り部53及びアライメントマークの第3絶縁膜83の側は、検出光が照射される側であるので、光の反射性に優れたアルミニウムを配置することが好ましい。仮に、見切り部53及びアライメントマークのアルミニウムと第3絶縁膜83との間に窒化チタンを配置すると、窒化チタンはアルミニウムと比べて反射率が小さいため、上述した貼り合せ装置でアライメントマークを安定して検出することが難しくなる。
ところが、見切り部53及びアライメントマークの第3絶縁膜83の側にアルミニウムを配置すると、上述したメカニズムによってアルミニウムにストレスマイグレーションが発生しやすくなる。本実施形態では、基板本体6にプリズム70が形成され、プリズム70を形成することによる残留応力が蓄積されているので、プリズム70が形成されていない基板本体6にアルミニウムを形成する場合と比べて、アルミニウムのストレスマイグレーションがより発生しやすくなる。
このように、対向基板20に見切り部53やアライメントマークを形成する場合、検出光が照射される側、つまり見切り部53やアライメントマークの第3絶縁膜83の側にアルミニウムを配置する必要がある。見切り部53やアライメントマークの第3絶縁膜83の側に配置されたアルミニウムは、ストレスマイグレーションが発生しやすい。仮にアルミニウムのストレスマイグレーションが発生すると、当該ストレスマイグレーションは見切り部53の微小なピンホールとなり、輝点不良が誘発されるという課題があった。
本発明は、かかる課題を解決するための有効な構成を有している。以下に、その詳細を説明する。
「見切り部の概要」
図4は、図3の破線で囲まれた領域Bにおける電気光学装置用基板の概略断面図である。以降、図3の破線で囲まれた領域Bを、見切り領域と称す。
図4に示すように、見切り領域では、基板本体6に、第1絶縁膜81と第2絶縁膜82と第3絶縁膜83と見切り部53とが順に積層されている。なお、第1絶縁膜81と第2絶縁膜82と第3絶縁膜83とは、図3に示すプリズム70の構成要素の一部である。見切り部53は、第3絶縁膜83の側に配置された光反射膜60と、第3絶縁膜83とは反対側に配置された遮光層61とで構成される。上述したように、アライメントマーク(図示省略)も見切り部53と同じ構成を有している。
光反射膜60は、貼り合せ装置の検出光を反射し、貼り合せ装置がアライメントマークを検出しやすくする役割を有している。遮光層61は、液晶プロジェクターの光源から発した高輝度の光を遮光する役割を有していている。なお、液晶装置100を液晶プロジェクターに適用する場合には、見切り部53には、4以上の光学濃度(遮光性)が要求される。つまり、光学濃度が4以上となるように、遮光層61を形成する必要がある。
光反射膜60は、アルミニウムで構成されている。光反射膜60の膜厚は、概略50nmである。光反射膜60は、光反射性を有する程度の膜厚であればよく、例えば光反射膜60の膜厚は概略20nm以上であればよい。アライメントマークの第3絶縁膜83の側に光反射膜60を配置することによって、貼り合せ装置はアライメントマークを良好に検出することができる。上述したように、光反射膜60(アルミニウム)のストレスマイグレーションによって、アライメントマークに微小なピンホールが発生しても、貼り合せ装置への影響は少ない。
遮光層61は、光反射膜60の側に順に積層された、第1遮光膜62と、第2遮光膜63と、第3遮光膜64とを有している。第1遮光膜62及び第3遮光膜64は、窒化チタンで構成されている。第1遮光膜62及び第3遮光膜64の膜厚は、概略50nmである。第2遮光膜63は、アルミニウムで構成されている。第2遮光膜63の膜厚は、概略100nmである。
なお、第2遮光膜63は、本発明における「第1の膜」の一例である。第1遮光膜62及び第3遮光膜64は、本発明における「第2の膜」の一例である。
窒化チタンはアルミニウムと比べて遮光性が悪く、窒化チタンだけで光学濃度4以上の遮光性を実現することが難しい。アルミニウムは、窒化チタンと比べて遮光性に優れている。例えば、アルミニウムの膜厚が概略100nm以上であれば、光学濃度4以上の遮光性が実現される。このため、アルミニウムで構成される第2遮光膜63の膜厚は、概略100nmとなっている。換言すれば、第2遮光膜63の膜厚は、100nmを含み100nmよりも大きいことが好ましい。第2遮光膜63の膜厚を、100nmを含み100nmよりも大きくすることで、光学濃度4以上の遮光性を有する遮光層61を安定して形成することができる。
なお、第2遮光膜63の膜厚は、要求される遮光性(光学濃度)によって、変化する。また、アルミニウムの膜厚が大きくなるとストレスマイグレーションが発生しやすく、アルミニウムの膜厚が小さくなるとストレスマイグレーションが発生しにくくなる。第2遮光膜63(アルミニウム)は、光反射膜60よりも厚くなっているので、光反射膜60と比べてストレスマイグレーションが発生しやすい。
遮光層61は、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)が、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)で挟まれた構成を有している。アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)は、ストレスによって変形しにくいので、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)をアルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)で挟むことによって、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)も変形しにくくなる。すなわち、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)に、ストレスマイグレーションが発生しにくくなる。
アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)としては、窒化チタンが好ましい。窒化チタンのビッカース硬度は2000以上であり、窒化チタンは、アルミニウムと比べて、極めて硬い膜(剛性が高い膜)であり、ストレスによって変形しにくい。つまり、アルミニウムを窒化チタンで覆うことで、アルミニウムの変形(アルミニウムのストレスマイグレーション)を確実に抑制することができる。
従って、本実施形態では、第1遮光膜62及び第3遮光膜64は、窒化チタンで構成されている。
なお、第1遮光膜62及び第3遮光膜64を構成する材料は、窒化チタンの他に、例えば、チタン、チタン合金、タングステン、チタンを含有するタングステン、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイドなどを使用することができる。
光学濃度4以上を実現するために、第2遮光膜63(アルミニウム)を光反射膜60(アルミニウム)よりも厚く形成しても、第2遮光膜63はアルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)で挟まれているので、第2遮光膜63のストレスマイグレーションが抑制される。
このように、本実施形態では、プリズム70が形成された基板本体6の上に、アルミニウム(光反射膜60)と、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62)と、アルミニウム(第2遮光膜63)と、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第3遮光膜64)とを順に積層して、貼り合せ装置の検出光を反射する構成要素(アライメントマーク)と、プロジェクターの光源から発した高輝度の光を遮る構成要素(見切り部53)とが形成されている。さらに、アルミニウムで構成された第2遮光膜63は、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)で挟まれ、ストレスマイグレーション(ピンホール)が抑制され、さらに光学濃度が4以上という優れた遮光性を有している。その結果、貼り合せ装置の検出光を、アライメントマークで良好に反射し、プロジェクターの光源から発した高輝度の光を、見切り部53で良好に遮光することができる。
「電気光学装置用基板の製造方法」
次に、図5及び図6を参照して、電気光学装置用基板の製造方法を説明する。図5は、電気光学装置用基板の製造方法を示す工程フローである。図6は、図4に対応し、図5に示す各工程を経た後の電気光学装置用基板の見切り領域の状態を示す、概略断面図である。
図5に示すように、電気光学装置用基板を製造する工程は、プリズム70を形成する工程(ステップS1)と、光反射膜60を形成する工程と(ステップS2)と、遮光層61を形成する工程(ステップS3)とを含む。
図5のステップS1では、基板本体6を公知技術(例えば、ドライエッチング)でエッチングし、V字形状の断面を有する第1の溝71を形成する。第1の溝71が形成された基板本体6の表面に、公知技術(例えば、プラズマCVD)によって酸化シリコンを成膜し、第1の溝71の内部を第1絶縁膜81で覆い、第1の溝71の内部に第2の溝75を形成する。第2の溝75の内部に、公知技術(例えば、CVD)によって、例えば犠牲膜となるポリシリコンを埋め込み、ダマシン法で埋め込み平坦化する。その上層に、公知技術(例えば、プラズマCVD)によって酸化シリコンを成膜し、第2絶縁膜82を形成する。さらに、第2絶縁膜82にエッチング用の孔79を形成して、選択的に犠牲膜をエッチング除去することで、第2の溝75の内部を空洞にする。その後、公知技術(例えば、プラズマCVD)によって酸化シリコンを成膜し、第2の溝75に設けられた孔79を塞ぐ第3絶縁膜83を形成する。このとき、第2の溝75の内部には、酸化シリコンを成膜する際の雰囲気(減圧雰囲気)の状態で空気層85が密封される。その結果、第1の溝71と、第1絶縁膜81と、第2の溝75と、第2絶縁膜82と、第3絶縁膜83と、空気層85とで、光の反射部としてのプリズム70が、表示領域Eに形成される。
図6(a)は、ステップS1を経た後の状態を示している。同図に示すように、見切り領域では、基板本体6の表面6aの上に、第1絶縁膜81と、第2絶縁膜82と、第3絶縁膜83とが積層されている。
図5のステップS2では、例えばスパッタ法で第3絶縁膜83の上に概略50nmの膜厚のアルミニウムを堆積し、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチング法でパターニングして光反射膜60を形成する。
図6(b)は、ステップS2を経た後の状態を示している。同図に示すように、見切り領域では、基板本体6の表面6aの上に、第1絶縁膜81と、第2絶縁膜82と、第3絶縁膜83と、光反射膜60とが順に積層されている。換言すれば、プリズム70が形成された基板本体6を覆うように、光反射膜60が形成されている。
図5のステップS3では、例えばスパッタ法で光反射膜60の上に、概略50nmの膜厚の窒化チタンと、概略100nmの膜厚のアルミニウムと、概略50nmの膜厚の窒化チタンとを順に成膜する。続いて、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチング法で、概略50nmの膜厚の窒化チタンをパターニングして光反射膜60の上に第1遮光膜62を形成し、概略100nmの膜厚のアルミニウムをパターニングして第1遮光膜62の上に第2遮光膜63を形成し、概略50nmの膜厚の窒化チタンをパターニングして第2遮光膜63の上に第3遮光膜64を形成する。
図6(c)は、ステップS3を経た後の状態を示している。同図に示すように、見切り領域では、光反射膜60の上に、第1遮光膜62と第2遮光膜63と第3遮光膜64とを積層して、遮光層61が形成されている。また、光反射膜60と遮光層61とによって、見切り部53やアライメントマークが形成される。
第2遮光膜63(アルミニウム)は、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)で挟まれているので、ステップS3において第2遮光膜63(アルミニウム)のストレスマイグレーションが抑制される。さらに、図3に示す絶縁膜22を見切り部53の上に形成しても、見切り部53(第2遮光膜63)のストレスマイグレーションが抑制される。
なお、電気光学装置用基板5の製造方法は、上述したステップS2とステップS3とを一括処理する工程を含んでいてもよい。
具体的には、例えばスパッタ法で、第3絶縁膜83の上に、概略50nmの膜厚のアルミニウムと、概略50nmの膜厚の窒化チタンと、概略100nmの膜厚のアルミニウムと、概略50nmの膜厚の窒化チタンとを順に成膜する。続いて、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチング法で、概略50nmの膜厚のアルミニウムをパターニングして光反射膜60を形成し、概略50nmの膜厚の窒化チタンをパターニングして第1遮光膜62を形成し、概略100nmの膜厚のアルミニウムをパターニングして第2遮光膜63を形成し、概略50nmの膜厚の窒化チタンをパターニングして第3遮光膜64を形成して見切り部53やアライメントマークを形成してもよい。つまり、四つの膜を連続的に成膜し、連続的に(一括で)パターニングすることで、見切り部53やアライメントマークを形成してもよい。
(実施形態2)
実施形態2に係る液晶装置200では、対向基板20にマイクロレンズ90が形成されている点が、実施形態1と異なる。詳しくは、対向基板20の基板本体6の表面6aには、本実施形態ではマイクロレンズ90が形成され、実施形態1ではプリズム70が形成されている点が異なり、他の構成は実施形態1と同じである。
図7は、図3に対応し、本実施形態に係る液晶装置200の概略断面図である。以下、図7を参照して、本実施形態に係る液晶装置200を、実施形態1との相違点を中心に説明する。また、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明を省略する。
図7に示すように、対向基板20は、電気光学装置用基板5、電気光学装置用基板5の液晶層50側の面6aに順に積層された見切り部53、絶縁膜22、共通電極23、及び配向膜24などを有している。
電気光学装置用基板5は、基板本体6、マイクロレンズ90などを有している。
基板本体6は、透光性の絶縁基板であり、例えば石英基板が使用されている。
マイクロレンズ90は、レンズ層91やパス層95などを有している。レンズ層91は、光を集光する役割を有し、凹部92と高屈折率膜93とで構成される。パス層95は、レンズ層91の焦点距離を調整する役割を有している。
基板本体6の表面6aには、Z方向に向かって先細りとなった半球面形状の複数の凹部92が形成されている。凹部92は、レンズ層91における凸状のレンズ面となる。凹部92は画素Pごとに設けられ、凹部92の中心は、画素Pの中心と略一致する。また、凹部92と隣り合う凹部92との境界は、画素Pと隣り合う画素Pとの境界に略一致する。なお、凹部92の形状は、半球面形状に限定されず非球面形状であってもよい。
凹部92が設けられた基板本体6の表面6aは、基板本体6(石英)の屈折率(概略1.46)よりも高い屈折率の材料で構成された高屈折率膜93で覆われている。つまり、凹部92の内部には、高屈折率膜93が充填されている。高屈折率膜93には平坦化処理が施され、高屈折率膜93の表面は平坦となっている。高屈折率膜93を構成する材料としては、例えば酸窒化シリコン(屈折率が概略1.55〜1.6)や、酸化アルミニウム(屈折率が概略1.76)などが挙げられる。
高屈折率膜93の表面は、パス層95で覆われている。パス層95は、基板本体6と略同じ屈折率の材料、例えば酸化シリコンで形成される。パス層95には平坦化処理が施されている。上述したように、パス層95は、マイクロレンズ90の焦点距離を所望の値に合わせるために設けられており、パス層95の層厚は、光の波長に応じたマイクロレンズ90の焦点距離などの光学条件に基づいて適宜設定される。
その結果、凹部92と、高屈折率膜93と、パス層95とでマイクロレンズ90が、基板本体6の表面6aに形成される。凹部92は画素Pの略全域に形成されているので、マイクロレンズ90は、画素Pにおいて、より多くの光を取り込めるようになっている。
光源(図示省略)から発せられ変調領域に向けて進行する入射光L1は、変調領域を通過してZ(−)方向に射出され、表示光となる。光源から発せられ対向基板20の遮光領域に向けて進行する入射光L2は、マイクロレンズ90で変調領域に向けて集光され、変調領域を通過してZ(−)方向に射出され、表示光となる。このように、マイクロレンズ90によって、変調領域に向けて進行する入射光L1以外に、対向基板20の遮光領域に向けて進行する入射光L2も表示光として利用できるので、マイクロレンズ90を形成していない場合と比べて光の利用効率を高めることができ、より明るい表示が実現される。
なお、画素Pの凹部92が形成されていない領域には、見切り部53と同じ工程で形成された遮光層(図示省略)が設けられ、表示に寄与しない不要な光が遮光されている。
パス層95には、光反射膜60と遮光層61(第1遮光膜62、第2遮光膜63、第3遮光膜64)とが順に積層されて、見切り部53やアライメントマークが設けられている。さらに、遮光層61(第3遮光膜64)には、絶縁膜22と、共通電極23と、配向膜24とが積層されている。
本実施形態においても、第2遮光膜63(アルミニウム)は、第1遮光膜62(窒化チタン)と第3遮光膜64(窒化チタン)とで挟まれた構成を有している。つまり、アルミニウムで構成された第2遮光膜63は、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)で挟まれているので、ストレスマイグレーションが発生しにくくなっている。その結果、基板本体6の表面6aにマイクロレンズ90を形成したことによる残留応力が残留しても、第2遮光膜63(アルミニウム)のストレスマイグレーションが抑制される。さらに、見切り部53やアライメントマークなどの上に、絶縁膜22を形成しても、第2遮光膜63(アルミニウム)のストレスマイグレーションが抑制される。
従って、光反射膜60と遮光層61(第1遮光膜62、第2遮光膜63、第3遮光膜64)とで、貼り合せ装置の検出光を良好に反射するアライメントマークと、プロジェクターの光源から発した高輝度の光を良好に遮光する見切り部53とを形成することができる。
また、画素Pの凹部92が形成されていない領域に設けられた遮光層も、見切り部53やアライメントマークと同じ工程で形成され、見切り部53やアライメントマークと同じ構造を有しているので、第2遮光膜63(アルミニウム)のストレスマイグレーションが抑制される。従って、ストレスマイグレーションによるピンホールの発生が抑制された、遮光性に優れた遮光層を形成することができる。
(実施形態3)
実施形態3に係る液晶装置300では、見切り部53やアライメントマークにおける遮光層61の構成(層構造)が実施形態1と異なり、他の構成は実施形態1と同じである。
図8は、図4に対応し、見切り領域における電気光学装置用基板の概略断面図である。以下、図8を参照して、本実施形態に係る液晶装置300を、実施形態1との相違点を中心に説明する。また、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明を省略する。
図8に示すように、見切り部53やアライメントマーク(図示省略)は、第3絶縁膜83の側に配置された光反射膜60と、光反射膜60の第3絶縁膜83の側と反対側に配置された遮光層61とで構成される。
光反射膜60の上に、第1遮光膜65と、第2遮光膜66と、第3遮光膜67と、第4遮光膜68と、第5遮光膜69とが順に積層されて、遮光層61が形成されている。第1遮光膜65と、第3遮光膜67と、第5遮光膜69とは、窒化チタンで構成され、膜厚は概略50nmである。第2遮光膜66と、第4遮光膜68とは、アルミニウムで構成され、膜厚は概略50nmである。
なお、第2遮光膜66及び第4遮光膜68は、本発明における「第1の膜」の一例である。第1遮光膜65、第3遮光膜67、及び第5遮光膜69は、本発明における「第2の膜」の一例である。
本実施形態においても、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)は、アルミニウムよりも剛性が高い膜(第1遮光膜65、第3遮光膜67、第5遮光膜69)で挟まれた構成を有しているので、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)にストレスマイグレーションが発生しにくいという実施形態1と同じ効果を奏する。
遮光層61において、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)、つまり遮光性に優れた膜の膜厚(膜厚の合計)は100nmであり、実施形態1におけるアルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)の膜厚と同等であるので、本実施形態の見切り部53は、実施形態1の見切り部53と同等の光学濃度(遮光性)を有する。
換言すれば、アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)の膜厚は、100nmを含み100nmよりも大きいことが好ましい。アルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)の膜厚を、100nmを含み100nmよりも大きくすることで、光学濃度が4以上の遮光性を有する遮光層61を安定して形成することができる。
遮光層61におけるアルミニウムで構成された膜は、第2遮光膜66及び第4遮光膜68の2層に分割されているので、実施形態1の遮光層61におけるアルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)よりも膜厚が小さくなっている。このため、本実施形態のアルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)は、実施形態1のアルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)と比べて、ストレスマイグレーションが発生しにくい。
(実施形態4)
「電子機器」
図9は電子機器としての投射型表示装置(液晶プロジェクター)の構成を示す概略図である。図9に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての二つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と二つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、四つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ1210,1220,1230には、上述した実施形態1の液晶装置100、実施形態2の液晶装置200、実施形態3の液晶装置300のいずれかが適用されている。これら液晶装置では、アルミニウムで構成された膜がアルミニウムよりも剛性が高い膜で挟まれ、アルミニウムで構成された膜にストレスマイグレーションが発生しにくく、見切り部53にピンホールが発生しにくくなっているので、輝点不良が抑制され、高いコントラストの表示を提供することができる。従って、これら液晶装置を搭載した投射型表示装置1000においても、輝点不良が抑制され高いコントラストの表示を提供することができる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置用基板の製造方法及び電気光学装置用基板、該電気光学装置用基板が適用された電気光学装置、並びに該電気光学装置が適用された電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)図10は、図3に対応し、変形例1に係る液晶装置の概略断面図である。図11は、図7に対応し、変形例1に係る他の液晶装置の概略断面図である。
実施形態1における見切り部53を、第3絶縁膜83と絶縁膜22との間に配置すること(図3)に限定されない。例えば、図10に示すように、見切り部53を第2絶縁膜82と第3絶縁膜83との間に配置してもよい。なお、見切り部53を第2絶縁膜82と第3絶縁膜83の間に配置する構成では、第3絶縁膜83を見切り部53の段差を軽減する平坦化膜として活用することによって、同図における絶縁膜22を省略することができる。
さらに、実施形態2における見切り部53を、パス層95と絶縁膜22との間に配置すること(図7)に限定されない。例えば、図11に示すように、見切り部53を高屈折率膜93とパス層95との間に配置してもよい。なお、見切り部53を高屈折率膜93とパス層95との間に配置する構成では、パス層95を見切り部53の段差を軽減する平坦化膜として活用することによって、同図における絶縁膜22を省略することができる。
さらに、基板本体6にプリズム70やマイクロレンズ90が形成されていない構成、つまり基板本体6の表面6aの上に見切り部53を形成する構成であってもよい。
(変形例2)遮光層61は、一つのアルミニウムで構成された膜(第2遮光膜63)と窒化チタンなどの高い剛性の膜(第1遮光膜62、第3遮光膜64)からなる3層構造(実施形態1)や、二つのアルミニウムで構成された膜(第2遮光膜66、第4遮光膜68)と三つの窒化チタンなどの高い剛性の膜(第1遮光膜65、第3遮光膜67、第5遮光膜69)からなる5層構造(実施形態3)に限定されない。遮光層61は、一つのアルミニウムで構成された膜が窒化チタンなどの高い剛性の膜で挟まれる構成を有していればよく、3層構造(実施形態1)や5層構造(実施形態3)の他に、例えば7層構造であってもよいし、9層構造であってもよい。遮光層61を構成する膜の数を増やすことで、アルミニウムで構成された膜の膜厚をさらに小さくし、アルミニウムで構成された膜のストレスマイグレーションを、より生じにくくすることができる。
(変形例3)上記液晶装置が適用される電子機器は、実施形態4の投射型表示装置1000に限定されない。投射型表示装置1000の他に、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、POSなどの情報端末機器、及び電子手帳などの電子機器に、上記液晶装置を適用させることができる。