JP2015016493A - 連続鋳造方法 - Google Patents
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特許文献1は、鋳型内に供給するパウダーの消費量Pwを0.2kg/m2以上0.6kg/m2以下とし、二次冷却帯のうち、鋳型の直下から、鋳造方向に1.2mまでの冷却範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度Wを300リットル/m2/分以上700リットル/m2/分以下としている。
また、特許文献5の技術は、鋳片と鋳型の間に形成されるモールドパウダーフィルムの結晶化を促進して緩冷却により、亜包晶鋼の鋼片表面に発生する縦割れを抑制すること目的としている。
本発明に係る連続鋳造方法は、C含有量が0.10〜0.14質量%のスラブを、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機によって鋳造する連続鋳造方法において、凝固温度が1235〜1249[℃]、1300℃における粘度が0.45〜0.65[poise]、平均粒径が400〜600[μm]、粒径が0.045〜1.000[mm]の中空顆粒状のモールドパウダーを使用し、
鋳型の直下でスラブの広面を冷却するに際して、前記スラブの広面に対する水量密度を3.5〜7.8(m3/h/m2)とし、
前記鋳型とロールとの位置関係を規定する鋳型アライメントを、式(1)及び式(2)を満たすように設定することを特徴とする。
図1は、本発明の連続鋳造方法を行う連続鋳造機を示したものである。
この連続鋳造装置は、スラブを鋳造する垂直曲げ型スラブ連続鋳造機であり、炭素Cの含有量(以下、単にC含有量という)が0.10〜0.14質量%のスラブを鋳造するものである。C含有量が0.10〜0.14質量%の範囲となる鋼(炭素鋼ということがある)は、「H.Mizukami et.al.:"High temperature deformation behavior of peritectic carbon steel during solidification", ISIJ-Int. Vol.42 (2002) pp.964-973」に示されているように、凝固時の収縮が大きいために不均一に凝固し易く、縦割れが発生し易い。
図1に示すように、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1は、鋳造する溶鋼2が装入された取鍋3と、この取鍋3からの溶鋼2を一時的に貯留するタンディッシュ4と、このタンディッシュ4から供給される溶鋼2を成形する鋳型5とを備えている。また、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1は、鋳型直下に設置されて鋳造するスラブ6(単に鋳片6と呼ぶこともある)を支持するロール(フットロール7)と、このフットロール7から続いて配置されてスラブ6を支持するロール(サポートロール8)とを備えている。垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1では、鋳型5の下端から順にフットロール7やサポートロール8の並びを見ると、鋳型5の下端から順に垂直部10、曲げ部11とされ、曲げ部11の後に円弧部及び矯正部が続く。矯正部の後は、矯正後の鋳片6が移送される水平部が設けられている。本実施形態における垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1の垂直部10の長さは、鋳型5の下端から約2.0mである。
このような垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1では、タンディッシュ4に貯留した溶鋼2を鋳型5に供給して、鋳型5にて一次冷却を行うと共に、フットロール7及びサポートロール8にて鋳片6を引き抜きながら、冷却ノズルで広面及び狭面を二次冷却することによって鋳片6を鋳造する。
本実施形態で用いるモールドパウダーは、凝固温度が1235℃以上1249℃以下(1235〜1249[℃])、1300℃における粘度が0.45poise以上0.65poise以下(0.45〜0.65[poise])、平均粒径が400μm以上600μm以下(400〜600[μm])、粒径が0.045mm以上1.000mm以下(0.045〜1.000[mm])の中空顆粒状の粒子である。
そこで、凝固初期の緩冷却を実現するには、鋳型5内における溶鋼2のメニスカス近傍でモールドパウダーの結晶(例えば、カスピディン)を析出させる必要がある。カスピディン等の結晶は、鋳片6から鋳型5への熱伝達を抑制し鋳片6の緩冷却を実現する。そのために、モールドパウダーの凝固温度は上述のように高い範囲にあるのが望ましい。凝固温度が1235℃未満であれば、凝固温度が低すぎるので、溶融して鋳型5と鋳片6の間に流入したモールドパウダーが結晶化しにくくなり、緩冷却の効果を得ることはできない。また、凝固温度が1249℃より高ければ、モールドパウダーが溶融しにくくなって鋳型5と鋳片6の間へ流入するモールドパウダーの量が少なくなり、鋳型5と鋳片6間に潤滑不良が発生して鋳片6が鋳型5に焼付きやすくなる。
なお、モールドパウダーの粘度(パウダー粘度)とは、振動式の粘度計を用いて計測された1300℃における溶融パウダーの粘度のことである。また、モールドパウダーの凝固温度(パウダー凝固温度)とは、上述のパウダー粘度を測定後、溶融パウダーの温度を1300℃から徐々に低下させてゆく過程でパウダー粘度が急激に上昇する温度のことである。さらに、中空顆粒状のモールドパウダーの平均粒径とは、ふるい(メッシュ目開きが45μm、212μm、300μm、500μm、710μm、1000μm)を用いてモールドパウダーの粒度分布を検出し、検出した粒度分布から算出したモールドパウダーの平均粒径のことである。
本発明の連続鋳造方法では、鋳型直下に設置した冷却ノズルで鋳片6の広面を冷却する際、即ち、鋳型5とフットロール7との間で鋳片6の広面側を冷却する際は、その鋳片6の広面側の水量密度を3.5(m3/h/m2)以上7.8(m3/h/m2)以下(3.5〜7.8(m3/h/m2))としている。
図2は、鋳片の縦割れのメカニズムを示したものである。説明の便宜上、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1における円弧の中心Oに近い側を反基準側(内側)とし、反基準側に対面する側を基準側(外側)として説明する。
図2(b)に示すように、このように鋳型直下の鋳片6に圧縮力が生じている状況下で、鋳型直下の鋳片6を支えるロールと鋳型5とが圧縮力を増加させる方向にずれてしまう(例えば、鋳型5に対して基準側にサポートロール8がずれてしまう)と、さらに、鋳型直下の鋳片6に圧縮が加わり、鋳型直下の鋳片6に縦割れが発生する。
このようなことから、本発明では、鋳片6の曲げによって鋳片6の反基準側の中央側に生じる圧縮力が上流まで伝播する力と、上述した鋳型アライメントのズレから生じる力とを緩和することによって、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機1でも、鋳片6に縦割れが生じないようにしている。具体的には、本発明では、鋳型5とロールとの位置関係(鋳型アライメント)を設定することによって、上述したような縦割れとなる力が発生しないようにしている。
本発明では、まず、鋳型アライメントを設定するに際して、図3に示すように、鋳型5を側面から見たとき、基準側(外側)の稼働面(鋳片6を支える側の面)の下端から垂直に引いた第1垂直ラインL1を基準とし、この第1垂直ラインL1よりも反基準側(内側)をマイナス側(−側)、第1垂直ラインL1よりも基準側(外側)をプラス側(+側)とする。言い換えれば、鋳型5において基準側の稼働面(基準側の銅板の内壁)がサポートロール8よりも反基準側(内側)に出ている場合をプラス側とする。この実施形態では、図3に示すように、第1垂直ラインL1を基準(零点)としてプラスマイナスの数値で鋳型アライメントの大きさを表現しているが、鋳型アライメントの自体の大きさは、第1垂直ラインL1から離れるほど(絶対値が大きくなるほど)大きく、第1垂直ラインL1に近いほど(絶対値が小さくなるほど)小さいと言える。そのため、説明の便宜上、鋳型アライメントの大きさの説明(ズレ量の説明)では、絶対値の大きさを元に説明する。フットロール7の稼働面側と、鋳型5の稼働面とは同じ位置にある。
式(1)に示すように、鋳型5とロールとのズレ量aを、少なくとも−0.01mmとして、サポートロール8を鋳型5の稼働面よりも内側に位置させているため、鋳型直下の鋳片6には、上述したような圧縮力が緩和されることとなり、鋳片6の縦割れを防止することができる。なお、式(1)の右辺に示すように、基準側(外側)における鋳型5とサポートロール8とのズレ量aは、−0.01mmとしているが、これは、0mmを排除するための数値であり、実操業では「0.01mm」単位での設定が容易であるため、この値を採用している。
鋼中の成分について、[C]は0.10〜0.14質量%、[Si]は0.26〜0.37質量%、[Mn]は1.21〜1.53質量%とした。鋳型5の上端から曲げ部11までの垂直長さは2.95mとし、このうち、鋳型5の垂直長さは0.9mとした。鋳型5は矩形状であって、鋳型5の下端における長辺の長さは2.1m、鋳型5の下端における短辺の長さは0.28mとした。鋳造速度は、1.0〜1.2m/minとし、鋳片6を冷却する冷却ノズル及びタンディッシュ4の底部に設けた浸漬ノズルは当業者常法通りの一般的なものを使用した。
鋳型5内に供給するモールドパウダーは、上述のモールドパウダーであり、凝固温度が1235〜1249[℃]、1300℃における粘度が0.45〜0.65[poise]、平均粒径が400〜600μm、粒径が0.045〜1.000[mm]の中空顆粒状の粒子である。
なお、タンディッシュ4内の溶鋼温度は、液相線からのΔTを20〜35℃とした。
一方、比較例では、鋳型アライメントにおける基準側のズレ量、反基準側のズレ量[(a−b)/2]、水量密度のいずれかが、本発明の規定する条件に入っていないため、縦割れの深さが0.9mmよりも大きくなると共に、内部割れが発生して、ブレークアウトも発生することがあった。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 溶鋼
3 取鍋
4 タンディッシュ
5 鋳型
6 鋳片(スラブ)
7 フットロール
8 サポートロール
10 垂直部
11 曲げ部
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