JP2015015320A - フォトニック結晶デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】共振器の共鳴モードにおいて、基底共鳴モードのQ値が高次共鳴モードのQ値より常に大きくなる構造を提供し、かつ、Q値の制御性を上げることにより、フォトニック結晶をベースとしたマイクロキャビティレーザの単一モード発振を実現する。
【解決手段】第1の媒質としての基板に、前記第1の媒質よりも屈折率の小さい第2の媒質が周期的に配列されたフォトニック結晶において、前記第2の媒質を1列分取り除くことにより形成された線欠陥光導波路を形成し、該線欠陥光導波路に、前記第1の媒質よりも大きな屈折率を有する第3の媒質を埋め込むことにより、前記第3の媒質が埋め込まれた領域を活性領域とし、当該活性領域を挟み込む前記線欠陥光導波路の2つの領域をミラー領域とする共振器を構成するフォトニック結晶デバイスであって、前記活性領域の導波路幅が、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうち少なくとも一方のミラー領域の導波路幅よりも狭いことを特徴とするフォトニック結晶デバイス。
【選択図】図4

Description

本発明は、半導体を用いたマイクロキャビティを実現するためのフォトニック結晶デバイスに関する。
近年、インターネットにおける爆発的なトラフィックの増加に対応するため、ノード間を結ぶ伝送には光が用いられ、その低損失性を生かして大容量化が実現されている。また、ボード間、ラック間と言った近距離の伝送においても、光の高速性を生かして電気の配線の置き換えが進んでいる。さらにはLSIのチップ間、チップ内においても電気配線のボトルネックが指摘され、光による配線の可能性の検討が進められている。マイクロキャビティレーザはこのような用途に用いられる、大規模な光集積回路あるいはLSIとの集積化を目指したミクロンオーダのサイズのレーザである。
このような中で、非特許文献1から3に示されるような、フォトニック結晶共振器を持つマイクロキャビティレーザが注目を集めている。特に、非特許文献2では、非特許文献1などデバイスにおいて現れる特性低下の2つの主要因(デバイスの温度上昇とキャリアの拡散)を、埋め込みヘテロ構造(BH構造)により解消する手段が提案されている。つまり、フォトニック結晶を構成する媒質とは電気的・光学的に性質の異なる媒質をフォトニック結晶スラブ内に埋め込み、埋め込まれた領域における電子のバンド構造の変調によりキャリア閉じ込めポテンシャルを形成することにより、外的刺激により励起されたキャリアを効率よく利用することを可能とし、さらに、埋め込む媒質よりもそれを取り囲む媒質の熱伝導率を大きくすることで、埋め込み領域で発生した熱を効率的に外部に拡散させ、デバイスの温度上昇を低減させることを可能とする手法が提案されている。
更に、非特許文献3において、BH構造を用いたレーザをフォトニック結晶線欠陥光導波路と結合させることにより、面内光出力も可能とする構造が提案されており、フォトニック結晶を用いたマイクロキャビティレーザは、将来の平面光集積回路用の光源として有望視されている。また同類の構造が光メモリなど光情報処理用のデバイスとしても注目を集めている(非特許文献4)。
Kengo Nozaki et al., Optics Express, vol. 15, no.12, pp. 7506 -7514(2007). Shinji Matsuo et al., Nature Photon., 4, pp. 648-654 (2010). Shinji Matsuo et al., Opt. Express, vol. 19, pp. 2242-2250 ( 2011). Kengo Nozaki et al., Nature Photon., 6, pp. 248-252 (2012).
しかしながら、非特許文献2から4で提案されるBH構造では、レーザの出力パワーを上げるために体積の大きなBH構造を用いると、共振器が複数の共鳴モードを有することになるため、マルチモード発振となってしまうか、あるいは、単一モードで発振してもどのモードが発振するか不確定となるなどの問題が生じてしまう。
例えば非特許文献3の構成の場合、光取出し効率を上げるために、共振器を構成する線欠陥の中心軸から、穴数列分ずれた位置に光取出し用の導波路(出力用導波路P)を設置している。埋め込み構造の長さ(LBJ)を格子定数(α)の9倍とすると、凡そ3つの共鳴モードが存在する。
図1はフォトニック結晶レーザの従来構造とその問題点を説明する図である。ここで、格子定数α=422nm、空気穴の半径R=100nm、フォトニック結晶基板厚t=245.4nm、空気穴を一列だけ除去した場合の線欠陥導波路の幅W=α30.5とした。図1に、埋め込み構造の幅(WBJ)をパラメータとしたときの、0th,1st,2ndモードの磁界フィールドパタン、Q値(Q0th,Q1st,Q2nd)と、Q値をそれぞれのモード体積(V)で割り算したものを示す。図1(b)、(c)には、光取出し用の出力導波路Pの無い状態での共鳴モードのフィールド分布の右半分を図示している。図1(b)、(c)には、光取出し用の出力導波路Pの位置も示している。構造パラメータは、Wmirror=Wcavity=0.98Wの設定としている。図1(d)には、線欠陥の埋め込み幅WBJに対するQ値と相互作用パラメータQ/Vを示している。
Q/Vは、光が閉じ込められている領域の媒質と光の相互作用の強さを示すパラメータであり、その値が大きいほど、レーザ発振しやすい。つまり、図1から(1)から(3)のことが予想される。すなわち、(1)WBJ≦250nmでは、0thモードが優位に発振すること、(2)WBJ〜300nm付近では、0thモードではなく、2ndモードが優位に発振する可能性が高いこと、(3)WBJ〜350nm付近では、3つのモードで発振する可能性がでてくることを示している。
この結果は、単一モード発振のためには、WBJ≦250nmとする必要があることを示しており、それ以上に広く設定した場合は、どのモードが発振するか不確定となるなどの不具合が生じることを示している。
本発明はこのような背景の下になされたものであり、共振器の共鳴モードにおいて、基底共鳴モードのQ値が高次共鳴モードのQ値より常に大きくなる構造を提供し、かつ、Q値の制御性を上げることにより、フォトニック結晶をベースとしたマイクロキャビティレーザの単一モード発振を実現するものである。
上記の課題を解決するために、一実施形態に記載された発明は、第1の媒質としての基板に、前記第1の媒質よりも屈折率の小さい第2の媒質が周期的に配列されたフォトニック結晶において、前記第2の媒質を1列分取り除くことにより形成された線欠陥光導波路を形成し、該線欠陥光導波路に、前記第1の媒質よりも大きな屈折率を有する第3の媒質を埋め込むことにより、前記第3の媒質が埋め込まれた領域を活性領域とし、当該活性領域を挟み込む前記線欠陥光導波路の2つの領域をミラー領域とする共振器を構成するフォトニック結晶デバイスであって、前記活性領域の導波路幅が、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうち少なくとも一方のミラー領域の導波路幅よりも狭いことを特徴とするフォトニック結晶デバイスである。
フォトニック結晶レーザの従来構造とその問題点を説明する図である。 埋め込みヘテロ構造フォトニック結晶共振器の原理を説明する図である。 埋め込みヘテロ構造フォトニック共振器において、基底モードのQ値が高次モードより大きくなるときのQ値とフィールド形状を説明する図である。 基底モードのQ値が高次モードより大きくなる時の構造パラメータを説明する図である。 実施例2の条件Iまたは条件IIIにおける基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。 結合効率の構造揺らぎ耐性を示す図である。 実施例2の条件IIにおける基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。 実施例3の条件Iにおける基底モードのQ値が高次モードより大きくなる時の構造パラメータを説明する図である。 実施例3の条件Iにおける基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。 結合効率の構造揺らぎ耐性を示す図である。 実施例3の条件IIにおける基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(共振器の動作条件の説明)
図2は、埋め込みヘテロ構造フォトニック結晶共振器(フォトニック結晶デバイス、共振器ともいう)の原理を説明する図である。図2(a)は、空気穴三角格子フォトニック結晶で構成される共振器構造である。ここで、媒質1はInP、媒質2は空気、媒質3は、1.2μm近辺にバンドギャップを有するInGaAsP層と1.55μm付近で発光する量子井戸層による光キャリア分離閉じ込め構造を想定しており、それぞれの屈折率は、媒質3>媒質1>媒質2の関係にある。この共振器構造は、ミラー領域M1、M2と、活性領域Cとの組合せで構成されており、ミラー領域M1、M2はフォトニック結晶線欠陥光導波路であり、活性領域Cはその線欠陥光導波路(単に、線欠陥ともいう)に屈折率の高い媒質を埋め込んだ構造となっている。すなわちこの共振器は、第1の媒質としての基板(InP)に、前記第1の媒質よりも屈折率の小さい第2の媒質(空気)が周期的に配列されたフォトニック結晶において、前記第2の媒質を1列分取り除くことにより形成された線欠陥光導波路を形成し、該線欠陥光導波路に、前記第1の媒質よりも大きな屈折率を有する第3の媒質(InGaAsP層)を埋め込むことにより、前記第3の媒質が埋め込まれた領域を活性領域(活性領域)とし、当該活性領域を挟み込む前記線欠陥光導波路の2つの領域をミラー領域(ミラー領域)とするよう構成される。
前記線欠陥光導波路のミラー領域の導波路幅は、当該線欠陥光導波路を挟む両サイドの第2の媒質全体をシフトさせることにより調整され、活性領域の導波路幅はこの線欠陥光導波路の導波路幅と同じであり、それ以外の領域は、該線欠陥光導波路をはさむ両サイドの穴1列のみをシフトさせることにより、幅が調整されている。
図2(b)は、ミラー領域M1、M2、活性領域Cを、それぞれを無限長の導波路とみなしたときの光導波モードの分散曲線を示す図である。線欠陥の無い場合、本フォトニック結晶デバイスは、フォトニックバンドギャップ(PBG)と呼ばれるストップバンドを有する。この帯域では、光はフォトニック結晶デバイス内を伝搬することが出来ないが、線欠陥を導入することにより、図2(b)に示される導波モードの帯域において、光は線欠陥内を伝搬することが出来る。
ここで、PBGの低周波数端、ミラー領域M1、M2の導波モードの低周波数端、活性領域導波モードの低周波数端(導波モードエッジ)をそれぞれ、ωPBG、ωmirror、ωcavityとし、ωPBGとωmirrorとの間のギャップを、ミラー帯域と呼ぶこととする。活性領域Cには、フォトニック結晶デバイスを構成する媒質1よりも屈折率の大きな媒質3が埋め込まれているため、活性領域Cの導波モードは、ミラー領域M1、M2の導波モードより低周波数側にシフトした導波モードを有することになる。つまり、ミラー帯域において、ミラー領域M1、M2には導波モードが存在せず、活性領域Cにのみ導波モードが存在する条件が成立する。言い換えると、活性領域Cを伝搬する光を、光を通さないミラー領域M1、M2で挟み込む状態となっており、これにより、活性領域Cに光を閉じ込める共振器を構成することが出来る。
この共振器により生成される共鳴モードは、活性領域Cの導波モードを根源とするため、共振器の基底共鳴モードの共鳴周波数(ω0th)、高次共鳴モードの共鳴周波数(ω1st,ω2nd・・)は、以下のような関係を持つことになる。
(1)ωPBG<ω0th<ωmirror、ω0th<ω1st<ω2nd<・・
モードの共鳴周波数がミラー帯域に含まれると光は共振器に閉じ込められ、ωmirrorに近くなると活性領域Cへの光閉じ込め効果が薄れて共鳴モードが共振器縦方向に間延びする。そして、ミラー帯域から外れると共振器は光を閉じ込めきれなくなりQ値が急激に低下する。つまり、以下の(2)から(4)の関係が成立する。ここで、ωnthはn次共鳴モードの共鳴周波数であり、QnthはQ値である。
(2)ωPBG<ωnth<ωmirrorの条件で、nthモードが共振器に閉じ込められる。
(3)ωnth≒ωmirrorの条件で、n次モードのフィールド形状が共振器縦方向に延伸する。
(4)ωnth≧ωmirrorの条件で、Qnthが激減する。
(従来の共振器構造)
非特許文献2から4で提案される共振器構造において、ωnthとωmirrorの大小関係は、図2(a)に示される、活性領域Cの導波路幅(Wcavity)、埋め込み構造幅(WBJ)、ミラーM1、M2の幅(Wmirror1、Wmirror2)をパラメータとして、以下の関係にある。ここで、Wcavity=Wmirror1、Wmirror2=0.98W、WBJ=350nmとした。
caviy=Wmirror1、Wmirror2
ωPBG<ω0th<ω1st<ω2nd<ωmirror
(2)の条件より、この構造における共鳴モードの数は3つとなる。
(実施例1の共振器構造)
図3は、埋め込みヘテロ構造フォトニック共振器において、基底モードのQ値が高次モードより大きくなるときのQ値とフィールド形状を説明する図である。図3(a)は、フォトニック結晶共振器の線欠陥の幅を示し、図3(b)は共鳴モードのフィールド分布を示しており、図3(c)は、線欠陥の幅に対するQ値の変化を示している。なお、上記従来構造における共鳴モードの磁界フィールドパタンは、図3(b)の条件IIIに示している。
本実施例では、ミラー領域M1、M2と活性領域Cの線欠陥幅を独立の設計パラメータとすることにより、共鳴モードの数を減らしている。各領域の線欠陥幅は以下の方法で調整する。ここで、線欠陥の幅は、線欠陥を挟む2つ穴の中心間隔として定義する。
cavity:フォトニック結晶の穴列を1列取り除くことにより線欠陥光導波路を構成し、線欠陥を挟む両サイドのフォトニック結晶全体をシフトさせることにより、線欠陥の幅を調整する。
mirror:上記で構成された線欠陥をはさむ両サイドの穴1列(線欠陥の左右で2列)のみをシフトさせることにより、線欠陥の幅を調整する。
さて、0thモードは、活性領域導波モードの低周波数端のモードエッジを根源としているため、ω0thの値は、ωcavityにより決定される。また、ωmirror、ωcavityの値は、導波路幅が広くなれば低周波数側に、狭くなれば高周波数側にシフトする特徴をもっている。よって、(1)において、ωPBGとωmirrorに挟まれるモードの数を減らすには、Wmirrorを広く、あるいはWcavityを狭くすればよいことがわかる。導波路幅を調整する以上の方法により、Q0th>>Q1st,Q2ndを満足する、下記の条件IまたはIIを実現することができる。
条件I:ωPBG<ω0th<ωmirror<ω1st<・・・・
この条件下では、(2)の条件により、0thモードのみが共振器に閉じ込められる。
条件II:ωPBG<ωmirror<ω0th<ω1st<・・・・
mirrorとWcavityを独立のパラメータとすることにより、(1)のωmirrorとω0thの大小関係を入れ替えることができる。この条件は(2)の条件を満足しないため、ミラー領域の反射による光閉じ込め効果は期待できないが、0thモードの共鳴周波数は活性領域を導波路とみなした時の導波モードのストップバンド端に相当するため、分布帰還形の共鳴が発生する。そのため、条件IIも基底共鳴モードのみを発振させるための条件とすることができる。
条件I、II以外の条件では多モードとなり、ここでは条件IIIと呼ぶ。
次に、WBJ=350nm、Wcavity=0.98Wとしたときの、条件I、IIIのそれぞれに対する磁界フィールドパタンと、共振器Q値のWmirror依存性を図3に示す。
条件I:Wmirror=1.04W(ω1st>ωmirror、ω0th〜ωmirror):この条件では、Q0th>>Q1st,Q2ndを満足する。また(3)の条件より、0thモードが縦方向にのびる。図1の取り出し導波路を設置することで、面内光出力が可能となる。
この条件を満たす共振器は、前記ミラー領域の導波路幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く、1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することによって実現できる。
条件II: Wmirror=1.08W(ω0th>ωmirror):この条件では、0thモードが活性領域に緩く閉じ込められる。この場合は、取り出し導波路を設置しなくても、ミラー領域から面内光出力が可能となる。
この条件を満たす共振器は、前記ミラー領域の線欠陥光導波路の幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することによって実現できる。
以上の結果は、Wmirror>Wcavityと設定することにより、共鳴モードの数を削減し、基底共鳴モードのQ値を高次共鳴モードよりも高くすることが可能であることを示している。
実施例1では、一方のミラー領域M2が出力導波路を兼ねていたが、本実施例では、条件Iまたは条件IIに基づいて幅が調整されたミラー領域の一方に、光取り出し用の出力導波路Pを設けることによって、共振モードと導波モードとの高効率接続が可能な構成を示す。
(条件I)
本条件を満たす共振器は、前記線欠陥光導波路と同じ軸上で、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうちの一方に光取り出し用の出力導波路を接続することにより実現され、該出力導波路の幅を基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することにより基底共鳴モードの光を出力導波路からのみ出力し、前記活性領域の線欠陥光導波路と前記出力導波路との距離の調整で、前記活性領域の線欠陥光導波路と出力導波路との結合効率を調整する。
BJが長くなるとω0thとω1stの間隔が狭くなるため、条件Iの下で、(3)の条件も同時に満足される。つまり、0th共鳴モードのフィールド分布が共振器の中心軸方向に延伸される(図3、条件Iの0thモード)。この特徴をフィールド延伸用のミラー領域M2(幅Wmirror2)として利用し、同一軸上に配置された光取り出し用の出力導波路P(幅Wout)にスムースにフィールドをつなぐことにより、共振器と光取り出し用の出力導波路Pの高効率接続を実現する。ここで、Wmirror2、Woutの調整方法は、Wmirror1と同じとする。
図4は、基底モードのQ値が高次モードより大きくなる時の構造パラメータを説明する図である。図4(a)は、フォトニック結晶共振器を示し、図4(b)は、フォトニック結晶共振器の線欠陥の幅が異なる条件を示し、図4(c)は、各条件における線欠陥光導波路の幅の値を示す図である。活性領域C・ミラー領域M1、M2・出力導波路Pの接続構造の実施例を、図4の、TypeA、TypeBに示し、比較例を幅変化なしとして示す。ミラー領域M1、活性領域C、ミラー領域M2、出力導波路Pの境界を簡単に識別するため、線欠陥を挟む穴列をその形状を変化させて簡略な図で示している。したがって、実際の穴形状はこれとは異なる。
TypeA:活性領域Cの長さを10aとし、埋め込み構造の長さ(LBJ=9a)より1周期分長く設定している。このときの活性領域Cの端の穴位置を原点とし、距離D(格子定数の整数倍)だけ離れた位置に、出力導波路Pの先端位置を設置し、その間をミラー領域でつなぐ。
TypeB:活性領域Cの長さを8aとし、ミラー領域を1格子分だけ長く設定している。Dの値が同じであれば、TypeAとTypeBの出力導波路Pの先端位置は同じとなる。TypeAよりも出力導波路Pと活性領域Cの結合効率が高くなり、Q値が小さくなる。
幅変化なし:ミラー領域M1とミラー領域M2を、活性領域Cと同じ幅(0.98W)に設定。条件IIIに当てはまるため、共振器はマルチモードになる。出力用導波路P(Wout)との結合は小さく、高Qになる。本構造は、非特許文献4の構造に相当する。
ここで、TypeA、TypeBのそれぞれの領域の線欠陥幅(Wmirror1,Wmirror2,Wout)は、WBJ=350nmにおいて条件Iを満足するように、下記のように設定する。
mirror1=Wmirror2=1.04W:高次共鳴モードを漏らし、基底共鳴モードを閉じ込める設定とする。これにより、高次共鳴モードのQ値が極端に小さくなり、ほぼ、単一モードとなる。かつ、0th共鳴モードを縦方向に引き伸ばす効果がある。この領域を、結合用のミラー領域M1、M2とし、その幅、長さを調整することで、出力導波路と共振器の結合効率の調整が可能となる。
out=1.08W:存在する3つの共鳴モードの波長で、導波モードが存在できる設定である。共鳴モードを外部に取り出す導波路となる。
図5は、条件Iまたは条件IIIにおける基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。図5(a)は、フォトニック結晶共振器の線欠陥の幅と、共鳴モードのフィールド分布を示しており、図5(b)は、活性領域Cと出力導波路Pとの距離(D)をパラメータとしたときの、出力導波路付の共振器のQ値(Q)と導波路への結合係数(ηout)を示す図である。ミラー領域が無い場合(幅変化なし)、結合効率はD>4の条件で、急速に減衰する。一方、ミラー領域がある場合(TypeA、TypeB)、結合効率は高いまま維持される。この結果は、ミラー領域M2の導入により、フィールドが縦方向にのび、出力導波路Pとの結合が容易になったことを示している。また磁界フィールド分布からも明らかなように、本構造は、出力導波路Pからのみ0thモードの光が出力され、反対側のミラー領域からは出力されない。
図6は、結合効率の構造揺らぎ耐性を示す図である。図6において(a)はTypeAについて、(b)はTypeBについて、(c)は幅変化なしについて示している。出力導波路Pの影響を考慮しない共振器固有のQ値(Q)は、作製プロセス揺らぎの影響(穴形状、穴径、BJ形状、など)により、理論Qiにくらべ大幅に減少することが予想される。図6では、計算で求められた最大Q値をQとし、それより小さな値(○:10,▽:10)を仮定したときの、結合効率と、Q値を示している。これより、活性領域の幅よりもその幅が狭いミラー領域の導入により、Q値が小さくなってしまった場合においても、レーザ発振に十分なQ値(10〜10)を保持しながら、高効率結合を達成することができることがわかる。
以上の結果は、活性領域Cの両端に配置されているミラー領域M1、M2の幅を、条件Iを満足する幅に設定し、かつ、ミラー領域M2の先に光取り出し用の出力導波路Pを活性領域Cと同一軸上に配置することにより、基底共鳴モードは出力導波路Pからのみ出力され、その光取出し効率が高く、構造揺らぎに強く、基底共鳴モードのQ値が高次共鳴モードよりも必ず高くなる、出力導波路付共振器構造を実現することが可能であることを示している。
(条件II:条件Iよりも埋め込み領域の幅を狭めた構造)
本条件を満たす共振器は、前記線欠陥光導波路と同じ軸上で、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のどちらか一方に出力導波路を接続し、出力導波路の幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することによって実現できる。
条件IIの下では、分布帰還形の共鳴によりフィールド分布が共振器の中心軸方向に長くのびた状態にあるため(図3、条件IIの0thモード)、同一軸上に配置された光取り出し用の出力導波路Pとスムースにフィールドがつながり、共振器と光取り出し用の導波路の高効率接続が可能となる。
活性領域C・ミラー領域M1、M2・出力導波路Pの接続構造を、図4(c)のTypeCに示す。本実施例では、線欠陥構造をTypeAと等しくし、WBJのみを350nmから250nmに細くすることで、条件IIを満足する構造としている。
図7は、条件IIにおける基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。活性領域Cと出力導波路Pとの距離(D)をパラメータとしたときの、出力導波路付の共振器のQ値(Q)と導波路への結合係数(ηout)を示す図である。
条件IIのもとでは、ミラー領域M2に光閉じ込め機能が無いため、結合効率はDにほとんど依存せず、結合効率は高いまま維持される。また磁界フィールド分布からも明らかなように、本構造は、出力導波路Pとミラー領域M1の両方から光が出力される。
次に、結合効率の構造揺らぎ耐性を図7(b)の●○▽で示す。
出力導波路の影響を考慮しない共振器固有のQ値(Q)は、作製プロセス揺らぎの影響(穴形状、穴径、BJ形状、など)により、理論Qにくらべ大幅に減少することが予想される。図7では、計算で求められた最大Q値をQとし、それより小さな値(○:10,▽:10)を仮定したときの、結合効率と、Q値を示している。これより、ミラー領域M2の導入により、Q値が小さくなってしまった場合においても、レーザ発振に十分なQ値(10)を保持しながら、高効率結合を達成することができることがわかる。
以上の結果は、活性領域Cの両端に配置されているミラー領域M1、M2の幅を、条件IIを満足する幅に設定することにより、基底共鳴モードの光取出し効率が高く、構造揺らぎに強く、基底共鳴モードのQ値が高次共鳴モードよりも必ず高くなる、出力導波路付共振器構造を実現することが可能であることを示している。
実施例2では、条件Iのもと、Wmirror1=Wmirror2とすることで、出力導波路Pだけでなく、ミラー導波路M1側からも、高次共鳴モードが漏れ出る構造になっている。これを、出力導波路Pに接続されていないミラー領域M1側で条件IIIを満足する構造に変更し、出力導波路P側からのみ光が出力される構造としても、実施例2と同様の効果を得ることは可能である。
また実施例2では、条件IIのもと、Wmirror1=Wmirror2とすることで、出力導波路Pだけでなく、ミラー導波路M1側からも、共鳴モードが出力される構造になっている。これを、ミラー領域M1側を条件Iあるいは条件IIIを満足する構造に変更し、0thモードのみ、あるいは、高次共鳴モードを含めた共鳴モードが、出力導波路P側からのみ光が出力される構造としても、実施例2と同様の効果を得ることは可能である。それぞれの構造について、以下に説明する。
(ミラー領域M2で条件Iのもと、ミラー領域M1で条件IIIを満足する構造)
本条件を満たす共振器は、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうちの一方の導波路幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く、1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定し、前記ミラー領域の他方の線欠陥光導波路の幅を、1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く設定することによって実現できる。
図8は、本条件における基底モードのQ値が高次モードより大きくなる時の構造パラメータを説明する図である。図8(a)は、フォトニック結晶共振器を示し、図8(b)は、フォトニック結晶共振器の線欠陥の幅が異なる条件を示し、図8(c)は、各条件における線欠陥光導波路の幅の値を示す図である。活性領域C・ミラー領域M1、M2・出力導波路Pの接続構造を、図8のTypeA、TypeBに示し、比較例を幅変化なしとして示す。実施例2で用いたパラメータにおいて、ミラー領域M1の幅のみ、Wmirror1=0.98Wに変更されている。
図9は、本条件における基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。図9(a)は、フォトニック結晶共振器の線欠陥の幅と、共鳴モードのフィールド分布を示しており、図9(b)は、活性領域Cと出力導波路Pとの距離(D)をパラメータとしたときの、出力導波路付の共振器のQ値(Q)と導波路への結合係数(ηout)を示す図である。
ミラー領域M2が無い場合(幅変化なし)、結合効率はD>4の条件で、急速に減衰する。一方、ミラー領域M2がある場合(TypeA、TypeB)、結合効率は高いまま維持される。この結果は、活性領域Cの幅よりもその幅が狭いミラー領域M2の導入により、フィールドが縦方向にのび、出力導波路Pとの結合が容易になったことを示している。また磁界フィールド分布からも明らかなように、本構造は、出力導波路Pからのみ0thモードの光が出力され、反対側のミラー領域M1からは出力されない。
図10は、結合効率の構造揺らぎ耐性を示す図である。図10において(a)はTypeAについて、(b)はTypeBについて、(c)は幅変化なしについて示している。出力導波路Pの影響を考慮しない共振器固有のQ値(Q)は、作製プロセス揺らぎの影響(穴形状、穴径、BJ形状、など)により、理論Qにくらべ大幅に減少することが予想される。本図は、計算で求められた最大Q値をQとし、それより小さな値(○:10, ▽:10)を仮定したときの、結合効率と、Q値を示している。これより、活性領域Cの幅よりもその幅が狭いミラー領域M2の導入により、Q値が小さくなってしまった場合においても、レーザ発振に十分なQ値(10〜10)を保持しながら、高効率結合を達成することができることがわかる。
以上の結果は、活性領域Cの一方の端に接続されるミラー領域M1を、条件IIIを満足する幅に設定し、もう一方の端に接続されるミラー領域M2を、条件Iを満足する幅に設定し、かつ、ミラー領域M2の先に出力(出力導波路P)を活性領域Cと同一軸上に配置することにより、基底共鳴モードは出力導波路Pからのみ出力され、その光取出し効率が高く、構造揺らぎに強く、基底共鳴モードのQ値が高次共鳴モードよりも必ず高くなる、出力導波路付共振器構造を実現することが可能であることを示している。
(ミラー領域M2で条件IIのもと、ミラー領域M1を条件Iあるいは条件IIIを満足する構造)
本条件を満たす共振器は、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうちの一方の導波路幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定し、前記ミラー領域の他方の線欠陥光導波路の幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅または1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く設定することによって実現できる。
本条件に従った活性領域C・ミラー領域M1、M2・出力導波路Pの接続構造を、図8の、TypeCに示す。実施例2で用いたパラメータにおいて、ミラー領域M1の幅のみ、Wmirror=0.98Wに変更されている。
図11は、本条件における基底モードのQ値と導波路との結合効率を説明する図である。図11(a)は、フォトニック結晶共振器の線欠陥の幅と、共鳴モードのフィールド分布を示しており、図11(b)は、活性領域Cと出力導波路Pとの距離(D)をパラメータとしたときの、出力導波路付の共振器のQ値(Q)と導波路への結合係数(ηout)を示している。
条件IIのもとでは、ミラー領域M2に光閉じ込め機能が無いため、結合効率はDにほとんど依存せず、結合効率は高いまま維持される。磁界フィールド分布からも明らかなように、本構造は、出力導波路Pからのみ0thモードの光が出力され、反対側のミラー領域M1からは出力されない。
次に、結合効率の構造揺らぎ耐性を図11(b)の●○▽で示す。出力導波路Pの影響を考慮しない共振器固有のQ値(Q)は、作製プロセス揺らぎの影響(穴形状、穴径、BJ形状、など)により、理論Qにくらべ大幅に減少することが予想される。本図は、計算で求められた最大Q値をQとし、それより小さな値(○:10,▽:10)を仮定したときの、結合効率と、Q値を示している。これより、ミラー領域の導入により、Q値が小さくなってしまった場合においても、レーザ発振に十分なQ値(10)を保持しながら、高効率結合を達成することができることがわかる。
以上の結果は、活性領域Cの一方の端に接続されるミラー領域M1を条件I、または条件IIIを満足する幅に設定し、もう一方の端に接続されるミラー領域M2の幅を条件IIを満足する幅に設定し、かつ、ミラー領域M2の先に光取り出し用の出力導波路Pを活性領域Cと同一軸上に配置することにより、基底共鳴モードは出力導波路からのみ出力され、その光取出し効率が高く、構造揺らぎに強く、基底共鳴モードのQ値が高次共鳴モードよりも必ず高くなる、出力導波路付共振器構造を実現することが可能であることを示している。
M1、M2 ミラー領域
C 活性領域
P 出力導波路
上記の課題を解決するために、一実施形態に記載された発明は、第1の媒質としての基板に、前記第1の媒質よりも屈折率の小さい第2の媒質が周期的に配列されたフォトニック結晶において、前記第2の媒質を1列分設けない部分を線欠陥光導波路として形成し、該線欠陥光導波路に、前記第1の媒質よりも大きな屈折率を有する第3の媒質を埋め込むことにより、前記第3の媒質が埋め込まれた領域を活性領域とし、当該活性領域を挟み込む前記線欠陥光導波路の2つの領域をミラー領域とする共振器を構成するフォトニック結晶デバイスであって、前記活性領域の線欠陥幅が、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうち少なくとも一方のミラー領域の線欠陥幅よりも狭いことを特徴とするフォトニック結晶デバイスである。
本実施例では、ミラー領域M1、M2と活性領域Cの線欠陥幅を独立の設計パラメータとすることにより、共鳴モードの数を減らしている。各領域の線欠陥幅は以下の方法で調整する。ここで、線欠陥の幅は、線欠陥を挟む2つ穴の中心間隔として定義する。

Claims (10)

  1. 第1の媒質としての基板に、前記第1の媒質よりも屈折率の小さい第2の媒質が周期的に配列されたフォトニック結晶において、前記第2の媒質を1列分取り除くことにより形成された線欠陥光導波路を形成し、該線欠陥光導波路に、前記第1の媒質よりも大きな屈折率を有する第3の媒質を埋め込むことにより、前記第3の媒質が埋め込まれた領域を活性領域とし、当該活性領域を挟み込む前記線欠陥光導波路の2つの領域をミラー領域とする共振器を構成するフォトニック結晶デバイスであって、
    前記活性領域の導波路幅が、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうち少なくとも一方のミラー領域の導波路幅よりも狭いことを特徴とするフォトニック結晶デバイス。
  2. 前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域の一方に光取り出し用の出力導波路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶デバイス。
  3. 前記活性領域の導波路幅が、前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域の導波路幅よりも狭いことを特徴とする請求項1または2に記載のフォトニック結晶デバイス。
  4. 前記一方のミラー領域の導波路幅のみが活性領域の導波路幅よりも広いことを特徴とする請求項2に記載のフォトニック結晶デバイス。
  5. 前記ミラー領域の導波路幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く、1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶デバイス。
  6. 前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうちの一方の導波路幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く、1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定し、前記ミラー領域の他方の線欠陥光導波路の幅を、1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く設定することを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶デバイス。
  7. 前記ミラー領域の線欠陥光導波路の幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶デバイス。
  8. 前記線欠陥光導波路の2つのミラー領域のうちの一方の導波路幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定し、前記ミラー領域の他方の線欠陥光導波路の幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅または1次共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも狭く設定することを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶デバイス。
  9. 前記出力導波路の幅を、基底共鳴モードと導波モードエッジの周波数が等しくなるときの導波路幅よりも広く設定することを特徴とする請求項2に記載のフォトニック結晶デバイス。
  10. 前記線欠陥光導波路のミラー領域の導波路幅は、当該線欠陥光導波路を挟む両サイドの第2の媒質全体をシフトさせることにより調整されること特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のフォトニック結晶デバイス。
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